説明

シート状体

【課題】容易に剥離可能でありながら繰り返し再貼着可能なシート状体を提供する。
【解決手段】画像が形成されたシート状本体8と、このシート状本体8を被貼着体に剥離可能で再貼着可能にすべく、該シート状本体8又は被貼着体2のいずれか一方に貼着可能な自己吸着性を有する透明な吸着部材4とを備える。また、前記シート状本体8が、画像が形成された生地と、この生地の両面を挟み込む透明な樹脂シート6,7とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯電話やパソコンなどの表示画面などに備えられて使用されるシート状体に関する。
【背景技術】
【0002】
上記シート状体には、画像が備えられており、そのシート状体を携帯電話やパソコンなどの表示画面に貼り付けることによって、表示画面を保護できるだけでなく、表示画面の装飾をも行うことができるように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、上記シート状体は、前記のように表示画面の装飾の目的に用いられる他、携帯電話やパソコンなどの表示画面に表示される個人情報や機密情報が第3者に表示画面の正面からずれた斜め方向から覗き見された場合に、シート状体に備えさせた着色部(画像)が表示画面を遮断して前記覗き見を防止する目的で貼り付けられる(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−56719号公報
【特許文献2】特開2008−219308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、シート状体は表示画面に長期間貼り付けられていると、異なる画像を有する他のシート状体に貼り替えたい場合がある。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1,2のシート状体は、表示画面に粘着層を介して貼り付けられる構成であるため、一度表示画面に貼り付けられてしまうと、シート状体を表示画面から剥がすことが難しいだけでなく、一旦剥がしてしまうと、べた付いている粘着部分にゴミや汚れが付着し易い。この付着によって、粘着性が低下してしまい、再度貼り付けることができないものであり、使用し難いという不都合があった。因みに、シート状体を表示画面から剥がしてから粘着部分に塵や汚れが付着しないように保管用の剥離シートに貼り付けて保管することが考えられるが、別に剥離シートを購入しなければならず、コスト面において不利になるだけでなく、シート状体の粘着部分に塵や汚れが付着しないように剥離シートにシート状体を慎重に貼り付けなければならず、取扱面においても不利になり、実施し難いものであった。
【0007】
本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、容易に剥離可能でありながら繰り返し再貼着可能なシート状体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のシート状体は、前述の課題解決のために、画像が形成されたシート状本体と、このシート状本体を被貼着体に剥離可能で再貼着可能にすべく、該シート状本体又は被貼着体のいずれか一方に貼着可能な自己吸着性を有する透明な吸着部材とを備えさせたことを特徴としている。
【0009】
上記構成によれば、シート状本体又は被貼着体のいずれか一方に透明な吸着部材を備えさせておけば、シート状本体を被貼着体に吸着部材を介して貼り付けることができる。そして、貼り付けたシート状本体を被貼着体から容易に剥離したり、剥離したシート状体を被貼着体に再度貼り付けることを吸着部材を介して繰り返し容易に行うことができる。
【0010】
また、本発明のシート状体は、前記シート状本体が、画像が形成された生地と、この生地の両面を挟み込む透明な樹脂シートとを備えていてもよい。
【0011】
上記構成にしておけば、画像が形成された生地を透明な樹脂シートに挟み込んで覆っていることから、生地に形成された画像が他物との接触などにより早期に劣化することがない。
【0012】
また、本発明のシート状体は、前記樹脂シートが、前記生地よりも大きな寸法に構成された2枚のシートからなり、前記2枚のシート間に前記生地を挟み込んだ状態において該シートの外周縁同士が貼り合わされる又は熱融着されていてもよい。
