説明

シクロデキストリンの親和精製

【課題】タンパク質に関し、澱粉結合ドメインを含む分子種を固定化する方法、分子種が固定化された物質、種を固定化することができる物質を提供する。
【解決手段】方法は、種を固体担体、例えば、膜、クロマトグラフィー支持体など、に結合することを含む。固定化された種は発明の方法により任意に精製される。二者択一的に、固定化された種は、合成法におけるような合成試薬として、または固定化された種に対して親和性をもつ別の種を精製するための、別の方法で用いられる。典型的な固定化された分子種は生物活性試薬、生体分子を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の詳細な説明)
本発明は、タンパク質に関し、さらに澱粉結合ドメインを含む分子種を固定化する方法、及び分子種が固定化された物質、種を固定化することができる物質に関する。
【背景技術】
【0002】
興味の対象である組み換えタンパク質の単離方法、及び/又は検出方法は、多くの用途に有用である。例えば、遺伝子組み換え動物において、遺伝子導入生成物を高感度で検出することは、導入遺伝子の発現が生じる組織を決定するのに重要である。タンパク質は、所望のタンパク質を特異的に認識する結合配位(例えば、抗体)を使って検出することが出来る。多くの場合、この操作では、所望のタンパク質に対して特異的に免疫活性を持った抗体を調達することが要求される。この要求を回避するために、興味があるタンパク質に融合させることのできる種々の標識が開発されてきた。例えば、その標識として、抗体が容易に得られるユニークなエピトープが1つの可能性である。その他の方法としては、金属キレートアミノ酸を導入した標識を利用することである。
【0003】
1つの末端に分子性「精製標識」を有する組み換え融合タンパク質が当業者に公知である。精製標識はタンパク質の精製を容易にする。そのような標識はまた、反応や検査や検出の過程で、興味があるタンパク質を固定化することにも使用することができる。適当な標識は、ある認識部分によって特異的に認識されるペプチド配列であるような「エピトープ標識」である。エピトープ標識は一般に、融合タンパク質に導入され、このことは容易に得られる認識部分を利用して、融合タンパク質を明確に検出したり単離したりすることを可能にする。「FLAG標識」は通常使われる標識であり、配列がアスパラギン酸・チラミン・リシン・アスパラギン酸・アスパラギン酸・アスパラギン酸・アスパラギン酸・リシン(AspTyrLysAspAspAspAspLys) (SEQ ID NO. 1)あるいは本質的にそれと同一の変異体からなるモノクロナール抗FLAG 認識部分によって特異的に認識される。その他の適当な標識は、本分野における熟練者に知られている。それは例えば、ヘキサヒスチジンペプチドのような親和性標識であり、それはニッケルまたはコバルトイオンのような金属イオンに結合している。精製標識はまた、マルトース結合ドメインと澱粉結合ドメインを有する。マルトース結合ドメインタンパク質の精製は、本分野における熟練者に知られている。澱粉結合ドメインは WO 99/15636 に記述されており、ここで言及することにより含める。
【0004】
セルロースに対するセルラーゼの親和性は、その精製のために利用されてきた(Boyer ら, Biotechnol. Bioeng. (1987年) 29巻:176-179頁; Halliwellら, Biochem. Chem J. (1978年) 169巻: 713-735頁; Martyanovら, Biokhi-miya (1984年) 19巻: 405-104頁; Nummiら, Anal Biochem.(1981年) 116巻: 137-141頁; van Tilbeurghら, FEBS Letters (1986年) 204巻: 223-227頁)。Cellulomonas fimi からのいくつかのセルラーゼ遺伝子は、大腸菌(エシェリキア、Escherichia coli) にクローン化されている(Whittle ら, Gene (1982年) 17巻:139-145頁; Gilkesら, J. Gen. Microbiol. (1984年) 130巻: 1377-1384頁)。アビセル(Avicel)(微結晶セルロース)に対する結合が、天然酵素(Gilkes ら, J. Biochem. (1984年) 259巻: 10455-10459頁)及び組み換え酵素(Owolabiら, Appl. Environ. Microbiol. (1988年) 54巻: 518-523頁)両方の精製のために使用されてきた。マルトースを結合する二官能性ハイブリッドタンパク質は、Bedoulleら, Eur. J. Biochem. (1988年) 171巻:541-549頁に記されている。
【0005】
ヘパリン‐セファローゼ(Sepharose) RTMを使ったヘパリン親和(アフィニテフィー)クロマトグラフィーが、1984年に始めて腫瘍由来の血管内皮マイトジェン(mitogen)を精製するのに使われた(Shing ら. (1984)Science 223巻: 1296-1298頁)。ヘパリン親和性クロマトグラフィーはそれ以来、種々の組織源からの線維芽細胞成長因子精製のために広く利用されてきた(例えば、総説 Folkman及びKlagsbrun (1987年) Science 235巻: 442-447頁; Bairdら (1986年) Recent Prog. Horm. Res. 43巻: 143-205頁; Gospodarowiczら (1986年) Mol. Cell. Endocrinol. 46巻: 187-204頁; Lobbら, (1986年) Anal. Biochem. 154巻: 1-14頁)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シクロデキストリン グルカノトランスフェラーゼは、α-及びβ‐シクロデキストリンを含む親和性溶媒で精製された。固定化酵素は、合成試薬として、あるいは分析や評価を行うのに有効であろうということについては言及されていない。
糖類結合ドメインと糖類結合ドメインによって認識される部分との間の相互作用によって担体に固定化される組成は、合成支持試薬として及び評価や分析を実施するための基質や試薬として有用であろう。本発明は、そのような組成とそれらの使用方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の要約
固定化試薬または基質を使った合成は、通常の溶液化学全般にわたって多くの利点を提供している。固相合成の方法論による利益については、固相ペプチド合成技術および核酸合成技術が広く受け入れられ、それにより享受された成功程良く説明するものはない。固相方法論の有用性にもかかわらず、糖類の合成に対するそれらの適用は、ペプチドや核酸の調製方法ほど広く受け入れられていない。
【0008】
糖類調製の最も有望な方法の一つは、グリコシル残基を糖又はペプチドの受容体に自然に転移する酵素に依存している。固体担体にそのような酵素を化学的に固定化することには、酵素活性に本質的な1つ以上の部位が酵素を固体担体に付ける座となって、酵素の反応性が減少させたり無くしたりするという危険性が含まれる。従って、酵素反応に関与しないグループによる固体担体へ酵素を化学固定する方法が非常に好ましい。
【0009】
本発明は、構造内に澱粉結合ドメイン(SBD)を含む組成とその化合物を使用するための方法を提供する。典型的な組成は酵素で、例えばグリコシルトランスフェラーゼのような集合糖類において使用される酵素である。本発明はまた、例えば認識部分、例えば糖類が結合している固体担体を提供する。糖類はSBDによって認識される。SBDが興味のある分子種に結合しているとき、その分子種はSBDと担体に結合した糖類との間の相互作用によって固体担体に固定化され得る。SBDでラベルした分子種と固体担体との組み合わせは、固定化試薬を使う合成のためや反応媒体から試薬を取り除くための方法として有効である。本発明はまた、SBDを認識部分を持つ固体担体と、固定化された認識部分に結合する分子種の存在下で試料を分析する方法を提供する。
【0010】
従って、第一態様では、本発明は固体担体上に分子種を固定化する方法を提供する。その分子種にはSBDが含まれ、固体担体にはSBDと相互作用をして固体担体上に分子種を固定化する糖類が含まれる。典型的な態様では、本発明の方法によって固定化された分子種は、試薬、例えば、基質に化学変化をもたらす酵素である。酵素、基質あるいはその両方は、反応経路の選択されたステップで担体上に固定される。例えば、澱粉結合ドメインを含む基質上の酵素変換を行う方法が提供される。SBDは、固体担体上に基質(あるいは反応生成物)を固定化するのに使われる。もう一つとして、酵素が澱粉結合ドメインを含み、変換の前もしくは間もしくは後に固体担体に固定化される。
【0011】
別の様態では、本発明は基質上で化学変換を行う方法を提供する。その方法には、 (a)変換を行うのに適切な条件下で基質を試薬と接触させる、ここで、試薬は澱粉結合ドメインを含んでいる;(b) 澱粉結合ドメインにシクロデキストリンを結合することによってシクロデキストリンが含まれている担体上に試薬を固定化すること;が挙げられる。典型的な試薬は酵素である。
【0012】
別の様態では、本発明は、基質をグリコシル化するための方法を提供する。その方法としては、(a) グリコシル供与体部分とその受容体を、グリコシル供与体部分を基質に転移するのに適切な条件下で、澱粉結合ドメインを有しているグリコシルトランスフェラーゼに接触させる;(b) 固体担体上に澱粉結合ドメインを有するグリコシルトランスフェラーゼを固定化する;が挙げられる。。固体担体に、澱粉結合ドメインと相互作用をするシクロデキストリンが付着し、それによってシクロデキストリン上にグリコシルトランスフェラーゼを固定化する。ステップ(b)はグリコシル化の前、間、もしくは後のいずれかで行うことが出来る。
【0013】
本発明はまた、SBDによって認識される糖類がそれに結合する固体担体を提供する。典型的な態様では、固体担体はそれに結合するシクロデキストリン部分をもつ。さらに別の態様では、酵素は固体担体に結合する。酵素は澱粉結合ドメインを含み、澱粉結合ドメインは、該前記固体担体上に該グリコシルトランスフェラーゼを固定化するシクロデキストリンと相互作用する。
【0014】
別の面では、本発明は、シクロデキストリンがそれに結合している固体担体を含有する物質、及びそれに結合する澱粉結合ドメインを構成する分子種を提供する。澱粉結合ドメインは、シクロデキストリンと相互作用をし、それによって固体担体上に分子種を固定化する。
【0015】
他の面では、本発明の目的と利点は以下の詳細な説明から明らかとなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、澱粉結合ドメインを含む分子種を固定化する方法、及び分子種が固定化された物質、種を固定化することができる物質を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
定義
他で特に定義しなければ、ここで使われる総ての技術的及び科学的用語は一般に、この発明が属する本分野の普通の熟練者によって普通に理解されているのと同様の意味を有する。一般に、ここで使われる命名法と、細胞培養、分子遺伝学、有機化学、核酸化学での実験室的操作、および以下に記述するハイブリダイゼーションはよく知られており、本分野で普通に使われているものである。一般に、酵素反応と精製のステップは、製造業者の仕様書にしたがって行われた。技術と操作は一般に、本分野の通例の方法と種々の一般的な文献にしたがって行われた。(例えば、一般的に、Sambrookら, MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL, 2巻. (1989年) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.を参照。 これは参照することによって本書に含まれる。) これは明細書全体に提供される。ここで使われる命名法と分析化学における研究室的操作及び以下に記す有機化学合成は知られているものであり、本分野で普通に使われている。標準技術、またはその修飾が、化学合成や化学分析で使われる。
【0018】
「組み換え」という語が細胞に関連して使われるときには、細胞が異種の核酸を複製したり、異種核酸によってコード化されたペプチドまたはタンパク質を発現することを意味する。組み換え細胞は、細胞の天然形(非組み換え)には見出されない遺伝子を含んでいる。組み換え細胞はまた、遺伝子が修飾され人工的な手段によって細胞内に再導入されたような細胞の天然形で見出される遺伝子も含まれる。この語はまた、細胞から核酸を取り除かないで修飾された細胞内在性核酸を含む細胞も包含している;そのような修飾には、遺伝子置換、部位特異的な突然変異及び関連した技術によって得られるものが含まれる。「組み換えタンパク質」は、組み換え細胞によって作り出されるものである。
【0019】
「交換」という語は、この明細書に記した本発明の融合タンパク質を作成するための核酸配列やアミノ酸配列の組み換え操作を表すもので、核酸配列やアミノ酸配列の交換や置換に限られるものではない。例えば、核酸配列やアミノ酸配列を拡張したり短縮した修飾したりして、本発明の溶融タンパク質を作成することができる。例えばまた、最初のグリコシルトランスフェラーゼの核酸配列やアミノ酸配列は、それぞれ第二のグリコシルトランスフェラーゼの核酸配列やアミノ酸配列と実質的に同一に修飾されることが出来、それによって、「融合タンパク質」が作成されるのである。
【0020】
「融合タンパク質」という語は、元々のあるいは天然の完全な長さのタンパク質をコード化するアミノ酸配列またはその続編に対して、付け足したり、置き換えたり、少なくしたり、及び/若しくは異なるアミノ酸配列から成るタンパク質を表す。
【0021】
融合タンパク質の成分には、「アクセサリー酵素」及び/又は「精製標識」が含まれる。ここで使われる「アクセサリー酵素」は、例えば、グリコシルトランスフェラーゼの基質を形成する反応を触媒することに含まれる酵素である。アクセサリー酵素は、例えば、グリコシルトランスフェラーゼによる供与体部分として使われるヌクレオチド糖の形成の触媒となる。アクセサリー酵素はまた、ヌクレオチド糖の形成に必要なヌクレオチド三燐酸塩の生成、またはヌクレオチド糖に導入される糖の生成に使われるものである。グリコシルトランスフェラーゼに関連した「機能性ドメイン」という語は、例えば受容体基質特異性、触媒活性、結合親和性、ゴルジ装置内の局在性、細胞膜に対する固着、若しくはその他生物学的若しくはまたは生物化学的活性などのように、酵素の活性を与えたり修飾したりするグリコシルトランスフェラーゼのドメインを表す。グリコシルトランスフェラーゼの機能性ドメインの例としては、触媒ドメイン、ステム領域、そして信号アンカードメインが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
タンパク質に関連した「発現レベル」あるいは「発現のレベル」という語は、細胞によって作り出されるタンパク質の量に表す。好ましい態様では、タンパク質は、「高」レベル発現の組み換えグリコシルトランスフェラーゼ融合タンパク質で、それは本発明の方法で有用なタンパク質の最適量を表す。細胞によって作り出されるタンパク質の量は、ここに記述された又は本分野の熟練者に知られている試験や活性単位によって測定され得る。本分野の熟練者は、種々の試験と単位を使って、細胞によって作り出されるタンパク質の量を測定し記述する方法かを知っているであろう。従って、タンパク質、例えばグリコシルトランスフェラーゼ、の発現レベルの定量化と定量的記述はそれぞれ、活性度を測定するのに使われる試験、あるいは活性度を記述するための単位に限定されるものではない。細胞によって作り出されるタンパク質の量は、例えばBradford(1976年)によるタンパク質試験、Pierceからのビシンコニン酸 タンパク質試験(Rockford, Illinois)、若しくはU.S. Patent No. 5,641,668に記されているような標準的な既知の試験によって決定することが出来る。
【0023】
「酵素活性」という語は、酵素の活性を表し、ここに記されたか又は本分野の熟練者に知られた試験と単位で測定される。グリコシルトランスフェラーゼの活性の例としては、例えば、受容体基質特異性、触媒活性、結合親和性、ゴルジ装置内の局在性、細胞膜に対する固着、その他生物学的若しくは生物化学的活性のような酵素の機能性ドメインに関連したものが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい態様では、酵素は、ここに記述されたか本分野の熟練者に知られた試験や活性単位によって測定される最適レベルの酵素活性を表す、「高」酵素活性である(例えば、U.S. Patent No. 5,641,668 参照)。本分野の熟練者は、種々の試験と単位を使ってそれぞれ、酵素活性を測定し、記述する方法を知っているであろう。従って、グリコシルトランスフェラーゼの酵素活性の定量化と定量的記述はそれぞれ、活性度を測定するのに使われる試験、あるいは活性度を記述するための単位に限定されない。高い特異的活性を有するグリコシルトランスフェラーゼの例としては、少なくとも約0.01 単位/mL、より好ましくは0.05から5 単位/mLそして最も好ましくは 5から100 単位/mLの触媒活性を有する、本発明の組み換えグリコシルトランスフェラーゼ融合タンパク質が挙げられるが、これに限定されない。高酵素活性を有するグリコシルトランスフェラーゼの他の例としては、フコシル化反応混合物中グリコタンパク質の集団に存在するグリコタンパク質が連結したフコシルトランスフェラーゼ受容体部位の少なくとも60%がフコシル化されている、本発明の組み換えフコシルトランスフェラーゼ融合タンパク質が挙げられるが、これに限定されない。
【0024】
ここで使われる「特異的活性」という語は、酵素、例えば、本発明の組み換えグリコシルトランスフェラーゼ融合タンパク質の触媒活性を表し、それは活性度の単位で表される。ここで使われるように、一つの活性単位は、特定の温度(例えば37℃)とpH値(例えばpH7.5)で1分当り1μモルの生成物の生成触媒となる。したがって、10単位の酵素は、10μmolの基質を選択された温度(例えば37℃)とpH値(例えばpH7.5)で1分当り10μmolの生成物へ変換する触媒となるのに十分な酵素量である。
【0025】
グリコシルトランスフェラーゼに関連した「ステム領域」という語は、タンパク質のドメインあるいはその続編を表すが、天然のグリコシルトランスフェラーゼにおいて、トランス膜ドメインに隣接していて、ゴルジ装置のグリコシルトランスフェラーゼを維持するための保留信号として、若しくはタンパク質分解的開裂の部位として機能することが知られている。典型的なステム領域は、フコシルトランスフェラーゼVI、アミノ酸残基40−54のステム領域である。
【0026】
「触媒ドメイン」という語は、タンパク質ドメインあるいはその続編で、酵素により実施される酵素反応の触媒となるものである。例えば、シアリルトランスフェラーゼの触媒ドメインは、シアル酸残基を供与体から受容体糖類へ転移するのに十分なシアリルトランスフェラーゼの続編が含まれるであろう。触媒ドメインは全酵素とその続編を含み、又は天然にみられる様に酵素に付いていない付加的なアミノ酸配列もしくはその続編を含めることが可能である。典型的な触媒ドメインの例は、フコシルトランスフェラーゼVII、アミノ酸残基39−342の触媒ドメインである。
【0027】
「続編」は、より長配列の核酸若しくはアミノ酸の部分集団若しくは部分である核酸又はアミノ酸を表す。
【0028】
「核酸」という語は、1本鎖形若しくは2本鎖形のデオキシリボ核酸若しくはリボ核酸のポリマーを表し、限定しなければ、天然産のヌクレオチドと同様な方法で核酸にハイブリッド形成される天然ヌクレオチドの既知の類似体が含まれる。特に指示しなければ、特定の核酸配列にはその相補的配列も含まれる。
【0029】
「組み換え発現カセット」あるいは単に「発現カセット」は、組み換え的若しくは合成的に生じた核酸作成物であり、それは、そのような配列と相性のよい宿主中の構造遺伝子の発現に影響を及ぼす可能性のある核酸要素を持つ。発現カセットには、少なくともプロモーター及び随意的に転写終結信号が含まれる。典型的に、組み換え発現カセットは、転写される核酸(例えば、所望のポリペプチドをコード化する核酸)とプロモーターが含まれる。発現に影響する必要な又は有用な付加的要素もまたここで記載されるように使われうる。例えば、発現カセットまた、宿主細胞から発現されたタンパク質の分泌を方向付ける信号配列をコード化する核酸配列を含むことができる。転写終結信号、エンハンサー、及び遺伝子発現に影響を及ぼすその他の核酸配列もまた発現カセットに含まれうる。
【0030】
ここで使われる「異種配列」若しくは「異種核酸」は、特定の宿主細胞とは異なる元から生じるものであるか又は、もし同じ元からであれば、元の形から修飾されているものである。したがって、真核宿主細胞の異種グリコタンパク質遺伝子は、修飾された特定の宿主細胞に内在しているグリコタンパク質をコード化する遺伝子が含まれる。異種配列の修飾は、例えば、プロモーターに操作可能に連結されるDNA断片を生成させるために、DNAを制限酵素で処理することによって生じる。部位指向的突然変異のような技術もまた異種配列を修飾するのに有効である。
【0031】
「単離された」という語は、目的生成物と異なる成分は実質的又は本質的に存在しない物質を表す。本発明の糖類、タンパク質、核酸について、「単離された」という語は、天然状態で見出されるような成分は実質的又は本質的に存在しない物質を表す。典型的に、本発明の単離された糖類、単離されたタンパク質、単離された核酸は、銀染色ゲルの帯バンド強度若しくはその他の方法で純度が決定され、純度は少なくとも80%、通常少なくとも約90%、好ましくは少なくとも95%である。純度又は均一性は多くの本分野で知られている方法で示すことが出来る。例えば、試料中のタンパク質又は核酸は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法によって分離することが出来、それからタンパク質又は核酸は、染色によって視覚化され得る。ある目的のために、タンパク質又は核酸の高解像能が好ましく、精製のために例えば高速液体クロマトグラフィー又は類似の手段が利用されうる。
【0032】
「操作可能に連結した」という語は、(プロモーター、信号配列、若しくは転写因子結合部位の配列のような)1つの核酸発現制御配列と第二核酸配列との間の機能的な連結を表し、ここで、発現制御配列は第二配列に対応する核酸の転写及び/又は翻訳に影響を及ぼす。
【0033】
2つ又はそれ以上の核酸若しくは蛋白質の配列の関連において、「同一な」若しくは百分率「同一性」の語は、以下に示す配列比較アルゴリズムの1つを使うか又は視覚的検査で測定して、最大の対応点を並べて比較したとき、同じであるか又は特定のパーセントの同一のアミノ酸残基あるいはヌクレオチドを有する2つ又はそれ以上の配列又はその続編を表す。
【0034】
2つの核酸又はタンパク質の関連において、「実質的に同一な」というフレーズは、以下に示す配列比較アルゴリズムの1つを使うか又は視覚的検査で測定して、最大の対応点を並べて比較したとき、核酸やアミノ酸配列の同一性として少なくとも約60%を超え、65%若しくは70%若しくは75%若しくは80%若しくは85%若しくは90%であり、好ましくはヌクレオチドやアミノ酸残基の同一性として91%若しくは92%若しくは93%若しくは94%若しくは95%若しくは96%若しくは97%若しくは98%若しくは99%を有する、2つ以上の配列またはその続編を表す。好ましくは実質的な同一性は少なくとも長さにおいて約50残基である領域にわたり存在し、より好ましくは約100残基の領域にわたるもので、そして最も好ましくは約150残基にわたって配列が実質的に同一なものである。最も好ましい態様では、配列は全コード化領域にわたって実質的に同一である。
【0035】
配列の比較では、典型的にある一つの配列が参照配列としての役を果たし、それに対してテスト配列が比較される。配列比較アルゴリズムを使って、テスト配列と参照配列をコンピューターにインプットするとき、必要に応じて続編座標を指定し、そして配列アルゴリズムプログラムのパラメータを指定する。次に、その配列比較アルゴリズムによって、指定されたプログラムパラメータに基づいて、参照配列に対するテスト配列の百分率配列同一性を計算する。
【0036】
例えば、Smith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2巻:482頁 (1981年) の局所相同アルゴリズムによって、Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48巻:443頁 (1970年) の相同アラインメントアルゴリズムによって、Pearson & Lipman, Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA 85巻:2444頁 (1988年) の類似法探索によって、これらのアルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WI の GAP,BESTFIT,FASTA及びTFASTA)をコンピューターで実行することによって、あるいは視覚による検査(例えば、Current Protocols in Molecular Biology, F.M. Ausubel ら, eds., Current Protocols, Greene Publishing Associates, Inc. 及び John Wiley & Sons, Inc., とのジョイントベンチャー (1995年 Supplement)(Ausubel)を参照)によって、比較のための最適な配置構造の配列を導くことができる。
【0037】
百分率配列同一性と配列類似性を決めるのに相応しいアルゴリズムの例は、BLASTとBLAST2.0アルゴリズム であり、これらはそれぞれ、Altschulら (1990年) J. Mol. Biol. 215巻: 403-410頁 とAltschulら (1977年) Nucleic Acids Res. 25巻: 3389-3402頁 に記述されている。BLAST分析を行うソフトは、“National Center for Biotechnology Information”(http: //www.ncbi.nlm.nih.gov/) を通じて公的に入手できる。このアルゴリズムには、第一に、データベース配列の同じワード長で並べて、一致するか又は正の閾値値(T)を満たしているかという“問い合わせ配列”における短いワード長(W)を見出すことによって、高スコアの配列対(HSPs)を同定することが含まれている。Tは、隣接ワードスコア閾値を表す(Altschul ら, 上記と同じ)。これらの最初の隣接ワードの突合せは、それらを含む大きなHSP値を見出すための初期検索の種の働きをする。次に、ワードの突合せは、累積アラインメントスコアが増大する限り、各配列の両方向へ拡張されうる。累積スコアは、ヌクレオチド配列に対して、パラメータM(一致残基のリワードスコア;常に正)とパラメータN(不一致残基のペナルティースコア;常に負)を使って計算される。アミノ酸配列に対しては、累積スコアを計算するのにスコア行列が使われる。各方向へのワード突合せの拡張は、累積アラインメントスコアが最大到達値から量Xだけ減衰し、1つ以上の負のスコア残基の蓄積あるいは配列のいずれかの端に到達したことによってゼロまたは負になると停止する。BLASTアルゴリズムのパラメータW、T、Xは、アラインメントの感度と速度を決める。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列に対する)は、欠損値としてのワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=−4を使って、両方のストランド(鎖)を比較する。アミノ酸配列に対するBLASTPプログラムは、欠損値としてのワード長(W)3、期待値(E)10、そしてBLOSUM62スコア行列を使う(例えば、Henikoff & Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89巻: 10915頁 (1989年)参照)。
