説明

シリコーン/ポリウレタンによりコーティングされた布帛

水性シリコーンエマルション由来のシリコーン成分と、水性シリコーン分散体由来のポリウレタン成分との反応生成物を含むコーティングを持つ布帛が、開示される。本布帛は特に、向上したエアもしくはガス保持性を持つエアバッグ製造において有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン成分と、ポリウレタン成分との反応生成物から結果得られるコーティングを持つ布帛(fabric)を提供する。より具体的には、本発明の布帛は、水性シリコーンエマルション由来のシリコーン成分と、水性ポリウレタン分散体由来のポリウレタン成分との反応生成物を含むコーティング組成物により、コーティングされる。本発明のコーティング布帛は特に、自動車における適用のためのエアバッグ構築において有用である。
【背景技術】
【0002】
典型的には、エアバッグ布帛は、シリコーン組成物によりコーティングされ、展開(deployment)時の高温ガス点火に関する高温バーストから必要とされる熱障壁、および、その後の非常に短い期間における幾らかのエア/ガス保持性を有するエアバッグを与える。より安全な冷たいエアカニスターおよびハイブリッドエア/ガス源の進歩に伴い、エアバッグコーティングの高温障壁特性はもはや、要件ではない。代わりに、次世代のサイドエアバッグおよび膨張可能なカーテン(つまり、サイドエアバッグ)は、加圧されたエア/ガスを保持して該バッグの初期バースト圧に見合っていて、5秒間以上、巻き込み防止(rollover protection)を与えるのに充分長く、膨張したままである必要がある。シリコーンコーティングが、エアおよびガスに対して高度に透過性であることが知られているので、次世代のサイドエアバッグおよび膨張可能なカーテン用にはもはや、理想的なコーティング材料ではない。エアバッグ布帛へと良好にコーティングおよび接着する、エア/ガス高保持性コーティングに関する必要性が、存在している。
【0003】
コーティング重量を減らし、エアバッグにおける使用のためのコーティング布帛の低透過性を維持すると報告されている1技術は、例えば米国特許第6,177,365号明細書に開示されるような2層コーティング系を使用するべきとされてきた。該’365号特許は、非シリコーン材料の布帛への第1層の適用、次いで、シリコーン含有表面コーティング(topcoat)の適用を教示するものである。米国特許第6,177,366号明細書も、エアバッグ布帛用の2層コーティング系を教示するものであり、ここでは、第1層が30%までのシリコーン樹脂を含有し、表面コーティングがシリコーン材料を含有する。米国特許第6,239,046号明細書は、接着性ポリウレタンの第1コーティング層と、エラストマーポリシロキサンの第2コーティング層とを持つエアバッグを教示するものである。
【0004】
米国特許第5,110,666号明細書におけるようなポリウレタン主体、もしくは、米国特許第6,169,043号明細書に見出されるようなポリウレタン/ポリアクリレート分散体主体の、代わりのコーティング組成物が開示されている。米国特許係属出願第10/118870、10/118746、および10/321234号において、我々は、エラストマーポリマーおよびポリウレタン分散体のエマルションからの、硬化可能なコーティング組成物、ならびに、エアバッグを包含するコーティング布帛のための方法を開示する。
【0005】
米国特許第6,077,611号明細書は、水性ポリウレタンエマルションとの、水性シリコーンエマルションの組み合わせからの、印刷用紙用解離性組成物を開示するものである。しかしながら、該’611号特許は、エアバッグ布帛をコーティングするためのその組成物に関する使用を教示しないものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記に引用されたコーティング系が、エアバッグ技術における進捗を代表する一方、エアバッグでの使用のためのコーティング布帛用の改良された組成物および技術を提供する必要性が、なお存在している。特に、より低いコーティング重量での同様もしくは改良された浸透性、および、改良された経時安定性を与えるコーティング組成物が望まれる。このようなコーティング布帛は、低く抑えられたガス透過性を有する布帛を必要とする如何なる適用においても、更なる利用価値を持つと期待される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、その表面の少なくとも1部分上にコーティング組成物を持つ布帛を含む、コーティングされた布帛を与え、ここで本コーティング組成物は:
(A)水性シリコーンエマルション由来のシリコーン成分5〜60重量部;および
(B)水性ポリウレタン分散体由来のポリウレタン成分40〜95重量部
の反応生成物を含む。
本発明は更に:
(I)(A)水性シリコーンエマルション由来のシリコーン成分5〜60重量部;
および
(B)水性ポリウレタン分散体由来のポリウレタン成分40〜95重量部
を含む組成物を、布帛の1表面上に適用すること;ならびに
(II)この層を、硬化コーティングを形成させるのに充分な時間、エアに晒すこと
を含む、布帛コーティング方法を提供する。本発明は、この方法により調製された布帛にも関する。
【0008】
本発明のコーティングされた布帛(コーティング布帛)は、改良されたエア/ガス保持性を有する自動車エアバッグ物品構築に適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明における成分(A)として適切なシリコーン成分は、水性シリコーンエマルション由来である。典型的には、該水性シリコーンエマルションは、有機ポリシロキサンの水性連続エマルションである。水性シリコーンエマルションは当業界においてよく知られ、種々の乳化剤と共に、水中に有機ポリシロキサンを分散させることにより、よく生産される。該シリコーンエマルションを作り出すのに使用され得る種々の乳化剤は、アニオン性、非イオン性、カチオン性、および双イオン性界面活性剤、ならびに、ポリビニルアルコールを包含する。該水性シリコーンエマルションは、硬化可能なシリコーンエマルションであるか、または、前硬化(pre-cured)シリコーンエマルションであり得る。
【0010】
