説明

シート搬送装置

【課題】情報の揮発の影響を受けずにロールシートの残量を検知可能な技術を提供する。
【解決手段】画像形成装置は、ロールシートに巻回されたシートを、搬送ローラの回転により引き出してシートに画像を形成する。搬送ローラは、モータによって駆動され、モータへの駆動電流は、搬送ローラが目標速度軌跡に従って回転するように制御される。即ち、制御器は、目標速度軌跡と検出速度との偏差に基づき、モータを駆動する駆動回路への電流指令値Irを調整することにより、搬送ローラが目標速度軌跡に従って運動するように回転制御し、目標速度軌跡に対応したシートの搬送制御を実現する。また、画像形成装置は、電流指令値Irとシート残量xとの対応関係を表すテーブルに従って、制御器が駆動回路に入力する電流指令値Irから現在のロールシートのシート残量を判定する(S130)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートが巻回されたロールシートからシートを引き出して搬送するシート搬送装置が知られている。例えば、ロール紙から紙を引き出して記録ヘッドによる画像形成位置に紙を搬送するプリンタ装置が知られている。この種の装置では、例えば、未使用時のロール紙の総量から使用量を減算して、ロール紙の残量を算出する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−253361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、未使用時のロールの総量から使用量を減算して、ロール紙の残量を算出する技術では、次のような問題があった。即ち、この技術では、算出した残量を不揮発性の記録媒体に記録しないと、電源のオン/オフを挟んで、正確にロール紙の残量を算出することができない。従って、この技術では、フラッシュメモリ等の不揮発性の記録媒体に残量を逐次書き込む必要があるのだが、例えば、突然のシャットダウンで不揮発性の記録媒体に最新の残量を記録できないと、以後の残量を正確に算出することができなくなってしまうといった問題があった。
【0005】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、情報の揮発の影響を受けずに、残量を検知可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するためになされた本発明のシート搬送装置は、シートが巻回されたロールシートを保持する保持部材と、保持部材が保持するロールシートから引き出されたシートを対向部材との間に挟持し、シートを搬送方向下流に搬送する搬送ローラと、搬送ローラを回転駆動するモータと、電流指令値に対応した駆動電流をモータに供給するモータ駆動手段と、モータ駆動手段に入力する電流指令値を、搬送ローラの運動が所定の目標軌跡に従うように調整して、モータを制御することで、シートを搬送する搬送制御手段と、搬送制御手段によるシートの搬送時に、搬送制御手段がモータ駆動手段に入力する電流指令値に基づき、ロールシートに巻回されたシートの残量を判定する残量判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
このシート搬送装置は、ロールシートから搬送ローラへ導かれるシートの張力がシート残量によって変化することを利用して、当該シート残量を判定するものである。即ち、同一の目標軌跡を用いるシートの搬送動作では、シート残量によって生じる張力の差異を原因として、目標軌跡を実現するのに必要なモータへの入力電流量が変化する。本発明のシート搬送装置は、このような現象を利用して、シートの残量を判定する。
【0008】
従って、この発明によれば、未使用時のシート残量から使用量を減算することにより現在のシート残量を算出する従来技術のように、直前までの残量情報の揮発によって、以後の残量算出ができなくなるのを回避することができ、従来よりも簡易且つ正確に残量を検知することができる。
【0009】
尚、残量判定手段は、搬送制御手段によるシート搬送時に、搬送制御手段がモータ駆動手段に入力する電流指令値の内、特定時点での電流指令値に基づき、ロールシートに巻回されたシートの残量を判定する構成にすることができる。特定時点としては、目標軌跡に基づく制御開始時点から一定時間後の時点や、電流指令値がピークとなる時点等を挙げることができる。
