説明

シラン架橋および縮合反応のためのジスタノキサン触媒

電線またはケーブル上に湿気硬化性組成物の被覆剤を塗布する段階、およびその湿気硬化性組成物を水と反応させる段階を含むプロセスによって加工品(例えば、被覆または絶縁電線またはケーブル)を作製し、ここで湿気硬化性組成物は、加水分解性反応性シラン基を有する少なくとも1つの樹脂と、+4酸化状態およびビス(アルコキシド)配位子を有するスズにより特徴付けられるスズ触媒とを含む。本プロセスの製品としては、外被を含み、その外被が、加水分解性反応性シラン基を有する少なくとも1つのポリオレフィン樹脂およびスズ触媒を含み、そのスズ触媒が、ビス(アルコキシド)配位子を有し、+4酸化状態を有するスズにより特徴付けられる、電線またはケーブルが挙げられる。本プロセスの製品としては、外被を含み、その外被が、(i)加水分解性反応性シラン基を有する少なくとも1つのポリオレフィン樹脂と水の反応生成物、および(ii)少なくとも1つのスズ触媒を含み、そのスズ触媒が、ビス(アルコキシド)配位子を有し、+4酸化状態を有するスズにより特徴付けられる、電線またはケーブルも挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シラン架橋用組成物および縮合反応に関する。1つの態様において、本発明は、湿気硬化性、シラン架橋用組成物に関し、一方、別の態様において、本発明は、ジスタノキサン触媒を含むそれら組成物に関する。さらに別の態様において、本発明は、ジスタンノキサン触媒の作用によって湿気硬化したシラン架橋物品に関する。
【背景技術】
【0002】
シラン架橋性ポリマーおよびこれらのポリマーを含む組成物は、当分野において周知である、例えば、米国特許第6,005,055号、WO 02/12354およびWO 02/12355。前記ポリマーは、典型的に、1つまたはそれ以上の不飽和シラン化合物、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルジメトキシエトキシシランなど、が組み込まれたポリオレフィン、例えばポリエチレンである。前記ポリマーは、典型的には触媒の存在下、湿気への曝露に基づき架橋される。これらのポリマーは、無数の用途に、特に、電線・ケーブル産業における絶縁被覆材として、使われている。
【0003】
シラン架橋性ポリマーを使用する上で重要なことは、それらの硬化速度である。一般に、硬化速度が速いほど、使用効率がよい。ポリマーの硬化または架橋速度は、多くの可変要素の関数であり、そのうちの少なからぬものが触媒である。不飽和シラン官能性を有するポリオレフィンを架橋させる際に使用するための多くの触媒が既知であり、これらには、カルボン酸、有機塩基ならびに無機および有機酸の金属塩などがある。金属カルボン酸塩の例は、ジ−n−ブチルジラウリルスズ(DBTDL)であり、有機塩基の例は、ピリジンであり、無機酸の例は、硫酸であり、有機酸の例は、トルエンおよびナフタレンジジスタノキサンである。これらの触媒は、程度に差はあるもののすべて有効であり、新しい触媒、特に、それらが、この目的において現在利用できる触媒と比較して、速い、または水溶性が低い、または架橋ポリマーをあまり変色させない、または多数の異なる事項のうちのいずれか1つの改善をもたらす程に、新しい触媒は、産業界において継続的な関心事である。
【発明の開示】
【0004】
1つの好ましい実施形態において、本発明は、加水分解性反応性シラン基を有する少なくとも1つのポリマーまたは樹脂、好ましくはポリオレフィン樹脂と、スズ触媒とを含む物品であり、前記スズ触媒は、ビス(アルコキシド)配位子を有し、+4酸化状態を有するスズにより特徴付けられる。一定の実施形態において、本発明の物品は、電線またはケーブル外被、絶縁材または半導電層;パイプ;および発泡体であり得る。
【0005】
別の好ましい実施形態において、本発明は、(i)加水分解性反応性シラン基を有する少なくとも1つのポリマーまたは樹脂、好ましくはポリオレフィン樹脂、と水との反応生成物および(ii)少なくとも1つのスズ触媒を含む製品であり、前記スズ触媒は、ビス(アルコキシド)配位子を有し、+4酸化状態を有するスズにより特徴付けられる。一定の実施形態において、本発明の物品は、電線またはケーブル外被、絶縁材または半導電層;パイプ;および発泡体であり得る。
【0006】
さらに別の好ましい実施形態において、本発明は、被覆または絶縁電線またはケーブルを作製するためのプロセスであり、このプロセスは、湿気硬化性組成物の被覆剤を電線またはケーブルに塗布する段階;およびその湿気硬化性組成物を水と反応させる段階を含み、前記湿気硬化性組成物は、加水分解性反応性シラン基を有する少なくとも1つの樹脂と、+4酸化状態およびビス(アルコキシド)配位子を有するスズにより特徴付けられるスズ触媒とを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のシラン架橋性ポリマー組成物は、(i)少なくとも1つのシラン架橋性ポリマー、および(ii)触媒量の少なくとも1つのジスタノキサン触媒を含む。本シラン架橋ポリマーは、シラン官能化オレフィン系ポリマー、例えば、シラン官能化ポリエチレン、ポリプロピレンなど、およびこれらのポリマーの様々なブレンドを含む。好ましいシラン官能化オレフィン系ポリマーとしては、(i)エチレンと加水分解性シランとのコポリマー、(ii)エチレンと、1つまたはそれ以上のC3またはそれ以上のα−オレフィンまたは不飽和エステルと、加水分解性シランとのコポリマー、(iii)その骨格にグラフトされた加水分解性シランを有するエチレンのホモポリマー、および(iv)エチレンと1つまたはそれ以上のC3またはそれ以上のα−オレフィンまたは不飽和エステルとのコポリマーであって、その骨格にグラフトされた加水分解性シランを有するコポリマー、が挙げられる。
【0008】
ここで用いるポリエチレンポリマーは、エチレンのホモポリマー、またはエチレンと、少量の、炭素原子数3から20、好ましくは炭素原子数4から12の、1つまたはそれ以上のαオレフィンと、場合によってはジエンとのコポリマー、またはそれらホモポリマーとコポリマーの混合物もしくはブレンドである。前記混合物は、インサイチュー(in situ)ブレンドである場合もあり、または後反応器(post-reactor)(または機械的)ブレンドである場合もある。例示的α−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンおよび1−オクテンが挙げられる。エチレンおよび不飽和エステルを含むポリエチレンの例は、エチレンとビニルアセテートまたはアクリル酸もしくはメタクリル酸エステルとのコポリマーである。
【0009】
