説明

シートベルト変位検出装置

【課題】検出手段を容易に設置する。
【解決手段】シートベルト装置14では、乗員16にシートベルト24が装着された際に、乗員16の呼吸や心拍によって、シートベルト24が変位されてスリップジョイント26において長手方向へ移動される。さらに、スリップジョイント26において、センサがシートベルト24を撮影して、スリップジョイント26におけるシートベルト24の移動距離が算出されることで、乗員16の生体状態が検出される。ここで、スリップジョイント26にセンサが設置されるため、センサを容易にシートベルト装置14に設置できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の乗員に装着されるシートベルトの変位を検出して乗員の生体状態を検出するシートベルト変位検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載された生体状態判断装置では、シートベルトのドライバと接触する面又はシートベルトの内部に人体用センサ(圧電ケーブルセンサ)が設けられており、ドライバの呼吸や心拍によって人体用センサの形状が変化することで、人体用センサがシートベルトの微小な変位(振動)を検出して、ドライバの生体状態が判断される。
【0003】
しかしながら、この生体状態判断装置では、シートベルトに人体用センサが設けられている。このため、人体用センサに設けられるハーネスをシートベルトに沿って設置する必要があり、人体用センサ(ハーネスを含む)の設置が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−95408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、検出手段を容易に設置できるシートベルト変位検出装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載のシートベルト変位検出装置は、車両の乗員に装着されるシートベルトと、前記シートベルトが移動可能に通過される通過部材と、前記通過部材に設けられ、前記シートベルトの移動を検出することで乗員の呼吸及び心拍の少なくとも一方を検出して乗員の生体状態を検出する検出手段と、を備えている。
【0007】
請求項2に記載のシートベルト変位検出装置は、請求項1に記載のシートベルト変位検出装置において、前記検出手段は、前記シートベルトを撮影する撮影手段を有し、前記撮影手段が撮影した前記シートベルトの映像に基づき前記シートベルトの移動を検出する。
【0008】
請求項3に記載のシートベルト変位検出装置は、請求項2に記載のシートベルト変位検出装置において、前記撮影手段は、前記シートベルトの拡大像を撮影する。
【0009】
請求項4に記載のシートベルト変位検出装置は、請求項1に記載のシートベルト変位検出装置において、前記検出手段は、前記シートベルトの移動により移動される移動部材を有し、前記移動部材の移動に基づき前記シートベルトの移動を検出する。
【0010】
請求項5に記載のシートベルト変位検出装置は、請求項4に記載のシートベルト変位検出装置において、前記シートベルトを押圧して前記移動部材に接触させる押圧手段を備えている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載のシートベルト変位検出装置では、車両の乗員に装着されるシートベルトが通過部材に移動可能に通過される。
【0012】
ここで、通過部材に設けられた検出手段が、シートベルトの移動を検出することで、乗員の呼吸及び心拍の少なくとも一方を検出して、乗員の生体状態を検出する。
【0013】
このように、通過部材に設けられた検出手段がシートベルトの移動を検出するため、通過部材に対して検出手段を設置すればよい。これにより、検出手段を容易に設置できる。
【0014】
請求項2に記載のシートベルト変位検出装置では、検出手段において、撮影手段がシートベルトを撮影し、撮影手段が撮影したシートベルトの映像に基づきシートベルトの移動を検出する。このため、検出手段がシートベルトの移動を高精度に検出できる。
【0015】
請求項3に記載のシートベルト変位検出装置では、撮影手段がシートベルトの拡大像を撮影する。このため、検出手段がシートベルトの移動を一層高精度に検出できる。
【0016】
