説明

シンチレータプレート

【課題】本発明の目的は、鮮鋭性に優れかつ基材との接着性に優れるシンチレータ層を有するシンチレータプレートを提供することにある。
【解決手段】基材上に蒸着結晶からなるシンチレータ層を有するシンチレータプレートにおいて、該基材の該シンチレータ層と接触する接触面の中心線平均粗さ(Ra)が、0.001≦Ra≦0.1μmであり、該接触面の最大粗さ(Rt)と該Raが、5≦Rt/Ra≦150である関係を有することを特徴とするシンチレータプレート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体の放射線画像を形成する際に用いられるシンチレータプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、X線画像のような放射線画像は医療現場において病状の診断に広く用いられている。特に、増感紙−フィルム系による放射線画像は、長い歴史のなかで高感度化と高画質化が図られた結果、高い信頼性と優れたコストパフォーマンスを併せ持った撮像システムとして、いまなお、世界中の医療現場で用いられている。
【0003】
しかしながらこれら画像情報はいわゆるアナログ画像情報であって、近年発展を続けているデジタル画像情報のような、自由な画像処理や瞬時の電送ができない。
【0004】
そして、近年ではコンピューテッドラジオグラフィ(CR)やフラットパネル型の放射線ディテクタ(FPD)等に代表されるデジタル方式の放射線画像検出装置が登場している。これらは、デジタルの放射線画像が直接得られ、陰極管や液晶パネル等の画像表示装置に画像を直接表示することが可能なので、必ずしも写真フィルム上への画像形成が必要なものではない。その結果、これらのデジタル方式のX線画像検出装置は、銀塩写真方式による画像形成の必要性を低減させ、病院や診療所での診断作業の利便性を大幅に向上させている。
【0005】
X線画像のデジタル技術の一つとしてコンピューテッド・ラジオグラフィ(CR)が現在医療現場で受け入れられている。しかしながら鮮鋭性が十分でなく空間分解能も不充分であり、スクリーン・フィルムシステムの画質レベルには到達していない。そして、さらに新たなデジタルX線画像技術として、例えば雑誌Physics Today,1997年11月号24頁のジョン・ローランズ論文“Amorphous Semiconductor Usher in Digital X−ray Imaging”や、雑誌SPIEの1997年32巻2頁のエル・イー・アントヌクの論文“Development of a High Resolution,Active Matrix,Flat−Panel Imager with Enhanced Fill Factor”等に記載された、薄膜トランジスタ(TFT)を用いた平板X線検出装置(FPD)が開発されている。
【0006】
平板X線検出装置(FPD)はCRより装置が小型化し、高線量での画質が優れているという特徴がある。しかし、一方ではTFTや回路自体のもつ電気ノイズのため、低線量の撮影においてSN比が低下し十分な画質レベルには至っていない。
【0007】
放射線を可視光に変換する為に放射線により発光する特性を有するX線蛍光体で作られたシンチレータプレートが使用されるが、低線量の撮影においてSN比を向上するためには、発光効率の高いシンチレータプレートを使用することが必要になってくる。一般にシンチレータプレートの発光効率は、蛍光体層の厚さ、蛍光体のX線吸収係数によって決まるが、蛍光体層の厚さは厚くすればするほど、蛍光体層内での発光光の散乱が発生し、鮮鋭性は低下する。そのため、画質に必要な鮮鋭性を決めると、膜厚が決定する。
【0008】
その中でも、ヨウ化セシウム(CsI)はX線から可視光に対する変更率が比較的高く、蒸着によって容易に蛍光体を柱状結晶構造に形成できるため、光ガイド効果により結晶内での発光光の散乱が抑えられ、蛍光体層の厚さを厚くすることが可能であった(特許文献1参照)。
【0009】
また、発光効率を向上させるため、タリウム、ナトリウム、ルビジウムなどの賦活剤と呼ばれる元素をヨウ化セシウムに含有させることが知られている。
【0010】
上記シンチレータは蒸着にて作製されるが、基材とシンチレータの接着性を向上させるために基材表面に凹凸を加工したり、表面にプラズマ処理等を行い表面を粗面とすることが知られている。しかし、この方法では、結晶性が悪く、鮮鋭性が充分でないという問題があった。またアルミニウム支持体を使用し、陽極酸化層の表面粗さRaを0.01〜0.3μmとすることで、接着性及び腐食性を向上させる技術が公開されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開昭63−215987号公報
