説明

シリコーン系繊維、それよりなる不織布、及びそれらの製造方法

【課題】合成樹脂の各種改質剤および複合材料の強化材料として有用なシリコーン系繊維を提供する。
【解決手段】構成元素の組成が式(1):
SiCaHbOc (1)
(式中、aは0.5≦a≦7.0を満たす数であり、bは0.5≦b≦8.0を満たす数であり、cは1.0≦c≦3.0を満たす数である。)
で表わされる非溶融性固体状シリコーンからなる繊維。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン系繊維、それよりなる不織布、それらの製造方法、ならびにそれらの利用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子は、各種材料の改質剤、例えば、合成樹脂用の滑り性付与剤、耐摩耗性付与剤、および光拡散性付与剤、プラスチックフィルム用のブロッキング防止性付与剤、ゴム用の滑り性付与剤、コーティング剤用の表面滑り性付与剤、化粧品およびワックス用の伸展性付与剤、表面滑り性付与剤、および撥水性付与剤、洗浄剤用の研磨性付与剤等として使用されている(特許文献1)。しかし、このような改質剤として使用されるシリコーン樹脂繊維は知られていない。
【0003】
また、従来、複合材料の強化材料としては主にガラス繊維および炭素繊維がある。特に炭素繊維を用いた炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は、鋼やガラス繊維強化プラスチック(GFRP)と比べて強度及び弾性率で優れており、優れた機械的な特性を有している。しかしながら、これら無機繊維は被強化材料との濡れ性が悪く、この改善としてシランカップリング剤を使用することが多い(特許文献2,3)。
【0004】
従来、プリント配線基板等の電気絶縁積層板用の基材、タイルカーペットを含む建築材料用の基材、固体電解コンデンサ用のセパレータ用などにガラスペーパーが用いられている。
【0005】
しかしながら、ガラスの性質上、外部圧力により、ガラスペーパーを構成するガラス繊維にクラックが生じやすいため、ガラスペーパーは、例えば、円筒状などの所望の形状に成形しにくい。ガラスペーパーの機械強度を向上させるためにはガラスペーパーを構成するガラス繊維を一本一本のモノフィラメントに開繊することが求められる。しかし、ガラス繊維は、白水との相溶性が悪いため、白水中におけるモノフィラメントへの開繊速度が遅い。また、ガラスは融点が高く、ガラス繊維の細径化は困難なため、ガラスペーパーを薄膜化するのは困難である。これらのことから、ガラスペーパーは、小型化、多機能化を要求される電子機器に組み込んで使用するプリント配線基板の用途には不適である。
【0006】
これらの問題を解決するため、シランカップリング剤が用いられており(特許文献4)、また、軟化点が900℃以下のガラス短繊維が用いられている(特許文献5)。しかしながら、これらの材料は短繊維であるため強度が低く、耐溶剤性、耐熱性が十分ではない。
【0007】
【特許文献1】特開2002−241513号公報
【特許文献2】特開平5−170953号公報
【特許文献3】特開平4−114019号公報
【特許文献4】特開平9−235332号公報
【特許文献5】特開2005−109012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、各種材料の改質剤、化粧品およびワックス用の伸展性付与剤、表面滑り性付与剤、および撥水性付与剤、洗浄剤用の研磨性付与剤等として、ならびに耐熱性、濡れ性、強度および弾性率に優れた、複合材料の強化材料として好適な新規なシリコーン系繊維およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、耐クラック性、耐溶剤性、耐熱性に優れ、プリント配線基板用の基材、タイルカーペットを含む建築材料、固体電解コンデンサ用のセパレータ、燃料電池用のセパレータ等に好適に用いられるシリコーン不織布およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的が以下の発明により達成されることを見出した。
【0011】
即ち、本発明は、第一に、上記課題を解決する手段として、
構成元素の組成が式(1):
SiCaHbOc (1)
(式中、aは0.5≦a≦7.0を満たす数であり、bは0.5≦b≦8.0を満たす数であり、cは1.0≦c≦3.0を満たす数である。)
で表わされる非溶融性固体状シリコーンからなる繊維(以下、「非溶融性固体状シリコーン繊維」という。)を提供する。
【0012】
該非溶融性固体状シリコーン繊維の好ましい実施形態として、構成元素の組成が前記式(1)で表わされる非溶融性シリコーン樹脂繊維(「シリコーン繊維(1)」ともいう)を提供する。
【0013】
また、上記非溶融性固体状シリコーン繊維の別の好ましい実施形態として、硬化性シリコーン組成物の硬化物であって構成元素の組成が前記式(1)で表わされるものからなる硬化シリコーン繊維(「シリコーン繊維(2)」ともいう)を提供する。
【0014】
本発明は、第二に、上記非溶融性固体状シリコーン繊維の一製造方法として、
溶融性シリコーン樹脂を溶融紡糸して溶融性シリコーン樹脂繊維を得、
該溶融性シリコーン樹脂繊維を不融化処理する
ことを含む上記非溶融性シリコーン樹脂繊維(シリコーン繊維(1))の製造方法を提供する。
【0015】
本発明は、次に、上記非溶融性固体状シリコーン繊維の別の製造方法として、
室温にて液状の硬化性シリコーン組成物を孔から連続的に吐出させて糸引きし、
糸引き中に該硬化性シリコーン組成物を硬化させる
ことを含む上記硬化シリコーン繊維(シリコーン繊維(2))の製造方法を提供する。
【0016】
また、本発明者らは、上記の非溶融性固体状シリコーン繊維からなる不織布で上記目的が達成されることを見出した。
【0017】
即ち、本発明は、さらに、上記の非溶融性固体状シリコーン繊維からなるシリコーン不織布を提供する。
本明細書で「不織布」には、ボンデッドファブリック、フェルトなどいずれの公知の不織布も含まれる。
【0018】
該不織布の好ましい実施形態として、前記シリコーン樹脂繊維(シリコーン繊維(1))からなるシリコーン不織布(「シリコーン不織布(1)」ともいう)を提供する。
【0019】
該不織布の好ましい別の実施形態として、上記硬化シリコーン繊維(シリコーン繊維(2))からなるシリコーン不織布(「シリコーン不織布(2)」という)を提供する。
【0020】
本発明は、さらに、本発明のシリコーン不織布としてシリコーン不織布(1)を製造する方法であって、
溶融性シリコーン樹脂を溶融紡糸してシリコーン樹脂繊維を形成し、該シリコーン樹脂繊維を受器上に吸引捕集することにより不織布を形成させ、次いで、該不織布を不融化処理することを特徴とする製造方法(乾式法)を提供する。
【0021】
本発明は、さらに、本発明のシリコーン不織布としてシリコーン不織布(1)を製造する別の方法であって、
溶融性シリコーン樹脂を溶融紡糸してシリコーン樹脂繊維を得、該シリコーン樹脂繊維を不融化し、得られた非溶融性シリコーン樹脂繊維をバインダーを含む水性媒体中に分散させてスラリーを調製し、該スラリーから不織布を抄造することを有する製造方法(湿式法)を提供する。
【0022】
本発明は、さらに、本発明のシリコーン不織布としてシリコーン不織布(2)を製造する方法であって、
室温にて液状の硬化性シリコーン組成物を孔から連続的に吐出させて糸引きし、
糸引き中に該硬化性シリコーン組成物を硬化させて硬化シリコーン繊維を得、
該シリコーン繊維を受器に吸引捕集する
ことを含む上記シリコーン不織布の製造方法(乾式法)を提供する。
【0023】
本発明は、さらに、本発明のシリコーン不織布としてシリコーン不織布(2)を製造する別の方法であって、
室温にて液状の硬化性シリコーン組成物を孔から連続的に吐出させて糸引きし、
糸引き中に該硬化性シリコーン組成物を硬化させて硬化シリコーン繊維を得、
該シリコーン繊維をバインダーを含む水性媒体に分散させてスラリーを得、
該スラリーからシリコーン不織布を抄造する
ことを含む上記シリコーン不織布の製造方法(湿式法)を提供する。
【0024】
本発明は、さらに、上述した非溶融性固体状シリコーン繊維の用途に関し、金属材料および高分子材料の一方または両方と、強化材料として上記の非溶融性固体状シリコーン繊維とを含んでなる複合材料を提供する。
【0025】
本発明は、さらに、本発明のシリコーン不織布の用途に関し、上記のシリコーン不織布を含む、プリント配線基板用の基材、タイルカーペットその他の建築材料、固体電解コンデンサ用のセパレータ、及び燃料電池用のセパレータを提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明の非溶融性固体状シリコーン繊維は、各種材料の改質剤、例えば、合成樹脂用の滑り性付与剤、耐摩耗性付与剤、および光拡散性付与剤、プラスチックフィルム用のブロッキング防止性付与剤、ゴム用の滑り性付与剤、コーティング剤用の表面滑り性付与剤、化粧品およびワックス用の伸展性付与剤、表面滑り性付与剤、および撥水性付与剤、洗浄剤用の研磨性付与剤等として、ならびに耐熱性、濡れ性、強度および弾性率に優れた、複合材料の強化材料として好適に用いることができる。また、本発明の製造方法により、このような非溶融性固体状シリコーン繊維を得ることができる。更に、本発明の固体状シリコーン繊維はケイ素含有無機繊維を製造するための中間材料としても有用である。即ち、該非溶融性固体状シリコーン繊維を非酸化性雰囲気下で加熱することにより、ケイ素含有無機繊維を得ることができるが、該無機繊維も金属や高分子材料の強化材料などとして有用である。
【0027】
本発明のシリコーン不織布は、耐クラック性、耐溶剤性、耐熱性に優れるので、上記のように、プリント配線基板用の基材、タイルカーペットその他の建築材料、固体電解コンデンサ用のセパレータ、燃料電池用のセパレータ等に好適に用いることができる。また、本発明の製造方法により、このようなシリコーン不織布を得ることができる。更に、本発明のシリコーン不織布は非酸化性雰囲気で加熱焼成することにより、炭素繊維系不織布に代わり得る有用な非晶質無機セラミック化した不織布を製造する中間原料としても有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
【0029】
本明細書において、「固体状シリコーン」とは、室温において固体であるシリコーンを意味する。シリコーンはオルガノポリシロキサンベースの高分子物質であり、場合により充填剤その他の成分を含む組成物の状態でもよい。室温とは特記しない限り15〜35℃の範囲の温度を意味する。
【0030】
「シリコーン樹脂」とは、分岐状シロキサン単位(即ち、T単位と称される三官能性シロキサン単位及び/又はQ単位と称される四官能性シロキサン単位)を必須のシロキサン単位として含んでなり、三次元構造を有するオルガノポリシロキサンを意味する。該シリコーン樹脂は、場合によっては、D単位と称される直鎖状シロキサン単位及び/又はM単位と称され、分子鎖末端に位置する一官能性シロキサン単位を含んでいてもよい。
【0031】
また、本明細書において高分子物質が「非溶融性」であるとは軟化点を有しないことを意味し、したがって、非溶融性の高分子物質は温度を高めていくと溶融しないで熱分解を起こす。よって、「非溶融性固体状シリコーン」とは軟化点を有しない固体状シリコーンを意味し、「非溶融性シリコーン樹脂」とは、軟化点を有しないシリコーン樹脂を意味する。非溶融性固体状シリコーンの熱分解温度は約400℃を超える温度である。
【0032】
なお、本明細書において「軟化点」は、JIS K 2207に規定の軟化点試験方法(環球法)に準拠して測定された温度を意味する。
【0033】
[非溶融性固体状シリコーン繊維およびそれよりなる不織布]
・非溶融性固体状シリコーン繊維
本発明の非溶融性固体状シリコーン繊維は、前記式(1)で表わされる構成元素組成を有する。高度に三次元架橋した構造を有するために高温においても溶融しない。
【0034】
本発明の非溶融性固体状シリコーン繊維は、例えば、0.1〜50μm、好ましくは5〜30μmの直径を有する。
【0035】
・シリコーン不織布
本発明のシリコーン不織布は、上記非溶融性固体状シリコーン繊維からなるものである。
【0036】
次に、本発明の非溶融性固体状シリコーン繊維の好ましい実施形態であるシリコーン繊維(1)および(2)、並びに、それらよりなるシリコーン不織布(1)および(2)について説明する。
【0037】
−−シリコーン繊維(1)およびそれよりなる不織布(1)−−
・非溶融性シリコーン樹脂繊維(シリコーン繊維(1))