請求項4に記載のシートベルト変位検出装置では、検出手段において、移動部材がシートベルトの移動により移動され、移動部材の移動に基づきシートベルトの移動を検出する。このため、検出手段がシートベルトの移動を高精度に検出できる。
【0017】
請求項5に記載のシートベルト変位検出装置では、押圧手段が、シートベルトを押圧して移動部材に接触させる。このため、移動部材がシートベルトの移動に確実に追従して移動でき、検出手段がシートベルトの移動を一層高精度に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るシートベルト変位検出装置が設けられた車両の主要部を示す車両前斜め左方から見た斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るシートベルト変位検出装置のスリップジョイントを示す車両左方から見た正面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るシートベルト変位検出装置のスリップジョイントを示す車両前側から見た断面図(図2の3−3線断面図)である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係るシートベルト変位検出装置におけるスリップジョイントを示す車両前側から見た断面図(図2の3−3線位置断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1の実施の形態]
図1には、本発明の第1の実施の形態に係るシートベルト変位検出装置10が設けられた車両12の主要部が車両前斜め左方から見た斜視図にて示されている。なお、図面では、車両前方を矢印FRで示し、車幅方向外方(車両右方)を矢印WOで示し、上方を矢印UPで示している。
【0020】
図1に示す如く、本実施の形態に係るシートベルト変位検出装置10は、車両12のシートベルト装置14に適用されており、シートベルト装置14は、車室内において、乗員16(例えば運転手)が着座するシート18(例えば運転席)に装備されている。シート18の車幅方向外側かつ車両後側には、固定部材としてのセンタピラー20が設けられており、センタピラー20は、車体を構成して、上下方向へ延伸されている。
【0021】
シートベルト装置14は、巻取装置22(リトラクタ)を備えており、巻取装置22は、センタピラー20の下部に固定されている。巻取装置22には、長尺帯状のシートベルト24が基端側(長手方向一側)から巻取られている。シートベルト24は、織物(ウェビング)にされており、シートベルト24の表面には、位置表示手段としての織目模様(図示省略)が形成されている。巻取装置22には、付勢機構(図示省略)が設けられており、付勢機構は、シートベルト24に基端側(巻取装置22への巻取側)への付勢力を付与している。
【0022】
シートベルト24は、通過部材としての板状のスリップジョイント26(ショルダアンカ)の下部に挿通(通過)されており、シートベルト24は、スリップジョイント26に対し長手方向へ移動(スライド)可能にされている。スリップジョイント26は、上部において、センタピラー20の上部に取り付けられた支軸28に支持されており、スリップジョイント26は、支軸28を中心として車両前後方向へ回動可能にされている。シートベルト24は、スリップジョイント26に支持されており、シートベルト24は、巻取装置22からスリップジョイント26へ向けて、センタピラー20に沿って上側へ延伸されている。
【0023】
シートベルト24の先端(長手方向他側端)は、係止部材としてのアンカプレート30に係止されており、アンカプレート30は、シート18のセンタピラー20側(車幅方向外側)かつ下側の車体に固定されている。シートベルト24は、スリップジョイント26とアンカプレート30との間において、追加通過部材としてのタング32に挿通(通過)されており、シートベルト24は、タング32に対し長手方向へ移動(スライド)可能にされている。
【0024】
シート18のセンタピラー20とは反対側(車幅方向内側)かつ下側には、係止手段としてのバックル装置34が配置されている。バックル装置34は、支持部材としての長尺板状の支持板36の上端に固定されており、支持板36の下端は、車体に固定されている。支持板36は、可撓性を有しており、支持板36が弾性的に撓むことで、バックル装置34が特に車幅方向へ移動(支持板36の下端を中心として回動)可能にされている。
【0025】
