説明

シラカバ抽出組成物およびシラカバ配合化粧料

【課題】 シラカバ抽出組成物の優れた機能や特性を、安定して発揮できるようにし、シラカバ配合化粧料として各種性能あるいは機能に優れたものを提供する。
【解決手段】 シラカバから抽出された組成物である。チロシナーゼ阻害活性、メラニン合成阻害活性、SOD様活性、・OH消去能活性、ヒアルロニダーゼ阻害活性、コラゲナーゼ阻害活性がそれぞれ特定条件を満足する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シラカバ抽出組成物およびシラカバ配合化粧料に関し、詳しくは、樹木のシラカバから抽出され、美白効果や抗老化効果があるとされているシラカバ抽出組成物と、このようなシラカバ抽出組成物を配合した化粧料とを対象にしている。
【背景技術】
【0002】
シラカバ(白樺、学術和名シラカンバ)は、カバノキ科カバノキ属に分類される樹木である。シラカバの樹皮などから抽出された抽出成分を、乳液などの化粧料に配合しておくと、肌の美白効果や老化防止効果があるとされている。
シラカバからの抽出物のうち、化粧料として有効な成分がどのような化合物であるのかは明確には判明していない。複数の有機物あるいは無機物からなる成分が相乗的に作用することで各種の機能を果たすものであると考えられる。
シラカバからの抽出組成物を利用した化粧料の技術が種々提案されている。
特許文献1には、シラカバ抽出物がコラゲナーゼ活性阻害剤として機能し、化粧料に配合することで、肌のシワ・タルミ改善効果があることが示されている(要約など)。
【0003】
特許文献2には、白樺エキスとビタミンCなどの還元剤を含有する美白組成物および化粧品が示されている(請求項1など)。
【特許文献1】特開2003−12531号公報
【特許文献2】特開2001−335498号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記したような、シラカバ抽出成分を配合してなる化粧料では、使用するシラカバの樹種や産地、採取時期などの違いによって、目的とする美肌効果などに大きなバラツキが生じるため、工業的に安定した品質性能の化粧料を提供することが難しかった。
分類学的にシラカバ(シラカンバ)に属する樹木にも、エゾノシラカンバ、エゾノオオシラカンバ、ホソバシラカンバなど、複数の種類があり、抽出成分が異なることがある。同じ種類の樹木でも、産地の気候や土質によって、抽出成分に変化が生じる。さらに、若木と老木とでも抽出成分が違う。四季の何れの時期に抽出原料を採取するかによっても、抽出成分が変わる。同じ樹木でも、抽出に用いる部位によって、抽出成分が異なる。
【0005】
工業的にシラカバ抽出物を利用したり、シラカバ抽出物を流通販売したりするには、品質性能に大きなバラツキが生じることは好ましくない。
本発明の課題は、前記したようなシラカバ抽出組成物あるいはシラカバ配合化粧料において、シラカバ抽出組成物の優れた機能や特性を、安定して発揮できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかるシラカバ抽出組成物は、シラカバから抽出された組成物であって、チロシナーゼ阻害活性が固形分換算で0.1〜3.0〔IC50(mg/ml)〕であり、メラニン合成阻害活性が固形分換算で0.01〜1.0〔IC50(mg/ml)〕であり、SOD様活性が固形分換算で10,000〜50,000〔SODunits/g〕であり、・OH消去能活性が固形分換算で0.05〜1.0〔IC50(mg/ml)〕であり、ヒアルロニダーゼ阻害活性が固形分換算で0.001〜0.1〔IC50(mg/ml)〕であり、コラゲナーゼ阻害活性が固形分換算で0.05〜50〔IC50(μg/ml)〕である。
