説明

シクロペンタジエニル誘導体の再生利用方法、及び再生利用された置換シクロペンタジエニル誘導体からメタロセンを製造する方法

本発明は、式(I)及び(I’)のシクロペンタジエニル誘導体の再生利用方法、用いる式(I)、(I’)、又は(II)のシクロペンタジエニル誘導体が少なくとも部分的に液−固クロマトグラフィーを用いて回収及び精製されたものである、式(I)及び(I’)のシクロペンタジエニル誘導体、或いは式(II)の橋架ビスシクロペンタジエニル誘導体から式(III)のメタロセンを製造する方法、並びに式(I)、(I’)、又は(II)の回収された置換シクロペンタジエニル誘導体を精製するための液−固クロマトグラフィーの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)及び(I’)のシクロペンタジエニル誘導体の再生利用方法、用いる式(I)、(I’)、又は(II)のシクロペンタジエニル誘導体が少なくとも部分的に液−固クロマトグラフィーを用いて回収及び精製されたものである、式(I)及び(I’)のシクロペンタジエニル誘導体、或いは式(II)の橋架ビスシクロペンタジエニル誘導体から式(III)のメタロセンを製造する方法、並びに式(I)、(I’)、又は(II)の回収された置換シクロペンタジエニル誘導体を精製するための液−固クロマトグラフィーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
過去15年において、目的に合わせて調製されたポリオレフィンを製造する目的で、オレフィンの重合及び共重合のための触媒成分として有機遷移金属化合物、特にメタロセンを用いることに関する研究開発が、大学及び産業界において精力的に行われている。現在では、メタロセン触媒系を用いて製造されるエチレンベースのポリオレフィンのみならず、特にメタロセン触媒系を用いて製造されるプロピレンベースのポリオレフィンも、ダイナミックに成長する市場区分を示している。
【0003】
ポリオレフィンの製造、特にアイソタクチックポリプロピレンの製造においては、その置換シクロペンタジエニルリガンドが複数の合成法で調製されているメタロセンが用いられる。置換シクロペンタジエニルリガンドの調製は、例えば、EP−0576970、WO−1998/40331、WO−1999/24446、WO−2001/47939、WO−2001/48034、WO−2002/092564、WO−2003/014107、又はWO−2003/045964に記載されている。
【0004】
アイソタクチックポリプロピレンを製造するために用いられるメタロセンは、通常、複雑な合成法によって調製される置換シクロペンタジエニルリガンドを有する橋架ラセミメタロセンである。ラセミansa−メタロセンの合成においては、これらは、一般に望ましくないメソ−メタロセンと一緒に得られ、これは通常、分離除去しなければならず、したがって所望のラセミメタロセンに転化していないコストの高いリガンドの一部が必然的に失われてしまう。コストの高い出発物質の損失を最小にするために、所望のラセミメタロセンの割合が望ましくないメソ形態の割合よりも高い種々のジアステレオ選択的合成法が開発されている。かかるラセミ選択的プロセスは、例えばWO−1999/15538又はWO−2005/108408に記載されている。
【0005】
WO−2002/96920においては、所望の生成物に転化していない橋架ビスシクロペンタジエニルリガンドの少なくとも一部を結晶化によって濾液から回収する、製造プロセスにおいて形成される副生成物を除去することによるラセミメタロセンの精製方法が記載されている。
【0006】
用いるリガンド前駆体に基づく所望のメタロセンの収率に関するメタロセン合成の最適化における今日までに達成された進歩にもかかわらず、メタロセン合成の経済性を改善する必要性が継続して存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、従来技術と比較して製造プロセスの経済性を改善する、メタロセンを製造するための広く適用可能なプロセスを見出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明者らは、
式(I)及び(I’):
【0009】
【化1】

