説明

シリンダ弁

【課題】通水時の騒音が少ないシリンダ弁を提供することを目的とする。
【解決手段】側面に流入口および流出口である二以上の開口を有する弁ガイドに、この弁ガイドの開口に対応して側面に二以上の開口を有する弁体を内装して、前記弁体に連結された操作部を回転させることで前記弁体を回転させて、弁体の開口と弁ガイドの開口とを重ね合わせたり、ずらしたりすることで通水・止水を行なうシリンダ弁であって、
弁体内周部に整流手段を設け、前記弁ガイドおよび前記弁体の開口配置を、止水時に、流入口側開口が流出口側開口より早く、または同時に絞られる配置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダ弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、開口を有する弁ガイドに、開口を有する弁体を内装して、弁体に連結された操作部を回転させることで弁体を回転させて、弁体の開口と弁ガイドの開口とを重ね合わせたり、ずらしたりすることで通水・止水を行なうシリンダ弁が提案されている。
従来のシリンダ弁は、図18に示すように、側面に対向するように、通水路となる開口が形成されており、それらの開口のいずれか一方側の周辺にのみ、シール部材が取付けられているものがある。この場合、水の流れはシリンダ弁の側面の一の開口部より流入し、他方の開口部より流出し、シリンダ弁を貫通するように直線的な流れとなる。
一方、図19に示すのは、側面と底面に開口が形成されたタイプのシリンダ弁であり、側面の開口の周辺にのみ、シール部材が取付けられている。この場合、水の流れはシリンダ弁のいずれか一方の開口部より流入し、他方の開口部より流出し、シリンダ弁で流れの向きが変わりL字の流れとなる。
なお、上記側面開口と対向する側面にも開口が形成されており、この場合はL字の流れだけでなく直線的な流れでの使用も可能である。
【0003】
また、別の従来技術としては、側面と底面に開口が形成されたタイプのシリンダ弁であり、側面の開口の周辺にのみ、シール部材が取付けられているものある。これは、水の流れはシリンダ弁の底面の開口部より流入し、側面の開口部より流出し、シリンダ弁で流れの向きが変わりL字の流れとなる。そして、弁体内周部にはストレーナが内装されており、通水中のゴミをストレーナで捕捉する。
(たとえば、特許文献1を参照のこと)
【0004】
上記いずれの実施例においてもシリンダ弁は、90度程度の小さい回転ストロークで全閉から全開までの操作が可能であり、水栓などの用途に用いた場合、操作性が良好であるという利点があった。
【0005】
【特許文献1】特開平2002−323154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの従来のシリンダ弁においては、通水時の騒音が大きいという問題点があった。
これは、通水路の形状に起因しており、特に、弁を絞ったときに形成される通水路の曲がりや弁ユニットと水栓等本体の境界部の段差などにおいて、キャビテーションの発生・消滅や乱流の発生が起こり、これらが騒音源となると考えられる。
特に上記従来の技術で説明した直線的な流れで使用するときには、L字の流れに比べ流速が速いためキャビテーションの発生や乱流の発生が顕著であり、それらに起因する騒音の値も大きい。よって、水圧の高い現場や、多量な流量で使用する浴槽の水ための水栓の場合には問題があった。
【0007】
そこで、本発明では上記の問題点を解決するため、通水時の騒音が少ないシリンダ弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、本発明の請求項1では、側面に流入口および流出口である二以上の開口を有する弁ガイドに、この弁ガイドの開口に対応して側面に二以上の開口を有する弁体を内装して、前記弁体に連結された操作部を回転させることで前記弁体を回転させて、弁体の開口と弁ガイドの開口とを重ね合わせたり、ずらしたりすることで通水・止水を行なうシリンダ弁であって、
弁体内周部に整流手段を設け、前記弁ガイドおよび前記弁体の開口配置を、止水時に、流入口側開口が流出口側開口より早く、または同時に絞られる配置としたことを特徴とするシリンダ弁とした。
