説明

シュー間隙自動調節機構を備えたドラムブレーキ

【課題】第2ストラット部材のねじ穴の内周面からの錆の発生を抑制するシュー間隙自動調節機構を備えたドラムブレーキを提供する。
【解決手段】第2ストラット部材58は、ねじ穴58aを一端に有し且つそのねじ穴58aと連通する連通穴58bの開口58cを他端に有しているため、第2ストラット部材58に電気メッキを行うにおいて、メッキ液中のメッキ用金属イオンの濃度を均一にさせるためにメッキ液を攪拌させると第2ストラット部材58の連通穴58bを介してねじ穴58a内にメッキ液が循環してそのねじ穴58a内でのメッキ用金属イオンの濃度が維持されるので第2ストラット部材58のねじ穴58aの内周面にも均一な厚みのメッキを行うことができる。そのため、第2ストラット部材58のねじ穴58aの内周面からの錆の発生を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シュー間隙自動調節機構を備えたドラムブレーキに関し、特にそのシュー間隙自動調節機構内での錆の発生を抑制させる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シュー間隙自動調節機構を備えたドラムブレーキは、例えば特許文献1に示すように、(a) バッキングプレート上に拡開可能に配設された一対のブレーキシューの拡開量に応じて回動するアジャストレバーと、(b) 長手状の軸部の外周面にねじ山が形成された第1ストラット部材およびその第1ストラット部材の軸部を嵌め入れ且つその軸部に形成された雄ねじと螺合する雌ねじが形成されたねじ穴を有する長手状の第2ストラット部材を有し、その一対のブレーキシューの一端部間に架け渡され非制動時のその一対のブレーキシューの一端部間の離間量を制限するストラットとを備え、(c) 制動時前記アジャストレバーによって前記第1ストラット部材の軸部が回動させられることにより前記ストラットが伸長し、非制動時における前記一対のブレーキシューと回転ドラムとの間のシュー間隙を自動的に調節するものである。また、特許文献1乃至3に示すように、前記第2ストラット部材は、前記ねじ穴の開口を一端に有し且つ他端が閉じられたものであり、その第2ストラット部材の表面には錆の発生を抑制するために電気メッキ法によりメッキが行われるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−164082号公報
【特許文献2】特開2008−45724号公報
【特許文献3】特開平08−105473
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記第2ストラット部材に電気メッキを行うにおいて、その第2ストラット部材の表面全体に均一厚みの金属膜を析出させるためにメッキ液を攪拌させてそのメッキ液中のメッキ用金属イオンの濃度を均一にさせるが、前記第2ストラット部材は上記のように前記ねじ穴の開口を一端に有し且つ他端が閉じられたものであるためメッキ液を攪拌させても前記ねじ穴内でメッキ液の流れが循環し難いので前記ねじ穴内でメッキ液のメッキ用金属イオンが少なくなり前記第2ストラット部材のねじ穴の内周面におけるメッキの厚みが十分に得られ難くなる問題があった。そのため、経年使用すると前記ねじ穴の内周面に錆が発生して前記第2ストラット部材のねじ穴の内周面と前記第1ストラット部材の雄ねじとが固着する可能性があった。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的とするところは、第2ストラット部材のねじ穴の内周面からの錆の発生を抑制するシュー間隙自動調節機構を備えたドラムブレーキを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するための請求項1に係る発明の要旨とするところは、(a) バッキングプレート上に拡開可能に配設された一対のブレーキシューの拡開量に応じて回動するアジャストレバーと、(b) 長手状の軸部の外周面にねじ山が形成された第1ストラット部材およびその第1ストラット部材の軸部を嵌め入れ且つその軸部に形成された雄ねじと螺合する雌ねじが形成されたねじ穴を有する長手状の第2ストラット部材を有し、その一対のブレーキシューの一端部間に架け渡され非制動時のその一対のブレーキシューの一端部間の離間量を制限するストラットとを備え、(c) 制動時前記アジャストレバーによって前記第1ストラット部材の軸部が回動させられることにより前記ストラットが伸長し、非制動時における前記一対のブレーキシューと回転ドラムとの間のシュー間隙を自動的に調節するシュー間隙自動調節機構を備えたドラムブレーキであって、(d) 前記第2ストラット部材は、前記ねじ穴を一端に有し且つそのねじ穴と連通する連通穴の開口を他端に有していることにある。
