説明

シクロオキシゲナーゼ−2インヒビターとして作用するジアリール2−(5H)−フラノンの酸化窒素放出プロドラッグ

本発明は式(I)の新規な化合物を包含する。これは、シクロオキシゲナーゼ−2介在疾患の治療に有用なジアリール2−(5H)フラノンの酸化窒素放出プロドラッグである。本発明はまた、式(I)の化合物の使用を含む、シクロオキシゲナーゼ−2介在疾患を治療するためのいくつかの医薬組成物及び方法を包含する。上記化合物は、低用量アスピリンとの併用療法として慢性のシクロオキシゲナーゼ−2介在疾患または状態を治療するために使用でき、また血栓性心血管イベントの危険性を低下させ得る。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
シクロオキシゲナーゼ−2の選択的インヒビターは、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)として知られた薬剤クラスの1つのサブクラスである。NSAIDは、プロスタグランジンに誘発される疼痛及び炎症プロセスに付随する腫脹を抑制するために有効であるが、炎症プロセスを伴わない別のプロスタグランジン調節プロセスに影響を与える作用もある。従って、頻用されているNSAIDを高用量で使用すると、命にかかわる潰瘍などの重篤な副作用が生じることもあり、このような副作用がNSAIDの治療能力を限定している。NSAIDの代替薬としてコルチコステロイドが使用されているが、この物質は、特に長期間治療に使用するといっそう激烈な副作用を生じる。
【背景技術】
【0002】
従来のNSAIDは、シクロオキシゲナーゼ(COX)酵素のようなヒトのアラキドン酸/プロスタグランジン経路に存在する酵素を阻害することによってプロスタグランジンの産生を防止することが知見されている。COX酵素に2つのアイソフォームが存在し、第一の酵素COX−1は生理的機能に関与し、第二の酵素COX−2が炎症組織で誘発されているという知見は新しい研究方法への道を開いた。慣用のNSAIDは該酵素の双方の形態をブロックするが、炎症に付随する誘導酵素COX−2の同定によって、炎症をより効果的に抑制し激烈な副作用の発生を数量ともに減らすために阻害すべき生体内ターゲットが判明した。ロフェコキシブ(VIOXX(登録商標))、エトリコキシブ(ARCOXIATM)、セレコキシブ(CELEBREX(登録商標))及びバルデコキシブ(BEXTRATM)のような、COX−2インヒビター活性を有している多くの化合物が同定され、また、この分野でさらに多くの研究が続けられている。
【0003】
慢性のシクロオキシゲナーゼ−2介在疾患または状態に苦しむ患者の多くは年配者であり、従って、卒中、心筋虚血、心筋梗塞、狭心症、一過性虚血発作(TIA;一過性黒内障)、可逆的虚血性神経障害、及び、血管床(内臓、腎臓、大動脈、末梢血管、など)のいずれかに生じるその他の同様の血栓性イベントのような血栓性心血管イベントの危険性も高い。更に、リウマチ様関節炎及び全身性ループスエリテマトーデスのような慢性の炎症状態にある患者では血栓性心血管イベントの危険性が高いことも立証されている。このような患者は、このようなイベントの危険性を低減するために低用量アスピリン療法のような適切な治療を受けるのが望ましい。しかしながら、アスピリンと選択的COX−2インヒビターとをラットモデルに併用投与すると、どちらかの薬剤を単独投与した場合よりも実質的に重篤な胃の傷害が生じることが報告されている。Fiorucciら,Gastroenterology,vol.123.pp.1598−1606,2002参照。従って、COX−2選択的インヒビターがNSAIDよりも卓越している主要な利点がアスピリンとの併用によって実質的にまたは完全に相殺されてしまう。
【0004】
非ステロイド系抗炎症薬のNO放出形態は当業界で公知であり、等価薬である慣用のNSAIDに比べて胃腸及び心血管の安全プロフィルが改善されたと報告されている。更に、選択的シクロオキシゲナーゼ−2選択的インヒビターのNO放出形態は、2001年6月28日公開の国際特許WO01/45703に開示されている。
【0005】
本発明は、シクロオキシゲナーゼ−2選択的インヒビターの新規なニトロソ化プロドラッグを提供する。本発明のプロドラッグは、シクロオキシゲナーゼ−2介在疾患または状態を治療するために有用であり、単独投与することもまたは低用量アスピリンと併用投与することもできる。本発明は、慢性のシクロオキシゲナーゼ−2介在疾患または状態の治療に効能があり、また、血栓性心血管イベント及び潜在的に腎副作用の危険性を効果的に低下させ、同時に、胃腸の潰瘍形成または出血の危険性を低減する。
【発明の開示】
【0006】
本発明は式Iの新規な化合物を包含する。式Iの化合物はシクロオキシゲナーゼ−2介在疾患の治療に有用なジアリール2−(5H)フラノンの酸化窒素放出プロドラッグである:
【0007】
【化5】

【0008】
本発明はまた、式Iの化合物の使用を含む、シクロオキシゲナーゼ−2介在疾患を治療する幾つかの医薬組成物及び方法を包含する。上記の化合物は、慢性のシクロオキシゲナーゼ−2介在疾患または状態を治療するために低用量アスピリンとの併用療法として使用され血栓性心血管イベントの危険性を低下させ得る。
【0009】
本発明は、in vivoでジアリール−2−(5H)−フラノンに変換されてシクロオキシゲナーゼ−2介在疾患の治療に使用し得るブロドラッグとして、式I:
【0010】
【化6】

の新規な化合物または医薬として許容されるその塩を包含する。
式中の、
nは3−6の整数であり、
は、
(a)S(O)CH
(b)S(O)NH
(c)S(O)NHC(O)CF
(d)S(O)(NH)CH
(e)S(O)(NH)NH
(f)S(O)(NH)NHC(O)CF
(g)P(O)(CH)OH、及び、
(h)P(O)(CH)NH
から成るグループから選択され、
及びRの各々は独立に、
(a)水素
(b)ハロ
(c)C1−6アルコキシ
(d)C1−6アルキルチオ
(e)CN
(f)CF
(g)C1−6アルキル、及び、
(h)N
から成るグループから選択され、

(a)−C(O)−C1−4アルキル、及び、
(b)−C(O)−(CH−N(R)(R
から成るグループから選択され、
mは1−4の整数であり、
及びRの各々は独立に、水素、及び、1−3個のハロ基によって置換されるかまたは未置換のC1−4アルキルから成るグループから選択される。
【0011】
変数nは3−6の整数である。従って、連結する基は、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル及びオクチルでよい。
【0012】
本発明の1つの実施態様は、RがS(O)CHであり、R及びRの双方が水素である式Iの化合物を包含する。
【0013】
本発明の別の実施態様は、nが3、4または5である式Iの化合物を包含する。
本発明の別の実施態様は、nが4である式Iの化合物を包含する。
本発明の別の実施態様は、Rがアセチルである式Iの化合物を包含する。
本発明の別の実施態様は、Rがグリシニルである式Iの化合物を包含する。
本発明の別の実施態様は、式:
【0014】
【化7】

