説明

シミラセマートAを単離するための方法

(a)サラシナショウマ属(Cimicifuga)種の十分な量の未処理の材料を提供する段階;(b)該サラシナショウマ属種の未処理の該材料を約20℃〜約28℃の温度で水性極性溶媒と混合して、シミラセマートAを含む溶媒抽出物を得る段階;および(c)該溶媒抽出物からシミラセマートAを単離する段階を含む、該サラシナショウマ属種からシミラセマートAを単離するための方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
サラシナショウマ属(Cimicifuga)の様々な種は、中国、韓国、および日本の医学において炎症状態の治療剤として用いられている。同様に、植物学的にアメリカショウマ(Cimicifuga racemosa L. Nutt(別名、アクタエア・ラセモーサ(Actaea racemosa))としても知られるブラックコホシュを含有する組成物は、アメリカおよびヨーロッパにおいてハーブの栄養補助食品として広く用いられている。歴史的に、ネイティブアメリカンの女性は、倦怠感、マラリア、リウマチ、異常な腎機能、喉の痛み、月経不順、および出産に関連する疾患の処置のためにブラックコホシュを用いた(Blementhal et al., 2000)。アジア諸国において、このハーブ、ならびにフブキショウマ(Cimicifuga dahurica (Turcz.) Maxim.)、ショウマ(Cimicifuga foetida L.)、およびオオミツバショウマ(Cimicifuga heracleifolia Kom.)が含まれるサラシナショウマ属の他の種は、炎症、発熱、頭痛、疼痛、喉の痛み、および悪寒を処置するために用いられる(Foster, 1999; Kusano, 2001; Kim et al., 2004)。しかし、これらのハーブの基礎となる作用機序はまだ完全には解明されていない。
【0002】
ブラックコホシュの生物活性は既に研究されている。インビボにおいて、ブラックコホシュは、Sprague-Dawleyラットにおいて、抗IgE誘導受動皮膚アナフィラキシー反応を用量依存的に阻害することを証明した(Kim et al., 2004)。インビトロにおいて、ハーブ抽出物は、HMC-1ヒト白血病肥満細胞においてPMAおよびA2387などの炎症物質によるIL-4、IL-5およびTNF-αが含まれるサイトカインの転写を阻害する(Kim et al., 2004)。他の研究もまた、ヒスタミン、ブラジキニン、およびCOX-2媒介炎症作用に及ぼすブラックコホシュ抽出物の阻害効果を証明した(Kim and Kim, 2000)。しかし、抽出物中に存在する活性成分は不明である。
【0003】
シミラセマートAは、イソフェルラ酸と3-(30,40-ジヒドロキシフェニル)-2-ケト-プロパノールとで形成されるエステルである(Chen et al.. 2005)。シミラセマートAは、1,7-ジアリール骨格を保有する天然に存在する化合物である。この1,7-ジアリール骨格を有する他の化合物は、有意な生物活性を有する(Roughley and Whiting, 1973)。例として、ウコン(Curcuma longa)から単離された天然の色素であるクルクミンは、いくつかのタイプの悪性細胞の生育(Chen et al., 1999; Aggarwal et al., 2004)および特にHIV感染症の場合において(Vlietinck et al., 1998)生育を阻害することが報告されている。ヤクチ(Alpina oxyphylla)の種子から抽出されたヤクチノンB(Itokawa et al., 1982)は、高コレステロール血症およびアテローム性動脈硬化症に対して活性である(Ohishi et al., 2001)。
【0004】
シミラセマートAは、ヒトマクロファージにおいてLPS誘導TNF-αを抑制して、LPS誘導MAPキナーゼ活性を阻害するのみならず、特異的転写因子の活性化を阻害することが見いだされている。さらに、シミラセマートAは、活性酸素種スカベンジャーが含まれる追加の健康上の恩典を有しうる(Burdette et al., 2002)。併せて考慮すると、1,7-ジアリール骨格を有するシミラセマートAなどの化合物は、多数の細胞依存的機序によって作用することができる多数の生物活性を有しうる。
【0005】
アメリカショウマ(C. racemosa)の消費は、アメリカおよびヨーロッパにおいて劇的に増加しつつある。その製造物は、広範囲の製剤および用量で消費者にとって現在使用可能なイソプロパノール抽出物およびエタノール抽出物の形で調製される。このハーブの使用は、個々の生物活性成分よりむしろ抽出物に基づいている。トリテルペングリコシドおよびフェノール化合物が含まれるいくつかの化合物が、アメリカショウマから単離されているが、それらの生物活性および抽出物中一貫したそれらの存在は、依然として決定されなければならない(Kennelly et al., 2002)。
【0006】
別の単離されたアメリカショウマ成分は、23-エピ-26-デオキシアクテインである。23-エピ-26-デオキシアクテイン成分は現在、市販のアメリカショウマ製造物を標準化するための化学マーカーとして用いられている。その使用の根拠は、抽出物にそれが多量に存在するためである(Pepping, 1999)。このように、アメリカショウマ抽出物を標準化するために用いられる化学マーカーは、このハーブの生物活性を必ずしも代表していない。
【0007】
サラシナショウマ属の異なる多くの種は、伝統的に炎症を治癒するために用いられている。しかし図10に示される通り、それらの化学構成成分は同じ分析条件下でも相対的に異なっている。サラシナショウマ属種を区別するために、フィンガープリンティングアプローチを用いる異なる方法が開発されているが(He et al., 2006; Li et al, 2002)、ハーブの化学構成成分の複雑さおよび変動のために、種の同定にそれらの方法を使用することは制限される。
【0008】
そのため、治療物質として後に使用するためにシミラセマートAを抽出および単離することが特に必要である。加えて、サラシナショウマ属のメンバー、たとえば、アメリカショウマ、フブキショウマ、ショウマ、およびオオミツバショウマを同定するために用いることができる生物活性マーカーが必要である。理想的には、生物活性マーカーを用いて、炎症関連疾患の処置用の抗炎症物質として用いるためのサラシナショウマ属種の抽出物を標準化し、かつ各試料の化学的プロファイルに基づいて種を区別することもできると考えられる。
【発明の概要】