硬化可能な該シリコーンエマルションの実施形態において、硬化可能な該シリコーンエマルションは:
(a)硬化可能な有機ポリシロキサン
(b)任意の架橋剤
(c)該有機ポリシロキサンを硬化させるのに充分な量の硬化剤
を含む。
【0011】
硬化可能な有機ポリシロキサン(a)は、本明細書において、その分子中に少なくとも2つの硬化可能な基が存在する如何なる有機ポリシロキサンとしても定義される。本明細書において使用される場合、「硬化可能な基」は、それ自体と、あるいは、該有機ポリシロキサンを架橋させる架橋剤と反応することが可能な如何なる炭化水素基としても定義される。この架橋が結果的に、硬化した有機ポリシロキサンを与える。本発明のシリコーンエマルションにおける成分として使用され得るタイプの硬化可能な有機ポリシロキサンの代表は、当業界において知られているものであり、硬化時に、シリコーンラバーもしくはエラストマーを生成させる。典型的には、これらの有機ポリシロキサンは、有機ポリシロキサン、硬化剤、および任意に架橋剤上の種々の硬化基を用いる数多くの架橋メカニズムを経由して、硬化され得る。当業界においてより汎用され、シリコーンエマルションから硬化シリコーンフィルムを調製する架橋メカニズムの2つが、付加硬化および縮合硬化である。このため、成分(a)、(b)、および(c)が、該有機ポリシロキサンのための硬化もしくは架橋メカニズムの選択により、選択され得る。
【0012】
本発明の1実施形態では、硬化可能な該シリコーンエマルションは、付加硬化可能な有機ポリシロキサンを含む。この実施形態では、該シリコーンエマルションは、少なくとも2つのアルケニル基を含有する硬化可能な有機ポリシロキサンを含み、有機ヒドリドシリコン化合物が架橋剤として使用され、ヒドロシリル化触媒が硬化剤として使用される。このため、硬化可能なエマルションの更なる実施形態では、該シリコーンエマルションは:
(a’)少なくとも2つのアルケニル基を含有する、硬化可能な有機ポリシロキサン
(b’)有機ヒドリドシリコン化合物
(c’)ヒドロシリル化触媒
を含む。
成分(a’)はその分子中に、2〜20炭素原子を持つ少なくとも2つのアルケニル基を含有する硬化可能な有機ポリシロキサンから選択される。硬化可能な該有機ポリシロキサン上のアルケニル基は特に、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、およびデセニル、好ましくは、ビニルもしくはヘキセニルにより例示される。該アルケニル官能基の位置は決定的ではなく、その分子鎖末端において、その分子鎖上の末端でない位置において、または両方の位置において結合されてもよい。硬化可能な該有機ポリシロキサンの残りの(つまり、アルケニルでない)シリコン結合有機基は独立に、脂肪族不飽和部分を含有しない炭化水素基もしくはハロゲン化炭化水素基から選択される。これらは特に、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、およびヘキシルのような、1〜20炭素原子を持つアルキル基;シクロヘキシルおよびシクロヘプチルのような、シクロアルキル基;フェニル、トリル、およびキシリルのような、6〜12炭素原子を持つアリール基;ベンジルおよびフェニルエチル(フェネチル)のような、7〜20炭素原子を持つアラルキル基;ならびに、3,3,3−トリフルオロプロピルおよびクロロメチルのような、1〜20炭素原子を持つハロゲン化アルキル基により例示されてよい。典型的には、硬化可能な該有機ポリシロキサン中の非アルケニルシリコン結合有機基は、硬化可能な該有機ポリシロキサン中の有機基の少なくとも85%、あるいは、少なくとも90モル%にまでなる。
【0013】
このため、硬化可能な有機ポリシロキサン(a’)は、このような有機基を含有するホモポリマー、コポリマー、もしくはターポリマーであり得る。例は、他の中でも、ジメチルシロキシ単位とフェニルメチルシロキシ単位とを含むコポリマー、ジメチルシロキシ単位と3,3,3−トリフルオロプロピルメチルシロキシ単位とを含むコポリマー、ジメチルシロキシ単位とジフェニルシロキシ単位とのコポリマー、ならびに、ジメチルシロキシ単位、ジフェニルシロキシ単位、およびフェニルメチルシロキシ単位のインターポリマー(interpolymers)を包含する。その分子構造も決定的ではなく、直鎖および部分的に分岐した直鎖構造により例示され、直鎖系が最も典型的である。
【0014】
本発明の付加硬化の実施形態では化合物(b’)が加えられ、これは有機ヒドリドシリコン化合物(b’)であり、硬化可能な有機ポリシロキサン(a’)と架橋する。本有機ヒドリドシリコン化合物は、各分子中に少なくとも2つのシリコン結合水素原子を含有する有機ポリシロキサンであり、本組成物の硬化中に、(a’)のアルケニル官能基と反応させられる。当業者は勿論、硬化可能な本有機ポリシロキサンを硬化させるためには、化合物(b’)が2つより多い官能基を持たなくてはならないことを認めることとなろう。化合物(b’)中のシリコン結合水素の位置は決定的でなく、その分子鎖末端において、その分子鎖に沿った末端でない位置において、または両方の位置において結合されてもよい。成分(b’)のシリコン結合有機基は独立に、硬化可能な有機ポリシロキサン(a’)に関して前記した飽和炭化水素基もしくはハロゲン化炭化水素基のいずれからでも選択され、これらの好ましい実施形態を包含する。成分(b’)の分子構造も決定的でなく、直鎖、部分的に分岐した直鎖、分岐、環状、および網目構造により例示され、直鎖ポリマーもしくはコポリマーが典型的である。
【0015】
典型的な有機ヒドリドシリコン化合物は、RSiO1/2単位もしくはHRSiO1/2単位により末端化されたRHSiO2/2単位を含むポリマーもしくはコポリマーであり、式中、Rは独立に、1〜20炭素原子を持つアルキル基、フェニル、もしくはトリフルオロプロピルから選択され、典型的にはメチルである。また、典型的には、成分(b’)の粘度は25℃において0.5〜1,000mPa・s、あるいは、2〜500mPa・sである。成分(b’)は典型的に、シリコンに結合した水素を0.5〜1.7重量%持つ。あるいは、成分(b’)は、本質的にメチルヒドリドシロキサン単位からなるポリマー、または、本質的にジメチルシロキサン単位とメチルヒドリドシロキサン単位とからなるコポリマーから選択され、これらは、シリコンに結合した水素を0.5〜1.7重量%持ち、25℃において2〜500mPa・sの粘度を持つ。このような典型的な系は、トリメチルシロキシ基もしくはジメチルヒドリドシロキシ基から選択される末端基を持つ。成分(b’)はまた、上記系の2つ以上の組み合わせであってもよい。
