説明

シリコン単結晶引上装置のクリーニング方法

【課題】チョクラルスキー法によるシリコン単結晶引上装置で、ドーパントが高濃度で添加された低抵抗率のシリコン単結晶を引き上げる際に炉内及び排気管内に付着した活性シリコン酸化物を、前記装置の解体・清掃前に効率的に酸化燃焼させて除去するシリコン単結晶引上装置のクリーニング方法を提供する。
【解決手段】炉内に配置されたルツボ内に保持されたシリコン融液10からシリコン単結晶12を引き上げた後、シリコン単結晶12を前記炉内から取り出し、前記炉内及び排気管15内に大気を供給しつつ、排気管15内から前記大気を強制排気する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョクラルスキー法(以下、CZ法という)によるシリコン単結晶引上装置において、ドーパントが高濃度で添加されたシリコン単結晶インゴット(以下、シリコン単結晶という)を引き上げた後、炉体内及び排気管内に付着したシリコン酸化物を除去するシリコン単結晶引上装置のクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス形成用基板として用いられるシリコンウェーハは、一般的に、CZ法により引き上げられたシリコン単結晶から製造される。
図3に、シリコン単結晶を製造するためのCZ法によるシリコン単結晶引上装置の一般的な構成の概要を示す。
図3に示すシリコン単結晶引上装置は、炉体1の上部にプルチャンバ2が、下部にファーネスタンク3が接続されることにより、炉内空間が形成されている。炉内中央には、石英ルツボ4が配置され、その外周はカーボンルツボ5によって保持され、さらに、その下部がシャフト6によって支持されている。カーボンルツボ5の外側にはヒータ7、さらに、その外側に保温筒8が、それぞれ、同心円状に配置されている。また、石英ルツボ4の上方には輻射熱遮蔽板9が設置されている。
【0003】
前記装置によるシリコン単結晶の製造では、まず、石英ルツボ4内に収容されたポリシリコンをヒータ7による加熱によって溶融し、シリコン融液10とする。そして、これに、石英ルツボ4の上方に配置されたワイヤ11の下端に取り付けた種結晶(図示せず)を着液させ、ワイヤ11と石英ルツボ4とを互いに逆方向に回転させながら、ワイヤ11を引き上げていくことにより、シリコン単結晶12を育成させていく。引き上げられたシリコン単結晶12は、プルチャンバ2から炉外に取り出される。
【0004】
上記のようなシリコン単結晶引き上げ時には、石英ルツボ4の内表面から酸素が溶出し、石英ルツボ4内のシリコン融液10と反応してシリコン酸化物を生成し、シリコン融液10表面から蒸発する。蒸発したシリコン酸化物は、シリコン単結晶引き上げ時に炉内に供給される不活性ガスとともに、排気経路13を通過して、真空ポンプ14に接続された排気管15から炉外に排出される。
なお、ここでいうシリコン酸化物は、シリコンが必ずしも十分な酸素と結合しておらず、不完全な酸化状態のものも含まれるため、以下においては、活性シリコン酸化物(SiOx)ともいう。
【0005】
一方、炉体1及びファーネスタンク3周辺は、その内部に冷却水を流すことにより、炉内中央部よりも低温に保持されている。このため、前記活性シリコン酸化物は、排気経路13を通過中に徐々に冷却されて凝結し、炉内壁面に付着する。特に、炉内において比較的低温であるファーネスタンク3や排気管15の内壁面により多く付着する傾向にある。
付着した活性シリコン酸化物は、次に引き上げるシリコン単結晶に対する不純物汚染や欠陥発生の原因となったり、また、炉内温度や圧力の制御に支障をきたしたりするおそれがある。このため、シリコン単結晶12の引き上げ終了後、1バッチ毎に、シリコン単結晶引上装置を解体して、炉内細部及び排気管15内に付着した活性シリコン酸化物を除去するための清掃を行う必要があった。
【0006】
しかしながら、清掃のためにシリコン単結晶引上装置を解体する際、前記活性シリコン酸化物は、炉外の大気と接触することにより急激に酸化して発火するおそれがあり、作業者の火傷、装置部材の破損等の危険な事故や、シリコン単結晶引上装置が設置されているクリーンルーム内等の周囲環境の汚染を引き起こすという問題が生じていた。
【0007】
このような問題への対策として、例えば、特許文献1には、シリコン単結晶インゴット引き上げ終了毎に、排気管路に大気を導入して、排気管路内に堆積した粉塵(活性シリコン酸化物)を徐々に燃焼させ後、排気管路内を開放することにより、燃焼した粉塵を容易に除去することができることが記載されている。
