説明

シートの薄膜形成装置および薄膜付きシートの製造方法

【課題】電気絶縁性シート、特にプラスチックフィルムの薄膜形成工程で発生する、ピンホールの影響を軽微にし、さらに熱変形や未蒸着部のシワの影響を軽微にする薄膜形成装置ならびに薄膜付きシートの製造方法を提供することである。
【解決手段】回転する円筒状シート案内面の周面に沿って搬送する電気絶縁性シート上に、微粒子発生源から飛来させた微粒子を堆積させ、薄膜を形成する薄膜付きシートの製造方法において、前記シート案内面と前記シート上に形成された前記薄膜との間に直列接続された抵抗を介して電圧を印加し、前記シートにピンホールが空いたことを検出した直後に前記抵抗を低減させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの薄膜形成装置および薄膜付きシートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラスチックフィルムに例示される電気絶縁性シート上に薄膜を形成することにより、フィルムコンデンサや磁気記録テープ、包装用フィルム等の素材となる金属蒸着フィルムが製造されている。この製造には、例えば真空槽内で巻状物のプラスチックフィルムを巻き出し、薄膜形成した後に再び巻き取る巻取式蒸着装置(例えば非特許文献1)が用いられる。
【0003】
その概要を図7、図8を用いて説明する。図7はプラスチックフィルムなどのシート上に連続的に薄膜を形成する薄膜形成装置の構成要素を示した図である。なお、この図7は主要部のみを示し、構造物を収納する真空チャンバや中間ロールは省略してある。また図8は、図7の右手から見た装置の概要構成図である。図7において、長尺の電気絶縁性シート1は、原反ロール体2から繰り出され、シートの走行方向に沿って回転する円筒状の金属製キャンの表面であるシート案内面3に中間ローラ4、5によって所要の巻き付け角で巻き付いた状態で搬送され、巻取ロール体6として巻き取られる。電気絶縁性シート1がシート案内面3上に搬送される際に、誘導加熱坩堝7の中にある蒸着材料8より蒸発した蒸気10がシート1上に付着し、図8に示すようにシート1上に薄膜13が形成される。なお蒸発には、例えば誘導加熱や抵抗加熱の原理を利用して蒸着材料を加熱する方式や、電子ビームを蒸着材料に照射して加熱する方式がある。またシート案内面3は主にシート1をシワなく搬送する役目と、シート1が受けた熱負荷を効率よく逃がす役目を持つ。このため例えば公知の熱媒体の循環による温度制御により、所要の温度に制御される。また特に円筒に限らず、ベルト体の上にシートを搬送する方式も見られる。
【0004】
ところが、シート案内面3上のシート1が受ける熱負荷によりシート1の温度が過度に上昇した部位が大きい場合や、シート1とシート案内面3が接触していない部分がある場合には、シート1が熱変形(熱負け)を起こしてしまうことがある。なおシート1が受ける主な熱負荷とは、この場合誘導加熱坩堝7等から受ける輻射熱や、蒸着された薄膜13から受ける凝縮熱が挙げられる。
【0005】
導電性の薄膜を形成する場合には、蒸着時にシート1の受けた熱を効率よくシート案内面3に逃がすため、シート1上に形成した薄膜13に接触した中間ローラ5を介して、直流電源14により薄膜13とシート案内面3の間に電位差を与え、薄膜13とシート案内面3との間に働く静電気力でシート1をシート案内面3に強く貼り付かせる技術(例えば特許文献1)が用いられる。このように薄膜13とシート案内面3との間に電位差を設ける場合、図8に示すように、マスク部材11の開口部12の幅は、薄膜13に電位をかけた場合でも、シート案内面3にまで蒸気10が付着して薄膜13とシート案内面3が電気的に短絡しないように、通常、少なくともシート幅よりも小さく設定する。
【0006】
この例ではシート案内面3と薄膜13との間に直流電源14を設け、両者の間に電位差を与えているが、いずれかを接地してもう一方にのみ電圧を印加する場合もある。またこの例ではシート案内面3に対し薄膜13の方が低い電位としているが、逆の場合もある。
【0007】
しかしながら、このように静電気力でシートをシート案内面に貼り付かせながら薄膜を形成する方法を特に5[μm]以下の薄い電気絶縁性シートに適用する場合に、いくつか問題がある。
【0008】
その一つに、蒸着中にシートに空くピンホールが原因となって、シートに熱負けを生じさせる問題である。基材である電気絶縁性シートにピンホールを引き起こしやすい欠陥部分が元々からあった場合や、蒸発源の突沸現象により蒸気に比べて大きな溶融物が蒸発源から飛来してシートに付着した場合に、局所的に電気絶縁性の劣る部分ができるが、薄膜とシート案内面との間に印加した電位差により、その局所部で絶縁破壊が生じ、ピンホールが発生することがある。ピンホールが発生すると、その部分で薄膜とシート案内面は電気的に短絡状態となり、火花放電を起こし、シートに熱的損傷が生じたり、あるいは薄膜が放電の火花の形状に類似した膜剥がれを形成することがある。さらにピンホール発生部を起点にシート破れを引き起こすこともある。シートに熱的損傷が生じた場合、その損傷部分は製品にならないばかりか、その部分が巻き取られた際の巻取ロールで巻き皺が発生し、損傷が生じなかった部分まで製品にはできなくなり、著しい歩留まりの低下となる。このような不具合を起こさないように、シート案内面と薄膜との間の電位差をできる限り小さくするが、小さすぎると薄膜とシート案内面との間に働く静電気力が弱くなり、シートはシート案内面に貼り付かなくなって、シートの熱変形(熱負け)が生じることがある。
【0009】
以上説明したシート案内面と薄膜との間に電位差を設けながら薄膜形成する方法において発生する不具合を解決するために、その不具合を防ぐ技術がいくつか提案されている。
【0010】
例えば特許文献2には、シート部分での絶縁破壊が起きにくくするため、シート案内面と薄膜との間に電位差を与える電気回路において10〜400[Ω]の固定値の電気抵抗を直列に接続することにより、絶縁破壊をもたらすような過大な電流を流さない工夫をした薄膜形成方法が開示されている。しかしながら厚みが5[μm]以下のシートに薄膜形成する場合、この方法でもピンホールが発生することがある。また、ピンホールやその周囲の膜剥がれ部も、厚みの厚いシートに比べ大きいものが多い。これは、特に薄いシートにおいてはシート厚み方向の絶縁破壊電圧が低下し、ピンホールが発生しやすく、損傷を受けやすいためである。そこで、さらに電流を制限するために抵抗値を上げると、ピンホールは発生するものの、電流を制限することにより絶縁破壊の進展が抑制され、ピンホールの大きさが小さくなる効果はある。
【0011】
