説明

シェル・プレート式熱交換器と、これを備えた発電プラント

【課題】給水加熱器及び湿分分離過熱器など、凝縮を伴う熱交換器の高性能化を図り、コンパクトで且つプラント熱効率を向上させることができるシェル・プレート式熱交換器と、これを備えた発電プラントを提供する。
【解決手段】給水を導入して蒸気を発生する蒸気発生器と、蒸気発生器からの蒸気を導入して発電機を駆動する蒸気タービンと、蒸気タービンから排出された蒸気を復水する復水器と、復水器の復水を給水として蒸気発生器に送ると共に、給水もしくは蒸気を被加熱流体とし、蒸気タービンからの抽気を加熱流体として熱交換を行う熱交換器を備える発電プラントにおいて、記熱交換器は、耐圧用のシェル内に伝熱プレートと耐圧プレートを交互に積層したユニットを固定し、耐圧プレートに挟まれた伝熱プレートの各面に被加熱流体の流路と、加熱流体の流路を形成して熱交換を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電プラントに係り、特にシェル・プレート式熱交換器と、これを備えた発電プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
発電プラントには、幾つかの型式のものがある。例えば化石燃料を用いたボイラで蒸気を発生させる火力発電プラント、原子炉を使用し、核分裂により発生する熱を利用する原子力発電プラントなどである。これらの型式の発電プラントは更に細分化することができるが、いずれの場合にも蒸気タービンからの抽気を使用して給水などを加熱することで、発電プラント全体の発電効率を上げている。
【0003】
本発明は、発電プラントにおいて給水などの熱交換を効率よく行う技術に関するものであるので、発電プラントの型式は上記のいずれであってもよいが、ここでは沸騰水型軽水炉(以下、BWRと称す)原子力発電プラントの事例で説明する。
【0004】
従来の沸騰水型軽水炉(BWR)原子力発電プラントは、核分裂性物質を含む原子炉で水を沸騰させ、沸騰によって発生した蒸気を、主蒸気配管を通して高圧タービン及び低圧タービンに供給し、これらのタービンを回転させて主軸と連動した発電機を回して発電を行っている。
【0005】
タービンで仕事をし、低圧タービンから排気された蒸気は、復水器で凝縮されて水になる。この水は、給水として給水配管により再び原子炉に供給される。給水は、給水配管に設けられた給水ポンプによって昇圧され、給水配管に設けられた6基の給水加熱器(4基の低圧給水加熱器及び2基の高圧給水加熱器)によって加熱されて昇温され、原子炉圧力容器内に給水される。
【0006】
沸騰水型原子力発電プラントでは、まず原子炉の熱出力を決定し、この熱出力で最高の熱効率が得られるように、原子炉より下流での蒸気の流れ(主蒸気配管及びタービン等での蒸気の流れ)を最適化している。
【0007】
具体的には、低圧タービンから排気された蒸気を復水器で凝縮して水にした場合、熱サイクルの原理から通常の原子炉圧力(約7MPa)では水の潜熱は発電に用いることができないため復水器から外部に排出されて無駄になる。そこで、沸騰水型原子力発電プラントの熱効率を向上させるために、高圧タービン及び低圧タービンから蒸気の一部を抽気して高圧給水加熱器及び低圧給水加熱器に供給し、これらの給水加熱器においてその抽気蒸気を用いて給水を加熱することが行われている。この場合、抽気された蒸気が保有している熱は、給水の加熱に用いられることよって、そのほとんどが回収され、沸騰水型原子力発電プラントの熱効率が向上する。
【0008】
一般に、再循環ポンプとジェットポンプの再循環系を用い、湿分分離器MSを備えている沸騰水型軽水炉BWRにおいては、原子炉で発生した蒸気のうち最終的に低圧タービンから復水器に排気される蒸気の量は約2/3弱であり、残りの約1/3強の蒸気は抽気蒸気として給水の加熱に用いられる。
【0009】
湿分分離器MSの替わりに湿分分離過熱器MSHを設置した改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)においても、主蒸気のうち最終的に低圧タービン出口から復水器に送られる蒸気の量はBWRと同様に約2/3弱である。
【0010】
特許文献1、特許文献2の沸騰水型原子力発電プラントでは、高圧タービンあるいは低圧タービンから抽気された蒸気を高圧あるいは低圧給水加熱器へ供給して、給水を加熱することが行われている。ここで使用される高圧給水加熱器及び低圧給水加熱器は、一般的にシェル・チューブ式熱交換器の型式であって、胴体(シェル)内に多数のU字型伝熱管(チューブ)を設置しており、伝熱管内を流れる給水と胴体内で伝熱管外を流れる抽気蒸気とが熱交換して給水の温度が上昇する。なお、高圧タービンから抽気された蒸気が高圧給水加熱器に供給され、低圧タービンから抽気された蒸気が低圧給水加熱器に供給される。
【0011】
以上説明した抽気を利用した給水の加熱によるプラント効率向上対策は、前記した多くの発電プラントにおいて実施されている。ここで、給水加熱器は抽気と給水との間で熱交換を行う熱交換器であって、加熱流体を抽気とし、被加熱流体を給水とする熱交換器である。この給水との熱交換は、再生効率による性能向上を図ったものである。
【0012】
これに対し、発電プラントの中には、さらに蒸気側でも抽気との間での熱交換を行うものがある。前記の湿分分離器MSの替わりに湿分分離過熱器MSHを設置した改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)においては、湿分分離過熱器MSHは、湿分分離器と、その後流側の第1段過熱器及び第2段過熱器を有する。上流側の第1段過熱器は、高圧タービンから抽気された蒸気を用いて、湿分分離器で湿分が除去された蒸気を過熱する。下流側の第2段過熱器は、第1段過熱器で過熱された蒸気を、高圧タービンより上流の主蒸気配管から抽気された蒸気を用いて過熱する。第2段過熱器で過熱された主蒸気が低圧タービンに供給される。
【0013】
ここで、湿分分離器の後流側の第1段過熱器及び第2段過熱器は、抽気と蒸気との間で熱交換を行う熱交換器であって、加熱流体を抽気とし、被加熱流体を蒸気とする熱交換器である。これにより、給水側での熱交換による効率向上と相俟って、よりいっそう高効率とすることができる。この蒸気との熱交換は、再熱効率による性能向上を図ったものである。
【0014】
このように、沸騰水型軽水炉BWRあるいは改良型沸騰水型軽水炉ABWRの沸騰水型原子力発電プラントの熱効率を向上させるために、給水加熱器を設置して再生効率により性能が向上すること、及び湿分分離器MSの湿分分離効率を向上し、さらに湿分分離器MSに過熱器を追設して再熱効率により性能が向上することは、一般的に知られている。
【0015】
しかしながら、湿分分離過熱器MSHは大きな胴体内に湿分分離器と伝熱管から構成される第1段過熱器及び第2段過熱器を設置しているため、現状の構造ではコンパクトにすることは困難である。また、従来の湿分分離過熱器MSHの容器は大型化のため、湿分分離過熱器MSHを設置する建屋全体へのコンパクト化に対する課題もある。
【0016】
これに対し、発電プラントを簡素化するために、従来のシェル・チューブ式熱交換型式の給水加熱器に替わり、多段の蒸気インジェクタを適用した発電プラントの例が、非特許文献1に提案されている。蒸気インジェクタは、従来の伝熱管を介した熱交換方式による給水加熱器の代わりに、伝熱管を削除して低温の給水と高温の抽気蒸気を直接接触して熱交換するものである。
【0017】
この発電プラントでは、高圧タービンまたは低圧タービンから抽気した蒸気を、多段の蒸気インジェクタに供給している。各蒸気インジェクタでは、ディフューザ形状の内部を給水が流れ、ディフューザのスロート部に設置されたノズルから蒸気を高速で噴き出して外周部が円錐状になっている給水流の中心部を蒸気が流れ、気液界面において蒸気を凝縮しながら給水が加熱そして加速されて次の段の蒸気インジェクタに向って流れる。また、この逆に、ディフューザ形状の内部で中心部を給水が流れ、外周部から供給された蒸気を凝縮しながら給水が加速されることも可能である。
【0018】
一方、非特許文献2に提案されているプレート式熱交換器は、特に低温・低圧の流体間での熱交換用に一般産業界で使用されている。複数枚から構成される伝熱促進用の波板構造をゴムパッキンにより積層し、両側からネジで締め付ける構造となっている。
【0019】
これを高温・高圧用に使用範囲を広げたブレージングプレート式熱交換器が非特許文献3に提案されている。これは、基本的に上記の波板構造は同じであるが、ゴムパッキンの代わりに各伝熱板をロー付けで圧着して一体構造としたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2005−299644号公報
【特許文献2】特開平7−189609号公報
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】T. Narabayashi, et al., Proc. of ICONE−3, pp.877−883, Kyoto, Japan, 1994
【非特許文献2】プレート式熱交換器、日阪製作所
【非特許文献3】ブレージングプレート式熱交換器、日阪製作所
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
このように、熱交換器としては従来のシェル・チューブ式熱交換型式に代わり、各種原理のものが提案されている。しかしながら、このままの温度・圧力の使用条件では、従来のプレート式熱交換器を原子力プラントなどの発電プラント用に使用することはできない。また、現有のブレージングプレート式熱交換器はコンパクトではあるが、交換熱量が小さすぎるため湿分分離過熱器MSHや給水加熱器への使用は難しい。