前記ポリエチレンは、均一である場合もあり、または不均一である場合もある。均一ポリエチレンは、典型的に、約1.5から約3.5の多分散性(Mw/Mn)、本質的に均一なコモノマー分布、および示差走査熱量計(DSC)によって測定して単一で比較的低い融点を有する。不均一ポリエチレンは、典型的に、3.5より大きな多分散性を有し、均一なコモノマー分布はない。Mwは、重量平均分子量であり、Mnは、数平均分子量である。
【0010】
ポリエチレンは、約0.850から約0.970g/ccの範囲、好ましくは約0.870から約0.930g/ccの範囲の密度を有する。それらは、約0.01から約2000g/10分の範囲、好ましくは約0.05から約1000g/10分、最も好ましくは約0.10から約50g/10分のメルトインデックス(I2)も有する。ポリエチレンがホモポリマーである場合には、そのI2は、好ましくは約0.75から約3g/10分である。このI2は、ASTM D−1238、条件Eに従って決定し、190℃および2.16kgで測定する。
【0011】
本発明の実施の際に使用されるポリエチレンは、従来の条件および技術を使用し、溶液法、スラリー法、高圧法および気相法をはじめとする任意のプロセスによって作製することができる。触媒系としては、チーグラー・ナッタ触媒、フィリップス触媒、および様々なシングルサイト触媒、例えばメタロセン触媒、幾何拘束型触媒などが挙げられる。触媒は、支持体と共にまたは無しで使用される。
【0012】
有用なポリエチレンとしては、高圧法によって製造されたエチレンの低密度ホモポリマー類(HP−LDPE類)、線状低密度ポリエチレン類(LLDPE類)、超低密度ポリエチレン類(VLDPE類)、極超低密度ポリエチレン類(ULDPE類)、中密度ポリエチレン類(MDPE類)、高密度ポリエチレン類(HDPE類)、ならびにメタロセンおよび幾何拘束型コポリマー類が挙げられる。
【0013】
高圧法は、典型的に、フリーラジカルによって開始される重合であり、管状反応器または攪拌オートクレーブ内で行われる。前記管状反応器内における圧力は、約25,000から約45,000psiの範囲内であり、温度は、約200から約350℃の範囲である。前記攪拌オートクレーブにおける圧力は、約10,000から約30,000psiの範囲であり、温度は、約175から約250℃の範囲である。
【0014】
エチレンおよび不飽和エステルから成るコポリマーは周知であり、従来の高圧技術によって作製することができる。前記不飽和エステルは、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、またはビニルカルボキシレートであり得る。前記アルキル基は、典型的に、1から8個の炭素原子、好ましくは1から4個の炭素原子を有する。前記カルボキシレート基は、典型的に、2から8個の炭素原子、好ましくは2から5個の炭素原子を有する。前記エステルコモノマーに起因する前記コポリマーの部分は、そのコポリマーの重量に基づき約5から約50重量パーセントの範囲、好ましくは約15から約40重量パーセントの範囲であり得る。前記アクリレートおよびメタクリレートの例は、エチルアクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、および2−エチルヘキシルアクリレートである。
【0015】
前記ビニルカルボキシレートの例は、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、およびビニルブタノエートである。エチレン/不飽和エステルコポリマーのメルトインデックスは、典型的に、約0.5から約50g/10分の範囲、好ましくは約2から約25g/10分の範囲である。
【0016】
エチレンとビニルシランとのコポリマーも使用してもよい。適するシランの例は、ビニルトリメトキシシランおよびビニルトリエトキシシランである。このようなポリマーは、典型的に、高圧法を使用して製造される。エチレンビニルシランコポリマーは、湿気で開始される架橋に特によく適する。
【0017】
前記VLDPEまたはULDPEは、典型的に、エチレンと、3から12個の炭素、好ましくは3から8個の炭素を有するα−オレフィンとのコポリマーである。前記VLDPEまたはULDPEの密度は、典型的に、約0.870から約0.915g/ccの範囲である。前記VLDPEまたはULDPEのメルトインデックスは、典型的に、約0.1から約20g/10分の範囲、好ましくは約0.3から約5g/10分の範囲である。エチレン以外の、コモノマーに起因するVLDPEまたはULDPEの部分は、そのコポリマーの重量に基づき約1から約49重量パーセントの範囲、好ましくは約15から約40重量パーセントの範囲である。
【0018】
第三のコモノマー、例えば、別のα−オレフィンまたはジエン、例えばエチリデンノルボルネン、ブタジエン、1,4−ヘキサジエンもしくはジシクロペンタジエンを含むことができる。エチレン/プロピレンコポリマーは、一般的に、EPR類と呼ばれ、エチレン/プロピレン/ジエンターポリマーは、一般的に、EPDMと呼ばれる。前記第三コモノマーは、典型的に、そのコポリマーの重量に基づき約1から約15重量パーセントの量で存在し、好ましくは、約1から約10重量パーセントの量で存在する。好ましくは、前記コポリマーは、エチレンを含む2つまたは3つのコモノマーを含有する。
【0019】
前記LLDPEは、VLDPE、ULDPEおよびMDPEを含むことができ、これらも線状であるが、一般的に、約0.916から約0.925g/ccの範囲の密度を有する。前記LLDPEは、エチレンと、3から12個の炭素原子、好ましくは3から8個の炭素原子を有する1つまたはそれ以上のα−オレフィンとのコポリマーであり得る。そのメルトインデックスは、約1から約20g/10分の範囲、好ましくは約3から約8g/10分の範囲である。
【0020】
任意のポリプロピレンをこれらの組成物に使用してもよい。例としては、プロピレンのホモポリマー、プロピレンと他のオレフィンとのコポリマー、およびプロピレンとエチレンとジエン(例えば、ノルボルナジエンおよびデカジエン)のターポリマーが挙げられる。加えて、ポリプロピレンを他のポリマー、例えばEPRまたはEPDMと共に分散またはブレンドしてもよい。適するポリプロピレンとしては、熱可塑性エラストマー類(TPE類)、熱可塑性オレフィン類(TPO類)および熱可塑性バルカネート類(TPV類)が挙げられる。ポリプロピレンの例は、Polypropylene Handbook: Polymerization, Characterization, Properties, Processing, Applications 3-14, 113-176 (E. Moore, Jr. ed., 1996)に記載されている。このポリプロピレンは、そのポリマー鎖骨格にグラフトされる加水分解性シラン官能基で官能化しなければならない。そのような官能化は、当分野において周知である。