【0007】
具体的な構成について説明する。
〔シラカバ抽出組成物〕
基本的には、従来、化粧料などに利用されていたシラカバ抽出物と共通する技術が適用される。
<抽出原料>
抽出に用いる樹木は、学術名カバノキ科カバノキ属シラカンバ(Betula platyphylla)に分類される。より詳しくは、エゾノシラカンバ、エゾノオオシラカンバ、マンシウシラカンバ、ホソバシラカンバ、オクエゾシラカンバなどと呼ばれる樹種が含まれる。本発明で規定する特性値を備えたシラカバ抽出組成物が得られれば、何れの樹種も利用できる。
【0008】
有効成分を含有する樹木の部位は、木部、樹皮、葉、根、樹液などが含まれる。樹皮は、さらに、外樹皮と内樹皮に分けられる。外樹皮は、外側にある樹皮で、この部分では細胞は活動をしていない。一方、内樹皮は、内側にある樹皮で、形成層が細胞を分裂してできた、生きた細胞からなる部分である。樹皮のうち、内樹皮が前記特性値を有する抽出組成物が効率的に得られる。
抽出原料の採取は、通常のシラカバ抽出物の製造技術が適用できる。抽出原料を採取する樹木の成育条件や成育年数、採取時期などを適切に設定することで、シラカバ抽出組成物の各種性能や機能を向上させることができる。
【0009】
<抽出方法>
基本的には、通常の植物原料からの有効成分の抽出技術が適用できる。
樹木原料は、通常、乾燥させたり粉砕したりして、粒状にしておくことで、抽出が良好に行なえる。原料の大きさは、できるだけ細かくした方が、抽出の効率が向上するが、少なくとも20mm以下程度の大きさまでが好ましい。
抽出媒体として、水のほか、アルコールなどの有機溶媒も使用できる。
抽出温度は、0〜140℃の範囲で設定できる。
抽出処理によって得られた抽出液は、濾過処理や精製処理を施すことができる。シラカバ抽出組成物は、通常、水などの溶媒に溶解した状態あるいは分散した状態で得られる。抽出液を乾燥させて、粉体などの固形物からなるシラカバ抽出組成物を得ることもできる。
【0010】
<抽出組成物>
シラカバ抽出組成物は、基本的には、シラカバ抽出成分のみからなることができる。シラカバ抽出成分が、水などに溶解していたり分散していたりする場合には、シラカバ抽出成分と溶媒あるいは分散媒とで構成される場合もある。
シラカバ抽出組成物には、シラカバ抽出成分が有する機能を有効に発揮させたり、長期間にわたって良好な機能を維持させたりするための成分を配合しておくこともできる。具体的には、pH調整剤や安定剤、防腐剤などが含まれてもよい。
シラカバ抽出組成物は、以下の特性を備えている。
【0011】
〔チロシナーゼ阻害活性〕
体内において、肌の美白に有害なメラニンは、アミノ酸の1種であるチロシンを基質としてチロシナーゼによってDOPA、DOPAキノンへと代謝されて合成される。この最初の反応がメラニン合成の律速段階となる。このように、チロシナーゼは、チロシンが酸化されメラニンへと合成される過程で作用する。チロシナーゼが活性化すると、肌にシミや色素沈着などの問題を引き起こす。チロシナーゼの活性作用を阻害できれば、肌の美白などに有効である。
チロシナーゼ阻害活性は、酵素活性を50%阻害するのに必要な濃度の値:IC50(mg/ml)で評価できる。この値が小さいほど、チロシナーゼ阻害活性が優れ、チロシナーゼを原因とするメラニン色素の合成が抑制され、美白効果が優れていると評価される。
【0012】
具体的には、チロシナーゼ阻害活性は、固形分換算で0.1〜3.0〔IC50(mg/ml)〕である。0.1〜2.0〔IC50(mg/ml)〕がより望ましい。
〔メラニン合成阻害活性〕
メラニン色素合成は、複数の要素が複合的に合わさって発生する。その要素として、前記したチロシナーゼのほか、メラニン色素細胞を刺激する活性酸素などがある。メラニン色素の合成に関わる全ての要素を総合的に評価することが有効である。
