説明

シロキサン系多孔質体の製造方法

【課題】 シロキサン系の多孔質体の製造方法であって、孔径を容易に制御することができる方法を提供する。
【解決手段】 1)シロキサンを含有し、刺激応答性を有するゲルを得るステップ、および2)得られたゲルの溶媒の少なくとも一部を除去してシロキサンキセロゲルを得るステップを含むシロキサン系多孔質体の製造方法において、ゲルのシロキサン濃度などを調整することにより、前記多孔質体の孔径を制御する。さらに、前記ゲルの溶媒除去が凍結乾燥により行われる場合は、凍結条件を調整することにより孔径を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シロキサンキセロゲルを含む多孔質体の製造方法、特に、得られる多孔質体の孔径を適切に制御することができる多孔質体の製造方法に関する。本発明の製造方法は、刺激応答性を有するシロキサンゲルを乾燥させて、シロキサンキセロゲルを得るステップを含むことを特徴とする。
【背景技術】
【0002】
ケイ素系化合物からなる多孔質体の製造方法に関していくつかの報告がされている。
例えば、ポリ酢酸ビニルおよびポリエチレングリコール存在下で、溶媒中のシリコンアルコキシドを加水分解することによりシリカゾルとして、さらに得られたシリカゾルを加熱乾燥することにより多孔質シリカゲルを製造することができる。さらに、この多孔質シリカゲルを焼成することにより多孔質シリカガラスを得ることができると報告されている(特許文献1参照)。
また、ケイ素アルコキシドと有機高分子を含む溶液を加水分解・重合してゲルを作製し、作製されたゲルを焼成することにより多孔質ガラスを製造する方法が報告されている(特許文献2参照)。
【0003】
前記した従来の製造方法においては、多孔質体または多孔質ガラスの孔径を制御するために有機物を用いているので、有機物と溶媒との相溶性または分散性などにより、得られる多孔質体または多孔質ガラスの孔径を適切に制御することができないことがある。また、これらの製法によっては得られる多孔質体の形状を制御することは難しい。さらに、これらの製法は複雑な操作を要する。
【0004】
一方、感熱応答性を有する物質に関していくつかの報告がされている。
例えば、熱可逆型重合体の存在下で単量体を重合して得られる非水溶性重合体を含む水性分散体が、感温増粘性を示しうること(特許文献3参照)、α,β不飽和カルボン酸と他のモノマーを共重合してさらにモノマーを乳化重合して得られる粘着組成物が感熱性を有すること(特許文献4参照)、N−ビニルホルムアミドと酢酸ビニルの共重合体を含む感熱応答材料が報告されている(特許文献5参照)。
さらに、アミノを有するシラン化合物とカルボキシルを有するシラン化合物とを共加水分解・縮合して得られるシラン化合物を含む感熱応答性材料などが報告されている(特許文献6参照)。この感熱応答性材料は、温度センサーや芳香剤への応用が期待されることが示されている。
【特許文献1】特開平5−58617号公報
【特許文献2】特公平8−29952号公報
【特許文献3】特開平9−31138号公報
【特許文献4】特開平10−237142号公報
【特許文献5】特開平10−310614号公報
【特許文献6】特開2003−321544号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、シロキサンキセロゲルを含む多孔質体の簡便な製造方法を提供すること、好ましくは、得られる多孔質体の孔径を容易に制御することができる製造方法を提供することを課題とする。また、多孔質体を含む多孔質材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明の第一は、以下に示される多孔質体の製造方法である。
[1] シロキサンキセロゲルを含む多孔質体を製造する方法であって、
1)シロキサンおよび溶媒を含有し、刺激応答性を有するゲルを得るステップ、および2)得られたゲルの溶媒の少なくとも一部を除去してシロキサンキセロゲルを得るステップを含む製造方法。
[2] ゲルに含有されるシロキサンが、
アミノを有するシロキサン、およびカルボキシルもしくは加水分解されることによりカルボキシルを生成する官能基を有するシロキサンとを共縮合反応させて得られるシロキサンである、[1]に記載の製造方法。
[3] ゲルに含有されるシロキサンが、
下記式(I)または(I’)で示される化合物、および下記式(II)または(II’)で示される化合物とを共加水分解縮合または共縮合反応させて得られるシロキサンである、[1]に記載の製造方法。
【0007】
【化1】

【0008】
【化2】

【0009】
[4] ゲルに含有されるシロキサンが、
式(I)で示される化合物、および式(II)で示される化合物とを共加水分解縮合反応させて得られるシロキサンである、[3]に記載の製造方法。
[5] ゲルに含有されるシロキサンに含まれるアミノおよびカルボキシルの置換基数がそれぞれ、ケイ素原子の個数に対して、1〜99%および99〜1%である、[2]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
【0010】
[6] 2)のステップが、
a)ゲルを冷却して凍結させる工程、およびb)凍結されたゲルに含まれる凍結溶媒を昇華させて除去する工程を含む、[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7] a)のステップにおける冷却前のゲルの温度が、製造される多孔質体の孔径に応じて調整されることを特徴とする、[6]に記載の製造方法。
[8] a)のステップにおけるゲルに含有されるシロキサンの濃度が、製造される多孔質体の孔径に応じて調整されることを特徴とする、[6]に記載の製造方法。