【0016】
有機ヒドリドシリコン化合物(b’)は下記されるが、成分(c’)の存在下、有機ポリシロキサン(a’)を硬化させるのに充分な濃度において使用される。典型的には、その含量が(a’)中のSi−アルケニルに対するその中のSiHのモル比が1より大きくなるように、調整される。典型的には、このSiH/アルケニル比は50以下であり、あるいは、1〜20、あるいは、1〜12である。これらのSiH−官能基を有する材料は当業界においてよく知られ、多くが市販されている。
【0017】
本発明の付加硬化の実施形態では、成分(c’)はヒドロシリル化触媒であり、有機ポリシロキサン(a’)と有機ヒドリドシリコン化合物(b’)との硬化を加速させる。それは、白金黒、シリカ担持白金、カーボン担持白金(Pt−C)、塩化白金酸、塩化白金酸アルコール溶液、白金/オレフィン錯体、白金/アルケニルシロキサン錯体、白金/β−ジケトン錯体、白金/ホスフィン錯体等のような白金触媒;塩化ロジウムおよび塩化ロジウム/ジ(n−ブチル)スルフィド錯体等のようなロジウム触媒;ならびに、カーボン担持パラジウム(パラ炭、Pd−C)、塩化パラジウム(PdCl)等のようなパラジウム触媒により例示される。成分(c’)は典型的に、塩化白金酸;二塩化白金;四塩化白金;塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサンとを反応させることにより生成され、ジメチルビニルシロキシ末端封鎖ポリジメチルシロキサンを用いて稀釈され、Willingへの米国特許第3,419,593号明細書に従って調製される白金錯体触媒;ならびに、Brownらへの米国特許第5,175,325号明細書に従って調製される塩化第一白金とジビニルテトラメチルジシロキサンとの中和錯体;のような、白金主体の触媒である。あるいは、成分(c’)は、塩化第一白金とジビニルテトラメチルジシロキサンとの中和錯体である。
【0018】
成分(c’)は、硬化可能な有機ポリシロキサン(a’)と成分(b’)との間の反応を促進するのに充分な触媒量で本組成物へと加えられ、該有機ポリシロキサンを硬化させる。典型的には、該ヒドロシリル化触媒は、前記したシリコーン成分の総重量に基づき、0.1〜500ppm、あるいは、0.25〜50ppmの金属原子を与えるよう加えられる。
【0019】
もう1つ別の実施形態では、成分(a)、(b)、および(c)は、該有機ポリシロキサンの縮合硬化を行うよう選択される。縮合硬化ということであれば、少なくとも2つのシリコン結合水酸基(つまりシラノール、硬化可能な基と考えられる)を持つ有機ポリシロキサンが成分(a)として選択され、有機ヒドリドシリコン化合物が任意の架橋剤(b)として選択され、錫触媒のように当業界において知られている縮合硬化触媒が成分(c)として選択されることになる。縮合硬化可能な有機ポリシロキサンとして有用な有機ポリシロキサンは、その分子中に少なくとも2つの水酸基(つまりシラノール基)を含有する、如何なる有機ポリシロキサンでもある。典型的には、成分(a’)として上記された有機ポリシロキサンのいずれもが、縮合硬化の実施形態における有機ポリシロキサンとして使用され得るが、この実施形態では、そのアルケニル基は必要でないことになる。任意の該架橋剤として有用な有機ヒドリドシリコン化合物は、成分(b’)に関して下記されるものと同じである。この実施形態における該硬化剤として有用な縮合触媒は、有機ポリシロキサン(a’)のSiOH基と、有機ヒドリドシリコン化合物(b’)のSiH基との間の縮合反応を促進してくれる如何なる化合物でもあり、それで、−Si−O−Si−結合の形成により、前者を硬化させる。適切な触媒の例は、二酢酸ジブチル錫、二ラウリル酸ジブチル錫、酢酸トリプロピル錫、オクタン酸第一錫、蓚酸第一錫、ナフタレンカルボン酸第一錫のような金属カルボキシレート;トリエチルアミン、(ジ)エチレントリアミンのようなアミン;ならびに、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム、β−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム−2−エチルヘキサン酸、およびβ−ヒドロキシエチルベンジルトリメチルジメチルアンモニウムブトキシドのような4級アンモニウム化合物(例えば、米国特許第3,024,210号明細書参照)を包含する。
【0020】
成分(A)はまた、前硬化シリコーンエマルションでもあり得る。この実施形態では、該シリコーン成分は、乳化されて前記水性シリコーンエマルションを形成する前に、硬化される。前硬化シリコーンの水性エマルションは当業界においてはよく知られ、本発明の成分(A)として適切なものと期待される。典型的には、このようなエマルションは、有機ポリシロキサンを乳化させることにより形成され、これは上記したように、付加もしくは縮合技術により硬化されたものであり、適切な乳化剤を使用して、引き続き乳化される。本発明の成分(A)として有用な前硬化シリコーンエマルションの、代表的な、非限定例は、米国特許第5,674,937号明細書および米国特許第5,994,459号明細書に記載される。
【0021】
成分(A)はまた、そのエマルションが形成された後に、シリコーン組成物の硬化が起きるというプロセス由来の、前硬化シリコーンエマルションでもあり得る。この場合、該エマルション内の該シリコーン組成物は、自己硬化可能な官能基を含有するシリコーン化合物、または、ヒドロシリル化における反応性基を含有するシリコーン化合物混合物であってもよい。
【0022】
本発明の組成物における成分(B)は、ポリウレタン分散体である。本明細書において使用される場合の「ポリウレタン分散体」は、水中のポリウレタンポリマー混合物を記述するものである。ポリウレタン分散体を調製する方法は当業界においてよく知られており、多くのポリウレタン分散体が市販されている。ポリウレタンポリマーは一般的に、それらのモノマー(単量体)含量により特徴付けられ、ポリオールおよび鎖延長剤とのジイソシアネートの反応を最もよく含んでいる。本発明が、本ポリウレタン分散体が如何なる既知のポリウレタンの水性混合物でもあり得るとしている一方、典型的には、該水性ポリウレタン分散体における使用に適したポリウレタンは:
(a)1分子につき少なくとも2つのイソシアネート(−NCO)官能基を持つイソシアネート化合物;および
(b)1分子につき少なくとも2つのヒドロキシ官能基(水酸基)および250〜10,000g/molの範囲の分子量を持つポリオール
の反応生成物である。該ポリオールは、ヒドロキシ含有もしくはヒドロキシ末端化ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリカプロラクトン、ポリチオエーテル、ポリエーテルエステル、ポリオレフィン、およびポリジエンのような、ポリウレタン製造においてよく見られるものから選択されてよい。ポリエーテルポリウレタンおよびその分散体調製に適したポリエーテルポリオールは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、もしくはこれらの混合物のような、環状オキシドの重合生成物を包含する。よく見られるポリエーテルポリオールは、ポリオキシエチレン(PEO)ポリオール、ポリオキシプロピレン(PPO)ポリオール、ポリオキシテトラメチレン(PTMO)ポリオール、およびポリ(オキシエチレン−コ−ポリプロピレン)ポリオールのような環状オキシドの混合物由来のポリオールを包含する。ポリエーテルポリオールの典型的な分子量は、250〜10,000g/molの範囲であり得る。ポリエステルポリウレタンおよびその水性分散体調製に適したポリエステルポリオールは、ジカルボン酸もしくはそのエステルを形成した誘導体との、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、フランジメタノール、ポリエーテルジオール、またはこれらの混合物の、ヒドロキシ末端化もしくはヒドロキシ含有反応生成物を包含する。
【0023】
ポリエーテルエステルポリウレタンおよびポリエーテルカーボネートポリウレタンのような修飾ポリエーテルポリウレタンも、水性ポリウレタン分散体調製に適したポリウレタンであることがある。これらの修飾ポリエーテルポリウレタンは、該ポリウレタン製造中に、更なるポリエステルポリオールもしくはポリカーボネートポリオールをポリエーテルポリオール中へと取り込むことにより、誘導され得る。
【0024】
典型的には、本発明の組成物における成分(B)として、本ポリウレタン分散体を調製するのに有用なポリウレタンポリマーは、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエーテルエステルポリウレタン、ポリエーテルカーボネートポリウレタン、ポリカプロラクトンポリウレタン、炭化水素ポリウレタン、脂肪族ポリウレタン、芳香族ポリウレタン、およびこれらの混合物から選択される。
【0025】
本明細書において使用される場合の「ポリウレタン分散体」は例えば、予め形成されたポリウレタンポリマーが、界面活性剤添加および剪断を行うと共に水性媒体中へと乳化されるポリウレタンポリマーの、従来のエマルションを包含し、自己分散ポリウレタンポリマーの安定混合物も、両方包含する。自己分散ポリウレタンポリマーのポリウレタン分散体が当業界においてよく知られており、多くが市販されている。これらのポリウレタン分散体は一般的に、更なる界面活性剤を有さず、これは、界面活性剤のような特徴を持つ化学的な部分が、該ポリウレタンポリマー中へと(既に)取り込まれてしまっているからであり、このため「自己乳化性」もしくは「自己分散性」であるからである。本発明において有用なポリウレタン分散体中へと取り込まれ得る内部乳化部分の代表例は、スルホネート、カルボキシレート、および4級アミンのようなイオン団;ならびに、ポリエーテルのような非イオン性乳化基を包含する。このようなポリウレタン分散体が当業界においてよく知られており、典型的には、1段階もしくは2段階プロセスにより、調製される。典型的には、イソシアネート末端化ポリウレタンプレポリマーが、イソシアネート、ポリオール、任意の鎖延長剤、および、親水基を含有して該プレポリマーを水に分散するよう(水分散性)にする少なくとも1種のモノマーからできている。本ポリウレタン分散体は次いで、該イソシアネート末端化ポリウレタンプレポリマーを、他のポリイソシアネートを用いて水中に分散させることにより、調製され得る。更に、鎖延長は、該水性分散体への鎖延長剤の添加により、影響され得る。該ポリウレタンポリマーを水分散性とするのに使用される親水基の選択によるが、該親水基をイオン(化学)種へと変換する、例えば、カルボキシル基をイオン性の塩へ、または、アミンをアミン塩もしくはカチオン性4級基へと変換するのに、更なる反応ステップが必要とされることがある。
【0026】
本発明の組成物における成分(B)としての使用に適しているポリウレタン分散体の代表的な非限定例、ならびに、ポリウレタン分散体を調製するのに有用な技術の一般的な記載は、米国特許第4,829,122号明細書、米国特許第4,921,842号明細書、米国特許第5,025,064号明細書、米国特許第5,055,516号明細書、米国特許第5,308,914号明細書、米国特許第5,334,690号明細書、米国特許第5,342,915号明細書、米国特許第5,717,024号明細書、米国特許第5,733,967号明細書、米国特許第6,017,998号明細書、米国特許第6,077,611号明細書、米国特許第6,147,155号明細書、および米国特許第6,239,213号明細書に見られる。
【0027】
本発明の組成物における成分(B)としての使用に適している市販のポリウレタン分散体の代表的な非限定例は:
WITCOBOND W290H、W296、およびW213(Uniroyal Chemical Division,Crompton Corporation,Middlebury,CT);
DISPERCOLL U42,BAYHYDROL121およびBayhydrol123ポリカーボネートポリウレタン分散体(100 Bayer Road,Pittsburgh,PA15025);
SANCURE2710および2715脂肪族ポリエーテルポリウレタン分散体(Noveon,Inc.Cleveland,OH);
NEOREZ R−966、R−967、R−9603脂肪族ポリウレタン分散体(NeoResins Division,Avecia,Wilmington,MA)
