説明

シリコーン骨格を有する化合物を含む光インプリント材料

【課題】光インプリント材料を提供すること。
【解決手段】下記式(1)及び/又は式(2)で表されるシリコーン骨格を有する化合物および光重合開始剤を含む光インプリント材料。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント材料及び当該材料から作製され、パターンが転写された膜に関する。より詳しくは、メチル/ジメチルシリコーン骨格を有する化合物を主成分として含む光硬化性インプリント材料、及び当該材料から作製され、パターンが転写された膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
1995年、現プリンストン大学のチョウ教授らがナノインプリントリソグラフィという新たな技術を提唱した(特許文献1)。ナノインプリントリソグラフィは、任意のパターンを有する、モールドを樹脂膜が形成された基材と接触させ、当該樹脂膜を加圧すると共に、熱又は光を外部刺激として用い、目的のパターンを硬化された当該樹脂膜に形成する技術であり、このナノインプリントリソグラフィは、従来の半導体デバイス製造における光リソグラフィ等に比べて簡便・安価にナノスケールの加工が可能であるという利点を有する。
したがって、ナノインプリントリソグラフィは、光リソグラフィ技術に代わり、半導体デバイス、オプトデバイス、ディスプレイ、記憶媒体、バイオチップ等の製造への適用が期待されている技術であることから、ナノインプリントリソグラフィに用いる光ナノインプリントリソグラフィ用硬化性組成物について様々な報告がなされている(特許文献2、特許文献3)。
【0003】
しかし、これまでにナノインプリントリソグラフィに用いる材料(以下、本明細書では「インプリント材料」という。)として種々の材料が開示されているものの、メチル/ジメチルシリコーン骨格を有する化合物を主成分として含む光硬化性インプリント材料(以下、本明細書では「光インプリント材料」という。)の報告はなされていない。一般にメチル/ジメチルシリコーン骨格を有する光硬化性化合物は反応性に乏しく、光インプリント材料としての使用は困難であった。ジメチルシリコーン骨格を有する化合物を用いたインプリント材料としては、特許文献4及び特許文献5などで報告されているが、いずれもジメチルシリコーン骨格を有する化合物の他に重合性モノマーを使用している。
一方で、固体撮像装置、太陽電池、LEDデバイス、ディスプレイなどの電子デバイスでは、その内部または表面に作製した構造物に対して、光の反射防止及び透過性向上のため屈折率の抑制を求められることがある。一般にメチル/ジメチルシリコーン骨格を有する化合物は屈折率を低下させることが知られており、メチル/ジメチルシリコーン骨格を有する化合物を主成分として含む光インプリント材料は上記のような製品に対して有効となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5772905号明細書
【特許文献2】特開2008−105414号公報
【特許文献3】特開2008−202022号公報
【特許文献4】特開2010−006870号公報
【特許文献5】特開2011−082347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の事情に基づいてなされたものであり、その解決しようとする課題は、メチル/ジメチルシリコーン骨格を有する化合物を主成分として含む光インプリント材料を提供することを目的とする。
また、本明細書では、形成されるパターンサイズがナノメートルオーダーに限らず、例えば、マイクロメートルオーダーである場合を含む光ナノインプリント技術を光インプリントと称する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、シリコーン骨格を有する化合物及び光重合開始剤を使用することにより本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(A)成分:下記式(1)及び/又は式(2)で表されるシリコーン骨格を有する化合物、
【化1】


(式(1)中、aは0乃至400の整数を表し、bは4乃至20の整数を表し、Lはアクリロイルオキシ基又はメタアクリロイルオキシ基を表す。)
【化2】


(式(2)中、cは1乃至255の整数を表し、2つのdはそれぞれ独立に1又は2を表し、2つのeはそれぞれ独立に1乃至100の整数を表し、2つのfはそれぞれ独立に0又は1を表すと共にd+f=2の関係式を満たし、2つのLはそれぞれ独立にアクリロイルオキシ基又はメタアクリロイルオキシ基を表す。)
及び
(B)成分:光重合開始剤
を含み、前記(B)成分の含有量は前記(A)成分の総質量に対して0.5phr乃至30phrである光インプリント材料である。
【発明の効果】
【0007】