ここで、タング32がバックル装置34に係止されることで、シート18に着座した乗員16にシートベルト24が装着される。これにより、シートベルト24が、巻取装置22の付勢機構の付勢力によって張られた状態で、スリップジョイント26とタング32との間のショルダベルト部24Aにおいて乗員16の肩部16Aと腰部16Bとの間に斜め方向へ架け渡されると共に、タング32とアンカプレート30との間のラップベルト部24Bにおいて乗員16の腰部16Bに横方向へ架け渡される。このため、ショルダベルト部24Aは、付勢機構の付勢力によって乗員16の肩部16A、胸部16C及び上腹部16Dに前側から接触されると共に、ラップベルト部24Bは、付勢機構の付勢力によって乗員16の下腹部16Eに前側から接触される。
【0026】
また、乗員16にシートベルト24が装着された際には、ショルダベルト部24Aがスリップジョイント26に対して車両前側に配置されることで、スリップジョイント26が車両前側かつ上側へ回動される。
【0027】
図2に示す如く、スリップジョイント26の下部には、通過部としてのU字状の挿通孔38が貫通形成されており、シートベルト24は、挿通孔38の下部に長手方向へ移動可能に挿通されて、スリップジョイント26に折り返された状態で支持されている。挿通孔38の下部の長手方向(スリップジョイント26横方向)寸法は、シートベルト24の幅方向寸法に比し、僅かに大きくされており、挿通孔38下部の長手方向へのシートベルト24の移動が抑制されている。
【0028】
図3に示す如く、スリップジョイント26には、挿通孔38の下側において、支持部としてのピース40が設けられており、ピース40の上側面は、断面円状に湾曲されている。ピース40の上側面は、挿通孔38下部の下側面を構成しており、ピース40の上側面は、シートベルト24が巻き付けられた状態で接触されて円滑に移動可能にされている。
【0029】
ピース40の上部内には、光照射手段としてのLED42が設けられており、LED42は、光(例えば赤色光)を照射可能にされている。
【0030】
ピース40の上部内には、LED42の光照射側において、拡大手段としての所定形状のブロック状の透明部材44が設けられており、透明部材44は、例えばガラス等の透明材にされて、レンズ及びプリズムを構成している。
【0031】
透明部材44には、LED42の光照射側において、平面状の入射面44Aが形成されており、LED42が照射した光が入射面44Aから透明部材44内に入射される。透明部材44には、平面状の第1反射面44B及び第2反射面44Cが形成されており、入射面44Aから透明部材44内に入射された光が第1反射面44Bに反射されると共に、第1反射面44Bに反射された光が第2反射面44Cに反射される。透明部材44には、平面状の照射面44Dが形成されており、第2反射面44Cに反射された光が照射面44Dから透明部材44外へ照射される。
【0032】
ピース40の上端部には、透明部材44の照射面44D近傍において、開口46が形成されており、開口46は、ピース40の上部内を上側に開口して、ピース40の上側面に巻き付けられたシートベルト24をピース40の上部内に露出させている。これにより、透明部材44の照射面44Dから照射された光が開口46を介してシートベルト24の表面に斜めに照射されて、シートベルト24の表面が照射された光を乱反射する。
【0033】
透明部材44には、シートベルト24表面の光照射部分に対向して、断面三角形状の入射部44E(レンズ)が形成されており、シートベルト24表面が乱反射した光の一部が開口46を介して入射部44Eから透明部材44内に入射される。透明部材44には、平面状の出射面44Fが形成されており、入射部44Eから透明部材44内に入射された光が出射面44Fから透明部材44外へ出射される。
【0034】
ピース40の上部内には、透明部材44の出射面44Fからの光出射側において、検出手段を構成する撮影手段としてのセンサ48が設けられており、センサ48は、透明部材44の出射面44Fから出射された光が入射されることで、シートベルト24の表面の拡大像を撮影可能にされている。
【0035】
ピース40の上部内には、検出手段を構成する制御手段としての制御基板50が固定されており、制御基板50上には、制御回路(図示省略)が設けられている。制御基板50上には、LED42、透明部材44及びセンサ48が固定されており、LED42及びセンサ48は、制御基板50(制御回路)に電気的に接続されて、制御基板50(制御回路)が制御可能にされている。