[9] a)のステップにおけるゲルのpHが、製造される多孔質体の孔径に応じて調整されることを特徴とする、[6]に記載の製造方法。
[10] 2)のステップにおいて、溶媒が除去されるゲルの形状が、製造される多孔質体の形状に応じて制御されることを特徴とする、[1]〜[9]のいずれかに記載の製造方法。
【0011】
[11] [1]〜[10]のいずれかに記載の製造方法であって、3)シロキサンキセロゲルを焼成するステップ、をさらに含む製造方法。
[12] 焼成温度が500℃以上である、[11]に記載の製造方法。
【0012】
本発明の第二は、以下に示される多孔質体を用いた機能材料である。
[13] [1]〜[12]のいずれかに記載の製造方法により製造された多孔質体を含む分離用材料または分取用材料。
[14] [1]〜[12]のいずれかに記載の製造方法により製造された多孔質体を含む触媒担体用材料または酵素担体用材料。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、シロキサンキセロゲルを含む多孔質体を容易に製造することができ、かつ多孔質体の孔径を制御することができる。また、多孔質体を機能材料、例えば分離または分取用材料や担体用材料として用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、シロキサンキセロゲルを含有する多孔質体を製造する方法である。本方法により製造される多孔質体は、シロキサンキセロゲルを骨格成分とするが、用途に応じてその他の成分を含むことができる。シロキサンキセロゲルとは、シロキサンゲルの乾燥体(ゲル中の溶媒の少なくとも一部が除去されたもの)を意味する。
本発明の多孔質体の製造方法は、1)シロキサンおよび溶媒を含有し、刺激応答性を有するゲルを用意するステップ、および2)用意されたゲルの溶媒の少なくとも一部を除去してシロキサンキセロゲルを得るステップを含むことを特徴とする。本発明は、3)得られたシロキサンキセロゲルを焼成するステップを、さらに含んでいてもよい。
【0015】
1.シロキサンおよび溶媒を含有し、刺激応答性を有するゲル
前述の通り本発明の製造方法は、刺激応答性を有するゲルを用意するステップを含む。このゲル(以下、「本発明におけるゲル」とも称する)は、少なくともシロキサンおよび溶媒を含み、その他の任意成分を含んでいてもよい。その他の任意成分は、目的とする多孔質体の用途に応じて適宜選択される。
前記任意成分の例には界面活性剤やポリマーなどが含まれ、それらを含有するゲルからは、メソポア多孔質体を得ることができる。
【0016】
本発明におけるゲルは刺激応答性を有することを特徴とするが、ここで刺激応答性とは、温度、pHまたはシロキサン濃度の変化を含む外部からの刺激に応じて、物質の流動性が可逆的に変化する性質を意味する。
すなわち刺激応答性とは、高粘化して流動性を失っている物質が、温度、pHまたは濃度がある一定以下になると均一かつ流動性のある液状物質になり、かつこの液状物質の温度、pHまたは濃度が一定以上になると再び流動性のない物質に戻る性質を意味する。さらにこの性質は、温度、pHまたは濃度の上昇および下降のサイクルを繰り返しても失われずに再現されることが好ましい。
【0017】
前述の通り、本発明におけるゲルは刺激応答性を有することを特徴とするが、好ましくは温度、pHまたはシロキサン濃度に依存して、可逆的にゾル−ゲル転換する性質を有する。すなわち本発明におけるゲルは、高温、高pHまたは高濃度においてはゲルとして存在するが、低温、低pHまたは低濃度においてはゾルとして存在する性質を有する。したがって本発明におけるゲルは、温度、pHまたは濃度によってはゾルとして存在することができる。
本発明におけるゲルがゾルに変化する温度(T1)、またはゾルがゲルに変化する温度(T2)は、シロキサンの種類や濃度、pH、溶媒の種類や量によって異なるが、例えば溶媒が水である場合は、0〜100℃であることが好ましい。T1とT2は、それぞれ同一であっても異なっていてもよいが、好ましくは同一である。
【0018】
本発明におけるゲルに含まれるシロキサンは、それを含むゲルに刺激応答性を付与することができるシロキサンであれば特に限定されない。ここでシロキサンは、例えば極性を有する官能基を有していることが好ましく、例えばアミノ(−NH2)、カルボキシル(−COOH)もしくはスルホ(−SO2OH)など、またはそれらの組み合わせを有していることが好ましい。このシロキサンはアミノとカルボキシルを有することがより好ましい。
また、本発明におけるゲルに含まれるシロキサンは、刺激応答性を付与することができ
るシロキサン以外のシロキサン、例えばポリ(アルキルシロキサン)、ポリ(メルカプトシロキサン)、またはポリ(メタクリルシロキサン)などをさらに含有していてもよい。
【0019】
本発明におけるゲルに含まれるシロキサンは、任意の方法により製造され得るが、例えば以下に示される方法により製造されることができる。なお、これらの方法は特開2003−321544号明細書にも記載されている。
すなわちゲルに含まれるシロキサンは、アミノを有するシロキサンと、カルボキシルもしくは加水分解されることによりカルボキシルを生成し得る官能基を有するシロキサン(以下、「カルボキシルなどを有するシロキサン」とも称する)、またはスルホを有するシロキサンとを、共縮合反応させることにより製造されることができる。ここで、共縮合とは共加水分解縮合を含み、アミノを有するシロキサン及び/又はカルボキシルなどを有するシロキサンを予め加水分解してから縮合することもできる。
【0020】
