説明

シリコアルミノリン酸塩、ハニカム構造体及び排ガス浄化装置

【課題】本発明は、NOxの浄化性能に優れ、水を吸着することによる収縮及び水を脱着することによる膨張を抑制することが可能なシリコアルミノリン酸塩、該シリコアルミノリン酸塩を含むハニカムユニットを有するハニカム構造体及び該ハニカム構造体を有する排ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【解決手段】シリコアルミノリン酸塩は、Al及びPの物質量の和に対するSiの物質量の比が0.22以上0.33以下であり、酸点が1.2mmol/g以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコアルミノリン酸塩、ハニカム構造体及び排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の排ガスを浄化するシステムの一つとして、アンモニアを用いて、NOxを窒素と水に還元するSCR(選択触媒還元)システムが知られている。
【0003】
また、SCRシステムにおいて、アンモニアを吸着する材料として、ゼオライトが知られている。
【0004】
特許文献1には、ゼオライトと、無機繊維及び/又はウィスカと、無機バインダを含むハニカムユニットを有するハニカム構造体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第06/137149号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようなハニカム構造体よりも高いNOxの浄化性能が求められており、ゼオライトとして、NOxの浄化性能に優れるSAPO−34を用いることが考えられる。
【0007】
一方、SAPO−34は、水を吸着又は脱着することにより、収縮又は膨張して格子定数が変化する。このため、SAPO−34を含むハニカムユニットを有するハニカム構造体は、SAPO−34が水を吸着又は脱着することにより、ハニカムユニットが破損しやすいという問題がある。
【0008】
本発明は、上記の従来技術が有する問題に鑑み、NOxの浄化性能に優れ、水を吸着することによる収縮及び水を脱着することによる膨張を抑制することが可能なシリコアルミノリン酸塩、該シリコアルミノリン酸塩を含むハニカムユニットを有するハニカム構造体及び該ハニカム構造体を有する排ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のシリコアルミノリン酸塩は、Al及びPの物質量の和に対するSiの物質量の比が0.22以上0.33以下であり、酸点が1.2mmol/g以上である。
【0010】
本発明のシリコアルミノリン酸塩は、銅イオン及び/又は鉄イオンによりイオン交換されていることが望ましい。
【0011】
本発明のハニカム構造体は、本発明のシリコアルミノリン酸塩及び無機バインダを含み、複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設されているハニカムユニットを有する。
【0012】
本発明のハニカム構造体において、前記シリコアルミノリン酸塩は、一次粒子の平均粒径が1μm以上5μm以下であることが望ましい。
【0013】
前記無機バインダは、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス、セピオライト、アタパルジャイト及びベーマイトからなる群より選択される一種以上に含まれる固形分であることが望ましい。
【0014】
前記ハニカムユニットは、無機繊維、鱗片状物質、テトラポット状物質及び三次元針状物質からなる群より選択される一種以上をさらに含むことが望ましい。
【0015】
前記無機繊維は、アルミナ繊維、シリカ繊維、炭化ケイ素繊維、シリカアルミナ繊維、ガラス繊維、チタン酸カリウム繊維及びホウ酸アルミニウム繊維からなる群より選択される一種以上であり、前記鱗片状物質は、鱗片状ガラス、鱗片状白雲母、鱗片状アルミナ及び鱗片状シリカからなる群より選択される一種以上であり、前記テトラポット状物質は、テトラポット状酸化亜鉛であり、前記三次元針状物質は、三次元針状アルミナ、三次元針状シリカ、三次元針状炭化ケイ素、三次元針状シリカアルミナ、三次元針状ガラス、三次元針状チタン酸カリウム、三次元針状ホウ酸アルミニウム及び三次元針状ベーマイトからなる群より選択される一種以上であることが望ましい。
【0016】
本発明のハニカム構造体は、複数の前記ハニカムユニットを有することが望ましい。
【0017】
本発明のハニカム構造体は、コージェライトを含み、複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設されているハニカムユニットを有し、本発明のシリコアルミノリン酸塩が前記隔壁に担持されている。
【0018】
本発明の排ガス浄化装置は、本発明のハニカム構造体と、該ハニカム構造体の外周部に配置されている保持シール材と、該ハニカム構造体及び該保持シール材が収容されている金属管を有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、NOxの浄化性能に優れ、水を吸着することによる収縮及び水を脱着することによる膨張を抑制することが可能なシリコアルミノリン酸塩、該シリコアルミノリン酸塩を含むハニカムユニットを有するハニカム構造体及び該ハニカム構造体を有する排ガス浄化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のハニカム構造体の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の排ガス浄化装置の一例を示す断面図である。