本発明は(A)成分として式(1)及び/又は式(2)で表されるシリコーン骨格を有する化合物を使用しているため、光硬化性化合物を併用することなく、メチル/ジメチルシリコーン骨格を有する化合物を主成分として含む材料で光インプリントが可能となる。本発明の光インプリント材料は、光硬化が可能であり、かつモールドの離型時にパターンの一部の剥がれが生じないため、所望のパターンが正確に形成された膜が得られる。したがって、良好な光インプリントのパターン形成が可能である。
また、本発明の光インプリント材料は、任意の基材上に製膜することができ、光インプリント後に形成されるパターンが転写された膜は、固体撮像装置、太陽電池、LEDデバイス、ディスプレイなどの電子デバイスへ好適に用いることができる。
さらに、本発明の光インプリント材料は、上記(A)成分の種類および割合を変更することで硬化速度、動的粘度、膜厚をコントロールすることができる。したがって、本発明の光インプリント材料は、製造するデバイス種と露光プロセス及び焼成プロセスの種類に対応した材料の設計が可能であり、プロセスマージンを拡大できるため、光学部材の製造に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、前記(A)成分及び前記(B)成分を含む光インプリント材料である。更に、前記(A)成分、前記(B)成分に加えて、(C)成分として界面活性剤、(D)成分として溶剤をも含有することのできる光インプリント材料である。
以下、各成分について詳細に説明する。
【0009】
<(A)成分>
(A)成分は、下記式(1)及び/又は式(2)で表されるシリコーン骨格を有する化合物である。
【化3】


(式(1)中、aは0乃至400の整数を表し、bは4乃至20の整数を表し、Lはアクリロイルオキシ基又はメタアクリロイルオキシ基を表す。)
【化4】


(式(2)中、cは1乃至255の整数を表し、2つのdはそれぞれ独立に1又は2を表し、2つのeはそれぞれ独立に1乃至100の整数を表し、2つのfはそれぞれ独立に0又は1を表すと共にd+f=2の関係式を満たし、2つのLはそれぞれ独立にアクリロイルオキシ基又はメタアクリロイルオキシ基を表す。)
ここで、アクリロイルオキシ基はアクリロキシ基と、メタアクリロイルオキシ基はメタアクリロキシ基と表現されることがある。
【0010】
上記(A)成分の化合物の分子量については特に限定はされないが、例えば、重量平均分子量で500乃至50,000、好ましくは2,000乃至30,000である。
【0011】
上記(A)成分については市販品として入手が可能であり、その具体例としては、RMS−044、RMS−033、RMS−083、UMS−182、UMS−992(以上、Gelest社製)を挙げることができる。また、BYK(登録商標)−UV3570(ビックケミー・ジャパン株式会社製)からプロポキシ変性−2−ネオペンチルグリコールジアクリレートおよびキシレンを除去し、精製することにより得ることができる。
【0012】
<(B)成分>
(B)成分である光重合開始剤としては、例えば、tert−ブチルペルオキシ−iso−ブタレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルジオキシ)ヘキサン、1,4−ビス[α−(tert−ブチルジオキシ)−iso−プロポキシ]ベンゼン、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルジオキシ)ヘキセンヒドロペルオキシド、α−(iso−プロピルフェニル)−iso−プロピルヒドロペルオキシド、2,5−ジメチルヘキサン、tert−ブチルヒドロペルオキシド、1,1−ビス(tert−ブチルジオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルジオキシ)バレレート、シクロヘキサノンペルオキシド、2,2’,5,5’−テトラ(tert−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(tert−アミルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ヘキシルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ビス(tert−ブチルペルオキシカルボニル)−4,4’−ジカルボキシベンゾフェノン、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、ジ−tert−ブチルジペルオキシイソフタレート等の有機過酸化物、9,10−アントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン等のキノン類、ベンゾインメチル、ベンゾインエチルエーテル、α−メチルベンゾイン、α−フェニルベンゾイン等のベンゾイン誘導体、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−[4−{4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)ベンジル}−フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モリホリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(o−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)が挙げられるが、光硬化時に使用する光源に吸収をもつものであれば、特に限定されるものではない。