好ましくは、本発明におけるゲルに含まれるシロキサンは、式(I)もしくは(I’)で示される化合物と、式(II)もしくは(II’)で示される化合物とを共縮合反応(共加水分解縮合反応を含む)させることにより、製造されることができる。
さらに好ましくは、本発明におけるゲルに含まれるシロキサンは、式(I)で示される化合物と、式(II)で示される化合物とを共加水分解縮合させるか、またはあらかじめ加水分解された式(I)で示される化合物と、式(II)で示される化合物とを共加水分解縮合させることにより製造されることができる。
【0021】
式(I)において、R1〜R3はそれぞれ独立して加水分解性基または炭素数1〜4のアルキルを示す。ただし、R1〜R3のうち少なくとも2つの基は加水分解性基である。すなわち、R1〜R3のうちアルキルは0または1つである。
ここで加水分解性基は、加水分解されることによりヒドロキシを生成し得る官能基であればよく、アルコキシやアセトキシなどが例示される。アルコキシは、直鎖であっても分岐鎖であってもよく、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシなどであり得る。アルコキシは、加水分解後の分解物を系外に取り除く際の手間を考慮すると、メトキシおよびエトキシであることが好ましい。
また炭素数1〜4のアルキルは、直鎖であっても分岐鎖であってもよく、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、tert-ブチルなどであり、好ましくはメチルやエチルであり得る。
【0022】
式(I)におけるmは0〜3の整数を示すが、好ましくは0〜1であり、より好ましくは0である。
【0023】
式(I)で表される化合物の具体例には、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリアセトキシシランが含まれる。より好ましくは3−アミノプロピルトリエトキシシランもしくは3−アミノプロピルトリメトキシシランである。
これらの化合物は、一般にアミノ系シランカップリング剤として入手され得る。
【0024】
式(I’)におけるR4は炭素数1〜4のアルキルであり、式(I)におけるR1〜R3のアルキルと同様のアルキルが例示される。YはR4の置換数を示し、0または1であり、好ましくは0である。Xはヒドロキシの置換数を示し、0〜3のいずれかの整数である。ただし、X+Y≦3である。なお、X+Y≦2である場合は、式(I’)で示される化合物はポリシロキサンである。
式(I’)におけるmは0〜3の整数を示すが、好ましくは0〜1であり、より好ましくは0である。
【0025】
式(I’)で示される化合物の例には、3−アミノプロピルシロキサン(チッソ製商品名SF330)などが含まれる。式(I’)で示される化合物は、式(I)で示される化合物が加水分解されることにより生成されることができる。また、式(I’)で示される化合物は、本発明におけるゲルに含まれるシロキサンを得るための反応(例えば、式(II)または式(II’)で示される化合物との反応)において、反応系中で生成されてもよい。
【0026】
式(II)におけるZは、カルボキシル(−COOH)または加水分解することによりカルボキシルを生成し得る官能基である。この官能基の例には、シアノ(−CN)、アルコキシカルボニル(COOR)、アミノカルボニル(COONR2)などが含まれる。アルコキシカルボニルの例には、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、sec−ブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニルなどが含まれる。好ましくは、メチルカルボニルおよびエチルカルボニルである。
【0027】
式(II)におけるR5〜R7は、それぞれ独立して加水分解性基または炭素数1〜4のアルキルを示す。ただし、R5〜R7のうちの少なくとも二つは加水分解性基である。加水分解性基およびアルキルの例にはそれぞれ、R1〜R3において例示された加水分解性基およびアルキルと同様の基が含まれる。
式(II)におけるnは1〜10の整数であり、好ましくは1〜4の整数であり、より好ましくは2である。
【0028】
式(II)で示される化合物の例には、2−シアノエチルトリエトキシシラン、2−シアノエチルトリメトキシシラン、2−トリエトキシシリルプロピオン酸エチル、2−トリエトキシシリルプロピオン酸メチル、2−トリメトキシシリルプロピオン酸エチル、2−トリメトキシシリルプロピオン酸メチル、2−トリエトキシシリルプロピオン酸アミド、2−トリメトキシシリルプロピオン酸アミド、あるいはこれらを加水分解して得られるカルボキシル体が含まれる。
【0029】
式(II’)におけるR8は炭素数1〜4のアルキルであり、式(II)におけるR5〜R7のアルキルと同様のアルキルが例示される。YはR8の置換数であり、0または1の整数を示す。式(II’)におけるXは0〜3の整数を示す。ただし、X+Y≦3である。なお、X+Y≦2である場合は、式(II’)で示される化合物はポリシロキサンである。
式(II’)におけるnは1〜10の整数であり、好ましくは1〜4の整数であり、より好ましくは2である。
【0030】
式(II’)で示される化合物の例には、ポリ(カルボキシエチルシロキサン)などが含まれる。式(II’)で示される化合物は、式(II)で示される化合物を加水分解することにより生成されることができる。また、式(II’)で示される化合物は、本発明におけるゲルに含まれるシロキサンを得るための反応(例えば、式(I)または式(I’)で示される化合物との反応)において、反応系中で生成されてもよい。
【0031】