【0010】
このように特定時点での電流指令値に基づき、シート残量を判定するように残量判定手段を構成すれば、シート残量以外の要因での電流指令値の変動による影響を抑えて、高精度に、シート残量を判定することができる。
【0011】
また、本発明のシート搬送装置は、電流指令値と残量との対応関係を表すテーブルを記憶するテーブル記憶手段を備えた構成にすることができる。即ち、残量判定手段は、このテーブルを参照することにより残量を判定する構成にすることできる。このようにシート搬送装置を構成すれば、試験等により電流指令値と残量との対応関係を求めて、この関係をテーブルに表現することで、高精度な残量判定を実現することができる。
【0012】
この他、残量判定手段は、残量の判定値を揮発性の記憶手段に記憶する構成にすることができる。更に言えば、残量判定手段は、シート搬送装置の電源投入後、搬送制御手段による初回シート搬送時の電流指令値に基づき、残量を判定して、この残量の判定値を揮発性の記憶手段に記憶する構成にすることができる。このようにシート搬送装置を構成すれば、電気的にデータ書換可能な不揮発性の記録媒体を用いなくても、電源投入後の早い時期から残量情報を保持することができる。
【0013】
また、シート搬送装置は、残量判定手段による残量の判定後、搬送制御手段によってシートが搬送される度に、当該残量の判定値をシートの搬送量分減算することにより、シート残量の判定値を更新する副残量判定手段を備えた構成にすることができる。
【0014】
この他、シート搬送装置は、残量判定手段による残量の判定値、及び/又は、副残量判定手段による残量の判定値に基づき、ユーザに向けてシートの残量を報知する報知手段を備えた構成にすることができる。残量を報知するようにシート搬送装置を構成すれば、ロールシートの補充時期をユーザに把握させることができ、シート搬送装置の利便性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】画像形成装置1の構成を表すブロック図である。
【図2】シートの搬送ローラ33による搬送態様を示した図である。
【図3】電流指令値Irとシート残量xとの対応関係を示した図である。
【図4】残量判定用テーブルTBL1及びメッセージ定義テーブルTBL2の構成を表す図である。
【図5】シート残量xの判定の際に参照する電流指令値Irを説明した図である。
【図6】主制御ユニット10が実行する残量判定処理を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施例について、図面と共に説明する。
図1に示すように、本実施例の画像形成装置1は、主制御ユニット10と、印字ユニット20と、シート搬送ユニット30と、表示ユニット50と、を備える。主制御ユニット10は、装置全体を統括制御するものであり、CPU11、ROM13、RAM15、及び、外部PC(パーソナルコンピュータ)3と通信可能なインタフェース17を備える。この主制御ユニット10は、ROM13に記録されたプログラムに基づく処理をCPU11で実行することにより、画像形成装置としての機能を実現する。
【0017】
例えば、主制御ユニット10は、インタフェース17を通じて外部PC3から印刷対象の画像データが入力されると、当該画像データに基づく画像をシートに形成するように、印字ユニット20及びシート搬送ユニット30を駆動する。
【0018】
即ち、主制御ユニット10は、印字ユニット20にライン画像をシートに形成させた後、シート搬送ユニット30に、印字ユニット20によってシートに形成されたライン画像に対応する距離De分、シートを副走査方向に搬送させる処理を繰り返すことにより、印字ユニット20及びシート搬送ユニット30を通じて、外部PC3から入力された画像データに基づく一連の画像をシートに形成する。
【0019】
詳述すると、印字ユニット20は、主制御ユニット10からの指示に従い、副走査方向の幅が距離Deに対応する幅のライン画像をシートに形成する。例えば、印字ユニット20は、インクジェット式の記録ヘッドと、記録ヘッドを主走査方向に搬送可能なヘッド搬送機構とを備え(図示せず)、主制御ユニット10からの指示に従い、記録ヘッドを主走査方向に移動させながら、記録ヘッドにインク液滴の吐出動作を実行させることにより、シートにライン画像を形成する構成にすることができる。