【0010】
の置換シクロペンタジエニル誘導体及び/又はそれらの二重結合異性体、或いは式(II):
【0011】
【化2】

【0012】
の橋架ビスシクロペンタジエニル誘導体及び/又はそれらの二重結合異性体;
(上式中、
、R1’は、同一か又は異なり、それぞれ、1〜40個の炭素原子を有する有機基であり;
、R2’は、同一か又は異なり、それぞれ、水素、又は1〜40個の炭素原子を有する有機基であり;
或いは、RとR及び/又はR1’とR2’は、それぞれの場合においてそれらを結合する原子と一緒に、3〜40個の炭素原子を有し、5〜12原子の環の寸法を有し、また元素Si、Ge、N、P、As、Sb、O、S、Se、又はTeからなる群から選択されるヘテロ原子を含んでいてもよい、単環又は多環で、飽和又は不飽和で、置換又は非置換の環系を形成し;
T、T’は、同一か又は異なり、それぞれ、1〜40個の炭素原子を有し、それぞれの場合においてシクロペンタジエニル環と一緒に5〜12原子の環の寸法を有する少なくとも1つの更なる飽和又は不飽和で置換又は非置換の環系を形成する二価の有機基であり、ここでシクロペンタジエニル環に縮合している環系内のT及びT’は、ヘテロ原子Si、Ge、N、P、As、Sb、O、S、Se、又はTeを含んでいてもよく;
Zは、二価の原子又は二価の基から構成される2つの置換シクロペンタジエニルリガンドの間の橋架基である)
を再生利用する方法であって、
調製プロセスにおいて用いる式(I)及び(I’)のシクロペンタジエニル誘導体及び/又はそれらの二重結合異性体、或いは式(II)の橋架ビスシクロペンタジエニル誘導体及び/又はそれらの二重結合異性体が、少なくとも部分的に、メタロセンの製造及び/又は橋架ビスシクロペンタジエニルリガンドの製造において得られる濾液、母液、反応残留物、及び/又は後処理残留物から回収され、次に液−固クロマトグラフィーを用いて精製されたものである、上記方法を見出した。
【0013】
本発明者らは、更に、式(I)及び(I’)の置換シクロペンタジエニル誘導体及び/又はそれらの二重結合異性体、或いは式(II)の橋架ビスシクロペンタジエニル誘導体及び/又はそれらの二重結合異性体を再生利用する方法を含む、式(III):
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、
Mは、元素周期律表第3、4、5、又は6族、或いはランタニド族の元素であり;
基Xは、同一か又は異なり、それぞれ有機又は無機基であり、2つの基Xは、また、互いに結合していてもよく;
nは、0、1、2、又は3であり;
mは、0又は1である)
のメタロセンの製造方法も見出した。
【0016】
基R及びR1’は、同一か又は異なり、好ましくは異なり、それぞれ、1〜40個の炭素原子を有する有機基、例えばC〜C40アルキル、C〜C10フルオロアルキル、C〜C40アルケニル、C〜C40アリール、C〜C10フルオロアリール、アルキル基中に1〜10個、好ましくは1〜4個の炭素原子、及びアリール基中に6〜22個、好ましくは6〜10個の炭素原子を有するアリールアルキル、アリールアルケニル、又はアルキルアリール、或いは元素O、N、S、P、及びSe、特にO、N、及びSからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を有し、更なる基R(ここで、Rは、1〜20個の炭素原子を有する有機基、例えばC〜C10、好ましくはC〜Cアルキル、C〜C15、好ましくはC〜C10アリール、それぞれアルキル基中に1〜10個、好ましくは1〜4個の炭素原子、及びアリール基中に6〜18個、好ましくは6〜10個の炭素原子を有するアルキルアリール、アリールアルキル、フルオロアルキル、又はフルオロアリールであり、複数の基Rは同一であっても異なっていてもよい)によって置換されていてもよいC〜C40ヘテロ芳香族基である。
【0017】
及びR1’が、同一か又は異なり、好ましくは異なり、それぞれ、C〜C10アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、又はn−オクチル、好ましくはメチル、エチル、又はイソプロピルであることが好ましい。
【0018】
基R及びR2’は、同一か又は異なり、好ましくは同一であり、それぞれ、水素、又は1〜40個の炭素原子を有する有機基、例えばC〜C40アルキル、C〜C10フルオロアルキル、C〜C40アルケニル、C〜C40アリール、C〜C10フルオロアリール、アルキル基中に1〜10個、好ましくは1〜4個の炭素原子、及びアリール基中に6〜22個、好ましくは6〜10個の炭素原子を有するアリールアルキル、アリールアルケニル、又はアルキルアリール、或いは元素O、N、S、P、及びSe、特にO、N、及びSからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を有し、上記に定義した更なる基R(ここで複数の基Rは同一であっても異なっていてもよい)によって置換されていてもよいC〜C40ヘテロ芳香族基である。R及びR2’は、好ましくは水素である。
【0019】
別法として、RとR及び/又はR1’とR2’は、それぞれの場合においてそれらを結合している原子と一緒に、3〜40個の炭素原子を有し、5〜12原子、特に5〜7原子の環の寸法を有し、元素Si、Ge、N、P、As、Sb、O、S、Se、又はTe、好ましくはSi、N、O、又はS、特にS又はNからなる群から選択されるヘテロ原子を含んでいてもよい、単環又は多環で、飽和又は不飽和で、置換又は非置換の環系を形成する。
【0020】
好ましい結合基R/R及び/又はR1’/R2’の例は、
【0021】
【化4】

【0022】
好ましくは
【0023】
【化5】

【0024】
特に
【0025】
【化6】

【0026】
(上式中、基Rは、同一か又は異なり、それぞれ、1〜40個、好ましくは1〜20個の炭素原子を有する有機基、例えば、環式、分岐鎖又は非分岐鎖のC〜C20、好ましくはC〜Cアルキル基、C〜C20、好ましくはC〜Cアルケニル基、C〜C22、好ましくはC〜C10アリール基、アルキル基中に1〜10個、好ましくは1〜4個の炭素原子、及びアリール基中に6〜22個、好ましくは6〜10個の炭素原子を有するアルキルアリール又はアリールアルキル基であり、ここで該基はまたハロゲン化されていてもよく、或いは、基Rは、2〜40個、特に4〜20個の炭素原子を有し、好ましくはO、N、S、及びP、特にO、N、及びSからなる元素の群の中から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい、置換又は非置換で、飽和又は不飽和、特に芳香族複素環式基であり;
は、水素であるか、或いはRに関して定義した通りであり;
或いは、二つの隣接する基R又はRとRは、それらを結合する原子と一緒に、3〜40個の炭素原子を有し、Si、Ge、N、P、O、S、Se、及びTe、特にN又はSからなる群から選択されるヘテロ原子を含んでいてもよい、単環又は多環で置換又は非置換の環系を形成し;
指数sは、同一か又は異なり、それぞれ、0〜4、特に0〜3の自然数であり;
指数tは、同一か又は異なり、それぞれ、0〜2の自然数、特に1又は2であり;
指数uは、同一か又は異なり、それぞれ、0〜6の自然数、特に1である)
である。
【0027】
T及びT’は、同一か又は異なり、好ましくは同一であり、それぞれ、1〜40個の炭素原子を有し、シクロペンタジエニル環と一緒に、5〜12原子、特に5〜7原子の環の寸法を有する少なくとも1つの更なる飽和又は不飽和で置換又は非置換の環系を形成する二価の有機基であり、シクロペンタジエニル環に縮合している環系内のT及びT’は、ヘテロ原子Si、Ge、N、P、As、Sb、O、S、Se、又はTe、好ましくはSi、N、O、又はS、特にS又はNを含んでいてもよい。
【0028】
好ましい二価の有機基T又はT’の例は、
【0029】
【化7】

【0030】
好ましくは
【0031】
【化8】

【0032】
特に
【0033】
【化9】

【0034】
(上式中、
、R、s、t、及びuは、上記に定義した通りである)
である。
【0035】
Zは、二価の原子又は二価の基から構成される2つの置換シクロペンタジエニル環の間の橋架基である。Zの例は、
【0036】
【化10】

【0037】
−B(R)−、−B(NR)−、−Al(R)−、−O−、−S−、−S(O)−、−S((O))−、−N(R)−、−C(O)−、−P(R)−、又は−P(O)(R)−、
特に
【0038】
【化11】

