シリカ配合ゴムの混練システム及び混練方法
【課題】混練工程において原料ゴムとシリカとをシランカップリング剤により高効率でカップリング処理でき、優れたゴム物性を有する加硫ゴム組成物を得ることが可能なシリカ配合ゴムの混練システム及び混練方法を提供する。
【解決手段】原料ゴムとシリカとを混練する密閉式の第一ゴム混練機と、前記第一ゴム混練機から排出された一次混練ゴムとシランカップリング剤とを混練する混練対象物の温度調節が可能な第二ゴム混練機とを備えるシリカ配合ゴムの混練システムに関する。
【解決手段】原料ゴムとシリカとを混練する密閉式の第一ゴム混練機と、前記第一ゴム混練機から排出された一次混練ゴムとシランカップリング剤とを混練する混練対象物の温度調節が可能な第二ゴム混練機とを備えるシリカ配合ゴムの混練システムに関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ配合ゴムの混練システム及び混練方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から使用されているタイヤ用のゴム混練設備(ゴム混練システム)としては、大型や小型のバンバリーミキサーなどの密閉式ゴム混練機で混練した後、必要に応じてフィードスクリューを介し、次いでオープンロールにてシート状に加工し、冷却する設備が一般的に使用されている。ここで、通常、密閉式ゴム混練機では、原料であるゴム材料やカーボン、シリカ、シランカップリング剤などの添加剤が原料投入部を通じて混練室内に投入された後、フローティングウエイトにより混練室が加圧され、混練室内を回転するロータにより混練されている。
【0003】
最近のトレッドゴム配合は、ウエットグリップ性能と転がり抵抗(低燃費性)のニーズに応えるため、シリカ及びシランカップリング剤を処方した配合が主流となっている。一般的に、シリカとシランカップリング剤との反応を充分に進行させるとゴム物性が向上し、耐摩耗性などが改善されることが知られている。ここで、これらを効率良く反応させるためには、特定の温度で長時間混練することが望ましいと考えられる。
【0004】
しかしながら、バンバリーミキサーは、ゴムせん断力が強く、混練加工時に練りゴム温度が上昇するため、温度調整が難しい。そのため、特定温度で一定時間混練することは困難である。また、バンバリーミキサーに、ゴム材料やシリカとともにシランカップリング剤を投入し、混練すると、シランカップリング剤とバンバリーローターとの反応に起因してローターとゴムとの密着が生じ易くなるため、加工性が悪化してしまう。
【0005】
特許文献1などには改良型の密閉式ゴム混練機が数多く提案されているが、このような密閉式ゴム混練機を使用しても、温度調整は難しいため、シリカとシランカップリング剤との反応率の向上、それによるゴム物性の向上については未だ改善の余地がある。また、ロータとゴムの密着などの加工性の改善も求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−170421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記課題を解決し、混練工程において原料ゴムとシリカとをシランカップリング剤により高効率でカップリング処理でき、優れたゴム物性を有する加硫ゴム組成物を得ることが可能なシリカ配合ゴムの混練システム及び混練方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、原料ゴムとシリカとを混練する密閉式の第一ゴム混練機と、前記第一ゴム混練機から排出された一次混練ゴムとシランカップリング剤とを混練する混練対象物の温度調節が可能な第二ゴム混練機とを備えることを特徴とするシリカ配合ゴムの混練システムに関する。
前記混練システムは、前記第一ゴム混練機がバンバリーミキサーであり、前記第二ゴム混練機が連続混練機であって、前記連続混練機には、前記一次混練ゴム投入側から順にフィードエリアと混練エリアとが設けられており、前記フィードエリアにおいて前記シランカップリング剤が供給され、且つ少なくとも前記混練エリア内における前記混練対象物の温度調節が可能とされていることが好ましい。ここで、前記連続混練機は、二軸連続混練機であることが好ましい。
また、前記混練システムは、前記第二ゴム混練機が前記混練対象物の温度を120〜200℃に調節可能であることが好ましい。
【0009】
本発明はまた、密閉式の第一ゴム混練機を用いて原料ゴム及びシリカを混練し、一次混練ゴムを得る工程(I)と、前記第一ゴム混練機とは異なり且つ混練対象物の温度調節が可能な第二ゴム混練機を用いて前記一次混練りゴム及びシランカップリング剤を混練し、二次混練ゴムを得る工程(II)とを有することを特徴とするシリカ配合ゴムの混練方法に関する。
前記混練方法では、前記第一ゴム混練機が、バンバリーミキサーであり、前記第二ゴム混練機が、前記一次混練ゴム投入側から順に前記シランカップリング剤を供給可能なフィードエリアと、前記一次混練ゴムと前記シランカップリング剤とを混練可能な混練エリアとを設けた連続混練機であって、前記工程(II)が、前記フィードエリアにおいて前記シランカップリング剤を供給した後、前記第二ゴム混練機の少なくとも前記混練エリア内において前記混練対象物としての前記一次混練ゴムと前記シランカップリング剤との混合物を120〜200℃で混練することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、原料ゴムとシリカとを混練する密閉式の第一ゴム混練機と、上記第一ゴム混練機から排出された一次混練ゴムとシランカップリング剤とを混練する混練対象物の温度調節が可能な第二ゴム混練機とを備えるシリカ配合ゴムの混練システム、及び該システムを用いた混練方法であるので、効率良くゴムを加熱せん断できるとともに、原料ゴムとシリカとをシランカップリング剤により高効率でカップリング処理できる。従って、加硫後のゴム組成物において、優れたゴム物性(硬度、引張強度、破断強度、転がり抵抗、ウエットグリップ性能、ドライグリップ性能など)が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のシリカ配合ゴムの混練システム(混練設備)及び混練方法の概略図
【図2】密閉式ゴム混練機の概略図
【図3】2軸スクリュー押出機のスクリューの拡大平面図
【図4】混練エリアの断面説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のシリカ配合ゴムのゴム混練システムは、原料ゴムとシリカとを混練する密閉式の第一ゴム混練機と、上記第一ゴム混練機から排出された一次混練ゴムとシランカップリング剤とを混練する混練対象物の温度調節が可能な第二ゴム混練機とを備える。また、本発明のシリカ配合ゴムの混練方法は、密閉式の第一ゴム混練機を用いて原料ゴム及びシリカを混練し、一次混練ゴムを得る工程(I)と、上記第一ゴム混練機とは異なり且つ混練対象物の温度調節が可能な第二ゴム混練機を用いて上記一次混練ゴム及びシランカップリング剤を混練し、二次混練ゴムを得る工程(II)とを有する。つまり、本発明では、密閉式の第一ゴム混練機の下流側に温度調節が可能な第二ゴム混練機をレイアウトするとともに、該第二ゴム混練機にシランカップリング剤を注入し、第一ゴム混練機で作製された一次混練ゴムとともに混練する。このため、第一ゴム混練機で混練加熱したゴムを、第二ゴム混練機で精度良く所定温度に温度調節しながら一定時間混練できる。従って、混練温度、混練時間を制御することでシリカとシランカップリング剤の反応をコントロールできるため、シリカと原料ゴムのカップリング処理を充分に進行させることが可能となり、ゴム物性を改善できる。
【0013】
また、密閉式の第一ゴム混練機内へシランカップリング剤を投入する必要がないので、第一ゴム混練機内でのゴム密着(作業性や安全性悪化)も改善できる。また、第一ゴム混練機で混練した練りゴムを冷却することなく、温度調節が可能な第二ゴム混練機で混練することが可能であるため、高い生産性を確保できる。更に、該第二ゴム混練機のサイズ(長さなど)を調整することで、密閉式の第一ゴム混練機の生産効率を維持しながらの生産が可能となる。
【0014】
以下、本発明の混練システム及び混練方法について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明に使用する混練設備(混練システム)の概略図の一例を示す。
本発明のシステムでは、先ず、密閉式の第一ゴム混練機が備えられ、該第一ゴム混練機用いて原料ゴムとシリカとを混練し、一次混練ゴムが得られる(工程(I))。