を包含する。
【0028】
任意に、接着促進剤たる成分(C)が、(A)と(B)との反応生成物へと加えられ、本発明のコーティング組成物を形成する。一般的に、該接着促進剤は、種々の表面へのポリマーフィルムの接着を促進すると当業界において知られている有機官能基化シランから選択され得る。しばしば、これらの有機官能基化シランは当業界において、シランカップリング剤とも言われる。本発明の硬化可能な組成物へと加えられ得る有機官能基化シランの典型的なものは、米国特許第6,042,943号明細書に記載のものである。典型的には、該有機官能基化シランは、3−(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、およびγ−グリシジルプロピルトリメトキシシランから選択される。あるいは、該有機官能基化シランは、Z−6040(Dow Corning Corporation,Midland,MI)のような、γ−グリシジルプロピルトリメトキシシランである。
【0029】
本組成物へと加えられる接着促進剤の量は変動し得るが、一般的に、本コーティング組成物全体の0.05〜10.0重量%である。あるいは、該接着促進剤は、本コーティング組成物全体の0.1〜5重量%である。
【0030】
あるいは、本エアバッグ布帛は、本発明の組成物を用いてのコーティングより前に、下記に定義されるように、接着促進剤を用いて処理され得る。この方式で使用される場合、10g/m未満のコーティング重量が、典型的には本エアバッグ布帛への本硬化コーティングの接着を確実にするのに充分である。
【0031】
成分(D)として他の添加物が任意に、本発明のコーティング組成物中へと取り込まれ得、更なる特定の特徴を派生させる。このような添加物は、コロイドシリカ、発煙シリカのような強化もしくは増量充填剤;着色料および色素;熱安定化剤、UV安定化剤、および天候安定化剤のような安定化剤;難燃剤、増粘剤、殺生物剤、および保存料を包含するが、これらに限定されない。
【0032】
硬化可能な本コーティング組成物は、バッチ法もしくは連続法で、粉挽き、配合、および攪拌のような、当業界において知られている技術のいずれかにより、成分(A)、(B)、ならびに任意に(C)および(D)を混合することにより、調製され得る。これら成分および最終的に得られる硬化可能なコーティング組成物の粘度が典型的に、選択される技術および特定の装置を決める。硬化可能な本コーティング組成物を調製するのに使用され得るバッチリアクターの代表例は、以下の供給元から容易に入手できるバッチミキサーを包含する。
Ross, Myers, Turello, Premier, Hockmeyer, および Spangenberg
【0033】
本発明はまた、布帛をコーティングする方法も提供し、これは:
(I)本布帛の1表面上に:
(A)水性シリコーンエマルション由来であるシリコーン成分5〜60重量部;
および
(B)水性ポリウレタン分散体由来であるポリウレタン成分40〜95重量部
を含む組成物を適用すること;ならびに
(II)硬化コーティングを形成させるのに充分な時間、エア(空気)にこの層を晒すこと
を含む。
【0034】
この方法における成分(A)および(B)は前記と同様であり、これらの成分を布帛へと適用する技術が、更に以下に記載される。
【0035】
本発明の本方法のステップ(II)は、本布帛上の本組成物の層を、硬化コーティングを形成させるのに充分な時間、エア(空気)に晒すステップである。ステップ(II)は、このステップが実施される温度を、例えばおよそ室温から約180℃へ、あるいは、室温から約150℃へ、あるいは、およそ室温から約130℃へ上昇させることにより加速され得、本コーティングが適切な長さの時間で硬化するようにする。
【0036】
本コーティング組成物は、既知の技術による布帛基材へと適用されてよい。本組成物は種々のコーティング重量で適用され得るが、典型的なコーティング重量は30〜35g/mである。コーティング技術は、ナイフコーティング、ロールコーティング、含浸コーティング、フローコーティング、搾取コーティング、および噴霧コーティングを包含するが、これらに限定されない。ナイフコーティングは、エア上ナイフ法、ロール上ナイフ法、泡上ナイフ法、および段差テーブル上ナイフ法を包含する。ロールコーティングは、単一ロールコーティング法、2重ロールコーティング法、多重ロールコーティング法、逆ロールコーティング法、グラビアロールコーティング法、転写ロールコーティング法を包含する。
【0037】
本コーティング組成物は、本コーティングが硬化するようになるのに充分な時間、エア(空気)に本組成物を晒すことにより、硬化され得る。該硬化ステップは、その温度を、例えばおよそ室温から約180℃へ、あるいは、室温から約150℃へ、あるいは、およそ室温から約130℃へ上昇させることにより加速され得、本コーティングが適切な長さの時間で硬化するようにする。例えば、本コーティング組成物は典型的に、150℃において約3分未満で硬化する。
【0038】
本発明の本コーティング組成物は、すばらしいフィルム形成性を持ち、布帛、繊維、糸、およびテキスタイルのような種々の基材へと良好に接着する。このため、本発明のコーティングは、種々の布帛、繊維、糸、およびテキスタイルへと適用され得る。
【0039】
本コーティング組成物は、湿っているかもしくは乾燥しているエアバッグ布帛上において適用され得る。これらの水主体のエマルションエアバッグコーティングは、エアバッグ用織布布帛、前縫(pre-sewn)エアバッグロール基材、もしくは一体型織布(OPW)エアバッグ布帛のような、エアバッグ物品を構成するのに有用である如何なる布帛上にも、直接適用され得る。他の繊維から調製される布帛およびエアバッグもまた、本発明において開示されるSi/PUコーティングと共に適用され、空気透過性の同様な減少に至る。例えばの繊維は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、およびこれらを含有する誘導体のようなポリエステル、ポリアミド繊維、ポリエーテルエステル、ポリエステルアミドコポリマー、ならびにポリエーテルアミドコポリマーを包含するが、これらに限定されない。
【0040】
本発明のコーティング組成物はまた、糸練り操作を直ちに伴えば、湿った布帛にも適用され得る。本組成物は、布帛表面への良好な接着を与え、不完全さなしで、一様なコーティングへと乾燥する。
