説明

シリルエチニル基を有するアセン−チオフェンコポリマー

電子装置において使用することができる、シリルエチニル基が結合したアセン−チオフェンコポリマーを提供する。コポリマーは、一般的な有機溶媒に可溶性である場合が多く、コーティング組成物の一部であることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
シリルエチニル基が結合したアセン−チオフェンコポリマーを記載する。
【背景技術】
【0002】
従来より、無機物質は電子装置産業で優勢な位置を占めてきた。例えば、ヒ化ケイ素及びヒ化ガリウムは半導体材料として使用されており、二酸化ケイ素は絶縁体材料として使用されており、アルミニウム及び銅のような金属は電極材料として使用されている。しかしながら、近年では、電子装置で従来よりの無機材料ではなく有機材料を使用することを目的とする研究努力が増加している。特に、有機材料の使用は、電子装置の製造コストを低下させることができ、広い領域に適用することを可能にし、ディスプレイ背面及び集積回路にフレキシブル回路基板の使用を可能にすることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
種々の有機半導体材料が考えられるが、最も一般的なのはペンタセン含有化合物、テトラセン含有化合物、アントラセン含有化合物、ビス(アセニル)アセチレン化合物及びアセン−チオフェン化合物のような小分子により例示されるような縮合芳香環化合物である。ポリ(3−アルキルチオフェン)により例示されるレジオレギュラーポリチオフェン及び縮合チオフェン単位又はビス−チオフェン単位を有するポリマーのような、幾つかの高分子材料もまた検討されてきた。しかしながら、少なくとも幾つかのポリマーは、酸化を受ける傾向があり、これは装置の性能低下をもたらし得る。
【課題を解決するための手段】
【0004】
電子装置で使用できる共重合性材料を提供する。より具体的には、例えば、有機薄膜トランジスタ、発光ダイオード、及び光電池のような電子装置において1以上の層で用いることができる、シリルエチニル基が結合したアセン−チオフェンコポリマーを記載する。これらのコポリマーは、多くの一般的な有機溶媒に可溶性である。つまり、共重合性材料は、溶媒系コーティング組成物の一部であることができる。
【0005】
一態様では、シリルエチニル基が結合したアセン−チオフェンコポリマーを提供する。コポリマーは、式Iのものである。
【0006】
【化1】

【0007】
本式では、Acは、アルキル、アルコキシ、チオアルキル、アリール、アラルキル、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヘテロアルキル、アルケニル又はこれらの組み合わせから選択される置換基で所望により置換されてよい2〜5個の縮合ベンゼン環を有するアセン基である。各Rは、独立して水素、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、ヘテロアルキル、又はヒドロキシアルキルから選択される。Qは、式II、III、IV又はVの二価基である。
【0008】
【化2】

【0009】
式中、R1及びR2は、それぞれ独立して水素、アルキル、アルコキシ、チオアルキル、アリール、アラルキル、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヘテロアルキル、又はアルケニルから選択される。下付きのnは、4以上の整数である。式Iのアスタリスクは、式−Ac(E)−Q−(式中、各Eは、式−C≡C−Si(Rのシリルエチニル基である)の別の繰り返し単位のような別の基への結合位置を示す。
【0010】
別の態様では、溶媒及び式Iのアセン−チオフェンコポリマーを含む組成物を提供する。
【0011】
本発明の上述した「課題を解決するための手段」は、本発明の開示された各実施形態又はあらゆる実施を記載することは意図していない。以下の「発明を実施するための最良の形態」及び実施例は、これらの実施形態をより詳しく例証する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、シリルエチニル基が結合したアセン−チオフェンコポリマーを提供する。アセン−チオフェンコポリマーは、電子装置の1以上の層に含まれることができる。例えば、アセン−チオフェンコポリマーは、有機薄膜トランジスタのような電子装置において半導体材料として使用することができ、又は有機光電池若しくは有機電場発光装置のような電子装置において2つの電極の間に配置されることができる。
【0013】
本明細書で使用する時、用語「a」、「an」、及び「the」は、「少なくとも1つの」と互換的に用いられて、1又はそれより多くの記載される要素を意味する。
【0014】
「アセン」とは、以下の式(式中、mは0以上の整数である)により示されるように、直線配置の少なくとも2つの縮合ベンゼン環を有する多環芳香族炭化水素基を指す。
【0015】
【化3】

【0016】
アセンは、典型的には、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、又はペンタセンから選択される。
【0017】
「アセン−チオフェンコポリマー」、「シリルエチニル基が結合したアセン−チオフェンコポリマー」及び「シリルエチニル基を有するアセン−チオフェン」という用語は互換的に用いられて、式Iのコポリマーを指す。
【0018】
「アルキル」とは、アルカン基である一価基を指し、これは飽和炭化水素である。アルキルは、直鎖、分枝鎖、環状、又はこれらの組み合わせであってよく、典型的には1〜30個の炭素原子を含有する。幾つかの実施形態では、アルキル基は、4〜30個、1〜20個、4〜20個、1〜14個、1〜10個、4〜10個、4〜8個、1〜8個、1〜6個、又は1〜4個の炭素原子を含有する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−オクチル、n−ヘプチル、及びエチルヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
「アルケニル」とは、アルケン基である一価基を指し、これは少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を有する炭化水素である。アルケニルは、直鎖、分枝鎖、環状、又はこれらの組み合わせであってよく、典型的には、2〜30個の炭素原子を含有する。幾つかの実施形態では、アルケニルは、2〜20個、2〜14個、2〜10個、4〜10個、4〜8個、2〜8個、2〜6個、又は2〜4個の炭素原子を含有する。代表的なアルケニル基としては、エテニル、プロペニル、及びブテニルが挙げられる。
【0020】
「アルキニル」とは、アルキン基である一価基、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を有する炭化水素を指す。アルキニルは、直鎖、分枝鎖、環状、又はこれらの組み合わせであってよく、典型的には、2〜30個の炭素原子を含有する。幾つかの実施形態では、アルキニルは、2〜20個、2〜14個、2〜10個、4〜10個、4〜8個、2〜8個、2〜6個、又は2〜4個の炭素原子を含有する。代表的なアルキニル基としては、エチニル、プロピニル、及びブチニルが挙げられる。エチニルのような幾つかのアルキニル基は、シリル基でさらに置換されることができる。
【0021】
「アルコキシ」とは、式−OR(式中、Rはアルキル基である)の一価基を指す。例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、及びブトキシが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
「アリール」とは、芳香族炭素環式化合物の基である一価基を指す。アリールは1個の芳香環を有することができ、又は芳香環に結合若しくは縮合している5個以下の炭素環構造を含み得る。他の環状構造は、芳香族、非芳香族、又はこれらの組み合わせであってよい。アリール基の例としては、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、アンスリル、ナフチル、アセナフチル、アントラキノニル、フェナンスリル、アントラセニル、ピレニル、ペリレニル、及びフルオレニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
「アラルキル」とは、アリール基で置換されたアルキルを指す。
【0024】
「ハロ」とは、ハロゲン基(即ち、−F、−Cl、−Br、又は−I)を指す。
【0025】
「ハロアルキル」とは、1個以上のハロ基で置換されたアルキルを指す。
【0026】
「ヒドロキシアルキル」とは、1個以上のヒドロキシ基で置換されたアルキルを指す。
【0027】
「ヘテロアルキル」とは、チオ、オキシ、式−NR−(式中、Rは水素又はアルキルである)の基、若しくはアリールで置換された1個以上の−CH−基、又は式−SiR−(式中、Rはアルキルである)の基を有するアルキルを指す。ヘテロアルキルは、直鎖、分枝鎖、環状、又はそれらの組み合わせであってよく、30個以下の炭素原子及び20個以下のヘテロ原子を含み得る。幾つかの実施形態では、ヘテロアルキルは、25個以下、20個以下、15個以下、又は10個以下の炭素原子を含む。チオアルキル基及びアルコキシ基は、ヘテロアルキル基のサブセットである。
【0028】
「ヘテロアリール」とは、環内にS、O、N、又はこれらの組み合わせから独立して選択される1個以上のヘテロ原子を含む5〜7員芳香環を有する一価基を指す。かかるヘテロアリール環は、芳香族、脂肪族、又はこれらの組み合わせである5個以下の環状構造に結合又は縮合されることができる。ヘテロアリール基の例としては、フラニル、チオフェニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピラジニル、ピリミジニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、インドリル、カルバゾイル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズイミダゾリル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、フタラジニル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾトリアジニル、フェナジニル、フェナントリジニル、アクリジニル、及びインダゾリル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
「ヘテロアラルキル」とは、ヘテロアリールで置換されたアルキルを指す。
【0030】
「シリルエチニル」とは、式−C≡C−Si(R(式中、Rは、独立して水素、アルキル、アルコキシ、アルケニル、ヘテロアルキル、ヒドロキシアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、又はヘテロアラルキルから選択される)の一価基を指す。これらの基は、時にシラニルエチニル基と呼ばれる。
【0031】
「チオアルキル」とは、式−SR(式中、Rはアルキル基である)の一価基を指す。
【0032】
シリルエチニル基が結合したアセン−チオフェンコポリマーを提供する。コポリマーは、式Iのものである。
【0033】
【化4】

