説明

シェーディング補正方法及びシェーディング補正装置

【課題】 複数の発光部を有する光源手段を用いた光走査装置のシェーディング特性を迅速に得て、複数の発光部のシェーディング補正データが容易に得られ複数の光束で被走査面を均一の光強度で走査することができるシェーディング補正方法を得ること。
【解決手段】 画像情報を形成する光走査装置における被走査面の有効走査範囲内のシェーディング特性を光量測定手段で測定し、測定したシェーディング特性を用いて光束毎に被走査面の有効走査範囲内に入射する光束の光強度が均一となるためのシェーディング補正データを複数の発光部毎に求め、複数の発光部毎に求めたシェーディング補正データを用いて複数の発光部から放射される光束の光強度を調整するシェーディング補正方法であって、複数の発光部毎のシェーディング補正データを前記光源手段が有する複数の発光部の数よりも少ない数のシェーディング特性より演算して求めること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシェーディング補正方法及びシェーディング補正装置に関し、電子写真プロセスを有するレーザービームプリンタ(LBP)やデジタル複写機、マルチファンクションプリンタ(多機能プリンタ)等の光走査装置に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりレーザービームプリンタ(LBP)等に用いられる光走査装置においては、光源手段から画像信号に応じて変調された光束が放射される。そして光変調された光束をポリゴンミラーから成る光偏向器により周期的に偏向させ、fθ特性を有する結像光学系を介して被走査面としての感光体上を光走査して画像形成を行っている。光偏向器で偏向され結像光学系を透過した光束は、被走査面において走査速度がほぼ一定になるように補正さていれる。しかしながら、被走査面に入射する光束の光強度は像高(走査位置)によって強弱が生じている。
【0003】
この理由は光源手段から出射した光束が被走査面に到達するまでの間に通過又は反射する結像レンズやミラー等の光学素子の透過率や反射率が光束の入射角によって異なるためである。また、結像光学系の厚みが光束の入射位置によって異なること、そして被走査面上での光束の等速性が結像光学系により補正しきれなく、不等速になったこと等が原因となっている。
【0004】
以下、このような被走査面上の像高に入射するときの光束の光強度の強弱(差)をシェーディング(シェーディング特性)と呼ぶ。このシェーディングは画像形成の際に主走査方向の画像濃度に影響を与える。従来より、このときのシェーディングを補正する補正手段を設けた光走査装置が知られている(特許文献1)。
【0005】
特許文献1のレーザ露光装置では、感光体面上のシェーディング特性を測定する光量測定部と、光源手段から出射される光束の光強度を補正する光強度補正部を用い、シェーディング特性の測定結果に基づいてシェーディングを補正している。特許文献1では被走査面上に入射する光束の光強度が最も低い像高を基準として、他の像高の光量の比率をシェーディング補正データとして求めている。
【0006】
また近年、光走査装置に用いられる光源手段として端面発光型レーザと比較し、格段に発光部が多く、2次元並列集積化、発光部のレイアウトが容易である垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)が用いられている。これを用いると被走査面を複数の光束で同時に走査することができて、画像形成をより光束に行うことが容易となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−5119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
光源手段の発光部が増加すると、被走査面を一度の走査で複数の走査線(画像)を形成することができる。光源手段としての複数の発光部を有する垂直共振器型面発光レーザは構成上、個々の発光部の偏光方向を揃えることが困難である。またこのことによりシェーディング特性は発光部により大きくばらつく傾向がある。例えば、偏光方向が数度傾きをもつと、シェーディング特性も偏光方向の傾き量に応じて変化してくる。
【0009】
その結果、被走査面におけるシェーディング特性を補正するため、被走査面に入射する光束の光量測定を各発光部を1つずつ発光させ、その都度被走査面上での入射光束の光量(光強度)を測定している。例えば8つの発光部を有する光源手段を用いた光走査装置においては8回のシェーディング特性の測定を行ない、8つのシェーディング特性の測定データを基にシェーディング補正を行なっている。
