説明

シート供給装置および画像形成装置

【課題】シートの重送を防止して、転写ニップへ記録シートを安定的に搬送する。
【解決手段】供給ローラ41bの回転によって第1位置に記録シートが重送されると、分離ローラ42aは、トルクリミッター42kを介して伝達される回転力によってカウンタ方向に回転される。これにより、分離ローラ42aに接した記録シートはシート収容部側に戻され、1枚の記録シートが第1位置を通過する。第1位置を通過した記録シートは供給ローラ41bの搬送方向下流側で、供給ローラ41bと同軸で一体回転する第1搬送ローラ41cおよび第2搬送ローラ41dと、第1サブローラ41fおよび第2サブローラ41gとのそれぞれの圧接によって形成された搬送ニップへ供給されて、搬送ニップから転写位置へ搬送される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート供給装置及びこれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ、これらの複合機等の画像形成装置では、通常、感光体ドラム、中間転写ベルト等の像担持体上に形成されたトナー画像が、給紙部から搬送経路に沿って搬送される記録紙(記録シート)上に転写された後に、定着ユニットによって記録紙に定着させる構成になっている。
記録紙は、シート収容カセット内に積載状態で収容されており、給紙装置によって、最上位の記録紙が搬送経路へ供給される。搬送経路には、通常、レジストローラが設けられており、給紙装置によって搬送経路に供給された記録紙は、レジストローラにまで搬送されて、レジストローラにより、所定のタイミングで、像担持体上のトナー画像が転写される転写位置へと搬送される。
【0003】
このような構成に対して、特許文献1には、給紙ローラによって送り出された記録紙を、レジストローラを用いることなく、直接、転写位置へ搬送する給紙装置が開示されている。特許文献1に開示された給紙装置は、給紙ローラによって給紙される記録紙の先端部が、転写位置に到達した後も、給紙ローラによる記録紙の給紙が継続される。給紙ローラには当接コロが圧接されており、当接コロは、転写位置において記録紙が搬送されている間も、記録紙のスリップを防止して搬送速度の変動を抑制するようになっている。
【0004】
このような構成により、レジストローラを設ける必要がなく、従って、レジストローラを駆動および停止させるためのクラッチ等も不要になるために、部品点数を少なくすることができ、しかも、画像形成装置を小型化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−301556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の給紙装置では、給紙ローラには、さばき部材、分離ローラ等を圧接させて、給紙カセットから記録紙が重送されることを防止する構成になっており、さばき部材、分離ローラ等によって重送が防止された記録紙が、給紙ローラと当接コロとの圧接位置へ搬送される。
しかしながら、さばき部材、分離ローラ等によって記録紙の重送を防止するためには、さばき部材を高圧力によって給紙ローラに圧接させる必要がある。これにより、搬送される記録紙には、さばき部材、分離ローラ等が圧接されることによる抵抗力が加わり、当接コロによる記録紙の搬送速度の変動を効果的に抑制することができないおそれがある。その結果、記録紙を転写位置へ安定的に搬送できないおそれがある。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するものであり、その目的は、シートの重送を確実に防止することができるとともに、転写位置にまでシートを安定的に搬送することができるシート供給装置を提供することにある。本発明の他の目的は、そのようなシート供給装置を備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るシート供給装置は、シート収容部に積載されたシート束からシートを1枚ずつ分離して、像担持体上に担持された画像を転写する転写位置へ搬送するシート供給装置であって、回転により前記シート束の最上位のシートを前記転写位置方向へ繰り出す供給ローラと、当該供給ローラの回転方向に対してカウンタ方向への回転力が伝達されて、繰り出された前記最上位のシートを介して前記供給ローラの第1位置に当接し、当該シートを前記シート束の次のシートから分離する分離ローラと、当該分離ローラに、前記カウンタ方向の回転力を、トルクリミッターを介して伝達する伝達機構と、前記供給ローラと同軸上であってその両側に少なくとも1つずつ配置され、当該供給ローラと一体回転する搬送ローラと、前記第1位置よりもシート搬送方向下流側の第2位置で、前記搬送ローラに圧接されて搬送ニップを確保し、前記搬送ローラとともに回転し、前記第1位置を通過した後のシートを前記搬送ニップを通過させて前記転写位置に搬送するサブローラと、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るシート供給装置は、シート収容部に積載されたシート束からシートを1枚ずつ分離して、像担持体上に担持された画像を転写する転写位置へ搬送するシート供給装置であって、回転により前記シート束の最上位のシートを前記転写位置方向へ繰り出す供給ローラと、当該供給ローラの回転方向に対してカウンタ方向への回転力が伝達されて、繰り出された前記最上位のシートを介して前記供給ローラの第1位置に当接し、当該シートを前記シート束の次のシートから分離する分離ローラと、当該分離ローラに、前記カウンタ方向の回転力を、トルクリミッターを介して伝達する伝達機構と、前記第1位置よりもシート搬送方向下流側の第2位置で、前記供給ローラに圧接されて搬送ニップを確保し、前記供給ローラとともに回転し、前記第1位置を通過した後のシートを前記搬送ニップを通過させて前記転写位置に搬送するサブローラと、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る画像形成装置は、前記シート供給装置を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のシート供給装置では、第1位置に複数のシートが重送されると、分離ローラは、トルクリミッターを介して伝達される回転力によってカウンタ方向へ回転することにより、シートを1枚ずつ分離する。このために、分離ローラを供給ローラに強く押し付けなくても、効果的にシートの重送を防止することができる。また、第1位置を通過したシートは、供給ローラと一体回転する搬送ローラにサブローラが圧接されて形成された搬送ニップ内に供給され、搬送ローラの回転力により転写位置へ搬送される。この場合、供給ローラには、分離ローラによる大きな負荷が加わらないために、供給ローラと一体回転する搬送ローラを安定的に回転させることができる。従って、搬送ローラの回転によって、搬送ニップを通過するシートを安定的に転写位置へ搬送することができる。
【0012】
なお、供給ローラにサブローラが圧接されて搬送ニップが形成されている場合にも、同様に、分離ローラを供給ローラに強く押し付ける必要がなく、供給ローラには、分離ローラによる大きな負荷が加わらないために、供給ローラを安定的に回転させることができる。従って、供給ローラの回転によって、搬送ニップを通過するシートを安定的に転写位置へ搬送することができる。
【0013】
好ましくは、前記搬送ローラの外径は、前記供給ローラよりも小さいことを特徴とする。
好ましくは、前記伝達機構は、前記供給ローラの回転軸から回転駆動力を入力して、入力した回転駆動力を前記カウンタ方向の回転力に変換することを特徴とする。
好ましくは、前記伝達機構は、前記サブローラの回転軸から回転駆動力を入力して、入力した回転駆動力を前記カウンタ方向の回転力に変換することを特徴とする。
【0014】
好ましくは、前記伝達機構は、前記分離ローラが、前記供給ローラに追従して前記トルクリミッターを介して伝達される回転力に抗して回転することにより、付勢力を蓄積する付勢部材を有し、当該付勢部材によって蓄積された付勢力を前記カウンタ方向の回転力として伝達することを特徴とする。
好ましくは、前記第1位置において、前記分離ローラと前記供給ローラとによってニップが確保されていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係るシート供給装置が設けられたプリンタの構成を説明するための模式図である。
【図2】図1に示すプリンタに備えられたシート供給装置の構成を説明するための主要部を模式的に示す斜視図である。