したがって、メラニン合成阻害活性は、前項のチロシナーゼ阻害活性とも関連するが、チロシナーゼ以外の原因によるメラニン色素の合成も含めて評価される。
【0013】
メラニン合成阻害活性も、活性を50%阻害するのに必要な濃度の値:IC50(mg/ml)で評価できる。この値が小さいほど、メラニン合成阻害活性が高く、肌の美白効果に優れていると評価される。
具体的には、メラニン合成阻害活性は、固形分換算で0.01〜1.0〔IC50(mg/ml)〕である。0.01〜0.5〔IC50(mg/ml)〕がより望ましい。
〔SOD様活性〕
活性酸素の一つにスーパーオキシドがある。このスーパーオキシドは、さらに強力な活性酸素である下記・OHを発生させる原因になる。SOD(スーパーオキシドディスムダーゼ)は、スーパーオキシドを消去する機能を有する酵素である。
【0014】
但し、SODそのものを人工的に生産するのは難しい。熱的に不安定で失活し易く精製が困難であり、高価である。SOD様活性試験は、各種の物質に対して、同等の活性機能を示すSOD単位の量〔SODunits/g〕で評価する。この値が大きいほど、SOD様活性が高く、活性酸素を無害化して、肌の酸化による老化などを抑制できる。
具体的には、SOD様活性が、固形分換算で10,000〜50,000〔SODunits/g〕が望ましい。20,000〜50,000〔SODunits/g〕がより望ましい。
〔・OH消去能活性〕
体内あるいは体表では、活性酸素と呼ばれる老化、発ガン作用のある物質が常に発生している。・OH(ヒドロキシラジカル)は、体内で発生する活性酸素のうち、肌にとって非常に有害であることが知られている活性酸素である。・OHを消去できれば、体内酸化が防止できる。肌の老化を抑制することができる。
【0015】
・OH消去能活性も、・OHの活性を50%阻害するのに必要な濃度の値:IC50(mg/ml)で評価できる。この値が小さいほど、・OHが消去されることになり、・OH消去能活性が高く、肌の老化防止や保護改善に有効であることを示す。
具体的には、・OH消去能活性が、固形分換算で0.05〜1.0〔IC50(mg/ml)〕である。0.1〜1.0〔IC50(mg/ml)〕が望ましい。
〔ヒアルロニダーゼ阻害活性〕
ヒアルロン酸は、肌の潤いに関与する成分の一つで、これを分解する酵素がヒアルロニダーゼである。ヒアルロニダーゼを阻害することができれば、肌の老化を抑制することができる。
【0016】
ヒアルロニダーゼ阻害活性も、ヒアルロニダーゼの活性を50%阻害するのに必要な濃度の値:IC50(mg/ml)で評価できる。この値が小さいほど、ヒアルロニダーゼ阻害活性が高く、肌の老化防止や保護改善に有効であることを示す。
具体的には、ヒアルロニダーゼ阻害活性が、固形分換算で0.001〜0.1〔IC50(mg/ml)〕である。0.001〜0.05〔IC50(mg/ml)〕が望ましい。
〔コラゲナーゼ阻害活性〕
コラーゲンは皮膚に多く存在する蛋白質で、これを分解する酵素がコラゲナーゼである。コラゲナーゼを阻害することができれば、シワやタルミなどの肌の老化を抑制することができる。
【0017】
コラゲナーゼ阻害活性も、コラゲナーゼの活性を50%阻害するのに必要な濃度の値:IC50(μg/ml)で評価できる。この値が小さいほど、コラゲナーゼ阻害活性が高く、肌の老化防止や保護改善に有効であることを示す。
具体的には、コラゲナーゼ阻害活性が、固形分換算で0.05〜50〔IC50(μg/ml)〕である。0.05〜10〔IC50(μg/ml)〕が望ましい。
〔シラカバ配合化粧料〕
前記特定のシラカバ抽出組成物を含む以外は、通常の化粧料と同様の技術が適用できる。
【0018】