【発明の効果】
【0009】
これにより、主に弁を絞ったときの騒音の低減ができる。
すなわち、弁止水操作時に、流入口側開口の通水面積が流出口側開口の通水面積より早く絞られる構成とした場合、絞り時の圧力降下は流出口側より流入口側で多く生じ、主にシリンダ内部において乱流の発生、キャビテーションが発生・消滅が起こる。よって、シリンダ内の空間で消音装置である整流手段を設けることで効率よく騒音の低減ができる。
一方、弁止水操作時に、流入口側開口の通水面積と流出口側開口の通水面積が同程度に絞られる構成とした場合、絞り時の圧力降下が、流入口側開口と流出口側開口で同程度に生じる。つまり、いわゆる多段階での絞りの状態であり、周知のとおり、単一段階で圧力降下を起こす場合に比べキャビテーションの発生が少なくなり、騒音の発生が抑えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に図面を参照して本発明をより具体的に説明する。
図1は、本発明のシリンダ弁1の展開図である。
図2は、シリンダ弁1の外観斜視図である。
図3は、図2のシリンダ弁1の別方向からの外観斜視図である。
図4は、シリンダ弁1の断面斜視図である。
図5は、シリンダ弁1の弁ガイドの別の実施形態である
図6は、シリンダ弁1の操作部の別の実施形態である。
図7は、本発明のシリンダ弁1の第二の実施形態の展開図である。
図8は、本発明のシリンダ弁1の第二の実施形態の外観斜視図である。
図9は、図8のシリンダ弁1の別方向からの外観斜視図である。
図10は、第二の実施形態のシリンダ弁1の断面斜視図である。
図11は、シリンダ弁1を用いた止水栓(直流れ)の断面斜視図である。
図12は、シリンダ弁1を用いた止水栓の外観斜視図である。
図13は、シリンダ弁1を用いた止水栓の展開図である。
図14は、シリンダ弁1を用いた別の止水栓(直流れ)の断面斜視図である。
図15、図16は、シリンダ弁1の断面図であり弁を絞った状態を示す。
図17は、シリンダ弁1を止水栓本体などに組み込んだ場合の部分断面図である。
【0011】
本発明の第一の実施例を図1及至4に示す。
本発明のシリンダ弁1は、弁ガイド2と操作部3と弁体4とシール部材5と押え部材6とから主構成されている。
そして、このシリンダ弁1は、開口2Aを有する弁ガイド2に、開口4Aを有する弁体4を内装して、弁体4に連結された操作部3を回転させることで弁体4を回転させて、弁体4の開口4Aと弁ガイド2の開口2Aとを重ね合わせたり、ずらしたりすることで通水・止水を行なうものである。
【0012】
以下に各構成要素と各構成要素の組立てについて説明する。
弁ガイド2は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)などの合成樹脂にて成形されている。そして、その形状は円筒形状をしており、下面部には操作部3と弁体4とを挿入する挿入孔7を設けており、上面部には挿入孔7から挿入した操作部3のつまみ11を貫通する貫通孔8を設けている。
なお、挿入孔7は、弁ガイド2の内径と同径である。
また、貫通孔8は、弁ガイド2の内径よりも小さい径であり、操作部3の基部13が貫通孔8を貫通しないように構成されている。そして、つまみ11を貫通孔8に貫通させ、かつ、操作部3の基部13とつまみ11との間に形成した外周溝9にOリング10を装着して操作部3と弁ガイド2との水密性を保持しており、貫通孔8からの漏水を防止している。
【0013】
また、つまみ11には溝部12を形成して、貫通孔8よりも外径が大きい抜け止めピン14をこの溝部12に嵌めることで、組立て後、操作部3のつまみ11が貫通孔8から抜けないようにしている。
なお、図1に示すように、この抜け止めピン14は、C形状をしており、溝部12に装着したときにC形状の開部14Aが弁ガイド2のストッパー15に重なり合うように配置している。このようにすることで、シリンダ弁1全体(特にシリンダ弁1の径方向の寸法)をよりコンパクトにすることが可能となる。
