説明

シリコーン含有ポリマーの調製プロセス

本発明は銅を含まないフリーラジカル開始剤および1つ以上の重合調整剤存在下で、1つ以上のエチレン不飽和有機モノマーのフリーラジカル重合によりシリコーン含有ポリマーを調製するプロセスを提供するものであり、使用される重合調整剤が少なくとも1つのアルデヒド基を含むシリコーンであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルデヒド基含有シリコーン群由来の調整剤存在下でフリーラジカル重合されるエチレン不飽和モノマーによる、シリコーン含有ポリマーの調製プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術は、シリコーン存在下でモノマーを重合することにより、シリコーンを用いて有機ポリマーを改質する一連のプロセスを開示している。
【0003】
特許文献1は、エマルジョンポリマーであるビニルエステル、アクリル酸エステル、またはメタクリル酸エステルを基剤とし、架橋剤として例えばビニル基、アクリロイルオキシ基、およびメタクリロイルオキシ基等の不飽和基を含むポリシロキサンを有する被覆剤および接着剤としての水性バインダーを開示している。ここではその有機モノマーが乳化・重合され、特定の時点後の適切な時期に、反応時にシリコーンが付加されている。特許文献2は、シラノール基を含むシリコーン樹脂存在下でエチレン不飽和モノマーを共重合することにより調製される、塗料材料として使用される水性ラテックスについて記述している。ここではポリマー鎖とポリシロキサン鎖との間に相互侵入網目構造(IPN)が形成されている。特許文献3は、ビニルポリマー上にグラフトされたカルボシロキサンデンドリマーを有するシリコーングラフトコポリマーについて記載している。
【特許文献1】欧州特許出願公開第B771826号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第A943634号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第A1095953号明細書
【0004】
同様に、ビニル官含有シリコーンの使用も先行技術により公知である。特許文献4の実施例として記載されている通り、ほとんどの場合、ビニルシリコーンはヒドロシリル化反応の一部として、触媒(通常白金化合物)によりH‐シロキサン(有機ヒドロポリシロキサン)と反応する。
【特許文献4】欧州特許A545591
【0005】
ポリシロキサン架橋されたスチレン‐ブタジエン共重合は特許文献5により公知であり、この架橋コポリマーは、懸濁重合プロセスにより調製される。特許文献6は、メルカプト基含有シリコーン存在下で重合により調製されるビニルシロキサンポリマーに関する。特許文献7は、ブロック型有機シリコーンコポリマーを調製するために使用される、カルボニル基含有シリコーンおよび銅塩を含む開始剤の組み合わせについて記述している。
【特許文献5】米国特許出願公開第A5086141号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第A5468477号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第A5789516号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
有機シリコーンコポリマーの調製に関する先行技術により公知の可能性については、いずれも多くの欠点がある。例えば、H‐シロキサンとビニルシリコーンとのヒドロシリル化反応は通常量的には進まず、必ず白金触媒の存在を必要とするが、この白金触媒は生成物を汚染し、重金属を持ち込む。このような状況は、開始剤として使用されるカルボニル基含有シリコーンにも言えることである。この場合に必要とされる銅塩がやはり最終生成物に重金属を持ち込み、不可能ではないにせよ、分離困難な不純物を生ずる。同様に、メルカプト基含有シリコーンも、有機シリコーンコポリマー調製用有機モノマーの重合反応における調整剤として記載されている。このようなシリコーンを使用することにより、メルカプト基上で望ましくない副反応が起こる(例えば、酸化反応または付加反応)。ここでのさらなる欠点は、これらの化合物の臭気であり、実際に環境上不快な場合もある。その上、重合率が大幅に低下し、残留硫黄が存在する場合、重合が完全に停止する可能性がある。
【0007】
有機ポリマーを有する官能化シリコーン上の縮合反応およびポリマー‐アナログ反応は通常不完全であるため、最終生成物に未反応の開始剤が残ってしまう。その理由として挙げられるのは、特にシリコーンと有機ポリマーの不適合性である。乳化重合の場合の深刻な不利益は、例えば有機モノマーと、重合可能な少なくとも1つの不飽和基を含むシリコーンマクロマーとの結合および共重合が不十分であることである。特許文献8は、規定のシリコーン混合物を用いてこれを回避している。対照的に、液体の場合、この種のシステムでは重合傾向が大幅に向上するため、多価不飽和シリコーンマクロマーの使用により生成物が架橋され、様々な用途へ使用することができなくなる。特許文献9は、混合溶媒存在下で重合することにより、これを回避している。
【特許文献8】欧州特許出願公開第A1354900号明細書
【特許文献9】国際公開第A03/085035号明細書
【0008】
したがって、この発明の目的は、望まない架橋、移行傾向、および金属混入等、欠点を特徴として備えていないシリコーン含有ポリマーを提供することであった。
【0009】
本発明は、銅を含まないフリーラジカル開始剤および1つ以上の重合調整剤存在下で、1つ以上のエチレン不飽和有機モノマーの遊離基重合によりシリコーン含有ポリマーを調製するためのプロセスを提供するものであり、使用される重合調整剤が少なくとも1つのアルデヒド基を含むシリコーンであることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
適切なアルデヒド官能化シリコーンは、少なくとも1つのアルデヒド末端基および/またはアルデヒド内基を含むシロキサンの反復単位数が少なくとも2である直鎖状、分枝状、環状、または三次元架橋構造のポリシロキサンである。
【0011】
好適なアルデヒド官能化シリコーンは、アルデヒド末端基に関する一般式(I)またはアルデヒド内基に関する一般式(II)のシリコーンであり、