【図3】(a)〜(c)は、それぞれ、図2に示すシート供給装置の動作説明のための説明図である。
【図4】図1に示すプリンタに備えられたシート供給装置の他の実施形態における構成を説明するための主要部を模式的に示す斜視図である。
【図5】図1に示すプリンタに備えられたシート供給装置のさらに他の実施形態における構成を説明するための主要部を模式的に示す斜視図である。
【図6】図1に示すプリンタに備えられたシート供給装置のさらに他の実施形態における構成を説明するための主要部を模式的に示す斜視図である。
【図7】(a)〜(e)は、それぞれ、図6に示すシート供給装置の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施形態1]
<画像形成装置の構成>
図1は、本発明の実施形態に係るシート供給装置が備えられた画像形成装置の一例であるプリンタの構成を説明するための模式図である。このプリンタは、記録紙、OHPシート等の記録シート上にモノクロのトナー画像を形成するようになっている。
【0017】
図1に示す画像形成装置は、矢印Aで示す方向に回転駆動される感光体ドラム11を有している。感光体ドラム11は、画像形成装置の正面側から背面側に沿って水平状態で支持されている。
感光体ドラム11の周囲には、電子写真方式によってトナー画像を記録シート上に形成するための帯電装置12、露光装置13、現像装置14、転写ローラ15が、感光体ドラム11の回転方向に沿って、その順番で設けられている。
【0018】
このプリンタでは、図示しない制御部において、外部機器から入力される画像データがレーザダイオードの駆動信号に変換され、その駆動信号によって、露光装置13に設けられたレーザダイオードが駆動される。これにより、露光装置13からは画像データに応じたレーザ光Lが感光体ドラム11の表面に照射される。感光体ドラム11の表面は、予め帯電装置12によって所定電位に帯電されており、露光装置13から照射されるレーザ光Lが露光されることより、感光体ドラム11の表面上に静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像装置14においてトナーによって現像されてトナー画像として可視化される。
【0019】
感光体ドラム11の下方には、記録紙、OHPシート等の複数枚の記録シートが積載状態で収容されたシート収容カセット21が設けられており、シート供給装置40によってシート収容カセット21内の最上位の記録シート(以下、この最上位の記録シートをS1とする)が1枚ずつ繰り出される。シート供給装置40によってシート収容カセット21から繰り出された記録シートS1は、搬送経路23内を感光体ドラム11に向けて搬送される。
【0020】
感光体ドラム11の側方には、矢印B方向に回転する転写ローラ15が、感光体ドラム11に圧接した状態で設けられており、転写ローラ15と感光体ドラム11との圧接によって転写ニップが形成されている。搬送経路23を通過した記録シートS1は、転写ニップ内に搬送される。
このように、搬送経路23には、レジストローラが設けられていないために、シート供給装置40から搬送経路23に供給される記録シートS1は、シート供給装置40によって、直接、転写ニップにまで搬送される。
【0021】
転写ニップ内に進入した記録シートS1が転写ニップを通過する間に、転写ローラ15に印加された転写電圧によって発生する転写電界の作用により、感光体ドラム11上に担持されたトナー画像が記録シートS1上に転写される。
トナー画像が転写された記録シートS1は、剥離爪16によって感光体ドラム11から剥離されて定着ユニット30へ搬送される。
【0022】
なお、トナー画像が記録シートS1に転写された感光体ドラム11の表面は、クリーニング装置17によってクリーニングされる。
定着ユニット30は、相互に水平方向に並んで配置された加熱ローラ31および定着ローラ32と、加熱ローラ31および定着ローラ32に巻き掛けられて周回移動する定着ベルト33と、定着ベルト33を挟んで定着ローラ32に対向するように水平方向に並んで配置された加圧ローラ34とを有している。定着ベルト33および加圧ローラ34は、ハウジング35の内部に、水平な状態で正面側および背面側に沿って収容されている。
【0023】
加熱ローラ31の内部にはヒータランプが設けられており、加熱ローラ31に巻き掛けられた定着ベルト33がヒータランプによって加熱される。定着ベルト33と加圧ローラ34との圧接部分は、トナー画像が転写された記録シートS1が通過する定着ニップになっている。
トナー画像が転写された記録シートS1は、定着ニップを通過する間に、記録シートS1上のトナー画像が加熱ベルト33によって所定の定着温度に加熱されて記録シートS1上に定着される。
【0024】
定着ニップを通過した記録シートS1は、加熱ベルト33および加圧ローラ34によって排紙ローラ24へ搬送され、排紙ローラ24によって排紙トレイ19上に排出される。
<シート供給装置の構成>
図1に示すように、シート供給装置40は、感光体ドラム11の下方に位置するシート収容カセット21に対して、搬送経路23側の側部(シート収容カセット21内の記録シートが供給される方向の下流側の側部)近傍に設けられている。
【0025】
図2は、シート供給装置40における主要部の構成を説明するための模式的な斜視図である。また、図3(a)〜(c)は、それぞれ、シート供給装置40の動作を説明するための模式図である。
図2および図3(a)に示すように、シート供給装置40は、シート収容カセット21内に収容された記録シート束における最上位の記録シートS1を感光体ドラム11へ供給するシート供給部41と、シート供給部41の下側に配置されたシート分離部42とを有している。シート分離部42は、シート収容カセット21内に収容された最上位の記録シートS1の下側に位置する2枚目の記録シート(以下、この記録シートをS2(図3(a)参照)とする)を最上位の記録シートS1から分離する。
【0026】
図2に示すように、シート供給部41は、シート収容カセット21内に収容された最上位の記録シートS1の搬送方向とは直交する方向(以下、幅方向とする)の中央部に対向して配置された供給ローラ41bと、供給ローラ41bの幅方向の両側にそれぞれ1つずつ配置された第1搬送ローラ41cおよび第2搬送ローラ41d(図2参照)と、第1搬送ローラ41cおよび第2搬送ローラ41dのそれぞれに圧接された第1サブローラ41fおよび第2サブローラ41g(図2参照)とを有している。
【0027】
供給ローラ41b、第1搬送ローラ41c、第2搬送ローラ41dは、それぞれの軸心部を貫通する第1回転軸41aに一体回転可能に取り付けられており、第1回転軸41aが矢印D1で示す方向に回転されることにより、それぞれ同方向に回転される。
供給ローラ41bは一定の外径を有しており、第1搬送ローラ41cおよび第2搬送ローラ41dの外径は、相互に等しく、それぞれが、供給ローラ41bよりも小さな一定の外径になっている。第1搬送ローラ41cおよび第2搬送ローラ41dは、供給ローラ41bとはそれぞれ等しい間隔をあけて配置されている。
【0028】
シート収容カセット21内に収容された記録シートは、搬送経路23側に位置する側縁が上方に向って付勢されており、最上位の記録シートS1の搬送経路23側に位置する側縁部が供給ローラ41bに当接されるようになっている。供給ローラ41bは、第1回転軸41aとともに、矢印D1で示す方向に回転されると、図3(a)に示すように、供給ローラ41bに当接された記録シートS1と供給ローラ41bとの間に摩擦力が作用し、この摩擦力が記録シートS1を搬送させる搬送力F1になる。記録シートS1は、この搬送力F1によって、シート収容カセット21から搬送経路23へ繰り出し搬送される。
【0029】
第1回転軸41aは、画像形成装置の正面側および背面側において垂直状態で配置された正面側フレーム(図示せず)および背面側フレーム(図示せず)のそれぞれに回転可能に架設されている。
第1回転軸41aの背面側の端部は、画像形成装置の背面側フレームを貫通して背面側に延出しており、その延出側の端部に、入力ギア41eが取り付けられている。入力ギア41eは、駆動モータ44からの動力が伝達されることによって、矢印D1で示す方向に回転される。入力ギア41eが矢印D1で示す方向に回転されると、第1回転軸41aも同方向に回転され、第1回転軸41aと一体となった供給ローラ41b、第1搬送ローラ41c、第2搬送ローラ41dのそれぞれが矢印D1で示す方向に回転される。
