説明

シート材の製造方法およびシート材

【課題】材料を有効利用することができ、コストを抑えることのできるシート材の製造方法およびこの製造方法によって得られたコストの安いシート材を提供すること。
【解決手段】シート材の製造方法は、機能性層621と第1粘着剤層622とを積層してなる機能性シート62と、剥離シート61とを有する第1シート材6を用意し、第1シート材6を切断して所定の形状パターンのシート片8を複数得るとともに、基材721と第2粘着剤層722とを積層してなる転写シート72と、剥離シート71とを有する第2シート材7を用意し、剥離シート71の一部を除去して、シート片8の形状パターンに対応した形状の除去部71aを形成し、次いで、第2シート材7の除去部71aにシート片8を、機能性シート62が第2粘着剤層722に接合するように貼り合わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート材の製造方法およびシート材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば自動車の車両本体の外装(塗装)を保護するために、透明フィルムで構成されたチッピングプロテクター(機能性シート)を用いることが知られている。チッピングプロテクターは、例えば、自動車のボディー(特にフェンダー)やバンパーなどに貼り付けて用いられ、飛び石等から車両の外装を保護(塗装の剥離や錆の発生を防止・抑制)する。
【0003】
このようなチッピングプロテクターは、図7に示すような構成のシート材として提供される。シート材は、図7に示すように、ピッチングプロテクターよりも大きな離型シートと、離型シート上に設けられたチッピングプロテクターと、チッピングプロテクターを覆うように設けられた転写シートとを有している。このようなシート材では、転写シートと共にチッピングプロテクターを離型シートから剥がし、それを車両の所定位置に貼り付け、その後、転写シートのみを車両から除去することにより、車両の所定位置にチッピングプロテクターを貼り付けることができる。
【0004】
このようなシート材は、従来では、次のようにして製造されていた。まず、図8(A)に示すように、第1シート材910と、第2シート材920とを用意する。第1シート材910は、離型シート911と、機能性シート912とが積層してなるシート状の部材である。機能性シート912は、例えばウレタン樹脂等で構成されたチッピング効果を有するシート状の基材(機能層)912aと、粘着剤層912bとが積層してなるものである。一方の第2シート材920は、離型シート921と、転写シート922とが積層してなるシート状の部材である。転写シート922は、シート状の基材922aと、粘着剤層922bとが積層してなるものである。
【0005】
次に、図8(B)に示すように、ハーフカット刃を用いて、第1シート材910の機能性シート912を所望の形状パターンに切断し、切断部912a’を形成する。次に、図8(C)に示すように、切断部912a’を残して、機能性シート912を除去する。次に、図8(D)に示すように、第2シート材920から転写シート922を剥がし、剥がした転写シート922を第1シート材910に貼り合わせる。
【0006】
以上のような製造方法により、シート材900が得られる。しかしながら、このような製造方法では、第1シート材に対する領域Sの大きさ(機能性シート912に対する領域Sの占有率)が小さい場合には、機能性シート912の大部分が第1シート材910から除去されてしまい、除去された部分が無駄になってしまう。そのため、従来の製造方法では、材料を効率的に利用することができず、コストが高くなるとともに、廃出物が増えてしまうという問題がある。特に、機能性シートが高価な場合には、コストの上昇が顕著なものとなってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、材料を有効利用することができ、コストを抑えることのできるシート材の製造方法およびこの製造方法によって得られたコストの安いシート材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
(1) 機能性層と第1粘着剤層とを積層してなる機能性シートと、前記第1粘着剤層の前記機能性層と反対の面側に設けられた第1剥離シートとを有する第1シート材を用意し、前記第1シート材を切断して所定の形状パターンのシート片を複数得るとともに、
シート状の基材と第2粘着剤層とを積層してなる転写シートと、前記第2粘着剤層の前記基材と反対の面側に設けられた第2剥離シートとを有する第2シート材を用意し、前記第2剥離シートの一部を除去して、複数の前記シート片のうちの1つの前記シー材の形状パターンに対応した形状の除去部を形成し、