本発明におけるゲルに含まれるシロキサンが有するアミノとカルボキシルの存在比率は、任意の比率とすることができる。例えばゲルに含まれるシロキサンが有するアミノおよびカルボキシルの置換基数はそれぞれ、ケイ素原子の個数に対して1〜99%および99〜1%の範囲とすることができる。
ゲルに含まれるシロキサンが有するアミノの置換基数は、ケイ素原子の個数に対して10%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましい。また、90%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましい。
一方、ゲルに含まれるシロキサンが有するカルボキシルの置換基数は、ケイ素原子の個数に対して10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。また、90%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましい。
ゲルに含まれるシロキサンにおけるアミノおよびカルボキシルの存在比率は、ゲルに含まれるシロキサンを分析することにより求められてもよいが、便宜的には、原料におけるアミノを有するシロキサンと、カルボキシルなどを有するシロキサンとの比率(仕込み比)から求められる。ここで、カルボキシルなどを有するシロキサンが、加水分解されることによりカルボキシルを生成する官能基(シアノなど)を有するシロキサンである場合は、反応混合物の1H−NMRデータから、シアノなどが消失した割合(加水分解されてカルボキシルに変換された割合)を求めて、アミノおよびカルボキシルの存在比率を求めればよい。
また、ゲルの元素分析により測定されたチッソ元素の含有量から、アミノおよびカルボキシルの存在比率を求めてもよい。
【0032】
ゲルに含まれるシロキサンにおけるアミノおよびカルボキシルの存在比率は、そのシロキサンの製造において、アミノを有するシロキサンと、カルボキシルなどを有するシロキサンとの比率を調整することにより、制御することができる。
【0033】
本発明におけるゲルに含まれる溶媒は親水性溶媒であることが好ましく、親水性溶媒には水、低級アルコール(例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール)、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミドおよびジメチルスルホキシドなどが含まれる。ここで親水性溶媒は、水および低級アルコールであることが好ましく、水であることがより好ましい。ゲルに含まれる溶媒は、親水性溶媒の単独溶媒または混合溶媒であり得るが、好ましくは単独溶媒である。
【0034】
本発明におけるゲルは、水を含む溶媒(好ましくは親水性溶媒)の存在下においてシロキサンを合成することにより得ることができる。例えば、本発明におけるゲルは、水を含む溶媒の存在下においてアミノを有するシロキサン(例えば式(I)または(I’)で示される化合物)と、カルボキシルなどを有するシロキサン(例えば式(II)または(II’)で示される化合物)とを共縮合反応させることで製造することができる。ここで、共縮合とは共加水分解縮合を含み、アミノを有するシロキサン及び/又はカルボキシルを有するシロキサンを予め加水分解してから縮合することもできる。
本発明におけるゲルは、水を含む溶媒の存在下において式(I)で示される化合物と、式(II)で示される化合物とを共加水分解縮合させるか、または予め加水分解された式(I)で示される化合物と、式(II)で示される化合物とを共加水分解縮合させることにより製造されることが好ましい。
【0035】
前述の通り本発明におけるゲルは、水を含む溶媒の存在下において、アミノを有するシロキサンとカルボキシルなどを有するシロキサンとを共縮合反応させることで製造することができるが、ここで共縮合反応は公知慣用の反応条件にて行うことができる。例えば、適当な触媒を用いることができる。さらに反応によって生成しうる低沸点副生物(例えばアルコール)を、蒸留等の操作により系外に除去してもよい。
【0036】
本発明におけるゲルのシロキサン濃度は、ゲルの製造において溶媒の量を調整することにより調整されることができるほか、製造されたゲルに溶媒を添加することなどにより調整されることができる。
ここでシロキサンの濃度は、ゲル全体に対して、通常は0.1質量%以上であり、1質
量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましい。また、シロキサンの濃度は、ゲル全体に対して99重量%以下であることが好ましく、75重量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。シロキサンの濃度が0.1重量%未満であると、濃度が低すぎるために、シロキサンがネットワークを形成することが困難になり、高粘度化することができない(すなわち、ゲルになることができない)場合がある。また、シロキサンの濃度が99重量%より多いと、シロキサンの縮合が進行してしまい、流動性を保つことができず(すなわち、ゾルになることができない)、刺激応答性が奏されない場合がある。また溶媒の含有量は、ゲル全体に対して99.9〜1重量%であることが好ましい。
本発明におけるゲルに含まれるシロキサンの濃度は、ゲルを加熱乾固させて得られた乾固体の重量と、乾固させる前のゲルの重量とから求めることができる。
【0037】
本発明におけるゲルのシロキサン濃度を調整することにより、ゲルが刺激応答性を発現する温度(好ましくは、ゾル−ゲル転換温度)を制御することができることが好ましい。すなわち、シロキサン濃度を上げることにより刺激応答性を発現する温度を低温側にシフトすることができ、シロキサン濃度を下げることにより刺激応答性を発現する温度を高温側にシフトすることができることが好ましい。