【0023】
さらに、非特許文献1に記載された多段の蒸気インジェクタによれば、蒸気が給水との気液界面の表面で凝縮されるため、蒸気の凝縮に伴う体積変化が大きいことにより流動が不安定となる懸念がある。
【0024】
以上のことから、本発明の目的は、給水加熱器及び湿分分離過熱器など、凝縮を伴う熱交換器の高性能化を図り、コンパクトで且つプラント熱効率を向上させることができるシェル・プレート式熱交換器と、これを備えた発電プラントを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、給水を導入して蒸気を発生する蒸気発生器と、蒸気発生器からの蒸気を導入して発電機を駆動する蒸気タービンと、蒸気タービンから排出された蒸気を復水する復水器と、復水器の復水を給水として蒸気発生器に送ると共に、給水もしくは蒸気を被加熱流体とし、蒸気タービンからの抽気を加熱流体として熱交換を行う熱交換器を備える発電プラントにおいて、記熱交換器は、耐圧用のシェル内に伝熱プレートと耐圧プレートを交互に積層したユニットを固定し、耐圧プレートに挟まれた伝熱プレートの各面に被加熱流体の流路と、加熱流体の流路を形成して熱交換を行うことで達成される。
【0026】
また、伝熱プレート各面の流路には、波形形状の波板が形成されている。
【0027】
また、熱交換器での熱交換により凝縮現象を伴う場合、凝縮する流体が通過する伝熱プレートの波板の流路幅をδ、凝縮しない流体が通過する伝熱プレートの波板の流路幅δとしたとき、波板の流路幅の比が次の関係を満足する範囲である。
1≦δ/δ≦2
また、伝熱プレートにおいて熱交換する二流体の差圧ΔPと、伝熱プレートの波板の厚みtが、次の関係を満足する範囲である。
1x10≦ΔP/t≦1x10 MPa/m
また、伝熱プレートを挟む耐圧プレートが少なくとも4角形の4辺のフレームをリブとし、その内部に流体の流れとほぼ並行に少なくとも1つ以上の中間サポート用リブを設置した。
【0028】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、給水を導入して蒸気を発生する蒸気発生器と、蒸気発生器からの蒸気を導入して発電機を駆動する蒸気タービンと、蒸気タービンから排出された蒸気を復水する復水器と、復水器の復水を加熱する給水加熱器と、給水加熱器において加熱された給水を蒸気発生器に送るようにされた発電プラントにおいて、給水加熱器は、復水器からの復水を被加熱流体とし、蒸気タービンからの抽気を加熱流体として熱交換を行う熱交換器であって、熱交換器は、耐圧用のシェル内に伝熱プレートと耐圧プレートを交互に積層したユニットを固定し、耐圧プレートに挟まれた伝熱プレートの各面に被加熱流体の流路と、加熱流体の流路を形成して熱交換を行う。
【0029】
また、給水加熱器は、蒸気発生器と復水器の間に複数台設置され、このうちのすくなくとも1台の給水加熱器は、シェル・プレート式熱交換器とされる。
【0030】
また、シェル・プレート式熱交換器で構成された給水加熱器は、その内部にユニットを固定するガイド機構を設置し、シェル内と前記ガイド機構との間に中間媒体を封入した。
【0031】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、給水を導入して蒸気を発生する蒸気発生器と、蒸気発生器からの蒸気を導入して発電機を駆動する蒸気タービンと、蒸気タービンから排出された蒸気を復水する復水器と、復水器の復水を給水として蒸気発生器に送ると共に、蒸気タービンを高圧タービンと低圧タービンとで構成し、高圧タービンから排出された蒸気を、湿分分離器と過熱器で構成される湿分分離過熱器を介して低圧タービンに導入するようにされた発電プラントにおいて、湿分分離過熱器の過熱器は、高圧タービンから排出された蒸気を被加熱流体とし、蒸気タービンからの抽気を加熱流体として熱交換を行う熱交換器であって、熱交換器は、耐圧用のシェル内に伝熱プレートと耐圧プレートを交互に積層したユニットを固定し、耐圧プレートに挟まれた伝熱プレートの各面に前記被加熱流体の流路と、加熱流体の流路を形成して熱交換を行う。
【0032】
また、湿分分離過熱器の過熱器は、第1段過熱器とその後流側の第2段過熱器とで構成され、第1段過熱器には高圧蒸気タービンからの抽気を加熱流体として与え、第2段過熱器には高圧蒸気タービンに流入前の蒸気を加熱流体として与える。
【0033】
また、湿分分離過熱器内に設置した過熱器に、ユニットを固定するガイド機構を設置し、シェル内とガイド機構との間に中間媒体を封入した。
【0034】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、給水を導入して蒸気を発生する蒸気発生器と、蒸気発生器からの蒸気を導入して発電機を駆動する蒸気タービンと、蒸気タービンから排出された蒸気を海水で冷却して復水とする復水器と、復水器の復水を給水として蒸気発生器に送るようにされた発電プラントにおいて、復水器は、蒸気タービンから排出された蒸気を加熱流体とし、海水を被加熱流体として熱交換を行う熱交換器であって、熱交換器は、耐圧用のシェル内に伝熱プレートと耐圧プレートを交互に積層したユニットを固定し、耐圧プレートに挟まれた伝熱プレートの各面に被加熱流体の流路と、加熱流体の流路を形成して熱交換を行う。
【0035】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、被加熱流体と加熱流体の間で熱交換を行う熱交換器であって、熱交換器は、耐圧用のシェル内に伝熱プレートと耐圧プレートを交互に積層したユニットを固定し、耐圧プレートに挟まれた伝熱プレートの各面に被加熱流体の流路と、加熱流体の流路を形成して熱交換を行う。
【0036】
また、原子力発電プラントの除熱手段として、動的な低圧注水系の除熱運転モードである残留熱除去系の熱交換器として使用する。
【0037】
また、原子力発電プラントの除熱手段として、ポンプなどの駆動源なしで自然力により蒸気を凝縮するシステムである非常用復水器として使用する。
【0038】
また、原子力発電プラントの除熱手段として、ポンプなどの駆動源なしで自然力により蒸気を凝縮するシステムである静的格納容器冷却系の熱交換器として使用する。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、原子力発電プラントにおいて、従来のシェル・チューブ式熱交換器に比べて、低圧損で高性能な熱交換器となり、大幅に機器のコンパクト化を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1a】シェル・プレート式給水加熱器の横断面を示す図。
【図1b】シェル・プレート式給水加熱器の水室52aの断面を示す図。
【図1c】1枚の伝熱プレート73の表面における抽気の流れAを示した図。
【図1d】1枚の伝熱プレート73の裏面における給水の流れBを示した図。
【図2】本発明が適用される発電プラントの構成を示す図である。
【図3a】伝熱プレートが積層された伝熱プレート層の鳥瞰を示す図。
【図3b】図3aの構造としたときに抽気流路76Cが形成される部位を示す図。
【図3c】図3aの構造としたときに給水流路79Cが形成される部位を示す図。
【図4a】伝熱プレートに抽気流路を形成する為の面形状の一例を示す図。
【図4b】伝熱プレートに給水流路を形成する為の面形状の一例を示す図。
【図5a】サポート用リブ付き耐圧プレートの平面図。
【図5b】図5aのA−A断面図を示す図。
【図6】伝熱プレートの流路の断面図。
【図7a】従来の熱交換器の温度分布を示す説明図。
【図7b】シェル・プレート式熱交換器の温度分布を示す説明図。
【図8】従来の熱交換器とシェル・プレート式熱交換器の性能比較を示す図。
【図9】発電プラントの湿分分離過熱器に適用した事例を示す図。
【図10】本発明の他の実施例である実施例2の伝熱プレートの概略図。
【図11】本発明の他の実施例である実施例3のサポート用リブの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
発電プラントにおける熱効率の向上策には、大きく4つの手法がある。一般的なランキンサイクルにおいては、高圧タービンで仕事をして排気された湿り蒸気を、湿分分離過熱器により過熱蒸気にし、この過熱蒸気を低圧タービンに供給している。第1の手法は、この湿分分離過熱器を用いた再熱サイクルの適用である。第2の手法は、高圧タービンから抽気された蒸気を高圧給水加熱器へ供給し、低圧タービンから抽気された蒸気を低圧給水加熱器へ供給する再生サイクルの適用である。第3の手法は、主蒸気圧力及び主蒸気温度を上昇させることであり、第4の手法は、復水器内の真空度を増加させることなどが考えられる。
【0042】
発明者らは、発電プラントにおけるこれら4つの熱効率の向上策のうち、発電プラントにおける大幅な機器の変更が少なく、熱効率及び電気出力の向上へ大きな効果があるものとして、主蒸気の有効利用にポイントを絞った。すなわち、再生サイクル及び再熱サイクルによる熱効率向上である。
【0043】
そこで、再生サイクル向上のためには、高圧タービン及び低圧タービンのそれぞれから抽気される蒸気量の最適化、給水温度を上昇するための主蒸気流量の増加、給水加熱器の高性能化による抽気蒸気の低減等が考えられる。
【0044】
また、再熱サイクル向上のためには、主蒸気及び高圧タービンのそれぞれから抽気される蒸気量の最適化、主蒸気温度を過熱するための主蒸気流量の増加、湿分分離過熱器の高性能化による抽気蒸気の低減等が考えられる。