【0038】
BLASTアルゴリズムは百分率配列同一性の計算に加えて、2つの配列間の類似性の統計分析も行う(例えば、Karlin & Altschul, Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA 90巻: 5873-5787頁(1993年)参照)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの尺度は、最小和確率(P(N))で、これは2つのヌクレオチドあるいはアミノ酸配列間の一致は偶然に起きるという確率という意味を与える。例えば、もしテスト核酸を参照核酸と比較して最小和確率が約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満であれば、核酸は参照配列に対して類似していると考えられる。
【0039】
2つの核酸配列若しくはタンパク質が実質的に同一であるという更なる意味は、最初の核酸でコード化されたタンパク質が、下記のように、第二の核酸によってコード化されたタンパク質と免疫学的交叉反応性を有するという事である。したがって、例えば2つのペプチドが保存的置換だけでしか違わない場合に、1つのタンパク質は、第二のタンパク質と典型的に実質的に同一となる。2つの核酸配列が実質的に同一であるというもう1つの意味は、2つの分子が、下記のように、厳密な条件の下で互いにハイブリッドを形成するという事である。
【0040】
「特異的にハイブリッドを形成する」という語句は、その配列が複合混合物(例えば細胞全体)DNA若しくはRNAに存在するときに、厳密な条件の下で特定のヌクレオチドに対してだけ結合したり、重ね合わすことができたり、若しくはハイブリッドを形成したりすることを表す。
【0041】
「厳密な条件」という語句は、試料ーブが対象の続編配列にハイブリッドを形成するが、その他の配列に対してはハイブリッドを形成しないという条件を表す。厳密な条件は配列に依存し、異なった状況下では異なるだろう。より長い配列はより高温で特異的にハイブリッドを形成する。一般に、厳密な条件は、一定のイオン強度と一定のpHで、特定の配列に対する融点(Tm)より約15℃低く選択される。Tmは(一定のイオン強度と一定のpH、そして一定の核酸濃度で)対象配列に対して相補的な50%の試料が平衡状態で対象配列とハイブリッドを形成する温度である。(対象配列は一般に、過剰に存在するので、Tmで、50%の試料が平衡状態で占有される)。典型的に、厳密な条件は、塩濃度が約1.0M Naイオンより低く、典型的に約0.01から1.0M のNaイオン濃度(または他の塩)で、pHが7.0から8.3で、温度が短い試料(例えばヌクレオチドが10から50)では少なくとも30℃、長い試料(例えばヌクレオチドが50より大きい)では少なくとも60℃であるようなものであろう。厳密な条件はまた、ホルムアミドのような非安定化試薬を加えて達成される可能性がある。
【0042】
認識部分に関連して「タンパク質に特異的に結合する」あるいは「特異的免疫反応性」という語句は、タンパク質やその他の生化学薬剤が不均一な分布で限定的に存在する結合反応を表す。したがって、指定された免疫試験の条件で、特定の抗体は優先的に特定のタンパク質に結合し、試料中に存在するその他のタンパク質に対しては有意な量の結合はしない。そのような条件下でのあるタンパク質に対する特定の結合は、特定のタンパク質の特異性が選ばれる認識部分が要求される。特定タンパク質と特異的に免疫反応をする抗体を選ぶために、種々の免疫試験フォーマットが利用されることがある。例えば、固相ELISA免疫試験は、タンパク質と特異免疫反応をするモノクロナール抗体を選択するのに通常使われる。免疫試験フォーマットの記述と特異免疫反応を決めるのに使われる条件については、 Harlow 及びand Lane (1988年) Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Publications, New York を参照されたい。
【0043】
特定のポリヌクレオチド配列の「保存的修修飾異」は、同一か又は本質的に同一のアミノ酸配列をコード化したポリヌクレオチドを、又はポリヌクレオチドがアミノ酸配列をコード化しない場合には本質的に同一な配列を表す。遺伝コードは縮重しているので、多くの機能的に同一の核酸があらゆる与えられたタンパク質をコード化する。例えば、CGU、CGC、CGA、CGG、AGA及びAGGというコドンはすべて、アミノ酸のアルギニンをコード化する。したがって、コドンによってアルギニンと指定される総ての位置で、コード化されたコドンを変えること無しに任意の対応したコドンに変えることが可能である。そのような核酸変異は、「サイレント変異」であり、それは「保存的修飾変異」の一種である。タンパク質をコード化するここで記された総てのポリヌクレオチド配列はまた、その他記載されたものを除いて、総ての可能なサイレント変異を記述する。核酸の各コドン(通常メチオニンの唯一のコドンであるAUGと通常トリプトファンの唯一のコドンであるUGGを除いて)は、標準技術で機能的に同一の分子を産するように修飾されうることを熟練者は認識するであろう。したがって、タンパク質をコード化する核酸のそれぞれの「サイレント変異」は、それぞれの記述された配列において暗黙である。
【0044】
さらに、コード化配列における単一のアミノ酸又は小パーセント(典型的には5%未満、より典型的には1%未満)のアミノ酸を変えたり、付加したり、削除したりする個々の置換、削除、又は付加は、「保存的修飾変異」であり、その変化はあるアミノ酸を化学的に類似したアミノ酸で置換することに帰着するということを熟練者は認識するであろう。機能的類似アミノ酸を提供する保存置換表は本分野では知られている。
【0045】
融合タンパク質と融合タンパク質をコード化する核酸の多くの保存変異は、本質的に同一の生成物を生じることを熟練者は認識しているであろう。例えば遺伝コードの縮重によって、「サイレント置換」(すなわち、コード化されたタンパク質の変化を生じない核酸配列の置換)には、アミノ酸をコード化する総ての核酸配列の特徴が暗に含まれている。ここに記述するように、配列は、キメラ生成エンドキナーゼを作り出されるために使われる特定の宿主細胞(酵母やヒトなど)での発現に対して好ましく最適化される。同様に、「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸配列における1つ又は2,3のアミノ酸を、非常に類似した特性を持った異なるアミノ酸に置き換えることであるが(上の定義の節を参照)、特定のアミノ酸配列若しくはアミノ酸配列をコード化する特定の核酸と非常に類似しているということも容易に確認される。任意特定配列のそのような保存的置換変異が本発明の特徴である。例えば、Creighton (1984年) Proteins, W.H. Freeman 及び Company も参照されたい。また、単一のアミノ酸またはコード化された配列の小パーセントのアミノ酸を変化させたり、付加したり、削除したりするような個々の置換、削除、付加も同様に「保存的修飾変異」である。
【0046】
本発明の実施は、組み換え核酸の作成とトランスフェクト宿主細胞における遺伝子発現である。これらの目的を達成するための分子クローン化技術は本分野で知られている。発現ベクトルのような組み換え核酸の作成に適切な広範囲のクローン化や生体外での増幅方法は熟練者に知られている。これらの技術と、多くのクローン化実施を通しての熟練者への指導に十分な指示の例は、下記の参考文献に見出される。Berger and Kimmel, Guide to Molecular Cloning Techniques, Methods in Enzymology ,152巻, Academic Press, Inc., San Diego, CA(Berger) およびCurrent Protocols in Molecular Biology, F.M. Ausbel et al., 最新記録, Greene Publishing Associate Inc. と John Wiley & Sons, Inc.,とのジョイントベンチャー(1999 年付録)(Ausbel)。組み換えペプチドの発現に適切な宿主細胞は本分野の熟練者に知られており、例えば昆虫や哺乳類や真菌の真核細胞(例えば、アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger))が含まれる。
【0047】
ポリメラーゼ鎖反応(PCR)、リガーゼ鎖反応(LCR)、Qβ−レプリカーゼ増幅とその他のRNAポリメラーゼ媒介の技術を含む、生体外の増幅方法を本分野の熟練者に指導するのに十分なプロトコルの例は、Berger, Sambrook, と Ausubel, 及び Mullis ら (1987年) U.S. Patent No. 4,683,202; PCR Protocols A Guide to Methods and Applications (Innisら. 編) Academic Press Inc. San Diego, CA(1990年)(Innis); Arnheim & Levinson (10月1日, 1990年) C&EN 36-47頁; The Journal of NIH Research (1991年) 3巻: 81-94頁; (Kwohら (1989年) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86巻: 1173頁; Guatelliら (1990年) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87巻: 1874頁; Lomellら(1989年) J. Clin. Chem. 35巻: 1826頁; Landegrenら (1988年) Science 241巻: 1077-1080頁; Van Brunt (1990年) Biotechnology 8巻: 291-294頁; Wu and Wallace (1989年) Gene 4巻: 560頁、及び Barringerら (1990年) Gene 89巻: 117頁に見出される。生体外増幅核酸をクローン化する改良された方法は、Wallaceら, U.S. Pat. No. 5,426,039 に記述されている。
【0048】
「ペプチド」、「ポリペプチド」又は「タンパク質」は、モノマーがアミノ酸で、それはアミド結合、別の呼び名としてペプチド結合で結ばれているようなポリマーをいう。L−光学異性体又はD−光学異性体が使われる。付け加えて、不飽和アミノ酸、例えばβ−アラニンやフェニルグリシンやホモアルギニンも含まれる。遺伝コード化されていないアミノ酸も本発明で使われうる。さらに、反応性の基を含むように修飾されたアミノ酸も、本発明で使われうる。本発明で使用される総てのアミノ酸はD−異性体又はL−異性体のいずれかである。一般的にL−異性体が好ましい。また、その他のペプチド模倣物も同様に本発明で使用される。一般的な総説として、例えば、Spatola, A. F., Chemistry and Biochemistry of Amino Acids, Peptides and Proteins, B. Weinstein eds., Marcel Dekker, New York, 267頁 (1983年) を参照されたい。
【0049】
「アミノ酸」という語は、天然および合成アミノ酸、そしてアミノ酸類似体、および天然アミノ酸と同様に機能するアミノ酸模倣物を表す。天然のアミノ酸は、遺伝コードでコード化されたものであるが、それと共に、例えばヒドロキシプロリンやγ‐カルボキシグルタミン酸塩やO−フォスフォセリンのような後に修飾されたアミノ酸がある。アミノ酸類似体は天然アミノ酸と同じ基本化学構造を持つ化合物である。すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基及びR基が結合しているα炭素という構造で、例えばホモセリン、ノルロイシン、メチオニン、スルホキシド、メチオニン メチル スルホニウムである。そのような類似体は、修飾されたR基(例えばノルロイシン)又は修飾されたペプチド主鎖を有するが、天然アミノ酸のような同じ基本化学構造を保持している。「アミノ酸模倣物」は、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なるが、天然アミノ酸と類似に機能する化学化合物を表す。
【0050】
ここで使われる「反応性官能基」は以下のような基を表すが、これらに限られるものではない。即ち、オレフィン、アセチレン、アルコール、フェノール、エーテル、オキシド、ハロゲン化物、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、エステル、アミド、シアン酸塩、イソシアナート、チオシアナート、イソチオシアナート、アミン、ヒドラジン、ヒドラゾン、ヒドラジド、ジアゾ、ジアゾニウム、ニトロ、ニトリル、メルカプタン、硫化物、二硫化物、スルホキシド、スルホン、スルホン酸、スルフィン酸、アセタール、ケタール、酸無水物、硫酸塩、スルフェン酸イソニトリル、アミジン、イミド、イミデート、ヒドロキシルアミン、オキシム、ヒドロキサム酸、チオヒドロキサム酸、アレン、オルトエステル、亜硫酸塩、エナミン、イナミン、尿素、プソイド尿素、セミカルバジド、カルボジイミド、カルバメート、イミン、アジド、アゾ化合物、アゾキシ化合物、及びニトロソ化合物である。反応性官能基は、例えば、N−ヒドロキシコハク酸イミドエステルやマレイン酸イミドなどのようなバイオコンジュゲート(bioconjugate)を作成するのに使われるものも含む。これらの官能基をそれぞれ作成する方法は本分野の熟練者に知られており、特定の目的への適用と変形は本分野の熟練者の能力範囲内にある(例えば、Sandler及び Karo、 編、“ORGANIC FUNCTIONAL GROUP PREPARATIONS Academic Press, San Diego, 1989年を参照)
【0051】
「アルキル」という語は、それ自身あるいは置換基部分として、特に他に述べなければ、指定された多くの炭素原子(例えば、C−C10は、1から10の炭素を意味する)を有する、完全に飽和された、モノ、若しくはポリ不飽和であり、二価や多価ラジカルを含むことができる、直鎖若しくは分岐鎖、若しくは環状の炭化水素ラジカル、若しくはそれらの組み合わせを意味する。飽和炭化水素ラジカルの例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、及び例えば、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチルなどの類似体と異性体などが含まれるが、これらに限定されない。不飽和アルキル基は1つ以上の二重結合か三重結合を持つものである。不飽和アルキル基の例としては、ビニル、2-プロペニル、クロチル、2-イソペンテニル、2-(ブタジエニル)、2,4-ペンタジエニル、3-(1,4-ペンタジエニル)、エチニル、1-及び3-プロピニル、3-ブチニル、そしてこれらより高級の類似体と異性体が含まれるが、これらに限定されない。「アルキル」という語は、特に他に述べなければ、また同様に、「ヘテロアルキル」のような、以下に詳細に定義するこれらのアルキル誘導体が含まれることを意味する。炭化水素に限るアルキル基は「ホモアルキル」と命名される。
【0052】
「ヘテロアルキル」という語は、それ自身あるいは他の語との組み合わせで、特に他に述べなければ、安定な直鎖又は分岐鎖の、又は環状の炭化水素ラジカル、又はそれらの結び付いたものを意味する。ここでは、前記の炭素数と、O,N,Si,Sの中から選ばれた少なくとも1つのヘテロ原子からなり、窒素原子と硫黄原子は任意的に酸化され、窒素へテロ原子は四級化されていてもよい。ヘテロ原子のO,N,S,Siは、ヘテロアルキル基の内部側のどの位置であってもよいし、又はアルキル基が分子の残りの部分に付いている位置であってもよい。例としては、-CH2-CH2-O-CH3、-CH2-CH2-NH-CH3、-CH2-CH2-N(CH3)-CH3、-CH2-S-CH2-CH3、-CH2-CH2-S(O)-CH3、-CH2-CH2-S(O)2-CH3、-CH=CH-O-CH3、-Si(CH3)3、-CH2-CH=N-OCH3および-CH=CH-N(CH3)-CH3が挙げられるが、これらに限定されない。例えば-CH2-NH-OCH3、やCH2-O-Si(CH3)3のように2つのヘテロ原子までは連続していてもよい。同様に「ヘテロアルキレン」という語は、それ自身あるいは他の置換基の一部をして、ヘテロアルキルから導かれた二価のラジカルを意味し、-CH2-CH2-S-CH2-CH2-、及び-CH2-S-CH2-CH2-NH-CH2-で例示されるが、これらに限定されない。ヘテロアルキレン基に対して、ヘテロ原子はまた、鎖末端の一方または両方を占めることができる(例えば、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノ及びそのようなもの)。さらにまた、アルキレンやヘテロアルキレン連結基について、連結基の式が書かれたいる方向により連結基の方向を意味しない。例えば、式-C(O)2R’-は、-C(O)2R’-と-R’C(O)2-の両方を表す。
【0053】
「アリール」という語は、特に他に述べなければ、ポリ不飽和の芳香族炭化水素基を意味し、単一環であっても多環(好ましくは1から3)であってもよく、縮合環であっても共有結合で結ばれていてもよい。「ヘテロアリール」という語は、N,O,Sから選ばれるヘテロ原子を1個から4個含むアリール基(または環)を意味し、窒素原子と硫黄原子は任意的に酸化され、窒素へテロ原子は四級化されていてもよい。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子を通じて分子の残りの部分に付けられることが出来る。限定されるものではないが、ヘテロアリール基の例として、1-ナフチル、2-ナフチル、4-ビフェニル、1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、3-ピラゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、ピラジニル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、2-フェニル-4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-ピリミジル、4-ピリミジル、5-ベンゾチアゾリル、プリニル、2-ベンゾイミダゾリル、5-インドリル、1-イソキノリル、5-イソキノリル、2-キノキサニリル、5-キノキサニリル、3-キノリルそして6-キノリルが挙げられるある。上記のアリール環およびヘテロアリール環システムのそれぞれの置換基は、以下の受け入れられる置換基のグループから選択される。
【0054】
簡潔にするために、他の語と結び付けて使われるとき(例えば、アリールオキシ、アリールチオキシ、アリールアルキル)「アリール」という語は上に定義したアリール環とヘテロアリール環を含める。したがって、「アリールアルキル」という語は、アリール基が、炭素原子(例えばメチレン基)が例えば酸素原子に置き変えられたアルキル基(例えば、フェノキシメチル、2-ピリジルオキシメチル、3-(1-ナフチルオキシ)プロピルなど)を含むアルキル基に付いているラジカル(例えば、ベンジル、フェネチル、ピリジルメチルなど)を含むことを意味する。
【0055】
それぞれの上記の語(「アルキル」、「ヘテロアルキル」「アリール」そして「ヘテロアリール」)は、示したラジカルの置換形と非置換形の両方を含むことを意味する。それぞれのタイプのラジカルの好ましい置換基は以下に挙げられる。
【0056】
アルキルとヘテロアルキルラジカルの置換基(しばしばアルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、及びヘテロシクロアルケニルと呼ばれるこれらの基を含む)は、限定されないが、-OR’、=O、=NR’、=N-OR’、-NR’R”、-SR’、−ハロゲン、−SiR’R”R’”、−OC(O)R’、−C(O)R’、−CO2R’、−CONR’R”、−OC(O)NR’R”、-NR”C(O)R’、−NR’−C(O)NR”R’”、−NR”C(O)2R’、−NR−C(NR’R”R’”)=NR””、−NR−C(NR’R”)=NR’”、−S(O)R’、−S(O)2R’、−S(O)2NR’R”、-NRSO2R’、−CN、及び−NO2から選択される1つ以上のさまざまな基であり、数値は0から(2m’+1)の範囲に変わりうる、ここでm’は、そのようなラジカルの炭素原子の全数であり、R’、R”、R’”、R””は、好ましくはそれぞれ独立して、水素、又は置換若しくは非置換のへテロアルキル、置換若しくは非置換のアリール、例えば、1から3個のハロゲンで置換したアリール、または置換若しくは非置換のアルキル、アルコキシ若しくはチオアルコキシ基、若しくはアリールアルキル基である。本発明の化合物が2つ以上のR基を含むとき、例えば各R基は、これらの2つ以上の基が存在するときの各R’、R”、R’”、R”” 基であるように独立に選択される。R’とR”が同じ窒素原子に付いているとき、窒素原子が結合して5-、6-、7-員環を形成しうる。例えば、-NR’R”は、限定されないが、1-ピロリジニルや4-モルフォリニルを含むことを意味する。置換基についての上の議論から、「アルキル」という語は、ハロアルキル(例えば-CF3や- CH2 CF3)やアシル(例えば、-C(O)CH3、-C(O)CF3、-C(O)CH2CH3など)のような、水素原子以外の基に結合した炭素原子を含む基を含むことを意味するということを、本分野の熟練者は理解するであろう。
【0057】
アルキルラジカルについて記載した置換基と同様に、アリールとヘテロアリール置換基は変わり、例えばハロゲン、-OR’、=O、=NR’、=N-OR’、-NR’R”、-SR’、-ハロゲン、−SiR’R”R’”、−OC(O)R’、−C(O)R’、−CO2R’、−CONR’R”、-OC(O)NR’R”、−NR”C(O)R’、-NR’-C(O)NR”R’”、-NR”C(O)2R’、-NR-C(NR’R”R’”)=N R’”、-NR-C(NR’R”)=N R’”、-S(O)R’、-S(O)2R’、 -S(O)2R’R”¥”、-NRSO2R’、-CN、-NO2、-R’、-N3、-CH(Ph)2、フルオロ(C1-C4)アルコキシ、フルオロ(C1-C4)アルキルから選ばれ、ここで、数値は0から芳香環系の原子価の全数の範囲で変えられ、R’、R”、R’”、R””は、ハロゲン、(C1-C8)アルキルとヘテロアルキル、非置換アリールとヘテロアリール、(非置換アリール)-(C1-C4)アルキルそして(非置換アリール)オキシ-(C1-C4)アルキルから好ましくは独立的に選択される。発明の化合物が2つ以上のR基を含むとき、例えば各R基は、これらのつ以上の基が存在するときの各R’、R”、R’”、R”” 基であるように独立に選択される。
【0058】
「認識部分」という語は、澱粉結合ドメインを認識し、相互作用をする部分を表す。認識部分は一般に固体あるいは半固体担体に連結している。
【0059】
澱粉結合ドメインを認識し、それに結合している部分は一般に、担体上の反応官能基と認識部分の相補的反応性を持つ官能基との反応で形成された結合によって、固体あるいは半固体担体に付いている。本発明を実施する際に有用な反応基と反応クラスはバイオコンジュゲート化学の分野で知られている。反応性キレートで得られる現代好まれている反応クラスは、比較的穏やかな条件で進行するものである。これらは、限定されないが、求核置換(例えば、アミンやアルコールのハロゲン化アシル、活性エステルとの反応)や求電子置換(例えば、エナミン反応)や炭素−炭素および炭素−ヘテロ原子多重結合に対する付加(例えば、ミハエル反応、ディールス・アルダー反応)を含む。これらおよびその他の有効な反応は、例えば、March, Advanced Organic Chemistry, 3巻, John Wiley & Sons, New York, 1985年; Hermanson, Bioconjugate Techniques, Academic Press, San Diego, 1996年; 及び Freeneyら, Modification of Proteins; Advances in Chemistry Series, 198巻, American Chemical Society, Washington, D.C., 1982年 で議論されている。
【0060】
本発明の組み換えグリコシルトランスフェラーゼ融合タンパク質は、供与体基質から受容体基質ヘ糖類を転移させるのに有効である。一般に付加は、生体分子のオリゴ糖や炭水化物部分の非還元末端で起きる。ここで定義される生体分子は、炭水化物、タンパク質(例えば、グリコタンパク質)、脂質(例えば、糖脂質、リン脂質、スフィンゴ脂質、ガングリオシド)のような生物的に重要な分子が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
「シアル酸」という語は、9炭素のカルボン酸塩の糖の一族の中の任意の員を表す。シアル酸族の中の最も普通の員は、N-アセチルノイラミン酸(2-ケト-5-アセトアミド-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-D-ガラクトノヌロピラノース-1-オニック酸(しばしばNeu5Ac 、NeuAc若しくはNANAと略記される)である。第二の員は、N-グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc若しくはNeuGc)であり、NeuAcのN-アセチル基が水酸化されている。第三のシアル酸族の員は、2-ケト-3-デオキシ-ノヌロソニック酸(KDN)である(Nadano ら (1986年) J. Biol. Chem. 261巻: 11550-11557頁; Kanamoriら, J. Biol. Chem.265巻: 21811-21819頁 (1990年))。9-O-ラクチル-Neu5Ac、若しくは9-O-アセチル-Neu5Ac、9-デオキシ-9-フルオロ-Neu5Ac及び9-アジド-9-デオキ-Neu5Acのような、9-O-C1-C6アシル-Neu5Acのような9置換シアル酸も含まれる。シアル酸族についての総説として、例えば、Varki, Glycobiology 2巻: 25-40頁 (1992年); Sialic Acids: Chemistry, Metabolism and Function, R. Schauner, Ed.(Springer-Verlag, New York(1992年))を参照されたい。シアル化操作におけるシアル酸化合物の合成と利用は、国際出願WO 92/16640、1992年10月1日出版に公開されている。
【0062】
グリコシルトランスフェラーゼの「受容体基質」は、例えば、糖類やペプチドのような、特定のグリコシルトランスフェラーゼに対して受容体として働く化学種である。受容体基質を、対応するグリコシルトランスフェラーゼや糖供与体基質やその他の必要な反応混合化合物に接触させて、反応混合物を十分な時間培養すると、グリコシルトランスフェラーゼは糖残基を、糖供与体基質から受容体基質へ転移させる。受容体基質はしばしば、異なるタイプの特定のグリコシルトランスフェラーゼに対して変わるであろう。例えば、哺乳類のガラクトシド 2-フコシルトランスフェラーゼ(α1,2-フコシルトランスフェラーゼ)に対する受容体基質は一般に、オリゴ糖の非還元末端でのGalβ1,4-GlcNAc-Rが含むであろう。このフコシルトランスフェラーゼは、フコースをα1,2連結を経てGalにくっ付けている。末端のGalβ1,4-GlcNAc-RとGalβ1,3-GlcNAc-Rとそのシアル酸同族体はそれぞれ、α1,3とα1,4-フコシルトランスフェラーゼの受容体基質である。しかしながら、これらの酵素は、フコース残基を受容体基質のGlcNAcにくっ付ける。したがって、「受容体基質」という語は、特別の利用に対して興味がある特定のグリコシルトランスフェラーゼを文章中で採用する。フコシルトランスフェラーゼおよび他のグリコシルトランスフェラーゼの受容体基質がここで記述される。