HCO(CH‐SiRO‐[SiRO‐]‐SiR‐(CH‐CHO(I)および
Si‐O‐[SiRO‐]‐[Si(HCO(CH)RO]‐SiR(II)
が使用され、各Rは任意選択的に置換されている同一または異なる一価のアルキル基またはアルコキシ基であり、それぞれ1〜18の炭素原子を有し、x≧1、y≧0、およびz≧1である。
【0012】
基Rの実施例としては、メチル基、エチル基、n‐プロピル基、イソプロピル基、1‐n‐ブチル基、2‐n‐ブチル基、イソブチル基、t‐ブチル基、n‐ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t‐ペンチル基、n‐ヘキシル基等のヘキシル基、n‐ヘプチル基等のヘプチル基、n‐オクチル基および2,2,4‐トリメチル‐ペンチル基等イソオクチル基等のオクチル基、n‐ノニル基等のノニル基、n‐デシル基等のデシル基、n‐ドデシル基等のn‐ドデシル基、n‐オクタデシル基等のオクタデシル基、そしてシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、およびメチルシクロヘキシル基等のシクロアルキル基である。
基Rは、好ましくはメチル基、エチル基、n‐プロピル基、イソプロピル基、n‐ブチル基、s‐ブチル基、アミル基、ヘキシル基等、1〜6の炭素原子を有する一価のアルキル基、特に好適はメチル基である。
好適なアルコキシ基Rは、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、およびn‐ブトキシ基等、1〜6の炭素原子を有し、望まれる場合は、オキシエチレン基またはオキシメチレン基等オキシアルキレン基により置換される可能性もある。特に好適は、メトキシ基およびエトキシ基である。
上述のアルキル基およびアルコキシRは、適宜、例えばハロゲン基、エポキシ含有基、カルボキシル基、ケト基、エナミン基、アミノ基、アミノエチルアミノ基、イソシアナト基、アリロキシ基、アルコキシリル基、およびヒドロキシ基により置換される可能性もある。
【0013】
一般的に、xは1〜10000、好ましくは2〜1000、より好ましくは10〜500である。
一般的に、yは0〜1000、好ましくは2〜500である。
一般的に、zは1〜1000、好ましくは1〜100である。
特に好適には、y+zが1〜1000、最も好ましくは10〜500であり、y:zの比率が、特に好適には15:1〜50:1である。
【0014】
適切なエチレン不飽和有機モノマーは、1〜18の炭素原子を有する非分枝状または分枝状のアルキルカルボン酸のビニルエステル、1〜18の炭素原子を有する分枝状または非分枝状のアルコールまたはジオールのアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル、エチレン不飽和モノカルボン酸およびジカルボン酸とその塩類、またそのアミド、N‐メチロールアミド、およびニトリル、エチレン不飽和スルホン酸とその塩類、エチレン不飽和複素環式化合物、アルキルビニルエーテル、ビニルケトン、ジエン、オレフィン、ビニル芳香族、およびビニルハロゲン化物からなる群由来の1つ以上のモノマーである。
【0015】
適切なビニルエステルは、1〜13の炭素原子を有するカルボン酸である。好適は、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ブチル、2‐エチルヘキサン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、1‐酢酸メチルビニル、ピバル酸ビニル、および9〜13の炭素原子を有するα‐分枝状のモノカルボン酸、例えばVeoVa9またはVeoVa10(Resolution社の商品名)のビニルエステルである。特に好適は、酢酸ビニルである。
【0016】
アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルの群由来の適切なモノマーは、1〜15の炭素原子を有する非分枝状または分枝状のアルコールまたはジオールである。好適なメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルは、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、イソブチルまたはアクリル酸‐n‐ブチル、メタクリル酸‐n‐ブチル、アクリル酸‐t‐ブチル、イソブチルまたはメタクリル酸‐t‐ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸‐2‐ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸n‐ヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、α‐クロロアクリル酸エステル、およびα‐シアノアクリレートエステルである。特に好適は、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸‐n‐ブチル、アクリル酸‐t‐ブチル、およびアクリル酸-2-エチルヘキシルである。
さらなる実施例は、官能化(メタ)アクリル酸および官能化アリルまたはビニルエーテル、特にアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、または(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等ヒドロキシアルキル基等のエポキシ基である。
【0017】
適切なエチレン不飽和モノカルボン酸およびジカルボン酸とその塩類、またそのアミド、N‐メチロールアミド、およびニトリルの実施例は、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N‐メチロールメタクリルアミド、アクリロニトリル、およびメタクリロニトリルである。エチレン不飽和スルホン酸の実施例は、ビニルスルホン酸および2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸である。適切なエチレン不飽和複素環式化合物は、N‐ビニルピロリドン、ビニルピリジン、N‐ビニルイミダゾール、およびN‐ビニルカプロラクタムである。また、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド(DADMAC)、3‐トリメチル‐アンモニオプロピル(メタ)アクリルアミドクロライド(MAPTAC)、および2‐トリメチルアンモニオエチルA(メタ)アクリル酸クロライド等のカチオンモノマーも適切である。