該非溶融性シリコーン樹脂繊維は、式(1):
SiCaHbOc (1)
(式中、aは0.5≦a≦7.0を満たす数であり、bは0.5≦b≦8.0を満たす数であり、cは1.0≦c≦3.0を満たす数である。)
で表わされる構成元素組成を有する。高度に三次元架橋した構造を有するために高温においても溶融しない。
【0038】
上記元素組成式(1)は、前記非溶融性シリコーン樹脂繊維中のケイ素、炭素、水素および酸素の平均元素比が1:a:b:cであることを表わす。aが0.5よりも小さいと、繊維の強度の点で不利である。一方、aが7.0よりも大きいと、耐熱性の点で不利である。また、bが0.5未満であると該繊維の弾性率の点で不利であり、8.0より大きいと該繊維の耐熱性の点で好ましくない。cが1.0よりも小さいと、経済性の点で不利である。一方、cが3.0よりも大きいと、繊維の強度の点で不利である。
【0039】
・シリコーン繊維(1)の製造方法
該非溶融性シリコーン樹脂繊維(シリコーン繊維(1))は、例えば、
溶融性シリコーン樹脂を溶融紡糸して溶融性シリコーン樹脂繊維を得、
該溶融性シリコーン樹脂繊維を不融化処理する
ことにより製造することができる。
【0040】
・・溶融性シリコーン樹脂
該製造方法では原料として溶融性シリコーン樹脂が使用される。ここで、「溶融性シリコーン樹脂」とは、室温において固体であるが、軟化点を有するシリコーン樹脂を意味する。このシリコーン樹脂は温度を高めていくと軟化点において溶融ないしは軟化する。
【0041】
本発明の製造方法に使用される溶融性シリコーン樹脂は溶融紡糸の温度に適した軟化点を有することが望ましい。具体的には、後述するように、溶融紡糸は通常50〜200℃の温度において行われるが、その場合には溶融性シリコーン樹脂の軟化点は40〜150℃、特に40〜100℃の範囲にあることが好ましい。溶融紡糸の温度に対して軟化点が高すぎると溶融紡糸の際のシリコーン樹脂の流動性が低くて好ましくない。
【0042】
該溶融性シリコーン樹脂としては、例えば、下記平均組成式(2):
R1mR2n(OR3)p(OH)qSiO(4-m-n-p-q)/2 (2)
(式中、R1は独立に水素原子、アリール基以外の同一または異種のカルボニル基を含んでいてもよい1価炭化水素基を示し、R2はフェニル基を示し、R3は同一または異種の炭素原子数1〜4の1価炭化水素基を示し、mは0.1≦m≦2を満たす数であり、nは0≦n≦2を満たす数であり、pは0≦p≦1.5を満たす数であり、qは0≦q≦0.35を満たす数であり、ただし、p+q>0およびm+n+p+qは0.1≦m+n+p+q≦2.6を満たす数である。)
で表されるシリコーン樹脂が挙げられる。但し、不融化処理により得られる非溶融性シリコーン樹脂繊維が前記式(1)で表される構成元素組成を有する必要がある。構成元素組成は不融化処理の前後において実質的に変化しないので当業者はこの条件を満たす溶融性シリコーン樹脂を容易に選択することができる。
【0043】
上記R1は、好ましくは、独立に水素原子、アリール基以外の同一または異種のカルボニル基を含んでいてもよい炭素原子数1から8の1価炭化水素基である。R1の具体例としては、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基;アクリロイル基、メタクリロイル基等のアシル基が挙げられる。原料の入手の容易さの観点から、R1として特に水素原子、メチル基、エチル基、ビニル基を好適に用いることができる。
【0044】
上記mは0.1≦m≦2を満たす数であり、mの上限は、好ましくは1.5以下であり、mの下限は、好ましくは0.1以上、特に好ましくは0.5以上である。mの値がこの範囲内にあると、溶融性シリコーン樹脂の流動性が低くなりやすいので、溶融紡糸時の作業性が向上しやすい。
【0045】
上記Rはフェニル基であり、溶融性シリコーン樹脂の融点を上げ、溶融紡糸時の作業性向上に役立つ。
【0046】
上記nは0≦n≦2を満たす数であり、nの上限は、好ましくは1.5以下であり、nの下限は、好ましくは0.05以上、特に好ましくは0.1以上である。
【0047】
上記R3の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基等の炭素原子数1〜4のアルキル基が挙げられ、特にメチル基が工業的にも好ましく用いられる。
【0048】
上記pはORで表されるヒドロカルビルオキシ基の含有量を示し、0≦p≦1.5を満たす数であり、pの上限は、好ましくは1.2以下であり、pの下限は、好ましくは0.05以上、特に好ましくは0.1以上である。
【0049】
上記qは水酸基の含有量を示し、0≦q≦0.35を満たす数であり、好ましくは0≦q≦0.3を満たす数であり、特に好ましくは0である。qは、製造上、溶融性シリコーン樹脂にわずかに残存する水酸基の含有量を表わす。qの値がこの範囲内にあると、水酸基の反応性は溶融性シリコーン樹脂全体として低く抑えやすく、溶融性シリコーン樹脂の保存安定性ならびに溶融紡糸時の安定性および作業性が向上しやすい。
【0050】
p+qはヒドロカルビルオキシ基と水酸基の合計量を示し、p+q>0である。ヒドロカルビルオキシ基(好ましくはアルコキシ基)および/または水酸基は後述する不融化処理において加水分解縮合反応により架橋を形成する上で必要である。これらの基は合計で、溶融性シリコーン樹脂中に1〜15質量%存在することが好ましく、より好ましくは2〜10質量%である。
【0051】
m+n+p+qは、0.1≦m+n+p+q≦2.6を満たす数である。
【0052】
溶融性シリコーン樹脂の分子量は、上述した適度の軟化点を有する程度であることが好ましい。例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」とする。)により測定した重量平均分子量が、ポリスチレン換算で好ましくは600以上、より好ましくは1,000〜10,000の範囲内である。
【0053】
本発明で用いる溶融性シリコーン樹脂は、後述の方法により50μm以下の直径、望ましくは30μm以下の直径を有する繊維に容易に引き伸ばすことができる。
【0054】
溶融性シリコーン樹脂としては、上記条件を満たすシリコーン樹脂であれば、特に限定されないが、分子中にメチル基を有することが好ましい。溶融性シリコーン樹脂は、一種単独で用いても、分子構造や含まれるシロキサン単位の割合の異なる二種以上を併用してもよい。
【0055】
このような溶融性シリコーン樹脂は、従来公知の方法によって製造することができる。例えば、目的とする溶融性シリコーン樹脂の構造中に含まれるシロキサン単位の割合に応じて、相当するオルガノクロロシラン類を、場合により炭素原子数1〜4のアルコールの存在下に共加水分解し、副生する塩酸および低沸点成分を除去することによって目的物を得ることができる。またアルコキシシラン類、シリコーンオイルや環状シロキサンを出発原料とする場合には、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸等の酸触媒を使用し、場合によって加水分解のための水を添加して、重合反応を進行させた後、使用した酸触媒や低沸点成分を同様に除去することによって目的とするシリコーン樹脂を得ることができる。
【0056】
・・溶融紡糸
本発明の製造方法では、第一段階で、上記の溶融性シリコーン樹脂を溶融紡糸して、シリコーン樹脂繊維を製造する。紡糸方法としては、溶融紡糸法が用いられる。
【0057】
溶融紡糸は、従来公知の方法で行うことができるが、例えば、100μm〜1mmのオリフィス直径を有するモノフィラメント紡糸装置を用いて、50〜200℃の温度にて行うことができる。溶融紡糸は、アルゴンガス、窒素ガスなどの不活性ガスの雰囲気下で、好ましくはアルゴンガス雰囲気下で行われる。リールへの巻き取り速度は、例えば、100〜1,000m/分、好ましくは200〜500m/分である。溶融紡糸によって得られるシリコーン樹脂繊維は、例えば、0.1〜50μm、好ましくは0.5〜30μmの直径を有する。
【0058】
溶融紡糸の好ましい方法としてメルトブロー法が挙げられる。この場合も、溶融シリコーン樹脂が吐出される紡糸ノズルの直径は100μm〜1mm程度が好ましい。メルトブロー法では、通常、紡糸ノズルの周囲に溶融物の吐出方向と同一方向に加熱ガスを噴出させるノズルが複数設けられ、紡糸ノズルから吐出された溶融状態のシリコーン樹脂を一定距離保温ないし加熱するようになっている。この加熱ガスの噴出速度は30〜300m/s程度であり、速度が速いほど細かい繊維が得られる。メルトブロー法は、繊維径の小さい繊維を製造する上で優れ、有列である。
【0059】
・・不融化処理
本発明の製造方法では、上記の溶融紡糸により得られたシリコーン樹脂繊維の不融化処理が行なわれる。該シリコーン樹脂繊維は溶融性であるので高温に付されて溶融、軟化するが、不融化処理により非溶融性に転換される。不融化処理は、例えば、該シリコーン樹脂繊維を無機酸で処理することにより行うことができる。無機酸で処理することにより溶融性シリコーン樹脂繊維中に残存するヒドロカルビルオキシ基およびシラノール基が脱水縮合する結果架橋反応が進行し、三次元網状構造が高密度化する。その結果シリコーン樹脂は非溶融性になると考えられる。不融化により得られる非溶融性繊維は高温に付しても溶融しないので、繊維同士の融着は起らない。
【0060】
上記の不融化処理に使用される無機酸としては、例えば、塩化水素ガス等のガス状のもの、および、塩酸、硫酸等の液状のものが挙げられる。無機酸の種類および濃度は、溶融紡糸繊維の原料として用いたシリコーン樹脂に含まれるフェニル基の量に応じて、適宜選択できる。シリコーン樹脂に含まれるフェニル基の量が少ない場合、例えば、シリコーン樹脂中のケイ素原子に結合した有機基および水酸基の合計に対するフェニル基の割合(以下、「フェニル基含有率」とする。)が0〜5モル%である場合は、好ましくは50質量%以下の濃度の塩酸、より好ましくは30質量%以下の濃度の塩酸、更により好ましくは10〜25質量%の濃度の塩酸を用いることができる。これにより、不融化時に、シロキサンの平衡化反応が生じにくくなるので、繊維の形状を保持しやすい。一方、シリコーン樹脂に含まれるフェニル基の量が多い場合、例えば、フェニル基含有率が5モル%を超え、25モル%以下である場合は、好ましくは塩化水素ガス、濃硫酸等を用いることができる。これにより、フェニル基の量が多いために立体障害が大きい場合でも、不融化反応の進行が速くなりやすい。
【0061】
無機酸での処理は、無機酸としてガス状のものを用いる場合は、例えば、無機酸の含まれる雰囲気に溶融紡糸繊維を接触させることによって行うことができ、無機酸として液状のものを用いる場合は、例えば、無機酸中に溶融紡糸繊維を浸漬することによって行うことができる。処理の温度は、例えば、5〜50℃、好ましくは10〜30℃であり、不融化の時間は、例えば、10〜50時間でよい。
【0062】
以上説明した非溶融性シリコーン樹脂繊維(シリコーン繊維(1))はシリコーン不織布(1)を構成するものである。該不織布は例えば以下の方法により製造することができる。
【0063】
・シリコーン不織布(1)の乾式製造方法:
乾式製造方法によれば、該シリコーン不織布(1)は、
溶融性シリコーン樹脂を溶融紡糸して溶融性シリコーン樹脂繊維を形成し、該溶融性シリコーン樹脂繊維を落下させて受器上に吸引捕集することにより不織布を形成させ、次いで、該不織布を不融化処理することにより得られる。
この方法によれば、フェルト状の不織布が得られる。
【0064】
(1)溶融性シリコーン樹脂の溶融紡糸:
溶融性シリコーン樹脂の溶融紡糸は上述した通りである。
【0065】
(2)不織布の形成:
上記のように溶融紡糸されたシリコーン樹脂繊維を受器上に吸引しつつ捕集することにより該繊維からなる不織布が形成される。紡糸ノズルから糸引きされる方向は特に限定されず、鉛直下方、斜め下方、側方など挙げられ、糸引きされた繊維を受ける受器の配置位置は糸引きの方向に応じて紡糸された繊維を適切に受け止め、捕集できるように配置し構成する。典型的には、紡糸ノズルから鉛直下方に重力により落下させる形で糸引きし、受器は紡糸ノズルの鉛直下方に水平に配置する。いずれの場合でも受器の背後から吸引しながら行うことが好ましい。吸引捕集することにより繊維どうしが効果的に絡まり、高強度の不織布が得られる。吸引速度は2〜10m/s程度の範囲が好ましい。
【0066】
受器の形状、材料等は特に制限されない。受器の形状としては、例えば、板状、皿状、無蓋容器状、袋状、帯状等が挙げられる。受器の材料としては、例えば、金属、プラスチック、ゴム、ガラス等が挙げられる。上記の紡糸ノズルの孔から受器までの高さは、作業環境の温度、湿度等にもより、制限するものではないが、例えば、20〜150cmが挙げられる。上記の方法を実施する際には、受器上に不織布が一定の均一な厚さで形成されるように、受器を一定の方向に連続的に移動させることが望ましい。その際の受器の移動速度は0.01〜5m/s、好ましくは0.05〜2m/sである。このような移動性受器の例としてはベルトコンベアーのベルトが挙げられる。
【0067】
受器表面へのシリコーン樹脂繊維の吸引捕集は、例えば、気流、静電気などにより行うことができるが、好ましくは気流により行われる。吸引捕集を気流により行う場合、受器のとしては通気性の構造、例えばメッシュ構造のものが選択される。この受器のおもて面側から背面側へ向かう気流を形成さ、この気流により吸引捕集を行う。吸引捕集を静電気により行う場合、受器の材料としては帯電性のものが選択され、例えば、金属、プラスチックが挙げられる。
【0068】
図1は、本乾式法によるシリコーン不織布(1)の製造方法の一例を示す概略図である。紡糸ノズル1を通して供給される溶融したシリコーン樹脂2は、ノズル孔3から吐出されて鉛直下方へ落下する。紡糸ノズル1の本数は一本でもよいし、複数本でもよい。紡糸ノズル1が複数本ある場合、その配列の仕方は多様であるが、受器上の一定範囲の領域にシリコーン繊維が均一な量で落下することが望ましい。例えば、ノズル1の先端が水平な直線上に同じ高さで等間隔に配列されてもよいし、水平な平面上に二次元的に配列されていてもよい。二次元的配列は、円を構成してもよいし、更に二重以上の同心円状でもよいし、放射状でもよい。
【0069】
落下中の溶融シリコーン樹脂2はノズル1から出ると外気に触れ冷却され固化し、溶融性シリコーン樹脂繊維4となる。
【0070】
溶融性シリコーン樹脂繊維4は、ベルトコンベヤーのベルト5の表面に到達する。矢印7はベルト5の移動方向を示す。ベルト5は通気性を有する構造であり、例えば、金属、プラスチック、ゴム等でできている。ベルト5の下方からの吸引により、矢印8の方向に、上方からベルト5を通して下方へ向かう気流が形成される。ベルト5の表面に到達したシリコーン樹脂繊維4はベルト5の下方への気流によりベルト5上に吸引捕集される。その際にシリコーン樹脂繊維4が絡み合い、ベルト5の移動方向7に向かってシリコーン不織布6が連続的に形成される。
【0071】
なお、ベルト5の下方からの吸引を行わない場合、シリコーン不織布6は形成されず、代わりに、ベルト5の表面に到達したシリコーン繊維4はベルト5上に綿状に捕集される。このようにして捕集した綿状のシリコーン樹脂は不融化処理の後に後述する湿式法において水性スラリーからの抄造による不織布製造に利用することができる。
【0072】
(3)不融化処理:
上記の工程で得られた溶融性シリコーン樹脂繊維からなる不織布の不融化処理が行なわれ、本発明に係るシリコーン不織布(1)が得られる。不融化の具体的な方法は前述した通りである。
【0073】
・シリコーン不織布(1)の湿式製造方法
本発明の湿式製造方法によれば、該シリコーン不織布(1)は、上述した方法により得られた非溶融性シリコーン樹脂繊維(シリコーン繊維(1))をバインダーを含む水性媒体に分散させてスラリーを調製し、該スラリーから通常の製紙工程と基本的に同様にして抄造することにより製造することができる。
この方法によれば、ボンデッドファブリックとして不織布が得られる。
【0074】
水性媒体としては、通常、水が用いられるが、バインダーを水に溶解または分散させて用いる。用いるバインダーは、有機バインダーでも無機バインダーでもその両方でもよい。有機バインダーとしては、例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。無機バインダーとしては、例えば、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナなどが挙げられる。バインダーの量は、繊維に対して極力少ないほうがよく、具体的には繊維に対して、3質量%以下が好ましく、通常0.05〜3質量%の範囲であり、より好ましくは1質量%以下である。
【0075】
スラリー中の非溶融性シリコーン樹脂繊維の濃度は、通常、0.1〜50質量%であり、好ましくは0.5〜30質量%である。
【0076】
水性スラリー中に分散した非溶融性シリコーン樹脂繊維から該繊維の不織布を抄造する工程は、通常の製紙工程と基本的に同じ手法でよい。
【0077】
該シリコーン不織布(1)の繊維径は、例えば、0.1〜50μm、好ましくは0.5〜30μmの直径を有する。繊維径0.1μm未満では繊維製造は困難であり、繊維径50μm超えると紡糸の過程で繊維の凝集が起こり易く不織布の製造が困難となる。
【0078】
−−シリコーン繊維(2)及びそれよりなる不織布(2)−−
次に硬化性シリコーン組成物から得られる該シリコーン繊維(2)及びシリコーン不織布(2)について説明する。
【0079】
初めに出発材料である硬化性シリコーン組成物について説明する。該硬化性シリコーン組成物は室温において液状であり、室温において好ましくは100〜1,000,000mPa.s、より好ましくは200〜100,000mPa.sの粘度を有する。硬化性シリコーン組成物としては公知のものを使用することができるが、硬化により得られる硬化物が前記式(1)で表される元素組成を有するように選択される。その選択は当業者には容易に行うことができる。硬化性シリコーン組成物の具体例としては付加硬化型、光硬化型、縮合硬化型のシリコーン組成物等が挙げられる。
【0080】
付加硬化型シリコーン組成物としては、例えば、分子鎖末端部分(片末端または両末端)および分子鎖非末端部分のどちらか一方またはその両方にビニル基等のアルケニル基を有する直鎖状オルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを白金族金属系触媒の存在下で反応(ヒドロシリル化付加反応)させることにより硬化するシリコーン組成物を挙げることができる。光硬化型シリコーン組成物としては、例えば、紫外線硬化型シリコーン組成物、電子線硬化型シリコーン組成物が挙げられる。紫外線硬化型シリコーン組成物としては、例えば、波長200〜400nmの紫外線のエネルギーにより硬化するシリコーン組成物が挙げられる。この場合、硬化機構には特に制限はない。その具体例としては、アクリロイル基あるいはメタクリロイル基を有するオルガノポリシロキサンと光重合開始剤とを含有するアクリルシリコーン系シリコーン組成物、メルカプト基含有オルガノポリシロキサンとビニル基等のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと光重合開始剤とを含有するメルカプト−ビニル付加重合系シリコーン組成物、熱硬化性の付加反応型と同じ白金族金属系触媒を用いた付加反応系シリコーン組成物、エポキシ基を有するオルガノポリシロキサンとオニウム塩触媒とを含有するカチオン重合系シリコーン組成物などが挙げられ、いずれも紫外線硬化型シリコーン組成物として使用することができる。電子線硬化型シリコーン組成物としては、ラジカル重合性基を有するオルガノポリシロキサンに電子線を照射することで開始するラジカル重合により硬化するいずれのシリコーン組成物も使用することができる。縮合硬化型シリコーン組成物としては、例えば、両末端シラノール基封鎖オルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンまたはテトラアルコキシシラン、オルガノトリアルコキシシラン等の加水分解性シランおよび/もしくはその部分加水分解縮合物とを有機錫系触媒等の縮合反応触媒の存在下で反応させることにより硬化するシリコーン組成物、あるいは両末端がトリアルコキシシロキシ基、ジアルコキシオルガノシロキシ基、トリアルコキシシロキシエチル基、ジアルコキシオルガノシロキシエチル基等のアルコキシ含有シロキシ基またはアルコキシ含有シロキシアルキル基で封鎖されたオルガノポリシロキサンを有機錫系触媒等の縮合反応触媒の存在下で反応させることにより硬化するシリコーン組成物などを挙げることができる。しかし、該シリコーン不織布(2)を製造するのに用いられるシリコーン繊維(2)を寸法精度よく得る上では、体積収縮の少ない付加硬化型が望ましい。
【0081】
以下、上述の硬化型のシリコーン組成物の代表例について、無機フィラー以外の成分に焦点をあてて詳述するが、いずれの組成物も必要に応じて無機フィラー、その他の周知慣用の添加物を含むことができる。
【0082】
<付加硬化型シリコーン組成物>
付加硬化型シリコーン組成物として、具体的には、例えば、
(a)ケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサン、
(b)ケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン 全硬化性シリコーン組成物中のアルケニル基1モル当たり、本(b)成分中のケイ素原子に結合した水素原子の量が0.1〜5.0モルとなる量、および
(c)白金族金属系触媒 有効量
を含有する付加硬化型シリコーン組成物が挙げられる。
【0083】
・(a)成分
(a)成分のオルガノポリシロキサンは、付加硬化型シリコーン組成物のベースポリマーであり、ケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個含有する。(a)成分としては公知のオルガノポリシロキサンを使用することができる。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定された(a)成分のオルガノポリシロキサンの重量平均分子量はポリスチレン換算で好ましくは3,000〜300,000程度である。更に、(a)成分のオルガノポリシロキサンの25℃における粘度は、100〜1,000,000mPa・sであることが好ましく、200〜100,000mPa・s程度であることが特に好ましい。(a)成分のオルガノポリシロキサンは、基本的には、分子鎖(主鎖)がジオルガノシロキサン単位((R2SiO2/2単位)の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基((R3SiO1/2)で封鎖された、分岐を有しない直鎖状構造、または分子鎖が該ジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる、分岐を有しない環状構造を有するが、RSiO3/2単位やSiO4/2単位を含んだ分岐状構造を部分的に有していてもよい(ここで、Rは同一または異種の非置換もしくは置換の、炭素原子数が好ましくは1〜10、より好ましくは1〜8の一価炭化水素基である。)。
【0084】
(a)成分としては、例えば、下記平均組成式(3):
jSiO(4-j)/2 (3)
(式中、Rは上記のとおりであり、jは好ましくは1.5〜2.8、より好ましくは1.8〜2.5、更により好ましくは1.95〜2.05の範囲の正数ある。)
で示され、一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンが用いられる。
【0085】
上記Rで示される一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基;これらの炭化水素基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換した基、例えば、クロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。
【0086】
この場合、Rのうち少なくとも2個はアルケニル基(特に、炭素原子数が好ましくは2〜8、より好ましくは2〜6のアルケニル基)である。なお、アルケニル基の含有量は、ケイ素原子に結合する全有機基中(即ち、前記平均組成式(3)においてRで示される非置換または置換の全一価炭化水素基中)、好ましくは0.01〜20モル%、特に好ましくは0.1〜10モル%である。(a)成分のオルガノポリシロキサンが直鎖状構造を有する場合、このアルケニル基は、分子鎖末端および分子鎖末端でない部分のどちらか一方でのみケイ素原子に結合していても、その両方でケイ素原子に結合していてもよいが、組成物の硬化速度、硬化物の物性等の点から、少なくとも一個のアルケニル基が分子鎖末端のケイ素原子に結合していることが好ましい。
【0087】
上記Rは、基本的には上記のいずれであってもよいが、アルケニル基はビニル基であることが好ましく、アルケニル基以外の一価炭化水素基はメチル基またはフェニル基であることが好ましい。
【0088】
(a)成分の具体例としては、下記一般式で示される化合物が挙げられる。
【0089】
【化1】