【0045】
これらの検討結果、発明者らは、抽気蒸気の流量を低減して高圧タービン及び低圧タービンを回転させるために使用される主蒸気の流量を増加させるには、給水加熱器及び湿分分離過熱器などの熱交換器を高性能化することが最良であるとの結論に至った。また、高圧タービン及び低圧タービンから抽気蒸気を高圧給水加熱器及び低圧給水加熱器へ供給することによって、復水器から海に放出される排熱を低減することができ、蒸気発生装置(原子炉、蒸気発生器及びボイラ等)で発生した熱が発電プラント内で有効に活用されるため、沸騰水型原子力発電プラント等の発電プラントの熱効率が向上する。
【0046】
このように、発明者らは、発電プラントの熱効率及び電気出力の向上策について検討した結果、高圧給水加熱器、低圧給水加熱器及び湿分分離過熱器などの熱交換器を高性能にして、高圧タービン及び低圧タービンから抽気された蒸気流量が少なくても、給水温度を十分上昇させることができ、その分、高圧タービン及び低圧タービンでの仕事に寄与する主蒸気量を増加できれば良いとの結論に達した。すなわち、この蒸気量の増大によって高圧タービン及び低圧タービンに供給される蒸気量が増大し、それぞれのタービンにおける蒸気の仕事量が増大することになる。
【0047】
そこで、この点についてさらに検討した結果、伝熱管を介して熱交換する従来のシェル・チューブ式熱交換器から、伝熱プレートを介したシェル・プレート式熱交換器に変更し、高圧給水加熱器、低圧給水加熱器及び湿分分離過熱器などの熱交換器をコンパクト化すればよいとの新たな知見を見出した。
【0048】
これにより、発電プラントの運転時において、原子炉圧力容器から高圧タービン及び低圧タービンに供給する主蒸気の量が増加され、さらに高圧タービン及び低圧タービンからの抽気蒸気流量が少なくなり、高効率な再生サイクルの発電プラントを実現することができる。この結果、発電プラントの熱効率及び電気出力の両者を向上させることができる。
【0049】
またシェル・プレート式熱交換器は、給水加熱器以外に湿分分離過熱器に用いてもよい。これにより、発電プラントの運転時において、原子炉圧力容器から高圧タービン及び低圧タービンに供給する主蒸気の量が同様に増加され、さらに主蒸気配管及び高圧タービンからの抽気蒸気流量が少なくなり、高効率な再熱サイクルの発電プラントを実現することができる。この結果、発電プラントの熱効率及び電気出力の両者を向上させることができるのである。
【0050】
またシェル・プレート式熱交換器は、給水加熱器や湿分分離過熱器以外に復水器に用いてもよい。これにより、発電プラントの運転時において、復水器の凝縮性能の高性能化が図られ、高真空度を実現することができる。この結果、発電プラントの熱効率及び電気出力の両者を向上させることができる。
【0051】
上記の検討結果を反映した、本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0052】
本発明の好適な一実施例である実施例1の発電プラントのシステム構成を、図2を用いて説明する。本実施例の発電プラントは、沸騰水型原子力発電プラント1である。
【0053】
沸騰水型原子力発電プラント1は、蒸気発生装置である原子炉2、高圧タービン3、低圧タービン5A,5B,5C、主蒸気配管6、復水器11、複数の給水加熱器16,17、給水配管15、及び湿分分離過熱器33を備えている。
【0054】
本発明による改善が適用される熱交換器のうち、給水系統における熱交換器である複数の給水加熱器は、第1高圧給水加熱器16A、第2高圧給水加熱器16B、第3低圧給水加熱器17A、第4低圧給水加熱器17B、第5低圧給水加熱器17C及び第6低圧給水加熱器17Dである。これらの給水加熱器は、シェル・プレート式給水加熱器である。各低圧給水加熱器17は、低圧タービン5からの抽気蒸気が、抽気配管22,23,24,25を介して供給される給水加熱器である。各高圧給水加熱器16は、高圧タービン3、または高圧タービン3の出口側の主蒸気配管6からの抽気蒸気が抽気配管20,21を介して供給される給水加熱器である。なお、100は、給水加熱器で生じた凝縮水ドレンの排出系統(ドレン配管)である。
【0055】
高圧タービン3及び低圧タービン5A,5B,5Cは、主蒸気配管6によって原子炉2に接続される。隔離弁7及び主蒸気調節弁8が、原子炉2と高圧タービン3の間に存在する主蒸気配管6に設置される。
【0056】
本発明による改善が適用される熱交換器のうち、蒸気系統における熱交換器である湿分分離過熱器33が、高圧タービン3と低圧タービン5A,5B及び5Cを接続している主蒸気配管6に設置される。湿分分離過熱器33は湿分分離器4及び過熱器34A,34Bを有する。上流から下流に向って、湿分分離器4、第1段過熱器34A及び第2段過熱器34Bがこの順番に配置されている。これらの過熱器は、シェル・プレート式過熱器である。主蒸気調節弁8の上流で主蒸気配管6に接続された蒸気管38が第2段過熱器34Bに接続される。高圧タービン3に接続された蒸気管42が第1段過熱器34Aに接続される。また、26,35,39は、湿分分離器4及び過熱器34A,34Bで生じたドレンを排出するためのドレン配管である。
【0057】
高圧タービン3及び低圧タービン5A,5B,5Cは、1つの回転軸10によって互いに連結され、さらに、発電機9にも連結される。本実施例は、1台の高圧タービン及び3台の低圧タービンを設けているが、発電プラントの種類によりこれらの台数を変えてもよい。
【0058】
本実施例は、主蒸気系及び給水系を有する。主蒸気系は、高圧タービン3、湿分分離過熱器33、低圧タービン5A,5B,5C、主蒸気配管6及び復水器11を有する。給水系は、給水配管15、第1高圧給水加熱器16A、第2高圧給水加熱器16B、第3低圧給水加熱器17A、第4低圧給水加熱器17B、第5低圧給水加熱器17C、第6低圧給水加熱器17D、復水ポンプ18及び給水ポンプ19を有する。
【0059】
復水器11は、低圧タービン5Bの下方に配置され、低圧タービン5Bに蒸気排気通路37によって接続されている。復水器11は内部に複数の伝熱管12を配置している。これらの伝熱管12は、海水供給管13A及び海水排出管13Bに接続される。海水循環ポンプ14が海水供給管13Aに設置される。海水供給管13A及び海水排出管13Bは海まで伸びている。
【0060】
給水配管15が復水器11と原子炉2を接続する。第1高圧給水加熱器16A、第2高圧給水加熱器16B、第3低圧給水加熱器17A、第4低圧給水加熱器17B、第5低圧給水加熱器17C及び第6低圧給水加熱器17Dは、原子炉2から復水器11に向ってこの順番で給水配管15に設置されている。復水ポンプ18が復水器11と第6低圧給水加熱器17Dの間で給水配管15に設けられる。
【0061】
本実施例で用いられる第1高圧給水加熱器16A、第2高圧給水加熱器16B、第3低圧給水加熱器17A、第4低圧給水加熱器17B、第5低圧給水加熱器17C及び第6低圧給水加熱器17Dのそれぞれは、伝熱管を有するシェル・チューブ式熱交換器を用いた従来の給水加熱器ではなく、伝熱プレートを有するシェル・プレート式熱交換器である給水加熱器を用いている。
【0062】
伝熱プレートを有するシェル・プレート式熱交換器の詳細構造と、熱交換原理については、図3を用いて別途説明するとして、ここでは給水加熱器の簡単な構造を説明する。
【0063】
まず、図1aはシェル・プレート式給水加熱器の横断面図を示している。給水加熱器は、熱交換を行う2つの流体(給水と抽気)が導入され、排出される水室52aと、流体間での熱交換を行う胴部50で構成される。水室52aは、仕切板53により区画され、水室52の断面を示す図1bに明らかなように、4つの室R1,R2,R3,R4を形成する。なお、この図で、右側の水室52bは、特に熱交換用に作用しない領域である。
【0064】
第1高圧給水加熱器16Aの場合、室R1には抽気配管20から抽気FA1が導入され、胴部50で熱交換をした後の抽気ドレンFA2(凝縮水)が、室R2を経由して水室52a内の下端部に設置してある凝縮ポット56に溜まる。なお、その後凝縮水は、ドレン管100を経由して順次次段の給水加熱器(この場合には第2高圧給水加熱器16B)に導かれる。このドレンはまだ多くの熱量を保有しているため、次段の給水加熱器の注水に混入されて、いっそうの熱回収を図る。ドレンは、最終的に復水器11に導かれる。室R4には、被加熱側の流体である給水FB1が給水配管15から導入され、胴部50で熱交換をした後の高温給水FB2が室R3を経由して原子炉2に送られる。
【0065】
水室52aと胴部50は、管板51で区切られている。横型の胴部50内には、多数の伝熱プレート73が積層された伝熱プレート層54が、左右の管板51の間に設けられた伝熱プレート層ガイド54bにより中央部に固定されている。この波板から成る伝熱プレート層54を介して、抽気蒸気FA1と給水FB1がほぼ完全な対向流で熱交換する。なお、高温の抽気蒸気は加熱流体として作用し、低温の給水は被加熱流体として作用する。抽気蒸気FA1は流れ方向に沿って熱を奪われて凝縮水FA2となり、最終的には凝縮ポット56に溜まる。第1高圧給水加熱器16A以外の残りの全ての給水加熱器も、第1高圧給水加熱器16Aと同じ構成を有している。
【0066】
図1Cは、胴部50の断面図であり、1枚の伝熱プレート73の表面における抽気の流れAを図示している。この図で明らかなように、1枚の伝熱プレート73は、断面円形の胴部50に伝熱プレート層ガイド54bにより中央部に固定されている。なお、胴部50は円筒であり、伝熱プレート74は長方形であるため、これらの間には伝熱プレート層ガイド54bを介して中間媒体55を封入し、熱交換性能を向上させることも可能である。
