説明

シリコーン含有コポリマーベースのハイドロゲル

本発明は、モノマーa)〜c)の全量に対して、a)式(I)[式中、R1は水素又はメチルであり、pは1〜8の整数であり、そのヒドロキシ基は保護された形で存在する]の少なくとも1つの疎水性ビニルモノマーを10〜65mol%、b)少なくとも1つのシリコーン含有(メタ)アクリレートモノマー、ビニルカーボネートモノマー、又はビニルカルバメートモノマーを25〜70mol%、c)少なくとも1つの親水性ビニルモノマーを0〜25mol%、及びd)少なくとも1つの架橋剤を0〜10mol%、含む、重合可能なモノマー混合物からのコポリマーであるハイドロゲルに関し、この際、ハイドロゲル中で、モノマーa)により形成された部分のヒドロキシ基は、保護された形、又は独立した形で存在している。このハイドロゲルは、コンタクトレンズ又は眼内レンズの製造のために使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン含有コポリマーベースの新規なハイドロゲル、その製造方法、及びコンタクトレンズ材料若しくは眼内レンズ材料としてのその使用に関する。
【0002】
酸素透過性が高く、かつ長い装用時間でも眼球に対して良好な適合性を有する材料からのコンタクトレンズに対する需要が、永年にわたって存在している。
【0003】
ハイドロゲル(水中で限定的に(begrenzt)膨潤可能な架橋されたポリマー)が、水含分に依存して高い酸素透過性を有することは公知である。酸素透過性は、水含分が高まるにつれて上昇する。さらに、フッ素含有構成要素を含むポリマー、及びポリシロキサンベースで構成されているポリマーが、特に高い酸素透過性によって特徴付けられることは、公知である。しかしながら、完全に、又は主に先に挙げた2つの物質群から成るポリマーの水含分は低い。基本的に望ましい高い酸素透過性は公知のポリマーの場合、通常は他の重大な欠点を受容することによって得られる。そのため水含分が高いハイドロゲルは通常、機械的安定性、例えば引張強さが低い。これに対して、シリコーン又はフッ素含有材料からのポリマーは著しく疎水性であり、コンタクトレンズ材料として使用可能にするためにはしばしば、表面処理しなければならない。
【0004】
前記欠点を回避するという観点で、さらなるハイドロゲルが提案された:
US-A-5352714から、シロキサン含有メタクリルモノマー、オキサゾロンモノマー、及びさらなる親水性モノマーの共重合は公知である。オキサゾロン環は共重合の後、加水分解によって相応するアミノ酸に、そして架橋によってハイドロゲルに移行され、これがコンタクトレンズ材料として使用される。
【0005】
さらにEP-A0374752には、フッ素含有糖モノマーベースのコポリマーからのハイドロゲルが記載されている。ここでこのモノマー混合物は、
a)疎水性フッ素含有ビニルモノマーを2〜85mol%、
b)ヒドロキシ基が保護された形で存在する、疎水性ポリヒドロキシビニルモノマーを2〜80mol%、
c)親水性ビニルモノマーを2〜70mol%、
d)1つの架橋剤を0〜5mol%
含むものであり、これが重合され、そしてヒドロキシ保護基が引き続き酸加水分解によって除去される。得られるハイドロゲルは、酸素透過性及び水含分の点で、有利に特徴付けられる。
【0006】
さらにUS-A-6018001には、親水性表面を有するコンタクトレンズの製造方法が記載されている。ここではまず、グリセロールケタールメタクリレート、及びシロキサン含有スチレンモノマー(疎水性)からコポリマーが製造される。このコポリマーはさらになお、親水性モノマー、例えばメタクリル酸及び架橋性モノマー、例えばエチレングリコールジメタクリレートを含むことができる。このコポリマーから製造された疎水性コンタクトレンズ材料は、親水化のため酸処理に供し、この際にグリセロールケタールメタクリレートがグリセリンモノメタクリレートに移行される。
【0007】
しかしながら、従来技術から公知の材料はしばしば、さらになお改善が必要とされるか、又は経済的観点で非常に高価である。
【0008】
従って、酸素透過性が高く、また良好な機械安定性と、長い装用時間でも良好な眼球適合性とを有するハイドロゲルを提供するという課題が存在する。
【0009】
本発明の対象は、重合可能なモノマー混合物からのコポリマーであるハイドロゲルであって、
前記ハイドロゲルはモノマーa)〜c)の全量に対して、
a)式(I)
【化1】

