説明

シートスイッチモジュール

【課題】 キースイッチを押圧するための押圧補助部材を前記キースイッチの押圧の中心部に正確に配置固定することで、クリック感及びスイッチングの確実性を向上することができるとともに、導光効率の向上効果を図ることが可能なシートスイッチモジュールを提供することである。
【解決手段】 基板22と、この基板22上に形成される固定接点23及びこの固定接点23上に配置されるドーム状の可動接点24からなるキースイッチ28と、このキースイッチ28を前記基板22上に被覆する固定シート25と、前記キースイッチ28上に配置される押圧シート31とを備えたシートスイッチモジュール20において、前記固定シート25には、前記可動接点24の頂上部28a付近に前記押圧シート31の裏面に密着する凸状部32を有し、この凸状部32の内側に設けられた空間部37に前記可動接点24の頂上部28aに接触する押圧補助部材33を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器のキー入力部を構成するシートスイッチモジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話機や携帯情報端末機等の薄型の電子機器のキー入力部には、薄く平坦なシートスイッチが多く用いられている。また、このシートスイッチに発光素子を組み合わせた照光式のシートスイッチモジュールがある。この種のシートスイッチモジュールは、導電パターンが形成された基板と、この基板上に配置される複数のキースイッチと、このキースイッチ上に配置される導光シートと、この導光シートの一端に配置される発光素子とを備えて構成されている(特許文献1参照)。
【0003】
図7は前記シートスイッチモジュールの断面構造の一例を示したものである。このシートスイッチモジュール10は、基板12上に固定接点13及びドーム状の可動接点14からなるキースイッチ16と、このキースイッチ16を基板12上に固定する固定シート15と、この固定シート15によって被覆されている可動接点14の頂上部を介して載置されている導光シート11と、この導光シート11の一端に向けて配置されている側面発光型の発光素子17とによって構成される。また、前記導光シート11の上には、前記各キースイッチ16に相当する部分に数字や記号等の表示部19が記されたラバーシート18が配置される場合がある。
【0004】
上記構成からなるシートスイッチモジュール10において、キースイッチ16のクリック感を向上させるため、前記導光シート11の裏面側に突起を設けて構成される場合がある。この突起は、可動接点14の頂上部に当接するように設けることで、可動接点14の押圧を容易にしてスイッチングの向上を図ることができる。
【特許文献1】特開2004−69751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、導光シート11を基板12上に形成されているキースイッチ16上に載置する際、前記導光シート11の裏面側に形成されている突起と、この突起に対応する前記キースイッチ16の位置を正確に合わせるのは容易でなく、ずれた状態で配置されてしまう場合がある。このように、前記突起とキースイッチとの位置がずれると、クリック感が損なわれ、スイッチング不良の原因となる場合がある。
【0006】
また、前記導光シート11に突起を設けることによって、発光素子17から発せられる光の導光方向や導光率に変化が生じる場合がある。前記突起はキースイッチ16の配列数に応じて設けられるが、突起の数が多くなるのにしたがって、導光作用に変化が生じ、導光シート11全体を均等に導光させるのが困難となっている。また、前記導光シート11のキースイッチ16と対応する箇所に合わせて突起を形成しなければならないため、突起を設けるための位置決め作業が必要となるなど、導光シートを形成するための製造工数や製造コストがかかるといった問題があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、キースイッチを押圧するための押圧補助部材を前記キースイッチの押圧の中心部に正確に配置固定することで、クリック感及びスイッチングの確実性を向上することができるとともに、導光効率の向上効果も図ることが可能なシートスイッチモジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のシートスイッチモジュールは、基板と、この基板上に形成される固定接点及びこの固定接点上に配置されるドーム状の可動接点からなるキースイッチと、このキースイッチを前記基板上に被覆する固定シートと、前記キースイッチ上に配置される押圧シートとを備えたシートスイッチモジュールにおいて、前記固定シートには、前記可動接点の頂上部付近に前記押圧シートの裏面に密着する凸状部を有し、この凸状部の内側に設けられた空間部に前記可動接点の頂上部に接触する押圧補助部材を配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のシートスイッチモジュールによれば、ドーム状の可動接点の頂上部に押圧補助部材を設け、この押圧補助部材が前記可動接点を基板上に被覆固定する固定シートによって保持されるため、キースイッチ上のクリックポイントの特定が容易となる。これによって、キースイッチのクリック性及びスイッチング特性の向上効果が得られる。