【0090】
なお、上記一般式中のRは、アルケニル基を表さないこと以外は、Rと同様である。gおよびhはg≧1、h≧0を満たす整数であり、g+hはこのオルガノポリシロキサンの分子量および粘度が上記の値となる数である。
【0091】
・(b)成分
(b)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、ケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を少なくとも2個(通常、2〜200個)、好ましくは3個以上(通常、3〜100個)含有する。(b)成分は、(a)成分と反応し、架橋剤として作用する。(b)成分の分子構造は特に制限されず、例えば、線状、環状、分岐状、三次元網状(樹脂状)等の、従来製造されているいずれのオルガノハイドロジェンポリシロキサンも(b)成分として使用することができる。(b)成分が線状構造を有する場合、SiH基は、分子鎖末端および分子鎖末端でない部分のどちらか一方でのみケイ素原子に結合していても、その両方でケイ素原子に結合していてもよい。また、1分子中のケイ素原子の数(または重合度)が、通常、2〜300個、好ましくは4〜150個程度であり、25℃において液状であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが(b)成分として好ましく使用できる。
【0092】
(b)成分としては、例えば、下記平均組成式(4):
SiO(4-d-e)/2 (4)
(式中、Rは同一または異種の非置換もしくは置換の、炭素原子数が1〜10の一価炭化水素基であり、dおよびeは、好ましくは0.7≦d≦2.1、0.001≦e≦1.0、かつ0.8≦d+e≦3.0、より好ましくは1.0≦d≦2.0、0.01≦e≦1.0、かつ1.5≦d+e≦2.5を満足する正数である。)
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが用いられる。上記Rとしては、例えば、上記平均組成式(3)中のRと同様の基(ただし、アルケニル基を除く。)が挙げられる。
【0093】
上記平均組成式(4)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの具体例としては、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)メチルシラン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)フェニルシラン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、(CH32HSiO1/2単位と(CH33SiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C653SiO1/2単位とからなる共重合体などが挙げられる。
【0094】
(b)成分の添加量は、(a)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基1モル当たり、本(b)成分中のSiH基の量が0.1〜5.0モル、好ましくは0.5〜3.0モル、より好ましくは0.8〜2.0モルとなる量である。該添加量が上記SiH基の量が0.1モルより少なくなる量であると、該組成物から得られる硬化物の架橋密度が低くなりすぎ、該硬化物の耐熱性が悪影響を受ける。また、該添加量が上記SiH基の量が5.0モルより多くなる量であると、該硬化物中に脱水素反応による発泡が生じてしまい、更に該硬化物の耐熱性が悪影響を受ける。
【0095】
・(c)成分
(c)成分の白金族金属系触媒は、(a)成分と(b)成分との付加硬化反応(ヒドロシリル化)を促進させるための触媒として使用される。(c)成分としては、公知の白金族金属系触媒を用いることができるが、白金もしくは白金化合物を用いることが好ましい。(c)成分の具体例としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール変性物、塩化白金酸とオレフィン、アルデヒド、ビニルシロキサンまたはアセチレンアルコール類等との錯体が挙げられる。
【0096】
(c)成分の添加量は、触媒としての有効量であり、希望する硬化速度に応じて適宜増減すればよいが、(a)成分に対して白金族金属に換算して質量基準で好ましくは0.1〜1,000ppm、より好ましくは1〜200ppmの範囲である。
【0097】
<紫外線硬化型シリコーン組成物>
紫外線硬化型シリコーン組成物として、具体的には、例えば、
(d)紫外線反応性オルガノポリシロキサン、および
(e)光重合開始剤
を含有する紫外線硬化型シリコーン組成物が挙げられる。
【0098】
・(d)成分
(d)成分の紫外線反応性オルガノポリシロキサンは、通常、紫外線硬化型シリコーン組成物においてベースポリマーとして作用する。(d)成分は、特に限定されず、好ましくは1分子中に少なくとも2個、より好ましくは2〜20個、特に好ましくは2〜10個の紫外線反応性基を有するオルガノポリシロキサンである。このオルガノポリシロキサン中に複数存在する前記紫外線反応性基は、全て同一でも異なっていてもよい。
【0099】
(d)成分のオルガノポリシロキサンは、基本的には、分子鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基もしくはトリオルガノシリルエチル基等のトリオルガノシリル置換アルキル基で封鎖された、分岐を有しない直鎖状構造、または分子鎖が該ジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる、分岐を有しない環状構造を有することが好ましいが、三官能性シロキサン単位やSiO2単位等の分岐状構造を部分的に含有してもよい。(d)成分のオルガノポリシロキサンは、直鎖状構造を有する場合、紫外線反応性基を、分子鎖末端および分子鎖末端でない部分のどちらか一方にのみ有していても、その両方に有していてもよいが、少なくとも分子鎖両末端に紫外線反応性基を有することが好ましい。
【0100】
該紫外線反応性基は、その種類に応じて、(d)成分のオルガノポリシロキサン中に主鎖を構成するケイ素原子に直接結合していてもよいし、アルキレン基等の連結基を介して珪素原子に結合していてもよい。
【0101】
該紫外線反応性基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基;ビニルオキシ基、アリルオキシ基、プロペニルオキシ基、イソプロペニルオキシ基等のアルケニルオキシ基;アクリロイル基、メタクリロイル基等のアルケニル基以外の脂肪族不飽和基;メルカプト基;エポキシ基;ヒドロシリル基等が挙げられ、好ましくはアクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、エポキシ基、およびヒドロシリル基が挙げられ、より好ましくはアクリロイル基およびメタクリロイル基が挙げられる。
【0102】
前記オルガノポリシロキサンの粘度は、特に限定されないが、25℃において、25mPa・s以上であることが好ましく、100〜10,000,000mPa・sであることがより好ましく、100〜100,000mPa・sであることが特に好ましい。
【0103】
(d)成分の好ましい一形態として、例えば、下記一般式(5):
【0104】
【化2】