しかしながら、この場合でも、ピンホール発生時に一時的なシートの熱変形が生じる問題が新たに発生した。本発明者らの知見によれば、この原因は以下のように説明できる。薄膜とシート案内面は電気絶縁性シートを挟んだ平行平板電極と考えられ、その電極間に形成される静電容量は厚みの薄いフィルムでは特に大きくなり、後述するように数[μF]になることもある。シートにピンホールが発生すると、その部分で薄膜とシート案内面は電気的に短絡状態となり、一時的にシート案内面と薄膜との電位差は低下する。ここで電位差を与える回路の電気抵抗を大きくすることにより、電流を制限してしまうことになり、シート案内面と薄膜の静電容量部に充電する速度が遅くなる。これによりシート案内面と薄膜との間の電位差は暫く低い状態が続いてしまうため、シートの熱を逃がすための充分な冷却効果が得られず、シートに一時的に熱変形が生じてしまうのである。従って特許文献2の方法では、ピンホールの抑制とシートの熱変形の抑制を両立するための抵抗値の最適範囲が見つからない場合がある。
【0012】
特許文献3には、シート案内面の周囲に絶縁体を被覆し、シート案内面と薄膜との間に電圧を印加する方法が開示されている。この方法によりシートにピンホールが空きにくくなるばかりか、もしシートにピンホールが空いた場合でも、薄膜とシート案内面との短絡が起こらないため両者間の電位差は維持され、シートの熱変形も生じないとされる。しかしながら、シート案内面上に被覆した絶縁体の損傷に注意を要する。シート案内面には蒸着粒子の回り込みや、シート破れが発生したときの蒸着粒子の付着など、汚れやすい部位であり定期的に清掃や研磨が必要であるが、その清掃や研磨時に絶縁体を損傷しないよう細心の注意を払う必要がある。万一絶縁体に傷がついて内層の金属部分が局所的に剥き出しになった場合、その傷の部分でシートが蒸着される際にシート案内面と薄膜との間で絶縁破壊が起きやすくなるため、再被覆を余儀なくされる。また、絶縁体層の厚みによりシート案内面と薄膜との距離が大きくなった分、シート案内面と薄膜との間に同じ静電気力を発生させるためには、その厚みの増大に比例してシート案内面と薄膜との間の印加電圧を大きくする必要がある。この場合、シート案内面と薄膜との間だけでなく、他の接地導電体との放電を起こすことがあり、電圧が不安定になってシートに熱損傷が発生する場合もある。したがって、この構成だけでは満足な結果を得られるとは限らない。
【0013】
また、シート案内面と薄膜との間に直流電源を介して両者の間に電位差を設ける方法以外にシートの受けた熱を効率よくシート案内面に逃がす方法として、薄膜の形成の前にシートを帯電させ、その帯電により働く静電気力でシートをシート案内面に強く貼り付かせる技術(例えば特許文献4)が知られている。この方法について図9に例示して説明する。図9はプラスチックフィルムなどのシート上に連続的に薄膜を形成する薄膜形成装置の構成要素を示した図である。なお、図7と同一または同等の機能を有する構成要素には同一番号を付け、詳細な説明は省略する。図7に記載した例との大きな相違点は、薄膜を形成する前のシート1の表面に、荷電粒子源22により荷電粒子23を照射し、シート1の表面を帯電させている点である。具体的な荷電粒子源22は電子ビーム照射装置やイオンビーム照射装置などが例示される。このようにシート1の表面を帯電させることにより、シート1とシート案内面3との間で静電気力が働き、両者が強く貼りつき、薄膜形成で受けた熱をシート案内面3に逃がす効果がある。しかしながらこの方法では、導電性の薄膜13を形成したとき、シート1の帯電電荷は導電性薄膜13を介して漏洩してしまうため、特に薄膜形成された部位におけるシート1とシート案内面3との間の貼りつきは充分ではなく、シート1の熱変形を起こす場合があった。
【0014】
そのため、シート案内面と薄膜との間に直流電源を介して両者の間に電位差を設ける方法と、薄膜の形成の前にシートを帯電させる方法とを併用することにより、シートとシート案内面との充分な貼りつきを確保する技術が知られている。(例えば特許文献5,6) しかしながらこの方法においても、特に厚みの薄いシートの薄膜形成において、前述のようにピンホールの発生や、それに伴う一時的なシートの熱変形が生じる問題は解消できない。
【特許文献1】特開昭59−147023号公報
【特許文献2】特開昭61−30669号公報
【特許文献3】特開昭62−56567号公報
【特許文献4】特開平2−239428号公報
【特許文献5】特開平3−20466号公報
【特許文献6】特開2005−146401号公報
【非特許文献1】伊保内賢他著、「ポリマーフィルムと機能性膜」、技報堂出版、1991年4月発行、p198〜203
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
以上説明したように従来技術では、シート案内面と薄膜との間に電位差を設けながら薄膜形成する方法において発生する不具合を解決することは困難であった。そこで本発明者らは、上記のような従来技術の問題点に鑑み、特に厚みの薄いシートの薄膜形成においてピンホールの大きさを小さく保ち、シートの熱変形を発生しにくい薄膜形成装置および薄膜付きシートの製造方法ならびにピンホールや熱変形が問題になりにくい金属薄膜つきフィルムを提供することを検討した。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために本発明によれば、以下に示すような薄膜形成装置が提供される。すなわち第1の発明として、シートと接触しながら前記シートを搬送するシート案内面を有し、前記シート案内面の運動に伴って前記シートを搬送する搬送手段と、前記シート案内面上の前記シートに向かって微粒子を飛散させて前記シート上に薄膜を形成する微粒子発生源と、前記シートに形成された前記薄膜と前記シート案内面との間に所定の電気抵抗を介して電位差を発生させる電位差発生手段とを備えるシートの薄膜形成装置であって、前記電気抵抗は、少なくとも2種類の抵抗値の状態をとりうるものであり、前記電気抵抗の前記抵抗値の状態を変化させる抵抗値変更手段を備えたことを特徴とするシートの薄膜形成装置が提供される。
【0017】
また、本発明のさらに好ましい実施形態として、前記抵抗値変更手段は、前記薄膜と前記シート案内面との間の前記電位差の絶対値が所定の値以下になったときに、前記電気抵抗の抵抗値をそれ以前より低い抵抗値に変更するものであるシートの薄膜形成装置が提供される。
【0018】
また、第2の発明として、シート案内面に接触しながら搬送されている電気絶縁性シート上に、微粒子発生源から飛来させた微粒子を堆積させ、導電性の薄膜を形成する薄膜付きシートの製造方法であって、前記シート案内面と前記シート上に形成された前記薄膜との間に所定の電気抵抗を有する電源を用いて電位差を発生させ、前記シートにピンホールが形成されたことを検出したときに前記電気抵抗を低減させることを特徴とする薄膜付きシートの製造方法が提供される。
【0019】
また、本発明のさらに好ましい実施形態として以下の各発明が提供される。
【0020】
それは、前記薄膜から見て前記シート案内面の方が正電位になるように、前記シート案内面と前記薄膜との間に電位差を印加する薄膜付きシートの製造方法である。
【0021】
また、前記シート案内面と前記薄膜との間に印加する電位差を、前記シートの厚み1[μm]あたり20[V]以上30[V]以下とする薄膜付きシートの製造方法である。
【0022】