【0038】
本発明におけるゲルのpHを調整することにより、ゲルが刺激応答性を発現する温度(好ましくは、ゾル−ゲル転換温度)を制御することができることが好ましい。すなわち、pHを上げることにより、刺激応答性を発現する温度を低温側にシフトすることができ、pHを下げることにより刺激応答性を発現する温度を高温側にシフトすることができることが好ましい。
【0039】
2.本発明におけるゲルに含まれる溶媒を除去するステップ
本発明の多孔質体の製造方法は、前述の本発明におけるゲルから溶媒の少なくとも一部を除去してシロキサンキセロゲルを得るステップを含むことを特徴とする。本発明におけるゲルから溶媒を除去する手段の例には、加熱乾燥による方法、減圧乾燥による方法、その他の方法が含まれる。本発明の製造方法における溶媒除去は、好ましくは減圧乾燥による方法により実施され、より好ましくは凍結乾燥法により実施される。凍結乾燥法によれば、本発明におけるゲルに含まれるシロキサンが形成したネットワーク構造を維持したまま溶媒を除去することができるからである。
【0040】
ゲルに含まれる溶媒を除去するための凍結乾燥法は、1)本発明におけるゲルを冷却させて凍結させる工程、および2)凍結されたゲルに含まれる凍結溶媒を昇華させて除去する工程を含む。
【0041】
凍結乾燥法において、本発明におけるゲルは、ゲル凍結温度以下の温度に冷却されればよいが、例えばゲルの溶媒が水である場合は、−200〜−10℃にまで冷却されることが好ましいが水が完全に凍結する温度であれば特に制限はない。ここで冷却は、液体窒素、ドライアイス−メタノール、食塩−氷などの冷媒を適宜使用して行うことができる。また凍結温度は、ゲルから溶媒を除去している間にも、一定に維持されることが好ましい。
【0042】
凍結乾燥法において、冷却前のゲルの温度は任意であるが、例えば溶媒が水である場合は−10〜100℃のゲルを冷却して凍結させることができる。ここで、本発明のゲルは刺激応答性を有するので、冷却前のゲルは、温度によってはゾルとして存在しうる。
また、凍結乾燥法における冷却前のゲルの温度は、目的とする多孔質体の孔径に応じて選択されることができる。すなわち、より高温のゲルを冷却して凍結させることにより、より孔径の小さい多孔質体を製造することができ、一方、より低温のゲルを冷却して凍結させることにより、より孔径の大きい多孔質体を製造することができる。これは、ゲルに
含まれるシロキサンが形成するネットワーク構造(ゲルに含まれるシロキサン同士が、さらにシロキサン結合することにより形成されうる)が、より高温であるとより緻密になり、より低温であるとより粗くなるからであると推察される。また、これらは、後述の実施例においても示されている。
【0043】
凍結乾燥法において、ゲルのシロキサン濃度は任意であるが、目的とする多孔質体の孔径に応じて選択されることが好ましい。すなわち、シロキサン濃度を低下させると、製造される多孔質体の孔径が大きくなり、シロキサン濃度を上昇させると、製造される多孔質体の孔径が小さくなり得る。これらは後述の実施例においても示されている。
【0044】
凍結乾燥法において、ゲルのpHは任意であるが、8〜11であることが好ましい。またゲルのpHは、目的とする多孔質体の孔径に応じて選択されることが好ましい。すなわち、ゲルのpHを上げると、得られる多孔質体の孔径を大きくすることができ、一方、ゲルのpHを下げると、得られる多孔質体の孔径を小さくすることができる。これらは後述の実施例においても示されている。
【0045】
凍結乾燥法において、ゲルを凍結させるための冷却速度は任意である。例えば、ゲルを含む容器(例えばガラス容器やテフロン(登録商標)容器)を、液体窒素中に投入して急速に冷却してもよく、−10℃程度の冷凍庫内で徐々に冷却してもよい。
冷却速度を上げると得られる多孔質体の孔径は小さくなり、冷却速度を下げると得られる多孔質体の孔径は大きくなる。これは、凍結前のゲルの温度に関連があると推定される。
【0046】
本発明の製造方法において、本発明におけるゲルは、任意の材質の容器内に収容された状態で溶媒を除去(好ましくは凍結乾燥法による除去)されることができる。収容する容器の材質の例にはガラスやテフロン(登録商標)が含まれる。ガラス製の容器の内面にはテフロン(登録商標)がコーティングされていてもよい。また、容器の形状を適宜選択することにより、目的とする多孔質体の形状を制御することができる。
さらに、本発明におけるゲルのフィルムを形成し、形成されたフィルムを凍結乾燥させてフィルム状の多孔質体を形成してもよい。フィルムはキャスト法やディップ法により形成されることができる。
【0047】
3.得られた多孔質体を焼成するステップ
本発明のシロキサンキセロゲルを含む多孔質体の製造方法は、1)シロキサンおよび溶媒を含み、刺激応答性を有するゲルを得るステップ、2)得られたゲルの溶媒を除去してシロキサンキセロゲルを得るステップを含むが、さらに3)得られたシロキサンキセロゲルを焼成するステップを含んでいてもよい。
【0048】
3)のステップにおける焼成の温度は、通常300℃以上であるが、500℃以上であることが好ましく、600℃以上であることがより好ましい。500℃より低いと、有機物成分の燃焼が不完全となり、炭化した成分が多孔質体に残存する可能性がある。また、焼成の温度の上限は特に制限されないが、昇温または冷却に必要となる時間を節約したり、エネルギー消費量の観点から、一般的には1200℃(好ましくは1000℃)以下であることが好ましい。