【0015】
図1のシステムにおいて、密閉式の第一ゴム混練機1としては、図2に示すようなバンバリーミキサー11(例えば、混練り容量が200〜400リットルの大型のバンバリーミキサー、200リットル以下の小型のバンバリーミキサー)が使用できる。バンバリーミキサー11は、並列する一対の撹拌ロータ12、12を配した混合室13を備え、該混合室13内に投入される原料ゴム、シリカなどを混練りし、一次混練ゴムとして上記混合室13に設けた開放可能な排出口14から塊状で排出する(工程(I):第1ベース練り工程)。本例では密閉式の第一ゴム混練機1により、上記原料ゴム、シリカなどの補強剤を含み、かつシランカップリング剤、加硫剤及び加硫促進剤を含まない材料を混練りする場合を例示している。上記補強剤としては、シリカ以外にカーボンブラックなどが挙げられる。
【0016】
上記撹拌ロータ12は、回転可能に支持される基軸の周囲に撹拌羽根を、例えば螺旋状に設けた周知構成をなし、混練機本体15に設けた混合室13内に配設される。なお、各撹拌ロータ12は、混練機本体15に取り付くモータを含む駆動手段(図示せず)を介して、互いに同方向又は逆方向に回転駆動される。上記混合室13は、上記一対の撹拌ロータ12、12と同心な2つの円周面を連ねた断面ひょうたん状をなすとともに、そのくびれ部分には、上記原料ゴム、シリカなどを投入する投入口16に通じる縦孔17の下端が接続される。また、縦孔17には、シリンダ等により昇降可能に支持されるフローティングウェイト18が配される。このフローティングウェイト18は、混合室13内に投入された原料ゴム、シリカ等を加圧し撹拌ロータ12による撹拌効率、混練効率を向上させる。
【0017】
また、上記混練機本体15には、上記混合室13の下部に形成される上記排出口14を開閉するドロップドア19が設けられ、その開放により、混練りされた一次混練ゴムを排出口14から塊状で排出、落下させる。
【0018】
第一混練機での第1ベース練り工程では、原料ゴム及びシリカなどの混練材料(混練対象物)の温度が120〜200℃となるように調節されることが好ましい。また、混練時間を1.5〜10分間にすることが好ましい。下限未満では、混練不足でフィラー分散が悪くなり物性低下をまねく傾向がある。上限を超えると、生産性が悪化する傾向がある。
【0019】
第1ベース練り工程では、第一ゴム混練機1(バンバリーミキサー11)のローター回転数は、15〜65rpmであることが好ましい。15rpm未満では、生産性が悪い(練り時間が長くなりすぎる)傾向がある。65rpmを超えると、混練時間が短くフィラー分散が悪化し物性低下をまねく傾向がある。
【0020】
本発明に使用される原料ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)等が使用できる。なかでも、第二ゴム混練機において原料ゴムとシリカとをシランカップリング剤によって高効率でカップリング処理できる点から、シリカ用に変性したSBR、BRを使用することが好ましい。
【0021】
上記変性SBRとしては、特開2001−114938号公報に記載されているアルコキシ基を含有する有機ケイ素化合物で変性したもの等が挙げられる。
【0022】
原料ゴムとして変性SBRを使用する場合、原料ゴム100質量%中の変性SBRの配合量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。20質量%未満であると、変性効果によるシリカ分散性の向上効果が少ない傾向がある。また、該変性SBRの配合量は、好ましくは90質質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。90質量%を超えると、タイヤ用ゴムとして扱いにくいおそれがある。
【0023】
BRとしては特に限定されず、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR130B、BR150B等の高シス含有量のBR、宇部興産(株)製のVCR412、VCR617等のシンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR等を使用できる。
【0024】
原料ゴムとしてBRを使用する場合、原料ゴム100質量%中のBRの配合量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。また、該BRの配合量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。5質量%未満の場合及び80質量%を超える場合、タイヤ用ゴムとして扱いにくいおそれがある。
【0025】
第一ゴム混練機での混練工程(工程(I))でシリカが配合されるが、該シリカとしては、例えば、乾式法により調製されたシリカ(無水ケイ酸)、湿式法により調製されたシリカ(含水ケイ酸)などを用いることができる。表面のシラノール基が多く、シランカップリング剤との反応点が多いという理由から、湿式法により調製されたシリカを用いることが好ましい。
【0026】
工程(I)で配合するシリカのチッ素吸着比表面積(N2SA)は、好ましくは50m2/g以上、より好ましくは80m2/g以上である。50m2/g未満では、シリカの補強性が低く、耐久性に懸念がある。また、シリカのN2SAは、好ましくは250m2/g以下、より好ましくは220m2/g以下である。250m2/gを超えると、混練加工が難しくなるおそれがある。
なお、シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0027】
工程(I)におけるシリカの配合量は、原料ゴム100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは40質量部以上である。5質量部未満では、低燃費性とウェットグリップ性能のバランスが悪化する傾向がある。また、該シリカの配合量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは120質量部以下である。150質量部を超えると、加工が困難になるおそれがある。
【0028】
第一ゴム混練機での混練工程では、上記材料以外にも、従来ゴム工業で使用される配合剤、例えば、カーボンブラック等の無機・有機充填剤、オイル等の軟化剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、各種老化防止剤、オゾン劣化防止剤、ワックスなどを必要に応じて適宜配合できる。
【0029】
図1のシステムでは、フィードスクリュー2が備えられている。ここでは、第一ゴム混練機1から排出された一次混練ゴムがモーターなどの駆動手段(図示せず)により回転するフィードスクリュー2によって移送され、第二ゴム混練機3に供給される。
【0030】
次に、本発明のシステムでは、混練対象物の温度調節が可能な第二ゴム混練機が備えられ、該第二ゴム混練機を用いて、供給された一次混練ゴム及びシランカップリング剤を温度調節しながら混練し、二次混練ゴムを得ることができる(工程(II))。
【0031】
上記第二ゴム混練機としては、混練対象物(第一混練ゴム及びシランカップリング剤の混合物)の温度調節が可能なものであれば特に制限されることなく使用でき、例えば、一軸の押出機、二軸の押出機、二軸の混練機などが挙げられる。なかでも、一次混練ゴム投入側から順にシランカップリング剤を供給可能なフィードエリアと、一次混練ゴムとシランカップリング剤とを混練可能な混練エリアとが設けられ、該混練エリア内において混練対象物の温度が調節可能となっている連続混練機(二軸連続混練機など)を好適に使用できる。
【0032】
図1には、第二ゴム混練機3の1例として、フィードエリア3a、混練エリア3b及び冷却エリア3cを有する押出機(混練押出機)が示されており、該混練押出機のフィードエリア3aにシランカップリング剤を注入するためのシランカップリング剤注入装置4が設けられている。
【0033】
図1のシステムでは、フィードスクリュー2にて一次混練ゴムが第二ゴム混練機3に移送されると同時に、シランカップリング剤注入装置4からフィードエリア3aにシランカップリング剤が注入される。上記フィードエリア3aとしては、一次混練ゴム及びシランカップリング剤を導入可能であれば特に限定されない。、また、上記注入装置4としては、シランカップリング剤が注入可能なものであれば特に限定されず、例えば、注射器タイプの注入装置などを使用できる。
【0034】
