説明

シリンダ装置

【課題】組み付けの作業性を向上させることができるシリンダ装置の提供。
【解決手段】液体が封入されるシリンダ12と、シリンダ12を覆う外筒13と、シリンダ12に挿入されるロッド15と、シリンダ12および外筒13の端部に設けられてロッド15を案内するロッドガイド24と、ロッドガイド24と外筒13との隙間をシールするシールリング29とを備え、ロッドガイド24が、外筒13に嵌合する嵌合円筒面52と、外筒12との間にシールリング29が配置されるテーパ面54と、嵌合円筒面52より小径であって外筒12への嵌合前にシールリング29を仮保持可能な仮保持円筒面53とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリンダ装置において、外筒とロッドガイドとの間にシールリングを設けたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−222128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のシリンダ装置では、シールリングが他のリング部材に一体化されており、外筒への組み付けが容易となっている。これとは異なり、シールリングが単独で組み付けられる構造の場合、組み付けの作業性が良くないという問題があった。
【0005】
したがって、本発明は、組み付けの作業性を向上させることができるシリンダ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、ロッドガイドが、外筒に嵌合する嵌合円筒面と、前記外筒との間にシールリングが配置されるテーパ面と、前記嵌合円筒面より小径であって前記外筒への嵌合前に前記シールリングを仮保持可能な仮保持円筒面とを有する構成とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、組み付けの作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係るシリンダ装置の一実施形態である油圧緩衝器を示す全体断面図である。
【図2】本発明に係るシリンダ装置の一実施形態である油圧緩衝器の要部を示す組み付け途中の部分拡大断面図である。
【図3】本発明に係るシリンダ装置の一実施形態である油圧緩衝器の要部を示す組み付け途中の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係るシリンダ装置の一実施形態である油圧緩衝器を図面を参照して以下に説明する。
【0010】
図1に示すように、本実施形態の油圧緩衝器は、複筒式のもので、例えば自動車のサスペンション装置に用いられるものである。油圧緩衝器は、油液(液体)が封入されるシリンダ12と、シリンダ12より大径でシリンダ12と同軸状に配置されてシリンダ12を覆う外筒13と、シリンダ12の中心軸線上に配置されるとともに一端側がシリンダ12の内部に挿入され他端側がシリンダ12および外筒13から外部に突出するロッド15と、このロッド15に取り付けられてシリンダ12内に摺動可能に嵌合されシリンダ12内を二つの油室16,17に画成するピストン18とを有している。
【0011】
また、油圧緩衝器は、外筒13のロッド15の突出側とは反対側の端部を閉塞するベースキャップ20と、ベースキャップ20の外側に固定される取付アイ21と、ベースキャップ20の内側に配置されてシリンダ12のロッド15の突出側とは反対側の端部に取り付けられるベースバルブ22とを有している。
【0012】
さらに、油圧緩衝器は、ロッド15を案内するべく挿通させるとともにシリンダ12および外筒13の双方のロッド15の突出側の端部に嵌合されるロッドガイド24と、ロッドガイド24の外側に配置されて外筒13の端部に係止されるパッキンキャップ25と、パッキンキャップ25の内側に配置されてロッド15とパッキンキャップ25との隙間を閉塞するパッキン26と、パッキン26のロッドガイド24側に当接するパッキンリテーナ27と、パッキンリテーナ27とロッドガイド24との間に介装されてパッキンリテーナ27をパッキン26の方向に押圧するパッキンスプリング28と、パッキンキャップ25とロッドガイド24と外筒13との間に介装されてこれらの隙間をシールするシールリング29とを有している。
【0013】
外筒13は、円筒状の外筒主部31と、外筒主部31におけるロッド15の突出側の端部から径方向内方に突出する係止部32とを有する略円筒状をなしている。係止部32は、いわゆるカール方式で形成されるもので、円筒状の素材の端部を径方向内側に塑性変形させることで形成される。
【0014】