焼成においてシロキサンキセロゲル(多孔質体)を昇温または冷却するためにかける時間は、6時間以上であることが好ましい。6時間より短いと、急激な温度変化により多孔質体が破損する可能性がある。また、昇温または冷却するためにかける時間の上限は特に制限されないが、作業効率の点から、一般的には12時間以下であることが好ましい。
焼成時間(焼成温度に達してから冷却を始めるまでの時間)は任意であるが、焼成により有機物が完全に除去されることが好ましく、12〜24時間程度を目安にすればよい。
【0049】
溶媒を除去して得られたシロキサンキセロゲルは、焼成されることにより、重量が低下して外形や孔径が小さくなり、表面積が低下しうる。したがって、焼成により機械的強度が増した多孔質体を得ることができる。
【0050】
4.本発明の製造方法により製造される多孔質体
本発明の方法により製造される多孔質体の孔は任意の孔径を有し、その孔径は特に限定されないが、例えば0.01〜1μmの範囲の平均径を有し、0.1〜5μmの範囲のメジアン径を有する。多孔質体の孔の孔径は、前述の通り1)ゲルのシロキサン濃度、および2)ゲルのpH、ならびに凍結乾燥法を用いる場合は、3)冷却前のゲルの温度、4)ゲルを冷却するための冷却速度などにより、任意に制御されることができる。
多孔質体の孔径は、水銀圧入法により測定されることができる。
【0051】
本発明の製造方法により製造される多孔質体の表面積は、例えば1〜50m2/gの範囲であるが、特に限定されない。
本発明の製造方法により製造される比容積は、例えば0.1〜1cm3/gであるが、特に限定されない。
多孔質体の表面積および比容積は水銀圧入法により測定されることができる。
【0052】
また本発明の製造方法により製造される、未焼成の多孔質体は水に接触することにより溶解してゲルとなる性質を有し、かつこのゲルは刺激応答性を有し得る。一方、焼成された多孔質体は、通常は水に接触してもゲルに戻る性質を有さない。
【0053】
本発明の製造方法により製造される多孔質体は、通常の多孔質体と同様の用途に適用され得る。例えば、分離用材料もしくは分取用材料、または触媒担体用材料または酵素担体用材料などとして用いられることができる。
【実施例】
【0054】
<合成例1:刺激応答性シロキサンゲルの合成>
内部温度測定器、攪拌装置、液体配量装置、搭頂部温度測定器を備えた蒸留塔、冷却器、および蒸留生成物受器を備えた容量2リットルのフラスコに、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(チッソ(株)製サイラエースS330)1000gを仕込み、次いで配量装置から純水500gを投入した。反応物のサンプリングをガスクロマトグラフにより分析して、3−アミノプロピルトリエトキシシランのピークが消失したことを確認した(加水分解の終了の確認)。その後、反応器内を2KPaに減圧した。さらに60℃にて、副生したエタノール500gを除去した。微量の残存エタノールを除去するためさらに蒸留を続け250gの留出液を除去した。次いで留出したエタノールと同重量の純水を加えて濃度および粘度を調整した。
得られた3−アミノプロピルトリエトキシシランの加水分解物の水溶液(水溶液の質量に対してケイ素を元素換算で12.7質量%に調整した)352.6g、およびこれと等質量の純水を、内部温度測定器、攪拌装置、液体配量装置、留出装置および窒素バブリング装置を備えた容量1リットルのフラスコに加えて撹拌した。
【0055】
さらに、配量装置より86.9gの2−シアノエチルトリエトキシシランを、常温下で約30分間かけて投入した。投入後、加熱下に1時間還流を行った。その後、適宜窒素バブリングを行いつつ副生するエタノール、およびアンモニアを水とともに系外に除去しながら45時間反応を続けた。配量装置より200gの純水を添加してさらに6時間反応させた。得られたゲルが均一かつ透明な液状となるまで冷却、攪拌し、843.2gのサンプルを得た。
得られたサンプルをアルミカップに計量し熱風オーブン中105℃で3時間かけて加熱
乾固させて、サンプル中の不揮発分の含有量を求めたところ、26質量%であった。また、得られたサンプルのpHは11.2であった。
サンプルは20℃で液状であるが、80℃まで加温するとゲル状となり流動性を失い、室温まで放冷するともとの液状に戻った。降温、昇温のサイクルを繰り返しても、この性質が再現されたことから、サンプルが良好な刺激応答性を持つことを確認した。得られたシロキサンゲルを、実施例1〜3で用いた。
【0056】
<実施例1>
合成例1のシロキサンゲル(26質量%,溶媒:水,pH:11.2)2.5mlを、内径6mm,長さ10cmのテフロン(登録商標)チューブに入れ、チューブの両端を密栓し、80℃にて1時間保持した。その後、シロキサンゲルを密栓したチューブを素早く液体窒素(約−195℃)中に投入し、さらに1時間液体窒素中で保持し、シロキサンゲルを凍結させた。
チューブから凍結したシロキサンゲルを取り出し、凍結乾燥機(IWAKI,ASAHI TECHNO GLASS, 小型凍結乾燥機 FRD-MINI)を用いて、10Paの真空下で24時間凍結乾燥し、白色の多孔質固体を得た。
凍結乾燥することにより、重量が74%減少したが、外形の大きさに減少はみられなかった。
【0057】
得られた多孔質体を焼成した。すなわち、室温下の多孔質体を12時間かけて900℃にまで昇温したのち、900℃にて24時間保持した。その後、12時間かけて室温に戻し、白色の多孔質体を得た。
焼成により、重量が約50%減少し、外形の大きさが68%減少した。
【0058】
<実施例2>