なお、このストッパー15は、操作部3の回転角度を規制するためのものである。具体的には、操作部3に装着するハンドル(図示せず)に設けた突起がこのストッパー15に当接することで、弁の開閉角度を規制している。
なお、このときに抜け止めピン14が溝部12に緩く嵌まっているので、操作部3の回転動作と同時に抜け止めピン14が回転しない。そのため、操作部3を回転すると抜け止めピン14が同時に回転して、ストッパー15に抜け止めピン14が衝突して操作部3の操作性が低下するようなことがない。
また、ストッパーの形状は、同心円で同角(鋭角)の大小の円弧(計2つ)とそれら両端を通る2つの半径から囲まれてなる略扇形状とすることが好ましい。これにより操作部の回転を規制するのに、ストッパーの半径方向の面で当接させて、当接面積を大きくとることができるので、確実に回転を規制することができる。
【0014】
また、弁ガイド2の側面には対向するように通水用の開口2Aが設けられている。
そして、一方の開口2A側のみに、シール部材5を側方から取り付けている。さらにこのシール部材5の開口5Aに押え部材6を設けている。
この押え部材6を設けることで、通水方向をシール部材5の開口5Aから弁体4内に流れる方向だけでなく、弁体4内からシール部材5の開口5Aに流れる方向の通水においても、このシリンダ弁1を用いることができる。
つまり、この押え部材6を用いることで、一方の弁ガイド2の開口2A側のみにシール部材5を設ければ、弁体4内からシール部材5の開口5Aに流れる通水使用においても、シール部材5が弁ガイド2から外れることがない。
そして、止水時に確実に水密性を保つことができる。
上述するように押え部材6を設けることで、一方の開口2A側のみにシール部材5を側方から取り付けるだけでよいので、部品点数を低減できる。また、コンパクト化が容易になる。
また、シール部材5を側方から取り付けた開口2Aと対向する他方の開口2Aは、主流路2B、およびこの主流路周囲の複数の小開口2Cからなる副流路から構成した。
【0015】
また、シリンダ弁1を組立てた後、このシリンダ弁1を水栓本体や止水栓本体28Aなどに組み付けて利用することができる。そのため、シリンダ弁1の輸送時や組付け工程時に、シール部材5や押え部材6が弁ガイド2から容易に外れないようにする必要がある。
そこで、図1から図4に示すように、シール部材5の裏面外周には保持凸部16が形成されており、弁ガイド2の開口2Aの外周側面部を一段窪ませて窪み部18を形成し、さらにその外周に保持凹部17を形成している。そして、このシール部材5の保持凸部16が弁ガイド2の保持凹部17に嵌合するようにシール部材5を弁ガイド2の一段窪ませた窪み部18に取付けることで、シール部材5が弁ガイド2から容易に外れないようにしている。
また、図4に示すように、シール部材5に押え部材6を嵌め込んで、シール部材5の開口5Aの内周における一部もしくは全周に設けた押え突起部19により、押え部材6を容易に外れないように押えることができる。
なお、押え部材6をシール部材5から取外す場合は、図2に示す押え部材6の外周に形成した凹部20にマイナスドライバーを引っ掛けて容易に取外すことができる。
また、図4に示すように押え部材6の開口6Aの弁体側内周端21には、Rを付けて湾曲面として通水を滑らかにするようにしている。
【0016】
弁体4は、ステンレスなどの金属にて形成されている。そして、図1に示すように、その形状は円筒形状をしており、その側面に開口4Aを有している。
さらに材質をステンレスとすることで、通水中に混入していた異物が弁体4と弁ガイド2との間に入り込んでその異物によって操作性が悪くなることはない。
【0017】
弁体4の側面の開口4Aは、湯水を通水するための開口4Aであり、対向する側面にそれぞれ設けられている。また、開口4Aの端部は湾曲形状として穴あけ加工を容易にしている。
【0018】
次に、弁体4と操作部3との連結について図1,図4に基づき説明する。
弁体4の一端部には位置出し凹部23を対向するように形成している。そして、操作部3の基部13外周に形成した位置出し凸部24にこの位置出し凹部23を嵌め込む。そうすることで操作部3の回転に伴なって弁体4を回転させることができる。
【0019】