ベースバルブ22は、シリンダ12と外筒13との間のリザーバ室35と、油室17との連通および遮断を制御するもので、油室17側の圧力がリザーバ室35側の圧力よりも高い状態で、油室17からリザーバ室35側への油液の流れを許容して減衰力を発生し、油室17側の圧力がリザーバ室35側の圧力よりも低い状態で、リザーバ室35から油室17側への油液の流れを許容する。
【0015】
ピストン18には、油室17側の圧力が油室16側の圧力より高い状態で、油室17から油室16側への油液の流れを許容して減衰力を発生し、油室17側の圧力が油室16側の圧力より低い状態で、油室16から油室17側への油液の流れを許容して減衰力を発生する減衰力発生機構36が設けられている。
【0016】
なお、ロッド15が伸び側に移動してシリンダ12からの突出量が増大すると、その分の油液がベースバルブ22を介してリザーバ室35から油室17に流れることになり、逆にロッド15が縮み側に移動してシリンダ12への挿入量が増大すると、その分の油液がベースバルブ22を介して油室17からリザーバ室35に流れることになる。このような油液の給排に対応するため、リザーバ室35には、下部となるベースキャップ20側に油液が貯留されており、この油液の上側となるロッドガイド24側に油液の量変化を吸収するガスが封入されている。
【0017】
図2は、油圧緩衝器の組み立て途中の状態を示すものであり、図2においては、図1に示す外筒13が、外筒主部31と、図1に示す係止部32を加工する前の加工前状態部32’とを有している(図3も同様)。加工前状態部32’は外筒主部31の加工前状態部32’側の部分と同内径および同外径の円筒状をなしている。
【0018】
図2に示すように、ロッドガイド24は、軸方向一側に大径外径部40が形成され、軸方向他側に大径外径部40よりも小径の小径外径部41が形成された略段付き円筒状をなしている。ロッドガイド24は、大径外径部40において外筒13の外筒主部31の内周部に嵌合し、小径外径部41においてシリンダ12の内周部に嵌合する。ロッドガイド24の径方向の中央には、ロッド15を挿通させる挿通穴42が軸方向に沿って貫通形成されている。
【0019】
ロッドガイド24の軸方向の外端側には、径方向の中間位置に挿通穴42よりも大径の環状溝44が形成されている。この環状溝44が形成されることにより、ロッドガイド24の軸方向の外端側には、挿通穴42と環状溝44との間に軸方向に突出する内側環状凸部45が、環状溝44の径方向外側に軸方向に突出する外側環状凸部46が、それぞれ形成されている。
【0020】
また、ロッドガイド24には、外側環状凸部46の位置に、軸方向に沿って貫通する連通穴48が形成されており、外側環状凸部46には、連通穴48を環状溝44側に開口させる通路溝49が形成されている。連通穴48は、外筒13とシリンダ12との間のリザーバ室35に連通している。なお、ロッドガイド24の挿通穴42内には、フッ素樹脂からなる円筒状のカラー50が嵌合されており、このカラー50にロッド15が摺接するように挿通される。ロッド15の摺動のため、シリンダ12内の油液がカラー50とロッド15との隙間を介して漏れ出ることになり、この油液が環状溝44から通路溝49および連通穴48を介してリザーバ室35に戻されるようになっている。
【0021】
そして、本実施形態においては、図3に示すように、ロッドガイド24の大径外径部40の外周面が、軸方向における小径外径部41側にあって外筒13に嵌合する嵌合円筒面52と、嵌合円筒面52の軸方向における小径外径部41とは反対側にあって嵌合円筒面52より小径とされた仮保持円筒面53と、仮保持円筒面53の軸方向における嵌合円筒面52とは反対側にあって仮保持円筒面53から離れるほど小径となるテーパ面54とを有している。
【0022】
上記した仮保持円筒面53は、ロッドガイド24の外筒13への嵌合前にシールリング29を単独で仮保持可能となっている。ここで、シールリング29は、径方向に沿う片側断面が矩形状をなす角リングであり、その軸方向厚さが一定で、断面幅も一定となっている。
【0023】
このようなシールリング29が若干拡径されて仮保持円筒面53に嵌められることでロッドガイド24へ仮保持されるようになっている。その際に、シールリング29は、円筒状の内周面において円筒状の仮保持円筒面53に密着する。なお、仮保持円筒面53の軸方向長さは、シールリング29を嵌合状態で保持可能な長さとされており、例えばシールリング29の軸方向厚さと同等の長さに設定されている。また、仮保持円筒面53と嵌合円筒面52との半径差は、仮保持円筒面53に保持された状態のシールリング29の断面幅よりも小さくされており、仮保持円筒面53に保持された状態のシールリング29の外径は、嵌合円筒面52よりも大径となり、加工前状態部32’の内径よりも大径となっている。また、テーパ面54はその最小径が自然状態のシールリング29の内径よりも小径となっている。加えて、自然状態のシールリング29の外径は、加工前状態部32’の内径よりも若干小径となっている。