【0034】
本式では、Acは、アルキル、アルコキシ、チオアルキル、アリール、アラルキル、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、又はこれらの組み合わせから選択される置換基で所望により置換されてよい2〜5個の縮合ベンゼン環を有するアセン基である。各Ac基は、式−C≡C−Si(R(式中、各Rは、独立して水素、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、ヘテロアルキル、又はヒドロキシアルキルから選択される)の、2個の共有結合したシリルエチニル基を有する。基Qは、式II、III、IV又はVの二価基である。
【0035】
【化5】

【0036】
R1及びR2は、それぞれ独立して水素、アルキル、アルコキシ、チオアルキル、アリール、アラルキル、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヘテロアルキル、又はアルケニルから選択される。下付きのnは、4以上の整数である。式I中のアスタリスクは、式−Ac(E)−Q−(式中、各Eは、式−C≡C−Si(Rのシリルエチニル基である)の別の繰り返し単位のような別の基への結合位置を示す。
【0037】
Ac基は、アセン基である。アセンは、直線方式で配置される2〜5個の縮合芳香環(即ち、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、又はペンタセン)を有し得る。好適なアセンは、ナフタレン、アントラセン、又はペンタセンから選択されることが多い。アセンには、一般に、1個の環のみの員である各炭素原子が番号付けされる番号配列が与えられる。代表的なアセン−ジイル(即ち、アセンの二価基)の種々の位置は、以下のナフタレン−2,6−ジイル、
【0038】
【化6】