【0063】
グリコシルトランスフェラーゼの「供与体基質」は、活性化ヌクレオチド糖である。そのような活性化糖は一般に、ウリジン、グアノシン、シトシンの一リン酸の糖誘導体(それぞれUMP、GMP、CMP)あるいは糖の二リン酸誘導体(それぞれUDP、GDP、CDP)から成り、ここでヌクレオチド一リン酸塩または二リン酸は離脱基となる。例えば、フコシルトランスフェラーゼの供与体基質は、GDP-フコースである。シアリルトランスフェラーゼの供与体基質は例えば、好ましいシアル酸を構成する活性化糖ヌクレオチドである。例えば、NeuAcの場合、活性化糖はCMP-NeuAcである。
【0064】
本発明を実施するのに使われる「固体担体」は、技術認識された合成担体、分離媒体などから選択される員、例えば、中空のファイバー(Amicon Corporation, Danvers, Mass.)、ビーズ(Polysciences, Warrington, Pa)、磁性ビーズ(Robbin Scientific, Mountain View, Calif.)、プレート、皿、及びフラスコ(Corning Glass Works, Coming, N.Y.)、網(Becton Dickinson, Mountain View, Calif.)、スクリーン及び固体ファイバー(Edelmanら, U.S. Pat. No. 3,843,324 参照;また同様に Kurodaら, U.S. Pat. No. 4,416,777を 参照)、膜(Millipore Corp., Bedford, Mass.)及び計深棒を含む。。
【0065】
緒言
本発明は、分子種(スピーシーズ)の澱粉結合ドメインを通して、固体担体上に分子種を固定する方法を提供するものである。又同様に、合成、検出、精製のために固定化分子種を使う方法を提供する。固定化分子種は、糖類に結合しているアミノ酸澱粉結合ドメイン(SBD)を含む。典型的な態様では、SBDは固定化分子種に接合されている。別の典型的な態様では、SBDは固定化分子種のペプチド配列に組み換え的に付加しているような配列である。SBDはそれが結合している分子種から任意に取り除ける。例えば、特異的又は非特異的プロテアーゼが、SBDを酵素的に取り除くために使われてもよい。
【0066】
本発明はまた同様に、SBDを含む分子種を精製するための方法を提供する。図1に示すように、本発明の方法では、SBDを含有する分子種の混合物、本場合はグリコシルトランスフェラーゼであるが、分子種を固体担体に結合させるのに適切な条件下で、糖・機能化担体と接触させる。混合物中に存在した不純物は、カラムから洗い落とされる。典型的な精製条件は、図2に示される。その精製に続いて、精製された分子種は、任意に適切な条件下で担体から取り除かれる。その純度は望むなら、検証される(図3−図6)。またもう一つとして、精製された分子種は担体上にそのままにしておく。支持された分子種は、固定されている間に別の分子種に変わるか又は、基質上での転換を行うのに適切な固定化試薬として役立つ。分子種が、反応に関与する前に担体から取り除かれるという態様において、分子種は反応後に再び担体に結合させることができ、そのことによって、分子種の回収や代えられた基質が精製されることとなる。
【0067】
典型的な模範では、担体結合のSBDを含む分子種を、基質からラベルしたものを溶出できる除去溶液に固定化された分子種を接触させることによって、取り除ける。またもう一つの方法として、SBDは、SBDの1つまたは両方の側面内若しくは上にプロテアーゼ認識部位を含めることによって酵素的に取り除ける。またもう一つの方法として、SBDとそれが付いている分子種との間の化学的開裂部位に置かれる。典型的なプロテアーゼ開裂部位は、コラゲナーゼ、トロンビン、ファクターXaの部位が含まれ、それらはそれぞれの酵素によって特異的に開裂される。別の態様では、SBDを包含した作成物は、例えば低pH、光、若しくは熱は、SBDとそれが結合する分子種との間の結合を開裂してもよい選択される条件で開裂される化学開裂部位を含む。またもう一つとして、全多糖類結合ペプチドは、プロテアーゼKのような、比較的に非特異的な一般的なプロテアーゼに晒すことによって、退化分解され得る。これら何れの操作もSBDを取り除くのに有効である。
【0068】
一つの観点で、本発明はアミノ酸配列内にSBDモチーフを含む融合タンパク質を提供する。融合タンパク質は、興味があるタンパク質の精製、興味があるタンパク質の固定化、固相診断の作成、SBD接合の精製、そしてコーティングや標識や除去可能色素の作成を含む多種多様な利用を提供する。他の利用としては、多糖類マトリックスに興味のある化合物を結合させることが含まれる。SBDと糖含有担体との間の相互作用はまた、化合物の精製、特に生物化学的化合物の精製手段としても利用することが出来る。
【0069】
担体に対する多糖類結合ドメインの吸着は強くて特異的であるので、この組成は、多糖類担体上の融合タンパク質を固定化する手段としても利用される。この固定化系は、例えば、診断検査の固体試薬、酵素、抗体断片、ペプチドホルモンなどを含む試薬の作成における用途が見いだされる。ここで、薬物は、クリアランス値を減少させるように結合し、担体が例えばカルボキシメチルセルロースのように可溶であるか又は、例えば薬がインターロイキン2である微結晶セルロース(Avicel)のように不溶であり得る。
【0070】
澱粉結合ドメイン
本発明における典型的なSBD部分には、野生型多糖類結合タンパク質、あるいは多糖類に結合出来るようにデザイン設計されたタンパク質の結合ドメインで見出される構造、例えば、ペプチドや糖が含まれる。特にもしSBDのアミノ酸配列が本質的にポリサッカリダーゼの加水分解酵素活性を欠いているが、基質結合活性を保持しているならば、ポリサッカリダーゼで見出されるSBDは有用なモチーフを提供する。
【0071】
澱粉結合ドメイン(SBD)は一般に、何れかのグルコアミラーゼ遺伝子若しくは何れかのその他の糖結合タンパク質に由来するペプチド配列を含む。今日最も知られているSBDはCGTase、すなわち、シクロデキストリン グルカノトランスフェラーゼ(E.C. 2.4.1.19)とグルコアミラーゼ(E.C.3.2.1.3)で見出されるものである。例えば、澱粉デンプン結合ドメインハイブリッドを記述している Chenら (1991年), Gene 991巻: 121-126頁も参照されたい。模範的なSBDは、セルロース、β-1,4-グリコシド結合によって結ばれたD-グルコピラノースとそのエステルからなる多糖類(例えば、酢酸セルロース);主鎖の繰返し単位が、β-1,4-D-キシロピラノースであるキシラン;β-1,4-結合N-アセチル2-アミノ-2-デオキシ-β-D-グルコピラノース単位からなるという点でセルロースと似ているキチンのような糖類を認識するものである。幾つかのタイプの酵素がセルロースやキシランの微生物変換に含まれ、エンドグルカナーゼ(1,4-β-D-グルカン グルカノ加水分解酵素、E3.2.1.4);セロビオ加水分解酵素(β-1,4-D-グルカン セロビオ加水分解酵素 EC 3.2.1.91);β-グルコシダーゼ、キシラナーゼ(β-1,4-D-キシラン キシラノ加水分解酵素、EC 3.2.1.8)及びキシロシダーゼ(1,4-β-D-キシラン キシロ加水分解酵素、EC3.2.1.37)が含まれる。
【0072】
典型的なSBDは、グルコアミラーゼ遺伝子によってコード化される。グルコアミラーゼSBD若しくは又はその断片をコード化する遺伝子は、原核生物又は真核生物から単離することが出来る。一つの好ましい態様では、グルコアミラーゼ遺伝子がアワモリ(A. awamori) に由来するものである。SBDは、それ自身の比較的小さな断片若しくはより大きなグルコアミラーゼタンパク質の部分として使うことが出来る。例えば、完全な長さのグルコアミラーゼタンパク質若しくは遺伝子(アミノ酸1−640は信号ペプチドを含み、G1形を示す)がつかわれ得るか、又はタンパク質のG2形を含む如何なる次の形(もう一つの転写物のスプライシングはイントロンEを除く)、すなわち、酵素の加水分解機能を壊すヌクレオチド突然変異を含めたタンパク質の無傷なG1とG2形(デンプン分解アミノ酸成熟ペプチド19−488)、及び機能的澱粉結合ドメイン(成熟ペプチドアミノ酸533−640)だけを残して19−532を成熟したペプチドのアミノ酸の如何なる骨格内除去することにも使われることが可能である。
【0073】
ここで議論されるように、澱粉結合ドメインは融合タンパク質に導入されるか又は、生物活性分子種若しくは検体のような他の分子種に化学的に付けられる。ここで好ましい多糖類結合ドメイン(PBD)は、ポリサッカリダーゼの多糖類結合ドメインから得られるのが特徴であり;それは多糖類に結合することが出来;状況次第で、本質的にポリサッカリダーゼ活性を欠いている。
【0074】
酵素
典型的な態様では、SBDを固体担体に結合することによって固定化された分子種は、グリコシルトランスフェラーゼ(例えば、フコシルトランスフェラーゼ)活性を持つポリペプチドである。グリコシルトランスフェラーゼは、基質(例えば、タンパク質、グリコペプチド、脂質、糖脂質、若しくは成長オリゴ糖の非還元末端)に活性化糖(供与体NDP・糖)を段階的に付加させる触媒となる。数多くのグリコシルトランスフェラーゼが本分野で知られている。
【0075】
本発明の方法を使えば、所望の特異性を持つように選択される固定化されたグリコシルトランスフェラーゼを作成することが可能となる。グリコシルトランスフェラーゼはまた好ましくは基質の高比率の選択受容体グループをグリコシル化することが可能である。SBDは、酵素にコンジュゲートさせることができ、SBDペプチド配列を含む融合タンパク質の一つの成分となり得る。その他のグリコシルトランスフェラーゼ融合タンパク質には、2つの異なるグリコシルトランスフェラーゼ(例えば、シアリルトランスフェラーゼやフコシルトランスフェラーゼ)の活性を示すグリコシルトランスフェラーゼが含まれる。その他の融合タンパク質は、同じトランスフェラーゼ活性の2つの異なる変形(例えば、FucT-VIとFucT-VII)が含むであろう。さらに別の融合タンパク質は、トランスフェラーゼ活性の利用を増大させるドメインが含むであろう(例えば、溶解度、安定度、代謝回転などの増大)。
【0076】
SBD含有グリコシルトランスフェラーゼは、選ばれたグリコシル部分を作成するために使用されうる。所望のオリゴ糖構造を合成するのにグリコシルトランスフェラーゼを使用する多くの方法が知られており、一般的に本発明に適用される。典型的な方法は、例えば、WO 96/32491, Itoら, Pure Appl. Chem. 65巻: 753頁 (1993年) やU.S. Pat. Nos. 5,352,670、5,374,541、5,545,553 に記述されている。
【0077】
本発明の方法は、選択された部位に所望のグリコシル残基を加えれば、いづれのグリコシルトランスフェラーゼを使用してもよい。そのような酵素の例は、ガラクトシルトランスフェラーゼ、N-アセチルグルコサミルトランスフェラーゼ、N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ、フコシルトランスフェラーゼ、シアリルトランスフェラーゼ、マンノシルトランスフェラーゼ、キシロシルトランスフェラーゼ、グルコシルトランスフェラーゼ、グルクロノニルトランスフェラーゼなどを含む。
【0078】
本発明の方法で使うことの出来るグリコシルトランスフェラーゼは、ガラクトシルトランスフェラーゼ、フコシルトランスフェラーゼ、グルコシルトランスフェラーゼ、N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、グルクロニルトランスフェラーゼ、シアリルトランスフェラーゼ、マンノシルトランスフェラーゼ、グルクロン酸トランスフェラーゼ、及びガラクツロン酸トランスフェラーゼを含むが、これらに限定されない。適切なグリコシルトランスフェラーゼは、真核と同様に原核から得られるものを含む。
【0079】
グリコシルトランスフェラーゼ反応を含む酵素糖合成に対して、グリコシルトランスフェラーゼは、如何なる源からでもクローン化でき、単離できる。多くのクローン化グリコシルトランスフェラーゼは、それらのポリペプチド配列がそうであるように知られている。例えば、“The WWW Gude To Cloned Glycosyltransferases”, (http://www.vei.co.uk/TGN/gt.guide.htm)を参照。それによってアミノ酸配列が推定されるグリコシルトランスフェラーゼをコード化するグリコシルトランスフェラーゼアミノ酸配列とヌクレオチド配列はまた同様に、GenBank, Swiss-Prot, EMBL 他を含めて、いろいろ公的に入手できるデータベースの中に見出される。
【0080】
グリコシルトランスフェラーゼをコード化するDNAは、化学合成によって、適切な細胞又は細胞株培養からmRNAの逆転写をスクリーニングすることによって、適切な細胞からゲノムライブラリーをスクリーニングすることによって、若しくはこれらの操作の組み合わせによって得てもよい。mRNA若しくはゲノムDNAのスクリーニングは、グリコシルトランスフェラーゼ遺伝子配列から生成されたオリゴヌクレオチド試料で行われてもよい。試料は、蛍光性の基、若しくは放射性原子、若しくは化学発光性の基のような検出可能な基を用いて、既知の操作に従いラベルされてもよく、通常のハイブリッド形成試験に使用されてもよい。もう一つとして、グリコシルトランスフェラーゼ遺伝子配列は、ポリメラーゼ鎖反応(PCR)操作を使用して得てもよく、ここでPCRオリゴヌクレオチドプライマーはグリコシルトランスフェラーゼ遺伝子配列から作られる。例えば、Mullis らのU.S. Pat. No. 4,683,195 及び Mullis の U.S. Pat. No. 4,683,202 を参照。
【0081】
グリコシルトランスフェラーゼは、グリコシルトランスフェラーゼをコード化するDNAを含むベクターで変換された宿主細胞中で合成されてもよい。ベクターは複製可能なDNA作成物である。ベクターは、グリコシルトランスフェラーゼ酵素をコード化するDNAを増幅するため、及び/又はグリコシルトランスフェラーゼ酵素をコード化するDNAを発現するために使われる。発現ベクターは複製可能なDNA作成物であり、グリコシルトランスフェラーゼ酵素をコード化するDNA配列が、適切な宿主中でグリコシルトランスフェラーゼの発現に影響を及ぼすことのできる適切な制御配列に操作可能に連結されている。そのような制御配列に対する要求は、選ばれた宿主と選ばれた転換方法によって変わるであろう。一般に、制御配列は、転写プロモーター、転写を制御コントロールするための任意的な操作配列、適切なmRNAリボゾーム結合部位をコード化する配列、及び転写と翻訳の終結を制御する配列がふくまれる。増幅ベクターは、発現制御ドメインを必要としない。必要な総ては、通常複製の起源で付与されている宿主中での複製の能力と形質転換の認識を容易にするための選別遺伝子である。
【0082】
本発明の組成を作成するのに使う適切なグリコシルトランスフェラーゼが、この明細書の中で記述される。種々の量のそれぞれの酵素(例えば、1−100mU/mgタンパク質)を、興味があるグリコシルトランスフェラーゼに対する潜在的な受容体部位を持つオリゴ糖が連結している基質(例えば、1−10mg/mlで)と反応させることによって、その他の適当なグリコシルトランスフェラーゼを容易に同定することができる。グリコシルトランスフェラーゼの、所望の部位に糖残基を付加する能力が比較される。同じ特異性を有するその他のグリコシルトランスフェラーゼよりもっと効果的に、基質に連結したオリゴ糖の潜在的な受容体部位をグリコシル化する能力を示すグリコシルトランスフェラーゼが、本発明の方法を使用するのに適当である。
【0083】
所望の変換を達成するのに必要な特定の酵素量は、本分野の熟練者によって容易に決められる。しかしながら、その他の態様では、より多量の酵素を使うのが好ましい。例えば、約30から約37℃の温度が適切である。
【0084】
遺伝子組み換えで作られたグリコシルトランスフェラーゼを使用することによって、本発明による方法の効能を増大させることが出来る。組み換え生産は、大幅な基質の修飾を必要とするグリコシルトランスフェラーゼの大量の産生を可能にする。グリコシルトランスフェラーゼを可溶にし、大量のグリコシルトランスフェラーゼの産生と精製を容易にさせる、グリコシルトランスフェラーゼの膜固定ドメインを削除することは、グリコシルトランスフェラーゼをコード化する修飾遺伝子の組み換え発現によって達成できる。グリコシルトランスフェラーゼの組み換え産生に適切な方法についての記述は、US Patent No. 5,032,519 を参照されたい。
【0085】
本発明は、目標基質を固体担体に固定するグリコシル化の方法についても提供する。「固体担体」という語はまた半固体担体も含む。好ましくは、目標基質は、グリコシル化反応が完了した後に取り除くことが出来るように可逆的に固定される。適切なマトリックスは本分野の熟練者に知られている。グリコシル化反応が進行する間、適当な樹脂に基質を一時的に固定化するのに、例えば、イオン交換が使われる。興味がある基質に特異的に結合する配位子は又、親和性に基づく固定化に使うことができる。興味がある基質に結合する抗体が適切である。興味があるグリコシル化される基質に特異的に結合する色素やその他の分子もまた適切である。
【0086】
本発明において使用されるその他の典型的な酵素としては、フコシルトランスフェラーゼが挙げられる。多くの糖では、生物活性を示すためには特定のフコシル化構造が存在することが必要とされる。細胞内認識機構は、しばしばフコシル化されたオリゴ糖を必要とする。例えば、P−セレクチン、E−セレクチンを含む細胞接着分子として機能する多くのタンパク質は、特異的な細胞表面のフコシル化された炭水化物構造、例えばシアリルルイスXやシアリルルイス構造、に結合している。付け加えるに、ABO血液型の系を形成する特異的な炭水化物構造はフコシル化されている。三つの血液型それぞれの炭水化物構造は、Fucα1,2Galβ1-二糖類単位を共有する。O血液型構造では、この二糖類が末端構造である。A型構造は二糖類に末端GalNAc残基が付加したα1,3GalNAcトランスフェラーゼによって形成されている。B型構造は末端ガラクトース残基を付加したα1,3ガラクトシルトランスフェラーゼで形成されている。ルイス血液型構造もまたフコシル化されている。例えば、ルイスX及びルイス構造は、それぞれGalβ1,4(Fucα1,3)GlcNAc及びGalβ1,4(Fucα1,4)GlcNAcである。これら両構造はさらにシアリル化(NeuAcα2,3-)されて対応したシアリル化構造を形成する。その他の興味があるルイス血液型は、それぞれFucα1,2Galβ1,4(Fucα1,3)GlcNAcβ-ORとFucα1,2Galβ1,3(Fucα1,4)GlcNAc-ORであるルイスy及びb構造である。ABOの構造及びルイス血液型構造及びそれらの合成に含まれる酵素についての記述は、Essentials of Glycobiology, Varkiら. eds., 16章 (Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY, 1999年)を参照されたい.
【0087】
グアノシン−5’−ジフォスフォフコースから糖受容体の特定の水酸基へフコース単位を転移する反応経路で、フコシルトランスフェラーゼが使われてきた。例えば、市川(Ichikawa) は、クローン化フコシルトランスフェラーゼでシアリル化されたラクトサミンのフコシル化を含む方法により、シアリルルイスXを作成した(市川(Ichikawa)ら, J. Am. Chem. Soc. 114巻: 9283-9298頁 (1992年)。Lowe は、細胞内での非天然のフコシル化活性の発現方法について記述し、それによりフコシル化グリコタンパク質、細胞表面などが産生される(U.S. Patent No. 5,955,347)。
【0088】
一つの態様では、本発明の方法は、フコシルトランスフェラーゼの受容体部分を有する基質を、フコース供与体部分、フコシルトランスフェラーゼ、及びフコシルトランスフェラーゼ活性に必要なその他の試薬を含む反応混合物と接触させることによって実施される。フコースをフコース供与体部分からフコシルトランスフェラーゼ受容体部分へ転移するのに十分な時間と適当な条件下で、基質は反応混合物中で培養される。好ましい態様では、フコシルトランスフェラーゼは、組成中のそれぞれのフコシルトランスフェラーゼ受容体部分の少なくとも60%のフコシル化の触媒となる。
【0089】
多くのフコシルトランスフェラーゼは、本分野の熟練者に知られている。短的に言うと、フコシルトランスフェラーゼは、L-フコースをGDP−フコースから糖受容体の水酸基の位置に転移する何れの酵素をも含んでいる。ある態様では、受容体糖は、例えば、オリゴ糖グリコシドにおけるGalβ(1→3,4)GlcNAc中のGlcNAcである。この反応に適切なフコシルトランスフェラーゼは、ヒト乳から得られる公知のGalβ(1→3,4)GlcNAcα(1→3,4)フコシルトランスフェラーゼ(Fuct-III E.C. No. 2.4.1.65)(例えば、Palcic ら, Carbohydrate Res. 190巻: 1-11頁 (1989年); Prieelsら, J. Biol. Chem. 256巻: 10456-10463頁 (1981年); Nunezら, Can. J. Chem. 59巻: 2086-2095頁 (1981年)、及びヒト血清で見出されるβGal(1→4)βGlcNAcα(1→3,4) フコシルトランスフェラーゼ(FucT-IV,FucT-V, FucT-VI, 及びFucT-VII,E.C. No. 2.4.1.65)を含む。βGal(1→3,4)βGlcNAcα(1→3,4) フコシルトランスフェラーゼの組み換えもまた入手できる(例えば、Dumasら, J. Bioorg. Med. Letters 1巻: 425-428頁 (1991年)及びKukowska-Latalloら, Genes and Development 4巻: 1288-1303頁 (1990年) を参照)。その他の典型的なフコシルトランスフェラーゼは、α1,2フコシルトランスフェラーゼ(E.C. No. 2.4.1.69)を含む。酵素的フコシル化は、Molliconeら, Eur. J. Biochem. 191巻: 169-176頁 (1990年)若しくはU.S. Patent No. 5,374,655;Schistosoma mansoniからのα1,3フコシルトランスフェラーゼ(Trotteinら (2000年) Mol. Biochem. Parasitol. 107巻: 279-287頁);及びα1,3フコシルトランスフェラーゼIX(ヒトとマウスのヌクレオチド配列FucT-IXは、Kanekoら. (1999年) FEBS Lett. 452巻: 237-242頁に記載されている)に記された方法によって行われ、およびヒト遺伝子の染色体上の位置は、Kanekoら (1999年) Cytogenet. Cell Genet. 86巻: 329-330頁に記述されている。受容体としてカタツムリ(Lymnaea stagnalis)及びグリーン・ビーンズ(mung bean)からのN-連結GlcNAcを使う、最近報告されたα1,3フコシルトランスフェラーゼは、それぞれvan Teteringら (1999年) FEBS Lett. 461巻: 311-314頁、及び びLeiterら (1999年) J. Biol. Chem. 274巻: 2183-21839頁に記述されている。付け加えるに、Raskoら (2000年) J. Biol. Chem. 275巻: 4988-94頁に記されたヘリコバクターピロリ菌の(α1,3/4)フコシルトランスフェラーゼのようなバクテリアフコシルトランスフェラーゼ、同様にH. Pylori (Wangら (1999年) Microbiology 145巻: 3245-53頁) のα1,2フコシルトランスフェラーゼがある。例えば、本発明に有用なフコシルトランスフェラーゼの記述としてStaudacher, E. (1996年) Trends in Glycoscience and Glycotechnology, 8巻: 391-408頁がある。
【0090】
フコシルトランスフェラーゼ触媒によってフコース残基を付けるために適切な受容体部分は、GlcNAc-OR、Galβ1、3GlcNAc-OR、NeuAcα2,3Galβ1,3GlcNAc-OR、Galβ1,4GlcNAc-OR、及びNeuAcα2,3Galβ1,4GlcNAc-ORが含むが、限定されず、ここでRは、アミノ酸、糖、オリゴ糖、若しくは少なくとも1つの炭素原子を有するアグリコン基である。Rは基質に連結するか部分である。特定の反応に適切なフコシルトランスフェラーゼは、所望のフコース連結のタイプ(α2、α3、又はα4)、そして興味がある特定の受容体、及び所望の高収量のフコシル化を達成するためのフコシルトランスフェラーゼの能力に基づいて選択される。適切なフコシルトランスフェラーゼとそれらの特性は上に記述されている。
【0091】
もし組成中に基質に連結したオリゴ糖が十分な割合で、フコシルトランスフェラーゼ受容体部分を含んでいなければ、適切な受容体を合成することが出来る。例えば、フコシルトランスフェラーゼの受容体を合成するための一つの好ましい方法は、GlcNAc残基を基質に連結したオリゴ糖上に存在するGlcNAcトランスフェラーゼ受容体部分に付けるためにGlcNAcトランスフェラーゼの使用である。好ましい態様では、興味がある潜在的な受容体部分の大部分をグリコシル化する能力を持っているトランスフェラーゼが選択される。結果として得られるGlcNAcβ-ORは、それからフコシルトランスフェラーゼの受容体として使用できる。
【0092】
結果として得られるGlcNAcβ-OR部分は、フコシルトランスフェラーゼ反応の前にガラクトシル化されて、例えば、Galβ1,3GlcNAc-OR、又はGalβ1,4GlcNAc-OR残基を生じうる。ある態様では、ガラクトシル化とフコシル化のステップは同時に行うことが出来る。ガラクトシル化受容体を必要とするフコシルトランスフェラーゼを選択することによって、所望の生成物だけが形成される。したがってこの方法には下記のことが含まれる。
(a) 化合物Galβ1,4GlcNAcβ-OR、若しくはGalβ1,3GlcNAc-ORを形成するのに十分な条件下で、UDP−ガラクトースの存在下で、ガラクトシルトランスフェラーゼで式GlcNAcβ-ORの化合物をガラクトシル化すること;及び
(b) Fucα1,2Galβ1,4GlcNAc1β-O1R;
Fucα1,2Galβ1,3GlcNAc-OR;
Fucα1,2Galβ1,4GalNAc1β-O1R;
Fucα1,2Galβ1,3GalNAc1β-OR;
Galβ1,4(Fuc1,α3)GlcNAc1β-OR;若しくは
Galβ1,3(Fucα1,4)GlcNAc1β-OR
から選択される化合物を作るのに十分な条件下で、GDP−フコースの存在下で、フコシルトランスフェラーゼを使って、(a)で作られた化合物をフコシル化すること。
【0093】
所望の活性を有する付加的なフコシルトランスフェラーゼを入れて、上の構造にさらにフコース残基を加えることが出来る。例えば、本方法では、Fucα1,2Galβ1,4(Fucα1,3)GlcNAc-OR及びFucα1,2Galβ1,3(Fucα1,4)GlcNAc-ORのようなオリゴ糖決定基を作ることが出来る。したがって、別の好ましい態様では、本方法は少なくとも2つのフコシルトランスフェラーゼを使用することが含まれる。複数のフコシルトランスフェラーゼは、同時的又は連続的のいずれかで使用される。フコシルトランスフェラーゼが連続して使用されるとき、一般にグリコタンパク質は複数のフコシル化ステップの間で精製しない方が好ましい。複数のフコシルトランスフェラーゼが同時に使用されるとき、酵素活性は、二つの別々の酵素に由来し、あるいは一つのフコシルトランスフェラーゼ活性よりも大きい活性を有する単一酵素に由来しうる。