【0105】
[式中、Rは同一または異種の、紫外線反応性基を有しない非置換もしくは置換の一価炭化水素基であり、R及びRは各々同一又は異種の、紫外線反応性基もしくは紫外線反応性基を有する基であり、tは5〜1,000の整数であり、uは0〜100の整数であり、vは0〜3の整数であり、wは0〜3の整数であり、但し、v+w+u≧2である。]
または、下記一般式(6):
【0106】
【化3】

【0107】
[式中、R、R、R、t、u、vおよびwは上記一般式(5)で定義したとおりであり、kは2〜4の整数であり、rおよびsは各々1〜3の整数であり、但し、vr+ws+u≧2である。]
で表される少なくとも2個の紫外線反応性基を有するオルガノポリシロキサンが挙げられる。
【0108】
上記一般式(5)および(6)中、Rは、同一または異種の、紫外線反応性基を有しない非置換もしくは置換の、炭素原子数が好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10、更により好ましくは1〜8の一価炭化水素基である。Rで表される一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−エチルブチル基、オクチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基、シクロペンチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ジフェニル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基;これらの炭化水素基の炭素原子に結合している水素原子の一部または全部がハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、カルボキシル基等で置換された基、例えば、クロロメチル基、トリフルオロプロピル基、2−シアノエチル基、3−シアノプロピル基等が挙げられ、好ましくはメチル基およびフェニル基が挙げられ、より好ましくはメチル基が挙げられる。また、上記Rで表される一価炭化水素基はその骨格中にスルホニル基、エーテル結合(−O−)、カルボニル基等を1種または2種以上有してもよい。
【0109】
上記一般式(5)および(6)中、R及びRで表される紫外線反応性基は上述したとおりである。紫外線反応性基を有する基とは該紫外線反応性基が連結基を介してケイ素原子に結合している場合であり、その具体例としては、3−グリシドキシプロピル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、3−メタクリロイルオキシプロピル基、3−アクリロイルオキシプロピル基、3−メルカプトプロピル基、2−{ビス(2−メタクリロイルオキシエトキシ)メチルシリル}エチル基、2−{(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ジメチルシリル}エチル基、2−{ビス(2−アクリロイルオキシエトキシ)メチルシリル}エチル基、2−{(2−アクリロイルオキシエトキシ)ジメチルシリル}エチル基、2−{ビス(1,3−ジメタクリロイルオキシ−2−プロポキシ)メチルシリル}エチル基、2−{(1,3−ジメタクリロイルオキシ−2−プロポキシ)ジメチルシリル}エチル基、2−{ビス(1−アクリロイルオキシ−3−メタクリロイルオキシ−2−プロポキシ)メチルシリル}エチル基、および2−{(1−アクリロイルオキシ−3−メタクリロイルオキシ−2−プロポキシ)ジメチルシリル}エチル基等が挙げられ、好ましくは3−メタクリロイルオキシプロピル基、3−アクリロイルオキシプロピル基、2−{ビス(2−メタクリロイルオキシエトキシ)メチルシリル}エチル基、2−{(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ジメチルシリル}エチル基、2−{ビス(2−アクリロイルオキシエトキシ)メチルシリル}エチル基、2−{(2−アクリロイルオキシエトキシ)ジメチルシリル}エチル基、2−{ビス(1,3−ジメタクリロイルオキシ−2−プロポキシ)メチルシリル}エチル基、2−{(1,3−ジメタクリロイルオキシ−2−プロポキシ)ジメチルシリル}エチル基、2−{ビス(1−アクリロイルオキシ−3−メタクリロイルオキシ−2−プロポキシ)メチルシリル}エチル基、および2−{(1−アクリロキシ−3−メタクリロイルオキシ−2−プロポキシ)ジメチルシリル}エチル基が挙げられ、より好ましくは3−アクリロイルオキシプロピル基、2−{ビス(2−メタクリロイルオキシエトキシ)メチルシリル}エチル基、2−{(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ジメチルシリル}エチル基、2−{(2−アクリロイルオキシエトキシ)ジメチルシリル}エチル基、2−{ビス(1,3−ジメタクリロイルオキシ−2−プロポキシ)メチルシリル}エチル基、2−{ビス(1−アクリロイルオキシ−3−メタクリロイルオキシ−2−プロポキシ)メチルシリル}エチル基が挙げられる。
【0110】
一般式(5)及び(6)において、R及びRは各々同一であっても異なっていてもよく、R及びRどうしが同一であっても異なっていてもよい。
【0111】
上記一般式(5)および(6)中、tは、通常、5〜1,000、好ましくは10〜800、より好ましくは50〜500の整数である。uは、通常、0〜100、好ましくは0〜50、より好ましくは0〜20の整数である。vは、通常、0〜3、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは1または2である。wは、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは1または2である。上記式(6)中、kは、通常、2〜4の整数、好ましくは2または3である。rおよびsは各々1〜3の整数、好ましくは1または2である。更に、上記一般式(5)および(6)で表されるオルガノポリシロキサンは、前述のとおり、前記紫外線反応性基を少なくとも2個有するので、式(5)ではv+w+u≧2となり、式(6)ではvr+ws+u≧2となる。
【0112】
上記式(5)または(6)で表されるオルガノポリシロキサンの具体例としては、下記に示すものなどが挙げられる。
【0113】
【化4】

【0114】
【化5】

【0115】
【化6】

【0116】
【化7】

【0117】
[式中、Rは、90モル%がメチル基であり、10モル%がフェニル基である]
【0118】
・(e)成分
(e)成分の光重合開始剤は、前記(d)成分中の紫外線反応性基の光重合を促進させる作用を有する。(e)成分は特に限定されず、その具体例としては、アセトフェノン、プロピオフェノン、ベンゾフェノン、キサントール、フルオレイン、ベンズアルデヒド、アンスラキノン、トリフェニルアミン、4−メチルアセトフェノン、3−ペンチルアセトフェノン、4−メトキシアセトフェノン、3−ブロモアセトフェノン、4−アリルアセトフェノン、p−ジアセチルベンセン、3−メトキシベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4−クロロ−4’−ベンジルベンゾフェノン、3−クロロキサントン、3,9−ジクロロキサントン、3−クロロ−8−ノニルキサントン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、ベンジルメトキシアセタール、2−クロロチオキサントン、ジエチルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノ−1−プロパン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、および2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられ、好ましくはベンゾフェノン、4−メトキシアセトフェノン、4−メチルベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、および2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンが挙げられ、より好ましくはジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、および2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンが挙げられる。これらの光重合開始剤は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0119】
(e)成分の添加量は、特に限定されないが、(d)成分100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.1〜3質量部、更により好ましくは0.5〜3質量部である。この添加量がこの範囲内だと、本発明組成物を硬化させることにより得られる硬化物は強度および引張り強さ等の物理特性に優れたものとなる。
【0120】
<縮合硬化型シリコーン組成物>
縮合硬化型シリコーン組成物として、具体的には、例えば、
(h)ケイ素原子結合水酸基またはケイ素原子結合加水分解性基を少なくとも2個、好ましくは分子鎖両末端に含有するオルガノポリシロキサン、
(i)任意成分として、加水分解性シランおよび/またはその部分加水分解縮合物、ならびに
(j)任意成分として、縮合反応触媒
を含有する縮合硬化型シリコーン組成物が挙げられる。
【0121】
・(h)成分
(h)成分は、ケイ素原子結合水酸基またはケイ素原子結合加水分解性基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサンであり、縮合硬化型シリコーン組成物のベースポリマーである。(h)成分のオルガノポリシロキサンは、基本的には、分子鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる、分岐を有しない直鎖状構造または環状構造を有するが、分岐状構造を部分的に有していてもよい。
【0122】
なお、本明細書において「加水分解性基」とは、水の作用により分解して水酸基を形成しうる基を意味する。
【0123】
(h)成分のオルガノポリシロキサンにおいて、加水分解性基としては、例えば、アセトキシ基、オクタノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシロキシ基;ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基、ジエチルケトオキシム基等のケトオキシム基(即ち、イミノキシ基);メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、メトキシプロポキシ基等のアルコキシアルコキシ基;ビニロキシ基、イソプロペニルオキシ基、1−エチル−2−メチルビニルオキシ基等のアルケニルオキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基等のアミノ基;ジメチルアミノキシ基、ジエチルアミノキシ基等のアミノキシ基;N−メチルアセトアミド基、N−エチルアセトアミド基、N−メチルベンズアミド基等のアミド基等が挙げられる。
【0124】
これらの加水分解性基は、例えば、トリアルコキシシロキシ基、ジアルコキシオルガノシロキシ基、トリアシロキシシロキシ基、ジアシロキシオルガノシロキシ基、トリイミノキシシロキシ基(即ち、トリケトオキシムシロキシ基)、ジイミノキシオルガノシロキシ基、トリアルケノキシシロキシ基、ジアルケノキシオルガノシロキシ基、トリアルコキシシロキシエチル基、ジアルコキシオルガノシロキシエチル基等の、2個もしくは3個の加水分解性基を含有するシロキシ基または2個もしくは3個の加水分解性基を含有するシロキシアルキル基等の形で直鎖状ジオルガノポリシロキサンの分子鎖両末端に位置していることが好ましい。
【0125】
水酸基及び加水分解性基以外のケイ素原子に結合した他の原子又は基は一価炭化水素基であり、該一価炭化水素基としては、上記平均組成式(3)におけるRについて例示したものと同じ非置換または置換の一価炭化水素基が挙げられる。
【0126】
(h)成分としては、例えば、下記の式:
【0127】
【化8】