【0039】
アントラセン−2,6−ジイル、及び
【0040】
【化7】

【0041】
ペンタセン−2,9−ジイル
【0042】
【化8】

【0043】
の構造に示される。
【0044】
各Ac基は、式−C≡C−Si(Rの、2個の共有結合したシリルエチニル基を有する。Ac基がナフタレン由来である場合、2個のシリルエチニル基は、典型的には、同一芳香環に結合している。Ac基がアントラセン又はペンタセン由来である場合、2個のシリルエチニル基はともに同じ内側の芳香環に結合できるか、又は1個のシリルエチニル基が外側の芳香環のそれぞれに結合できる。本明細書で使用する時、「内側の芳香環」という用語は、2個の他の芳香環に縮合しているアセンの芳香環を指す。例えば、9及び10位を含有する環は、アントラセンに基づくAc基の内側の芳香環と呼ばれる。本明細書で使用する時、「外側の芳香環」という用語は、1個の芳香環のみに縮合しているアセンの芳香環を指す。例えば、1、2、3及び4位を含有する環並びに5、6、7及び8位を含有する環は、アントラセンに基づくAc基の外側の芳香環と呼ばれる。
【0045】
多くの実施形態では、シリルエチニル基が、Ac基の内環に結合していることが好ましい。例えば、Ac基がアントラセン由来である場合、シリルエチニル基は、好ましくは9及び10位で結合している。コポリマーを調製するために用いるアセン前駆体の安定性は、シリルエチニル基のAc基の内側の芳香環への結合により向上し得る場合が多い。複数の内側の芳香環により、ペンタセン由来のAc基の6及び13位でのような、シリルエチニル基の最も内側の環への結合は、アセン前駆体の最も強い安定性をもたらし得る。本明細書で使用する時、安定性とは、酸化及び/又は二量化に対する耐性を指す。
【0046】
各シリルエチニル基は、式−C≡C−Si(R(式中、各Rは、独立して水素、アルキル、アルコキシ、アルケニル、ヘテロアルキル、ヒドロキシアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、又はヘテロアラルキルである)のものである。代表的なアルキル、アルコキシ、アルケニル、ヘテロアルキル、及びヒドロキシアルキル基は、直鎖、分枝鎖、環状、又はこれらの組み合わせであってよく、通常10個以下の炭素原子、8個以下の炭素原子、6個以下の炭素原子、又は4個以下の炭素原子を有する。代表的なアリール基はフェニルであり、代表的なアラルキルは、フェニル基で置換された、10個以下の炭素原子を有するアルキルである。代表的なヘテロアリール基は、1又は2個のヘテロ原子を含む5又は6員不飽和複素環を有する場合が多く、代表的なヘテロアラルキルは、1又は2個のヘテロ原子を有する5又は6員ヘテロアリールで置換された、10個以下の炭素原子を有するアルキルである。
【0047】
より具体的な例では、各Rは、10個以下、8個以下、又は6個以下の炭素原子を有するアルキルである。つまり、シリルエチニル基は、トリアルキルシリルエチニル基である。各アルキル基は、少なくとも1個の炭素原子、少なくとも2個の炭素原子、又は少なくとも3個の炭素原子を有する場合が多い。例えば、式Iの幾つかのコポリマーでは、シリルエチニル基は、トリイソプロピルシリルエチニル(式中、Rはイソプロピルである)である。
【0048】
2個のシリルエチニル基に加えて、Ac基は所望により、アルキル、アルコキシ、チオアルキル、アリール、アラルキル、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、又はこれらの組み合わせから選択される置換基で置換されてよい。Ac置換基を指す際、「これらの組み合わせ」という用語は、Ac基上の複数の置換基、又は第二置換基でさらに置換された第一置換基のいずれかを指す。少なくとも幾つかの実施形態では、1個以上の置換基の追加は、有機溶媒中での式Iのコポリマーの溶解度を増大させることができるか、又は種々のコーティング組成物とのコポリマーの相溶性を向上させることができる。
【0049】
基Qは、シリルエチニル基の結合していないAcの任意の位置に結合されることができる。式Iのアセン−チオフェンコポリマーは、ビチオフェン又はポリチオフェン基を有しない。つまり、任意の2個のAc(E)基は、式II〜Vの単一基から選択される基Qにより分離される。コポリマーは、通常、コポリマーの長さ全体にわたって共役している。典型的には、コポリマー主鎖に沿って二重結合の共役を阻害し得るコポリマー中の式−Ac(E)−Q−の2個の繰り返し単位間にスペーサ基は存在しない。
【0050】
多くの実施形態では、QはAcの外側の芳香環に結合している。例えば、基Qは、ナフタレン又はアントラセンのいずれかに基づくAc基の1、2、3、4、5、6、7又は8位、及びペンタセンに基づくAc基の1、2、3、4、8、9、10又は11位に結合され得る。QがAcの外側の芳香環に結合し、該Ac基がアントラセン又はペンタセン由来である際、2個のシリルエチニル基は、通常、Acの内側の芳香環、また好ましくは同一の内側の芳香環に結合している。
【0051】
他の実施形態では、QはAcの内側の芳香環に結合している。例えば、基Qは、アントラセンに基づくAc基の9若しくは10位、又はペンタセンに基づくAc基の5、6、7、12、13若しくは14位に結合され得る。QがAcの内側の芳香環に結合している際、2個のシリルエチニル基は、通常、Acの外側の芳香環に結合している。例えば、1個のシリルエチニル基が、アントラセン又はペンタセン由来のAc基の外側の芳香環のそれぞれに配置されることができる。
【0052】
基Q及び2個のシリルエチニルに結合していることに加えて、Ac基は、コポリマーの末端基のような第四基又は式−Ac(E)−Q−(式中、Eはシリルエチニル基を指す)の別の繰り返し単位に結合している(即ち、得られる共重合性材料は、少なくとも5に等しい下付きのnを有する)。式I中の基QがAc基の内側の芳香環に結合している場合、第四基は同一の内側の芳香環に結合している場合が多い。基QがAc基の外側の芳香環に結合している場合、第四基は反対側の外側の芳香環に結合している場合が多い。つまり、基Q及び第四基は、2個のシリルエチニル基が内側の芳香環に結合しているAc基の反対側の遠位端部に結合している場合が多い。
【0053】
代表的なAc(E)基としては、1,4−ビス(シリルエチニル)ナフタレン−2,6−ジイル、1,4−ビス(シリルエチニル)ナフタレン−2,7−ジイル、9,10−ビス(シリルエチニル)アントラセン−2,6−ジイル、9,10−ビス(シリルエチニル)アントラセン−2,7−ジイル、2,6−ビス(シリルエチニル)アントラセン−9,10−ジイル、2,7−ビス(シリルエチニル)アントラセン−9,10−ジイル、6,13−ビス(シリルエチニル)ペンタセン−2,9−ジイル、6,13−ビス(シリルエチニル)ペンタセン−2,10−ジイル、2,9−ビス(シリルエチニル)ペンタセン−6,13−ジイル、又は2,10−ビス(シリルエチニル)ペンタセン−6,13−ジイルが挙げられるが、これらに限定されない。これらの基はいずれも、アルキル、アルコキシ、チオアルキル、アリール、アラルキル、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、又はこれらの組み合わせで置換されたAc基を、所望により有することができる。用語「ジイル」の前にある位置番号は、Q基及び第四基がAc基に結合している炭素原子を示す。
【0054】
幾つかのより具体的なAc(E)基としては、1,4−ビス(トリアルキルシリルエチニル)ナフタレン−2,6−ジイル、1,4−ビス(トリアルキルシリルエチニル)ナフタレン−2,7−ジイル、9,10−ビス(トリアルキルシリルエチニル)アントラセン−2,6−ジイル、9,10−ビス(トリアルキルシリルエチニル)アントラセン−2,7−ジイル、2,6−ビス(トリアルキルシリルエチニル)アントラセン−9,10−ジイル、2,7−ビス(トリアルキルシリルエチニル)アントラセン−9,10−ジイル、6,13−ビス(トリアルキルシリルエチニル)ペンタセン−2,9−ジイル、6,13−ビス(トリアルキルシリルエチニル)ペンタセン−2,10−ジイル、2,9−ビス(トリアルキルシリルエチニル)ペンタセン−6,13−ジイル、又は2,10−ビス(トリアルキルシリルエチニル)ペンタセン−6,13−ジイルが挙げられるが、これらに限定されない。これらの基はいずれも、アルキル、アルコキシ、チオアルキル、アリール、アラルキル、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、又はこれらの組み合わせで置換されたAc基を、所望により有することができる。用語「ジイル」の前にある位置番号は、Q基及び第四基がAc基に結合している炭素原子を示す。
【0055】
コポリマーが半導体材料として機能する場合のような幾つかの用途では、直鎖方向に(即ち、コポリマー主鎖に沿って)延びた共役長を有するAc基を選択することが望ましい場合がある。かかるコポリマーは、積み重ね体様構造の形成において、互いに良好に整列する傾向がある。つまり、幾つかの用途では、Q基は、内側の芳香環が存在する場合、2個のシリルエチニル基が内側の芳香環に結合しているアセンの外側の芳香環に結合していることが好ましい。代表的なAc(E)基としては、1,4−ビス(トリアルキルシリルエチニル)ナフタレン−2,6−ジイルのような1,4−ビス(シリルエチニル)ナフタレン−2,6−ジイル、9,10−ビス(トリアルキルシリルエチニル)アントラセン−2,6−ジイルのような9,10−ビス(シリルエチニル)アントラセン−2,6−ジイル、6,13−ビス(トリアルキルシリルエチニル)ペンタセン−2,9−ジイルのような6,13−ビス(シリルエチニル)ペンタセン−2,9−ジイルが挙げられるが、これらに限定されない。これらの基はいずれも、アルキル、アルコキシ、チオアルキル、アリール、アラルキル、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、又はこれらの組み合わせで置換されたAc基を、所望により有することができる。
【0056】
基Qは、上記の式II〜Vから選択される。これらの式中の各基R1及びR2は、独立して水素、アルキル、アルコキシ、チオアルキル、アリール、アラルキル、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、又はこれらの組み合わせから選択される。基R1及びR2を指す際、用語「これらの組み合わせ」とは、別の基でさらに置換された第一基を指す。
【0057】
基Qの幾つかの実施形態では、4〜30個の炭素原子、4〜20個の炭素原子、4〜16個の炭素原子、又は4〜10個の炭素原子のような、少なくとも4個の炭素原子を含有する、少なくとも1個のR1基又はR2基が存在する。より具体的には、少なくとも4個の炭素原子を有するアルキル、少なくとも4個の炭素原子を有するアルコキシ、少なくとも4個の炭素原子を有するチオアルキル、少なくとも6個の炭素原子を有するアリール、少なくとも10個の炭素原子を有するアラルキル、少なくとも4個の炭素原子を有するハロアルキル、少なくとも4個の炭素原子を有するヒドロキシアルキル、少なくとも4個の炭素原子を有するヘテロアルキル、少なくとも4個の炭素原子を有するアルケニル、又はこれらの組み合わせから選択される、少なくとも1個のR1基又はR2基が存在する。少なくとも1個のかかる基の選択は、一般的な有機溶媒中での式Iのコポリマーの溶解度を増大させることができる場合が多く、又は種々のコーティング組成物とのアセン−チオフェンコポリマーの相溶性を向上させることができる場合が多い。
【0058】
幾つかの代表的なコポリマーは、少なくとも4個の炭素原子を有するアルキル、少なくとも4個の炭素原子を有するアルコキシ、少なくとも4個の炭素原子を有するチオアルキル、少なくとも6個の炭素原子を有するアリール、少なくとも10個の炭素原子を有するアラルキル、少なくとも4個の炭素原子を有するハロアルキル、少なくとも4個の炭素原子を有するヒドロキシアルキル、少なくとも4個の炭素原子を有するヘテロアルキル、少なくとも4個の炭素原子を有するアルケニル、又はこれらの組み合わせから選択される、同一のR1及びR2基を有する。
【0059】
式Iのコポリマーは、反応スキームAに示されるように、鈴木カップリング反応を用いて調製することができる。
【0060】
【化9】

【0061】
2個のシリルエチニル基が結合したジハロアセン(即ち、Acはアセン基を表し、Eは式−C≡C−Si(Rの基を表し、Xはハロを表す)を、最初に、ビス(ピナコラト)ジボロンのようなジオキサボロランと反応させて、2個のジオキサボロラン基を有するアセン化合物(例えば、テトラメチルジオキサボロラン)を形成する。次いで、得られるアセン化合物を、ジハロチオフェン化合物(即ち、X−Q−X)と反応させて、式Iのコポリマーを形成する。第二反応におけるハロ基は、第一反応におけるハロ基と同一であっても、異なっていてもよい。これらの反応はともに、典型的には、例えば、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム及びテトラキス(トリフェニル)ホスフィン)パラジウム(0)のようなパラジウム触媒の存在下で行われる。反応スキームAの代替として、ジハロチオフェン化合物を最初にジオキサボロランと反応させ、次いで鈴木カップリング反応を用いて、2個のシリルエチニル基が結合したジハロアセンと反応させてもよい。鈴木カップリング反応は、伊藤らによるAngew.Chem.Int.Ed.、第42巻、1159〜1162頁(2003年)の論文及びそこに参照された補足情報にさらに記載される。
【0062】
反応スキームBに示されるように、スティル(Stille)カップリング反応を用いて式Iのコポリマーを合成することもできる。
【0063】
【化10】

