シャットオフ機構，シャットオフ機構を備えたポンプ式製品およびシャットオフ機構を備えたエアゾール式製品
【課題】ポンプ式製品やエアゾール式製品におけるシャットオフ機構の組立時の部品同士の回動位置合わせを不要にして作業の簡単化を図る。
【解決手段】操作ボタンの放出口（４ａ）に対する逆止弁（３）の鍔状部（３ｂ）とのカム作用により、当該逆止弁を後退させて作動モードに移行するためのブッシュ（２）のカム作用部を、上下方向中心軸（Ａ）についての図示の軸対称形状からなる環状斜面（テーパ面２ｅ）とした。操作ボタンとブッシュとの回動防止についてもスプライン係合（１ｆ，２ｃ）を採用して、組立時の回動方向の位置合わせを不要としている。
【解決手段】操作ボタンの放出口（４ａ）に対する逆止弁（３）の鍔状部（３ｂ）とのカム作用により、当該逆止弁を後退させて作動モードに移行するためのブッシュ（２）のカム作用部を、上下方向中心軸（Ａ）についての図示の軸対称形状からなる環状斜面（テーパ面２ｅ）とした。操作ボタンとブッシュとの回動防止についてもスプライン係合（１ｆ，２ｃ）を採用して、組立時の回動方向の位置合わせを不要としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、容器本体の内容物の放出操作終了時に外部空間への放出孔を閉塞して、その近くの通路域に残留する内容物が当該放出孔から外部空間の方に漏出しないようにしたシャットオフ機構、すなわちポンプ式容器におけるたれ（固化）やエアゾール式容器におけるアウタードローなどを防止するシャットオフ機構や、このシャットオフ機構を持つポンプ式製品およびエアゾール式製品に関する。
【０００２】
本明細書においては、前後上下の位置関係を、ノズルの内容物放出孔側を「前」、それとは反対の逆止弁付勢用の例えばコイルスプリング側を「後」とそれぞれ記し、また、操作ボタン側を「上」、それとは反対の容器本体側を「下」とそれぞれ記す。
【０００３】
適用対象の内容物には、例えば液状またはクリーム状の石けん，シャンプー，リンス，化粧品，乳液や、発泡性のシェービングフォーム，ヘアスタイリングフォームをはじめとして、後述のように各種のものがある。
【背景技術】
【０００４】
内容物のたれ防止やアウタードロー対策を図るシャットオフ機構は例えば下記の特許文献１で開示されている。
【０００５】
特許文献１では、噴出口（噴出口３１）および噴出口開閉弁（弁部材１２ｂ）を備えた操作ボタン（ケーシング１２ａ１）と、ピストン（ステム１１）に取り付けられるブッシュ（連絡筒部材１２ｃ）と、からなるシャットオフ機構が開示されている。
【０００６】
ここでは、放出操作の際の押下げ操作力により先ず操作ボタンのみがブッシュに対して下動し、この操作ボタンの下動にともなうブッシュと噴出口開閉弁との間のカム作用に基づいて、当該噴出口開閉弁が後退して開状態に移行する。
【０００７】
このシャットオフ機構の組み立ては、概略、
(11)操作ボタン（ケーシング１２ａ1）の前方開口部から弁（弁部材１２ｂ）を挿入し、
(12)ノズル（噴出口部材１２ａ2）を、弁（弁部材１２ｂ）の弁作用部に被せるように、操作ボタン（ケーシング１２ａ1）の前方開口部に係合させ、
(13)ブッシュ（連絡筒部材１２ｃ）を、その一部であるカム作用部（第２傾斜面ｆ2）の傾斜面が後方に向く状態にしてから、操作ボタン（ケーシング１２ａ1）の下方から挿入して取り付ける、
といった手順になる。
【特許文献１】特開２００８−０５５３３３号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
このように、従来のシャットオフ機構は、操作ボタンにブッシュを取り付けるときに、当該ブッシュのカム作用部の傾斜面が操作ボタンの噴出口とは反対側の後方にくるように設定する必要があった。
【０００９】
そのため、あらかじめ操作ボタンに対するブッシュのいわば回動位置関係を特定するための行程が必要となり、シャットオフ機構の組立て作業が煩雑であった。
【００１０】
そこで、本発明では、操作ボタンおよびブッシュ（内容物通過用部材）それぞれを、これら各部材を組立てる際の回動位置関係のプリセット作業を不要とする形状に設定し、これによりシャットオフ機構の組み立て作業の簡素化を図り、製造コストの低減化を図ることを目的とする。
【００１１】
また、操作ボタンとブッシュ（内容物通過用部材）との間の回動を阻止するためこれら双方の部材それぞれに形成される各構成要素（回動阻止部とこれに対する係合部）についても、同様に、当該部材の組立時の部材相互の回動位置関係のプリセット作業を不要とするスプライン係合形状などに設定して、シャットオフ機構の組み立て作業の一層の簡素化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【００１２】
本発明は、以上の課題を次のようにして解決する。
（１）操作ボタン（例えば後述の操作ボタン１）の作動モード設定操作にともない、先ず内容物放出孔（例えば後述の放出孔４ａ）に対する逆止弁（例えば後述の逆止弁３）の移動により当該放出孔がそれまでの閉状態から開状態に設定され、続いて当該開状態のまま、容器本体と連通可能な内容物通過用部材（例えば後述のブッシュ２）が当該操作ボタンと連動して、作動モードに移行するシャットオフ機構において、
前記操作ボタンは、
前記逆止弁の移動空間域が形成された鞘状の上側収容部（例えば後述の上側収容部１ｂ）と、
前記内容物通過用部材の移動空間域，前記上側収容部へと続く中央開口部および、前記内容物通過用部材に対する当接面（例えば後述の環状垂下部１ｅの内周面）が形成された筒状の下側収容部（例えば後述の下側収容部１ｃ）と、を備え、
前記逆止弁は、
前記内容物通過用部材に対する第１のカム作用部（例えば後述の鍔状部３ｂ）を備え、
前記内容物通過用部材は、
前記第１のカム作用部に対する第２のカム作用部（例えば後述の環状斜面２ｅ）と、