【0010】
このため、シェーディング補正を行なうのに多大な時間を要していた。また近年、画像形成の更なる高精細化が求められているため、更に発光部が多くなる場合は、発光部の数に応じた膨大な測定時間を要することとなる。特許文献1においては、複数の発光部を有する光源手段を用いた光走査装置のシェーディング特性の測定方法、測定回数に関しては何ら記載されていない。そして更には複数の発光部を有する光源手段を用いた光走査装置には対応していない。
【0011】
本発明は複数の発光部を有する光源手段を用いた光走査装置に好適なものである。本発明はシェーディング特性を迅速に得て、複数の発光部のシェーディング補正データが容易に得られ複数の光束で被走査面を均一の光強度で走査することができるシェーディング補正方法及びシェーディング補正装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のシェーディング補正方法は、被走査面を、複数の発光部を有する光源手段からの画像信号により変調された複数の光束で走査し、画像情報を形成する光走査装置における被走査面の有効走査範囲内のシェーディング特性を光量測定手段で測定し、測定したシェーディング特性を用いて光束毎に被走査面の有効走査範囲内に入射する光束の光強度が均一となるためのシェーディング補正データを前記複数の発光部毎に求め、前記複数の発光部毎に求めたシェーディング補正データを用いて前記複数の発光部から放射される光束の光強度を調整するシェーディング補正方法であって、
前記複数の発光部毎のシェーディング補正データを前記光源手段が有する複数の発光部の数よりも少ない数のシェーディング特性より演算して求めることを特徴としている。
【0013】
この他、本発明のシェーディング補正装置は、数の発光部を有する光源手段から画像信号により変調された複数の光束で被走査面上を走査し、画像情報を形成する光走査装置における被走査面の有効走査範囲内のシェーディング特性を測定する光量測定手段と、該光量測定手段で測定したシェーディング特性を用いて被走査面の有効走査範囲内に入射する光束の光強度が均一になるためのシェーディング特性データを前記複数の発光部毎に演算し求める演算手段と、
該演算手段で求めたシェーディング特性データを用いて前記複数の発光部から放射される光束の光強度を制御する制御手段とを有するシェーディング補正装置において、前記演算手段は、前記光源手段が有する複数の発光部の数よりも少ない数のシェーディング特性より前記複数の発光部のシェーディング補正データを求めていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数の発光部を有する光源手段を用いた光走査装置のシェーディング特性を迅速に得て、複数の発光部のシェーディング補正データが容易に得られる。この結果、複数の光束で被走査面を均一の光強度で走査することができるシェーディング補正方法及びシェーディング補正装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1のシェーディング補正方法を用いた光走査装置の主走査断面図
【図2】本発明のシェーディング補正方法を用いた実施例1の光源手段の拡大図
【図3】本発明の実施例1のシェーディング特性測定時の光源手段の発光状態を示した図
【図4】従来のシェーディング特性測定時の光源手段の発光状態を示した図
【図5】本発明の実施例1のシェーディング補正方法のフローチャート
【図6】本発明の実施例1のシェーディング特性データとレーザ発光量(補正量)、シェーディング補正後の光量分布の関係を示した説明図
【図7】本発明のシェーディング補正方法を用いた実施例1のカラー画像形成装置の要部斜視図
【図8】本発明の実施例2に係るシェーディング特性の測定時の光源手段の発光状態を示した説明図
【図9】本発明の実施例3に係るシェーディング特性の測定時の光源手段の発光状態を示した説明図
【図10】本発明の実施例4に係るシェーディング特性の測定時の光源手段の発光状態を示した説明図
【図11】本発明のシェーディング補正方法を用いた実施例のカラー画像形成装置の要部概略図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明のシェーディング補正方法及びシェーディング補正装置の実施例を説明する。本発明のシェーディング補正方法は、感光体等の被走査面を、垂直共振器型面発光レーザ等の複数の発光部を有する光源手段からの画像信号により変調された複数の光束で走査し、画像情報を形成する光走査装置に用いられる。被走査面の有効走査範囲内に入射する光束の強弱であるシェーディング特性を被走査面又はそれと共役の位置に設けた光量測定手段で測定する。