【0013】
上記化合物は、市販品として入手が可能であり、その具体例としては、IRGACURE(登録商標)651、同184、同500、同2959、同127、同754、同907、同369、同379、同379EG、同819、同819DW、同1800、同1870、同784、同OXE01、同OXE02、同250、DAROCUR(登録商標) 1173、同MBF、同4265、Lucirin(登録商標)TPO(以上、BASFジャパン株式会社製)、KAYACURE(登録商標)−DETX、同MBP、同DMBI、同EPA、同OA(以上、日本化薬株式会社製)、VICURE−10、同55(以上、STAUFFER社製)、ESACURE(登録商標)KIP150、同TZT、同1001、同KTO46、同KB1、同KL200、同KS300、同EB3、トリアジン−PMS、トリアジンA、トリアジンB(以上、日本シイベルヘグナー株式会社製)、アデカオプトマ−N−1717、同N−1414、同N−1606(株式会社ADEKA(旧旭電化工業株式会社)製)が挙げられる。
【0014】
上記光重合開始剤は、単独又は2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0015】
本発明のインプリント材料における(B)成分の含有量は、上記(A)成分の総質量に対して、0.5phr乃至30phrであることが好ましく、1phr乃至20phrであることがより好ましい。この割合が0.1phr以下の場合には、十分な硬化性が得られず、パターニング特性の悪化及び耐擦傷性の低下が起こるからである。ここで、phrとは、(A)成分の総質量100gに対する、光重合開始剤の質量を表す。
【0016】
<(C)成分>
本発明においては(C)成分として界面活性剤を含有してもよい。(C)成分である界面活性剤は、得られる塗膜の製膜性を調整する役割を果たす。
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンアセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレインエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、エフトップ(登録商標)EF301、同EF303、同EF352(三菱マテリアル電子化成株式会社製)、メガファック(登録商標)F171、同F173、同R−08、同R−30(DIC株式会社製)、フロラードFC430、同FC431(住友スリーエム株式会社製)、アサヒガード(登録商標)AG710、サーフロン(登録商標)S−382、同SC101、同SC102、同SC103、同SC104、同SC105、同SC106(旭硝子株式会社製)等のフッ素系界面活性剤を挙げることができる。
【0017】
上記界面活性剤は、単独又は2種以上の組み合わせで使用することができる。界面活性剤が使用される場合、その割合は、上記(A)成分の総質量に対して、好ましくは0.01phr乃至40phr、より好ましくは0.01phr乃至10phrである。
【0018】
<(D)成分>
本発明においては(D)成分として溶剤を含有してもよい。(D)成分である溶剤は、(A)成分の粘度調節の役割を果たす。
【0019】
上記溶剤としては、例えば、トルエン、p−キシレン、o−キシレン、スチレン、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコ−ルジメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、1−オクタノール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、γ−ブチルラクトン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn−ブチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、酢酸エチル、酢酸イソプロピルケトン、酢酸n−プロピル、酢酸イソブチル、酢酸n−ブチル、乳酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、アリルアルコール、n−プロパノール、2−メチル−2−ブタノール、イソブタノール、n−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−エチルヘキサノール、1−オクタノール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、トリメチレングリコール、1−メトキシ−2−ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフリフリルアルコール、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、イソプロピルエーテル、1,4−ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、N−シクロヘキシル−2−ピロリジンが挙げられ、上記(A)成分の粘度を調節することができるものであれば、特に限定されるものではない。
【0020】
上記溶媒は、単独又は2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0021】
本発明の光インプリント材料は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて、エポキシ化合物、光酸発生剤、光増感剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、密着補助剤及び離型性向上剤から選ばれる少なくとも1種の添加剤をさらに含有することができる。
【0022】
上記エポキシ化合物は、エポキシ基又はオキシラン環を有する化合物であり、例えば、エポリード(登録商標)GT−401、同PB3600、セロキサイド(登録商標)2021P、同2000、同3000、EHPE3150、EHPE3150CE、サイクロマー(登録商標)M100(以上、ダイセル化学工業株式会社製)、EPICLON(登録商標)840、同840−S、同N−660、同N−673−80M(以上、DIC株式会社製)が挙げられる。
【0023】
上記光酸発生剤としては、例えば、IRGACURE(登録商標)PAG103、同PAG108、同PAG121、同PAG203、同CGI725(以上、BASFジャパン株式会社製)、WPAG−145、WPAG−170、WPAG−199、WPAG−281、WPAG−336、WPAG−367(以上、和光純薬工業株式会社製)、TFE−トリアジン、TME−トリアジン、MP−トリアジン、ジメトキシトリアジン、TS−91、TS−01(以上、株式会社三和ケミカル製)が挙げられる。
【0024】
上記光増感剤としては、例えば、チオキサンテン系、キサンテン系、ケトン系、チオピリリウム塩系、ベーススチリル系、メロシアニン系、3−置換クマリン系、3,4−置換クマリン系、シアニン系、アクリジン系、チアジン系、フェノチアジン系、アントラセン系、コロネン系、ベンズアントラセン系、ペリレン系、ケトクマリン系、フマリン系、ボレート系が挙げられる。
【0025】
上記光増感剤は、単独又は2種以上の組み合わせで使用することができる。当該光増感剤を用いることによって、UV領域の波長を調整することもできる。
【0026】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、TINUVIN(登録商標)PS、同99−2、同109、同328、同384−2、同400、同405、同460、同477、同479、同900、同928、同1130、同111FDL、同123、同144、同152、同292、同5100、同400−DW、同477−DW、同99−DW、同123−DW、同5050、同5060、同5151(以上、BASFジャパン株式会社)が挙げられる。
【0027】
上記紫外線吸収剤は、単独又は2種以上の組み合わせで使用することができる。当該紫外線吸収剤を用いることによって、光硬化時に膜の最表面の硬化速度を制御することができ、離型性を向上できる場合がある。
【0028】
上記酸化防止剤としては、例えば、IRGANOX(登録商標)1010、同1035、同1076、同1135、同1520L(以上、BASFジャパン株式会社)が挙げられる。
【0029】
上記酸化防止剤は、単独又は2種以上の組み合わせで使用することができる。当該酸化防止剤を用いることで、酸化によって膜が黄色に変色することを防止することができる。
【0030】
上記密着補助剤としては、例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。当該密着補助剤を用いることによって、基材との密着性が向上する。当該密着補助剤の含有量は、上記(A)成分の総質量に対して、好ましくは5phr乃至50phr、より好ましくは10phr乃至50phrである。
【0031】
上記離型性向上剤としてはフッ素含有化合物が挙げられる。フッ素含有化合物としては、例えば、R−5410、R−1420、M−5410、M−1420、E−5444、E−7432、A−1430、A−1630(以上、ダイキン工業株式会社製)が挙げられる。
【0032】