本発明で使用できるシランカップリング剤としては、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を用いることができ、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリメトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィドなどのスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランなどのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシラン、3−ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、2−クロロエチルトリメトキシシラン、2−クロロエチルトリエトキシシランなどのクロロ系などが挙げられる。なかでも、2軸混練機でのカップリング処理効率、加工性の点からSi69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)、Si266(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)が好ましい。
【0035】
シランカップリング剤の配合量は、第一混練ゴム中のシリカ100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは4質量部以上である。2質量部未満では、シリカとポリマーのカップリング効果による物性向上の効果が少ない傾向がある。また、該シランカップリング剤の配合量は、好ましくは15質量部以下、より好ましくは12質量部以下である。15質量部を超えると、過剰のカップリング剤が反応することなく、残存してしまうおそれがある。
【0036】
図1の混練エリア3bでは、フィードスクリュー2により供給された一次混練ゴム、シランカップリング剤注入装置4から供給されたシランカップリング剤が更に混練される。図3は、第二ゴム混練機3の一例としての2軸スクリュー押出機におけるスクリューの拡大平面図を示したもので、図1の混練エリア3bでは、例えば、図3に示すような2本のスクリュー31、32が平行に配置された2軸スクリュー押出機により混練される。なお、該押出機にはスクリュー駆動装置(図示せず)などが備えられている。
【0037】
図4は、混練エリア3bの断面説明図の一例を示している。図4では、混練エリア3bのシリンダー41の内部は長円形状を呈しており、2本のスクリュー31、32は共有する1つのシリンダー孔内に配置されている。2本のスクリュー31、32は、同一方向又は逆方向に回転するように回転方向を設定できる。
【0038】
また、シリンダージャケット42は、2本のスクリュー31、32が収容される円筒状空間の周囲に設けられ、内部に熱媒体を循環させることでシリンダー壁を所定の温度に保つことができ、この温度は温度調節装置(図示せず)によって、温度の内容や周囲温度などに応じて任意に調整することができる。これにより、一次混練ゴム及びシランカップリング剤の混練の温度調節が可能となる。
【0039】
2軸スクリュー押出機の押出条件は、スクリュー径が20〜200mm、スクリュー回転数が20〜400rpm、スクリューL/D(スクリュー長さ/スクリュー径)が5〜100であることが好ましい。上記範囲内であると、効率良くせん断でき、良好にカップリング処理を進行させることができる。
【0040】
第二ゴム混練機での混練工程(工程(II):第2ベース練り工程)では、一次混練ゴム及びシランカップリング剤などの混練材料(混練対象物)の温度が120〜200℃となるように調節されることが好ましい(より好ましくは130〜180℃)。また、混練時間を0.5〜5分間にすることが好ましい。上記範囲内に調整することにより、シリカとシランカップリング剤との反応率を高め、シリカと原料ゴムとのカップリング処理を効率的に進行できる。このため、加硫ゴム組成物に、優れたゴム物性(硬度、引張強度、破断強度、転がり抵抗、ウエットグリップ性能、ドライグリップ性能など)を付与できる。
なお、第二ゴム混練機内では、本発明の効果を阻害しない範囲内で上記一次混練ゴム、シランカップリング剤以外の材料も混練してもよい。
【0041】
図1の冷却エリア3cでは、混練エリア3bで得られた二次混練ゴムが、例えば、120℃以下に冷却される。冷却エリアでは周知構成(空冷、水冷など)により冷却される。
【0042】
冷却エリア3cで二次混練ゴムを冷却後、シーティングロールなどでシート状ゴムを作製し、搬送コンベアなどで冷却装置5に移送される。該装置5では、周知の冷却設備(水冷、空冷など)で冷却され、次工程で使用されるまで所定の場所で保管される。
【0043】
前述の工程の後、仕上げ練り工程が行われる。仕上げ練り工程では、保管されたシート状ゴム(二次混練ゴム)とともに、加硫剤(硫黄など)、加硫促進剤が混練され、三次混練ゴムが得られる。混練方法は、図2のバンバリーミキサーなどの密閉式ゴム混練機を用いる方法など、従来公知の方法にて実施できる。該仕上げ練り工程により、未加硫ゴム組成物が得られ、更に加硫を施すことにより加硫ゴム組成物を製造できる。このようなゴム組成物は、トレッド、ベーストレッド、サイドウォールなどのタイヤ部材に好適に使用できる。
【0044】
また、得られたゴム組成物を用い、通常の方法により空気入りタイヤを製造できる。すなわち、ゴム組成物を未加硫の段階で、トレッドなどのタイヤ部材の形状に合わせて押出加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造できる。
【実施例】
【0045】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0046】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
SBR−1(変性なし):TUFDENE 3830(旭化成(株)製、37.5部 油展品)
SBR−2(変性あり):SE0191(住友化学(株)製)
BR:BR150B(宇部興産(株)製)
カーボンブラック(ISAF):ダイヤブラックI(三菱化学(株)製)
シリカ:ニプシルAQ(東ソー・シリカ(株)製)
シランカップリング剤1:Si266(デグッサ(株)製)
シランカップリング剤2:Si69(デグッサ(株)製)
オイル:VIVATEC400(H&R社製)
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノワックス
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日油(株)製の桐
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤CZ:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)
加硫促進剤DPG:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N’−ジフェニルグアニジン)
【0047】
実施例1〜5
〔第1ベース練り工程〕
表1に示す配合に従い、神戸製鋼社製バンバリーミキサー(BB270)を用いて、シランカップリング剤、硫黄、加硫促進剤以外の材料を混練し、一次混練ゴムを製造した。バンバリーミキサーでの混練条件は以下のとおりである。
(混練条件)
一次混練ゴム(練りゴム)の温度:155℃になるまで混練
混練時間:3.5分間
ローター回転数:50rpm
【0048】
〔第2ベース練り工程〕
第1ベース練り工程で得られた一次混練ゴムをフィードスクリュー((株)モリヤマ社製2TR)により、2軸スクリュー押出機に供給すると同時に、シランカップリング剤注入装置(注射器タイプ)を使用して、表1に示す配合に従い、シランカップリング剤を押出機のフィードエリアに注入した。次いで、下記混練条件下で混練エリアで混練し、二次混練ゴムを調製した。
(混練条件)
スクリュー径:100mm
スクリュー回転数:100rpm
スクリューL/D:40
二次混練ゴム(練りゴム)の温度:表1に示された温度に調節
混練時間:表1に示された時間
混練後の二次混練ゴムを冷却エリアで120℃に冷却し、シーティングロールでシート状ゴムに成形した。更に、冷却装置(バッチオフマシーン)に移送され、二次混練ゴムを40℃に冷却した。
【0049】
〔仕上げ練り工程〕
表1に示す配合に従い、同一のバンバリーミキサーを用いて、第2ベース練り工程で得られた混練物(二次混練ゴム)、硫黄、加硫促進剤を混練し、三次混練ゴム(未加硫ゴム組成物)を得た。バンバリーミキサーでの混練条件は以下のとおりである。