あるいは、前記薄膜から前記シート案内面に至る電気回路の時定数を、定常的な薄膜形成時には0.01[s]以上1[s]以下とし、前記ピンホールを検出した後所定の時間の間0.01[s]以下になるよう前記電気抵抗を切り替える薄膜付きシートの製造方法である。
【0023】
あるいは、前記薄膜と前記シート案内面との間に印加した電位差の変化を検出することにより前記ピンホールの発生を検出することにより前記ピンホールの発生を検出する薄膜付きシートの製造方法である。
【0024】
あるいは、前記ピンホールを検出してから、50[μs]から1[ms]の間に時定数が0.01[s]以下になるように前記電気抵抗を切り替える薄膜付きシートの製造方法である。
【0025】
あるいは、前記シートが前記シート案内面に接触しており、かつ前記シートに薄膜の形成する部位の前記搬送方向の上流において、前記シートを帯電させることを特徴とする薄膜付きシートの製造方法である。
【0026】
あるいは、前記帯電は、荷電粒子を前記シートに対して照射することによりおこなうことを特徴とする薄膜付きシートの製造方法である。
【0027】
あるいは、前記帯電を行う部位における前記シート案内面の表面における電界の方向が、前記荷電粒子を前記シート案内面に引き寄せる方向となるように前記荷電粒子を照射することを特徴とする薄膜付きシートの製造方法である。
【0028】
さらに、金属薄膜つきフィルムであって、前記金属薄膜つきフィルムに含まれる連続した100[m2]以上の面積を有する矩形領域であって、前記領域に含まれるすべてのピンホールが直径0.3[mm]以下であり、かつ該ピンホールの周囲の膜剥がれ部の直径が0.8[mm]以上である領域を1[個]以上含むことを特徴とする、金属薄膜つきフィルムである。
【0029】
本発明が好ましく適用される電気絶縁性シートとして、代表的なものには、プラスチックフィルムや紙等のシートや枚葉体がある。特に電気絶縁性の高いプラスチックフィルムが本発明を適用するには好適である。プラスチックフィルムの材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類や、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、アラミド、ナイロンなどの高分子プラスチックフィルムが例示できる。また、プラスチックフィルムは単層でもよく、また2層以上の積層体フィルムでもよい。
【0030】
これらのなかでも、特に厚みの薄いフィルム、具体的には厚みが5[μm]以下のフィルムの方が、フィルム厚み方向の絶縁破壊電圧が小さいため、本発明の課題であるピンホールが発生しやすい。特にコンデンサ用の金属蒸着フィルムは、前述のような薄いフィルムを使用する場合が多く、また蒸着フィルムに発生するピンホールはコンデンサ素子における2電極間の短絡現象につながることがあるため、ピンホールの大きさや発生頻度、ピンホールの周囲の蒸着膜の剥がれ状態などを適度な範囲に調整することが好ましい。これらの点でコンデンサ用の金属蒸着フィルムは本発明の対象として好適である。
【0031】
本発明の薄膜形成方法としては、基材の電気絶縁性シートに与える熱負荷の大きい、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、CVD法が挙げられる。中でも特に真空蒸着法は、成膜速度が数百[nm/s]と高く、その分シート搬送速度も数百[m/分]と速いため、シートに与える熱負荷やシートの冷却が難しいことなどから、本発明の対象としては好適である。
【0032】
本発明において「微粒子」とは、前述の薄膜形成方法においてシート上に薄膜を形成する際にシート上に到来し付着する薄膜材料をいう。例えば真空蒸着法においては、微粒子発生源、いわゆる蒸発源である坩堝で加熱され蒸発した薄膜材料の蒸気粒子をいう。真空蒸着法の蒸発源としては、誘導加熱方式の他、抵抗加熱方式、電子ビーム方式などあるが、いずれでも適用可能である。
【0033】
本発明において「シート案内面」とは、前述の薄膜形成方法においてシート上に薄膜を形成する際に、シートの薄膜形成面の反対面に接触しながらシートを搬送する薄膜形成装置の構成要素をいう。この「シート案内面」は主にシートをシワなく搬送する役目と、シートが受けた熱を効率よく逃がす役目を持つ。代表的なものとしては、図7、図8に示すように円筒形状のものでこの軸を中心に回転しながらシートを搬送するものがある。また特に円筒形状に限らず、ベルト体の上にシートを搬送する方式のものも知られているが、本発明においてはいずれのものでも有効である。安定した電位差を薄膜との間に形成するため、シート案内面の表面またはその近傍は、導電性を有しているのが好ましい。また、導電性の基材やドラムに絶縁性材料の薄膜が形成されているものであってもかまわない。
【0034】
本発明における薄膜形成材料としては、薄膜とシート案内面との間に電位差を設けるため、少なくとも薄膜を形成した状態において導電体である必要があり、具体的には金属または金属アロイ、金属化合物が最適である。具体的には単体金属としては、Al、Cu、Zn、Co、Feが例示される。また、金属アロイとしては、Al−Zn、Al−Cu、Co−Cr、などが挙げられ、さらに金属化合物としては、AlOx、CuOx、ZnS、SiOxなどが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
また、本発明において、「時定数」とは、薄膜とシート案内面が形成する静電容量をC[F]、薄膜とシート案内面との間に電位差を設けるための直流電源とシート案内面との間の電気抵抗値をR[Ω]としたときに、以下の式(1)で表される時間をいう。
【0036】
(時定数)=C×R [s] (1)
ここで挙げられた静電容量C[F]の算出方法について説明する。シートの比誘電率をε、薄膜が形成されているシートにおいてシート案内面と接触している部分のシート搬送方向の距離をL[m]、シートの上に薄膜が形成されている幅をW[m]、シートの厚みをt[m]、真空の誘電率をε[F/m]とすると、前述の静電容量C[F]は式(2)で算出できる。
【0037】
C=εεLW/t [F] (2)
ここでL[m]はシート上で薄膜が形成され始める点(以後「薄膜形成開始点」と呼ぶ)からシートがシート案内面から剥離する点(以後「剥離点」と呼ぶ)までの距離[m]をいう。シートに既に導電性の薄膜が形成済みであり、さらにその薄膜形成面に重ねて薄膜を形成する場合には、L[m]はシートがシート案内面に接触し始める点から剥離点までのシート上の距離をいう。
【0038】
また、本発明において「ピンホールの直径」とは、シート上に形成された単一のピンホールを全て包含するように描いた最小外接円の直径をいう。また本発明における「ピンホールの周囲の膜剥がれ部の直径」とは、単一のピンホールの周囲に発生する薄膜剥がれ部を全て包含するように描いた最小外接円の直径をいう。なお、外接円内部の膜剥がれが起こっていない部位は周囲の正常金属薄膜部とは狭幅のくびれ部でつながっているだけであり、放電電流が流れた際には、そのくびれ部がジュール熱で切れる(ヒューズ機能)ことにより、周囲の正常金属薄膜部の充電電荷が放出されることはほとんどない場合が少なくない。そのため外接円内部の金属薄膜部は実質的に無害であり、上記のとおり最小外接円で定義された直径に重要な意味があるのである。