の化合物を包含する。
【0015】
本発明の別の実施態様は、式:
【0016】
【化8】

の化合物または医薬として許容されるその塩を包含する。
【0017】
本発明はまた、式Iの化合物と医薬品に許容される担体とを含む医薬組成物を包含する。
【0018】
本発明はまた、式Iの化合物を無毒性治療有効量で要治療患者に投与することを含む、非ステロイド系抗炎症薬による治療に感受性の炎症性疾患の治療方法を包含する。この実施態様には、患者が血栓性心血管イベントの危険性を有しているとき及びアスピリン治療を受けているときに血栓性心血管イベントの危険性を低減する方法が包含される。
【0019】
本発明の別の実施態様は、式Iの化合物を無毒性治療有効量で要治療患者に投与することを含む、COX−1に優先してCOX−2を選択的に阻害する有効物質によって有利に治療されるシクロオキシゲナーゼ介在疾患の治療方法を包含する。この実施態様には、患者が血栓性心血管イベントの危険性を有しているとき及びアスピリン治療を受けているときに血栓性心血管イベントの危険性を低減する方法が包含される。
【0020】
本発明の別の実施態様は、シクロオキシゲナーゼ−2介在疾患または状態の治療に有効な量の式Iの化合物と血栓性心血管イベントの危険性を低減するために有効な量のアスピリンとを同時にまたは順次に要治療患者に経口投与することを含む、慢性シクロオキシゲナーゼ−2介在疾患または状態の治療を要しておりかつ血栓性心血管イベントの危険性を有しているヒト患者の慢性シクロオキシゲナーゼ−2介在疾患または状態を治療しかつ血栓性心血管イベントの危険を低減する方法を包含する。この実施態様には、式Iの化合物を一日1回の基準で経口投与する上記の方法が包含される。この実施態様には、式Iの化合物を一日2回の基準で経口投与する上記の方法が包含される。この実施態様には、慢性シクロオキシゲナーゼ−2選択的介在疾患または状態が、骨関節炎、リウマチ様関節炎及び慢性疼痛から成るグループから選択される上記の方法が包含される。この実施態様には、アスピリンを約30mg−約1gの用量で投与する上記の方法が包含される。この実施態様には、アスピリンを約80mg−約650mgの用量で投与する上記の方法が包含される。この実施態様には、アスピリンを約81mgまたは約325mgの用量で投与する上記の方法が包含される。この実施態様には、アスピリンを一日1回経口投与する上記の方法が包含される。
【0021】
本発明はまた、式Iの化合物とアスピリンとを、医薬品に許容される担体と共に含む医薬組成物を包含する。
【0022】
本発明の別の実施態様は、RがS(O)CH及びS(O)NHから成るグループから選択され、R及びRの各々が独立に水素及びハロから成るグループから選択され、Rが−C(O)−C1−4アルキルである式Iの化合物を包含する。本発明のこの実施態様には、nが4または5である式Iの化合物が包含される。
【0023】
“ハロゲン”または“ハロ”という用語は、F、Cl、Br及びIを包含する。
【0024】
“アルキル”という用語は、指定された数の炭素原子を有している直鎖状または分枝状の構造またはそれらの組合せを意味する。従って、例えばC1−6アルキルは、メチル、エチル、プロピル、2−プロピル、s−及びt−ブチル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、1,1−ジメチルエチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルを包含する。
【0025】
“アルコキシ”という用語は、指定された数の炭素原子を有している直鎖状または分枝状の構造のアルコキシ基を意味する。例えばC1−6アルコキシは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシなどを包含する。
【0026】
“アルキルチオ”という用語は、指定された数の炭素原子を有している直鎖状または分枝状の構造のアルキルチオ基を意味する。例えばC1−6アルキルチオは、メチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオなどを包含する。
【0027】
本文中に記載の化合物のあるものはオレフィン二重結合を含有し、異なる記載がない限り、E及びZの幾何異性体の双方を包含する。
【0028】
“慢性のシクロオキシゲナーゼ−2介在疾患または状態を治療する”という用語は、シクロオキシゲナーゼ−2酵素を阻害することによって有効に治療または予防できる慢性の疾患または状態の治療または予防を意味する。この用語は多様な状態の疼痛、発熱及び炎症の緩和を包含する。例えば、リウマチ熱、インフルエンザまたはその他のウィルス感染症に付随する症状、普通の風邪、背中の下部及び頸部の疼痛、月経困難症、頭痛、偏頭痛(急性及び予防的治療)、歯痛、捻挫及び挫傷、筋肉痛、神経痛、滑膜炎、リウマチ様関節炎、退化性関節疾患(骨関節炎)のような関節炎、痛風及び強直性脊椎炎、滑液嚢炎、火傷、外傷のような急性、亜急性及び慢性の筋骨格疼痛症候群、外科手術及び歯科処置後の疼痛、外科手術痛の予防的処置がある。更にこの用語は、細胞の悪性形質転換及び転移性腫瘍の増殖阻害を包含し、従って、癌の治療を包含する。この用語はまた、子宮内膜症及びパーキンソン病の治療、並びに、糖尿病性網膜症及び腫瘍起因性血管形成で生じるようなシクロオキシゲナーゼ介在増殖異常の治療を包含する。“治療する”という用語は、患者の疾患または状態の徴候または症状を軽減するための患者の治療を意味するだけでなく、疾患または症状の開始または進行を防止するための無症候患者の予防的処置をも包含する。
【0029】
“血栓性心血管イベント”は、血小板凝集、血栓症及びその後の虚血性臨床イベント例えば血栓性または血栓塞栓性の脳卒中、心筋虚血、心筋梗塞、狭心症、一過性虚血発作(TIA;一過性黒内障)、可逆的虚血性神経障害、及び、血管床(内臓、腎臓、大動脈、末梢血管、など)の同様の血栓性イベントによって生じることが知られている種類の突発的イベントのいずれかであると定義される。
【0030】
“血栓性心血管イベントの危険性を有している要治療患者”という用語は、シクロオキシゲナーゼ−2介在疾患の治療が必要であり同時に血栓性心血管イベントの危険性を有している患者を意味する。当業者は、シクロオキシゲナーゼ−2介在疾患または状態の治療が必要であり同時に血栓性心血管イベントの発症の危険性を有している患者を診断できる。このような患者は例えば、心筋梗塞の前歴がある50歳以上の骨関節炎の患者である。血栓性心血管イベントの別の危険要因は、高血圧、高コレステロール血症、真性糖尿病、慢性腎機能不全、喫煙、及び、このようなイベントの個人的または家族的前歴などである。患者に対する併用薬剤の投与には、自己投与と他者から患者への投与との2種類がある。
【0031】
“治療有効量”という用語は、研究者、獣医師、内科医またはその他の臨床医が求めるような組織、系、動物またはヒトの生物学的または医学的レスポンスを誘発する薬剤または医薬の量を意味するために使用されている。この用語はまた、研究者、獣医師、内科医またはその他の臨床医によって防止することが求められるような組織、系、動物またはヒトの生物学的または医学的イベント発生の危険性を防止するかまたは低減する薬剤または医薬の量という意味を含む。シクロオキシゲナーゼ−2のインヒビターは、NSAIDの慣用の薬用量レベル以下の薬用量レベルで投与できる。本発明に使用される式Iの化合物の適正な薬用量レベルについては後述する。化合物は1日あたり1回または2回の用法で投与できる。
【0032】
“の危険性を低減するために有効な量”という用語は、研究者、獣医師、内科医またはその他の臨床医によって防止することが求められる組織、系、動物またはヒトの生物学的または医学的イベントの発生の危険性を防止するかまたは低減する医薬の量を意味する。アスピリンは、約30mg−約1gを1日に1回という用量、好ましくは約80mg−約650mgの用量で投与される。
【0033】
“併存的に投与する”という用語は、複数の有効物質を実質的に同時に投与することを意味する。“併存的に投与する”という用語は、2種類の有効物質を単一の医薬剤形で投与することだけでなく、各有効物質をそれぞれ独立の医薬剤形の配合製剤として投与することを意味する。独立剤形の配合製剤を使用する場合、有効物質が本質的に同じ時刻、即ち、同時に投与できる。
【0034】
“順次に投与する”という用語は、時間をずらせて有効物質を別々に投与することを意味する。従って、アスピリン及び本発明の化合物の有益な医薬効果が患者の体内で実質的に同時に実現するように有効物質を順次に投与できる。従って、例えば、本発明の化合物とアスピリンとの双方を1日1回の基準で投与する場合、2種類の有効物質の順次投与間の間隔は24時間以下である。
【0035】