【0017】
そして演算手段によって測定したシェーディング特性を用いて、複数の発光部より放射される光束毎に被走査面の有効走査範囲内に入射する光束の光強度が均一となるためのシェーディング補正データを複数の発光部毎に求める。このときの複数の発光部毎のシェーディング補正データは光源手段が有する複数の発光部の数よりも少ない数のシェーディング特性より演算して求めている。複数の発光部のシェーディング補正データは具体的に次のようにして求めている。
【0018】
(a)複数の発光部を全て同時に発光させ、複数の発光部からの全ての光束を光量測定手段で測定して得られた1つのシェーディング特性より演算し求めていること。
【0019】
(b)複数の発光部のうち最も離間している2つの発光部を結ぶ線分の中点に最も近い1つの発光部を発光させたときの光束を光量測定手段で測定して得られた1つのシェーディング特性より演算し求めていること。
【0020】
(c)複数の発光部のうち最も離間している2つの発光部を同時に発光させ、2つの発光部からの全ての光束を光量測定手段で測定して得られた1つのシェーディング特性より演算し求めていること。
【0021】
(d)複数の発光部を、発光部の数よりも少ない数のグループに分け、このうち1つのグループの複数の発光部を全て同時に発光させたときの全ての光束を光量測定手段で測定して得られた1つのシェーディング特性より演算し求めていること。
【0022】
そして複数の発光部毎に求めたシェーディング補正データを用いて制御手段によって複数の発光部から放射される光束の光強度を調整する。これによって、複数の発光部から各々放射される光束がいずれも被走査面の各像高(有効走査範囲内)に入射するときの光強度が均一になるようにしている。
【0023】
[実施例1]
図1は本発明のシェーディング補正方法を用いた光走査装置の実施例1の光走査装置の主走査方向の要部断面図(主走査断面図)である。
【0024】
尚、以下の説明において、副走査方向(Z方向)とは、偏向手段の回転軸と平行な方向である。主走査断面とは、副走査方向(偏向手段の回転軸と平行な方向)を法線とする断面である。主走査方向(Y方向)とは、偏向手段で偏向走査される光束を主走査断面に投射した方向である。副走査断面とは、主走査方向を法線とする断面である。
【0025】
図中、1は光源手段であり、垂直共振器型面発光レーザ等より成っており、本実施例では8つの発光部を有している。図2は光源手段1の要部概略図である。光源手段1を構成する8つの発光部1a〜1hは図2の如く、直線上に整列され、且つ、その直線は主走査方向(y方向)及び副走査方向(z方向)に対し、ある所定の角度を有するよう配置されている。
【0026】
図1には簡略化のため1本の光束のみ図示している。2は開口絞りであり、光源手段1から出射された発散光束を特定のビーム形状に成形している。3は集光レンズ(アナモフィックレンズ)であり、主走査方向(主走査断面内)と副走査方向(副走査断面内)とで異なる屈折力(パワー)を有している。集光レンズ3は開口絞り2を通過した発散光束を主走査方向では平行光束(もしくは収束光束)とし、副走査方向では収束光束に変換している。尚、光源手段1、開口絞り2、集光レンズ3の各要素は入射光学系LAの一要素を構成している。
【0027】
入射光学系LAは、光源手段1から出射した複数の光束を後述する偏向手段5の同一の偏向面5aに導光している。尚、集光レンズ3を2つの光学素子(球面系よりなるコリメータレンズと副走査方向にパワーを有するシリンダーレンズ)より構成しても良い。また、集光レンズ3はコリメータレンズとシリンドリカルレンズとを一体化して構成しても良い。
【0028】
5は入射光束を反射偏向する偏向手段としての光偏向器であり、モータ等より成る駆動手段(不図示)により図中矢印A方向に一定速度(等角速度)で回転している。6は結像手段としての集光機能とfθ特性とを有する結像光学系である。
【0029】
本実施例における結像光学系6は主走査方向(主走査断面内)と副走査方向(副走査断面内)とで異なる屈折力を有する結像光学素子である第1、第2の結像レンズ(走査レンズ)6a、6bを有している。
【0030】
本実施例における第1、第2の結像レンズ6a、6bはプラスチック材料(樹脂)より成り、光偏向器5の同一の偏向面5aによって偏向された画像情報に基づく複数の光束を被走査面としての感光ドラム面7上(被走査面上)に結像させている。且つ、第1、第2の結像レンズ6a、6bは副走査断面内において光偏向器5の偏向面5aと感光ドラム面7との間を共役関係にすることにより、偏向面5aの面倒れ補償を行っている。
【0031】