【0009】
簡単な概要
本発明は、サラシナショウマ属からシミラセマートAを単離および抽出するための材料および方法を提供する。本発明に従って、単離されたシミラセマートAを治療組成物としておよび/または栄養補助食品として用いることができる。加えて、単離されたシミラセマートAを、サラシナショウマ属の様々な種に関する生物活性化学マーカーおよび標準物質として用いることができる。
【0010】
好ましい態様において、本発明は、
(a)サラシナショウマ属種の十分な量の材料を提供する段階;
(b)未処理の材料を粉砕する段階;
(c)粉砕した該材料を水性溶媒と混合する段階;および
(d)シミラセマートAを単離する段階
を含む、シミラセマートAを精製する方法を提供する。
【0011】
都合のよいことに、本発明は、サラシナショウマ属種から単離されたシミラセマートAのより高くかつより一定した収率を提供する。本発明の新規の単離手法はまた、より迅速かつ簡便である。
【0012】
本発明は、たとえば倦怠感、マラリア、リウマチ、異常な腎機能、喉の痛み、月経不順、出産に関連する疾患、発熱、頭痛、および悪寒のみならず、これらの状態に関連する症状および/または症候群を処置するために単離されたシミラセマートAを提供する。
【0013】
加えて、本発明は、抗炎症剤として用いることができる単離されたシミラセマートAを提供する。
【0014】
さらなる態様において、本発明は、サラシナショウマ属の様々な種を区別することを可能にする。本発明に従って、様々なサラシナショウマ属種の抽出物は、シミラセマートAの生物活性に関する個々の化学プロファイルをもたらす。
【0015】
1つの局面において、シミラセマートAは、市販のアメリカショウマ製造物を標準化するための化学マーカーとして本発明に従って用いることができる。アメリカショウマ製造物を標準化するための化学マーカーとしてシミラセマートAを用いることは、たとえば抗炎症剤としてシミラセマートAの生物活性に基づくことができる。
【0016】
都合のよいことに、本発明の改善された抽出手法を用いて、サラシナショウマ属の異なる種を区別することが可能であり、および代替治療または栄養補助食品としてこれらのハーブまたは関連製造物の可能性がある生物活性を使用するための化学マーカーとしてシミラセマートAを用いて抽出物を標準化することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】シミラセマートAの化学構造である。
【図2】(1)100:0、(2)80:20、(3)60:40、(4)40:60、(5)20:80、および(6)0:100の比率でミリQ-エタノールによって抽出したアメリカショウマの根のクロマトグラムを示す。*は、異なる溶出条件でアメリカショウマの試料中にシミラセマートAが存在することを示す。クロマトグラムは、逆相高速液体クロマトグラフィー(Lichrospher 100 RP C18 EC 5 μ、250×4.6 mm ID)に試料を注入することによって、流速1 ml分-1で15%CH3CNから100%CH3CNの勾配溶出を用いて得られ、検出波長は210 nmであった。
【図3】(1)室温、(2)50℃、および(3)100℃でミリQによってアメリカショウマの根を抽出することによって得られた抽出物のクロマトグラムを示す。*は、異なる抽出条件でアメリカショウマの試料中にシミラセマートAが存在することを示す。クロマトグラムは、逆相高速液体クロマトグラフィー(Lichrospher 100 RP C18 EC 5 μ、250×4.6 mm ID)に試料を注入することによって、流速1 ml分-1で15%CH3CNから100%CH3CNの勾配溶出を用いて得られ、検出波長は210 nmであった。
【図4】(1)0分間、(2)5分間、(3)10分間、(4)20分間、および(5)30分間の超音波処理によってミリQによって抽出したアメリカショウマの根のクロマトグラムを示す。*は、異なる抽出条件下でアメリカショウマの試料中にシミラセマートAが存在することを示す。クロマトグラムは、逆相高速液体クロマトグラフィー(Lichrospher 100 RP C18 EC 5 μ、250×4.6 mm ID)に試料を注入することによって、流速1 ml分-1で15%CH3CNから100%CH3CNの勾配溶出を用いて得られ、検出波長は210 nmであった。
【図5】(1)1:5(w/v)、(2)1:10(w/v)、(3)1:15(w/v)、および(4)1:20(w/v)の比率でミリQによって抽出したアメリカショウマの根のクロマトグラムを示す。*は、異なる抽出条件下でアメリカショウマの試料中にシミラセマートAが存在することを示す。クロマトグラムは、逆相高速液体クロマトグラフィー(Lichrospher 100 RP C18 EC 5 μ、250×4.6 mm ID)に試料を注入することによって、流速1 ml分-1で15%CH3CNから100%CH3CNの勾配溶出を用いて得られ、検出波長は210 nmであった。
【図6】シミラセマートAの抽出収率に及ぼす抽出溶媒の効果を示す(n=3)。実験条件:ハーブ(2.0 g)を室温で30分間超音波処理することによって抽出して、抽出を3回繰り返した。棒グラフの上の異なる文字は、Tukey検定(p<0.05、一元配置ANOVA)に従う有意差を示す。
【図7】シミラセマートAの抽出収率に及ぼす温度の効果を示す(n=3)。実験条件:ハーブの量2.0 g;抽出時間30分;抽出溶媒ミリQ水(10 ml)。抽出を3回繰り返した。棒グラフの上の異なる文字は、Tukey検定(p<0.05、一元配置ANOVA)に従う有意差を示す。
【図8】シミラセマートAの抽出収率に及ぼす抽出時間の効果を示す(n=3)。実験条件:ハーブ(2.0 g)を室温でミリQ水によって抽出した。棒グラフの上の異なる文字は、Tukey検定(p<0.05、一元配置ANOVA)に従う有意差を示す。
【図9】シミラセマートAの抽出収率に及ぼす溶媒体積の効果を示す(n=3)。実験条件:ハーブ(2.0 g)を室温でミリQ水によって30分間抽出した。抽出を3回繰り返した。棒グラフの上の異なる文字は、Tukey検定(p<0.05、一元配置ANOVA)に従う有意差を示す。
【図10A】フブキショウマ(C. dahurica)のクロマトグラフィーフィンガープリントを示す。*は、試料中にシミラセマートAが存在することを示す。クロマトグラムは、逆相高速液体クロマトグラフィー(Lichrospher 100 RP C18 EC 5 μ、250×4.6 mm ID)に試料を注入することによって、流速1 ml分-1で15%CH3CNから100%CH3CNの勾配溶出を用いて得られ、検出波長は210 nmであった。