【図3】本発明のハニカム構造体の他の例を示す斜視図である。
【図4】図3のハニカム構造体を構成するハニカムユニットを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明を実施するための形態を図面と共に説明する。
【0022】
図1に、本発明のハニカム構造体の一例を示す。ハニカム構造体10は、シリコアルミノリン酸塩及び無機バインダを含み、複数の貫通孔11aが隔壁11bを隔てて長手方向に並設されている単一のハニカムユニット11の外周面に外周コート層12が形成されている。
【0023】
シリコアルミノリン酸塩は、Al(アルミニウム)及びP(リン)の物質量の和に対するSi(ケイ素)の物質量の比が0.22以上0.33以下であり、0.26以上0.33以下が好ましい。シリコアルミノリン酸塩のAl及びPの物質量の和に対するSiの物質量の比が0.22未満であると、シリコアルミノリン酸塩が水を吸着することによる収縮及びシリコアルミノリン酸塩が水を脱着することによる膨張を抑制することが困難になる。一方、シリコアルミノリン酸塩のAl及びPの物質量の和に対するSiの物質量の比が0.33を超えると、シリコアルミノリン酸塩がアモルファスになり、ハニカムユニット11を作製することが困難になる。
【0024】
なお、本発明における物質量の単位はmolであり、シリコアルミノリン酸塩のAl及びPの物質量[mol]の和に対するSiの物質量[mol]の比(モル比)は、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)を用いて測定することができる。
【0025】
シリコアルミノリン酸塩は、酸点が1.2mmol/g以上であり、1.5mmol/g以上が好ましく、2.2mmol/g以上がさらに好ましい。シリコアルミノリン酸塩の酸点が1.2mmol/g未満であると、シリコアルミノリン酸塩をイオン交換する際に、イオン交換量が低下し、NOxの浄化性能を向上させる効果が小さくなる。このとき、シリコアルミノリン酸塩の酸点の上限は、式
(Al及びPの物質量の和に対するSiの物質量の比)×12.9[mmol/g]
から算出される理論値である。
【0026】
なお、シリコアルミノリン酸塩の酸点は、アンモニア昇温脱離(NH−TPD)法により測定することができる。
【0027】
シリコアルミノリン酸塩は、水中に、リン酸、水酸化アルミニウム、シリカ及び構造規定剤(SDA)を加えて前駆体ゲルを作製した後、加熱することにより合成することができる。
【0028】
なお、構造規定剤は、シリコアルミノリン酸塩を合成する際に、規則的な細孔構造を形成するために用いられる鋳型である。
【0029】
このとき、リン酸及び水酸化アルミニウムの物質量の和に対するシリカの物質量の比を調整することにより、シリコアルミノリン酸塩のAl及びPの物質量の和に対するSiの物質量の比を制御することができる。また、構造規定剤の添加量を調整することにより、シリコアルミノリン酸塩の酸点を制御することができる。
【0030】
構造規定剤としては、特に限定されないが、モルホリン、ジエチルアミン、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルアミン等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0031】
シリコアルミノリン酸塩は、NOxの浄化性能を考慮すると、銅イオン及び/又は鉄イオンによりイオン交換されていることが好ましい。
【0032】
銅イオン及び/又は鉄イオンによりイオン交換されているシリコアルミノリン酸塩は、イオン交換量が1.0〜5.0質量%であることが好ましい。シリコアルミノリン酸塩のイオン交換量が1.0質量%未満であると、NOxの浄化性能を向上させる効果が小さくなる。一方、シリコアルミノリン酸塩のイオン交換量が5.0質量%を超えると、水熱耐久性が低下したり、例えば、500℃以上の高温におけるNOxの浄化性能が低下したりする。
【0033】
なお、シリコアルミノリン酸塩は、上記以外の金属イオンによりイオン交換されていてもよい。
【0034】
シリコアルミノリン酸塩は、一次粒子の平均粒径が1〜5μmであることが好ましい。シリコアルミノリン酸塩の一次粒子の平均粒径が1μm未満であると、排ガスが隔壁11bの内部まで浸透しにくくなって、シリコアルミノリン酸塩がNOxの浄化に有効に利用されにくくなる。一方、シリコアルミノリン酸塩の一次粒子の平均粒径が5μmを超えると、ハニカムユニット11の気孔率が大きくなって、ハニカムユニット11の強度が低下する。また、シリコアルミノリン酸塩の一次粒子の平均粒径が5μmを超えると、シリコアルミノリン酸塩の比表面積が小さくなって、NOxの浄化性能が低下する。
【0035】
なお、シリコアルミノリン酸塩の一次粒子の平均粒径は、通常、20μm以下であるが、ハニカムユニット11用の材料として、シリコアルミノリン酸塩を用いる場合は、シリコアルミノリン酸塩を粉砕して一次粒子の平均粒径を小さくする。