本発明の医薬組成物は、式Iの化合物または医薬として許容されるその塩を有効成分として含み、更に医薬品に許容される担体と場合によってはその他の治療成分とを含む。“医薬として許容される塩”という用語は、医薬として許容される無毒の塩を与える無機塩基及び有機塩基のような塩基から調製された塩を包含する。無機塩基から誘導された塩としては、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、第二マンガン、第一マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛の塩などがある。アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウムの塩が特に好ましい。医薬として許容される無毒性有機塩基から誘導された塩としては、第一級、第二級及び第三級のアミン、天然産生置換アミンのような置換アミン並びに環状アミンの塩、塩基性イオン交換樹脂、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リシン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン、などがある。
【0036】
本発明の化合物が塩基性であるとき、塩は、無機酸及び有機酸のような医薬として許容される塩を与える酸から調製され得る。このような酸としては、酢酸、アジピン酸、アスパラギン酸、1,5−ナフタレンジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、1,2−エタンジスルホン酸、エタンスルホン酸、エチレンジアミン四酢酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコ酸、2−ナフタレンスルホン酸、硝酸、シュウ酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、ピバル酸、プロピオン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、ウンデカン酸、10−ウンデセン酸、などがある。
【0037】
式Iの化合物は、in vivoでジアリール2−(5H)−フラノンに変換されるシクロオキシゲナーゼ−2選択的インヒビターのプロドラッグである。化合物はまた、in vivoで酸化窒素を遊離し、これは、胃腸及び潜在的に腎臓の安全プロフィルの改善に貢献すると考えられている。このような理由から、本発明の化合物は、慢性のシクロオキシゲナーゼ−2介在疾患または状態を治療するために低用量アスピリンと併用投与することができ、血栓性心血管イベント及び潜在的な腎副作用の危険性を効果的に低減し、同時に、胃腸の潰瘍形成及び出血の危険性を低減する。従って、高血圧患者及び心血管病の患者、並びに、潜在的腎不全患者には、本発明の化合物の投与によってNSAID及び現在入手可能なシクロオキシゲナーゼ−2選択的インヒビターよりも優れた効果が積極的にもたらされる。
【0038】
本発明のプロドラッグの活性部分がシクロオキシゲナーゼ−2活性を有しているので、式Iの化合物は、例えば、リウマチ熱、インフルエンザまたはその他のウィルス感染症に付随する症状、普通の風邪、背中の下部及び頸部の疼痛、月経困難症、頭痛、偏頭痛(急性及び予防的治療)、歯痛、捻挫及び挫傷、筋肉痛、神経痛、滑膜炎、リウマチ様関節炎、退化性関節疾患(骨関節炎)のような関節炎、痛風及び強直性脊椎炎、滑液嚢炎、火傷、外傷のような急性、亜急性及び慢性の筋骨格疼痛症候群、外科手術及び歯科処置後の疼痛、外科手術痛の予防的処置などのような多様な状態の疼痛、発熱及び炎症の緩和に有用である。更にこのような化合物は、細胞の悪性形質転換及び転移性腫瘍増殖を阻害することができ、従って、癌の治療に使用できる。式Iの化合物はまた、子宮内膜症及びパーキンソン病の治療または予防に有用である。
【0039】
式Iの化合物はまた、収縮性プロスタノイドの合成を予防することによってプロスタノイドに誘発される平滑筋収縮を阻害し、従って、月経困難症、早産及び喘息の治療に役立つであろう。
【0040】
上記に定義した本発明のプロドラッグの活性部分は高いシクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)活性及び/またはシクロオキシゲナーゼ−1(COX−1)よりもシクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)に選択性を有するので、式Iの化合物は、特に消化器潰瘍、胃炎、限局性回腸炎、潰瘍性大腸炎、憩室炎の患者、または、胃腸障害の反復歴;胃腸出血、貧血を含む凝固異常、例えば、低プロトロンビン血症、血友病またはその他の出血問題(例えば、血小板機能の低下または損傷に関する出血問題);腎臓病(例えば、腎機能不全);外科手術前の患者または凝固防止剤を服用している患者;NSAID誘発喘息に罹り易い患者などのように非ステロイド系抗炎症薬が禁忌である場合に、慣用の非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)の代替薬として有用であることが立証された。
【0041】
式Iの化合物はまた、慣用のNSAIDの部分的または全面的な代替物として、現在は別の薬剤または成分と併用投与されている調製製剤に使用できるであろう。従って、別の特徴によれば本発明は、上記に定義のシクロオキシゲナーゼ−2介在疾患を治療するための医薬組成物を包含する。組成物は、無毒性治療有効量の上記に定義の式Iの化合物と、1種または複数の成分、例えば、アセトミノフェンまたはフェナセチンのような別の疼痛緩和薬;コデイン、フェンタニル、ヒドロモルホン、レボルファノール、メペリジン、メサドン、モルヒネ、オキシコドン、オキシモルヒネ、プロポキシフェン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、デゾシン、ナルブフィン及びペンタゾシンのようなオピオイド鎮痛薬;カフェインのような相乗因子;H2−拮抗薬;水酸化アルミニウムまたはマグネシウム;シメチコーン;フェニルエフリン、フェニルプロパノールアミン、プソイドフェドリン、オキシメタゾリン、エフィネフリン、ナファゾリン、キシロメタゾリン、プロピルヘキセドリンまたはレボ−デオキシエフェドリンのような充血除去薬;コデイン、ヒドロコドン、カラミフェン、カルベタペンタンまたはデキストラメトルファンのような鎮咳薬;利尿薬;鎮静性または非鎮静性の抗ヒスタミン;オメプラゾールのようなプロトンポンプインヒビターを含む。本発明はまた、偏頭痛を治療または予防するために、リザトリプタン、スマトリプタン、ゾルミトリプタン及びナラトリプタンのような5−HTアゴニストとの併用投与を包含する。更に本発明は、シクロオキシゲナーゼ介在疾患の治療方法を包含する。方法は、このような治療を要する患者に、無毒性で治療有効量の式Iの化合物を、場合によっては1種または複数の上記に挙げた成分と併用して投与することから成る。
【0042】
本発明の化合物は、シクロオキシゲナーゼ−2のインヒビターのプロドラッグであり、従って、上記に挙げたようなシクロオキシゲナーゼ−2介在疾患の治療に有用である。この活性は、シクロオキシゲナーゼ−1よりもシクロオキシゲナーゼ−2を選択的に阻害する能力によって示される。従って、活性化合物に変換されてシクロオキシゲナーゼ介在疾患を治療できる本発明の化合物の能力は、後述するアッセイに示すように、アラキドン酸、シクロオキシゲナーゼ−1またはシクロオキシゲナーゼ−2と式Iの化合物との存在下のプロスタグランジンE(PGE)の合成量を測定することによって証明できる。IC50の値は、PGE合成量を非阻害対照で得られた量に比べて50%に戻すために必要なインヒビターの濃度を表す。これらのシクロオキシゲナーゼ介在疾患のいずれかを治療するためには、式Iの化合物を、医薬品に許容される慣用の無毒性の担体、アジュバント及びビヒクルを含有する単位薬用量の配合製剤として、経口、局所、非経口、吸入スプレーによってまたは直腸内に投与するとよい。本発明の化合物は、口腔の頬側または舌下の粘膜経由で投与することもできる。本文中で使用した非経口という用語は、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、胸骨内注射、または、温浸法を包含する。本発明の化合物はまた、鼻腔、肺(エアゾル吸入)または眼内経由で投与し得る。マウス、ラット、ウマ、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコなどのような温血動物の治療に加えて、本発明の化合物はヒトの治療に有効である。
【0043】
上記に示したように、定義したようなシクロオキシゲナーゼ−2介在疾患を治療する医薬組成物は場合によっては1種または複数の上記に挙げた成分を含む。
【0044】