【0021】
ビニルアルコキシシラン(例えば、ビニルトリメトキシシランおよびビニルトリエトキシシラン)は、シラン官能化オレフィン系ポリマーを形成するためのグラフト化または共重合に適するシラン化合物である。
【0022】
シラングラフトポリマー、およびシラングラフトポリマーを製造するために使用される中間体は、単独で使用される場合もあり、またはポリマーブレンドで1つまたはそれ以上の追加のポリマーと併用される場合もある。追加のポリマーが存在する場合、それらは、本発明について上で説明した修飾(modified)もしくは非修飾(unmodified)均一ポリマー、および/または任意の修飾もしくは非修飾不均一ポリマーのいずれから選択してもよい。
【0023】
本発明のシラングラフトポリマーと場合によっては併用される不均一ポリエチレンは、2つの広いカテゴリー、高温および高圧でフリーラジカル開始剤を用いて作製されるもの、ならびに高温および比較的低圧で配位触媒を用いて作製されるもの、に分類される。前の方のものは、一般的に、低密度ポリエチレン(LDPE)として既知であり、ならびにそのポリマー骨格よりぶら下がった(pendant(ペンダント))重合モノマー単位の分枝鎖により特徴付けられる。LDPEポリマーは、一般的に、約0.910g/ccから約0.935g/ccの間の密度を有する。配位触媒、例えば、チーグラー・ナッタまたはフィリップス触媒の使用によって作製されたエチレンポリマーおよびコポリマーは、一般的に、その骨格よりぶら下がった重合モノマー単位の分枝鎖が実質的に不在であるため、線状ポリマーとして知られている。約0.941から約0.965g/ccの密度を一般的に有する高密度ポリエチレン(HDPE)は、典型的にはエチレンのホモポリマーであり、これは、エチレンとアルファ−オレフィンの様々な線状コポリマーを基準にして、比較的少ない分枝鎖を含有する。HDPEは周知であり、様々なグレードのものが市販されており、本発明において使用してもよい。密度は、ASTM D−792の手順に従って測定される。
【0024】
エチレンと炭素原子数3から12、好ましくは炭素原子数4から8の少なくとも1つのα−オレフィンとの線状コポリマーも周知であり、市販されている。当分野において周知であるように、線状エチレン/α−オレフィンコポリマーの密度は、そのα−オレフィンの長さと、エチレンの量を基準にしたそのコポリマー内のそれらモノマーの量、両方の関数であり、α−オレフィンの長さが長いほど、および存在するα−オレフィンの量が多いほど、そのコポリマーの密度は低い。線状低密度ポリエチレン(LLDPE)は、典型的に、エチレンと炭素原子数3から12、好ましくは炭素原子数4から8のα−オレフィンのコポリマー(例えば、1−ブテン、1−オクテンなど)であり、それはそのコポリマーの密度をLDPEの密度に下げるために十分なα−オレフィン含量を有する。コポリマーが、よりいっそう多くのα−オレフィンを含有すると、その密度は、約0.91g/ccを下回ることとなり、これらのコポリマーは、極超低密度ポリエチレン(ULDPR)または超低密度ポリエチレン(VLDPE)として知られている。これらの線状ポリマーの密度は、一般的に、約0.87から0.91g/ccの範囲にわたる。
【0025】
ラジカル触媒によって製造された材料と配位触媒によって製造された材料は、両方とも、当分野において周知であり、それらの作製プロセスも周知である。不均一線状エチレンポリマーは、The Dow Chemical CompanyからDOWLEX(商標)LLDPEおよびATANE(商標)ULDPE樹脂として入手できる。不均一線状エチレンポリマーは、Andersonらの米国特許第4,076,698号(これは、本明細書に参照により組み込まれる)に開示されているものなどのプロセスにより、チーグラー・ナッタ触媒の存在下、エチレンと1つまたはそれ以上の任意のα−オレフィンとの溶液、スラリーまたは気相重合によって作製することができる。好ましくは、不均一エチレンポリマーは、典型的に、3.5から4.1の範囲の分子量分布、Mw/Mnを有することにより特徴付けられる。これらの類の材料とそれらの作製プロセスの両方に関係がある考察を、米国特許第4,950,541号およびこの特許に引用されている特許(これらのすべてが、本明細書に参照により組み込まれる)において見つけることができる。
【0026】
本発明の組成物の触媒は、ジスタノキサンである。ジスタノキサンは、そのスズが、形式上、+4酸化状態であり、および2つのヒドロカルビル配位子に加えてキレート性ビス(アルコキシド)配位子を含むスズ触媒を指すために、本明細書では用いている。+4酸化状態およびアルコキシド基のキレート性は、オクタン酸第一スズなどの他のスズ触媒と比較して、この触媒に熱安定性を付与すると考えられる。
【0027】
ジスタノキサン触媒は、ジアルキルジオキサスタノラン、好ましくは2,2−ジ−n−ブチル−1,3,2−ジオキサスタノランであってもよい。2,2−ジ−n−ブチル−1,3,2−ジオキサスタノランは、溶解状態では主として二量体で存在すること、およびこのジスタノキサン触媒の二量体性が、固体状態でそのスズが五配位になる原因となる可能性が高いことが、明らかになった。いずれの特定の理論にも拘束されることを望まないが、この触媒の五配位性は、その触媒に改善された安定性を付与してもよい。
【0028】
前記触媒は、図1に示す後続の非限定的実施例によって例証されるものなどの、他の五配位または六配位、非二量体スズ触媒を含む。
【0029】
ジスタノキサンは、以下で説明するブルックフィールド粘度計に基づく試験方法に従って40℃で測定した場合、触媒のmg当たり6mV増加のための、次に記載する時間を与えることになる:8000分またはそれ以下、好ましくは、5000分またはそれ以下、さらに好ましくは3000分またはそれ以下、およびよりいっそう好ましくは1000分またはそれ以下。
【0030】
好ましくは、ジスタノキサンは、その組成物における架橋または架橋性ポリマーの総重量に基づき、少なくとも0.01重量%、最も好ましくは少なくとも0.03重量パーセント(重量%)、さらに好ましくは少なくとも0.05重量%で1重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下、最も好ましくは0.2重量%以下(すべて重量パーセント)を構成することになる。
【0031】
これらのスズ触媒は、そのポリマーメルト(polymer melt)への個々の触媒成分の添加により、インサイチューで生成してもよい。例えば、PP−EMAブレンドの架橋に作用する押出発泡成形中のジスタノキサン触媒のインサイチュー合成が記載されている、Journal of Cellular Plastics, Volume 38, 421-440, September 2002参照。