また、特許文献2には、排気管内に酸素を強制的に供給して、前記排気管内に付着する酸化珪素(活性シリコン酸化物)を酸化燃焼させた後、排気管内の付着物を除去することが記載されている。
【0008】
さらに、特許文献3には、チャンバ(炉)及び/又は排気管内に空気を導入し、外界と遮断した後、導入空気を排気し、その後、炉体等を解体することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−97797号公報
【特許文献2】特開2002−316889号公報
【特許文献3】特開2002−68888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1,2に記載された方法は、酸化燃焼させる対象が排気管内に付着した活性シリコン酸化物のみであるため、炉内に付着した活性シリコン酸化物は、酸化燃焼されずに残存したままであり、シリコン単結晶引上装置の解体時の危険性を十分に防止できるとは言えない。
【0011】
また、上記特許文献3には、炉内にも空気を導入することが開示されているが、炉内を閉空間とした後に排気するため、この方法も、炉内に付着した活性シリコン酸化物を完全に酸化燃焼させることができるとは言えず、解体時における発火の危険性を十分に防止できる方法ではなかった。
【0012】
ところで、低抵抗率のシリコン単結晶の製造も、高抵抗率のシリコン単結晶の製造も同様にして、CZ法によるシリコン単結晶引上装置で、シリコン融液にドーパントを添加することにより行われる。ドーパントとしては、通常、p型半導体用ではホウ素、n型半導体用ではアンチモン、ヒ素又はリンが用いられるが、これらのドーパント濃度が高いほど、シリコン単結晶の抵抗率は低くなる。
【0013】
しかしながら、ドーパントが高濃度で添加されるほど、シリコン単結晶引き上げ時における活性シリコン酸化物の付着量が増大する。この付着量は、ドーパントの種類によって異なり、アンチモン、ヒ素又はリンの方が、ホウ素よりも蒸発係数が大きいため、多くなる傾向にある。しかも、アンチモン、ヒ素又はリンを含んだ活性シリコン酸化物は、より発火性が高く、シリコン単結晶引上装置の解体・清掃時における発火による危険性が高い。
したがって、ドーパントを高濃度で添加したシリコン単結晶の引き上げにおいては、シリコン単結晶引上装置の解体・清掃時における炉内での発火を防止するためには、炉内及び排気管内に付着した活性シリコン酸化物を、より完全に酸化燃焼させて不活性化させる必要がある。
【0014】
本発明は、上記技術的課題を解決するためになされたものであり、CZ法によるシリコン単結晶引上装置で、ドーパントが高濃度で添加された低抵抗率のシリコン単結晶を引き上げる際に炉内及び排気管内に付着した活性シリコン酸化物を、前記装置の解体・清掃前に効率的に酸化燃焼させて除去するシリコン単結晶引上装置のクリーニング方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るシリコン単結晶引上装置のクリーニング方法は、炉内に配置されたルツボ内に保持されたシリコン融液からシリコン単結晶を引き上げた後、前記シリコン単結晶を前記炉内から取り出し、前記炉内及び前記炉内に空間的に連結された排気管内に大気を供給しつつ、前記排気管内から前記大気を強制排気することを特徴とする。
このようなクリーニング方法によれば、シリコン単結晶の引き上げ終了後、炉内及び排気管内に付着した活性シリコン酸化物を効率的に酸化燃焼させて除去することができる。
【0016】
前記シリコン単結晶は、抵抗率0.02Ωcm以下であることが好ましい。
本発明に係るクリーニング方法によれば、上記のようにシリコン単結晶引上装置の解体・清掃時における発火による危険性がより高いシリコン単結晶の引き上げにおいても、炉内及び排気管内に付着した活性シリコン酸化物を効率的に酸化燃焼させて除去することができる。
【0017】
前記大気の供給及び強制排気は、前記シリコン単結晶の取り出し後、前記炉内の冷却前に行うことが好ましい。
これにより、生産性を低下させることなく、また、高温で活性シリコン酸化物の酸化燃焼を行うことができるため、効率的に活性シリコン酸化物を酸化燃焼させて除去することができる。
【0018】
前記炉内及び排気管内に大気を供給する際、炉内圧力を2.6×104〜9.3×104Pa、供給する大気の流量を20〜300L/minに制御することが好ましい。