次いで、前記第2シート材の前記除去部に前記1つのシート片を、前記機能性シートが前記第2の粘着剤層に接合するように貼り合わせることを特徴とするシート材の製造方法。
【0009】
(2) 前記第1シート材からなるべく多くの前記シート材が得られるように前記第1シート材を切断する上記(1)に記載のシート材の製造方法。
【0010】
(3) 前記第1シート材の平面視にて、複数の前記シート材の占有面積は、前記第1シート材の80%以上である上記(2)に記載のシート材の製造方法。
【0011】
(4) 前記第1シート材は、その平面視形状が長手方向をなし、
各前記シート片は、その平面視形状が長手形状をなし、
前記シート片の長手方向を前記第1シート片の短手方向と一致させて、前記第1シート材から前記複数のシート片を切断する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のシート材の製造方法。
【0012】
(5) ハーフカットにより前記機能性シートを所定の形状パターンに切断して切断領域を形成するとともに、フルカットにより前記機能性シートおよび前記第1剥離シートを前記切断領域の全域を含むように切断した後、前記機能性シートの前記切断領域の外側に位置する部位を除去することにより、前記シート片を得る上記(1)ないし(4)のいずれかに記載のシート材の製造方法。
【0013】
(6) 前記シート片では、前記第1剥離シートの前記機能性シート側の面の縁部を除くように前記機能性シートが設けられている上記(5)に記載のシート材の製造方法。
【0014】
(7) 前記第2シート材に前記除去部を形成するとともに、前記第2シート材を所定の形状パターンに切断する上記(1)ないし(6)のいずれかに記載のシート材の製造方法。
【0015】
(8) 前記第2シート材は、被着体に対する前記シート片の位置決めを行う位置決め部材として機能する上記(1)ないし(7)のいずれかに記載のシート材の製造方法。
【0016】
(9) 前記転写シートは、可撓性を有し、
前記第2シートの前記除去部に前記シート片を貼り合わせると、前記シート片が貼り合わされた部位にて前記転写シートが突出する上記(1)ないし(8)のいずれかに記載のシート材の製造方法。
【0017】
(10) 前記第2粘着剤層の粘着力は、前記第1粘着剤層の粘着力よりも小さい上記(1)ないし(9)のいずれかに記載のシート材の製造方法。
【0018】
(11) 前記機能性シートは、被着体を保護する保護機能、所定の電波を受信することのできる電波受信機能および光を反射することのできる反射機能のうちの少なくとも1つの機能を有している上記(1)ないし(9)のいずれかに記載のシート材の製造方法。
【0019】
(12) 上記(1)ないし(11)のいずれかに記載のシート材の製造方法によって製造されることを特徴とするシート材。
【0020】
(13) 前記転写シートを前記機能性シートと共に被着体に貼り付けた後、前記転写シートを前記被着体から除去することにより、前記機能性シートを前記被着体に貼り付ける上記(12)に記載のシート材。
【発明の効果】
【0021】
本発明のシート材の製造方法によれば、第1シート材を有効利用することができるため、材料を有効利用することができ、製造コストが抑えられたシート材を製造することができる。また、材料を有効利用することができるため、廃出物を少なくすることができ、環境によい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のシート材の好適な実施形態を示す平面図である。
【図2】図1中のA−A線断面である。
【図3】図1に示すシート材の製造方法を説明するための図である。
【図4】図1に示すシート材の製造方法を説明するための図である。
【図5】図1に示すシート材の製造方法を説明するための図である。
【図6】本発明のシート材の変形例を示す断面図である。
【図7】従来技術を説明するための断面図である。
【図8】従来のシート材の製造方法を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のシート材の製造方法を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明のシート材の好適な実施形態を示す平面図、図2は、図1の中A−A線断面、図3、図4および図5は、それぞれ、図1に示すシート材の製造方法を説明するための図である。なお、以下では説明の都合上、図2、図3、図5中の上側を「上」、下側を「下」として説明を行う。