【0007】
また、請求項2に係る発明の要旨とするところは、請求項1に係る発明において、(a) 前記第2ストラット部材は、円筒状に形成されたものであり、(b) 前記第2ストラット部材の他端は、その第2ストラット部材の軸心に直交する方向においてその第2ストラット部材の径より小さく且つ前記ブレーキシューのシューウェブの厚みより大きい幅の切欠が形成されており、(c) 前記一対のブレーキシューの一端部には、前記ストラットの一端部を支持可能に切り欠かれた第1切欠部と前記ストラットの他端部を支持可能に切り欠かれた第2切欠部とがそれぞれ備えられていることにある。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明のシュー間隙自動調節機構を備えたドラムブレーキによれば、(d) 前記第2ストラット部材は、前記ねじ穴を一端に有し且つそのねじ穴と連通する連通穴の開口を他端に有しているため、前記第2ストラット部材に電気メッキを行うにおいて、メッキ液中のメッキ用金属イオンの濃度を均一にさせるためにメッキ液を攪拌させると前記第2ストラット部材の連通穴を介して前記ねじ穴内にメッキ液が循環してそのねじ穴内でのメッキ用金属イオンの濃度が維持されるので前記第2ストラット部材のねじ穴の内周面にも均一な十分な厚みのメッキを行うことができる。そのため、前記第2ストラット部材のねじ穴の内周面からの錆の発生を抑制することができる。
【0009】
請求項2に係る発明のシュー間隙自動調節機構を備えたドラムブレーキによれば、(a) 前記第2ストラット部材は、円筒状に形成されたものであり、(b) 前記第2ストラット部材の他端は、その第2ストラット部材の軸心に直交する方向においてその第2ストラット部材の径より小さく且つ前記ブレーキシューのシューウェブの厚みより大きい幅の切欠が形成されており、(c) 前記一対のブレーキシューの一端部には、前記ストラットの一端部を支持可能に切り欠かれた第1切欠部と前記ストラットの他端部を支持可能に切り欠かれた第2切欠部とがそれぞれ備えられているため、前記ブレーキシューの一端部には前記ストラットの一端部または他端部どちらでも支持することができるので前記一対のブレーキシューの形状を共通化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明が適用されたリーディング・トレーリング型ドラムブレーキを示す正面図である。
【図2】図1のII-II視断面図である。
【図3】図1の実施例のドラムブレーキのシュー間隙自動調節機構に備えられたストラットを説明する図である。
【図4】図3のIV-IV視断面図である。
【図5】図1の実施例のドラムブレーキのシュー間隙自動調節機構に備えられた第2ストラット部材を説明する図である。
【図6】図5のVI-VI視面図である。
【図7】ブレーキシューの一端部を拡大した拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明の一実施例のパーキングロック機能を備えたシュー間隙自動調節機構付ドラムブレーキであるリーディング・トレーリング型の車両用ドラムブレーキ(以下、ドラムブレーキという)10であって、ブレーキドラム(回転ドラム)12を取り外して示す正面図である。また、ブレーキドラム12は、図1の1点鎖線で示す2つの同心円で表されており、その2つの円のうちの中心側の円はブレーキドラム12の内周面14を示している。
【0013】
ドラムブレーキ10には、略円板形状を成し、たとえば図示しない車軸管、アクスルハウジング、サスペンション装置などの車体側部材すなわち非回転部材に一体的に固設されたバッキングプレート16が備えられている。