前記容器本体からの流入内容物が通過する中央通路部（例えば後述の内容物通過用中央通路部２ｄ）と、
前記下側収容部の当接面に対する被当接部（例えば後述の逆スカート状部２ｆ）と、を備え、
少なくとも前記当接面，前記第２のカム作用部および前記被当接部はそれぞれ、
前記内容物通過用部材がその移動方向中心軸に対する任意の回動状態で前記操作ボタンおよび前記逆止弁に対して正しく取り付けられる形の、当該中心軸についての対称的形状に設定された、
ものを用いる。
（２）上記（１）において、
前記操作ボタンおよび前記内容物通過用部材として、
一方の周面部分に、それぞれ前記対称形状の複数の回動阻止部（例えば後述の内向噛合部１ｆまたは外向噛合部２ｃ）が設定され、
他方の周面部分に、当該回動阻止部に対する係合部が（例えば後述の外向噛合部２ｃまたは内向噛合部１ｆ）、前記任意の回動状態における当該内容物通過用部材と当該操作ボタンとの取り付けを行える形状で、設定された、
ものを用いる。
（３）上記（２）において、
前記起動規制部および前記係合部として、
それぞれスプライン係合を呈する形状のものを用いる。
【００１３】
本発明は、このような構成のシャットオフ機構，当該シャットオフ機構を備えたポンプ式製品および当該シャットオフ機構を備えたエアゾール式製品を対象としている。
【発明の効果】
【００１４】
本発明はこのように、内容物放出用の操作ボタンに収容された逆止弁に対する（容器本体と連通可能な）内容物通過用部材のカム作用部の形状および、操作ボタンと内容物通過用部材との各当接部分の形状をそれぞれ、内容物通過用部材の移動方向中心軸についての上述の対称的形状にしている。
【００１５】
そのため、操作ボタンおよび内容物通過用部材それぞれについての当該対称的形状の設定により、これらの各部材を組み合わせて一体化する際にも当該操作ボタンと当該内容物通過用部材との回動位置関係を確認する必要がなくなり、この一体化作業についての簡単化を図れ、シャットオフ機構の組み立て工程全体を簡素化して、製造コストの低減を図ることができる。
【００１６】
また、操作ボタンと内容物通過用部材との間の回動を阻止するためこれら双方の部材それぞれに形成される各構成要素（回動阻止部とこれに対する係合部）についても、当該部材の組立時の回動位置関係の確認作業を不要とするスプライン係合形状などに設定しているので、シャットオフ機構の組み立て作業の一層の簡素化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１７】
図１および図２を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図１は、シャットオフ機構の静止モードの断面図を示し、
図２は、シャットオフ機構の作動モードへの移行開始段階の断面図を示している。
【００１８】
各図で用いるアルファベット付き参照番号の構成要素（例えば操作面１ａ）は原則として、当該参照番号の数字部分の構成要素（例えば操作ボタン１）の一部であることを示している。
【００１９】
図１および図２において、
１は操作ボタン，
１ａは利用者が操作の対象とする操作面，
１ｂは後述の逆止弁３を収容し、後述のノズル４と一体化されて、中央開口部１ｄから後述の放出孔４ａにいたる下流側通路を構成する内容物通過用の鞘状の上側収容部，
１ｃは後述のブッシュ２を収容する筒状の下側収容部，
１ｄは上側収容部１ｂと下側収容部１ｃとを連通させる形で下側収容部１ｃの天井部に設けられた中央開口部，
１ｅは中央開口部１ｄを囲む形で下側収容部１ｃの天井部に設けられた環状垂下部，
１ｆは下側収容部１ｃの内周面に設けられて、後述の外向噛合部２ｃとスプライン係合する内向噛合部，
１ｇは下側収容部１ｃの内周面の周方向に飛び飛びに設けられて、後述の外周面２ｂの下端に当接してブッシュ２が下方へ脱落するのを防止する複数の突起部，
１ｈは上側収容部１ｂの内周面に設けられて後述の環状凸部４ｂが係合する環状凹部，
１ｊは中央開口部１ｄの縁に設けられて、鍔状部３ｂで前後に分けられた上側収容部１ｂのそれぞれの空間域の連通を確保する切欠部，
２は操作ボタン１の押圧操作にともなう下動開始後の所定状態（後述の逆止弁３が後退しきった状態，図２参照）になってから連動（下動）し、かつ、図示横方向の任意の断面の輪郭部分が、上下方向の中心軸Ａ（の点）を通る当該断面上の任意の直線に対して略線対称となる、外面形状を持つ筒状のブッシュ，
２ａは環状天井部，
２ｂは環状天井部２ａの外側縁部分から下方に連続する外周面，
２ｃは外周面２ｂに設けられて、内向噛合部１ｆとスプライン係合する外向噛合部，
２ｄは後述のピストン６の内容物流出側と上側収容部１ｂとの間に設定された内容物通過用中央通路部，
２ｅは内容物通過用中央通路部２ｄの出口側外面に形成されて、後述の鍔状部３ｂの前面縁部との間で倣い作用を呈する環状斜面，
２ｆは環状垂下部１ｅの内周面に当接してシール作用を呈する逆スカート状部，
２ｇは環状天井部２ａにその上下それぞれの空間域を連通させる態様で設けられた連通孔，
３は操作ボタン１の上側収容部１ｂに配置されて静止モードにおいては前方端部が後述の放出孔４ａを閉塞する逆止弁，
３ａは当該逆止弁の前端側部分であって放出孔４ａの開閉作用を呈する弁作用部，
３ｂは弁作用部３ａの後端部分に設けられて、前面縁部がブッシュ２の環状斜面２ｅとの倣い作用を呈し、後面部が後述のコイルスプリング５を保持する鍔状部，
４は上側収容部１ｂの前側内周面と嵌合する筒状のノズル，
４ａは容器内容物の放出孔，
４ｂはノズル外周面に設けられた環状凸部，
５は逆止弁３を前方に付勢するコイルスプリング，
６はブッシュ２の筒状部下側内周面に強く嵌合して上方向に弾性的に付勢される（図示省略）形で設けられ、操作ボタン１の下方への押圧によって周知のポンプ機構またはバルブ機構が作動して容器内容物を内容物通過用中央通路部２ｄに流出させるピストン，
７は容器本体（図示省略）の開口部に取り付けられたキャップ，