【0032】
ジスタノキサン触媒は、アルキルスズオキシドとジオールの反応によって製造してもよい。この生成反応は、縮合反応であり、インサイチューで生成される水も、その後のシラン架橋化学を助長させてもよい。便宜には、前記アルキルスズオキシドは、ジブチルスズオキシド(DBTO)である。前記ジオールは、沸点、反応温度および所望の反応速度に基づいて選択することができる。
【0033】
適するジオールの例としては、中でも、エチレングリコール1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオールおよび1,5−ペンタンジオールが挙げられる。エチレングリコールの沸点(約196℃)が、これを前記触媒のインサイチュー生成にあまり望ましくはないジオールにしてもよく、高いプロセス条件(例えば、215℃またはそれ以上)には、α−ωジオールの方がインサイチュー施用に好ましい。
【0034】
1つの実施形態は、触媒マスターバッチを作りながら、DBTOおよびジオールからジスタノキサンを製造するものである。原料としては、DBTO、ジオール、酸化防止剤およびポリエチレンを挙げることができる。適切なタイプのポリエチレンを選択することにより、(ポリマーの分解を伴わないジスタノキサンの形成には何が最適であるかに依存して)幅広い温度、例えば150℃から200℃にわたってそれらの組成物を加工することができる。典型的に、バンバリーを使用してマスターバッチを作ることができるが、例えば、それがジスタノキサンの形成を制御するために使うものである場合は、押出機を用いて化合物を製造することもできると考えられる。
【0035】
本発明のジスタノキサン触媒は、ウレタン反応(イソシアネート基のヒドロキシル基との反応)およびアミド化反応(例えば、酸基とアミンの反応)を含む(しかし、これらに限定されない)他の縮合反応、特に、ポリマーまたは樹脂の架橋を、有効に触媒することも判明した。
【0036】
ウレタン反応の場合、樹脂またはポリマーがヒドロキシル基を有する場合は、架橋は、2つまたはそれ以上のイソシアネート基を有する化合物(例えば、ジイソシアネート)で達成される。また、樹脂またはポリマーがイソシアネート基を有する場合は、架橋は、2つまたはそれ以上のヒドロキシル基を有する化合物(例えば、ジオール)で達成される。
【0037】
樹脂またはポリマーが酸基を有する場合は、架橋は、2つまたはそれ以上のアミン基を有する化合物(例えば、ジアミン)で達成される。また、樹脂またはポリマーがアミン基を有する場合は、架橋は、2つまたはそれ以上の酸基を有する化合物(例えば、二酸)で達成される。このアミンは、好ましくは第一または第二アミンである。
【0038】
本発明の組成物は、他の成分、例えば、酸化防止剤、着色剤、腐食防止剤、潤滑剤、ブロッキンング防止剤、難燃剤および加工助剤を含有する場合がある。適する酸化防止剤としては、(a)フェノール系酸化防止剤、(b)チオール系酸化防止剤、(c)リン酸塩系酸化防止剤、および(d)ヒドラジン系金属不活性化剤が挙げられる。適するフェノール系酸化防止剤としては、メチル置換フェノールが挙げられる。第一級または第二級カルボニルを伴う置換基を有する他のフェノールは、適する酸化防止剤である。1つの好ましいフェノール系酸化防止剤は、イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)である。1つの好ましいヒドラジン系金属不活性化剤は、オキサリルビス(ベンジリデンヒドラジン)である。これらの他の成分または添加剤は、当分野において既知の手法および量で使用される。例えば、酸化防止剤は、典型的に、そのポリマー組成物の総重量に基づき、約0.05重量パーセントから約10重量パーセントの間の量で存在する。
【0039】
本明細書に開示する配合物から有用な二次加工品または部品を形成するために使用することができる多くのタイプの成形作業があり、それらには、様々な射出成形法(例えば、Modern Plastics Encyclopedia/89, Mid October 1988 Issue, Volume 65, Number 11, pp. 264-268, 「Introduction to Injection Molding」およびpp. 270-271の「Injection Molding Thermoplastics」に記載されているもの)、およびブロー成形法(例えば、Modern Plastics Encyclopedia/89, Mid October 1988 Issue, Volume 65, Number 11, pp. 217-218, 「Extrusion-Blow Molding」に記載されているもの)、異形押出成形(profile extrusion)、カレンダー成形、引抜成形などがある。
【0040】
本発明のシラングラフトポリマー、それらの製造プロセス、およびそれらを製造するための中間体は、自動車産業、工業用品、建築および建設、電気関連の製品(例えば、電線およびケーブル被覆材/絶縁材)およびタイヤ製品において有用である。一部の二次加工品としては、自動車用ホース、単層屋根材、ならびに電線およびケーブル電圧絶縁材および外被が挙げられる。
【0041】
本発明のシラングラフトポリマーを含むこのような物品は、本発明のシラングラフトポリマーを溶融加工することによって製造してもよい。このプロセスは、本発明に従ってシランをグラフトしたポリマーのペレットまたは顆粒を加工することを含む場合がある。好ましい実施形態において、前記ペレットおよび顆粒は、そのグラフト化剤が、熱活性化されたグラフト化剤を含む場合、未反応のグラフト化剤を実質的に含まない。
【0042】
適する製品としては、電線・ケーブル絶縁材、電線・ケーブル半導電性物品、電線・ケーブル被覆材および外被、ケーブル付属品、靴底、多成分靴底(異なる密度およびタイプのポリマーを含む)、目詰め材、ガスケット、異形材(プロファイル(profile))、耐久財、硬質超延伸テープ、ランフラットタイヤインサート、建築用パネル、複合材(例えば、木材複合材)、パイプ、発泡体、インフレートフィルム(ブロウンフィルム(blown film)、および繊維(バインダー繊維および弾性繊維を含む)が挙げられる。
【0043】