【0025】
1.シート材
図1および図2に示すように、シート材1は、剥離シート2と、機能性シート3と、転写シート4とを有している。本実施形態の機能性シート3は、自動車のボディーやバンパー(以下、単に「被着体」とも言う。)などに貼り付けて用いられ、飛び石等から自動車の外装を保護(塗装の剥離や錆の発生を防止・抑制)する機能を有するチッピング防止シートである。
【0026】
以下、これら各シート2、3、4について、順次詳細に説明する。
(剥離シート)
剥離シート2は、後述する粘着剤層32、42からの水分の蒸発や粘着剤層32、42への埃等の付着を防止し、粘着剤層32、42の粘着性を維持するために用いられるシートである。そのため、このような剥離シート2は、機能性シート3を被着体に貼り付ける際(直前)に剥離する。
【0027】
図1および図2に示すように、剥離シート2には、3つのスリット(切断部)21、22、23が形成されており、各スリット21、22、23の両端は、それぞれ、剥離シート2の縁まで到達している。これにより、剥離シート2は、4つ領域2a、2b、2c、3dに分割されている。本実施形態のシート材1では、これら4つの領域2a〜2dのうち、領域2bの上面に機能性シート3が設けられている。
【0028】
図1に示すように、シート材1の平面視にて、剥離シート2の領域2bは、機能性シート3の外周形状よりもひとまわり大きなサイズをなしており、領域2bの上面の縁部が全周にわたって機能性シート3から露出している。言い換えれば、機能性シート3は、領域2bの上面の縁部を除く中央部に設けられている。
【0029】
なお、剥離シート2に形成されるスリット(切断部)の形状や数は、機能性シート3の形状(平面視形状)や剥離シート2上での配置などによって異なり、本実施形態のものに限定されない。
【0030】
このような剥離シート2としては、公知のものを用いることができる。例えば、剥離シート2としては、ポリエチレンテレフタレート、高圧法低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、無延伸ポリプロピレン、延伸ポリプロピレンおよび延伸ナイロンうちの少なくとも1種を主材料として構成されるプラスチックフィルム、上質紙、アート紙、コート紙、グラシン紙のような紙材、不織布等からなる基材の表面(一方の面)に、シリコーン系離型剤、フッ素系離型剤、変性シリコーン系離型剤等で構成された離型層が形成されたものを用いることができる。
【0031】
(機能性シート)
機能性シート3は、被着体に貼り付けられる部材であり、貼り付けられた状態で所定の機能を発揮する。そのため、機能性シート3は、その目的や貼り付け箇所に応じて様々な外径形状および大きさとされる。なお、本実施形態の機能性シート3は、前述したように、自動車のボディーやバンパーなどに貼り付けて用いられ、飛び石等から自動車の外装を保護するチッピング防止シートである。
【0032】
機能性シート3は、剥離シート2の領域2bの上面に設けられている。また、機能性シート3は、剥離シート2の領域2bの上面の縁部を除くように設けられている。これにより、機能性シート3の周囲に剥離シート2の上面が露出してなる剥がし代が形成され、剥離シート2の領域2bをシート材1から剥離する際、機能性シート3が誤って剥離シート2と共に剥離されるのを防止することができる。さらに、剥離シート2の領域2bをシート材1から剥離する際に、使用者のツメ等によって機能性シート3が損傷したり縁部が折れ曲がったりするのを防止することができる。
【0033】
このような機能性シート3は、図2に示すように、機能性層31と、機能性層31の下面側に設けられた粘着剤層32とで構成されている。機能性層31は、チッピング防止機能を有する層であり、粘着剤層32は、機能性シート3(機能性層31)を被着体に貼り付けるための層である。
【0034】
機能性層31の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂のような樹脂材料が挙げられる。これらの中でも、機能性層31の構成材料としては、抗張力、耐摩耗性、耐油性に優れる点で、ポリウレタン系樹脂が特に好ましい。これにより、より優れたチッピング防止機能を有する機能性層31が得られる。
【0035】
特に、自動車のボディーやバンパーは、複雑な曲面で構成されている場合が多く、また、路面に浸み込んだ油分、前方を走る車からの排気に含まれる油分等が付着する機会が多い。そのため、抗張力、耐油性に優れるポリウレタン系樹脂で機能性層31を構成することにより、より優れたチッピング防止機能を発揮することのできる機能性層31が得られる。