合成例1のシロキサンゲル(26質量%,溶媒:水,pH:11.2)の2.5mlを、内径6mm,長さ10cmのテフロン(登録商標)チューブに入れ、チューブの両端を密栓し、50℃にて1時間保持した。その後、シロキサンゲルを密栓したチューブを素早く液体窒素中に投入し、さらに1時間液体窒素中で保持し、シロキサンゲルを凍結させた。
チューブから凍結したシロキサンゲルを取り出し、凍結乾燥機(IWAKI,ASAHI TECHNO GLASS, 小型凍結乾燥機 FRD-MINI)を用いて、10Paの真空下で24時間凍結乾燥し、白色の多孔質固体を得た。
凍結乾燥することにより、重量が74%減少したが、外形の大きさに減少はみられなかった。
さらに得られた多孔質体を、実施例1と同様にして焼成した。
【0059】
<実施例3>
合成例1のシロキサンゲル(26質量%,溶媒:水,pH:11.2)の2.5mlを、内径6mm,長さ10cmのテフロン(登録商標)チューブに入れ、チューブの両端を密栓し、−10℃にて1時間保持した。その後、シロキサンゲルを含むチューブを素早く液体窒素中に投入し、さらに1時間液体窒素中で保持し、シロキサンゲルを凍結させた。
チューブから凍結したシロキサンゲルを取り出し、凍結乾燥機(IWAKI,ASAHI TECHNO GLASS, 小型凍結乾燥機 FRD-MINI)を用いて、10Paの真空下で24時間凍結乾燥し、白色の多孔質固体を得た。
凍結乾燥することにより、重量が74%減少したが、外形の大きさに減少はみられなかった。
さらに、得られた多孔質体を、実施例1と同様にして焼成した。焼成前および焼成後の多孔質体の外観写真を図4−aに、焼成後の多孔質体のSEM写真を図4−bに示す。図4−aに示されたように、焼成により容積は減少しているが、図4−bに示されたように
、焼成により多孔質体の微細構造(細孔径、構造)は保持されていることがわかる。
【0060】
<実施例4>
合成例1のシロキサンゲルのpH(11.2)を、10.2に調整した。pHの調整は、100mlビーカーに20mlの合成例1のシロキサンゲルを量り取り、pHメーター(HM-30V pH meter 東亜電波工業株式会社製)を設置し、3N塩酸水を滴下してpH10.2に調整した。
pHを調整されたシロキサンゲル2.5mlを、内径6mm,長さ10cmのテフロン(登録商標)チューブに入れ、チューブの両端を密栓し、80℃にて1時間保持した。その後、シロキサンゲルを密栓したチューブを素早く液体窒素(約−195℃)中に投入し、さらに1時間液体窒素中で保持し、シロキサンゲルを凍結させた。
チューブから凍結したシロキサンゲルを取り出し、凍結乾燥機(IWAKI,ASAHI TECHNO GLASS, 小型凍結乾燥機 FRD-MINI)を用いて、10Paの真空下で24時間凍結乾燥し、白色の多孔質固体を得た。
【0061】
<実施例5>
合成例1のシロキサンゲルのシロキサン濃度(26質量%)を、19.5質量%に調整した。濃度の調整は、100mlビーカーに、合成例1のシロキサンゲル20gを量り取り、これに蒸留水6.67gを加えて行った。
濃度を調整されたシロキサンゲル2.5mlを、内径6mm,長さ10cmのテフロン(登録商標)チューブに入れ、チューブの両端を密栓し、80℃にて1時間保持した。その後、シロキサンゲルを密栓したチューブを素早く液体窒素(約−195℃)中に投入し、さらに1時間液体窒素中で保持し、シロキサンゲルを凍結させた。
チューブから凍結したシロキサンゲルを取り出し、凍結乾燥機(IWAKI,ASAHI TECHNO GLASS, 小型凍結乾燥機 FRD-MINI)を用いて、10Paの真空下で24時間凍結乾燥し、白色の多孔質固体を得た。
【0062】
<比較例>
3−アミノプロピルトリエトキシシラン加水分解物(26重量%,溶媒:水,2.5ml)を、内径6mm,長さ10cmのテフロン(登録商標)チューブに入れ、チューブの両端を密栓し、80℃にて1時間保持した。その後、シロキサンゲルを密栓したチューブを素早く液体窒素中に投入し、さらに1時間液体窒素中で保持し、加水分解物を凍結させた。
チューブから凍結した加水分解物を取り出し、凍結乾燥機(IWAKI,ASAHI TECHNO GLASS, 小型凍結乾燥機 FRD-MINI)を用いて、10Paの真空下で24時間凍結乾燥したが、凍結時の形状が維持されず、多孔質体を得ることはできなかった。
【0063】
<微細孔形状評価>
実施例1〜5で得られた焼成前の多孔質体の微細構造形状を走査型電子顕微鏡(JEOL JSM-5310LV)により観察した。得られたSEM写真を図1−a(実施例1)、図1−b(実施例2)、図1−c(実施例3)、図2(実施例4)および図3(実施例5)に示す。
【0064】
図1−a〜cに示された写真から明らかなように、冷却前のゲルの温度が高くなるほど得られた多孔質体の細孔径が小さいことがわかる。
また、図2に示された写真と、図1−aに示された写真から明らかなように、ゲルのpHが低いと、得られる多孔質体の細孔径が大きくなることがわかる。
さらに、図3に示された写真と、図1−aに示された写真から明らかなように、ゲルのシロキサン濃度が低いと、得られる多孔質体の細孔径が大きくなることがわかる。
【0065】
<微細孔径評価>
実施例2〜3で得られた焼成前の多孔質体の微細孔径などを、ポロシメーター(CARLO ERBA STRUMENTAZIONE 製、POROSIMETER 2000)を用いて、水銀圧入法により測定した。それらの結果を表1に示す。表1に示されたように、冷却前のゲルの温度が高くなるほど平均径、メジアン径とも小さくなり、また表面積が増加することから、冷却前のゲル温度を調整することにより、多孔質体の孔径を制御することが可能であることがわかる。