炉内圧力及び供給する大気の流量を上記範囲内とすることにより、操作時の安全性を確保しつつ、炉内及び排気管内に付着した活性シリコン酸化物の酸化燃焼を促進することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、CZ法によるシリコン単結晶引上装置で、ドーパントが高濃度で添加された低抵抗率のシリコン単結晶を引き上げる際に炉内及び排気管内に付着した活性シリコン酸化物を、前記装置の解体・清掃前に効率的に酸化燃焼させて除去することができる。
したがって、低抵抗率のシリコン単結晶の引き上げにおいて、シリコン単結晶引上装置の解体・清掃時における炉内での発火による危険性を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る方法を実施するためのシリコン単結晶引上装置の一例を模式的に示した概略断面図である。
【図2】本発明に係る方法を実施するためのシリコン単結晶引上装置の他の一例を模式的に示した概略断面図である。
【図3】CZ法によるシリコン単結晶引上装置を模式的に示した概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について、図面を参照して、より詳細に説明する。
本発明に係るシリコン単結晶引上装置のクリーニング方法は、シリコン単結晶引上装置において、炉内に配置されたルツボ内に保持されたシリコン融液からシリコン単結晶を引き上げた後、前記シリコン単結晶を前記炉内から取り出し、前記炉内及び前記炉内に空間的に連結された排気管内に付着した活性シリコン酸化物を酸化燃焼させて除去する方法に関するものであり、特に、抵抗率0.02Ωcm以下のシリコン単結晶の引き上げに適用される方法である。
抵抗率0.02Ωcm以下のシリコン単結晶は、このような低抵抗率とするために、ドーパントが高濃度で添加されている。このように、ドーパントが高濃度で添加されたシリコン単結晶の引き上げにおいては、上述したように、高抵抗率のシリコン単結晶の引き上げと比較して、炉内及び排気管内への活性シリコン酸化物の付着量がより多くなる傾向にある。また、これらのドーパントを含んだ活性シリコン酸化物は、より発火性が高い。
本発明に係るクリーニング方法によれば、上記のようにシリコン単結晶引上装置の解体・清掃時における発火による危険性がより高い、抵抗率0.02Ωcm以下のシリコン単結晶の引き上げにおいて、炉内及び排気管内に付着した活性シリコン酸化物を効率的に酸化燃焼させて除去することができる。
なお、以下においては、抵抗率0.02Ωcm以下のシリコン単結晶を、単に、シリコン単結晶という場合もある。
【0022】
前記クリーニング方法においては、炉内及び排気管内に大気を供給しつつ、前記排気管内から前記大気を強制排気することにより、前記炉内及び排気管内に付着した活性シリコン酸化物を酸化燃焼させて除去する。前記大気の供給及び強制排気は、前記シリコン単結晶取り出し後、前記炉内の冷却前に行うことが好ましい。
シリコン単結晶の引き上げ後のシリコン単結晶引上装置の解体・清掃は、作業者による作業が可能な温度である常温付近まで冷却してから行われるが、前記クリーニング方法においては、シリコン単結晶を引き上げた後、前記シリコン単結晶を炉内から取り出し、炉内がまだ高温状態のうち、好ましくは、前記シリコン単結晶を炉内から取り出した直後に、すなわち、冷却前に、炉内及び排気管内に大気を供給することが好ましい。
シリコン単結晶の引き上げ時は、炉内温度は、通常、1300〜1400℃程度であり、前記シリコン単結晶を炉内から取り出す際に炉内温度は低下するが、その後の炉内及び排気管内での付着した活性シリコン酸化物への大気の供給は、炉内ができる限り高温のうちに行うことにより、生産性を低下させることなく、また、高温で活性シリコン酸化物の酸化燃焼を行うことができるため、効率的に活性シリコン酸化物を酸化燃焼させて除去することができる。
前記大気の供給及び強制排気時の炉内温度は、このような酸化燃焼の促進の観点から、800〜1300℃であることが好ましい。
【0023】
供給した大気の排気管内からの強制排気は、排気管に真空ポンプを接続させることにより行うことができる。
このような強制排気により、炉内に供給した大気を満遍なく炉内に流通させることができ、また、炉内及び排気管内に付着した活性シリコン酸化物と供給された大気中の酸素との接触による酸化燃焼を促進することができる。
また、炉内に付着した活性シリコン酸化物が燃焼すると、炉内圧力が上昇し、また、炉内で発煙するが、強制排気により、炉外への煙の放出を防止することができる。
【0024】
上記のように、炉内及び排気管内に付着した活性シリコン酸化物の酸化燃焼を促進し、かつ、操作時の安全性を確保する観点から、前記炉内及び排気管内に大気を供給する際の炉内圧力は2.6×104〜9.3×104Pa、供給する大気の流量は20〜300L/minとすることが好ましい。