【0039】
また、本発明において、「所定の時間」とは、所定のルールに従って定められた長さの時間をいう。たとえば、ある現象の発生時刻を基点としてあらかじめ定められた、10[s]といった具体的な長さの時間が経過するまでの時間でもよいし、ある現象を基点として、電位のような物理量が特定の値になるまでの時間が経過するまでの時間であってもよい。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、後述の実施例と比較例との対比からも明らかなように、薄膜形成中に電気絶縁性シートにピンホールが発生した場合でもピンホールの大きさを後工程で問題にならないレベルまで小さく保ち、シートの熱変形を発生させにくい薄膜形成装置および薄膜付きシートの製造方法ならびにピンホールや熱変形が問題になりにくい金属薄膜つきフィルムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明の最良の実施形態の例を巻取式蒸着装置に適用した場合を例にとって、図面を参照しながら説明する。
【0042】
図1は本発明を巻取式蒸着装置に適用した第1の実施形態の概略断面図である。この図1は主要部のみを示し、構造物を収納する真空チャンバや中間ロールは省略してある。なお、従来例と同一または同等の機能を有する構成要素には同一番号を付け、詳細な説明を省略する。
【0043】
図7に記載した先行技術の装置との大きな相違点は、図1に示すように、第1抵抗(高抵抗)15と第2抵抗(低抵抗)16を設け、直流電源14とシート案内面3との間に並列に接続する点である。
【0044】
なお直流電源14の極性は、図1に示されるように接続するとは限らず、逆極性でもよいし、場合によっては極性の切り換えが可能な電源を用いてもよい。
【0045】
正常に蒸着されているときは、第1抵抗15のみを介して、シート案内面3と薄膜13との間に電圧を印加する。第1抵抗15には、過大な電流が流れないようにすることにより、蒸着中にシート案内面3上のフィルム1にピンホールが発生した場合でもそのピンホールの大きさを抑制する効果を持たせる。ここでピンホールは、薄膜13とシート案内面3との間で放電が起こり、薄膜13とシート案内面3との間で形成される容量結合部に充電されていた電荷が放出されることにより発生するが、その充電電荷が放出されて薄膜13とシート案内面3との電位差がある値よりも小さくなれば放電現象は止まる。しかし第1抵抗の抵抗値が小さい、あるいは直流電源14とシート案内面3が直接接続されていると、薄膜13とシート案内面3との間で放電が起こり、薄膜13とシート案内面3との間に充電されていた電荷が放出される段階においても、直流電源14から新たな電荷が供給され、その容量結合部に充電され続けるため、放電がなかなか止まらない状態となる。その結果ピンホールの大きさが過大に大きくなって、品質上の欠点となる恐れがある。
【0046】
このため第1抵抗15では、ピンホールが発生した場合に、その容量結合部に充電されている電荷を速やかに放出させるため、その容量結合部への電荷の供給(つまり電流)を抑制する効果を持たせる。このため、第1抵抗15には比較的大きな抵抗値を選択する。本発明者の知見によれば、第1抵抗15の抵抗値が充分高ければ、前述の放電持続時間はおよそ数十[μs]である。
【0047】
一方前述の放電が止まった直後は、薄膜13とシート案内面3との間の電位差は低い状態にある。このまま電位差が低い状態が暫く続けば、シート1とシート案内面3との間の静電気力は弱まり、シートに熱負けが発生してしまう。従って、放電現象が停止した直後は、薄膜13とシート案内面3との電位差を急峻に回復させる必要がある。このため図1のように比較的抵抗値の小さな第2抵抗16を設け、放電現象が止まった直後に第2抵抗16を通して前述の容量結合部に急速に充電することにより、電位差を回復させることができる。
【0048】
第1抵抗15と第2抵抗16、および電圧印加経路を切り替えるためのスイッチ17の回路構成は、特に図1の構成に限ったものではない。図2から図4に示す回路構成においても同様の効果を作用させることが可能であるし、また他の回路構成も考えられる。また、以上の例ではいずれも電圧印加経路を2種類つなぎかえることで直流電源14と直列に接続された総抵抗値を2段階に変更するよう構成してあるが、電圧印加経路は図7に示したものと同様に単一としておき、抵抗15として抵抗値を変更可能なものを用いてもよい。また、抵抗値は2段階である必要はなく、必要に応じてもっと多段階でもよく、連続的に調整できるものを用いてもよい。また、ここで電気抵抗は、電源が直流である場合には実抵抗性のものであるのが好ましいが、交流電源を用いる場合などには容量性または誘導性の成分を持つ複素抵抗であってもよい。
【0049】
抵抗値を最適化する方法としては、薄膜13とシート案内面3が形成する容量結合部の静電容量と、電圧印加回路に挿入される抵抗値の積で算出される時定数[s]の値がある範囲になるように第1抵抗および第2抵抗の抵抗値を選定すればよい。
【0050】
図1において薄膜13とシート案内面3が形成する静電容量C[F]は、シート案内面3上でシート1上に薄膜が形成され始める薄膜形成開始点31からシート1がシート案内面3から離れ始める剥離点32までのシート1上の距離をL[m]、シート1上に薄膜が形成されている幅をW[m]、シート1の厚みをt[m]、シート1の比誘電率をε、真空の誘電率をε[F/m]として、前述の式(2)で算出できる。また、シート1に既に導電性の薄膜が形成済みであり、さらにその薄膜形成面に重ねて薄膜を形成する場合には、前述のL[m]はシート1がシート案内面3に接触し始める巻付点33から剥離点32までのシート1上の距離をいう。
【0051】
時定数[s]は、直流電源14の印加電圧をV[V]、静電容量をC[F]としたとき、この静電容量C[F]に蓄積されている電荷量が0[C]の状態から、C×V[C]の式で計算される電荷量の(1−1/e)倍まで充電されるのに要する時間[s]を意味する。ここでeは自然対数の底である。従って、時定数はピンホールが発生して薄膜13とシート案内面3との電位差が低下したときに、両者間に再充電する速さの指標となる。発明者らは鋭意実験を重ねた結果、ピンホールが発生していない定常時においては、時定数が0.01[s]以上1[s]以下の範囲になるように抵抗値を選択することが、またピンホール発生直後に電位差を急峻に回復する際においては0.01[s]以下になるよう抵抗値を選択することが、最適条件であることを突き止めた。この条件に設定することにより、例えば図1においては、ピンホールを検出後、第2抵抗から電圧印加するようにスイッチを切り替えてから、0.01[s]以内に電圧を相当回復させることができる。たとえば、300[m/分]の高速条件下で走行中のシートに薄膜形成する場合、0.01[s]の間にシートが搬送される距離は5[cm]のみであり、その間でシートにシワを発生させる間もなく、シート1とシート案内面3との貼り付き効果が回復すると推定できる。上記のような状況を作るために、正常時の抵抗値とピンホール発生後の抵抗値の比は、10倍以上1000倍以下程度とするのがよい。