1つの実施形態において、本発明は、電線またはケーブル上にポリマー組成物を塗布することによって作製される電線またはケーブル構造である。前記組成物は、当分野において既知の任意の手法で塗布してもよい。別の実施形態において、本発明は、ジスタノキサンを使用する、シラン架橋性ポリマーを含む組成物の硬化プロセスである。発泡製品としては、例えば、押出熱可塑性ポリマー発泡体、押出ポリマーストランド発泡体、発泡性熱可塑性発泡ビーズ、発泡済熱可塑性発泡ビーズ、発泡および溶着させた熱可塑性発泡ビーズ、および様々なタイプの架橋発泡体が挙げられる。前記発泡製品は、任意の既知の物理構造、例えば、シート、円形、ストランド幾何形状、棒、ソリッドプランク、積層プランク、ストランド合着プランク、異形材およびバンストックを呈するものであってもよい。
【0044】
本発明の発泡体は、匹敵する密度および連続または独立気泡含量の発泡体が今日使用されている任意の用途において使用してもよい。それらの用途としては、最終電子製品、例えばコンピュータ、テレビおよび調理器具の緩衝包装(例えば、コーナーブロック、滑り止め、サドル、ポーチ、バッグ、封筒、上包み材、インターリーフィング、封入);爆発性材料または装置の包装または保護;材料運搬(トレー、運搬箱、箱用ライナー、運搬箱のインサートおよび仕切り、シャント、スタッフィング、ボード、部品用スペーサおよび部品用セパレータ);ワークステーション付属品(エプロン、テーブルおよびベンチ上面カバー、フロアマット、シートクッション);自動車用(ヘッドライナー、バンパーまたはドアの衝撃吸収物、カーペット下張り、遮音材);フロテーション(例えば、ライフジャケット、ベストおよびベルト);スポーツおよびレジャーまたはアスレチックおよびレクリエション製品(例えば、ジムマットおよびボディーボード);卵ケース、食肉用トレー、果物用トレー、断熱材(例えば、壁外装、屋根ふき、基礎断熱および床板の下張りの取替えのために建築および建設の際に使用されるもの);防音(例えば、家庭電化製品、建築および建造用);パイプ絶縁、冷凍のための断熱、浮力用途(例えば、浮きドックおよび救命いかだ)、花および手工芸製品、パレット、スーツケース用ライナー、デスクパッド、履物(靴底を含む)、温室用断熱ブランケット、ケースインサート、表示装置用発泡剤、ガスケット、グロメット、シール;プリンターおよびタイプライターの消音;表示装置ケース用インサート;ミサイルコンテナの詰め物;軍用砲弾ホルダー;輸送の際の様々なアイテムのブロックおよびブレーシング(押さえ);保護および包装;自動車のガタつき防止パッド、シール;医療器具、皮膚接触パッド;クッション付パレット;ならびに振動絶縁パッドが挙げられるが、これらに限定されない。前述のリストは、多数の適する用途の単なる説明である。当業者は、本発明の範囲または精神を逸脱することなく、さらなる用途を容易に想像できる。
【実施例】
【0045】
実施例1から2および比較サンプル1
実施例2の場合、触媒を最初にバイアルに入れ、205℃の高温に曝露した。実施例および比較サンプル1の場合、触媒を高温でプレコンディショニングしなかった。触媒のこのプレコンディショニングを用いて、ポリマーの押出プロセス中に触媒が遭遇する条件をシミュレートした。本発明者らは、この事前の条件設定が、溶液スクリーニング法と実際の二次加工ポリマーとのより良好な相関関係をもたらすことを発見した。
【0046】
1容量%の水と混合し、1時間、室温(22℃)で攪拌することにより、n−オクタンの水飽和サンプルを調製した。その二相混合物を少なくとも1時間放置して沈降させ、上層を注意深くデカントして、水飽和オクタン(すなわち、「湿潤」オクタン)を回収した。22℃でのオクタンへの水の溶解度は、カール・フィッシャー滴定による判定では、50ppmである。その「湿潤」オクタン(4.5グラム)を使用して、約40℃で、500mgの、1.6重量% ビニルトリエトキシシランをグラフトしたポリ(エチレン−co−オクテン)(POE−g−VTES)を溶解して、1:9 w:w ポリマー:オクタンを含む透明無色の溶液を得た。
【0047】
比較例1の場合、400mgの触媒(ジ−n−ブチルジラウリルスズ)を乾燥n−オクタンに添加して、1000mg(1.422mL)の「触媒溶液」を作り、その内容物をスパチュラで攪拌した。この触媒溶液の固定量(0.200mL)を添加し、シリンジを使用して、5.0グラムのPOE−g−VTES/オクタン溶液(上で説明したもの)と混合した。
【0048】
実施例1および2は、3.2mgまたは3.6mgのジスタノキサン(2,2−ジブチル−1,3,2−ジオキサスタノラン)を、n−オクタンに最初に溶解する代わりに、5.0グラムのPOE−g−VTES/オクタン溶液に直接添加し、40℃で2分間、(スパチュラおよびシリンジで、または超音波洗浄器で)十分に混合することによって、各様に調製した。2,2−ジブチル−1,3,2−ジオキサスタノランが、「乾燥」オクタンに不溶性であることが認められたので、このアプローチを採った。
【0049】
最終溶液の1.5mL分を予熱(40℃)したブルックフィールド−HADVII円錐・平板粘度計に充填し、そのCP40スピンドルをサンプルへと低下させた。モーターを始動させ、そのスピンドルの回転速度を2.5rpmで維持した。mVでのトルク読取値を経時的にモニターした。トルクの増加は、架橋率の指標となった。使用した触媒の充填量を下に示す。
【表1】

【0050】
有効触媒濃度は、次のとおりである。
【0051】
5.0グラムのPOE−g−VTES/オクタン溶液中の有効触媒濃度
比較例1: =(400×0.2)=56.26mg
実施例1: 3.6mg
実施例2 3.2mg
ブルックフィールド粘度計からの結果を図1に示す。そこから以下の情報を得た。
【表2】

【0052】
架橋速度に対する触媒濃度の線形効果を仮定すると、以下が触媒のmg当たりの対応時間となる。
【表3】

【0053】
実施例1および2のジスタノキサン(2,2−ジブチル−1,3,2−ジオキサスタノラン)は、所望の速い架橋を生じさせた。有利なことに、このジスタノキサンは、高温への長期曝露後でさえ優れた触媒活性を保持した。さらに、ジスタノキサンを混合するために超音波を使用する方が、早い架橋を生じさせるようであった。これは、おそらく、スパチュラ/シリンジで得られる分散より細かい分散を生じさせることによるものである。
【0054】
実施例3および4ならびに比較サンプル2および3
ジスタノキサン触媒(ジブチルスズエチレングリコレート)を、DBTOとエチレングリコールの縮合反応によって調製した。これは、試験前に高温に曝露しないと、オクタン酸第一スズほど速くなかった(後に記載の図を参照)が、このジブチルスズエチレングリコレート触媒が、210℃でよく機能することが観察されたということは、それが、系での優れた熱安定性も有する場合があることを示している。固定濃度のジブチルスズエチレングリコレート触媒(実施例3)およびオクタン酸第一スズ(比較例2)触媒を湿潤オクタン(50ppm 水)中のPOE−g−VTESの10%溶液に溶解した。経時的な粘度増加を40℃の試験温度で測定した。結果を図2に示す。最初の「ピーク」があり、そのサイズおよび位置が、両方の触媒で異なっている。