【0094】
シアリルトランスフェラーゼ
本発明の方法はまたSBD−標識のシアリルトランスフェラーゼを使って実施することが出来る。組み換えシアリルトランスフェラーゼの例、削除されたアンカードメインをもつものを含めて、そしてまた組み換えシアリルトランスフェラーゼを作る方法は、例えばUS Patent No. 5,541,083 に見出される。少なくとも15種類の哺乳類のシアリルトランスフェラーゼが記録されていて、それらの内13のcDNAが今日までにクローン化されている(この明細書で使われる系統的な命名法については、 例えば、Tsujiら(1996年) Glycobiology 6巻:v-xivを参照されたい。これらのcDNAは、シアリルトランスフェラーゼの組み換え生産に使うことができ、本発明の方法において使用される。
【0095】
シアリル化は、トランス−シアリダーゼ又はシアリルトランスフェラーゼを使って達成できる。ただし、シアリルトランスフェラーゼを使う時、特定の決定基がα2,6結合のシアル酸を必要とする場合は除かれる。この方法は、適当な供与体部分の存在下で、受容体を適当な酵素と接触させることによって、シアリルトランスフェラーゼ又はトランス−シアリダーゼの受容体をシアル化することを含む。シアリルトランスフェラーゼに対しては、CMP-シアル酸が好ましい供与体部分である。しかしながら、トランス−シアリダーゼでは、トランス−シアリダーゼがシアル酸を付加できない離脱基が含まれる供与体部分を好ましく使う。
【0096】
興味がある受容体部分は、例えばGalβ−ORである。ある態様では、シアル酸を受容体の非還元末端に転移させて、化合物NeuAcα2,3Galβ-OR若しくはNeuAcα2,6Galβ-ORを形成する条件で、受容体部分は、CMP-シアル酸の存在下で、シアリルトランスフェラーゼと接触される。式中、Rは、アミノ酸、糖、オリゴ糖、若しくは少なくとも1つの炭素原子を有するアグリコン基である。典型的な態様では、Galβ−ORは、Galβ1,4GlcNAc-Rであり、ここで、Rは基質に連結するか若しくは基質の一部である。
【0097】
典型的な態様では、この方法は、シアル化とフコシル化の両方の化合物を提供する。大抵のシアリルトランスフェラーゼはフコシル化された受容体上で活性でないので、シアリルトランスフェラーゼ反応とフコシトランスフェラーゼ反応は、一般に連続して行われる。しかしながら、FucT-VIIは、シアル化された受容体上でのみ働く。したがって、FucT-VIIは、シアリルトランスフェラーゼとの同時反応で使うことが出来る。
【0098】
シアル化にトランス−シアリダーゼが使われる場合では、フコシル化反応およびシアル化反応は、同時あるいは連続、いずれの順ででも行われることが出来る。修正される基質は、適量のトランス−シアリダーゼ、適切な量のシアル酸供与体基質、フコシルトランスフェラーゼ(α1,3あるいはα1,4結合を作ることのできる)、そして適切なフコシル供与体ドナー基質(例えば、GDP-フコース)を含む反応混合物で培養される。
【0099】
本発明の使用で適切なシアリルトランスフェラーゼの例としては、ST3Gal III(例えば、ネズミ若しくはヒトのST3Gal III)、ST3Gal IV、ST3Gal I、ST6Gal I、ST3Gal V、ST6GalIII、ST6GalNAcI、ST6GalNAcII、及びST6GalNAc IIIが挙げられる(ここで使われるシアリルトランスフェラーゼの命名法は Tsujiら. Glycobiology 6巻: v-xiv (1996年)に記されている)。α(2,3) シアリルトランスフェラーゼ(EC 2.4.99.6) と表される典型的なα(2,3) シアリルトランスフェラーゼは、シアル酸をGalβ1→3Glc二糖類あるいはグリコシドの非還元末端Galへ転移する。例えば、Van den Eijndenら. J. Biol. Chem. 256巻: 3159頁 (1981年)、 Weinsteinら, J. Biol. Chem. 257巻: 13845頁 (1982年) 及び Wenら, J. Biol. Chem. 267巻: 21011頁 (1992年) を参照。別の典型的なα(2,3) シアリルトランスフェラーゼ(EC 2.4.99.4)は、シアル酸を二糖類若しくはグリコシドの非還元末端Galへ転移する。例えば、Rearickら, J. Biol. Chem. 254巻: 4444 頁(1979年)及びGillespieら, J. Biol. Chem. 267巻: 21004頁 (1992年) を参照。更に典型的な酵素は、Gal-β-1,4-GlcNAc α-2,6 シアリルトランスフェラーゼを含む(Kurosawaら, Eur. J. Biochem. 219巻: 375-381頁 (1991年) を参照)。α2,8 シアリルトランスフェラーゼもまた、第二あるいはそれより多くのシアル酸残基を、本発明の方法において有用な基質に付けるのに使うことが出来る。なお更なる例は、ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiase) (cpsK 遺伝子として公知のST)、軟性下疳菌(Haemophilus ducreyi) (第一遺伝子として公知)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenza) (HI0871遺伝子として公知)からのα2,3-シアリルトランスフェラーゼである。例えば、Chaffinら, Mol. Microbiol., 45巻: 109-122頁 (2002年) を参照。
【0100】
請求の方法で有用なシアリルトランスフェラーゼの例は、カンピロバクター(Campylobacter) からのCST-Iである(例えば、U.S. Pat. No. 6,503,744、6,096,529、及び6,210,933及び WO99/49051、及び公開U.S. Pat. 出願 2002/2,042,369を参照)。この酵素は、Galβ1,4Glc若しくはGalβ1,3GlNAcのGalにシアル酸を転移させる触媒となる。
【0101】
本発明に使用されるその他の典型的なシアリルトランスフェラーゼとして、α(2,3)シアリルトランスフェラーゼを含む、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni) から単離されたものが挙げられる。例えば、WO99/49051 を参照。別の一つの態様では、本発明は、α2,3 シアリルトランスフェラーゼ活性とα2,8 シアリルトランスフェラーゼ活性の両方を有する2官能性シアリルトランスフェラーゼポリペプチドを提供する。2官能性シアリルトランスフェラーゼは、適切な糖受容体(例えば、末端ガラクトースを持った糖)とシアル酸供与体(例えば、CMP−シアル酸)の反応混合物中に入れたとき、供与体からα2,3連結の受容体へ最初のシアル酸を転移する触媒となる。それから、シアリルトランスフェラーゼは、シアル酸供与体からα2,8連結の最初のシアル酸残基へ、第二のシアル酸を転移する触媒となる。このタイプのSiaα2,8- Siaα2,3-Gal 構造はしばしばグリコスフィンゴリピドで見出される。例えば、EP Pat.出願 No. 1147200 を参照。
【0102】
最近報告されたウィルスのα2,3シアリルトランスフェラーゼも、本発明のシアル化方法に適切に使用される(Sujinoら (2000年) Glycobiology 10巻: 313-320頁)。この酵素v-ST3Gal I は、粘液腫ウィルスに感染した細胞から得られたもので、それぞれのアミノ酸配列の比較によって示されるように、これは明らかに哺乳類のST3Gal IVと関係している。ST3Gal Iは、タイプI(Galβ1,3-GlcNAcβ1-R)、タイプII(Galβ1,4-GlcNAc-β1-R)及びタイプIII(Galβ1,3-GalNAcβ1-R)受容体のシアル化の触媒となる。この酵素はまたフコシル化された受容体部分(例えば、ルイスやルイスa)へシアル酸を転移する触媒となる。
【0103】
ガラクトシルトランスフェラーゼ
別の態様のグループでは、SBD−標識の酵素がグリコシルトランスフェラーゼである。典型的なガラクトシルトランスフェラーゼは、α(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼ(E.C. No. 2.4.1.151、例えば、Dabkowskiら, Transplant Proc. 25巻: 2921頁 (1993年) 及びYamamotoら, Nature 345巻: 229-233頁 (1991年))、牛(GenBank j04989, Joziasseら, J. Biol. Chem. 264巻: 14290-14297頁 (1989年))、ネズミ(GenBank m26925; Larsenら, Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA 86巻: 8227-8231頁 (1989年))、豚(GenBank L36152; Strahenら, Immunogenetics 41巻: 101-105頁(1995年))を含む。別の適切な α1,3ガラクトシルトランスフェラーゼは、B血液型抗原(EC 2.4.1.37、Yamamotoら, J. Biol. Chem. 265巻: 1146-1151頁 (1990年)(ヒト))の合成に含まれるものである。本発明はまたα1,4ガラクトシルトランスフェラーゼを使って実施することが出来る。
【0104】
また本発明の方法の使用に適切なのは、β(1,4) ガラクトシルトランスフェラーゼであり、これは、例えば、EC 2.4.1.90(LacNAc 合成酵素)及びEC 2.4.1.22(ラクトース合成酵素)(牛(D’Agostaroら, Eur. J. Biochem. 183巻: 211-217頁(1989年)、ヒト(Masriら, Biochem. Biophys. Res. Commun. 157巻: 657-663頁 (1988年))、ネズミ(Nakazawaら, Biochem. 104巻: 165-168頁 (1988年)) 、同様にE.C. 2.4.1.38及びセラミドガラクトシルトランスフェラーゼ(EC2.4.1.45、Stahlら, J. Neurosci. Res. 38巻: 234-242頁 (1994年))を含む。その他の適当なガラクトシルトランスフェラーゼは、例えば、α1,2ガラクトシルトランスフェラーゼ(例えば、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe) からで、Chapellら, Mol. Biol. Cell 5巻: 519-528頁 (1994年))を含む。その他の1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼは、グロボシドを作るのに使われるものである(例えば、Schaeperら. Carbohydrate Research 1992年, 236巻, 227-244頁)。哺乳類及びバクテリアの両方の酵素が使用される。
【0105】
本発明で使用する他の典型的なガラクトシルトランスフェラーゼは、β1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼである。適切な反応媒体中に入れると、β1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼは、供与体(例えば、UDP−Gal)から適切な糖受容体アクセプター(例えば、末端GalNAc残基を有する糖)へ、ガラクトース残基を転移する触媒となる。本発明のβ1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼの例は、ジェジュニ(C. jejuni) のようなカンピロバクター(Campylobacter)種によって作られるものである。本発明による現在好ましいβ1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼは、C. jejuni変形の OH4384asのものである。
【0106】
ガラクトシルトランスフェラーゼを使って発明の方法により形成される化合物の典型的な連結には次のようなものが含まれる。(1)Galβ1から4Glc;(2)Galβ1から4GlcNAc;(3)Galβ1→3GlcNAc;(4)Galβ1→6GlcNAc;(5)Galβ1→3GALNAc;(6)Galβ1→6GALNAc;(7)Galα1→3GalNAc;(8)Galα1→3Gal;(9)Galα1→4Gal;(10)Galβ1→3Gal;(11)Galβ1→4Gal;(12)Galβ1→6Gal;(13)Galβ1→4キシローズ;(14)Galβ1→1’−スフィンゴシン;(15)Galβ1→1’−セラミド;(16)Galβ1→3ジグリセリド;(17)Galβ1→O−ヒドロキシリジン;及び(18)Gal→S-システイン。例えば、U.S. Pat. No. 6,268,193 及び 5,691,180 参照。
【0107】
トランス−シアリダーゼ
本発明の方法はまたSBD−標識のトランスシアリダーゼを使って実施することができる。ここで使われる「トランスシアリダーゼ」という語は、α-2,3グリコシド結合によって、シアル酸をガラクトースヘ付加する触媒となる酵素を表す。トランスシアリダーゼは、多くのトリパノソミー(Trypanosomy)種やその他の寄生虫で見出される。これらの寄生生物のトランスシアリダーゼは、通常のシアリダーゼの加水分解活性を保持しているが、効率はずっと小さく、これは、CMP-シアル酸無しで、宿主のシアログリココンジュゲートから寄生虫表面のグリコタンパク質へ末端シアル酸を可逆的に転移する触媒となる。シャーガス(Chagas)病を引き起こすクルーズ・トリパノソーマ(Trypanosome cruzi) は、大抵のシアリダーゼの典型的な加水分解反応の代わりに、α-2,3連結シアル酸を、末端βガラクトシル残基を含む受容体へ選択的に転移する触媒となる表面のトランスシアリダーゼを持っている(Ribeiraoら, Glycobiol. 7巻: 1237-1246頁 (1997年); Takahashiら, Anal. Biochem. 230巻: 333-342頁 (1995年); Scudderら, J. Biol. Chem. 268巻: 9886-9891頁 (1993年); 及びVandekerckhoveら, Glycobiol. 2巻: 541-548 頁(1992年))。クルーズ・トリパノソーマ(T. cruzi)トランスシアリダーゼ(TcTs)は、広範囲の糖や糖脂質やβ連結ガラクトース残基が末端となっているグリコタンパク質受容体に対して活性を持っていて、優先的にα-2,3型シアロシド連結を合成する(Scudder ら, 上に同じ)。それはまた、低速度で、p-ニトロフェニル-α-N-アセチルノイラミン酸のような合成したα-シアロシドからシアル酸を転移させる。しかし、NeuAc2-3Galβ1-4(Fucα1-3)Glcは供与体基質ではない。N-アセチル-D-ノイラミン酸(4MU-NANA)の修正された2-[4-メチルウンベリフェロン]-α-ケトシドやその幾つかの誘導体もまた、TcTsの供与体として役立てることが出来る(Lee & Lee, Anal. Biochem. 216巻: 358-364頁 (1994年))。3’−シアリル-ラクト-N-ビオースIの酵素合成は、アクセプターとしてラクト-N-ビオースI、N-アセチルノイラミニル部分のドナーとして2’-(4-メチルウンベリフェリル)-α-D-N-アセチルノイラミンからのTcTsにより触媒される(Vetereら, Eur. J. Biochem. 267巻: 942-949頁 (2000年))。α-2,3シアル化コンジュゲートを合成するのにトランスシアリダーゼを使用することに関する更なる情報は、ヨーロッパ特許出願No.0557580A2及び米国特許 No. 5,409,817に見出すことができ、それぞれを参照として本明細書に組み込まれる。ヒルのマクロブデラ・デコラ(Macrobdella decora) からの分子内トランスシアリダーゼは、シアログリココンジュゲートにおける末端Neu5Ac(N-アセチルノイラミン酸)α2→3Gal連結の開裂に対して厳密な特異性を示し、分子内のトランス-シアロシル反応の触媒となる(Luoら, J. Mol. Biol. 285巻: 323-332頁 (1999年)。トランスシアリダーゼは、シアル酸をあるいくつかのその他の糖上に転移するのであるが、第一次的にガラクトース受容体上にシアル酸を付加する。しかしながら、GalNAc上へのシアル酸の転移は、シアリルトランスフェラーゼを必要とする。トランスシアリダーゼの使用に関する更なる情報は、PCT出願No. WO 93/18787;及びVetereら, Eur. J. Biochem. 247巻: 1083-1090頁 (1997年)に見出すことが出来る。
【0108】
GalNAcトランスフェラーゼ
本発明はまたSBD-標識のβ1,4-GalNAcトランスフェラーゼポリペプチドを使用してもよい。β1,4-GalNAcトランスフェラーゼは、反応混合物中に入れられた時、供与体(例えば、UDP-GalNAc)から適切な受容体糖(典型的には、末端ガラクトース残基を持った糖)へGalNAc残基を転移する触媒となる。その結果得られる構造、GalNAcβ1,4-Gal- は、多くのその他の糖化合物の中で、しばしばグリコスフィンゴ脂質やその他のスフィンゴイドで見出される。
【0109】
本発明において有用なβ1,4-GalNAcトランスフェラーゼの例は、ジェジュニ(C. jejuni)のようなカンピロバクター(Campylobacter) 種によって作り出されるものである。
【0110】
本発明で使われる典型的なGalNAcは、次のような連結を形成する:(1)(GalNAcα1から3)[(Fucα1から2)]Galβ-;(2)GalNAcα1からセリン/トレオニン(Ser/thr);(3)GalNAcβ1から4Gal;(4)GalNAcβ1から3Gal;(5)GalNAcα1から3GalNAc;(6)(GalNAcβ1から4GlcUAβ1から3)n;(7)(GalNAcβ1から41dUAα1→3-)n;(8)-ManβからGalNAcαGlcNAcαAsn。例えば、U.S. Pat. No. 6,268,193 及び5,691,180 参照。
【0111】
GlcNAcトランスフェラーゼ
更に別の例の態様では、本発明は、SBD-標識のGlcNAcトランスフェラーゼを使用する。本発明を実施するのに有用有効で典型的的なN−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼは、次のような連結を形成させることが可能である。即ち(1)GlcNAcβ1→4GlcNAc、(2)GlcNAcβ1→アスパラギン(Asn);(3)GlcNAcβ1→2Man;(4)GlcNAcβ1→4Man;(5)GlcNAcβ1 →6Man;(6)GlcNAcβ1→3Man;(7)GlcNAcα1→3Man;(8)GlcNAcβ1→3Gal; (9)GlcNAcβ1→4Gal;(10)GlcNAcβ1→6Gal;(11)GlcNAcα1→4Gal; (12)GlcNAcα1→4GlcNAc;(13)GlcNAcβ1→6GalNAc;(14)GlcNAcβ1→3GalNAc; (15)GlcNAcβ→4GlcUA;(16)GlcNAcα1→4GlcUA;(17)GlcNAcα1→4IdUA 。例えば、U.S. Pat. No. 6,268,193 及び5,691,180 参照。
【0112】
その他のグルコシルトランスフェラーゼ
フコシルトランスフェラーゼ及びシアリルトランスフェラーゼについて詳細に示された様に、その他のSBD標識のグルコシルトランスフェラーゼが、同様なトランスフェラーゼに置換されうる。特に、グルコシルトランスフェラーゼもまた、例えばグルコシルトランスフェラーゼ、例えば、Alg8(Stagljovら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91巻: 5977頁 (1944年))、若しくはAlg5(Heesenら、Eur.J.Biochem, 224巻: 71頁 (1944年)),例えばα(1,3) N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ,β(1,4) N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(Nagataら, J.Biol.Chem. 267巻: 12082-12089頁 (1992年)及びSmithら,J.Biol.Chem. 269巻: 15162頁 (1994年))及びポリペプチドN-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(Homaら,J.Biol.Chem. 268巻: 12609頁 (1993年))のようなN-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼでありうる。適当なN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼはGnTI(2.4.1.101,Hullら,BBRC [176巻: 608頁 (1991年)),GnTII,及びGnTIII(Iharaら,J.Biochem. 113巻: 692頁 (1993年)),GnTV(Shoreibanら, J.Biol.Chem. 268巻: 15381頁 (1993年)), O-連結N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(Bierhuizenら, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89巻: 9326頁 (1992年)), N-アセチルグルコサミン-1-ホスフェートトランスフェラーゼ(Rajputら, Biochem J. 285巻: 985頁 (1992年)),及びヒアルロナン合成酵素を含む。適当なマンノシルトランスフェラーゼはα(1,2) マンノシルトランスフェラーゼ,α(1,3) マンノシルトランスフェラーゼ,α(1,4) マンノシルトランスフェラーゼ ,Dol-P-Man合成酵素,OCh1,及びPmt1を含む。
【0113】
グリコシルトランスフェラーゼのクローン化と組み換えグリコシルトランスフェラーゼの融合タンパク質
典型的な態様では、発明はそのペプチド配列においてコード化されたSBDを含む融合タンパク質を利用する。本発明は、グリコシルトランスフェラーゼのような酵素を含む、合成的変換を実施すのに役立つポリペプチド種により例示される。グリコシルトランスフェラーゼの融合タンパク質への焦点は図示により明快となり、熟練者は本発明の実施例は一般的に酵素すなわち特にグリコシルトランスフェラーゼの使用に限定されないということを理解するだろう。
【0114】
グリコシルトランスフェラーゼをコード化する核酸、及びそのような核酸を得る方法はその分野の熟練者には知られている。適当な核酸(例えば、cDNA,ゲノム、若しくはサブ配列(試験))がクローン化され、ポリメラーゼ鎖反応(PCR)、リガーゼ鎖反応(LCR)、転写に基づく増幅システム(TAS)、若しくは自己配列複写システム(SSR)のような生体外の方法により増幅される。非常に広範囲のクローニングや生体外の増幅方法が熟練者にはよく知られている。多くのクローニング例を通して熟練者を導くのに十分なこれらの技巧や指示の例が、Berger及びKimmel, Guide to Molecular Cloning Techniques, Methods in Enzymology 152 Academic Press,Ins.,San Diego,CA(Berger); Sambrookら(1989年),Molecular Cloning-A Laboratory Manual(2nd ed.)1-3巻,Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Press, NY, (Sambrookら);Current Protocols in Molecular Biology, F.M.Ausbelら, eds,Current protocols, a joint venture between Greene Publishing Associates,Inc. and John Wiley & Sons,Inc.,(1994 Supplement) (Ausubel); Cashionら,U.S.patent No 4,017,478;及びCarr,Europian Patent No.0,246,864に見出される。
【0115】
グリコシルトランスフェラーゼやその続編をコード化するDNAが、例えば、クローン化や制限酵素で適当な配列を制限することを含む、上記のあらゆる適切な方法によって作成されうる。一つの好ましい態様では、グリコシルトランスフェラーゼをコード化する核酸は通常のクローン化法により単離される。例えば、GenBank又は他の配列データベース(上記)に提供されたようなグリコシルトランスフェラーゼのヌクレオチド配列は、ゲノムDNA試料中でグリコシルトランスフェラーゼ遺伝子に、又は(例えば、南北のブロットにおいて)全RNA試料中でmRNAにグリコシルトランスフェラーゼをコード化して、特にハイブリッド形成する試料を提供するのに用いられうる。一度目標のグリコシルトランスフェラーゼをコード化する核酸を同定したら、その分野の熟練者に知られた標準の方法(例えば、Sambrookら(1989年) Molecular Cloning Techniques, San Diego: Academic Press,Inc.; 又はAusubelら(1987年) Current Protocols in Molecular Biology, greene Publishing and Wiley-Interscience, New York)を見よ)により単離されうる。
さらに単離された核酸は制限酵素で開裂されて、最大限の長さのグリコシルトランスフェラーゼをコード化する核酸、若しくはその続編、例えば、少なくともグリコシルトランスフェラーゼのステム領域や触媒的ドメインの続編をコード化する続編を含む、を生成しうる。グリコシルトランスフェラーゼ又はその続編をコード化する、これらの制限酵素の断片はそれから連結(ligate)されて、例えば、組み替えグリコシルトランスフェラーゼ融合タンパク質をコード化する核酸を生成する。
【0116】
グリコシルトランスフェラーゼ若しくはその続編をコード化する核酸は、発現された生成物をアッセイすることにより特徴づけられうる。発現されたタンパク質の物理的、化学的、若しくは免疫学的性質の検知に基づいたアッセイが用いられうる。例えば、供与体基質から受容体基質へ糖質(サッカライド)の転移を触媒する、核酸によりコード化されたタンパク質の能力により、グリコシルトランスフェラーゼ融合タンパク質を含むクローン化されたグリコシルトランスフェラーゼを同定することができる。好ましい方法では、キャピラリー電気泳動が反応生成物を検知するのに用いられる。この高感度アッセイは、Wakarchukら(1996年)J.Biol.Chem.271(45)巻:28271-276頁に記載された蛍光物質でラベルされるモノサッカライド若しくはジサッカライドのアミノフェニル誘導体を用いることを含む。例えば、Neisseria lgt C 酵素をアッセイするために、FCHASE-AP-Lac若しくはFCHASE-AP-Galが用いられうる。ここで、Neisseria lgtB 酵素にとり適切な試薬はFCHASE-AP-GlcNAc(Id)である。
【0117】