８はキャップ７に取り付けられてピストン６の移動空間域および容器内容物の貯留・通路域として作用するハウジング，
Ａは下側収容部１ｃの内面形状やブッシュ２の外面形状などの軸対称性の上下方向中心軸（ブッシュ２およびピストン６などの移動方向中心軸），
をそれぞれ示している。
【００２０】
ここで、操作ボタン１，ブッシュ２，逆止弁３，ノズル４，ピストン６，キャップ７およびハウジング８などはポリプロピレン，ポリエチレン，ポリアセタール，ナイロン，ポリブチレンテレフタレートなどからなるプラスチック製のものであり、コイルスプリング５は金属製，プラスチック製のものである。
【００２１】
図示のシャットオフ機構の構造的な特徴は、
・操作ボタン１の下側収容部１ｃ，中央開口部１ｄ，環状垂下部１ｅ，内向噛合部１ｆ
・ブッシュ２の外向噛合部２ｃ，当該噛合部に続く外周面部分，環状斜面２ｅ，逆スカート状部２ｆ，
などの各形状が、
上下方向中心軸Ａに対して、ブッシュ２をその任意の回動位置で操作ボタン１に図示の下方側から入れて組み込むことにより双方を一体化できるような略軸対象形状になっている、ことである。
【００２２】
すなわち、（内向噛合部１ｆの部分を除く）下側収容部１ｃ，中央開口部１ｄ，環状垂下部１ｅ，外向噛合部２ｃに続くブッシュ外周面部分，環状斜面２ｅ，逆スカート状部２ｆなどの図示横方向（＝上下方向中心軸Ａと直交する方向）の任意の断面の輪郭線はそれぞれ「円」となる。
【００２３】
また、内向噛合部１ｆおよび外向噛合部２ｃについての同横方向の任意の断面の輪郭線もそれぞれ略「円」といえる。当該断面の各噛合部の谷（底）部分または山（頂）部分はそれぞれ「円」上に位置している。
【００２４】
ここで、シャットオフ機構の動作は概略、次のようになる。
(21)利用者が、静止モード（図１参照）の操作ボタン１の操作面１ａを押し下げる。
(22)操作ボタン１の下動によって、逆止弁３の鍔状部３ｂとブッシュ２の環状斜面２ｅとの倣い作用により逆止弁３がコイルスプリング５の弾性力に抗するかたちで後退する。このときブッシュ２は下動しない。それはピストン６を上方向に付勢する周知の弾性力がコイルスプリングのそれよりも十分に大きいからである。
(23)その後、操作ボタン１の環状垂下部１ｅがブッシュ２の環状天井部２ａの上面部分に当接すると操作ボタン１，ブッシュ２およびピストン６は一体となって下動する。
(24)ピストン６の下動によりその弁作用部が開いて、容器本体の内容物が「ピストン６の中央通路−内容物通過用中央通路部２ｄ−上側収容部１ｂ−ノズル４の内部空間−放出孔４ａ」を経て外部空間に放出される。
【００２５】
利用者が操作ボタン１の押圧操作をやめると、シャットオフ機構は次のような（作動モード設定時とは逆の）動作を呈する。
(31)先ず、操作ボタン１およびブッシュ２がピストン６とともに当該ピストンに対する周知の強い弾性復帰力によって静止モード位置まで上動する。この上動により、ピストン側の弁作用部が閉じて容器本体側から内容物通過用中央通路部２ｄへの内容物流入動作が終了する。
(32)続いて、逆止弁３が、コイルスプリング５の復帰力によって前方向に復帰して放出孔４ａを閉状態に設定する。なお、この逆止弁３復帰の際、操作ボタン１は、逆止弁３の鍔状部３ｂとブッシュ２の環状斜面２ｅとの倣い作用により上動して静止モードの初期位置に復帰する。
【００２６】
本発明のシャットオフ機構の組み立て作業は、
(41)操作ボタン１の上側収容部１ｂの前方開口部から、コイルスプリング５および逆止弁３を順番に、またはコイルスプリング５を取り付けた逆止弁３を挿入し、
(42)ノズル４をヘッドの上側収容部１ｂの前方開口部から挿入して、ノズル外周面の環状凸部４ｂを上側収容部内周面の環状凹部１ｈに嵌合させ、
(43)ブッシュ２を操作ボタン１の下方から下側収容部１ｃに挿入して取り付ける、
といった手順になる。
【００２７】
本発明のシャットオフ機構は、上述したように、
・下側収容部１ｃ，中央開口部１ｄ，環状垂下部１ｅ，内向噛合部１ｆ
・外向噛合部２ｃ，当該噛合部に続く外周面部分，環状斜面２ｅ，逆スカート状部２ｆ，
などの各構成要素を、図示横方向断面の輪郭線が円状で、上下方向中心軸Ａに対して略軸対象となる形状に設定している。
【００２８】
そのため、操作ボタン１とブッシュ２とを組み立てる際、双方の回動位置関係などは一切確認せずに、ブッシュ２をその環状斜面２ｅ側から操作ボタン１の下側収容部１ｃに挿入するだけでよい。
【００２９】
なお、この確認不要の利点は、操作ボタンの内向噛合部１ｆとブッシュの外向噛合部２ｃとの間にも確実に妥当する。
【００３０】
それは、内向噛合部１ｆの歯の下端および外向噛合部２ｃの歯の上端はそれぞれ、操作ボタン１とブッシュ２との回動方向に対して山形になっているため、操作ボタン１にブッシュ２を挿入するときに内向噛合部１ｆおよび外向噛合部２ｃの各歯の凹凸自体が合致していなくても、各歯の山形端部同士の倣い作用によってそれぞれの凹凸が一致するように、操作ボタン１とブッシュ２とが相対的に回動するからである。
【００３１】
操作ボタン１の外径１９ｍｍの場合、スプライン係合する内向噛合部１ｆおよび外向噛合部２ｃの歯数は例えば６０である。
【００３２】
組立て後のシャットオフ機構は、各種のポンプ容器またはエアゾール容器に取り付けて使用される。
【００３３】
本発明が以上の実施形態に限定されないことは勿論であり、例えば上述の特許文献１のように、スプライン係合の代わりにブッシュ２に上下方向変位可能な円形ダイアフラム部を設けその外周を操作ボタン１の下側収容部１ｃの内周面に液密に係合させてもよい。
【００３４】
また、内向噛合部１ｆまたは外向噛合部２ｃの一方の歯数を減らしても良い。
【００３５】
また、ブッシュ２（および操作ボタン１，ピストン６）とキャップ７との間の回動を阻止するため、キャップ内側筒状部の内周面およびブッシュ筒状部の外周面に内向噛合部１ｆ，外向噛合部２ｃと同様のスプライン係合部を形成してもよい。
