シリンダヘッドガスケットにおけるオイル落し穴のシール構造
【解決手段】 シリンダヘッドガスケット1は、それぞれオイル落し穴4を穿設した少なくとも2枚の第1シールプレート11と第2シールプレート12とを備えている。上記第1シールプレートと第2シールプレートとに、上記オイル落し穴を無端状に囲むとともに、互いに近接する方向に突出して相互に圧接されるハーフビード11a、12aを形成してあり、これらハーフビードによってオイル落し穴をシールしている。上記各ハーフビードよりも外側に、互いに近接する方向に突出して相互に圧接される補助ビード11c、12cを形成してある。
上記ハーフビードと補助ビードの突出方向は逆であってもよい。
【効果】 各補助ビード11c、12cは、各ハーフビード11a、12aをシリンダヘッド又はシリンダブロックに押し付けるような作用力を付与するので、従来に比較して良好なシール性を確保することができる。
上記ハーフビードと補助ビードの突出方向は逆であってもよい。
【効果】 各補助ビード11c、12cは、各ハーフビード11a、12aをシリンダヘッド又はシリンダブロックに押し付けるような作用力を付与するので、従来に比較して良好なシール性を確保することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシリンダヘッドガスケットに関し、より詳しくは、シリンダヘッドガスケットに設けられたオイル落し穴をシールするためのシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、少なくとも2枚のシールプレートを備えたシリンダヘッドガスケットは周知であり、例えば特許文献1に記載されたシリンダヘッドガスケットは3枚のシールプレートを備えている。
エンジンがオイル落し穴を備えていることも従来周知であり、特許文献1には記載されていないが、3枚のシールプレートにもそれぞれオイル落し穴が形成されている。そしてこのオイル落し穴は、それぞれのシールプレートに形成されて、上記オイル落し穴を無端状に囲むハーフビードによってシールされている。
なお従来、排気マニホルド用のガスケットとしては、1枚のシールプレートに、排気通路を囲むフルビードとハーフビードとを同心上に形成したものが知られている(特許文献2の図3)。
【特許文献1】特開2007−247631号公報
【特許文献2】特開平8−232759号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで一般にシリンダヘッドガスケットは、シリンダヘッドとシリンダブロックとを締結ボルトによって締結することによって、そのシリンダヘッドとシリンダブロックとの間に挟持されるようになっている。
このとき、上記締結ボルトを基点として、シリンダヘッドとシリンダブロックとの間隔は、エンジンの外側となるに従って徐々に開くようになる。
特許文献1のシリンダヘッドガスケットにおいては、オイル落し穴の周囲に無端状のハーフビードを設けてオイル落し穴をシールするようにしているが、シリンダヘッドとシリンダブロックとの開き量が大きくなると、ハーフビードとシリンダヘッド又はシリンダブロックとの密着力が小さくなって、オイル漏れが生じるようになる。
したがって従来、エンジンの外側におけるシリンダヘッドとシリンダブロックとの口開き量が大きいエンジンにおいては、その口開き量に応じてシールプレートの枚数を増大させる必要があり、コストアップを招いていた。
本発明はそのような事情に鑑み、ハーフビードとシリンダヘッド又はシリンダブロックとの密着力を大きくすることができるようにして、シールプレートの枚数を増大させることなくシール性能を向上させることができるようにしたシリンダヘッドガスケットにおけるオイル落し穴のシール構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
すなわち請求項1の発明は、それぞれオイル落し穴を穿設した少なくとも2枚の第1シールプレートと第2シールプレートとを備えたシリンダヘッドガスケットにおいて、
上記第1シールプレートと第2シールプレートとに、上記オイル落し穴を無端状に囲むとともに、互いに近接する方向に突出して相互に圧接されるハーフビードを形成し、
さらに上記各ハーフビードよりも外側に、互いに近接する方向に突出して相互に圧接される補助ビードを形成したことを特徴とするシリンダヘッドガスケットにおけるオイル落し穴のシール構造を提供するものである。
また請求項5の発明は、それぞれオイル落し穴を穿設した少なくとも2枚の第1シールプレートと第2シールプレートとを備えたシリンダヘッドガスケットにおいて、
上記第1シールプレートと第2シールプレートとに、互いに重合する位置に、互いに離隔する方向に突出してそれぞれ上記オイル落し穴を無端状に囲むハーフビードを形成し、
さらに上記各ハーフビードよりも外側の互いに重合する位置に、互いに離隔する方向に突出する補助ビードを形成したことを特徴とするシリンダヘッドガスケットにおけるオイル落し穴のシール構造を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
上記構成を有するシリンダヘッドガスケットを上方のシリンダヘッドと下方のシリンダブロックとの間に挟持した状態で、シリンダヘッドとシリンダブロックとを図示しない締結ボルトで連結すると、上側のハーフビードの頂部がシリンダヘッドに強く密着されるようになり、また下側のハーフビードの頂部がシリンダブロックに強く密着されるようになる。これによりオイル落し穴は、各ハーフビードの各頂部によって無端状に囲まれてシールされるようになる。
これと同時に、上記補助ビードがシリンダヘッドと下方のシリンダブロックとの間で挟持されると、上方のハーフビードの頂部は補助ビードによって押し上げられるような作用力を受け、また下方のハーフビードの頂部も補助ビードによって押し下げられるような作用力を受けるようになる。
その結果、上記締結ボルトによってシリンダヘッドとシリンダブロックとが締結された際に、締結ボルトを基点として、シリンダヘッドとシリンダブロックとの間隔がエンジンの外側となるに従って徐々に開いたとしても、上記各ハーフビードの各頂部は上記作用力により良好にシリンダヘッド又はシリンダブロックに密着されるので、従来に比較して良好なシール性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下図示実施例について本発明を説明すると、図1において、本実施例のシリンダヘッドガスケット1は、一直線上に配置した4つの燃焼室穴2と、図示しない締結ボルトを挿通するための複数のボルト穴3と、複数のオイル落し穴4とを備えている。
上記ボルト穴3は、それぞれの燃焼室穴2の周囲を4箇所で囲むように配置してあるが、隣接する燃焼室穴2、2の間のボルト穴3は両燃焼室穴2、2に対して共通に設けてあるので、合計10箇所にボルト穴3を形成してある。
また上記オイル落し穴4は、シリンダヘッドガスケット1の長手方向一側に、隣接する燃焼室穴2、2に共通に設けた3つのボルト穴3のそれぞれの外側(燃焼室穴とは反対側)に、3箇所設けてある。
【0007】
上記シリンダヘッドガスケット1は、図3に示すように、金属製の第1シールプレート11と第2シールプレート12とを備えており、両シールプレート11、12はシリンダヘッド13とシリンダブロック14との間に挟持されてそれらの間をシールするようになっている。