また、操作部3の基部13外周には更に弁体保持用の突起部25を形成し、弁体4の一側端部に形成した保持孔26に嵌合係止するようにしている。
特に、操作部3は合成樹脂にて成形されているので、基部13の内側を肉厚としておく。そして、スレンレスなどの金属製の弁体4を嵌合係止するときに操作部3の基部13を撓ませるのではなくて、弁体4側を撓ませるようにすることが好ましい。
その理由は、樹脂を撓ませて、弁体4と嵌合係止させた場合、長期使用により樹脂が劣化して、嵌合力が弱くなり、ウォーターハンマーなどの衝撃により操作部3と弁体4との嵌合係止が外れてしまうおそれがあるからである。
そのため、樹脂である操作部3の基部13を撓ませるのではなく、長期使用により劣化しにくいステンレスなどの金属製の弁体4側を撓ませるようにすることが好ましい。
このような構成にすることで、操作部3との嵌合係止が外れて弁体4が弁ガイド2から抜け出てしまうおそれがなくなり、長期使用においても高品質を保つことができるのである。
また、操作部底部39には天面のない円筒状の突起40を設け、この円筒40の側面は貫通する多数の小開口41を配置した。このとき、この円筒40の外径は弁体の内径よりも十分小さくした。これにより、万一上記小開口部41がゴミ詰まりなどで塞がっても、弁体4の内径と円筒40の外径の隙間をとおり通水は可能である。
つまり、整流手段を経由する通水路と整流手段を経由しない通水路を併設している。
整流手段を経由する通水路のみの場合は、整流手段がフィルター(ストレーナ)として機能してしまい、逆にメンテナンス頻度を上げてしまうという弊害が生じる。一方で騒音抑制効果を高めるためには整流部の小開口41の目が細かいことが必要になる。本発明では、整流手段を経由しない通水路を併設しているため、ゴミ詰まりによる吐水不能の事態を回避でき、小開口41の目を十分に小さくできるのである。但し、本発明のシリンダ弁は整流手段を経由しない流路を含むためフィルター(ストレーナ)としては機能しない。
なお、本来、本発明の整流手段もゴミ詰まりしないことが望ましい。よって、水栓類で用いられるフィルター(ストレーナ)の粗さは60メッシュが一般的であるが、整流手段としては、整流部の小開口41の粗さを、整流効果を有しつつ容易にゴミ詰まりしないよう50メッシュ相当以下とすることが好ましい。
また、弁体2がステンレスであるため、十分な強度と耐食性を有しており弁体2の薄肉化が可能であり、これにより、上記の弁体4の内径と円筒40の外径の隙間を広く確保することができ、ゴミ詰まり時の通水も十分に確保できる。あるいは、整流手段である円筒状の突起40の外径を大きくできるため、より多くの水を整流手段を経由させることができ、大きな騒音抑制効果が実現できる。
【0020】
次に、このシリンダ弁1の通水状態・止水状態について説明する。
図16は、弁体4が半開きのときの通水状態を示している。
この場合、押え部材6によりシール部材5が押えられているため、通水の勢いによってシール部材5が捲れあがることもない。そのため、弁体4を回転させて止水したときにシール部材5と弁体4によって確実に水密性を保つことができる。
また、押え部材6の開口6Aの弁体4側外周端21には、Rを付けて湾曲面としている。そのため、通水抵抗を抑えて滑らかに通水することができる。
図16に基づき水圧がシール部材5にどのように掛かるかをより詳しく説明する。
図に示すようにシール部材5を設けた側の開口2A、5A、6Aを上流側に配置した場合、シール部材5の隆起部31に水圧が掛かる。そして、シール部材5を下側に押しやる力(矢印A)が生じるが押え部材6を設けることで、シール部材5が歪むことを抑制することができる。
また、隆起部31の開口5A側の隆起面は、開口面5aをそのまま延設して設けているため、上流側の隆起面に水が入り込むことがなく、シール部材5下側に押しやる力が掛かることをさらに抑制することができる。
このように構成することで、シール部材5の端部が歪んで、弁体4を回転させたときに弁ガイド2と弁体4とでそのシール部材5の端部を挟んでしまうことがなく、長期に亘り、水密性を維持することができる。