これにより、ブッシュ２などとキャップ７との組立て時における双方の回動位置関係の確認作業も不要となる。
【００３６】
本発明が適用されるポンプ式製品やエアゾール式製品としては、洗浄剤，清掃剤，制汗剤，冷却剤，筋肉消炎剤，ヘアスタイリング剤，ヘアトリートメント剤，染毛剤，育毛剤，化粧品，シェービングフォーム，食品，液滴状のもの（ビタミンなど），医薬品，医薬部外品，塗料，園芸用剤，忌避剤（殺虫剤），クリーナー，消臭剤，洗濯のり，ウレタンフォーム，消火器，接着剤，潤滑剤などの各種用途のものがある。
【００３７】
容器本体に収納する内容物は、液状，クリーム状，ゲル状など種々の形態のものを用いることができ、内容物に配合される成分としては例えば、粉状物，油成分，アルコール類，界面活性剤，高分子化合物，各用途に応じた有効成分，水などが挙げられる。
【００３８】
粉状物としては、金属塩類粉末，無機物粉末や樹脂粉末などを用いる。例えば、タルク，カオリン，アルミニウムヒドロキシクロライド（アルミ塩），アルギン酸カルシウム，金粉，銀粉，雲母，炭酸塩，硫酸バリウム，セルロース，これらの混合物などを用いる。
【００３９】
油成分としては、シリコーン油，パーム油，ユーカリ油，ツバキ油，オリーブ油，ホホバ油，パラフィン油，ミリスチン酸，パルミチン酸，ステアリン酸，リノール酸，リノレン酸などを用いる。
【００４０】
アルコール類としては、エタノールなどの１価の低級アルコール，ラウリルアルコールなどの１価の高級アルコール，エチレングリコール，グリセリン，1,3−ブチレングリコールなどの多価アルコールなどを用いる。
【００４１】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどの非イオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤などを用いる。
【００４２】
高分子化合物としては、メチルセルロース，ゼラチン，デンプン，カゼイン，ヒドロキシエチルセルロース，キサンタンガム，カルボキシビニルポリマーなどを用いる。
【００４３】
各用途に応じた有効成分としては、サリチル酸メチル，インドメタシンなどの消炎鎮痛剤、安息香酸ナトリウム，クレゾールなどの除菌剤、ヒレスロイド，ジエチルトルアミドなどの害虫忌避剤、酸化亜鉛などの制汗剤、カンフル，メントールなどの清涼剤、エフェドリン，アドレナリンなどの抗喘息薬、スクラロース，アスパルテームなどの甘味料、エポキシ樹脂，ウレタンなどの接着剤や塗料、パラフェニレンジアミン，アミノフェノールなどの染料，リン酸二水素アンモニウム，炭酸水素ナトリウム・カリウムなどの消火剤などを用いる。
【００４４】
さらに、上記内容物以外の、懸濁剤，紫外線吸収剤，乳化剤，保湿剤，酸化防止剤、金属イオン封鎖剤なども用いることができる。
【００４５】
エアゾール式製品における内容物放出用ガスとしては、炭酸ガス，窒素ガス，圧縮空気，酸素ガス，希ガス，これらの混合ガスなどの圧縮ガスや、液化石油ガス，ジメチルエーテル，フロロカーボンなどの液化ガスを用いる。
【図面の簡単な説明】
【００４６】
【図１】本発明のシャットオフ機構の静止モードを示す断面図である。
【図２】図１のシャットオフ機構における作動モードへの移行開始段階を示す断面図である。
【符号の説明】
【００４７】
１：操作ボタン
１ａ：操作面
１ｂ：上側収容部
１ｃ：下側収容部
１ｄ：中央開口部
１ｅ：環状垂下部
１ｆ：内向噛合部
１ｇ：突起部
１ｈ：環状凹部
１ｊ：切欠部
２：ブッシュ
２ａ：環状天井部
２ｂ：外周面
２ｃ：外向噛合部
２ｄ：内容物通過用中央通路部
２ｅ：環状斜面
２ｆ：逆スカート状部
２ｇ：連通孔
３：逆止弁
３ａ：弁作用部
３ｂ：鍔状部
４：ノズル
４ａ：放出孔
４ｂ：環状凸部
５：コイルスプリング
６：ピストン
７：キャップ
８：ハウジング
Ａ：軸対称の上下方向中心軸
【技術分野】
【０００１】
本発明は、容器本体の内容物の放出操作終了時に外部空間への放出孔を閉塞して、その近くの通路域に残留する内容物が当該放出孔から外部空間の方に漏出しないようにしたシャットオフ機構、すなわちポンプ式容器におけるたれ（固化）やエアゾール式容器におけるアウタードローなどを防止するシャットオフ機構や、このシャットオフ機構を持つポンプ式製品およびエアゾール式製品に関する。
【０００２】
本明細書においては、前後上下の位置関係を、ノズルの内容物放出孔側を「前」、それとは反対の逆止弁付勢用の例えばコイルスプリング側を「後」とそれぞれ記し、また、操作ボタン側を「上」、それとは反対の容器本体側を「下」とそれぞれ記す。
【０００３】
適用対象の内容物には、例えば液状またはクリーム状の石けん，シャンプー，リンス，化粧品，乳液や、発泡性のシェービングフォーム，ヘアスタイリングフォームをはじめとして、後述のように各種のものがある。
【背景技術】
【０００４】
内容物のたれ防止やアウタードロー対策を図るシャットオフ機構は例えば下記の特許文献１で開示されている。
【０００５】
特許文献１では、噴出口（噴出口３１）および噴出口開閉弁（弁部材１２ｂ）を備えた操作ボタン（ケーシング１２ａ１）と、ピストン（ステム１１）に取り付けられるブッシュ（連絡筒部材１２ｃ）と、からなるシャットオフ機構が開示されている。
【０００６】
ここでは、放出操作の際の押下げ操作力により先ず操作ボタンのみがブッシュに対して下動し、この操作ボタンの下動にともなうブッシュと噴出口開閉弁との間のカム作用に基づいて、当該噴出口開閉弁が後退して開状態に移行する。
【０００７】
このシャットオフ機構の組み立ては、概略、
(11)操作ボタン（ケーシング１２ａ1）の前方開口部から弁（弁部材１２ｂ）を挿入し、
(12)ノズル（噴出口部材１２ａ2）を、弁（弁部材１２ｂ）の弁作用部に被せるように、操作ボタン（ケーシング１２ａ1）の前方開口部に係合させ、