【0041】
本発明のコーティング組成物は、布帛コーティングとして有用であるコーティングを生成させ、これは特に、相対的により低いコーティング重量で、コーティングされた布帛の空気透過性を減少させるためのものである。このため、本発明のコーティング組成物は、向上したエア/ガス保持性を有する自動車エアバッグ物品の構築に適したコーティング布帛を与える。
【実施例】
【0042】
以下の実施例が記され、本発明の組成物および方法を更に例示するが、添付の請求項に描かれる本発明を限定するように解釈されるべきではない。本実施例中の全ての「部」および「%」は重量基準であり、対峙する方向へ指示されなければ、全ての測定値は約23℃において得られたものである。
【0043】
形成されたエマルションコーティング組成物の粒子サイズおよびプロファイルが、0.05〜900μmの範囲中の粒子サイズを検出する300RFmmレンジのレンズを備えたMALVERN MASTERSIZER S(Malvern Instruments,Malvern,UK)を使用して、評価された。粒子サイズプロファイルとは、混合エマルションコーティングの安定性および相容性を指し示すものである。エマルションコーティングの粒子サイズプロファイルは、これら3パラメーター:D(v,0.5)、D(v,0.9)、および「スパン(span)」を使用して報告される。D(v,0.5)は平均粒子サイズとも言われ、このサイズよりもサンプルの50%がより小さく、サンプルの50%がより大きいという粒子サイズである。この値は、塊中央直径(mass medium diameter)としても知られる。D(v,0.9)は、サンプルの90%がこのサイズを下回る粒子サイズを与える。「スパン」とは、粒子サイズ分布幅の測定値であり、D(v,0.5)に対する[D(v,0.9)−D(v,0.10)]の比である。
【0044】
エアバッグ用コーティングとしての、本発明を代表する組成物の効果が、ナイロン6,6ポリアミドマルチフィラメント糸から織られたT字形エアバッグを使用して、エア展開試験により評価された。該T字形エアバッグは、OPW技術を使用して、470dtex(もしくは235g/m)の織布特性を有する織布布帛から生産され、1面につき0.0454〜0.04796mの表面積を持っていた。本コーティングは、Werner Mathis U.S.A.ラボコーター(Concord,NC)上で、エア上ナイフ法を使用して、該エアバッグ布帛上へと適用された。コーティングされた該エアバッグは100℃1分間、瞬間的に乾燥され、次いで130℃において3分間、硬化された。コーティングされた該T字形バッグは次いで、ラボ試験ユニットを使用して、エア展開および保持性に関して評価された。該展開試験は、該バッグの開口部を通して、該試験装置上へと該T字形バッグを載せることを含んでいた。予定された量のエアにより加圧されたカニスターが次いで、該T字形バッグ中へと「爆発」(つまり素速く解放)され、該T字形バッグ内部において、初期ピーク圧が3.5バール(350kPa)に達した。該T字形バッグ内部の空気圧は常にモニターされ、時間の関数としてグラフ化された。0.5バール(50kPa)の圧力へと降下するのに必要とされた時間を、該T字形バッグの展開保持時間として報告する。
【0045】
実施例1〜3
シリコーンコーティングされたエアバッグの性能の比較例
本発明のコーティングのエア保持性を例示するために、一連のエアバッグコーティング組成物が、エアバッグコーティング産業において現在使用される代表的な商業製品から調製された。DC3730(ダウ=コーニング・コーポレーション、ミッドランド、MI)液体シリコーンラバー(LSR)が、この比較用に選択された。DC3730は、2部シリコーン(A部およびB部)として供給されており、ビニル官能基化液体シリコーン、ヒドリド官能基化液体、白金触媒、シリカ充填剤、およびその他を含んでいる。該LSRは熱硬化して、架橋シリコーンコーティングマトリックスを形成した。その結果の機械的特性を、表1にまとめる。
【0046】
【表1】

【0047】
これらの実施例において示された通り、5秒以上のT字形バッグ展開保持時間を達成するには、ナイロン6,6上100g/mを超えたコーティング重量のエアバッグが必要とされた。加えて、該LSRによりコーティングされたエアバッグは、実施例1〜3に例示される通り、相対的に乏しい熱経時安定性を持っている。
【0048】
実施例4〜6
参照例:硬化可能なLSRシリコーンエマルションの調製
本発明のコーティング組成物の調製に使用され得るシリコーンエマルションの代表例としての使用のために、硬化可能なシリコーンエマルションが調製された。これらのシリコーンエマルションの処方を、表2に示す。これらのエマルションにおいて使用されるシリコーン成分は:
a)Viシロキサン1、2、および3とされる、3つの異なるビニル官能基化有機ポリシロキサン;ならびに
b)本有機ヒドリドシリコン化合物として、水素0.76%を含有し粘度5cSt(0.05cm/s)を持つポリ(ジメチル−コ−メチル水素)シロキサン
を含むものであった。Viシロキサン1は、ジメチルビニルシロキシ末端化ジメチルポリシロキサンであり、粘度55,000cP(55,000mPa・s)を持ち、表2中MViViとされた。Viシロキサン2は、ジメチルビニルシロキシ末端化ジメチルポリシロキサンであり、粘度450cP(450mPa・s)を持ち、表2中MViViとされた。Viシロキサン3は、ジメチルビニルシロキシ末端化ジメチルメチルビニルポリシロキサンであり、粘度350cP(350mPa・s)を持ち、表2中MViViViとされた。これらのシリコーン混合物は、選択された部分加水分解ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール(ClariantのMowinol30−92:4重量%水溶液とした時の粘度30cStを有する92%加水分解PVAから調製されたPVA溶液)、またはポリオキシエチレンラウリルエーテル(Brij30、Brij35L)を使用して、乳化された。これらのエマルションは、脱イオン水を徐々に取り込むことにより、高剪断Hauschildミキサー中で調製され、硬化可能なシリコーンエマルションを形成させた。これらのエマルションの粒子サイズプロファイルは、使用された界面活性剤のタイプに依って変動したが、これは表2にまとめられる通りである。