【0018】
好適なビニル芳香族は、スチレン、α‐メチルスチレン、およびビニルトルエンである。好適なハロゲン化ビニルは、塩化ビニル、塩化ビニリデン、およびフッ化ビニルである。好適なオレフィンは、エチレンおよびプロピレン、好適なジエンは、1,3‐ブタジエンおよびイソプレンである。
【0019】
好適なアルキルビニルエーテルは、エチルビニルエーテル、n‐ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、t‐ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、およびシクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテルである。さらに適切なエチレン不飽和モノマーは、ビニルメチルケトン、N‐ビニルホルムアミド、N‐ビニル‐N‐メチルアセトアミド、ビニルカルバゾール、およびシアン化ビニリデンである。
【0020】
エチレン不飽和シランも適切なモノマーである。好適は、γ‐アクリロイルオキシ‐およびγ‐メタクリロイルオキシ‐プロピルトリ(アルコキシ)シラン、α‐メタクリロイルオキシメチルトリ(アルコキシ)‐シラン、γ‐メタクリロイルオキシプロピルメチルジ(アルコキシ)シラン、ビニルアルキルジ(アルコキシ)シラン、およびビニルトリ(アルコキシ)シラン、そして例えばメトキシ基、エトキシ基、メトキシエチレン基、エトキシエチレン基、メトキシプロピレングリコールエーテル基および/またはエトキシプロピレングリコールエーテル基として使用され得るアルコキシ基である。好適なシラン含有モノマーの実施例は、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリス(1‐メトキシ)イソプロポキシシラン、メタクリロイルオキシプロピルトリス(2‐メトキシエトキシ)シラン、3‐メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3‐メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、およびメタクリロイルオキシメチルトリメトキシシランと、さらにそれの混合物である。
【0021】
適切なモノマーのさらなる実施例は、ポリエチレン不飽和コモノマー、例えばアジピン酸ジビニル、ジビニルベンゼン、マレイン酸ジアリル、メタクリル酸 アリル、ブタンジオールジアクリレート、またはシアヌル酸トリアリル等の前架橋コモノマー、あるいは後架橋コモノマー、例えばアクリルアミドグリコール酸(AGA)、メチルアクリルアミドグリコール酸メチルエステル(MAGME)、N‐メチロールアクリルアミド(NMA)、N‐メチロール‐メタクリルアミド、N‐メチロールアリルカルバメート、そしてイソブトキシエーテル等のあるきるエーテル、またはN‐メチロールアクリルアミド、N‐メチロールメタクリルアミド、およびN‐メチロールアリルカルバメートのエステルである。
【0022】
エチレン不飽和有機モノマーの重合は、シリコーンマクロマー存在下でも起こり得る。適切なシリコーンマクロマーは、シロキサンの反復単位数が少なくとも5であり、フリーラジカルにより重合可能な少なくとも1つの官能基を含む、直鎖状、分枝状、環状、および三次元架橋構造のシリコーン(ポリシロキサン)である。シロキサンの反復単位の鎖長は、好ましくは10〜10000である。アルケニル基等のエチレン不飽和基は、好適かつ重合可能な官能基である。
【0023】
好適なシリコーンマクロマーは、一般式(III)R3‐aSiO(SiRO)SiR3‐aを有するシリコーンであり、Rはそれぞれ1〜18の炭素原子を有する、任意選択的に置換されている同一または異なる一価のアルキル基またはアルコキシ基である。Rは重合可能な官能基、aは0または1、n=5〜10000である。
【0024】
式(I、I、I)における基Rの例は、メチル基、エチル基、n‐プロピル基、イソプロピル基、1‐n‐ブチル基、2‐n‐ブチル基、イソブチル基、t‐ブチル基、n‐ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t‐ペンチル基、n‐ヘキシル基等のヘキシル基、n‐ヘプチル基等のヘプチル基、n‐オクチル基および2,2,4‐トリメチル‐ペンチル基等のイソオクチル基等のオクチル基、n‐ノニル基等のノニル基、n‐デシル基等のデシル基、n‐ドデシル基等のn‐ドデシル基、n‐オクタデシル基等のオクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、およびメチルシクロヘキシル基等のシクロアルキル基である。好ましくは、基Rは、メチル基、エチル基、n‐プロピル基、イソプロピル基、n‐ブチル基、s‐ブチル基、アミル基、ヘキシル基等、1〜6の炭素原子を有する一価の炭化水素基であり、メチル基は特に好適である。
【0025】
好適なアルコキシ基Rは、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、およびn‐ブトキシ基等、1〜6の炭素原子を有し、望まれる場合は、オキシエチレン基またはオキシメチレン基等オキシアルキレン基により置換される可能性もある。特に好適は、メトキシ基およびエトキシ基である。上述のアルキル基およびアルコキシRは、適宜、例えばハロゲン基、メルカプト基、エポキシ含有基、カルボキシル基、ケト基、エナミン基、アミノ基、アミノエチルアミノ基、イソシアナト基、アリロキシ基、アルコキシリル基、およびヒドロキシ基により置換される可能性もある。
【0026】
適切な重合可能な基Rは、2〜8の炭素原子を有するアルケニル基である。このような重合可能な基の実施例は、ビニル基、アリル基、ブテニル基、さらにアクリロイロキシアルキル基、メタクリロイルオキシアルキル基、1〜4の炭素原子を有するアルキル基である。好適は、ビニル基、3‐メタクリロイルオキシプロピル基、(メタ)アクリロイルオキシメチル基、および3‐アクリロイル‐オキシプロピル基である。
【0027】