(13)ブッシュ（連絡筒部材１２ｃ）を、その一部であるカム作用部（第２傾斜面ｆ2）の傾斜面が後方に向く状態にしてから、操作ボタン（ケーシング１２ａ1）の下方から挿入して取り付ける、
といった手順になる。
【特許文献１】特開２００８−０５５３３３号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
このように、従来のシャットオフ機構は、操作ボタンにブッシュを取り付けるときに、当該ブッシュのカム作用部の傾斜面が操作ボタンの噴出口とは反対側の後方にくるように設定する必要があった。
【０００９】
そのため、あらかじめ操作ボタンに対するブッシュのいわば回動位置関係を特定するための行程が必要となり、シャットオフ機構の組立て作業が煩雑であった。
【００１０】
そこで、本発明では、操作ボタンおよびブッシュ（内容物通過用部材）それぞれを、これら各部材を組立てる際の回動位置関係のプリセット作業を不要とする形状に設定し、これによりシャットオフ機構の組み立て作業の簡素化を図り、製造コストの低減化を図ることを目的とする。
【００１１】
また、操作ボタンとブッシュ（内容物通過用部材）との間の回動を阻止するためこれら双方の部材それぞれに形成される各構成要素（回動阻止部とこれに対する係合部）についても、同様に、当該部材の組立時の部材相互の回動位置関係のプリセット作業を不要とするスプライン係合形状などに設定して、シャットオフ機構の組み立て作業の一層の簡素化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【００１２】
本発明は、以上の課題を次のようにして解決する。
（１）操作ボタン（例えば後述の操作ボタン１）の作動モード設定操作にともない、先ず内容物放出孔（例えば後述の放出孔４ａ）に対する逆止弁（例えば後述の逆止弁３）の移動により当該放出孔がそれまでの閉状態から開状態に設定され、続いて当該開状態のまま、容器本体と連通可能な内容物通過用部材（例えば後述のブッシュ２）が当該操作ボタンと連動して、作動モードに移行するシャットオフ機構において、
前記操作ボタンは、
前記逆止弁の移動空間域が形成された鞘状の上側収容部（例えば後述の上側収容部１ｂ）と、
前記内容物通過用部材の移動空間域，前記上側収容部へと続く中央開口部および、前記内容物通過用部材に対する当接面（例えば後述の環状垂下部１ｅの内周面）が形成された筒状の下側収容部（例えば後述の下側収容部１ｃ）と、を備え、
前記逆止弁は、
前記内容物通過用部材に対する第１のカム作用部（例えば後述の鍔状部３ｂ）を備え、
前記内容物通過用部材は、
前記第１のカム作用部に対する第２のカム作用部（例えば後述の環状斜面２ｅ）と、
前記容器本体からの流入内容物が通過する中央通路部（例えば後述の内容物通過用中央通路部２ｄ）と、
前記下側収容部の当接面に対する被当接部（例えば後述の逆スカート状部２ｆ）と、を備え、
少なくとも前記当接面，前記第２のカム作用部および前記被当接部はそれぞれ、
前記内容物通過用部材がその移動方向中心軸に対する任意の回動状態で前記操作ボタンおよび前記逆止弁に対して正しく取り付けられる形の、当該中心軸についての対称的形状に設定された、
ものを用いる。
（２）上記（１）において、
前記操作ボタンおよび前記内容物通過用部材として、
一方の周面部分に、それぞれ前記対称形状の複数の回動阻止部（例えば後述の内向噛合部１ｆまたは外向噛合部２ｃ）が設定され、
他方の周面部分に、当該回動阻止部に対する係合部が（例えば後述の外向噛合部２ｃまたは内向噛合部１ｆ）、前記任意の回動状態における当該内容物通過用部材と当該操作ボタンとの取り付けを行える形状で、設定された、
ものを用いる。
（３）上記（２）において、
前記起動規制部および前記係合部として、
それぞれスプライン係合を呈する形状のものを用いる。
【００１３】
本発明は、このような構成のシャットオフ機構，当該シャットオフ機構を備えたポンプ式製品および当該シャットオフ機構を備えたエアゾール式製品を対象としている。
【発明の効果】
【００１４】
本発明はこのように、内容物放出用の操作ボタンに収容された逆止弁に対する（容器本体と連通可能な）内容物通過用部材のカム作用部の形状および、操作ボタンと内容物通過用部材との各当接部分の形状をそれぞれ、内容物通過用部材の移動方向中心軸についての上述の対称的形状にしている。
【００１５】
そのため、操作ボタンおよび内容物通過用部材それぞれについての当該対称的形状の設定により、これらの各部材を組み合わせて一体化する際にも当該操作ボタンと当該内容物通過用部材との回動位置関係を確認する必要がなくなり、この一体化作業についての簡単化を図れ、シャットオフ機構の組み立て工程全体を簡素化して、製造コストの低減を図ることができる。
【００１６】
また、操作ボタンと内容物通過用部材との間の回動を阻止するためこれら双方の部材それぞれに形成される各構成要素（回動阻止部とこれに対する係合部）についても、当該部材の組立時の回動位置関係の確認作業を不要とするスプライン係合形状などに設定しているので、シャットオフ機構の組み立て作業の一層の簡素化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１７】
図１および図２を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図１は、シャットオフ機構の静止モードの断面図を示し、
図２は、シャットオフ機構の作動モードへの移行開始段階の断面図を示している。
【００１８】
各図で用いるアルファベット付き参照番号の構成要素（例えば操作面１ａ）は原則として、当該参照番号の数字部分の構成要素（例えば操作ボタン１）の一部であることを示している。
【００１９】
図１および図２において、
１は操作ボタン，
１ａは利用者が操作の対象とする操作面，