【0036】
ハニカムユニット11は、見掛けの体積当たりのシリコアルミノリン酸塩の含有量が230〜360g/Lであることが好ましい。ハニカムユニット11の見掛けの体積当たりのシリコアルミノリン酸塩の含有量が230g/L未満であると、NOxの浄化性能を向上させるためにハニカムユニット11の見掛けの体積を大きくしなければならない。一方、ハニカムユニット11の見掛けの体積当たりのシリコアルミノリン酸塩の含有量が360g/Lを超えると、ハニカムユニット11の強度が不十分になると共に、ハニカムユニット11の開口率が小さくなる。
【0037】
ハニカムユニット11に含まれる無機バインダとしては、特に限定されないが、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス、セピオライト、アタパルジャイト、ベーマイト等に含まれる固形分が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0038】
ハニカムユニット11中の無機バインダの含有量は、5〜30質量%であることが好ましく、10〜20質量%がさらに好ましい。ハニカムユニット11中の無機バインダの含有量が5質量%未満であると、ハニカムユニット11の強度が低下する。一方、ハニカムユニット11中の無機バインダの含有量が30質量%を超えると、ハニカムユニット11を押出成形することが困難になる。
【0039】
ハニカムユニット11は、強度を向上させるために、無機繊維、鱗片状物質、テトラポット状物質及び三次元針状物質からなる群より選択される一種以上をさらに含むことが好ましい。
【0040】
ハニカムユニット11に含まれる無機繊維としては、特に限定されないが、アルミナ繊維、シリカ繊維、炭化ケイ素繊維、シリカアルミナ繊維、ガラス繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0041】
無機繊維のアスペクト比は、2〜1000であることが好ましく、5〜800がさらに好ましく、10〜500が特に好ましい。無機繊維のアスペクト比が2未満であると、ハニカムユニット11の強度を向上させる効果が小さくなる。一方、無機繊維のアスペクト比が1000を超えると、ハニカムユニット11を押出成形する際に金型に目詰まり等が発生したり、無機繊維が折れて、ハニカムユニット11の強度を向上させる効果が小さくなったりする。
【0042】
鱗片状物質は、平たい物質を意味し、厚さが0.2〜5μmであることが好ましく、最大長さが10〜160μmであることが好ましく、厚さに対する最大長さの比が3〜250であることが好ましい。
【0043】
ハニカムユニット11に含まれる鱗片状物質としては、特に限定されないが、鱗片状ガラス、鱗片状白雲母、鱗片状アルミナ、鱗片状シリカ等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0044】
テトラポット状物質は、針状部が三次元に延びている物質を意味し、針状部の平均針状長さが5〜30μmであることが好ましく、針状部の平均径が0.5〜5μmであることが好ましい。
【0045】
テトラポット状物質としては、単結晶体、ウィスカー等が挙げられる。
【0046】
ハニカムユニット11に含まれるテトラポット状物質としては、特に限定されないが、テトラポット状酸化亜鉛等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0047】
三次元針状物質は、針状部同士がそれぞれの針状部の中央付近でガラス等の無機化合物により結合されている物質を意味し、針状部の平均針状長さが5〜30μmであることが好ましく、針状部の平均径が0.5〜5μmであることが好ましい。
【0048】
また、三次元針状物質は、複数の針状部が三次元に連なっていてもよく、針状部の直径が0.1〜5μmであることが好ましく、長さが0.3〜30μmであることが好ましく、直径に対する長さの比が1.4〜50であることが好ましい。
【0049】
ハニカムユニット11に含まれる三次元針状物質としては、特に限定されないが、三次元針状アルミナ、三次元針状シリカ、三次元針状炭化ケイ素、三次元針状シリカアルミナ、三次元針状ガラス、三次元針状チタン酸カリウム、三次元針状ホウ酸アルミニウム、三次元針状ベーマイト等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0050】
ハニカムユニット11中の無機繊維、鱗片状物質、テトラポット状物質及び三次元針状物質からなる群より選択される一種以上の含有量は、3〜50質量%であることが好ましく、3〜30質量%がさらに好ましく、5〜20質量%が特に好ましい。ハニカムユニット11中の無機繊維、鱗片状物質、テトラポット状物質及び三次元針状物質からなる群より選択される一種以上の含有量が3質量%未満であると、ハニカムユニット11の強度を向上させる効果が小さくなる。一方、ハニカムユニット11中の無機繊維、鱗片状物質、テトラポット状物質及び三次元針状物質からなる群より選択される一種以上の含有量が50質量%を超えると、ハニカムユニット11中のシリコアルミノリン酸塩の含有量が低下して、NOxの浄化性能が低下する。
【0051】