特に好適は、α,ω‐ジビニルポリジメチルシロキサン、α,ω‐ジ(3‐アクリロイルオキシプロピル)ポリジメチルシロキサン、およびα,ω‐ジ(3‐メタクリロイルオキシプロピル)ポリジメチルシロキサンである。不飽和基により1回だけ置換されたシリコーンの場合、特に好適は、α‐モノビニルポリ‐ジメチルシロキサン、α‐モノ(3‐アクリロイルオキシプロピル)ポリジメチルシロキサン、α‐モノ(アクリロイルオキシメチル)ポリジメチルシロキサン、α‐モノ(メタクリロイルオキシメチル)ポリジメチルシロキサン、およびα‐モノ(3‐メタクリロイルオキシプロピル)ポリジメチルシロキサンである。単官能ポリジメチルシロキサンの場合、アルキル基またはアルコキシ基が、メチル基またはブチル基等、鎖のもう一方の端に存在する。
【0028】
直鎖状または分枝状のジビニルポリジメチルシロキサンと、直鎖状または分枝状のモノビニルポリジメチルシロキサンおよび/または官能化されていないポリジメチルシロキサンの混合物も特に好適である(後者は重合可能な基を有さない)でもある。ビニル基は鎖端に存在する。このような混合物の実施例は、Wacker‐Chemie GmbH社の無溶媒のDehesive(登録商標)6シリーズ(分枝状)またはDehesive(登録商標)9シリーズ(非分枝状)のシリコーンである。二成分または三成分の混合物の場合、それぞれシロキサンマクロマーの総重量に基づけば、官能化されていないポリジアルキルシロキサンの画分は重量で最大15%まで、好ましくは重量で5%までであり、単官能ポリジアルキルシロキサンの画分は重量で50%まで、二官能ポリジアルキルシロキサンの画分は重量で50%以上、好ましくは重量で60%以上である。
【0029】
最も好適なシリコーンマクロマーは、α,ω‐ジビニルポリジメチルシロキサン、α‐モノ(3-メタクリロイルオキシプロピル)ポリジメチルシロキサン、およびα,ω‐ジ(3‐メタクリロイルオキシプロピル)‐ポリジメチルシロキサンである。このシリコーンマクロマーは、それぞれモノマーの総量に基づいて、一般的に重量で0.1%〜40%、好ましくは重量で1.0%〜20%の量で使用される。
【0030】
特に好適は、モノマー、もしくは酢酸ビニル、9〜11の炭素原子を有するα分枝状のモノカルボン酸のビニルエステル、塩化ビニル、エチレン、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸‐n‐ブチル、メタクリル酸‐n‐ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、スチレン、およびシリコーンモノマーからなる群由来の1つ以上のモノマーを有する混合物である。
【0031】
最大の好適は、酢酸ビニルおよび酢酸ビニルとシリコーンモノマーとの混合物、
酢酸ビニル、9〜11の炭素原子を有するα分枝状のモノカルボン酸のビニルエステルおよび/またはエチレンの混合物、望まれる場合はさらにシリコーンマクロマーとの混合物、
アクリル酸‐n‐ブチルと、アクリル酸-2-エチルヘキシルおよび/またはメタクリル酸メチルとの混合物、望まれる場合はさらにシリコーンマクロマーとの混合物、
スチレンと、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸‐n‐ブチル、およびアクリル酸-2-エチルヘキシルの群由来の1つ以上のモノマーとの混合物、望まれる場合はさらにシリコーンマクロマーとの混合物、
酢酸ビニルと、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸‐n‐ブチル、およびアクリル酸-2-エチルヘキシルの群由来の1つ以上のモノマーとの混合物、望まれる場合はさらにエチレンとの混合物、望まれる場合はさらにシリコーンマクロマーとの混合物である。
【0032】
フリーラジカルにより開始されるエチレン不飽和モノマーの重合は、原則的に、重合目的の既知のプロセス、すなわちバルク重合、溶液重合、沈殿重合、水中での懸濁重合、水中での乳化重合等のいずれによっても起こると考えられる。
【0033】
重合温度は、一般的には30℃〜100℃、好ましくは50℃〜90℃である。エチレン、1,3‐ブタジエン、または塩化ビニル等、ガス状コモノマーを共重合するときには、過圧下、一般的には1バール〜100バールの間で作業することもできる。
【0034】
重合は、通例の水溶性またはモノマー/オイルに可溶な開始剤、あるいはレドックス開始剤を組み合わせたものを用いて開始する。水溶性開始剤の実施例は、ペルオキソ二硫酸、過酸化水素、t‐ブチル‐ヒドロペルオキシド、ペルオキソ二硫酸カリウム、クメンヒドロペルオキシド、イソプロピルベンゼンモノヒドロペルオキシド、または水溶性アゾの開始剤(Wako V‐50等)のナトリウム、カリウム、およびアンモニウムの塩類である。
モノマーに可溶な開始剤の実施例は、ジセチルパーオキシジカーボネート、ジ(1‐エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、1,1‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)‐3,3,5‐トリメチルシクロヘキサン、ジ(4‐t‐ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジシクロヘキシルパーオキシジカーボネート、過酸化ジベンゾイル、過酸化ジラウロイル、t‐アミルパーオキシピバレート、t‐ブチルパーネオデカノエート、t‐ブチルパー‐2‐エチルヘキサン酸、t‐ブチルパーピバレート、またはAIBN等のアゾ開始剤である。
【0035】
上述の開始剤は、それぞれモノマーの総重量に基づいて、一般的に重量で0.01%〜10%、好ましくは重量で0.1%〜1.0%の量で使用される。使用されるレドックス開始剤は、上述の開始剤と還元剤との複合剤である。適切な還元剤は、アルカリ金属およびアンモニウムの亜硫酸塩剤および重亜硫酸剤(例えば亜硫酸ナトリウム)、亜鉛ホルムアルデヒド‐スルホキシル酸、またはアルカリ金属ホルムアルデヒド‐スルホキシル酸等スルホキシル酸の誘導体(例えばヒドロキシメタンスルフィン酸塩ナトリウム)、およびアスコルビン酸である。還元剤の量は、それぞれモノマーの総重量に基づいて、一般的に重量で0.01%〜10.0%、好ましくは重量で0.1%〜1.0%である。
【0036】