【図10B】ショウマ(C. foetida)のクロマトグラフィーフィンガープリントを示す。*は、試料中にシミラセマートAが存在することを示す。クロマトグラムは、逆相高速液体クロマトグラフィー(Lichrospher 100 RP C18 EC 5 μ、250×4.6 mm ID)に試料を注入することによって、流速1 ml分-1で15%CH3CNから100%CH3CNの勾配溶出を用いて得られ、検出波長は210 nmであった。
【図10C】オオミツバショウマ(C. heracleifolia)のクロマトグラフィーフィンガープリントを示す。*は、試料中にシミラセマートAが存在することを示す。クロマトグラムは、逆相高速液体クロマトグラフィー(Lichrospher 100 RP C18 EC 5 μ、250×4.6 mm ID)に試料を注入することによって、流速1 ml分-1で15%CH3CNから100%CH3CNの勾配溶出を用いて得られ、検出波長は210 nmであった。
【発明を実施するための形態】
【0018】
詳細な説明
本発明は、サラシナショウマ属の様々な種からシミラセマートAを単離および抽出するための材料および方法を提供する。本発明に従って、単離されたシミラセマートAを、治療組成物として、または栄養補助食品として用いることができる。加えて、単離されたシミラセマートAは、生物活性化学マーカーおよびサラシナショウマ属の様々な種に関する標準物質として用いることができる。
【0019】
好ましい態様において、本発明は、
(a)サラシナショウマ属種の十分な量の未処理の材料を提供する段階;
(b)未処理の該材料を粉砕して粉末にする段階;
(c)該粉末を水性溶媒と混合する段階;および
(d)シミラセマートAを単離する段階
を含む、シミラセマートAを精製する方法を提供する。
【0020】
具体的な態様において、サラシナショウマ属種は、アメリカショウマ、ショウマ、および/またはオオミツバショウマより選択される。好ましい態様において、サラシナショウマ属種は、アメリカショウマである。
【0021】
さらに好ましい態様において、本発明の抽出手法は、任意で溶媒としてエタノールと共に、水を使用する。溶媒は好ましくは、20%未満のエタノールを含み、より好ましくは、溶媒中に存在するエタノールは15%未満、かつさらに10%未満、またはさらに5%未満でありうる。
【0022】
好ましい態様において、本発明は、アメリカショウマ対水を1:5〜1:20の比率で、好ましくは約1:15の比率で使用する。加えて、抽出手法は室温で行われることが好ましい。この温度はたとえば、20℃〜28℃、または22℃〜26℃であってもよい。具体的な態様において、抽出手法は約25℃で行われる。
【0023】
都合のよいことに、本発明は、サラシナショウマ属種からの単離されたシミラセマートAのより高くかつより一定した収率を提供する。本発明はまた、シミラセマートA単離のより迅速かつ簡便な方法を提供する。
【0024】
本発明は、たとえば、倦怠感、マラリア、リウマチ、異常な腎機能、喉の痛み、月経不順、出産に関連する疾患、発熱、頭痛、および悪寒の処置のために単離されたシミラセマートAを提供する。
【0025】
加えて、本発明は、抗炎症剤として用いることができる単離されたシミラセマートAを提供する。
【0026】
本発明はさらに、ヒトマクロファージにおいてLPS誘導TNFαを抑制するために、LPS誘導MAPキナーゼ活性を阻害するために、または活性酸素種スキャベンジャーとして作用するために用いることができる、単離されたシミラセマートAを提供する。
【0027】
本明細書において用いられる「対象」という用語は、それに対して本発明に従う組成物による処置を提供することができる、霊長類などの哺乳動物が含まれる生物を表す。開示された処置法により恩典を得ることができる哺乳動物種には、類人猿、チンパンジー、オランウータン、ヒト、サル;ならびにイヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、マウス、ラット、モルモット、およびハムスターなどの家畜動物が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0028】
さらなる態様において、本発明は、サラシナショウマ属の様々な種を区別することを可能にする。本発明に従って、様々なサラシナショウマ属種の抽出物は、HPLC後にシミラセマートA生物活性に関する個々の化学プロファイルをもたらす。
【0029】
1つの局面において、本発明の単離されたシミラセマートAは、市販のアメリカショウマ製造物を標準化するための化学マーカーとして用いることができる。市販のアメリカショウマ製造物を標準化するために、単離されたシミラセマートAを化学マーカーとして用いることは、たとえば抗炎症剤としてのシミラセマートAの生物活性に基づくことができる。
【0030】
シミラセマートAは、ブラックコホシュの乾燥根茎および根において同定されている。この化合物は、初代ヒトマクロファージにおいて特異的キナーゼリン酸化、転写因子活性化、およびTNF-α産生が含まれるLPS誘導効果を抑制する(2009年1月12日に提出された米国特許出願第61/143,925号;その全体が参照により本明細書に組み入れられる)。
【0031】
試料の抽出は、ハーブ材料から所望の化学成分の最大量を抽出するための非常に重要な第1段階である。過去数年のあいだ、ヘッドスペース分析、超臨界および亜臨界流体抽出、マイクロ波抽出、および加圧液体抽出が含まれるいくつかの近代的な技術が、薬用植物の分析における定量的調製のために用いられている(Huie, 2002)。これらの方法は、有機溶媒消費量が少なくてすむこと、試料の清浄および濃縮段階がないこと、ならびにハーブの抽出効率を改善することによって、慣用の方法より有意な長所を有するが、それらは重要な制限を有する。たとえば、ヘッドスペース分析ならびに超臨界および亜臨界流体抽出は、ハーブからの精油のみを標的としており、一方、加圧液体抽出は上昇した温度で行われ、それによって熱分解が起こりうる。このように、ハーブからの特異的化合物の産生を規模拡大するための改善された抽出プロトコールを開発することが望ましい。
【0032】
都合のよいことに、本発明の方法は、ブラックコホシュから抽出されるシミラセマートAの高くかつ一定した収率を提供する。本発明の方法の追加の長所は、薬学的使用のための試料の調製において方法が迅速かつ簡便であるという点である。
【0033】