【0036】
このような機能性層31の厚さとしては、特に限定されないが、1〜500μm程度であるのが好ましく、150〜300μm程度であるのがより好ましい。このような厚さとすることにより、機能性層31の機械的強度を保ちつつ、機能性シート3の薄型化を図ることができる、その結果、被着体に貼り付けられた機能性シート3を目立たなくすることができる。
【0037】
粘着剤層32を構成する粘着剤(粘着性組成物)としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤等いずれのものでもよいが、そのなかでもアクリル系粘着剤が特に好ましい。アクリル系粘着剤を用いることにより、より耐候性に優れた粘着剤層32を得ることができる。
【0038】
アクリル系粘着剤としては、粘着性を与える低Tgの主モノマー成分と、接着性や凝集力を与える高Tgのコモノマー成分と、架橋や接着性改良のための官能基含有モノマー成分を主とする重合体または共重合体で構成されるものが挙げられる。
【0039】
主モノマー成分としては、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル等のアクリル酸アルキルエステルや、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0040】
コモノマー成分としてはアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0041】
官能基含有モノマー成分としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有モノマーや、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、N−メチロールアクリルアミド等のヒドロキシル基含有モノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
【0042】
このような材料を用いることにより、粘着力、凝集力に優れるとともに、モノマーの種類や分子量の選択により用途に応じた任意の品質、特性を得ることができる。
【0043】
粘着剤層32の厚さ(乾燥膜厚)は、特に限定されないが、1〜500μm程度であるのが好ましく、15〜50μm程度であるのがより好ましい。
【0044】
このような粘着剤層32には、必要に応じ、例えば、粘着付与剤、可塑剤、充填剤、老化防止剤等の各種添加剤を添加することができる。
【0045】
以上、機能性シート3について説明したが、機能性シート3(機能性層31および粘着剤層32)は、光透過性を有すること、より好ましくは、実質的に無色透明であることが好ましい。これにより、被着体に貼り付けた機能性シート3をより目立たなくすることができる。
【0046】
(転写シート)
転写シート4は、主に、被着体への機能性シート3の貼り付けを補助するためのシートである。転写シート4を用いることにより、機能性シート3に直接触れずに機能性シート3を被着体に貼り付けることができるため、機能性シート3(特に粘着剤層32の表面)への指紋や埃の付着による粘着力の低下を防止することができる。また、転写シート4は、後述するように、機能性シート3の位置決め部材としても機能するため、機能性シート3を被着体の所望の箇所に正確に貼り付けることができる。
【0047】
図1および図2に示すように、転写シート4は、機能性シート3を覆うようにして、剥離シート2の上面に設けられている。これにより、機能性シート3は、剥離シート2と転写シート4とで挟まれた(サンドイッチされた)状態となる。そのため、未使用状態の機能性シート3の破損を防止または抑制することができる。
【0048】
転写シート4は、シート状の基材41と、基材41の下面側に設けられた粘着剤層42とで構成されており、粘着剤層42が機能性シート3(機能性層31)の上面および剥離シート2の上面に接触している。
【0049】
基材41としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、高圧法低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、無延伸ポリプロピレン、延伸ポリプロピレンおよび延伸ナイロンうちの少なくとも1種を主材料として構成されるプラスチックフィルムなどを用いることができる。
【0050】