また、シール部材5を設けた側の開口2A、5A、6Aを下流側に配置した場合(図の通水方向とは逆方向とした場合)、弁ガイド2の外周の隙間に水が廻り込み、止水時にシール部材5の隆起部31に水圧が掛かる(一点鎖線の矢印B)。しかしながら、押え部材6を設けているため、隆起部31に水圧が掛かってシール部材6が開口5A側に変形しようとしても押え部材6により変形することを阻止することができる。そのため、長期に亘り、シール部材5の形状が変形することなく、水密性を維持することができるのである。
【0021】
次に、このシリンダ弁1の騒音抑制効果について説明する。
前述のとおり、このシリンダ弁1においては、弁体4の内周部に操作部底部39から立ち上がる円筒状の突起40を設け、この円筒の側面は貫通する多数の小開口41を配置した。
これら小開口群41は、流体がこれら小開口群41を通過する際に、弁および弁周りの各所で生じた乱流を細かく砕き消滅させるため、整流手段として機能する。
弁および弁周りの各所で生じる乱流とは、主には、シリンダ弁ユニットと水栓等の本体との段差部やシリンダ弁を絞ったときに生じる複雑な流路形状などによって生じる乱流である。
これらの乱流は騒音源となり、使用者に不快を与える可能性があるが、本実施例においては、上記の整流手段により乱流が緩和されるため騒音も低減できる。そして、特に図14に示すようにシリンダ弁1の側面に設けた開口2Aから他方の側面に設けた開口2Aを通水経路とする直線的な流れの場合において、より騒音を低減することができる効果が得られる。
【0022】
次に、図15にはこのシリンダ弁を絞った状態の断面図を示す。
図において、弁ガイド2および弁体4の開口配置を、弁止水操作時に、流入口側開口42の通水面積が流出口側開口43の通水面積より早く絞られる配置とした。
具体的には、本実施形態では流出側開口43を流入口側開口42より大きくしている。また、他に考えられる形態は、流入口側開口42と流出口側開口43の中心を結ぶ直線を流れの方向に対してずらすことが考えられる。
これにより、主に弁を絞ったときの騒音の低減ができる。
すなわち、弁止水操作時に、流入口側開口42の通水面積が流出口側開口43の通水面積より早く絞られる構成とした場合、絞り時の圧力降下は流出口側より流入口側で多く生じ、主にシリンダ内部において乱流の発生、キャビテーションが発生・消滅が起こる。よって、シリンダ内の空間で消音装置である整流手段41を設けることで効率よく騒音の低減ができる。
なお、上記は、図15の図中矢印で示す方向の流れに対しての好ましい流入口側開口42と流出口側開口43の通水面積の関係を記述しているが、図中矢印と逆の流れでこのシリンダ弁を用いる場合は、弁止水操作時に、流入口側開口(この場合、43)が流出口側開口(この場合、42)より早く絞られる構成とすることが好ましい。
【0023】
また、図示しないが、弁ガイド2および弁体4の開口配置を、弁止水操作時に、流入口側開口42の通水面積が流出口側開口43の通水面積と同時に絞られる配置としてもよい。この場合、やはり、主に弁を絞ったときの騒音の低減ができる。
すなわち、弁止水操作時に、流入口側開口42の通水面積と流出口側開口43の通水面積が同程度に絞られる構成とした場合、絞り時の圧力降下が、流入口側開口42と流出口側開口43で同程度に生じる。つまり、いわゆる多段階での絞りの状態であり、周知のとおり、単一段階で圧力降下を起こす場合に比べ、通水路中の最低圧力値が高くなり、キャビテーションの発生が少なくなり、騒音の発生が抑えられる。
また、前述のとおり本実施例では、前記弁ガイド2の開口部2Aの形状を、主流路2B、およびこの主流路側面の複数の小開口からなる副流路2Cから構成したため、以下の効果が生じる。
すなわち、全開時は主流路2Bから主に通水し、絞り時は副流路2Cから主に流れるため、絞り時は副流路の小開口群により整流され、絞り時の発生音が低減できる。
一方、主流路2Bは十分大きな通水面積をもつ単一の開口なので、ごみなどが容易に詰まることがない。万一副流路2Cにごみが詰まった場合でも主流路2Bからの流路を通して吐水は可能であり、吐水不能となることはない。
なお、この場合、前記弁ガイド2の開口部の主流路2B、副流路2Cの形状を図5の様なものとしても同様の効果が得られる。すなわち、主流路2Bと副流路2Cは部分的に連結されていてもよい。