シミラセマートAの抽出条件は、温度、抽出溶媒、抽出時間、および溶媒体積が含まれる抽出パラメータを変化させることによって、本発明に従って改善されている。抽出物から得られたシミラセマートAの百分率を増加させるHPLC条件もまた同定されている。
【0034】
さらに、本明細書において記載される抽出手法およびHPLC条件を用いることによって、特異的生物活性を有するハーブ製造物を特徴付けするための標準物質を確立することが可能である。
【0035】
加えて、サラシナショウマ属のメンバー、たとえばアメリカショウマ、フブキショウマ、ショウマ、およびオオミツバショウマを同定するために、シミラセマートAを、本発明に従って用いることができる。シミラセマートAはまた、炎症関連疾患を処置するための抗炎症剤として用いるためにサラシナショウマ属種の抽出物を標準化するためにも用いることができる。シミラセマートAはまた、本発明に従って、たとえば試料中のシミラセマートA対他の化合物の比率に基づいて、各試料の化学プロファイルに基づいて種を区別するためにも用いることができる。
【0036】
溶媒の選択
水およびエタノール(およびその混合物)が含まれる極性の非毒性溶媒を用いてアメリカショウマからシミラセマートAを抽出した。この溶媒系は、活性な構成成分の異なる極性を抽出する場合に適しているのみならず、ヒトでの消費にとって許容可能である。用いられる溶媒の中で、水および20%またはそれ未満のエタノールはシミラセマートAの最高量を生じた。
【0037】
抽出温度
本発明に従ってアメリカショウマからシミラセマートAのより高い量を抽出するためには、抽出温度の選択もまた非常に重要である。温度の上昇は、溶質-マトリクス相互作用結合を切断することによって拡散性を有意に増加させて、溶質の揮発性を増加させると報告されていた(Loncin and Merson 1979)。しかし、本発明に従って、室温を超えて温度を上昇させると、シミラセマートAの抽出収率が減少すると判定された。このことは、ハーブからのシミラセマートAの移動が室温(たとえば、25℃)で起こり、より高い温度では分解によりおそらく失われる可能性があることを示した。このように、本発明に従って、室温は、アメリカショウマからシミラセマートAを抽出するために好ましい抽出温度である。
【0038】
超音波処理
超音波処理は、いくつかの場合において、乾燥ハーブ材料から化合物を抽出するための効率を改善させて、抽出時間を短縮することができる別の方法である。増強の基礎となる機序は、物質移動の強化および溶媒が乾燥ハーブ材料により容易に近づけることである(Vinatoru. 2001; Shotipruk et al., 2001)。分析の状況において、超音波処理は、慣用の抽出技術に対して迅速で、安価でかつ効率的な代替法であり、いくつかの場合において、超臨界流体抽出およびマイクロ波抽出に対する代替法でさえある(Luque-Garcia et ah, 2003)。しかし、本発明に従って、冷浸条件を用いた場合と比較すると、超音波処理は、シミラセマートAの抽出収率を改善しないことが見いだされた(図4および8)。
【0039】
結果は、シミラセマートAがハーブ材料から水へと容易に漏出しえて、いかなるエネルギーも必要としないことが判明した。このように、アメリカショウマからのシミラセマートAの抽出は、冷浸を使用することができる。
【0040】
実験材料および方法
機器
Agilent 1200シリーズ高速液体クロマトグラフィー-光ダイオードアレイ(HPLC-DAD)(Palo Alto, CA. USA)システムを用いた。これはG1367cオートサンプラー、真空脱気装置、二元ポンプ、DAD検出器、およびLCワークステーションを備えた。ハーブから化合物を抽出するために、超音波浴(J. P. Selecta. Spain)を用いた。
【0041】
溶媒
試料を抽出して移動相を調製するために、ミリQ水システム(Millipore, Bedford, MA, USA)から脱イオン水を得た。標準溶液および/または試料溶液を調製するために、分析等級のエタノール(EtOH, Merck, Germany)を用いた。移動相を調製するために、HPLC等級のアセトニトリル(ACN, Tedia, USA)を用いた。
【0042】
植物材料
アメリカショウマの未処理の材料を、2008年5月にMonterey Bay Spice Company(Santa Cruz, USA)から購入した。粉砕器(IKA, Germany)を用いて、材料を粉砕して粉末にした。次に、粉末を乾燥器中で保存し、全ての実験に用いた。
【0043】
好ましい抽出条件の同定
水アルコール溶媒比の効果
アメリカショウマ(2 g)を0%、20%、40%、60%、80%、および100%(v/v)EtOH水溶液10 mlによって抽出した。抽出は、室温で30分間超音波処理することによって行った。各溶媒に関して3回同じ実験を行った。抽出工程を繰り返して、実験を3回行った。抽出物を4000 rpmで5分間遠心沈降させた後、濾紙(No 1 , Advantec, Japan)を通して濾過した。得られた濾液を蒸発させ、かつ抽出物の乾燥重量を得るために凍結乾燥させた。
【0044】
抽出温度の効果
3種類の抽出温度(室温、50℃および100℃)を用いてシミラセマートAの抽出収率を調べた。アメリカショウマの乾燥粉末(2.0 g)を、ミリQ水10 mlによって各々の抽出温度で30分間超音波処理した。各温度について実験を3回繰り返し、抽出工程を3回繰り返した。抽出物を4000 rpmで5分間遠心沈降させた後、上記の濾紙を通して濾過した。次に、抽出物の乾燥重量を得るために、得られた濾液を凍結乾燥した。
【0045】
超音波処理時間の効果
アメリカショウマ(2.0 g)を室温でミリQ水10 mlによって抽出した。5、10、20、および30分間の冷浸および/または超音波処理によって抽出を行った。各抽出時間について同じ実験を3回行い、抽出工程を3回繰り返した。抽出物を4000 rpmで5分間遠心沈降させた後、上記の濾紙を通して濾過した。抽出物の乾燥重量を得るために、得られた濾液を蒸発させて凍結乾燥させた。
【0046】
溶媒対ハーブ比の効果
アメリカショウマ(2.0 g)をミリQによって、1:5(w/v)、1:10(w/v)、1:15(w/v)、および1:20(w/v)の比率で、室温で30分間連続的に超音波処理することによって抽出した。各抽出体積に関して同じ実験を3回繰り返して、抽出工程を3回繰り返した。抽出物を4000 rpmで5分間遠心沈降させて、上記の濾紙を通して濾過した。抽出物の乾燥重量を得るために、得られた濾液を蒸発させて凍結乾燥させた。
【0047】
定量分析