【0052】
ピンホールの発生を検出する手段としては、シート案内面3と薄膜13との間の電位差18を検出する方法が最も簡易で適している。前述のように、ピンホールが発生すると、シート案内面3と薄膜13とは短絡状態となり電位差は急峻に減衰する。従ってこの電位差の低下を検出するのが最も簡単な方法である。具体的には予めピンホールの発生を判断するための電位差のしきい値を設定しておき、電位差18がその電圧しきい値以下になるのを検出することによりピンホールの発生を検出することができる。この場合のしきい値は直流電源14の出力電圧19に対し、30〜90%の値が好ましい。30%よりも小さい場合、ピンホール発生時の電位差18の低下がその30%に至らない場合もあり、ピンホールの検出漏れが起こりうる。また90%よりも大きい場合、電気的ノイズなどピンホールでない場合で電位差18が低下する場合も検出してしまう不具合が想定される。
【0053】
さらに好適なしきい値の設定方法として、直流電源14の出力電圧19およびシート案内面3と薄膜13との間の電位差18との差分または比を検出する方法がある。この方法の方が、シート種類や厚みによって種々に異なる印加電圧条件においても、同じしきい値条件でピンホールの発生を判断することができる。
【0054】
また、ピンホールの発生を検出してから電圧印加経路を切り替えるまでの時間を調整することが好ましい。前述のようにピンホールは薄膜13とシート案内面3との間の絶縁破壊現象であり、この絶縁破壊現象が進行している間は第1抵抗(高抵抗)を介して電圧印加した方がよい。絶縁破壊の継続時間は数十[μs]であることから、前記方法でピンホールを検出してから数十[μs]経過後に第2抵抗(低抵抗)を介して電圧印加するように切り替える方法が好ましい。但しこの切り替えが遅れると、シートとシート案内面3との間の電位差低減による熱負けが顕著に現れてしまう。このため具体的にはピンホールの検出から50[μs]以上1[ms]以下の時間経過後に第2抵抗に切り換えることが好適である。また切替のためのスイッチ17は高速で応答する必要があり、例えばソリッドステートリレーやリードリレーを用いたスイッチを使用することが好ましい。使用するスイッチの応答時間が前述のように50[μs]以上1[ms]以下の場合には、電位が所定電位まで下がったのを検出して直ちに第2抵抗に切り替える方法でもよい。
【0055】
ピンホールの発生を検出した後、第2抵抗を介して電圧を印加する経路に切り替えた後、シート案内面3と薄膜13との間の電位差がピンホール発生前の値に回復した場合、再び第1抵抗15を介して電圧を印加する経路に戻すのが好ましい。第2抵抗を介した電圧印加回路のままであると、次にピンホールが発生したときに、前述の静電容量に過大な電流を流すことになり、ピンホールの大きさが大きくなってしまう恐れがある。好ましい実施形態としては、ピンホール検出と同じく、シート案内面3と薄膜13の間の電位差を監視し、あるしきい値以上になったときに、第2抵抗を介した電圧印加回路から、第1抵抗を介した電圧印加回路に戻す方法が挙げられる。この場合のしきい値は直流電源14の出力電圧19に対し、60〜95%の値が好ましい。60%よりも小さい場合、シート案内面3と薄膜13の間の電位差がまだ充分回復しておらず、シートが熱変形する恐れがある。また95%以上の場合は、第2抵抗16を介した電圧印加回路を使用している時間が長く、その間に次のピンホールが発生して、ピンホールを大きくしてしまう危惧がある。
【0056】
また、薄膜13とシート案内面3の電位差の極性により、ピンホールの穴の大きさおよびピンホール周囲の薄膜13の膜剥がれの模様に違いが現れる。薄膜13の電位から見てシート案内面3の電位を正にした場合のピンホール発生箇所、および薄膜13の電位から見てシート案内面3の電位を負にした場合の典型的なピンホール発生箇所の模式図をそれぞれ図5および図6に示す。図5および図6には、シートの表裏を貫通しているピンホール部41、ピンホール部41の周囲で薄膜13の膜剥がれが発生している膜剥がれ部42、そしてピンホールおよび膜剥がれのいずれも発生していない正常部43を示している。薄膜13の電位から見てシート案内面3の電位を正にした場合の電位の関係、つまり図5に示したピンホール発生箇所の方が、ピンホール部41の直径が小さく、またピンホール周囲の膜剥がれ部42が比較的広範囲に及ぶ。特に対象物がコンデンサ用の金属蒸着フィルムの場合、つまり蒸着フィルムの厚さ方向に電圧を印加して使用する用途の場合、図5のように広範囲に膜が剥がれた方が、ピンホール部41で再度絶縁破壊現象を起こす確率が低くなる利点がある。特にピンホール周囲の膜剥がれ部42が広範囲に及ぶことにより、薄膜面とシート反対面との電気的な絶縁性が確保されるためである。
【0057】
プラスチックフィルムの場合一般に、1[μm]の厚みあたりの絶縁破壊電圧として200[V]以上が期待される。しかしながらフィルムにピンホールが空いた場合、そのピンホール部分で絶縁破壊が発生しやすくなる。これは大気中の絶縁破壊電圧が1[μm]の距離あたり約3[V]と、プラスチックフィルムと比較して格段に低いためである。そこで、ピンホール部の周囲に前述のような膜剥がれ部が存在する場合は、ピンホール部と金属薄膜との間の電気絶縁距離を大きくする効果があり、特にコンデンサなどの電気的用途で金属蒸着フィルムを使用する場合に好適である。発明者らの知見によれば、ピンホールの直径とピンホール周囲の膜剥がれ部の直径との差が0.5[mm]以上あれば、その蒸着フィルムは500[V]以上の絶縁耐圧の性能を保つことができ、ピンホールがない蒸着フィルムと比べ遜色ない絶縁性能を示すことが可能となる。但しピンホール自体が大きくなってしまうと、後の搬送工程で、そのピンホールを起点としてフィルムが破れる恐れがある。発明者らの知見によれば、このピンホールの直径は0.3[mm]に留めることが好ましい。
【0058】
シート案内面3と薄膜13との間に印加する電圧の絶対値は、シート1の厚み1[μm]あたり20〜30[V]の電圧を印加することが好ましい。これは、シート厚みや材質(誘電率)によらず、薄膜13とシート案内面3との間の静電気力をある範囲内に調整することと同じことを意味する。この値が20[V]よりも小さい場合は、静電気力が弱く、シート1に熱変形が生じる恐れがある。また30[V]を越える場合、薄膜形成中にシートの厚み方向で絶縁破壊を起こす確率が高くなる。また、大きなピンホールが発生することがある。具体的には上記のように、シート厚み1[μm]あたり20〜30[V]の電圧を印加する場合、薄膜形成中に発生するピンホールの直径は0.3[mm]以下であるが、30[V]を越える場合には、ピンホールの直径が0.3[mm]以上に及ぶものが現れることがある。
【0059】
また、上記構成に加え、電子ビーム照射装置やイオンビーム照射装置などで例示される荷電粒子源によって、薄膜形成前のシートを帯電させ、その帯電による静電気力でシートをシート案内面に貼りつかせる方法とを併用することも有効である。この構成について図10に例を示して説明する。