上記シールプレート11、12には、それぞれ上記オイル落し穴4を穿設してあり、また図3には記載されていないが、ボルト穴3や燃焼室穴2を穿設してあることも勿論である。
【0008】
上記各シールプレート11、12には、オイル落し穴4をシールするために、オイル落し穴4の周囲を無端状に囲むハーフビード11a、12aをそれぞれ形成してある。
シリンダヘッド13側となる上側の第1シールプレート11に形成した第1ハーフビード11aは、下方の第2シールプレート12に向けて突出しており、シリンダブロック14側となる下側の第2シールプレート12に形成した第2ハーフビード12aは、上方の第1シールプレート11に向けて突出している。
したがって両ハーフビード11a、12aは互いに近接する方向に突出しており、各ハーフビード11a、12aで囲まれたオイル落し穴4の周囲の囲繞部分11b、12bは、互いに当接している。
【0009】
上記ハーフビード11a、12aは、いずれも図2に示すボルト穴3から遠い部分11Fが近い部分11Nよりも大きく突出されており、それによって各ハーフビード11a、12aの遠い部分11Fが近い部分11Nよりも大きな密着力でシリンダヘッド13とシリンダブロック14の口開きに追従できるようにしてある。
より具体的には、図2に示す実施例では、仮想線Lを境として、各ハーフビード11a、12aの遠い部分11Fを近い部分11Nよりも大きく突出するように形成してあり、かつ、上記仮想線Lの部分では遠い部分11Fの大きな突出量と近い部分11Nの小さな突出量とがなだらかに連続するように形成してある。
なお、上記遠い部分11Fと近い部分11Nとの突出量を変える代わりに、遠い部分11Fにおける各ハーフビード11a、12aの幅WFを、近い部分11Nの幅WNよりも広く形成して、遠い部分11Fにおけるシリンダヘッド13とシリンダブロック14の口開き追従性を近い部分11Nよりも大きくなるようにしてもよい。
このとき、上記遠い部分11Fの突出量を近い部分11Nの突出量よりも大きくすると同時に、遠い部分11Fの幅WFを近い部分11Nの幅WNよりも広く形成してもよく、さらに上記各設定は、少なくともいずれかのハーフビードに設けられていればよい。
【0010】
さらに各シールプレート11、12には、図2、図3に示すように、各ハーフビード11a、12aの外側位置で、ボルト穴3とは反対側位置に、つまりオイル落し穴4よりもシリンダヘッドガスケット1の外側となる位置に、ハーフビード11a、12aに沿って補助ビード11c、12cをそれぞれ形成してある。
本実施例では各補助ビード11c、12cは断面円弧状に形成してあり、上側の第1シールプレート11に形成した第1補助ビード11cは、下方の第2シールプレート12に向けて突出し、下方の第2シールプレート12に形成した第2補助ビード12cは、上方の第1シールプレート11に向けて突出している。
したがって両補助ビード11c、12cは、互いに近接する方向に突出して相互に密着するようになる。
【0011】
また本実施例では、図3の×印で示すように、上記オイル落し穴4の周囲の囲繞部分11b、12bを溶接や接着剤などによって連結してある。この連結箇所は、オイル落し穴4の周囲の複数箇所であってもよいし、連続した無端状であってもよい。
上記両シールプレート11、12をシリンダヘッド14とシリンダブロック14とで挟持した際には、各シールプレート11、12のオイル落し穴4の内周縁部分が拡開されるようになるが、上述したようにオイル落し穴4の周囲を連結するとその拡開を抑制できるので、後述の図5の解析結果で示すように、よりシール性を向上させることができる。
【0012】
なお、本発明においては燃焼室穴2をシールするための構成を問題とはしておらず、その構成としては従来公知の適宜の構成を採用することができる。
例えば、図示しないが、各シールプレート11、12に燃焼室穴2を無端状に囲むフルビードを互いに離隔する方向に形成し、そのフルビードの間に燃焼室穴2の周囲の面圧を増大させるためのシムプレートを配置した構成を用いることができる。
【0013】
以上の構成において、上記シリンダヘッドガスケット1をシリンダヘッド13とシリンダブロック14との間に挟持した状態で、シリンダヘッド13とシリンダブロック14とを図示しない締結ボルトで連結すると、上側のハーフビード11aの頂部11dがシリンダヘッド13に強く密着されるようになり、また下側のハーフビード12aの頂部12dがシリンダブロック13に強く密着されるようになる。これによりオイル落し穴4は、特に各ハーフビード11a、12aの各頂部11d、12dによって無端状に囲まれてシールされるようになる。
これと同時に、上記補助ビード11c、12cも相互に圧着されるようになる。すると、上方のハーフビード11aの頂部11dは、下方の補助ビード12cによって押し上げられる作用力を受け、また下方のハーフビード12aの頂部12dは、上方の補助ビード11cによって押し下げられる作用力を受けるようになる。
【0014】
その結果、上記締結ボルトによってシリンダヘッド13とシリンダブロック14とが締結された際に、締結ボルトを基点として、シリンダヘッド13とシリンダブロック14との間隔がエンジンの外側となるに従って徐々に開いたとしても、上記各ハーフビード11a、12aの各頂部11d、12dは上記作用力により良好にシリンダヘッド13又はシリンダブロック14に密着されるので、従来に比較して良好なシール性を確保することができる。
【0015】
図4は本発明の第2実施例を示したもので、本第2実施例では上述した第1実施例におけるハーフビード11a、12aと補助ビード11c、12cとの突出方向を逆に設定してある。
すなわち第2実施例においては、シリンダヘッド13側となる上側の第1シールプレート11’に形成した第1ハーフビード11a’は、シリンダヘッド13側に向けて上方に突出しており、シリンダブロック14側となる下側の第2シールプレート12’に形成した第2ハーフビード12a’は、シリンダブロック14に向けて下方に突出している。したがって両ハーフビード11a’、12a’は互いに離隔する方向に突出している。
他方、上側の第1シールプレート11’に形成した第1補助ビード11c’はシリンダヘッド13側に向けて上方に突出しており、下方の第2シールプレート12’に形成した第2補助ビード12c’はシリンダブロック14に向けて下方に突出している。したがって両補助ビード11c’、12c’も、互いに離隔する方向に突出している。
【0016】
さらに本実施例では、図4の×印で示すように、上記第1シールプレート11’と第2シールプレート12’とは、上記補助ビード11c’、12c’よりも外側の位置で、溶接や接着剤などによって連結してある。この連結箇所は、補助ビード11c’、12c’の外側の位置に複数箇所設けてもよいし、連続した線状であってもよい。
上記両シールプレート11、12をシリンダヘッド14とシリンダブロック14とで挟持した際には、両補助ビード11c’、12c’が密着されることによって各シールプレート11、12の外側部分が拡開されるようになるが、その外側部分を連結するとその拡開を抑制できるので、よりシール性を向上させることができる。
その他の構成は第1実施例と同様に構成してあり、第1実施例と同等の部分には第1実施例で用いた符号に「’」を付して示してある。