【特許文献2】特開2007−292755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記した従来技術を用いても、結晶性の良い柱状結晶を形成し、かつ同時に基材との接着性にも優れたシンチレータプレートを実現することは困難であった。
【0012】
本発明の目的は、上記問題に鑑みてなされたものであり、基材との接着性に優れるシンチレータ層を有し、かつ鮮鋭性に優れるシンチレータプレートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
1.基材上に蒸着結晶からなるシンチレータ層を有するシンチレータプレートにおいて、該基材の該シンチレータ層と接触する接触面の中心線平均粗さ(Ra)が、0.001≦Ra≦0.1μmであり、該接触面の最大粗さ(Rt)と該Raが、5≦Rt/Ra≦150である関係を有することを特徴とするシンチレータプレート。
2.前記蒸着結晶が柱状結晶であることを特徴とする1に記載のシンチレータプレート。
3.前記蒸着結晶が、ヨウ化セシウムと賦活剤を含有することを特徴とする1または2に記載のシンチレータプレート。
【発明の効果】
【0014】
本発明の上記手段により、従来よりも結晶性が良い柱状結晶が得られ、鮮鋭性に優れ、かつ基材との接着性に優れるシンチレータ層を有する、高性能のシンチレータプレートが提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、基材上に蒸着結晶からなるシンチレータ層を有するシンチレータプレートにおいて、該基材の該シンチレータ層と接触する接触面の中心線平均粗さ(Ra)が、0.001≦Ra≦0.1μmであり、該接触面の最大粗さ(Rt)と該Raが、5≦Rt/Ra≦150である関係を有することを特徴とする。
【0016】
本発明では特に、基材の面の中心線粗さRaと、最大粗さRtとを、特定の関係とすることにより、鮮鋭性に優れ、かつ基材との接着性にも優れた高性能のシンチレータプレートが得られる。
【0017】
本発明においては、基材の、該シンチレータ層と接触する接触面の中心線平均粗さ(Ra)が、0.001≦Ra≦0.1μmであり、該接触面の最大粗さ(Rt)と該Raが、5≦Rt/Ra≦150である関係を有する。
【0018】
基材の、シンチレータ層と接触する接触面とは、本発明に係る蒸着結晶が蒸着される面である。
【0019】
接触面の中心線平均粗さRaは、0.001〜0.1μmであることが必要であるが、特に0.005〜0.05μmであることが好ましい。
【0020】
Raが、0.001μm未満であると接着性が不十分であり、Raが0.1μmを超えると柱状結晶の結晶性が劣化し、鮮鋭性が不十分となる。
【0021】
さらにこのRaの範囲において、本発明では、Raと最大粗さ(Rt)とが、5≦Rt/Ra≦150である関係を有することが必要であるが、特に10≦Rt/Ra≦100であることが好ましい。
【0022】
Rt/Raが、5未満であると接着性が不十分であり、Rt/Raが150を超えると柱状結晶の結晶性が劣化し、鮮鋭性が不十分となる。
【0023】
本発明における最大粗さ(Rt)、中心線平均粗さ(Ra)は、下記のJIS表面粗さ(B0601)により定義される。最大粗さ(Rt)とは粗さ曲線を基準長さLだけ抜き取り、中心線に平行な2直線で抜き取り部分を挟んだとき、この2直線の間隔を粗さ曲線の縦倍率の方向に測定して、この値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。中心線平均粗さ(Ra)とは粗さ曲線からその中心線の方向に測定長さLの部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心線をX軸、縦倍率の方向をY軸、粗さ曲線をy=f(x)で表したとき、次の式によって求められる値をマイクロメートル(μm)であらわしたものをいう。
【0024】
【数1】

【0025】
Rt、Raの測定方法としては、25℃、65%RH環境下で測定試料同士が重ね合わされない条件で24時間調湿した後、該環境下で測定する。ここで示す重ね合わされない条件とは、例えば、基材エッジ部分を高くした状態で巻き取る方法や基材と基材の間に紙をはさんで重ねる方法、厚紙等で枠を作製しその四隅を固定する方法のいずれかである。
【0026】
用いることのできる測定装置としては、例えば、WYKO社製RSTPLUS非接触三次元微小表面形状測定システム等を挙げることができる。
【0027】