【0036】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0037】
以上の構成のシートベルト装置14では、タング32がバックル装置34に係止されることで、シート18に着座した乗員16にシートベルト24が装着される。これにより、シートベルト24が、巻取装置22の付勢機構によって基端側(巻取装置22への巻取側)へ付勢された状態で、ショルダベルト部24Aにおいて乗員16の肩部16A、胸部16C及び上腹部16Dに接触される。
【0038】
このため、乗員16の呼吸や心拍による肩部16A、胸部16C及び上腹部16Dの少なくとも1つの前面の前側及び後側への移動によって、シートベルト24のショルダベルト部24Aが乗員16の前側及び後側へ微小に変位(振動)される。これにより、シートベルト24が、スリップジョイント26において、長手方向に沿って、付勢機構の付勢力に抗してショルダベルト部24A側へ微小に移動されると共に、付勢機構の付勢力によって巻取装置22側へ微小に移動される。
【0039】
スリップジョイント26のピース40では、制御基板50の制御によってLED42が光を照射することで、LED42が照射した光が、透明部材44の入射面44A、第1反射面44B、第2反射面44C、照射面44D及びピース40の開口46を介して、シートベルト24の表面に斜めに照射されて、シートベルト24の表面が照射された光を乱反射する。
【0040】
さらに、シートベルト24表面が乱反射した光の一部が、ピース40の開口46、透明部材44の入射部44E及び出射面44Fを介して、センサ48に入射される。
【0041】
これにより、制御基板50の制御によって、微小時間間隔毎に、シートベルト24の表面(織目模様)の拡大像を、センサ48が撮影して、制御基板50が映像として記憶(サンプリング)する。さらに、制御基板50が、今回記憶したシートベルト24の表面(織目模様)の拡大像と、前回記憶したシートベルト24の表面(織目模様)の拡大像と、を比較することで、スリップジョイント26におけるシートベルト24の長手方向への移動距離を当該織目模様の位置の変化に基づいて算出(測定)する。
【0042】
このように、制御基板50が、乗員16の呼吸や心拍に伴うスリップジョイント26におけるシートベルト24の長手方向への移動距離を算出することで、乗員16の生体状態(呼吸や心拍の大きさ及び速さ)を検出できて、乗員16の緊張状態、覚醒状態、疲労状態等の体調を検出するシステムのための生体情報センサの1つとして情報提供できる。なお、制御基板50は、スリップジョイント26におけるシートベルト24の長手方向への移動距離を時間微分することで、乗員16の呼吸や心拍の速さを検出する。
【0043】
ここで、スリップジョイント26に、LED42、透明部材44、センサ48及び制御基板50が設置されている。このため、LED42、透明部材44、センサ48及び制御基板50を容易にシートベルト装置14に設置できる。しかも、シートベルト装置14を車両12に通常と同様に設置すれば、LED42、透明部材44、センサ48及び制御基板50を車両12に設置できるため、LED42、透明部材44、センサ48及び制御基板50を容易に車両12に設置できる。
【0044】
さらに、乗員16が通常と同様にシートベルト24を装着するのみで、乗員16の生体状態を検出できる。このため、乗員16に煩わしさを与えることを防止できる。
【0045】
また、制御基板50がスリップジョイント26におけるシートベルト24の移動距離を測定する。このため、制御基板50がシートベルト24の移動距離情報を過大に増幅する必要がなく、乗員16の生体状態の検出に外乱(ノイズ)の影響がでることを少なくできて、乗員16の生体状態を高精度に検出できる。しかも、乗員16の呼吸や心拍の大きさを直接検出できるため、乗員16の呼吸や心拍の大きさを高精度に検出できる。
【0046】
さらに、センサ48が撮影したシートベルト24の表面の拡大像に基づき、制御基板50がスリップジョイント26におけるシートベルト24の移動距離を算出する。このため、乗員16の生体状態を一層高精度に検出できる。
【0047】