【0017】
上記第2実施例の構成において、上記シリンダヘッドガスケット1’をシリンダヘッド13とシリンダブロック14との間に挟持した状態で、シリンダヘッド13とシリンダブロック14とを図示しない締結ボルトで連結すると、
上方のハーフビード11a’の頂部11d’は上方の補助ビード11c’によって押し上げられる作用力を受け、また下方のハーフビード12a’の頂部12d’は、下方の補助ビード12c’によって押し下げられる作用力を受けるようになる。
その結果、各ハーフビード11a、12aの各頂部11d、12dは上記作用力により良好にシリンダヘッド13又はシリンダブロック14に密着されるので、従来に比較して良好なシール性を確保することができる。
【0018】
図5は2DCAEを用いた本発明の作用効果を示す解析結果図である。
一般にエンジンの温度を上昇させると、エンジンの外側部分におけるシリンダヘッド13とシリンダブロック14との間隔(口開き量)が拡大するので、本解析では口開き量を徐々に増大させていった際に、どの程度の大きさの口開き量となるまでオイル落し穴4のシール性を確保できるかを解析したものである。図5における口開き指数シール性能とは、従来技術に相当する比較品1のシール性が損なわれた際の口開き量を100としたときに、本発明品がどの程度の口開き量までシール性を確保できたかを示す相対指数である。
この解析に用いた本発明品3は図3に示した構成を有するものであり、本発明品1は本発明品3から連結部分を省略し、2枚のシールプレート11、12を単に重合させただけのものである。また本発明品2は図4に示した構成を有するものであり、やはり連結部分は省略してある。さらに上記本発明品1〜3においては、いずれも各ハーフビード11a、11a’、12a、12a’の突出量や幅を変化させておらず、それらを一定に設定してある。
【0019】
他方、比較品1は2枚のシールプレートを用いたもので、図3に示す2枚のシールプレート11、12に単純にハーフビード11a、12aのみを形成したものである。つまり以下に述べる比較品を含めて、比較品は連結部分を備えておらず、またハーフビードの突出量や幅は一定に設定してある。
比較品2は3枚のシールプレートを用いたもので、図3に示す本発明品における2枚のシールプレートの下に更に1枚のシールプレートを追加し、そのハーフビードを下方に向けて突出させたものである。そして、この3枚のシールプレートでは、補助ビード11c、12cを省略してある。このような構成は、上記特許文献1の構成に相当するものである。
さらに比較品3は、1枚のシールプレート11のみを用いたものである。この構成は、上記特許文献2の図3に示されたシールプレートを、シールする側を逆にしてシリンダヘッドガスケットとして用いたものである。つまり特許文献2の図3に示されたシールプレートは、その右側の排気通路をシールするものであるが、この解析では、特許文献2の図3に示されたシールプレートの右側のオイル落し穴をシールするように用いている。
【0020】
図5の解析結果から明らかなように、本発明品1、2ではシールプレートの枚数が2枚と少ないにも拘らず、口開き量が144、137となるまでシール性を得ることができる。つまり口開き量に関して、シールプレートの枚数が同数である比較品1に対して、44%と37%のシール作用の向上を得ることができる。
またシールプレートの枚数が3枚である比較品2と比較した場合には、本発明品1、2はシールプレートの枚数が2枚と少ないにも拘らず、ほぼ同等のシール性を得ることができている。
さらに、オイル落し穴4の周囲を固着した本発明品3においては最も良好なシール性を得ており、比較品1、2に対して遥かに優れたシール性を得ることができる。
なお、比較品3については、比較品1に対しても72%のシール性しか確保できなかった。
【0021】
図6は本発明の第3実施例を示したものである。上記第1実施例では2枚のシールプレート11、12を用いているが、本実施例では、相互に重合された4枚のシールプレート11、12、21、22を用いている。
本実施例において、2枚のシールプレート11、12は上述した第1実施例と同一の構成を備えており、また第3シールプレート21は上記第1シールプレート11と同一の構成を、第4シールプレート22は第2シールプレート12と同一の構成を備えている。
つまり本第3実施例では、第1実施例の2枚のシールプレート11、12を1組として、これを2組重合させた構成を備えたものである。
本実施例においても上記第1実施例と同等の作用効果が得られ、特に本第3実施例では第1実施例よりも大きな口開き量を有するエンジンにおいても、良好にオイル落し穴のシール性を確保することができる。
【0022】
図7は本発明の第4実施例を示したもので、上記第3実施例の4枚のシールプレート11、12、21、22のうち、第4シールプレート22を省略したものである。
つまり第4実施例の構成は、上記第1実施例の第2シールプレート12に、オイル落し穴4を穿設した第3シールプレート21を重合し、この第3シールプレート21に形成したハーフビード21aと補助ビード21cとを、第2シールプレート12のハーフビード12aと補助ビード12cとにそれぞれ重合する位置で、かつ第2シールプレート12のハーフビード12aと補助ビード12cとは離隔する方向に突出するように形成したものである。
【0023】
図8は本発明の第5実施例を示したものである。上記第2実施例では2枚のシールプレート11’、12’を用いているが、本実施例では、相互に重合された4枚のシールプレート11’、12’、21’、22’を用いている。
本実施例において、2枚のシールプレート11’、12’は上述した第2実施例と同一の構成を備えており、また第3シールプレート21’は上記第1シールプレート11’と同一の構成を、第4シールプレート22’は第2シールプレート12’と同一の構成を備えている。
つまり本第5実施例では、第2実施例の2枚のシールプレート11’、12’を1組として、これを2組重合させた構成を備えたものである。
本実施例においても上記第2実施例と同等の作用効果が得られ、特に本第5実施例では第2実施例よりも大きな口開き量を有するエンジンにおいても、良好にオイル落し穴のシール性を確保することができる。
【0024】
図9は本発明の第6実施例を示したもので、上記第5実施例の4枚のシールプレート11’、12’、21’、22’のうち、第4シールプレート22’を省略したものである。
つまり第6実施例の構成は、上記第2実施例の第2シールプレート12’に、オイル落し穴4’を穿設した第3シールプレート21’を重合し、この第3シールプレート21’に形成したハーフビード21a’と補助ビード21’cとを、第2シールプレート12’のハーフビード12a’と補助ビード12c’とにそれぞれ重合する位置で、かつ第2シールプレート12’のハーフビード12a’と補助ビード12c’とに近接する方向に突出するように形成したものである。
【0025】
なお上述した実施例では、いずれも補助ビード11c、12cを断面半円形状に形成してあるが、この形状に限定されるものではない。例えば、図10に示すように断面コ字形状に形成してもよく、或いは図11に示すように断面M字形状に形成してもよい。
また図12に示すように、上述したいずれの実施例においても、補助ビードの内側に樹脂やゴムなどの充填材15を充填して、各補助ビードのへたりを抑制するようにしてもよい。