また、弁体4の内周部に操作部底部39から立ち上がる整流手段41の形状としては上述のものだけでなく例えば図6に示すようなものであってもよい。図6では、棒状の多数の突起44が操作部底部39から立ち上がっており、弁体4内を通過する流体の一部はこれら突起の間の空間を通るが、この突起間の入組んだ形状の流路を通る際に、弁および弁周りの各所で生じた乱流を細かく砕き消滅させるため、整流手段として機能する。
【0024】
次に、本発明のシリンダ弁1を止水栓28として利用する場合について図11乃至14に基づき説明する。シール部材5の開口5Aの側端部には隆起部31を形成している。
そして、この隆起部31により、通水路の水密性を保つことができる。
では、組み付けについて以下に説明する。
図13に示すように、止水栓本体28Aの側方に設けた取付穴29からシリンダ弁1を挿入する。
このとき、図17に示すようにシール部材5と止水栓本体28Aとが擦れ合って取り付けられる。特に止水栓本体28Aに設けられた通水路端部30に引っかかってシール部材5がずれないようにするために、隆起部31の傾斜は、開口5Aの反対側の隆起面31Aを開口5A側の隆起面31Bよりもなだらかな隆起面としている。
特に、開口5Aの反対側の隆起面31Aは、隆起角度を鋭角(より好ましくは45度以下)としてなだらかな隆起面としている。
この隆起部31と止水栓本体28Aの取付穴29の内側とによって水密性を保つことができる。
また、隆起部31の開口5A側の隆起面31Bを急にする。特に、より好ましくはこの隆起部31の開口5A側の隆起面31Aを、開口5Aの端面をそのまま延設させて垂直な隆起面とすることにより、通水時に水圧が掛かったとしてもシール部材5が捲れあがるおそれを低減できる。なお、本発明においては押え部材6をさらに設けることで、シール部材5の捲れ上がりをより抑えることができる。
そして、図11に示すように押え蓋36で止水栓本体28Aの取付穴29を覆って固定する。さらに、操作部3のつまみ11にハンドル35を取付けてネジ37によりつまみ11とハンドル35とを固定する。
【0025】
また、図4に示すように、弁ガイド2の操作部3側の外周に溝部32を形成しておき、その溝部32にOリング33を装着して止水栓本体28Aとシリンダ弁1との水密性を保持する。これにより、取付穴29からの漏水を防止することができる。
なお、弁ガイド2には、貫通孔8(操作部3)側の外周側端部に爪部34が設けられている。
そして、この爪部34が止水栓本体28Aなどの取付け部分の凹部に嵌り込むように組み込まれる。これにより、操作部3を操作して回転したとしても、弁ガイド2は爪部34によって回転を規制されるので、同時に回転されることはない。
また、シリンダ弁1を止水栓本体28Aから取外す場合には、図2に示すように、爪部34にマイナスドライバーを引っ掛けて容易に取外すことができる。特にシリンダ弁1をコンパクト化した場合、手でつまみ11をつまんで止水栓本体28Aからシリンダ弁1を引っ張り出すことは非常に困難となるため、この爪部34を設けておくことで、シリンダ弁1を取り外してメンテナンスをしやすくなるのである。
なお、この爪部34は、口の字形状に突設してもよいが、図2に示すように下側(挿入孔側)を開放したコの字形状に突設することが好ましい。コの字形状とすることで、取外す方向の部分が肉厚にすることができるので、マイナスドライバーで引っ掛けて取外すときに、欠けるおそれがなくなる。
また、このシリンダ弁1の下流側通水路内に隣接して整流手段45を挿入した。この整流手段45はポリアセタールなどの樹脂で一体に成型されたブッシュで、シリンダ弁の下流側通水路を多数の小開口に分割することで整流効果をもたらす。
これによっても、シリンダ弁出口部やシリンダ弁内で生じた乱流を整流化し、乱流による騒音の発生を抑えることができる。また、他の整流手段と兼用することでより一層騒音の発生を低減することができる。
【0026】
なお、この止水栓28は、シリンダ弁1の底面に設けた開口27から側面に設けた開口2Aを通水経路としているが、図14に示すように、シリンダ弁1の側面に設けた開口2Aから他方の側面に設けた開口2Aを通水経路とする直線的な流れの止水栓にこのシリンダ弁を適用することも可能である。