【0014】
また、ドラムブレーキ10には、バッキングプレート16の外周部に凸側が外側になる姿勢で互いに接近離間可能に略対称的に配設された円弧形状の一対のブレーキシュー18,20と、その一対のブレーキシュー18,20の一端部すなわち図1の上端部の間においてバッキングプレート16に位置固定に設けられたホイールシリンダ22と、一対のブレーキシュー18,20の一端部を互いに接近する方向に常時付勢してホイールシリンダ22に当接させるために、その一端部間に張設されたコイル状のリターンスプリング24と、そのコイル状のリターンスプリング24の内部を挿通するように一対のブレーキシュー18,20の一端部間に架け渡された非制動時における一対のブレーキシュー18,20とブレーキドラム12との間すなわちシュー間隙を自動的に調節するシュー間隙自動調節機構26と、一対のブレーキシュー18,20の他端部すなわち図1の下端部の間に位置固定に設けられたアンカー28と、一対のブレーキシュー18,20の下端部間に張設されてそれら下端部をアンカー28に常時当接させるスプリング30とが備えられている。
【0015】
一対のブレーキシュー18,20は、何れも、バッキングプレート16の板面と略平行な平板状を成し且つ図1に示す正面図において全体が円弧形状に湾曲したシューウェブ32,34と、それらの円弧形状を成す外周側端縁に沿って断面が略T字状を成すように一体的に固設された帯板状のシューリム36,38と、それらシューリム36,38の外周面に接着剤などで一体的に固着された摩擦材から成るライニング40,42とによってそれぞれ構成されている。また、一対のブレーキシュー18,20は、シューウェブ32およびシューウェブ34にそれぞれ配設されたシューホールドダウン装置44,46によってバッキングプレート16側へ押圧されることによりそのバッキングプレート16に対して面方向の相対移動可能に保持されている。また、ブレーキシュー18の一端部には、平板状のパーキングブレーキレバー48の基端部がピン50により相対回動可能に連結されている。バッキングプレート16、シューウェブ32,34、シューリム36,38は、いずれも鋼板から打ち抜かれ且つ所定の曲げ成形が施されたプレス部品である。
【0016】
シュー間隙自動調節機構26は、図2に示すように、一対のブレーキシュー18,20の一端部間に架け渡された非制動時の一対のブレーキシュー18,20の一端部間の離間量を制限するストラット52と、そのストラット52に備えられたアジャストレバー54とによって構成されている。
【0017】
ストラット52は、図2乃至図4に示すように、シューウェブ34に係合する係合凹部56aを有する第3ストラット部材56と、シューウェブ32およびパーキングブレーキレバー48に係合する第2ストラット部材58と、略円板形状のアジャストホイール60aを備えて第3ストラット部材56と第2ストラット部材58との間に配設され第2ストラット部材58と螺合する第1ストラット部材60とによって構成されている。
【0018】
第1ストラット部材60は、図2、図4に示すように、略円板形状のアジャストホイール60aの中心部から第3ストラット部材56側に略円柱形状に突き出す嵌合軸部60bと、略円板形状のアジャストホイール60aの中心部からその嵌合軸部60bとは反対方向すなわち第2ストラット部材58側に略円柱形状に突設するとともにその外周面の一部にねじ山が形成された雄ねじ60cを有する長手状の軸部60dとから構成されており、嵌合軸部60bは第3ストラット部材56に穿設された略円柱形状の嵌合穴56bに相対回転可能に嵌め入れられている。
【0019】
図2、図4、図5に示すように、長手状に形成された第2ストラット部材58には、その一端に第1ストラット部材60の長手状の軸部60dを嵌め入れるねじ穴58aと、その他端にねじ穴58aと連通する連通穴58bの開口58cと、その連通穴58bの内周面の一部に第1ストラット部材60の長手状の軸部60dに形成された雄ねじ60cと螺合する雌ねじ58dとが備えられており、アジャストレバー54によってアジャストホイール60aが所定方向に回動させられると、第1ストラット部材60の軸部60dの雄ねじ60cと第2ストラット部材58のねじ穴58aの雌ねじ58dとのねじの作用によって第2ストラット部材58がブレーキシュー18側に移動させられてストラット52の全長が増加する。