１ｂは後述の逆止弁３を収容し、後述のノズル４と一体化されて、中央開口部１ｄから後述の放出孔４ａにいたる下流側通路を構成する内容物通過用の鞘状の上側収容部，
１ｃは後述のブッシュ２を収容する筒状の下側収容部，
１ｄは上側収容部１ｂと下側収容部１ｃとを連通させる形で下側収容部１ｃの天井部に設けられた中央開口部，
１ｅは中央開口部１ｄを囲む形で下側収容部１ｃの天井部に設けられた環状垂下部，
１ｆは下側収容部１ｃの内周面に設けられて、後述の外向噛合部２ｃとスプライン係合する内向噛合部，
１ｇは下側収容部１ｃの内周面の周方向に飛び飛びに設けられて、後述の外周面２ｂの下端に当接してブッシュ２が下方へ脱落するのを防止する複数の突起部，
１ｈは上側収容部１ｂの内周面に設けられて後述の環状凸部４ｂが係合する環状凹部，
１ｊは中央開口部１ｄの縁に設けられて、鍔状部３ｂで前後に分けられた上側収容部１ｂのそれぞれの空間域の連通を確保する切欠部，
２は操作ボタン１の押圧操作にともなう下動開始後の所定状態（後述の逆止弁３が後退しきった状態，図２参照）になってから連動（下動）し、かつ、図示横方向の任意の断面の輪郭部分が、上下方向の中心軸Ａ（の点）を通る当該断面上の任意の直線に対して略線対称となる、外面形状を持つ筒状のブッシュ，
２ａは環状天井部，
２ｂは環状天井部２ａの外側縁部分から下方に連続する外周面，
２ｃは外周面２ｂに設けられて、内向噛合部１ｆとスプライン係合する外向噛合部，
２ｄは後述のピストン６の内容物流出側と上側収容部１ｂとの間に設定された内容物通過用中央通路部，
２ｅは内容物通過用中央通路部２ｄの出口側外面に形成されて、後述の鍔状部３ｂの前面縁部との間で倣い作用を呈する環状斜面，
２ｆは環状垂下部１ｅの内周面に当接してシール作用を呈する逆スカート状部，
２ｇは環状天井部２ａにその上下それぞれの空間域を連通させる態様で設けられた連通孔，
３は操作ボタン１の上側収容部１ｂに配置されて静止モードにおいては前方端部が後述の放出孔４ａを閉塞する逆止弁，
３ａは当該逆止弁の前端側部分であって放出孔４ａの開閉作用を呈する弁作用部，
３ｂは弁作用部３ａの後端部分に設けられて、前面縁部がブッシュ２の環状斜面２ｅとの倣い作用を呈し、後面部が後述のコイルスプリング５を保持する鍔状部，
４は上側収容部１ｂの前側内周面と嵌合する筒状のノズル，
４ａは容器内容物の放出孔，
４ｂはノズル外周面に設けられた環状凸部，
５は逆止弁３を前方に付勢するコイルスプリング，
６はブッシュ２の筒状部下側内周面に強く嵌合して上方向に弾性的に付勢される（図示省略）形で設けられ、操作ボタン１の下方への押圧によって周知のポンプ機構またはバルブ機構が作動して容器内容物を内容物通過用中央通路部２ｄに流出させるピストン，
７は容器本体（図示省略）の開口部に取り付けられたキャップ，
８はキャップ７に取り付けられてピストン６の移動空間域および容器内容物の貯留・通路域として作用するハウジング，
Ａは下側収容部１ｃの内面形状やブッシュ２の外面形状などの軸対称性の上下方向中心軸（ブッシュ２およびピストン６などの移動方向中心軸），
をそれぞれ示している。
【００２０】
ここで、操作ボタン１，ブッシュ２，逆止弁３，ノズル４，ピストン６，キャップ７およびハウジング８などはポリプロピレン，ポリエチレン，ポリアセタール，ナイロン，ポリブチレンテレフタレートなどからなるプラスチック製のものであり、コイルスプリング５は金属製，プラスチック製のものである。
【００２１】
図示のシャットオフ機構の構造的な特徴は、
・操作ボタン１の下側収容部１ｃ，中央開口部１ｄ，環状垂下部１ｅ，内向噛合部１ｆ
・ブッシュ２の外向噛合部２ｃ，当該噛合部に続く外周面部分，環状斜面２ｅ，逆スカート状部２ｆ，
などの各形状が、
上下方向中心軸Ａに対して、ブッシュ２をその任意の回動位置で操作ボタン１に図示の下方側から入れて組み込むことにより双方を一体化できるような略軸対象形状になっている、ことである。
【００２２】
すなわち、（内向噛合部１ｆの部分を除く）下側収容部１ｃ，中央開口部１ｄ，環状垂下部１ｅ，外向噛合部２ｃに続くブッシュ外周面部分，環状斜面２ｅ，逆スカート状部２ｆなどの図示横方向（＝上下方向中心軸Ａと直交する方向）の任意の断面の輪郭線はそれぞれ「円」となる。
【００２３】
また、内向噛合部１ｆおよび外向噛合部２ｃについての同横方向の任意の断面の輪郭線もそれぞれ略「円」といえる。当該断面の各噛合部の谷（底）部分または山（頂）部分はそれぞれ「円」上に位置している。
【００２４】
ここで、シャットオフ機構の動作は概略、次のようになる。
(21)利用者が、静止モード（図１参照）の操作ボタン１の操作面１ａを押し下げる。
(22)操作ボタン１の下動によって、逆止弁３の鍔状部３ｂとブッシュ２の環状斜面２ｅとの倣い作用により逆止弁３がコイルスプリング５の弾性力に抗するかたちで後退する。このときブッシュ２は下動しない。それはピストン６を上方向に付勢する周知の弾性力がコイルスプリングのそれよりも十分に大きいからである。
(23)その後、操作ボタン１の環状垂下部１ｅがブッシュ２の環状天井部２ａの上面部分に当接すると操作ボタン１，ブッシュ２およびピストン６は一体となって下動する。
(24)ピストン６の下動によりその弁作用部が開いて、容器本体の内容物が「ピストン６の中央通路−内容物通過用中央通路部２ｄ−上側収容部１ｂ−ノズル４の内部空間−放出孔４ａ」を経て外部空間に放出される。
【００２５】
利用者が操作ボタン１の押圧操作をやめると、シャットオフ機構は次のような（作動モード設定時とは逆の）動作を呈する。
(31)先ず、操作ボタン１およびブッシュ２がピストン６とともに当該ピストンに対する周知の強い弾性復帰力によって静止モード位置まで上動する。この上動により、ピストン側の弁作用部が閉じて容器本体側から内容物通過用中央通路部２ｄへの内容物流入動作が終了する。