【0013】
上記構成にしておけば、2枚の樹脂シート間に生地が密封された状態にすることができるから、生地に形成された画像が外気に触れることがなく、画像の劣化を抑制することができる。
【0014】
また、本発明のシート状体は、前記被貼着体に前記吸着部材が貼り付けられ、前記吸着部材に対して前記シート状本体を着脱自在に構成し、吸着部材の外形寸法を前記樹脂シートの外形寸法よりも大きく設定してもよい。
【0015】
上記構成にしておけば、吸着部材と被貼着体との吸着面積を吸着部材とシート状本体との吸着面積よりも大きくすることができるから、吸着部材からシート状本体を剥がす際に、被貼着体から吸着部材が剥がれてしまうことがなく、被貼着体に吸着させた状態の吸着部材からシート状本体のみを確実に剥がすことができる。しかも、シート状本体を吸着部材から剥がす場合に、指の爪を吸着部材の露出している外周面を内方に向かって滑らせることによって、シート状本体の角に爪を容易に引っ掛けることができ、シート状本体の取り外し作業を簡単に行える利点もある。
【0016】
また、本発明のシート状体は、前記吸着部材と前記被貼着体との吸着力を該吸着部材と前記シート状本体との吸着力よりも大きく設定してもよい。
【0017】
上記構成にしておけば、シート状本体を吸着部材から剥がす場合に、吸着部材が被貼着体から剥がれるといったことを更に確実に回避して、シート状本体を被貼着体に吸着されている吸着部材から確実に剥がすことができる利点がある。
【0018】
また、本発明のシート状体は、前記生地が、多数の透孔を形成するように多数の線状部が交差してなる合成樹脂製のメッシュ部材からなり、前記多数の線状部に着色して画像が形成されていてもよい。
【0019】
上記構成にしておけば、シート状体を正面方向から見た場合には、多数の透孔を通してシート状体の向こう側を良好に見ることができる。また、シート状体を、正面からずれた斜め方向から見た場合には、線状部によって透孔が塞がって(或いは、小さくなって)画像が密に見えるので、線状部の着色部分にて形成される画像をくっきりと鮮明に見ることができる。
【0020】
例えば、本発明に係るシート状体を携帯電話やパソコンなどの表示画面に備えさせた場合、該表示画面を正面方向から見ると、シート状体の多数の透孔を通して表示画面の画像を良好に見ることができる。一方、表示画面を正面からずれた斜め方向から見ると、シート状体の線状部によって前記透孔が塞がって(或いは、小さくなって)画像が密に見えるため、線材部の着色部分で形成される画像によって表示画面の画像を確実に覆うことができ、従って、表示画面の覗き見を効果的に防止することができる。
【0021】
また、本発明のシート状体は、前記線状部は線材であり、前記メッシュ部材は前記線材をメッシュ状に平織りした織布であり、開口率が34%から76%の範囲であることが好ましい。
【0022】
上記のように開口率の範囲を設定しておけば、シート状体を正面方向から見たときには、多数の透孔を通してシート状体の向こう側を鮮明に見ることができながらも、シート状体を斜め方向から見たときには、線状部によって透孔が塞がり、シート状体の画像をくっきりと鮮明に表示することができる。
【0023】
また、本発明のシート状体は、前記メッシュ部材が透明あるいは半透明なポリエステル製であり、該メッシュ部材の線状部に染料が浸透して前記画像が形成されていてもよい。
【0024】
上記構成にしておけば、例えばインクを線状部に塗布して画像形成する場合に比して、画像を容易且つ鮮明に形成することができる。しかも、前記メッシュ部材が透明なポリエステル製であるので、シート状体を正面から見た場合に、シート状体の向こう側から透明な線状部や透孔を透過した光によってメッシュ部材に形成されている画像が希釈して見える(薄く見える)と共に、透明あるいは半透明に構成されたある程度の透明度のあるメッシュ部材と透孔とを通してシート状体の向こう側を見ることができるので、特に向こう側にある光源が明るければ明るいほどシート状体の向こう側がさらに極めて見え易くなる。
【発明の効果】
【0025】
このように、本発明に係るシート状体にあっては、シート状本体又は被貼着体のいずれか一方に透明な吸着部材を備えさせておけば、シート状本体を被貼着体に吸着部材を介して容易に剥離したり、剥離したシート状体を被貼着体に再度貼り付けることを繰り返し容易に行うことができるシート状体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(a),(b)は、本発明に係るシート状体の第1の実施形態であるシート状体を携帯電話の画面に貼り付ける直前の状態を示す斜視図である。