本発明の光インプリント材料の調製方法は、特に限定されないが、(A)成分及び(B)成分、並びに任意成分である(C)成分及び(D)成分が均一に混合した状態であればよい。また、(A)成分乃至(D)成分を混合する際の順序は、均一な溶液が得られるなら特に限定されない。当該調製方法としては、例えば、(A)成分に(B)成分を所定の割合で混合する方法が挙げられる。また、これに更に(C)成分及び(D)成分を混合し、均一な溶液とする方法も挙げられる。さらに、この調製方法の適当な段階において、必要に応じて、その他の添加剤を更に添加して混合する方法が挙げられる。
【0033】
また、(D)成分である溶剤を用いる場合には、光照射前の被膜及び光照射後の被膜の少なくとも一方に対し、溶剤を蒸発させる目的で、焼成してもよい。焼成機器としては、特に限定されるものではなく、例えば、ホットプレート、オーブン、ファーネスを用いて、適切な雰囲気下、すなわち大気、窒素等の不活性ガス、真空中等で焼成することができるものであればよい。焼成温度は、溶媒を蒸発させる目的では、特に限定されないが、例えば、40℃乃至200℃で行うことができる。
【0034】
本発明の光インプリント材料は、基材に塗布し光硬化することで所望の被膜を得ることができる。塗布方法としては、公知又は周知の方法、例えば、スピンコート法、ディップ法、フローコート法、インクジェット法、スプレー法、バーコート法、グラビアコート法、スリットコート法、ロールコート法、転写印刷法、刷毛塗り、ブレードコート法、エアーナイフコート法を挙げることができる。
【0035】
本発明の光インプリント材料を塗布するための基材としては、例えば、シリコンウエハ、インジウム錫酸化物(ITO)が成膜されたガラス(ITO基板)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)が成膜されたガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、アクリル、プラスチック、ガラス、石英、セラミックスからなる基材を挙げることができる。また、可撓性を有するフレキシブル基材を用いることも可能である。
【0036】
本発明の光インプリント材料を硬化させる光源としては、特に限定されないが、例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、KrFエキシマーレーザー、ArFエキシマーレーザー、Fエキシマーレーザー、電子線(EB)、極端紫外線(EUV)等を挙げることができる。また、波長は、一般的には、436nmのG線、405nmのH線、365nmのI線、又はGHI混合線を用いることができる。さらに、露光量は、好ましくは、30乃至2000mJ/cm、より好ましくは30乃至1000mJ/cmである。
【0037】
光インプリントを行う装置は、目的のパターンが得られれば、特に限定されないが、例えば、東芝機械株式会社のST50、Obducat社製のSindre(登録商標)60、明昌機構株式会社製のNM−0801HB等の市販されている装置を用いることができる。
【0038】
本発明で用いる光インプリントに使用するモールド材としては、例えば、石英、シリコン、ニッケル、アルミナ、カルボニルシラン、グラッシーカーボンを挙げることができるが、目的のパターンが得られるなら、特に限定されない。また、モールドは、離型性を高めるために、その表面にフッ素系化合物等の薄膜を形成する離型処理を行ってもよい。離型処理に用いる離型剤としては、例えば、ダイキン工業株式会社製のオプツール(登録商標)HDが挙げられるが、目的のパターンが得られるなら、特に限定されない。
【0039】
光インプリントのパターンは、目的の電子デバイスに適合したパターンを選択すればよく、パターンサイズもこれに準ずる。パターンサイズは、例えば、ナノメートルオーダー及びマイクロメートルオーダーである。
【実施例】
【0040】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものでない。
【0041】
(合成例1)
BYK(登録商標)−UV3570(ビックケミー・ジャパン株式会社製)30gを300gのノルマルヘキサン中へ沈殿させた後、デカンテーションを行い、沈殿物を分離した。そしてエバポレーターを用いて沈殿物に含まれる微量のノルマルヘキサンを除去し、下記式(3)で表されるシリコーン骨格を有する化合物Aを得た。
【化5】


(式中、2つのLはそれぞれ独立にアクリロイルオキシ基又はメタアクリロイルオキシ基を表し、cは1乃至225の整数を表し、2つのeはそれぞれ独立に1乃至49の整数を表す。)
【0042】
[被膜形成用塗布液の調製]
<実施例1>
合成例1で得たシリコーン骨格を有する化合物Aを5g採取し、DAROCUR(登録商標)1173(チバ・ジャパン株式会社製)(以下、「DAROCUR1173」と略称する。)を0.25g(シリコーン材料Aの総質量に対して5phr)加え、インプリント材料PNI−1を調製した。
【0043】
<実施例2>