基材のシンチレータ層と接触する接触面のRt、Raを本発明の範囲とするためには、例えば基材の表面に平均粒径の異なる2種類のマット剤を含む薄膜の表面層を形成し、2種のマット剤の平均粒径及び添加量を調整したり、基材として使用する支持体を共押し出し法により製造し、上層を平均粒径の異なる2種類のマット剤を含む薄膜の塗布層とし、2種のマット剤の平均粒径及び添加量を調整したり、基板のシンチレータ層を形成する側の表面にサンドブラスト処理を行う際の処理方法を調整することで容易に調整することができる。
【0028】
本発明においては、表面粗さをコントロールするためにマット剤として有機または無機の粉末を用いることが好ましい。
【0029】
本発明において用いられる粉末としては、モース硬度が5以上の粉末を用いることが好ましい。粉末としては公知の無機質粉末や有機質粉末を適宜選択して使用することができる。無機質粉末としては、例えば、酸化チタン、窒化ホウ素、SnO、SiO、Cr、α−Al、α−Fe、α−FeOOH、SiC、酸化セリウム、コランダム、人造ダイヤモンド、ザクロ石、ガーネット、マイカ、ケイ石、窒化ケイ素、炭化ケイ素等を挙げることができる。
【0030】
有機質粉末としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、テフロン(登録商標)等の粉末を挙げることができる。
【0031】
これらの中でも好ましいのは、SiO、酸化チタン、硫酸バリウム、α−Al、α−Fe、α−FeOOH、Cr、マイカ等の無機粉末等であり、その中でもSiO、α−Alが好ましく、特に好ましいのはSiOである。
【0032】
上記の有機または無機粉末は平均粒径が0.5〜10μmであることが好ましく、さらに好ましくは1.0〜8.0μmである。
【0033】
下記に示す代表的なCsIシンチレータは結晶性が非常に良いため、蒸着蒸気が付着した結晶核からまっすぐ柱状構造を形成する。基材の中心線平均粗さがRa≦0.1μmにすることで、根元から結晶性の良いシンチレータが形成できる。Raが0.1μmより粗い表面だと、結晶性が乱れ、根元が融着した結晶となり、鮮鋭性低下の要因になる。
【0034】
(基材)
本発明に係る基材は、少なくとも基板を有し、必要に応じその上に下述する反射層、中間層が設けられたものでもよい。本発明に係る接触面のRa、Rtを上記範囲とする上述の方法は、基板のみに行ってもよいし、反射層、中間層を設けたものに対して行ってもよい。
【0035】
即ち、例えば中間層を有する場合、中間層を設ける前に、基板にマット剤を含有する層を設け、その後中間層を設ける方法、または基板に中間層を設けた後に、マット剤を含有する層を設ける方法をとることができる。
【0036】
(基板)
基板は、シンチレータ層を担持可能な板状、フィルム体であり、X線等の放射線を入射線量に対し10%以上を透過させることが可能なものである。
【0037】
基板としては、厚さ50〜500μmの可とう性を有する高分子フィルムであることが好ましい。例えば、セルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム、炭素繊維強化樹脂シート等の高分子フィルム(プラスチックフィルム)などが挙げられる。
【0038】
ここで、「可とう性を有する基板」とは、120℃での弾性率(E120)が1000〜6000N/mmである基板をいい、かかる基板としてポリイミドまたはポリエチレンナフタレートを含有する高分子フィルムが好ましい。
【0039】
なお、「弾性率」とは、引張試験機を用い、JIS−C2318に準拠したサンプルの標線が示すひずみと、それに対応する応力が直線的な関係を示す領域において、ひずみ量に対する応力の傾きを求めたものである。これがヤング率と呼ばれる値であり、かかるヤング率を弾性率と定義する。
【0040】
本発明に用いられる基板は、上記のように120℃での弾性率(E120)が1000N/mm〜6000N/mmであることが好ましい。より好ましくは1200N/mm〜5000N/mmである。
【0041】
具体的には、ポリエチレンナフタレート(E120=4100N/mm)、ポリエチレンテレフタレート(E120=1500N/mm)、ポリブチレンナフタレート(E120=1600N/mm)、ポリカーボネート(E120=1700N/mm)、シンジオタクチックポリスチレン(E120=2200N/mm)、ポリエーテルイミド(E120=1900N/mm)、ポリアリレート(E120=1700N/mm)、ポリスルホン(E120=1800N/mm)、ポリエーテルスルホン(E120=1700N/mm)等からなる高分子フィルムが挙げられる。
【0042】
これらは単独で用いてもよく積層あるいは混合して用いてもよい。中でも、特に好ましい高分子フィルムとしては、上述のように、ポリイミドまたはポリエチレンナフタレートを含有する高分子フィルムが好ましい。