【0039】
(式中、
は、ケイ素、ゲルマニウム、又はスズ、好ましくはケイ素又はゲルマニウム、特に好ましくはケイ素であり;
、R、及びRは、同一か又は異なり、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、トリメチルシリル基、C〜C10、好ましくはC〜Cアルキル基、C〜C10フルオロアルキル基、C〜C10フルオロアリール基、C〜C10アリール基、C〜C10、好ましくはC〜Cアルコキシ基、C〜C15アルキルアリールオキシ基、C〜C10、好ましくはC〜Cアルケニル基、C〜C40アリールアルキル基、C〜C40アリールアルケニル基、又はC〜C40アルキルアリール基であり、或いは、二つの隣接する基は、それらを結合する原子と一緒に、4〜15個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の環を形成する)
である。
【0040】
Zの好ましい態様は、橋架基:ジメチルシランジイル、メチルフェニルシランジイル、メチル−tert−ブチルシランジイル、ジフェニルシランジイル、ジメチルゲルマンジイル、特にジメチルシランジイルである。
【0041】
Mは、元素周期律表第3、4、5、又は6族或いはランタニド族の元素、好ましくは元素周期律表第4族の元素、例えばチタン、ジルコニウム、又はハフニウム、特に好ましくはジルコニウム又はハフニウム、特にジルコニウムである。
【0042】
基Xは、同一か又は異なり、好ましくは同一であり、それぞれ有機又は無機基であり、二つの基Xはまた、互いに結合していてもよい。特に、Xは、ハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、好ましくは塩素、水素、C〜C20、好ましくはC〜Cアルキル、C〜C20、好ましくはC〜Cアルケニル、C〜C22、好ましくはC〜C10アリール、アルキル基中に1〜10個、好ましくは1〜4個の炭素原子、及びアリール基中に6〜22個、好ましくは6〜10個の炭素原子を有するアルキルアリール又はアリールアルキル基、−OR又は−NR、好ましくは−OR又は−NHRであり、二つの基X、好ましくは二つの基−ORは、また、互いに結合して、特に置換又は非置換1,1’−ジ−2−フェノキシド基を形成してもよい。二つの基Xは、また、置換又は非置換のジエンリガンド、特に1,3−ジエンリガンドを形成してもよい。基R及びRは、C〜C10、好ましくはC〜Cアルキル、C〜C15、好ましくはC〜C10アリール、それぞれアルキル基中に1〜10個、好ましくは1〜4個の炭素原子、及びアリール基中に6〜22個、好ましくは6〜10個の炭素原子を有するアルキルアリール、アリールアルキル、フルオロアルキル、又はフルオロアリールであり、Rはまた水素であってもよい。Xが塩素又はメチル、特に塩素であることが極めて特に好ましい。
【0043】
指数nは、0、1、2、又は3であり、通常、n+2はMの酸化数に相当し、元素周期律表第4族の元素の場合においては、nは通常好ましくは2である。Mがクロムの場合には、nは好ましくは0又は1、特に0である。
【0044】
指数mは、0又は1、好ましくは1である。
本発明の製造方法においては、少なくとも部分的に、メタロセンの製造及び/又は橋架ビスシクロペンタジエニルリガンドの製造において得られる濾液、母液、反応残留物、及び/又は後処理残留物から回収され、その後、液−固クロマトグラフィーを用いて精製された、式(I)及び(I’)のシクロペンタジエニル誘導体及び/又はそれらの二重結合異性体、或いは式(II)の橋架ビスシクロペンタジエニル誘導体及び/又はそれらの二重結合異性体、特に式(I)及び(I’)のシクロペンタジエニル誘導体及び/又はそれらの二重結合異性体を用いる。メタロセン合成において回収、即ち再生利用される式(I)及び(I’)のシクロペンタジエニル誘導体及び/又はそれらの二重結合異性体、或いは式(II)の橋架ビスシクロペンタジエニル誘導体及び/又はそれらの二重結合異性体の割合は、好ましくは少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、特に好ましくは少なくとも25%である。
【0045】
式(I)及び(I’)のシクロペンタジエニル誘導体は、上記の記載にしたがう同一か又は異なる置換パターンを有していてよい。而して、本発明方法は、2つの同じシクロペンタジエニルリガンド又は2つの異なるシクロペンタジエニルリガンドを有するメタロセンの製造に関する。
【0046】
更に、本発明による置換基は、更に限定しない限りにおいて、以下のように定義される。
本明細書において用いる「1〜40個の炭素原子を有する有機基」という用語は、例えば、C〜C40アルキル基、C〜C10フルオロアルキル基、C〜C12アルコキシ基、飽和C〜C20複素環式基、C〜C40アリール基、C〜C40ヘテロ芳香族基、C〜C10フルオロアリール基、C〜C10アリールオキシ基、C〜C18トリアルキルシリル基、C〜C20アルケニル基、C〜C20アルキニル基、C〜C40アリールアルキル基、又はC〜C40アリールアルケニル基を指す。有機基は、それぞれの場合において有機化合物から誘導される。而して、有機化合物であるメタノールは、原則として、1つの炭素原子を有する3種類の異なる有機基、即ちメチル(HC−)、メトキシ(HC−O−)、及びヒドロキシメチル(HOC(H)−)を生成することができる。
【0047】
本明細書において用いる「アルキル」という用語は、環式であってもよい、線状又は単分岐若しくは多分岐の飽和炭化水素を包含する。メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、イソプロピル、イソブチル、イソペンチル、イソヘキシル、sec−ブチル、又はtert−ブチルのようなC〜C18アルキルが好ましい。
【0048】
本明細書において用いる「アルケニル」という用語は、集積していても交互であってもよい1以上のC−C二重結合を有する線状又は単分岐若しくは多分岐の炭化水素を包含する。
【0049】
本明細書において用いる「飽和複素環式基」という用語は、例えば、1以上の炭素原子、CH基、及び/又はCH基が、好ましくはO、S、N、及びPからなる群から選択されるヘテロ原子によって置き換えられている、単環又は多環で置換又は非置換の炭化水素基を指す。置換又は非置換の飽和複素環式基の好ましい例は、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、ピペリジル、ピペラジニル、モルホリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオフェニルなど、並びにそれらのメチル−、エチル−、プロピル−、イソプロピル−、及び/又はtert−ブチル−置換誘導体である。
【0050】
本明細書において用いる「アリール」という用語は、線状又は分岐鎖のC〜C18アルキル、C〜C18アルコキシ、C〜C10アルケニル、又はハロゲン、特にフッ素によって単置換又は多置換されていてもよい、芳香族、及び場合によっては縮合多環芳香族炭化水素基を指す。置換及び非置換アリール基の好ましい例は、特に、フェニル、ペンタフルオロフェニル、4−メチルフェニル、4−エチルフェニル、4−n−プロピルフェニル、4−イソプロピルフェニル、4−tert−ブチルフェニル、4−メトキシフェニル、1−ナフチル、9−アントリル、9−フェナントリル、3,5−ジメチルフェニル、3,5−ジ−tert−ブチルフェニル、又は4−トリフルオロメチルフェニルである。
【0051】
本明細書において用いる「ヘテロ芳香族基」という用語は、例えば、1以上の炭素原子が、窒素、リン、酸素、又はイオウ原子、或いはこれらの組み合わせによって置き換えられている芳香族炭化水素基を指す。これらは、アリール基と同様に、線状又は分岐鎖のC〜C18アルキル、C〜C10アルケニル、又はハロゲン、特にフッ素によって単置換又は多置換されていてもよい。好ましい例は、フリル、チエニル、ピロリル、ピリジル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリミジニル、ピラジニルなど、並びにそれらのメチル−、エチル−、プロピル−、イソプロピル−、及び/又はtert−ブチル−置換誘導体である。
【0052】
本明細書において用いる「アリールアルキル」という用語は、例えば、そのアリール基がアルキル鎖を介して分子の対応する残りの部分に結合しているアリール含有基を指す。好ましい例は、ベンジル、置換ベンジル、フェネチル、置換フェネチルなどである。
【0053】
フルオロアルキル及びフルオロアリールという用語は、対応する置換基の少なくとも1つの水素原子、好ましくは1つより多く最大で全ての水素原子がフッ素原子によって置き換えられていることを意味する。本発明にしたがう好ましいフッ素含有置換基の例は、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、ペンタフルオロフェニル、4−トリフルオロメチルフェニル、4−ペルフルオロ−tert−ブチルフェニルなどである。
【0054】
式(III)のメタロセンが橋架されており、即ちm=1であり、特に元素周期律表第4〜6族、特に4族のケイ素橋架メタロセンである式(III)のメタロセンを製造する方法が好ましい。
【0055】
式(I)及び(I’)の2種類の異なって置換されているシクロペンタジエニル誘導体及び/又はそれらの二重結合異性体、或いは異なって置換されているシクロペンタジエニル基を有する式(II)の橋架ビスシクロペンタジエニル誘導体及び/又はそれらの二重結合異性体を用いる、上記記載の式(III)のメタロセンの製造方法が特に好ましい。
【0056】
式(III)のメタロセンの合成は、基本的に公知であり、例えば、EP−0574597又はEP−0704454に記載されているものと同様の方法によって行うことができる。
【0057】
好適な遷移金属源、例えば四塩化ジルコニウムを、所望のリガンド、例えばそのリチウム塩の形態の2当量のシクロペンタジエニルリガンドと反応させることが通常である。ansa−メタロセン、即ち橋架ビスシクロペンタジエニルリガンドを有するメタロセンを合成するためには、まず所望のシクロペンタジエニル基を互いに結合させ、次に、通常は予め脱プロトン化を行った後に遷移金属源と反応させる。例えば、WO−2001/48034及びWO−2003/045964においては、式(I)及び(I’):
【0058】
【化12】