【0010】
また、前記可動接点上に押圧補助部材が直接配置されるため、キースイッチ上をカバーする押圧シートには凸状等の加工を施さずフラットに形成できる。このため、前記押圧シートが導光素材で形成された導光シートによって構成した場合における導光効率の低下を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面に基づいて本発明に係るシートスイッチモジュールの実施形態を詳細に説明する。図1及び図2に示すように、本発明のシートスイッチモジュール20は、基板22と、この基板22上に配列形成され、頂上部に凸状部32が設けられた複数のキースイッチ28と、このキースイッチ28を被覆する固定シート25と、この固定シート25が被覆された各キースイッチ28の上に配置される透光性を備えた押圧シート(導光シート)31と、この導光シート31の一端に向けて配置される発光素子27とによって構成されている。前記凸状部32には、内側に空間部37が設けられ、略半球状の押圧補助部材33が配置されている。なお、本実施形態では、照光機能を備えたシートスイッチモジュールの構成例について説明するが、照光機能を有しないシートスイッチモジュールを構成する場合は、発光素子27は必要でなく、また、導光シート31は透光性を有しない押圧用のシート材や薄い板材を使用することができる。
【0012】
前記基板22は、薄く成形されたエポキシ樹脂板やフレキシブル(FPC)板が用いられ、端部に発光素子27が配置される。各キースイッチ28は、前記基板22上にパターン形成される固定接点23と、この固定接点23上に配置されるタクトバネからなる可動接点24とで構成され、裏面側に粘着面を有する薄い固定シート25によって、前記可動接点24を基板22上に固定させている。
【0013】
基板22は、例えば、携帯電話機の操作パネルのシートスイッチとして形成される場合は、その操作パネルと略同様な形状及び大きさに形成され、数字キーやアルファベットキー、その他のファンクションキー等が配置される箇所に合わせて前記固定接点23が複数設けられる。前記可動接点24は、適度なクリック感を得るために薄い金属材によるドーム状に形成され、前記各固定接点23に対応してその上方に被さるように配置されている。
【0014】
前記固定シート25は、片面に粘着層25aを有する可撓性の粘着シートであり、粘着層25aの所定位置に押圧補助部材33が複数貼着固定されている。この押圧補助部材33は、図3に示すように、固定シート25と同じ樹脂材によってできており、粘着層25aに貼着固定されている円形状の平面部(押圧面)45と、略半球状の球面部36とからなる。前記押圧面45は、前記可動接点24と同じかそれ以下の直径からなる円形スペースを有している。また、前記球面部36は、その中心が前記可動接点24の頂上部28aに点状に接触するように、半球状に厚肉形成されている。
【0015】
前記押圧補助部材33は、前記固定シート25の裏面の一部を厚肉成形することによって形成される。この厚肉成形は、例えば、透明な樹脂材をスクリーン印刷によって形成することができ、最初に前記押圧面45の外周縁35を印刷等によって形成した後、この外周縁35内に樹脂材を重ねながら中央部が盛り上がるように印刷することで、球面部36を形成することができる。
【0016】
前記固定シート25は、図1に示したように、前記押圧補助部材33を設けた面を下向きにし、各球面部36の頂上部が各キースイッチ28の頂上部28aに合わせるようにして前記基板22の上方から被せる。そして、図2及び図3に示したように、前記押圧補助部材33を包み込むようにして可動接点24の表面から基板22の上面に沿って密着させる。これによって、キースイッチ28の頂上部28aに台形状に盛り上がった凸状部32が形成される。このような凸状部32は、前記固定シート25の上面から加熱及び加圧等の手段を用いることによって形成することができる。
【0017】
また、前記固定シート25は、前記押圧補助部材33が配置される部分を予め台形状に成形した空間部37を設けるとともに、可動接点24の外周部に沿って被覆する箇所をエンボス形状に成形しておくこともできる。このようにして成形された固定シート25は、エンボス成形された裏面全体に透明な粘着剤を一様に塗布し、可動接点24を粘着保持させ、これを固定接点23が形成されている基板22の上面に位置合わせした後、密着させるようにして被覆する。
【0018】