【0064】
チオフェン化合物をリチオ化し、次いで塩化トリブチルスズのようなスズ酸トリアルキル(trialkylstannate)と反応させて、2個のスズ酸トリアルキル基で置換されたチオフェニン化合物を形成することができる。次いで、得られるチオフェニン化合物を、パラジウム触媒の存在下で、2個のシリルエチニル基が結合したジハロアセンと反応させることができる。反応スキームBの代替として、2個のシリルエチニル基が結合したアセンをリチオ化し、次いでスズ酸トリアルキルと反応させて、2個のスズ酸トリアルキル基で置換されたアセンを形成することができる。次いで、得られるアセン化合物をパラジウム触媒の存在下でジハロチオフェンと反応させることができる。スティルカップリング反応は、ミラー(Miller)らによるJ.Org.Chem.、第60巻、6813〜6819頁(1995年)及びカッツ(Katz)らによるAcc.Chem.Res.、第34巻、359〜369頁(2001年)の論文にさらに記載されている。
【0065】
2個のシリルエチニル基を有するジハロアセンは、実施例の項又は反応スキームCに示されるように、ジハロアセンから合成することができる。例えば、1,4−ビス(シリルエチニル)−2,6−ジハロナフタレンは、アピン・ケミカルズ社(Apin Chemicals Ltd.)(オックスフォードシャー(Oxfordshire)、英国)から市販されている2,6−ジクロロナフタレンのような2,6−ジハロナフタレンから始めて合成することができる。
【0066】
【化11】

【0067】
2,6−ジハロナフタレンを2,6−ジハロナフタキノンに酸化することができる。シリルエチニル基は、シリルアセチレン化合物のリチオ化型の形成により、続いて2,6−ジハロナフタキノンとの反応により、付加することができる。種々のシリルアセチレン化合物が市販されている。例えば、(トリメチルシリル)アセチレン、(トリエチルシリル)アセチレン、(トリイソプロピルシリル)アセチレン、及び(t−ブチルジメチルシリル)アセチレンは、GFSケミカルズ(GFS Chemicals)(コロンバス(Columbus)、オハイオ州)から入手可能である。(ジメチルフェニルシリル)アセチレン、(メチルジフェニルシニル)アセチレン、及び(トリフェニルシリル)アセチレンは、アルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Co.)(ミルウォーキー(Milwaukee)、ウィスコンシン州)から入手可能である。次いで、得られるジオール生成物を、塩化第一スズのような還元剤と反応させることにより、対応する芳香族化合物に変換することができる。
【0068】
2,9又は2,10位にハロ基を有するジハロペンタセンは、反応スキームDに示されるように合成することができる。ハロベンゼンと、不活性溶媒中での典型的なフリーデル・クラフツ(Friedel-Crafts)条件(例えば、強ルイス酸であるAlCl)下における無水ピロメリット酸との反応、又は熱を伴う溶媒としてのハロベンゼンとの反応により、2つの異性体ビス(ハロベンゾイル)フタル酸A及びBが得られる。これらの異性体は、分別再結晶、クロマトグラフィー、又は溶解度の差により分離されることができる。個々のビス(ハロベンゾイル)フタル酸A及びBのさらなる反応は、個別に、まずトリフリル酸を用いて対応するテトロンC及びDに環化し、続いて水素化ホウ素ナトリウム及び塩化第一スズを用いて所望のペンタセンE及びFに還元することにより実行される。以下のR3基は、水素基又は置換基である。
【0069】
【化12】

【0070】
得られるジハロペンタセンを反応させて、反応スキームCに示されるものと類似の方法を用いて、2個のシリルエチニル基を結合させることができる。化合物E及びFの酸化により、それぞれ対応するキノンG及びHが得られる。次いで、これらの化合物を、ペンタセンの6及び13位にシリルエチニル基が結合した誘導体に変換してよい。
【0071】
【化13】

【0072】
式IIaのジブロモチオフェン化合物
【0073】
【化14】

【0074】
は、対応するチオフェン化合物の臭素化により調製することができる。つまり、対応するチオフェンは、N−ブロモスクシンイミド(NBS)のような臭素化剤と反応することができる。例えば、アルキル基に等しいR1及びR2を有する式IIaの化合物は、3,4−ジハロチオフェンを所望のアルキル基を含有する2モルのグリニャール試薬と反応させてから、それに続く臭素化反応により調製することができる。この方法は、ビダール(Vidal)らによるChem.Eur.J.、第6巻、1663〜1673頁(2000年)の論文にさらに記載されている。
【0075】
式IIIaのジハロチエノ[3,2−b]チオフェン
【0076】
【化15】

【0077】
は、対応するチエノ[3,2−b]チオフェンの臭素化により調製することができる。幾つかのチエノ[3,2−b]チオフェンは、メイブリッジ(コーンウォール(Cornwall)、英国)から市販されている。3,6−ジメチルチエノ[3,2−b]チオフェンは、シンケムOHG(Synchem OHG)(カッセル(Kassel)、ドイツ)から入手可能であり、2,5−ジブロモチエノ[3,2−b]チオフェンは、アルドリッチ(ミルウォーキー、ウィスコンシン州)から入手可能である。他のチエノ[3,2−b]チオフェンは、チャン(Zhang)らによる巨大分子(Macromolecules)、第37巻、6306〜6315頁(2004年)の論文に記載のように合成することができる。
【0078】
式IVaのジハロチエノ[3,2−b]チオフェン
【0079】
【化16】

【0080】
は、対応するチエノ[2,3−b]チオフェンの臭素化により調製することができる。3,4−ジメチルチエノ[2,3−b]チオフェンは、アルファ・エーサー・ジョンソン・マッセイ(Alfa Aesar Johnson Mathey)(ワードヒル(Ward Hill)、マサチューセッツ州)から市販されている。他の置換チエノ[2,3−b]チオフェンは、コメル(Comel)らによる複素環化学ジャーナル(Journal of Heterocyclic Chemistry)、第38巻、1167〜1171頁(2001年)の論文に記載のものと類似の反応を用いて調製することができる。
【0081】
同様に、式Vaのジハロエチレンジオキシチオフェン化合物
【0082】
【化17】