【0059】
(式中、指数は上記に定義した通りである)
の2つの異なるシクロペンタジエニル基を有する橋架ビスシクロペンタジエニルメタロセンの合成が記載されている。
【0060】
合成において式(I)及び(I’)の2つの異なって置換されているシクロペンタジエニル誘導体を用いて式(III)のメタロセンを合成する上記に記載のスキームを、以下の例によって示すが、これは本発明を限定するものではない。
【0061】
【化13】

【0062】
本発明方法では、通常、冒頭において言及したように、式(III)の所望の橋架rac−メタロセンのみならず、対応するメソ化合物も形成される。ここで、メソ及びラセミ(rac)という用語は、2つのシクロペンタジエニル環系の互いに対する三次元配置を指す。例えば、橋架上の2つの置換シクロペンタジエニル基が同一でない場合には、C対称を有するラセミ形態又はC対称を有するメソ形態は存在せず、C対称を有するジアステレオマー化合物のみが存在する。異なる置換基の三次元配置において互いに異なるこれらの異なるジアステレオマーメタロセン化合物を、プロピレンの重合において触媒成分として用いると、これらは、単に2つの置換シクロペンタジエニルリガンドの互いに対する三次元配置に基づいて、2つの同じように置換されたシクロペンタジエニルリガンドを有するansa−メタロセンのC対称ラセミ異性体(アイソタクチックポリプロピレン)又はC対称メソ異性体(アタクチックポリプロピレン)のような挙動を示し、したがってそれぞれ擬ラセミ形態又は擬メソ形態として示すことができる。
【0063】
【化14】