(混練条件)
三次混練ゴム(未加硫ゴム組成物)の温度:100℃になるまで混練
混練時間:2.5分間
ローター回転数:25rpm
【0050】
比較例1
同一配合で、3ステージ練りにより未加硫ゴム組成物を作製した。なお、3ステージ練りは、以下の工程にて行った。
〔第1ベース練り工程〕
表1に示す配合に従い、同一のバンバリーミキサーを用いて、硫黄、加硫促進剤以外の材料を混練し、一次混練ゴムを製造した。得られた一次混練ゴムを40℃に冷却した。
なお、バンバリーミキサーでの混練条件は以下のとおりである。
(混練条件)
一次混練ゴム(練りゴム)の温度:155℃になるまで混練
混練時間:3.5分間
ローター回転数:50rpm
【0051】
〔第2ベース練り工程〕
表1に示す配合に従い、同一のバンバリーミキサーを用いて、第1ベース練り工程で得られた一次混練ゴムのみを混練し、二次混練ゴムを製造した。得られた二次混練ゴムを40℃に冷却した。
なお、バンバリーミキサーでの混練条件は以下のとおりである。
(混練条件)
二次混練ゴム(練りゴム)の温度:150℃になるまで混練
混練時間:3分間
ローター回転数:50rpm
【0052】
〔仕上げ練り工程〕
表1に示す配合に従い、同一のバンバリーミキサーを用いて、第2ベース練り工程で得られた混練物(二次混練ゴム)、硫黄、加硫促進剤を混練し、三次混練ゴム(未加硫ゴム組成物)を得た。バンバリーミキサーでの混練条件は以下のとおりである。
(混練条件)
三次混練ゴム(未加硫ゴム組成物)の温度:100℃になるまで混練
混練時間:2.5分間
ローター回転数:25rpm
【0053】
比較例2〜3
シランカップリング剤を押出機のフィードエリアで注入する代わりに、第1ベース練り工程でバンバリーミキサーに投入した以外は、実施例と同様にして未加硫ゴム組成物を作製した。
【0054】
〔加硫ゴムシートの作製〕
実施例及び比較例で得られた未加硫ゴム組成物を150℃で30分間プレス加硫し、加硫ゴムシートを得た。
【0055】
〔試験用タイヤの製造〕
また、得られた未加硫ゴム組成物をトレッド形状に成形して、他のタイヤ部材と貼り合せ、150℃、35分、25kgfの条件で加硫することにより、試験用タイヤ(195/65R15)を作製した。
【0056】
上記での製造における加工性(バンバリーミキサーのロータでの密着、未加硫ゴム組成物のムーニー粘度、スコーチタイム)、作製した加硫ゴムシート、試験用タイヤを使用して、下記の評価を行った。それぞれの試験結果を表1に示す。
【0057】
<バンバリーミキサーのロータでの密着>
以下の基準により、混練テストの状況で判断した。
有:ローター内にゴム残りが有る
無:ローター内にゴム残りが無い
【0058】
<ムーニー粘度試験(加工性)>
JIS K 6300「未加硫ゴムの試験方法」に準じて、(株)島津製作所製のムーニー粘度試験機「ムーニービスコメーターSMV−202」を用い、1分間の予熱によって熱せられた130℃の温度条件にて、小ローターを回転させ、4分間経過した時点での未加硫ゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4)を測定した。更に、未加硫ゴム組成物の粘度が10ポイント上昇する時間(スコーチタイム(分))を測定した。ムーニー粘度が小さいほど加工性に優れることを示し、スコーチタイムが小さいほど早期加硫が生じ、好ましくないことを示す。
【0059】
<硬度>
上記で得られた加硫ゴムシート(縦30mm×横50mm×高さ15mm)を用いてJIS−K6253に従って硬度(Hs)を測定した。
【0060】
<引張試験>
JIS K 6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に準じて、3号ダンベルを用いて引張り試験を実施し、加硫ゴム試験片(加硫ゴムシート)の破断強度(TB)、破断時伸び(EB)を測定した。それぞれの単位は、MPa、%で示す。
【0061】
<粘弾性試験>
加硫ゴムシートからから所定サイズの試験片を作製し、(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメータVESを用いて、初期歪10%、動歪2%、及び周波数10Hzの条件下で、70℃におけるゴム試験片の複素弾性率(E*)、損失正接(tanδ)を測定した。評価結果は、比較例1のE*を100とする指数で示し、指数が大きいほど剛性に優れている。また、比較例1のtanδを100とする指数で示し、指数が大きいほどヒステリシスロスが少なく発熱が少ないことを示す。
【0062】
<シランカップリング剤の残量測定>
練りゴムをガスクロマトグラフィーにて分析した。具体的には、熱分解して発生するメタノール量を定量し、残量を算出した。
【0063】
<操縦安定性>
製造した試験用タイヤをトヨタカローラに装着し、テストコースにて40〜100km/hで走行し、操縦安定性(ハンドル応答性、剛性感、グリップ性)についてテストドライバーによるフィーリング試験を、ドライ路面及びウェット路面状態(スキッドナンバー約50)で実施した。以下の基準にて評価した。
◎:グリップ、グリップ感とも良くなる
○:基準
△:グリップ低下、グリップ感も悪くなる
【0064】
<耐摩耗性試験>
製造した試験用タイヤをトヨタカローラに装着し、所定のコースを10000km走行後の溝深さの減少量を測定し、溝深さが1mm減少するときの走行距離を算出した。更に、比較例1の耐摩耗性指数を100とし、下記計算式により、各配合の溝深さの減少量を指数表示した。なお、耐摩耗性指数が大きいほど、耐摩耗性に優れることを示す。
(耐摩耗性指数)=(各配合で1mm溝深さが減るときの走行距離)/(比較例1のタイヤの溝が1mm減るときの走行距離)×100
【0065】
【表1】
【0066】
実施例では、従来の3ステージ練り(比較例1)に比べてシランカップリング剤残量が少なく、シリカと原料ゴムとの反応率を高めることができた。このため、破断強度、破断時伸びが改善し、耐摩耗性、ウエット性能も改善した。また、加工性の改善も見られた。更に、シランカップリング剤をバンバリーミキサーに投入した比較例2〜3では、ロータへの密着が生じ、加工性が劣っていた。
【符号の説明】
【0067】
1 密閉式の第一ゴム混練機
2 フィードスクリュー
3 第二ゴム混練機
3a フィードエリア
3b 混練エリア
3c 冷却エリア
4 シランカップリング剤注入装置
5 冷却装置
11 バンバリーミキサー
12 撹拌ロータ
13 混合室
14 排出口
15 混練機本体
16 投入口
17 縦孔
18 フローティングウェイト
19 ドロップドア
31、32 スクリュー
41 シリンダー
42 シリンダージャケット
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ配合ゴムの混練システム及び混練方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から使用されているタイヤ用のゴム混練設備(ゴム混練システム)としては、大型や小型のバンバリーミキサーなどの密閉式ゴム混練機で混練した後、必要に応じてフィードスクリューを介し、次いでオープンロールにてシート状に加工し、冷却する設備が一般的に使用されている。ここで、通常、密閉式ゴム混練機では、原料であるゴム材料やカーボン、シリカ、シランカップリング剤などの添加剤が原料投入部を通じて混練室内に投入された後、フローティングウエイトにより混練室が加圧され、混練室内を回転するロータにより混練されている。
【0003】
最近のトレッドゴム配合は、ウエットグリップ性能と転がり抵抗(低燃費性)のニーズに応えるため、シリカ及びシランカップリング剤を処方した配合が主流となっている。一般的に、シリカとシランカップリング剤との反応を充分に進行させるとゴム物性が向上し、耐摩耗性などが改善されることが知られている。ここで、これらを効率良く反応させるためには、特定の温度で長時間混練することが望ましいと考えられる。
【0004】
しかしながら、バンバリーミキサーは、ゴムせん断力が強く、混練加工時に練りゴム温度が上昇するため、温度調整が難しい。そのため、特定温度で一定時間混練することは困難である。また、バンバリーミキサーに、ゴム材料やシリカとともにシランカップリング剤を投入し、混練すると、シランカップリング剤とバンバリーローターとの反応に起因してローターとゴムとの密着が生じ易くなるため、加工性が悪化してしまう。
【0005】