第1の結像レンズ6aは、第1の結像レンズ6aの光軸上において主走査断面内及び副走査断面内において正の屈折力を有している。第2の結像レンズ6bは第2の結像レンズ6bの光軸上において主走査断面内と副走査断面内において互いに異なった正の屈折力を有している。7は被走査面としての感光ドラム面(感光ドラム)である。
【0032】
本実施例においては、画像情報に応じて光源手段1から光変調され出射した8本の発散光束が開口絞り2により光束径が規制され、集光レンズ3に入射する。集光レンズ3に入射した光束のうち主走査断面内においては平行光束となって出射する。また副走査断面内においては光偏向器5の同一の偏向面5aに線像(主走査方向に長手の線像)として結像する。そして光偏向器5の偏向面5aで偏向された8本の光束は第1、第2の結像レンズ6a、6bを介して感光ドラム面7上にスポット状に結像する。
【0033】
そして光偏向器5を矢印A方向に回転させることによって、感光ドラム面7上を矢印B方向(主走査方向)に光走査している。これにより記録媒体としての感光ドラム面7上に画像記録(画像形成)を行っている。
【0034】
本実施例では上述の如く第1、第2の結像レンズ6a、6bの材料をプラスチック材料(樹脂)より形成しているが、材料はプラスチック材料に限らず、ガラス材料であっても良い。図2は図1の光源手段1の拡大図である。図3は被走査面7上における光強度の強弱を示すシェーディング特性の測定時の光源手段1の発光状態を示した説明図である。
【0035】
本実施例において図2に示すように光源手段1は8つの発光部1a〜1hを有している。そしてシェーディング特性を測定する際には図3に示すように8つの発光部1a〜1hを同時に発光させた状態において、偏光器5を回転させ、被走査面7において8本の光束を走査させる。そして被走査面7の相当の位置に配置した光量測定部(光量測定手段)8を主走査方向に走査させることにより各像高による光量を同時に1回で測定しシェーディング特性を得る。
【0036】
本実施例において、光量測定部8が有するセンサの副走査方向の検出サイズは8本の光束が全て十分に入る大きさとなっている。光量測定部8に入射する光量は大きくなる(8倍近くなる)ため、センサの分解能はあまり高いものでなくても良い。また、光量測定部8は主走査方向に走査するものに限らず、走査領域内に複数の光量測定部を固定して設けても良い。
【0037】
本実施例では光量測定部8の1回の走査で得られた1つのシェーディング特性データより8つの発光部の8本の光束の各々のシェーディング補正データを決定する。そして各像高において発光部1a〜1hの発光量を調整している。これにより光束毎に被走査面の各像高に入射する光束の光強度が均一になるようにしている。
【0038】
図4は従来のシェーディング特性の測定時の光源手段1の複数の発光部の発光状態を示した図である。従来は図4のように8つの発光部8a〜8hを1つずつ発光させた状態で8回の走査を行い8回のシェーディング特性を測定していた。これに対して、本実施例においては1回の走査でシェーディング特性が得られるため測定タクトは従来と比較して1/8に短縮される。
【0039】
本実施例では光源手段1の全発光部を発光させて得られた1つのシェーディング特性データを用いて決定した1つのシェーディング補正データを用いて個々の(8つの)シェーディング特性を補正している。このときの補正残差のばらつきは軽微であって、画像濃度ムラの問題とならない。
【0040】
更に精度良くシェーディング補正したい場合は、シェーディング特性のバラツキの主な要因となる光源手段1からの出射される複数の光束の偏光角差を把握するため、予め8つの光束の偏光角すべてを測定する。そして、それより作成した偏向角テーブル(情報記録手段)を用いると良い。この偏光角テーブルより各々の偏光角によるシェーディング特性の傾きを予測し、前述した光源手段1の全発光部を発光させて得られた1つのシェーディング特性データにそれぞれの偏向角から予測されたシェーディング特性の傾きをそれぞれ上乗せする。
【0041】
そして決定された8つのシェーディング補正データを用いることで、8つの発光部1a〜1hのすべての走査光束においてシェーディング補正残差をほぼゼロとすることができる。また、本実施例においては偏向器5の偏向面5aに入射する光束の主走査方向の幅が偏向面の主走査方向の幅より小さい、所謂、アンダーフィルド光学系(UFS)を採用している。
【0042】
よって結像光学系6の瞳が開口絞り2の位置と共役となるため顕著な照度むらは発生しない。このため光源手段1a全発光部1a〜1hを発光させて得られたシェーディング特性データを用いて個々のシェーディング特性を補正しても補正残差のばらつきは軽微であって、画像濃度ムラの問題とならない。