【0049】
【表2】

【0050】
実施例7〜9
付加硬化可能な液体シリコーンラバーエマルションから調製されたコーティング
水に浮いたコーティングが、表3にまとめられる通り、参照例4および5の付加硬化可能な液体シリコーンラバー(LSR)エマルションならびに幾つかの市販ポリウレタン分散体から調製された。使用されたポリウレタン分散体は、Sancure2715ポリウレタン分散体(Noveon Inc.,Cleveland,OHから)およびDispercoll U42 ポリウレタン分散体(Bayer.Pittsburgh,PA)であった。WitcobondXWエポキシエマルションも、接着促進剤として加えられた。Nalco1050コロイドシリカが、任意の強化充填剤として加えられた。Syl−Off7927白金エマルション触媒が取り込まれ、加熱および乾燥時に、本シリコーンエマルション内のシリコーンポリマーを硬化させた。PolacrylBR−300が増粘剤として加えられ、本コーティングの粘度を制御し、本コーティングの適用および質を向上させた。
【0051】
本Si/PUコーティングが、シリコーンエマルション成分を徐々にPU分散体中へと取り込ませ、次いで、機械的に攪拌して、均一な混合物を得ることにより、調製された。これは、該PU分散体(単数もしくは複数)へのpHショックを確実に最小化するために行われるが、これは、シリコーンエマルションの多くが本来酸性だからである。ある場合では、該混合物のpHがモニターされ、該Si/PU混合物のpHが6.0より上に確実に留まるようにする。任意の硬化剤、接着促進剤、および添加物が、引き続いて添加された。必要な場合、緩衝液が使用され得、最終的な該Si/PUエマルション混合物をpH6.0以上に保つ。その粒子サイズプロファイルが、該最終Si/PUコーティング混合物に関して収集される。ミクロン(μm)以下の平均粒子サイズ、つまりD(v,0.5)が、Si/PUコーティング混合物の調製に成功したという良い指標である。
【0052】
その結果のSi/PUコーティングは全て均一であり、安定なエマルションであった。すばらしいフィルム形成性および機械的特性を例示するために、硬化したフィルムが、テフロン(登録商標)モード(Teflon mode)上へと投じることにより作製され、乾燥された。その結果のフィルムは一様で、乳白色の外観を有し、丈夫なエラストマーに特徴的な強度、つまり高い引っ張り強度を持っていた。
【0053】
【表3】

【0054】
実施例10〜12
付加硬化可能なシリコーンエマルション主体のコーティング
コーティング組成物も、表4にまとめられる通り、市販の付加硬化可能なシリコーンエマルションから調製された。実施例10〜12は、これらのコーティングによりコーティングされたエアバッグに関する展開保持時間を例示する。従来のエア上ナイフ技術を使用して、OPWナイロン6,6エアバッグ布帛上へと、水に浮いた本Si/PUコーティングが適用された。コーティングされた該エアバッグは、130℃2分間乾燥硬化されて、約30g/mの硬化コーティング重量を与えた。コーティングされた該エアバッグは、それらの空気保持性に関して、顧客対応展開試験装置を使用して、試験された。コーティングされた該T字形エアバッグが、予定量の空気を用いて圧縮されたエアカニスターへと載せられた。この圧縮されたエアが、コーティングされた該エアバッグ中へと展開時に放出され、約3.5バール(つまり350kPa)のバースト圧力に達した。コーティングされた該エアバッグのエア保持時間は、該エアバッグ内部の空気圧が0.5バール(つまり50kDa)に達した時に経過した時間である。コーティングされていないエアバッグに関しては、該圧縮空気が該エアバッグを通してリークしたのであるが、時間を報じるのに速過ぎた。3730LSRにより約35g/mでコーティングされた典型的なエアバッグに関しては、その時間は1秒未満であった。
【0055】
該Si/PU水性コーティングは、表4にまとめられる通り、約30g/mの低いコーティング重量においてさえ、すばらしいフィルム統合性およびエア保持性を呈した。
【0056】
【表4】

【0057】
実施例13および14
前硬化シリコーンエラストマーエマルション由来のコーティング
布帛およびエアバッグコーティングとして有用な、水に浮いたSi−PUコーティングも、前硬化シリコーンエラストマーのエマルションラテックスから調製された。以下の実施例のコーティングにおいて使用されたシリコーン成分は、Dow Corning(登録商標)3−2345シリコーンラテックスであった。3−2345シリコーンラテックスは、シリコーンエラストマーの、固形分85重量%の水性連続エマルションである。その油相中の該シリコーンエラストマーは、ビニル官能基化液体シリコーンとヒドリド官能基化液体シリコーンとの反応生成物であり、白金により触媒される付加反応を経由して硬化される。そのポリウレタン成分は、SANCURE2715ポリウレタン分散体(Noveon Inc.)およびDISPERCOLL U42 ポリウレタン分散体(Bayer Corp.)であった。その処方およびその結果の物性を、表5にまとめる。
【0058】
これらの組成物主体の該Si−PUコーティングは、表5にまとめられるように、低コーティング重量において、すばらしいエア保持性を表した。
【0059】
【表5】

【0060】
実施例15〜19
選択されたポリウレタン分散体由来の、硬化可能なSi/PUコーティング
本発明におけるSi/PUコーティングによりコーティングされた布帛およびエアバッグも、非常に望ましい表面特性:低摩擦係数、絹のような滑らかな感触のシリコーン、およびタックのない表面を持っている。以下の実施例では、付加硬化可能なシリコーンエマルション(Syl−Off7910エマルション液体シリコーンおよびSyl−Off7927エマルション白金触媒)から調製された、選択されたSi/PUコーティングが例示される。本ポリウレタンシリコーン成分は、SANCURE2715(Noveon Inc.からの、固形分38重量%のアニオン性ポリウレタン分散体)、UCX−021−005(Uniroyal Chemical Crompton Corp.からの、固形分50.9%のアニオン性ポリウレタン分散体)、およびDispercoll U42(Bayer Corp.、固形分51%のアニオン性ポリウレタン分散体)から選択される。