特定のシラカバ抽出組成物は、化粧料の全体量に対して0.001〜5重量%含む。好ましくは、0.01〜1重量%である。
シラカバ抽出組成物以外の配合成分については、化粧料の種類や目的、要求性能などに合わせて、通常の化粧料と同様の成分を同様に配合割合で組み合わせることができる。
化粧料として、皮膚用の化粧品に有効である。例えば、美容液、コールドクリームや乳液、化粧水などの肌に付ける基礎化粧品のほか、口紅などの皮膚用化粧品、整髪料などの髪用化粧品、洗顔料、アフターシェーブローション、その他、皮膚と接触する形態で使用される化粧品に有効である。
【0019】
一般的な化粧料の添加材料として、各種油脂類やアルコール類、植物生薬類、動物性成分、顔料、紫外線吸収/遮断剤、香料、安定剤などが挙げられる。
化粧料の具体的処方は、通常の化粧料と共通する技術が適用できる。各種文献に記載された化粧料処方において、何れかの配合成分の代わりに本発明のシラカバ抽出組成物を用いたり加えたりすればよい。
<pH>
化粧料のpHを、pH3.0〜7.0に設定しておくことが有効である。pHが7.0を超えるアルカリ条件になると褐変現象が生じやすくなる。しかし、pH3.0〜7.0に設定しておくと、褐変が生じ難くなり、着色を嫌う化粧料には非常に有用である。
【0020】
pH調整には、通常の化粧料で使用されているpH調整剤が使用できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかるシラカバ抽出組成物は、品質性能にバラツキが生じ易い天然採取物であるシラカバ抽出組成物として、チロシナーゼ阻害活性、メラニン合成阻害活性、SOD様活性、・OH消去能活性、ヒアルロニダーゼ阻害活性およびコラゲナーゼ阻害活性という工業的に評価し易い特定の特性値が所定の条件を満足するものを用いることで、シラカバ抽出組成物が有する各種機能を、工業的に安定して発揮させることが可能になる。
その結果、品質性能の安定した商品価値を高いシラカバ配合化粧料など、シラカバ抽出組成物を利用する製品を、工業的に安定して提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明を具体的に実施し、その性能を評価した結果を示す。
〔シラカバ抽出組成物〕
<実施例1>
シラカバの内樹皮だけを採取した。採取された内樹皮を乾燥させ、粉砕機で粒径1mm以下に粉砕した。粉砕物50gに対して、蒸留水500mlを加え、オートクレーブを用い、121℃20分間の抽出を行なった。得られた抽出液を、段階濾過したあと、0.45μmフィルターで最終濾過を行ない、シラカバ抽出組成物を含む溶液を得た。
<実施例2>
実施例1において、抽出原料として、シラカバの内樹皮の代わりに外樹皮のみを用いた以外は、実施例1と同様の工程を経て、シラカバ抽出組成物を含む溶液を得た。
【0023】
<実施例3>
実施例1において、抽出原料として、シラカバの内樹皮のみの代わりに、内樹皮と外樹皮との両方を用いた以外は、実施例1と同様の工程を経て、シラカバ抽出組成物を含む溶液を得た。
<比較例1>
実施例1において、抽出原料として、シラカバの内樹皮の代わりに、シラカバの葉を用いた以外は、実施例1と同様の工程を経て、シラカバ抽出組成物を含む溶液を得た。
<比較例2>
シラカバから採取されたシラカバ樹液を、0.45μmフィルターで濾過して得られた溶液を用いた。
【0024】
〔評価試験〕
基本的には、当該技術分野において一般的に知られている測定装置や測定方法、手順を採用した。以下に説明する試験方法とは異なっていても、同等の評価ができる試験技術であれば採用することが可能である。
<チロシナーゼ阻害活性>
メラニン合成過程に関与するチロシナーゼの活性に対する阻害機能を評価する。