【0083】
は、対応するエチレンジオキシチオフェンの臭素化により調製することができる。対応するエチレンジオキシチオフェンは、例えば、p−トルエンスルホン酸のような酸触媒の存在下で、2,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール等のようなジェミナルジオールとの市販の3,4−ジメトキシチオフェンのエステル交換性環化縮合により調製することができる。得られる3,4−二置換チオフェンは、次に、N−ブロモサクシンイミド又は他の好適な臭素化剤で、2及び5位を二臭素化することができる。この方法は、ニールソン(Nielson)らによる巨大分子(Macromolecules)、第38巻、10379頁(2005年)の論文にさらに記載されている。
【0084】
式Iのコポリマーは、典型的には、少なくとも5,000g/モルの重量平均分子量を有する。幾つかの実施形態では、重量平均分子量は、少なくとも7,000g/モル、少なくとも8,000g/モル、少なくとも10,000g/モル、少なくとも12,000g/モル又は少なくとも15,000g/モルである。重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィーを用いて測定することができる。
【0085】
必要に応じて、共重合性材料の純度は、追加の沈殿工程又はソックスレー抽出のような当該技術分野で既知である技術を用いて上げることができる。
【0086】
別の態様では、溶媒及び式Iのアセン−チオフェンコポリマーを含む組成物を提供する。好適な溶媒としては、トルエン、ベンゼン及びキシレンのような芳香族溶媒;テロラヒドロフラン及びジオキサンのようなエーテル;メチルイソブチルケトン及びメチルエチルケトンのようなケトン;クロロホルム、ジクロロメタン、クロロベンゼン及びジクロロベンゼンのような塩素系溶媒;クロロヘキサン及びヘプタンのようなアルカン;並びにN,N−ジメチルホルムアミド及び1−メチルピロリドンのようなアミドが挙げられるが、これらに限定されない。式Iの少なくとも幾つかのアセン−チオフェンコポリマーは、これらの溶媒に可溶性である。本明細書で使用する時、「可溶性」という用語は、コポリマーが溶媒に溶解して、溶液の重量に基づいて少なくとも0.05重量%のコポリマーを含有する溶液を提供することができることを意味する。幾つかのコポリマーは、溶液の重量に基づいて少なくとも0.05重量%、少なくとも0.1重量%、少なくとも0.2重量%、少なくとも0.5重量%、少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、少なくとも3重量%、又は少なくとも5重量%の溶解度を有する。
【0087】
組成物を基材の表面又は電子装置内の層の表面のような表面に適用することにより、組成物を用いてコーティングを提供することができる。コーティングは、例えば、スプレーコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、ナイフコーティング、グラビアコーティング、インクジェット印刷、及び転写のような任意の好適な適用技術を用いて、適用することができる。適用後、周囲条件下(例えば、約20℃〜約25℃において)で蒸発させることにより、又は約200℃以下、約150℃以下、約120℃以下、約100℃以下、若しくは約80℃以下の温度のような高温で乾燥させることにより、溶媒をコーティングから除去することができる。対照的に、ペンタセンのような多くの他の既知の有機半導体材料は、真空蒸着される必要がある。
【0088】
アセン−チオフェンコポリマー及びこれらのコポリマーを含有する溶液は、特別な大気保護及び光からの特別な保護なしに、少なくとも数日間安定である傾向がある。対照的に、ポリチオフェンは、溶液中で及び/又は空気に曝露した際、安定ではない。
【0089】
上記は、実施可能要件が入手可能な、本発明者によって予見される実施形態に関して本発明を記載しているが、現在予見されない本発明の実質的でない修正は、なお本発明の同等物を表し得る。
【実施例】
【0090】
全ての試薬は、商業的供給元から購入され、特に断りのない限り、さらに精製することなく使用された。炭酸ナトリウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、塩化スズ(II)、ビス(ピナコラト)ジボロン、2,5−ジブロモチオフェン、及び2,5−ジブロモ3−ヘキシルチオフェンは、アルドリッチ(ミルウォーキー、ウィスコンシン州)から購入され、アリクアット(ALIQUAT)336(相間移動触媒)、n−ブチルリチウム、及びジクロロメタンを有する[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム錯体は、アルファ・エーサー(ワードヒル、マサチューセッツ州)から入手され、並びに、トリイソプロピルシリルアセチレンは、GFSケミカルズ(コロンバス、オハイオ州)から購入され、ヘキサン及びテトラヒドロフラン(THF)はナトリウム上で蒸留した。以下の出発物質は、以下のような公の手順を用いて調製した。
【0091】
2,6−ジブロモアントラキノンは、伊藤らによるAngew.Chem.Int.Ed.、第42巻、1159〜1162頁(2003年)に記載されたように、市販の2,6−ジアミノアントラキノン(シグマ・アルドリッチ)から調製した。昇華後、それをDMFからの再結晶によりさらに精製した。
【0092】
2,5−ジブロモ−3,4−ジヘキシルチオフェンは、ビダール(Vidal)らによるChem.Eur.J.、第6巻、1663〜1673頁(2000年)に記載されたように、市販の3,4−ジブロモチオフェン(アルファ・エーサー)から調製した。
【0093】
2,5−ジブロモ−3,4−エチレンジオキシチオフェンは、ソッチング(Sotzing)らによるChem.Mater.、第8巻、882〜889頁(1996年)に記載されたように、市販の3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT、バイエル(Bayer)、レバークーゼン(Leverkusen)、ドイツ)から調製した。
【0094】
2,5−ジブロモ−3,6−ジノニルチエノ[3,2−b]チオフェンは、N−ブロモスクシンイミドを用いて3,6−ジノニルチエノ[3,2−b]チオフェンの臭素化により調製した。3,6−ジノニルチエノ[3,2−b]チオフェンは、チャン(Zhang)らによるJ.Macromolecules、第37巻、6306〜6315頁(2004年)に記載されたように、多段階合成で3,4−ジブロモチオフェンから得た。
【0095】
前駆体2,6−ビス−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,10−ビス−[(トリイソプロピルシリル)エチニル]アントラセンは、予備例1及び2に記載されたように、反応スキーム1に従って合成した。
【0096】
【化18】

【0097】
予備例1−2,6−ジブロモ−9,10−ビス[(トリイソプロピルシリル)−エチニル]アントラセンの合成
トリイソプロピルシリルアセチレン(12.32g、67.5ミリモル)及び乾燥ヘキサン(140mL)を、乾燥窒素雰囲気生成装置下で、オーブンで乾燥した丸底フラスコ(1L)に添加した。ブチルリチウム(ヘキサン中2.7M、14.5mL、39.2ミリモル)を、乾燥窒素下で、シリンジを通して混合物に液滴添加した。混合物を室温で2時間攪拌した。この無色の溶液に、乾燥THF(300mL)及び2,6−ジブロモアントラキノン(5.49g、15.0ミリモル)を乾燥窒素下で添加した。溶液は即座に赤色になり、数分で2,6−ジブロモアントラキノン(dibromoanthraquininone)に溶解した。混合物を室温で一晩攪拌すると、溶液は暗赤色になった。脱イオン(DI)水(6.0mL)を添加すると、色が薄赤色に変化し、白色沈殿が生じた。次いで、HCl(18mL、10%)中の塩化スズ(II)(8.088g、42.6ミリモル)水溶液を添加した。混合物を60℃に2時間加熱し、次いで室温に冷却した。溶媒を回転蒸発により除去した。DI水(100mL)を混合物に添加し、次いでヘキサン(100mL×3)で抽出した。中性になるまで、ヘキサン溶液をDI水で洗浄した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル/ヘキサン、R=0.7)を通して濃縮及び精製した。生成物として鮮黄色の固体(8.55g、収率:82%)を得た。H NMR(400MHz、CDCl)。δppm 8.797〜8.802(d,2H,J=2.0Hz)、8.431〜8.454(d,2H,J=8.8Hz)、7.647〜7.674(dd,2H,J=8.8Hz,J=2.0Hz)、1.259(s,36H)、1.247(s,6H)。
【0098】
予備例2−2,6−ビス−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,10−ビス[(トリイソプロピルシリル)エチニル]アントラセンの合成
予備例1の、2,6−ジブロモ−9,10−ビス−[(トリイソプロピルシリル)エチニル]アントラセン(5.225g、7.5ミリモル)、ビス(ピナコラト)ジボロン(4.763g、18.8ミリモル)、KOAc(2.940g、30.0ミリモル)、及びCHCl(100mL)を、乾燥窒素下で250mLのフラスコに充填した。KOAcの懸濁した黄色溶液を得た。懸濁液を脱気し、微量の酸素を除去した。次いで、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(0.205g)を乾燥窒素下で添加した。溶液はオレンジ色になった。混合物を70℃で3日間攪拌し、次いで室温に冷却した。DI水(100mL×3)で洗浄し、MgSO上で乾燥した。溶媒を回転蒸発により除去した。固体残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、CHCl)により精製し、酢酸エチルから再結晶した。生成物としてオレンジ色の針状結晶を得た(3.20g、収率55%)。H NMR(400MHz、CDCl)。δppm 9.250〜9.254(dd,2H,J=0.8Hz,J=0.8Hz)、8.579〜8.603(dd,2H,J=8.8Hz,J=0.8Hz)、7.901〜7.926(dd,2H,J=8.8Hz,J=1.2Hz)、1.384(s,24H)、1.288(s,36H)、1.279(s,6H)。
【0099】
予備例3及び4に記載したように、反応スキーム2に従って、前駆体2,6−ビス−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,10−ビス−[(トリメチルシリル)エチニル]アントラセンを合成した。
【0100】
【化19】