【0061】
本Si/PUコーティングの望ましい表面特性を例示するために、2つの分離したセットの比較例:純粋シリコーンコーティング(実施例17)ならびにポリウレタンコーティング(実施例18および19)も併記される。これらのコーティングが、ナイロン6.6織布布帛上へと適用されて硬化され、コーティングされた布帛を与えた。コーティングされた該布帛の摩擦係数が、測定された。表6は、Si/PUコーティングされた該布帛に関する結果をまとめたものであり、低摩擦係数、絹のような滑らかな感触、およびタックのない表面を持っている。
【0062】
【表6】

【0063】
実施例20〜24
選択された接着促進剤/添加物を有するSi/PUコーティング組成物
種々のSi−PUコーティングが、Noveon,Inc.(Cleveland,OH)から商業的に入手されるSancure13057ポリウレタン分散体、NeoRez967ポリウレタン分散体(NeoResins,Aveciaの1部門、Wilmington,MA)、硬化可能なシリコーンラバーエマルション17545−129A(この書面の実施例4)、およびSyl−Off7927白金エマルション触媒から調製された。
【0064】
このシリーズのSi−PUコーティングへ、以下の接着促進剤がそれぞれ取り込まれた。
WitcobondXWエポキシエマルション(Uniroyal Chemical Crompton Corp.から)
Z−6040グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン(Dow Corning
Corp.)
Coat−O−Sil 1770シラン(Witco Corp.,Crompto
n Corp.)
これらの接着促進剤が、該コーティング固形分全量の2.2重量%で加えられた。Wi
tcobondXWは水性エマルションであり、該コーティングへ直接加えられ得る。Z
−6040およびCoatOsil1770シランは、該コーティング中へ加えられ、混
合および部分加水分解の短い期間の後、水分散性となり、水溶性/水相容性生成物を形成
させる。表7に示される通り、コーティングの質が維持され、硬化した該コーティングの
引っ張り強度および伸び(%)が緩和な影響を受けただけであった。
【0065】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の少なくとも1部分上にコーティング組成物を持つ布帛を含むコーティング布帛であって、該コーティング組成物が:
(A)水性シリコーンエマルション由来であるシリコーン成分5〜60重量部;及び
(B)水性ポリウレタン分散体由来であるポリウレタン成分40〜95重量部
の反応生成物を含む、コーティング布帛。
【請求項2】
前記水性シリコーンエマルションが、硬化可能なシリコーンエマルションである、請求項1に記載のコーティング布帛。
【請求項3】
硬化可能な前記シリコーンエマルションが:
(a)硬化可能な有機ポリシロキサン
(b)任意の架橋剤
(c)該有機ポリシロキサンを硬化させるのに充分な量の硬化剤
を含む、請求項2に記載のコーティング布帛。
【請求項4】
硬化可能な前記シリコーンエマルションが、付加硬化可能なシリコーンエマルションであり:
(a’)少なくとも2つのアルケニル基を含有する、硬化可能な有機ポリシロキサン
(b’)有機ヒドリドシリコン化合物
(c’)ヒドロシリル化触媒
を含む、請求項3に記載のコーティング布帛。
【請求項5】
前記水性シリコーンエマルションが、縮合硬化可能な有機ポリシロキサンを含む、請求項2に記載のコーティング布帛。
【請求項6】
前記水性シリコーンエマルションが、前硬化シリコーンエマルションである、請求項1に記載のコーティング布帛。
【請求項7】
前記ポリウレタン分散体が、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエーテルエステルポリウレタン、ポリエーテルカーボネートポリウレタン、ポリカプロラクトンポリウレタン、炭化水素ポリウレタン、脂肪族ポリウレタン、芳香族ポリウレタン、およびこれらの組み合わせから選択されるポリウレタンを含む、請求項1に記載のコーティング布帛。
【請求項8】
更に:
(C)接着促進剤
を含む、請求項1に記載のコーティング布帛。
【請求項9】
前記接着促進剤が有機官能基化シランである、請求項8に記載のコーティング布帛。
【請求項10】
前記有機官能基化シランが、3−(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、およびγ−グリシジルプロピルトリメトキシシランから選択される、請求項9に記載のコーティング布帛。
【請求項11】
更に:
(D)強化充填剤、増量充填剤、コロイドシリカ、発煙シリカ、着色料、色素、熱安定化剤、UV安定化剤、天候安定化剤、難燃剤、増粘剤、殺菌剤、および保存料から選択される添加物
を含む、請求項1に記載のコーティング布帛。
【請求項12】
前記布帛がエアバッグ布帛である、請求項1に記載のコーティング布帛。
【請求項13】
前記布帛が織布ポリアミド布帛である、請求項1に記載のコーティング布帛。
【請求項14】
請求項1に記載のコーティング布帛を含む、製造物品。
【請求項15】
(I)(A)水性シリコーンエマルション由来のシリコーン成分5〜60重量部;および
(B)水性ポリウレタン分散体由来のポリウレタン成分40〜95重量部
を含む組成物を、布帛の1表面上に適用すること;ならびに
(II)この層を、硬化コーティングを形成させるのに充分な時間、エアに晒すこと
を含む、布帛コーティング方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法により調製された、コーティング布帛。

【公表番号】特表2007−526400(P2007−526400A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515066(P2006−515066)
【出願日】平成16年6月1日(2004.6.1)
【国際出願番号】PCT/US2004/017277
【国際公開番号】WO2004/109008
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】