【0064】
以下においては、ラセミ及び擬ラセミ形態或いはメソ及び擬メソ形態を、ラセミ及びメソ形態としてのみ示す。
ジアステレオマーの分離、特にラセミ形態の単離及び精製は、基本的に公知である。
【0065】
橋架リガンド系の合成、メタロセン混合物の製造、及び最終的に所望のメタロセン異性体の精製においては、式(I)又は(I’)のシクロペンタジエニル誘導体又は式(II)の橋架ビスシクロペンタジエニル誘導体を含む濾液、母液、反応残留物、及び/又は後処理残留物が得られる。出発物質及び/又は中間体を含み、これまでは通常廃棄されていたこれらのフラクションを、互いに別々に、或いは混合した後、及び/又は橋架脱離反応のような更なる後処理工程の後に、式(I)、(I’)、及び/又は(II)の精製シクロペンタジエニル誘導体又はそれらの二重結合異性体を得て、これを次にメタロセンを製造するための本発明方法において再使用するために液−固クロマトグラフィーにかける。
【0066】
液−固クロマトグラフィー法は基本的に公知である。固定相としては、酸化アルミニウム、シリカゲル、ケイ酸マグネシウム、珪藻土、活性炭、セルロース、セルローストリアセテート、又は、逆相物質として知られている、有機基、特に炭化水素基で変性されたシリカゲルのような、有機及び無機の両方の微粉砕固体を用いることができる。クロマトグラフィー法において液体移動相として用いる溶媒又は溶媒混合物の選択は、基本的に当業者に公知であり、それぞれの分離法の課題に関して幾つかの定型的な薄層クロマトグラフィー分離試験を用いて決定することができる。
【0067】
通常は、分離カラム、即ちしばしばガラス又はステンレススチールを含み、両方の端面において通常カラム自体の内径よりも小さな直径を有する開口を有する円筒形の容器又は管中に、固定相を導入する。
【0068】
移動相は、重力の作用下か、或いは意図的に生成させた超大気圧を用いて固体相を通して流すことができる。
式(I)及び(I’)のシクロペンタジエニル誘導体及び/又はそれらの二重結合異性体、或いは式(II)の橋架ビスシクロペンタジエニル誘導体及び/又はそれらの二重結合異性体のクロマトグラフィー精製、特に式(I)及び(I’)のシクロペンタジエニル誘導体及び/又はそれらの二重結合異性体の精製における固定相として逆相物質を用いる、上記に記載の式(III)のメタロセンの製造方法が極めて特に好ましい。逆相物質は、商業的に入手することができ、例えばMerckからLiChroprep RP-18-末端キャップシリカゲルである。また、逆相シリカゲルについての基本的な情報が、J. Chem. Educ., 1996, 73, A26において与えられている。
【0069】
メタロセンの製造及び/又は橋架、特にケイ素橋架ビスシクロペンタジエニルリガンドの製造において得られる濾液、母液、反応残留物、及び/又は後処理残留物から、これらの濾液、母液、反応残留物、及び/又は後処理残留物を、一緒か又は互いに独立して、好ましくは一緒に、単一又は多重の酸性又は塩基性、特に塩基性水性処理にかけて、橋架ケイ素原子とシクロペンタジエニル環との間に存在する任意の結合を開裂し、その後上記に記載の液−固クロマトグラフィーにおいて更に精製することができるように、式(I)及び(I’)のシクロペンタジエニル誘導体及び/又はそれらの二重結合異性体を含む有機相を単離し、適当な場合には濃縮することによって、式(I)及び(I’)のシクロペンタジエニル誘導体及び/又はそれらの二重結合異性体を回収する、上記に記載の式(III)のメタロセン、特にケイ素橋架メタロセンの製造方法が特に好ましい。
【0070】
図1は、特に式(I)及び(I’)の2つの異なって置換されているシクロペンタジエニル誘導体から、式(III)の橋架、特にケイ素橋架されたメタロセンを製造する本発明方法の好ましい態様の一例を図式的に示す。
【0071】
式(I)及び(I’)のシクロペンタジエニル誘導体(ここで、2つのシクロペンタジエニル誘導体は同一か又は異なり、特に異なる)から、公知の方法によって、式(II)のケイ素橋架ビスシクロペンタジエニル誘導体が製造される。例えば、橋架反応において、2当量のシクロペンタジエニルアニオンを、適当なケイ素含有橋架剤、例えばジメチルジクロロシランのようなジオルガノジクロロシランと反応させる。別法としては、まず、式(I)のシクロペンタジエニル誘導体のアニオンを、適当なケイ素含有橋架剤、例えばジメチルジクロロシランのようなジオルガノジクロロシランと反応させて、橋架基を含むモノシクロペンタジエニル誘導体、例えばモノクロロモノシクロペンタジエニルジオルガノシラン化合物を形成し、次に、この化合物中の橋架基の第2の離脱基、例えば塩素を、式(I’)のシクロペンタジエニル誘導体の脱プロトン化によって生成し、第1のシクロペンタジエニル基とは異なっていてもよい更なるシクロペンタジエニル基によって置き換えて、式(II)の所望の非荷電橋架シクロペンタジエニル化合物を与える。式(II)のビスシクロペンタジエニル誘導体の単離及び精製において、通常、濾液0が得られる。
【0072】
次の工程においては、通常、式(II)のビスシクロペンタジエニル誘導体を、強塩基を用いて二重に脱プロトン化し、次に、直接か又は予め単離を行った後に、四塩化ジルコニウムのような好適な遷移金属化合物、或いはWO−1999/15538、WO−2000/31091、又はWO−2005/108408に記載されている変性されたラセミ選択性遷移金属源の1つと反応させて、式(III)のメタロセンを与える。
【0073】
式(I)及び(I’)のシクロペンタジエニル誘導体、或いは式(II)のビスシクロペンタジエニル誘導体の脱プロトン化のために用いることのできる強塩基は、例えば、有機金属化合物又は金属水素化物、好ましくはアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む化合物である。好ましい塩基は、メチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、n−ブチル−n−オクチルマグネシウム、又はジブチルマグネシウム、特にn−ブチルリチウム又はメチルリチウムのような有機リチウム又は有機マグネシウム化合物である。
【0074】
式(I)及び(I’)のシクロペンタジエニル誘導体、或いは式(II)のビスシクロペンタジエニル誘導体の脱プロトン化は、通常、−78℃〜110℃、好ましくは0℃〜80℃、特に好ましくは20℃〜70℃の温度範囲で行う。その中で強塩基を用いてシクロペンタジエニル誘導体の脱プロトン化を行うことができる好適な不活性溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、クメン、デカリン、テトラリン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタンのような脂肪族又は芳香族炭化水素、或いはジエチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル(MTBE)、テトラヒドロフラン(THF)、1,2−ジメトキシエタン(DME)、アニソール、トリグライム、ジオキサンのようなエーテル、並びにこれらの任意の混合物である。その中で式(III)のメタロセンコンプレックスの製造を同様に直接行うことができる溶媒又は溶媒混合物が好ましい。
【0075】