ハニカムユニット11は、気孔率が25〜40%であることが好ましい。ハニカムユニット11の気孔率が25%未満であると、排ガスが隔壁11bの内部まで浸透しにくくなって、シリコアルミノリン酸塩がNOxの浄化に有効に利用されなくなる。一方、ハニカムユニット11の気孔率が40%を超えると、ハニカムユニット11の強度が不十分となる。
【0052】
なお、ハニカムユニット11の気孔率は、水銀圧入法を用いて測定することができる。
【0053】
ハニカムユニット11は、長手方向に垂直な断面の開口率が50〜75%であることが好ましい。ハニカムユニット11の長手方向に垂直な断面の開口率が50%未満であると、シリコアルミノリン酸塩がNOxの浄化に有効に利用されなくなる。一方、ハニカムユニット11の長手方向に垂直な断面の開口率が75%を超えると、ハニカムユニット11の強度が不十分となる。
【0054】
ハニカムユニット11は、長手方向に垂直な断面の貫通孔11aの密度が31〜155個/cmであることが好ましい。ハニカムユニット11の長手方向に垂直な断面の貫通孔11aの密度が31個/cm未満であると、排ガスとシリコアルミノリン酸塩が接触しにくくなって、NOxの浄化性能が低下する。一方、ハニカムユニット11の長手方向に垂直な断面の貫通孔11aの密度が155個/cmを超えると、ハニカム構造体10の圧力損失が増大する。
【0055】
ハニカムユニット11の隔壁11bの厚さは、0.10〜0.50mmであることが好ましく、0.15〜0.35mmがさらに好ましい。隔壁11bの厚さが0.10mm未満であると、ハニカムユニット11の強度が低下する。一方、隔壁11bの厚さが0.50mmを超えると、排ガスが隔壁11bの内部まで浸透しにくくなって、シリコアルミノリン酸塩がNOxの浄化に有効に利用されなくなる。
【0056】
外周コート層12は、厚さが0.1〜2mmであることが好ましい。外周コート層12の厚さが0.1mm未満であると、ハニカム構造体10の強度を向上させる効果が不十分になる。一方、外周コート層12の厚さが2mmを超えると、ハニカム構造体10の単位体積当たりのシリコアルミノリン酸塩の含有量が低下して、NOxの浄化性能が低下する。
【0057】
ハニカム構造体10は、円柱状であるが、特に限定されず、角柱状、楕円柱状等であってもよい。また、貫通孔11aの形状は、四角柱状であるが、特に限定されず、三角柱状、六角柱状等であってもよい。
【0058】
次に、ハニカム構造体10の製造方法の一例について説明する。まず、シリコアルミノリン酸塩及び無機バインダを含み、必要に応じて、無機繊維、鱗片状物質、テトラポット状物質及び三次元針状物質からなる群より選択される一種以上をさらに含む原料ペーストを用いて押出成形し、複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設されている円柱状の生のハニカム成形体を作製する。これにより、焼成温度を低くしても、十分な強度を有する円柱状のハニカムユニット11が得られる。
【0059】
原料ペーストに含まれる無機バインダは、特に限定されないが、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス、セピオライト、アタパルジャイト、ベーマイト等として添加されており、二種以上併用されていてもよい。
【0060】
また、原料ペーストには、有機バインダ、分散媒、成形助剤等を、必要に応じて、適宜添加してもよい。
【0061】
有機バインダとしては、特に限定されないが、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられ、二種以上併用してもよい。なお、有機バインダの添加量は、シリコアルミノリン酸塩、無機バインダ、無機繊維、鱗片状物質、テトラポット状物質及び三次元針状物質からなる群より選択される一種以上の総質量に対して、1〜10%であることが好ましい。
【0062】
分散媒としては、特に限定されないが、水、ベンゼン等の有機溶媒、メタノール等のアルコール等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0063】
成形助剤としては、特に限定されないが、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0064】
原料ペーストを調製する際には、混合混練することが好ましく、ミキサー、アトライタ等を用いて混合してもよく、ニーダー等を用いて混練してもよい。
【0065】
次に、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機、凍結乾燥機等の乾燥機を用いて、ハニカム成形体を乾燥させる。
【0066】
さらに、乾燥したハニカム成形体を脱脂する。脱脂条件は、成形体に含まれる有機物の種類や量によって適宜選択することができるが、400℃で2時間であることが好ましい。
【0067】
次に、脱脂されたハニカム成形体を焼成することにより、円柱状のハニカムユニット11が得られる。焼成温度は、600〜1200℃であることが好ましく、600〜1000℃がさらに好ましい。焼成温度が600℃未満であると、焼結が進行せず、ハニカムユニット11の強度が低くなる。一方、焼成温度が1200℃を超えると、焼結が進行しすぎて、シリコアルミノリン酸塩の反応サイトが減少する。
【0068】
次に、円柱状のハニカムユニット11の外周面に外周コート層用ペーストを塗布する。