有効成分を含有する医薬組成物は、例えば錠剤、トローチ剤、薬用ドロップ、水性または油性の懸濁液、分散性の粉末または顆粒、エマルジョン、硬質もしくは軟質のカプセル、または、シロップもしくはエリキシル剤のような経口使用に適した形態でよい。経口使用が予定された組成物は、当業界で公知の医薬組成物の製造方法のいずれかに従って調製することができ、このような組成物は、正確な薬量の(pharmaceutically elegant)服用し易い調製製剤を与えるために、甘味料、着香料、着色料及び保存料から成るグループから選択された1種または複数の成分を含有し得る。錠剤は、医薬品に許容され錠剤製造に適した無毒性賦形剤と混合された有効成分を含有している。これらの賦形剤は例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウムのような不活性希釈剤;例えば、コーンスターチまたはアルギン酸のような造粒剤及び崩壊剤;例えば、デンプン、ゼラチンまたはアラビアゴムのような結着剤、及び、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクのような滑沢剤であろう。錠剤は、剤皮なしでもよく、または、胃腸管内での崩壊及び吸収を遅延させこれによって長期間の持続作用を与えるように公知の方法によって剤皮をかけてもよい。例えば、グリセリルモノステアレートまたはグリセリルジステアレートのような徐放材料を使用し得る。また、放出を調節する浸透圧性治療錠剤を形成するために米国特許第4,256,108号、第4,166,452号及び第4,265,874号に記載の技術によって錠剤に剤皮をかけてもよい。
【0045】
経口使用される配合製剤はまた、有効成分を不活性固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムもしくはカオリンと混合した硬ゼラチンカプセル、または、有効成分を水もしくは油媒体、例えば、ピーナツ油、液体パラフィンもしくはオリーブ油と混合した軟ゼラチンカプセルとして提供され得る。
【0046】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤と混合した有効成分を含有している。このような賦形剤は、懸濁化剤、例えば、カルボキシメチル−セルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニル−ピロリドン、トラガカントガム及びアラビアガムである。分散剤または湿潤剤は天然産生のホスファチド、例えば、レシチン、または、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合物、例えばポリオキシエチレンステアレート、または、エチレンオキシドと長鎖脂肪アルコールとの縮合物、例えば、ヘプタデカエチレン−オキシセタノール、または、脂肪酸とヘキシトールとに由来の部分エステルとエチレンオキシドとの縮合物、例えばポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、または、脂肪酸と無水ヘキシトールとに由来の部分エステルとエチレンオキシドとの縮合物、例えば、ポリエチレンソルビタンモノオレエートでよい。水性懸濁液はまた、1種または複数の保存料、例えば、エチルまたはn−プロピル、p−ヒドロキシベンゾエート、1種または複数の着色料、1種または複数の着香料、及び、1種または複数の甘味料、例えば、ショ糖、サッカリンまたはアスパルテームを含有し得る。
【0047】
液体状配合製剤は、自己乳化性薬剤デリバリーシステムとNanoCrystal(登録商標)技術とを使用する。シクロデキストリン封入複合体も利用できる。
【0048】
油性懸濁液は、植物油、例えば、落花生油、オリーブ油、ゴマ油もしくはココヤシ油、または、液体パラフィンのような鉱油に有効成分を懸濁させることによって配合し得る。油性懸濁液は、増粘剤、例えば、蜜蝋、硬質パラフィンまたはセチルアルコールを含有し得る。服用し易い経口調製製剤を得るために上記に挙げたような甘味料及び着香料を添加してもよい。これらの組成物はアスコルビン酸のような抗酸化剤の添加によって保存できる。
【0049】
水を添加することによって水性懸濁液を調製するのに適した分散性の粉末及び顆粒は、分散剤または湿潤剤、懸濁化剤及び1種または複数の保存料と混合した有効成分を提供する。適当な分散剤または湿潤剤及び懸濁化剤の代表例は上述した。追加の賦形剤、例えば甘味料、着香料及び着色料も存在させ得る。
【0050】
本発明の医薬組成物はまた、水中油型エマルジョンの形態でもよい。油相は、植物油、例えば、オリーブ油もしくは落花生油、または、鉱油、例えば、液体パラフィンでよく、または、これらの混合物でもよい。適当な乳化剤は、天然産生ホスファチド、例えば、ダイズのレシチン、脂肪酸と無水ヘキシトールとに由来のエステルまたは部分エステル、例えば、ソルビタンモノオレエート、上記の部分エステルとエチレンオキシドとの縮合物、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートでよい。エマルジョンはまた、甘味料及び着香料を含有してもよい。
【0051】
シロップ及びエリキシル剤には、甘味料、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトールまたはショ糖を配合するとよい。このような配合製剤はまた、粘滑薬、保存料、着香料及び着色料を含有し得る。医薬組成物は無菌の注射可能な水性または油脂性の懸濁液の形態でもよい。この懸濁液は、上述のような適当な分散剤または湿潤剤と懸濁化剤とを使用して当業界で公知の方法で配合し得る。無菌の注射用調製製剤はまた、非経口的に許容される無毒性の希釈剤または溶媒中の無菌の注射可能な溶液または懸濁液、例えば1,3−ブタンジオールの溶液であってもよい。使用できる適格なビヒクル及び溶媒としては、水、リンゲル液及び塩化ナトリウム等張溶液がある。更に、無菌の不揮発性油は溶媒または懸濁媒体として従来から使用されている。このためには、合成のモノ−またはジグリセリドのような任意の無刺激性の不揮発性油を使用し得る。更に、オレイン酸のような脂肪酸が注射剤の製造に使用できる。
【0052】
式Iの化合物はまた、薬剤を直腸経由で投与する座薬剤の形態で投与されてもよい。これらの組成物は、常温で固体であるが直腸温度で液体であり従って直腸内部で溶融して薬剤を放出する適当な無刺激性賦形剤と薬剤とを混合することによって調製できる。このような材料は、カカオ脂及びポリエチレングリコールである。
【0053】
局所使用のためには、式Iの化合物を含有しているクリーム、軟膏、ゼリー、溶液または懸濁液などを使用する。(この用途の場合、局所使用は口内洗剤及び含嗽剤を包含する)。
【0054】
本発明の医薬組成物はまた、トゥイーン80、トゥイーン20、ビタミンE TPGS(d−アルファ−トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート)及びGelucire(登録商標)のような吸収促進剤を使用することができる。
【0055】
上記に示した状態の治療には1日に体重1kgあたり約0.01mg−約140mg/kg、あるいは、1日に患者一人あたり約0.5mg−約7gのオーダの薬用量レベルが有効である。例えば、1日に体重1kgあたり約0.01−50mgの化合物の投与によって、あるいは、1日に患者一人あたり約0.5mg−約3g、好ましくは1日に患者一人あたり約2.5mg−約1gの投与によって炎症を効果的に治療できる。
【0056】
単一剤形を形成するために担体材料と組合せられる有効成分の量は、治療対象宿主及び特定の投与モード次第で変更される。例えば、ヒトに経口投与する予定の配合製剤は、0.5mg−5gの有効成分を適正で簡便な量の担体材料とのコンパウンドとして含有し得る。担体材料の量は全組成物の約5−約95%の範囲でよい。薬用量単位の形態は一般には、約1mg−約500mgの有効成分、典型的には25mg、50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、800mgまたは1000mgの有効成分を含有するであろう。4mg、8mg、18mg、20mg、36mg、40mg、80mg、160mg、320mg及び640mgという薬用量も使用し得る。本発明に使用し得る配合製剤の代表例を以下の表に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
錠剤の全重量と最初の3つの成分の比とを変更することによって、錠剤の薬用量濃度を有効成分4mg−625mgの範囲に調整できる。表1に指定した赤色酸化第二鉄に代えて、医薬品に許容される任意の色素またはフィルム−コートを使用し得る。
【0059】
しかしながら、特定の患者に対する特定の投与量レベルが、年齢、体重、健康状態全般、性別、食事、投与時間、投与経路、排泄速度、併用薬剤及び治療中の特定疾患の重篤度に左右されることは理解されよう。
【0060】
合成方法
シクロオキシゲナーゼ−2選択的インヒビターとして有用なスチルベン誘導体は、米国特許第5,849,943号に開示されている。該特許の記載内容全体が参照によって本発明に含まれるものとする。
【0061】
COX−2インヒビターとして有用なジアリール2−(5H)−フラノンは当業界で公知であり、米国特許第5,474,995号に開示されている。該特許の記載内容全体が参照によって本発明に含まれるものとする。COX−2インヒビターとして有用なジアリール2−(5H)−フラノンの製造方法は米国特許第5,840,924号に開示されている。該特許の記載内容全体が参照によって本発明に含まれるものとする。商品名VIOXXで販売されているロフェコキシブは当業界で公知であり、市販されている。
【0062】
本発明の化合物は以下の合成スキームに従って合成できる:
スキーム1
【0063】
【化9】