乾燥抽出物をメタノール(MeOH)(25 mg/ml)に溶解した後、逆相Lichrospher 100 C18(250×4.6 mm内径、5μm)カラム(Alltech, USA)を用いてHPLCによって測定した。ACN(25〜90%で15分間)およびミリQ水(75〜10%で15分間)を用いて、直線勾配溶出によって分離を行った。流速は1.0 ml/分であった。検出波長およびカラム温度をそれぞれ、210 nmおよび23℃に設定した。注入体積は5μlであった。他の溶出ピークからのシミラセマートAの最善の分離が与えられるように、この実施条件を最適化した。
【0048】
フブキショウマ、ショウマ、およびオオミツバショウマの抽出
アメリカショウマの3つの対応物:フブキショウマ、ショウマ、およびオオミツバショウマは、Purapharm International(H.K.)Ltdから提供された。各ハーブ(2.0 g)をミリQ水40 mlによって室温で超音波処理(30分間)によって抽出した。抽出工程を3回繰り返して、各ハーブに関して同じ実験を3回行った。水性抽出物を凍結乾燥した後、MeOHに溶解して最終濃度25 mg/mlを得た。ハーブのフィンガープリントのみならず、シミラセマートAの収率百分率を上記のHPLC-PDAを用いて測定した。
【0049】
統計解析
SPSS統計学パッケージを用いてデータを解析した。抽出条件におけるシミラセマートAの抽出収率の差を、Shapiro-Wilkの検定を用いて正規性に関して、およびCochranのC検定を用いて分散の均一性に関して調べた。次にそれらを一元配置ANOVAの後にTukey検定を用いて比較した。全ての場合において、有意性の閾値は5%であった。
【0050】
以下は、本発明を実践するための手法を例証する実施例である。これらの実施例は、例証目的に限って提供されるものであり、制限的であると解釈すべきではない。
【実施例】
【0051】
実施例1−シミラセマートAの単離および抽出の最適化
HPLC条件の最適化
バイオアッセイ法によって誘導される分画および同定のスキームを用いて、抗炎症活性を有するシミラセマートA(図1)をアメリカショウマの水性抽出物から単離した。各抽出物からのシミラセマートAを定量するために、0.15625μg/μlから1.25μg/μlの範囲の検量線を得た(y=9197.4x−12.457、R2=0.9993)。
【0052】
抽出条件の最適化
水アルコール溶媒比の効果
抽出溶媒におけるエタノール含有量に関連したアメリカショウマにおけるシミラセマートAの収率百分率を図2および6に示す。図2に示されるように、シミラセマートAのピーク(*で示す)は、0%エタノール(すなわち、100%水)で最高であったが、これはエタノール含有量が増加すると実質的に低くなった。エタノール含有量が0%から100%に増加すると、シミラセマートAの抽出収率は、1.36%から0.19%まで減少した(図6)。結果は、エタノール含有量が、アメリカショウマからのシミラセマートAの抽出に影響を及ぼし、抽出溶媒中のエタノール含有量が増加すると、抽出効率が減少することを示した。したがって、さらなる研究のために水を抽出溶媒として用いた。
【0053】
抽出温度の効果
温度がシミラセマートAの抽出収率にどのように影響を及ぼすかを調べるために、アメリカショウマを異なる3種類の温度条件で抽出した:室温、50℃および100℃。図3に、最適化されたHPLC条件から得られた抽出物のクロマトグラムを示した。シミラセマートAのピーク(*で示す)は、室温で最高であり、室温から50℃、次に100℃の順に実質的に低くなった(図3)。加えて、室温、50℃、および100℃でのシミラセマートAの抽出収率はそれぞれ、1.24、0.51、および0.11%であった(図7)。結果は、温度がシミラセマートAの抽出収率に有意に影響を及ぼすこと(Tukey検定、p<0.05)、および温度が増加するとシミラセマートAの抽出効率は実質的に減少することを示した。したがって、今後の試験のために室温を選択した。
【0054】
超音波処理時間の効果
異なる時間の超音波処理を行ったアメリカショウマから抽出されたシミラセマートAの収率百分率を図4および8に示す。図4において、シミラセマートAのピークは、全ての抽出物において類似の強度で出現した。シミラセマートAの収率百分率は、0、5、10、20、および30分の超音波処理時間でそれぞれ、1.20、0.96、1.39、1.56、および1.34%であると測定された(図8)。本発明者らの結果は、超音波処理が、シミラセマートAの抽出収率を有意に増加させないことを示した(Tukey検定、p>0.05)。
【0055】
溶媒対ハーブ比の効果
アメリカショウマ由来のシミラセマートAの抽出効率に及ぼす溶媒の体積の効果を、1:5(w/v)、1:10(w/v)、1:15(w/v)、および1:20(w/v)の比率でミリQによってハーブを抽出することによって判定した。結果は、1:15(w/v)および1:20(w/v)から得たシミラセマートAのピーク強度が他の2つの比より高いことを示した(図5)。図9において、シミラセマートAの収率百分率は、水の1:5(w/v)、1:10(w/v)、1:15(w/v)、および1:20(w/v)の比率でそれぞれ、0.98%、0.93%、1.68%、および1.52%であると測定された。結果から、シミラセマートAのより高い抽出収率を得るために、アメリカショウマ対水の比率が1:15(w/v)より高くあるべきであることが判明した。
【0056】
実施例2−サラシナショウマ属種の同一性および生物活性を判定するためのシミラセマートAの単離およびフィンガープリンティング
フブキショウマ、ショウマ、およびオオミツバショウマ由来のシミラセマートAの定量
同じ最適化抽出条件でハーブを抽出した後、ブラックコホシュの設定と同じHPLCの設定でクロマトグラフィーを行うことによって、フブキショウマ、ショウマ、およびオオミツバショウマの参照フィンガープリントを決定した。結果は、フブキショウマがシミラセマートAを含有しないが、ショウマ、およびオオミツバショウマは図10に示すように、異なるレベルのシミラセマートAを含有することを示した。一般的に、同じ最適化抽出およびHPLC条件を用いると、アメリカショウマのみならず、その対応物、すなわち、ショウマおよびオオミツバショウマの未処理ハーブ中の化合物を同定することは容易である。
【0057】
実施例3−シミラセマートAの治療的使用