[式中、R1は水素又はメチルであり、pは1〜8の整数であり、そのヒドロキシ基は保護された形で存在する]
の少なくとも1つの疎水性ビニルモノマーを10〜65mol%、
b)少なくとも1つのシリコーン含有(メタ)アクリレートモノマー、ビニルカーボネートモノマー、又はビニルカルバメートモノマーを25〜70mol%、
c)少なくとも1つの親水性ビニルモノマーを0〜25mol%、及び
d)少なくとも1つの架橋剤を0〜10mol%、
含み、この際、前記ハイドロゲル中で、モノマーa)により形成された部分のヒドロキシ基は、保護された形、又は独立した形(freier Form)で存在している。
【0010】
式(I)の疎水性ビニルモノマーa)の割合は、モノマー混合物に対して好適には15〜60mol%、特に好ましくは20〜40mol%である。この際に重要なのは、疎水性ビニルモノマーa)が、シリコーン含有モノマーb)と混合可能なことである。
【0011】
さらに式I中でpは、好適には1〜4の整数である。式Iのビニルモノマーa)は、糖アルコールから誘導されていてよく、また考えられるすべての位置異性体を含む。式Iの化合物を誘導可能な糖アルコールの例は、キシリット、アドニット、アラビット、ソルビット、マンニット、又はズルシットである。
【0012】
保護された形で存在する式Iの化合物のヒドロキシ基は、通常の保護基によって、好適には一対の、酸に不安定なケタール、又はとりわけオルトエステルとして保護されており、例えば場合により置換されたエステル又はケトンとの付加生成物として保護されている。ケタールとして一緒に保護されている2つのヒドロキシ基は、例えば、好適には置換されたメチレン基と一緒に、例えば低級アルキリデン、例えばイソプロピリデン、シクロアルキリデン、例えばシクロヘキシリデン、若しくはベンジリデンによって保護されている。
【0013】
好ましくは、保護されたビニルモノマーa)は、式(Ia)
【化2】

[式中、R1は水素又はメチル、R2は水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基若しくはフェニル基であり、かつR3は場合により置換されたC1〜C6アルキル基、C1〜C6アルコキシ基、若しくはフェニル基であるか、又はR2とR3はともにC5〜C8シクロアルキル基を形成する]
の化合物である。
【0014】
2とR3について相互に独立して当てはまることだが、アルキルは好適にはメチル又はエチルであり、アルコキシは好適にはメトキシ又はエトキシであり、シクロアルキルは好ましくはシクロペンチル又はシクロヘキシルである。置換基として挙げられるのは例えば、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ハロゲン、及び/又はアルキルカルボニルである。
【0015】
式(Ia)中で好ましくは、R2がメチル又はエチルであり、かつR3がメチル、エチル、メトキシ又はエトキシである(ここでR1は前掲の意味を有する)。特に好ましくは、式(Ia)中でR2がメチル又はメチルであり、かつR3がメトキシ又はエトキシである。
【0016】
保護されたビニルモノマーa)はとりわけ、メチル−(2−メトキシ−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メタクリレート(MMDMA)、メチル−(2−メトキシ−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)アクリレート(MDMA)、及び/又は2,3−O−イソプロピリデングリセリルメタクリレート(IPGMA)であり、極めて特に好ましいのはMMDMA及び/又はMDMAである。
【0017】
保護されたビニルモノマーa)の製造は一般的に、不飽和カルボン酸と、ポリオール若しくはポリオールから形成されたエポキシド(例えばグリシドール)との反応、及び引き続いたヒドロキシ保護基の添加によって行う。不飽和の環式オルトエステルの製造は例えば、EP-A1714964に記載されている。
【0018】
このシリコーン含有モノマーb)は好適には、式(II)又は(III)
【化3】