図2に示したように、前記押圧補助部材33は、押圧面45が固定シート25に密着した状態で可動接点24に粘着固定されているが、球面部36と可動接点24の頂上部との間には固定シート25で密着されていない隙間を有している。このような隙間を有することによって、可動接点24の押圧及び押圧解除に伴う撓み変形の自由度を妨げず十分なクリック性を確保することができる。また、前記隙間がクッションとなるので、過度の押圧力を吸収して滑らかなスイッチング操作を行うことができる。
【0019】
導光シート31は、基板22と略同じ形状及び平面サイズを有した透明若しくは半透明の薄板部材であり、前記固定シート25によって被覆されている押圧補助部材33の押圧面45上に載るように水平に配置される。この導光シート31は、例えば、アクリル樹脂、シリコン樹脂、ポリカーボネート樹脂又はポリエチレンテレフタレート樹脂など導光性の高い材料が用いられ、前記各キースイッチ28と対応する部分に数字や記号等の表示部が印刷やドットパターンなどによって施される。
【0020】
前記押圧補助部材33の厚みは、導光シート31の厚みやクリック操作に必要なストローク幅の設定によって異なるが、前記導光シート31の厚みが0.25mm程度の場合、前記球面部36の下端中心部までの厚みを0.15mm程度とするのが好ましい。なお、本実施形態では、押圧補助部材33を略半球状に形成したが、円柱形状や角柱形状とすることもできる。このような円柱形状や角柱形状とした場合であっても、その下端面の中心部において前記可動接点24の頂上部28bと点状に接触させることができる。
【0021】
前記押圧補助部材33をキースイッチ28の頂上部28aと対応する位置に設けたことで、キースイッチ28の押圧ポイントが前記導光シート31を介した場合であっても明確になる。また、前記押圧面45が平坦面に形成されているため、この押圧面45の範囲内であれば、中心部から外周部にずれた箇所を押圧した場合であってもキースイッチ28を確実に固定接点23に向けてスイッチングさせることができる。
【0022】
図1及び図4に示したように、発光素子27は、側面発光型の発光ダイオードが使用され、その発光面を導光シート31の一側面に向けた状態で基板22の外周部に配置される。発光素子27の配置箇所や配置数は、基板22の形状や大きさ、キースイッチ28の配列数に応じて適宜設定されるが、例えば、携帯電話機のような数字キーやファンクションキーなどが配置されるような四角形状のシートスイッチであれば、少なくともいずれか一の辺に数個等間隔で配置される。
【0023】
図5は、前記シートスイッチモジュール20の上に操作面となるラバーシート50を配置した場合の断面構成例を示したものである。前記ラバーシート50には、シートスイッチモジュール20の各キースイッチ28に対応する箇所に合わせて数字や記号などの表示部51が印刷やドットパターンによって施される。このラバーシート50は、導光シート31上に前記表示部51がキースイッチ28と合うようにして組み合わされる。なお、前記表示部51は薄くてもよいが、厚肉成形することによって、クリック感の向上効果を得ることができる。
【0024】
次に、上記シートスイッチモジュール20における導光作用について説明する。前記導光シート31は、図1に示したように、一側面に前記発光素子27の発光面27aを内包するように凹設した受光部34が設けられ、この受光部34から取り入れた光によって、導光シート31の全体を均等且つ明るく照光させることができる。このような場合にあって、前記固定シートが透明の場合、凸状部32が押圧シート31に密着していても導光作用を妨げることがない。また、図4に示したように、押圧補助部材33の押圧面45の外周縁35の一部に遮光部41を施すことによって、スポット的な発光を抑えることができる。
【0025】
前記遮光部41は、図6に示すように、前記外周縁35に沿ってその一部に円弧状に形成される。この遮光部41は、外周縁35の内側面に沿った一定の長さ及び幅を有して形成される。前記長さ及び幅は、発光素子27の発光量や距離に応じて設定されるが、スポット的な光拡散を抑えるには、長さは前記外周縁35全体の1/2以下であり、1/4程度にするのが好ましい。また、幅は前記外周縁35から球面部36の中心に向かう半径の約1/2程度までの範囲が好ましく、全体的に扇形形状となる。本実施形態では、前記遮光部41が発光素子27の発光面27aと対向する方向に対して外周縁35の内側に湾曲する部分の一部に淡い黒色のインクを印刷して形成した。また、前記遮光部41は、外周縁35から球面部36の外周部の一部にかかるように形成してもよい。このような位置に遮光部41を設けることで、図4に示したように、導光シート31内を矢印方向から導光してきた光の進行を妨げることなく、スポット的な光拡散作用のみを抑えることができる。
【0026】