【図2】(a)は、同シート状体を携帯電話の画面に貼り付けた状態を示す縦断面図、(b)は、同シート状体を携帯電話の画面に貼り付ける直前の状態を示す斜視図である。
【図3】本発明に係るシート状体を構成するメッシュ生地の斜視図である。
【図4】(a)は、本発明に係るシート状体の第2の実施形態であるシート状体を携帯電話の画面に貼り付けた状態を示す縦断面図、(b)は、同シート状体を携帯電話の画面に貼り付ける直前の状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係るシート状体の実施形態について、図面を参酌しつつ説明する。
【0028】
<第1実施形態>
図1(a),(b)に、本発明に係る第1実施形態の矩形状(長方形状)のシート状体1を被貼着体としての携帯電話2(パソコンのモニタなどでもよい)の表示画面3に吸着部材4を介して貼り付ける手順を示している。
【0029】
シート状体1は、図2(a),(b)に示すように、合成樹脂製のメッシュ部材5(図3参照)及びこのメッシュ部材5の両面(表面と裏面)を挟み込む2枚の透明な樹脂シート6,7から構成されるシート状本体8と、このシート状体8を携帯電話2の表示画面3に貼り付けるために表示画面3上に貼り付けられる前記吸着部材4とを備えている。
【0030】
メッシュ部材5は、図3に示すように、多数の透孔9を形成するように多数の線状部10が直交してなり(90度以外の角度で交差していてもよい)、これら多数の線状部10は、合成樹脂材料で構成されている。そして、それら多数の線状部10に着色することによって、画像が形成された生地を構成することができる。線状部10は一色のみで着色してもよいし、複数色で着色してもよい。
【0031】
前記線状部10は、線材であり、前記メッシュ部材5は、一辺が1インチの正方形中に縦100本で横100本の線材をそれぞれ略等間隔で網目状(メッシュ状)に平織りした織布からなり、線材間に形成される空洞(孔)が10,000個を形成する。使用する線材の収縮が耐熱状態により個々に異なるため、前記孔の個数である10,000個は変動することがある。具体的には、線材の太さ(線径)が55μm、透孔8の大きさが199μm、開口率が61%、線材を平織りした織布の厚みが90μmである。尚、線材の太さ(線径)を48μm〜130μm、透孔8の大きさを79μm〜368μm、開口率を34%〜76%、線材を平織りした織布の厚みを71μm〜130μmの範囲に設定することができる。開口率は、メッシュ部材5を構成する全線材の表面積と全透孔8の面積との比率から求めることができる。
【0032】
また、メッシュ部材5は、透明な(半透明でもよい)ポリエステル製であり、該メッシュ部材5の線状部10である線材に染料が浸透して着色されることで前記画像が形成されている。図2(a)においてメッシュ部材5内に記した点(ドット)が線材に浸透した染料を示している。メッシュ部材5は、ポリエステル系樹脂にて構成するのが最適であるが、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂などを用いて構成してもよい。
【0033】
一方の樹脂シート6は、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの透明な合成樹脂材料の他、ポリ塩化ビニルやオレフィン系樹脂などを用いて薄いフィルム状に構成されている。また、樹脂シート6は、メッシュ部材5よりも縦横の寸法が大きなシート基材6Aと、このシート基材6Aの一方の面の全体に塗布された粘着層6Bとを備えている。また、他方の樹脂シート7は、前記一方の樹脂シート6と同一であり、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの透明な合成樹脂材料の他、ポリ塩化ビニルやオレフィン系樹脂などを用いて薄いフィルム状に構成され、かつ、メッシュ部材5よりも縦横の寸法が大きなシート基材7Aと、このシート基材7Aの一方の面の全体に塗布された粘着層7Bとを備えている。