[式中、
X=O、NR1、又は1,3−ジオキソプロパン−2−オールであり、
Y=O、又は1つの結合であり、
Z=O、又は1つの結合であり、
1は水素、又はメチルであり、
4は相互に独立してC1〜C4アルキル、又はO−Si(R53であり、
5は相互に独立してC1〜C4アルキルであり、
6は相互に独立してC1〜C4アルキルであり、
fは1〜10の整数であり、かつ
nは1〜20の整数である]
のモノマーである。
【0019】
特に好ましいのは、式IIのシリコーン含有モノマーb)(式中、fは1〜4の整数fであり、Zは1つの結合であり、X=O、又は1,3−ジオキソプロパン−2−オール、とりわけOであり、かつR1及びR4はメチルである)である。
【0020】
同様に好ましいのは、式IIIのシリコーン含有モノマーb)(式中、fは1〜4の整数であり、X=Oであり、かつR1〜R5はメチル)である。
【0021】
同様に好ましいのは、式IIのシリコーン含有モノマーb)(式中、Z=O、X=O又はNR1、R1は水素、fは2〜4の整数、かつR4はメチル)である。
【0022】
シリコーン含有モノマーb)は好適には、メタクリロキシプロピル−トリス(トリメチルシロキシ)シラン(TRIS)、メタクリロキシプロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、メタクリロキシプロピル−ペンタメチルジシロキサン、メタクリロイルオキシメチル−ヘプタメチルトリシロキサン、メタクリロイルオキシプロピル−ポリジメチルシロキサン、メタクリロイルオキシエチル−トリメチルシロキサン、メチルジ(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセロールメタクリレート、及びビニルオキシカルボニルアミノプロピル−トリス(トリメチルシロキシ)シランから成る群から選択される。
【0023】
極めて特に好ましいのは、メタクリロキシプロピル−トリス(トリメチルシロキシシラン(TRIS)である。
【0024】
シリコーン含有(メタ)アクリレートモノマー、ビニルカーボネートモノマー、又はビニルカルバメートモノマーb)の割合は、モノマー混合物に対して好適には30〜65mol%、特に好ましくは30〜60mol%である。
【0025】
本発明により使用されるシリコーン含有モノマーb)は、文献から公知の方法に従って製造され、とりわけ市販でも得られるが、その例は、TRIS、メタクリロキシ−ポリジメチルシロキサン、トリス−(トリメチルシロキシシリル)プロピルビニルカルバメート、及びアクリロキシメチルトリメチルシランである。
【0026】
親水性ビニルモノマーc)は、以下のものから選択されている:

【化4】

[式中、R1は水素又はメチルであり、かつR7は、水溶性にする基、例えばカルボキシ、ヒドロキシ、若しくはt−アミノ、2〜100個の自己繰返単位を有するポリエチレンオキシド基、又はスルフェート基、ホスフェート基、スルホネート基、若しくはホスホネート基によって一回、又は複数回置換されているC1〜C10アルキル基である]
のアクリレート及びメタクリレート、
さらに式
【化5】

[式中、R8は水素、又はC1〜C4アルキルであり、かつR1は前掲の意味を有する]
のアクリルアミド及びメタクリルアミド;

【化6】

[式中、R1及びR8は前掲の意味を有する]
のアクリルアミド及びメタクリルアミド;

【化7】

のマレイン酸エステル及びフマル酸エステル;

【化8】

のクロトン酸エステル;