【0067】
図1dは、胴部50の断面図であり、1枚の伝熱プレート73の裏面における給水の流れBを図示している。これらの図1C、図1dを対比して明らかなように、伝熱プレート73の表面を抽気が上から下に流れ、伝熱プレート73の裏面を給水が下から上に流れることで熱交換を行っている。
【0068】
次に、上記構成の給水加熱器で構成された給水系統の具体的な接続関係について図1(特に図1b)、図2を参照して下流側(原子炉2側)から説明する。まず、第1高圧給水加熱器16Aの水室52aに接続された図1b右上の給水配管15が原子炉2に接続される。第2高圧給水加熱器16Bの水室52aに接続された図1b右上の給水配管15が、第1高圧給水加熱器16Aの水室52aの室R4に連絡されるように、第1高圧給水加熱器16Aの水室52aに接続される。第2高圧給水加熱器16Bと第3低圧給水加熱器17Aの間に配置された給水配管15、第3低圧給水加熱器17Aと第4低圧給水加熱器17Bの間に配置された給水配管15、第4低圧給水加熱器17Bの第5低圧給水加熱器17Cの間に配置された給水配管15及び第5低圧給水加熱器17Cと第6低圧給水加熱器17Dの間に配置された給水配管15も、第1高圧給水加熱器16Aと第2高圧給水加熱器16Bの間に配置された給水配管15と同様に、上流に位置する給水加熱器の水室52aの上部と、下流に位置する給水加熱器の水室52aの底部に接続される。これらの関係は、要するに図1bにおいて、上流側からの給水を水室52aの室R4に導入し、水室52aの室R3から下流側の給水加熱器の室R4に送り、あるいは最終段では原子炉に送るように接続することである。なお、最上流の第6低圧給水加熱器17Dと復水器11の間に配置された給水配管15は、第6低圧給水加熱器17Dの水室52内の室R4に連絡される。
【0069】
高圧タービン3の抽気点で高圧タービン3に接続された抽気配管20が第1高圧給水加熱器16Aに接続される。抽気配管20は、高圧タービン3の第1段動翼よりも下流に位置した抽気点に設蔵される。抽気配管20は、具体的には、図1bに示すように、第1高圧給水加熱器16Aの水室52に接続され、凝縮した水となって上流側へ流出される。抽気配管20のこの開口は、横置き給水加熱器の場合は水室52の上部に配置されることが好ましい。過熱器34Aに接続されたドレン配管35及び過熱器34Bに接続されたドレン配管39も、抽気配管20と同様に、第1高圧給水加熱器16Aの水室52の上部に接続される。ドレン配管35,39の水室52の上部への接続位置は、凝縮水を溜める上端より上方でこの上端付近に存在する。
【0070】
高圧タービン3と湿分分離過熱器33の間に存在する主蒸気配管6に接続された抽気配管21が第2高圧給水加熱器16Bに接続される。抽気配管21は、高圧タービン3の最終段の動翼より下流で高圧タービン3に接続してもよい。低圧タービン5Bの最上流の抽気点(低圧タービンの第1抽気点)で低圧タービン5Bに接続された抽気配管22が第3低圧給水加熱器17Aに接続される。湿分分離器4に接続されたドレン配管26が第3低圧給水加熱器17Aに接続される。低圧タービン5Bの上流から2番目の抽気点(低圧タービンの第2抽気点)で低圧タービン5Bに接続された抽気配管23が第4低圧給水加熱器17Bに接続される。低圧タービン5Bの上流から3番目の抽気点(低圧タービンの第3抽気点)で低圧タービン5Bに接続された抽気配管24が第5低圧給水加熱器17Cに接続される。低圧タービン5Bの最下流の抽気点(低圧タービンの第4抽気点)で低圧タービン5Bに接続された抽気配管25が第6低圧給水加熱器17Dに接続される。抽気配管21,22、ドレン配管26及び抽気配管23,24,25が、抽気配管20と同様に、該当する給水加熱器の容器に接続される。上記した低圧タービンの第1、第2、第3及び第4の各抽気点は、低圧タービン5Bに設けられた複数の静翼の異なる段数の位置で、低圧タービン5Bのタービンケーシング(図示せず)に設けられる。
【0071】
図2では、低圧タービン5Bが大きく低圧タービン5A,5Cが小さくなっているが、これらの低圧タービンの大きさは同じである。図示されていないが、低圧タービン5A及び5Cに対しても復水器11がそれぞれ設けられており、各復水器11にそれぞれ給水配管15が接続されている。低圧タービン5A,5B及び5Cに対応してそれぞれ設けられた合計3基の復水器11にそれぞれ別々に接続された給水配管15は、第2高圧給水加熱器16Bの上流に位置する合流点で合流して第2高圧給水加熱器16Bに接続される。
【0072】
その合流点よりも上流に配置された、低圧タービン5A,5B及び5Cごとに並列配置された3本の給水配管15のうち、低圧タービン5A及び5Cのそれぞれに対応して配置された各給水配管15にも、低圧給水加熱器である第3低圧給水加熱器17A、第4低圧給水加熱器17B、第5低圧給水加熱器17C及び第6低圧給水加熱器17D、及び復水ポンプ18が、この順序で下流から上流に向って設置されている。このため、低圧タービン5A及び5Cのそれぞれに対応して、第3低圧給水加熱器17A、第4低圧給水加熱器17B、第5低圧給水加熱器17C及び第6低圧給水加熱器17D、及び復水ポンプ18を設置した各給水配管15が、第2高圧給水加熱器16Bより上流に存在する上記の合流点よりも上流に配置されている。
【0073】
低圧タービン5A及び5Cには、低圧タービン5Bと同様に、第1、第2、第3及び第4の各抽気点が設けられる。低圧タービン5Aの第1、第2、第3及び第4の各抽気点には、低圧タービン5Bと同様に、抽気配管22,23,24及び25が接続される。低圧タービン5Aに接続された抽気配管22,23,24及び25は、低圧タービン5Bの場合と同様に、低圧タービン5Aに対応して設けられた第3低圧給水加熱器17A、第4低圧給水加熱器17B、第5低圧給水加熱器17C及び第6低圧給水加熱器17Dの各容器28に接続される。低圧タービン5Cの第1、第2、第3及び第4の各抽気点にも、低圧タービン5Bと同様に、抽気配管22,23,24及び25が接続される。低圧タービン5Cに接続された抽気配管22,23,24及び25は、低圧タービン5Bの場合と同様に、低圧タービン5Cに対応して設けられた第3低圧給水加熱器17A、第4低圧給水加熱器17B、第5低圧給水加熱器17C及び第6低圧給水加熱器17Dの各容器に接続される。
【0074】
次に、上記のように構成された原子力プラントの動作状態を説明する。なお、以下の説明において、第3低圧給水加熱器17A、第4低圧給水加熱器17B、第5低圧給水加熱器17C及び第6低圧給水加熱器17D、抽気配管22,23,24及び25、及び第1、第2、第3及び第4の各抽気点は、特に断りが無ければ、低圧タービン5Bに対応して設けられたそれらを意味している。
【0075】
原子炉2内の炉心(図示せず)には、例えばBWRの場合、再循環ポンプ(図示せず)及びジェットポンプ(図示せず)によって冷却水が供給される。冷却水は炉心内に装荷された複数の燃料集合体(図示せず)に含まれた核燃料物質の核分裂で発生する熱によって加熱され、冷却水の一部が蒸気になる。原子炉2で発生した蒸気は、主蒸気配管6を通って、高圧タービン3及び低圧タービン5A,5B及び5Cにそれぞれ供給される。
【0076】
高圧タービン3から排出された蒸気は、途中で、湿分分離器4により湿分が除去され、過熱器34A,34Bによって過熱される。湿分分離器4により湿分が除去された蒸気の、過熱器34Aでの過熱は、高圧タービン3から抽気された蒸気を、蒸気管42を通して過熱器34Aに供給することによって行われる。過熱器34Aで過熱された蒸気は、高圧タービン3の上流で主蒸気配管6から抽気した、蒸気管42内を流れる蒸気よりも温度が高い蒸気を、蒸気管38を通して過熱器34Bに供給することによって行われる。過熱器34Bで過熱された蒸気の温度は過熱器34Aで過熱された蒸気の温度よりも高くなる。過熱器34Bから排気された蒸気は、低圧タービン5A,5B及び5Cにそれぞれ導かれる。
【0077】
湿分分離器4により除去された湿分は、ドレン水となってドレン配管26に排出されて第3低圧給水加熱器17Aに供給される。蒸気管42を通して過熱器34Aに供給された抽気蒸気は、過熱器34Aで、湿分分離器4で湿分を除去された蒸気を過熱することによって凝縮される。この蒸気の凝縮によって発生した飽和ドレン水は、ドレン配管35を通して第1高圧給水加熱器16Aに供給される。蒸気管38を通して過熱器34Bに供給された抽気蒸気は、過熱器34Bで、過熱器34Aで過熱された蒸気をさらに過熱することによって凝縮される。この蒸気の凝縮によって発生した飽和ドレン水は、ドレン配管39を通して第1高圧給水加熱器16Aに供給される。ドレン配管35,39内を流れるそれぞれのこの飽和ドレン水の温度は、抽気配管20内を流れる抽気蒸気の温度と実質的にほぼ同じである。
【0078】
低圧タービン5A,5B及び5C内の圧力は、高圧タービン3内の圧力よりも低くなっている。高圧タービン3及び低圧タービン5A,5B及び5Cは、蒸気によって駆動され、発電機9を回転させる。これにより、電力が発生する。低圧タービン5A,5B及び5Cから排気された蒸気は、各復水器11で凝縮されて水になる。すなわち、海水が、海水循環ポンプ14の駆動によって海水供給管13Aを通して各復水器11内の各伝熱管12内に供給される。低圧タービン5A,5B及び5Cから排気された蒸気は、それぞれに対応して別々に設けられた各復水器11内の伝熱管12内を流れる海水によって冷却されて凝縮される。蒸気の凝縮により、各伝熱管12内を流れる海水の温度が上昇する。各伝熱管12から排出された海水は、海水排出管13Bを通って海に放出される。