(32)続いて、逆止弁３が、コイルスプリング５の復帰力によって前方向に復帰して放出孔４ａを閉状態に設定する。なお、この逆止弁３復帰の際、操作ボタン１は、逆止弁３の鍔状部３ｂとブッシュ２の環状斜面２ｅとの倣い作用により上動して静止モードの初期位置に復帰する。
【００２６】
本発明のシャットオフ機構の組み立て作業は、
(41)操作ボタン１の上側収容部１ｂの前方開口部から、コイルスプリング５および逆止弁３を順番に、またはコイルスプリング５を取り付けた逆止弁３を挿入し、
(42)ノズル４をヘッドの上側収容部１ｂの前方開口部から挿入して、ノズル外周面の環状凸部４ｂを上側収容部内周面の環状凹部１ｈに嵌合させ、
(43)ブッシュ２を操作ボタン１の下方から下側収容部１ｃに挿入して取り付ける、
といった手順になる。
【００２７】
本発明のシャットオフ機構は、上述したように、
・下側収容部１ｃ，中央開口部１ｄ，環状垂下部１ｅ，内向噛合部１ｆ
・外向噛合部２ｃ，当該噛合部に続く外周面部分，環状斜面２ｅ，逆スカート状部２ｆ，
などの各構成要素を、図示横方向断面の輪郭線が円状で、上下方向中心軸Ａに対して略軸対象となる形状に設定している。
【００２８】
そのため、操作ボタン１とブッシュ２とを組み立てる際、双方の回動位置関係などは一切確認せずに、ブッシュ２をその環状斜面２ｅ側から操作ボタン１の下側収容部１ｃに挿入するだけでよい。
【００２９】
なお、この確認不要の利点は、操作ボタンの内向噛合部１ｆとブッシュの外向噛合部２ｃとの間にも確実に妥当する。
【００３０】
それは、内向噛合部１ｆの歯の下端および外向噛合部２ｃの歯の上端はそれぞれ、操作ボタン１とブッシュ２との回動方向に対して山形になっているため、操作ボタン１にブッシュ２を挿入するときに内向噛合部１ｆおよび外向噛合部２ｃの各歯の凹凸自体が合致していなくても、各歯の山形端部同士の倣い作用によってそれぞれの凹凸が一致するように、操作ボタン１とブッシュ２とが相対的に回動するからである。
【００３１】
操作ボタン１の外径１９ｍｍの場合、スプライン係合する内向噛合部１ｆおよび外向噛合部２ｃの歯数は例えば６０である。
【００３２】
組立て後のシャットオフ機構は、各種のポンプ容器またはエアゾール容器に取り付けて使用される。
【００３３】
本発明が以上の実施形態に限定されないことは勿論であり、例えば上述の特許文献１のように、スプライン係合の代わりにブッシュ２に上下方向変位可能な円形ダイアフラム部を設けその外周を操作ボタン１の下側収容部１ｃの内周面に液密に係合させてもよい。
【００３４】
また、内向噛合部１ｆまたは外向噛合部２ｃの一方の歯数を減らしても良い。
【００３５】
また、ブッシュ２（および操作ボタン１，ピストン６）とキャップ７との間の回動を阻止するため、キャップ内側筒状部の内周面およびブッシュ筒状部の外周面に内向噛合部１ｆ，外向噛合部２ｃと同様のスプライン係合部を形成してもよい。
これにより、ブッシュ２などとキャップ７との組立て時における双方の回動位置関係の確認作業も不要となる。
【００３６】
本発明が適用されるポンプ式製品やエアゾール式製品としては、洗浄剤，清掃剤，制汗剤，冷却剤，筋肉消炎剤，ヘアスタイリング剤，ヘアトリートメント剤，染毛剤，育毛剤，化粧品，シェービングフォーム，食品，液滴状のもの（ビタミンなど），医薬品，医薬部外品，塗料，園芸用剤，忌避剤（殺虫剤），クリーナー，消臭剤，洗濯のり，ウレタンフォーム，消火器，接着剤，潤滑剤などの各種用途のものがある。
【００３７】
容器本体に収納する内容物は、液状，クリーム状，ゲル状など種々の形態のものを用いることができ、内容物に配合される成分としては例えば、粉状物，油成分，アルコール類，界面活性剤，高分子化合物，各用途に応じた有効成分，水などが挙げられる。
【００３８】
粉状物としては、金属塩類粉末，無機物粉末や樹脂粉末などを用いる。例えば、タルク，カオリン，アルミニウムヒドロキシクロライド（アルミ塩），アルギン酸カルシウム，金粉，銀粉，雲母，炭酸塩，硫酸バリウム，セルロース，これらの混合物などを用いる。
【００３９】
油成分としては、シリコーン油，パーム油，ユーカリ油，ツバキ油，オリーブ油，ホホバ油，パラフィン油，ミリスチン酸，パルミチン酸，ステアリン酸，リノール酸，リノレン酸などを用いる。
【００４０】
アルコール類としては、エタノールなどの１価の低級アルコール，ラウリルアルコールなどの１価の高級アルコール，エチレングリコール，グリセリン，1,3−ブチレングリコールなどの多価アルコールなどを用いる。
【００４１】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどの非イオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤などを用いる。
【００４２】
高分子化合物としては、メチルセルロース，ゼラチン，デンプン，カゼイン，ヒドロキシエチルセルロース，キサンタンガム，カルボキシビニルポリマーなどを用いる。
【００４３】
各用途に応じた有効成分としては、サリチル酸メチル，インドメタシンなどの消炎鎮痛剤、安息香酸ナトリウム，クレゾールなどの除菌剤、ヒレスロイド，ジエチルトルアミドなどの害虫忌避剤、酸化亜鉛などの制汗剤、カンフル，メントールなどの清涼剤、エフェドリン，アドレナリンなどの抗喘息薬、スクラロース，アスパルテームなどの甘味料、エポキシ樹脂，ウレタンなどの接着剤や塗料、パラフェニレンジアミン，アミノフェノールなどの染料，リン酸二水素アンモニウム，炭酸水素ナトリウム・カリウムなどの消火剤などを用いる。
【００４４】
さらに、上記内容物以外の、懸濁剤，紫外線吸収剤，乳化剤，保湿剤，酸化防止剤、金属イオン封鎖剤なども用いることができる。
【００４５】
エアゾール式製品における内容物放出用ガスとしては、炭酸ガス，窒素ガス，圧縮空気，酸素ガス，希ガス，これらの混合ガスなどの圧縮ガスや、液化石油ガス，ジメチルエーテル，フロロカーボンなどの液化ガスを用いる。
【図面の簡単な説明】
【００４６】