特許文献1などには改良型の密閉式ゴム混練機が数多く提案されているが、このような密閉式ゴム混練機を使用しても、温度調整は難しいため、シリカとシランカップリング剤との反応率の向上、それによるゴム物性の向上については未だ改善の余地がある。また、ロータとゴムの密着などの加工性の改善も求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−170421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記課題を解決し、混練工程において原料ゴムとシリカとをシランカップリング剤により高効率でカップリング処理でき、優れたゴム物性を有する加硫ゴム組成物を得ることが可能なシリカ配合ゴムの混練システム及び混練方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、原料ゴムとシリカとを混練する密閉式の第一ゴム混練機と、前記第一ゴム混練機から排出された一次混練ゴムとシランカップリング剤とを混練する混練対象物の温度調節が可能な第二ゴム混練機とを備えることを特徴とするシリカ配合ゴムの混練システムに関する。
前記混練システムは、前記第一ゴム混練機がバンバリーミキサーであり、前記第二ゴム混練機が連続混練機であって、前記連続混練機には、前記一次混練ゴム投入側から順にフィードエリアと混練エリアとが設けられており、前記フィードエリアにおいて前記シランカップリング剤が供給され、且つ少なくとも前記混練エリア内における前記混練対象物の温度調節が可能とされていることが好ましい。ここで、前記連続混練機は、二軸連続混練機であることが好ましい。
また、前記混練システムは、前記第二ゴム混練機が前記混練対象物の温度を120〜200℃に調節可能であることが好ましい。
【0009】
本発明はまた、密閉式の第一ゴム混練機を用いて原料ゴム及びシリカを混練し、一次混練ゴムを得る工程(I)と、前記第一ゴム混練機とは異なり且つ混練対象物の温度調節が可能な第二ゴム混練機を用いて前記一次混練りゴム及びシランカップリング剤を混練し、二次混練ゴムを得る工程(II)とを有することを特徴とするシリカ配合ゴムの混練方法に関する。
前記混練方法では、前記第一ゴム混練機が、バンバリーミキサーであり、前記第二ゴム混練機が、前記一次混練ゴム投入側から順に前記シランカップリング剤を供給可能なフィードエリアと、前記一次混練ゴムと前記シランカップリング剤とを混練可能な混練エリアとを設けた連続混練機であって、前記工程(II)が、前記フィードエリアにおいて前記シランカップリング剤を供給した後、前記第二ゴム混練機の少なくとも前記混練エリア内において前記混練対象物としての前記一次混練ゴムと前記シランカップリング剤との混合物を120〜200℃で混練することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、原料ゴムとシリカとを混練する密閉式の第一ゴム混練機と、上記第一ゴム混練機から排出された一次混練ゴムとシランカップリング剤とを混練する混練対象物の温度調節が可能な第二ゴム混練機とを備えるシリカ配合ゴムの混練システム、及び該システムを用いた混練方法であるので、効率良くゴムを加熱せん断できるとともに、原料ゴムとシリカとをシランカップリング剤により高効率でカップリング処理できる。従って、加硫後のゴム組成物において、優れたゴム物性(硬度、引張強度、破断強度、転がり抵抗、ウエットグリップ性能、ドライグリップ性能など)が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のシリカ配合ゴムの混練システム(混練設備)及び混練方法の概略図
【図2】密閉式ゴム混練機の概略図
【図3】2軸スクリュー押出機のスクリューの拡大平面図
【図4】混練エリアの断面説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のシリカ配合ゴムのゴム混練システムは、原料ゴムとシリカとを混練する密閉式の第一ゴム混練機と、上記第一ゴム混練機から排出された一次混練ゴムとシランカップリング剤とを混練する混練対象物の温度調節が可能な第二ゴム混練機とを備える。また、本発明のシリカ配合ゴムの混練方法は、密閉式の第一ゴム混練機を用いて原料ゴム及びシリカを混練し、一次混練ゴムを得る工程(I)と、上記第一ゴム混練機とは異なり且つ混練対象物の温度調節が可能な第二ゴム混練機を用いて上記一次混練ゴム及びシランカップリング剤を混練し、二次混練ゴムを得る工程(II)とを有する。つまり、本発明では、密閉式の第一ゴム混練機の下流側に温度調節が可能な第二ゴム混練機をレイアウトするとともに、該第二ゴム混練機にシランカップリング剤を注入し、第一ゴム混練機で作製された一次混練ゴムとともに混練する。このため、第一ゴム混練機で混練加熱したゴムを、第二ゴム混練機で精度良く所定温度に温度調節しながら一定時間混練できる。従って、混練温度、混練時間を制御することでシリカとシランカップリング剤の反応をコントロールできるため、シリカと原料ゴムのカップリング処理を充分に進行させることが可能となり、ゴム物性を改善できる。
【0013】
また、密閉式の第一ゴム混練機内へシランカップリング剤を投入する必要がないので、第一ゴム混練機内でのゴム密着(作業性や安全性悪化)も改善できる。また、第一ゴム混練機で混練した練りゴムを冷却することなく、温度調節が可能な第二ゴム混練機で混練することが可能であるため、高い生産性を確保できる。更に、該第二ゴム混練機のサイズ(長さなど)を調整することで、密閉式の第一ゴム混練機の生産効率を維持しながらの生産が可能となる。
【0014】
以下、本発明の混練システム及び混練方法について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明に使用する混練設備(混練システム)の概略図の一例を示す。
本発明のシステムでは、先ず、密閉式の第一ゴム混練機が備えられ、該第一ゴム混練機用いて原料ゴムとシリカとを混練し、一次混練ゴムが得られる(工程(I))。
【0015】
図1のシステムにおいて、密閉式の第一ゴム混練機1としては、図2に示すようなバンバリーミキサー11(例えば、混練り容量が200〜400リットルの大型のバンバリーミキサー、200リットル以下の小型のバンバリーミキサー)が使用できる。バンバリーミキサー11は、並列する一対の撹拌ロータ12、12を配した混合室13を備え、該混合室13内に投入される原料ゴム、シリカなどを混練りし、一次混練ゴムとして上記混合室13に設けた開放可能な排出口14から塊状で排出する(工程(I):第1ベース練り工程)。本例では密閉式の第一ゴム混練機1により、上記原料ゴム、シリカなどの補強剤を含み、かつシランカップリング剤、加硫剤及び加硫促進剤を含まない材料を混練りする場合を例示している。上記補強剤としては、シリカ以外にカーボンブラックなどが挙げられる。
【0016】
上記撹拌ロータ12は、回転可能に支持される基軸の周囲に撹拌羽根を、例えば螺旋状に設けた周知構成をなし、混練機本体15に設けた混合室13内に配設される。なお、各撹拌ロータ12は、混練機本体15に取り付くモータを含む駆動手段(図示せず)を介して、互いに同方向又は逆方向に回転駆動される。上記混合室13は、上記一対の撹拌ロータ12、12と同心な2つの円周面を連ねた断面ひょうたん状をなすとともに、そのくびれ部分には、上記原料ゴム、シリカなどを投入する投入口16に通じる縦孔17の下端が接続される。また、縦孔17には、シリンダ等により昇降可能に支持されるフローティングウェイト18が配される。このフローティングウェイト18は、混合室13内に投入された原料ゴム、シリカ等を加圧し撹拌ロータ12による撹拌効率、混練効率を向上させる。
【0017】
また、上記混練機本体15には、上記混合室13の下部に形成される上記排出口14を開閉するドロップドア19が設けられ、その開放により、混練りされた一次混練ゴムを排出口14から塊状で排出、落下させる。
【0018】
第一混練機での第1ベース練り工程では、原料ゴム及びシリカなどの混練材料(混練対象物)の温度が120〜200℃となるように調節されることが好ましい。また、混練時間を1.5〜10分間にすることが好ましい。下限未満では、混練不足でフィラー分散が悪くなり物性低下をまねく傾向がある。上限を超えると、生産性が悪化する傾向がある。
【0019】
第1ベース練り工程では、第一ゴム混練機1(バンバリーミキサー11)のローター回転数は、15〜65rpmであることが好ましい。15rpm未満では、生産性が悪い(練り時間が長くなりすぎる)傾向がある。65rpmを超えると、混練時間が短くフィラー分散が悪化し物性低下をまねく傾向がある。
【0020】