【0069】
外周コート層用ペーストとしては、特に限定されないが、無機バインダ及び無機粒子の混合物、無機バインダ及び無機繊維の混合物、無機バインダ、無機粒子及び無機繊維の混合物等が挙げられる。
【0070】
また、外周コート層用ペーストは、有機バインダをさらに含んでいてもよい。
【0071】
有機バインダとしては、特に限定されないが、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0072】
次に、外周コート層用ペーストが塗布されたハニカムユニット11を乾燥固化することにより、円柱状のハニカム構造体10が得られる。このとき、外周コート層用ペーストに有機バインダが含まれている場合は、脱脂することが好ましい。脱脂条件は、有機物の種類や量によって適宜選択することができるが、700℃で20分間であることが好ましい。
【0073】
なお、ハニカムユニット11を銅イオン及び/又は鉄イオンを含む水溶液中に浸漬することにより、シリコアルミノリン酸塩をイオン交換することができる。また、銅イオン及び/又は鉄イオンによりイオン交換されているシリコアルミノリン酸塩を含む原料ペーストを用いてもよい。
【0074】
本発明の排ガス浄化装置は、本発明のハニカム構造体と、ハニカム構造体の末端を除く外周部に配置されている保持シール材と、ハニカム構造体及び保持シール材が収容されている金属管を有する。
【0075】
図2に、本発明の排ガス浄化装置の一例を示す。排ガス浄化装置100は、ハニカム構造体10の外周部に保持シール材20を配置した状態で、金属管30にキャニングすることにより得られる。また、排ガス浄化装置100には、排ガスの流れる方向に対して、ハニカム構造体10の上流側に、アンモニア又は分解してアンモニアが発生する化合物を噴射する噴射ノズル等の噴射手段(不図示)が設けられている。これにより、排ガスにアンモニアが添加されるため、ハニカムユニット11に含まれるシリコアルミノリン酸塩により、排ガス中に含まれるNOxが還元される。
【0076】
分解してアンモニアが発生する化合物としては、排ガス中でアンモニアを発生させることが可能であれば、特に限定されないが、貯蔵安定性を考慮すると、尿素水が好ましい。
【0077】
なお、尿素水は、排ガスにより加熱されて、加水分解し、アンモニアが発生する。
【0078】
図3に、本発明のハニカム構造体の他の例を示す。なお、ハニカム構造体10'は、複数の貫通孔11aが隔壁11bを隔てて長手方向に並設されているハニカムユニット11'(図4参照)が接着層13を介して複数個接着されている以外は、ハニカム構造体10と同一の構成である。
【0079】
ハニカムユニット11'は、長手方向に垂直な断面の断面積が5〜50cmであることが好ましい。ハニカムユニット11'の長手方向に垂直な断面の断面積が5cm未満であると、ハニカム構造体10'の圧力損失が増大する。一方、ハニカムユニット11'の長手方向に垂直な断面の断面積が50cmを超えると、ハニカムユニット11'に発生する熱応力に対する強度が不十分になる。
【0080】
なお、ハニカムユニット11'は、長手方向に垂直な断面の断面積以外は、ハニカムユニット11と同一の構成である。
【0081】
接着層13は、厚さが0.5〜2mmであることが好ましい。接着層13の厚さが0.5mm未満であると、ハニカムユニット11'同士の接着強度が不十分になる。一方、接着層13の厚さが2mmを超えると、ハニカム構造体10'の圧力損失が増大する。
【0082】
また、ハニカム構造体10'の外周部に位置するハニカムユニット11'を除くハニカムユニット11'の形状は、四角柱状であるが、特に限定されず、例えば、六角柱状等であってもよい。
【0083】
次に、ハニカム構造体10'の製造方法の一例について説明する。まず、ハニカム構造体10と同様にして、四角柱状のハニカムユニット11'を作製する。次に、ハニカムユニット11'の外周面に接着層用ペーストを塗布して、ハニカムユニット11'を順次接着させ、乾燥固化することにより、ハニカムユニット11'の集合体を作製する。さらに、ハニカムユニット11'の集合体を円柱状に切削加工し、必要に応じて、研磨してもよい。
【0084】
なお、長手方向に垂直な断面が扇形状、正方形状等の形状に成形されているハニカムユニット11'を接着させて円柱状のハニカムユニット11'の集合体を作製してもよい。これにより、ハニカムユニット11'の集合体を円柱状に切削加工する必要がなくなる。
【0085】
接着層用ペーストとしては、特に限定されないが、無機バインダ及び無機粒子の混合物、無機バインダ及び無機繊維の混合物、無機バインダ、無機粒子及び無機繊維の混合物等が挙げられる。
【0086】
また、接着層用ペーストは、有機バインダを含んでいてもよい。
【0087】
有機バインダとしては、特に限定されないが、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0088】
次に、円柱状のハニカムユニット11'の集合体の外周面に外周コート層用ペーストを塗布する。
【0089】
外周コート層用ペーストは、接着層用ペーストと同一の材料を含んでいてもよいし、異なる材料を含んでいてもよい。また、外周コート層用ペーストは、接着層用ペーストと同一の組成であってもよい。
【0090】