【0020】
一方、シート搬送ユニット30は、アダプタ31に接続されたロールシート31aからシートを引き出し、このシートを印字ユニット20による画像形成位置に搬送するものである。このシート搬送ユニット30は、アダプタ31と、搬送ローラ33と、搬送ローラ33に対向配置されるピンチローラ34と、搬送ローラ33を回転駆動する直流モータである搬送モータ35と、搬送モータ35に駆動電流を供給する駆動回路37と、駆動回路37に対して電流指令値Irを入力する制御器39と、搬送ローラ33の回転に応じたエンコーダ信号を出力するエンコーダ41と、エンコーダ41から入力されるエンコーダ信号に基づき搬送ローラ33の回転量Q及び回転速度Vを検出するエンコーダ信号処理部43と、各時刻tの目標速度Vrを制御器39に入力する目標指令生成部45とを備える。
【0021】
アダプタ31は、ロールシート31aにおける芯材(図示せず)をロールシート31aの軸方向の両端部にて保持することで、ロールシート31aを回転可能に保持するものである。このロールシート31aは、その軸方向がシート搬送方向である副走査方向とは垂直な主走査方向と平行となるように、アダプタ31に接続される。
【0022】
一方、搬送ローラ33は、軸方向がロールシート31aと同様に主走査方向と平行となるように、画像形成装置1の筐体内に取り付けられてなるものである。搬送ローラ33は、図2に示すように、ロールシート31aから引き出されたシートを、対向配置されるピンチローラ34と共に挟持した状態で、搬送モータ35からの動力を受けて回転し、シートをロールシート31aから引き出しながらシート搬送方向下流に搬送する。
【0023】
また、駆動回路37は、制御器39から入力された電流指令値Irに対応した駆動電流を搬送モータ35に供給して搬送モータ35を回転駆動するものである。
制御器39は、エンコーダ信号処理部43から入力される搬送ローラ33の回転速度Vと目標指令生成部45から入力される目標速度Vrとの偏差E=Vr−Vを、所定伝達関数に入力し、偏差Eがゼロに収束する方向の電流指令値Irを算出する。そして、これを駆動回路37に入力する。このようにして制御器39は、駆動回路37に入力する電流指令値Irを、搬送ローラ33の運動が予め設定された目標速度軌跡に従うように調整して、搬送モータ35を制御する。これによって、シートを、距離Deずつ搬送方向下流に搬送する。
【0024】
また、エンコーダ41は、搬送ローラ33の回転軸又は搬送モータ35の回転軸に取り付けられるロータリエンコーダであり、搬送ローラ33の回転に応じたパルス状のエンコーダ信号としてのA相信号及びB相信号をエンコーダ信号処理部43に入力する。
【0025】
エンコーダ信号処理部43は、A相信号及びB相信号の位相差に基づき搬送ローラ33の回転方向を特定すると共に、A相信号及びB相信号の少なくとも一方におけるパルス幅を逐次計測して、パルス幅の逆数を、搬送ローラ33の回転速度Vとして検出する。また、A相信号及びB相信号の少なくとも一方の立ち上がりエッジに基づき、搬送ローラ33の回転量Q(間接的には、シートの搬送量)を検出する。
【0026】
また、目標指令生成部45は、主制御ユニット10を通じて予め設定された目標速度軌跡に従って、各時刻tの目標速度Vrを制御器39に入力する。
ところで、本実施例の主制御ユニット10は、印字ユニット20及びシート搬送ユニット30を通じてシートに画像を形成する機能の他、制御器39が駆動回路37に入力する電流指令値Irに基づき、ロールシートの残量xを判定する機能を有する。
【0027】
このシート残量xの判定原理は、次のようなものである。図2に示すように、搬送ローラ33によってロールシートに巻回されたシートが引き出されるようにして搬送される態様を考えた場合、搬送ローラ33からシートに力が作用する点Plでの張力Flと、ロールシートからシートが引き出される点Prでのシートの張力Frとが一致する関係を利用して、次の関係式を得ることができる。
【0028】
【数1】

モータトルクτは、モータ駆動電流Iと比例関係にあり、張力Flは、モータトルクτと比例関係にあることから、張力Flは、比例係数K,Ktを用いて次式で表すことができる。