【0060】
図10は本発明の第2の実施態様を巻取式蒸着装置に適用した概略断面図である。この図10は主要部のみを示し、構造物を収納する真空チャンバや中間ロールは省略してある。なお、第1の実施形態と同一または同等の機能を有する構成要素には同一番号を付け、詳細な説明を省略する。シート案内面3とシート1とが接触しており、かつ、薄膜形成開始点31よりも搬送方向上流にある部位におけるシート1に対して、荷電粒子源22から荷電粒子23を照射し、シート1を帯電させる。この帯電によりシート1は薄膜形成前の巻付点33から薄膜形成開始点31の範囲においてもシート案内面3に貼りつく。また薄膜形成開始点31より下流では、直流電源14により薄膜13とシート案内面3との間に与えられた電位差により、薄膜13とシート案内面3との間に働く静電気力でシート1がシート案内面3に貼りつく。この両者の貼りつく効果は互いに補完し合うため、直流電源14の電圧は、図1の例のときに比べてある程度低くても同等の効果が得られる。これによって薄膜形成中にシート1の厚み方向で絶縁破壊を起こす確率をより低くすることができる。
【0061】
本実施形態において好ましく用いられる荷電粒子源は、大気中および/または真空中で電気絶縁性シートに帯電を付与できる荷電粒子を付与できる効果を持つものであり、例えば真空中で比較的安定にシートに対して荷電粒子を照射できる電子ビーム照射装置やイオンビーム照射装置を用いる方法が例示できる。特に電子ビーム照射装置は、荷電粒子である電子が熱フィラメント等により生成しやすく、また粒子の質量が軽いために照射位置を制御しやすい利点がある。電子ビーム照射装置は、小型であり、広幅のシートにも照射できる偏向型電子ビーム照射装置が適している。
【0062】
図11は本発明の第2の実施態様に適用可能な偏向型電子ビーム照射装置の概略構成図である。この図11は主要構成要素のみを示し、構造物を収納する筐体や支持部材、電気部品は省略してある。荷電粒子である電子は陰極用交流電源56により加熱された陰極51(フィラメント電極)より熱電子として放出される。放出された電子は、加速用直流電源57で陰極51との間に電位差を印加された第1陽極52、第2陽極53で加速される。さらにX軸用偏向コイル54、Y軸用偏向コイル55で電子の進行方向を制御した後に電子ビーム照射装置より図中の矢印60の方向へ放出される。陰極51からの電子の発生量は、陰極51の形状や材質、また陰極用交流電源56の電流(実施例ではフィラメント電流と呼ぶ)によって調整できる。
【0063】
また、放出された電子をシートに帯電させる効率は、陰極と陽極との間の電位差すなわち陰極51と第2陽極53との間に印加された加速用直流電源57の電圧(以後、加速電圧と呼ぶ)に影響される。シートを帯電させやすい加速電圧は、シートの種類や厚みにもよるが、概ね500[V]以上でかつ5[kV]以下が好ましい。5[kV]を越える場合はシートに電子を深く打ち込みすぎてシートを通過してしまうため、逆に帯電させることができないことがある。
【0064】
帯電させるシートに対する電子の照射範囲はX軸用偏向コイル54およびY軸用偏向コイル55の形状、ならびにX軸偏向用交流電源58とY軸偏向用交流電源59の電流に影響される。シートに対する電子の照射範囲を調整するには、各偏向用交流電源58および59の電流を調整することによりできる。またシートの帯電の均一性は、各偏向用交流電源の周波数に影響される。特にシートがシート案内面3に接触する範囲において均一な密着力を得るには、シートの幅方向(シートの搬送方向および法線方向にそれぞれ直交する方向)における帯電の分布を均一にさせることが望ましい。このため、例えば、図11のY軸をシートの搬送方向と同じ方向に沿うように、X軸をシートの幅方向に沿うように電子ビーム照射装置を配置する場合、シートを均一に帯電させるためには、X軸方向の周波数を高くすることによって、均一性の良好な帯電分布が得られやすい。シートの搬送速度が数百[m/分]で搬送される場合、シートが少なくとも数[cm]進む毎にシートの幅方向に1スキャン以上走査した方がよく、この場合、X軸方向の交流周波数は100[Hz]以上が好ましい。以後、シートの幅方向に沿う方向の偏向コイルの交流周波数をスキャン周波数と呼ぶ。
【0065】
電子ビーム照射装置やイオンビーム照射装置など、正または負のいずれかの極性の荷電粒子を主に照射する場合は、帯電を行う部位におけるシート案内面の表面における電界の方向が、荷電粒子をシート案内面に引き寄せる方向となるようにすることが好ましい。これにより、荷電粒子をシート表面に引き寄せることが可能になり、帯電効果を上げ、シートとシート案内面との貼り付け効果を増すことができる。荷電粒子をシート案内面に引き寄せる電界を形成する方法として、例えば、荷電粒子照射装置の照射口の部位の電位とシート案内面の電位とで形成する電界が、荷電粒子をシート案内面引き寄せる電界の向きになるように両者の電位を設定する方法が例示できる。例えば、荷電粒子源として図11に示すような電子ビーム照射装置を図10の一実施態様に示す薄膜形成装置の荷電粒子源22として用いた場合、第2陽極53の電位とシート案内面3の電位とで形成される電界が、荷電粒子23である電子をシート1上に引き寄せる向きであることが好ましい。図11に示す電子ビーム照射装置の場合、第2陽極53が接地されているので、シート案内面3が接地電位に対して正の電位となるように、薄膜13とシート案内面3との間に電圧を印加すればよい。また図10に示す例の場合、薄膜における電位が接地電位であるから、シート案内面−薄膜間電位差18を測定することにより、シート案内面3の電位を知ることができる。
【0066】
荷電粒子源を用いてシートを帯電させた場合、薄膜が形成された後のシート内に帯電が残る場合があり、この帯電がシートの搬送性や薄膜形成付きシートの品質に悪影響を与える場合がある。そのため、薄膜形成後からフィルムが巻き取られる前の間でシートを除電することが好ましい。シートの除電方法については、真空中で電気絶縁性シートを除電する方法として公知であるプラズマ放電を用いる方法や強制的にシートに向けてガスを照射する方法が知られているが、いずれでもよい。
【0067】
また荷電粒子源を用いる場合には、荷電粒子源により荷電粒子をシートに付与する空間と、薄膜が形成される空間とを隔離した方が好ましい。これは、荷電粒子源から照射した荷電粒子が、電位差を設けている薄膜またはシート案内面にも照射された場合、薄膜とシート案内面との間の電位差が安定に保てないからである。具体的には図10に示すように、荷電粒子源22でシート1に荷電粒子23を照射する空間を隔壁24で区画することが好ましい。この場合、隔壁24は可動部であるシート案内面3やシート1と接触することは避けるのが好ましいが、その場合の隔壁24とシート案内面との間の間隙26は1〜10[mm]の範囲内であることが望ましい。またさらに好ましくは、この隔壁24で区画された空間を、荷電粒子源22から荷電粒子23を照射するに最適な真空圧力に保つような真空排気装置を設けてもよい。なお、隔壁24は、導電性材料で形成されており、荷電粒子照射装置の照射口の部位の電位と同電位にあるよう構成されているの好ましい。