【0079】
各復水器11に別々に接続された各給水配管15に設けられた復水ポンプ18、及び給水ポンプ19がそれぞれ駆動されている。各復水器11で生成された凝縮水は、給水として、これらのポンプによって昇圧され、各給水配管15を通り、第3低圧給水加熱器17Aと第2高圧給水加熱器16Bの間で1本ないしは2本の給水配管15に合流して原子炉2に供給される。3本の給水配管15内を流れる給水は、各低圧タービンに対応してそれぞれ設けられた第6低圧給水加熱器17D、第5低圧給水加熱器17C、第4低圧給水加熱器17B及び第3低圧給水加熱器17Aによって順次加熱される。給水は、第3低圧給水加熱器17Aと第2高圧給水加熱器16Bの間に存在する、3本の給水配管15の合流点よりも下流における1本ないしは2本の給水配管15に設けられた第2高圧給水加熱器16B及び第1高圧給水加熱器16Aによってさらに加熱されて温度を上昇させ、設定温度になった状態で原子炉2に供給される。給水ポンプ19E,19Fも駆動している。
【0080】
給水は、第6低圧給水加熱器17Dにおいて、低圧タービン5Bの第4抽気点から抽気されて抽気配管25を通して供給される抽気蒸気によって加熱される。第6低圧給水加熱器17Dで加熱された給水は、第5低圧給水加熱器17Cにおいて、低圧タービン5Bの第3抽気点から抽気されて抽気配管24を通して供給される抽気蒸気によってさらに加熱される。第5低圧給水加熱器17Cで加熱された給水は、第4低圧給水加熱器17Bにおいて、低圧タービン5Bの第2抽気点から抽気されて抽気配管23を通して供給される抽気蒸気によってさらに加熱される。第4低圧給水加熱器17Bで加熱された給水は、第3低圧給水加熱器17Aにおいて、低圧タービン5Bの第1抽気点から抽気されて抽気配管22を通して供給される抽気蒸気、及び湿分分離器4から排出されてドレン配管26を通して供給される飽和ドレン水によってさらに加熱される。
【0081】
第3低圧給水加熱器17Aで加熱された給水は、第2高圧給水加熱器16Bにおいて、主蒸気配管6から抽気されて抽気配管21を通して供給される抽気蒸気によって加熱される。第2高圧給水加熱器16Bで加熱された給水は、第1高圧給水加熱器16Aにおいて、高圧タービン3の抽気点から抽気されて抽気配管20を通して供給される抽気蒸気、過熱器34Aから排出されてドレン配管35を通して供給される飽和ドレン水、及び過熱器34Bから排出されてドレン配管39を通して供給される飽和ドレン水によって加熱される。原子炉2に供給される給水の温度は、6基の給水加熱器による加熱により、復水器11から出た給水の温度よりも約180℃上昇する。
【0082】
低圧タービン5A及び5Cのそれぞれに対応して設けられた第6低圧給水加熱器17D、第5低圧給水加熱器17C、第4低圧給水加熱器17B及び第3低圧給水加熱器17Aにおいても、上記した各抽気蒸気を用いてそれぞれの給水配管15内を流れる給水が加熱される。
【0083】
次に、図1aに示した伝熱プレート層54の具体的な構成を説明する。図3aに本発明の好適な一実施例である実施例1の伝熱プレート73が積層された伝熱プレート層54の鳥瞰図を示す。この図では、左側の端にSプレート71、右側の端にEプレート72を設置し、この間に複数枚の伝熱プレート73を積層している。この伝熱プレート73は、数10枚から数100枚で1ユニットを構成している。これら伝熱プレート73の間には、高圧に耐えられるように、サポート用リブ付き耐圧プレート74が1枚おきに交互に挟み込まれている。
【0084】
これら各部材のうち、左側端のSプレート71は、図1aの左側管板51に接しており、上下の左右端にそれぞれ孔75,77,78,80を有する。各孔75,77,78,80は、それぞれ管板51を介して図1bの水室52aに区切られた4つの室R1,R2,R3,R4に連通する。従って、流入孔75からは抽気蒸気FA1が胴部50内に流入し、流出孔77からはドレンFA2が胴部50から水室52に流出する。また、流入孔78からは給水FB1が胴部50内に流入し、流出孔80からは高温給水FB2が胴部50から水室52に流出する。
【0085】
右側端のEプレート72は、図1aの右側管板51に接しているが、上下の左右端に孔75,77,78,80を備えていない。これに対し、Sプレート71とEプレート72の間の、複数枚の伝熱プレート73ならびにサポート用リブ付き耐圧プレート74には、Sプレート71の上下の左右端の孔75,77,78,80に対応する位置に孔が設けられている。
【0086】
複数枚の伝熱プレート73ならびにサポート用リブ付き耐圧プレート74は、交互に配置されて数10枚から数100枚で1システムユニット(伝熱プレート層54)を構成しているが、伝熱プレート1ユニット54aとしては、交互に配置された1枚の伝熱プレート73と、2枚のサポート用リブ付き耐圧プレート74で形成する。
【0087】
つまり、伝熱プレート1ユニット54aとしては、最初の1枚のサポート用リブ付き耐圧プレート74と、次の1枚の伝熱プレート73で、孔75と77の間に抽気流路76Cを形成する。また、この1枚の伝熱プレート73と,更に次の1枚のサポート用リブ付き耐圧プレート74とで、孔78と80の間に給水流路79Cを形成する。つまり、2枚のサポート用リブ付き耐圧プレート74で1枚の伝熱プレート73を挟みこむことにより、1枚の伝熱プレート73の表面に抽気流路76Cを形成し、裏面に給水流路79Cを形成する。このため、互いに重なり合うサポート用リブ付き耐圧プレート74と、伝熱プレート73は、交互に上記の流路を形成するように厚みや、大きさが設定されている。
【0088】
図3bは、図3aの構造としたときに抽気流路76Cが形成される部位を示したものであり、図3Cは図3aの構造としたときに給水流路79Cが形成される部位を示したものである。要するに、伝熱プレート73の一方面側に抽気流路76Cが形成されるときに、その反対面側に給水流路79Cが形成されるように成し、かつ抽気流路76Cと給水流路79Cは流れる方向が互いに逆方向とされている。
【0089】
サポート用リブ付き耐圧プレート74は、上記の流路を形成するために伝熱プレート73の間の間隔を規定する目的を有する。また、この目的以外に、伝熱プレート73を挟んだ二流体の差圧で薄いプレートが変形しないように、微少セル化することで面圧を小さくするため、周辺のフレーム以外に内部にある中央部に少なくとも1つ以上のサポート用リブ74aを設置している。また、リブの向きは流動損失を低減するため、流体の流れ方向にほぼ並行となるのが望ましい。これら複数の伝熱プレート73及びサポート用リブ付き耐圧プレート74を交互に設置して、両側からSプレート71及びEプレート72で挟み込む。
【0090】
もし、座屈現象のように大変形しない範囲であれば、Sプレート71とEプレート72で挟まれた熱交換要素の長さは2〜3m程度となる場合もある。このように、熱交換要素としての積層構成は実に簡単である。また、オーバーホールして分解・点検、清掃なども容易である。さらに、初期設計で決められた伝熱面積の枚数から運転条件などの変更により熱交換仕様を変更する場合、サポート用リブ付き耐圧プレート74と伝熱プレート73の枚数を適宜必要枚数まで増やせば、交換熱量の変更に応じて改造作業が容易となる。
【0091】
この時、これら多数のプレートの接合法には、次の3種類が考えられる。まず、サポート用リブ付き耐圧プレート74が塑性変形する材料で、シール用に両側のS及びEプレートをボルトのようなもので締め付けることにより、それ自身の材料が変形してシールする方法である。次に、S及びEプレート、伝熱プレートそしてサポート用リブ付き耐圧プレート全体を加熱して、約1000℃程度で溶融するロー付け工法とする。最後に、ロー付け接合の代わりにこれらを溶接接合とする工法もある。
【0092】
次に、それぞれの流体の流れ方を説明する。例えば、同じSプレート71から入って出る場合は、抽気は流入孔75から入って、左下端部の流出孔77から出る。給水は流入孔78から入って、右上端部の流出孔80から出る。流れ方は、伝熱プレート上に開けられた孔と流路をコントロールするサポート用リブ74aの形状、そしてそれらを積層する方向によって種々の組合せがある。このようなユニットあるいはスタックを1ブロックとして、熱交換に必要なブロック数をマルチ化して積層すればよい。
【0093】
なお、それぞれの流体の流れ方に関連し、図1の給水加熱器の場合には給水加熱器の一方端に抽気と給水を導入し、かつ排出している構造を説明したが、これは任意の配置とできることは言うまでもない。例えば、図1aの左側水室52aから導入して、右側の水室52bに抜けるものであってもよい。あるいは、抽気と給水が逆方向に流れるものであってもよい。要は、伝熱プレート層54の部分においては、図3aのように伝熱プレート73の両面に抽気流路76Cと、給水流路79Cが形成されるような関係を保てれば、その流体の前後がどのように流路形成されてもよい。
【0094】
図4に本発明の好適な一実施例である実施例1の伝熱プレート73の概略図を示す。これは、1枚の伝熱プレート73を正面から見た図である。伝熱プレート73の上下左右の四隅には、抽気の流入・流出孔75,77、給水の流入・流出孔78,80が開いている。図3b、図3cに示したように、伝熱プレート73は一方面に抽気流路76Cを形成し、他方面に給水流路79Cを形成する。
【0095】