【0029】
【数2】

一方、張力Frは、ロールシートのイナーシャJr及びロールシートの半径Rr及びロールシートの回転角θrを用いて次式で表すことができる。
【0030】
【数3】

従って、これらの関係を利用すると、式(1)を導出することができる。
【0031】
ここで、ロールシートのイナーシャJrは、ロールシートの質量M及びロールシートの横幅(軸方向の幅)Lを用いて、次式で表すことができる。
【0032】
【数4】

更に、ロールシート質量M及びロールシート径Rrは、ロールシートにおけるシート残量xを変数に有する次式で表すことができる。ここで、A,B,C,D,Eは、ロールシートの構成によって定まる定数である。
【0033】
【数5】

また、ロールシートの角加速度については、シート残量xを、時間変数tを用いて式x=Z−vtで表現すると共に、式(6)の関係式を用いると、次式で表すことができる。
【0034】
【数6】

尚、ここでは、時刻t=0の時点でのシート残量として定数Zを形式的に設定する。また、vは、ロールシートから引き出されるときのシート速度であり、aは、ロールシートの回転加速度(周加速度)である。
【0035】
従って、モータ駆動電流Iとシート残量xとの間には、次の関係が成立する。
【0036】
【数7】

式(8)における速度vは、搬送ローラ33の回転速度Vに対応し、加速度aは、搬送ローラ33の回転加速度dV/dtに対応する。ここで、搬送ローラ33がある特定の速度V及び加速度dV/dtで回転するときのモータ駆動電流Iを参照することを前提とすると、式(8)における速度v及び加速度aは、定数とみなすことができ、図3にグラフで示すようなモータ駆動電流Iとシート残量xとの関係が定まる。図3に示すように、モータ駆動電流Iは、シート残量xに対して単調増加する性質を有する。
【0037】
本実施例では、このような関係を利用して、シート残量xを判定するように画像形成装置1を構成している。但し、本実施例では、制御器39が駆動回路37に入力する電流指令値Irと、駆動回路37から搬送モータ35に供給される駆動電流Iとが一致するとの仮定の下で、電流指令値Irからシート残量xを判定する。
【0038】
即ち、搬送ローラ33が特定の速度V及び加速度dV/dtを採るときの電流指令値Irとシート残量xとの関係を試験や机上計算により求め、この電流指令値Irとシート残量xとの関係をテーブルとしてROM13に記録する。そして、主制御ユニット10では、搬送ローラ33が特定の速度V及び加速度dV/dtを採るときの電流指令値Irを、制御器39から取得して、ROM13に記録したテーブルに基づき、シート残量xを判定するといった具合である。
【0039】
具体的に、本実施例の画像形成装置1は、ROM13に図4に示すような残量判定用テーブルTBL1を有する。この残量判定用テーブルTBL1は、電流指令値Irが採りえる範囲を複数区間に細分化した区間毎に、この区間の電流指令値Irに対応するシート残量xの情報を有する。各区間の幅は、シート残量の判定誤差及びテーブルのデータサイズ等を考慮して定めることができる。
【0040】
尚、シート搬送ユニット30によるシートの搬送過程では、目標速度軌跡に従い、搬送ローラ33が静止状態から加速して一定速度まで到達し、その後減速する。このため、本実施例では、加速区間の目標速度軌跡における加速度最大の地点PM(図5参照)での目標速度Vr及び目標加速度dVr/dtを基準に、この速度Vr及び加速度dVr/dtで搬送ローラ33が回転する際の電流指令値Irとシート残量xとの関係を求め、残量判定用テーブルTBL1を生成している。
【0041】
このように、加速度最大の地点PMでの目標速度Vr及び目標加速度dVr/dtを基準に、電流指令値Irとシート残量xとの関係を求め、残量判定用テーブルTBL1を生成するのは、加速度と電流指令値Irとの間には比例関係があり、図5に示すように目標速度軌跡における加速度最大の時点PMでは、電流指令値Irが最大値(極大値)Imaxを採るためである。電流指令値Irが最大値(極大値)を採れば、シート残量xの判定誤差を抑えることができ、精度よくシート残量xを判定することができる。また、シート残量xの判定に際しては、電流指令値Irの最大値(極大値)Imaxを検出することで、加速度最大の地点PMでの電流指令値Irを精度よく特定することができる。このため、本実施例では、加速区間の目標速度軌跡における加速度最大の地点PMでの目標速度Vr及び目標加速度dVr/dtを基準に、電流指令値Irとシート残量xとの関係を求め、この関係を用いて、残量判定用テーブルTBL1を生成している。