【0066】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明により製造される多孔質体は種々の機能性材料、例えば分離、分取などに用いられうるカラム用材料、および触媒や酵素などの担体用材料などとして利用されうる。また製造される多孔質成形体は、孔径や形状が任意に制御され得るので、種々の機能性材料への利用性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1−a】実施例1で得られた焼成前の多孔質体のSEM写真である。
【図1−b】実施例2で得られた焼成前の多孔質体のSEM写真である。
【図1−c】実施例3で得られた焼成前の多孔質体のSEM写真である。
【図2】実施例4で得られた焼成前の多孔質体のSEM写真である。
【図3】実施例5で得られた焼成前の多孔質体のSEM写真である。
【図4−a】実施例3で得られた多孔質体の、焼成前後の外観写真である。
【図4−b】実施例3で得られた、焼成後の多孔質体のSEM写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シロキサンキセロゲルを含む多孔質体を製造する方法であって、
1)シロキサンおよび溶媒を含有し、刺激応答性を有するゲルを得るステップ、および
2)得られたゲルの溶媒の少なくとも一部を除去してシロキサンキセロゲルを得るステップ
を含む製造方法。
【請求項2】
ゲルに含有されるシロキサンが、
アミノを有するシロキサン、および
カルボキシルもしくは加水分解されることによりカルボキシルを生成する官能基を有するシロキサン
とを共縮合反応させて得られるシロキサンである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
ゲルに含有されるシロキサンが、
下記式(I)または(I’)で示される化合物、および
下記式(II)または(II’)で示される化合物
とを共加水分解縮合または共縮合反応させて得られるシロキサンである、請求項1に記載の製造方法。
【化1】

【化2】

【請求項4】
ゲルに含有されるシロキサンが、
式(I)で示される化合物、および
式(II)で示される化合物
とを共加水分解縮合反応させて得られるシロキサンである、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
ゲルに含有されるシロキサンに含まれるアミノおよびカルボキシルの置換基数がそれぞれ、ケイ素原子の個数に対して、1〜99%および99〜1%である、請求項2〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
2)のステップが、
a)ゲルを冷却して凍結させる工程、および
b)凍結されたゲルに含まれる凍結溶媒を昇華させて除去する工程
を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
a)のステップにおける冷却前のゲルの温度が、製造される多孔質体の孔径に応じて調整されることを特徴とする、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
a)のステップにおけるゲルに含有されるシロキサンの濃度が、製造される多孔質体の孔径に応じて調整されることを特徴とする、請求項6に記載の製造方法。
【請求項9】
a)のステップにおけるゲルのpHが、製造される多孔質体の孔径に応じて調整されることを特徴とする、請求項6に記載の製造方法。
【請求項10】
2)のステップにおいて、溶媒が除去されるゲルの形状が、製造される多孔質体の形状に応じて制御されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の製造方法であって、3)シロキサンキセロゲルを焼成するステップ、をさらに含む製造方法。
【請求項12】
焼成温度が500℃以上である、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の製造方法により製造された多孔質体を含む分離用材料または分取用材料。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の製造方法により製造された多孔質体を含む触媒担体用材料または酵素担体用材料。

【図1−a】
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【図1−b】
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【図1−c】
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【図2】
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【図3】
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【図4−a】
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【図4−b】
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【公開番号】特開2006−241275(P2006−241275A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−57738(P2005−57738)
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【出願人】(000117858)
【出願人】(505077345)
【出願人】(505077356)
【Fターム(参考)】