図4aは、伝熱プレート73に抽気流路76Cを形成する為の面形状の一例を、図4bは、伝熱プレート73に給水流路79Cを形成する為の面形状の一例をそれぞれ示している。この図に明らかなように、抽気の場合の流入・流出孔75,77の間の最短経路と、給水の場合の流入・流出孔78,80の間の最短経路には、凸状の波板部73aが形成されている。このため、抽気流路76Cとしては、流路抵抗の少ない流入・流出孔75,77に近い側に多くの抽気が流れ、給水流路79Cとしては、流路抵抗の少ない流入・流出孔78,80に近い側に多くの給水が流れることになる。
【0096】
この結果、1枚の伝熱プレート73の表面(図4a)では、流入・流出孔75,77に近い側に多くの抽気が流れてこの部分を加熱し、裏面(図4b)では、流入・流出孔78,80に近い側に多くの給水が流れてこの部分を冷却する。そのため、1枚の伝熱プレート73を介在して、表面の抽気から裏面の給水に対する熱交換が効率よく実施される。
【0097】
この熱交換を効率よく行わせるためには、抽気や給水を最短経路で通さないことであり、この目的のために面の半分には、プレス加工により平板上に緩やかな波板状73aの流路を与えている。波板の全体の構成は、中央部が凸の緩やかな山型形状73aになっている。この形状は、流れに大きな流動損失を与えずに、波板による伝熱促進効果を狙ったものである。このピッチ、流れ方向に対する角度などの主要な設計因子は、主に熱交換する流体の圧力損失と熱伝達率によって決められており、これら必要な性能に応じて、適宜、波板の形状・寸法を採用している。
【0098】
図5に本発明の好適な一実施例である実施例1のサポート用リブ付き耐圧プレートの概略図を示す。図5aはサポート用リブ付き耐圧プレートの平面図であり、図5bはそのA−A断面図を示している。サポート用リブ付き耐圧プレート74は、伝熱プレート73の間の間隔を規定する以外に、伝熱プレートを挟んだ二流体の差圧で薄いプレートが変形しないように、周辺のプレート以外に内部にある中央部に少なくとも1つ以上のサポート用リブ74aが設置されている。また、リブの向きは流体の流れ方向にほぼ並行となるのが望ましい。この図では、中央部に複数本のサポート用リブ74aを設置している。これは、他の実施例に示したように、他のいくつかの実施例が考えられる。
【0099】
図6に本発明の好適な一実施例である実施例1の伝熱プレートの流路の断面図を示す。この図では、給水加熱器の熱交換を例としている。左下から給水FB1が流れ、左上から抽気蒸気FA1が流れる対向流熱交換方式の場合を示している。この断面図からも明らかなように、波板73aは緩やかなサインカーブの形状を有し、ほとんど同位相で繰り返されている。従って、それら流路の幅は流れ方向にほとんど変化しない。
【0100】
そこで、給水と抽気蒸気が熱交換する場合、給水FB1は入口から流れ方向に沿って熱交換して顕熱により温度上昇して昇温するだけである。一方、抽気蒸気FA1は飽和蒸気または湿り蒸気で流れてきて、熱交換しながら飽和の凝縮水を生成することになる。ここで、蒸気が凝縮されて飽和液になる場合、大きな体積変化が生じるため、相変化に伴うハンマーリング現象を生じる可能性がある。これにより、急激な衝撃圧力が発生する場合がある。
【0101】
このような凝縮する側の流体の体積変化による急激な衝撃圧力の発生による波板への荷重を低減するため、蒸気側の流路の体積を給水側の約2倍まで拡大して、凝縮ハンマーリング現象を緩和する方法をとる。そこで、本発明では波板の流路幅の比が次の関係を満足する範囲以内とする。
[数1]
1≦δ/δ≦2 (1)
但し、δは凝縮する流体(抽気)が通過する波板の流路幅、δは凝縮しない流体(給水)が通過する波板の流路幅を示す。
【0102】
また、熱交換現象を考えると、それぞれの流体の熱伝達率と波板厚さtにより決まる熱抵抗Tから総括伝熱係数Kが決まる。ここで、給水側の強制対流熱伝達率hに比べて、抽気蒸気側の凝縮熱伝達率hは相変化による潜熱移動があるため、約1桁以上性能が大きくなる。従って、給水側の熱伝達率hの最低限の値を確保するように設計するのが望ましい。この場合、波板厚さtによる熱抵抗も小さくするため、板厚は厚くても1mmから2mm程度の範囲にする必要がある。
【0103】
一方、熱交換する二流体にはそれぞれ供給される圧力条件があり、その差圧ΔPに耐えうる板厚tが必要となる。ここで、もし図3及び図5に示すサポート用リブ付き耐圧プレート74がなければ、この大きな圧力差による平板の変形は厳しい状態となる。それに比べて、本発明では図示したように、伝熱プレートの平板を細かく分割し、平板で受ける差圧による変形を抑制することができるため、伝熱プレートの板厚tを薄く保持することができる。
【0104】
例えば、抽気蒸気の圧力条件としては、1.3MPaから最大2.4MPaの範囲となる。一方、給水の圧力は0.5MPaから7MPaまでの広範囲となる。そこで、各給水加熱器において、各種流体の差圧(0.1〜1.5MPa)に対して適切に伝熱プレートの設計仕様を決定するには、熱交換する二流体の差圧ΔPと熱交換する二流体を挟んだ波板厚tの関係として、特に総括伝熱係数が1kW/mK以上となるように次の範囲を満足する必要がある。
[数2]
1x10≦ΔP/t≦1x10 MPa/m (2)
発明者らは、本実施例で用いたシェル・プレート式給水加熱器である第1高圧給水加熱器16Aの熱交換特性を検討した。この検討結果を、図7及び図8を用いて以下に説明する。この検討においては、従来の伝熱管を用いた間接式給水加熱器の熱交換特性も併せて検討した。
【0105】
図7aは第1高圧給水加熱器16Aに従来のシェル・チューブ式給水加熱器を用いた熱交換を示し、図7bはシェル・プレート式給水加熱器を用いた熱交換を示している。図7aの横軸は第1高圧給水加熱器16Aの給水の流れ方向における位置X1を示している。具体的には、位置X1はシェル・チューブ式給水加熱器の伝熱管の入口端からの位置である。図7bの横軸は給水の流れ方向における位置X2を示している。図7a及び図7bの縦軸は温度を示している。
【0106】
第1高圧給水加熱器16Aがシェル・チューブ式給水加熱器(図7a)では、熱交換する二流体の温度差を表すターミナル温度差TD及びドレーンクーラー温度差DCが両方とも大きな値である。これに対して、シェル・プレート式給水加熱器では、ターミナル温度差TD及びドレーンクーラー温度差DCともに小さくなっている。これは、二流体が熱交換する際、熱を伝えるために熱抵抗となる要素の大小の影響を受けている。
【0107】
第1高圧給水加熱器16Aがシェル・チューブ式給水加熱器の場合の熱抵抗回路網(図7a参照)は、伝熱管を有するために3種類の熱抵抗(1/h、t/λ、1/h)から構成されるのと同様に、シェル・プレート式給水加熱器からなる熱抵抗回路網(図7b参照)も3種類の熱抵抗(1/h、t/λ、1/h)からなる。しかし、波板間を流れることにより乱流促進効果が発生し、シェル・プレート式給水加熱器の場合は、熱伝達率h及びhともに大きくなる。したがって、第1高圧給水加熱器16Aにおける熱伝達率、すなわち熱通過率が従来のシェル・チューブ式給水加熱器よりも大きくなるので、第1高圧給水加熱器16Aにおけるターミナル温度差TD及びドレーンクーラー温度差DCがともに小さくなる。
【0108】
図8はシェル・プレート式給水加熱器の熱交換性能と空間体積の関係図を示す。図8の横軸は給水加熱器の容積Vを示し、縦軸は圧損ΔPに対する交換熱量Qの比を示している。
【0109】
この解析結果によれば、図7aのシェル・チューブ式給水加熱器の場合の給水加熱器の容積Vを1.0、圧損ΔPに対する交換熱量Qの比を1.0として、標準化した場合に比べて、本発明の場合は、空間容積を約1/5に減少することができる。その上、波板の緩やかな形状を利用することで大きな伝熱促進効果を期待できるため、圧損は現状並みで、熱交換性能が約1.2倍以上の性能となる。また、分解・点検のスペースも大幅に縮小できるメリットもある。
【0110】
一方、参考として、空間容積を約1/8に減少することができて、熱交換性能も本発明と同じ程度確保できるプレート・フィン式も図示した。この結果では性能的にはプレート・フィン式に利があるが、この方式は100℃以下、0.2MPa以下と低温・低圧での使用に限られており、発電プラントで使用する流体条件には合致しない。従って、本発明の特徴は、高温・高圧条件で使用しても、コンパクトで高性能な熱交換性能を確保することができる点である。
【0111】
以上に述べた第1高圧給水加熱器16Aにおける容積の約1/5への低減、及び熱交換性能の約1.2倍向上は、沸騰水型原子力発電プラント1における残りの5基の給水加熱器16B,17A〜17Dでも達成することができる。
【0112】
既設の沸騰水型原子力発電プラントでは、設置されている複数のシェル・チューブ式給水加熱器をなんら変更せずに、コンパクトで高性能なシェル・プレート式給水加熱器を一基追設するだけで、原子炉2に供給される給水の温度を20℃程度上昇させることもできる。
【0113】
給水配管15に設けられた6基の給水加熱器が、全て、シェル・プレート式給水加熱器である場合、最終段の第1高圧給水加熱器16Aから原子炉2に供給される給水の温度が、6基の給水加熱器が、全て、シェル・チューブ式給水加熱器である場合に比べて、前者の熱交換性能は後者の熱交換性能の約1.2倍になる。本実施例は、6基のシェル・プレート式給水加熱器を給水配管15に設けているので、給水配管15が設置されるタービン建屋をコンパクト化することができる。
【0114】
また、本実施例は、容器50内の波板を介して給水と蒸気とが安定に熱交換しているので、前述した蒸気インジェクタを用いた場合に生じる給水の流動が不安定になることを防止することができる。
【0115】