また、グリコシルトランスフェラーゼ若しくはその続編をコード化する核酸は、化学的に合成されうる。適切な方法は、Narangら, (1979年) Meth.Enzymol. 68巻: 90-99頁の燐酸三エステル法;Brownら(1979) Meth.Enzymol. 68巻: 109-151頁の燐酸二エステル法;Beaucageら(1981)Tetra.Lett.,22: 1859-1862のジエチル燐酸アミジテ法;U.S.Patent No.4,458,066の固体担体法を含む。化学的合成は単一鎖のオリゴヌクレオチドを生成する。これは、相補的配列と混成して、又は鋳型として一本鎖を用いてDNAポリメラーゼで重合して、二本鎖DNAに転換されうる。熟練者は、DNAの化学的合成はしばしば約100塩基の配列に限定されるが、より長い配列はより短い配列の連結により得られることを知っている。
【0118】
グリコシルトランスフェラーゼ若しくはその続編をコード化する核酸は、ポリメラーゼ鎖反応(PCR)のようなDNA複製法を用いてクローン化されうる。このように、例えば、核酸配列若しくは続編は、一つの制限酵素部位(例えば、NdeI)を含有するセンスプライマーと、別の制限酵素部位(例えば、HindIII)を含有するアンチセンスプライマーを用いて、PCR複製される。これは所望のグリコシルトランスフェラーゼ若しくは続編をコード化し、末端の制限酵素部位を有する核酸を生成する。この核酸はそれから二番目の分子をコード化し、適切な相当する制限酵素部位を含有する核酸を含むべクター内に容易に結び付けられる。適切なPCRプライマーはGenBankや他の源において提供される配列情報を用いてその分野の熟練者により測定される。適切な制限酵素部位がまた特定部位の突然変異誘発によって、グリコシルトランスフェラーゼタンパク質若しくはタンパク質続編をエンコードする核酸に付加される。核酸配列若しくは続編をコード化するグリコシルトランスフェラーゼを含有するプラスミドは適切な制限エンドヌクレアーゼで開裂され、それから標準の方法に従って増幅及び/又は発現に関して適切なベクターに結び付けられる。生体外増幅法による熟練者を導くのに十分な技術の例がBerger,SambrookやAusubelに見られる。同様に、Mullisら, (1987年) U.S.Patent No.4,683,202; PCR Protocols A Guide to Methods and Applications (Innisら, eds) Academic Press Inc. San Diego, CA (1990年) (Innis); Arnheim & Levinson (October 1, 1990年) C&EN 36‐47巻; The Journal Of NIH Research (1991年)3巻:81-94頁;(Kwohら(1989年) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86巻: 1173頁; Guatelliら(1990年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87巻, 1874頁; Lomellら (1989年) J.Clin.Chem., 35巻: 1826頁; Landegrenら, (1988年) Science 241巻: 1077-1080頁: Van Brunt (1990年) Biotechnology 8巻: 291-294頁; Wu and Wallace (1989年) Gene 4巻: 560頁; and Barringerら, (1990年) Gene 89巻: 117頁に見られる。
【0119】
特定の核酸から発現したグリコシルトランスフェラーゼ融合タンパク質を含む、クローン化されたグリコシルトランスフェラーゼタンパク質のその他の物理的性質が、受容体基質特徴及び/若しくは触媒活性の決定因子であるグリコシルトランスフェラーゼの適切な配列若しくはドメインを同定する別の方法を提供するために、公知のグリコシルトランスフェラーゼの性質と比較される。あるいはまた、推定的グリコシルトランスフェラーゼ遺伝子若しくは組み替えグリコシルトランスフェラーゼ遺伝子が突然変異し、突然変異でない、自然に発生する、制御グリコシルトランスフェラーゼにより普通に作成される炭水化物の構造における変化を検知することにより、グリコシルトランスフェラーゼとしての役割、若しくは特別の配列若しくはドメインの役割が確立される。
【0120】
ここで記載されるように、グリコシルトランスフェラーゼを突然変異するか修飾するための標準の方法を用い、受容体基質活性及び/若しくは触媒活性のような活性に関して修飾若しくは突然変異をしたタンパク質を試験することにより、クローン化グリコシルトランスフェラーゼの機能性ドメインが同定される。種種のグリコシルトランスフェラーゼの機能性ドメインが、一つ又はそれ以上のグリコシルトランスフェラーゼの機能性ドメインからなる、組み換えグリコシルトランスフェラーゼ融合タンパク質をコード化する核酸を組み立てるのに用いられる。それから、これらの融合タンパク質が所望の受容体基質若しくは触媒活性のために試験される。
【0121】
組み換えグリコシルトランスフェラーゼ融合タンパク質をクローン化する典型的なアプローチにおいて、クローンのグリコシルトランスフェラーゼの公知の核酸やアミノ酸配列が一列に並び、種種のグリコシルトランスフェラーゼの間の配列同一性の量を決定するために比較される。この情報は、グリコシルトランスフェラーゼ活性、例えば、関心のあるグリコシルトランスフェラーゼの間の配列同一性の量に基づく受容体基質活性及び/若しくは触媒活性、を付与したり調整するタンパク質ドメインを同定し選択するのに用いられる。例えば、関心のあるグリコシルトランスフェラーゼの間の配列同一性を有するドメイン、それは公知の活性と結びついており、が、そのドメインを含み、そのドメインと結びついている活性(例えば、受容体基質活性及び/若しくは触媒活性)を有する、組み換えグリコシルトランスフェラーゼ融合タンパク質を組み立てるのに、用いられる。
【0122】
本発明の融合タンパク質が、大腸菌(E.coli)、その他のバクテリア宿主、酵母、COS,CHOやHeLa細胞株や骨髄腫細胞株等のような種種の高度の真核細胞を含む、色々の宿主細胞において発現される。宿主細胞は哺乳動物細胞、植物細胞、若しくは、例えば、酵母細胞、バクテリア細胞、糸状の真菌細胞のような微生物である。適切な宿主細胞の例として例えば、とりわけ、窒素菌(Azobactor)sp.(例えば、A.vinelandii), Pseudomonas sp., Rhizobium sp., Erwinia sp., Escherichia sp (例えば、E.coli), Bacillus, Pseudomonas, Proteus, Salmonella, Serratia, Shigella, Rhizobia, Vitreoscilla, Paracoccus 及び Klebsiella spが挙げられる。細胞は、サッカロミセス属(例えば、S.cerevisiae)、カンジダ族(例えば、C.utilis, C.parapsilosis, C.krusei,C. versatilis, C.lipolytica, C.zeylanoides, C.guilliermondii, C.albicans, 及び C.humicola),ピチア属(例えば、P.farinosa 及び P.ohmeri)、トルロプシス属(例えば、T.candida, T.sphaerica, T.xylinus, T.famata,及びT.versatilis)、デバリオマイセス属(例えば、D.subglobosus, D.cantarellii, D.globosus, D.hansenii 及びD.japonicus)、チゴサッカロマイセス属(例えば、Z.rouxii 及びZ.bailii)、クルイベラ属(例えば、K.marxianus)、ハンセヌラ属(例えば、H.anomala 及び H.jadinii)及びブレッタノマイセス属(例えば、B.lambicus 及び B.anomalus)を含む数種のいくらかでありうる。有用なバクテリア例として、Escherchia, Enterobactor, Azotobactor, Erwina, Klebsirliaが挙げられるがこれらに限定されない。
【0123】
真菌宿主細胞の例は糸状の真菌細胞である。「糸状菌」は再分割EumycotaとOomycota (Hawksworthら,1995年,上記により定義されている)のすべての糸状形を含む。糸状菌はキチン、セルロース、グルカン、マンナン及びその他の複合ポリサッカライドから構成される菌糸壁によって特徴づけられる。栄養増殖は菌糸伸張により行なわれ、炭素異化は偏性好気性である。対照的にサッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)のような酵母による栄養増殖は単細胞の葉状体の出芽により行なわれ、炭素異化は発酵性である。
【0124】
より特別に、糸状真菌宿主細胞は、アクレモニウム(Acremonium), アスペルギルス(Aspergillus), フサリウム(Fusarium),ヒュミコーラ(Humicola), ケカビ(Mucor), ミセリオフソーラ(Myceliophthora), アカパンカビ(Neurospora), 青カビ(Penicillium), ファネロチャエタ(Phanerochaeta),スィーラビア(Thielavia), トリポクラディウム(Tolypocladium) 若しくはトリコデルマ(Trichoderma)の一種の細胞であるがこれらに限定されない。好ましい態様では、糸状真菌宿主細胞は、黒色アスペルギルス(Aspergillus niger),アスペルギルス アワモリ(Aspergillus awamori),アスペルギルス フェティダス(Aspergillus foetidus),アスペルギルス ヤポーニカス(Aspergillus japonicus),アスペルギルス ニドウランス (Aspergillus nidulans) 若しくはアスペルギルス オリザエ(Aspergillus oryzae)細胞であるがこれらに限定されない。適切な糸状真菌宿主細胞のその他の例は、フサリウム バクトリディオィデス(Fusarium bactridioides),フサリウム セレアリス(Fusarium cerealis),フサリウム クルックウエレンス(Fusarium crookwellense),フサリウム クルモリウム(Fusarium culmorium),フサリウム グラミネアルム(Fusarium graminearum),フサリウム グラミナム(Fusarium graminum),フサリウム ヘテロスポルム(Fusarium heterosporum),フサリウム ネグンディ(Fusarium negundi),フサリウム オキシポルム(Fusarium oxysporum), フサリウム レティクラトウム(Fusarium reticulatum),フサリウム ロゼウム(Fusarium roseum),フサリウム サムブシヌム(Fusarium sambucinum),フサリウム サーコクロウム(Fusarium sarcochroum),フサリウム スポロトリキオイデス(Fusarium sporotrichioides),フサリウム スルフレウム(Fusarium sulphureum),フサリウム トルロスム(Fusarium torulosum),フサリウム トリコテシオイデス(Fusarium trichothecioides) 若しくはフサリウム ヴェネナツム(Fusarium venenatum)細胞である. 適当な糸状真菌細胞はフサリウム ヴェネナツム(Fusarium venenatum)(ニレンベルグsp.nov.(Nirenberg sp.nov.))細胞である。さらに適当な糸状真菌宿主細胞の例は、ヒュミコーラ インソレンス(Humicola insolens),ヒュミコーラ ラヌギノサ(Humicola lanuginose),ムコール ミーヘイ(Mucor miehei),ミセリオフソーラ テルモフィラ(Myceliophthora thermophila), ニューロスポラ(アカパンカビ) クラッサ(Neurospora crassa),ペニシリウム プルプルゲヌム(Penicillium purpurogenum),ファネロチャエタ クリソスポリウム(Phanerochaeta chrysosporium),スィーラビア テレストリス(Thielavia terrestris),トリコデルマ ハージアヌム(Trichoderma harzianum), トリコデルマ コニンギー(Trichoderma koningii),トリコデルマ ロンギブラッキアツム(Trichoderma longibrachiatum),トリコデルマ リーセイ(Trichoderma reesei) 若しくはトリコデルマ ヴィライデ(Trichoderma viride)細胞である。
【0125】
融合タンパク質をコード化するポリヌクレオチドが「発現ベクター」「クローンベクター」若しくは「ベクター」に挿入される。発現ベクターは自立的に複製できる、すなわち、それらは宿主細胞のゲノムに挿入されることにより複製できる。しばしば、一つ以上の宿主細胞、例えば、クローン化と組み立てのための大腸菌(E.coli)においてそして発現のための哺乳動物細胞においてベクターが用いられるのが好ましい。ベクターの付加的な要素は、所望のポリヌクレオチド配列(例えば、U.S.Patent4,704,362)で変換されたこれらの細胞の検知及び/若しくは選択を許容することができる、選択的マーカー、例えば、テトラサイクリン耐性若しくはヒグロマイシン耐性を含むことができる。遺伝情報を細胞に輸送するのに用いられる特定のベクターもまた特に重要ではない。組み換えタンパク質宿主細胞の発現に用いられるすべての適当なベクターを用いることができる。
【0126】
典型的に融合タンパク質をコード化するポリヌクレオチドが、所望の宿主細胞において機能的であるプロモーターの制御下に置かれる。非常に広範囲のプロモーターがよく知られており、特別の適用に依存する本発明の発現ベクターにおいて用いられる。普通、選ばれるプロモーターは細胞に依存し、ここではプロモーターは活性である。リボソーム結合部位、転写末端部位などのようなその他の発現制御配列もまた任意に含まれる。一つ又はそれ以上のこれらの制御配列を含む組み立ては「発現カセット」と命名される。従って、本発明は融合タンパク質をコード化する核酸が所望の宿主細胞において高レベルの発現を組み込む発現カセットを提供する。
【0127】
特別の宿主細胞で適切に用いられる発現制御配列は、しばしばその細胞で発現される遺伝子をクローン化することにより得られる。リボソーム結合部位配列と一緒に、任意にオペレーターと共に、転写開始のためのプロモーターを含む、ベータ−ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)とラクトーゼ(lac)プロモーターシステム(Changeら,Nature(1977年)198巻:1056頁)、トリプトファン(trp) プロモーターシステム(Goeddelら,Nucleic Acids Res.(1980年)8:4057),tacプロモーター(DeBoerら,Proc.Natl.Acad.sci.U.S.A. (1983年)80巻:21-25頁);及びラムダ−由来のPプロモーターとN−遺伝子リボソーム結合部位(Shimatakeら,Nature(1981年)292巻:128頁)のような普通に用いられるプロモーターを含むとここで定義される、原核生物制御配列が普通に用いられる。特定のプロモーターシステムは本発明に重要ではなく、原核生物において機能する入手できるあらゆるプロモーターが使用できる。
【0128】
大腸菌(E.coli)以外の原核生物細胞における融合タンパク質の発現のために、特別の原核生物種において機能するプロモーターが要求される。そのようなプロモーターは種からクローン化された遺伝子から得られるか、異種のプロモーターが用いられる。例えば、trp-lac混成プロモーターが大腸菌に加えてバチルス属(Bacillus)において機能する。
【0129】
リボソーム結合部位(RBS)が都合よく本発明の発現カセットに含まれる。例えば、大腸菌におけるRBSは、開始コドンの上流3−11ヌクレオチドの位置に長さが3−9ヌクレオチドの核酸配列からなる(Shine and Dalgarno, Nature (1975年) 254巻: 34頁; Steitz, In Biological regulation and development: Gene expression (ed. R.F. Goldberger), 1巻,349頁,1979年, Plenum Publishing, NY)。
【0130】
酵母における融合タンパク質の発現のために、都合の良いプロモーターは、GAL1-10 (Johnson及びDavis(1984年) Mol.Cell.Biol. 4巻: 1440-1448頁)、ADH2(Russelら (1983年) J.Biol.Chem. 258巻: 2674-2682頁)、PHO5(EMBO J. (1982年) 6巻: 675-680頁), 及び MFα(herskowitz 及び Oshima (1982年) in The Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces (eds. Strathern, Jones及びBroach) Cold Spring Harbor Lab., Cold Spring Harbor, N.Y., 181-209頁)を含む。酵母で用いられる別の適当なプロモーターは、Cousensら, Gene 61巻: 265-275頁(1987年)に記載されたADH2/GAPDHのハイブリッド形成プロモーターである。例えば糸状菌の変形、アスペルギルス(Aspergillus)(McKnightら,U.S.Patent No.4,935,349)のような糸状菌のために、有用なプロモーターの例は、ADH3プロモーター(McKnightら,EMBO J. 4巻: 2093-2099頁 (1985年))、及びtpiAプロモーターのようなアスペルギルス ニデユランス(Aspergillus nidulans) 糖分解遺伝子に由来するそれらを含む。適当なターミネーターの例はADH3ターミネーター(McKnightら)である。
【0131】
植物で用いられる適切な構成性プロモーターは、例えば、カリフラワーモザイクウィルス(CaMV)35S 転写開始領域と領域VIプロモーター、アグロバクテリウム チュームファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)のT-DNAに由来する1’-若しくは2’-プロモーター、及びその分野の熟練者によく知られている植物で活性なその他のプロモーターを含む。その他の適切なプロモーターは、ゴマノハグサモザイクウィルスからの最大長さの転写プロモーター、アクチンプロモーター、ヒストンプロモーター、チューブリンプロモーター、マンノピンシンターゼプロモーター(MAS)を含む。その他の構成性植物プロモーターは、とりわけ、アラビドプシス(Arabidopsis)(Sun and Callis,Plant J.,11(5)巻:1017-1027頁(1997年))、大量のマック(Mac)若しくはダブルマック(DoubleMac)プロモーター(U.S.Patent No.5,106,739及びComaiら, Plant Mol.Biol. 15巻: 373-381頁 (1990年)に記載された)及びその分野の熟練者によく知られている色々の植物遺伝子からのその他の転写開始領域、に由来する色々のユビキチン若しくはポリユビキチンプロモーターを含む。植物の有用なプロモーターはまた、Ti-若しくはRi-プラスミドから得られるそれら、植物細胞、植物ウィルス若しくはプロモーターが植物において機能的であるとわかっているその他の宿主から得られるそれらを含む。植物において機能するバクテリアプロモーター、そしてこれらは本発明の方法において用いるのに適切であるが、オクトピンシンテターゼプロモーター、ノパリンシンテターゼプロモーター、及びマノピンシンテターゼプロモーターを含む。適切な内因性植物プロモーターはリブロース-1,6−ビホスフェート(RUBP)カルボキシラーゼの小サブユニット(ssu)プロモーター、α-コングリシニンプロモーター、ファセオリンプロモーター、ADHプロモーター、及び熱衝撃プロモーターを含む。
【0132】
哺乳動物細胞では、制御配列はプロモーター及び好ましくは免疫グロブリン遺伝子、SV40、サイトメガロ・ウィルス等に由来するエンハンサー及びポリアデニル化配列を含むであろうし、スプライスドナーや受容体配列を含むかもしれない。
【0133】
好ましい態様では、本発明の融合タンパク質は糸状菌宿主細胞、例えば、黒色アスペルギルス(Aspergillus niger)において発現する。糸状菌宿主細胞での本発明の融合タンパク質の発現のための適切なプロモーターの例は、NA2-tpiプロモーター(黒色アスペルギルス中性α-アミラーゼ、及びアスペルギルス オリザエ トリオーズホスフェート イソメラーゼの遺伝子からのプロモーターのハイブリッド形成)と同様に、アスペルギルス オリザエTAKAアミラーゼ、リゾムコル ミーヘイ アスパラギン酸 プロティナーゼ、 黒色アスペルギルス中性α-アミラーゼ、黒色アスペルギルス酸に安定なα-アミラーゼ、黒色アスペルギルス、若しくはアスペルギルス アワモリ、グルコアミラーゼ(glaA),リゾムコル ミーヘイ リパーゼ、アスペルギルス オリザエ アルカリ プロテアーゼ、アスペルギルス オリザエ トリオースホスフェートイソメラーゼ、アスペルギルス オリザエ ニデユランス アセトアミダーゼ、フサリウム オキシスポルム トリプシン様プロテアーゼ(WO96/00787) の遺伝子から得られるプロモーター;そしてそれらの突然変異、不完全形、及びハイブリッド形成プロモーターである。
【0134】
構成性若しくは安定化されたプロモーターが本発明で用いられる。融合タンパク質の発現が誘発される前に宿主細胞が高密度に生長しうるので、安定化されたプロモーターが有利である。異種タンパク質の高レベルの発現はある状況では細胞の生長を遅くする。誘発可能なプロモーターは、例えば、温度、pH、嫌気若しくは好気状態、光、転写因子や化学物質等のような環境要素若しくは発生要素により発現のレベルが可変である、遺伝子の発現を導くプロモーターである。そのようなプロモーターはここでは、グリコシルトランスフェラーゼ又は糖ヌクレオチド合成に含まれる酵素の発現の時期を制御するのを許容する、「誘発性」プロモーターとして言及される。大腸菌やその他のバクテリア宿主細胞のための、誘発性プロモーターは本分野の熟練者に知られている。これらは例えば、lacプロモーター、バクテリオファージ ラムダPLプロモーター、trp-lacハイブリッド形成プロモーター(Amannら(1983年)Gene 25巻: 167頁; de Boerら(1983年) Proc.Nat’l,Acad.Sci.USA 80巻:21頁), 及びバクテリオファージT7プロモーター(studierら (1986年) J.Mol.Biol.; Taborら (1985年) Proc.Nat’l,Acad.Sci.USA 82巻: 1074-8頁)を含む。これらのプロモーター及びその使用はSambrookraら,上記で議論されている。原核生物における発現に特に好ましい誘発性プロモーターは、ガラクトース新陳代謝に含有される酵素をコード化する一つ若しくは複数の遺伝子から得られるプロモーター成分(例えば、UDPガラクトース4−エピメラーゼ遺伝子(galE))に連結したtacプロモーター成分を含む二本立てのプロモーターである。PCT Patent出願公開No.WO98/20111に記載された二本立てのtac-galプロモーターは、どちらかのプロモーター単独により提供されるものよりも大きな発現のレベルを提供する。
【0135】
植物で使用される誘発性プロモーターは本分野の熟練者に知られており(例えば、Kuhlemeierら(1987年) Ann.Rev.Plant physiol. 38巻: 221頁に挙げられた参考文献)、光誘発可能で光合成組織においてのみ活性なアラビドプシス タリアナ(Arabidopsis thaliana)(「ssu」プロモーター)の1,5−リブロース ビスホスフェート カルボキシラーゼの小さなサブユニット遺伝子のプロモーターを含む。
【0136】
その他の有機体の誘発性プロモーターもまた本分野の熟練者にはよく知られている。これらは、例えば、アラビノース プロモーター、lacZプロモーター、金属結合性タンパク質プロモーター、及び熱衝撃プロモーターを多くのその他と同じように含む。
【0137】
適切な宿主細胞に置かれたときポリヌクレオチドの発現を駆動する遺伝子発現制御
信号に、操作可能に連結する、興味のあるポリヌクレオチドを含む作成物は、「発現カセット」と呼ばれる。本発明の融合タンパク質をコード化する発現カセットは、しばしば宿主細胞への導入のための発現ベクターに置かれる。ベクターは、発現カセットに加えて、ベクターを一つ又はそれ以上の選択された宿主に独立して複製することを可能にする核酸配列を、典型的に含む。一般的にこの配列は独立して宿主染色体DNAを複製するのを可能にするそれであり、複製の源もしくは自己複製配列を含む。そのような配列は色々の細菌について知られている。例えば、プラスミドpBR322からの複製の源はほとんどのグラム陰性菌に適切である。ベクターは、宿主細胞ゲノム補体に統合されることにより、及び細胞がDNA複製を行なう様に複製されることにより、二者択一的に複製することができる。細菌細胞における酵素の発現の好ましい発現ベクターはpTGKであり、これは二本立てのtac-galプロモーターを含有し、PCT Patent出願公開No.WO98/20111に記載されている。
【0138】
糸状菌宿主細胞、例えば、黒色アスペルギルスにおける本発明の融合タンパク質の発
現の好ましい発現ベクターは、例えば、U.S.Patent No.5,364,770、 EPO公開No.0215594、WO90/15860に記載されている。例えばU.S.Patent No.6,265,204;6,130,063; 6,103,490; 6,103,464; 6,004785; 5,679,543;及び 5,364,770。
糸状菌宿主細胞における発現の好ましいターミネーターは、アスペルギルス オリザエTAKAアミラーゼ、 黒色アスペルギルス グルコアミラーゼ、アスペルギルス ニデユランス アンスラニレーテシンターゼ、黒色アスペルギルス α-グルコシダーゼ、及びフサリウム オキシスポルム トリプシン様プロテアーゼの遺伝子から得られる。糸状菌宿主細胞における発現の好ましいポリアデニル化配列は、アスペルギルス オリザエTAKAアミラーゼ、黒色アスペルギルス グルコアミラーゼ、アスペルギルス ニデユランス アンスラニレーテシンターゼ、フサリウム オキシスポルム トリプシン様プロテアーゼ及び黒色アスペルギルス α-グルコシダーゼのための遺伝子から得られる。糸状菌宿主細胞における発現の有効な領域をコードする信号ペプチドは、アスペルギルス オリザエTAKAアミラーゼ、黒色アスペルギルス 中性アミラーゼ、黒色アスペルギルス グルコアミラーゼ、リドムコル ミーヘイ アスパラギン酸プロティナーゼ、ヒュミコラ インソレンス セルラーゼ,及びヒュミコラ ラヌギノース リパーゼのための遺伝子から得られる領域をコードする信号ペプチドである。
【0139】
宿主細胞の生長に関連して、ポリペプチドの発現の調整を許容する調節塩基配列を付
け加えるのがまた好ましい。調節システムの例は、調節性化合物の存在を含む、化学的若しくは物理的刺激に応答して遺伝子の発現をオン・オフされることに起因するとこのものである。原核生物システムにおける調節システムはlac,tac,及びtrpオペレーター・システムを含有する。酵母では、ADH2システムかGAL1システムが用いられる。糸状菌では、TAKAα-アミラーゼ プロモーター、黒色アスペルギゥス グルコアミラーゼ プロモーター、アスペルギルス オリザエ グルコアミラーゼ プロモーターが調節配列として用いられる。調節配列のその他の例は遺伝子増幅を許容するものである。原核生物システムでは、これらはメトトレキサートの存在下で増幅されるジヒドロフォレート レダクターゼ遺伝子、及び重金属で増幅されるメタロチオネイン遺伝子を含有する。これらの場合に、ポリペプチドをコード化する核酸配列は調節配列と操作可能に連結されるだろう。