次に、外周コート層用ペーストが塗布されたハニカムユニット11'の集合体を乾燥固化することにより、円柱状のハニカム構造体10'が得られる。このとき、接着層用ペースト及び/又は外周コート層用ペーストに有機バインダが含まれている場合は、脱脂することが好ましい。脱脂条件は、有機物の種類や量によって適宜選択することができるが、700℃で20分間であることが好ましい。
【0091】
なお、ハニカム構造体10及び10'は、外周コート層12が形成されていなくてもよい。
【0092】
以上、シリコアルミノリン酸塩及び無機バインダを含み、複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設されているハニカムユニットを有するハニカム構造体について説明したが、本発明のハニカム構造体は、コージェライトを含み、複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設されているハニカムユニットを有し、シリコアルミノリン酸塩が隔壁に担持されている構成であってもよい。これにより、排ガス中に含まれるNOxを浄化することができる。また、水を吸着又は脱着することによる収縮又は膨張に起因するシリコアルミノリン酸塩のクラックの発生及びシリコアルミノリン酸塩の脱離を抑制することができる。
【0093】
なお、このようなハニカム構造体用の材料として、シリコアルミノリン酸塩を用いる場合も、シリコアルミノリン酸塩を粉砕して一次粒子の平均粒径を小さくする。
【0094】
シリコアルミノリン酸塩は、一次粒子の平均粒径が1〜5μmであることが好ましい。シリコアルミノリン酸塩の一次粒子の平均粒径が1μm未満であると、シリコアルミノリン酸塩を隔壁に担持させにくくなる。一方、シリコアルミノリン酸塩の一次粒子の平均粒径が5μmを超えると、シリコアルミノリン酸塩の比表面積が小さくなって、NOxの浄化性能が低下する。
【0095】
このようなハニカム構造体は、ハニカム構造体10(図1参照)と同様に、単一のハニカムユニットを有することが好ましい。
【0096】
なお、このようなハニカム構造体は、外周コート層が形成されていてもよいし、外周コート層が形成されていなくてもよい。
【0097】
また、このようなハニカム構造体は、ハニカム構造体10と同様に、図2に示すような排ガス浄化装置に適用することができる。
【実施例】
【0098】
本実施例において、部は質量部を意味する。
【0099】
[実施例1]
水中に、85質量%のリン酸水溶液9.83部、95質量%の水酸化アルミニウム水溶液7部、固形分が30質量%のシリカゾル11.1部及び構造規定剤としてのモルホリン15部を順次添加して、撹拌し、前駆体ゲルを得た。次に、前駆体ゲルをオートクレーブ(200ml)に封入した後、回転速度10rpmで回転させながら、昇温速度5℃/分で200℃まで昇温して、24時間保持し、シリコアルミノリン酸塩を合成した。シリコアルミノリン酸塩は、Al及びPの物質量の和に対するSiの物質量の比が0.32であり、酸点が3.0mmol/gであった。
【0100】
[実施例2]
モルホリンの添加量を13.1部に変更した以外は、実施例1と同様にして、シリコアルミノリン酸塩を合成した。シリコアルミノリン酸塩は、Al及びPの物質量の和に対するSiの物質量の比が0.32であり、酸点が2.2mmol/gであった。
【0101】
[実施例3]
固形分が30質量%のシリカゾル及びモルホリンの添加量をそれぞれ9.4部及び11.25部に変更した以外は、実施例1と同様にして、シリコアルミノリン酸塩を合成した。シリコアルミノリン酸塩は、Al及びPの物質量の和に対するSiの物質量の比が0.26であり、酸点が2.2mmol/gであった。
【0102】
[実施例4]
モルホリンの添加量を7.5部に変更した以外は、実施例3と同様にして、シリコアルミノリン酸塩を合成した。シリコアルミノリン酸塩は、Al及びPの物質量の和に対するSiの物質量の比が0.26であり、酸点が1.5mmol/gであった。
【0103】
[実施例5]
モルホリン7.5部の代わりにジエチルアミン6.3部を添加した以外は、実施例4と同様にして、シリコアルミノリン酸塩を合成した。シリコアルミノリン酸塩は、Al及びPの物質量の和に対するSiの物質量の比が0.26であり、酸点が1.5mmol/gであった。
【0104】
[実施例6]
固形分が30質量%のシリカゾルの添加量を7.7部に変更した以外は、実施例4と同様にして、シリコアルミノリン酸塩を合成した。シリコアルミノリン酸塩は、Al及びPの物質量の和に対するSiの物質量の比が0.22であり、酸点が1.9mmol/gであった。
【0105】
[実施例7]
固形分が30質量%のシリカゾルの添加量を7.7部に変更した以外は、実施例5と同様にして、シリコアルミノリン酸塩を合成した。シリコアルミノリン酸塩は、Al及びPの物質量の和に対するSiの物質量の比が0.22であり、酸点が1.5mmol/gであった。
【0106】
[比較例1]
固形分が30質量%のシリカゾルの添加量を4.3部に変更した以外は、実施例3と同様にして、シリコアルミノリン酸塩を合成した。シリコアルミノリン酸塩は、Al及びPの物質量の和に対するSiの物質量の比が0.11であり、酸点が1.6mmol/gであった。
【0107】
[比較例2]
固形分が30質量%のシリカゾルの添加量を7.3部に変更した以外は、実施例3と同様にして、シリコアルミノリン酸塩を合成した。シリコアルミノリン酸塩は、Al及びPの物質量の和に対するSiの物質量の比が0.20であり、酸点が1.6mmol/gであった。