【化9】

のビニルエーテル
(上記式中で、R7はその都度、前掲の意味を有する);
窒素原子を1つ若しくは2つ有する、ビニル置換された5又は6員環の複素環、特に4〜6個の炭素原子を有するN−ビニルラクタメート、及び合計で3〜10個の炭素原子を有するビニル不飽和カルボン酸、例えばメタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、又はケイ皮酸。
【0027】
ビニルモノマーc)は好ましくは、ヒドロキシ、カルボキシ、若しくはt−アミノ置換されたC1〜C6アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシ若しくはカルボキシ置換されたC1〜C4アルキル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシ(メタ)アクリルアミドシリルエーテル、(メタ)アクリルアミド、5〜6員環のN−ビニルラクタメート、N,N−ジ−C1〜C4アルキル(メタ)アクリルアミド、3〜5個の炭素原子を有する、ビニル不飽和カルボン酸、ビニルカーボネート、ビニルカルバメート、N−ビニル−N−C1〜C4アルキルアセトアミド、ジエチレングリコールメタクリレート、トリエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、及びグリセロールメタクリレートから選択されている。
【0028】
とりわけ好ましいのは、ヒドロキシ置換されたC2〜C4アルキル(メタ)アクリレート、5〜6員環のN−ビニルラクタメート、N,N−ジ−C1〜C4アルキル(メタ)アクリルアミド、3〜5個の炭素原子を有する、ビニル不飽和カルボン酸である。
【0029】
水溶性モノマーc)として挙げられるのは例えば:2−ヒドロキシエチル−、2−及び3−ヒドロキシプロピル−、2,3−ジヒドロキシプロピル−、ポリエトキシエチル−、及びポリエトキシプロピルアクリレート及びメタクリレート、並びにこれに相応するアクリルアミドとメタクリルアミド、アクリルアミドとメタクリルアミド、N−メチルアクリルアミドとN−メチルメタクリルアミド、ビスアセトン−アクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、ジメチルアクリルアミドとジメチルメタクリルアミド、並びにメチロールアクリルアミドとメチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチル−及びN,N−ジエチルアミノエチルアクリレート及びメタクリレート、並びにこれに相応するアクリルアミドとメタクリルアミド、N−t−ブチルアミノエチルメタクリレートとN−t−ブチルアミノエチルメタクリルアミド、2−及び4−ビニルピリジン、4−及び2−メチル−5−ビニルピリジン、N−メチル−4−ビニルピペリジン、1−ビニル−及び2−メチル−1−ビニル−イミダゾール、ジメチルアリルアミンとメチルジアリルアミン、並びにパラ−及びオルト−アミノスチレン、ジメチルアミノエチルビニルエステル、N−ビニルピロリドンと2−ピロリジノエチルメタクリレート、アクリル酸とメタクリル酸、イタコン酸、桂皮酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、及びこれらのヒドロキシ低級アルキルモノエステルとジエステル、例えば2−ヒドロキシエチル−、及びジ−(2−ヒドロキシ)−エチル−フマレート、−マレイネート、及び−イタコネート、並びに3−ヒドロキシプロピルブチルフマレート、及びジ−ポリアルコキシアルキル−フマレート、−マレイネート、及び−イタコネート、無水マレイン酸、アクリル酸ナトリウムとメタクリル酸ナトリウム、2−メタクリロイルオキシエチルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパン−スルホン酸、2−ホスホナトエチルメタクリレート、ビニルスルホン酸、ナトリウムビニルスルホネート、p−スチレンスルホン酸、ナトリウム−p−スチレンスルホネート、及びアリルスルホン酸、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、さらにはカチオン性モノマーの四級化された誘導体(選択されたアルキル化剤、例えばハロゲン化された炭化水素、例えばヨウ化メチル、塩化ベンジル、若しくはヘキサデシルクロリド、エポキシド、例えばグリシドール、エピクロロヒドリン、若しくはエチレンオキシド、アクリル酸、ジメチルスルフェート、メチルスルフェート、及びプロパンスルホンを用いて四級化することによって得られるもの)である。
【0030】
本発明のために使用可能な水溶性モノマーc)のより完全なリストは、R.H. Yocum及びE.B. Nyquist, Functional Monomers [Funktionelle Monomere], Band 1, p. 424-440 (M. Dekker, N.Y. 1973)で見られる。
【0031】
極めて特に好ましいモノマーc)は、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、N,N−ジ−メタクリルアミド、並びにアクリル酸及び/又はメタクリル酸、とりわけ2−ヒドロキシエチルメタクリレート及び/又はメタクリル酸である。
【0032】
ビニルモノマーc)の割合は、モノマー混合物に対して好適には5〜20mol%、及び特に好ましくは10〜15mol%である。
【0033】
架橋剤d)としてはとりわけ、ジオレフィン性モノマー、例えばアリルアクリレートとアリルメタクリレート、エチレングリコール−、ジエチレングリコール−、トリエチレングリコール−、テトラエチレングリコール−、及び一般的にポリエチレンオキシドグリコールジアクリレート、及び−ジメタクリレート、1,4−ブタンジオール−、及びポリ−n−ブチレンオキシドグリコールジアクリレート、及び−ジメタクリレート、プロピレングリコール−、及びポリプロピレンオキシドグリコールジアクリレート及び−ジメタクリレート、チオジエチレングリコールジアクリレート、及び−ジメタクリレート、ジ−(2−ヒドロキシエチル)−スルホンジアクリレート、及び−ジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、及び−ジメタクリレート、トリメチロールプロパン−トリ−及び−テトラアクリレート、ペンタエリトリット−トリ−及びテトラアクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルエーテル、ジビニルスルホン、ジシロキサニル−ビス−3−ヒドロキシプロピルジアクリレート、又は−メタクリレート、及び近縁の化合物が使用される。
【0034】
エチレングリコールジメタクリレートが好ましい。
【0035】
架橋剤は(存在する場合には)、モノマーa)〜c)の全量に対してその都度、好適には1.0〜3.0mol%の量、とりわけ1.4〜1.7mol%の量で使用する。
【0036】