【0030】
図3(a)に示すように、第1サブローラ41fおよび第2サブローラ41gは、第1搬送ローラ41cおよび第2搬送ローラ41dの外周面における最下部から回転方向下流側に、1/6周程度離れた位置にそれぞれ圧接されている。第1サブローラ41fおよび第2サブローラ41gは、正面側フレームおよび背面側フレームにそれぞれ水平状態で支持された支持軸41hに回転可能に取り付けられている。
【0031】
第1サブローラ41fおよび第2サブローラ41gは、第1搬送ローラ41cおよび第2搬送ローラ41dよりも小さな一定の外径を有しており、それぞれの外径が等しくなっている。
第1サブローラ41fおよび第2サブローラ41gと、第1搬送ローラ41cおよび第2搬送ローラ41dのそれぞれとの圧接位置は、記録シートS1における幅方向の正面側および背面側のそれぞれの側部が通過する第1搬送ニップおよび第2搬送ニップになっている。
【0032】
第1サブローラ41fおよび第2サブローラ41gは、第1搬送ローラ41cおよび第2搬送ローラ41dのそれぞれの回転に追従して、矢印D2で示す方向(第1搬送ローラ41cおよび第2搬送ローラ41dの回転方向とは逆方向)に回転する。従って、第1搬送ニップにおいて、第1サブローラ41fおよび第1搬送ローラ41cの外周面同士が同じ方向(順方向)に周回移動し、第2搬送ニップにおいても、同様に、第2サブローラ41gおよび第2搬送ローラ41dの外周面同士が順方向に周回移動する。
【0033】
シート分離部42には、供給ローラ41bに対して下方から当接された分離ローラ42aが設けられている。分離ローラ42aは、供給ローラ41bよりも小さな一定の外径を有している。分離ローラ42aは、供給ローラ41bと同じ軸方向長さになっており、図示しないばねによって供給ローラ41bに向って付勢されることにより、供給ローラ41bの外周面とは軸方向の全長にわたって当接している。
【0034】
分離ローラ42aと供給ローラ41bとの当接部分は、記録シートS1における幅方向の中央部が通過する際に、記録シートS1を1枚ずつに分離する分離位置になっている。分離された記録シートS1は、分離ローラ42aと供給ローラ41bとの当接によって形成されたニップ部において、供給ローラ41bの回転により、その回転方向(矢印D1で示す方向)に沿って搬送される。
【0035】
なお、供給ローラ41bと分離ローラ42aとが相互に当接された分離位置に形成されるニップ部は、重送されるシートを分離できればよいために、両ローラが線接触状態および面接触状態のいずれであってもよい。
分離ローラ42aの軸心部にはローラ回転軸42hが貫通しており、ローラ回転軸42hに分離ローラ42aが取り付けられている。ローラ回転軸42hと分離ローラ42aとの間には、ローラ回転軸42hからの動力を分離ローラ42aに伝達するトルクリミッター42kが設けられている。
【0036】
ローラ回転軸42hの両側の端部は、正面側ブラケット42dおよび背面側ブラケット42eによって回転可能に支持されている。正面側ブラケット42dおよび背面側ブラケット42eは、ローラ回転軸42hに対して供給ローラ41bから離れる方向に延びる帯板状をしており、それぞれが、例えば画像形成装置の底面に対して固定された状態になっている。
【0037】
分離ローラ42aは、シート収容カセット21内に収容された記録シート束に対して、搬送経路23側の側縁に対向するように配置されている。従って、図3(a)に示すように、分離ローラ42aと供給ローラ41bとが当接した分離位置は、供給ローラ41bの外周面の最下部に対して回転方向下流側に若干離れた位置に形成されている。
図2に示すように、分離ローラ42aが取り付けられたローラ回転軸42hの正面側に位置する端部は、正面側ブラケット42dから正面側に突出しており、その端部に、第1ギア42fが一体回転可能に取り付けられている。
【0038】
なお、分離ローラ42aとローラ回転軸42hとの間に設けられたトルクリミッター42kは、分離ローラ42aに対して供給ローラ41bの回転方向と同方向(矢印D4で示す方向)、すなわち、分離位置において供給ローラ41bの回転方向に対してカウンタ方向への回転力を伝達するようになっている。
トルクリミッター42kは、後述するように、分離ローラ42aに矢印D4とは逆方向(図3(a)において矢印D6で示す方向)に、予め設定されたトルクよりも大きなトルクが加わると、ローラ回転軸42hから分離ローラ42aへの動力伝達状態を解消して、分離ローラ42aに加わるトルクにより、分離ローラ42aを矢印D6で示す方向(供給ローラ41bの回転方向に対して順方向)へ自由に回転させる。
【0039】
正面側ブラケット42dおよび背面側ブラケット42eにおける供給ローラ41bから離れた端部には、ローラ回転軸42hに平行になった第2回転軸42bが設けられている。第2回転軸42bは、背面側ブラケット42eよりも背面側に延びており、画像形成装置の背面側フレームに回転可能に支持されている。
第2回転軸42bにおける背面側の端部は、画像形成装置の背面側フレームを貫通しており、その端部に、伝動ギア42cが一体回転可能に取り付けられている。伝動ギア42cは、シート供給部41に設けられた入力ギア41eに噛み合っており、従って、入力ギア41eの回転が伝達されて、入力ギア41eとは逆方向である矢印D3で示す方向に回転する。伝動ギア42cの回転により、第2回転軸42bは、伝動ギア42cと一体となって同方向(D3方向)に回転する。
【0040】
第2回転軸42bの正面側の端部は、正面側ブラケット42dから正面側に突出しており、その端部に、第2ギア42gが取り付けられている。第2ギア42gは、第2回転軸42bとは一体となって回転する。第2ギア42gには、ローラ回転軸42hに取り付けられた第1ギア42fが噛み合っている。従って、第1ギア42fは、第2ギア42gの回転方向とは逆方向に回転される。
【0041】
第1ギア42fが取り付けられたローラ回転軸42hには、第1ギア42fに伝達された回転力が付加される。ローラ回転軸42hと分離ローラ42aとの間に設けられたトルクリミッター42kは、ローラ回転軸42hに付加された回転力による回転方向とは逆方向に作用するトルクが、予め設定された所定のトルク(以下、上限トルクFtする)よりも小さい場合には、ローラ回転軸42hに付加された回転力を分離ローラ42aに伝達する。
【0042】
この場合、駆動モータ44の回転により第1回転軸41aがD1方向へ回転されると、供給ローラ41bが同方向(D1方向)に回転される。従って、分離ローラ42aにトルクリミッター42kを介して伝達される回転力の回転方向は、供給ローラ41bの回転方向(D1方向)と同方向、すなわち、分離位置において供給ローラ41bの回転方向に対してカウンタ方向になる。
【0043】
トルクリミッター42kは、ローラ回転軸42hの回転方向であるD4方向とは逆方向(図3(a)に示された矢印D6方向(分離位置における供給ローラ41bの回転方向に対して順方向))の負荷(トルク)が分離ローラ42aに加わった場合には、そのトルクが上限トルクFtよりも大きくなると、ローラ回転軸42hから分離ローラ42aへの回転力の伝達を解消して、分離ローラ42aを分離位置における供給ローラ41bとは順方向へ自由に回転する状態とする。
【0044】
この場合の上限トルクFtは、供給ローラ41bに当接されて供給ローラ41bの回転によって搬送力F1で搬送される記録シートS1から分離ローラ42aに加わるトルクによって、矢印D6方向(順方向)へ自由に回転するように、記録シートS1と分離ローラ42aとの表面との摩擦による抵抗を考慮して、記録シートS1に作用する搬送力F1よりも小さく設定されている(F1>Ft)。
【0045】
記録シートS1が供給ローラ41bの回転によって搬送される場合には、供給ローラ41bを回転させる第1回転軸41aの回転力が、第2回転軸42b、第2ギア42g、第1ギア42fを介してローラ回転軸42hに伝達されている。このような状態で、1枚の記録シートS1が、供給ローラ41bの回転による搬送力F1によって分離ローラ42aとの当接位置である分離位置内に進入すると、記録シートS1の下面が分離ローラ42aの外周面に接触した状態になる。これにより、分離ローラ42aには、供給ローラ41bとの摩擦によって記録シートS1に加わる搬送力F1が、矢印D4とは逆方向(矢印D6方向)へのトルクとして加わる。
【0046】