従って、2枚の樹脂シート6,7間にメッシュ部材5を挟み込むことにより、2枚の樹脂シート6,7の外周縁同士が粘着層6B,7Bで貼り合わされ、メッシュ部材5が画像が形成された生地を2枚の透明な樹脂シート6,7に挟み込んで覆っていることから、メッシュ部材5が解れることを防止することができるだけでなく、メッシュ部材5に形成された画像が他物と接触などして早期に劣化することを確実に防止することができる。尚、シート基材6A,7Aの厚みは、10μm〜70μmが好ましいが、メッシュ部材5に馴染み易い20μm〜30μm程度がより好ましい。特に厚みを20μm程度にしていると、表示画面3からシート状体1を剥がすときに爪がシート基材6A,7A間に入ることがなく、爪を表示画面3とシート状体1との間に確実に入り込ませることができる利点がある。
【0034】
前記のように構成されたシート状体1を表示画面3に備えさせることによって、表示画面3を正面方向から見たときに、シート状体1の多数の透孔9を通して表示画面3の画像を良好に見ることができる。また、透明な線材に染料が浸透して線材を着色していることから、例えばインクを線状部10に塗布して画像形成する場合に比して、画像を容易且つ鮮明に形成することができる。しかも、前記メッシュ部材5が透明な(半透明でもよい)ポリエステル製であるので、シート状体1を正面方向から見た場合に、シート状体1の向こう側から透明な線状部10や透孔9を透過した光によってメッシュ部材5に形成されている画像が希釈して見える(薄く見える)と共に、透明なメッシュ部材5と透孔9とを通してシート状体1の向こう側を見ることができるので、シート状体1の向こう側が極めて見え易くなる。一方、表示画面3を正面からずれた斜め方向から見ると、シート状体1の線状部10によって前記透孔9が塞がって(或いは、小さくなって)画像が密に見えるため、線材部10の着色部分で形成される画像によって表示画面3の画像を確実に覆うことができ、従って、表示画面3の覗き見を効果的に防止することができる。透孔9が塞がるとは、表示画面3を見る角度によって、透孔9が見えなくなり、線材部10のみが見えることである。
【0035】
吸着部材4は、シート状体1を携帯電話2に剥離可能で再貼着可能にすべく、携帯電話2に貼着可能な自己吸着性を有する透明な材料からなっている。具体的には、吸着部材4は、軟質塩化ビニル(PVC)、ポリエステル、シリコンなどの1種又は複数種、の多機能シート又はそれらに類似した性質を有する両面再剥離貼着フィルムなどから構成されている。自己吸着性とは、吸着部材4の表面において携帯電話2及びシート状体1に貼り付くような作用を有しており、特に携帯電話2及びシート状体1の表面が平滑面であればあるほど吸着部材4の貼着力が大きくなる。特に、軟質塩化ビニル(PVC)でなる吸着部材4と、ポリ塩化ビニル又はポリプロピレン(PP)でなる樹脂シート6,7との組み合わせが貼着力を確実に発揮することができる。
【0036】
また、吸着部材4は、前記樹脂シート6,7よりも少し大きな大きさ(縦横とも樹脂シート6,7よりも数ミリから数センチ程度大きな寸法)を有する長方形状に構成され、べた付きのない被膜を形成することによって、粘着層なしで樹脂シート6,7を吸着することができ、しかも着脱を繰り返しても、塵や埃が吸着部材4の表面に付着し難くい。前記吸着部材4は、被膜を形成してなる自己吸着性を持つ層から構成されているが、自己吸着性を持つ層を備えたフィルムから構成されていてもよい。このフィルムは、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの透明な合成樹脂材料の他、ポリ塩化ビニルやオレフィン系樹脂などを用いて構成されている。前記のように吸着部材4を樹脂シート6,7よりも大きな寸法にしておけば、吸着部材4と携帯電話2との吸着面積を吸着部材4とシート状本体8(樹脂シート6,7)との吸着面積よりも大きくすることができるから、吸着部材4からシート状本体8(樹脂シート6,7)を剥がす際に、携帯電話2から吸着部材4が剥がれてしまうことがなく、携帯電話2に吸着させた状態の吸着部材4からシート状本体8(樹脂シート6,7)のみを確実に剥がすことができる。しかも、シート状本体8を吸着部材4から剥がす場合に、指の爪を吸着部材4の露出している外周面を内方に向かって滑らせることによって、シート状本体8の樹脂シート6,7の角に爪を容易に引っ掛けることができ、シート状本体8の取り外し作業を簡単に行える利点もある。また、表面が汚れても、汚れに対して水洗いや拭き取りを行うことによって、吸着力を回復させて、繰り返し使用が行える。