【0043】
(シンチレータ層)
本発明に係るシンチレータ層は、放射線の照射により、蛍光を発する蛍光体を含有する層であり、蒸着結晶からなる。
【0044】
本発明に係る賦活剤とは、蛍光体中に含有されることで、発光効率を上昇し得る元素である。賦活剤としては、タリウム、ナトリウム、ルビジウム等が挙げられるが、特にタリウムが好ましく用いられる。ヨウ化セシウム中に含有させるには、例えば、ヨウ化セシウムとタリウム化合物を含む蒸着原を加熱し、上記基材上に蒸着する方法により行うことができる。
【0045】
本発明に係る蒸着結晶とは、蛍光体母剤と、賦活剤を含む化合物とを、含有する蒸着原を加熱し、基材上に蒸着して形成された結晶である。
【0046】
また、蒸着結晶中の賦活剤の濃度としては、蛍光体母材に対して、発光効率の面から、0.001〜50モル%の範囲が好ましく、特に0.1〜20モル%の範囲が好ましい。蒸着結晶としては、柱状結晶であることが好ましい。
【0047】
なお、シンチレータ層(蛍光体層)の厚さは、100〜800μmであることが好ましく、120〜700μmであることが、輝度と鮮鋭性の特性をバランスよく得られる点からより好ましい。
【0048】
(反射層)
本発明においては、基板とシンチレータ層との間に反射層を有してもよい。
【0049】
反射層は、シンチレータ層で発せられた蛍光の基板方向に放射進行する電磁波を反射しうる層である。
【0050】
反射層としては、金属薄膜が好ましく用いられる。金属薄膜としては、Al、Ag、Cr、Cu、Ni、Ti、Mg、Rh、Pt及びAuからなる群の中の物質を含む材料からなる膜が好ましく用いられる。さらに、Cr膜上にAu膜を形成する等、金属薄膜を2層以上形成してもよい。
【0051】
反射層としては、上記のなかでも特にアルミニウムを含有する膜を用いる態様が好ましい態様である。
【0052】
反射層の厚さは、0.005〜0.3μm、より好ましくは0.01〜0.2μmであることが、発光光取り出し効率の観点から好ましい。
【0053】
(中間層)
本発明においては、さらに反射層とシンチレータ層の間に、中間層を有してもよい。
【0054】
中間層としては、例えばポリエステル樹脂、ポリアクリル酸共重合体、ポリアクリルアミドまたはこれらの誘導体及び部分加水分解物、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸エステル等のビニル重合体及びその共重合体、ロジン、シェラック等の天然物及びその誘導体などの樹脂を含有する層が挙げられる。
【0055】
(シンチレータプレート)
本発明に係るシンチレータプレートについて図1を参照して説明する。
【0056】
図1は、本発明に係るシンチレータプレートの例の断面図である。
【0057】
本発明に係るシンチレータプレート10は、図1に示すように基材8上にシンチレータ層2を備えるものであり、シンチレータ層2に放射線が照射されると、シンチレータは入射した放射線のエネルギーを吸収して、波長が300nmから800nmの電磁波、すなわち、可視光線を中心に紫外光から赤外光にわたる電磁波(光)を発光する。
【0058】
基材8は、基板1上に反射層4および中間層3を有している。
【0059】
以下、基材8上にシンチレータ層2を形成させる方法について説明する。
【0060】
シンチレータ層2は、蒸着法により形成される。蒸着法は基材8を公知の蒸着装置内に設置するとともに、蒸着源に例えば、蛍光体母材(例えばヨウ化セシウム)および賦活剤を含むシンチレータ層2の原材料を充填したのち、装置内を排気すると同時に窒素等の不活性なガスを導入口から導入して1.333Pa〜1.33×10−3Pa程度の真空とし、次いで、原材料を抵抗加熱法、エレクトロンビーム法などの方法で加熱蒸発させて基板1表面に蛍光体母材の蒸着結晶を堆積し、基材8上にシンチレータ層2が形成される。
【0061】
次に、図2を参照して、蒸着法を行う際に使用する蒸着装置の一例として、蒸着装置20について説明する。
【0062】
蒸着装置20には、真空ポンプ21と、真空ポンプ21の作動により内部が真空となる真空容器22とが備えられている。真空容器22の内部には、蒸着源として抵抗加熱ルツボ23が備えられており、この抵抗加熱ルツボ23の上方には回転機構24により回転可能に構成された基材8が基板ホルダ25を介して設置されている。また、抵抗加熱ルツボ23と、基材8との間には、必要に応じて抵抗加熱ルツボ23から蒸発する蛍光体の蒸気流を調節するためのスリットが設けられている。なお、基材8は、蒸着装置20を使用する際に基板ホルダ25に設置して使用するようになっている。
【実施例】
【0063】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0064】