【0042】
また、図4に示すように、本実施例では、ROM13に、シート残量xに対して表示ユニット50に表示すべきメッセージが定義されたメッセージ定義テーブルTBL2が登録されている。このメッセージ定義テーブルTBL2は、シート残量xが採りえる範囲を数区間に分割してなる区間毎に、表示ユニット50に表示すべきシートの残量レベルを表すメッセージの情報が関連付けられてなるものである。
【0043】
図4に示す例では、シート残量xに応じて表示ユニット50に表示すべきメッセージが四段階に定められている。本実施例の画像形成装置1は、シート残量xに応じて表示ユニット50に表示するメッセージを、このメッセージ定義テーブルTBL2に従って切り替える。これによって、シート残量xの情報をユーザに報知する。
【0044】
続いて、主制御ユニット10が、シート搬送ユニット30に目標速度軌跡に従う搬送モータ35の制御(距離De分のシート搬送動作)を開始させる際に並行して実行する残量判定処理について、図6を用いて説明する。
【0045】
図6に示す残量判定処理を開始すると、主制御ユニット10は、今回のシート搬送ユニット30による搬送モータ35の制御プロセスが、画像形成装置1に対する電源投入後の初回の制御プロセスであるか否かを判断し(S110)、初回の制御プロセスであると判断すると(S110でYes)、制御器39から駆動回路37に入力される電流指令値Irの情報を逐次取得して加速区間における電流指令値Irの最大値Imaxを検出すると共に、エンコーダ信号処理部43から入力される搬送ローラ33の回転量Qに基づき、電流指令値Irが最大値Imaxとなった時点での搬送ローラ33の回転量Q0を特定する(S120)。尚、初回の制御プロセスであるか否かの判断は、RAM15にシート残量xmが記憶されているか否かに基づく。即ち、RAM15にシート残量xmが記憶されていなければ、初回の制御プロセスと判断し、RAM15にシート残量xmが記憶されていれば、初回以降の制御プロセスと判断する。
【0046】
更に、ここで検出した電流指令値Irの最大値Imaxに基づき、最大値Imaxを検出した時点でのシート残量xnを、残量判定用テーブルTBL1を参照して判定する(S130)。即ち、残量判定用テーブルTBL1において細分化された電流指令値Irの区間であって、S120で検出した最大値Imaxが属する区間に関連付けられたシート残量xを、上記シート残量xnに判定する。シートの搬送条件に応じて、目標速度軌跡が異なるため、この残量判定用テーブルTBL1は、シートの搬送条件に応じて複数設定されている。
【0047】
そして、この判定値(シート残量xn)を、RAM15にシート残量xmとして記憶保持する(S140)。更に、このシート残量xmに基づき、表示ユニット50に表示すべきメッセージを、ROM13が記憶するメッセージ定義テーブルTBL2を参照して特定し、このメッセージを表示ユニット50に表示する(S150)。即ち、メッセージ定義テーブルTBL2において、シート残量xmが属する区間に対応付けられたメッセージを、表示対象のメッセージに選択し、このメッセージを表示ユニット50に表示する。但し、S150では、既に表示されているメッセージを更新するようにして、表示ユニット50にシート残量xmに対応するメッセージを表示する。その後、S160に移行する。
【0048】
S160では、搬送モータ35が減速・停止され、搬送モータ35の制御プロセスが一旦終了するまで待機し、搬送モータ35の制御が一旦終了した時点でのエンコーダ信号処理部43から入力される搬送ローラ33の回転量Q1に基づき、最大値Imaxの検出時点から現時点までのシート搬送量δ=Q1−Q0を算出する。その後、RAM15が記憶するシート残量xmを、シート搬送量δ引いた値に更新する(S180)。更に、当該更新後のシート残量xmに基づき、表示ユニット50に表示すべきメッセージを、ROM13が記憶するメッセージ定義テーブルTBL2を参照して特定し、このメッセージを表示ユニット50に表示する(S190)。その後、当該残量判定処理を終了する。