ビスシクロペンタジエニルビスアニオンと、2つの離脱基を有する遷移金属化合物、例えば四塩化ジルコニウムとの反応の後に、その中に式(III)のメタロセンが固体として存在している懸濁液を、例えばEP−0576970又はEP−0574597に記載されているように、直接得ることができる。次に、濾過によって生成物を含有する固体を単離し、更なる濾液1(これは濾液0と混合することができる)が得られる。
【0076】
塩化リチウム又は塩化マグネシウムのような塩を除去し、望ましくないメタロセン異性体、特にメソ形態を除去することによる式(III)のメタロセンの更なる精製において、濾液2として示される更なる残留物が得られる。精製は、好ましくは、EP−0780396に記載されている方法によって行う。別法として、有機溶媒、例えば塩化メチレンによる抽出によって塩からメタロセンを分離し、結晶化によって更なる望ましくない副生成物を除去して、精製された形態で得ることができる。いずれの場合においても、式(III)の単離メタロセンに加えて濾液が得られる。
【0077】
濾液0、1、及び2は、好ましくは混合し、酸水溶液又は塩基水溶液、特に塩基水溶液によって処理して、ケイ素−シクロペンタジエニル炭素結合を開裂する。開裂反応は、好ましくは、0℃〜200℃、特に好ましくは20℃〜150℃、特に50℃〜110℃の温度で行う。反応は、大気圧下、或いは超大気圧下で行うことができる。
【0078】
好適な塩基は、特に、アルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物である。水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム、特に水酸化ナトリウムを用いることが好ましい。テトラアルキルアンモニウム塩、又は18−クラウン−6のようなクラウンエーテルなどの相転移触媒を加えると、開裂反応を促進するのに役立つ。
【0079】
橋架リガンド、特にケイ素橋架リガンドと水酸化物とのモル比は、通常、1:0.1〜1:100、好ましくは1:1〜1:20、特に1:2〜1:10である。
反応混合物中に種々の有機溶媒が存在することは、これらの溶媒が反応条件下において反応物質及び所望の生成物、例えば式(I)及び(I’)のシクロペンタジエニル誘導体に対して不活性である限りにおいて問題ない。
【0080】
開裂反応を行った後、反応混合物を中和するか又は僅かに酸性にし、水性相を分離して廃棄し、式(I)及び(I’)のシクロペンタジエニル誘導体を含む有機相を、適当な場合には例えば硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、次に、その後のクロマトグラフィー精製のために必要な程度まで濃縮する。クロマトグラフィーは、上記に記載したように、固−液クロマトグラフィーである。
【0081】
精製され回収された式(I)及び(I’)のシクロペンタジエニル誘導体は、最終的には、適当な必要量の新たに製造された式(I)及び(I’)のシクロペンタジエニル誘導体と一緒に、式(III)のメタロセンの新たな製造において再使用する。
【0082】
本発明は、更に、上記に記載の式(I)のシクロペンタジエニル誘導体及び/又はそれらの二重結合異性体を、かかるシクロペンタジエニル誘導体を用いるケイ素橋架メタロセンの製造及び/又はケイ素橋架ビスシクロペンタジエニルリガンドの製造において得られる濾液、母液、反応残留物、及び/又は後処理残留物から、これらの濾液、母液、反応残留物、及び/又は後処理残留物を、一緒か又は互いに独立して、好ましくは一緒に、単一又は多重の酸性又は塩基性、特に塩基性の水性処理にかけて、そこで橋架ケイ素原子とシクロペンタジエニル環との間の結合を開裂し、次に液−固クロマトグラフィーにおいて更に精製することができるようにするために、式(I)及び(I’)のシクロペンタジエニル誘導体及び/又はそれらの二重結合異性体を含む有機相を単離し、適当な場合には濃縮することによって回収する方法を提供する。
【0083】
本発明は、更に、メタロセンの製造及び/又は橋架ビスシクロペンタジエニルリガンドの製造において得られる濾液、母液、反応残留物、及び/又は後処理残留物から置換シクロペンタジエニル誘導体が回収される、液−固クロマトグラフィーを用いて精製された、再生利用された上記記載の式(I)及び(I’)の置換シクロペンタジエニル誘導体及び/又はそれらの二重結合異性体、或いは式(II)の橋架ビスシクロペンタジエニル誘導体及び/又はそれらの二重結合異性体の、メタロセン、特に式(III)のメタロセンの合成における使用を提供する。
【0084】
更に、本発明は、精製される置換シクロペンタジエニル誘導体が、メタロセンの製造及び/又は橋架ビスシクロペンタジエニルリガンドの製造において得られる濾液、母液、反応残留物、及び/又は後処理残留物から回収される、メタロセン、特に式(III)のメタロセンを製造するための、上記に記載の式(I)及び(I’)の置換シクロペンタジエニル誘導体及び/又はそれらの二重結合異性体、或いは式(II)の橋架ビスシクロペンタジエニル誘導体及び/又はそれらの二重結合異性体を精製するための、液−固クロマトグラフィー、特に固定相として逆相物質を用いる液−固クロマトグラフィーの使用を提供する。
【0085】
本発明方法によって製造される式(III)のメタロセンは、オレフィン重合用の触媒系の成分として、好適な共触媒、及び適当な場合には好適な担体材料と一緒に用いることができる。
【0086】
本発明を以下の実施例によって説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0087】
一般事項:
有機金属化合物の合成及び取り扱いは、空気及び湿分を排除し、アルゴン下で行った(グローブボックス及びSchlenk法)。
【0088】
2−イソプロピル−4−(4’−tert−ブチルフェニル)−1−インデン、及び2−メチル−4−(4’−tert−ブチルフェニル)−1−インデンは、WO−9840331及びWO−0148034に記載のものと同様の方法によって調製した。
【0089】
実施例1:
ジメチルシランジイル(2−メチル−4−(4’−tert−ブチルフェニル)−1−インデン)(2−イソプロピル−4−(4’−tert−ブチルフェニル)−1−インデン(1)の合成:
(a)2−イソプロピル−4−(4’−tert−ブチルフェニル)−1−インデニルジメチルクロロシラン(1a)の調製:
50mLのトルエン及び2.57mL(40ミリモル)のテトラヒドロフラン(THF)中に溶解した5.84g(20.1ミリモル)の2−イソプロピル−4−(4’−tert−ブチルフェニル)−1−インデンを、8.65mL(23.1ミリモル)のn−ブチルリチウム(トルエン中2.68M)と反応させることによって得られた2−イソプロピル−4−(4’−tert−ブチルフェニル)インデニルリチウムの溶液に、−40℃において、7.4mL(61ミリモル)のジメチルジクロロシラン(DMDCS)を加えた。反応混合物を室温で一晩撹拌した。次に、減圧下で過剰のDMDCS及びTHFを留去し、ガラスフィルターフリットを用いて塩化リチウムを濾去した。これにより、20gのトルエン中の7.7g(20.1ミリモル)の(1a)が得られた。
【0090】
(b)2−ジメチルシランジイル(2−メチル−4−(4’−tert−ブチルフェニル)−1−インデン)(2−イソプロピル−4−(4’−tert−ブチルフェニル)−1−インデン)(1)の製造:
45gのトルエン及び3mL(37ミリモル)のTHF中に溶解した4.85g(18.5ミリモル)の2−メチル−4−(4’−tert−ブチルフェニル)−1−インデンを、6.93mL(18.5ミリモル)のn−ブチルリチウム(トルエン中2.68M)を用いて45℃において脱プロトン化した。反応混合物を45℃において1時間撹拌し、次に、実施例(1a)において調製した20gのトルエン中の7.7g(20.1ミリモル)の(1a)の溶液を加えた。反応混合物を60℃において3時間撹拌し、100gの水を加えることによって急冷した。通常の後処理の後、有機相を減圧下で蒸発させ、得られた油状物(12g、リガンド(1)、用いた2種類のインデン、及び若干の不純物の混合物)を、激しく撹拌しながら30gのメタノールを加えた後に結晶化した。濾過し、フィルターケーキを少量のメタノールで洗浄し、乾燥することによって、7.2gの(1)が得られた(収率:65%)。濾液を部分的に蒸発させ、0℃に冷却した。濾過した後、リガンド(1)の第2の結晶フラクション(0.9g)を単離した(合計収率:72%)。
【0091】
図1のスキームにおいて示すように、粗メタロセン生成物の製造において得られた濾液1を「中和」するためにメタノール含有濾液(15gの濾液0)を用いた。
濾液0のHPLC分析によって、以下の組成が示された。
【0092】
2−メチル−4−(4’−tert−ブチルフェニル)−1−インデン=5.6重量%→0.84g(3.2ミリモル);
2−イソプロピル−4−(4’−tert−ブチルフェニル)−1−インデン=9.7重量%→1.45g(5ミリモル);
リガンド(1)=5重量%→0.75g(1.23ミリモル)。
【0093】
実施例2:
rac−ジメチルシランジイル(2−メチル−4−(4’−tert−ブチルフェニル)−インデニル)(2−イソプロピル−4−(4’−tert−ブチルフェニル)−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド(2)の合成:
(a)ラセミ/メソコンプレックス(2a)の混合物の調製:
8.32g(26ミリモル)のn−ブチルリチウム(トルエン中20重量%)を、室温において、保護ガス(窒素雰囲気)下で、100gのトルエン及び4.5gのTHF中の8.0g(13.1ミリモル)のリガンド(1)の溶液に加えた。反応混合物を80℃において2時間撹拌し、次に25℃に冷却した。この脱プロトン化されたリガンド(1)の溶液に、6gのトルエン中の3.33g(14.3ミリモル)の四塩化ジルコニウムの懸濁液を加えた。これによって、温度が45℃に上昇した。反応混合物を45℃において2時間撹拌し、形成された懸濁液を室温に冷却した後、反転可能なガラスフリットフィルターを通して懸濁液を濾過した。塩化リチウム及びメタロセンの混合物であるフィルターケーキを、合計で10gのトルエンで2回洗浄した。
【0094】
減圧下、約48℃において、濾液を約25mLの容積に蒸発させた。メタロセンの第2のフラクションが溶液から晶出した。第2のフラクションを濾過し、4gのトルエンで洗浄した後、メタロセンの2つの単離フラクションを混合し、減圧下で乾燥した。メタロセン含有粗生成物(2a)の合計収量は8.1gであった。
【0095】
実施例1からのメタノール含有濾液0を、実施例2aからの濾液(濾液1)と混合して、濾液1中に存在する全ての残留ブチルリチウムを分解した。
(b)rac−ジメチルシランジイル(2−メチル−4−(4’−tert−ブチルフェニル)−1−インデニル)(2−イソプロピル−4−(4’−tert−ブチルフェニル)−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド(2)を与えるための(2a)の精製:
64.31gのアセトン、17.66gの水、0.49gのTHF、及び8.75gのトルエンを含む溶媒混合物中に、15℃において8.1gの粗生成物(2a)を懸濁し、5分後、H−NMRを用いてこの時点でのラセミ/メソ比を測定した。次に懸濁液を20℃に加熱し、H−NMR分光法を用いてラセミ/メソ比における変化を観察した。20℃において2.5時間後、ラセミ/メソ比は20よりも大きかった。反転可能なガラスフリットフィルターを通して懸濁液を濾過した。フィルターケーキを、合計で15gのトルエンで4回洗浄し、窒素流中で乾燥した。
【0096】
単離されたメタロセンを25℃において25gのトルエン中に懸濁し、2時間撹拌した後、濾過し、減圧下で乾燥することによって再び単離した。純粋なメタロセン(2)の収量は2.3g(22.8%)であった。
【0097】
実施例(2b)において得られた全ての濾液を混合して、濾液2を形成した(図1参照)。190gの濾液2が得られた。
実施例3:混合濾液の後処理:
実施例1、2a、2bからの混合濾液(濾液0、濾液1、及び濾液2)に、2.62g(65.5ミリモル)の水酸化ナトリウム粉末を加えた。反応混合物を3時間還流した。次に、50.4gの20%硫酸水溶液(102.8ミリモル)を用いて反応混合物を酸性化した。相分離させた後、有機相を40gの水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、次に濃縮した。これにより、9.2gの粘稠な油状物が得られた。
【0098】
HPLC分析:2−メチル−4−(4’−tert−ブチルフェニル)−1−インデン:40.2%→3.7g(14.1ミリモル);
2−イソプロピル−4−(4’−tert−ブチルフェニル)−1−インデン:49.5%→4.55g(15.7ミリモル)。
【0099】
この粘稠な油状物を、分取HPLC(逆相クロマトグラフィーカラム;120gのC18−末端キャップSiO;アセトニトリル/水(80/20);勾配なし(アイソクラチック)の溶出条件;UV検出器(235nm))を用いて分別した。
【0100】
3つのフラクションを回収した。
(1)純粋な2−メチル−4−(4’−tert−ブチルフェニル)−1−インデン;
(2)インデンの混合物;
(3)純粋な2−イソプロピル−4−(4’−tert−ブチルフェニル)−1−インデン。
【0101】
溶媒を除去することによって、2.73gの純粋な2−メチル−4−(4’−tert−ブチルフェニル)−1−インデン(74%)、2.5gの純粋な2−イソプロピル−4−(4’−tert−ブチルフェニル)−1−インデン(55%)、並びに、約30%の2−メチル−4−(4’−tert−ブチルフェニル)−1−インデン及び約70%の2−イソプロピル−4−(4’−tert−ブチルフェニル)−1−インデンを含む混合フラクション3.5gが得られた。回収された純粋なインデンを、実施例1と同じように橋架リガンド(1)の新たな製造のために用いた。
【0102】
実施例4:
実施例3において回収されたインデンを用いたジメチルシランジイル(2−メチル−4−(4’−tert−ブチルフェニル)−1−インデン)(2−イソプロピル−4−(4’−tert−ブチルフェニル)−1−インデン(1)の合成:
実施例1と同様の方法を用いて、5.85gの2−イソプロピル−4−(4’−tert−ブチルフェニル)−1−インデン(実施例3からの回収インデン2.4g及び新たな合成からのインデン3.45g)、並びに4.85gの2−メチル−4−(4’−tert−ブチルフェニル)−1−インデン(実施例3からの回収インデン2.25g及び新たな合成からのインデン2.6g)からリガンド(1)を調製した。後処理及び結晶化によって、8.2gのリガンド(1)が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明方法の好ましい態様の例を図式的に示す