本発明の化合物は、ウイルス、細菌、真菌、酵母、および他の微生物による感染症が含まれるがこれらに限定されるわけではない感染症に関連する炎症を処置するために用いることができる。加えて、本発明の化合物は、腫瘍壊死因子、インターフェロン、インターロイキン、ロイコトリエン、および環境毒素が含まれるがこれらに限定されるわけではない多様な前炎症性因子によって媒介される炎症を処置するために用いることができる。
【0058】
本発明の化合物および薬学的組成物は、免疫および/または炎症の抑制が有益である任意の疾患、状態、または障害における炎症症状の処置または改善において用いることができる。本発明の化合物および組成物を用いて望ましくない免疫反応および炎症を阻害することができる炎症疾患、状態、または障害には、リウマチ性関節炎が含まれるがこれらに限定されるわけではない関節炎、ならびに免疫および/または炎症の抑制が有益である関節または骨格筋系の他の疾患、状態、または障害が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0059】
その上、化合物および組成物はまた、アテローム性動脈硬化症;動脈硬化症;アテローム性動脈硬化性心疾患;再灌流損傷;心停止:心筋梗塞;脳血管疾患(脳卒中)が含まれる血管炎症障害:呼吸窮迫症候群;ならびに移植片対宿主病およびアレルギー状態などの、免疫および/または炎症の抑制が有益であると考えられる他の心肺疾患、状態、または障害に関連する炎症を処置または改善するためにも有用である。
【0060】
加えて、化合物および組成物はまた、消化性潰瘍;潰瘍性大腸炎、クローン病、刺激性腸症候群、他の炎症性腸状態、および免疫炎症の抑制が有益であると考えられる消化管の他の疾患、状態、または障害;肝線維症;肝硬変、ならびに免疫および/または炎症の抑制が有益であると考えられる他の肝疾患、状態、または障害;甲状腺炎、ならびに免疫および/または炎症の抑制が有益であると考えられる他の腺疾患、状態、または障害;糸球体腎炎、ならびに免疫および/または炎症の抑制が有益であると考えられる他の腎疾患および泌尿器疾患、状態、または障害に関連する炎症を処置または改善するために有用である。
【0061】
加えて、化合物および組成物はまた、外傷後炎症:敗血症ショック;免疫および/または炎症の抑制が有益であると考えられる感染疾患;免疫および/または炎症の抑制が有益であると考えられる手術の炎症合併症および副作用;骨髄移植、ならびに免疫および/または炎症の抑制が有益であると考えられる他の移植合併症および/または副作用;たとえばウイルスのキャリアによる感染症が原因の、遺伝子治療の炎症および/または免疫の合併症および副作用に関連する炎症;ならびに後天性免疫不全症候群(AIDS)に関連する炎症を処置または改善するために有用である。
【0062】
さらに、化合物および組成物は、炎症に関連しない免疫応答のマクロファージまたはT細胞関連の局面を阻害するためにも有用である。化合物および組成物は、マクロファージの抗原提示活性、マクロファージのサイトカイン産生、T細胞サイトカイン産生、T細胞接着活性、T細胞増殖等が含まれるがこれらに限定されるわけではないマクロファージまたはT細胞の活性を阻害することができる。このように、ペプチドおよびペプチド誘導体および組成物は、液性および/または細胞性の免疫応答を抑制または阻害するために有用である。
【0063】
化合物および組成物はまた、単球およびリンパ球の量を低減させることによって、単球および白血球増殖疾患、たとえば白血病を処置または改善するためにも有用である。
【0064】
本発明の化合物および薬学的組成物は、角膜、骨髄、臓器、水晶体、ペースメーカー、天然および合成の皮膚組織等などの、天然または人工の細胞、組織および臓器を移植する場合の移植片拒絶の予防および/または処置のためにもさらに有用である。
【0065】
化合物および組成物はまた、過敏症;アレルギー反応;喘息;全身性紅斑性狼瘡;コラーゲン疾患、ならびに免疫および/または炎症の抑制が有益である他の自己免疫疾患、状態、または障害に関連する炎症を処置または改善するためにも有用である。
【0066】
化合物および組成物はまた、耳炎、ならびに免疫および/または炎症の抑制が有益であると考えられる他の耳鼻咽喉科疾患、状態、または障害;皮膚炎、ならびに免疫および/または炎症の抑制が有益であると考えられる他の皮膚疾患、状態、または障害;歯周疾患、ならびに免疫および/または炎症の抑制が有益であると考えられる他の歯科疾患、状態、または障害に関連する炎症を処置または改善するためにも有用である。
【0067】
加えて、化合物および組成物はまた、後部ブドウ膜炎;中間部ブドウ膜炎;前部ブドウ膜炎;結膜炎;脈絡網膜炎;ブドウ膜網膜炎;視神経炎;網膜炎および類嚢胞黄斑水腫などの眼内炎症;交感性眼炎;強膜炎;色素性網膜炎;変性眼底疾患の免疫および炎症成分;眼の外傷の炎症成分;感染症によって引き起こされる眼の炎症;増殖性硝子体網膜症;急性虚血性視神経障害;たとえば緑内障濾過手術後の過度の瘢痕形成;眼のインプラントに対する免疫および/または炎症反応、ならびに免疫および/または炎症の抑制が有益であると考えられる他の免疫および炎症関連眼科疾患、状態、または障害に関連する炎症を処置または改善するためにも有用である。
【0068】
その上、化合物および組成物はまた、中枢神経系(CNS)と任意の他の臓器の双方における免疫および/または炎症の抑制が有益であると考えられる自己免疫の疾患および状態または障害;パーキンソン病;パーキンソン病の処置による合併症および/または副作用;AIDS関連認知症複合体(HIV関連脳障害);ドヴィック病;シドナム舞踏病;アルツハイマー病、ならびに免疫および/または炎症の抑制が有益であると考えられる中枢神経系の他の変性疾患、状態または障害;脳卒中の炎症成分;ポリオ後症候群;精神障害の免疫および炎症成分;脊髄炎;脳炎;亜急性硬化性全脳炎;脳脊髄炎;急性神経障害;亜急性神経障害;慢性神経障害;ギヤン・バレー症候群;シドナム舞踏病;重症筋無力症;偽脳腫瘍;ダウン症候群;ハンチントン病;筋萎縮性側索硬化症;中枢神経系(CNS)圧迫またはCNS外傷または脳血管事故(卒中)またはCNSの感染症もしくは低酸素症虚血、の炎症成分;筋萎縮および異栄養の炎症成分;ならびに免疫および/または炎症の抑制が有益であると考えられる中枢および末梢神経系の免疫および炎症に関連する疾患、状態、または障害に関連する炎症を処置または改善するためにも有用である。
【0069】
さらに別の態様において、本発明の化合物および組成物は、脳、眼、および精巣などの、その免疫学的寛容を失っている免疫学的寛容部位で免疫学的寛容を回復するために有用である。
【0070】
実施例4−製剤