本発明に使用される原料ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)等が使用できる。なかでも、第二ゴム混練機において原料ゴムとシリカとをシランカップリング剤によって高効率でカップリング処理できる点から、シリカ用に変性したSBR、BRを使用することが好ましい。
【0021】
上記変性SBRとしては、特開2001−114938号公報に記載されているアルコキシ基を含有する有機ケイ素化合物で変性したもの等が挙げられる。
【0022】
原料ゴムとして変性SBRを使用する場合、原料ゴム100質量%中の変性SBRの配合量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。20質量%未満であると、変性効果によるシリカ分散性の向上効果が少ない傾向がある。また、該変性SBRの配合量は、好ましくは90質質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。90質量%を超えると、タイヤ用ゴムとして扱いにくいおそれがある。
【0023】
BRとしては特に限定されず、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR130B、BR150B等の高シス含有量のBR、宇部興産(株)製のVCR412、VCR617等のシンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR等を使用できる。
【0024】
原料ゴムとしてBRを使用する場合、原料ゴム100質量%中のBRの配合量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。また、該BRの配合量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。5質量%未満の場合及び80質量%を超える場合、タイヤ用ゴムとして扱いにくいおそれがある。
【0025】
第一ゴム混練機での混練工程(工程(I))でシリカが配合されるが、該シリカとしては、例えば、乾式法により調製されたシリカ(無水ケイ酸)、湿式法により調製されたシリカ(含水ケイ酸)などを用いることができる。表面のシラノール基が多く、シランカップリング剤との反応点が多いという理由から、湿式法により調製されたシリカを用いることが好ましい。
【0026】
工程(I)で配合するシリカのチッ素吸着比表面積(N2SA)は、好ましくは50m2/g以上、より好ましくは80m2/g以上である。50m2/g未満では、シリカの補強性が低く、耐久性に懸念がある。また、シリカのN2SAは、好ましくは250m2/g以下、より好ましくは220m2/g以下である。250m2/gを超えると、混練加工が難しくなるおそれがある。
なお、シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0027】
工程(I)におけるシリカの配合量は、原料ゴム100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは40質量部以上である。5質量部未満では、低燃費性とウェットグリップ性能のバランスが悪化する傾向がある。また、該シリカの配合量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは120質量部以下である。150質量部を超えると、加工が困難になるおそれがある。
【0028】
第一ゴム混練機での混練工程では、上記材料以外にも、従来ゴム工業で使用される配合剤、例えば、カーボンブラック等の無機・有機充填剤、オイル等の軟化剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、各種老化防止剤、オゾン劣化防止剤、ワックスなどを必要に応じて適宜配合できる。
【0029】
図1のシステムでは、フィードスクリュー2が備えられている。ここでは、第一ゴム混練機1から排出された一次混練ゴムがモーターなどの駆動手段(図示せず)により回転するフィードスクリュー2によって移送され、第二ゴム混練機3に供給される。
【0030】
次に、本発明のシステムでは、混練対象物の温度調節が可能な第二ゴム混練機が備えられ、該第二ゴム混練機を用いて、供給された一次混練ゴム及びシランカップリング剤を温度調節しながら混練し、二次混練ゴムを得ることができる(工程(II))。
【0031】
上記第二ゴム混練機としては、混練対象物(第一混練ゴム及びシランカップリング剤の混合物)の温度調節が可能なものであれば特に制限されることなく使用でき、例えば、一軸の押出機、二軸の押出機、二軸の混練機などが挙げられる。なかでも、一次混練ゴム投入側から順にシランカップリング剤を供給可能なフィードエリアと、一次混練ゴムとシランカップリング剤とを混練可能な混練エリアとが設けられ、該混練エリア内において混練対象物の温度が調節可能となっている連続混練機(二軸連続混練機など)を好適に使用できる。
【0032】
図1には、第二ゴム混練機3の1例として、フィードエリア3a、混練エリア3b及び冷却エリア3cを有する押出機(混練押出機)が示されており、該混練押出機のフィードエリア3aにシランカップリング剤を注入するためのシランカップリング剤注入装置4が設けられている。
【0033】
図1のシステムでは、フィードスクリュー2にて一次混練ゴムが第二ゴム混練機3に移送されると同時に、シランカップリング剤注入装置4からフィードエリア3aにシランカップリング剤が注入される。上記フィードエリア3aとしては、一次混練ゴム及びシランカップリング剤を導入可能であれば特に限定されない。、また、上記注入装置4としては、シランカップリング剤が注入可能なものであれば特に限定されず、例えば、注射器タイプの注入装置などを使用できる。
【0034】
本発明で使用できるシランカップリング剤としては、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を用いることができ、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリメトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィドなどのスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランなどのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシラン、3−ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、2−クロロエチルトリメトキシシラン、2−クロロエチルトリエトキシシランなどのクロロ系などが挙げられる。なかでも、2軸混練機でのカップリング処理効率、加工性の点からSi69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)、Si266(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)が好ましい。
【0035】
シランカップリング剤の配合量は、第一混練ゴム中のシリカ100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは4質量部以上である。2質量部未満では、シリカとポリマーのカップリング効果による物性向上の効果が少ない傾向がある。また、該シランカップリング剤の配合量は、好ましくは15質量部以下、より好ましくは12質量部以下である。15質量部を超えると、過剰のカップリング剤が反応することなく、残存してしまうおそれがある。
【0036】
図1の混練エリア3bでは、フィードスクリュー2により供給された一次混練ゴム、シランカップリング剤注入装置4から供給されたシランカップリング剤が更に混練される。図3は、第二ゴム混練機3の一例としての2軸スクリュー押出機におけるスクリューの拡大平面図を示したもので、図1の混練エリア3bでは、例えば、図3に示すような2本のスクリュー31、32が平行に配置された2軸スクリュー押出機により混練される。なお、該押出機にはスクリュー駆動装置(図示せず)などが備えられている。
【0037】
図4は、混練エリア3bの断面説明図の一例を示している。図4では、混練エリア3bのシリンダー41の内部は長円形状を呈しており、2本のスクリュー31、32は共有する1つのシリンダー孔内に配置されている。2本のスクリュー31、32は、同一方向又は逆方向に回転するように回転方向を設定できる。
【0038】