【0049】
一方、主制御ユニット10は、今回のシート搬送ユニット30による搬送モータ35の制御プロセスが、画像形成装置1に対する電源投入後の初回の制御プロセスではないと判断すると(S110でNo)、S170に移行し、制御プロセス開始時点でエンコーダ信号処理部43から入力される搬送ローラ33の回転量Q0と、制御プロセス終了時点での搬送ローラ33の回転量Q1から、今回の制御プロセスによるシート搬送量δ=Q1−Q0を算出する(S170)。
【0050】
その後、RAM15が記憶するシート残量xmを、S170で算出したシート搬送量δ分引いた値に更新し(S180)、このシート残量xmに基づき、表示ユニット50に表示すべきメッセージを、メッセージ定義テーブルTBL2から特定し、このメッセージを表示ユニット50に表示する(S190)。その後、当該残量判定処理を終了する。
【0051】
以上、本実施例の画像形成装置1の構成について説明したが、本実施例によれば、画像形成装置1に対する電源投入後の初回の制御プロセスにおける電流指令値Irに基づき、シート残量xを判定し、これをRAM15に記憶保持して、以後、シートの搬送量δに応じてシート残量xmを更新する。
【0052】
そして、電流指令値Irに基づくシート残量xの判定動作では、未使用時からのシート使用量の情報を保持していなくても、シート残量xを精度よく特定することができる。従って、本実施例によれば、未使用時からのシート使用量の情報が失われると、以後のシート残量の検出動作ができなくなる従来の問題を解消することができて、利便性の高い画像形成装置1を構成することができる。
【0053】
ところで、上記実施例と「特許請求の範囲」との対応関係は次の通りである。即ち、「特許請求の範囲」記載の保持部材は、画像形成装置1が備えるアダプタ31に対応し、モータ駆動手段は、駆動回路37に対応し、搬送制御手段は、制御器39に対応する。また、残量判定手段は、主制御ユニット10が実行する残量判定処理にて実現されている。特に、残量判定手段が、残量の判定値を揮発性の記憶手段に記憶する動作は、シート残量xmをRAM15に記憶する動作に対応する。また、テーブル記憶手段は、RAM15における残量判定用テーブルTBL1の記憶領域に対応する。この他、副残量判定手段は、残量判定処理におけるS180の処理に対応する。また、報知手段は、表示ユニット50及び残量判定処理におけるS150,S190処理に対応する。
【0054】
また、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。例えば、上記実施例では、電源投入後の初回の制御プロセス以外では電流指令値Irに基づくシート残量xの判定動作を行わないが、画像形成装置1は、初回の制御プロセス以外の各制御プロセスにおいても、電流指令値Irに基づくシート残量xの判定動作を行う構成にされてもよい。即ち、残量判定処理におけるS110,S170を省略して、常にS120以降の処理を実行するように、画像形成装置1は構成されてもよい。
【0055】
また、前回の搬送にてRAM15に記憶されたシート残量xmが所定量以上であれば、電流値Irに基づくシート残量xの判定動作を行い、所定量以下であれば搬送ローラ33の回転量に基づいてシート残量xを算出するようにしてもよい。
【0056】
他に、S150でシート残量xmに対応する残量レベルを表すメッセージの表示後は、搬送ローラ33の回転量δによるシート残量xmの更新を行わなくても良い。即ち、電流指令値Irに基づくシート残量xの判定動作処理においては、S160〜S190の処理を省略し、Imaxに対応する時点でのシート残量xに基づいて残量レベルを判断するのみでも良い。
【0057】
更に、上記実施例では、電流指令値Irの最大値Imaxを検出し、その検出された電流指令値Irに基づいてシート残量xの判定動作を行ったが、搬送ローラ33の駆動開始から予め設定された時間における電流指令値Irに基づいてシート残量xを判定しても良い。搬送ローラ33は、所定の駆動軌跡に従うよう制御されていることから、特定の速度V及び加速度dV/dtとなる時点は、同じ駆動軌跡を用いて制御されていれば、常に同じタイミングとなる。従って、駆動開始から予め設定された特定の時点における電流指令値Irに基づいてシート残量xを判定することも可能である。尚、搬送ローラ33は、目標速度軌跡ではなく目標位置軌跡や目標加速度軌跡に従うよう制御されても良い。