この場合、供給ローラ41bの回転によって記録シートS1に加わる搬送力F1は、トルクリミッター42kに設定された上限トルクFtよりも大きくなっているために、トルクリミッター42kは、ローラ回転軸42hと分離ローラ42aとの回転力伝達状態を解消する。これにより、分離ローラ42aは、ローラ回転軸42hに対して、矢印D6方向(供給ローラ41bに対して順方向)へ自由に回転し得る状態になり、分離ローラ42aは、記録シートS1の搬送に追従して矢印D6方向に回転する。従って、供給ローラ41bの回転によって分離位置に形成されたニップを1枚の記録シートS1が通過する場合には、その記録シートS1は、分離ローラ42aから大きな抵抗を受けることなく円滑に搬送される。
【0047】
なお、分離位置内に複数の記録シートが重送された場合には、分離ローラ42aに対してD4方向とは逆方向であるD6方向(供給ローラ41bに対して順方向)に加わるトルクが、予め設定された上限トルクFtよりも小さくなり、トルクリミッター42kは、ローラ回転軸42hの矢印D4方向への回転力を分離ローラ42aに伝達する。これにより、分離ローラ42aは、供給ローラ41bの回転方向(D1方向)とは同方向に回転する。従って、分離位置において供給ローラ41bに対してカウンタ方向に回転され、それぞれの外周面が相互に逆方向に周回移動する。
【0048】
<シート供給装置の動作>
次に、上記の構成のシート供給装置40の動作を、図2および図3(a)〜(c)に基づいて説明する。図3(a)は、駆動モータ44が駆動されて第1回転軸41aが回転されることによって、供給ローラ41bが矢印D1で示す方向に回転された直後の状態を示しており、供給ローラ41bの回転によって、シート収容カセット21内における最上位の1枚の記録シートS1のみが分離位置内に進入している。
【0049】
このような状態では、分離ローラ42aには、記録シートS1の下面が接触することによって、記録シートS1の搬送力F1が、矢印D6方向へのトルクとして加わる。この搬送力F1は、前述したように、トルクリミッター42kに設定された上限トルクFtよりも大きくなっているために(F1>Ft)、トルクリミッター42kは、ローラ回転軸42hと分離ローラ42aとの回転力伝達状態を解消する。
【0050】
これにより、記録シートS1に当接された分離ローラ42aの外周面が、供給ローラ41bによって搬送される記録シートS1から加わる搬送力F1により、記録シートS1の搬送方向に沿って周回移動する。従って、供給ローラ41bによって搬送される記録シートS1には、分離ローラ42aから大きな抵抗力が加わるおそれがなく、記録シートS1は分離位置を所定の搬送速度で安定的に通過する。
【0051】
分離位置を通過した記録シートS1は、第1サブローラ41fおよび第2サブローラ41gに向って搬送される。第1サブローラ41fおよび第2サブローラ41gは、第1搬送ニップおよび第2搬送ニップのそれぞれにおいて、第1搬送ローラ41cおよび第2搬送ローラ41dに圧接されていることから、第1搬送ローラ41cおよび第2搬送ローラ41dの回転に追従して回転された状態になっている。
【0052】
第1サブローラ41fおよび第2サブローラ41gに向って搬送される記録シートS1の先端が第1サブローラ41fおよび第2サブローラ41gに当接すると、当接した記録シートS1の先端が第1サブローラ41fおよび第2サブローラ41gの回転によって、第1搬送ニップおよび第2搬送ニップへ案内される。これにより、図3(b)に示すように、分離位置を通過した記録シートS1における幅方向の両側の側部が第1搬送ニップおよび第2搬送ニップ内に進入する。
【0053】
第1搬送ニップ内および第2搬送ニップ内に進入した記録シートS1は、幅方向の両側の各側部が、第1サブローラ41fおよび第2搬送ローラ41dのそれぞれによって、第1搬送ローラ41cおよび第2サブローラ41gに押し付けられた状態になる。これにより、第1搬送ローラ41cおよび第2搬送ローラ41dの回転力が記録シートS1に効率よく伝達され、記録シートS1は、所定の搬送速度で搬送経路23を介して転写ニップにまで安定的に搬送される。
【0054】
特に、第1搬送ローラ41cおよび第2搬送ローラ41dが、供給ローラ41bの両側に、供給ローラ41bと同軸状態で配置されていることにより、分離位置を通過した記録シートS1の幅方向の両側で、均等な回転力が伝達される。これにより、記録シートS1は、幅方向の両側の側部が第1搬送ニップおよび第2搬送ニップによって安定して搬送される。
【0055】
このように、それぞれの搬送ニップに搬送される記録シートS1の上面は、当初は第1搬送ローラ41cおよび第2搬送ローラ41dに接触しない状態になっているが、それぞれの搬送ニップ内に進入すると、第1搬送ローラ41cおよび第2搬送ローラ41dに圧接される。これにより、記録シートS1に第1搬送ローラ41cおよび第2搬送ローラ41dの回転力が伝達され、これらの回転力が搬送力となって記録シートS1が搬送される。
【0056】
この場合、第1搬送ローラ41cおよび第2搬送ローラ41dが供給ローラ41bよりも小径であることから、供給ローラ41bにより、シート収容カセット21内における最上位の記録シートS1を繰り出すとき(ピックアップ時)には、第1搬送ローラ41cおよび第2搬送ローラ41dのそれぞれが最上位の1枚の記録シートS1の上面に接触しないために、ピックアップ動作をスムーズに行うことができる。
【0057】
また、第1搬送ローラ41cおよび第2搬送ローラ41dのそれぞれの外径は、供給ローラ41bの外径よりも小さくなっていることにより、それぞれの周速が供給ローラ41bよりも遅くなる。従って、搬送ニップでの搬送力は、分離位置での記録シートの分離を妨げる方向に働くことがない。この場合、分離位置と搬送ニップとにおける記録シートS1の搬送速度の差により、記録シートS1の搬送性および分離性が低下するおそれがある。このために、そのような搬送性および分離性が低下しない範囲内で、第1搬送ローラ41cおよび第2搬送ローラ41dと供給ローラ41bとの外径の差が決められる。
【0058】
その後、記録シートS1の先端が、感光体とドラム11と転写ローラ15とによって形成された転写ニップに到達すると、当該記録シートS1は、供給ローラ41bに圧接された状態を維持している。記録シートS1が、搬送経路23を通過する間、供給ローラ41b並びに第1搬送ローラ41cおよび第2搬送ローラ41dの回転が継続されており、従って、記録シートS1は、供給ローラ41b並びに第1搬送ローラ41cおよび第2搬送ローラ41dの回転により、搬送経路23内を一定の搬送速度で通過して、転写ニップ内に確実に進入する。その結果、搬送ニップから送り出された記録シートS1を、所定のタイミングで転写ニップ内に進入させることができる。
【0059】
記録シートS1が転写ニップ内に進入すると、記録シートS1は、図1に矢印Aで示す方向に回転された感光体ドラム11に圧接されて、感光体ドラム11と一体となって搬送される。そして、転写ニップを通過する間に、感光体ドラム11上のトナー画像が、感光体ドラム11に圧接された記録シートS1上に転写される。従って、感光体ドラム11上のトナー画像が、記録シートS1に対して、ずれた状態で転写されるおそれがない。
【0060】
このようにしてシート収容カセット21内の最上位の記録シートS1が搬送されている間は、記録シートS1の下側に位置する2枚目の記録シートS2は、搬送される記録シートS1との間の摩擦力によって、最上位の記録シートS1とともに搬送(重送)されるおそれがある。最上位の記録シートS1とともに2枚目の記録シートS2が重送されると、図3(a)および(b)に示すように、分離ローラ42aに突き当たった状態になる。
【0061】
この場合、分離ローラ42aは、最上位の記録シートS1の搬送に追従して矢印D6で示す方向に回転しているために、図3(c)に示すように、2枚目の記録シートS2が、記録シートS1との摩擦力によって分離位置内に進入するおそれがある。
2枚目の記録シートS2が、最上位の記録シートS1とともに分離位置内に進入すると、2枚目の記録シートS2が分離ローラ42aの外周面に接触した状態になる。これにより、分離ローラ42aには2枚目の記録シートS2の搬送力F2によるトルクが加わる。
【0062】
分離ローラ42aに作用する2枚目の記録シートS2の搬送力F2は、供給ローラ41bの回転による最上位の記録シートS1の搬送力が2枚目の記録シートS2に伝達されることによって生じる。供給ローラ41bの外周面は、搬送される記録シートS1に大きな摩擦力が作用するように、最上位の記録シートS1よりも摩擦係数が高くなっている。