溶液重合の場合、例えばテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、石油エーテル、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセトン、イソプロパノール、プロパノール、エタノール、メタノール、シクロヘキサン、トルエン、またはベンゼンを使用する。
【0037】
上述の懸濁重合および乳化重合のプロセスの場合、反応は、保護コロイドおよび/または乳化剤等の界面活性物質存在下で実行される。適切な保護コロイドは、例えば一部を挙げればポリビニルアルコール分解物、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタール、デンプン、セルロース、およびこれらのカルボキシメチル、メチル、ヒドロキシエチル、およびヒドロキシプロピルの誘導体等である。
適切な乳化剤は、アニオン性、カチオン性、非イオン性の乳化剤、例えば、鎖長が8〜18の炭素原子を有するアルキル硫酸塩等のアニオン性界面活性剤、疎水性の基に8〜18の炭素原子を有し、酸化エチレンまたは酸化プロピレンの単位が60までのアルキルまたはアルキルアーリル硫酸エーテル、一価アルコールまたはアルキルフェノールを有するスルフォ琥珀酸のフルエステルおよびモノエステル、あるいは酸化エチレンまたは酸化プロピレンの単位を60まで有するアルキルポリグリコールエーテルまたはアルキルアーリルポリグリコールエーテル等の非イオン性界面活性剤である。
【0038】
モノマーは、初回投入時に全体として導入し、全体を定量して付加する、あるいは初回投入時には一部を含め、残りは重合開始後に定量することもある。定量した投入材料は別々に(場所および時間)に供給する、または定量する構成成分の一部または全てをあらかじめ乳化してから付加してもよい。重合調整剤として使用されるアルデヒド基含有シリコーンは、初回投入時に全体として含め、全体を定量する、あるいは初回投入時に一部を含めその後の投入時に定量することもできる。好適は、一部を初回投入時に含め、その後の投入時に定量することである。特に好適は、重合時のモル比が変わらないような方法で、調整剤およびモノマーを付加することである。このような方法により、分子量の分布が均一化し、均一なポリマーが得られる。アルデヒド基含有シリコーンは、それぞれモノマーの総重量に基づいて、一般的には重量で0.1%〜40%、好ましくは重量で1.0%〜20%の量で使用される。
【0039】
使用されるアルデヒド基含有シリコーン調整剤以外にも、さらにシラン含有化合物またはアルデヒドを基剤とする調整剤も使用できる。重合終了後は、後重合、蒸留、不活性ガスおよび/または水蒸気の排出、あるいはこれらの方法を組み合わせることにより、残留モノマーおよび揮発性の成分を除去することができる。
【0040】
水中で再分散可能なポリマー粉を作製するには、乳化重合および懸濁重合によって実行可能になる従来の水性分散液の噴霧乾燥が考えられる。噴霧の助剤として保護コロイドを付加したのちに噴霧乾燥が実行される。
【0041】
ビニルエステルモノマー、特に酢酸ビニルが使用される場合、結果として生ずる有機シリコーンコポリマーが加水分解してシリコーン含有ポリビニルアルコールが得られる可能性がある。このような場合に使用されるポリビニルエステル開始材料は、好ましくはバルク重合または溶液重合のプロセスによって作製される。加水分解生成物を作成するため、当業者には既知の方法で、典型的な酸性またはアルカリ性の触媒を用いてアルコール溶液中でシリコーン含有ポリマーを加水分解する。適切な溶媒は、1〜6の炭素原子を有する脂肪族アルコール、好ましくはメタノールまたはエタノールである。代替法として、水と脂肪族アルコールとの混合物中で加水分解を実施することができる。酸性触媒の実施例は、塩酸または硫酸等の強力な鉱酸、あるいは脂肪酸または芳香族スルホン酸等の強力な有機酸である。好適は、アルカリ性触媒を使用することである。アルカリ性触媒とは、例えばアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、アルコキシド、および炭酸である。これらの触媒は、水溶液またはアルコール溶液の形態で使用される。使用されるアルカリ性触媒の量は、有機シリコーンコポリマーに基づいて、一般的には0.2〜20.0モル%である。
【0042】
加水分解は、一般的に20℃〜70℃、好ましくは30℃〜60℃で実施する。触媒溶液を付加すると、エステル交換が開始される。加水分解が任意の程度に到達したとき、一般的には40〜100モル%の間で、エステル交換を停止する。酸性触媒によるエステル交換の場合は、アルカリ性試薬付加により停止する。好適なアルカリ性触媒によるエステル交換の場合は、例えば中和等、カルボン酸または鉱酸等の酸性試薬付加により停止する。加水分解反応の終了後、生成物を液相から分離する。これは例えば遠心分離または濾過等、固体/液体分離用の通例の装置を用いて実施できる。
【0043】
その後のステップで、シリコーン含有ポリビニルアルコールおよびアルデヒドをさらにアセタール化すると、シリコーン含有ポリビニルアセタールを得ることができる。アセタール化のため、一部または完全に加水分解したシリコーン含有ポリビニルエステルは、好ましくは水性媒体中に取り込む。通常、水溶液中の固体分を重量で5%〜40%になるよう設定する。アセタール化は、塩酸、スルホン酸、硝酸、またはリン酸等の酸性触媒存在下で起こる。本溶液は、塩酸付加により、好ましくはpH<1に設定する。本溶液は、触媒添加後、好ましくは−10℃〜+20℃まで冷却する。アセタール化反応は、アルデヒド画分付加により開始する。
【0044】
1〜15の炭素原子を有する脂肪族アルデヒドの群由来の好適なアルデヒドは、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、そして最も好ましくはブチルアルデヒドまたはブチルアルデヒドとアセトアルデヒドとの混合物である。使用可能な芳香族アルデヒドの実施例には、ベンズアルデヒドまたはその誘導体が含まれる。アルデヒドの付加量は、アセタール化の任意の程度から導出する。アセタール化が進み、実質的には完全に変換されるため、付加量は単純な理論的計算により決定できる。アルデヒド付加を終了すると、そのバッチを10℃〜60℃で加熱し、長時間、好ましくは1時間から6時間振とうすることでアセタール化が完了し、下流の洗浄ステップに関する濾過により、反応生成物が粉末の形態で分離される。