本実施例では、高圧タービン3及び低圧タービン5A、5B,5C等から抽気した抽気蒸気を、シェル・プレート式給水加熱器である高圧給水加熱器16A,16B及び低圧給水加熱器17A〜17Dに供給してそれぞれの容器50内で給水と熱交換させて給水を加熱しているので、原子炉2で発生した蒸気の熱が回収されて原子炉2に供給される給水の温度を上昇させることができる。このため、沸騰水型原子力発電プラント1の熱効率が向上する。特に、容器50内で容積当たりの伝熱面積が大きくなるコンパクトな伝熱プレート要素で給水と蒸気を熱交換させるので、熱交換を行う両方の流体における温度差が小さくても、大きな交換熱量を確保することができる。例えば、現状のシェル・チューブ式給水加熱器を本発明のシェル・プレート式給水加熱器に全て変えることで、原子炉へ供給する給水温度を最低でも235℃以上、最大250℃以上まで上昇することができるため、熱効率を約0.3%程度向上させることができる。
【0116】
このように本実施例では、全ての給水加熱器で給水と抽気蒸気の流体間で熱交換を行うため、全ての給水加熱器における熱交換性能が高性能になる。このため、本実施例では、全ての給水加熱器がシェル・チューブ式給水加熱器である従来の沸騰水型原子力発電プラントのように、給水加熱器に供給する抽気蒸気の流量を多くする必要が無く、少ない抽気蒸気でも給水温度を十分上昇させることができる。
【0117】
この結果、沸騰水型原子力発電プラント1では、原子炉の定格出力運転では、炉水と主蒸気のエンタルピ差が小さくなった分だけ、主蒸気流量が増加する。全ての給水加熱器がシェル・チューブ式給水加熱器である従来の沸騰水型原子力発電プラントに比べて、沸騰水型原子力発電プラント1では、高圧タービン3及び低圧タービン5A,5B,5Cに供給される蒸気量が増加する。したがって、本実施例では、高圧タービン3及び各低圧タービンでの蒸気による仕事量が増大し、電気出力を向上させることができる。これは、沸騰水型原子力発電プラント1において、定格の原子炉出力をさらに増大させる出力向上運転を実質的に行っていることになる。
【0118】
本実施例は、シェル・プレート式給水加熱器である高圧給水加熱器16A,16B及び低圧給水加熱器17A〜17Dを給水配管15に設置して、高圧タービン3あるいは低圧タービンからの抽気蒸気を給水に熱交換させて凝縮させる凝縮熱伝達により、抽気蒸気と給水の間で効率の良い熱交換を行うことができる。このため、少ないエネルギーで給水の温度を上昇することができる。各低圧タービンに供給される蒸気の温度が上昇して低圧タービン内での蒸気の膨張量が増大するので、低圧タービンでの蒸気による仕事量が増加する。これによっても、沸騰水型原子力発電プラント1の電気出力がさらに向上する。
【0119】
本実施例では、高圧タービン及び低圧タービンから抽気されて該当するシェル・プレート式給水加熱器に供給される抽気蒸気の流量が少なくて済むため、高圧タービン及び低圧タービンで仕事をする主蒸気流量が増加し、電気出力が向上する。さらに、蒸気発生装置である原子炉2で発生した熱を沸騰水型原子力発電プラント1内で有効に利用することができ、復水器11から海水排出管13Bを通して海に排出される温排水の熱量を低減することができる。したがって、再生サイクルの沸騰水型原子力発電プラント1における熱効率をさらに向上させることができる。
【0120】
次に、湿分分離過熱器に、本発明のシェル・プレート式給水加熱器を適用した場合のシステム構成の一例を、図9を用いて具体的に説明する。図9に示すように、湿分分離過熱器33は、横置き式の容器41内に、主要機器として、湿分分離器43、第1段過熱器34A及び第2段過熱器34Bを設置する。湿分分離器43は容器内の下部へY字型に配置する。
【0121】
ここで、湿分分離器43は容器41の下部から流入してきた湿り蒸気40a中の湿り液滴を除去する機構を有するものである。その上流には、蒸気均一流入機構42を設置することで、下から流入した蒸気40aが、Y字型に配置された湿分分離器43に均一に流入するように整流を行う。
【0122】
湿分分離器43で湿分が除去され、湿分分離器43から排出された主蒸気流40は、次に、容器41内の中央部の上流側に配置された第1段過熱器34Aに導かれ、高圧タービンから抽気された蒸気を用いて過熱される。また、容器41内の上部の下流側に配置された第2段過熱器34Bは、第1段過熱器34Aで過熱された蒸気を、高圧タービンより上流の主蒸気配管から抽気された蒸気49aを用いて過熱する。そして、第2段過熱器34Bで過熱された蒸気40bが低圧タービンに供給される。
【0123】
これに対し、主蒸気流40を過熱するための抽気蒸気流49aは、入り口側蒸気室47に導かれ、第1段過熱器34A及び第2段過熱器34Bでの熱交換の後に出口側蒸気室48から飽和凝縮ドレーン水49bとして排出される。
【0124】
図9の湿分分離過熱器の場合に、図1の給水加熱器とは、加熱流体、被加熱流体の導入、排出位置は相違しているが、ここで、第1段過熱器34A及び第2段過熱器34Bもまた、シェル・プレート式熱交換器であり、伝熱プレート層54で構成される。なお、これら伝熱プレート層54と容器41の間を隔離するため、伝熱プレート層54の外部にはガイド機構46を設置している。これらの間には、中間媒体を封入しても良い。
【0125】
以上、BWRあるいはABWRの沸騰水型原子力発電プラントの熱効率を向上させるために、湿分分離器の湿分分離効率を向上し、さらに湿分分離過熱器をコンパクトで高性能化することができるため、再熱サイクル向上によりプラント効率は向上する。また、従来の湿分分離過熱器の容器が小型化するため、湿分分離過熱器を設置する際の建屋全体へのコンパクト化に対しても寄与することができる。
【0126】
本実施例は、第1段過熱器及び第2段過熱器に従来の伝熱管を設置せずに、シェル・プレート式熱交換器である伝熱プレートを設置しているため、過熱用熱交換要素が大きくならない。それゆえ、上記の給水加熱器と同様に、湿分分離過熱器の熱交換性能が向上する。このため、沸騰水型原子力発電プラントの熱効率を向上させることができる。
【0127】
これにより、低圧タービンの翼のエロージョンなどによる健全性を確保することができると同時に、BWRプラントの熱効率を向上させることも可能になる。
【0128】
本実施例は、炉心に冷却水を供給するポンプとしてインターナルポンプを用いた改良型沸騰水型原子力発電プラント(ABWR発電プラント)にも適用することができる。後述の実施例2から実施例4も、ABWR発電プラントに適用することができる。
【0129】
本実施例の沸騰水型原子力発電プラント1では、伝熱管を有するシェル・チューブ式熱交換器を用いた給水加熱器ではなく、伝熱管を設けていないシェル・プレート式熱交換器、すなわち、容器50内で、波板プレートを介して給水ポンプで供給される給水(サブクール水)と高圧タービン3からの抽気蒸気を凝縮させて熱交換させる給水加熱器(例えば、第1高圧給水加熱器16A)を用いることができる。
【実施例2】
【0130】
図10に、本発明の他の実施例である実施例2の伝熱プレートの概略図を示す。1枚の伝熱プレート73を正面から見た図である。上下左右の四隅に、加熱流体FAと被加熱流体FBの流入・流出孔(75,77,78,80)が開いている。それ以外の面には、プレス加工により平板上に緩やかな波板状の流路73bを与えている。波板の全体の構成は、中央部が凹の緩やかな山型になっている。これは、図4と反対の形状になっている。この形状も、流れに大きな損失を与えずに、波板による伝熱促進効果を狙ったものの一つである。このピッチ、流れ方向に対する角度などの主要な設計因子は、主に熱交換する流体の圧力損失と熱伝達率によって決められており、これら必要な性能に応じて、適宜、波板の形状・寸法を採用している。
【実施例3】
【0131】
図11に、本発明の他の実施例である実施例3のサポート用リブ付き耐圧プレート74の概略図を示す。図5に示した最も簡単な中央部に多数本設置したサポート用リブ74aに比べて、図11ではネクタイ型のサポート用リブ74bが設置されている。これにより、伝熱プレート73の耐圧強度の向上を図ると同時に、熱交換する流体の流れを大幅に変更することがないため、圧損及び熱伝達率に大きな影響を及ぼすことがないなどの特徴もある。
【0132】
なお、図5に示す他の実施例以外にも、伝熱プレートの変形を防止するように、微少セルに分割するサポート用リブの例は多数ある。
【実施例4】
【0133】
本発明のシェル・プレート式熱交換器の熱交換要素は、発電プラント内において、湿分分離過熱器MSHや給水加熱器以外に、低温の海水と低圧タービンからの低圧の主蒸気が凝縮を伴う熱交換する復水器などの熱交換器にも用いてもよい。
【0134】
この場合に、熱交換器である復水器は、蒸気タービンから排出された蒸気を加熱流体とし、冷却水である海水を被加熱流体として熱交換を行うように構成される。この場合にも、熱交換器の装置構成は、図1、あるいは図3の熱交換の思想を利用して実現することが可能である。
【実施例5】
【0135】
本発明のシェル・プレート式熱交換器の熱交換要素は、原子力発電プラント内において、湿分分離過熱器MSHや給水加熱器以外に、除熱手段として、動的な低圧注水系の除熱運転モードである残留熱除去系(RHR)、またはポンプなどの駆動源なしで自然力により蒸気を凝縮するシステムである非常用復水器(IC)及び静的格納容器冷却系(PCCS)、あるいは補機冷却器などの熱交換器にも用いてもよい。
【0136】