スキーム1に使用した略号
D.M.=Dess−Martin試薬
DMF=N,N−ジメチルホルムアミド
HF.pyr=フッ化水素ピリジン(70/30)
スキーム2
【0064】
【化10】

スキーム2に使用した略号
D.M.=Dess−Martin試薬
DMAP=4−(ジメチルアミノ)ピリジン
DMF=N,N−ジメチルホルムアミド
EDCl=1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩
HCl=塩酸
HF.pyr=フッ化水素ピリジン(70/30)
t−Boc−グリシン=N−tert−ブトキシカルボニル−グリシン
TFA=トリフルオロ酢酸
生物活性を定量するアッセイ
式Iの化合物の生物活性を定量するために以下のアッセイを使用して式Iの化合物を試験できる。
【0065】
シクロオキシゲナーゼ活性の阻害
全細胞アッセイ及びミクロソームシクロオキシゲナーゼアッセイで化合物がシクロオキシゲナーゼ活性のインヒビターであることを試験する。これらの双方のアッセイでは、ラジオイムノアッセイを使用し、アラキドン酸に応答したプロスタグランジンE(PGE)の合成を測定する。全細胞アッセイに使用した細胞またミクロソームアッセイのミクロソームの調製材料とした細胞は、ヒトの骨肉腫143細胞(これは特にシクロオキシゲナーゼ−2を発現する)及びヒトのU−937細胞(これは特にシクロオキシゲナーゼ−1を発現する)である。これらのアッセイでは、添加アラキドネートの非存在下及び存在下のプロスタグランジンE合成の差を100%活性と定義する。IC50の値は、PGE合成量を非阻害対象で得られた量に比べて50%に戻すために必要な推定インヒビターの濃度を表す。
【0066】
A.ミクロソームシクロオキシゲナーゼアッセイ
従来技術に記載された手順でCoxミクロソーム画分を調製する(Percivalら,Arch.Biochem.Biophys.(1994)315:111−118)。各10μg/mlのCox−1またはCox−2ミクロソーム画分を補充した50mMのKPi pH8.0、1μMのヘム、1mMのフェノール中で酵素反応を行わせる。1μlのDMSOまたは被験化合物(DMSOで100倍にした濃縮予製液)を100μlのバッファに加える。15分後に10μlの100μMのアラキドン酸を加えて酵素反応を開始させる。酵素反応を室温で5分間進行させた後、10μlの1NのHClを加えて酵素反応を停止させる。次にEIA(Assay Designs)を製造業者の指示通りに使用するにことによってPGEレベルを定量する。
【0067】
このアッセイは、本発明の未変換プロドラッグがCOX−1及びCOX−2の双方に不活性であることを証明するために使用し得る。
【0068】
B.ヒト全血シクロオキシゲナーゼアッセイ
原理
全血は、COX−2インヒビター及びNSAIDのような抗炎症性化合物の生化学的効能を研究するためのタンパク質及び細胞に富む媒体を提供する。シクロオキシゲナーゼの2つのアイソフォーム(COX−1及びCOX−2)に対するこれらの化合物の阻害活性を研究するために、ヒトの血液をリポ多糖(LPS)で24時間刺激してCOX−2を誘発するか、または、血液を自然に凝固させてCOX−1を活性化する。インキュベーションの終了後にプロスタグランジンE(PGE)及びトロンボキサンB(TXB)の産生をイムノアッセイによって測定しそれぞれCOX−2及びCOX−1の活性として読出す。
【0069】
方法
従来技術(Brideauら,1996)で報告されているCOX−1及びCOX−2の活性を測定するヒト全血アッセイを以下に記載の手順で行う。
【0070】
1.COX−2(LPS−誘発PGE産生):
静脈穿刺によって健康な男性献血者から新鮮血液をヘパリン管に採取する。これらの被験者は見かけの炎症状態がなく、採血前の少なくとも7日間はNSAIDを全く服用していない。血液を最初に100μg/mlの細菌性リポ多糖(LPS)(Sigma Chem,大腸菌#L−2630、血清型0111:B4;0.1%w/vウシ血清アルブミンを含むリン酸塩緩衝生理的塩類溶液に希釈)と共にプレインキュベートする。5分後、LPS−処理血液の500μLのアリコートを2μLのビヒクル(DMSO)または2μLのDMSO中の被験化合物と共に37℃で24時間インキュベートする(COX−2を誘発するため)。時点0で非刺激の対照血液(LPS不使用)をブランクとして使用する。24時間のインキュベーション後、血液を40℃、3,000rpmで10分間遠心して血漿を得る。エンザイムイムノアッセイキット(Assay Designs,901−001)を製造業者の指示通りに使用して血漿のPGEを検定する。
【0071】
2.COX−1(凝血誘発TXB産生):
凝固防止剤を収容していない採血容器(vacutainer)に男性または女性の献血者から新鮮血液を採取する。これらの被験者は見かけの炎症状態がなく、採血前の少なくとも7日間はNSAIDを全く服用していない。500μLのアリコートを、2μLのDMSOまたは2μLの被験化合物を予め充填したポリプロピレン管に直ちに移す。管を回し振り、37℃で1時間インキュベートして血液を凝固させる。インキュベーションの終了後、遠心(40℃、3,000rpmで10分間)によって血清を採集する。血清を集め、エンザイムイムノアッセイキット(Assay Designs,901−002)を製造業者の指示通りに使用してTXBを検定する。
【0072】
結果
実施例1によるヒト全血アッセイ中のPGE産生を阻害するIC50値は0.22±0.04μM(n=6)であった。実施例1による凝血誘発TXBレベルは7.8±2.6μM(n=3)のIC50で阻害された。従って、実施例1はin vitroヒト末梢血アッセイでCOX−1に比べてCOX−2の強力な選択的インヒビター(COX1/COX−2:35倍)である。
【0073】
代表的なラットの足浮腫アッセイ−プロトコル
原理
ラットのカラゲナン誘発足浮腫アッセイは急性炎症に慣用の非選択的NSAIDの効能を評価するための確立したアッセイである(Winter and Flataker,1965;Mukherjeeら,1996;Vinegarら,1987)。
【0074】
方法
オスのスプレーグ−ドーリーラット(200−250g)を16−18時間絶食させた後、ビヒクル(0.5%メトセル)または被験化合物を経口投与する。1時間後、一方の後足の踝より高い処に永久マーカーで線を引いてモニターすべき足の領域を限定する。プレチスモメーター(Ugo−Basile,Italy)を使用しアルキメデスの水排除の原理に基づいて足の体積(V)を測定する。次に、27ゲージ針の付いたシリンジを使用し、1%のカラゲナン(Sigma Chem.)を含む0.05mLの生理的塩類溶液をラットの足裏に注射する(即ち、足あたり500μgのカラゲナン)。3時間後、足の体積(V)を再度測定し、足の体積増加(V−V)を計算する。足の浮腫をビヒクル−対照グループに比較し、対照グループの値を0%として阻害パーセントを計算する。
【0075】
結果
実施例1(1時間の前処理)は1mg/kgでカラゲナン誘発浮腫レスポンスを用量依存的に49%阻害した。実施例1は、急性炎症モデルで対応する活性成分ロフェコキシブの力価と同等の力価をもつ強力な抗炎症性化合物である。
【0076】
ラットのNSAID誘発胃障害
原理
慣用のNSAIDの主要な副作用はヒトの胃障害を生じさせる能力である。ラットはNSAIDの作用に感受性であり、現在慣用のNSAIDの胃腸副作用を鑑定するためにこれまで常用されている。このアッセイでは、51Cr−EDTAの経口投与後に尿に排泄される51Crを測定することによってNSAID誘発胃腸障害を観察する。尿に排泄される51Crの測定は動物及びヒトの胃腸の保全性を検出するための確立した高感度の技術である。
【0077】
方法
オスのスプレーグ−ドーリーラット(150−200g)に被験化合物を一回(急性投与)または数日にわたって複数回(慢性投与)経口投与する。最終回の投与の直後にラットに51Cr−EDTA(10μCi/ラット)を経口投与する。動物を一匹ずつ代謝ケージに入れ、餌と水は任意に摂取させる。尿を24時間収集し、尿に排泄された51Crを摂取させた全線量のパーセントとして計算する。
【0078】
リスザルのタンパク質喪失性胃障害
原理
タンパク質喪失性胃障害(胃腸管内での細胞及び血漿タンパク質の循環現象として現れる)はNSAIDの用量を限定する重要な副反応である。これは、51CrCl溶液の静脈内投与によって定量的に査定できる。このアイソトープイオンは細胞及び血清グロビン及び細胞小胞体に盛んに結合できる。従って、アイソトープ投与後の24時間で収集した糞便中に現れる放射能の測定値がタンパク質喪失性胃障害の高感度の定量的な指標となる。
【0079】
方法
オスのリスザル(0.8−1.4kg)のグループを1%のメトセルまたは複数用量の被験化合物の強制摂取によって数日間処理する。薬剤/ビヒクルの最終投与の1時間後に51Cr(1ml/kgのPBS中の5μCi/kg)を静脈内投与し、代謝ケージの糞便を24時間収集して、排泄された51Crをガンマカウンティングによって集計する。糞便中の51Crの排泄量を全注入用量のパーセントとして計算する。
【0080】
オスのスプレーグ−ドーリーラットのラット大動脈平滑筋リング
ラットの大動脈平滑筋リングの調製。オスのスプレーグ−ドーリーラット(Charles River Laboratories,Wilmington,MA)を、高用量のペントバルビトンナトリウム(80−100mg/kg)の腹腔内注射によって安楽死させる。胸部大動脈を速やかに摘出し、酸素を添加して(95%のO、5%のCO)温めた(37℃)クレブスバッファ(1ミリモルあたりの組成:NaCl(119);KCl(4.69);CaCl.HO(2.52);MgSO.7HO(0.57);NaHCO,(25);NaHPO.,.HO)(1.01)及びグルコース(11.1))を収容したシャーレに直ちに入れる。立体解剖顕微鏡下で、大動脈を洗浄し、接着している脂肪及び結合組織を除去する。組織を各々が約2−3mm長さのリングセグメントに裁断する。
【0081】
種々の条件下の組織の弛緩を測定する実験のために、ステンレススチールの組織ホルダーとU形ステンレススチールワイヤとを大動脈リングの内腔に挿入する。組織ホルダーでリングを器官バスの底部に固定し、U形スチールワイヤの末端に細い絹糸を結び付け、FT−202変換器に接続させる。次に組織ホルダーとスチールワイヤとを大動脈リングと共に、新しいクレブスバッファを満たした5ml容の二重ジャケット付き温度調整ガラス製の器官バス(Radnoti Glass Technology,Inc,Monrovia,CA)に吊り下げる。95%Oと5%COとの混合物をバスの底部の多孔性焼結ディスクを介して吹き込む。リングに初期静止張力1.5gを与え、初期張力で調製物を約90分間平衡させる。この平衡期間中に、バスの流体を15分毎に交換し、予め温めた(37℃)新しいクレブスバッファを補充する。低ノイズETH−400バイオアンプリファイア(CB Sciences,Inc,Milford,MA)による初期増幅後に、静止大動脈筋の等張性張力と種々の刺激に対するそのレスポンスとをMacLab 8/Sコンピュータインターフェース(CB Sciences,Inc,Milford,MA)を介してPower Macintosh 6100コンピュータに記録する。組織ストリップの収縮レスポンス性を10TMのフェニルエフリンで成立させ、定常レベルの収縮を成立させるためにストリップを薬剤と共に20分間インキュベートする。
【0082】
弛緩効果を試験するためには、組織バスに入れたフェニルエフリンで予め収縮させたストリップに被験化合物を0.1μM−0.1mMの累増濃度で添加する。前の濃度で弛緩がプラトーレベルに到達した後ではじめて被験化合物の濃度を増やす。
【0083】
ラットの胃糜爛モデル
アスピリンと併用投与した本発明の組合せの胃保護効果を以下のアッセイで鑑定し得る。
【0084】
オスのWistarラット(200−250g)を16−18時間絶食させた後で実験に使用した。アスピリン、アスピリンと併用するロフェコキシブ(別々に投与)、または、アスピリンと併用する被験化合物(別々に投与)を実験当日の朝、0.5%メトセル中の1ml/kgの投与量で与えた。3時間後、CO吸入によって動物を安楽死させ、胃を摘出し、生理的塩類溶液で洗浄し、イメージングプロセシングの準備をした。ディジタルカメラを使用して胃の顕微鏡写真を撮影し、処理グループについて知らない観測者がイメージングソフトウェアを使用して胃の糜爛を測定した。胃の糜爛の長さをmmで測定し、各胃のすべての糜爛の全長を算定して胃の損傷のスコアとして使用した。
【0085】
このモデルはまた、S.Fiorucciら,Gastroenterology,vol.123,pp.1598−1606,2002及びM.Souzaら,Am.J.Physiol.Gastrointest.Liver Physiol.,vol.285,pp.G54−G61,2003にも記載されている。
【0086】
上記アッセイで試験すると、実施例1をアスピリンと併用投与したときにはアスピリンと共に投与したロフェコキシブに比べて有意に胃を保護することが証明された。
【0087】
(実施例)
次に、本発明を以下の非限定実施例によって説明する。これらの実施例は、異なる記述がない限り、以下の条件で行った。
【0088】
すべての処理は、室温または周囲温度、即ち、18−25℃の範囲の温度で行った。溶媒の蒸発は回転蒸発器を使用して減圧下(600−4000パスカル;4.5−30mm.Hg)で60℃までの浴温度で行った。反応の進行を薄層クロマトグラフィー(TLC)によって追跡し、反応時間は代表的な時間だけを示した。融点は未補正であり、“d”は分解を表す。示した融点は、記載の手順で調製した材料の融点である。いくつかの調製物は多形性なので異なる融点をもつ複数の物質に単離できる。すべての最終生成物の構造及び純度は、以下の技術の少なくとも1つによって確認した:TLC、マススペトクロメトリー、核磁気共鳴(NMR)スペクトロメトリーまたは微量分析データ;収量は代表例を示しただけである。NMRデータが与えられている場合、これらのデータは、指定した溶媒を使用して300MHz、400MHzまたは500MHzで測定し内部標準としたテトラメチルシラン(TMS)に対するパーツパーミリオン(ppm)で与えられたメジャー診断プロトンのデルタ(δ)値の形態である。シグナル形には慣用の略号を使用した:s.singlet;d.doublet;t.triplet;m.multiplet;br.broad;など。更に、“Ar”は芳香族シグナルを意味する。化学記号は常用の意味である。以下の略号も使用した:v(容量)、w(重量)、b.p.(沸点)、m.p.(融点)、L(リットル)、mL(ミリリットル)、g(グラム)、mg(ミリグラム)、mol(モル)、mmol(ミリモル)、eq(当量)。
【0089】
以下の略号は以下に示す意味を有している:
Ac=アセチル
Boc−Glycine=N−tert−ブトキシカルボニル−グリシン
DIBAL=水素化ジイソブチルアルミニウム
DMAP=4−(ジメチルアミノ)ピリジン
DMF=N,N−ジメチルホルムアミド
EDCl=1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩
GMP=良好な製造実績
HF.pyr=フッ化水素ピリジン(70/30)
IPAc=イソプロピルアセテート
TBS=tert−ブチル(ジメチル)シリル
TBSCl=tert−ブチル(ジメチル)シリルクロリド
THF=テトラヒドロフラン
アルキル基略号
Me=メチル
Et=エチル
t−Bu=tertiaryブチル
以下の構造を有しているDess−Martin試薬は当業界で公知である:
【0090】
【化11】