【0045】
本発明により入手できるシリコーン含有ポリマーは、このようなポリマーに典型的な応用分野で極めて有利に使用され得る。
【産業上の利用可能性】
【0046】
バルク重合、溶液重合、乳化重合、および懸濁重合により入手できるシリコーン含有ポリマーとその溶液は、剥離剤およびコーティング材料、例えば剥離コーティングにおける不粘着(非接着)コーティングとしての適合性を有する。これらは、例えば保護コーティングまたは防汚コーティングとして、織物、紙、プラスチック(フィルム等)、木材、および金属のコーティングにも適している。別の使用分野では、建築保存、特に耐風化性のコーティングまたはシーリング剤の生産に使用される。これらはさらに改質剤および疎水化剤として、また、ヘアースプレー、ヘアセット剤、クリーム、シャンプー、またはローションへの添加物等、化粧品の添加物としても適している。さらなる応用分野は、塗料中、印刷インキ中、および架橋性シーリング剤中の結合剤としての接着剤である。
【0047】
水性分散液または再分散可能な分散粉体は、例えば建築用化学生成物として、適宜、セメント(ポルトランド、アルミン酸、トラス、スラグ、マグネシア、またはリン酸のセメント)、石膏、水ガラス等の油圧的に凝結させる結合剤と併用される。その用途は、建築用接着剤、特にタイル接着剤、外部断熱および塗装システム用の接着剤、レンダー、こて塗用配合物、こて塗床仕上げ用配合物、水平化用配合物、縮化しないグラウト、目地用モルタル、および塗料の生産であった。さらに、コーティング材料および接着剤用の結合剤、あるいは織物、プラスチック、金属、繊維、木材、および紙用のコーティング材料および結合剤としても使用される。
【0048】
シリコーン含有ポリマーの調製に関して最初に取り組む問題は、アルデヒド基を有するシリコーンを使用することにより解決できる。フリーラジカル乳化重合の場合、有機モノマーの結合状態が改善される。懸濁重合で使用される場合、やはり結合状態は極めて良好であり、アルデヒド基により官能化されたシリコーンが極めて優れた調整効果を発揮するため、非架橋生成物は形成されない。
具体的には、多価不飽和シリコーンマクロマーを有機モノマーと重合したときに、これらアルデヒド基含有シリコーンを使用することにより、フリーラジカル溶液重合に影響を及ぼす架橋問題を解決することができる。
このように、フリーラジカル重合反応の場合、アルデヒド基含有シリコーンを用いてこの重合から開始材料を入手し、極めて有利な特性プロフィールを呈する有機シリコーンコポリマーを極めて容易に調整することが可能になる。さらに、例えば、シリコーンマクロマーとアルデヒド基含有シリコーンの適切な混合物を使用すると、分子量、粘度、架橋の程度、および機械的特性を多様化することも可能になる。
【0049】
下の実施例は、本発明をより詳細に示しているが、いかなる方法によっても、これを制限しない。
【実施例】
【0050】
調整剤(アルデヒド基含有シリコーン):SiOMeの反復単位数が約59のα,ω‐ジ‐アルデヒド基を含有するシリコーンオイル。製造会社:Wacker-Chemie GmbH
【0051】
シリコーンマクロマー:SiOMeの反復単位数が約100のα,ω-ジビニル基(VIPO 200)を含有するポリジメチルシロキサン。製造会社:Wacker-Chemie GmbH
【0052】
比較例1(調整剤なし、シリコーンマクロマーを含む):アンカー攪拌機、反射コンデンサー、および計量手段を有する1 lガラス反応器を攪拌して、酢酸エチル337.11 g、VIPO 200 8.9 g、PPV(t‐ブチルパーピバレート、脂肪族化合物中75%強度溶液)0.77 g、および酢酸ビニル35.64 gを投入した。次いで、攪拌速度150 rpmで初回投入材料を70℃まで加熱した。
内部の温度が70℃に到達すると、13.6 ml/hの速度で開始剤(酢酸エチル60.14 gおよびPPV 2.98 g)の供給を開始した。開始剤の供給を開始してから10分後、95 ml/hの速度でモノマー(VIPO 200 71.29 gおよび酢酸ビニル285.11 g)を供給した。
開始剤の供給は、310分間延長した。モノマーの供給は、60分早く終了した。しかし、モノマーの供給時間を145分間計量したところで、顕著かつ直列に架橋され、粘度が劇的に増加した。それ以上適切に攪拌することができなかったため、そのバッチを早期に中止した(供給を中止する等)。
中止後、70℃で60分間、重合を継続した。続いて、回転式蒸発器において得られたポリマー溶液を加熱し、乾燥状態まで濃縮した。室温まで冷却すると、混濁した架橋樹脂が得られた。
分析結果:SC:98.7%、粘度(Hoppler、酢酸エチル中10%強度溶液)=56.9 mPas、SEC Mw=277000、Mn=16800、多分散度=16.5、ガラス転移温度(Tg):Tg=31.1℃、K値(アセトン中1%強度溶液)=38.3
【0053】
比較例2(調整剤なし、シリコーンマクロマーなし):アンカー攪拌機、反射コンデンサー、および計量手段を有する1 lガラス反応器を攪拌して、酢酸エチル343.35 g、PPV(t‐ブチルパーピバレート、脂肪族化合物中75%強度溶液)0.78g、および酢酸ビニル45.37 gを投入した。次いで、攪拌速度150 rpmで初回投入材料を70℃まで加熱した。内部の温度が70℃に到達すると、13.8 ml/hの速度で開始剤(酢酸エチル61.25 gおよびPPV 3.03 g)の供給を開始した。開始剤の供給を開始してから10分後、98 ml/hの速度でモノマー(酢酸ビニル362.99 g)を供給した。開始剤の供給は、310分間延長した。モノマーの供給は、60分早く終了した。開始剤の供給中止後、70℃で60分間、重合を継続した。続いて、回転式蒸発器において得られたポリマー溶液を加熱し、乾燥状態まで濃縮した。室温まで冷却すると、透明な樹脂が得られた。
分析結果:SC:99.6%、粘度(Hoppler、酢酸エチル10%強度溶液)=2.6 mPas、SEC Mw=41000、Mn=15300、多分散度=2.7、ガラス転移温度(Tg):Tg=35.5℃、K値(アセトン1%強度溶液)=19.6
【0054】