【0068】
また、照射した荷電粒子23が薄膜13に照射される場合、薄膜13とシート案内面3との間に印加している電位差が不安定になる場合がある。これを防ぐために、荷電粒子の照射範囲25と薄膜形成開始点31との間の距離は50[mm]以上確保しておくことが好ましい。
【0069】
同じように、照射した荷電粒子23がシート案内面3に照射される場合についても、薄膜13とシート案内面3との間に印加している電位差が不安定になる場合がある。これを防ぐために、荷電粒子23がシート1上にのみ照射されるように照射範囲を調整することが好ましい。例えば図11に示す電子ビーム照射装置を荷電粒子源22として使用する場合、X軸偏向用交流電源58および/またはY軸偏向用交流電源59の電流を調整することにより照射範囲を調整することができる。好ましくは、シート1の幅方向の各端から5[mm]以上内側の範囲を照射範囲として調整することが好ましい。
【0070】
以上説明した発明により、ピンホールの大きさを小さくでき、かつピンホールが生じたときにシートの熱変形も発生しにくい薄膜形成が可能になる。
【実施例】
【0071】
以下に示す実施例および比較例において、ピンホールの大きさを比較した。ピンホールの検出方法は以下の通りである。
(1)ピンホールの検出方法
バックライト光源上に薄膜形成したシートを置き、ピンホールの発生箇所を目視で見つけ、発生箇所を光学顕微鏡を使って拡大倍率100倍の透過光観察で観察し、ピンホールの直径を測定した。またピンホール周囲の膜剥がれ部については、同じ光学顕微鏡を使って拡大倍率50倍の透過光観察で顕微鏡写真を撮影し、その写真上でピンホールの周囲に発生している膜剥がれ部を全て包含するように描いた最小外接円の直径を測長した。
[実施例1]
電気絶縁性シートとして、厚さ3.7[μm]、幅620[mm]のポリプロピレンフィルム(東レ株式会社製「トレファン」)の片面に、図1に示す巻取式真空蒸着装置を用い、以下に示す蒸着条件で蒸着した。
(蒸着条件)
蒸発源 :誘導加熱坩堝
蒸発材料 :アルミニウム
蒸発パワー:30[kW]
真空環境 :1×10−2[Pa]
膜厚(表面抵抗値):2.2[Ω/□]
(フィルム搬送条件)
搬送速度 :250[m/分]
シート案内面と薄膜との静電容量:1.3[μF]
(電圧印加条件)
図1に示すように、直流電源14、第1抵抗15、第2抵抗16、スイッチ17を配置した。各条件は以下の通り。
【0072】
(1)直流電源14の電圧:92[V]
(2)第1抵抗:40[kΩ]
(3)第2抵抗:500[Ω]
(4)ピンホール検出条件:キャン−薄膜間電位差18が50[V]を下回った場合
(5)ピンホール検出からスイッチ切替までの時間:100[μs]
(6)薄膜13とシート案内面3が形成する静電容量:1.3[μF]
(7)時定数:第1抵抗を介した電圧印加経路では0.052[s]
第2抵抗を介した電圧印加経路では0.65[ms]
蒸着を完了したフィルムを、250[m]の長さでバックライト光源越しにピンホール観察した結果12[個]のピンホールを見つけだした。顕微鏡観察した結果、ピンホールの直径は全て0.3[mm]以内であり、平均直径は0.13[mm]であった。また膜剥がれ部の直径は全て0.8[mm]以上であった。すなわち、この金属蒸着フィルム(矩形のシートである)は155[m2]の面積の全体において、すべてのピンホールが直径0.3[mm]以下であり、かつこれらピンホールの周囲の膜剥がれ部の直径が0.8[mm]以上となった。
[実施例2]
使用した電気絶縁性シート、蒸着条件およびフィルム搬送条件は実施例1と同じで、図10に示す巻取式真空蒸着装置を用い、以下に示す蒸着条件で蒸着した。ここでは、荷電粒子源として電子ビーム照射装置により蒸着前のフィルムを帯電させた後に蒸着した。
(電圧印加条件)
図10に示すように、直流電源14、第1抵抗15、第2抵抗16、スイッチ17を配置した。各条件は以下の通り。
【0073】
(1)直流電源14の電圧:92[V]
(2)第1抵抗:40[kΩ]
(3)第2抵抗:500[Ω]
(4)ピンホール検出条件:キャン−薄膜間電位差18が50[V]を下回った場合
(5)ピンホール検出からスイッチ切替までの時間:100[μs]
(6)薄膜13とシート案内面3が形成する静電容量:1.3[μF]
(7)時定数:第1抵抗を介した電圧印加経路では0.052[s]
第2抵抗を介した電圧印加経路では0.65[ms]
(電子ビーム照射条件)
(1)フィラメント電流:100[mA]
(2)加速電圧:4[kV]
(3)スキャン周波数:1[kHz]
(4)照射範囲:フィルム幅620[mm]の中央部[600]mmの範囲
(5)隔壁24とシート案内面3との間隔26:2[mm]
蒸着を完了したフィルムを、250[m]の長さでバックライト光源越しにピンホール観察した結果8[個]のピンホールを見つけだした。顕微鏡観察した結果、ピンホールの直径は全て0.3[mm]以内であり、平均直径は0.11[mm]であった。また膜剥がれ部の直径は全て0.8[mm]以上であった。すなわち、この金属蒸着フィルム(矩形のシートである)は155[m2]の面積の全体において、すべてのピンホールが直径0.3[mm]以下であり、かつこれらピンホールの周囲の膜剥がれ部の直径が0.8[mm]以上となった。
[比較例1]
使用した電気絶縁性シート、蒸着条件およびフィルム搬送条件は実施例1と同じで、図7に示す巻取式真空蒸着装置を用い、以下に示す蒸着条件で蒸着した。
(電圧印加条件)
図7に示すように、直流電源14、第1抵抗15、を配置した。各条件は以下の通り。
【0074】
(1)直流電源14の電圧:92[V]
(2)第1抵抗:500[Ω]
(3)薄膜13とシート案内面3が形成する静電容量:1.3[μF]
(4)時定数:第1抵抗を介した電圧印加経路では0.65[ms]
蒸着を完了したフィルムを、250[m]の長さでバックライト光源越しにピンホール観察した結果、13[個]ピンホールが見つかり、そのうちの3[個]は直径が0.3[mm]を越えており、平均直径は0.25[mm]であった。膜剥がれ部の直径は全て0.8[mm]以上であった。また、これら直径0.3[mm]を越えるピンホールは、250[m]の全長に偏りなく存在したため、直径0.3[mm]を越えるピンホールが存在しない連続した100[m2]の矩形領域が形成されなかった。
[比較例2]
使用した電気絶縁性シート、蒸着条件およびフィルム搬送条件は実施例1と同じで、図7に示す巻取式真空蒸着装置を用い、以下に示す蒸着条件で蒸着した。
(電圧印加条件)
図7に示すように、直流電源14、第1抵抗15、を配置した。各条件は以下の通り。
【0075】
(1)直流電源14の電圧:92[V]
(2)第1抵抗:40[kΩ]
(3)薄膜13とシート案内面3が形成する静電容量:1.3[μF]
(4)時定数:第1抵抗を介した電圧印加経路では0.052[s]