また、シートベルト24が、巻取装置22の付勢機構によって基端側へ付勢されると共に、スリップジョイント26より先端側のショルダベルト部24Aにおいて乗員16の肩部16A、胸部16C及び上腹部16Dに装着される。このため、乗員の呼吸や心拍に伴いシートベルト24がスリップジョイント26において十分に長手方向へ移動でき、乗員16の生体状態を一層高精度に検出できる。
【0048】
なお、本実施の形態では、シートベルト24の表面に織目模様を形成してシートベルト24の長手方向への移動を織目模様の移動によって測定する構成としたが、シートベルト24の表面に位置表示手段としてのマークを設けてシートベルト24の長手方向への移動をマークの移動によって測定する構成としてもよい。
【0049】
[第2の実施の形態]
図4には、本発明の第2の実施の形態に係るシートベルト変位検出装置60におけるスリップジョイント26が車両前側から見た断面図(図2の3−3線位置断面図)にて示されている。
【0050】
本実施の形態に係るシートベルト変位検出装置60は、上記第1の実施の形態と、ほぼ同様の構成であるが、以下の点で異なる。
【0051】
図4に示す如く、本実施の形態に係るシートベルト変位検出装置60では、スリップジョイント26のピース40に、LED42、透明部材44、センサ48、制御基板50及び開口46が設けられていない。
【0052】
ピース40は、上部の押圧部62と、押圧部62以外の部分の本体部64と、に分割されており、押圧部62は、本体部64に対し挿通孔38側及び挿通孔38とは反対側に移動(スライド)可能にされている。押圧部62の上側面は、ピース40の上側面を構成しており、押圧部62の上側面は、挿通孔38の下部に挿通されるシートベルト24が巻き付けられた状態で接触されて円滑に移動可能にされている。
【0053】
本体部64の上部内には、押圧手段(付勢手段)としての圧縮コイルスプリング66が複数設けられており、圧縮コイルスプリング66は、押圧部62と本体部64との間に架け渡されて、押圧部62を挿通孔38側に押圧(付勢)している。このため、挿通孔38の下部に挿通されるシートベルト24が、押圧部62によって挿通孔38側に押圧(付勢)されている。
【0054】
スリップジョイント26には、挿通孔38の下部の上側において、検出手段を構成する移動部材としての略円柱状の検出ローラ68が一体の回転軸68Aにおいて、回転(移動)自在に支持されており、検出ローラ68(回転軸68A)の回転軸方向は、挿通孔38の下部の長手方向に平行に配置されている。上述の如く、挿通孔38の下部に挿通されるシートベルト24が押圧部62によって挿通孔38側に押圧されることで、シートベルト24が検出ローラ68の外周に常に接触されており、シートベルト24は、圧縮コイルスプリング66の付勢力によって、押圧部62と検出ローラ68との間に常に挟持されている。検出ローラ68の外周全体には、突刺部としての円錐状のローラ歯68Bが複数設けられており、ローラ歯68Bの先端は、シートベルト24に突き刺さり可能にされている。これにより、シートベルト24と検出ローラ68の外周との摩擦力が大きくされており、常に、シートベルト24のスリップジョイント26における長手方向への移動に伴い、検出ローラ68が回転されることで、シートベルト24のスリップジョイント26における長手方向への移動距離が検出ローラ68の外周の回転距離と等しくされる。
【0055】
検出ローラ68の周囲(回転軸68Aの周囲でもよい)には、検出手段を構成する測定手段としてのセンサ70が設けられている。センサ70は、摺動抵抗センサ(ポジションセンサ)、静電容量センサ又はMRセンサ(磁気抵抗センサ)等にされており、センサ70は、検出ローラ68の回転位置(回転角度位置を含む)を測定可能にされている。
【0056】
センサ70は、検出手段を構成する制御手段としての制御装置72に電気的に接続されている。
【0057】
ここで、制御装置72の制御によって、微小時間間隔毎に、検出ローラ68の回転位置を、センサ70が測定して、制御装置72が記憶(サンプリング)する。さらに、制御装置72が、今回記憶した検出ローラ68の回転位置と、前回記憶した検出ローラ68の回転距離又は回転位置と、を比較することで、スリップジョイント26におけるシートベルト24の長手方向への移動距離を検出ローラ68の回転位置の変化に基づいて算出(測定)する。
【0058】
これにより、本実施の形態でも、センサ48がシートベルト24の表面の拡大像を撮影することによる効果を除き、上記第1の実施の形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0059】