【0020】
上述のように長手状の第2ストラット部材58は、ねじ穴58aを一端に有し且つそのねじ穴58aと連通する連通穴58bの開口58cを他端に有しているので、メッキ槽内に浸漬した状態で第2ストラット部材58に電気メッキを行うにおいて、その第2ストラット部材58の表面全体に均一厚みの金属膜を析出させるためにメッキ液中のメッキ用金属イオンの濃度を均一にさせようとメッキ液を攪拌させると、第2ストラット部材58の連通穴58bを介してねじ穴58a内にメッキ液が循環してそのねじ穴58a内でのメッキ用金属イオンの濃度が維持されるので第2ストラット部材58のねじ穴58aの内周面にも均一な厚みのメッキを行うことができる。そのため、シュー間隙自動調節機構26を経年使用することによって第2ストラット部材58のねじ穴58aの内周面から発生する錆を好適に抑制することができる。
【0021】
また、第2ストラット部材58は、図5、図6に示すように、円筒状に形成されたものであり、その第2ストラット部材58の他端には、第2ストラット部材58の軸心Cに直交する方向において第2ストラット部材58の径Aより小さく且つブレーキシュー18のシューウェブ32の厚みDより大きい幅Bの切欠58eが形成されており、本実施例では第2ストラット部材58の切欠58eの幅Bはシューウェブ32の厚みDとパーキングブレーキレバー48の厚みEとを合わせたものと同等或いはそれより僅かに大きく設定されたものである。これにより、第2ストラット部材58の他端をブレーキシュー18のシューウェブ32およびパーキングブレーキレバー48に好適に係合させることができる。
【0022】
図1、図7に示すように、一対のブレーキシュー18,20の一端部には、ストラット52の一端部すなわち第3ストラット部材56の係合凹部56aを支持可能に切り欠かれた第1切欠部62と、ストラット52の他端部すなわち第2ストラット部材58の他端部を支持可能に切り欠かれた第2切欠部64とがそれぞれ備えられており、そのブレーキシュー18,20の一端部に切り欠かれた第1切欠部62および第2切欠部64がストラット52の軸心F上に配設されるように第1切欠部62はブレーキシュー18、20の一端部に切り欠かれた第2切欠部64の切欠面64aをさらに切り欠くことによって形成されるものである。そのため、ブレーキシュー18,20の一端部にストラット52の一端部または他端部どちらでも支持することができるので一対のブレーキシュー18,20の形状を共通化してもストラット52すなわち本実施例のシュー間隙自動調節機構26を好適にブレーキシュー18,20の一端部に支持することができる。また、図7で示す2点鎖線はストラット52の一端部である第3ストラット部材56の一端部の一部を仮想的に表すものである。
【0023】
アジャストレバー54は、例えば鋼板からプレス加工により図1、図2に示すように成形されており、そのアジャストレバー54の基端部54aに貫通された貫通穴にシューウェブ34上に突設された略円柱形状の軸部材66が相対回転可能に嵌め入れられることによって、アジャストレバー54はその軸部材66回りに回動可能にブレーキシュー20のシューウェブ34に配設されている。
【0024】
また、アジャストレバー54は、その基端部54aである回動中心部からアジャストホイール60a側に長手状に延長される延長部54bと、その延長部54bの先端部から略円板形状のアジャストホイール60aの外周面に備えられた複数の係合歯60eの一つに伸長し図示されていないブレーキペダル操作によるブレーキ制動時にその係合歯60eと係合する平板状の係合板54cと、延長部54bの中間部から第3ストラット部材56側に伸長しその第3ストラット部材56の係合凹部56aに当接する当接部54dとを一体的に備えている。また、アジャストレバー54には、図1に示すようにアジャストレバー54を軸部材66回り矢印G方向に回動するように常時付勢するために、延長部54bの中間部とブレーキシュー20の他端部との間に張設させたコイル状のスプリング68が備えられている。