また、粘着剤層42を構成する粘着剤(粘着性組成物)としては、特に限定されないが、例えば、前述した粘着剤層32と同様のものを用いることができる。なお、粘着剤層42は、粘着剤層32の粘着力よりも低いことが好ましく、また、糊残りが生じ難いことが好ましい。転写シート4は、機能性シート3の被着体への貼り付けを補助した後に被着体から剥がされるため、転写シート4の粘着剤層42を上記のように設計することにより、被着体に機能性シート3を貼り付けたまま、転写シート4だけを被着体から容易に剥がすことができ、かつ、被着体への糊残りが防止される。そのため、機能性シート3を被着体に貼り付ける作業を効率よく行うことができる。
【0051】
2.シート材の使用方法
次に、シート材1の使用方法について説明する。なお、以下では、機能性シート3を自動車のボディー(リアフェンダー)に貼り付ける場合について代表して説明するが、シート材1の使用方法は、これに限定されない。
【0052】
まず、シート材1から剥離シート2の領域2cを剥離し、転写シート4の粘着剤層42の一部を露出させる。次に、フェンダーの角にシート材1の角を合わせてシート材1を位置決めした後、粘着剤層42の露出した部分を利用してシート材1をフェンダーに貼り付ける。これにより、シート材1がフェンダーに対して固定され、機能性シート3がフェンダーに対して位置決めされた状態となる。
【0053】
次に、シート材1から剥離シート2の領域2bを剥離し、機能性シート3の粘着剤層32を露出させる。次に、シート材1が撓まないように注意しながら、機能性シート3をフェンダーに貼り付ける。これにより、フェンダーの所定箇所に機能性シート3が貼り付けられた状態となる。
【0054】
次に、シート材1の一方の端部(剥離シート2の領域2aまたは領域2dに対応する部位)を持って、転写シート4をフェンダーから剥がす。これにより、機能性シート3のフェンダーへの貼り付けが終了する。
【0055】
なお、剥離シート2の領域2a、2dは、共に、シート材1から剥離されていない。そのため、シート材1の両端部(領域2a、2dに対応する部位)は、それぞれ、フェンダーに貼り付けられていない持ち代として機能する。このような持ち代を形成しておくことにより、転写シート4の除去を容易に行うことができる。
【0056】
以上のように、シート材1の構成によれば、簡単に、機能性シート3を被着体に貼り付けることができ、作業効率が向上する。
【0057】
3.シート材の製造方法
次に、シート材1の製造方法(本発明の製造方法)について、図3〜図5に基づいて説明する。
【0058】
シート材1の製造方法は、第1シート材6を用意し、第1シート材6を切断して所定の形状パターンのシート片8を複数得る工程Aと、第2シート材7を用意し、第2シート材7が有する後述する剥離シート71の一部を除去して、シート片8の形状パターンに対応した形状の除去部71aを形成する工程Bと、第2シート材7の除去部71aにシート片8を貼り合わせる工程Cとを有している。なお、工程Aと工程Bは、どちらを先に行ってもよいし、並行して行ってもよい。
【0059】
[工程A]
まず、図3(A)に示すように、可撓性を有する第1シート材6を準備する。
【0060】
第1シート材6は、剥離シート(第1剥離シート)61と機能性シート62とを積層してなるシート材である。また、機能性シート62は、機能性層621と粘着剤層(第1粘着剤層)622とを積層してなるシート材であり、粘着剤層622が剥離シート61と接合している。このような第1シート材6の剥離シート61は、シート材1の剥離シート2の領域2bを構成するものであり、機能性シート62は、シート材1の機能性シート3を構成するものである。
【0061】
次に、図3(B)に示すように、ハーフカット刃によって、機能性シート62を所定の形状パターンに切断して切断領域62aを形成するとともに、フルカット刃によって、切断領域62aの全域を含むように第1シート材6を所定の形状パターンに切断する。これにより、シート片8が得られる。なお、フルカット刃による第1シート材6の切断は、切断領域62aの周囲に形成される後述する剥がし代の領域を考慮して行う。
【0062】
次に、図3(C)に示すように、シート片8から、機能性シート62の切断領域62a以外の部分を除去する。すなわち、シート片8では、機能性シート62が剥離シート61の上面の縁部を除くように設けられており、これにより、機能性シート62の周囲に剥離シート61の上面が露出してなる剥がし代が形成されている。
【0063】
ここで、図4に示すように、本製造方法では、第1シート材6から複数の(なるべく多くの)シート片8を切断し得ている。これにより、第1シート材6を有効利用することができ、シート材1の製造コストが削減されるとともに、廃出物を抑えることができ、環境にも良い。
【0064】