【0140】
ポリヌクレオチド作成物の作成は一般的にバクテリア中で複製することができるベ
クターの使用を必要とする。バクテリアからのプラスミドの精製のために多量のキットが商業的に入手できる(例えば、EasyPrepJ, FlexiPrepJ,両方がPharmacia Biotech製; StrataCleanJ, Stratagene製;QIAexpress Expression System, Qiagen)。単離され精製されたプラスミドはそれからさらに操作されて他のプラスミドを生成し、細胞に核酸を入れるのに用いられる。ストレプトミセス(Streptomyces)やバチルス(Bacillus)におけるクローン化もまた可能である。
【0141】
選択的マーカーがしばしば本発明のポリヌクレオチドの発現に用いられる発現ベクタ
ーに組み込まれる。これらの遺伝子は、タンパク質のような、選択培養培地で生長した変形宿主細胞の生存か生長に必要な遺伝子生成物をコード化できる。選択遺伝子を含有するベクターで変形されない宿主細胞は、培養培地で生存しないだろう。典型的な選択遺伝子はアンピシリン、ネオマイシン、カナマイシン、クロラムフェニコール若しくはテトラサイクリンのような、抗生物質や他の毒に対する抵抗力を与えるタンパク質をエンコードする。選択的に、選択可能なマーカーは、栄養要求的欠乏を補完したり危機的の栄養物を供給するタンパク質、例えば、バチルスのD−アラニンラセマーゼをエンコードする遺伝子をエンコードするだろう。しばしば、ベクターは例えば大腸菌、又は、宿主細胞に導入される前にベクターが複製される他の細胞において機能的である、ひとつの選択可能なマーカーをもつだろう。数多くの選択可能なマーカーは本分野の熟練者に知られており、例えばSambrookら,上記に記載されている。バクテリア細胞内で用いられる好ましい選択可能なマーカーは、カナマイシンに抵抗力を有するマーカーである(Vieira and Messing,Gene 19巻:259頁(1982年))。カナマイシン選択の使用は、例えば、アンピシリンは培養培地においてβ−ラクタマーゼにより急速に分解し、従って、選択的圧力を除き、培養がベクターを含まない細胞ではびこるのを許容するので、アンピシリン選択よりも有利である。
【0142】
哺乳動物細胞で用いられる適切な選択可能なマーカーは、例えば、ジヒドロフォレート レダクターゼ遺伝子(DHFR)、チミジン キナーゼ遺伝子(TK)、若しくは薬剤抵抗性を付与された原核生物遺伝子、gpt(キサンチン−グアニン ホスホリボシルトランスフェラーゼ、これはミコフェノール酸と共に選択される;ネオ(ネオマイシン ホスホトランスフェラーゼ)、これはG418,ヒグロマイシン,若しくはプロマイシンと共に選択される;及びDHFR(ジヒドロフォレート レダクターゼ),これはメトトレキサーテと共に選択される(Mulligan & Berg(1981年) Proc.Nat'l.Acad.Sci.USA 78巻: 2072頁; Sourthern & Berg (1982年)J.Mol.Appl.Genet. 1巻: 327頁)を含む。
【0143】
植物及び/若しくは他の原核生物細胞の選択マーカーはしばしば、例えば、カナマイシン,G418,ブレオマイシン,ヒグロマイシン,若しくはクロラムフェニコール,若しくはクロルスルフロンやバスタへの抵抗性のような除草剤抵抗性、のような殺生剤若しくは抗生物質に対する抵抗性を付与する。選択可能なマーカーの適切なコード配列の例は:酵素ネオマイシン ホスホトランスフェラーゼをコードし、抗生物質カナマイシンへの抵抗性を付与するneo遺伝子(Beckら,(1982)Gene19:327);酵素ヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼをコードし、抗生物質ヒグロマイシンへの抵抗性を付与するhyg遺伝子(Gritz and Davis(1983)Gene25:179);除草剤化合物ホスフィノスリシン及びビアラホスへの抵抗性を付与するホスフィノスリシン アセチル トランスフェラーゼをコードするbar遺伝子(EP242236)。
【0144】
糸状菌宿主細胞で用いられる選択可能なマーカーは、amdS(アセトアミダーゼ),argB(オルニチン カルバモイルトランスフェラーゼ), bar(ホスフィノスリシン アセチルトランスフェラーゼ), hyB(ヒグロマイシン ホスフォトランスフェラーゼ), niaD(ナイトレート レダクターゼ), pyrG(オロチジン−5‘−ホスフェート デカルボキシラーゼ), sC(サルフェート アデニルトランスフェラーゼ), trpC(アンスラニレート シンターゼ), 及びこれらの同等品 を同様に含むがこれらに限定されない。アスペルギルス細胞で用いられる好ましいものは、アスペルギルス ニデユランス、若しくは アスペルギルス オリザエのamdSとpyrG遺伝子、及び ストレプトマイセス ヒグロスコピクスのbar遺伝子である。
【0145】
一つ若しくはそれ以上の上記の化合物を含む適切なベクターの作成には、前記の引用文献に記載された様な標準の連結技術を用いる。単離されたプラスミド又はDNA断片は、必要とされるプラスミドを発生することが望まれる形に開裂され、調整され、再連結される。作成されたプラスミドにおける正しい配列を確認するために、プラスミドは制限エンドヌクレアーゼ消化のような標準技術により分析され、及び/又は公知の方法に従って配列が決定される。これらの末端を得るための分子クローン化技術は本分野の熟練者には知られている。組み替え核酸の作成にふさわしい非常に様々なクローン化と生体外複製方法が熟練者にはよく知られている。多くのクローン化の実施例を通して、熟練者を導くのに十分なこれらの技術と指示の例が、BergerとKimmel, Guide to Molecular cloning Techniqes, methods in Enzymology, 152巻, Academic Press, Inc.,San Diego,CA (Berger); 及び Current Protocols in Molecular Biology, F.M. Ausubelらeeds., Current Protocols,a joint venture between Greene Publishing Associates, Inc.and John Wiley & Sons,Inc., (1998年 Supplement) (Ausubel)にみられる。
【0146】
本発明の発現ベクターを作成するための出発物質として用いられるのに適切な様々な通常のベクターは本分野でよく知られている。バクテリアにおけるクローン化の通常のベクターは、pBLUESCRIPTTMのようなpBR322に由来するベクター、及びλ−ファージに由来するベクターを含む。酵母では、ベクターは酵母組み込みプラスミド(例えば、Yip5)、酵母複製プラスミド(YRpシリーズプラスミド)及びpGPD-2を含む。哺乳動物における発現は、溶解ウィルスベクター(例えば、ワクシニア・ウイルス、アデノ・ウィルス、及びワクシニア・ウイルス)、エピソーム性ウィルスベクター(例えば、ウシのパピローマ・ウイルス)、及びレトロウイルス・ベクター(例えば、ネズミのレトロウイルス)と同様に、pSV2、pBC12BI、およびp91023を含むさまざまな通常用いられるプラスミドを使用して実施される。
【0147】
発現ベクターを選ばれた宿主細胞に導入する方法は特に重要ではなく、そのような方法は
本分野の熟練者には知られている。例えば、発現ベクターは塩化カルシウム変換により大腸菌を含む原核生物細胞に導入され、燐酸カルシウム処理や電気せん孔法 により真核細胞に導入されうる。他の変換方法もまた適切である。
【0148】
真菌細胞は、それ自体が知られている方法である原形質体の形成、原形質体の変換および細胞壁の再生を含むプロセスにより変換される。アスペルギルス宿主細胞の変換の適切な操作は、EP238023及びYeltonら,1984年, Proceedings of the National Academy of Sciences USA 81:1470-1474に記載されている。フサリウム 種を変換する適切な方法は、Malardierら,1989年, Gene 78巻:147-156頁及びWO96/00787に記載されている。
【0149】
翻訳カップリングは発現を拡大するのに用いられる。戦略は、プロモーターの下流に置かれた翻訳系を源とし、高く発現した遺伝子に由来する短上流オープン・リーディング・フレーム、及び、終止コドンによる少しのアミノ酸コドンの後に続くリボソーム結合部位を用いる。丁度終止コドンに先立って二番目のリボソーム結合部位があり、続いて終止コドンは翻訳の開始をスタートするコドンである。システムは、翻訳の有効な開始を許容して、RNAにおける二次的な構造を解決する。例えば、Squiresら,(1988年),J.Biol.Chem. 263巻: 16297-16302頁。
【0150】
融合タンパク質は細胞内で発現されうるか、さもなくば細胞から排出される。細胞内発現はしばしば高収率となる。必要ならば、可溶の活性な融合タンパク質の量は再び折り重ねる操作を実施することにより増加する(Sambrookら, 同上;Marstonら,Bio/Technology (1984年) 2巻: 800頁; Schonerら,Bio/Technology(1985年)3巻:151頁)。融合タンパク質が細胞からペリプラズム若しくは細胞外媒体の中に排出される態様では、DNA配列は開裂できる信号のペプチド配列に連結する。信号配列は、細胞膜を通しての融合タンパク質の転移を指示する。プロモーター−信号配列単位を含有する大腸菌(E.coli)で用いられる適切なベクターの例はpTA1529であり、これは大腸菌 phoAプロモーターと信号配列をもつ(例えば、Sambrookら,同上,: Okaら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA (1985年) 82巻: 7212頁; Talmadgeら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1980年) 77巻;3988頁;Takaharaら,J.Biol.Chem. (1985年) 260巻: 2670頁)。別の態様では、融合タンパク質は、例えば、浄化、分泌、若しくは安定を促進するために、タンパク質Aの続編若しくはウシ血清アルブミン(BSA)に融合する。
【0151】
本発明の融合タンパク質はまたさらに他のバクテリアのタンパク質に連結できる。このアプローチはしばしば高収率となる。何故なら通常の原核生物の制御配列は転写と翻訳を指示するからである。大腸菌では、lacZ融合はしばしば異種のタンパク質を発現するのに用いられる。pUR、pEX、及びpMR100シリーズ(例えば、Sambrookら,同上)のような適切なベクターが容易に入手できる。ある応用では、精製後の融合タンパク質から非グリコシルトランスフェラーゼ及び/又は付属の酵素アミノ酸を開裂することが望ましい。これは、臭化シアン、プロテアーゼ、もしくはファクターXaによる開裂を含む、本分野に知られているあらゆる方法によって実施がなされうる(例えば、Sambrookら,同上; Itakuraら,Science (1977年) 198巻: 1056頁; Goeddelら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA (1979年) 76巻: 106頁; Nagaiら, Nature (1984年) 309巻: 810頁; Sungら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA (1986年) 83巻: 561頁)。融合タンパク質の遺伝子の所望の開裂点に開裂部位が処理されうる。
【0152】
多重の複写カセットを単一の発現ベクター内に置くことによって、又はクローン化戦略で採用されるそれぞれの発現ベクターの異なった選択可能なマーカーを利用することによって、一つ以上の融合タンパク質が単一の宿主細胞で発現される。
【0153】
N末端の完全性を維持する大腸菌から組み替えタンパク質を得るのに適切なシステムは、Millerら,Biotechnology 7巻:698-704頁(1989年)に記載されている。このシステムでは、興味がある遺伝子はペプチダーゼ開劣部位を含有する酵母ユビキチン遺伝子の最初の76残渣にC末端融合として作り出される。二つの部分の連結部での開裂は無傷の完全なN-末端残基を持つタンパク質の生成になる。
【0154】
本発明の発現ベクターは、大腸菌の塩化カルシウム変換やリン酸カルシウム処理若しくは哺乳動物細胞の電気せん孔法のようなよく知られた方法によって選ばれた宿主細胞に転移されうる。プラスミドにより転移された細胞は、Amp, gpt,neo及びhyg遺伝子のようなプラスミド上に含有された遺伝子により比較される抗生物質に抵抗することにより選択されうる。
【0155】
真核性グリコシルトランスフェラーゼからの配列からなる融合タンパク質は、例えば、真核細胞において発現するが、そのようなタンパク質の発現は、上記の様に真核細胞に限定されない。好ましい態様では、本発明の組み換えグリコシルトランスフェラーゼ融合タンパク質は黒色アスペルギルス細胞中で作り出される。原核性グリコシルトランスフェラーゼからの配列からなる融合タンパク質は、例えば、原核細胞において発現するが、そのようなタンパク質の発現は、上記の様に原核細胞に限定されない。例えば、真核融合タンパク質は原核宿主細胞において発現する(例えば、Fangら,(1998年)J.Am.Chem.Soc.120巻:6635-6638頁)が、逆の場合もまた同じである。融合タンパク質が哺乳動物細胞中で発現されるとき、融合タンパク質は分泌型でありうるか、バクテリアによって保持されている膜に結合した型でありうる。
【0156】
ベクターは、大腸菌の塩化カルシウム変換やリン酸カルシウム処理若しくは哺乳動物細胞の電気せん孔法のようなよく知られた方法によって選ばれた宿主細胞に転移されうる。プラスミドにより転移された細胞は、amp, gpt,neo及びhyg遺伝子のようなプラスミド上に含有された遺伝子により比較される抗生物質に抵抗することにより選択されうる。本発明の融合タンパク質をコード化するDNAからなるベクターは異なった宿主細胞に都合よく転移されうるということを本分野の熟練者は高く評価するであろう。
【0157】
いったん発現された、組み換えタンパク質は、硫酸アンモニウム沈殿、親和性カラム、カラムクロマトグラフィーなど(例えば、一般的にScopes, PROTEIN PURIFICATION (1982年))を含む技術の標準操作に従って精製されうる。少なくとも約90から95%の均一性の実質的に純粋な組成物が好ましく、そして98から99%又はそれ以上の均一性のものが薬学的用途には特に好ましい。部分的に若しくは所望の均一度にいったん精製されたポリペプチドはそれから治療上及び診断上用いられる。
【0158】
単一鎖のポリペプチドを折り重ねる方法は記載され、よく知られており、本発明の融合タンパク質に適用できる。(例えば、Buchnerら, Analytical Biochemistry 205巻: 263-270頁 (1992年); Pluckthun, Biotechnology 9巻: 545頁 (1991年); Huseら, Science 246巻: 275頁 (1989年) 及び Wardら,Nature 341巻: 544頁 (1989年))
【0159】
しばしば、大腸菌又はその他のバクテリアからの機能タンパク質は封入体から発生し、強い変性剤を用いてタンパク質の可溶化と、続く折り重ねを必要とする。可溶化の段階では、本当分野の熟練者によく知られた二硫化結合を崩壊するための還元剤が一般的に与えられる。適当な折り重ね型への再生が、変性され還元されたタンパク質を折り重ねる緩衝液に希釈(例えば、100倍)することにより典型的に実施される。
【0160】
修飾とドメイン交換
本発明の一つの態様では、細胞内の所望の発現レベル若しくは酵素的活性(例えば、受容体基質特異性若しくは触媒活性)若しくは澱粉結合ドメインをもつ組み換え融合タンパク質を発生させるために、組み換え的に生産されたドメインが修飾及び/又は交換される。熟練者は、本発明の融合タンパク質を発生させるために、ポリペプチドのドメインを修飾するか交換するために、ポリペプチド若しくはその続編をコード化する核酸を操作する多くの方法を知っているだろう。よく知られた方法は、部位志向性突然変異誘発、不完全なオリゴヌクレオチドを用いるPCR複製、核酸を含有する細胞を突然変異剤もしくは照射への暴露、所望のオリゴヌクレオチドの化学的合成(例えば、大きな核酸を発生させるために連結化及び/若しくはクローン化と結び付けて)及びその他のよく知られた技術を含む。例えば、GilimanとSmith (1979年) Gene 8巻: 81-97頁, Robertsら, (1987年) Nature 328巻: 731-734頁。
【0161】
例えば、ポリペプチド若しくはその続編をコード化する核酸は修飾されて、本発明の融合タンパク質をコード化するポリヌクレオチドを得るために二つの機能性ドメインの連結を促進する。例えば、システイン残基のコドンはドメインのどちらかの端に置かれて、その結果ドメインは例えば、硫化結合により澱粉結合ドメインに連結しうる。修飾は組み替え的方法若しくは化学的方法(例えば、Pierce Chemical Co. カタログ, Rockford IL)を用いてなされうる。
【0162】
触媒ドメイン若しくはステム領域のようなポリペプチドの続編をコード化する核酸は、アミノ酸約5〜200個の、典型的にはアミノ酸約10〜100個のポリ−グリシン配列のような、典型的にタンパク質配列である連結ドメインにより結合されうる。プロリン残基は、連結剤による重要な第二次的構造的要素の生成を防ぐために、連結剤に導入されうる。好ましい連結剤はしばしば組み換え型融合タンパク質の部分として合成される柔軟なアミノ酸配列である。柔軟な連結剤はGly(x)-Pro-Gly(x)、xは約3と約100の間の数、のようなプロリンからなるアミノ酸配列でありうる。また、化学連結剤は合成的若しくは組み替え的に産生される一つもしくはそれ以上のポリペプチドのドメインを接続するのに用いられうる。そのような柔軟な連結剤はその分野の熟練者に知られている。例えば、ポリ(エチレン グリコール)連結剤はシエアウオーターポリマーズ(Shearwater Polymers, Inc. Huntsville, Alabama)から入手できる。これらの連結剤は任意にアミド連結、スルフヒドリル連結、若しくはヘテロ官能基連結をもつことができる。
【0163】
その他の有用な突然変異は、例えば、興味のあるポリペプチドのアミノ酸配列をもつ残基の挿入、置換や、残基からの除去を包含する、その結果、それは適切なエピトープを含み、反応性金属キレートとの共有結合を形成できる。最終の生成物が所望の特徴を所有するという条件で、除去、挿入、及び置換のあらゆる組み合わせが最終の生成物になるようにつくられる。グリコシル化部位の数や位置を変更するようなアミノ酸変更もまた、興味があるポリペプチドの翻訳後プロセシングを修飾するだろう。
【0164】
ポリペプチドのアミノ酸配列突然変異の設計については、突然変異部位の場所やその性質は、興味のある修飾されている特定のポリペプチドにより決定されるだろう。突然変異の部位は個々に若しくはシリーズにおいて、例えば(1)保存アミノ酸選択で最初に置換し、それから実施された結果に依存するもっと過激の選択で置換する;(2)目標の残基を除去する;若しくは(3)位置する部位に隣接する同一若しくは異なった類の残基を挿入するか、若しくは選択1〜3の組み合わせにより修飾されうる。
【0165】
ある残基や、突然変異誘発のための好ましい位置である興味があるポリペプチドの領域を同定する有用な方法は、「アラニン走査変異誘発法(alanine scanning mutagenesis)」と呼ばれ、Cunningham and Wells,Science, 244巻; 1081-1085頁 (1989年)に記載されている。ここで、残基若しくは目標残基の基が同定され(例えば、arg,his,lys,及びgluのような荷電残基)、中性の若しくは負に荷電したアミノ酸(最も好ましくはアラニン若しくはポリアラニン)により置換され、細胞内外の周囲の水溶性環境とのアミノ酸の相互作用に影響を及ぼす。置換体への官能的感度を示すこれらのドメインはそれから置換の部位で若しくはそのために、さらに若しくはその他の変異体を導入することによりリファインされる。このように、アミノ酸配列変化を導入するための部位が決定づけられのではあるが、突然変異体自身の性質は決定ずけられる必要はない。例えば、与えられた部位での突然変異の実施を最大にするために、アラニン走査やランダム変異誘発が目標のコドンや領域で行なわれ、生じた変異体が特定の反応性キレートとの増加する反応性のために審査される。
【0166】
アミノ酸配列除去は一般に約1から30残基に及ぶが、より好ましくは約1から10残基であり、典型的にはそれらは連続的である。連続除去は通常偶数個の残基でなされるが、単一の若しくは奇数個の除去もここの範囲内である。例として、除去は、ポリペプチドの半減期を修飾するために殆んどの配列同一性を興味のあるポリペプチドのアミノ酸配列に共有する関連ペプチド間の低ホモロジーの領域に導入される。
実質的にその他の配位子の一つの結合部位とホモロジーの領域において興味のあるポリペプチドからの除去は、興味のあるポリペプチドの生物学的活性をより重要にもっと修飾しそうである。例えば、β−プリーツシート若しくはα−ヘリックスの、病気に冒されたドメインにおいて、興味があるポリペプチドの第三次構造を保存するために連続的除去の数が選択されるだろう。
【0167】
アミノ酸配列挿入は、単一の若しくは多数のアミノ酸残基の配列内挿入と同様に、1残基から100若しくはそれ以上の残基を含有するポリペプチドの長さに及んでいるアミノ−及び/若しくはカルボキシル末端融合を含む。配列内挿入(例えば、ポリペプチドの成熟配列内での挿入)は一般的に約1から10残基、より好ましくは1から5残基、特に好ましくは1から3残基に及ぶ。挿入は好ましくは偶数の残基でなされるが、これは要求されない。挿入の例は、融合でキレートとの反応性が増加する結果になるであろう、所望のエピトープを含有するタンパク質若しくはペプチドとのN-若しくはC-末端融合と同様に興味のあるポリペプチドの内部の位置への挿入を包含する。
【0168】
三番目の変異体はアミノ酸置換変異体である。これらの変異体は除去されたポリペプチド分子中に少なくとも一つのアミノ酸残基及びその場所に挿入された異なった残基を有する。アミノ酸変異の興味のある部位は、様々な種から得られるポリペプチドの特定の残基が興味のあるポリペプチドのすべての動物種の間で同一であるところのそれらであり、生物学的活性をなすにおいて重要性を示唆する保存の程度はこれらの分子に共通である。これらの部位、特に一連の少なくとも三つの他の完全に同一の保存部位内に含まれるこれらは、比較的保守的な方法で置換される。そのような保守的置換体が好ましい置換体の表題で表1に示される。そのような置換体が生物学的活性における変化に帰結するなら、それから、表1に命名された典型的な置換体、すなわちさらに下にアミノ酸類に関連して記載されるように、より実質的な変化が導入され生成物が選択される。
【0169】
【表1】

【0170】
その上、興味のあるポリペプチドの機能における修飾は、(a)例えば、シート若しくはヘリカル構造のような、置換体の領域におけるポリペプチド骨格の構造;(b)目標部位での分子の荷電若しくは疎水性;若しくは(c)側鎖の大きさ;を維持することの効果における有意に異なる置換体を選択することによりなされうる。天然に生じる残基は共通の側鎖性質に基づいたグループに分割される。
(1)疎水性:ノルロイシン、メチオニン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン;
(2)中性親水性:システイン、セリン、トレオニン;
(3)酸性:アスパラギン酸、グルタミン酸;
(4)塩基性:アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン、リシン、アルギニン;
(5)鎖の方向性に影響する残基:グリシン、プロリン;及び
(6)芳香族;トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン
【0171】
非保守的な置換は上記の一つの類の員を別の類に交換することを伴う。そのような置換された残基はまた保守的置換部位か、若しくはより好ましくは、残っている(非保守的)部位に導入される。
【0172】
また、分子中に存在する一つ若しくはそれ以上のプロテアーゼ開裂部位を不活性にするのが望ましい。これらの部位はコード化されたアミノ酸配列、トリプシンの場合には、例えば、アルギニン若しくはリシン残基、の検査により同定される。プロテアーゼ開裂部位が同定されるとき、それらは、目標とされた残基を別の残基、好ましくはグルタミンのような残基、若しくはセリンのような親水性残基、で置換することにより;残基を除去することにより;若しくは残基の後にプロリン残基をすぐに挿入することにより、タンパク質開裂的切断に不活性にされる。
【0173】
別の態様では、信号配列の出発メチオニン残基とはべつのあらゆるメチオニン残基、
若しくはそれぞれのそのようなメチオニン残基に対して約三つの残基のN-若しくはC-末端以内に位置するあらゆる残基が別の残基(好ましくは表1に従って)により置換されるか又は除去される。二者択一的に、約1〜3個の残基がそのような部位に隣接して挿入される。
【0174】
興味のあるポリペプチドのアミノ酸配列突然変異をコード化する核酸分子がその分野で知られた多くの方法により生産される。これらの方法は、オリゴヌクレオチドを媒介とする(若しくは部特異的)突然変異誘発法、PCR突然変異誘発法、及びポリペプチド、ここでは変異体がベースとなる、の初期に産生された変異体若しくは非変異バージョンのカセット突然変異誘発法を含むがこれらに限定されない。
【0175】
ここではオリゴヌクレオチドを媒介とする突然変異誘発法は置換、除去及び挿入する認識部分突然変異を産生する好ましい方法である。この技術はItoら,Gene 102巻: 67-70頁 (1991年)及びAdelmanra, DNA 2巻: 183頁(1983年)によって記載されたようにこの分野ではよく知られている。端的に言えば、DNAは所望の突然変異をコード化するオリゴヌクレオチドをDNA鋳型にハイブリッド形成することにより変造される。ここで鋳型はプラスミド若しくは変わるべきポリペプチドの不変で天然のDNA配列を含有するバクテリオファージの一本鎖型である。ハイブリッド形成後DNAポリメラーゼはオリゴヌクレオチドプライマーをこのように導入し、DNAにおける選択された変更をコード化するであろう鋳型の完全な二番目の相補的な鎖を合成するのに用いられる。
【0176】
一般的に、長さで少なくとも25ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドが使用される。最適のオリゴヌクレオチドは、突然変異をコードするヌクレオチドのどちらかの側の鋳型に完全に相補する12から15のヌクレオチドを有するであろう。これはオリゴヌクレオチドは一本鎖DNA鋳型分子に適切にハイブリッド形成するということを確信させる。オリゴヌクレオチドは、Creaら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75巻:5765頁(1978年)に記載されたようなその分野で知られた技術を用いて容易に合成される
【0177】