【0027】
次に本発明の第二の実施例を図7及至10に示す。
第一の実施例と同様の機能部位には同じ番号を付す。
第一の実施例のシリンダ弁との差違は、第一の実施例において操作部3と一体に形成した整流手段を、別体の整流手段とし、弁ガイド2側に固定して設けたことである。結果、整流手段の位置は第一の実施例と同様に、弁体の内周部となる。
図7、図10に示すとおり、整流手段46は両底面のない円筒状のメッシュ状の整流部47と、この整流部47の一端に鍔状に設けられる基部48よりなる。整流部は樹脂の網で構成され、剛性を保持するためにフレーム49が前記網と一体的に設けられる。
鍔状の基部48は前記フレーム49と一体に樹脂材料などで構成され、図7に示すように中心部に一個の穴50とこの中心穴50の周辺に複数の穴51がある。
図10のように、シリンダ弁底面開口27から流入し、側面開口2Aから流出するL字流れの場合には、前記中心穴50は、整流部47の内周部へ連通し、整流手段を経由する流路の一部を構成し、周辺の複数の穴51は整流部46の外周部へ連通し、整流手段を経由しない流路の一部を構成する。
整流手段46と弁ガイド2の固定は、弁ガイド2の内周と整流手段の基部48の外周を圧入や溶着などで固定する。整流部の上端面部52は、操作部3の底面部に設けられた凹部53に挿入され、整流手段は流れの抵抗などに対しても安定して保持される。
【0028】
図の状態で、シリンダ弁1の底面の開口27から流入し、シリンダ弁1のシール材5を設けた側面の開口2Aから流出するL字流れの場合には、前記整流手段46の中心穴50、およびその周辺の複数の穴51から、水が流入する。このうち、複数の穴51から流入した水は整流部47を通過せずに側面の開口2Aから流出する。一方、中心穴50から流入した水は整流部47を通過し側面の開口2Aから流出する。この場合、整流部47を通過しない水に対しては乱流および騒音抑制効果がないが、整流部47をした水に対しては乱流および騒音抑制効果がある。よって、全体としては騒音抑制効果がある。また、万一、上記整流部47がゴミ詰まりなどで塞がっても、整流部47を通過しない流路をとおり通水は可能である。
シリンダ弁1の一方の側面の開口2Aから流入し他方の開口2Aから流出する直線状の流れの場合は、開口2Aから流入した水は、その大部分は通水路正面に位置する整流部47を貫通し他方の開口から流出する。一方、一部の水は整流部47の通水抵抗のため、整流部47を回避し整流部47と弁体4内周の間の隙間54を経由し他方の開口2Aから流出する。
この場合、整流部47を通過しない水に対しては乱流および騒音抑制効果がないが、整流部47をした水に対しては乱流および騒音抑制効果がある。よって、全体としては騒音抑制効果がある。また、万一、上記整流部47がゴミ詰まりなどで塞がっても、整流部47を通過しない流路をとおり通水は可能である。
また、第一の実施例でも述べたとおり、本発明の整流手段もゴミ詰まりしないことが望ましい。よって、水栓類で用いられるフィルター(ストレーナ)の粗さは60メッシュが一般的であることを考慮し、整流部47の粗さを、50メッシュ相当以下とすることが好ましい。
また、整流手段46は弁ガイド2に固定してあるため、弁4を絞った場合でも整流手段部46が回転しない。よって、操作部3の回転によらず常に理想的な整流手段46の位置とすることができ、安定した騒音低減効果を実現できる。
例えば、整流部47の剛性を保持するためのフレーム49が通水路の正面にあれば、整流手段46の流体抵抗が大きくなり、整流部47を通過しない水の割合が高くなり、騒音抑制効果も低くなるが、整流手段46が弁ガイドに固定してあるため、フレーム49の位置は通水路の正面からずらした位置に固定することが可能である。
なお、上記の2通りの流れの他、上記各流れの逆方向の流れも考えられるが騒音抑制に関する効果は同様であるため説明を省略する。
【0029】
シリンダ弁の開口部や弁体内部に設けた整流手段によって効果的に乱流の抑制を行い、騒音の発生が抑制できる。また、特にシリンダ弁の直線的な流れでの使用に際しては、流入側開口と流出側開口の閉止のタイミングを適正にすることで、弁絞り時の乱流の抑制やキャビテーション発生の抑制を行うことができ、騒音の発生が抑制できる。