1つの態様において、本発明は、単離された化合物を提供する。本明細書において用いられる「単離された」とは、それらが本来存在しうる任意の環境から取り出されている化合物を指す。たとえば、単離されたシミラセマートAは、アメリカショウマに存在している状態のままのシミラセマートA化合物を指すのではない。好ましい態様において、本発明の化合物は、少なくとも75%純粋であり、好ましくは少なくとも90%純粋、より好ましくは95%より多く純粋であり、および最も好ましくは99%より多く純粋(実質的に純粋)である。
【0071】
本発明はまた、薬学的に許容される担体と組み合わせることができる形で本発明の化合物を含む治療的組成物または薬学的組成物を提供する。この文脈において、化合物は、たとえば単離されても、または実質的に純粋であってもよい。「担体」という用語は、それと共に化合物が投与される希釈剤、補助剤、賦形剤、または媒体を指す。そのような薬学的担体は、鉱油などの石油、落花生油、大豆油、およびゴマ油などの植物油、動物性油、または合成起源の油などの担体が含まれる、水および油などの滅菌液体でありうる。食塩水溶液ならびにデキストロース水溶液およびグリセロール水溶液もまた、液体担体として、特に注射可能な溶液のために使用することができる。中枢神経系における炎症の処置および/または改善のための特に好ましい薬学的担体は、血液/脳関門を通過することができる担体である。本明細書において用いられる担体には、自然界に存在する状態のままの天然の植物材料は含まれない。
【0072】
適した薬学的賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、穀粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等が含まれる。望ましければ、治療組成物はまた、湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤の微量を含有することができる。これらの組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、カプセル剤、粉剤、徐放性製剤等の形状をとることができる。組成物は、トリグリセリドなどの従来の結合剤および担体と共に製剤化することができる。適した薬学的担体の例は、E. W. Martin による「Remington's Pharmaceutical Sciences」において記載されている。そのような組成物は、患者に適切に投与するための形状を提供するために担体の適した量と共に治療組成物の治療的有効量を含有する。製剤は、投与様式に適合すべきである。
【0073】
1つの態様において、組成物は、ヒトへの局所注射投与に合うように適合させた薬学的組成物としてルーチン手法に従って製剤化される。典型的に、局所注射による投与のための組成物は、滅菌等張水性緩衝液の溶液である。必要であれば、組成物にはまた、溶解剤、および注射部位での疼痛を和らげるためにリドカインなどの局所麻酔薬が含まれてもよい。一般的に、成分は、単位投与剤形で、たとえば活性成分の量を示すアンプルまたはサシェなどの気密性容器中での凍結乾燥ドライパウダーまたは無水濃縮物として、個別にまたは共に混合して供給される。組成物が注射によって投与される場合、成分が投与前に混合されうるように、滅菌注射用水または食塩水のアンプルを提供することができる。
【0074】
本発明の治療的組成物または薬学的組成物は、中性または塩の形で製剤化することができる。薬学的に許容される塩には、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸等に由来する塩などの遊離のアミノ基によって形成された塩、およびナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等に由来する塩などの遊離のカルボキシル基によって形成された塩が含まれる。
【0075】
本発明はまた、対象に投与された後に、化合物がより安定であるように、すなわち、投与後、非改変化合物と比較してより長い期間有効性を有するように、化合物の改変を提供する。そのような改変は当業者に周知であり、たとえばポリエチレングリコール誘導体化(PEG化)、マイクロカプセル化等である。具体的な例において、本発明の活性化合物は、リンカーを用いて高分子量または低分子量PEGにカップリングさせることができる。そのような構築物の既に知られている例には、PEG-イリノテカンおよびPEG-ドセタキセルが含まれる。
【0076】
特定の疾患、状態、または障害の処置において有効である本発明の治療的組成物または薬学的組成物の量は、疾患、状態、または障害の性質に依存して、標準的な臨床技術によって決定することができる。一般的に、用量は、約0.001 mg/kgから約2 mg/kgの範囲である。加えて、任意で、最適な用量範囲を同定するために役立つように、インビトロアッセイ法を使用してもよい。製剤において使用される正確な用量はまた、投与経路、および疾患、状態、または障害の重症度にも依存して、医師の判断および各患者の状況に従って決定されるべきである。有効量を、インビトロまたは動物モデルの試験システムに由来する用量-反応曲線から外挿してもよい。たとえば、ラットの試験から作製されたデータに基づいてヒトの有効mg/kg用量を得るために、ラットにおける有効mg/kg用量を6で除する。
【0077】
本発明はまた、本発明の薬学的組成物の成分、たとえば化合物、担体の1つまたは複数を充填した1つまたは複数の容器を含む薬学的パックまたは薬学的キットも提供する。
【0078】
本発明の化合物はまた、伝統的な漢方薬の実践と一貫して製剤化することができる。特定の疾患、状態、または障害の処置において有効である製剤の組成物および用量は、標準的な臨床技術によって疾患、状態、または障害の性質に依存すると考えられる。
【0079】
処方量の伝統的な漢方薬を、ヒトまたは動物に投与するために適した任意の形の薬物に容易に作製することができる。適した剤形には、たとえば、チンキ剤、煎剤、および乾燥抽出物が含まれる。これらは経口で摂取される、静脈内注射を通して、または粘膜を通して適用される。活性成分はまた、カプセル剤、粉剤、パレット、香錠、坐剤、経口液、低温殺菌消化管懸濁注射剤、静脈内投与用調製物が含まれる少量または大量の注射剤、凍結乾燥注射剤、低温殺菌粉末注射剤等に製剤化することができる。上記の方法は全て、当業者に公知であり、書物に記載されており、生薬学の医師によって一般的に用いられる。
【0080】
チンキ剤は、たとえばワインまたはリカーなどのアルコール溶液に、ハーブを懸濁することによって調製される。懸濁期間の後、液体(アルコール溶液)を、たとえば1日2回または3回、毎回茶さじ1杯投与してもよい。