これに対して、最上位の記録シートS1と2枚目の記録シートS2とは、同一の材料によって構成されているために、それぞれの摩擦係数はほぼ等しくなっている。従って、供給ローラ41bと最上位の記録シートS1との摩擦力によって生じる最上位の記録シートS1の搬送力F1に対して、最上位の記録シートS1と2枚目の記録シートS2との摩擦力によって生じる2枚目の記録シートS2の搬送力F2は小さくなる。この場合の2枚目の記録シートS2の搬送力F2は、トルクリミッター42kに設定されている上限トルクFtよりも小さくなっている(F1>Ft>F2)。
【0063】
これにより、トルクリミッター42kは、ローラ回転軸42hの回転力を分離ローラ42aに伝達する状態になり、図3(c)に示すように、分離ローラ42aは、ローラ回転軸42hの回転力が伝達されることにより、ローラ回転軸42hと一体となって矢印D4で示す方向(分離位置において供給ローラ41bの回転方向に対してカウンタ方向)に回転する。
【0064】
この場合、分離ローラ42aの外周面は、分離位置において、最上位の記録シートS1の搬送方向とは逆方向に沿うように周回移動し、2枚目の記録シートS2には、1枚目の記録シートS1との摩擦力による搬送力F2よりも大きなトルク(搬送力)が加わる。その結果、2枚目の記録シートS2は、分離ローラ42aの回転により、分離位置からシート収容カセット21側に戻される。
【0065】
このように、シート収容カセット21内の2枚目の記録シートS2は、搬送方向の先端部が分離位置内に進入しても、シート収容カセット21側に戻されるために、分離位置を通過するおそれがない。
従って、一対の第1搬送ローラ41cおよび第2搬送ローラ41dが、供給ローラ41bの回転方向下流側において分離ローラ42aに近接して配置されていても、最上位の記録シートS1とともに、2枚目の記録シートS2が第1搬送ローラ41cおよび第2搬送ローラ41dにまで搬送されるおそれがない。その結果、最上位の記録シートS1とともに2枚目の記録シートS2が、第1搬送ローラ41cおよび第2搬送ローラ41dによって搬送されることを確実に防止することができる。
【0066】
また、2枚目の記録シートS2が、分離ローラ42aに付加された回転力による回転によってシート収容カセット21側に戻されるために、分離ローラ42aを供給ローラ41bに強く圧接させる必要がない。しかも、最上位の記録シートS1と2枚目の記録シートS2との間に作用する摩擦力が小さいために、最上位の記録シートS1に搬送抵抗となるような大きな力が加わるおそれがなく、記録シートS1を、供給ローラ41bの回転によって所定の搬送速度で安定的に搬送することができる。
【0067】
第1搬送ニップおよび第2搬送ニップには、1枚の記録シートS1が搬送されるために、第1サブローラ41fおよび第2サブローラ41gのそれぞれによって、第1搬送ローラ41cおよび第2搬送ローラ41dに押し付けられた記録シートS1には、第1搬送ローラ41cおよび第2搬送ローラ41dの回転が効率よく伝達される。これにより、記録シートS1は所定の搬送速度で転写ニップにまで安定的に搬送される。
【0068】
なお、本実施形態においては、第1搬送ローラ41cおよび第2搬送ローラ41dの外径が、供給ローラ41bの外径よりも小さくなっていたが、第1搬送ローラ41cおよび第2搬送ローラ41dの外径が供給ローラ41bの外径に等しくなっていてもよい。また、第1搬送ローラ41cおよび第2搬送ローラ41dと供給ローラ41bとを一体に構成してもよい。さらには、第1搬送ローラ41cおよび第2搬送ローラ41dのそれぞれが複数設けられる構成であってもよい。
【0069】
[実施形態2]
図4は、実施形態2におけるシート供給装置40の主要部の構成を説明するための模式的な斜視図である。本実施形態のシート供給装置40では、図2に示す実施形態1のシート供給装置40に設けられた一対の第1搬送ローラ41cおよび第2搬送ローラ41dは設けられず、1つのサブローラ41jが供給ローラ41bの外周面に圧接されることによって搬送ニップを形成している。なお、搬送ニップは、前記実施形態1のシート搬送機構40と同様に、分離位置から回転方向下流側に1/6周程度離れた位置に形成されている。
【0070】
サブローラ41jは、画像形成装置の背面側フレームに水平状態で支持された支持軸41hに回転可能に取り付けられている。サブローラ41jは、供給ローラ41bの回転に追従して、矢印D2で示す方向(供給ローラ41bの回転方向D1とは逆方向)に回転する。従って、搬送ニップにおいては、供給ローラ41bおよびサブローラ41jの外周面が同じ方向(順方向)に周回移動する。
【0071】
本実施形態のシート供給装置40におけるその他の構成は、図2に示す実施形態1のシート供給装置40と同様になっている。
本実施形態のシート供給装置40においても、シート分離部42の機能は、実施形態1におけるシート供給装置40のシート分離部42と同様であり、従って、シート収容カセット21内の最上位の記録シートS1とともに搬送(重送)される2枚目の記録シートS2は、分離位置を通過することなく、シート収容カセット21内に戻される。その結果、分離位置を通過した1枚の記録シートS1のみが、供給ローラ41bとサブローラ41jとの圧接によって形成された搬送ニップへ搬送される。
【0072】
この場合も、分離位置を通過する記録シートS1に大きな搬送抵抗が加わるおそれがなく、供給ローラ41bの回転によって所定の速度で分離位置を通過した記録シートS1が、サブローラ41jによって供給ローラ41bに押し付けられる。これにより、供給ローラ41bの回転が効率よく記録シートS1に伝達され、記録シートS1を、転写ニップにまで所定の搬送速度で搬送することができる。従って、供給ローラ41bの回転によって、記録シートS1を、所定のタイミングで転写ニップへ安定的に搬送することができる。
【0073】
なお、本実施形態2では、前記実施形態1と同様に、分離ローラ42aに、供給ローラ41bが取り付けられた第1回転軸41aの回転が伝達される構成であったが、このような構成に限らず、例えば、後述の実施形態3に示すように、供給ローラ41bに圧接されたサブローラ41jの回転を、分離ローラ42aに伝達するように構成してもよい。
[実施形態3]
図5は、実施形態3におけるシート供給装置40の主要部の構成を説明するための模式的な斜視図である。本実施形態のシート供給装置40では、図2に示す実施形態1におけるシート供給装置40と同様に、第1回転軸41aには、供給ローラ41bを挟んで第1搬送ローラ41cおよび第2搬送ローラ41dが1つずつ取り付けられている。第1回転軸41aには、駆動モータ44からの回転が入力ギア41eを介して伝達されている。
【0074】
第1搬送ローラ41cおよび第2搬送ローラ41dには、第1サブローラ41fおよび第2サブローラ41gがそれぞれ圧接されており、第1搬送ローラ41cおよび第2搬送ローラ41dのそれぞれの回転に追従して第1サブローラ41fおよび第2サブローラ41gのそれぞれが回転するようになっている。
第1搬送ローラ41cおよび第2搬送ローラ41dに対する第1サブローラ41fおよび第2サブローラ41gの圧接位置は、前記実施形態1と同様に、第1搬送ローラ41cおよび第2搬送ローラ41dのそれぞれの外周面における最下部から回転方向下流側に、1/6周程度離れた位置になっている。
【0075】
画像形成装置の正面側に位置する第1サブローラ41fは、第1正面側ブラケット41mおよび第1背面側ブラケット41n間に架設されたローラ回転軸41kに取り付けられている。また、背面側に位置する第2サブローラ41gは、第2正面側ブラケット41pおよび第2背面側ブラケット41q間に架設されたローラ支持軸41rに回転可能に取り付けられている。
【0076】
第1正面側ブラケット41mおよび第1背面側ブラケット41nは、相互に平行な状態で、それぞれ、第1搬送ローラ41cから離れる方向に延出している。ローラ回転軸41kは、第1正面側ブラケット41mおよび第1背面側ブラケット41nにおける第1搬送ローラ41cに近接した端部間に回転可能に架設されている。
第2正面側ブラケット41pおよび第2背面側ブラケット41qも、相互に平行な状態で、それぞれ、第2搬送ローラ41dから離れる方向に向かって延出している。ローラ支持軸41rは、第2正面側ブラケット41pおよび第2背面側ブラケット41qにおける第2搬送ローラ41dに近接した端部間に回転可能に架設されている。
【0077】
ローラ回転軸41kおよびローラ支持軸41rは、それぞれ、第1搬送ローラ41cおよび第2搬送ローラ41dに追従して第1サブローラ41fおよび第2サブローラ41gが回転すると、第1サブローラ41fおよび第2サブローラ41gのそれぞれと一体となって回転する。