第1シート材6の平面視にて、第1シート材6に対するシート片8の占有面積(各シート片の占有面積の合計)は、特に限定されないが、80%以上であることが好ましい。これにより廃出物をより少なくすることができる。
【0065】
また、図4に示すように、各シート片8が長手形状をなしている場合には、長手形状をなす第1のシート片8の短手方向(長手方向に直交する方向)に各シート片8の長手方向が一致するように、第1シート材6から複数のシート片8を切断することが好ましい。これにより、各シート片8の第1シート材6上での配置を比較的簡単なものとしつつ、第1シート材6を有効利用することができる。
【0066】
また、図4に示すように、第1シート材6上にて、複数のシート片8が同じ姿勢(向き)であることが好ましい。また、第1シート材6上にて、複数のシート片8が第1シート材6の長手方向に沿って一列に並んでいるのが好ましい。これにより、シート片8の切断を、より効率よく行うことができる。
【0067】
[工程B]
まず、図5(A)に示すように、可撓性を有する第2シート材7を準備する。
【0068】
この第2シート材7は、剥離シート(第2剥離シート)71と、転写シート72とを積層してなるシート材である。また、転写シート72は、基材721と粘着剤層(第2粘着剤層)722とが積層してなるシート材であり、粘着剤層722が剥離シート71と接合している。このような剥離シート71は、シート材1の剥離シート2の領域2a、2c、2dを構成するものであり、また、転写シート72は、シート材1の転写シート4を構成するものである。
【0069】
次に、図5(B)に示すように、フルカット刃を用いて、第2シート材7を所定の形状パターンにカットするとともに、ハーフカット刃を用いて、剥離シート71の所定領域を他の領域から切り離すように切断し、切断した部分を取り除く。これにより、剥離シート71に除去部71aが形成される。除去部71aの平面視形状(形状パターン)は、シート片8の平面視形状(形状パターン)とほぼ一致している。また、これとともに、ハーフカット刃を用いて、剥離シート71の適当な位置に両端が縁に到達しているスリット(切断部)を形成する。
【0070】
これにより、シート材1の剥離シート2の領域2a、2c、2dと、転写シート4とが得られる。なお、本工程では、第2シート材7を所望の形状パターンに切断しているため、製造されたシート材1では、転写シート4を、被着体に対する機能性シート3の位置決めを行う位置決め部材として用いることができる。
【0071】
[工程C]
次に、図5(C)に示すように、シート片8を、第2シート材7の剥離シート71が有する除去部71aに、機能性シート62が粘着剤層722に接合するように貼り合わせる。これにより、シート片8の機能性シート62が転写シート72の粘着剤層722に接合され、シート片8が第2シート材7に保持(貼着)される。
【0072】
このような状態では、転写シート72の機能性シート3と重なり合っている部分が、外側へ向かって突出するように湾曲しているのが好ましい。これにより、シート片8の剥離シート61と第2シート材7の剥離シート72とがツライチとなり、特に、シート片8の剥離シート61の不本意な剥離が防止される。
以上により、シート材1が得られる。
【0073】
このような製造方法によれば、前述したように、第1シート材6を有効利用することができるため、シート材1の製造コストの削減を図ることができるとともに、廃出物の発生量を抑えることができる。
【0074】
以上、本発明のシート材の製造方法およびシート材を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【0075】
また、前述した実施形態では、機能性シート3がチッピング防止機能を有する構成について説明したが、機能性シート3が有する機能としては、これに限定されない。機能性シート3が有する機能としては、例えば、所定の電波を受信することのできる電波受信機能であってもし、光を反射することのできる反射機能であってもよし、蓄光性を有し暗闇で発光する機能を有していてもよい。
【0076】
機能性シート3が所定領域の波長の電波を受信することのできる電波受信機能を有する場合、機能性層31の構成材料を導電性を有する材料とすればよい。導電性を有する材料としては、特に限定されず、例えば、金属材料を用いることができる。金属材料としては、特に限定されず、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、金、白金、銀、銅、マンガン、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、鉛、錫、チタン、タングステン等の各種金属、またはこれらのうちの少なくとも1種を含む合金を用いることができる。