【0043】
本実施例においてはシェーディング補正を行なうために光源手段1の発光量を像高に応じて変化調整しているが、これに限るものではなく、像高に応じて光束の発光パルス幅を変調することによりシェーディング補正を行なっても良い。
【0044】
次に本実施例におけるシェーディング補正の工程を説明する。図5は本実施例のシェーディング補正のフローチャートである。図7は本発明のシェーディング補正方法を用いたカラー画像形成装置の要部概略図である。
【0045】
初めに光学箱に面発光レーザ(光源手段)1、集光レンズ3、光偏向器5、結像レンズ(光学素子)6a、6bを組み込む(ステップS1)。そして次に光走査装置内に組み込まれた面発光レーザ(光源手段)1の発光部1a〜1hの全ての発光部を発光させる(ステップS2)。そして光学素子が組み込まれた光走査装置の光量測定手段8でシェーディング特性を測定する(ステップS3)。
【0046】
シェーディング特性データは面発光レーザ1の基板に実装された情報記憶手段101としてのROMに書き込む(ステップS4)。尚、情報記憶手段101としてはROMに限らず、例えばRAMや2次元バーコード等、情報を保持できるものであればこの限りではない。
【0047】
このシェーディング特性のデータはより多い方が高精度なシェーディング補正が行なえる点で良いが、メモリ容量が必要となってくるため、実際にはカラー画像形成装置に要求されるシェーディング補正の精度等に基づきデータ点数は決定される。本実施例のシェーディング特性テーブルは光走査装置の有効走査幅310mmに対して±153mm、0mm、の計3点のデータから成っている。
【0048】
そしてシェーディング特性の測定を行ないシェーディング特性データを保有した光走査装置は画像形成装置に組み込まれる(ステップS5)。そして演算手段102により3点で測定された光量は、測定されていない各像高で数値化するために2次関数に曲線近似される(ステップS6)。
【0049】
近似式は、
Z=AY+BY+C
Y:主走査方向の像高
Z:測定光量
A、B、C:係数
を用いる。
【0050】
このような2次関数で曲線近似を行なうためには主走査方向に少なくとも3点で検出した値が必要となる。光量測定の数を更に増やせば曲線近似の精度が向上するが、メモリ容量の大型化にもつながってしまう。このため実際には、画像形成装置に要求されるシェーディング補正の精度等に基づき、光量測定数、曲線近似する多項式の次数が決定される。よって本実施例のように光量測定数は3つに限られるものではなく、3つ以上でも良い。
【0051】
次に演算手段102は曲線近似された光量データを基に、各像高に対する光束の発光量(レーザ発光量)の算出が行われる(ステップS7、S8)。但し、シェーディング補正の工程の順序はこれに限らず、例えば、光走査装置を画像形成装置に組み込む前に、光量測定装置で測定されたシェーディング特性データを光量測定装置内で曲線近似し、近似式の係数を情報記憶手段101に書き込んでも良い。そして制御手段103により算出された面発光レーザの発光量を基に面発光レーザの発光量を制御する(ステップS9)。
【0052】
図6(A)、(B)、(C)はシェーディング特性データとレーザ発光量(補正量)、シェーディング補正後の光量分布の関係の説明図である。光源手段1から出射した光束は偏向器5により偏向反射された後、第一の走査レンズ6a、第二の走査レンズ6bの順に透過する。第一の走査レンズ6a、第二の走査レンズ6bを透過する毎に被走査面7の端部に向かうに従い光量が上がっていく(図6(A))。
【0053】
よってシェーディング補正はシェーディング特性測定データを基に、被走査面の中央部に対して端部で光源手段の発光量(強度)を低減させるような制御を行なう(図6(B))。このような発光量の制御を行なうことにより、図6(C)のように各像高に対してフラットな光量分布とすることができる。このようにレーザ発光量を制御することで画像領域全域でシェーディングは良好に補正され高品位なカラー画像を得ている。
【0054】
本実施例においては光走査装置に設定した光量測定装置で光量を測定したが、光走査装置を画像形成装置に搭載した上で画像形成装置内で光量測定を行なっても良い。図7は本発明のシェーディング補正方法を用いた光走査装置が搭載されたカラー画像形成装置の要部斜視図である。
【0055】
図7において11は光走査装置であり、図1に示す4つの光走査装置が含まれている。21,22,23,24は各々像担持体としての感光ドラム、51は搬送ベルト、10a、10b、10cは各々光量測定手段としての濃度センサである。搬送ベルト上に基準トナー像パターンを形成し、搬送ベルト上部の主走査方向(y方向)に配置された濃度センサ(光量測定手段)10a、10b、10cでトナー像からの反射光の光量を測定する。