特定の核酸配列を得る一つの好ましい方法は、mRNAやDNAの鋳型にポリメラーゼ伸張反応若しくは連結反応で合成したオリゴヌクレオチドプライマーの使用に結びつく。そのような方法、例えば、RT、PCR、若しくはLCR、は所望のヌクレオチド配列を増幅するが、これはしばしば知られている(例えば、U.S.Patents 4,683,195及び4,683,202)。制限エンドヌクレアーゼ部位がプライマーに導入されうる。増幅されたポリヌクレオチドは精製され適切なベクターに連結される。自然の遺伝子の配列における変更は、生体外突然変異誘発や適切な突然変異を組み込むように設計されているプライマーを用いるPCRのような技術によって導入されうる。
【0178】
商業的に入手できないオリゴヌクレオチドは、Van Devanterら, Nucleic Acid Res. 12巻: 6159-6168頁 (1984年)に記載されている自動合成機を用いて、Beaucage & Caruthers, Tetrahedron Letts.22巻: 1859-1862頁 (1981年)に最初に記載された固体相のリン酸アミジテ トリエステル法に従って、好ましくは化学的に合成される。オリゴヌクレオチドの精製は、あらゆる技術が認められた方法、例えば、Pearson & Reanier, J.Chrom. 255巻: 137-149頁 (1983年)に記載された自然のアクリルアミドゲルの電気泳動法若しくはアニオン交換高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により実施される。
【0179】
もしDNA配列が化学的に合成されるなら、一本鎖のオリグヌクレオチドとなるだろう。これは、相補的配列とのハイブリッド形成により、若しくは鋳型として一本鎖を用いるDNAポリメラーゼでポリマー化により二本鎖DNAに変換される。完全な単一鎖Fv領域を化学的に合成することは可能であるけれども、後で互いに連結する多数のより短い配列(約100から150)を合成するのが好ましい。
【0180】
二者択一的に、配列がクローン化され、適切な配列続編が適切な制限酵素を用いて開裂される。それから断片が連結され所望のDNA配列を生成する。
【0181】
SBDsをコード化する核酸又はその続編は、複製及び/若しくは発現のための原核若しくは真核細胞への変換の前に中間体ベクターに典型的にクローン化される。これらの中間体ベクターは典型的に原核生物、例えば、プラスミド、若しくはシャトル・ベクターである。治療性タンパク質をコード化する単離された核酸は、治療性タンパク質及びその続編をエンコードする核酸配列、種間相同体、対立遺伝子及びその多様型変異体からなる。
本発明はグリコシルトランスフェラーゼの融合タンパク質の産生を参照することにより例示される。熟練者は、本発明はグリコシルトランスフェラーゼだけでなく、その他の酵素にも同様に広く適用できると認識するであろう。本発明において使用される付加的な、限定の無い代表的な類の酵素が下記に議論される。
【0182】
認識部分
認識部分は、担体に固定化され、SBDを担体上に含有する組成物を固定化するのに相互作用をするSBDによって認識される種である。本発明は、認識し且つ澱粉結合ドメインと相互作用をするあらゆる認識部分とともに実施される。典型的な態様では、認識部分は糖類であり、糖類を含有する種である。
【0183】
現在好ましい認識部位はシクロデキストリン若しくは修飾されたシクロデキストリンである。シクロデキストリンは多数の微生物により作り出される環状のオリゴ糖の基である。シクロデキストリンはかご様形状の環構造を有する。この形状はシクロデキストリンのその内部の空洞に多種類の分子を含むことを許容する。例えば、Szejtli,J., CYCLODEXTRINS AND THEIR INCLUSION COMPLEXES,Akademiai,Budapest, 1982年; and Benderら, CYCLODEXTRIN CHEMISTRY, Springler-Verlag,Berlin, 1987年。シクロデキストリンは例えば、薬物、殺虫剤、除草剤や戦争用薬剤を含む多数の有機分子と包接錯体を形成することができる。例えば、Tenjalaら, J.Pharm.Sci. 87巻: 425-429頁 (1998年); Zughulら, Pharm.Dev.Technol. 3巻: 43-53頁 (1998年); and Albersら, Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Syst. 12巻: 311-337頁 (1995年)。重要なことだが、シクロデキストリンはその包接錯体における化合物のエナンティオマーの間を識別することができる。例えば、Koppenhoeferら, J.Chromatogr. A793巻:153-164頁(1998年)。
【0184】
固体担体の作成
澱粉結合ドメインを含有する本発明の組成物は、澱粉結合ドメインと固体担体に固定されている認識部位の間の相互作用により固体担体に任意に固定される。認識部位は認識し且つ澱粉結合ドメインと相互作用をする種である。固体担体の反応性官能基と認識部位の相補的反応性をもつ反応性官能基との反応により形成された結合により、認識部位と固体担体は連結している。
【0185】
有用な反応性官能基は、例えば、次のものを含む。
(a)カルボキシル基とそのさまざまな誘導体、例えば、N-ヒドロキシスクシニミド エステル、N-ヒドロキシベンズトリアゾール エステル、酸ハロゲン化物(例えば、沃素、臭素、塩素)、アシル イミダゾール、チオエステル、p-ニトロフェニル エステル、アルキル,アルケニル,アルキニル及び芳香族エステルが挙げられるが、限定されない;
(b)例えば、エステル、エーテル、アルデヒド等に転換されうるヒドロキシル基;
(c)ハロアルキル基、ここでハロゲン基は、アミン、カルボキシレート アニオン、チオール アニオン、カルバニオン、若しくはアルコキシド イオン等のような求核基で後で置換されうる、それによって、ハロゲン原子の官能基の位置で新しい基の共有結合となる;
(d)例えば、マレイミド基のようなディールス−アルダー反応に参画することができる求ジエン基;
(e)例えば、イミン、ヒドラゾン、セミカルバゾン若しくはオキシムのようなカルボニル誘導体の生成を経由、又はグリニャール付加やアルキルリチウム付加のような機構を経由して、その後に続く誘導体化が可能となるような、アルデヒド又はケトン基;
(f)アミンとのその後の反応で、例えば、スルフォンアミドを形成するハロゲン化スルフォニル基;
(g)例えば二硫化物に転換されうるか、ハロゲン化アシルと反応しうるチオール基;
(h)例えば、アシル化、アルキル化若しくは酸化されうるアミン又はスルフヒドリル基;
(i)例えば、シクロ付加、アシル化、マイケル付加等を受けるアルケン;
(j)例えば、アミン及びヒドロキシル化合物と反応しうるエポキシド;
及び
(k)燐酸アミダイト及び核酸合成に有用な他の標準の官能基。
【0186】
反応性官能基は、それらが認識部位や担体を組み立てるに必要な反応に参画しないか、妨げないように選ばれうる。二者択一的に、反応性官能基は保護基の存在によって反応に参画することから保護されうる。その分野の熟練者は選ばれる1セットの反応条件を妨げないような特定の官能基を保護する方法を理解している。有用な保護基の例としては、例えば、Greeneら, PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHSIS, John Wiley&Sons, New York, 1991年。
【0187】
典型的な態様では、認識部位はシクロデキストリンである。シクロデキストリンポリマーはシクロデキストリンやシクロデキストリンの混合物及び他の炭水化物と、例えば、エピクロルヒドリン、ジイソシアネート、ジエポキシドのポリマー化剤と連結するか架橋することにより作り出されてきた(不溶のシクロデキストリン ポリマー ビーズ,Chem.Abstr. No.222444m, 102頁; 94年, Zsadon and Fenyvesi, 1st. Int. Symp.on Cyclodextrins, J.Szejtli,ed., D.reidel Publishing Co., Boston, 327-336頁; Fenyvesiら,1979年, Ann.Univ. Budapest, Section Chim. 15巻: 13 22頁; and Wiedenhofら,1969年, Die Stirke 21巻: 119-123頁)。これらのポリマー化剤は炭素6,2及び3で1級及び2級ヒドロキシ基と反応することができる。ポリマー化はシクロデキストリン分子の中心の空洞を除去しないだろう。安定な水溶性シクロデキストリンポリマーは二つから五つのシクロデキストリン単位を連結することによって作成される。(Fenyvesiら,1st Int. Symp.on Cyclodextrins, J.Szejtli,ed., D.Reider Publishing Co., Bosron. 345頁)
【0188】
不溶のシクロデキストリンポリマーは先のパラグラフ、同上に記載されたように、数多くのシクロデキストリンモノマーを架橋することにより、ビーズ、繊維、樹脂若しくはフィルムの形で作成されうる。そのようなポリマーは水に膨潤する能力をもつ。ポリマー生成物、化学組成、膨潤及び粒子径分布の特徴は作成条件を変えることにより制御される。これらのシクロデキストリンポリマーは芳香族化合物と脂肪族アミノ酸を互いにクロマトグラフィー分離することにおける固定相として用いられるとみられている(Haradaら,1982年, Chem.Abstr.No. 218351u, 96年: 10巻 及び Zsadon and Fenyvesi, 1982年,1st.Int.Symp.on Cyclodextrins, J.Szejtli,ed., D.Reidel Publishing Co., Boston, 327-336頁)。付加的に、エピクロルヒドリンで固定化されたβ-シクロデキストリンは4-ヒドロキシベンズアルデヒドの選択的合成の触媒として用いられてきた(Komiyama and Hirai, 1986年, Polymer J, 18巻: 375頁)。
【0189】
固定化されたシクロデキストリンの作成法はまたその分野で知られている。固定化されたシクロデキストリンは色々の操作を用いて得られうる。一つの方法はシクロデキストリン単量体のビニル誘導体を連結することを含む。例えば、シクロデキストリンを含有する水溶性ポリマーはアクリル酸エステル誘導体を用いて得られてきた(Haradaら,1976年, J.Am.Chem.Soc. 9巻: 701-704頁)。
【0190】
固定化されたシクロデキストリンはまた、シクロデキストリンを固体表面に連結アームを通して共有結合で連結することによって、又は物理的方法によりそれらを合成ポリマーマトリックスに導入することによって、得られてきた(Zsadon and Fenyvesi, (1982年) 1st.Int.Symp.on Cyclodextrins, J.Szejtli, ed., D.Reidel Publishing Co., Boston, 327-336頁)。シクロデキストリン単量体はシランを通して(Armstrongら,(1987年)Science 232巻:1132頁 及び Armstrong U.S.Pat.No.4,539,399)、エチレンジアミンモノ置換シクロデキストリンとカルボキシル化シリカを反応することにより(Kawaguchiら,(1983年) Anal.Chem., 55巻: 1852-1857頁)シリカゲルに付着してきた。シクロデキストリンはまたポリウレタン樹脂に(Kawaguchiら(1982年) Bull.Chem.Soc.Jpn. 55巻: 2611-2614頁),SephroseTM, BioGelTM, セルロース(Zsadon and Fenyvesi, (1982年) 1st.Int.Symp.on Cyclodextrins, J.Szejtli, ed., D.Reidel Publishing Co., Boston, 327-336頁)共有結合で連結されてきた。固体表面を含むそのようなシクロデキストリンは芳香族化合物のクロマトグラフィー分離における固定相として用いられてきた(Kawaguchiら(1983年)Anal.Chem.,55巻:1852-1857頁)。付加的にシクロデキストリンはポリアクリルアミドに連結されてきた(Tanaka (1982年) J.Chromatog. 246巻: 207-214頁 及び Tanakaら(1981年) Anal.Let. 14巻: 281-290頁)。
【0191】
荷電及び非荷電のシクロデキストリンの両方とシクロデキストリンの誘導体は本分野で知られている。好ましい態様では、認識部分は非荷電のシクロデキストリンである。
【0192】
シクロデキストリン親和性部分はまたスペーサーアーム(spacer arm)を通して担体に付着することができる。例えば、Yamamotoら, J.Phys.Chem. B101巻: 6855-6860頁 (1997年)。シクロデキストリンを他の分子に付着する方法はクロマトグラフィーと薬剤分野の熟練者によく知られている。例えば、Sreenivasan, K.J. Appl.Polym.Sci. 60巻: 2245-2249頁 (1996年)。
【0193】
典型的な戦略は、ヘテロ二官能の架橋剤SPDP(n-スクシニミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート)を用いて保護されたスルフヒドリルの認識部分への導入と、それから固体担体上の別のスルフヒドリルとの二硫化結合の生成のためのスルフヒドリルの脱保護を含む。保護された形で、スルフヒドリルを認識部分に発生したSPDPは、固体担体に導入された遊離のスルフヒドリルと反応して二硫化結合を生成する。SPDPは1級アミンと反応し、導入されたスルフヒドリルは2-ピリジルチオンによって保護される。
【0194】
本分野の熟練者が十分理解するであろうように、多くの他の架橋剤が本発明の固体担体を作成するのに役に立つ。例として二硫化結合を生成するのに用いられる、2-イミノチオランやN-スクシニミジル S-アセチルチオアセテート(SATA)が挙げられる。2-イミノチオランは1級アミンと反応して、直ぐに非保護のスルフヒドリルをタンパク質に導入する。SATAはまた1級アミンと反応するが、保護されたスルフヒドリルを導入する。これは後でヒドロキシルアミンを使って脱アセチル化をして遊離のスルフヒドリルを生成する。それぞれの場合に、導入されたスルフヒドリルは他のスルフヒドリルか保護されたスルフヒドリルと自由に反応して、SPDPのように、所望の二硫化結合を生成する。
【0195】
上記の戦略は典型的であり、本発明において用いられる架橋剤に限定はない。その他の用いられる架橋剤も入手できる。例えば、TPCH(S-(チオピリジル)-L-システイン ヒドラジド) 及び TPMPH(S-(2-チオピリジル)メルカプトプロピオノヒドラジド)は、先に温和な過ヨウ素酸塩処理により酸化されて、架橋剤のヒドラジド部分とアルデヒドを発生する過ヨウ素酸塩との間にヒドラゾン結合を生成する、炭水化物部分と反応する。修正は部位特異的であり、澱粉結合ドメインに結合するという認識部分の能力を妨げないだろう。TPCHとTPMPHは2-ピリジルチオン保護スルフヒドリル基を認識部分に導入する。認識部分はDTTで脱保護されて、それから次に成分間に二硫化結合を生成するような、共役に用いられうる。
【0196】
二硫化結合が安定な共役物を生成するのに適切でないとわかったら、成分間により安定な結合を導入する他の架橋剤が用いられるであろう。ヘテロ二官能の架橋剤GMBS((N-γ-マレイミドブチリルオキシ)スクシニミド)及びSMCC(スクスニミジル 4-(N-マレイミド-メチル)シクロヘキサン)が1級アミンと反応して、そうしてその成分にマレイミド基を導入する。このマレイミド基は次に他の成分のスルフヒドリル基、これは先に述べた架橋剤により導入されうる、と反応して、安定なチオエーテル結合を成分間に形成しうる。もし成分間の立体障害がどちらかの成分の活性を妨げるなら、成分間に長いスペーサーアームを導入する架橋剤が用いられ、架橋剤は先に述べた架橋剤(例えば、SPDP)のいくつかの誘導体を含む。このように有用な多数の適切な架橋剤がある。それぞれは最適の免疫抱合体生成をもつ効果に依存して選択される。
【0197】
さまざまな試薬が認識部分を固体担体に結合するために用いられる。例えば、Wold,F., Meth.Enzymol. 25巻: 623-651頁; Weetall, H.H.and Cooney, D.A., In: ENZYMES AS DRUGS.(J.S.Holcenberg,及び J.Roberts, eds) 395-442頁, Wiley, New York, 1981年; Ji, T.H., Meth.Enzymol. 91巻: 580-609頁, 1983年; Mattsonら,Mol.Biol.Rep. 17巻: 167-183頁, 1993年が挙げられ、ここですべてが参考として導入される。有用な架橋剤は、さまざまなゼロ長さ、ホモ二官能性、ヘテロ二官能性架橋剤に由来する。ゼロ長さの架橋剤は外部の物質の導入のない二つの固有の化学基の直接の結合が挙げられる。二硫化結合の生成を触媒する架橋剤がこのカテゴリーに属する。別の例は、カーボジイミド、エチルクロロ蟻酸、ウッドワード試薬K(2-エチル-5-フェニルイソキサゾリウム-3’-スルフォネート)、及びカルボニルジイミダゾールのようなアミド結合を生成するカルボキシルとアミノ基の縮合を導入する架橋剤である。これらの化学試薬に加えて、酵素トランスグルタミナーゼ(グルタミル-ペプチド γ-グルタミルトランスフェラーゼ;EC2.3.2.13)がゼロ長さの架橋剤として用いられる。この酵素は、基質としていつも1級アミノ基をもつ、タンパク質-結合グルタミニル残基のカルボキサミド基でアシル転移反応を触媒する。好ましいホモ−及びヘテロ二官能試薬は二つの同一の若しくは二つの異なる部位をそれぞれ含み、これはアミノ、スルフヒドリル、グアニジノ、インドール、若しくは非特定基と反応しうる。
【0198】
架橋試薬における好適特異的部位
1.アミノ−反応性基
一つの好ましい態様では、連結アーム(arm)はアミノ−反応性基を含む試薬から形
成される。アミノ−反応性基の有用な限定されない例は、N−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)エステル、イミドエステル、イソシアネート、ハロゲン化アシル、アリールアジド、p−ニトロフェニルエステル、アルデヒド、及び塩化スルホニルを含む。
【0199】
NHSエステルは親和性化合物の1級(芳香族を含む)アミノ基と選択的に反応する。
ヒスチジンのイミダゾール基は反応で1級アミンと競争することが知られているが、反応生成物は不安定で容易に加水分解する。反応はNHSエステルの酸性カルボキシルへのアミンの求核攻撃で、N-ヒドロキシコハク酸イミドを遊離してアミドを生成することを含む。こうして、元のアミノ基の正電荷が失われる。
【0200】
イミドエステルはアミノ基との反応で最も特殊なアシル化剤である。PH7〜10で、
イミドエステルは1級アミンとのみ反応する。1級アミンはイミデートを求核的に攻撃し中間体を生成し、高PHで分解してアミジンになるか、低PHで新イミデートになる。新イミデートは別の1級アミンと反応して、このように二つのアミノ基を架橋することができ、
2官能的に反応する推定1官能イミデートの場合である。1級アミンとの反応の主要な生成物は元のアミンよりも強塩基のアミジンである。それゆえに元のアミノ基の正電荷は維持される。結果として、イミドエステルは共役物の全体の電荷に影響しない。
【0201】
イソシアネート(及びイソチオシアネート)は反応して安定な結合を形成する。スルフヒドリル、イミダゾール、及びチロシル基とのこれらの反応は比較的不安定な生成物を与える。
【0202】
アシルアジドはまたアミノ―特殊試薬として用いられる、ここでわずかなアルカリ条件、例えばPH8.5下で親和性化合物の求核性アミンが酸性カルボキシル基を攻撃する。
【0203】
1.5-ジフロロ-2,4-ジニトロベンゼンのようなハロゲン化アリールは共役化合物のアミノ基とチロシンフェノール基と選択的に反応するが、またスルフヒドリル基やイミダゾール基とも反応する。
【0204】
モノ−及びジカルボン酸のp-ニトロフェニルエステルはまた有用なアミノ−反応性基である。試薬の特異性は非常に高くはないけれども、α−及びε−アミノ基は最も速く反応するようにみえる。
【0205】
グルタルアルデヒドのようなアルデヒドは1級アミン(例えば、リシン残基のε−アミノ基)と反応する。しかしながら、グルタルアルデヒドは、数種の他のアミノ酸の側鎖、システイン、ヒスチジン、及びチロシンのそれらを含む、との反応性を示す。グルタルアルデヒドの希釈溶液はグルタルアルデヒドの単量体及び大多数のポリマー形(環状ヘミアセタール)を含有するので、親和性化合物内における二つの架橋された基の間の距離はさまざまである。不安定なシッフ塩基はポリマーのアルデヒドとタンパク質のアミノ基との反応で形成されるけれども、グルタルアルデヒドは安定な架橋をもって親和性化合物を修正することができる。PH6〜8、典型的架橋条件のPH、で、環状ポリマーは脱水を行なってα−β不飽和アルデヒドポリマーを生成する。しかしながら、シッフ塩基は別の二重結合と共役するときは、安定である。二つの二重結合の共鳴相互作用はシッフ結合の加水分解を防止する。さらに、高局在下のアミンはエチレン性二重結合を攻撃して安定なマイケル付加生成物を生成することが出来る。
【0206】
芳香族塩化スルホニルはさまざまな部位と反応するが、アミノ基との反応が最も重要であり、安定なスルホンアミド連結を形成する。
【0207】
2.スルフヒドリル−反応性基
別の好ましい態様において、連結アームはスルフヒドリル−反応性基を含む試薬から形成される。スルフヒドリル−反応性基の有用な限定されない例は、マレイミド、ハロゲン化アルキル、二硫化ピリジル、及びチオフタルイミドを含む。
【0208】
マレイミドはスルフリル基と選択的に反応して安定なチオエーテル結合を形成する。
それらはまたヒスチジンの1級アミノ基及びイミダゾール基と非常に遅い速度で反応する。しかしながら、PH7では単純チオールの反応速度は相当するアミンの1000倍大きいので、このPHでマレイミド基はスルフヒドリル特殊基とみなされうる。
【0209】
ハロゲン化アルキルはスルフヒドリル基、サルファイド、イミダゾール、及びアミノ基と反応する。しかしながら、中性からわずかにアルカリ性のPHで、ハロゲン化アルキルは主としてスルフヒドリル基と反応して安定なチオエーテル結合を形成する。より高いPHではアミノ基との反応が好まれる。
【0210】
二硫化ピリジルは二硫化交換を経由して遊離のスルフヒドリル基と反応して、混合二硫化物を与える。結果として、二硫化ピリジルは最も特殊なスルフヒドリル−反応性基である。
【0211】
チオフタルイミドは遊離のスルフヒドリル基と反応して、また二硫化物を与える。
【0212】
3.グアノジノ−反応性基
別の態様で、連結アーム(arm)はグアノジノ−反応性基を含む試薬から形成される。グアノジノ−反応性基の有用な限定されない例は、フェニルグリオキザールである。フェニルグリオキザールは親和性化合物におけるアルギニンのグアニジノ基と主として反応する。ヒスチジンとシステインはまた反応するが、非常に小さい程度である。
【0213】
4.インドール−反応性基
別の態様で、部位がインドール−反応性基である。インドール−反応性基の有用な限定されない例は、ハロゲン化スルフェニルである。ハロゲン化スルフェニルはトリプトファン及びシステインと反応して、夫々チオエステル及び二硫化物を生成する。わずかにメチオニンは塩化スルフェニルの存在下で酸化反応をする。
【0214】
5.カルボキシル−反応性基
別の態様で、水と有機溶媒の両方に溶解するカーボジイミドはカルボキシル−反応性基として用いられる。これらの化合物は遊離カルボキシル基と反応して擬似尿素を形成する、これはそれから入手できるアミンとカップリングしてアミド連結基を産する。Yamadaら,Biochemistry 20巻;4836-4842頁,1981年はタンパク質をカーボジイミドで修正する方法を教示する。
【0215】
架橋試薬における好適非特異的部位
部位−特異的反応性部分の使用に加えて、本発明は突然変異認識部分を固体担体に連結する非特異的反応性基の使用も検討する。非特異性基は例えば、光活性化できる基を含む。
別の好ましい態様では、部位が光活性化できる基である。光活性化できる基は、暗闇では完全に不活性であり、適当な光子のエネルギーを吸収して反応性種に変換される。一つの好ましい態様では、光活性化できる基は、加熱下で発生するナイトレンの前駆体若しくはアジドの光分解から選択される。電子不足ナイトレンは極端に反応性であり、N-H、O-H、C-H、及びC=Cを含む様々な化学結合と反応することができる。3つの型のアジド(アリール、アルキル及びアシル誘導体)が用いられるけれども、現在はアリールアジドが好ましい。光分解下でのアリールアジドの反応性はC-H結合とよりもN-H及びO-H結合との方がよい。電子不足アリールナイトレンは素早く環を拡大してデヒドロアゼピンを生成し、これはC-H挿入生成物を生成するよりも求核剤と反応する傾向がある。アリールアジドの反応性は、環内におけるニトロや水酸基のような電子吸引性置換基の存在下で増加しうる。そのような置換基はアリールアジドの最大吸収を長波長に押す。非置換アリールアジドは260〜280nmの範囲に最大吸収をもつ、一方ヒドロキシ及びニトロアリールアジドは305nmを超える有意な光を吸収する。それゆえに、ヒドロキシ及びニトロアリールアジドが、非置換アリールアジドよりも親和性化合物にとって有害でない光分解条件を用いることを許容するので、それらが最も好ましい
【0216】
別の好ましい態様では、光活性化できる基はフッ素化アリールアジドから選択される。フッ素化アリールアジドの光分解生成物はアリールナイトレンであり、これらのすべては、高効率でのC-H結合挿入を含む、この基の特徴的反応を行なう(Keanaら,J.Org.Chem.55巻: 3640-3647頁, 1990年)。
【0217】
別の態様では、光活性化できる基はベンゾフェノン残基から選択される。ベンゾフェノン試薬は一般的にアリールアジド試薬よりも高い架橋収率を与える。
【0218】
別の態様では、光活性化できる基は、光分解により電子欠乏カルベンを形成する、ジアゾ化合物から選択される。これらのカルベンは、C−H結合への挿入、二重結合への付加(芳香族系を含む)、水素引き抜き及び求核中心へ配位して炭素イオンを与えることを含むさまざまな反応を行なう。
【0219】
さらに別の態様では、光活性化できる基はジアゾピルヴェートから選択される。例えば、p-ニトロフェニル ジアゾピルヴェートのp-ニトロフェニルエステルは脂肪族アミンと反応してジアゾピルヴィン酸アミドを与え、これは紫外線光分解してアルデヒドを生成する。光分解されてジアゾピルヴェートで修飾された親和性化合物はホルムアルデヒドやグルタルアルデヒドに似た反応をしてタンパク質内架橋を形成する。
【0220】
ホモ二官能試薬
1.1級アミンと反応するホモ二官能架橋剤
ホモ二官能アミン−反応性試薬の合成、性質及び用途は文献(架橋操作と試薬のレビューのため、上記)に記載されている。多くの試薬が用いられる(例えば, Pierce Chemical Company, Rockford,I11.; Sigma Chemical Company, St. Louis, Mo.; Molecular Probes, Inc., Eugene, OR.)。
【0221】