測定試料1mlを試験管にとり、3mML−DOPA(0.2Mリン酸バッファー:pH6.5にて溶解)1mlと0.2Mリン酸バッファー0.5mlとを加え、撹拌したあと、37℃で20分間、加温する。
【0025】
これとは別に、チロシナーゼ(マッシュルーム由来)を0.2Mリン酸バッファーにて300units/mlに混合して、37℃で20分間、加温する。このチロシナーゼ溶液0.5mlを、前記測定試料溶液に添加し、撹拌したあと、カイネティックソフトを使用して、吸光値を直ちに測定する。測定条件は、測定波長475nm、計算区間0〜15秒である。コントロールとして、測定試料の代わりに0.2Mリン酸バッファーを加えて、同様の測定を行なう。
チロシナーゼ阻害活性率を、下式で算出する。
チロシナーゼ阻害活性率(%)=
〔1−測定試料の初速度(OD/min)/コントロールの初速度(OD/min)〕 ×100
その結果から、測定試料の固形分換算で、チロシナーゼの活性を50%阻害するのに必要な濃度〔IC50(mg/ml)〕を算出する。
【0026】
<メラニン合成阻害活性>
6ウェルプレートに、メラニン産生を行なうマウス由来のB16melanoma細胞を、1×10cells/mlの濃度で3ml撒き、37℃、5%COの条件下で1日培養した。培地を除去したあと、0.2μmフィルターで濾過滅菌した測定試料を終濃度6、24、50μg/mlで含む培地を加えて、37℃、5%COの条件下で3日培養する。培地を除去したあと、EGTA−トリプシン溶液(PBS)で細胞を剥がし、1.5mlマイクロテストチューブに細胞を集め、12000rpmで2〜5分間、遠心分離処理を行なう。上清を除去し、1N水酸化ナトリウムを1ml加え、100℃で2〜3時間加熱処理して、メラニン色素を抽出する。分光光度計でメラニン色素の測定を行なう(405nm)。コントロールとして、測定試料を含まない培地だけで同様の培養を行なう。細胞のタンパク濃度を、〔DC−Protein Assay(BIO−RAD社製)〕で測定する。
【0027】
メラニン合成阻害率を、総タンパク量当たりのメラニン量から、下式で算出する。
メラニン合成阻害率(%)=
〔1−メラニン量(測定試料)/メラニン量(コントロール)〕×100
このメラニン合成阻害率から、測定試料の固形分換算で、メラニンの合成を50%阻害するのに必要な濃度〔IC50(mg/ml)〕を算出する。
<SOD様活性>
同仁化学研究所社製〔SOD Assay Kit−WST〕を用い、96ウェルプレートにて測定する。試薬は、キット付属のものを用いる。各ウェルに、試料液を20μlずつ加えたあと、〔WST working solution〕を200μlずつ加え、プレートミキサーでよく撹拌する。ブランクのウェルには、〔Dilution buffer〕を20μlずつ加える。試料液を入れたウェルとブランクのウェルとにそれぞれ、〔Enzyme working solution〕を20μlずつ加える。その後、37℃で20分間インキュベートし、プレートリーダーで450nmにおける吸光値を測定する。
【0028】
下式により、スーパーオキシドの阻害率を算出する。
スーパーオキシド阻害率(%)=
〔{(E[BL]−E[BL−BL])−(E[S]−E[S−BL])}
/(E[BL]−E[BL−BL])〕×100
上式の各記号は、以下の測定条件で測定された吸光値である。
【0029】
【表1】

【0030】
測定試料のスーパーオキシド阻害率(%)と、あらかじめ求められたSOD(unit)のスーパーオキシド阻害率(%)による検量線とから、測定試料の固形分換算で、測定試料と同等の活性機能を示すSOD単位の量すなわちSOD様活性値〔SODunits/g〕を算出する。
<・OH消去能活性>