【0077】
また、機能性層31としては、上記の金属材料で構成された金属箔をプレス等により打ち抜いて成形したものを用いることができる。また、機能性層31として金属箔を用いる他、上記金属材料を使用して、例えば、蒸着膜やスパッタリング、金属ペーストの塗布により形成した薄膜を機能性層31として用いてもよい。また、機能性層31は、上記金属箔等を積層したものでもよい。
【0078】
また、機能性シート3が光を反射することのできる反射機能を有する場合、機能性層31の構成を、例えば図6に示す構成とすることができる。すなわち、機能性層31は、金属薄層311と、その上に分散配置された複数の透明粒状物312と、その上に設けられたカバー層313で構成されている。
【0079】
金属薄層311は、例えば、アルミニウム、金、銀、ロジウム等の各種金属による薄膜をメッキ、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の方法により形成されたものであり、上方または斜め上方より入射し、透明粒状物312を透過した光を反射する機能を有する。
【0080】
各透明粒状物312は、入射光および反射光の方向を調整する機能を有するものであり、その直径は、例えば30〜150μm程度とされる。なお、透明粒状物312は、それらを安定して固定するために、図示しない結合材(バインダー)により結合、固定されていてもよい。このような透明粒状物312としては、例えば、球状のプラスチックビーズやガラスビーズなどを用いることができる。
【0081】
カバー層313は、光透過性を有し、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂のような樹脂材料で構成されている。なお、このカバー層313は、無色透明でもよいが、所定の色(色相)に着色されているのが好ましい。このカバー層313の色が、機能性シート3の反射色を担う。着色方法としては、カバー層313の構成材料中に、例えば、赤色、青色、黄色、緑色、紫色等の着色剤(顔料または染料)を添加することが挙げられる。また、カバー層313中には、後述するような蛍光材料が添加されていてもよい。
【0082】
また、機能性シート3が蓄光性を有する場合には、機能性層31に蓄光性を有する材料(蓄光材)を含有させればよい。すなわち、機能性層31を蓄光材を含む材料で構成すればよい。ここで、前記「蓄光材」とは、光を蓄えて発光する性質を有する材料のことを言う。
【0083】
このような蓄光材としては、光を蓄え暗闇で発光する性質を有していれば、特に限定されず、硫化亜鉛系、アルミン酸系ストロンチウムなどの蓄光顔料を用いることができる。これらの中でも、発光特性に優れる点および放射性物質を使用しない点で、アルミン酸系ストロンチウムを用いることが好ましい。
【0084】
また、前述した実施形態では、被着体として自動車のボディーを挙げたが、被着体としては、これに限定されず、例えば、オートバイ、自転車、船舶、列車車両、道路標識や各種表示板、ヘルメット、スキー板、スノーボード、サーフボード、ラケット、ゴルフクラブ等の各種運動用具、登山用具、ダイビング用具、各種照明器具、各種光学機器、建設機械、土木機械、建築構造物等が挙げられる。
【0085】
また、前述した実施形態では、機能性シート3が、機能性層31と粘着剤層32とで構成されているが、機能性シート3の構成としては、これに限定されず、例えば、機能性層31と粘着剤層32との間に設けられた中間層を有していてもよいし、機能性層31の粘着剤層32と反対側の面側に設けられた表面層を有していてもよい。中間層および表面層としては、特に限定されず、例えば、ハードコート層、反射防止層等であってもよい。
【0086】
また、前述した実施形態では、第1シート材から得られる複数のシート片の形状パターンが互いに同じであったが、第1シート材から得られる複数のシート片の形状パターンは、それぞれ、異なっていてもよい。この場合には、得られた複数のシート片のうちから選択された1つのシート片の形状パターンと一致するように第2シート材の剥離シートに除去部を形成すればよい。
【符号の説明】
【0087】
1 シート材
2 剥離シート
2a 領域
2b 領域
2c 領域
2d 領域
21 スリット
22 スリット
23 スリット
3 機能性シート
31 機能性層
311 金属薄層
312 透明粒状物
313 カバー層
32 粘着剤層
4 転写シート
41 基材
42 粘着剤層
6 第1シート材
61 剥離シート
62 機能性シート
621 機能性層