【符号の説明】
【0058】
1…画像形成装置、10…主制御ユニット、11…CPU、13…ROM、15…RAM、17…インタフェース、20…印字ユニット、30…シート搬送ユニット、31…アダプタ、31a…ロールシート、33…搬送ローラ、34…ピンチローラ、35…搬送モータ、37…駆動回路、39…制御器、41…エンコーダ、43…エンコーダ信号処理部、45…目標指令生成部、50…表示ユニット、TBL1…残量判定用テーブル、TBL2…メッセージ定義テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートが巻回されたロールシートを保持する保持部材と、
前記保持部材が保持する前記ロールシートから引き出されたシートを対向部材との間に挟持し、当該シートを搬送方向下流に搬送する搬送ローラと、
前記搬送ローラを回転駆動するモータと、
電流指令値に対応した駆動電流を前記モータに供給するモータ駆動手段と、
前記モータ駆動手段に入力する前記電流指令値を、前記搬送ローラの運動が所定の目標軌跡に従うように調整して、前記モータを制御することで、前記シートを搬送する搬送制御手段と、
前記搬送制御手段による前記シートの搬送時に、前記搬送制御手段が前記モータ駆動手段に入力する電流指令値に基づき、前記ロールシートに巻回されたシートの残量を判定する残量判定手段と、
を備えることを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
前記残量判定手段は、前記搬送制御手段による前記シートの搬送時に、前記搬送制御手段が前記モータ駆動手段に入力する電流指令値の内、特定時点での前記電流指令値に基づき、前記ロールシートに巻回されたシートの残量を判定すること
を特徴とする請求項1記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記電流指令値と前記残量との対応関係を表すテーブルを記憶するテーブル記憶手段
を備え、
前記残量判定手段は、前記テーブルを参照して前記残量を判定すること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
揮発性の記憶手段を備え、
前記残量判定手段は、前記残量の判定値を前記揮発性の記憶手段に記憶する構成にされ、前記シート搬送装置の電源投入後、前記搬送制御手段による初回のシート搬送時における前記電流指令値に基づき、前記残量を判定して、前記残量の判定値を前記揮発性の記憶手段に記憶すること
を特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
前記残量判定手段による前記残量の判定後、前記搬送制御手段によって前記シートが搬送される度に、当該残量の判定値を前記シートの搬送量分減算することにより、前記残量の判定値を更新する副残量判定手段
を備えることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のシート搬送装置。
【請求項6】
前記残量判定手段による前記残量の判定値に基づき、ユーザに向けて前記シートの残量を報知する報知手段
を備えることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のシート搬送装置。
【請求項7】
前記副残量判定手段による更新後の前記残量の判定値に基づき、ユーザに向けて前記シートの残量を報知する報知手段
を備えることを特徴とする請求項5記載のシート搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−213452(P2011−213452A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83387(P2010−83387)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】