本発明によるハイドロゲルは、ラジカル共重合によって、塊状で、又は通常の溶媒の存在下で製造する。この際、特別な実施態様によれば、アルコール、例えばアミルアルコールの存在下での重合が、膨潤挙動のために有利であると実証されている。重合は適切に熱のもとで行い、好適にはフリーラジカル形成性開始剤の存在下で、例えば約30℃〜約105℃の範囲の温度で行う。開始剤としては好適には、過酸化物又はアゾ触媒を使用する。使用されるペルオキシ化合物の典型的な例は、イソプロピルペルカルボネート、t−ブチルペルオクトエート、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、デカノイルペルオキシド、アセチルペルオキシド、コハク酸ペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、t−ブチルペルオキシアセテート、プロピオニルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、ペラルゴニルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス−(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)−ヘキサン、p−クロロベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシブチレート、t−ブチルペルオキシマレイン酸、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、及びビス−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−ペルオキシドである。
【0037】
適切なアゾ化合物は、2,2−アゾ−ビス−イソブチロニトリル、2,2’−アゾ−ビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1−アゾ−ビス−(シクロヘキサンカルボニトリル)、及び2,2−アゾ−ビス−(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)である。
【0038】
開始剤の量は、成分a)〜d)に対して0.002〜1mol%で変動してよいが、好適には0.03〜0.3mol%である。
【0039】
重合を開始させるためには、他のフリーラジカル形成メカニズム、例えば光線、例えばX線、電子線、γ線、又は紫外線を適用することができる。
【0040】
使用されるモノマーa)〜c)、及び架橋剤d)は公知であり、一部市販で手に入るか、又はそれ自体公知の方法で製造可能である。重合前に、とりわけこれらを安定化させている阻害剤を除去するために、これらを適切に精製する。その後で重合混合物を、それ自体公知のやり方で重合させる。
【0041】
本発明によるハイドロゲルを得るために、上述のように得られるコポリマーを水和しなければならない。これは適切には、緩衝された食塩水溶液(好適には等張のもの)に入れることによって起こる。この重合体は水和の前に、場合により薄い円盤状に切断して、又はコンタクトレンズの製造に適した形態で直接、重合させる。
【0042】
上記のようにして得られるコポリマーは、ビニルモノマーa)により形成された部分中に、そこに存在するヒドロキシ基を従前通り保護された形態で含む。従って、これらは未だに比較的著しく疎水性である。保護基の脱離、及び引き続いた水和によって、これらは本発明によるハイドロゲル(ビニルモノマーa)によって形成された部分中に、そこに独立形態で存在するヒドロキシ基を含むもの)に移行させることができる。保護基の脱離は、酸性媒体への導入、例えば希釈されたHCl又は酢酸への導入によって起こり、これは専門的な文献(Beyer, Walter: Lehrbuch der Organischen Chemie, S. Hirzel- Verlag Stuttgart, 特にKapitel Reaktionen der Aldehyde)から一般的に公知である。保護基脱離によって、ビニルモノマーa)により形成された部分が、親水性になる。これによって、形成されるコポリマーの水吸収能力を、明らかに上昇させることができる。このようにして水和により、酸素透過性が高い、例えば親水性のハイドロゲルが製造できる。
【0043】
本発明による方法は、非膨潤状態でも、膨潤状態でも(ハイドロゲルが)相分離を起こさず、引いては光学的に透明な、親水性及び疎水性の連続単位から成るコポリマーの製造を可能にする。
【0044】
本発明によるハイドロゲルは、非常に良好な酸素透過性を有し、かつこの際に親水性であり、かつ付加的に機械的に安定である、すなわち、例えば引張強さが高い。従ってこれらはコンタクトレンズ又は眼内レンズのための材料として、またその他の生体適合性材料、例えばインプラント、眼帯、経皮システム、又は他の形態の医薬担体として適している。
【0045】
上記ハイドロゲルからのコンタクトレンズの製造は、それ自体公知の方法で行うことができる。このために、重合させる混合物を例えば円筒形で重合させ、そして得られる棒状体を離型後、円盤状、又はボタン状に細分し、これらをさらに機械的に加工することができる。代替的には、重合をレンズ形態で行うこともでき、その結果直接、レンズ原形品を重合体として得ることができる。
【0046】
以下の実施例は本発明の対象を説明するものだが、しかしながら本発明はこの実施例の範囲に制限されることは無い。
【0047】
実施例
重合は2時間、80℃で、塊状で(実施例1〜9、12+13)ランダム共重合として行い、この際に開始剤として、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート(V69)を使用した。実施例10と11においては同様に、しかしながらアミルアルコールの存在下で(モノマー/アミルアルコール=60:40(v:v))重合させた。
【0048】
シリコーン含有モノマーb)としては、メタクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(TRIS)を使用し、ビニルモノマーa)としては、メチル−(2−メトキシ−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メタクリレート(MMDMA)、メチル−(2−メトキシ−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)アクリレート(MDMA)、又は2,3−O−イソプロピリデングリセリルメタクリレート(IPGMA)を使用した。
【0049】
架橋剤d)としては、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)を使用し、選択的に、付加的な親水性モノマーc)としてヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、及び/又はメタクリル酸(MAS)を利用した。
【表1】