【0056】
本実施例においては3つの濃度センサ10a、10b、10cのうち、1つの濃度センサ10bはカラー画像形成装置の主走査方向の画像領域の中央部に配置されている。また他の2つの濃度センサ10a、10cはカラー画像形成装置の主走査方向の画像領域の両端部に配置されている。
【0057】
尚、濃度センサの配置位置は画像領域の中央部に限られるものではなく、画像領域の中央部近傍であれば問題なくトナー像濃度の検出を行なうことが出来る。このときの演算センサからの検出値を基に演算手段102によりシェーディング補正値を決定し、シェーディング補正を行なっても良い。また、記録媒体に転写される前のトナー像の濃度の検出ではなく、これに限らず、記録媒体に転写後の画像の濃度を検出してもよい。更には、画像形成装置内に3つの光量測定手段として濃度センサを設けたが、これに限らず、電位センサ等でもよい。
【0058】
このように本実施例においては複数の発光部を有する光源手段を用いた光走査装置のシェーディング特性の測定において測定回数を低減している。これにより測定タクトを短縮した光走査装置及びそれを用いた画像形成装置を得ている。また本実施例においては光源手段として単一基板に複数の発光部を有する垂直共振器型面発光レーザを使用したが、複数の発光部を有する端面発光レーザを微小間隔離間させて複数個設けた光源手段を用いても良い。
【0059】
以上のように、本実施例の光走査装置では前述したシェーディング補正方法にて補正された複数の発光部のシェーディング補正データを用いて作製されている。
【0060】
[実施例2]
次に本発明のシェーディング補正方法を用いた光走査装置の実施例2について説明する。本実施例において前述の実施例1と異なる点は、シェーディング特性データを得るための光量測定において光源手段の8つの発光部のうち1つの発光部のみ発光させた状態で発光部からの光束の光量を測定した点である。その他の構成及び光学的作用は実施例1と同様であり、これにより同様の効果を得ている。
【0061】
図8は本実施例におけるシェーディング特性測定時の光源手段の発光状態を示した説明図である。光源手段1は、垂直共振器型面発光レーザより成っており、8つの発光部を有している。これらの8つの発光部は図8に示す如く、直線上に整列され、且つ、その直線は主走査方向、副走査方向に対しある所定の角度を有するよう配置されている。
【0062】
本実施例においては最も離間している2つの発光部1a、1hを結ぶ線分の中点に最も近接している1つの発光部1dのみ発光させた上でシェーディング特性を測定している。そしてこの測定された1つのシェーディング特性データから8つの発光部1a〜1hからの光束のシェーディング補正データを決定している。光源手段1のほぼ中央の発光部1dにより得たシェーディング特性データであるため8つの発光部のシェーディング特性の中心値となり得る為、1度の測定で問題無く8つの発光部のシェーディング特性データを得られる。
【0063】
またシェーディング特性測定時の発光部は発光部1dに限らず、最も離間している2つの発光部1a、1hを結ぶ線分の中点に最も近接しているもう1つの発光部1eを発光した状態で測定しても同様の結果が得られる。このように本実施例においては複数の発光部を有する光源手段を用いた光走査装置のシェーディング特性の測定回数を低減している。これにより測定タクトを短縮した光走査装置、又はそれを用いた画像形成装置を得ている。
【0064】
[実施例3]
次に本発明のシェーディング補正方法を用いた光走査装置の実施例3について説明する。本実施例において前述の実施例1と異なる点は、シェーディング特性データを得るための光量測定において光源手段の8つの発光部のうち副走査方向に最も離間している2つの発光部1a、1hを同時発光させてシェーディング特性を測定した点である。その他の構成及び光学的作用は実施例1と同様であり、これにより同様の効果を得ている。
【0065】
図9は本実施例におけるシェーディング特性測定時の光源手段1の発光部の発光状態を示した説明図である。光源手段1は、垂直共振器型面発光レーザより成っており、8つの発光部を有している。これらの8つの発光部は図9の如く、直線上に整列され、且つ、その直線は主走査方向、副走査方向に対しある所定の角度を有するよう配置されている。
【0066】
本実施例においては副走査方向に最も離間している2つの発光部1a、1hを同時発光させてシェーディング特性を測定している。そしてこの測定された1つのシェーディング特性データから8つの光束のシェーディング補正データを決定している。