以上、説明したように、本発明のシートスイッチモジュール20によれば、各キースイッチ28の頂上部28aに押圧補助部材33を固定シート25によって配置されているので、各キースイッチ28の最適な押圧ポイントが明確となる。これによって、クリック感の向上及びスイッチングの確実性が得られる。特に、前記押圧補助部材33の押圧面45が平坦で、球面部36がキースイッチ28の頂上部28aに点接触させるように半球状に形成されているため、所定の押圧範囲からなる面で受けた押圧力をキースイッチ28の中心位置に向けさせることができる。これによって、前記押圧面45の範囲内であれば、多少傾いた角度から押圧した場合であっても、スイッチング操作を確実に行わせることができる。また、前記押圧補助部材33をキースイッチ28に固定シート25を介して被覆形成されているため、このシートスイッチモジュール20を単体で使用することができ、別体で前記ラバーシート50のような操作パネルを設ける場合でも、このような操作パネルに突起等を設ける必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係るシートスイッチモジュールの分解斜視図である。
【図2】上記シートスイッチモジュールの断面図である。
【図3】キースイッチ上の凸状部を示す斜視図である。
【図4】上記シートスイッチモジュールの導光作用を示す断面図である。
【図5】上記シートスイッチモジュールにラバーシートを組み合わせたときの断面図である。
【図6】上記シートスイッチモジュールの平面図である。
【図7】従来のシートスイッチモジュールの断面図である。
【符号の説明】
【0028】
10 シートスイッチモジュール
11 導光シート
12 基板
13 固定接点
14 可動接点
15 固定シート
16 キースイッチ
17 発光素子
18 ラバーシート
19 表示部
20 シートスイッチモジュール
22 基板
23 固定接点
24 可動接点
25 固定シート
25a 粘着層
27 発光素子
27a 発光面
28 キースイッチ
28a 頂上部
31 導光シート
32 凸状部
33 押圧補助部材
34 受光部
35 外周縁
36 球面部
37 空間部
41 遮光部
45 押圧面
50 ラバーシート
51 表示部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、この基板上に形成される固定接点及びこの固定接点上に配置されるドーム状の可動接点からなるキースイッチと、このキースイッチを前記基板上に被覆する固定シートと、前記キースイッチ上に配置される押圧シートとを備えたシートスイッチモジュールにおいて、
前記固定シートには、前記可動接点の頂上部付近に前記押圧シートの裏面に密着する凸状部を有し、この凸状部の内側に設けられた空間部に前記可動接点の頂上部に接触する押圧補助部材を配置したことを特徴とするシートスイッチモジュール。
【請求項2】
前記押圧補助部材は、略半球状に形成され、球面部が前記可動接点に接し、平面部が前記固定シートに密着した状態で前記押圧シートの裏面に接する請求項1記載のシートスイッチモジュール。
【請求項3】
前記押圧補助部材は、円柱状あるいは角柱状に形成され、下端部が前記可動接点に接し、上端部が前記固定シートに密着した状態で前記押圧シートの裏面に接する請求項1記載のシートスイッチモジュール。
【請求項4】
前記固定シートは、前記凸状部の内部に配置した押圧補助部材の下端部と前記可動接点の頂上部とが対向するようにして前記可動接点に被覆される請求項1記載のシートスイッチモジュール。
【請求項5】
前記押圧補助部材は、前記可動接点の頂上部との間に隙間を有して固定シートで被覆されている請求項1乃至3のいずれかに記載のシートスイッチモジュール。
【請求項6】
前記可動接点は、前記押圧補助部材が配置されている頂上部を除いて前記固定シートによって密着されている請求項1記載のシートスイッチモジュール。
【請求項7】
前記固定シートは、裏面側に粘着面を有した可撓性の粘着シートである請求項1記載のシートスイッチモジュール。
【請求項8】
前記押圧シートが透光性を有した導光シートによって形成され、この導光シートの一端に向けて発光素子を配置した請求項1記載のシートスイッチモジュール。
【請求項9】
前記押圧補助部材の一部に前記発光素子から発せられる光の反射を防止する遮光部材を設けた請求項8記載のシートスイッチモジュール。
【請求項10】
前記押圧補助部材の下端部と前記可動接点の頂上部とが粘着剤を介して接合されている請求項1記載のシートスイッチモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−27542(P2010−27542A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−190679(P2008−190679)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【Fターム(参考)】