発明の実施例3(調整剤およびシリコーンマクロマーあり):アンカー攪拌機、反射コンデンサー、および計量手段を有する1 lガラス反応器を攪拌して、酢酸エチル211.02 g、PPV(t‐ブチルパーピバレート、脂肪族化合物中75%強度溶液)0.48 g、調整剤(a,ω‐ジアルデヒド‐PDMS)2.79 g、VIPO 200 2.79 g、および酢酸ビニル22.31 gを投入した。次いで、攪拌速度150 rpmで初回投入材料を70℃まで加熱した。内部の温度が70℃に到達すると、8.5 ml/hの速度で開始剤(酢酸エチル37.65 gおよびPPV 1.86 g)の供給を開始した。開始剤の供給を開始してから10分後、59 ml/hの速度でモノマー(a,ω‐ジアルデヒド‐PDMS調整剤22.31 g、VSPO 200 22.31 g、および酢酸ビニル178.47 g)を供給した。開始剤の供給は、310分間延長した。モノマーの供給は、60分早く終了した。開始剤の供給中止後、70℃で60分間、重合を継続した。続いて、回転式蒸発器において得られたポリマー溶液を加熱し、乾燥状態まで濃縮した。室温まで冷却すると、やや混濁した樹脂が得られた。
分析結果:SC:99.4%、粘度(Hopper、酢酸エチル中10%強度溶液)=4.5 mPas、SEC Mw=112000、Mn=22200、多分散度=5.0、ガラス転移温度(Tg):Tg=30.2℃、K値(アセトン中1%強度溶液)=25.8、H NMR分光法に基づく有機シリコーンコポリマーの組成:PVAcが重量で78.34%、シリコーンが重量で21.66%
【0055】
発明の実施例4(調整剤あり、シリコーンマクロマーなし):アンカー攪拌機、反射コンデンサー、および計量手段を有する1 lガラス反応器を攪拌して、酢酸エチル211.35 g、PPV(t‐ブチルパーピバレート、脂肪族化合物中75%強度溶液)0.48 g、調整剤(a,ω‐ジアルデヒド‐PDMS)5.58 g、および酢酸ビニル22.35 gを投入した。次いで、攪拌速度150 rpmで初回投入材料を70℃まで加熱した。内部の温度が70℃に到達すると、8.5 ml/hの速度で開始剤(酢酸エチル37.71 gおよびPPV 1.87 g)の供給を開始した。開始剤の供給を開始してから10分後、59 ml/hの速度でモノマー(a,ω‐ジアルデヒド‐PDMS調整剤44.69 gおよび酢酸ビニル178.75 g)を供給した。開始剤の供給は、310分間延長した。モノマーのフィードは、60分早く終了した。開始剤の供給中止後、70℃で60分間、重合を継続した。続いて、回転式蒸発器において得られたポリマー溶液を加熱し、乾燥状態まで濃縮した。室温まで冷却すると、ほぼ透明な樹脂が得られた。
分析結果:SC:99.3%、粘度(Hoppler、酢酸エチル中10%強度溶液)=2.1 mPas、SEC Mw=32500、Mn=12000、多分散度=2.7、ガラス転移温度(Tg):Tg=29.4℃、K値(アセトン中1%強度溶液)=17.1、H NMR分光法に基づく有機シリコーンコポリマー組成:PVAcが重量で79.00%、シリコーンが重量で21.00%
【0056】
分析結果の評価:比較例2では、酢酸エチル中で酢酸ビニルを重合し、酢酸ポリビニルを形成して粘度2.6 mPas(EtAc中10%)の樹脂を得た。比較例2ではシリコーン成分が使用されていないため、空試験値とみなすことができる。比較例2(空試験値)に対し比較例1では、酢酸ビニル(VAC)(重量で80%)と、重合可能な2つの不飽和基(重量で20%)を有するシリコーンマクロマーとを使用した。重合プロセスは変更しなかった。重合により、架橋され、膨潤かつ混濁した使用不可能な生成物が得られた。供給は未完了であった。得られた有機シリコーンコポリマーは、粘度56.9 mPas(EtAc中10%)で、比較例2の空試験値の約22倍であった。
発明の実施例3では、多価不飽和シリコーンマクロマー重合時にアルデヒド基含有シリコーンを付加することによって架橋を回避できることが示された。重量で10%を占めるアルデヒド基含有シリコーンと重量で10%を占める不飽和シリコーンマクロマーと、重量で80%を占めるVAcとの混合物により、得られた有機シリコーンコポリマーは架橋せず、透明性が顕著に高くなった。粘度(EtAc中10%)はわずか4.5 mPasであり、比較例2の空試験値の1.7倍でしかない。比較例1と比較して、発明の実施例3の粘度(EtAc中10%)は、係数12.6で減少した。
アルデヒド基含有シリコーンの調整作用が優れているため、有機コポリマー調製のための重合の調整剤としての使用に特に適していることが、発明の実施例4により強調されている。この場合、重量で20%を占めるアルデヒド基含有シリコーンは、重量で80%を占めるVAcと重合された。この重合により、粘度(EtAc中10%)がわずか2.1 mPasの、ほぼ透明な樹脂が得られた。比較例2の空試験値と比較すると、発明の実施例4の粘度は、実のところ、低いくらいであった。ほぼ透明な樹脂(比較例1に対し)が得られたため、アルデヒド基含有シリコーンの使用により、有機ポリマー成分とシリコーン成分との間の適合性が改善されることも明らかである。相分離が顕著に抑制されている、あるいは実質的には回避されてもいるが、これはフリーラジカル重合反応においてアルデヒド基含有シリコーンを使用することのさらなる利点と言える。
H NMRの検討により、フリーラジカル重合反応におけるアルデヒド基含有シリコーンの調整作用が優れていることも証明された。例えば、発明の実施例3および発明の実施例4における反応の場合、重合後、分子中にもともと存在していたアルデヒド基の水素原子が移動反応に関与したため、このアルデヒド基の平均80%以上が失われたことは明白であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅を含まないフリーラジカル開始剤および1つ以上の重合調整剤存在下で、1つ以上のエチレン不飽和有機モノマーのフリーラジカル重合によりシリコーン含有ポリマーを調製するプロセスであって、使用される重合調整剤が少なくとも1つのアルデヒド基を含むシリコーンであることを特徴とするプロセス。
【請求項2】
使用される重合調整剤が、少なくとも1つのアルデヒド末端基および/またはアルデヒド内基を含むシロキサンの反復単位数が少なくとも2である直鎖状、分枝状、環状、または三次元架橋構造のポリシロキサンであることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