なお、本実施例は沸騰水型軽水炉プラントを例にしたが、本発明は加圧水型軽水炉の2次系やその他の形式の原子力発電システムにも適用可能である。また、原子力発電以外の化石燃料を用いた発電プラントの各種熱交換器に適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明は、沸騰水型原子力発電プラント及び加圧水型原子力プラント等の原子力発電プラント、及び火力発電プラントのような発電プラントに適用することができる。
【符号の説明】
【0138】
1…沸騰水型原子力発電プラント
2…原子炉
3…高圧タービン
4…湿分分離器
5…低圧タービン
6…主蒸気配管
8…主蒸気調節弁
9…発電機
10…主軸
11…復水器
12…伝熱管
13B…海水排出管
14…海水循環ポンプ
15…給水配管
16…高圧給水加熱器
17…低圧給水加熱器
18…復水ポンプ
19…給水ポンプ
20〜25…抽気配管
26,35,39…ドレン配管
33…湿分分離過熱器
34A…第1段過熱器
34B…第2段過熱器
40…主蒸気流
41…胴
42…蒸気均一流入機構
46…伝熱プレート層ガイド
47…入口側蒸気室
48…出口側蒸気室
49…抽気蒸気流
49a…抽気蒸気流入
49b…抽気蒸気流出
50…胴
51…管板
52…水室
53…仕切り板
54…伝熱プレート層
54a…伝熱プレート1ユニット
54b…伝熱プレート層ガイド
55…中間媒体
56…凝縮水ポット
71…Sプレート
72…Eプレート
73…伝熱プレート
73a…波型形状
74…サポート用リブ付き耐圧プレート
75…抽気蒸気流入孔
77…抽気蒸気流出孔
78…給水流入孔
80…給水流出孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水を導入して蒸気を発生する蒸気発生器と、該蒸気発生器からの蒸気を導入して発電機を駆動する蒸気タービンと、該蒸気タービンから排出された蒸気を復水する復水器と、該復水器の復水を前記給水として前記蒸気発生器に送ると共に、前記給水もしくは前記蒸気を被加熱流体とし、前記蒸気タービンからの抽気を加熱流体として熱交換を行う熱交換器を備える発電プラントにおいて、
前記熱交換器は、耐圧用のシェル内に伝熱プレートと耐圧プレートを交互に積層したユニットを固定し、耐圧プレートに挟まれた伝熱プレートの各面に前記被加熱流体の流路と、前記加熱流体の流路を形成して熱交換を行うことを特徴とするシェル・プレート式熱交換器を備えた発電プラント。
【請求項2】
請求項1記載のシェル・プレート式熱交換器を備えた発電プラントにおいて、
前記伝熱プレート各面の流路には、波形形状の波板が形成されていることを特徴とするシェル・プレート式熱交換器を備えた発電プラント。
【請求項3】
請求項2記載のシェル・プレート式熱交換器を備えた発電プラントにおいて、
前記熱交換器での熱交換により凝縮現象を伴う場合、凝縮する流体が通過する前記伝熱プレートの波板の流路幅をδ、凝縮しない流体が通過する前記伝熱プレートの波板の流路幅δとしたとき、波板の流路幅の比が次の関係を満足する範囲であることを特徴とするシェル・プレート式熱交換器を備えた発電プラント。
1≦δ/δ≦2
【請求項4】
請求項2または請求項3記載のシェル・プレート式熱交換器を備えた発電プラントにおいて、
前記伝熱プレートにおいて熱交換する二流体の差圧ΔPと、前記伝熱プレートの波板の厚みtが、次の関係を満足する範囲であることを特徴とするシェル・プレート式熱交換器を備えた発電プラント。
1x10≦ΔP/t≦1x10 MPa/m
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のシェル・プレート式熱交換器を備えた発電プラントにおいて、
前記伝熱プレートを挟む耐圧プレートが少なくとも4角形の4辺のフレームをリブとし、その内部に流体の流れとほぼ並行に少なくとも1つ以上の中間サポート用リブを設置したことを特徴とするシェル・プレート式熱交換器を備えた発電プラント。
【請求項6】
給水を導入して蒸気を発生する蒸気発生器と、該蒸気発生器からの蒸気を導入して発電機を駆動する蒸気タービンと、該蒸気タービンから排出された蒸気を復水する復水器と、該復水器の復水を加熱する給水加熱器と、該給水加熱器において加熱された給水を前記蒸気発生器に送るようにされた発電プラントにおいて、
前記給水加熱器は、前記復水器からの復水を被加熱流体とし、前記蒸気タービンからの抽気を加熱流体として熱交換を行う熱交換器であって、該熱交換器は、耐圧用のシェル内に伝熱プレートと耐圧プレートを交互に積層したユニットを固定し、耐圧プレートに挟まれた伝熱プレートの各面に前記被加熱流体の流路と、前記加熱流体の流路を形成して熱交換を行うことを特徴とするシェル・プレート式熱交換器を備えた発電プラント。
【請求項7】
請求項6記載のシェル・プレート式熱交換器を備えた発電プラントにおいて、
前記給水加熱器は、蒸気発生器と復水器の間に複数台設置され、このうちのすくなくとも1台の給水加熱器は、前記シェル・プレート式熱交換器とされることを特徴とするシェル・プレート式熱交換器を備えた発電プラント。
【請求項8】
請求項6または請求項7記載のシェル・プレート式熱交換器を備えた発電プラントにおいて、
前記シェル・プレート式熱交換器で構成された給水加熱器は、その内部に前記ユニットを固定するガイド機構を設置し、シェル内と前記ガイド機構との間に中間媒体を封入したことを特徴とするシェル・プレート式熱交換器を備えた発電プラント。
【請求項9】
請求項6から請求項8のいずれかに記載のシェル・プレート式熱交換器を備えた発電プラントにおいて、
前記シェル・プレート式熱交換器で構成された高圧及び低圧給水加熱器を設置し、原子炉へ供給する給水温度を最低でも235℃以上に上昇し、熱効率を約0.1%以上向上させることを特徴とするシェル・プレート式熱交換器を備えた発電プラント。
【請求項10】
給水を導入して蒸気を発生する蒸気発生器と、該蒸気発生器からの蒸気を導入して発電機を駆動する蒸気タービンと、該蒸気タービンから排出された蒸気を復水する復水器と、該復水器の復水を前記給水として前記蒸気発生器に送ると共に、前記蒸気タービンを高圧タービンと低圧タービンとで構成し、高圧タービンから排出された蒸気を、湿分分離器と過熱器で構成される湿分分離過熱器を介して前記低圧タービンに導入するようにされた発電プラントにおいて、
前記湿分分離過熱器の過熱器は、前記高圧タービンから排出された蒸気を被加熱流体とし、前記蒸気タービンからの抽気を加熱流体として熱交換を行う熱交換器であって、該熱交換器は、耐圧用のシェル内に伝熱プレートと耐圧プレートを交互に積層したユニットを固定し、耐圧プレートに挟まれた伝熱プレートの各面に前記被加熱流体の流路と、前記加熱流体の流路を形成して熱交換を行うことを特徴とするシェル・プレート式熱交換器を備えた発電プラント。
【請求項11】
請求項10記載のシェル・プレート式熱交換器を備えた発電プラントにおいて、
前記湿分分離過熱器の過熱器は、第1段過熱器とその後流側の第2段過熱器とで構成され、第1段過熱器には前記高圧蒸気タービンからの抽気を加熱流体として与え、第2段過熱器には前記高圧蒸気タービンに流入前の蒸気を加熱流体として与えることを特徴とするシェル・プレート式熱交換器を備えた発電プラント。
【請求項12】
請求項10または請求項11記載のシェル・プレート式熱交換器を備えた発電プラントにおいて、
前記湿分分離過熱器内に設置した過熱器に、前記ユニットを固定するガイド機構を設置し、シェル内と前記ガイド機構との間に中間媒体を封入したことを特徴とするシェル・プレート式熱交換器を備えた発電プラント。
【請求項13】
給水を導入して蒸気を発生する蒸気発生器と、該蒸気発生器からの蒸気を導入して発電機を駆動する蒸気タービンと、該蒸気タービンから排出された蒸気を海水で冷却して復水とする復水器と、該復水器の復水を給水として前記蒸気発生器に送るようにされた発電プラントにおいて、
前記復水器は、前記蒸気タービンから排出された蒸気を加熱流体とし、前記海水を被加熱流体として熱交換を行う熱交換器であって、該熱交換器は、耐圧用のシェル内に伝熱プレートと耐圧プレートを交互に積層したユニットを固定し、耐圧プレートに挟まれた伝熱プレートの各面に前記被加熱流体の流路と、前記加熱流体の流路を形成して熱交換を行うことを特徴とするシェル・プレート式熱交換器を備えた発電プラント。
【請求項14】
被加熱流体と加熱流体の間で熱交換を行う熱交換器であって、該熱交換器は、耐圧用のシェル内に伝熱プレートと耐圧プレートを交互に積層したユニットを固定し、耐圧プレートに挟まれた伝熱プレートの各面に前記被加熱流体の流路と、前記加熱流体の流路を形成して熱交換を行うことを特徴とするシェル・プレート式熱交換器。
【請求項15】
原子力発電プラントの除熱手段として、動的な低圧注水系の除熱運転モードである残留熱除去系の熱交換器として使用することを特徴とする請求項14に記載のシェル・プレート式熱交換器。
【請求項16】
原子力発電プラントの除熱手段として、ポンプなどの駆動源なしで自然力により蒸気を凝縮するシステムである非常用復水器として使用することを特徴とする請求項14に記載のシェル・プレート式熱交換器。
【請求項17】
原子力発電プラントの除熱手段として、ポンプなどの駆動源なしで自然力により蒸気を凝縮するシステムである静的格納容器冷却系の熱交換器として使用することを特徴とする請求項14に記載のシェル・プレート式熱交換器。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−127548(P2012−127548A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277681(P2010−277681)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】