150mM−NaClを0.5ml、および、5mMデオキシリボースを0.2mlに、測定試料0.15mlを加えて撹拌する。ここに、2mM硫酸アンモニウム鉄(II)を加え、続いて、0.03%Hを0.05ml加える。さらに、1%チオバルビツール酸を0.5ml加え、2.8%トリクロロ酢酸を0.5ml加えて撹拌する。ついで、水浴にて100℃で15分間加熱したあと、直後に氷冷し、分光光度計(535nm)で測定する。コントロールとして、測定試料の代わりに蒸留水を加えて、同様の測定を行なう。
【0031】
下式で、・OH消去率(%)を算出する。
・OH消去率(%)=
〔1−OD535nm(測定試料)/OD535nm(コントロール)〕×100
この・OH消去率から、測定試料の固形分換算で、・OHの活性を50%阻害するのに必要な濃度〔IC50(mg/ml)〕を算出する。
<コラゲナーゼ阻害活性>
FITC(イソチオシアン酸フルオレセイン)で標識されたコラーゲンを5mM酢酸にて1mg/mlに混合させた溶液50μlに、測定試料50μlと、コラゲナーゼ溶液(1unit/ml)を50μl加える。これを37℃で1時間加温する。その後煮沸にて、反応を停止し、60%EtOH、0.5MのNaCl、0.125MのTris−HClおよび80mMのo−フェナントロリンからなる反応停止液を200μl加え、その後、遠心分離装置により遠心分離し、遠心の上澄みを回収して、前記回収液の蛍光(Ex:495nm,Em:520nm)を測定する。同時に、コラゲナーゼの濃度を変えた検量線を作成し、測定試料の固形分換算で、コラゲナーゼ活性を50%阻害するのに必要な濃度〔IC50(μg/ml)〕を算出する。
【0032】
<ヒアルロニダーゼ阻害活性>
測定試料200μLに、0.1Mの酢酸緩衝液(pH4.0)にヒアルロニダーゼが2000NFunit/mlで溶解している酵素溶液を100μl加え、37℃で20分間加温する。その後、0.1Mの酢酸緩衝液(pH4.0)にcompound 48/80が0.5mg/mlで溶解している溶液を200μl加え、37℃で20分間加温する。さらに、0.1Mの酢酸緩衝液(pH4.0)にヒアルロン酸カリウム塩が0.4mg/mlで溶解している基質溶液を500μl加え、37℃で40分間加温する。その後、0.4NのNaOHを200μl加え、氷冷の後、ホウ酸溶液(5%、pH9.1)を200μl加えて、100℃で3分間加温する。これを氷冷した後、1%のp−ジメチルベンズアルデヒド溶液を6ml加え、37℃で20分間加温する。その後、分光光度計(585nm)で吸光度を測定する。
【0033】
下式で、ヒアルロニダーゼ阻害率(%)を算出する。なお、下式において、緩衝液とは、測定試料を加えないで上記操作を行った際に得られる緩衝液のことであり、測定試料とは上記操作を全て行って得られる溶液のことである。また、ブランクとは、基質溶液を添加していないものである。
ヒアルロニダーゼ阻害率(%)=
〔(緩衝液での値−緩衝液でのブランク)−(測定試料での値−測定試料でのブランク )〕÷(緩衝液での値−緩衝液でのブランク)×100
このヒアルロニダーゼ阻害率から、測定試料の固形分換算で、ヒアルロニダーゼ活性を50%阻害するのに必要な濃度〔IC50(mg/ml)〕を算出する。
〔試験結果〕
試験結果を下表に示す。
【0034】
【表2】

【0035】
<評価>
(1)実施例1〜3および比較例1、2は何れも、シラカバを原料として得られたものであるが、各特性値はかなり違っている。
比較例1(シラカバ葉抽出)は、本願発明の特性値条件のうち、SOD様活性値の条件範囲から外れている。肌の酸化による老化を防止する機能の点で、実施例1〜3よりも劣るものとなる。
比較例2(シラカバ樹液)は、ヒアルロニダーゼ阻害活性、コラゲナーゼ阻害活性、SOD様活性について、本願発明の特性値条件を満足しない。実施例1〜3に比べて、肌の老化防止機能や美白機能に劣るものとなる。