Dess,D.B.;Martin,J.C.,J.Org.Soc.,1983,48,4155参照。
【実施例1】
【0091】
6−(ニトロオキシ)ヘキシル(2Z)−4−(アセチルオキシ)−3−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−2−フェニルブト−2−エノエート
【0092】
【化12】

段階1:(2Z)−2−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−3−フェニルブト−2−エン−1,4−ジオール
【0093】
【化13】

−78℃で撹拌した1.5Lのジクロロメタン中の110gの4−(4−メタンスルホニル−フェニル)−3−フェニル−5H−フラン−2−オンの溶液に、150mLのDIBALを滴下した。得られた混合物を室温に加温し、一夜撹拌した。次に反応混合物を−78℃に冷却し、1.2Lの1MのNaOH水溶液を滴下した。添加後、得られた混合物を室温に加温し、有機相を分離した。水相をジクロロメタンで抽出した。有機相を集めてNaSOで乾燥した。蒸発後に110gの標題化合物が得られた。H NMR(アセトン−d6,500MHz):δ7.69(d,2H),7.36(d,2H),7.16−7.05(m,5H),4.66(d,2H),4.63(d,2H),4.19(t,1H,OH),4.17(t,1H,OH),3.04(s,3H)。
【0094】
段階2:(2Z)−4−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−2−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−3−フェニルブト−2−エン−1−オール
【0095】
【化14】

−78℃で撹拌した1LのTHF中の110gの(2Z)−2−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−3−フェニルブト−2−エン−1,4−ジオールと50gのイミダゾールとの溶液に、250mLのジクロロメタン中の51gのTBSClの溶液を滴下した。得られた混合物を−78℃で0.5時間撹拌した。次にブラインを添加し、次いで室温に加温した。有機相を分離し、水相をEtOAcで抽出した。有機相を集めてNaSOで乾燥し、蒸発させた。得られた未精製材料をフラッシュクロマトグラフィーによって精製すると、25.6gの標題化合物が白色固体として得られた。H NMR(アセトン−d6,500MHz):δ7.69(d,2H),7.37(d,2H),7.18−7.04(m,5H),4.77(s,2H),4.65(d,2H),3.96(t,1H,OH),3.03(s,3H),0.84(s,9H),0.01(s,6H)。
【0096】
段階3:(2Z)−4−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−2−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−3−フェニルブト−2−エニルアセテート
【0097】
【化15】

1Lのジクロロメタン中の46gの(2Z)−4−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−2−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−3−フェニルブト−2−エン−1−オールと120mmolのDMAPとの溶液に、120mmolの無水酢酸を滴下した。得られた混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物をシリカゲルカラムに充填し、EtOAcで溶出させると、50.5gの標題化合物が白色固体として得られた。H NMR(アセトン−d6,500MHz):δ7.68(d,2H),7.33(d,2H),7.15−7.04(m,5H),5.16(s,2H),4.75(s,2H),3.02(s,3H),1.92(s,3H),0.81(s,9H),−0.03(s,6H)。
【0098】
段階4:(2Z)−4−ヒドロキシ−2−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−3−フェニルブト−2−エニルアセテート
【0099】
【化16】

125mLのMeCN中の50.5gの(2Z)−4−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−2−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−3−フェニルブト−2−エニルアセテートの溶液に、10mLのPyHFを添加し、得られた混合物を室温で1.5時間撹拌した。反応混合物を600mLのトルエンで希釈し、次いでシリカゲルカラムに充填し、EtOAcで溶出させた。溶媒を蒸発させると38.3gの標題化合物が得られた。H NMR(アセトン−d6,500MHz):δ7.68(d,2H),7.32(d,2H),7.15−7.00(m,5H),5.20(s,2H),4.62(d,2H),4.09(t,1H,OH),3.02(s,3H),1.92(s,3H)。
【0100】
段階5:(2Z)−4−(アセチルオキシ)−3−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−2−フェニルブト−2−エン酸
【0101】
【化17】

500mLのジクロロメタン中の38.3gの(2Z)−4−ヒドロキシ−2−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−3−フェニルブト−2−エニルアセテートの溶液に、47gのDess−Martin試薬を加え、得られた混合物を室温で2時間撹拌した。2mLの水を添加し、得られた混合物を室温で1時間撹拌した。次に混合物を濾過し蒸発させた。このようにして得られた未精製物を200mLのTHFと200mLのt−BuOHとから成る溶媒混合物に溶解させた。得られた混合物に30mLの2−メチル−2−ブテンを添加し、次いで200mLの1.2Mのリン酸と200mLの1MのNaClOとを添加した。得られた混合物を室温で30分間撹拌した。有機相を分離し、水相をEtOAcで抽出した。有機相を集めてNaSOで乾燥し、濾過し、次いで蒸発させた。未精製物をエーテルから再結晶化によって精製すると、37gの標題化合物が白色固体として得られた。H NMR(アセトン−d6,500MHz):δ7.76(d,2H),7.43(d,2H),7.18−7.12(m,3H),7.12−7.08(m,2H),5.24(s,2H),3.05(s,3H),1.88(s,3H)。
【0102】
段階6:6−ブロモヘキシル(2Z)−4−(アセチルオキシ)−3−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−2−フェニルブト−2−エノエート
【0103】
【化18】

30mLのDMF中の2.6gの(2Z)−4−(アセチルオキシ)−3−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−2−フェニルブト−2−エン酸と17gの1,6−ジブロモヘキサンとの溶液を、1.0gのKCOと共に室温で1時間撹拌した。次に塩化アンモニウムの飽和溶液を添加し、EtOAcで抽出した。有機層を集めてブラインで洗浄し、NaSOで乾燥した。溶媒を蒸発させ、残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(5−50%EtOAc/ヘキサン)によって精製すると、3.6gの標題化合物が白色固体として得られた。H NMR(アセトン−d6,500MHz):δ7.80(d,2H),7.47(d,2H),7.22−7.15(m,3H),7.12−7.05(m,2H),5.21(s,2H),4,27(t,2H),3.48(t,2H),3.08(s,3H),1.93(s,3H),1.86−1.80(m,2H),1.74−1.68(m,2H),1.50−1.41(m,2H),1.41−1.34(m,2H)。
【0104】
段階7:6−(ニトロオキシ)ヘキシル(2Z)−4−(アセチルオキシ)−3−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−2−フェニルブト−2−エノエート
【0105】
【化19】

50mLのMeCN中の3.6gの6−ブロモヘキシル(2Z)−4−(アセチルオキシ)−3−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−2−フェニルブト−2−エノエートと3.6gのAgNOとの溶液を85℃で12分間加熱した。溶媒を蒸発させ、残渣をEtOAcと共に10分間撹拌し濾過した。溶媒を蒸発させ、残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(5−55%EtOAc/ヘキサン)によって精製すると、3.24gの標題化合物が白色固体として得られた。H NMR(アセトン−d6,500MHz):δ7.76(d,2H),7.43(d,2H),7.18−7.13(m,3H),7.12−7.04(m,2H),5.18(s,2H),4,50(t,2H),4.24(t,2H),3.05(s,3H),1.90(s,3H),1.75−1.65(m,4H),1.44−1.31(m,4H)。
【実施例2】
【0106】
(2Z)−2−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−4−{[6−(ニトロオキシ)ヘキシル]オキシ}−4−オキソ−3−フェニルブト−2−エニルグリシネートクロリド
【0107】
【化20】

段階1:(2Z)−4−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−2−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−3−フェニルブト−2−エニルN−(tert−ブトキシカルボニル)グリシネート
【0108】
【化21】