第1正面側ブラケット41mおよび第1背面側ブラケット41nと、第2正面側ブラケット41pおよび第2背面側ブラケット41qとは、ローラ回転軸41kおよびローラ支持軸41rのそれぞれと一体となって回転しないように、例えば画像形成装置の底面に取り付けられている。
【0078】
ローラ回転軸41kは、正面側に位置する第1正面側ブラケット41mを貫通して正面側に延出しており、その延出部分に入力側第1歯付きプーリ41sが取り付けられている。入力側第1歯付きプーリ41sは、ローラ回転軸41kと一体的に回転するようになっている。
第1正面側ブラケット41mおよび第1背面側ブラケット41nと、第2正面側ブラケット41pおよび第2背面側ブラケット41qとのそれぞれには、第1搬送ローラ41cおよび第2搬送ローラ41dから離れて位置するそれぞれの端部に、1本の動力伝達軸45が回転可能に支持されている。動力伝達軸45は、第1回転軸41aとは平行に設けられている。
【0079】
動力伝達軸45における正面側の端部は、第1正面側ブラケット41mから正面側に延出しており、その端部に入力側第2歯付きプーリ41tが取り付けられている。入力側第2歯付きプーリ41tは、動力伝達軸45とは一体的に回転するようになっている。入力側第2歯付きプーリ41tと、ローラ回転軸41kに取り付けられた入力側第1歯付きプーリ41sとには、入力側歯付きベルト41uが巻き掛けられている。
【0080】
入力側歯付きベルト41uは、第1サブローラ41fと一体となって回転する入力側第1歯付きプーリ41sの回転により、第1サブローラ41fの回転方向と同方向(矢印D2方向)に周回移動する。入力側歯付きベルト41uの周回移動によって入力側第2歯付きプーリ41tが矢印D7方向に回転し、入力側第2歯付きプーリ41tが取り付けられた動力伝達軸45が同方向に回転する。従って、動力伝達軸45の回転方向(矢印D7方向)は、第1サブローラ41fの回転方向(矢印D2方向)と同方向になっている。
【0081】
シート分離部42に設けられた分離ローラ42aは、ローラ回転軸42hに取り付けられており、ローラ回転軸42hが、正面側ブラケット42dおよび背面側ブラケット42eにおける供給ローラ41bに近接した端部間に回転可能に架設されている。
なお、分離ローラ42aは、前記実施形態1と同様に、供給ローラ41bの最下部から回転方向下流側に若干離れた位置の外周面に当接されており、分離ローラ42aとローラ回転軸42hとの間にトルクリミッター42kが設けられている。トルクリミッター42kの機能は、前記実施形態1のトルクリミッター42kと同様である。
【0082】
ローラ回転軸42hは、正面側ブラケット42dを貫通して、正面側ブラケット42dの正面側に延出しており、その延出部分に、出力側第1歯付きプーリ42pが取り付けられている。出力側第1歯付きプーリ42pは、ローラ回転軸42hとは一体となって回転する。
また、正面側ブラケット42dにおける動力伝達軸45の近傍には、中間回転軸42sが正面側に突出した状態で回転可能に支持されている。中間回転軸42sには、出力側第2歯付きプーリ42qおよび出力側伝動ギア42xが、正面側ブラケット42d側からその順番に、中間回転軸42sと一体回転可能に取り付けられている。
【0083】
出力側第2歯付きプーリ42qと、分離ローラ42aと一体回転可能になった出力側第1歯付きプーリ42pとには、出力側歯付きベルト42rが巻き掛けられている。
出力側伝動ギア42xには、動力伝達軸45に取り付けられた入力側伝動ギア42yが噛み合っている。入力側伝動ギア42yは、動力伝達軸45とは一体的に回転するように動力伝達軸45に取り付けられている。
【0084】
このような構成のシート搬送機構40では、駆動モータ44の回転によって、第1回転軸41aが回転されると、第1回転軸41aと一体的に取り付けられた供給ローラ41b、第1搬送ローラ41c、第2搬送ローラ41dのそれぞれが回転する。従って、第1搬送ローラ41cおよび第2搬送ローラ41dのそれぞれに圧接された第1サブローラ41fおよび第2サブローラ41gが、第1搬送ローラ41cおよび第2搬送ローラ41dの回転に追従して回転する。
【0085】
第1搬送ローラ41cが矢印D1で示す方向に回転すると、第1搬送ローラ41cに圧接された第1サブローラ41fが矢印D2方向に回転し、第1サブローラ41fが一体的に取り付けられたローラ回転軸41kが同方向に回転する。これにより、ローラ回転軸41kに取り付けられた入力側第1歯付きプーリ41sが矢印D2方向に回転して、入力側歯付きベルト41uが同方向に周回移動する。入力側歯付きベルト41uの周回移動により、入力側第2歯付きプーリ41tが同方向(矢印D7方向)に回転し、入力側第2歯付きプーリ41tが取り付けられた動力伝達軸45が同方向に回転する。
【0086】
動力伝達軸45が回転すると、動力伝達軸45に取り付けられた入力側伝動ギア42yが同方向(矢印D7方向)に一体となって回転する。これにより、入力側伝動ギア42yに噛み合った出力側伝動ギア42xが逆方向(矢印D8で示す方向)に回転し、出力側伝動ギア42xが一体的に取り付けられた中間回転軸42sが同方向に回転する。
中間回転軸42sには、出力側第2歯付きプーリ42qも取り付けられており、出力側第2歯付きプーリ42qが中間回転軸42sと一体となって同方向に回転する。これにより、出力側歯付きベルト42rが周回移動し、出力側歯付きベルト42rが巻き掛けられた出力側第1歯付きプーリ42pが、出力側第2歯付きプーリ42qと同方向(矢印D4方向)に回転する。
【0087】
出力側第1歯付きプーリ42pはローラ回転軸42hに取り付けられており、ローラ回転軸42hが出力側第1歯付きプーリ42pと一体となって同方向(矢印D4方向)に回転する。このように、ローラ回転軸42hに矢印D4方向への回転力が伝達されると、前記実施形態1と同様に、ローラ回転軸42hに伝達された回転力は、分離ローラ42aに加わる負荷が予め設定された上限トルクFtよりも小さい場合、トルクリミッター42kによって分離ローラ42aに伝達される。これにより、分離ローラ42aが矢印D4方向に回転される。
【0088】
第1搬送ローラ41cに圧接された第1サブローラ41fの回転力が、トルクリミッター42kを介して分離ローラ42aに伝達されると、分離ローラ42aは、供給ローラ41bと同方向に回転される。従って、分離位置では、分離ローラ42aの外周面は、前記実施形態1のシート供給装置40と同様に、供給ローラ41bの外周面とは逆方向(カウンタ方向)に周回移動する。
【0089】
トルクリミッター42kの機能は、前記実施形態1のトルクリミッター42kの機能と同様になっている。従って、本実施形態のシート供給装置40においても、シート収容カセット21内の最上位の記録シートS1とともに搬送(重送)される2枚目の記録シートS2は、分離位置を通過することなく、分離位置からシート収容カセット21側に戻される。これにより、1枚の記録シートS1だけが確実に分離位置を通過して、第1搬送ニップおよび第2搬送ニップへ搬送される。
【0090】
この場合も、記録シートS1には搬送抵抗となるような大きな力が加わらないために、記録シートS1は、供給ローラ41bの回転によって、所定の搬送速度で安定的に搬送される。
また、1枚の記録シートS1のみが分離位置を通過して、第1搬送ニップおよび第2搬送ニップへ搬送されると、第1搬送ニップおよび第2搬送ニップにおいては、記録シートS1が、第1サブローラ41fおよび第2サブローラ41gのそれぞれによって、第1搬送ローラ41cおよび第2搬送ローラ41dに押し付けられるために、記録シートS1を、所定の搬送速度で安定的に搬送することができる。その結果、記録シートS1を、所定のタイミングで転写ニップへ搬送することができる。
【0091】
[実施形態4]
図6は、実施形態4におけるシート供給装置40の主要部の構成を説明するための模式的な斜視図である。本実施形態のシート供給装置40は、図2に示す実施形態1におけるシート供給装置40とは、シート分離部42の構成のみが異なっており、シート供給部41の構成は、図2に示す実施形態1と同様になっている。
【0092】
本実施形態のシート供給装置40におけるシート分離部42は、分離ローラ42aが取り付けられたローラ回転軸42hを支持するローラ支持部材42jを有しており、ローラ支持部材42jに、正面側ブラケット42dおよび背面側ブラケット42eが設けられている。ローラ支持部材42jは、支持軸42wに取り付けられており、支持軸42wは、例えば画像形成装置の底面に対して固定されたブラケットにより支持されている。