【0036】
(2)実施例1〜3についても、各特性値には違いがある。ほとんど全ての特性値において、実施例1(内樹皮)が優れた性能を発揮している。
〔化粧品の実証試験〕
前記実施例および比較例のシラカバ由来組成物を用いて、具体的なシラカバ配合化粧料を製造し、その性能を実証した。
<化粧料の製造>
表3に示す配合で化粧料を製造し、それらを実施例4,5とした。なお、シラカバ由来組成物は、実施例1で得られたものを用いた。無添加区として、シラカバ由来組成物の代わりに精製水を配合したものも製造し、比較例とした。また、表3中の数値は重量%を意味する。
【0037】
【表3】

【0038】
<沈殿および色の評価>
各化粧料を、目視観察して、色と沈殿を以下の基準で評価した。
色〔透明:○、少し黄色に着色:△、黄色が目立つ:×〕
沈殿〔なし:○、わずかに認められる:△、明確に認められる:×〕
<化粧料の官能試験>
製造された化粧料の官能試験を、モニター(年齢20〜50代の女性各10名)によって実施し、美白効果、保湿効果、抗老化効果について評価した。抗老化効果の指標として、シワ、ハリ、タルミの改善を評価した。モニターは、2ヶ月間にわたって、毎日、朝と夜との2回、洗顔後に美容液を適量で顔に塗り、以下の基準で判定した。
【0039】
有効 :使用前に比べて改善効果が認められた。
やや有効:使用前に比べて改善効果がやや認められた。
無効 :使用前に比べて変化なし。
試験の結果を、下表に示す。
【0040】
【表4】

【0041】
<評価>
表4を見ると、実施例1のシラカバ抽出組成物を配合した実施例4,5にかかる化粧料は、精製水を配合した比較例と比べて、シワ、ハリ、タルミ、美白、保湿の全ての評価について上回っていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のシラカバ抽出組成物は、例えば、皮膚用の化粧料に使用できる。皮膚に対する種々の活性機能を有効に発揮させることができ、美白効果、抗老化効果、保湿効果、シミなどの改善効果などの点で総合的に優れているとともに安定した品質性能を有するシラカバ配合化粧料を、工業的に安定して経済的に提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シラカバから抽出された組成物であって、
チロシナーゼ阻害活性が固形分換算で0.1〜3.0〔IC50(mg/ml)〕であり、メラニン合成阻害活性が固形分換算で0.01〜1.0〔IC50(mg/ml)〕であり、SOD様活性が固形分換算で10,000〜50,000〔SODunits/g〕であり、・OH消去能活性が固形分換算で0.05〜1.0〔IC50(mg/ml)〕であり、ヒアルロニダーゼ阻害活性が固形分換算で0.001〜0.1〔IC50(mg/ml)〕であり、コラゲナーゼ阻害活性が固形分換算で0.05〜50〔IC50(μg/ml)〕である、
シラカバ抽出組成物。
【請求項2】
前記シラカバ抽出組成物が、シラカバの内樹皮から抽出された組成物である、請求項1に記載のシラカバ抽出組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシラカバ抽出組成物を、全体量の0.001〜5重量%含む、シラカバ配合化粧料。

【公開番号】特開2008−88109(P2008−88109A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−270846(P2006−270846)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【出願人】(000190943)新田ゼラチン株式会社 (43)
【Fターム(参考)】