0℃の125mLのCHCl中の16.4gの(2Z)−4−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−2−[4−(メチル−スルホニル)フェニル]−3−フェニルブト−2−エン−1−オールと1.92gのDMAPと7.30gのBoc−グリシンとの溶液に8.0gのEDClを添加した。反応混合物を4時間撹拌した。次に塩化アンモニウムの飽和溶液を添加し、EtOAcで抽出した。有機層を集めて、ブラインで洗浄し、NaSOで乾燥した。溶媒を蒸発させ、残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(5−55%EtOAc/ヘキサン)によって精製すると、22gの標題化合物が無色油として得られた。H(500MHz,アセトン−d6):δ7.67(d,2H),7.34(d,2H),7.13−7.04(m,5H),6.26(br s,NH),5.23(s,2H),4.76(s,2H),3.73(d,2H),3.02(s,3H),1.40(s,9H),0.81(s,9H),−0.01(s,6H)。
【0109】
段階2:(2Z)−4−ヒドロキシ−2−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−3−フェニルブト−2−エニルN−(tert−ブトキシカルボニル)グリシネート
【0110】
【化22】

100mLのMeCN中の22gの(2Z)−4−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−2−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−3−フェニルブト−2−エニルN−(tert−ブトキシ−カルボニル)グリシネートの溶液に、7mLのPyHFを添加し、得られた混合物を室温で1.5時間撹拌した。反応混合物を500mLのトルエンで希釈し、次いでシリカゲルカラムに充填し、EtOAcで洗浄した。溶媒を蒸発させると、16.9gの標題化合物が得られた。H NMR(500MHz,アセトン−d6):δ7.69(d,2H),7.35(d,2H),7.33−7.06(m,5H),6.28(br s,NH),5.24(s,2H),4.62(d,2H),3.73(d,2H),3.02(s,3H),1.40(s,9H)。
【0111】
段階3:(2Z)−4−{[N−(tert−ブトキシカルボニル)グリシル]オキシ}−3−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−2−フェニルブト−2−エン酸
【0112】
【化23】

100mLのジクロロメタン中の16.7gの(2Z)−4−ヒドロキシ−2−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−3−フェニル−ブト−2−エニルN−(tert−ブトキシカルボニル)グリシネートの溶液に、19.2gのDess−Martin試薬を添加し、得られた混合物を室温で1時間撹拌した。次いで、1.5mLの水を添加し、得られた混合物を室温で30分間撹拌した。次に混合物を濾過し、蒸発させた。このようにして得られた未精製物を100mLのTHFと100mLのt−BuOHとから成る溶媒混合物に溶解させた。得られた混合物に30mLの2−メチル−2−ブテンを添加し、次いで100mLの1.2Mのリン酸と100mLの1MのNaClOとを添加した。得られた混合物を室温で30分間撹拌した。有機相を分離し、水相をEtOAcで抽出した。有機相を集めて、NaSOで乾燥し、濾過し、次いで蒸発させた。未精製物をエーテルから再結晶化によって精製すると、14.8gの標題化合物が白色固体として得られた。H NMR(500MHz,アセトン−d6):δ11.5(br,s,OH),7.76(d,2H),7.43(d,2H),7.17−7.09(m,5H),6.25(br s,NH),5.33(s,2H),3.67(d,2H),3.05(s,3H),1.39(s,9H)。
【0113】
段階4:6−ブロモヘキシル(2Z)−4−{[N−(tert−ブトキシカルボニル)グリシル]オキシ}−3−[4−(メチル−スルホニル)フェニル]−2−フェニルブト−2−エノエート
【0114】
【化24】

20mLのDMF中の1.88gの(2Z)−4−{[N−(tert−ブトキシカルボニル)グリシル]オキシ}−3−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−2−フェニルブト−2−エン酸と9.6gの1,6−ジブロモヘキサンとの溶液を、550mgのKCOと共に室温で2時間撹拌した。次に、塩化アンモニウムの飽和溶液を添加し、EtOAcで抽出した。有機層を集めて、ブラインで洗浄し、NaSOで乾燥した。溶媒を蒸発させ、残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(5−50%EtOAc/ヘキサン)によって精製すると、2.1gの標題化合物が無色油として得られた。H NMR(500MHz,アセトン−d6):δ7.76(d,2H),7.43(d,2H),7.17(m,3H),7.08(d,2H),6.24(br s,NH),5.27(s,2H),4.24(t,2H),3.68(d,2H),3.45(t,2H),3.05(s,3H),1.81(m,2H),1.68(m,2H),1.44−1.32(m,4H),1.39(s,9H)。
【0115】
段階5:6−(ニトロオキシ)ヘキシル(2Z)−4−{[N−(tert−ブトキシカルボニル)グリシル]オキシ}−3−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−2−フェニルブト−2−エノエート
【0116】
【化25】

50mLのMeCN中の2.0gの6−ブロモヘキシル(2Z)−4−{[N−(tert−ブトキシカルボニル)グリシル]オキシ}−3−[4−(メチル−スルホニル)フェニル]−2−フェニルブト−2−エノエートと1.6gのAgNOとの溶液を85℃で2時間加熱した。溶媒を蒸発させ、残渣をEtOAcと共に10分間撹拌し、濾過した。溶媒を蒸発させ、残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(5−50%EtOAc/ヘキサン)によって精製すると、1.5gの標題化合物が無色油として得られた。H NMR(500MHz,アセトン−d6):δ7.76(d,2H),7.43(d,2H),7.16(m,3H),7.08(d,2H),6.24(br s,NH),5.25(s,2H),4.51(t,2H),4.25(t,2H),3.68(d,2H),3.05(s,3H),1.72−1.66(m,4H),1.44−1.35(m,4H),1.39(s,9H)。
【0117】
段階6:(2Z)−2−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−4−{[6−(ニトロオキシ)ヘキシル]オキシ}−4−オキソ−3−フェニルブト−2−エニルグリシネートクロリド
【0118】
【化26】

0℃の7mLのEtO中の1.25gの6−(ニトロオキシ)ヘキシル(2Z)−4−{[N−(tert−ブトキシカルボニル)グリシル]オキシ}−3−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−2−フェニルブト−2−エノエートの溶液に10mLのHCl 2M/EtOを添加した。混合物を一夜撹拌し、次いで濾過し、固体を冷EtOで洗浄すると、950mgの標題化合物が白色固体として得られた。H NMR(500MHz,DMSO−d6):δ8.39(br,s,NH),7.75(d,2H),7.41(d,2H),7.18(m,3H),7.00(d,2H),5.28(s,2H),4.46(t,2H),4.19(t,2H),3.68(s,2H),1.61−1.56(m,4H),1.34−1.21(m,4H)。
【実施例3】
【0119】
5−(ニトロオキシ)ペンチル(2Z)−4−(アセチルオキシ)−3−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−2−フェニルブト−2−エノエート
実施例1の製造に記載した手順に従って標題化合物を白色固体として単離した。
【0120】
【化27】

1H NMR(500MHz,アセトン):δ7.76(d,2H),7.43(d,2H),7.18−7.16(m,3H),7.09−7.07(m,2H),5.18(s,2H),4.50(t,2H),4.26(t,2H),3.05(s,3H),1.90(s,3H),1.76−1.70(m,4H),1.47−1.41(m,2H)。
【実施例4】
【0121】
7−(ニトロオキシ)ヘプチル(2Z)−4−(アセチルオキシ)−3−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−2−フェニルブト−2−エノエート
実施例1の製造に記載した手順に従って標題化合物を白色固体として単離した。
【0122】
【化28】

1H NMR(500MHz,アセトン):δ7.77(d,2H),7.44(d,2H),7.18−7.16(m,3H),7.09−7.07(m,2H),5.18(s,2H),4.52(t,2H),4.24(t,2H),3.05(s,3H),1.89(s,3H),1.72−1.64(m,4H),1.40−1.31(m,6H)。
【0123】
実施例1を合成するために代替方法を以下に示す。
【0124】
代替方法−実施例1
【0125】
【化29】

段階1:グリニャールカルボメタレーション反応
【0126】
【化30】

フラスコに、49.2mlのTHF、3−フェニル−2−プロピン−1−オール(10.0g,75.6mmol)を順次に充填する。次に、3.0Mのメチルマグネシウムクロリド溶液(26.5mL,79.4mmol)、1.8Mのアリールグリニャール試薬(46.2mL,83.2mmol)を順次に添加する。反応容器を還流温度(65℃)まで加温し、4時間維持する。
【0127】
次いで、反応混合物を室温(23℃)に冷却し、二酸化炭素を反応混合物に直接吹き込むと、溶液が35℃になる。内部温度を35℃に維持しながら溶液を更に15−30分間エージングする。
【0128】
二酸化炭素をヘッドスペースから排気した後、反応混合物にTHF中の1.0Mのカリウムt−ブトキシド溶液(37.8mL,37.8mmol)を加える。この混合物を40分間エージングし、無水酢酸(13.9mL,147.5mmol)を加える。反応混合物を室温(23℃)で100分間撹拌し、次に追加量のTHF(189ml)及び45重量%の水酸化ナトリウム(5.8ml,68.1mmol)を充填する。溶液を40℃で6−10時間撹拌し、次いで室温に冷却する。最後に、1.4Mの塩化マグネシウム溶液(全量132mL−水中に38.4gのMgCl6HO)を容器に充填し、15−30分間撹拌する。次に有機層と水層とを分離し、有機層を180mLに濃縮する。次いでTHF濃縮物に水(9.5mL)、IPAc(342mL)を順次に添加し、バッチを23℃で2−4時間エージングし、次いで氷浴で0℃に冷却し、更に1時間エージングする。
【0129】
結晶質の固体を濾過し次いで水(100ml)及び低温(0℃)のIPAc(100mL)で洗浄すると、15.6gの所望の結晶質水和マグネシウム塩が得られる(単離効率82%)。
【0130】
段階2:塩破壊反応
【0131】
【化31】