【0108】
[比較例3]
固形分が30質量%のシリカゾルの添加量を9.0部に変更した以外は、実施例5と同様にして、シリコアルミノリン酸塩を合成した。シリコアルミノリン酸塩は、Al及びPの物質量の和に対するSiの物質量の比が0.25であり、酸点が0.7mmol/gであった。
【0109】
[比較例4]
固形分が30質量%のシリカゾルの添加量を10.7部に変更した以外は、実施例5と同様にして、シリコアルミノリン酸塩を合成した。シリコアルミノリン酸塩は、Al及びPの物質量の和に対するSiの物質量の比が0.30であり、酸点が0.7mmol/gであった。
【0110】
[Al及びPの物質量の和に対するSiの物質量の比]
シリコンドリフトエネルギー分散型X線分析装置XFlash5030(Bruker社製)を用いて、シリコアルミノリン酸塩のAl及びPの物質量の和に対するSiの物質量の比を測定した。
【0111】
[酸点]
全自動昇温脱離スペクトル装置TPD−1−ATw(日本ベル社製)を用いて、シリコアルミノリン酸塩の酸点を測定した。具体的には、まず、シリコアルミノリン酸塩0.05gを昇温速度10℃/分で500℃まで昇温し、60分間保持し、300℃まで降温した後、定常状態(室温25℃)とした。この状態で、アンモニアを30分間導入して、シリコアルミノリン酸塩にアンモニアを吸着させた後、アンモニアを排気して30分間保持した。次に、ヘリウムを50ml/分で導入しながら、昇温速度10℃/分で600℃まで昇温した。この間に脱離したアンモニアを、四重極質量分析計を用いて、NH(m/z=16)のピークを検出することにより定量し、酸点を算出した。
【0112】
[膨張率]
20質量%の水を吸着したシリコアルミノリン酸塩と、200℃で水を脱着したシリコアルミノリン酸塩を、X線回折装置Rint−Ultina IV(リガク社製)を用いて、2θが9〜21°の範囲で測定し、ブラッグの式
2dsinθ=nλ
(式中、dは格子面の間隔であり、θは斜視角(入射角の補角)であり、λはX線の波長であり、nは正の整数である。)
から、(101)面、(110)面、(021)面、(003)面及び(211)面の格子面の間隔dを算出した。次に、立方格子の(hkl)面の格子定数aは、式
a=d/(h+k+l1/2
で表されるため、(101)面、(110)面、(021)面、(003)面及び(211)面の格子定数aの平均値Aを算出した。さらに、20質量%の水を吸着したシリコアルミノリン酸塩の格子定数の平均値をA、200℃で水を脱着したシリコアルミノリン酸塩の格子定数の平均値をAとすると、式
(A−A)/A
から、膨張率を算出した。
【0113】
[ハニカム構造体の作製]
まず、実施例1〜7及び比較例1〜4のシリコアルミノリン酸塩を一次粒子の平均粒径が3μmとなるように粉砕した。次に、シリコアルミノリン酸塩を硝酸銅水溶液中に浸漬することにより、銅イオンでイオン交換した。ICPS−8100(島津製作所社製)を用いて、ICP発光分析することによりシリコアルミノリン酸塩の銅イオンによる交換量を測定したところ、2.7質量%であった。
【0114】
銅イオンによりイオン交換されているシリコアルミノリン酸塩3100g、ベーマイト895g、平均繊維径が6μm、平均繊維長が100μmのアルミナ繊維485g、メチルセルロース380g、オレイン酸280g及びイオン交換水2425gを混合混練して、原料ペーストを作製した。
【0115】
次に、押出成形機を用いて、原料ペーストを押出成形し、円柱状のハニカム成形体を作製した。そして、マイクロ波乾燥機及び熱風乾燥機を用いて、ハニカム成形体を110℃で10分間乾燥させて、ハニカム成形体を乾燥させた。さらに、乾燥したハニカム成形体を400℃で5時間脱脂した。次に、脱脂されたハニカム成形体を700℃で2時間焼成して、円柱状のハニカムユニットを作製した。
【0116】
一方、平均繊維径が0.5μm、平均繊維長が15μmのアルミナ繊維767g、シリカガラス2500g、カルボキシメチルセルロース17g、固形分が30質量%のシリカゾル600g、ポリビニルアルコール167g及びアルミナバルーン17gを混合混練して、外周コート層用ペーストを作製した。
【0117】
ハニカムユニットの端面を除く外周面に外周コート層用ペーストを塗布した後、120℃で乾燥固化させて、ハニカム構造体を作製した。ハニカム構造体は、直径が225.4mm、長さが76.2mmの円柱状であり、隔壁の厚さが0.28mm、貫通孔の密度が62個/cmであった。
【0118】
[NOxの浄化率]
実施例1〜7及び比較例1〜4のシリコアルミノリン酸塩を用いて作製した各ハニカム構造体に、200℃の模擬ガスを空間速度(SV)70000/hで流しながら、触媒評価装置SIGU(堀場製作所社製)を用いて、ハニカム構造体から流出するNOxの流出量を測定し、式
(NOxの流入量−NOxの流出量)/(NOxの流入量)×100
で表されるNOxの浄化率[%]を算出した。なお、模擬ガスの構成成分は、二酸化窒素の含有量が25%であるNOx350ppm、アンモニア350ppm、酸素14%、水10%、窒素(balance)である。
【0119】