式HCO(CH‐SiRO‐[SiRO‐]‐SiR‐(CH‐CHO(I)および/またはRSi‐O‐[SiRO‐]‐[Si(HCO(CH)RO]‐SiR(II)のシリコーンが使用され、各Rは任意選択的に置換されている同一または異なる一価のアルキル基またはアルコキシ基であり、それぞれ1〜18の炭素原子を有し、x≧1、y≧0、およびz≧1であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
基Rがそれぞれ1〜6の炭素原子を有する一価のアルキル基または一価のアルコキシ基であることを特徴とする、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
x=1〜10000、y=0〜1000、およびz=1〜1000であることを特徴する、請求項3または請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
エチレン不飽和有機モノマーが、1〜18の炭素原子を有する非分枝状または分枝状のアルキルカルボン酸のビニルエステル、1〜18の炭素原子を有する分枝状または非分枝状のアルコールまたはジオールのアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル、エチレン不飽和モノカルボン酸およびジカルボン酸とその塩類、またそのアミド、およびN‐メチロールアミド、ニトリル、エチレン不飽和スルホン酸とその塩類、エチレン不飽和複素環式化合物、アルキルビニルエーテル、ビニルケトン、ジエン、オレフィン、ビニル芳香族、およびビニルハロゲン化物からなる前記群由来の1つ以上のモノマーであることを特徴とする、請求項1〜請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
エチレン不飽和有機モノマーが、酢酸ビニルおよび酢酸ビニルとシリコーンマクロマーとの混合物、
酢酸ビニル、9〜11の炭素原子を有するα分枝状のモノカルボン酸のビニルエステルおよび/またはエチレンの混合物、望ましくはさらにシリコーンマクロマーとの混合物、
アクリル酸‐n‐ブチルと、アクリル酸-2-エチルヘキシルおよび/またはメタクリル酸メチルとの混合物、望まれる場合はさらにシリコーンマクロマーとの混合物、
スチレンと、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸‐n‐ブチル、およびアクリル酸-2-エチルヘキシルの前記群由来の1つ以上のモノマーとの混合物、望まれる場合はさらにシリコーンマクロマーとの混合物、
酢酸ビニルと、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸‐n‐ブチル、およびアクリル酸-2-エチルヘキシルの前記群由来の1つ以上のモノマーとの混合物、望まれる場合はさらにエチレンとの混合物、望まれる場合はさらにシリコーンマクロマーとの混合物であることを特徴とする、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記エチレン不飽和有機モノマーの前記重合が、シロキサンの反復単位数が少なくとも5であり、フリーラジカルにより重合可能な少なくとも1つの官能基を含む、直鎖状、分枝状、環状、および三次元架橋構造のシリコーンからなる前記群由来のシリコーンマクロマー存在下起こることを特徴とする、請求項1〜請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
使用されるシリコーンマクロマーが、R3‐aSiO(SiRO)SiR3‐aを有するシリコーンであり、Rがそれぞれ1〜18の炭素原子を有する、任意選択的に置換されている同一または異なる一価のアルキル基またはアルコキシ基であり、Rが重合可能な官能基であり、aが0または1、n=5〜10000であることを特徴とする、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
結果として生じる、ビニルエステルユニットを含むシリコーン含有ポリマーが加水分解されることを特徴とする、請求項1〜請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
結果として生じる、前記加水分解生成物がアセタール化されることを特徴とする、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
重合後に水中で得られる前記シリコーン含有ポリマーが噴霧乾燥され、再分散可能なポリマー粉が形成されることを特徴とする、請求項1〜請求項9に記載のプロセス。
【請求項13】
剥離剤およびコーティング材料における、請求項1〜請求項12に記載の前記プロセスの生成物の使用。
【請求項14】
織物、紙、プラスチック、木材、および金属のコーティングに関する、請求項1〜請求項12に記載の前記プロセスの生成物の使用。
【請求項15】
建築保存、特に耐風化性のコーティングまたはシーリング剤を生産するための、請求項1〜請求項12に記載の前記プロセスの生成物の使用。
【請求項16】
改質剤および疎水化剤としての、請求項1〜請求項12に記載の前記プロセスの生成物の使用
【請求項17】
化粧品の添加物としての、請求項1〜請求項12に記載の前記プロセスの生成物の使用。
【請求項18】
塗料中、印刷インキ中、および架橋性シーリング剤中の結合剤としての、請求項1〜請求項12に記載の前記プロセスの生成物の使用。
【請求項19】
建築用化学生成物における水性分散液または再分散可能な分散粉体として、適宜、油圧的に凝結させる結合剤と併用される、請求項1〜12に記載の前記プロセスの使用。
【請求項20】
建築用接着剤、タイル接着剤、外部断熱および塗装システム用の接着剤、レンダー、こて塗用配合物、モルタルと塗料の接着における請求項19に記載の使用。

【公表番号】特表2008−540783(P2008−540783A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511596(P2008−511596)
【出願日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際出願番号】PCT/EP2006/004452
【国際公開番号】WO2006/122707
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(507303435)ウァッカー ケミー アーゲー (17)
【Fターム(参考)】