【0067】
副走査方向に最も離間している2つの発光部1a、1hから出射された光束は結像レンズ6a、6b上でも副走査方向に最も離間した位置をそれぞれ通過する。本発明の光走査装置に用いている結像レンズ6a、6bはプラスチックから成っているため、結像レンズ6a、6b内において複屈折の分布が発生する場合がある。この複屈折がシェーディング特性に影響を及ぼすことは周知である。
【0068】
この複屈折は副走査方向において分布が顕著であるため副走査方向の光束通過位置によってシェーディング特性にばらつきが生じる。その副走査方向の光束の通過位置差が大きい光束を出射する2つの発光部1a、1hを同時に発光させた状態でシェーディング特性を測定する。これにより、双方のシェーディング特性測定値が平均化された1つのシェーディング特性データを得ている。
【0069】
この測定により得られた1つのシェーディング特性データより8本の光束のシェーディング特性補正データを決定している。これにより測定タクトを短縮しつつ、8つの光束の中でもムラ無くシェーディングを補正している。
【0070】
[実施例4]
次に本発明のシェーディング補正方法を用いた光走査装置の実施例4について説明する。本実施例において前述の実施例1と異なる点は、図10に示すように光源手段の発光部の配列が2次元である点である。そしてシェーディング特性データを得るための光量測定において光源手段の24個の発光部のうち1列の発光部8つを同時発光させてシェーディング特性を測定した点である。その他の構成及び光学的作用は実施例1と同様であり、これにより同様の効果を得ている。
【0071】
図10では本実施例におけるシェーディング特性測定時の光源手段の発光状態を示している。図10において、光源手段1’は、垂直共振器型面発光レーザより成っており、発光部は8個×3列の2次元配列を成している。そして、8つの発光部からなる直線は主走査方向、副走査方向に対しそれぞれある所定の角度を有するよう配置されている。
【0072】
本実施例においては副走査方向の中央部に配置された発光部列が有する8つの発光部1a〜1hを同時発光させてシェーディング特性を測定している。そしてこの測定された1つのシェーディング特性データから32本の光束のシェーディング補正データを決定している。
【0073】
光源手段のほぼ中央の発光部列により得たシェーディング特性データであるため32個の発光部のシェーディング特性の中心値となり得る為、1度の測定で問題無く32個の発光部分のシェーディング特性データを得られる。
【0074】
このように本実施例においては光走査装置の光源手段の発光部が2次元となり発光部の数が増えてもシェーディング特性の測定回数を低減し、測定タクトを短縮した光走査装置、又はそれを用いた画像形成装置を得ている。
【0075】
[カラー画像形成装置]
図11は本発明のシェーディング補正方法を用いた実施例のカラー画像形成装置の要部概略図である。本実施例は、光走査装置により4ビームを走査して各々並行して像担持体である感光体上に画像情報を記録するタンデムタイプのカラー画像形成装置である。図11において、60はカラー画像形成装置、11は実施例1から4に示したいずれかの構成を有する光走査装置、21,22,23,24は各々像担持体としての感光ドラム、31,32,33,34は各々現像器、51は搬送ベルトである。
【0076】
図11において、カラー画像形成装置60には、パーソナルコンピュータ等の外部機器52からR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の各色信号が入力する。これらの色信号は、装置内のプリンタコントローラ53によって、Y(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン)、K(ブラック)の各画像データ(ドットデータ)に変換される。これらの画像データは、光走査装置11に入力される。そして、光走査装置11からは、各画像データに応じて変調された光ビーム41,42,43,44が出射され、これらの光ビームによって感光ドラム21,22,23,24の感光面が主走査方向に走査される。
【0077】
本実施例におけるカラー画像形成装置は光走査装置11により4ビームを走査し、各々がY(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン)、K(ブラック)の各色に対応している。そして各々平行して感光ドラム21,22,23,24面上に画像信号(画像情報)を記録し、カラー画像を高速に印字している。
【0078】