【0081】
煎剤は、ハーブ調製物の一般的な剤形である。これは、伝統的に陶製容器において調製されるが、ガラス、エナメル、またはステンレススチールの容器においても調製することができる。製剤を水に一定期間浸した後、沸騰させて、水の量がたとえば半分に低減されるまで煮沸することができる。
【0082】
抽出物は、薬用ハーブの必須構成成分の濃縮調製物である。典型的に、必須構成成分は、適切に選択した溶媒、典型的に水、エタノール/水混合物、メタノール、ブタノール、イソブタノール、アセトン、ヘキサン、石油エーテル、または他の有機溶媒にハーブを懸濁することによって、ハーブから抽出される。抽出工程は、冷浸、浸透、再浸透、逆流抽出、ターボ抽出、または二酸化炭素超臨界(温度/圧)抽出によってさらに促進されうる。ハーブの破片を取り除くために濾過後、抽出溶液をさらに蒸発させて、このように軟抽出物(濃厚チンキ)を生じて、および/または最終的に噴霧乾燥、真空乾燥器乾燥、流動床乾燥、または凍結乾燥により、乾燥抽出物、乾燥チンキを生じてもよい。軟抽出物または乾燥抽出物をさらに、適した液体中で投与するために所望の濃度に溶解するか、または丸剤、カプセル剤、注射剤等などの剤形に加工してもよい。
【0083】
本明細書において参照または引用した全ての特許、特許出願、仮出願、および刊行物は、全ての図面および表が含まれるその全体が、本明細書の明確な教示とそれらが矛盾しない程度に、参照により本明細書に組み入れられる。
【0084】
本明細書において記載される実施例および態様は、説明する目的に限られ、それに照らして様々な改変または変更が当業者に示唆されるが、それらも本出願の精神および範囲に含まれると理解されるべきである。
【0085】
参考文献





【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)サラシナショウマ属(Cimicifuga)種の十分な量の未処理の材料を提供する段階;
(b)サラシナショウマ属種の未処理の該材料を約20℃〜約28℃の温度で水性極性溶媒と混合して、シミラセマートAを含む溶媒抽出物を得る段階;および
(c)該溶媒抽出物からシミラセマートAを単離する段階
を含む、サラシナショウマ属種からシミラセマートAを単離するための方法。
【請求項2】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いてシミラセマートAを前記溶媒抽出物から単離する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
HPLCを用いてシミラセマートAを約210 nmのUV吸光度において前記溶媒抽出物から溶出する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
HPLCを用いてシミラセマートAを約23℃で前記溶媒抽出物から溶出する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
サラシナショウマ属種の未処理の前記材料を粉砕して粉末にする、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記サラシナショウマ属種が、アメリカショウマ(Cimicifuga racemosa)、ショウマ(Cimicifuga foetida)、およびオオミツバショウマ(Cimicifuga heracleifolia)からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記サラシナショウマ属種がアメリカショウマである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記水性極性溶媒が、濃度20%未満のエタノールを含む水-エタノールである、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記サラシナショウマ属種を約1:15(w/v)〜約1:20(w/v)の比率で水-エタノールと混合する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記水性極性溶媒が水である、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記サラシナショウマ属種を約1:15(w/v)〜約1:20(w/v)の比率で水と混合する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
アメリカショウマを約1:15(w/v)の比率で水と混合する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
(a)サラシナショウマ属種の十分な量の未処理の材料を提供する段階;
(b)サラシナショウマ属種の未処理の該材料を約20℃〜約28℃の温度で水性極性溶媒と混合して、シミラセマートAを含む溶媒抽出物を得る段階;および
(c)該溶媒抽出物からシミラセマートAを単離する段階
からなる、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記水性極性溶媒が水である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記サラシナショウマ属種を約1:15(w/v)〜約1:20(w/v)の比率で水と混合する、請求項14記載の方法。
【請求項16】
サラシナショウマ属種を含有する治療組成物を標準化する方法であって、標準物質としてのシミラセマートAの濃度および/または生物活性を用いる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【公表番号】特表2012−530691(P2012−530691A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515578(P2012−515578)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【国際出願番号】PCT/IB2010/001772
【国際公開番号】WO2010/150102
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(511168084)パラファーム インターナショナル (エイチケイ) リミテッド (4)
【出願人】(511167870)バーシテック リミテッド (5)
【Fターム(参考)】