【0024】
そして、ロッドガイド24の仮保持円筒面53に、外筒13への嵌合前にシールリング29を予め仮保持しておき、この状態で、ロッドガイド24を外筒13の加工前状態部32’および外筒主部31に嵌合させる。すると、ロッドガイド24は、まず、図3に示すように嵌合円筒面52において外筒13の加工前状態部32’に嵌合し、続いて、仮保持円筒面53、テーパ面54の順に外筒13内に入り込む。仮保持円筒面53が外筒13内に入り込む際にシールリング29が加工前状態部32’の端面に当接してその位置に停止することで仮保持円筒面53から抜け出すことになり、これにより、シールリング29は、図3に矢印Xで示すようにテーパ面54側に移動しつつ縮径して、図2に示すように外筒13の内側に入り込む。これにより、シールリング29は、テーパ面54と外筒13との間の円環状の隙間55の上部に同心状に(つまりセンタリングされて)配置される。ロッドガイド24は、最終的に、小径外径部41がシリンダ12内に配置され、大径外径部40がシリンダ12に当接して停止する位置まで嵌合される。
【0025】
この状態で、パッキンキャップ25を外筒13内にロッドガイド24に当接する位置まで挿入すると、パッキンキャップ25がシールリング29をテーパ面54と外筒13との間の隙間55に押し込むことになり、この状態で、外筒13の加工前状態部32’を塑性変形させて係止部32を形成すると、パッキンキャップ25が係止部32とロッドガイド24とに挟持されて固定される。すると、ロッドガイド24のテーパ面54と外筒13の外筒主部31との隙間55にシールリング29が配置されることになり、シールリング29は、この隙間55を埋めるように弾性変形して、ロッドガイド24のテーパ面54と外筒13とに密着しこれらの隙間をシールする。その結果、リザーバ室35のロッドガイド24側の外筒13側が密閉される。
【0026】
以上に述べた本実施形態の油圧緩衝器によれば、ロッドガイド24が、外筒12に嵌合する嵌合円筒面52よりも小径であって外筒12への嵌合前にシールリング29を仮保持可能な仮保持円筒面53を、外筒13との間にシールリング29を保持するテーパ面54と、嵌合円筒面52との間に設けているため、シールリング29を仮保持円筒面53に仮保持した状態のロッドガイド24を外筒12に嵌合させると、シールリング29を良好にテーパ面54と外筒13との間の隙間55に適正に配置できる。したがって、シールリング29が単独で組み付けられる構造であっても、組み付けの作業性を向上させることができる。つまり、テーパ面54と外筒13との間の隙間55を狙って外側から別途シールリング29を配置する場合は、手作業で、シールリング29を全周にわたって隙間55に配置することになり、作業が煩雑となってしまうが、これに比べて組み付けの作業性を向上させることができるのである。
【0027】
なお、以上の実施形態においては、シールリング29が角リングである場合を例にとり説明したが、径方向の片側断面が円形状のOリングにも適用可能である。
【符号の説明】
【0028】
11 油圧緩衝器(シリンダ装置)
12 シリンダ
13 外筒
15 ロッド
24 ロッドガイド
29 シールリング
52 嵌合円筒面
53 仮保持円筒面
54 テーパ面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が封入されるシリンダと、
該シリンダを覆う外筒と、
前記シリンダに挿入されるロッドと、
前記シリンダおよび前記外筒の端部に設けられて前記ロッドを案内するロッドガイドと、
前記ロッドガイドと前記外筒との隙間をシールするシールリングとを備えたシリンダ装置であって、
前記ロッドガイドは、前記外筒に嵌合する嵌合円筒面と、前記外筒との間に前記シールリングが配置されるテーパ面と、前記嵌合円筒面より小径であって前記外筒への嵌合前に前記シールリングを仮保持可能な仮保持円筒面とを有することを特徴とするシリンダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−31899(P2012−31899A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170499(P2010−170499)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】