【図１】本発明のシャットオフ機構の静止モードを示す断面図である。
【図２】図１のシャットオフ機構における作動モードへの移行開始段階を示す断面図である。
【符号の説明】
【００４７】
１：操作ボタン
１ａ：操作面
１ｂ：上側収容部
１ｃ：下側収容部
１ｄ：中央開口部
１ｅ：環状垂下部
１ｆ：内向噛合部
１ｇ：突起部
１ｈ：環状凹部
１ｊ：切欠部
２：ブッシュ
２ａ：環状天井部
２ｂ：外周面
２ｃ：外向噛合部
２ｄ：内容物通過用中央通路部
２ｅ：環状斜面
２ｆ：逆スカート状部
２ｇ：連通孔
３：逆止弁
３ａ：弁作用部
３ｂ：鍔状部
４：ノズル
４ａ：放出孔
４ｂ：環状凸部
５：コイルスプリング
６：ピストン
７：キャップ
８：ハウジング
Ａ：軸対称の上下方向中心軸
【特許請求の範囲】
【請求項１】
操作ボタンの作動モード設定操作にともない、先ず内容物放出孔に対する逆止弁の移動により当該放出孔がそれまでの閉状態から開状態に設定され、続いて当該開状態のまま、容器本体と連通可能な内容物通過用部材が当該操作ボタンと連動して、作動モードに移行するシャットオフ機構において、
前記操作ボタンは、
前記逆止弁の移動空間域が形成された鞘状の上側収容部と、
前記内容物通過用部材の移動空間域，前記上側収容部へと続く中央開口部および、前記内容物通過用部材に対する当接面が形成された筒状の下側収容部と、を備え、
前記逆止弁は、
前記内容物通過用部材に対する第１のカム作用部を備え、
前記内容物通過用部材は、
前記第１のカム作用部に対する第２のカム作用部と、
前記容器本体からの流入内容物が通過する中央通路部と、
前記下側収容部の当接面に対する被当接部と、を備え、
少なくとも前記当接面，前記第２のカム作用部および前記被当接部はそれぞれ、
前記内容物通過用部材がその移動方向中心軸に対する任意の回動状態で前記操作ボタンおよび前記逆止弁に対して正しく取り付けられる形の、当該中心軸についての対称的形状に設定されている、
ことを特徴とするシャットオフ機構。
【請求項２】
前記操作ボタンおよび前記内容物通過用部材は、
一方の周面部分に、それぞれ前記対称形状の複数の回動阻止部が設定され、
他方の周面部分に、当該回動阻止部に対する係合部が、前記任意の回動状態における当該内容物通過用部材と当該操作ボタンとの取り付けを行える形状で、設定されている、
ことを特徴とする請求項１記載のシャットオフ機構。
【請求項３】
前記回動阻止部および前記係合部は、
それぞれスプライン係合作用を呈する形状のものである、
ことを特徴とする請求項２記載のシャットオフ機構。
【請求項４】
請求項１乃至請求項３のいずれかに記載のシャットオフ機構を備え、かつ、内容物を収容した、
ことを特徴とするポンプ式製品。
【請求項５】
請求項１乃至請求項３のいずれかに記載のシャットオフ機構を備え、かつ、噴射用ガスおよび内容物を収容した、
ことを特徴とするエアゾール式製品。
【請求項１】
操作ボタンの作動モード設定操作にともない、先ず内容物放出孔に対する逆止弁の移動により当該放出孔がそれまでの閉状態から開状態に設定され、続いて当該開状態のまま、容器本体と連通可能な内容物通過用部材が当該操作ボタンと連動して、作動モードに移行するシャットオフ機構において、
前記操作ボタンは、
前記逆止弁の移動空間域が形成された鞘状の上側収容部と、
前記内容物通過用部材の移動空間域，前記上側収容部へと続く中央開口部および、前記内容物通過用部材に対する当接面が形成された筒状の下側収容部と、を備え、
前記逆止弁は、
前記内容物通過用部材に対する第１のカム作用部を備え、
前記内容物通過用部材は、
前記第１のカム作用部に対する第２のカム作用部と、
前記容器本体からの流入内容物が通過する中央通路部と、
前記下側収容部の当接面に対する被当接部と、を備え、
少なくとも前記当接面，前記第２のカム作用部および前記被当接部はそれぞれ、
前記内容物通過用部材がその移動方向中心軸に対する任意の回動状態で前記操作ボタンおよび前記逆止弁に対して正しく取り付けられる形の、当該中心軸についての対称的形状に設定されている、
ことを特徴とするシャットオフ機構。
【請求項２】
前記操作ボタンおよび前記内容物通過用部材は、
一方の周面部分に、それぞれ前記対称形状の複数の回動阻止部が設定され、
他方の周面部分に、当該回動阻止部に対する係合部が、前記任意の回動状態における当該内容物通過用部材と当該操作ボタンとの取り付けを行える形状で、設定されている、
ことを特徴とする請求項１記載のシャットオフ機構。
【請求項３】
前記回動阻止部および前記係合部は、
それぞれスプライン係合作用を呈する形状のものである、
ことを特徴とする請求項２記載のシャットオフ機構。
【請求項４】
請求項１乃至請求項３のいずれかに記載のシャットオフ機構を備え、かつ、内容物を収容した、
ことを特徴とするポンプ式製品。
【請求項５】
請求項１乃至請求項３のいずれかに記載のシャットオフ機構を備え、かつ、噴射用ガスおよび内容物を収容した、
ことを特徴とするエアゾール式製品。
【図１】
【図２】
【図２】
【公開番号】特開２０１０−１２０６５５（Ｐ２０１０−１２０６５５Ａ）
【公開日】平成２２年６月３日（２０１０．６．３）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００８−２９３７４０（Ｐ２００８−２９３７４０）
【出願日】平成２０年１１月１７日（２００８．１１．１７）
【出願人】（０００１４４４６３）株式会社三谷バルブ (142)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２２年６月３日（２０１０．６．３）
【国際特許分類】
【出願日】平成２０年１１月１７日（２００８．１１．１７）
【出願人】（０００１４４４６３）株式会社三谷バルブ (142)
【Ｆターム（参考）】
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