【0050】
*アミルアルコールの存在下での重合は、モノマー/アミルアルコールの比=60/40(v:v);重合後に得られる重合体は、円盤状に切断し、イソプロパノール/水(70/30(v:v))で3回抽出し、その後、脱イオン水に入れ、膨潤試験は以前のように他のポリマー試料を用いて行った。
【0051】
重合後、あらゆる場合で透明な棒状のコポリマーが得られ、これをさらなる特性決定のために、厚さ4mmの円盤に切断した。含有されているM(M)DMA単位又はMDMA単位のジオキソラン環を脱ケタール化するため、このコポリマーを酸処理に供した。このために2時間半、70℃で、3MのHClで加水分解し、引き続き1時間中和した。中和のため、3%のNa2CO3溶液を使用した。
【0052】
加水分解されたコポリマーは、DIN EN ISO 18369-4に従って、涙代用液中で膨潤試験に供した。涙代用液は、緩衝溶液でpH値が7.3に調整された0.9%のNaCl溶液から成る。前記ポリマーは、涙代用液中でもその透明特性を保った。
【数1】

【0053】
これらのコポリマーは、好ましい親水特性を有し、そのため、高い酸素透過性と、良好な眼球適合性を有する、機械的に丈夫なコンタクトレンズ材料として使用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合可能なモノマー混合物からのコポリマーであるハイドロゲルであって、
前記ハイドロゲルはモノマーa)〜c)の全量に対して、
a)式(I)
【化1】

[式中、R1は水素又はメチルであり、pは1〜8の整数であり、そのヒドロキシ基は保護された形で存在する]
の少なくとも1つの疎水性ビニルモノマーを10〜65mol%、
b)少なくとも1つのシリコーン含有(メタ)アクリレートモノマー、ビニルカーボネートモノマー、又はビニルカルバメートモノマーを25〜70mol%、
c)少なくとも1つの親水性ビニルモノマーを0〜25mol%、及び
d)少なくとも1つの架橋剤を0〜10mol%、
含み、この際、前記ハイドロゲル中で、モノマーa)により形成された部分のヒドロキシ基が、保護された形、又は独立した形で存在している、前記ハイドロゲル。
【請求項2】
ビニルモノマーa)中でpが1〜3の整数であることを特徴とする、請求項1に記載のハイドロゲル。
【請求項3】
保護されたビニルモノマーa)が、式(Ia)
【化2】

[式中、R1は水素又はメチル、R2は水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基若しくはフェニル基であり、かつR3は場合により置換されたC1〜C6アルキル基、C1〜C6アルコキシ基、若しくはフェニル基であるか、又はR2とR3はともにC5〜C8シクロアルキル基を形成する]
の化合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のハイドロゲル。
【請求項4】
シリコーン含有モノマーb)が、式(II)又は(III)
【化3】