さらに、上記各実施例では各補助ビードをオイル落し穴の外側で、シリンダヘッドガスケットの外側部分のみに形成しているが、オイル落し穴及びハーフビードを囲んで無端状に形成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施例を示す平面図。
【図2】図1の要部の拡大平面図。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面図。
【図4】本発明の第2実施例を示す断面図。
【図5】本発明の効果を説明する解析結果図。
【図6】本発明の第3実施例を示す断面図。
【図7】本発明の第4実施例を示す断面図。
【図8】本発明の第5実施例を示す断面図。
【図9】本発明の第6実施例を示す断面図。
【図10】本発明の第7実施例を示す断面図。
【図11】本発明の第8実施例を示す断面図。
【図12】本発明の第9実施例を示す断面図。
【符号の説明】
【0027】
1 シリンダヘッドガスケット
2 燃焼室穴
3 ボルト穴
4 オイル落し穴
11、11’、12、12’、21、21’22、22’ シールプレート
11a、11a’、12a、12a’ ハーフビード
11c、11c’、12c、12c’ 補助ビード
13 シリンダヘッド
14 シリンダブロック
15 充填材
【技術分野】
【0001】
本発明はシリンダヘッドガスケットに関し、より詳しくは、シリンダヘッドガスケットに設けられたオイル落し穴をシールするためのシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、少なくとも2枚のシールプレートを備えたシリンダヘッドガスケットは周知であり、例えば特許文献1に記載されたシリンダヘッドガスケットは3枚のシールプレートを備えている。
エンジンがオイル落し穴を備えていることも従来周知であり、特許文献1には記載されていないが、3枚のシールプレートにもそれぞれオイル落し穴が形成されている。そしてこのオイル落し穴は、それぞれのシールプレートに形成されて、上記オイル落し穴を無端状に囲むハーフビードによってシールされている。
なお従来、排気マニホルド用のガスケットとしては、1枚のシールプレートに、排気通路を囲むフルビードとハーフビードとを同心上に形成したものが知られている(特許文献2の図3)。
【特許文献1】特開2007−247631号公報
【特許文献2】特開平8−232759号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで一般にシリンダヘッドガスケットは、シリンダヘッドとシリンダブロックとを締結ボルトによって締結することによって、そのシリンダヘッドとシリンダブロックとの間に挟持されるようになっている。
このとき、上記締結ボルトを基点として、シリンダヘッドとシリンダブロックとの間隔は、エンジンの外側となるに従って徐々に開くようになる。
特許文献1のシリンダヘッドガスケットにおいては、オイル落し穴の周囲に無端状のハーフビードを設けてオイル落し穴をシールするようにしているが、シリンダヘッドとシリンダブロックとの開き量が大きくなると、ハーフビードとシリンダヘッド又はシリンダブロックとの密着力が小さくなって、オイル漏れが生じるようになる。
したがって従来、エンジンの外側におけるシリンダヘッドとシリンダブロックとの口開き量が大きいエンジンにおいては、その口開き量に応じてシールプレートの枚数を増大させる必要があり、コストアップを招いていた。
本発明はそのような事情に鑑み、ハーフビードとシリンダヘッド又はシリンダブロックとの密着力を大きくすることができるようにして、シールプレートの枚数を増大させることなくシール性能を向上させることができるようにしたシリンダヘッドガスケットにおけるオイル落し穴のシール構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
すなわち請求項1の発明は、それぞれオイル落し穴を穿設した少なくとも2枚の第1シールプレートと第2シールプレートとを備えたシリンダヘッドガスケットにおいて、
上記第1シールプレートと第2シールプレートとに、上記オイル落し穴を無端状に囲むとともに、互いに近接する方向に突出して相互に圧接されるハーフビードを形成し、
さらに上記各ハーフビードよりも外側に、互いに近接する方向に突出して相互に圧接される補助ビードを形成したことを特徴とするシリンダヘッドガスケットにおけるオイル落し穴のシール構造を提供するものである。
また請求項5の発明は、それぞれオイル落し穴を穿設した少なくとも2枚の第1シールプレートと第2シールプレートとを備えたシリンダヘッドガスケットにおいて、
上記第1シールプレートと第2シールプレートとに、互いに重合する位置に、互いに離隔する方向に突出してそれぞれ上記オイル落し穴を無端状に囲むハーフビードを形成し、
さらに上記各ハーフビードよりも外側の互いに重合する位置に、互いに離隔する方向に突出する補助ビードを形成したことを特徴とするシリンダヘッドガスケットにおけるオイル落し穴のシール構造を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
上記構成を有するシリンダヘッドガスケットを上方のシリンダヘッドと下方のシリンダブロックとの間に挟持した状態で、シリンダヘッドとシリンダブロックとを図示しない締結ボルトで連結すると、上側のハーフビードの頂部がシリンダヘッドに強く密着されるようになり、また下側のハーフビードの頂部がシリンダブロックに強く密着されるようになる。これによりオイル落し穴は、各ハーフビードの各頂部によって無端状に囲まれてシールされるようになる。
これと同時に、上記補助ビードがシリンダヘッドと下方のシリンダブロックとの間で挟持されると、上方のハーフビードの頂部は補助ビードによって押し上げられるような作用力を受け、また下方のハーフビードの頂部も補助ビードによって押し下げられるような作用力を受けるようになる。
その結果、上記締結ボルトによってシリンダヘッドとシリンダブロックとが締結された際に、締結ボルトを基点として、シリンダヘッドとシリンダブロックとの間隔がエンジンの外側となるに従って徐々に開いたとしても、上記各ハーフビードの各頂部は上記作用力により良好にシリンダヘッド又はシリンダブロックに密着されるので、従来に比較して良好なシール性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下図示実施例について本発明を説明すると、図1において、本実施例のシリンダヘッドガスケット1は、一直線上に配置した4つの燃焼室穴2と、図示しない締結ボルトを挿通するための複数のボルト穴3と、複数のオイル落し穴4とを備えている。
上記ボルト穴3は、それぞれの燃焼室穴2の周囲を4箇所で囲むように配置してあるが、隣接する燃焼室穴2、2の間のボルト穴3は両燃焼室穴2、2に対して共通に設けてあるので、合計10箇所にボルト穴3を形成してある。
また上記オイル落し穴4は、シリンダヘッドガスケット1の長手方向一側に、隣接する燃焼室穴2、2に共通に設けた3つのボルト穴3のそれぞれの外側(燃焼室穴とは反対側)に、3箇所設けてある。
【0007】