さらに、スリップジョイント26の挿通孔38下部に挿通されるシートベルト24が、圧縮コイルスプリング66の付勢力によって、押圧部62と検出ローラ68との間に常に挟持される。しかも、検出ローラ68外周のローラ歯68B先端がシートベルト24に突き刺さり可能にされている。このため、シートベルト24のスリップジョイント26における長手方向への移動に検出ローラ68が確実に追従して回転できて、シートベルト24のスリップジョイント26における長手方向への移動距離を検出ローラ68の外周の回転距離と等しくできる。これにより、乗員16の生体状態を一層高精度に検出できる。
【0060】
なお、本実施の形態では、シートベルト24のスリップジョイント26における長手方向への移動に伴い検出ローラ68(移動部材)が回転される構成としたが、シートベルト24のスリップジョイント26における長手方向への移動に伴い移動部材が回動又はスライドされる構成としてもよい。
【0061】
また、上記第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、センサ48及びセンサ70がスリップジョイント26におけるシートベルト24の長手方向への移動距離を測定する構成としたが、センサ48及びセンサ70がスリップジョイント26におけるシートベルト24の長手方向への移動速度を測定する構成としてもよい。これにより、乗員16の呼吸や心拍の速度を直接検出できるため、乗員16の呼吸や心拍の速度を高精度に検出できる。また、センサ48及びセンサ70がスリップジョイント26におけるシートベルト24の長手方向への移動加速度を測定する構成としてもよい。
【0062】
さらに、上記第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、本発明の通過部材をスリップジョイント26にした構成としたが、本発明の通過部材をベルトガイドやリルータにした構成としてもよい。なお、ベルトガイドは、シートベルト24が長手方向へ移動可能に挿通された状態で、シート18の上部に移動不能に固定される。一方、リルータは、シートベルト24が長手方向へ移動可能に挿通された状態で、シート18の上部に前後方向へ伸縮可能かつ左右方向及び上下方向へ移動可能に設けられて、シートベルト24の通過経路を前後方向、左右方向及び上下方向において調整(設定)可能にされる。
【符号の説明】
【0063】
10 シートベルト変位検出装置
12 車両
16 乗員
16C 胸部
24 シートベルト
26 スリップジョイント(通過部材)
48 センサ(検出手段、撮影手段)
50 制御基板(検出手段)
60 シートベルト変位検出装置
66 圧縮コイルスプリング(押圧手段)
68 検出ローラ(検出手段、移動部材)
70 センサ(検出手段)
72 制御装置(検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗員に装着されるシートベルトと、
前記シートベルトが移動可能に通過される通過部材と、
前記通過部材に設けられ、前記シートベルトの移動を検出することで乗員の呼吸及び心拍の少なくとも一方を検出して乗員の生体状態を検出する検出手段と、
を備えたシートベルト変位検出装置。
【請求項2】
前記検出手段は、前記シートベルトを撮影する撮影手段を有し、前記撮影手段が撮影した前記シートベルトの映像に基づき前記シートベルトの移動を検出する請求項1記載のシートベルト変位検出装置。
【請求項3】
前記撮影手段は、前記シートベルトの拡大像を撮影する請求項2記載のシートベルト変位検出装置。
【請求項4】
前記検出手段は、前記シートベルトの移動により移動される移動部材を有し、前記移動部材の移動に基づき前記シートベルトの移動を検出する請求項1記載のシートベルト変位検出装置。
【請求項5】
前記シートベルトを押圧して前記移動部材に接触させる押圧手段を備えた請求項4記載のシートベルト変位検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−182827(P2011−182827A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48203(P2010−48203)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】