【0055】
図3は、40℃でのスクリーニング試験における評価の前にオクタン酸第一スズを高温(215℃)に曝露させることによる効果を示すものである。触媒濃度は、1Xであった。より高い温度に曝露されると、触媒活性がより低くなったばかりでなく、「ピーク」も消えた。
【0056】
図4は、1X濃度のオクタン酸第一スズに対する試験温度(40℃、60℃および80℃)の効果を示すものであり、1つは、80℃で、37X濃度のDBTDLで実行した。触媒は、高温でプレコンディションしなかった。明らかに、オクタン酸第一スズは、この温度範囲にわたって優れた触媒活性を保持しており、架橋の「開始」は、温度を上昇させるほど早くなった(予想通り)。しかし、最初の「ピーク」のサイズは、劇的に増加した。対照的に、80℃の試験温度で、DBTDLでは、ピークは観察されなかった。
【0057】
実施例5および比較サンプル4から7
ジスタノキサン触媒(ジブチルスズエチレングリコレート)をDBTOとエチレングリコールとの縮合反応によって調製した。
【0058】
4−ヒドロキシTEMPO(h−TEMPO)とステアリルイソシアネートの反応速度を、ジスタノキサンおよび他の異なる触媒を使用して、ならびに触媒作用を利用せずに、追跡した。2271cm-1付近のN=C=Oバンドの消失、ならびに1726cm-1付近のウレタンC=Oバンドの出現をFT−IR分光法によってモニターした。
【0059】
すべてのサンプルは、約0.1%の選択触媒(0.8重量%の濃度で使用したTyzor TEAZを除く。)を伴う、h−TEMPO:ステアリルイソシアネートの1:1モル混合物として調製した。反応物を80℃で溶融し、適切な触媒をそのh−TEMPOに添加し、ボルテックスミキサーで混合し、約1分間、80℃に再び加熱した。その後、2つの液体を共に注入し、ボルテックスミキサーで混合し、アリコートを分析に使用した。
【0060】
スペクトルは、透過度によりNicolet Magna 750FT−IR分光計で収集した。サンプルは、塩間でプレスしたキャピラリーフィルムとして作製した。その後、それらの塩を、デジタル温度制御装置に接続した加熱可能なセルホルダー内に配置した。分解能を4cm-1に設定し、64スキャンをコアド(co added)して、信号対雑音比(S/N比)を増した。それらのスペクトルを三角アポダイゼーション(triangular apodization)で処理した。反応を130℃で経時的にモニターした。以下は、イソシアネートバンドの消失のための反応時間であり、ウレタン形成は、同じ傾向をたどった。

実施例5: ジスタノキサン 約1分
比較サンプル4: 触媒なし 約210分
比較サンプル5: ジブチルスズジラウレート 約5から7分
比較サンプル6: Tyzor TPT 約4から5分
比較サンプル7: Tyzor TEAZ 約6分

本発明のジスタノキサンは、他の触媒より実質的に速いイソシアネート減少およびウレタン形成を生じさせた。
【0061】
法令に従って、構造および方法の特徴に関して多少特定的な言葉で本発明を説明した。しかし、本明細書に開示する手段は、本発明を実施する好ましい形態を含むものであるので、本発明は、示したおよび説明した特定の特徴に限定されないと理解されなければならない。従って、本発明は、均等論に従って適切に解釈される添付のクレームの適正な範囲内のその形態および変形のいずれに関しても、特許請求するものである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1は、五配位および六配位スズ触媒の化学構造を示す図である。
【図2】図2は、ジスタノキサンまたはオクタン酸第一スズのいずれかによって触媒されるシラングラフトエチレン−オクテンコポリマーの粘度を経時的に比較するグラフである。
【図3】図3は、予熱サイクルに付されたオクタン酸第一スズによって触媒されるシラングラフトエチレン−オクテンコポリマーの粘度を経時的に示すグラフである。
【図4】図4は、架橋反応に対する温度の影響を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外被、絶縁材または半導電層のうちの1つまたはそれ以上を含み、前記外被、絶縁材または半導電層が、加水分解性反応性シラン基を有する少なくとも1つの樹脂およびスズ触媒を含み、前記スズ触媒が、ビス(アルコキシド)配位子を有し、+4酸化状態を有するスズにより特徴付けられる、電線またはケーブル。
【請求項2】
前記スズ触媒が、五配位または六配位である、請求項1に記載の電線またはケーブル。
【請求項3】
前記スズ触媒が、ジスタノキサンである、請求項1に記載の電線またはケーブル。
【請求項4】
前記ジスタノキサンが、2,2−ジ−n−ブチル,1,3,2ジオキサスタノランである、請求項2に記載の電線またはケーブル。
【請求項5】
前記樹脂が、(i)エチレンと加水分解性シランとのコポリマー、(ii)エチレンと、1つまたはそれ以上のC3またはそれ以上のα−オレフィンまたは不飽和エステルと、加水分解性シランとのコポリマー、(iii)その骨格にグラフトされた加水分解性シランを有するエチレンのホモポリマー、および(iv)エチレンと1つまたはそれ以上のC3またはそれ以上のα−オレフィンまたは不飽和エステルとのコポリマーであって、その骨格にグラフトされた加水分解性シランを有するコポリマー、のうちの少なくとも1つである、請求項1に記載の電線またはケーブル。
【請求項6】
前記樹脂が、シラングラフトポリエチレンである、請求項1に記載の電線またはケーブル。
【請求項7】
前記樹脂が、(i)プロピレンと加水分解性シランとのコポリマー、(ii)プロピレン、1つまたはそれ以上のC3またはそれ以上のα−オレフィンまたは不飽和エステルと、加水分解性シランとのコポリマー、(iii)その骨格に加水分解性シランを有するプロピレンのホモポリマー、および(iv)プロピレンと1つまたはそれ以上のC3またはそれ以上のα−オレフィンまたは不飽和エステルとのコポリマーであって、その骨格にグラフトされた加水分解性シランを有するコポリマー、のうちの少なくとも1つである、請求項1に記載の電線またはケーブル。
【請求項8】
前記樹脂が、シラングラフトポリプロピレンである、請求項1に記載の電線またはケーブル。
【請求項9】
前記樹脂が、シラングラフトポリオレフィンである、請求項1に記載の電線またはケーブル。
【請求項10】
外被を含み、前記外被が、(i)加水分解性反応性シラン基を有する少なくとも1つの樹脂と水との反応生成物、および(ii)少なくとも1つのスズ触媒を含み、前記スズ触媒が、ビス(アルコキシド)配位子を有し、+4酸化状態を有するスズにより特徴付けられる、電線またはケーブル。