【0128】
[上記の式中、Yは加水分解性基、xは1、2または3、yおよびzはそれぞれ1〜1000の整数である]
で表される分子鎖両末端にケイ素に結合した水酸基またはケイ素原子に結合した加水分解性基を有するオルガノポリシロキサン等が挙げられる。
【0129】
上記の化学式で表されるオルガノポリシロキサンの内、両末端に加水分解性基Yを有するものの具体例としては、分子鎖両末端トリメトキシシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメトキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメトキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端メチルジメトキシシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリエトキシシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端2−(トリメトキシシロキシ)エチル基封鎖ジメチルポリシロキサン等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0130】
・(i)成分
(i)成分の加水分解性シランおよび/またはその部分加水分解縮合物は任意成分であり、硬化剤として作用する。ベースポリマーである(h)成分がシラノール基以外のケイ素原子結合加水分解性基を1分子中に少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサンである場合には、(i)成分を縮合硬化型シリコーン組成物に添加するのを省略することができる。(i)成分としては、1分子中に少なくとも3個のケイ素原子結合加水分解性基を含有するシランおよび/またはその部分加水分解縮合物(即ち、少なくとも1個、好ましくは2個以上の加水分解性基が残存するオルガノポリシロキサン)が好適に使用される。
【0131】
前記加水分解性シランとしては、例えば、式(7):
10SiX4-f (7)
(式中、R10は非置換または置換の一価炭化水素基、Xは加水分解性基、fは0または1である。)で表されるものが好ましく用いられる。前記R10としては、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基;フェニル基等のアリール基が特に好ましく挙げられる。前記Xとしては、例えば、前記(h)成分におけるケイ素原子結合加水分解性基Yとして例示したものすべてが挙げられる。
【0132】
該加水分解性シランの具体例としては、例えば、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、エチルオルソシリケート等、およびこれらの部分加水分解縮合物が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
【0133】
(i)成分の加水分解性シランおよび/またはその部分加水分解縮合物を用いる場合、その添加量は、(h)成分100質量部に対して好ましくは0.01〜20質量部、特に好ましくは0.1〜10質量部である。(i)成分を用いる場合、その添加量が上記範囲内にあると、本発明組成物の貯蔵安定性、接着性および硬化速度は特に良好である。
【0134】
・(j)成分
(j)成分の縮合反応触媒は任意成分であり、上記(i)成分の加水分解性シランおよび/またはその部分加水分解縮合物が、例えば、アミノキシ基、アミノ基、ケトオキシム基等を有する場合には使用しなくてもよい。(j)成分の縮合反応触媒としては、例えば、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等の有機チタン酸エステル;ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタン、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン等の有機チタンキレート化合物;アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等の有機アルミニウム化合物;ジルコニウムテトラ(アセチルアセトナート)、ジルコニウムテトラブチレート等の有機ジルコニウム化合物;ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジ(2−エチルヘキサノエート)等の有機スズ化合物;ナフテン酸スズ、オレイン酸スズ、ブチル酸スズ、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸亜鉛等の有機カルボン酸の金属塩;ヘキシルアミン、燐酸ドデシルアミン等のアミン化合物、およびその塩;ベンジルトリエチルアンモニウムアセテート等の4級アンモニウム塩;酢酸カリウム等のアルカリ金属の低級脂肪酸塩;ジメチルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン等のジアルキルヒドロキシルアミン;グアニジル基含有有機ケイ素化合物等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0135】
(j)成分の縮合反応触媒を用いる場合、その添加量は、特に制限されず、触媒としての有効量でよいが、(h)成分100質量部に対して好ましくは0.01〜20質量部、特に好ましくは0.1〜10質量部である。(j)成分を用いる場合、その添加量が上記範囲内にあると、本発明組成物の硬化性および貯蔵安定性は特に良好である。
【0136】
・シリコーン繊維(2)の製造方法
シリコーン繊維(2)は、室温にて液状の硬化性シリコーン組成物を孔から連続的に吐出させて糸引きし、糸引き中に該硬化性シリコーン組成物を硬化させることによりシリコーン繊維を製造することができる。
【0137】
このシリコーン繊維(2)は、該シリコーン不織布(2)の製造に好適に用いることができる。該シリコーン繊維(2)の繊維径は、好ましくは0.1〜50μm、より好ましくは0.5〜30μmである。繊維径がこの範囲内にあると、硬化性シリコーン組成物の硬化速度が十分に速くなりやすいので、繊維形状を保持しやすく、繊維の製造が容易となりやすい。また、得られた繊維の凝集が起こりにくいので、不織布の製造が容易となりやすい。
【0138】
上記の孔としては、例えば、紡糸ノズルのノズル孔が挙げられる。孔の内径は、所望の繊維径や硬化性シリコーン組成物の吐出速度などに応じて適宜選択することができるが、例えば、100μm〜1mm程度である。孔の形としては、例えば、円、楕円等が挙げられる。孔の数は、1個でも複数個でもよい。孔の数が複数個の場合、孔の並び方としては、例えば、直線状、円状、同心円状、放射状、格子状等が挙げられる。また、孔の数が複数個の場合、孔の間隔としては、例えば、0.01〜50mm、好ましくは0.1〜10mmが挙げられる。
【0139】
硬化性シリコーン組成物の吐出速度は、例えば、100〜10,000m/分程度である。吐出速度が速いほど、繊維径の小さい繊維が得られる。硬化性シリコーン組成物を孔から連続的に吐出させて糸引きするときの温度は、硬化性シリコーン組成物が液状を保つ限り、特に制限されず、硬化性シリコーン組成物の種類に応じて適宜選択される。該温度としては、例えば、室温が挙げられる。上記の方法によりシリコーン繊維を製造する場合、雰囲気としては、例えば、空気;アルゴンガス、窒素ガスなどの不活性ガスが挙げられる。
【0140】
通常、上記の孔の下方には、上記の方法により得られたシリコーン繊維を捕集できるように、受器が配置される。受器の形状、材料、構造等は特に制限されず、シリコーン不織布(1)の製造の場合と同様である。上記の孔から受器までの高さは、糸引き中に硬化性シリコーン組成物が硬化できるものであれば特に制限されず、該シリコーン組成物の種類、吐出速度、硬化速度等に応じて適宜選択される。
【0141】
以下、代表的な硬化性シリコーン組成物について望ましい硬化条件を説明する。
【0142】
(付加硬化型シリコーン組成物の場合)
糸引き中の付加硬化型シリコーン組成物を加熱装置により加熱することで、該シリコーン組成物中でヒドロシリル化反応を進行させ、該シリコーン組成物を硬化させて、シリコーン繊維を得ることができる。加熱装置は、糸引き中の該シリコーン組成物が所望の温度に加熱されるように、通常、糸引き中の該シリコーン組成物の経路の近傍に配置される。加熱装置としては、例えば、ヒーター等が挙げられる。加熱温度は、繊維径に応じて、すなわち、上記孔の直径や付加硬化型シリコーン組成物の吐出速度に応じて適宜選択されるが、好ましくは80〜300℃、より好ましくは100〜200℃である。また、必要に応じて2次硬化を行ってもよく、その際の温度条件としては好ましくは120℃以上、より好ましくは150℃〜250℃である。この際の硬化時間は好ましくは10分〜48時間、さらに好ましくは30分〜24時間である。
【0143】
(紫外線硬化型シリコーン組成物の場合)
糸引き中の紫外線硬化型シリコーン組成物に紫外線を照射することで、該シリコーン組成物中で光重合開始剤による硬化反応を進行させ、該シリコーン組成物を硬化させて、シリコーン繊維とすることができる。紫外線照射装置は、糸引き中の該シリコーン組成物に紫外線が照射されるように配置される。紫外線照射装置としては、例えば、紫外線ランプ、紫外線発光ダイオード等が挙げられる。紫外線照射条件は、繊維径に応じて、すなわち、上記孔の直径やシリコーン組成物の吐出速度に応じて適宜選択される。紫外線照射は、例えば、365nmに発光波長を有する紫外線ランプまたは紫外線発光ダイオードを用い、好ましくは5〜500mW/cm、より好ましくは10〜200mW/cmの照度、および好ましくは0.5〜100J/cm、より好ましくは10〜50J/cmの光量にて行うことができる。また、必要に応じて2次硬化を行ってもよく、その際の温度条件としては好ましくは120℃以上、より好ましくは150℃〜250℃である。この際の硬化時間は好ましくは10分〜48時間、さらに好ましくは30分〜24時間である。
【0144】
(縮合硬化型シリコーン組成物の場合)
糸引き中に縮合硬化型シリコーン組成物を、湿気(例えば、25〜90%RH、好ましくは50〜85%RH)を含む雰囲気中を通過させると、雰囲気中の水分により硬化し、硬化シリコーン繊維となる。硬化を促進させるために、付加硬化型シリコーン組成物の場合と同様に加熱してもよい。また、必要に応じて2次硬化を行ってもよい。その際の温度条件としては好ましくは120℃以上、より好ましくは150℃〜250℃である。この際の硬化時間は好ましくは10分〜48時間、さらに好ましくは30分〜24時間である。
【0145】
・シリコーン不織布(2)の乾式製造方法
上述した方法によりシリコーン繊維(2)を得、該シリコーン繊維(2)を受器に吸引捕集することによりシリコーン不織布(2)を製造することができる。
この方法によれば、フェルト状の不織布が得られる。
【0146】
シリコーン繊維を受器に吸引捕集するときにシリコーン繊維同士が効果的に絡まりあって高強度のシリコーン不織布が形成される。
【0147】
上記の吸引捕集は、例えば、気流、静電気などにより行うことができるが、好ましくは気流により行われる。吸引捕集を気流により行う場合、受器の材料としては通気性のあるものが選択され、吸引速度としては、例えば、2〜10m/s程度の範囲が挙げられる。この受器をはさんで、孔に近い方の側からその反対側へ気流を形成させることにより、気流による吸引捕集を行うことができる。このような受器の材料としては、例えば、プラスチック、ガラス、金属、ゴムが挙げられる。また、吸引捕集を静電気により行う場合、受器の材料としては帯電性のものが選択され、例えば、金属、プラスチックが挙げられる。
【0148】
・シリコーン不織布(2)の湿式製造方法
また、上述した方法によりシリコーン繊維(2)を得、該シリコーン繊維(2)をバインダーを含む水性媒体に分散させてスラリーを得、該スラリーから抄造することによってもシリコーン不織布(2)を製造することができる。
この方法によれば、ボンデッドファブリックとして不織布が得られる。
【0149】
この方法において、バインダーを含む水性媒体、及びスラリーについては、シリコーン不織布(1)の湿式製造方法について説明した通りであり、スラリーからは通常の製紙工程と基本的に同じ手法を用いてシリコーン不織布を抄造することができる。
【0150】
上記のいずれのシリコーン不織布(2)の製造方法においても、シリコーン繊維(2)の繊維径は、上記の範囲内とすることが好ましい。
【0151】
シリコーン不織布(2)の製造を図2により具体的に説明する。
図2は、乾式法による本発明のシリコーン不織布の製造方法を説明する概略図である。紡糸ノズル1を通して供給される硬化性シリコーン組成物2aは、ノズル孔3から吐出されて鉛直下方へ落下する。紡糸ノズル1の本数は一本でもよいし、複数本でもよい。紡糸ノズル1が複数本ある場合、その配列の仕方は多様であるが、受器上の一定範囲の領域に硬化シリコーン繊維が均一な量で落下することが望ましい。例えば、ノズルの先端が水平な直線上に同じ高さで等間隔に配列されてもよいし、水平な平面上に二次元的に配列されていてもよい。二次元的配列は、円を構成してもよいし、更に二重以上の同心円状でもよいし、放射状でもよい。
【0152】
落下中の硬化性シリコーン組成物2aの落下経路の近傍には、該組成物の種類に応じ、該組成物を硬化させるための装置9が配置される。硬化性シリコーン組成物2aが付加硬化型シリコーン組成物である場合、装置9は加熱装置であり、硬化性シリコーン組成物2aは、装置9の近傍を通過するときに加熱されて硬化し、硬化シリコーン繊維4となる。硬化性シリコーン組成物2aが紫外線硬化型シリコーン組成物である場合、装置9は紫外線照射装置であり、硬化性シリコーン組成物2aは、装置9の近傍を通過するときに紫外線を照射されて硬化し、硬化シリコーン繊維4となる。硬化性シリコーン組成物2aが縮合硬化型シリコーン組成物である場合、雰囲気中に含まれる湿気により硬化性シリコーン組成物2aは硬化し、硬化シリコーン繊維4となるので、装置9は必須ではないが、硬化を促進させるために装置9として加熱装置を配置してもよい。
【0153】
形成された硬化シリコーン繊維4は、ベルトコンベヤーのベルト5の表面に到達する。矢印7はベルト5の移動方向を示す。ベルト5は通気性を有する構造であり、例えば、金属、プラスチック、ゴム等でできている。ベルト5の下方からの吸引により、矢印8の方向に、上方からベルト5を通して下方へ向かう気流が形成される。ベルト5の表面に到達した硬化シリコーン繊維4はベルト5の下方への気流によりベルト5上に吸引捕集される。その際に硬化シリコーン繊維4が絡み合い、ベルト5の移動方向7に向かってシリコーン不織布6が連続的に形成される。
【0154】
なお、ベルト5の下方からの吸引を行わない場合、シリコーン不織布6は形成されず、代わりに、ベルト5の表面に到達した硬化シリコーン繊維4はベルト5上に綿状に捕集される。このようにして捕集した綿状の硬化シリコーン繊維4からは湿式法において水性スラリーからの抄造による不織布製造に利用することができる。
【0155】
[用途]
本発明の非溶融性固体状シリコーン繊維は、金属材料および高分子材料の一方または両方を含む複合材料の強化材料として用いることができる。代表的には、金属材料と非溶融性固体状シリコーン繊維とを含んでなる複合材料、および高分子材料と非溶融性固体状シリコーン繊維とを含んでなる複合材料が挙げられる。該金属材料としては、例えば、アルミニウム、チタンなどの軽金属が挙げられる。該高分子材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、シリコーン樹脂が挙げられる。本発明の複合材料は、金属材料および高分子材料の一方または両方と本発明の非溶融性固体状シリコーン繊維とを混合することにより製造することができる。通常、基材である金属材料および/または高分子材料がマトリックスを形成しその中に非溶融性固体状シリコーン繊維が分散してなる構造を形成する。非溶融性固体状シリコーン繊維の添加量は、該複合材料全体に対して、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは10〜30質量%である。該添加量がこの範囲内にあれば、得られる複合材料の強度が十分となりやすい。
【0156】
本発明のシリコーン不織布は、耐クラック性、耐溶剤性、耐熱性に優れるので、プリント配線基板用の基材;タイルカーペット、合板、化粧板、その他の建築材料;固体電解コンデンサ用のセパレータ;燃料電池用のセパレータ等に好適に用いることができる。
【実施例】
【0157】
以下に、実施例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本実施例において、分子量は、GPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量である。また、繊維中の構成元素の平均元素比を単に「元素比」という。更に、「Me」はメチル基を、「i-Pr」はイソプロピル基を、「Ph」はフェニル基を表わす。以下の実施例における実験は特記しない限り室温において行った。
【0158】
[実施例1]
溶融性シリコーン樹脂として、シロキサン単位としてMeSiO3/2単位のみを含み、5質量%の水酸基を有する溶融性シリコーン樹脂(分子量:1000、平均組成式:Me(OH)0.2SiO1.3、元素比:SiCH3.2O1.5、軟化点65℃)(以下、溶融性シリコーン樹脂αという)を0.05cmのオリフィス直径を有するモノフィラメント紡糸装置を用いてアルゴンガス雰囲気下130〜140℃の温度で溶融紡糸した。リールへの巻き取り速度は250m/分であった。これにより、約15μmの直径を有する溶融紡糸繊維が得られた。
【0159】
得られた溶融紡糸繊維を20質量%の濃度の塩酸に浸漬し、室温で2日間放置した。この繊維を、廃水がpH6になるまで水で洗い、約200℃の温度で加熱乾燥した。得られた繊維の直径は約15μmであり、不融化処理前後でほとんど変化しなかった。
【0160】
[実施例2]
溶融性シリコーン樹脂として、実施例1で使用したシリコーン樹脂の代わりに、シロキサン単位として約60モル%のMeSiO3/2単位および約40モル%のi-PrSiO3/2単位を含み、5質量%の水酸基を有する溶融性シリコーン樹脂(分子量:1000、平均組成式:(Me)0.6(i-Pr)0.4(OH)0.2SiO1.3、元素比:SiC1.8H4.8O1.5、軟化点75℃)(以下、溶融性シリコーン樹脂βという)を用いた以外は、実施例1と同様にして約15μmの直径を有する繊維を得た。
【0161】
[実施例3]
溶融性シリコーン樹脂として、実施例1で使用したシリコーン樹脂の代わりに、シロキサン単位として約60モル%のPhSiO3/2単位、約20モル%のPh2SiO単位および約20モル%のMeSiO3/2単位を含み、5質量%の水酸基を有する溶融性シリコーン樹脂(分子量:1000、平均組成式:Ph(Me)0.2(OH)0.3SiO1.1、元素比:SiC6.2H5.6O1.4、軟化点92℃)(以下、溶融性シリコーン樹脂γという)を用い、20質量%塩酸処理を98質量%硫酸処理に変更した以外は、実施例1と同様にして約15μmの直径を有する繊維を得た。
【0162】
[実施例4]
溶融性シリコーン樹脂として、実施例1で使用したものと同じシリコーン樹脂αを直径500μmの紡糸ノズルからアルゴンガス雰囲気下130〜140℃の温度で50m/sの速度でメルトブロー法により紡糸した。紡糸ノズルの下部に配置した受器に紡糸繊維を捕集する際、受器の下側から5m/sの吸引速度で吸引しながら紡糸繊維を捕集することにより不織布を形成させた。SEMにより不織布の繊維径を観察したところ、不織布の繊維径は約3μmの直径を有しており、該不織布の厚みは1mmであった。
【0163】
[実施例5]
溶融性シリコーン樹脂として、実施例3で使用したものと同じシリコーン樹脂を直径500μmの紡糸ノズルからアルゴンガス雰囲気下130〜140℃の温度で50m/sの速度でメルトブロー法により紡糸した。紡糸ノズルの下部に配置した受器に紡糸繊維を捕集する際、受器の下側から5m/sの吸引速度で吸引しながら紡糸繊維を捕集することにより不織布を形成させた。SEMにより不織布の繊維径を観察したところ、不織布の繊維径は約3μmの直径を有しており、該不織布の厚みは1mmであった。
【0164】
[実施例6]
−シリコーン不織布(1)の製造(乾式法)−
図1に即して説明する。紡糸装置を用いて、実施例1で使用したものと同じ溶融性シリコーン樹脂αを130〜140℃の温度で溶融させたもの2を、直径500μmの紡糸ノズルの孔3からアルゴンガス雰囲気下50m/sの速度でメルトブロー法により紡糸した。そして、ノズル1の下方に受器として配置したベルトコンベアーのベルト5上に紡糸した繊維4を捕集する際、ベルト5は2cm/sの速度で矢印7の方向に運転させ、ベルト5の下側から5m/sの吸引速度で吸引し続けた。その結果、ベルト5上に不織布6が形成された。SEMにより不織布の繊維径を観察したところ、不織布の繊維径は約3μmの直径を有しており、該不織布の厚みは1mmであった。
【0165】
得られた不織布を20質量%の濃度の塩酸に浸漬し、室温で2日間放置した。この不織布を、廃水がpH6になるまで水で洗い、約200℃の温度で加熱乾燥したところ、加熱前後の繊維形状変化をSEMにより観察したところ見受けられなかった。
【0166】
[実施例7]
−シリコーン不織布(1)の製造(湿式法)−
紡糸装置を用いて、実施例1で用いたものと同じ溶融性シリコーン樹脂αを130〜140℃の温度に溶融させたもの2を、直径500μmの紡糸ノズル1の孔3からアルゴンガス雰囲気下で50m/sの速度でメルトブロー法により紡糸した。ベルト5の下側から吸引を行わなかったため、ベルト5上に綿状の溶融性シリコーン樹脂繊維4を得た。この際の綿状繊維径は約3μmの直径を有していた。
【0167】
この綿状繊維10質量部を、1質量%カルボキシメチルセルロース水溶液100質量部に加え、振とう機にて100往復/分の速度で2時間振とうし、スラリーを調製した。このスラリーから200メッシュのストレーナーを用いて抄造し、不織布を得た。該不織布の厚みは0.8mmであった。
【0168】
[実施例8]
実施例6で用いた溶融性シリコーン樹脂αの代わりに、実施例3で使用したものと同じ溶融性シリコーン樹脂γを用い、不融化処理を20質量%塩酸処理から98質量%硫酸処理に変更した以外は、実施例6と同様にして不織布を得た。SEMにより不織布の繊維径を観察したところ、不織布の繊維径は約3μmの直径を有しており、該不織布の厚みは1mmであった。
【0169】
[実施例9]
−シリコーン不織布(2)の製造(乾式法)−
(a)ケイ素原子に結合したビニル基を含有する下記式のジオルガノポリシロキサン 90質量部
【0170】
【化9】