また、全開時、絞り時ともに通水時の騒音が少ないシリンダ弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のシリンダ弁1の展開図を示す。
【図2】シリンダ弁1の外観斜視図である。
【図3】図2のシリンダ弁1の別方向からの外観斜視図である。
【図4】シリンダ弁1の断面斜視図である。
【図5】シリンダ弁1の弁ガイドの別の実施形態である。
【図6】シリンダ弁1の操作部の別の実施形態である。
【図7】本発明のシリンダ弁1の第二の実施形態の展開図である。
【図8】本発明のシリンダ弁1の第二の実施形態の外観斜視図である。
【図9】図8のシリンダ弁1の別方向からの外観斜視図である。
【図10】第二の実施形態のシリンダ弁1の断面斜視図である。
【図11】シリンダ弁1を用いた止水栓(直流れ)の断面斜視図である。
【図12】シリンダ弁1を用いた止水栓の外観斜視図である。
【図13】シリンダ弁1を用いた止水栓の展開図である。
【図14】シリンダ弁1を用いた別の止水栓(直流れ)の断面斜視図である。
【図15】シリンダ弁1の断面図であり弁を絞った状態を示す。
【図16】シリンダ弁1の断面図であり弁を絞った状態を示す。
【図17】シリンダ弁1を止水栓本体などに組み込んだ場合の部分断面図である。
【図18】従来のシリンダ弁の断面図である。
【図19】別の従来のシリンダ弁の断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 シリンダ弁
2 弁ガイド
2A 弁ガイドの開口
3 操作部
4 弁体
4A 弁体の開口
5 シール部材
5A シール部材の開口
6 押え部材
6A 押え部材の開口
7 挿入孔
8 貫通孔
9 外周溝
10 Oリング
11 つまみ
12 溝部
13 基部
14 抜け止めピン
14A 抜け止めピンの開部
15 ストッパー
16 保持凸部
17 保持凹部
18 弁ガイドの一段窪ませた部分
19 押え突起部
20 押え部材の凹部
21 押え部材の弁体側外周端
23 位置出し凹部
24 位置出し凸部
25 弁体保持用の突起部
26 保持孔
27 弁体の下端開口
28 止水栓
28A 止水栓本体
29 取付穴
30 通水路端部
31 隆起部
32 弁ガイドの外周の溝
33 Oリング
34 爪部
35 ハンドル
36 押え蓋
37 ビス
38 湯水混合栓
39 操作部底部
40 円筒状の突起
41 小開口
42 流入口側開口
43 流出口側開口
44 突起
45 整流手段
46 整流手段
47 整流部
48 基部
49 フレーム
50 中心穴
51 複数の穴
52 上端面部
53 凹部
54 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面に流入口および流出口である二以上の開口を有する弁ガイドに、この弁ガイドの開口に対応して側面に二以上の開口を有する弁体を内装して、前記弁体に連結された操作部を回転させることで前記弁体を回転させて、弁体の開口と弁ガイドの開口とを重ね合わせたり、ずらしたりすることで通水・止水を行なうシリンダ弁であって、
弁体内周部に整流手段を設け、前記弁ガイドおよび前記弁体の開口配置を、止水時に、流入口側開口が流出口側開口より早く、または同時に絞られる配置としたことを特徴とするシリンダ弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−215626(P2008−215626A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−154899(P2008−154899)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【分割の表示】特願2002−358481(P2002−358481)の分割
【原出願日】平成14年12月10日(2002.12.10)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】