【請求項11】
前記スズ触媒が、五配位または六配位である、請求項10に記載の電線またはケーブル。
【請求項12】
前記スズ触媒が、ジスタノキサンである、請求項10に記載の電線またはケーブル。
【請求項13】
前記ジスタノキサンが、2,2−ジ−n−ブチル,1,3,2ジオキサスタノランである、請求項12に記載の電線またはケーブル。
【請求項14】
前記樹脂が、(i)エチレンと加水分解性シランとのコポリマー、(ii)エチレンと、1つまたはそれ以上のC3またはそれ以上のα−オレフィンまたは不飽和エステルと、加水分解性シランとのコポリマー、(iii)その骨格にグラフトされた加水分解性シランを有するエチレンのホモポリマー、および(iv)エチレンと1つまたはそれ以上のC3またはそれ以上のα−オレフィンまたは不飽和エステルとのコポリマーであって、その骨格にグラフトされた加水分解性シランを有するコポリマー、のうちの少なくとも1つである、請求項10に記載の電線またはケーブル。
【請求項15】
前記樹脂が、シラングラフトポリエチレンである、請求項10に記載の電線またはケーブル。
【請求項16】
前記樹脂が、シラングラフトポリオレフィンである、請求項10に記載の電線またはケーブル。
【請求項17】
湿気硬化性組成物の被覆剤を電線またはケーブルに塗布する段階;およびその湿気硬化性組成物と水とを反応させる段階を含むプロセスであって、前記湿気硬化性組成物が、加水分解性反応性シラン基を有する少なくとも1つの樹脂と、+4酸化状態およびビス(アルコキシド)配位子を有するスズにより特徴付けられるスズ触媒とを含む、被覆電線またはケーブルを作製するためのプロセス。
【請求項18】
前記スズ触媒が、五配位または六配位である、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記スズ触媒が、ジスタノキサンである、請求項17に記載のプロセス。
【請求項20】
前記ジスタノキサンが、2,2−ジ−n−ブチル,1,3,2ジオキサスタノランである、請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
前記樹脂が、(i)エチレンと加水分解性シランとのコポリマー、(ii)エチレンと、1つまたはそれ以上のC3またはそれ以上のα−オレフィンまたは不飽和エステルと、加水分解性シランとのコポリマー、(iii)その骨格にグラフトされた加水分解性シランを有するエチレンのホモポリマー、および(iv)エチレンと1つまたはそれ以上のC3またはそれ以上のα−オレフィンまたは不飽和エステルとのコポリマーであって、その骨格にグラフトされた加水分解性シランを有するコポリマー、のうちの少なくとも1つである、請求項17に記載のプロセス。
【請求項22】
前記樹脂が、シラングラフトポリエチレンである、請求項17に記載のプロセス。
【請求項23】
前記樹脂が、(i)プロピレンと加水分解性シランとのコポリマー、(ii)プロピレン、1つまたはそれ以上のC3またはそれ以上のα−オレフィンまたは不飽和エステルと、加水分解性シランとのコポリマー、(iii)その骨格に加水分解性シランを有するプロピレンのホモポリマー、および(iv)プロピレンと1つまたはそれ以上のC3またはそれ以上のα−オレフィンまたは不飽和エステルとのコポリマーであって、その骨格にグラフトされた加水分解性シランを有するコポリマー、のうちの少なくとも1つである、請求項17に記載のプロセス。
【請求項24】
前記樹脂が、シラングラフトポリプロピレンである、請求項17に記載のプロセス。
【請求項25】
スズ触媒が、アルキルスズオキシドとジオールの縮合反応によって製造される、スズ触媒をインサイチューで製造する段階をさらに含む、請求項17に記載のプロセス。
【請求項26】
前記ジオールが、1,3−プロパンジオール;1,2−プロパンジオール;エチレングリコール;または1,5−ペンタンジオールのうちの少なくとも1つである、請求項25に記載のプロセス。
【請求項27】
外被、絶縁材または半導電層のうちの1つまたはそれ以上を含み、前記外被、絶縁材または半導電層が、ヒドロキシル基を有する少なくとも1つの樹脂と、2つまたはそれ以上のイソシアネート基を有する少なくとも1つの化合物と、スズ触媒とを含み、前記スズ触媒が、ビス(アルコキシド)配位子を有し、+4酸化状態を有するスズにより特徴付けられる、電線またはケーブル。
【請求項28】
外被を含み、前記外被が、(i)ヒドロキシル基を有する少なくとも1つの樹脂と、2つまたはそれ以上のイソシアネート基を有する少なくとも1つの化合物の反応生成物、および(ii)少なくとも1つのスズ触媒を含み、前記スズ触媒が、ビス(アルコキシド)配位子を有し、+4酸化状態を有するスズにより特徴付けられる、電線またはケーブル。
【請求項29】
組成物の被覆剤を電線またはケーブルに塗布する段階;およびその組成物を反応させる段階を含むプロセスであって、前記組成物が、ヒドロキシル基を有する少なくとも1つの樹脂と、2つまたはそれ以上のイソシアネート基を有する少なくとも1つの化合物と、+4酸化状態およびビス(アルコキシド)配位子を有するスズにより特徴付けられるスズ触媒とを含む、被覆電線またはケーブルを作製するためのプロセス。
【請求項30】
外被、絶縁材または半導電層のうちの1つまたはそれ以上を含み、前記外被、絶縁材または半導電層が、イソシアネート基を有する少なくとも1つの樹脂と、2つまたはそれ以上のヒドロキシル基を有する少なくとも1つの化合物と、スズ触媒とを含み、前記スズ触媒が、ビス(アルコキシド)配位子を有し、+4酸化状態を有するスズにより特徴付けられる、電線またはケーブル。
【請求項31】
外被を含み、前記外被が、(i)イソシアネート基を有する少なくとも1つの樹脂と、2つまたはそれ以上のヒドロキシル基を有する少なくとも1つの化合物の反応生成物、および(ii)少なくとも1つのスズ触媒を含み、前記スズ触媒が、ビス(アルコキシド)配位子を有し、+4酸化状態を有するスズにより特徴付けられる、電線またはケーブル。
【請求項32】
組成物の被覆剤を電線またはケーブルに塗布する段階;およびその組成物を反応させる段階を含むプロセスであって、前記組成物が、イソシアネート基を有する少なくとも1つの樹脂と、2つまたはそれ以上のヒドロキシル基を有する少なくとも1つの化合物と、+4酸化状態およびビス(アルコキシド)配位子を有するスズにより特徴付けられるスズ触媒とを含む、被覆電線またはケーブルを作製するためのプロセス。
【請求項33】
外被、絶縁材または半導電層のうちの1つまたはそれ以上を含み、前記外被、絶縁材または半導電層が、酸基を有する少なくとも1つの樹脂と、2つまたはそれ以上のアミン基を有する少なくとも1つの化合物と、スズ触媒とを含み、前記スズ触媒が、ビス(アルコキシド)配位子を有し、+4酸化状態を有するスズにより特徴付けられる、電線またはケーブル。