622 粘着剤層
62a 切断領域
7 第2シート材
71 剥離シート
71a 除去部
72 転写シート
721 基材
722 粘着剤層
8 シート片
900 シート材
910 第1シート材
911 離型シート
912 機能性シート
912a 基材
912a’ 切断部
912b 粘着剤層
920 第2シート材
921 離型シート
922 転写シート
922a 基材
922b 粘着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能性層と第1粘着剤層とを積層してなる機能性シートと、前記第1粘着剤層の前記機能性層と反対の面側に設けられた第1剥離シートとを有する第1シート材を用意し、前記第1シート材を切断して所定の形状パターンのシート片を複数得るとともに、
シート状の基材と第2粘着剤層とを積層してなる転写シートと、前記第2粘着剤層の前記基材と反対の面側に設けられた第2剥離シートとを有する第2シート材を用意し、前記第2剥離シートの一部を除去して、複数の前記シート片のうちの1つの前記シート片の形状パターンに対応した形状の除去部を形成し、
次いで、前記第2シート材の前記除去部に前記1つのシート片を、前記機能性シートが前記第2粘着剤層に接合するように貼り合わせることを特徴とするシート材の製造方法。
【請求項2】
前記第1シート材からなるべく多くの前記シート材が得られるように前記第1シート材を切断する請求項1に記載のシート材の製造方法。
【請求項3】
前記第1シート材の平面視にて、複数の前記シート材の占有面積は、前記第1シート材の80%以上である請求項2に記載のシート材の製造方法。
【請求項4】
前記第1シート材は、その平面視形状が長手方向をなし、
各前記シート片は、その平面視形状が長手形状をなし、
前記シート片の長手方向を前記第1シート片の短手方向と一致させて、前記第1シート材から前記複数のシート片を切断する請求項1ないし3のいずれかに記載のシート材の製造方法。
【請求項5】
ハーフカットにより前記機能性シートを所定の形状パターンに切断して切断領域を形成するとともに、フルカットにより前記機能性シートおよび前記第1剥離シートを前記切断領域の全域を含むように切断した後、前記機能性シートの前記切断領域の外側に位置する部位を除去することにより、前記シート片を得る請求項1ないし4のいずれかに記載のシート材の製造方法。
【請求項6】
前記シート片では、前記第1剥離シートの前記機能性シート側の面の縁部を除くように前記機能性シートが設けられている請求項5に記載のシート材の製造方法。
【請求項7】
前記第2シート材に前記除去部を形成するとともに、前記第2シート材を所定の形状パターンに切断する請求項1ないし6のいずれかに記載のシート材の製造方法。
【請求項8】
前記第2シート材は、被着体に対する前記シート片の位置決めを行う位置決め部材として機能する請求項1ないし7のいずれかに記載のシート材の製造方法。
【請求項9】
前記転写シートは、可撓性を有し、
前記第2シートの前記除去部に前記シート片を貼り合わせると、前記シート片が貼り合わされた部位にて前記転写シートが突出する請求項1ないし8のいずれかに記載のシート材の製造方法。
【請求項10】
前記第2粘着剤層の粘着力は、前記第1粘着剤層の粘着力よりも小さい請求項1ないし9のいずれかに記載のシート材の製造方法。
【請求項11】
前記機能性シートは、被着体を保護する保護機能、所定の電波を受信することのできる電波受信機能および光を反射することのできる反射機能のうちの少なくとも1つの機能を有している請求項1ないし10のいずれかに記載のシート材の製造方法。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載のシート材の製造方法によって製造されることを特徴とするシート材。
【請求項13】
前記転写シートを前記機能性シートと共に被着体に貼り付けた後、前記転写シートを前記被着体から除去することにより、前記機能性シートを前記被着体に貼り付ける請求項12に記載のシート材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−25057(P2012−25057A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−166707(P2010−166707)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【出願人】(598007779)鳥居工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】