また、シリンダージャケット42は、2本のスクリュー31、32が収容される円筒状空間の周囲に設けられ、内部に熱媒体を循環させることでシリンダー壁を所定の温度に保つことができ、この温度は温度調節装置(図示せず)によって、温度の内容や周囲温度などに応じて任意に調整することができる。これにより、一次混練ゴム及びシランカップリング剤の混練の温度調節が可能となる。
【0039】
2軸スクリュー押出機の押出条件は、スクリュー径が20〜200mm、スクリュー回転数が20〜400rpm、スクリューL/D(スクリュー長さ/スクリュー径)が5〜100であることが好ましい。上記範囲内であると、効率良くせん断でき、良好にカップリング処理を進行させることができる。
【0040】
第二ゴム混練機での混練工程(工程(II):第2ベース練り工程)では、一次混練ゴム及びシランカップリング剤などの混練材料(混練対象物)の温度が120〜200℃となるように調節されることが好ましい(より好ましくは130〜180℃)。また、混練時間を0.5〜5分間にすることが好ましい。上記範囲内に調整することにより、シリカとシランカップリング剤との反応率を高め、シリカと原料ゴムとのカップリング処理を効率的に進行できる。このため、加硫ゴム組成物に、優れたゴム物性(硬度、引張強度、破断強度、転がり抵抗、ウエットグリップ性能、ドライグリップ性能など)を付与できる。
なお、第二ゴム混練機内では、本発明の効果を阻害しない範囲内で上記一次混練ゴム、シランカップリング剤以外の材料も混練してもよい。
【0041】
図1の冷却エリア3cでは、混練エリア3bで得られた二次混練ゴムが、例えば、120℃以下に冷却される。冷却エリアでは周知構成(空冷、水冷など)により冷却される。
【0042】
冷却エリア3cで二次混練ゴムを冷却後、シーティングロールなどでシート状ゴムを作製し、搬送コンベアなどで冷却装置5に移送される。該装置5では、周知の冷却設備(水冷、空冷など)で冷却され、次工程で使用されるまで所定の場所で保管される。
【0043】
前述の工程の後、仕上げ練り工程が行われる。仕上げ練り工程では、保管されたシート状ゴム(二次混練ゴム)とともに、加硫剤(硫黄など)、加硫促進剤が混練され、三次混練ゴムが得られる。混練方法は、図2のバンバリーミキサーなどの密閉式ゴム混練機を用いる方法など、従来公知の方法にて実施できる。該仕上げ練り工程により、未加硫ゴム組成物が得られ、更に加硫を施すことにより加硫ゴム組成物を製造できる。このようなゴム組成物は、トレッド、ベーストレッド、サイドウォールなどのタイヤ部材に好適に使用できる。
【0044】
また、得られたゴム組成物を用い、通常の方法により空気入りタイヤを製造できる。すなわち、ゴム組成物を未加硫の段階で、トレッドなどのタイヤ部材の形状に合わせて押出加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造できる。
【実施例】
【0045】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0046】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
SBR−1(変性なし):TUFDENE 3830(旭化成(株)製、37.5部 油展品)
SBR−2(変性あり):SE0191(住友化学(株)製)
BR:BR150B(宇部興産(株)製)
カーボンブラック(ISAF):ダイヤブラックI(三菱化学(株)製)
シリカ:ニプシルAQ(東ソー・シリカ(株)製)
シランカップリング剤1:Si266(デグッサ(株)製)
シランカップリング剤2:Si69(デグッサ(株)製)
オイル:VIVATEC400(H&R社製)
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノワックス
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日油(株)製の桐
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤CZ:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)
加硫促進剤DPG:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N’−ジフェニルグアニジン)
【0047】
実施例1〜5
〔第1ベース練り工程〕
表1に示す配合に従い、神戸製鋼社製バンバリーミキサー(BB270)を用いて、シランカップリング剤、硫黄、加硫促進剤以外の材料を混練し、一次混練ゴムを製造した。バンバリーミキサーでの混練条件は以下のとおりである。
(混練条件)
一次混練ゴム(練りゴム)の温度:155℃になるまで混練
混練時間:3.5分間
ローター回転数:50rpm
【0048】
〔第2ベース練り工程〕
第1ベース練り工程で得られた一次混練ゴムをフィードスクリュー((株)モリヤマ社製2TR)により、2軸スクリュー押出機に供給すると同時に、シランカップリング剤注入装置(注射器タイプ)を使用して、表1に示す配合に従い、シランカップリング剤を押出機のフィードエリアに注入した。次いで、下記混練条件下で混練エリアで混練し、二次混練ゴムを調製した。
(混練条件)
スクリュー径:100mm
スクリュー回転数:100rpm
スクリューL/D:40
二次混練ゴム(練りゴム)の温度:表1に示された温度に調節
混練時間:表1に示された時間
混練後の二次混練ゴムを冷却エリアで120℃に冷却し、シーティングロールでシート状ゴムに成形した。更に、冷却装置(バッチオフマシーン)に移送され、二次混練ゴムを40℃に冷却した。
【0049】
〔仕上げ練り工程〕
表1に示す配合に従い、同一のバンバリーミキサーを用いて、第2ベース練り工程で得られた混練物(二次混練ゴム)、硫黄、加硫促進剤を混練し、三次混練ゴム(未加硫ゴム組成物)を得た。バンバリーミキサーでの混練条件は以下のとおりである。
(混練条件)
三次混練ゴム(未加硫ゴム組成物)の温度:100℃になるまで混練
混練時間:2.5分間
ローター回転数:25rpm
【0050】
比較例1
同一配合で、3ステージ練りにより未加硫ゴム組成物を作製した。なお、3ステージ練りは、以下の工程にて行った。
〔第1ベース練り工程〕
表1に示す配合に従い、同一のバンバリーミキサーを用いて、硫黄、加硫促進剤以外の材料を混練し、一次混練ゴムを製造した。得られた一次混練ゴムを40℃に冷却した。
なお、バンバリーミキサーでの混練条件は以下のとおりである。
(混練条件)
一次混練ゴム(練りゴム)の温度:155℃になるまで混練
混練時間:3.5分間
ローター回転数:50rpm
【0051】
〔第2ベース練り工程〕
表1に示す配合に従い、同一のバンバリーミキサーを用いて、第1ベース練り工程で得られた一次混練ゴムのみを混練し、二次混練ゴムを製造した。得られた二次混練ゴムを40℃に冷却した。
なお、バンバリーミキサーでの混練条件は以下のとおりである。
(混練条件)
二次混練ゴム(練りゴム)の温度:150℃になるまで混練
混練時間:3分間
ローター回転数:50rpm
【0052】
〔仕上げ練り工程〕
表1に示す配合に従い、同一のバンバリーミキサーを用いて、第2ベース練り工程で得られた混練物(二次混練ゴム)、硫黄、加硫促進剤を混練し、三次混練ゴム(未加硫ゴム組成物)を得た。バンバリーミキサーでの混練条件は以下のとおりである。
(混練条件)
三次混練ゴム(未加硫ゴム組成物)の温度:100℃になるまで混練
混練時間:2.5分間
ローター回転数:25rpm
【0053】
比較例2〜3
シランカップリング剤を押出機のフィードエリアで注入する代わりに、第1ベース練り工程でバンバリーミキサーに投入した以外は、実施例と同様にして未加硫ゴム組成物を作製した。
【0054】
〔加硫ゴムシートの作製〕
実施例及び比較例で得られた未加硫ゴム組成物を150℃で30分間プレス加硫し、加硫ゴムシートを得た。
【0055】
〔試験用タイヤの製造〕
また、得られた未加硫ゴム組成物をトレッド形状に成形して、他のタイヤ部材と貼り合せ、150℃、35分、25kgfの条件で加硫することにより、試験用タイヤ(195/65R15)を作製した。
【0056】
上記での製造における加工性(バンバリーミキサーのロータでの密着、未加硫ゴム組成物のムーニー粘度、スコーチタイム)、作製した加硫ゴムシート、試験用タイヤを使用して、下記の評価を行った。それぞれの試験結果を表1に示す。
【0057】
<バンバリーミキサーのロータでの密着>
以下の基準により、混練テストの状況で判断した。
有:ローター内にゴム残りが有る
無:ローター内にゴム残りが無い
【0058】
<ムーニー粘度試験(加工性)>