UMS−182(Gelest社製)を5g採取し、DAROCUR1173を0.25g(UMS−182の総質量に対して5phr)加え、インプリント材料PNI−2を調製した。本実施例で使用したUMS−182は、前記式(1)で表されるシリコーン骨格を有する粘度80乃至120cpの化合物であって、式(1)中、Lはメタアクリロイルオキシ基を表し、メタアクリロイルオキシプロピルメチルシロキサン部位を15乃至20モル%有する。
【0044】
<実施例3>
実施例2で用いたUMS−182をUMS−992(Gelest社製)へ変更した以外は、実施例2と同様にインプリント材料PNI−3を調製した。本実施例で使用したUMS−992は、前記式(1)で表されるシリコーン骨格を有する粘度50乃至125cpの化合物であって、式(1)中、Lはメタアクリロイルオキシ基を表し、メタアクリロイルオキシプロピルメチルシロキサン部位を99乃至100モル%有する。
【0045】
<実施例4>
RMS−083(Gelest社製)を5g採取し、DAROCUR1173を0.25g(RMS−083の総質量に対して5phr)加え、更にメチルエチルケトンを1g加え、インプリント材料PNI−4を調製した。本実施例で使用したRMS−083は、前記式(1)で表されるシリコーン骨格を有する粘度2000乃至3000cpの化合物であって、式(1)中、Lはメタアクリロイルオキシ基を表し、メタアクリロイルオキシプロピルメチルシロキサン部位を7乃至9モル%有する。
【0046】
<比較例1>
実施例2で用いたUMS−182をX−22−164(信越化学工業株式会社製)へ変更した以外は、実施例2と同様にインプリント材料PNI−5を調製した。本比較例で使用したX−22−164は、下記式(4)で表されるシリコーン骨格を有する粘度10cpの化合物である。
【化6】


(式中、nは1以上の整数を表し、2つのRは炭化水素基を表す。)
【0047】
<比較例2>
実施例2で用いたUMS−182をX−22−164AS(信越化学工業株式会社製)へ変更した以外は、実施例2と同様にインプリント材料PNI−6を調製した。本比較例で使用したX−22−164ASは、上記式(4)で表されるシリコーン骨格を有する粘度12cpの化合物である。
【0048】
<比較例3>
実施例2で用いたUMS−182をX−22−164A(信越化学工業株式会社製)へ変更した以外は、実施例2と同様にインプリント材料PNI−7を調製した。本比較例で使用したX−22−164Aは、上記式(4)で表されるシリコーン骨格を有する粘度25cpの化合物である。
【0049】
<比較例4>
実施例4で用いたRMS−083をX−22−164C(信越化学工業株式会社製)へ変更した以外は、実施例4と同様にインプリント材料PNI−8を調製した。本比較例で使用したX−22−164Cは、上記式(4)で表されるシリコーン骨格を有する粘度90cpの化合物である。
【0050】
[光インプリント]
ナノインプリント装置は、NM−0801HB(明昌機構株式会社製)を使用した。実施例1乃至実施例4並びに比較例1乃至比較例4で得られた各インプリント材料をパターニング試験した。用いたモールドはシリコン製であり、パターンはライン0.25μm、スペース1μmのラインアンドスペースパターン(以下、L/Sパターンと略称する。)を使用した。モールドは事前にオプツール(登録商標)DSX(ダイキン工業株式会社製)をノベックHFE−7100(住友スリーエム株式会社)(以下、ノベックHFE−7100)で0.1%に希釈した溶液へ浸漬し、温度が90℃、湿度が90RH%の高温高湿装置を用いて1時間処理し、ノベックHFE−7100でリンス後、エアーで乾燥させたものを使用した。
【0051】
実施例1で得たインプリント材料PNI−1をガラス基板上にスピンコートし、シリコンモールドを接着させた状態で、光インプリント装置に設置した。光インプリントは、常時23℃の条件で、a)10秒間かけて100Nまで加圧、b)高圧水銀ランプを用いて500mJ/cmの露光、c)10秒間かけて除圧、d)モールドと基板を分離して離型、というシーケンスで行い、L/Sパターンの転写を行った。そしてL/Sパターン形成の可否を走査型電子顕微鏡S−4800(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)にて確認した。
【0052】
さらに、実施例2、実施例3及び比較例1乃至比較例3で得た各インプリント材料を使用した以外は上記と同様の方法で、光インプリントを行った。そしてL/Sパターン形成の可否を走査型電子顕微鏡S−4800(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)にて確認した。
【0053】