【0101】
予備例3−2,6−ジブロモ−9,10−ビス[(トリメチルシリル)エチニル]−アントラセンの合成
トリメチルシリルアセチレン(13.51g、137.5ミリモル)及び乾燥ヘキサン(300mL)を、乾燥窒素下でオーブンで乾燥した丸底フラスコ(1L)に充填した。ブチルリチウム(ヘキサン中2.7M、46.3mL、125.1ミリモル)を、水浴で冷却しながら、シリンジを通して、乾燥窒素下で液滴添加した。即座に白色沈殿が生じた。混合物を室温で2時間攪拌した。次いで、乾燥窒素下で、乾燥THF(600mL)中の2,6−ジブロモアントラキノン(18.30g、50.0ミリモル)懸濁液に添加した。添加後固体は全て溶解し、暗赤色溶液を得た。約1時間後、沈殿が生じた。反応混合物を室温で16時間攪拌した。DI水(10.0mL)を添加し、白色沈殿が生じた。次いで、HCl(50mL、6M)中の塩化スズ(II)(22.8g、120ミリモル)水溶液を添加した。混合物を70℃に2時間加熱し、次いで室温に冷却した。溶媒を回転蒸発により除去した。残渣を水で洗浄し、次いで温CHCl(300mL)で抽出した。CHCl溶媒の除去後、残渣をCHClから再結晶した。生成物として、オレンジ色の固体(22.1g、収率84%)を得た。H NMR(400MHz、CDCl)。δppm 9.061〜9.100(d,2H,J=2.4Hz)、8.757〜8.812(d,2H,J=9.2Hz)、8.030〜8.091(dd,2H,J=9.2Hz,J=2.0Hz)、0.851(s,18H)。
【0102】
予備例4−2,6−ビス−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,10−ビス−[(トリメチルシリル)エチニル]アントラセンの合成
予備例3の2,6−ジブロモ−9,10−ビス[(トリメチルシリル)エチニル]アントラセン(5.284g、10.0ミリモル)、ビス(ピナコラト)ジボロン(5.587g、22.0ミリモル)、KOAc(2.454g、25.0ミリモル)、及び[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(0.273g)を、乾燥窒素下で250mLフラスコに充填した。シュレンクラインを用いて、乾燥窒素下で脱気後、乾燥THF(120mL)をシリンジを通して添加した。KOAcの懸濁した暗赤色溶液を得た。混合物を70℃で4日間攪拌し、次いで室温に冷却した。回転蒸発により濃縮し、次いでDI水(500mL)に注いだ。沈殿を濾過により収集した。空気乾燥後、源ゾーンを250℃、中心ゾーンを190℃に維持しながら、1.5×10−5トール下でゾーン昇華により精製した。生成物として、オレンジ色の固体を得た(1.72g、収率28%)。H NMR(400MHz、CDCl)。δppm 9.145〜9.140(dd,2H,J=0.8Hz,J=0.4Hz)、8.505〜8.528(dd,2H,J=8.4Hz,J=0.8Hz)、7.878〜7.902(dd,2H,J=8.4Hz,J=1.2Hz)、1.406(s,24H)、0.447(s,18H)。
【0103】
鈴木カップリング反応を用いて、反応スキーム3に示されるように、実施例1〜5のアセン−チオフェンコポリマーを合成した。
【0104】
【化20】

【0105】
Br−Q−Br化合物は、2,5−ジブロモ−3,4−ジヘキシルチオフェン(実施例1)、2,5−ジブロモ−3,4−エチレンジオキシチオフェン(実施例2)、2,5−ジブロモチオフェン(実施例3)、2,5−ジブロモ−3−ヘキシルチオフェン(実施例4)、及び2,5−ジブロモ−3,6−ジノニル−チエノ[3,2−b]チオフェン(実施例5)であった。
【0106】
(実施例1)−ポリ(3,4−ジヘキシル−2,5−チオフェン−アルト−9,10−ビス−[(トリイソプロピルシリル)エチニル]−2,6−アントラセン)の合成
250mLのシュレンクフラスコに、2,6−ビス−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,10−ビス[(トリイソプロピルシリル)エチニル]アントラセン(3.909g、5.04ミリモル)、2,5−ジブロモ−3,4−ジヘキシルチオフェン(2.121g、5.17ミリモル)、炭酸ナトリウム(2.65g、25.0ミリモル)、アリクアット(ALIQUAT)336(1.0g)、蒸留水(10mL)及びトルエン(100mL)を充填した。混合物をシュレンクラインを用いて窒素下で3回脱気して、酸素を除去した。次いで、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.125g、0.10ミリモル)を、乾燥窒素流下で添加した。もう一度脱気した後、混合物を乾燥窒素下で90℃にて72時間攪拌した。次いで室温に冷却した。赤色トルエン溶液を分離し、DI水(150mL×3)で洗浄した。次いで濾過して、微量の固体不純物を除去した。激しく攪拌しながら、濾液をMeOH(350mL)に添加した。赤色沈殿を濾過により収集し、次いでMeOHで(ソックスレー抽出を介して)24時間洗浄した。生成物として、赤色固体(3.53g、収率:89%)を得た。Mw=36,300g/モル。H NMR(400MHz、CDCl)。δppm 8.81〜8.90(br,2H)、8.61〜8.76(br,2H)、7.71〜7.87(br,2H)、2.68〜3.05(br,4H)、1.46〜1.63(br,4H)、1.09〜1.40(br,54H)、0.69〜0.84(br,6H)。
【0107】
(実施例2)−ポリ(3,4−エチレンジオキシ−2,5−チオフェン−アルト−9,10−ビス−[(トリイソプロピルシリル)エチニル]−2,6−アントラセン)の合成
250mLのシュレンクフラスコに、2,6−ビス−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,10−ビス−[(トリイソプロピルシリル)エチニル]アントラセン(1.552g、2.00ミリモル)、2,5−ジブロモ−3,4−エチレンジオキシチオフェン(0.600g、2.00ミリモル)、炭酸ナトリウム(1.060g、10.0ミリモル)、アリクアット(ALIQUAT)336(0.241g)、蒸留水(10mL)及びトルエン(100mL)を充填した。混合物を、シュレンクラインを用いて窒素下で3回脱気して、酸素を除去した。次いで、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.025g、0.02ミリモル)を、乾燥窒素流下で添加した。もう一度脱気した後、混合物を乾燥窒素下で90℃にて46時間攪拌した。コポリマーをエンドキャップするために、追加の2,6−ビス−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,10−ビス[(トリイソプロピルシリル)エチニル]アントラセン(0.015g)を添加し、24時間後にブロモベンゼン(0.5mL)を添加した。溶液をさらに24時間攪拌し、室温に冷却した。トルエン溶液を分離し、DI水(150mL×3)で洗浄した。次いで、濾過して、微量の固体不純物を除去した。激しく攪拌しながら、濾液をMeOH(350mL)に添加した。赤色沈殿を濾過により収集し、次いでMeOHで(ソックスレー抽出を介して)24時間洗浄した。生成物として、赤色固体(1.39g、収率:およそ100%)を得た。Mw=11,000g/モル。H NMR(400MHz、CDCl)。δppm 8.91〜9.30(br,2H)、8.49〜8.91(br,2H)、7.75〜8.31(br,2H)、4.19〜4.71(br,4H)、1.12〜1.15(br,42H)。
【0108】
(実施例3)−ポリ(2,5−チオフェン−アルト−9,10−ビス[(トリイソプロピルシリル)エチニル]−2,6−アントラセン)の合成
シュレンクフラスコ(250mL)に、2,6−ビス−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,10−ビス[(トリイソプロピルシリル)エチニル]アントラセン(0.3888g、0.50ミリモル)、2,5−ジブロモチオフェン(0.121g、0.50ミリモル)、炭酸ナトリウム(0.265g、2.50ミリモル)、アリクアット(ALIQUAT)336(0.118g)、蒸留水(3mL)及びトルエン(30mL)を充填した。混合物を、シュレンクラインを用いて窒素下で3回脱気して、酸素を除去した。次いで、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.016g、0.01ミリモル)を、乾燥窒素流下で添加した。もう一度脱気した後、混合物を乾燥窒素下で90℃にて48時間攪拌した。室温に冷却した。赤色トルエン溶液を分離し、DI水(150mL×3)で洗浄した。次いで、濾過して、微量の固体不純物を除去した。激しく攪拌しながら、濾液をMeOH(200mL)に添加した。赤色沈殿を濾過により収集し、次いでMeOHで(ソックスレー抽出を介して)24時間洗浄した。生成物として、赤色固体(0.28g、収率:91%)を得た。Mw=8,500g/モル。H NMR(400MHz、CDCl)。δppm 8.10〜9.00(br,4H)、7.50〜8.00(br,2H)、7.00〜7.50(br,2H)、0.93〜1.96(br,42H)。
【0109】
(実施例4)−ポリ(3−ヘキシル−2,5−チオフェン−アルト−9,10−ビス[(トリイソプロピルシリル)−エチニル]−2,6−アントラセン)の合成
250mLのシュレンクフラスコに、2,6−ビス−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,10−ビス[(トリイソプロピルシリル)エチニル]アントラセン(1.552g、2.00ミリモル)、2,5−ジブロモ−3−ヘキシルチオフェン(0.652g、2.00ミリモル)、炭酸ナトリウム(1.060g、10.0ミリモル)、アリクアット(ALIQUAT)336(0.241g)、蒸留水(10mL)及びトルエン(100mL)を充填した。混合物を、シュレンクラインを用いて乾燥窒素下で3回脱気して、酸素を除去した。次いで、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.030g、0.02ミリモル)を、乾燥窒素流下で添加した。もう一度脱気した後、混合物を乾燥窒素下で90℃にて48時間攪拌した。追加の2,6−ビス−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,10−ビス[(トリイソプロピルシリル)エチニル]アントラセン(0.015g)を添加し、反応物を15時間攪拌し、さらにブロモベンゼン(80μL(マイクロリットル))を添加した。反応混合物をさらに24時間攪拌し、室温に冷却した。赤色トルエン溶液を分離し、DI水(100mL×4)で洗浄した。次いで、濾過して、微量の固体不純物を除去した。濾液を濃縮し、激しく攪拌しながらMeOH(300mL)に添加した。赤色沈殿を濾過により収集し、次いでMeOHで(ソックスレー抽出を介して)24時間洗浄した。生成物として、赤色固体(1.24g、収率:88%)を得た。Mw=11,600g/モル。H NMR(400MHz、CDCl)。δppm 8.89〜9.06(br,1H)、8.78〜8.87(br,1H)、8.62〜8.74(br,2H)、7.88〜8.01(br,1H)、7.74〜7.86(br,1H)、7.52〜7.65(br,1H)、2.82〜3.03(br,2H)、1.69〜1.84(br,2H)、1.08〜1.50(br,48H)、0.71〜0.90(br,3H)。
【0110】
(実施例5)−ポリ(3,6−ジノニル−2,5−チエノ[3,2−b]チオフェン−アルト−9,10−ビス−[(トリイソプロピルシリル)エチニル]−2,6−アントラセン)の合成
100mLのシュレンクフラスコに、2,6−ビス−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,10−ビス[(トリイソプロピルシリル)エチニル]アントラセン(0.233g、0.30ミリモル)、2,5−ジブロモ−3,6−ジノニル−チエノ[3,2−b]チオフェン(0.165g、0.30ミリモル)、炭酸ナトリウム(0.159g、1.5ミリモル)、アリクアット(ALIQUAT)336(0.096g)、蒸留水(1.5mL)及びトルエン(30mL)を充填した。混合物を、シュレンクラインを用いて乾燥窒素下で3回脱気して、酸素を除去した。次いで、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.009g)を、乾燥窒素流下で添加した。もう一度脱気した後、混合物を乾燥窒素下で90℃にて45時間攪拌した。室温に冷却した。赤色トルエン溶液を分離し、DI水(100mL×3)で洗浄した。次いで、濾過して、微量の固体不純物を除去した。濾液を濃縮し、激しく攪拌しながらMeOH(200mL)に添加した。赤色沈殿を濾過により収集し、次いでMeOHで(ソックスレー抽出を介して)24時間洗浄した。生成物として、赤色固体(0.105g、収率:38%)を得た。Mw=13,100g/モル。H NMR(400MHz、CDCl)。δppm 8.78〜8.95(br,2H)、8.54〜8.77(br,2H)、7.70〜7.97(br,2H)、2.58〜3.17(br,4H)、1.68〜2.00(br,4H)、1.03〜1.50(br,66H)、0.68〜0.90(br,6H)。
【0111】
鈴木カップリング反応を用いて、反応スキーム4に示されるように、実施例6及び7のアセン−チオフェンコポリマーを合成した。
【0112】
【化21】