蒸着を完了したフィルムを、250[m]の長さでバックライト光源越しにピンホール観察した結果13[個]のピンホールを見つけだした。顕微鏡観察した結果、13[個]ピンホールが見つかり、その直径は全て0.3[mm]以内であり、平均直径は0.12[mm]であった。また膜剥がれ部の直径は全て0.8[mm]以上であった。しかしながら、各ピンホール発生箇所の下流の蒸着フィルムには熱負けによるシワが1〜2[m]の長さで発生していた。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、電気絶縁性のプラスチックフィルムを対象とする真空蒸着方法ならびに巻取式真空蒸着装置として非常に好適であるが、紙等のウェブの真空蒸着方法などにも応用でき、その応用範囲が、これらに限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の一実施態様に係る巻取式真空蒸着装置の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施態様に係る巻取式真空蒸着装置の概略構成図である。
【図3】本発明の一実施態様に係る巻取式真空蒸着装置の概略構成図である。
【図4】本発明の一実施態様に係る巻取式真空蒸着装置の概略構成図である。
【図5】薄膜形成時に発生するピンホールの模式図である。
【図6】薄膜形成時に発生するピンホールの模式図である。
【図7】従来の巻取式真空蒸着装置の概略構成図である。
【図8】従来の巻取式真空蒸着装置の概略構成図である。
【図9】従来の巻取式真空蒸着装置の概略構成図である。
【図10】本発明の一実施態様に係る巻取式真空蒸着装置の概略構成図である。
【図11】本発明の一実施態様における偏向型電子ビーム照射装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0078】
1 シート
2 原反ロール体
3 シート案内面
4 中間ローラ(巻出側)
5 中間ローラ(巻取側)
6 巻取ロール体
7 誘導加熱坩堝
8 蒸着材料
9 電力投入装置
10 蒸気
11 マスク部材
12 開口部
13 薄膜
14 直流電源
15 第1抵抗
16 第2抵抗
17 スイッチ
18 シート案内面−薄膜間電位差
19 直流電源の出力電圧
20 シート搬送方向
21 接地
22 荷電粒子源
23 荷電粒子
24 隔壁
25 荷電粒子の照射範囲
26 隔壁とシート案内面との間隙
31 薄膜形成開始点
32 剥離点
33 巻付点
41 ピンホール部
42 膜剥がれ部
43 正常部
51 陰極
52 第1陽極
53 第2陽極
54 X軸用偏向コイル
55 Y軸用偏向コイル
56 陰極用交流電源
57 加速用直流電源
58 X軸偏向用交流電源
59 Y軸偏向用交流電源
60 電子ビームの照射方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートと接触しながら前記シートを搬送するシート案内面を有し、前記シート案内面の運動に伴って前記シートを搬送する搬送手段と、前記シート案内面上の前記シートに向かって微粒子を飛散させて前記シート上に薄膜を形成する微粒子発生源と、前記シートに形成された前記薄膜と前記シート案内面との間に所定の電気抵抗を介して電位差を発生させる電位差発生手段とを備えるシートの薄膜形成装置であって、前記電気抵抗は、少なくとも2種類の抵抗値の状態をとりうるものであり、前記電気抵抗の前記抵抗値の状態を変化させる抵抗値変更手段を備えたことを特徴とするシートの薄膜形成装置。
【請求項2】
前記抵抗値変更手段は、前記薄膜と前記シート案内面との間の前記電位差の絶対値が所定の値以下になったときに、前記電気抵抗の抵抗値をそれ以前より低い抵抗値に変更するものであることを特徴とする請求項1に記載のシートの薄膜形成装置。
【請求項3】
シート案内面に接触しながら搬送方向に搬送されている電気絶縁性シート上に、微粒子発生源から飛来させた微粒子を堆積させ、導電性の薄膜を形成する薄膜付きシートの製造方法であって、前記シート案内面と前記シート上に形成された前記薄膜との間に所定の電気抵抗を有する電源を用いて電位差を発生させ、前記シートにピンホールが形成されたことを検出したときに前記電気抵抗を低減させることを特徴とする薄膜付きシートの製造方法。
【請求項4】
前記薄膜から見て前記シート案内面の方が正電位になるように、前記シート案内面と前記薄膜との間に電位差を印加することを特徴とする請求項3に記載の薄膜付きシートの製造方法。
【請求項5】
前記シート案内面と前記薄膜との間に印加する電位差を、前記シートの厚み1[μm]あたり20[V]以上30[V]以下とすることを特徴とする請求項4に記載の薄膜付きシートの製造方法。
【請求項6】
前記薄膜から前記シート案内面に至る電気回路の時定数を、定常的な薄膜形成時には0.01[s]以上1[s]以下とし、前記ピンホールを検出した後所定の時間の間0.01[s]以下になるよう前記電気抵抗を切り替えることを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載の薄膜付きシートの製造方法。
【請求項7】
前記薄膜と前記シート案内面との間に印加した電位差の変化を検出することにより前記ピンホールの発生を検出することを特徴とする請求項3から6のいずれかに記載の薄膜付きシートの製造方法。
【請求項8】
前記ピンホールを検出してから、50[μs]から1[ms]の間に時定数が0.01[s]以下になるように前記電気抵抗を切り替えることを特徴とする請求項6または7に記載の薄膜付きシートの製造方法。
【請求項9】
前記シートが前記シート案内面に接触しており、かつ前記シートに薄膜の形成する部位の前記搬送方向の上流において、前記シートを帯電させることを特徴とする請求項3から8のいずれかに記載の薄膜付きシートの製造方法。
【請求項10】
前記帯電は、荷電粒子を前記シートに対して照射することによりおこなうことを特徴とする請求項9に記載の薄膜付きシートの製造方法。
【請求項11】
前記帯電を行う部位における前記シート案内面の表面における電界の方向が、前記荷電粒子を前記シート案内面に引き寄せる方向となるように前記荷電粒子を照射することを特徴とする請求項9または10に記載の薄膜付きシートの製造方法。
【請求項12】
金属薄膜つきフィルムであって、前記金属薄膜つきフィルムに含まれる連続した100[m2]以上の面積を有する矩形領域であって、前記領域に含まれるすべてのピンホールが直径0.3[mm]以下であり、かつ該ピンホールの周囲の膜剥がれ部の直径が0.8[mm]以上である領域を1[個]以上含むことを特徴とする、金属薄膜つきフィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−219759(P2006−219759A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−4449(P2006−4449)
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【出願人】(000222462)東レフィルム加工株式会社 (142)
【Fターム(参考)】