【0093】
分離ローラ42aとローラ回転軸42hとの間には、前記実施形態と同様に、トルクリミッター42kが設けられている。このトルクリミッター42kは、分離ローラ42aに伝達されるカウンタ方向の回転力よりも大きなトルク(上限トルクFt)が加わると、分離ローラ42aを、ローラ回転軸42hに対して順方向(矢印D6方向)へ自由に回転させる。この場合の上限トルクFtは、前記実施形態1と同様に、シート収容カセット21内の最上位の記録シートS1が供給ローラ41bの回転によって付加される搬送力F1よりも小さくなっている(F1>Ft)。
【0094】
ローラ回転軸42hは、正面側ブラケット42dを貫通して正面側に延出しており、前記実施形態1と同様に、ローラ回転軸42hにおける正面側ブラケット42dから正面側に延出した端部に第1ギア42fが取り付けられている。第1ギア42fには、第2ギア42gが噛み合っている。第2ギア42gは、正面側ブラケット42dおよび背面側ブラケット42e間に回転可能に架設された回転軸42uに取り付けられている。回転軸42uは、正面側の端部が、正面側ブラケット42dから正面側に突出しており、その正面側の端部に第2ギア42gが一体回転可能な状態で取り付けられている。
【0095】
回転軸42uにおける正面側ブラケット42dおよび背面側ブラケット42eの間の部分には、コイルスプリング42zが嵌合されている。コイルスプリング42zは、例えば、金属製の線材をコイル状に巻回して構成されている。コイルスプリング42zを構成する線材の一方の端部は回転軸42uに係止されており、回転軸42uとは一体となって移動する。線材の他方の端部は、背面側ブラケット42eに係止されており、回転軸42uが回転しても、固定された状態になっている。
【0096】
供給ローラ41bに圧接された分離ローラ42aは、供給ローラ41bが回転駆動されない停止状態では、供給ローラ41bに圧接されて停止している。この場合には、コイルスプリング42zは、回転軸42uに対して周方向への付勢力(捩り力)が作用しない状態になっている。
このような状態で、供給ローラ41bがD1方向に回転されると、供給ローラ41bの外周面に圧接された分離ローラ42aが供給ローラ41bの回転に追従して逆方向(矢印D6で示す方向)に回転し、圧接位置における外周面同士が順方向に周回移動する。
【0097】
分離ローラ42aが矢印D6方向に回転すると、トルクリミッター42kが分離ローラ42aとローラ回転軸42hとの動力伝達状態を維持し、ローラ回転軸42hが一体となって同方向に回転する。ローラ回転軸42hの回転は、第1ギア42fおよび第2ギア42gを介して回転軸42uに伝達されて、回転軸42uが矢印D9方向(分離ローラ42aの回転方向D6とは逆方向)に回転される。
【0098】
回転軸42uが矢印D9方向へ回転されると、コイルスプリング42zは、一方の端部が回転軸42uに係止され他方の端部が背面側ブラケット42eに係止されていることにより、回転軸42uの回転方向と同方向(矢印D9方向)に捩られる。これにより、コイルスプリング42zには、D9方向とは逆方向への付勢力が蓄積される。
コイルスプリング42zには、所定の最大付勢力Faが蓄積されるようになっている。この最大付勢力Faは、トルクリミッター42kに設定された上限トルクFtに等しくなるように設定されている(Ft=Fa)。従って、コイルスプリング42zに最大付勢力Faが蓄積された状態で、供給ローラ41bの回転によって、供給ローラ41bに圧接された分離ローラ42aに最大付勢力Faよりも大きなトルクが加わると、分離ローラ42aはローラ回転軸42hに対して自由に回転する。
【0099】
なお、コイルスプリング42zに蓄積される最大付勢力Faは、トルクリミッター42kに設定された上限トルクFtに等しいことから、供給ローラ41bの回転による記録シートS1の搬送力F1よりも小さく(F1>Fa)、また、供給ローラ41bの回転によって搬送される最上位の記録シートS1とともに2枚目の記録シートS2が搬送される場合における2枚目の記録シートS2の搬送力F2よりも大きくなっている(Fa>F2)。
【0100】
従って、コイルスプリング42zに最大付勢力Faが蓄積された状態で、2枚目の記録シートS2が記録シートS1とともに分離位置内に進入すると、供給ローラ41bから分離ローラ42aに加わるトルクが、1枚の記録シートS1が分離位置内に進入したときの搬送力F1よりも小さい搬送力F2になる。これにより、分離ローラ42aは、コイルスプリング42zに蓄積された最大付勢力Faによって、供給ローラ41bに対する従動回転方向(D6方向)とは逆方向(分離位置における供給ローラ41bのカウンタ方向)に回転される。
【0101】
このような構成のシート供給装置40の動作を、図7(a)〜(e)に基づいて説明する。図7(a)は、駆動モータ44の駆動により、供給ローラ41bが矢印D1で示す方向に回転された直後の状態を示しており、供給ローラ41bと分離ローラ42aとが圧接された分離位置には、シート収容カセット21内における最上位の記録シートS1は搬送されていない。この場合には、コイルスプリング42zには、まだ、付勢力は蓄積されていない。
【0102】
このような状態では、前述したように、供給ローラ41bに圧接された分離ローラ42aが供給ローラ41bに追従して矢印D6方向に回転し、コイルスプリング42zには矢印D9方向(分離ローラ42aの回転方向である矢印D6方向に対して逆方向)への付勢力が蓄積される。その後、コイルスプリング42zに最大付勢力Faが蓄積された状態になると、コイルスプリング42zに連結されている回転軸42uが回転停止状態になるが、トルクリミッター42kが分離ローラ42aと回転軸42uとの動力伝達状態を解消するので、分離ローラ42aは回転軸42uに対して矢印D6方向へ自由に回転する状態になる。
【0103】
このような状態で、図7(b)に示すように、供給ローラ41bが回転されると、シート収容カセット21内における最上位の1枚の記録シートS1が搬送されて、分離位置内に進入する。この場合、供給ローラ41bの回転による記録シートS1の搬送力F1は、コイルスプリング42zに蓄積された最大付勢力Faよりも大きくなっているために、分離ローラ42aはローラ回転軸42hに対して矢印D6方向へ自由に回転し、記録シートS1は、分離ローラ42aから大きな搬送力が加わることなく、供給ローラ41bの回転によって搬送されて、分離位置を通過する。
【0104】
分離位置を通過した記録シートS1は、第1サブローラ41fおよび第2サブローラ41gに向って搬送され、回転状態になった第1サブローラ41fおよび第2サブローラ41gに記録シートS1の先端が当接して、第1サブローラ41fおよび第2サブローラ41gの回転により、第1搬送ニップおよび第2搬送ニップへ案内される。これにより、図7(c)に示すように、幅方向の中央部が分離位置を通過した記録シートS1は、幅方向の両側部分が第1搬送ニップおよび第2搬送ニップ内に進入した状態になる。以後、前述した実施形態1と同様にして、記録シートS1が転写ニップに搬送される。
【0105】
最上位の記録シートS1が分離位置を通過する際に、図7(d)に示すように、2枚目の記録シートS2が重送されて分離位置内に進入すると、2枚目の記録シートS2が分離ローラ42aの外周面に接触した状態になり、2枚目の記録シートS2による搬送力F2が分離ローラ42aに加わる。
この場合の搬送力F2は、トルクリミッター42kの上限トルクFtよりも小さいために、ローラ回転軸42hの回転力がトルクリミッター42kによって分離ローラ42aに伝達される。このとき、分離ローラ42aには、コイルスプリング42zによる矢印D4方向の付勢力が作用しているので、その付勢力が、第2ギア42g、第1ギア42f、トルクリミッター42kを介して分離ローラ42aに伝達され、分離ローラ42aは、矢印D4で示す方向(供給ローラ41bとの圧接位置におけるカウンタ方向)に回転される。
【0106】
分離ローラ42aが矢印D4方向に回転されると、2枚目の記録シートS2と接触する分離ローラ42aの外周面の周回移動方向は、最上位の記録シートS1の摩擦力によって搬送される2枚目の記録シートS2の搬送方向とは逆方向になり、しかも、2枚目の記録シートS2の搬送力F2よりも大きなトルク(Fa)が2枚目の記録シートS2に加わる。その結果、図7(e)に示すように、2枚目の記録シートS2は、分離ローラ42aに付加された回転力によって、分離位置からシート収容カセット21側に戻される。
【0107】