【0113】
Br−Q−Br化合物は、2,5−ジブロモ−3,4−エチレンジオキシチオフェン(実施例6)及び2,5−ジブロモ−3−ヘキシルチオフェン(実施例7)であった。
【0114】
(実施例6)−ポリ(3,4−エチレン−2,5−ジオキシチオフェン−アルト−9,10−ビス−[(トリメチルシリル)エチニル]−2,6−アントラセン)の合成
100mLのシュレンクフラスコに、2,6−ビス−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,10−ビス[(トリメチルシリル)エチニル]アントラセン(0.150g、0.241ミリモル)、2,5−ジブロモ−3,4−エチレンジオキシチオフェン(0.072g、0.241ミリモル)、炭酸ナトリウム(0.128g、1.20ミリモル)、アリクアット(ALIQUAT)336(0.050g)、蒸留水(1.0mL)及びトルエン(250mL)を充填した。混合物を、シュレンクラインを用いて窒素下で3回脱気して、酸素を除去した。次いで、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.005g、0.004ミリモル)を、乾燥窒素流下で添加した。もう一度脱気した後、混合物を乾燥窒素下で90℃にて72時間攪拌した。暗赤色沈殿が生じ、それを生成物として濾過により収集した(0.12g、収率:およそ100%)。
【0115】
(実施例7)−ポリ(3−ヘキシル−2,5−チオフェン−アルト−9,10−ビス[(トリメチルシリル)−エチニル]−2,6−アントラセン)の合成
100mのLシュレンクフラスコに、2,6−ビス−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,10−ビス[(トリメチルシリル)エチニル]アントラセン(0.150g、0.241ミリモル)、2,5−ジブロモ−3−ヘキシルチオフェン(0.079g、0.241ミリモル)、炭酸ナトリウム(0.127g、1.20ミリモル)、アリクアット(ALIQUAT)336(0.046g)、蒸留水(1.0mL)及びトルエン(25mL)を充填した。混合物を、シュレンクラインにて窒素下で3回脱気して、酸素を除去した。次いで、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.005g、0.004ミリモル)を、乾燥窒素流下で添加した。もう一度脱気した後、混合物を乾燥窒素下で90℃にて72時間攪拌した。暗赤色沈殿が生じ、それを生成物として濾過により収集した(0.13g、収率:およそ100%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iのコポリマーであって、
【化1】

式中、
Acは2〜5個の縮合ベンゼン環を有するアセン基であって、Acは所望により、アルキル、アルコキシ、チオアルキル、アリール、アラルキル、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、又はこれらの組み合わせから選択される置換基で置換されてよく、
は、それぞれ独立して水素、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、ヘテロアルキル、又はヒドロキシアルキルから選択され、
Qは、式II、III、IV又はVの二価基であり、
【化2】