[式中、
X=O、NR1、又は1,3−ジオキソプロパン−2−オールであり、
Y=O、又は1つの結合であり、
Z=O、又は1つの結合であり、
1は水素、又はメチルであり、
4は相互に独立してC1〜C4アルキル、又はO−Si(R53であり、
5は相互に独立してC1〜C4アルキルであり、
6は相互に独立してC1〜C4アルキルであり、
fは1〜10の整数であり、かつ
nは1〜20の整数である]
のモノマーであることを特徴とする、請求項1から3までの1項以上に記載のハイドロゲル。
【請求項5】
式(II)のモノマーにおいて、
fは1〜4の整数であり、
Zは1つの結合であり、
X=O、又は1,3−ジオキソプロパン−2−オール、とりわけOであり、かつ
1及びR4はメチルである、
ことを特徴とする、請求項4に記載のハイドロゲル。
【請求項6】
式(II)のモノマーにおいて、
Z=Oであり、
X=O、又はNR1であり、
1は水素であり、
fは2〜4の整数であり、かつ
4はメチルである
ことを特徴とする、請求項4に記載のハイドロゲル。
【請求項7】
前記b)が、メタクリロキシプロピル−トリス(トリメチルシロキシ)シラン、メタクリロキシプロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、メタクリロキシプロピルペンタメチルジシロキサン、メタクリロイルオキシメチル−ヘプタメチルトリシロキサン、メタクリロイルオキシプロピル−ポリジメチルシロキサン、メタクリロイルオキシエチル−トリメチルシロキサン、メチルジ(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセロールメタクリレート、及びビニルオキシカルボニルアミノプロピル−トリス(トリメチルシロキシ)シランから成る群から選択されるポリシロキサニルアルキル(メタ)アクリレート−モノマーであることを特徴とする、請求項1から6までの1項以上に記載のハイドロゲル。
【請求項8】
前記ビニルモノマーc)が、ヒドロキシ、カルボキシ、若しくはt−アミノ置換されたC1〜C6アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシ若しくはカルボキシ置換されたC1〜C4アルキル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシ(メタ)アクリルアミドシリルエーテル、(メタ)アクリルアミド、5〜6員環のN−ビニルラクタメート、N,N−ジ−C1〜C4アルキル(メタ)アクリルアミド、3〜5個の炭素原子を有する、ビニル不飽和カルボン酸、ビニルカーボネート、ビニルカルバメート、N−ビニル−N−C1〜C4アルキルアセトアミド、ジエチレングリコールメタクリレート、トリエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、及びグリセロールメタクリレートから選択されていることを特徴とする、請求項1から7までの1項以上に記載のハイドロゲル。
【請求項9】
前記ビニルモノマーc)が、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミド、並びにアクリル酸とメタクリル酸から選択されていることを特徴とする、請求項1から8までの1項以上に記載のハイドロゲル。
【請求項10】
前記ビニルモノマーa)が、メチル−(2−メトキシ−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メタクリレート、及び/又はメチル−(2−メトキシ−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)アクリレートであり、
前記ビニルモノマーb)が、メタクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランであり、かつ
前記ビニルモノマーc)が2−ヒドロキシエチルメタクリレート、及び/又はメタクリル酸である、
ことを特徴とする、請求項1から9までの1項以上に記載のハイドロゲル。
【請求項11】
モノマーa)によって形成された部分のヒドロキシ基が、独立した形で存在することを特徴とする、請求項1から10までの1項以上に記載のハイドロゲル。
【請求項12】
ラジカル重合と、ヒドロキシ保護基の酸加水分解による、請求項11に記載のハイドロゲルの製造方法。
【請求項13】
コンタクトレンズ材料又は眼内レンズ材料としての、請求項11に記載のハイドロゲルの使用。
【請求項14】
請求項11に記載のハイドロゲルから製造される、コンタクトレンズ又は眼内レンズ。

【公表番号】特表2011−522934(P2011−522934A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512909(P2011−512909)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際出願番号】PCT/EP2009/054885
【国際公開番号】WO2009/149985
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(390009128)エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (293)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee,D−64293 Darmstadt,Germany
【Fターム(参考)】