オーバーヘッドパドル撹拌器、熱電対、滴下漏斗、Claisenアダプター及び窒素導入口を備えた125mL容のジャケット付きフラスコに80mLの2Mの酢酸溶液を充填した。酢酸溶液を35−40℃に加温した。
【0132】
別に、10.68gの未精製マグネシウム塩iiiを20mLのDMFに溶解し、透明な濃い黄色の溶液を滴下漏斗に移した。次にマグネシウム塩iiiのDMF溶液を35−40℃の2Mの酢酸溶液に40分間で滴下し、次いでDMFリンス(4mL)を加えた。添加の完了後、スラリーを室温に放冷した。バッチを濾過し、GMP水中の20%DMFで洗浄し、次いでGMP水で2回洗浄した。
【0133】
乾燥した真空オーブンでバッチを真空下、35℃で窒素掃引を伴って乾燥した。7.23gの酸ivを白色結晶質固体として88%の回収率で単離した。
【0134】
段階3:酸化反応
【0135】
【化32】

酢酸(97mL)中の酸iv(10.3g,29.2mmol)の混合物を40℃に加熱し、過酸化水素(30%,12.4mL,146mmol)を30分間で添加した。残留スルホキシドがなくなったとき(8時間)、水(194mL)を加えた。混合物に0.6%のスルホン酸(60mg)をシードし、温度を40℃で1時間維持した後、2時間で−10℃に冷却し、この温度で15時間維持した。生成物を濾過によって単離し、水(2×27mL)で洗浄し、真空下、50℃で乾燥すると、酸v(9.78g,89%)が白色結晶質固体として得られた。
【0136】
段階4:カップリング反応
【0137】
【化33】

オーバーヘッド撹拌器、熱電対及び窒素導入口を備えた1L容の丸底フラスコに、160mLのDMF、液体ブロモヘキサノールvi(16.34g,88.4mmol)、固体スルホン酸v(30.3g,80.4mmol)及び10mLのリンス用DMFを充填して、室温で透明溶液を調製した。得られたこの溶液に次に20−22℃の粉末KCO(11.0g,80.4mmol)を一度に添加し、次いで20mLのリンス用DMFを添加し、次に20−22℃で30分間撹拌し、次いで40−45℃で5時間加熱した。
【0138】
反応混合物を〜20℃に冷却し、IPAc(350mL)を導入し、次いで氷冷水(180mL)をゆっくりと添加して温度を<30℃に維持した。混合物を0.5時間撹拌し、沈降させると2つの透明な層が得られた。水層を分離し、IPAc(350mL)で逆抽出した。有機層を集めて水(2×180L)で洗浄した。次に有機層を真空下で〜180mLに濃縮し、180mLの新しいIPAcでフラッシした。得られた濃溶液を(固体塩化ナトリウムが観察されたときは焼結漏斗で濾過し)170−180mg/mLの濃度に調整した(〜180mL,KF<200μg/ml)。この溶液に、19−20℃の90mLのn−ヘプタンを添加し、次いで〜0.30gのシードを添加し、1−2時間エージングすると18−20℃で良好なシード床が得られた。残りのn−ヘプタン(270mL)を1−2時間で導入し、次いで更に8時間エージングした。スラリーを−5℃から0℃までの範囲に冷却し、次いで濾過した。ケーキを低温のIPAc/n−ヘプタンプレミックス(1/4,150mL)で洗浄し、窒素下、室温で12時間風乾した。単離した白色結晶質固体(36.2g)が94%収率で得られた。
【0139】
段階5:ニトロ化反応
【0140】
【化34】

硝酸(90%,2.30g,32.9mmol)をジクロロメタン(46mL)中の無水酪酸(6.27g,39.7mmol)の冷却溶液(0℃)に添加した。0℃で1時間のエージング後、溶液を−10℃に冷却し、ジクロロメタン(33mL)中のアルコール(10.0g,21.1mmol)の溶液を30分で添加した。反応は1時間以内に完了し、KPO(33mLの2M水溶液)を添加して反応を停止させた。トルエン(46mL)を添加すると、層が分離した。有機層を尿素溶液(83mLの0.5重量%水溶液)で洗浄後に容量約70mLに濃縮した。ヘプタン(90mL)を添加し、生成物を結晶化させた。得られた固体を濾過によって単離し、窒素流下で乾燥すると、結晶質の標題化合物が得られた(10.3g,94%;mp80℃)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

[式中、
nは3−6の整数、
は、
(a)S(O)CH
(b)S(O)NH
(c)S(O)NHC(O)CF
(d)S(O)(NH)CH
(e)S(O)(NH)NH
(f)S(O)(NH)NHC(O)CF
(g)P(O)(CH)OH、及び、
(h)P(O)(CH)NH
から成るグループから選択され、
及びRの各々は独立に、
(a)水素
(b)ハロ
(c)C1−6アルコキシ
(d)C1−6アルキルチオ
(e)CN
(f)CF
(g)C1−6アルキル、及び、
(h)N
から成るグループから選択され、

(a)−C(O)−C1−4アルキル、及び、
(b)−C(O)−(CH−N(R)(R
から成るグループから選択され、
mは1−4の整数であり、
及びRの各々は独立に、水素、及び、1−3個のハロ基によって置換されるかまたは未置換のC1−4アルキルから成るグループから選択される]
の化合物または医薬として許容されるその塩。
【請求項2】
がS(O)CHであり、
及びRの双方が水素である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
nが3、4または5である請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
nが4である請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
がアセチルである請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
がグリシニルである請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
式:
【化2】

で表される化合物。
【請求項8】
式:
【化3】

で表される化合物または医薬として許容されるその塩。
【請求項9】
請求項1に記載の化合物を無毒性治療有効量で要治療患者に投与することを含む非ステロイド系抗炎症薬による治療に感受性の炎症性疾患の治療方法。
【請求項10】
患者が血栓性心血管イベントの危険性を有しているとき及びアスピリン治療を受けているときに血栓性心血管イベントの危険性を低減する請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1に記載の化合物を無毒性治療有効量で要治療患者に投与することを含む、COX−1に優先してCOX−2を選択的に阻害する有効物質によって有利に治療されるシクロオキシゲナーゼ介在疾患の治療方法。
【請求項12】
患者が血栓性心血管イベントの危険性を有しているとき及びアスピリン治療を受けているときに血栓性心血管イベントの危険性を低減する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
シクロオキシゲナーゼ−2介在疾患または状態を治療するために有効な量の請求項1に記載の化合物と、血栓性心血管イベントの危険性を低減するために有効な量のアスピリンとを、同時にまたは順次に要治療患者に経口投与することを含む、慢性シクロオキシゲナーゼ−2介在疾患または状態の治療を要しておりかつ血栓性心血管イベントの危険性を有しているヒト患者の慢性シクロオキシゲナーゼ−2介在疾患または状態を治療しかつ血栓性心血管イベントの危険性を低減する方法。
【請求項14】
化合物を一日1回の基準で経口投与する請求項13に記載の方法。
【請求項15】
化合物を一日2回の基準で経口投与する請求項13に記載の方法。
【請求項16】
慢性シクロオキシゲナーゼ−2選択的介在疾患または状態が、骨関節炎、リウマチ様関節炎及び慢性疼痛から成るグループから選択される請求項13に記載の方法。
【請求項17】
アスピリンを約30mgから約1gの用量で投与する請求項13に記載の方法。
【請求項18】
アスピリンを約80mgから約650mgの用量で投与する請求項17に記載の方法。
【請求項19】
アスピリンを約81mgまたは約325mgの用量で投与する請求項18に記載の方法。
【請求項20】
アスピリンを一日1回経口投与する請求項13に記載の方法。
【請求項21】
請求項1から8のいずれか一項に記載の式Iの化合物または医薬として許容されるその塩とアスピリンとを、医薬品に許容される担体と共に含む医薬組成物。
【請求項22】
請求項1から8のいずれか一項に記載の式Iの化合物または医薬として許容されるその塩と医薬品に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項23】
がS(O)CH及びS(O)NHから成るグループから選択され、
及びRの各々が独立に水素及びハロから成るグループから選択され、
が−C(O)−C1−4アルキルである請求項1に記載の化合物。
【請求項24】
nが4または5である請求項23に記載の化合物。
【請求項25】
以下のグループ:
【化4】

から選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項26】
炎症性疾患の治療用医薬を製造するための、請求項1から8、23、24または25のいずれか一項に記載の式(I)の化合物または医薬として許容されるその塩の使用。
【請求項27】
医薬療法に使用するための、請求項1から8、23、24または25のいずれか一項に記載の式(I)の化合物または医薬として許容されるその塩。
【請求項28】
前記療法が、COX−1に優先してCOX−2を選択的に阻害する有効物質によって有利に治療されるシクロオキシゲナーゼ介在疾患の治療である請求項27に記載の化合物。

【公表番号】特表2007−516954(P2007−516954A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529472(P2006−529472)
【出願日】平成16年3月1日(2004.3.1)
【国際出願番号】PCT/CA2004/000314
【国際公開番号】WO2004/103955
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Macintosh
【出願人】(305042046)メルク フロスト カンパニー (5)
【Fターム(参考)】