上記シリンダヘッドガスケット1は、図3に示すように、金属製の第1シールプレート11と第2シールプレート12とを備えており、両シールプレート11、12はシリンダヘッド13とシリンダブロック14との間に挟持されてそれらの間をシールするようになっている。
上記シールプレート11、12には、それぞれ上記オイル落し穴4を穿設してあり、また図3には記載されていないが、ボルト穴3や燃焼室穴2を穿設してあることも勿論である。
【0008】
上記各シールプレート11、12には、オイル落し穴4をシールするために、オイル落し穴4の周囲を無端状に囲むハーフビード11a、12aをそれぞれ形成してある。
シリンダヘッド13側となる上側の第1シールプレート11に形成した第1ハーフビード11aは、下方の第2シールプレート12に向けて突出しており、シリンダブロック14側となる下側の第2シールプレート12に形成した第2ハーフビード12aは、上方の第1シールプレート11に向けて突出している。
したがって両ハーフビード11a、12aは互いに近接する方向に突出しており、各ハーフビード11a、12aで囲まれたオイル落し穴4の周囲の囲繞部分11b、12bは、互いに当接している。
【0009】
上記ハーフビード11a、12aは、いずれも図2に示すボルト穴3から遠い部分11Fが近い部分11Nよりも大きく突出されており、それによって各ハーフビード11a、12aの遠い部分11Fが近い部分11Nよりも大きな密着力でシリンダヘッド13とシリンダブロック14の口開きに追従できるようにしてある。
より具体的には、図2に示す実施例では、仮想線Lを境として、各ハーフビード11a、12aの遠い部分11Fを近い部分11Nよりも大きく突出するように形成してあり、かつ、上記仮想線Lの部分では遠い部分11Fの大きな突出量と近い部分11Nの小さな突出量とがなだらかに連続するように形成してある。
なお、上記遠い部分11Fと近い部分11Nとの突出量を変える代わりに、遠い部分11Fにおける各ハーフビード11a、12aの幅WFを、近い部分11Nの幅WNよりも広く形成して、遠い部分11Fにおけるシリンダヘッド13とシリンダブロック14の口開き追従性を近い部分11Nよりも大きくなるようにしてもよい。
このとき、上記遠い部分11Fの突出量を近い部分11Nの突出量よりも大きくすると同時に、遠い部分11Fの幅WFを近い部分11Nの幅WNよりも広く形成してもよく、さらに上記各設定は、少なくともいずれかのハーフビードに設けられていればよい。
【0010】
さらに各シールプレート11、12には、図2、図3に示すように、各ハーフビード11a、12aの外側位置で、ボルト穴3とは反対側位置に、つまりオイル落し穴4よりもシリンダヘッドガスケット1の外側となる位置に、ハーフビード11a、12aに沿って補助ビード11c、12cをそれぞれ形成してある。
本実施例では各補助ビード11c、12cは断面円弧状に形成してあり、上側の第1シールプレート11に形成した第1補助ビード11cは、下方の第2シールプレート12に向けて突出し、下方の第2シールプレート12に形成した第2補助ビード12cは、上方の第1シールプレート11に向けて突出している。
したがって両補助ビード11c、12cは、互いに近接する方向に突出して相互に密着するようになる。
【0011】
また本実施例では、図3の×印で示すように、上記オイル落し穴4の周囲の囲繞部分11b、12bを溶接や接着剤などによって連結してある。この連結箇所は、オイル落し穴4の周囲の複数箇所であってもよいし、連続した無端状であってもよい。
上記両シールプレート11、12をシリンダヘッド14とシリンダブロック14とで挟持した際には、各シールプレート11、12のオイル落し穴4の内周縁部分が拡開されるようになるが、上述したようにオイル落し穴4の周囲を連結するとその拡開を抑制できるので、後述の図5の解析結果で示すように、よりシール性を向上させることができる。
【0012】
なお、本発明においては燃焼室穴2をシールするための構成を問題とはしておらず、その構成としては従来公知の適宜の構成を採用することができる。
例えば、図示しないが、各シールプレート11、12に燃焼室穴2を無端状に囲むフルビードを互いに離隔する方向に形成し、そのフルビードの間に燃焼室穴2の周囲の面圧を増大させるためのシムプレートを配置した構成を用いることができる。
【0013】
以上の構成において、上記シリンダヘッドガスケット1をシリンダヘッド13とシリンダブロック14との間に挟持した状態で、シリンダヘッド13とシリンダブロック14とを図示しない締結ボルトで連結すると、上側のハーフビード11aの頂部11dがシリンダヘッド13に強く密着されるようになり、また下側のハーフビード12aの頂部12dがシリンダブロック13に強く密着されるようになる。これによりオイル落し穴4は、特に各ハーフビード11a、12aの各頂部11d、12dによって無端状に囲まれてシールされるようになる。
これと同時に、上記補助ビード11c、12cも相互に圧着されるようになる。すると、上方のハーフビード11aの頂部11dは、下方の補助ビード12cによって押し上げられる作用力を受け、また下方のハーフビード12aの頂部12dは、上方の補助ビード11cによって押し下げられる作用力を受けるようになる。
【0014】
その結果、上記締結ボルトによってシリンダヘッド13とシリンダブロック14とが締結された際に、締結ボルトを基点として、シリンダヘッド13とシリンダブロック14との間隔がエンジンの外側となるに従って徐々に開いたとしても、上記各ハーフビード11a、12aの各頂部11d、12dは上記作用力により良好にシリンダヘッド13又はシリンダブロック14に密着されるので、従来に比較して良好なシール性を確保することができる。
【0015】
図4は本発明の第2実施例を示したもので、本第2実施例では上述した第1実施例におけるハーフビード11a、12aと補助ビード11c、12cとの突出方向を逆に設定してある。
すなわち第2実施例においては、シリンダヘッド13側となる上側の第1シールプレート11’に形成した第1ハーフビード11a’は、シリンダヘッド13側に向けて上方に突出しており、シリンダブロック14側となる下側の第2シールプレート12’に形成した第2ハーフビード12a’は、シリンダブロック14に向けて下方に突出している。したがって両ハーフビード11a’、12a’は互いに離隔する方向に突出している。
他方、上側の第1シールプレート11’に形成した第1補助ビード11c’はシリンダヘッド13側に向けて上方に突出しており、下方の第2シールプレート12’に形成した第2補助ビード12c’はシリンダブロック14に向けて下方に突出している。したがって両補助ビード11c’、12c’も、互いに離隔する方向に突出している。
【0016】
さらに本実施例では、図4の×印で示すように、上記第1シールプレート11’と第2シールプレート12’とは、上記補助ビード11c’、12c’よりも外側の位置で、溶接や接着剤などによって連結してある。この連結箇所は、補助ビード11c’、12c’の外側の位置に複数箇所設けてもよいし、連続した線状であってもよい。
上記両シールプレート11、12をシリンダヘッド14とシリンダブロック14とで挟持した際には、両補助ビード11c’、12c’が密着されることによって各シールプレート11、12の外側部分が拡開されるようになるが、その外側部分を連結するとその拡開を抑制できるので、よりシール性を向上させることができる。