【0025】
ブレーキペダルが操作されないブレーキ非制動時において、アジャストレバー54は、上記スプリング68の付勢力によって軸部材66回り矢印G方向に回動しようとするが当接部54dが第3ストラット部材56の係合凹部56aに当接され止められていることによって、軸部材66回りの回動が抑止される。また、リターンスプリング24の付勢力は、スプリング68の付勢力より大きいため、スプリング68の付勢力によってアジャストレバー54の当接部54dが第3ストラット部材56すなわちストラット52をブレーキシュー18側へ移動するように付勢しても一対のブレーキシュー18,20の一端部は拡開しない。
【0026】
ブレーキペダル操作によるブレーキ制動時において、一対のブレーキシュー18,20が拡開すると、アジャストレバー54の当接部54dは上記スプリング68の付勢力によって第2ストラット部材58がブレーキシュー18と当接するようにストラット52をブレーキシュー18側に移動させる。すなわち、ブレーキペダル操作によるブレーキ制動時において、一対のブレーキシュー18,20の拡開量と第3ストラット部材56とブレーキシュー20との隙間とは略同じであり、一対のブレーキシュー18,20の拡開量に応じてアジャストレバー54はその当接部54dが第3ストラット部材56と当接して止められるまで軸部材66回り矢印G方向に回動する。
【0027】
パーキングブレーキレバー48には、その先端部に連結された図止されていないパーキングブレーキケーブルが備えられており、図示されていないパーキングレバーの操作によりそのパーキングブレーキケーブルを介してパーキングブレーキレバー48の先端部がバッキングプレート16の中心側へ回動させられると、ブレーキシュー20がストラット52に押されて外周側へ移動させられるとともにブレーキシュー18がピン50に押されて外周側へ移動させられるので、一対のブレーキシュー18,20が拡開されて制動力が発生させられるようになっている。
【0028】
以上のように構成されたドラムブレーキ10は、図示されていないブレーキペダル操作に伴ってホイールシリンダ22のピストンが突き出されることにより一対のブレーキシュー18,20の一端部が互いに離隔する方向に拡開され制動力が発生する。そして、ブレーキペダル操作が繰り返し使用されてライニング40,42が摩耗しシュー間隙が大きくなると、ホイールシリンダ22により一対のブレーキシュー18、20が拡開させられることによって、アジャストレバー54の係合板54cはアジャストレバー54の軸部材66回りの回動に連動してアジャストホイール60aの係合歯60eと係合して噛み合いライニング40,42の摩耗量によってそのアジャストホイール60aが軸部60d回りに回動させられる。それにより、ストラット52が伸長させられシュー間隙が調節される。
【0029】
ブレーキペダル操作解除時には、リターンスプリング24の付勢力に従ってブレーキシュー20と第3ストラット部材56とが当接するまでストラット52がブレーキシュー20側へ移動させられるのに伴い、アジャストレバー54はスプリング68の付勢力に抗して矢印G方向とは反対方向に回動させられる。また、ブレーキペダル操作解除時のアジャストレバー54の戻り回動時には、軸部60d等の摩擦による回転抵抗によってアジャストホイール60aの戻り回転が阻止され、平板状の係合板54cが係合歯60eを乗り越えるようになっている。
【0030】
本実施例のシュー間隙自動調節機構26を備えたドラムブレーキ10によれば、第2ストラット部材58は、ねじ穴58aを一端に有し且つそのねじ穴58aと連通する連通穴58bの開口58cを他端に有しているため、第2ストラット部材58に電気メッキを行うにおいて、メッキ液中のメッキ用金属イオンの濃度を均一にさせるためにメッキ液を攪拌させると第2ストラット部材58の連通穴58bを介してねじ穴58a内にメッキ液が循環してそのねじ穴58a内でのメッキ用金属イオンの濃度が維持されるので第2ストラット部材58のねじ穴58aの内周面にも均一な厚みのメッキを行うことができる。そのため、第2ストラット部材58のねじ穴58aの内周面からの錆の発生を抑制することができる。
【0031】