本実施例におけるカラー画像形成装置は上述の如く光走査装置11により各々の画像データに基づいた光ビームを用いて各色の潜像を各々対応する感光ドラム21,22,23,24面上に形成している。その後、記録材に多重転写して1枚のフルカラー画像を形成している。
【0079】
外部機器52としては、例えばCCDセンサを備えたカラー画像読取装置が用いられても良い。この場合には、このカラー画像読取装置と、カラー画像形成装置60とで、カラーデジタル複写機が構成される。
【0080】
以上のように各実施例によれば複数の発光部を有する光走査装置のシェーディング特性の測定回数を低減し、測定タクトを短縮した光走査装置及びそれを用いた画像形成装置を得ることができる。
【符号の説明】
【0081】
1 光源手段、2 開口絞り、3 集光レンズ、5 偏向手段、6a 第1の結像レンズ、6b 第2の結像レンズ、7 被走査面、LA 入射光学系、6 結像光学系、8 光量検出手段、102 演算手段、103 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被走査面を、複数の発光部を有する光源手段からの画像信号により変調された複数の光束で走査し、画像情報を形成する光走査装置における被走査面の有効走査範囲内のシェーディング特性を光量測定手段で測定し、測定したシェーディング特性を用いて光束毎に被走査面の有効走査範囲内に入射する光束の光強度が均一となるためのシェーディング補正データを前記複数の発光部毎に求め、前記複数の発光部毎に求めたシェーディング補正データを用いて前記複数の発光部から放射される光束の光強度を調整するシェーディング補正方法であって、
前記複数の発光部毎のシェーディング補正データを前記光源手段が有する複数の発光部の数よりも少ない数のシェーディング特性より演算して求めることを特徴とするシェーディング補正方法。
【請求項2】
前記複数の発光部毎のシェーディング補正データは、前記複数の発光部を全て同時に発光させ、前記複数の発光部からの全ての光束を前記光量測定手段で測定して得られた1つのシェーディング特性より演算し求めていることを特徴とする請求項1のシェーディング補正方法。
【請求項3】
前記複数の発光部のシェーディング補正データは、前記複数の発光部のうち最も離間している2つの発光部を結ぶ線分の中点に最も近い1つの発光部を発光させたときの光束を前記光量測定手段で測定して得られた1つのシェーディング特性より演算し求めていることを特徴とする請求項1のシェーディング補正方法。
【請求項4】
前記複数の発光部のシェーディング補正データは、前記複数の発光部のうち最も離間している2つの発光部を同時に発光させ、2つの発光部からの全ての光束を前記光量測定手段で測定して得られた1つのシェーディング特性より演算し求めていることを特徴とする請求項1のシェーディング補正方法。
【請求項5】
前記複数の発光部のシェーディング補正データは、前記複数の発光部を、発光部の数よりも少ない数のグループに分け、このうち1つのグループの複数の発光部を全て同時に発光させたときの全ての光束を前記光量測定手段で測定して得られた1つのシェーディング特性より演算し求めていることを特徴とする請求項1のシェーディング補正方法。
【請求項6】
複数の発光部を有する光源手段から画像信号により変調された複数の光束で被走査面上を走査し、画像情報を形成する光走査装置における被走査面の有効走査範囲内のシェーディング特性を測定する光量測定手段と、該光量測定手段で測定したシェーディング特性を用いて被走査面の有効走査範囲内に入射する光束の光強度が均一になるためのシェーディング特性データを前記複数の発光部毎に演算し求める演算手段と、
該演算手段で求めたシェーディング特性データを用いて前記複数の発光部から放射される光束の光強度を制御する制御手段とを有するシェーディング補正装置において、前記演算手段は、前記光源手段が有する複数の発光部の数よりも少ない数のシェーディング特性より前記複数の発光部のシェーディング補正データを求めていることを特徴とするシェーディング補正装置。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシェーディング補正方法にて補正された前記複数の発光部のシェーディング補正データを用いて作製された光走査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−52543(P2013−52543A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190761(P2011−190761)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】