ホモ二官能のNHSエステルの好ましい限定されない例は、グルタル酸 ジスクシニミジル (DSG)、スベリン酸 ジスクシニミジル(DSS)、スベリン酸 ビス(スルフォスクシニミジル)(BS)、酒石酸 ジスクシニミジル(DST)、酒石酸 ジスルフォスクシニミジル(sulfo-DST)、 ビス−2-(スクシニミドオキシカルボニルオキシ)エチルスルフォン(BSOCOES)、ビス−2-(スルフォスクシニミドオキシカルボニルオキシ)エチルスルフォン(sulfo-BSOCOES)、ジコハク酸 エチレングリコルビス(スクシニミジル)(EGS)、ジコハク酸 エチレングリコルビス(スルフォスクシニミジル)(sulfo-EGS)、ジプロピオン酸ジチオビス(スクシニミジル)(DSP)、及びジプロピオン酸 ジチオビス(スルフォスクシニミジル)(sulfo-DSP)を含む。ホモ二官能のイミドエステルの好ましい限定されない例は、ジメチル マロンイミデート(DMM)、ジメチル スクシンイミデート(DMSC)、ジメチル アジピミデート(DMA)、 ジメチル ピメリミデート(DMP)、ジメチル スベリミデート(DMS)、ジメチル-3,3’-オキシジプロピオニミデート(DODP)、ジメチル-3,3’-(メチレンジオキシ)ジプロピオニミデート(DMDP)、 ジメチル-3’-(ジメチレンジオキシ)ジプロピオニミデート(DDDP)、 ジメチル-3,3’-(テトラメチレンジオキシ)ジプロピオニミデート(DTDP)、 及びジメチル-3,3’-ジチオビスプロピオニミデート(DTBP)を含む。
【0222】
ホモ二官能のイソチオシアネートの好ましい限定されない例は、p-フェニレンジイソチオシアネート(DITC)、及び4,4‘-ジイソチオシアノ−2,2’-ジスルフォン酸スチルベン(DIDS)を含む。
【0223】
ホモ二官能のイソシアネートの好ましい限定されない例は、キシレンジイソシアネート、トルエン-2,4-ジイソシアネート、 トルエン-2-イソシアネート-4-イソチオシアネート、3-メトキシジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、 2,2’-ジカルボキシ-4,4’-アゾフェニルジイソシアネート、及びヘキサメチレンジイソシアネートを含む。
【0224】
ホモ二官能のハロゲン化アリールの好ましい限定されない例は、1,5-ジフロロ-2,4-ジニトロベンゼン(DFDNB)、及び4,4’-ジフロロ-3,3’-ジニトロフェニル−スルフォンを含む。
【0225】
ホモ二官能の脂肪族アルデヒド試薬の好ましい限定されない例は、グリオキザール、マロンジアルデヒド、及びグルタルアルデヒドを含む。
【0226】
ホモ二官能のアシル化剤の好ましい限定されない例は、ジカルボン酸のニトロフェニルエステルを含む。
【0227】
ホモ二官能の芳香族塩化スルフォニルの好ましい限定されない例は、塩化フェノール−2,4−ジスルフォニル、及び塩化α−ナフトール−2,4−ジスルフォニルを含む。
【0228】
付加的なアミノ−反応性ホモ二官能試薬の好ましい限定されない例は、アミンと反応してビスカーバメートを与えるエリスリトールビスカーボネートを含む。
【0229】
2.遊離スルフヒドリル基と反応するホモ二官能架橋剤
スルフヒドリル−反応性試薬の合成、性質及び用途は文献(架橋操作と試薬のレビューのため、上記)に記載されている。多くの試薬が商業的に入手できる(例えば, Pierce Chemical Company, Rockford,I11.; Sigma Chemical Company, St. Louis, Mo.; Molecular Probes, Inc., Eugene, OR.)。
【0230】
ホモ二官能のマレイミドの好ましい限定されない例は、ビスマレイミドヘキサン(BMH)、
N,N’-(1,3-フェニレン)ビスマレイミド、 N,N’-(1,2-フェニレン)ビスマレイミド、アゾフェニレンジマレイミド,及びビス(N-マレイミドメチル)エーテルを含む。ホモ二官能の二硫化ピリジルの好ましい限定されない例は、1,4-ジ-3’-(2’-ピリジルジチオ)プロピオンアミドブタン(DPDPB)を含む。
【0231】
ホモ二官能のハロゲン化アルキルの好ましい限定されない例は、2,2’-ジカルボキシ-4,4’-ジヨードアセトアミドアゾベンゼン、α,α‘-ジヨード-p-キシレンスルフォン酸、
α,α‘-ジブロモ-p-キシレンスルフォン酸、N,N’-ビス(b-ブロモエチル)ベンジルアミン、 N,N’-ジ(ブロモアセチル)フェニルヒドラジン、及び1,2- ジ(ブロモアセチル)アミノ-3-フェニルプロパンを含む。
【0232】
ホモ二官能の光活性化できる架橋剤
光活性化できる試薬の合成、性質及び用途は文献(架橋操作と試薬のレビューのため、上記)に記載されている。いくつかの試薬は商業的に入手できる(例えば,Pierce Chemical Company, Rockford,I11.; Sigma Chemical Company, St. Louis, Mo.; Molecular Probes, Inc., Eugene, OR.)。
【0233】
ホモ二官能の光活性化できる架橋剤の好ましい限定されない例は、ビス-b-(4-アジドサリシルアミド)エチルジサルファイド(BASED)、ジ-N-(2-ニトロ-4-アジドフェニル)-シスタミン-S,S-ジオキサイド(DNCO)、及び4,4’-ジチオビスフェニルアジドを含む。
【0234】
ヘテロ二官能試薬
1.二硫化ピリジル部分をもつ、アミノ−反応性ヘテロ二官能試薬
ヘテロ二官能性スルフヒドリル−反応性試薬の合成、性質及び用途は文献(架橋操作と試薬のレビューのため、上記)に記載されている。多くの試薬は商業的に入手できる(例えば、Pierce Chemical Company, Rockford,I11.; Sigma Chemical Company, St. Louis, Mo.; Molecular Probes, Inc., Eugene, OR.)。
【0235】
二硫化ピリジル部分とアミノ反応性NHSエステルをもつ、ヘテロ二官能試薬の好ましい限定されない例は、3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸 N-スクシニミジル(SPDP)、6-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオンアミドヘキサン酸 スクシニミジル (LC-SPDP)、6-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオンアミドヘキサン酸 スルフォスクシニミジル (sulfo-LCSPDP)、4-スクシニミジルオキシカルボニル-a-メチル-α-(2-ピリジルジチオ)トルエン(SMPT)、及び6-a-メチル-α-(2-ピリジルジチオ)トルアミドヘキサン酸 スルフォスクシニミジル (sulfo-LC-SMPT)を含む。
【0236】
2.マレイミド部分をもつ、アミノ−反応性ヘテロ二官能試薬
ヘテロ二官能性アミン/スルフヒドリル−反応性試薬の合成、性質及び用途は文献に記載されている。マレイミド部分とアミノ反応性NHSエステルをもつ、ヘテロ二官能試薬の好ましい限定されない例は、 マレイミジル酢酸 スクシニミジル (AMAS)、 3-マレイミジルプロピオン酸 スクシニミジル(BMPS)、N-γ-マレイミドブチリルオキシスクシニミド エステル(GMBS)、N-γ-マレイミドブチリルオキシスルフォスクシニミド エステル(sulfo-GMBS)、6-マレイミジルヘキサン酸 スクシニミジル(EMCS)、3-マレイミジル安息香酸 スクシニミジル (SMB)、 m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシニミド エステル(MBS)、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスルフォスクシニミド エステル(sulfo-MBS)、4-(マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボン酸 スクシニミジル (SMCC)、4-(マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボン酸 スルフォスクシニミジル(sulfo-SMCC)、4-(p-マレイミドフェニル)酪酸 スクシニミジル(SMPB)、及び4-(p-マレイミドフェニル)酪酸 スルフォスクシニミジル(sulfo-SMPB)を含む。
【0237】
3.ハロゲン化アルキル部分をもつ、アミノ−反応性ヘテロ二官能試薬
ハロゲン化アルキル部分とアミノ反応性NHSエステルをもつ、ヘテロ二官能試薬の好ましい限定されない例は、アミノ安息香酸 N-スクシニミジル-(4-ヨードアセチル)(SIAB)、 アミノ安息香酸 スルフォスクシニミジル-(4-ヨードアセチル)(sulfo-SIAB)、アミノヘキサン酸 スクシニミジル-6-(ヨードアセチル)(SIAX)、ヘキサン酸スクシニミジル-6-(6-(ヨードアセチル)-アミノ)ヘキサノイルアミノ)(SIAXX)、 アミノヘキサン酸 スクシニミジル-6-(((4-(ヨードアセチル)-アミノ)メチル)-シクロヘキサン-1-カルボニル) (SIACX)、及びメチルシクロヘキサン-1-カルボン酸 スクシニミジル-4-((ヨードアセチル)-アミノ)(SIAC)を含む。
【0238】
アミノ反応性NHSエステルとジハロゲン化アルキル部分をもつ、ヘテロ二官能試薬の好ましい例は、2,3-ジブロモプロピオン酸 N-ヒドロキシスクシニミジル(SDBP)である。SDBPはそのアミノ基を共役することにより親和性化合物に分子内架橋を導入する。1級アミノ基に対するジブロモプロピオニル基の反応性は反応温度により支配される(McKenzieら,Protein chem. 7巻: 581-592頁 (1988年))。
【0239】
ハロゲン化アルキル部分とアミノ反応性p-ニトロフェニルエステルをもつ、ヘテロ二官能試薬の好ましい限定されない例は、ヨード酢酸 p-ニトロフェニル(NPIA)である。
【0240】
4.NHSエステル部分をもつ、光活性化できるアリールアジド含有するヘテロ二官能試薬
アミノ−反応性のNHSエステル部分をもつ、光活性化できるアリールアジドを含有するヘテロ二官能試薬の好ましい限定されない例は、N-ヒドロキシスクシニミジル-4-アジドサリチル酸(NHS-ASA)、N-ヒドロキシスルフォスクシニミジル-4-アジドサリチル酸(sulfo-NHS-ASA)、4-アジドサリチルアミド)ヘキサン酸 スルフォスクシニミジル(sulfo-NHS-LC-ASA)、N-ヒドロキシスクシニミジル N-(4-アジドサリチル)-6-アミノカプロン酸(NHS-ASC)、4-アジド安息香酸 N-ヒドロキシスクシニミジル(HSAB)、4-アジド安息香酸 N-ヒドロキシスルフォ-スクシニミジル(sulfo-HSAB)、4-(p-アジドフェニル)酪酸 スルフォスクシニミジル(sulfo-SAPB)、N-5-アジド-2-ニトロベンゾイルオキシ-スクシニミド(ANB-NOS)、6-(4’-アジド-2’-ニトロフェニルアミノ)-ヘキサン酸 N-スクシニミジル(SANPAH)、2-(4-アジドフェニル)ジチオ酢酸 N-スクシニミジル(NHS-APDA)、(4-アジドフェニル)1,3-ジチオプロピオン酸 N-スクシニミジル(SADP)、(4-アジドフェニル)-1,3’-ジチオプロピオン酸 スルフォスクシニミジル(sulfo-SADP)、 2-(m-アジド-o-ニトロベンズアミド)エチル-1,3’-ジチオプロピオン酸 スルフォスクシニミジル(SAND)、2-(p-アジドサリチルアミド)-エチル-1,3’-ジチオプロピオン酸 スルフォスクシニミジル(SASD)、N-ヒドロキシスクシニミジル 4-アジドベンゾイルグリシルチロシン(NHS-ABGT)、2-(7-アジド-4-メチルクマリン-3-アセトアミド)エチル-1,3’-ジチオプロピオン酸 スルフォスクシニミジル(SAED)、及7-アジド-4-メチルクマリン-3-酢酸 スルフォスクシニミジル(sulfo-SAMCA)を含む。
【0241】
その他の架橋剤は本分野の熟練者に公知である(例えば、Pomatoら,米国特許 No.5,965,106)。
【0242】
連結基
架橋部分が認識部分と支持体の部位に直接に付いている上記で記載された態様に加えて、本発明は、認識部分若しくは固体支持体若しくは両方に結合している連結基に存在する部位に架橋部分が結合している作成物を提供する。
【0243】
ある態様では、認識部分を固体支持体に、柔軟性を与え突然変異認識部分と目標部分との間の距離を増加する基によりつなぐことが有利である。有効に制御される性質は、例えば、疎水性、親水性、表面活性及びクロマトグラフィー担体からの認識部分の距離を含む。
【0244】
典型的な態様では、連結剤はクロマトグラフィー担体から認識部分を遠ざけるのに役立つ。この特徴をもつ連結剤はさまざまな用途をもつ。例えば、担体にあまりに近くある認識部分はSBDと効果的に相互作用をしないかもしれないか、非常に低い親和性での相互作用しかしないかもしれない。このように、クロマトグラフィー担体と認識部分の間の距離をとりわけ変えるために連結部分を利用することは本発明の範囲内である。
【0245】
さらなる態様では、連結基としては、開裂されて担体から認識部分が遊離されうる基が提供される。多くの開裂可能な基は公知である。例えば、Jungら, Biochem.Biophys.Acta, 761巻: 152-162頁 (1983年); Joshiら, J.Biol.Chem., 265巻: 14518-14525頁 (1990年); Zarlingら, J.Immunol., 124巻: 913-920頁 (1980年); Bouizarら, Eur.J.Biochem., 155巻; 141-147頁 (1986年); Parkら, J.Biol.Chem., 261巻; 205-210頁 (1986年); Browningら, J.Immunol., 143巻: 1859-1867頁 (1989年)。さらに広範囲の開裂可能の二官能(ホモ−及びヘテロの二官能の両方)連結基がPierceなどの供給者から商業的に入手できる。
【0246】
典型的な開裂可能な部分は光、熱若しくはチオール、ヒドロキシルアミン、塩基、過ヨウ素酸塩等の試薬を用いて開裂される。典型的な開裂可能な基はジサルファイド、エステル、イミド、カーボネート、ニトロベンジル、フェナシル、及びベンゾイン基から構成される群から選ばれる員である開裂可能部分からなる。
【0247】
キット
別の観点では、発明は発明の方法を実施するためのキットを提供する。キットは一つ若しくはそれ以上のここで記載された化合物、及び通常は化合物を用いる指示を含む。典型的な態様では、キットは糖で修飾された固体担体及びSBDを含む一つ若しくはそれ以上の酵素からなる。さらに別の典型的な態様においては、酵素はグリコシルトランスフェラーゼ若しくはグリコシル供与体を基質に転移させる他の酵素である。
【実施例】
【0248】
次の例を挙げて説明するが、クレームされた発明を限定しない。
【0249】
実施例1
β−シクロデキストリン親和性樹脂の作成操作
1.エポキシ−活性の東ソー バイオセップ(Tosoh Biosep) 650M 樹脂(カタログ#08000)を5g秤量し、オープンのクロマトグラフィー樹脂に入れる。
2.100mLのDI水で樹脂を水和し、室温で樹脂をカラムに入れ水抜きをする。
3.カラムから樹脂を除き、50mLのファルコンチューブに置く。
4.β-シクロデキストリン(BCD, Sigma Cat#C-4767)11gを20mLの1M NaOHに溶解する。(〜0.4MのBCD溶液)
5.BCD溶液を50mLチューブ内の樹脂に加える。最終溶液を47mlにする。
6.生じた懸濁液を40〜45℃のウオーターバスに48-72時間置く。
7.樹脂をクロマトグラフィーカラムに入れ、100mLDI水で洗い流す。水抜きをする。
8.カラムから樹脂を除き、きれいな50mLのファルコンチューブに入れる。1Mのエタノールアミンを樹脂に加え50mLの合計懸濁液にし、40℃で17〜24時間インキュベートする。
9.カラム中の樹脂を100mLDI水で洗い流す。水抜きをする。
10.樹脂を50mLのファルコンチューブに入れ、0.1M NaOHを加え合計液量40mLにする。
11.キャップしたチューブ中室温下0.1M NaOH中で樹脂を保管する。
12.樹脂をクロマトグラフィーに使用するために、所望の容量のカラムに詰める。
適当な緩衝液で平衡を保たせる。平衡緩衝液中で5mMのBCDと結合した目標のタンパク質を溶出する。
【0250】
実施例2
澱粉が結合したドメイン作成物
澱粉が結合したドメイン(SBD)遺伝子がpGASTamp’のPCRにより単離された。PCRで使用されたオリゴヌクレオチドは5’SBDNedI(5’-AGGTATCATATGTGTACCACTCCCACCGCCCGT-3';SEQ ID NO.6)及び3’SBDBAMHI(5’-GTTTATGGATCCCCGCCAGGTGTCGGTCAC-3’;SEQ ID NO.7)である。SBD PCR反応はアガロースゲル電気泳動法により分析され、〜330bp帯のものがゲル精製された。pCWIN2とゲル精製されたSBD PCR生成物がNdel及びBamHI制限エンドヌクレアーゼにより消化され、反応はアガロースゲル電気泳動法により分析された。直線状ベクター(〜5kb)とSBD(〜330bp)で表される消化生成物がそれからゲル精製された。消化されたゲル精製ベクターと挿入物はT4 DNAリガーゼを用いて一緒に連結され、次に電気的能力のあるDH5α大腸菌(E.coli)に転換された。ポジチブな形質転換細胞が制限エンドヌクレアーゼスクリーニングにより同定された。形質転換細胞は〜330bp挿入物を含むことが示され、順序付けの後に挿入物はSBDであることがわかった。pCWIN2SBDがそれから化学的能力のあるJM109E.Coli(JMCB006)に転換され、ポジチブな形質転換細胞が制限エンドヌクレアーゼスクリーニングにより同定された。pCWIN2SBD JM109の125mL培養が500μM IPTGで誘発され25℃17時間で発現された。細胞が遠心分離により集められフレンチプレスにより溶解された。SDS-PAGE分析は結論が出ず、後処理プロセスに供される溶解物からのサンプルはβ-シクロデキストラン樹脂への結合を示した。しかしながら、精製された生成物は大きすぎてSBDではなかった。
【0251】
ST3GalIIIのpCWIN2SBD JM109へのサブクローン化
pGEX ST3GalIII DNA及びpCWIN2SBDが両方ともBamHIとEcoRI制限エンドヌクレアーゼに消化され、アガロースゲル電気泳動法により分析された。直線状のpWIN2SBD(〜5.3kb)とST3GalIII(〜1kb)を表す帯状断片がゲル精製され、T4 DNAリガーゼを用いて連結された。連結生成物はそれから電気的能力のあるDH5αE.coliに転換され、ポジチブな形質転換細胞が制限エンドヌクレアーゼスクリーニングにより同定された。ポジチブな形質転換細胞が単離され、続いて塩能力のあるJM109(JMCB006)に転換された。制限エンドヌクレアーゼ分析によりJM109コロニーがpCWIN2SBD ST3GalIIIを含むことがわかった。二つの200mLの培養が誘発され、一つは500μM IPTGで、25℃17時間で成長させ、二つ目は1mM IPTGで、37℃17時間で成長させた。これらの二つの培養からの細胞が遠心分離により集められ、フレンチプレスにより溶解された。SDS-PAGEとST3GalIII抗体を用いる西洋ブロッティング法は、SBD-ST3GalIIIの発現を示唆したが、しかしながら、大部分のタンパク質は溶解していることがわかり、誘発サンプルと非誘発サンプルの間に同様なシグナル強度は弱いプロモーター配列を示唆しているかもしれない。
【0252】
ここに記載された例と態様は説明する目的のためだけであり、その観点からの色々な修正や変化が本分野の熟練者に示唆されるであろうし、この精神と応用範囲内に含まれるべきであり、添付のクレームの範囲内であるとみなされることは当たり前である。すべての公開物、特許及びここで引用された特許出願書類は、参照することによりすべての目的に対して完全に本書に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0253】
本発明はタンパク質の分野、特にタンパク質の単離方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0254】
【図1】図1は、SBDを含有するグリコシルトランスフェラーゼ融合タンパク質を作成する過程を示す漫画である; 治療性ペプチド上のグリコシル化パターンを変えるために融合タンパク質の使用、及び糖類が結合した固体担体に対するSBDの親和性を使用して反応混合物から融合タンパク質の除去。
【図2】図2は、固定化し、糖類を含む担体から融合タンパク質を除去するための溶出条件のプロフィルである。
【図3】図3は、融合タンパク質の収穫量を表す親和クロマトグラムである。ゲルは特定の割合で融合が存在することを示す。
【図4】図4は、融合タンパク質の濃縮ろ過された培養液の親和クロマトグラムである。ゲルは特定の割合で融合が存在することを示す。
【図5】図5は、SPFFプールの親和クロマトグラムである。ゲルは特定の割合で融合が存在することを示す。
【図6】図6は、vector/JM109で発現されたSBD/GalIII溶融タンパク質に対してブロットされた抗-ST3GalIII 抗体を使った西洋ブロットである。
【図7】図7は、5’フランキング配列を含むA.awamoriからの核酸配列gla A(グルコアミラーゼ遺伝子)である(SEQ ID NO.2):本分野で知られた技術を使って、この配列にイントロンを挿入する系において全遺伝子を発現させることが出来るか、またはコード化された配列だけを含有する作成物を生じさせるためにPCRを使用することが出来る。信号ペプチドのメチオニンの開始は、nuc 260-262のところである。
【図8】図8は、A.awamoriからのSBDドメインの核酸配列である(SEQ ID NO.3)。
【図9】図9は、信号ペプチドを含むグリコアミラーゼのG1形のアミノ酸配列である(SEQ ID NO. 4)。
【図10】図10は、グリコアミラーゼからのSBDのアミノ酸配列である(SEQ ID NO. 5)。
【配列表】







【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)グリコシル供与体部分及び該グリコシル供与体部分の受容体を、該グリコシル供与体部分を基質に転移するに適した条件下で、澱粉結合ドメインからなるグリコシルトランスフェラーゼと接触させる;及び
(b)澱粉結合ドメインからなる該グリコシルトランスフェラーゼを、該澱粉結合ドメインをシクロデキストリンに結合することにより、該シクロデキストリンからなる固体担体に固定化する、
ことからなる、基質をグリコシル化する方法。
【請求項2】
前記工程(a)が前記工程(b)の前に実施される請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記工程(b)が前記工程(a)の前に実施される請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記基質が、炭水化物、ペプチド、グリコペプチド、脂質、スフィンゴシン、セラミドから選ばれる員である請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記シクロデキストリンが非荷電シクロデキストリンである請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記シクロデキストリンが連結アームを通して前記固体担体に結合している請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記澱粉結合ドメインが、図10に従う配列からなる核酸によりコード化されたペプチドである請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記澱粉結合ドメインが、グルコアミラーゼの澱粉結合ドメインである請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記澱粉結合ドメインが、図8に従うアミノ酸配列からなるものである請求項8記載の方法。
【請求項10】
(a)変換を実施するに適した条件下で基質を酵素と接触させる、こ
こで該酵素は澱粉結合ドメインからなる;及び
(b)該澱粉結合ドメインをシクロデキストリンに結合することにより、該シクロデキ
ストリンからなる固体担体に該酵素を固定化する、
ことからなる基質に酵素的変換を実施する方法。
【請求項11】
前記工程(a)が前記工程(b)の前に実施される請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記工程(b)が前記工程(a)の前に実施される請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記基質が、炭水化物、ペプチド、グリコペプチド、脂質、スフィンゴシン、及びセラミドから選ばれる員である請求項10記載の方法。
【請求項14】
前記シクロデキストリンが非荷電シクロデキストリンである請求項8記載の方法。
【請求項15】
前記シクロデキストリンが連結アームを通して前記固体担体に結合している請求項8記載の方法。
【請求項16】
前記澱粉結合ドメインが、グルコアミラーゼの澱粉結合ドメインである請求項10記載の方法。
【請求項17】
前記澱粉結合ドメインが、図8に従う配列からなる核酸によりコード化されたペプチドである請求項7記載の方法。
【請求項18】
前記澱粉結合ドメインが、図10に従うアミノ酸配列からなるものである請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記酵素が、グリコシルトランスフェラーゼ、アミダーゼ、エンドグリカナーゼ、スルフォトランスフェラーゼ、及びトランスシアリダーゼから選ばれる員である請求項8記載の方法。
【請求項20】
(a)固体担体に結合したシクロデキストリン部分をもつ固体担体;及び
(b)酵素、ここで該酵素は澱粉結合部分からなり、該澱粉結合部分は、該酵素を該固体担体に固定化する該シクロデキストリンと相互作用をする、
からなる物質。
【請求項21】
前記シクロデキストリンが非荷電シクロデキストリンである請求項20記載の物質。
【請求項22】
前記シクロデキストリンが連結アームを通して前記固体担体に結合している請求項20記載の物質。
【請求項23】
前記澱粉結合ドメインが、グルコアミラーゼの澱粉結合ドメインである請求項20記載の物質。
【請求項24】
前記澱粉結合ドメインが、図8に従う配列からなる核酸によりコード化されたペプチドである請求項20記載の物質。
【請求項25】
前記澱粉結合ドメインが、図10に従うアミノ酸配列からなるものである請求項23記載の方法。
【請求項26】
前記酵素が、グリコシルトランスフェラーゼ、アミダーゼ、エンドグリカナーゼ、スルフォトランスフェラーゼ、及びトランスシアリダーゼから選ばれる員である請求項20記載の物質。
【請求項27】
(a)固体担体に結合したシクロデキストリン部分をもつ固体担体;及び
(b)澱粉結合部分からなる種、該澱粉結合部分は、該種を該固体担体に固定化する該シクロデキストリンと相互作用をする、
からなる物質。
【請求項28】
前記シクロデキストリンが非荷電シクロデキストリンである請求項27記載の物質。
【請求項29】
前記シクロデキストリンが連結アームを通して前記固体担体に結合している請求項27記載の物質。
【請求項30】
前記澱粉結合ドメインが、グルコアミラーゼの澱粉結合ドメインである請求項27記載の物質。
【請求項31】
前記澱粉結合ドメインが、図8に従う配列からなる核酸によりコード化されたペプチドである請求項27記載の物質。
【請求項32】
前記澱粉結合ドメインが、図10に従うアミノ酸配列からなるものである請求項27記載の方法。
【請求項33】
前記種が、酵素、治療薬、診断用薬、生体分子から選ばれる員である請求項27記載の物質。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2006−525808(P2006−525808A)
【公表日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−514275(P2006−514275)
【出願日】平成16年5月5日(2004.5.5)
【国際出願番号】PCT/US2004/013841
【国際公開番号】WO2005/014779
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(500062254)ネオス テクノロジーズ インコーポレイテッド (19)
【Fターム(参考)】