実施例4で得たインプリント材料PNI−4をガラス基板上にスピンコートし、ホットプレート上にて80℃で1分間焼成を行った後、シリコンモールドを接着させた状態で、光インプリント装置に設置した。光インプリントは、常時23℃の条件で、a)10秒間かけて100Nまで加圧、b)高圧水銀ランプを用いて500mJ/cmの露光、c)10秒間かけて除圧、d)モールドと基板を分離して離型、というシーケンスで行い、L/Sパターンの転写を行った。そしてL/Sパターン形成の可否を走査型電子顕微鏡S−4800(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)にて確認した。
【0054】
比較例4で得たインプリント材料PNI−8を使用した以外は上記と同様の方法で、光インプリントを行った。そしてL/Sパターン形成の可否を走査型電子顕微鏡S−4800(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)にて確認した。
【0055】
各実施例及び各比較例で得たインプリント材料を用いてL/Sパターンの転写を行った結果を表1に示す。下記表1において、L/Sパターンが形成された場合を“○”で表し、L/Sパターンが形成されなかった場合を“×”で表した。
【表1】

【0056】
表1の結果から、実施例1乃至実施例4で得たインプリント材料を用いた場合は、いずれも光インプリントによるパターンの形成が可能であることが確認された。一方、比較例1乃至比較例4で得たインプリント材料を用いた場合は、いずれも光硬化させることが不可能であり、パターンの形成には至らなかった。以上の結果から、本発明はメチル/ジメチルシリコーン骨格を有する化合物を主成分として含む光インプリント材料の提供が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の光インプリント材料により得られる膜は、固体撮像装置(CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサ等)、太陽電池、LEDデバイス、ディスプレイ(液晶ディスプレイ、ELディスプレイ等)などの、低屈折率性が求められる部材を使用する電子デバイスへ好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】実施例1で得たインプリント材料を用いてL/Sパターンの転写を行い、走査型電子顕微鏡にてL/Sパターンが形成されたことを確認した結果を示す図である。
【図2】実施例2で得たインプリント材料を用いてL/Sパターンの転写を行い、走査型電子顕微鏡にてL/Sパターンが形成されたことを確認した結果を示す図である。
【図3】実施例3で得たインプリント材料を用いてL/Sパターンの転写を行い、走査型電子顕微鏡にてL/Sパターンが形成されたことを確認した結果を示す図である。
【図4】実施例4で得たインプリント材料を用いてL/Sパターンの転写を行い、走査型電子顕微鏡にてL/Sパターンが形成されたことを確認した結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:下記式(1)及び/又は式(2)で表されるシリコーン骨格を有する化合物、
【化1】


(式(1)中、aは0乃至400の整数を表し、bは4乃至20の整数を表し、Lはアクリロイルオキシ基又はメタアクリロイルオキシ基を表す。)
【化2】


(式(2)中、cは1乃至255の整数を表し、2つのdはそれぞれ独立に1又は2を表し、2つのeはそれぞれ独立に1乃至100の整数を表し、fは0又は1を表すと共にd+f=2の関係式を満たし、2つのLはそれぞれ独立にアクリロイルオキシ基又はメタアクリロイルオキシ基を表す。)
及び
(B)成分:光重合開始剤
を含み、前記(B)成分の含有量は前記(A)成分の総質量に対して0.5phr乃至30phrである光インプリント材料。
【請求項2】
(C)成分として界面活性剤をさらに含有する、請求項1に記載の光インプリント材料。
【請求項3】
(D)成分として溶剤をさらに含有する、請求項1又は請求項2に記載の光インプリント材料。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載の光インプリント材料から作製され、パターンが転写された膜。
【請求項5】
請求項4に記載のパターンが転写された膜を基材上に備えた部材。
【請求項6】
請求項4に記載のパターンが転写された膜を基材上に備えた固体撮像装置。
【請求項7】
請求項4に記載のパターンが転写された膜を基材上に備えたLEDデバイス。
【請求項8】
請求項4に記載のパターンが転写された膜を基材上に備えた太陽電池。
【請求項9】
請求項4に記載のパターンが転写された膜を基材上に備えたディスプレイ。
【請求項10】
請求項4に記載のパターンが転写された膜を基材上に備えた電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−65768(P2013−65768A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204492(P2011−204492)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】