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)及び(I’):
【化1】

の置換シクロペンタジエニル誘導体及び/又はそれらの二重結合異性体、或いは式(II):
【化2】

の橋架ビスシクロペンタジエニル誘導体及び/又はそれらの二重結合異性体;
(上式中、
、R1’は、同一か又は異なり、それぞれ、1〜40個の炭素原子を有する有機基であり;
、R2’は、同一か又は異なり、それぞれ、水素、又は1〜40個の炭素原子を有する有機基であり;
或いは、RとR及び/又はR1’とR2’は、それぞれの場合においてそれらを結合する原子と一緒に、3〜40個の炭素原子を有し、5〜12原子の環の寸法を有し、また元素Si、Ge、N、P、As、Sb、O、S、Se、又はTeからなる群から選択されるヘテロ原子を含んでいてもよい、単環又は多環で、飽和又は不飽和で、置換又は非置換の環系を形成し;
T、T’は、同一か又は異なり、それぞれ、1〜40個の炭素原子を有し、それぞれの場合においてシクロペンタジエニル環と一緒に5〜12原子の環の寸法を有する少なくとも1つの更なる飽和又は不飽和で置換又は非置換の環系を形成する二価の有機基であり、ここでシクロペンタジエニル環に縮合している環系内のT及びT’は、ヘテロ原子Si、Ge、N、P、As、Sb、O、S、Se、又はTeを含んでいてもよく;
Zは、二価の原子又は二価の基から構成される2つの置換シクロペンタジエニルリガンドの間の橋架基である)
を再生利用する方法であって、
(1)メタロセンの製造及び/又は橋架ビスシクロペンタジエニルリガンドの製造において得られる濾液、母液、反応残留物、及び/又は後処理残留物から、式(I)及び(I’)のシクロペンタジエニル誘導体及び/又はそれらの二重結合異性体、或いは式(II)の橋架ビスシクロペンタジエニル誘導体及び/又はそれらの二重結合異性体を回収し;そして
(2)続いて、工程(1)で得られた生成物を液−固クロマトグラフィーにかける;
工程を含む上記方法。
【請求項2】
工程(1)において、濾液、母液、反応残留物、及び/又は後処理残留物を、一緒か又は互いに独立して単一又は多重の酸性又は塩基性水性処理にかけて、そこで橋架ケイ素原子とシクロペンタジエニル環との間の結合を開裂し、続いて、式(I)及び(I’)のシクロペンタジエニル誘導体及び/又はそれらの二重結合異性体を含む有機相を単離し、適当な場合には濃縮する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1に記載の、式(I)及び(I’)の2種類の異なって置換されているシクロペンタジエニル誘導体及び/又はそれらの二重結合異性体の混合物、或いは異なって置換されているシクロペンタジエニル基を有する式(II)の橋架ビスシクロペンタジエニル誘導体及び/又はそれらの二重結合異性体を含む濾液、母液、反応残留物、及び/又は後処理残留物を工程(1)において用いる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
式(I)及び(I’)のシクロペンタジエニル誘導体及び/又はそれらの二重結合異性体、或いは式(II)の橋架ビスシクロペンタジエニル誘導体及び/又はそれらの二重結合異性体のクロマトグラフィー精製における固定相として逆相物質を用いる、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
濾液、母液、反応残留物、及び/又は後処理残留物を、一緒か又は互いに独立して単一又は多重の酸性又は塩基性水性処理にかけて、そこで橋架ケイ素原子とシクロペンタジエニル環との間に存在する任意の結合を開裂し、続いて、液−固クロマトグラフィーで更に精製することができるように、式(I)及び(I’)のシクロペンタジエニル誘導体及び/又はそれらの二重結合異性体を含む有機相を単離し、適当な場合には濃縮することによって、メタロセンの製造及び/又は橋架ビスシクロペンタジエニルリガンドの製造において得られる濾液、母液、反応残留物、及び/又は後処理残留物から、式(I)及び(I’)のシクロペンタジエニル誘導体及び/又はそれらの二重結合異性体を回収する、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
精製する置換シクロペンタジエニル誘導体が、メタロセンの製造及び/又は橋架ビスシクロペンタジエニルリガンドの製造において得られる濾液、母液、反応残留物、及び/又は後処理残留物から回収される、メタロセンを製造するために請求項1に記載の式(I)及び(I’)の置換シクロペンタジエニル誘導体及び/又はそれらの二重結合異性体、或いは式(II)の橋架ビスシクロペンタジエニル誘導体及び/又はそれらの二重結合異性体を精製するための液−固クロマトグラフィーの使用。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の再生利用方法を含む、式(III):
【化3】

(式中、
Mは、元素周期律表第3、4、5、又は6族、或いはランタニド族の元素であり;
基Xは、同一か又は異なり、それぞれ有機又は無機基であり、2つの基Xは、また、互いに結合していてもよく;
nは、0、1、2、又は3であり;
mは、0又は1である)
のメタロセンの製造方法。
【請求項8】
メタロセンが、元素周期律表第4〜6族の、橋架、特にケイ素橋架メタロセンである、請求項7に記載の方法。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2009−519987(P2009−519987A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546230(P2008−546230)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【国際出願番号】PCT/EP2006/012234
【国際公開番号】WO2007/071370
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(500289758)バーゼル・ポリオレフィン・ゲーエムベーハー (118)
【Fターム(参考)】