その他の構成は第1実施例と同様に構成してあり、第1実施例と同等の部分には第1実施例で用いた符号に「’」を付して示してある。
【0017】
上記第2実施例の構成において、上記シリンダヘッドガスケット1’をシリンダヘッド13とシリンダブロック14との間に挟持した状態で、シリンダヘッド13とシリンダブロック14とを図示しない締結ボルトで連結すると、
上方のハーフビード11a’の頂部11d’は上方の補助ビード11c’によって押し上げられる作用力を受け、また下方のハーフビード12a’の頂部12d’は、下方の補助ビード12c’によって押し下げられる作用力を受けるようになる。
その結果、各ハーフビード11a、12aの各頂部11d、12dは上記作用力により良好にシリンダヘッド13又はシリンダブロック14に密着されるので、従来に比較して良好なシール性を確保することができる。
【0018】
図5は2DCAEを用いた本発明の作用効果を示す解析結果図である。
一般にエンジンの温度を上昇させると、エンジンの外側部分におけるシリンダヘッド13とシリンダブロック14との間隔(口開き量)が拡大するので、本解析では口開き量を徐々に増大させていった際に、どの程度の大きさの口開き量となるまでオイル落し穴4のシール性を確保できるかを解析したものである。図5における口開き指数シール性能とは、従来技術に相当する比較品1のシール性が損なわれた際の口開き量を100としたときに、本発明品がどの程度の口開き量までシール性を確保できたかを示す相対指数である。
この解析に用いた本発明品3は図3に示した構成を有するものであり、本発明品1は本発明品3から連結部分を省略し、2枚のシールプレート11、12を単に重合させただけのものである。また本発明品2は図4に示した構成を有するものであり、やはり連結部分は省略してある。さらに上記本発明品1〜3においては、いずれも各ハーフビード11a、11a’、12a、12a’の突出量や幅を変化させておらず、それらを一定に設定してある。
【0019】
他方、比較品1は2枚のシールプレートを用いたもので、図3に示す2枚のシールプレート11、12に単純にハーフビード11a、12aのみを形成したものである。つまり以下に述べる比較品を含めて、比較品は連結部分を備えておらず、またハーフビードの突出量や幅は一定に設定してある。
比較品2は3枚のシールプレートを用いたもので、図3に示す本発明品における2枚のシールプレートの下に更に1枚のシールプレートを追加し、そのハーフビードを下方に向けて突出させたものである。そして、この3枚のシールプレートでは、補助ビード11c、12cを省略してある。このような構成は、上記特許文献1の構成に相当するものである。
さらに比較品3は、1枚のシールプレート11のみを用いたものである。この構成は、上記特許文献2の図3に示されたシールプレートを、シールする側を逆にしてシリンダヘッドガスケットとして用いたものである。つまり特許文献2の図3に示されたシールプレートは、その右側の排気通路をシールするものであるが、この解析では、特許文献2の図3に示されたシールプレートの右側のオイル落し穴をシールするように用いている。
【0020】
図5の解析結果から明らかなように、本発明品1、2ではシールプレートの枚数が2枚と少ないにも拘らず、口開き量が144、137となるまでシール性を得ることができる。つまり口開き量に関して、シールプレートの枚数が同数である比較品1に対して、44%と37%のシール作用の向上を得ることができる。
またシールプレートの枚数が3枚である比較品2と比較した場合には、本発明品1、2はシールプレートの枚数が2枚と少ないにも拘らず、ほぼ同等のシール性を得ることができている。
さらに、オイル落し穴4の周囲を固着した本発明品3においては最も良好なシール性を得ており、比較品1、2に対して遥かに優れたシール性を得ることができる。
なお、比較品3については、比較品1に対しても72%のシール性しか確保できなかった。
【0021】
図6は本発明の第3実施例を示したものである。上記第1実施例では2枚のシールプレート11、12を用いているが、本実施例では、相互に重合された4枚のシールプレート11、12、21、22を用いている。
本実施例において、2枚のシールプレート11、12は上述した第1実施例と同一の構成を備えており、また第3シールプレート21は上記第1シールプレート11と同一の構成を、第4シールプレート22は第2シールプレート12と同一の構成を備えている。
つまり本第3実施例では、第1実施例の2枚のシールプレート11、12を1組として、これを2組重合させた構成を備えたものである。
本実施例においても上記第1実施例と同等の作用効果が得られ、特に本第3実施例では第1実施例よりも大きな口開き量を有するエンジンにおいても、良好にオイル落し穴のシール性を確保することができる。
【0022】
図7は本発明の第4実施例を示したもので、上記第3実施例の4枚のシールプレート11、12、21、22のうち、第4シールプレート22を省略したものである。
つまり第4実施例の構成は、上記第1実施例の第2シールプレート12に、オイル落し穴4を穿設した第3シールプレート21を重合し、この第3シールプレート21に形成したハーフビード21aと補助ビード21cとを、第2シールプレート12のハーフビード12aと補助ビード12cとにそれぞれ重合する位置で、かつ第2シールプレート12のハーフビード12aと補助ビード12cとは離隔する方向に突出するように形成したものである。
【0023】
図8は本発明の第5実施例を示したものである。上記第2実施例では2枚のシールプレート11’、12’を用いているが、本実施例では、相互に重合された4枚のシールプレート11’、12’、21’、22’を用いている。
本実施例において、2枚のシールプレート11’、12’は上述した第2実施例と同一の構成を備えており、また第3シールプレート21’は上記第1シールプレート11’と同一の構成を、第4シールプレート22’は第2シールプレート12’と同一の構成を備えている。
つまり本第5実施例では、第2実施例の2枚のシールプレート11’、12’を1組として、これを2組重合させた構成を備えたものである。
本実施例においても上記第2実施例と同等の作用効果が得られ、特に本第5実施例では第2実施例よりも大きな口開き量を有するエンジンにおいても、良好にオイル落し穴のシール性を確保することができる。
【0024】
図9は本発明の第6実施例を示したもので、上記第5実施例の4枚のシールプレート11’、12’、21’、22’のうち、第4シールプレート22’を省略したものである。
つまり第6実施例の構成は、上記第2実施例の第2シールプレート12’に、オイル落し穴4’を穿設した第3シールプレート21’を重合し、この第3シールプレート21’に形成したハーフビード21a’と補助ビード21’cとを、第2シールプレート12’のハーフビード12a’と補助ビード12c’とにそれぞれ重合する位置で、かつ第2シールプレート12’のハーフビード12a’と補助ビード12c’とに近接する方向に突出するように形成したものである。
【0025】
なお上述した実施例では、いずれも補助ビード11c、12cを断面半円形状に形成してあるが、この形状に限定されるものではない。例えば、図10に示すように断面コ字形状に形成してもよく、或いは図11に示すように断面M字形状に形成してもよい。