炉内圧力が高すぎたり、供給する大気の流量が多すぎたりすると、前記活性シリコン酸化物の酸化燃焼が急激に起こり、発火による危険性が大きくなるおそれがある。
一方、炉内圧力が低すぎたり、供給する大気の流量が少なすぎたりすると、前記活性シリコン酸化物を十分に酸化燃焼させることができないおそれがある。
【0025】
図1に、本発明に係るクリーニング方法を実施するためのシリコン単結晶引上装置の一例の概略断面図を示す。なお、図1において、図3に示した従来のCZ法によるシリコン単結晶引上装置と同じ符号を付した構成部材は、図3における構成部材と同様に機能するものであるため、その説明を省略する。
図1に示すシリコン単結晶引上装置は、プルチャンバ2に大気導入弁21が設けられたものである。大気導入弁21の位置は、必ずしも、図1に示す位置に限定されるものではないが、炉内に満遍なく大気を行き渡らせるため、また、付着した活性シリコン酸化物の突然の発火に対する安全性等の観点から、このように、上部のプルチャンバ2に設けることが好ましい。
この装置では、炉内からシリコン単結晶を取り出した後、プルチャンバ2に設けられたシリコン単結晶取出し用ドア(図示せず)及び大気導入弁21を開放することにより、炉内及び排気管内に大気を供給しつつ、排気管15内から大気を真空ポンプ14により強制排気する。
【0026】
前記強制排気は、前記シリコン単結晶取出し用ドアを閉じた後、大気導入弁21は解放した状態のままで行うことが好ましい。
排気中も大気が連続的に供給されることにより、活性シリコン酸化物の燃焼が継続され、完全な酸化燃焼をより促進することができる。
なお、万一、解放状態の大気導入弁21を通じて、炉内で発生した煙が炉外に放出された場合には、速やかに大気導入弁21を閉じるか、あるいはまた、大気導入弁21に予め逆止弁を設けておくことにより、シリコン単結晶引上装置が設置されているクリーンルーム内等の周囲環境の汚染を最小限に抑えることができる。
【0027】
図2に、本発明に係るクリーニング方法を実施するためのシリコン単結晶引上装置の他の一例の概略断面図を示す。なお、図2において、図3に示した従来のCZ法によるシリコン単結晶引上装置と同じ符号を付した構成部材は、図3における構成部材と同様に機能するものであるため、その説明を省略する。
図2に示すシリコン単結晶引上装置は、ファーネスタンク3に大気導入弁22が炉中心に対して対向する位置に2箇所設けられたものである。大気導入弁22の数は、炉内に満遍なく大気を行き渡らせることができ、また、シリコン単結晶の引き上げに支障がない状態等が確保される限り、特に限定されない。
炉体1及びファーネスタンク3周辺は、冷却水によって炉内中央部よりも低温に保持されているため、ファーネスタンク3の内壁面に、凝結した活性シリコン酸化物が付着しやすい。このように、炉内において活性シリコン酸化物が特に付着しやすい部分又はその付近に、大気導入弁を設けることにより、この部分での活性シリコン酸化物の酸化燃焼の効率化を図ることができる。すなわち、炉内及び排気管内への大気の供給は、炉内壁の相対的に温度が低い部分から行うことが好ましい。
【0028】
また、ファーネスタンク3の内壁面に付着した活性シリコン酸化物は、排気管15の内壁面まで連続しているため、ファーネスタンク3の内壁面から排気管15の内壁面にかけて付着した活性シリコン酸化物は、連続的に酸化燃焼する。このことからも、ファーネスタンク3に大気導入弁22を設けることは、活性シリコン酸化物の酸化燃焼の効率化を図る上で好ましい。
さらにまた、大気導入弁付近では、強制排気によって生じるガス流によって、炉内に付着した活性シリコン酸化物が振動する。このことも、前記活性シリコン酸化物の酸化燃焼の促進が図られる要因となる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例に基づき、さらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例により制限されるものではない。
[実施例1]
図1に示すようなシリコン単結晶引上装置を用いて、所定の抵抗率となるような濃度でヒ素又はアンチモンを添加したシリコン単結晶を引き上げた後、該シリコン単結晶をプルチャンバ2のシリコン単結晶取出し用ドアから炉外に取り出した。
その後、プルチャンバ2に設けられた大気導入弁21を開放して、炉内に大気を供給した。
そして、シリコン単結晶取出し用ドアは閉じ、大気導入弁21は開放した状態のまま、排気管15から前記供給した大気を真空ポンプ14により強制排気することにより、炉内及び排気管内に付着した活性シリコン酸化物を酸化燃焼させた。そのときの炉内圧力は2.7×104Pa、導入する大気の流量は50L/minとした。