【0171】
(式中、nは該シロキサンの25℃における粘度が600mPa・sとなるような数である。)
(b)ケイ素原子に結合した水素原子を有する下記式のジオルガノポリシロキサン 10質量部
【0172】
【化10】

【0173】
(c)白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体/トルエン溶液(白金元素含有量0.5質量%;ヒドロシリル化触媒) 0.15質量部
【0174】
上記の(a)および(b)成分をプラネタリーミキサー(井上製作所(株)製混合機)に投入し、室温にて一時間攪拌した。その後、(c)成分を該プラネタリーミキサーに投入し、室温にて30分攪拌して、付加硬化型シリコーン組成物を得た。
【0175】
図2に示すとおりにして、この組成物からシリコーン不織布を得た。20本の紡糸ノズル1(断面形状:円、内径:500μm)を一直線上に1mmの間隔で配列させた。ノズル孔3から下方に10〜50cmの範囲にわたって装置9として加熱装置を配置させた。落下中の組成物2aと装置9との間には水平方向に50mmの間隔をあけた。ノズル孔3から下方に100cmの位置にベルトコンベヤーのベルト5を水平に配置させた。ベルト5として通気性を有する構造のゴム製ベルトを用いた。ベルト5を2cm/sの移動速度で矢印の方向に移動させた。ベルト5の下方から5m/sの吸引速度で吸引して、上方からベルト5を通して下方(矢印8の方向)へ向かう気流を形成させた。
【0176】
アルゴンガス雰囲気下、室温にて、上記の付加硬化型シリコーン組成物を紡糸ノズル1から50m/sの速度で吐出させて落下させた。落下中の該組成物を装置9により180℃に加熱して硬化させ、硬化シリコーン繊維4を形成させた。この硬化シリコーン繊維4をベルト5の表面で吸引捕集することで絡み合わせ、ベルト5の移動方向(矢印7の方向)に向かってシリコーン不織布6を連続的に形成させた。得られた不織布における硬化シリコーン繊維の繊維径をSEM(走査電子顕微鏡)により測定したところ、約3μmであった。該不織布の厚みは1mmであった。なお、該硬化シリコーン繊維の元素比は、上記付加硬化型シリコーン組成物の組成からSiC2H6Oと計算された。
【0177】
[実施例10]
−シリコーン不織布(2)の製造(湿式法)−
実施例9においてベルト5の下方からの吸引を行わなかった以外は、実施例9と同様にして、シリコーン不織布6の代わりに、ベルト5上で綿状に捕集された硬化シリコーン繊維4を得た。この繊維の繊維径をSEMにより測定したところ、約3μmであった。この繊維10質量部を、1質量%カルボキシメチルセルロース水溶液100質量部に加え、振とう機にて100往復/分の速度で2時間振とうし、スラリーを形成させた。200メッシュ(JIS Z 8801-1に規定)のストレーナーを用いてこのスラリーから不織布を抄造した。得られた不織布における硬化シリコーン繊維の繊維径をSEMにより測定したところ、約3μmであった。該不織布の厚みは0.8mmであった。
【0178】
[実施例11]
下記式
【0179】
【化11】