【請求項34】
外被を含み、前記外被が、(i)酸基を有する少なくとも1つの樹脂と、2つまたはそれ以上のアミン基を有する少なくとも1つの化合物の反応生成物、および(ii)少なくとも1つのスズ触媒を含み、前記スズ触媒が、ビス(アルコキシド)配位子を有し、+4酸化状態を有するスズにより特徴付けられる、電線またはケーブル。
【請求項35】
組成物の被覆剤を電線またはケーブルに塗布する段階;およびその組成物を反応させる段階を含むプロセスであって、前記組成物が、酸基を有する少なくとも1つの樹脂と、2つまたはそれ以上のアミン基を有する少なくとも1つの化合物と、+4酸化状態およびビス(アルコキシド)配位子を有するスズにより特徴付けられるスズ触媒とを含む、被覆電線またはケーブルを作製するためのプロセス。
【請求項36】
外被、絶縁材または半導電層のうちの1つまたはそれ以上を含み、前記外被、絶縁材または半導電層が、アミン基を有する少なくとも1つの樹脂と、2つまたはそれ以上の酸基を有する少なくとも1つの化合物と、スズ触媒とを含み、前記スズ触媒が、ビス(アルコキシド)配位子を有し、+4酸化状態を有するスズにより特徴付けられる、電線またはケーブル。
【請求項37】
外被を含み、前記外被が、(i)アミン基を有する少なくとも1つの樹脂と、2つまたはそれ以上の酸基を有する少なくとも1つの化合物の反応生成物、および(ii)少なくとも1つのスズ触媒を含み、前記スズ触媒が、ビス(アルコキシド)配位子を有し、+4酸化状態を有するスズにより特徴付けられる、電線またはケーブル。
【請求項38】
組成物の被覆剤を電線またはケーブルに塗布する段階;およびその組成物を反応させる段階を含むプロセスであって、前記組成物が、アミン基を有する少なくとも1つの樹脂と、2つまたはそれ以上の酸基を有する少なくとも1つの化合物と、+4酸化状態およびビス(アルコキシド)配位子を有するスズにより特徴付けられるスズ触媒とを含む、被覆電線またはケーブルを作製するためのプロセス。
【請求項39】
加水分解性反応性シラン基を有する少なくとも1つの樹脂およびスズ触媒を含み、前記スズ触媒が、ビス(アルコキシド)配位子を有し、+4酸性状態を有するスズにより特徴付けられる製品。
【請求項40】
ヒドロキシル基を有する少なくとも1つの樹脂と、2つまたはそれ以上のイソシアネート基を有する少なくとも1つの化合物と、スズ触媒とを含み、前記スズ触媒が、ビス(アルコキシド)配位子を有し、+4酸性状態を有するスズにより特徴付けられる製品。
【請求項41】
イソシアネート基を有する少なくとも1つの樹脂と、2つまたはそれ以上のヒドロキシル基を有する少なくとも1つの化合物と、スズ触媒とを含み、前記スズ触媒が、ビス(アルコキシド)配位子を有し、+4酸性状態を有するスズにより特徴付けられる製品。
【請求項42】
酸基を有する少なくとも1つの樹脂と、2つまたはそれ以上のアミン基を有する少なくとも1つの化合物と、スズ触媒とを含み、前記スズ触媒が、ビス(アルコキシド)配位子を有し、+4酸性状態を有するスズにより特徴付けられる製品。
【請求項43】
アミン基を有する少なくとも1つの樹脂と、2つまたはそれ以上の酸基を有する少なくとも1つの化合物と、スズ触媒とを含み、前記スズ触媒が、ビス(アルコキシド)配位子を有し、+4酸性状態を有するスズにより特徴付けられる製品。
【請求項44】
加水分解性反応性シラン基を有する少なくとも1つの樹脂およびスズ触媒を含む組成物を反応させる段階を含むプロセスであって、前記スズ触媒が、ビス(アルコキシド)配位子を有し、+4酸性状態を有するスズにより特徴付けられる、製品を作製するためのプロセス。
【請求項45】
ヒドロキシル基を有する少なくとも1つの樹脂と、2つまたはそれ以上のイソシアネート基を有する少なくとも1つの化合物と、スズ触媒とを含む組成物を反応させる段階を含むプロセスであって、前記スズ触媒が、ビス(アルコキシド)配位子を有し、+4酸性状態を有するスズにより特徴付けられる、製品を作製するためのプロセス。
【請求項46】
イソシアネート基を有する少なくとも1つの樹脂と、2つまたはそれ以上のヒドロキシル基を有する少なくとも1つの化合物と、スズ触媒とを含む組成物を反応させる段階を含むプロセスであって、前記スズ触媒が、ビス(アルコキシド)配位子を有し、+4酸性状態を有するスズにより特徴付けられる、製品を作製するためのプロセス。
【請求項47】
酸基を有する少なくとも1つの樹脂と、2つまたはそれ以上のアミン基を有する少なくとも1つの化合物と、スズ触媒とを含む組成物を反応させる段階を含むプロセスであって、前記スズ触媒が、ビス(アルコキシド)配位子を有し、+4酸性状態を有するスズにより特徴付けられる、製品を作製するためのプロセス。
【請求項48】
アミン基を有する少なくとも1つの樹脂と、2つまたはそれ以上の酸基を有する少なくとも1つの化合物と、スズ触媒とを含む組成物を反応させる段階を含むプロセスであって、前記スズ触媒が、ビス(アルコキシド)配位子を有し、+4酸性状態を有するスズにより特徴付けられる、製品を作製するためのプロセス。
【請求項49】
作製される製品が、電線・ケーブル絶縁材、電線・ケーブル半導電性物品、電線・ケーブル被覆材、電線・ケーブル外被、ケーブル付属品、靴底、多成分靴底、目詰め材、ガスケット、異形材、耐久財、硬質超延伸テープ、ランフラットタイヤインサート、建築用パネル、複合材、パイプ、発泡体、インフレーションフィルムおよび繊維から成る群より選択される、請求項39〜43に記載の製品。
【請求項50】
作製される製品が、電線・ケーブル絶縁材、電線・ケーブル半導電性物品、電線・ケーブル被覆材、電線・ケーブル外被、ケーブル付属品、靴底、多成分靴底、目詰め材、ガスケット、異形材、耐久財、硬質超延伸テープ、ランフラットタイヤインサート、建築用パネル、複合材、パイプ、発泡体、インフレーションフィルムおよび繊維から成る群より選択される、請求項40〜48に記載の製品を作製するためのプロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−507986(P2009−507986A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531138(P2008−531138)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【国際出願番号】PCT/US2006/033310
【国際公開番号】WO2007/032885
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】