R1及びR2は、それぞれ独立して水素、アルキル、アルコキシ、チオアルキル、アリール、アラルキル、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヘテロアルキル、又はアルケニルから選択され、
nは、4以上の整数である、コポリマー。
【請求項2】
Acが、ナフタレン、アントラセン、又はペンタセンから選択されるアセン基である、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項3】
式−Ac(E)−(式中、各Eは、式−C≡C−Si(Rのシリルエチニル基に等しい)の二価基が、1,4−ビス(シリルエチニル)ナフタレン−2,6−ジイル、1,4−ビス(シリルエチニル)ナフタレン−2,7−ジイル、9,10−ビス(シリルエチニル)アントラセン−2,6−ジイル、9,10−ビス(シリルエチニル)アントラセン−2,7−ジイル、2,6−ビス(シリルエチニル)アントラセン−9,10−ジイル、2,7−ビス(シリルエチニル)アントラセン−9,10−ジイル、6,13−ビス(シリルエチニル)ペンタセン−2,9−ジイル、6,13−ビス(シリルエチニル)ペンタセン−2,10−ジイル、2,9−ビス(シリルエチニル)ペンタセン−6,13−ジイル、又は2,10−ビス(シリルエチニル)ペンタセン−6,13−ジイルから選択される、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項4】
式−Ac(E)−の二価基が、1,4−ビス(シリルエチニル)ナフタレン−2,6−ジイル、9,10−ビス(シリルエチニル)アントラセン−2,6−ジイル、又は6,13−ビス(シリルエチニル)ペンタセン−2,9−ジイルから選択される、請求項3に記載のコポリマー。
【請求項5】
式−Ac(E)−(式中、各Eは、式−C≡C−Si(Rのシリルエチニル基に等しい)の二価基が、1,4−ビス(トリアルキルシリルエチニル)ナフタレン−2,6−ジイル、1,4−ビス(トリアルキルシリルエチニル)ナフタレン−2,7−ジイル、9,10−ビス(トリアルキルシリルエチニル)アントラセン−2,6−ジイル、9,10−ビス(トリアルキルシリルエチニル)アントラセン−2,7−ジイル、2,6−ビス(トリアルキルシリルエチニル)アントラセン−9,10−ジイル、2,7−ビス(トリアルキルシリルエチニル)アントラセン−9,10−ジイル、6,13−ビス(トリアルキルシリルエチニル)ペンタセン−2,9−ジイル、6,13−ビス(トリアルキルシリルエチニル)ペンタセン−2,10−ジイル、2,9−ビス(トリアルキルシリルエチニル)ペンタセン−6,13−ジイル、又は2,10−ビス(トリアルキルシリルエチニル)ペンタセン−6,13−ジイルから選択される、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項6】
が、10個以下の炭素原子を有するアルキルである、請求項2に記載のコポリマー。
【請求項7】
Qが式IIである、請求項2に記載のコポリマー。
【化3】

【請求項8】
R1及びR2の少なくとも1つが、少なくとも4個の炭素原子を有するアルキル、少なくとも4個の炭素原子を有するアルコキシ、少なくとも4個の炭素原子を有するチオアルキル、少なくとも6個の炭素原子を有するアリール、少なくとも10個の炭素原子を有するアラルキル、少なくとも4個の炭素原子を有するハロアルキル、少なくとも4個の炭素原子を有するヒドロキシアルキル、少なくとも4個の炭素原子を有するヘテロアルキル、少なくとも4個の炭素原子を有するアルケニル、又はこれらの組み合わせである、請求項7に記載のコポリマー。
【請求項9】
式−Ac(E)−(式中、各Eは、式−C≡C−Si(Rのシリルエチニル基に等しい)の二価基が、1,4−ビス(シリルエチニル)ナフタレン−2,6−ジイル、9,10−ビス(シリルエチニル)アントラセン−2,6−ジイル、又は6,13−ビス(シリルエチニル)ペンタセン−2,9−ジイルから選択される、請求項7に記載のコポリマー。
【請求項10】
Qが式III又はIVのものである、請求項2に記載のコポリマー。
【化4】

【請求項11】
R1及びR2の少なくとも1つが、少なくとも4個の炭素原子を有するアルキル、少なくとも4個の炭素原子を有するアルコキシ、少なくとも4個の炭素原子を有するチオアルキル、少なくとも6個の炭素原子を有するアリール、少なくとも10個の炭素原子を有するアラルキル、少なくとも4個の炭素原子を有するハロアルキル、少なくとも4個の炭素原子を有するヒドロキシアルキル、少なくとも4個の炭素原子を有するヘテロアルキル、少なくとも4個の炭素原子を有するアルケニル、又はこれらの組み合わせである、請求項10に記載のコポリマー。
【請求項12】
式−Ac(E)−(式中、各Eは、式−C≡C−Si(Rのシリルエチニル基に等しい)の二価基が、1,4−ビス(シリルエチニル)ナフタレン−2,6−ジイル、9,10−ビス(シリルエチニル)アントラセン−2,6−ジイル、又は6,13−ビス(シリルエチニル)ペンタセン−2,9−ジイルから選択される、請求項10に記載のコポリマー。
【請求項13】
Qが式Vのものである、請求項2に記載のコポリマー。
【化5】

【請求項14】
R1及びR2の少なくとも1つが、少なくとも4個の炭素原子を有するアルキル、少なくとも4個の炭素原子を有するアルコキシ、少なくとも4個の炭素原子を有するチオアルキル、少なくとも6個の炭素原子を有するアリール、少なくとも10個の炭素原子を有するアラルキル、少なくとも4個の炭素原子を有するハロアルキル、少なくとも4個の炭素原子を有するヒドロキシアルキル、少なくとも4個の炭素原子を有するヘテロアルキル、少なくとも4個の炭素原子を有するアルケニル、又はこれらの組み合わせである、請求項13に記載のコポリマー。
【請求項15】
式−Ac(E)−(式中、各Eは、式−C≡C−Si(Rのシリルエチニル基に等しい)の二価基が、1,4−ビス(シリルエチニル)ナフタレン−2,6−ジイル、9,10−ビス(シリルエチニル)アントラセン−2,6−ジイル、又は6,13−ビス(シリルエチニル)ペンタセン−2,9−ジイルから選択される、請求項13に記載のコポリマー。
【請求項16】
溶媒及び式Iのコポリマーを含む組成物であって、
【化6】

式中、
Acは2〜5個の縮合ベンゼン環を有するアセン基であって、Acは所望により、アルキル、アルコキシ、チオアルキル、アリール、アラルキル、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、又はこれらの組み合わせから選択される置換基で置換されてよく、
は、それぞれ独立して水素、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、ヘテロアルキル、又はヒドロキシアルキルから選択され、
Qは、式II、III、IV又はVの二価基であり、
【化7】

R1及びR2は、それぞれ独立して水素、アルキル、アルコキシ、チオアルキル、アリール、アラルキル、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヘテロアルキル又はアルケニルから選択され、
nは、4以上の整数である、組成物。
【請求項17】
Acがナフタレン、アントラセン、又はペンタセンから選択されるアセン基である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
式−Ac(E)−(式中、各Eは、式−C≡C−Si(Rのシリルエチニル基に等しい)の二価基が、1,4−ビス(シリルエチニル)ナフタレン−2,6−ジイル、1,4−ビス(シリルエチニル)ナフタレン−2,7−ジイル、9,10−ビス(シリルエチニル)アントラセン−2,6−ジイル、9,10−ビス(シリルエチニル)アントラセン−2,7−ジイル、2,6−ビス(シリルエチニル)アントラセン−9,10−ジイル、2,7−ビス(シリルエチニル)アントラセン−9,10−ジイル、6,13−ビス(シリルエチニル)ペンタセン−2,9−ジイル、6,13−ビス(シリルエチニル)ペンタセン−2,10−ジイル、2,9−ビス(シリルエチニル)ペンタセン−6,13−ジイル、又は2,10−ビス(シリルエチニル)ペンタセン−6,13−ジイルから選択される、請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
式−Ac(E)−の二価基が、1,4−ビス(シリルエチニル)ナフタレン−2,6−ジイル、9,10−ビス(シリルエチニル)アントラセン−2,6−ジイル、又は6,13−ビス(シリルエチニル)ペンタセン−2,9−ジイルから選択される、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
が、10個以下の炭素原子を有するアルキルである、請求項17に記載の組成物。

【公表番号】特表2009−534504(P2009−534504A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−506683(P2009−506683)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【国際出願番号】PCT/US2007/066282
【国際公開番号】WO2007/124266
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】