また図12に示すように、上述したいずれの実施例においても、補助ビードの内側に樹脂やゴムなどの充填材15を充填して、各補助ビードのへたりを抑制するようにしてもよい。
さらに、上記各実施例では各補助ビードをオイル落し穴の外側で、シリンダヘッドガスケットの外側部分のみに形成しているが、オイル落し穴及びハーフビードを囲んで無端状に形成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施例を示す平面図。
【図2】図1の要部の拡大平面図。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面図。
【図4】本発明の第2実施例を示す断面図。
【図5】本発明の効果を説明する解析結果図。
【図6】本発明の第3実施例を示す断面図。
【図7】本発明の第4実施例を示す断面図。
【図8】本発明の第5実施例を示す断面図。
【図9】本発明の第6実施例を示す断面図。
【図10】本発明の第7実施例を示す断面図。
【図11】本発明の第8実施例を示す断面図。
【図12】本発明の第9実施例を示す断面図。
【符号の説明】
【0027】
1 シリンダヘッドガスケット
2 燃焼室穴
3 ボルト穴
4 オイル落し穴
11、11’、12、12’、21、21’22、22’ シールプレート
11a、11a’、12a、12a’ ハーフビード
11c、11c’、12c、12c’ 補助ビード
13 シリンダヘッド
14 シリンダブロック
15 充填材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれオイル落し穴を穿設した少なくとも2枚の第1シールプレートと第2シールプレートとを備えたシリンダヘッドガスケットにおいて、
上記第1シールプレートと第2シールプレートとに、上記オイル落し穴を無端状に囲むとともに、互いに近接する方向に突出して相互に圧接されるハーフビードを形成し、
さらに上記各ハーフビードよりも外側に、互いに近接する方向に突出して相互に圧接される補助ビードを形成したことを特徴とするシリンダヘッドガスケットにおけるオイル落し穴のシール構造。
【請求項2】
上記第1シールプレートと第2シールプレートとに、それぞれオイル落し穴が設けられた第3シールプレートと第4シールプレートとが重合され、
これら第3シールプレートと第4シールプレートとは、それぞれオイル落し穴を無端状に囲むとともに、互いに近接する方向に突出して相互に圧接されるハーフビードを備えており、
さらに第3シールプレートと第4シールプレートに形成された各ハーフビードよりも外側に、互いに近接する方向に突出して相互に圧接される補助ビードが形成されていることを特徴とする請求項1に記載のシール構造。
【請求項3】
上記第2シールプレートに、オイル落し穴を穿設した第3シールプレートが重合され、この第3シールプレートには、オイル落し穴を無端状に囲むハーフビードと補助ビードとが形成されており、この第3シールプレートのハーフビードと補助ビードとは、上記第2シールプレートのハーフビードと補助ビードとにそれぞれ重合する位置で、かつ第2シールプレートのハーフビードと補助ビードとは離隔する方向に突出するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のシール構造。
【請求項4】
上記第1シールプレートと第2シールプレートとは、上記オイル落し穴の周囲で相互に連結されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のシール構造。
【請求項5】
それぞれオイル落し穴を穿設した少なくとも2枚の第1シールプレートと第2シールプレートとを備えたシリンダヘッドガスケットにおいて、
上記第1シールプレートと第2シールプレートとに、互いに重合する位置に、互いに離隔する方向に突出してそれぞれ上記オイル落し穴を無端状に囲むハーフビードを形成し、
さらに上記各ハーフビードよりも外側の互いに重合する位置に、互いに離隔する方向に突出する補助ビードを形成したことを特徴とするシリンダヘッドガスケットにおけるオイル落し穴のシール構造。
【請求項6】
上記第1シールプレートと第2シールプレートとに、それぞれオイル落し穴が設けられた第3シールプレートと第4シールプレートとが重合され、
これら第3シールプレートと第4シールプレートとは、互いに重合する位置に、互いに離隔する方向に突出してそれぞれオイル落し穴を無端状に囲むハーフビードを備えており、
さらに第3シールプレートと第4シールプレートに形成された各ハーフビードよりも外側の互いに重合する位置に、互いに離隔する方向に突出する補助ビードが形成されていることを特徴とする請求項5に記載のシール構造。
【請求項7】
上記第2シールプレートに、オイル落し穴を穿設した第3シールプレートが重合され、この第3シールプレートには、オイル落し穴を無端状に囲むハーフビードと補助ビードとが形成されており、この第3シールプレートのハーフビードと補助ビードとは、上記第2シールプレートのハーフビードと補助ビードとにそれぞれ重合する位置で、かつ第2シールプレートのハーフビードと補助ビードとに互いに近接する方向に突出するように形成されていることを特徴とする請求項5に記載のシール構造。
【請求項8】
上記第1シールプレートと第2シールプレートとは、上記補助ビードよりも外側の位置で相互に連結されていることを特徴とする請求項5ないし請求項7のいずれかに記載のシール構造。
【請求項9】
上記補助ビードは、オイル落し穴よりもシリンダヘッドガスケットの外側となる位置に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかに記載のシール構造。
【請求項10】
上記各シールプレートに、シリンダヘッドとシリンダブロックとを連結する締結ボルトが挿通されるボルト穴が穿設されており、このボルト穴よりもシリンダヘッドガスケットの外側となる位置に上記オイル落し穴が形成され、さらにこのオイル落し穴よりもシリンダヘッドガスケットの外側となる位置に上記補助ビードが形成されていることを特徴とする請求項9に記載のシール構造。
【請求項11】
上記各シールプレートに、シリンダヘッドとシリンダブロックとを連結する締結ボルトが挿通されるボルト穴が穿設されており、上記ハーフビードの少なくともいずれかは、ボルト穴から遠い部分が近い部分よりも大きく突出されていることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれかに記載のシール構造。
【請求項12】
上記各シールプレートに、シリンダヘッドとシリンダブロックとを連結する締結ボルトが挿通されるボルト穴が穿設されており、上記ハーフビードの少なくともいずれかは、ボルト穴から遠い部分の幅が近い部分の幅よりも広く形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれかに記載のシール構造。
【請求項13】
上記補助ビードは、断面半円形状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれかに記載のシール構造。
【請求項14】
上記補助ビードは、断面コ字形状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれかに記載のシール構造。