JIS K 6300「未加硫ゴムの試験方法」に準じて、(株)島津製作所製のムーニー粘度試験機「ムーニービスコメーターSMV−202」を用い、1分間の予熱によって熱せられた130℃の温度条件にて、小ローターを回転させ、4分間経過した時点での未加硫ゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4)を測定した。更に、未加硫ゴム組成物の粘度が10ポイント上昇する時間(スコーチタイム(分))を測定した。ムーニー粘度が小さいほど加工性に優れることを示し、スコーチタイムが小さいほど早期加硫が生じ、好ましくないことを示す。
【0059】
<硬度>
上記で得られた加硫ゴムシート(縦30mm×横50mm×高さ15mm)を用いてJIS−K6253に従って硬度(Hs)を測定した。
【0060】
<引張試験>
JIS K 6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に準じて、3号ダンベルを用いて引張り試験を実施し、加硫ゴム試験片(加硫ゴムシート)の破断強度(TB)、破断時伸び(EB)を測定した。それぞれの単位は、MPa、%で示す。
【0061】
<粘弾性試験>
加硫ゴムシートからから所定サイズの試験片を作製し、(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメータVESを用いて、初期歪10%、動歪2%、及び周波数10Hzの条件下で、70℃におけるゴム試験片の複素弾性率(E*)、損失正接(tanδ)を測定した。評価結果は、比較例1のE*を100とする指数で示し、指数が大きいほど剛性に優れている。また、比較例1のtanδを100とする指数で示し、指数が大きいほどヒステリシスロスが少なく発熱が少ないことを示す。
【0062】
<シランカップリング剤の残量測定>
練りゴムをガスクロマトグラフィーにて分析した。具体的には、熱分解して発生するメタノール量を定量し、残量を算出した。
【0063】
<操縦安定性>
製造した試験用タイヤをトヨタカローラに装着し、テストコースにて40〜100km/hで走行し、操縦安定性(ハンドル応答性、剛性感、グリップ性)についてテストドライバーによるフィーリング試験を、ドライ路面及びウェット路面状態(スキッドナンバー約50)で実施した。以下の基準にて評価した。
◎:グリップ、グリップ感とも良くなる
○:基準
△:グリップ低下、グリップ感も悪くなる
【0064】
<耐摩耗性試験>
製造した試験用タイヤをトヨタカローラに装着し、所定のコースを10000km走行後の溝深さの減少量を測定し、溝深さが1mm減少するときの走行距離を算出した。更に、比較例1の耐摩耗性指数を100とし、下記計算式により、各配合の溝深さの減少量を指数表示した。なお、耐摩耗性指数が大きいほど、耐摩耗性に優れることを示す。
(耐摩耗性指数)=(各配合で1mm溝深さが減るときの走行距離)/(比較例1のタイヤの溝が1mm減るときの走行距離)×100
【0065】
【表1】
【0066】
実施例では、従来の3ステージ練り(比較例1)に比べてシランカップリング剤残量が少なく、シリカと原料ゴムとの反応率を高めることができた。このため、破断強度、破断時伸びが改善し、耐摩耗性、ウエット性能も改善した。また、加工性の改善も見られた。更に、シランカップリング剤をバンバリーミキサーに投入した比較例2〜3では、ロータへの密着が生じ、加工性が劣っていた。
【符号の説明】
【0067】
1 密閉式の第一ゴム混練機
2 フィードスクリュー
3 第二ゴム混練機
3a フィードエリア
3b 混練エリア
3c 冷却エリア
4 シランカップリング剤注入装置
5 冷却装置
11 バンバリーミキサー
12 撹拌ロータ
13 混合室
14 排出口
15 混練機本体
16 投入口
17 縦孔
18 フローティングウェイト
19 ドロップドア
31、32 スクリュー
41 シリンダー
42 シリンダージャケット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ゴムとシリカとを混練する密閉式の第一ゴム混練機と、
前記第一ゴム混練機から排出された一次混練ゴムとシランカップリング剤とを混練する混練対象物の温度調節が可能な第二ゴム混練機とを備えることを特徴とするシリカ配合ゴムの混練システム。
【請求項2】
前記第一ゴム混練機がバンバリーミキサーであり、前記第二ゴム混練機が連続混練機であって、
前記連続混練機には、前記一次混練ゴム投入側から順にフィードエリアと混練エリアとが設けられており、前記フィードエリアにおいて前記シランカップリング剤が供給され、且つ少なくとも前記混練エリア内における前記混練対象物の温度調節が可能とされている請求項1記載のシリカ配合ゴムの混練システム。
【請求項3】
前記連続混練機が二軸連続混練機である請求項2記載のシリカ配合ゴムの混練システム。
【請求項4】
前記第二ゴム混練機が前記混練対象物の温度を120〜200℃に調節可能である請求項1〜3のいずれかに記載のシリカ配合ゴムの混練システム。
【請求項5】
密閉式の第一ゴム混練機を用いて原料ゴム及びシリカを混練し、一次混練ゴムを得る工程(I)と、
前記第一ゴム混練機とは異なり且つ混練対象物の温度調節が可能な第二ゴム混練機を用いて前記一次混練ゴム及びシランカップリング剤を混練し、二次混練ゴムを得る工程(II)と
を有することを特徴とするシリカ配合ゴムの混練方法。
【請求項6】
前記第一ゴム混練機が、バンバリーミキサーであり、
前記第二ゴム混練機が、前記一次混練ゴム投入側から順に前記シランカップリング剤を供給可能なフィードエリアと、前記一次混練ゴムと前記シランカップリング剤とを混練可能な混練エリアとを設けた連続混練機であって、
前記工程(II)が、前記フィードエリアにおいて前記シランカップリング剤を供給した後、前記第二ゴム混練機の少なくとも前記混練エリア内において前記混練対象物としての前記一次混練ゴムと前記シランカップリング剤との混合物を120〜200℃で混練する請求項5記載のシリカ配合ゴムの混練方法。
【請求項1】
原料ゴムとシリカとを混練する密閉式の第一ゴム混練機と、
前記第一ゴム混練機から排出された一次混練ゴムとシランカップリング剤とを混練する混練対象物の温度調節が可能な第二ゴム混練機とを備えることを特徴とするシリカ配合ゴムの混練システム。
【請求項2】
前記第一ゴム混練機がバンバリーミキサーであり、前記第二ゴム混練機が連続混練機であって、
前記連続混練機には、前記一次混練ゴム投入側から順にフィードエリアと混練エリアとが設けられており、前記フィードエリアにおいて前記シランカップリング剤が供給され、且つ少なくとも前記混練エリア内における前記混練対象物の温度調節が可能とされている請求項1記載のシリカ配合ゴムの混練システム。
【請求項3】
前記連続混練機が二軸連続混練機である請求項2記載のシリカ配合ゴムの混練システム。
【請求項4】
前記第二ゴム混練機が前記混練対象物の温度を120〜200℃に調節可能である請求項1〜3のいずれかに記載のシリカ配合ゴムの混練システム。
【請求項5】
密閉式の第一ゴム混練機を用いて原料ゴム及びシリカを混練し、一次混練ゴムを得る工程(I)と、
前記第一ゴム混練機とは異なり且つ混練対象物の温度調節が可能な第二ゴム混練機を用いて前記一次混練ゴム及びシランカップリング剤を混練し、二次混練ゴムを得る工程(II)と
を有することを特徴とするシリカ配合ゴムの混練方法。
【請求項6】
前記第一ゴム混練機が、バンバリーミキサーであり、
前記第二ゴム混練機が、前記一次混練ゴム投入側から順に前記シランカップリング剤を供給可能なフィードエリアと、前記一次混練ゴムと前記シランカップリング剤とを混練可能な混練エリアとを設けた連続混練機であって、
前記工程(II)が、前記フィードエリアにおいて前記シランカップリング剤を供給した後、前記第二ゴム混練機の少なくとも前記混練エリア内において前記混練対象物としての前記一次混練ゴムと前記シランカップリング剤との混合物を120〜200℃で混練する請求項5記載のシリカ配合ゴムの混練方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2011−38034(P2011−38034A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188651(P2009−188651)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】
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