【0030】
[実施例2]
図2に示すようなシリコン単結晶引上装置を用いて、所定の抵抗率となるような濃度でヒ素又は赤リンを添加したシリコン単結晶を引き上げた後、該シリコン単結晶をプルチャンバ2のシリコン単結晶取出し用ドアから炉外に取り出した。
その後、ファーネスタンク3に設けられた大気導入弁22を開放して、炉内に大気を供給した。
そして、シリコン単結晶取出し用ドアは閉じ、大気導入弁22は開放した状態のまま、排気管15から前記供給した大気を真空ポンプ14により強制排気することにより、炉内及び排気管内に付着した活性シリコン酸化物を酸化燃焼させた。そのときの炉内圧力は9.0×104Pa、導入する大気の流量は200L/minとした。
【0031】
[比較例1]
図3に示すようなシリコン単結晶引上装置を用いて、所定の抵抗率となるような濃度でヒ素又は赤リンを添加したシリコン単結晶を引き上げた後、該シリコン単結晶をプルチャンバ2のシリコン単結晶取出し用ドアから炉外に取り出した。
その後、シリコン融液が固化し、炉内が冷却するまで待ってから、シリコン単結晶取り出し用ドアを開放して、炉内に大気を供給した。そして、シリコン単結晶取出し用ドアを閉じ、炉内を外界と遮断した後、排気管15から炉内のガスを真空ポンプ14により強制排気することにより、炉内及び排気管内に付着した活性シリコン酸化物を酸化燃焼させた。排気終了後、炉内及び排気管15内にアルゴンガスを供給した。
【0032】
上記実施例及び比較例の操作を、それぞれ10回行い、各操作終了後の炉内及び排気管内に付着した活性シリコン酸化物の酸化燃焼の有無を確認した。
これらの結果を表1にまとめて示す。表1においては、酸化燃焼した割合(10回中、酸化燃焼を確認した回数の割合)を燃焼率(%)として表した。
【0033】
【表1】

【0034】
表1に示した結果から分かるように、比較例1においては、ドーパントがヒ素の場合、排気管内に付着した活性シリコン酸化物の燃焼率は高かったが、炉内に付着した活性シリコン酸化物は燃焼しなかった。また、ドーパントが赤リンの場合は、炉内及び排気管内のいずれにおいても、付着したシリコン酸化物は燃焼しなかった。
これに対して、実施例1及び2においては、いずれの場合にも、炉内及び排気管内のいずれに付着した活性シリコン酸化物も燃焼率が高く、シリコン単結晶引上装置の解体・清掃時における発火による危険性が低減されることが認められた。
【符号の説明】
【0035】
1 炉体
2 プルチャンバ
3 ファーネスタンク
4 石英ルツボ
5 カーボンルツボ
6 シャフト
7 ヒータ
8 保温筒
9 輻射熱遮蔽板
10 シリコン融液
11 ワイヤ
12 シリコン単結晶
13 排気経路
14 真空ポンプ
15 排気管
21,22 大気導入管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉内に配置されたルツボ内に保持されたシリコン融液からシリコン単結晶を引き上げた後、前記シリコン単結晶を前記炉内から取り出し、前記炉内及び前記炉内に空間的に連結された排気管内に大気を供給しつつ、前記排気管内から前記大気を強制排気することを特徴とするシリコン単結晶引上装置のクリーニング方法。
【請求項2】
前記シリコン単結晶は、抵抗率0.02Ωcm以下であることを特徴とする請求項1記載のシリコン単結晶引上装置のクリーニング方法。
【請求項3】
前記大気の供給及び強制排気は、前記シリコン単結晶の取り出し後、前記炉内の冷却前に行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のシリコン単結晶引上装置のクリーニング方法。
【請求項4】
前記炉内及び排気管内に大気を供給する際、炉内圧力を2.6×104〜9.3×104Pa、供給する大気の流量を20〜300L/minに制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシリコン単結晶引上装置のクリーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−66948(P2012−66948A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210829(P2010−210829)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(507182807)コバレントマテリアル株式会社 (506)
【Fターム(参考)】