【請求項15】
上記補助ビードは、断面M字形状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれかに記載のシール構造。
【請求項16】
上記補助ビードの内側に、樹脂やゴムなどの充填材が充填されていることを特徴とする請求項1ないし請求項15のいずれかに記載のシール構造。
【請求項1】
それぞれオイル落し穴を穿設した少なくとも2枚の第1シールプレートと第2シールプレートとを備えたシリンダヘッドガスケットにおいて、
上記第1シールプレートと第2シールプレートとに、上記オイル落し穴を無端状に囲むとともに、互いに近接する方向に突出して相互に圧接されるハーフビードを形成し、
さらに上記各ハーフビードよりも外側に、互いに近接する方向に突出して相互に圧接される補助ビードを形成したことを特徴とするシリンダヘッドガスケットにおけるオイル落し穴のシール構造。
【請求項2】
上記第1シールプレートと第2シールプレートとに、それぞれオイル落し穴が設けられた第3シールプレートと第4シールプレートとが重合され、
これら第3シールプレートと第4シールプレートとは、それぞれオイル落し穴を無端状に囲むとともに、互いに近接する方向に突出して相互に圧接されるハーフビードを備えており、
さらに第3シールプレートと第4シールプレートに形成された各ハーフビードよりも外側に、互いに近接する方向に突出して相互に圧接される補助ビードが形成されていることを特徴とする請求項1に記載のシール構造。
【請求項3】
上記第2シールプレートに、オイル落し穴を穿設した第3シールプレートが重合され、この第3シールプレートには、オイル落し穴を無端状に囲むハーフビードと補助ビードとが形成されており、この第3シールプレートのハーフビードと補助ビードとは、上記第2シールプレートのハーフビードと補助ビードとにそれぞれ重合する位置で、かつ第2シールプレートのハーフビードと補助ビードとは離隔する方向に突出するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のシール構造。
【請求項4】
上記第1シールプレートと第2シールプレートとは、上記オイル落し穴の周囲で相互に連結されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のシール構造。
【請求項5】
それぞれオイル落し穴を穿設した少なくとも2枚の第1シールプレートと第2シールプレートとを備えたシリンダヘッドガスケットにおいて、
上記第1シールプレートと第2シールプレートとに、互いに重合する位置に、互いに離隔する方向に突出してそれぞれ上記オイル落し穴を無端状に囲むハーフビードを形成し、
さらに上記各ハーフビードよりも外側の互いに重合する位置に、互いに離隔する方向に突出する補助ビードを形成したことを特徴とするシリンダヘッドガスケットにおけるオイル落し穴のシール構造。
【請求項6】
上記第1シールプレートと第2シールプレートとに、それぞれオイル落し穴が設けられた第3シールプレートと第4シールプレートとが重合され、
これら第3シールプレートと第4シールプレートとは、互いに重合する位置に、互いに離隔する方向に突出してそれぞれオイル落し穴を無端状に囲むハーフビードを備えており、
さらに第3シールプレートと第4シールプレートに形成された各ハーフビードよりも外側の互いに重合する位置に、互いに離隔する方向に突出する補助ビードが形成されていることを特徴とする請求項5に記載のシール構造。
【請求項7】
上記第2シールプレートに、オイル落し穴を穿設した第3シールプレートが重合され、この第3シールプレートには、オイル落し穴を無端状に囲むハーフビードと補助ビードとが形成されており、この第3シールプレートのハーフビードと補助ビードとは、上記第2シールプレートのハーフビードと補助ビードとにそれぞれ重合する位置で、かつ第2シールプレートのハーフビードと補助ビードとに互いに近接する方向に突出するように形成されていることを特徴とする請求項5に記載のシール構造。
【請求項8】
上記第1シールプレートと第2シールプレートとは、上記補助ビードよりも外側の位置で相互に連結されていることを特徴とする請求項5ないし請求項7のいずれかに記載のシール構造。
【請求項9】
上記補助ビードは、オイル落し穴よりもシリンダヘッドガスケットの外側となる位置に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかに記載のシール構造。
【請求項10】
上記各シールプレートに、シリンダヘッドとシリンダブロックとを連結する締結ボルトが挿通されるボルト穴が穿設されており、このボルト穴よりもシリンダヘッドガスケットの外側となる位置に上記オイル落し穴が形成され、さらにこのオイル落し穴よりもシリンダヘッドガスケットの外側となる位置に上記補助ビードが形成されていることを特徴とする請求項9に記載のシール構造。
【請求項11】
上記各シールプレートに、シリンダヘッドとシリンダブロックとを連結する締結ボルトが挿通されるボルト穴が穿設されており、上記ハーフビードの少なくともいずれかは、ボルト穴から遠い部分が近い部分よりも大きく突出されていることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれかに記載のシール構造。
【請求項12】
上記各シールプレートに、シリンダヘッドとシリンダブロックとを連結する締結ボルトが挿通されるボルト穴が穿設されており、上記ハーフビードの少なくともいずれかは、ボルト穴から遠い部分の幅が近い部分の幅よりも広く形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれかに記載のシール構造。
【請求項13】
上記補助ビードは、断面半円形状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれかに記載のシール構造。
【請求項14】
上記補助ビードは、断面コ字形状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれかに記載のシール構造。
【請求項15】
上記補助ビードは、断面M字形状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれかに記載のシール構造。
【請求項16】
上記補助ビードの内側に、樹脂やゴムなどの充填材が充填されていることを特徴とする請求項1ないし請求項15のいずれかに記載のシール構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−156388(P2010−156388A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334237(P2008−334237)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000228383)日本ガスケット株式会社 (43)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000228383)日本ガスケット株式会社 (43)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]