下記の方法に従って実施例と比較例の放射線用シンチレータプレート101〜125を作製した。
(基材の作製)
125μmの厚さのポリイミド樹脂シートを基板として用い、この基板の上に、アルミニウムをスパッタリングして反射層(0.10μm)を形成した。その際、基板蒸着面側の表面粗さを調整することにより、表1に記載の粗さを有する基材1〜25を得た。
(シンチレータ層の作製)
ヨウ化セシウム(CsI)に添加剤としてTlを混合し、蒸着材料を得た。TlはCsIに対して0.3mol%の蒸着材料を作製した。蒸着材料を抵抗加熱ルツボに充填し、また回転する支持体ホルダに上記基材1を設置し、基材1と2個の蒸発源との間隔を400mmに調節した。
【0065】
続いて蒸着装置内を一旦排気した後に、Arガスを導入して0.1Paに真空度を調整した後、10rpmの速度で基板ホルダ25を回転しながら基板1の温度を200℃に保持した。次いで、蒸着材料が入っている抵抗加熱ルツボを加熱してシンチレータ用蛍光体を蒸着する。シンチレータ層(蛍光体層)の膜厚が300μmになったところで、蒸着を終了させシンチレータプレート試料101を得た。
【0066】
上記基材1に変えて、表1に記載の基材を用いた他は、シンチレータプレート試料101と同様にして、シンチレータプレート試料102〜125を得た。
「柱状結晶の結晶性の評価」
蛍光体層の透過型電子顕微鏡を使用した断層写真を撮影し、柱状結晶の結晶性について最も良好なレベルを5.0、最も悪いレベルを1.0とし、0.5刻みのランクで、目視で、柱状結晶の根元の部分の融着の状態、異常結晶成長の発生の状態を観察し、評価し、鮮鋭性評価の指標の一つとした。
「MTFの評価」
鉛製のMTFチャートを通して管電圧80kVpのX線をFPDの放射線入射面側に照射し、画像データを検出しハードディスクに記録した。その後、ハードディスク上の記録をコンピュータで分析して当該ハードディスクに記録されたX線像の変調伝達関数MTF(空間周波数1サイクル/mmにおけるMTF値)を鮮鋭性評価の指標の一つとした。表中、MTF値が高いほど鮮鋭性に優れていることを示す。MTFはModulation Transfer Functionの略号を示す。尚、試料101を100として、相対値で表した。
「接着性の評価」
蛍光体層(CsI:Tl)の表面にカッターで1cm角の碁盤目上の切れ込みを入れ、その上にセロハンテープを貼り付けた後に、剥離した。剥離した部分の面積を目視で評価し、最も剥離が少ないレベルを5.0、最も剥離が多いレベルを1.0とし、0.5刻みのランクで評価した。
【0067】
結果を表1に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
表1の結果から明らかなように、シンチレータ層と接触する接触面の中心線平均粗さ(Ra)が0.001≦Ra≦0.1μm、かつ、5≦Rt/Ra≦150である基材を使用することで結晶性が良く鮮鋭性に優れ、基材との接着性に優れたシンチレータ層を有するシンチレータプレートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】シンチレータプレートの断面図
【図2】蒸着装置の概略構成図
【符号の説明】
【0071】
1 基板
2 シンチレータ層(蛍光体層)
3 中間層
4 反射層
8 基材
10 シンチレータプレート
20 蒸着装置
21 真空ポンプ
22 真空容器
23 抵抗加熱ルツボ
24 回転機構
25 基板ホルダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に蒸着結晶からなるシンチレータ層を有するシンチレータプレートにおいて、該基材の該シンチレータ層と接触する接触面の中心線平均粗さ(Ra)が、0.001≦Ra≦0.1μmであり、該接触面の最大粗さ(Rt)と該Raが、5≦Rt/Ra≦150である関係を有することを特徴とするシンチレータプレート。
【請求項2】
前記蒸着結晶が柱状結晶であることを特徴とする請求項1に記載のシンチレータプレート。
【請求項3】
前記蒸着結晶が、ヨウ化セシウムと賦活剤を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のシンチレータプレート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−60414(P2010−60414A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−225954(P2008−225954)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】