【0180】
で示される室温にて液状のオルガノポリシロキサン 100質量部、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン 2質量部、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド 1質量部、テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物(メトキシシロキサンオリゴマー) 1質量部、および下記式:
【0181】
【化12】

【0182】
で示されるチタンキレート化合物 0.1質量部を混合して紫外線硬化型シリコーン組成物を得た。
【0183】
図2に示すとおりにして、この組成物からシリコーン不織布を得た。20本の紡糸ノズル1(断面形状:円、内径:500μm)を一直線上に1mmの間隔で配列させた。ノズル孔3から下方に10〜50cmの範囲にわたって装置9としてメタルハライド水銀灯2灯(80W/cm、エネルギー量400mJ/s)を配置させた。落下中の組成物2aと該水銀灯との間には水平方向に50mmの間隔をあけた。ノズル孔3から下方に100cmの位置にベルトコンベヤーのベルト5を水平に配置させた。ベルト5として実施例9と同様のものを用いた。ベルト5を2cm/sの移動速度で矢印の方向に移動させた。ベルト5の下方から5m/sの吸引速度で吸引して、上方からベルト5を通して下方(矢印8の方向)へ向かう気流を形成させた。
【0184】
アルゴンガス雰囲気下、室温にて、上記の紫外線硬化型シリコーン組成物を紡糸ノズル1から50m/sの速度で吐出させて落下させた。落下中の該組成物に上記水銀灯から紫外線を照射して該組成物を硬化させ、硬化シリコーン繊維4を形成させた。硬化シリコーン繊維4をベルト5の表面で吸引捕集することで絡み合わせ、ベルト5の移動方向(矢印7の方向)に向かってシリコーン不織布6を連続的に形成させた。得られた不織布における硬化シリコーン繊維の繊維径をSEMにより測定したところ、約3μmであった。該不織布の厚みは1mmであった。なお、該硬化シリコーン繊維の元素比は、上記紫外線硬化型シリコーン組成物の組成からSiC2.8H6.6O1.1と計算された。
【0185】
[実施例12]
下記式
【0186】
【化13】

【0187】
で示される両末端トリメトキシシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン 100質量部にチタンキレート触媒 0.1質量部を加え、よく攪拌して縮合硬化型シリコーン組成物を得た。
【0188】
図2に示すとおりにして、この組成物からシリコーン不織布を得た。20本の紡糸ノズル1(断面形状:円、内径:500μm)を一直線上に1mmの間隔で配列させた。ノズル孔3から下方に10〜50cmの範囲にわたって装置9として実施例9におけるものと同様の加熱装置を配置させた。落下中の組成物2aと装置9との間には水平方向に50mmの間隔をあけた。ノズル孔3から下方に100cmの位置にベルトコンベヤーのベルト5を水平に配置させた。ベルト5として実施例9と同様のものを用いた。ベルト5を2cm/sの移動速度で矢印の方向に移動させた。ベルト5の下方から5m/sの吸引速度で吸引して、上方からベルト5を通して下方(矢印8の方向)へ向かう気流を形成させた。
【0189】
アルゴンガス雰囲気下(50%RH)、室温にて、上記の縮合硬化型シリコーン組成物を紡糸ノズル1から50m/sの速度で吐出させて落下させた。落下中の該組成物を雰囲気中の湿気により硬化させて、硬化シリコーン繊維4を形成させた。また、該組成物を装置9により180℃に加熱することで硬化を促進させた。硬化シリコーン繊維4をベルト5の表面で吸引捕集することで絡み合わせ、ベルト5の移動方向(矢印7の方向)に向かってシリコーン不織布6を連続的に形成させた。得られた不織布における硬化シリコーン繊維の繊維径をSEMにより測定したところ、約3μmであった。該不織布の厚みは1mmであった。なお、該硬化シリコーン繊維の元素比は、上記縮合硬化型シリコーン組成物の組成からSiC2H6Oと計算された。
【図面の簡単な説明】
【0190】
【図1】乾式法によるシリコーン不織布(1)の製造方法を説明する概略図である。
【図2】乾式法によるシリコーン不織布(2)の製造方法を説明する概略図である。
【符号の説明】
【0191】
1 紡糸ノズル
2 溶融性シリコーン樹脂の溶融物
2a 硬化性シリコーン組成物
3 ノズル孔
4 固化した溶融性シリコーン樹脂繊維又は硬化シリコーン繊維
5 ベルトコンベヤーのベルト
6 シリコーン不織布
7 ベルトの動く方向
8 気流の方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成元素の組成が式(1):
SiCaHbOc (1)
(式中、aは0.5≦a≦7.0を満たす数であり、bは0.5≦b≦8.0を満たす数であり、cは1.0≦c≦3.0を満たす数である。)
で表わされる非溶融性固体状シリコーンからなる繊維。
【請求項2】
前記の非溶融性固体状シリコーンが非溶融性シリコーン樹脂からなる請求項1に係る繊維。
【請求項3】
前記の非溶融性固体状シリコーンが硬化性シリコーン組成物の硬化物からなる請求項1に係る繊維。
【請求項4】
溶融性シリコーン樹脂を溶融紡糸して溶融性シリコーン樹脂繊維を得、
該溶融性シリコーン樹脂繊維を不融化処理する
ことを含む、非溶融性シリコーン樹脂からなる請求項1に記載の非溶融性固体状シリコーンからなる繊維の製造方法。
【請求項5】
前記溶融性シリコーン樹脂が平均組成式(2):
R1mR2n(OR3)p(OH)qSiO(4-m-n-p-q)/2 (2)
(式中、R1は独立に水素原子、アリール基以外のカルボニル基を含んでいてもよい1価炭化水素基を示し、R2はフェニル基を示し、R3は炭素原子数1〜4の1価炭化水素基を示し、mは0.1≦m≦2を満たす数であり、nは0≦n≦2を満たす数であり、pは0≦p≦1.5を満たす数であり、qは0≦q≦0.35を満たす数であり、ただし、p+q>0であり、かつ、0.1≦m+n+p+q≦2.6である。)
で表わされるものである請求項4に係る製造方法。
【請求項6】
前記溶融性シリコーン樹脂の溶融紡糸をメルトブロー法により行う請求項4又は5に係る製造方法。
【請求項7】
前記溶融性シリコーン樹脂繊維の不融化処理を、該溶融性シリコーン樹脂繊維を無機酸で処理することにより行う請求項4〜6のいずれか1項に係る製造方法。
【請求項8】
室温にて液状の硬化性シリコーン組成物を孔から連続的に吐出させて糸引きし、
糸引き中に該硬化性シリコーン組成物を硬化させる
ことを含む、硬化性シリコーン組成物の硬化物からなる請求項1に記載の非溶融性固体状シリコーンからなる繊維の製造方法。
【請求項9】
金属材料及び高分子材料の一方又は両方と、強化材料として請求項1に記載の非溶融性固体状シリコーンからなる繊維とを含んでなる複合材料。
【請求項10】
請求項1に記載の非溶融性固体状シリコーンの繊維からなるシリコーン不織布。
【請求項11】
前記の非溶融性固体状シリコーンが非溶融性シリコーン樹脂からなる請求項10に係る不織布。
【請求項12】
前記の非溶融性固体状シリコーンが硬化性シリコーン組成物の硬化物からなる請求項10に係る不織布。
【請求項13】
溶融性シリコーン樹脂を溶融紡糸して溶融性シリコーン樹脂繊維を形成し、該溶融性シリコーン樹脂繊維を受器上に吸引捕集することにより不織布を形成させ、次いで、該不織布を不融化処理することを含む、非溶融性シリコーン樹脂繊維からなる請求項10に記載のシリコーン不織布を製造する方法。
【請求項14】
溶融性シリコーン樹脂を溶融紡糸して溶融性シリコーン樹脂繊維を得、該溶融性シリコーン樹脂繊維を不融化し、得られた非溶融性シリコーン樹脂繊維をバインダーを含む水性媒体に分散させてスラリーを得、該スラリーから不織布を抄造することを有する、非溶融性シリコーン樹脂繊維からなる請求項10に記載のシリコーン不織布を製造する方法。
【請求項15】
室温にて液状の硬化性シリコーン組成物を孔から連続的に吐出させて糸引きし、
糸引き中に該硬化性シリコーン組成物を硬化させて硬化シリコーン繊維を得、
該硬化シリコーン繊維を受器に吸引捕集する
ことを含む、硬化シリコーン繊維からなる請求項10に記載のシリコーン不織布の製造方法。
【請求項16】
室温にて液状の硬化性シリコーン組成物を孔から連続的に吐出させて糸引きし、
糸引き中に該硬化性シリコーン組成物を硬化させて硬化シリコーン繊維を得、
該硬化シリコーン繊維をバインダーを含む水性媒体に分散させてスラリーを得、
該スラリーからシリコーン不織布を抄造する
ことを含む、硬化シリコーン繊維からなる請求項10に記載のシリコーン不織布の製造方法。
【請求項17】
前記硬化性シリコーン組成物が付加硬化型シリコーン組成物、光硬化型シリコーン組成物、又は縮合硬化型シリコーン組成物である請求項15又は16に係る製造方法。
【請求項18】
請求項10に記載のシリコーン不織布を含むプリント配線基板用の基材。
【請求項19】
請求項10に記載のシリコーン不織布を含む建築材料。
【請求項20】
請求項10に記載のシリコーン不織布を含む固体電解コンデンサ用のセパレータ。
【請求項21】
請求項10に記載のシリコーン不織布を含む燃料電池用のセパレータ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−81920(P2008−81920A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−225787(P2007−225787)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】