表1に、実施例1〜7及び比較例1〜4のシリコアルミノリン酸塩のSi/(Al+P)、酸度、膨張率と、実施例1〜7及び比較例1〜4のシリコアルミノリン酸塩を用いて作製した各ハニカム構造体のNOxの浄化率の測定結果を示す。
【0120】
【表1】

なお、Si/(Al+P)は、Al及びPの物質量の和に対するSiの物質量の比を意味する。
【0121】
表1より、実施例1〜7のシリコアルミノリン酸塩は、膨張率が1%以下であることがわかる。このため、シリコアルミノリン酸塩が水を吸着又は脱着することによる収縮又は膨張に起因するハニカムユニットのクラックの発生を抑制することができると考えられる。また、実施例1〜7のシリコアルミノリン酸塩を用いて作製したハニカム構造体は、NOxの浄化率が80%以上であり、NOxの浄化性能が優れることがわかる。
【0122】
一方、比較例1、2のシリコアルミノリン酸塩は、Al及びPの物質量の和に対するSiの物質量の比が0.11、0.20であるため、膨張率が1%を超えることがわかる。このため、シリコアルミノリン酸塩が水を吸着又は脱着することによる収縮又は膨張に起因するハニカムユニットのクラックの発生を抑制することが困難であると考えられる。
【0123】
また、比較例3、4のシリコアルミノリン酸塩は、酸点が0.7mmol/gであるため、比較例3、4のシリコアルミノリン酸塩を用いて作製したハニカム構造体は、NOxの浄化率が60%以下であり、NOxの浄化性能が低下することがわかる。
【符号の説明】
【0124】
10、10' ハニカム構造体
11、11' ハニカムユニット
11a 貫通孔
11b 隔壁
12 外周コート層
13 接着層
20 保持シール材
30 金属管
100 排ガス浄化装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Al及びPの物質量の和に対するSiの物質量の比が0.22以上0.33以下であり、
酸点が1.2mmol/g以上であることを特徴とするシリコアルミノリン酸塩。
【請求項2】
銅イオン及び/又は鉄イオンによりイオン交換されていることを特徴とする請求項1に記載のシリコアルミノリン酸塩。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のシリコアルミノリン酸塩及び無機バインダを含み、複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設されているハニカムユニットを有することを特徴とするハニカム構造体。
【請求項4】
前記シリコアルミノリン酸塩は、一次粒子の平均粒径が1μm以上5μm以下であることを特徴とする請求項3に記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記無機バインダは、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス、セピオライト、アタパルジャイト及びベーマイトからなる群より選択される一種以上に含まれる固形分であることを特徴とする請求項3又は4に記載のハニカム構造体。
【請求項6】
前記ハニカムユニットは、無機繊維、鱗片状物質、テトラポット状物質及び三次元針状物質からなる群より選択される一種以上をさらに含むことを特徴とする請求項3乃至5のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項7】
前記無機繊維は、アルミナ繊維、シリカ繊維、炭化ケイ素繊維、シリカアルミナ繊維、ガラス繊維、チタン酸カリウム繊維及びホウ酸アルミニウム繊維からなる群より選択される一種以上であり、
前記鱗片状物質は、鱗片状ガラス、鱗片状白雲母、鱗片状アルミナ及び鱗片状シリカからなる群より選択される一種以上であり、
前記テトラポット状物質は、テトラポット状酸化亜鉛であり、
前記三次元針状物質は、三次元針状アルミナ、三次元針状シリカ、三次元針状炭化ケイ素、三次元針状シリカアルミナ、三次元針状ガラス、三次元針状チタン酸カリウム、三次元針状ホウ酸アルミニウム及び三次元針状ベーマイトからなる群より選択される一種以上であることを特徴とする請求項6に記載のハニカム構造体。
【請求項8】
複数の前記ハニカムユニットを有することを特徴とする請求項3乃至7のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項9】
コージェライトを含み、複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設されているハニカムユニットを有し、
請求項1又は2に記載のシリコアルミノリン酸塩が前記隔壁に担持されていることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項10】
請求項3乃至9のいずれか一項に記載のハニカム構造体と、
該ハニカム構造体の外周部に配置されている保持シール材と、
該ハニカム構造体及び該保持シール材が収容されている金属管を有することを特徴とする排ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−106909(P2012−106909A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186449(P2011−186449)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】