このように、本実施形態においても、分離ローラ42aに付加された回転力によって、シート収容カセット21内の2枚目の記録シートS2が、最上位の記録シートS1と重送されることを防止することができる。従って、この場合にも、分離ローラ42aを供給ローラ41bに大きな力で押し付ける必要がなく、記録シートS1に対して加わる搬送抵抗を抑制することができる。その結果、記録シートS1を、所定の搬送速度で転写ニップへ安定的に搬送することができる。
【0108】
なお、分離ローラ42aが矢印D4方向へ回転されることにより、コイルスプリング42zに蓄積された付勢力が放出されるが、1枚の記録シートS1だけが分離位置内を通過する状態になると、分離ローラ42aの回転方向が矢印D4方向からD6方向に戻る。これにより、コイルスプリング42zには付勢力が再度蓄積されるので、次のシートが給紙されると、以後、図7(b)〜(e)に基づいて説明した上記の動作が実行される。
【0109】
なお、2枚目の記録シートS2が、最上位の記録シートS1と一緒に分離位置内に進入しない場合には、分離ローラ42aはD4方向に回転することがなく、コイルスプリング42zには付勢力が蓄積された状態を維持する。従って、この場合も、図7(b)〜(e)に基づいて説明した上記の動作が実行され、コイルスプリング42zに蓄積された付勢力は、次の最上位の記録シートS1の給紙時において重送防止に使用される。
【0110】
所定枚数の記録シートの搬送が終了すると、供給ローラ41bの回転が停止されて、供給ローラ41bは矢印D10方向に自由に回転し得る状態になる。このような状態になると、分離ローラ42aには供給ローラ41bの回転によるトルクおよび摩擦力が作用せず、これにより、分離ローラ42aは、コイルスプリング42zに蓄積された付勢力によって矢印D4方向に回転され、コイルスプリング42zは付勢力が蓄積されない状態になって、分離ローラ42aの回転が停止される。
【0111】
なお、本実施形態では、供給ローラ41bの両側にそれぞれ設けられた第1搬送ローラ41cおよび第2搬送ローラ41dに、第1サブローラ41fおよび第2サブローラ41gを圧接して第1搬送ニップおよび第2搬送ニップをそれぞれ形成する構成であったが、このような構成に限らず、実施形態2のように、供給ローラ41bにサブローラを圧接させて搬送ニップを形成する構成としてもよい。
【0112】
<変形例>
上記の実施形態では、シート供給装置が設けられた画像形成装置は、1つの現像装置しか設けられていないモノクロの画像形成装置であったが、このような構成に限らず、周回移動する中間転写ベルトに沿って4つの画像形成ユニットを配置してフルカラー画像を形成するタンデム型カラーデジタルプリンタ、あるいは、回転軸の周囲に4つの現像装置を配置し、これら4つの現像装置を、順次、静電潜像担持体に対向させてフルカラー画像を形成する、いわゆる4サイクル方式の画像形成装置であってもよい。また、本発明の構成は、プリンタに限らず、複写機、FAX、MFP(Multiple Function Peripheral)等にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明は、像担持体上に担持された画像が転写される転写位置へ、シート収容部内に積載されたシート束における最上位のシートを搬送するシート供給装置において、シートの重送を防止し、しかも、転写位置にシートを安定的に搬送する技術として有用である。
【符号の説明】
【0114】
11 感光体ドラム
12 帯電装置
13 露光装置
14 現像装置
15 転写ローラ
21 シート収容カセット
23 搬送経路
30 定着ユニット
40 シート供給装置
41 シート供給部
41a 第1回転軸
41c 第1搬送ローラ
41d 第2搬送ローラ
41e 入力ギア
41f 第1サブローラ
41g 第2サブローラ
41h 支持軸
41j サブローラ
41k ローラ回転軸
41r ローラ支持軸
41s 入力側第1歯付きプーリ
41t 入力側第2歯付きプーリ
41u 入力側歯付きベルト
42 シート分離部
42a 分離ローラ
42b 第2回転軸
42c 伝動ギア
42f 第1ギア
42g 第2ギア
42h ローラ回転軸
42k トルクリミッター
42p 出力側第1歯付きプーリ
42q 出力側第2歯付きプーリ
42r 出力側歯付きベルト
42s 中間回転軸
42u 回転軸
42x 出力側伝動ギア
42y 入力側伝動ギア
42z コイルスプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート収容部に積載されたシート束からシートを1枚ずつ分離して、像担持体上に担持された画像を転写する転写位置へ搬送するシート供給装置であって、
回転により前記シート束の最上位のシートを前記転写位置方向へ繰り出す供給ローラと、
当該供給ローラの回転方向に対してカウンタ方向への回転力が伝達されて、繰り出された前記最上位のシートを介して前記供給ローラの第1位置に当接し、当該シートを前記シート束の次のシートから分離する分離ローラと、
当該分離ローラに、前記カウンタ方向の回転力を、トルクリミッターを介して伝達する伝達機構と、
前記供給ローラと同軸上であってその両側に少なくとも1つずつ配置され、当該供給ローラと一体回転する搬送ローラと、
前記第1位置よりもシート搬送方向下流側の第2位置で、前記搬送ローラに圧接されて搬送ニップを確保し、前記搬送ローラとともに回転し、前記第1位置を通過した後のシートを前記搬送ニップを通過させて前記転写位置に搬送するサブローラと、
を備えることを特徴とするシート供給装置。
【請求項2】
前記搬送ローラの外径は、前記供給ローラよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載に記載のシート供給装置。
【請求項3】
シート収容部に積載されたシート束からシートを1枚ずつ分離して、像担持体上に担持された画像を転写する転写位置へ搬送するシート供給装置であって、
回転により前記シート束の最上位のシートを前記転写位置方向へ繰り出す供給ローラと、
当該供給ローラの回転方向に対してカウンタ方向への回転力が伝達されて、繰り出された前記最上位のシートを介して前記供給ローラの第1位置に当接し、当該シートを前記シート束の次のシートから分離する分離ローラと、
当該分離ローラに、前記カウンタ方向の回転力を、トルクリミッターを介して伝達する伝達機構と、
前記第1位置よりもシート搬送方向下流側の第2位置で、前記供給ローラに圧接されて搬送ニップを確保し、前記供給ローラとともに回転し、前記第1位置を通過した後のシートを前記搬送ニップを通過させて前記転写位置に搬送するサブローラと、
を備えることを特徴とするシート供給装置。
【請求項4】
前記伝達機構は、前記供給ローラの回転軸から回転駆動力を入力して、入力した回転駆動力を前記カウンタ方向の回転力に変換することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のシート供給装置。
【請求項5】
前記伝達機構は、前記サブローラの回転軸から回転駆動力を入力して、入力した回転駆動力を前記カウンタ方向の回転力に変換することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のシート供給装置。
【請求項6】
前記伝達機構は、前記分離ローラが、前記供給ローラに追従して前記トルクリミッターを介して伝達される回転力に抗して回転することにより、付勢力を蓄積する付勢部材を有し、当該付勢部材によって蓄積された付勢力を前記カウンタ方向の回転力として伝達することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のシート供給装置。
【請求項7】
前記第1位置において、前記分離ローラと前記供給ローラとによってニップが確保されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載に記載のシート供給装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のシート供給装置を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−236671(P2012−236671A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106169(P2011−106169)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】