また、本実施例のシュー間隙自動調節機構26を備えたドラムブレーキ10によれば、第2ストラット部材58は、円筒状に形成されたものであり、第2ストラット部材58の他端は、その第2ストラット部材58の軸心Cに直交する方向においてその第2ストラット部材58の径Aより小さく且つブレーキシュー18のシューウェブ32の厚みDより大きい幅Bの切欠58eが形成されており、一対のブレーキシュー18,20の一端部には、ストラット52の一端部を支持可能に切り欠かれた第1切欠部62とストラット52の他端部を支持可能に切り欠かれた第2切欠部64とがそれぞれ備えられているため、ブレーキシュー18,20の一端部にはストラット52の一端部または他端部どちらでも支持することができるので一対のブレーキシュー18,20の形状を共通化することができる。
【0032】
以上、本発明の一実施例を図面に基づいて説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0033】
たとえば、本実施例のシュー間隙自動調節機構26を備えたドラムブレーキ10において、第2ストラット部材58は円筒形状に形成されたものであったが第2ストラット部材58の形状は円筒形状に限定されるものではなく長手形状であればどのような形状であってもよい。
【0034】
その他一々例示はしないが、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0035】
10:ドラムブレーキ
12:ブレーキドラム(回転ドラム)
16:バッキングプレート
18,20:一対のブレーキシュー
26:シュー間隙自動調節機構
52:ストラット
54:アジャストレバー
58:第2ストラット部材
58a:ねじ穴
58b:連通穴
58c:開口
58d:雌ねじ
58e:切欠
60:第1ストラット部材
60c:雄ねじ
60d:軸部
62:第1切欠部
64:第2切欠部
A:第2ストラット部材の径
B:シューウェブの厚み
C:軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッキングプレート上に拡開可能に配設された一対のブレーキシューの拡開量に応じて回動するアジャストレバーと、長手状の軸部の外周面にねじ山が形成された第1ストラット部材および該第1ストラット部材の軸部を嵌め入れ且つ該軸部に形成された雄ねじと螺合する雌ねじが形成されたねじ穴を有する長手状の第2ストラット部材を有し、該一対のブレーキシューの一端部間に架け渡され非制動時の該一対のブレーキシューの一端部間の離間量を制限するストラットとを備え、制動時前記アジャストレバーによって前記第1ストラット部材の軸部が回動させられることにより前記ストラットが伸長し、非制動時における前記一対のブレーキシューと回転ドラムとの間のシュー間隙を自動的に調節するシュー間隙自動調節機構を備えたドラムブレーキであって、
前記第2ストラット部材は、前記ねじ穴を一端に有し且つそのねじ穴と連通する連通穴の開口を他端に有していることを特徴とするシュー間隙自動調節機構を備えたドラムブレーキ。
【請求項2】
前記第2ストラット部材は、円筒状に形成されたものであり、
前記第2ストラット部材の他端は、該第2ストラット部材の軸心に直交する方向において該第2ストラット部材の径より小さく且つ前記ブレーキシューのシューウェブの厚みより大きい幅の切欠が形成されており、
前記一対のブレーキシューの一端部には、前記ストラットの一端部を支持可能に切り欠かれた第1切欠部と前記ストラットの他端部を支持可能に切り欠かれた第2切欠部とがそれぞれ備えられていることを特徴とする請求項1のシュー間隙自動調節機構を備えたドラムブレーキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−27181(P2011−27181A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173717(P2009−173717)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(390005670)豊生ブレーキ工業株式会社 (104)
【Fターム(参考)】