【0037】
従って、吸着部材4の一方の面を表示画面3に押し付けることによって、吸着部材4を表示画面3に貼り付けることができる。そして、吸着部材4の他方の面、つまり外部に露出している外面に前記構成のシート状体1を押し付けることによって、シート状本体8を吸着部材4に貼り付けて、シート状本体8を表示画面3に貼り付けることができる。また、吸着部材4の裏面と表示画面3との吸着力を吸着部材4の表面とシート状本体8との吸着力よりも大きくしておけば、シート状本体8を剥がす場合に、吸着部材4が表示画面3から剥がれるといったことを更に確実に回避して、シート状本体8を表示画面3に吸着されている吸着部材4から確実に剥がすことができる利点がある。前記のように吸着部材4をシート状本体8を構成する樹脂シート6,7よりも大きな寸法にしておけば、吸着部材4と携帯電話2との吸着面積を吸着部材4と樹脂シート6,7との吸着面積よりも大きくすることができ、シート状本体8を表示画面3に吸着されている吸着部材4からより一層確実に剥がすことができるが、吸着部材4を樹脂シート6,7と同一寸法にしてもよいし、吸着部材4を樹脂シート6,7よりも小さな寸法にして実施することもできる。尚、吸着部材4を樹脂シート6,7よりも小さな寸法にした場合には、樹脂シート6,7の外周縁の四辺部分が僅かに浮いた状態になるため、爪が樹脂シート6,7の外周縁に引っ掛かり易くシート状本体8を剥がし易い利点がある。
【0038】
これとは反対に、吸着部材4の裏面と表示画面3との吸着力を吸着部材4の表面とシート状本体8との吸着力よりも小さくしておけば、シート状本体8を吸着部材4と一緒に表示画面3から確実に剥がすことができるが、シート状本体8に吸着部材4を例えば粘着剤(粘着層)を介して完全に固定しておくこともできる。この吸着部材4は、前述同様に、表示画面3に対して自己吸着性を持つ層のみで構成してもよいし、該自己吸着性を持つ層を備えたフィルムであってもよい。尚、吸着部材4からシート状本体8のみを取り外す構成では、他のシート状本体8を吸着部材4に直ちに貼り付けることができる利点がある。
【0039】
次に、前記シート状体を製造する製造方法について説明する。
【0040】
まず、平織りされたメッシュ部材5と樹脂シート6,7とを用意する。次に、メッシュ部材5のみを事前に加熱する(事前加熱工程)。この事前に加熱されたメッシュ部材5に染料を備えた転写部材を接触させた状態で加熱(195℃で15秒)、加圧(1トン/cm)することにより、メッシュ部材5に染料を浸透させて画像を形成する(画像形成工程)。この後、粘着層6B,7Bを有する前記樹脂シート6,7を前記画像形成工程終了後にメッシュ部材5に両側から貼り合せる。このとき、樹脂シート6,7とメッシュ部材5との一体化をより高める必要がある場合には、常温で加圧(500kg/cm〜1t(トン)/cm)すると、密着性を高めることができ、望ましい。このように事前に加熱したメッシュ部材5を用いれば、画像形成工程時の加熱でメッシュ部材5が不必要に収縮することを抑制してシート状体1の皺や波打ちを有効に抑制することができ、従って、シート状体1の品質を高めることができる。尚、事前に加熱したメッシュ部材5を購入することによって、事前加熱工程を省略してもよい。
【0041】
前記事前加熱工程での加熱温度を前記画像形成工程での加熱温度と略同等な温度(例えば195℃)に設定することによって、画像形成工程時の加熱によるメッシュ部材5の収縮を効果的に抑制することができる。画像形成工程での加熱温度としては、195℃のような高温にする方が加熱時間の短縮となり好ましいが、少し低い温度、例えば180℃から190℃の任意の温度で加熱時間を少し長くする(20秒から30秒)ようにしてもよく、メッシュ部材5に染料を浸透させて画像を形成することができる加熱温度であれば、何度に設定してもよい。このように事前加熱工程での加熱温度を前記画像形成工程での加熱温度よりも少し低い温度に設定しても、事前に加熱していないメッシュ部材5を画像形成工程で加熱する場合に比べて、画像形成工程時の加熱によるメッシュ部材5の収縮を抑制することができる。尚、画像形成工程での加熱温度は、160℃から200℃の範囲に設定するとともに、これに対応する加熱時間は、50秒から8秒に設定することが好ましい。また、事前加熱工程での加熱温度と画像形成工程での加熱温度との差は、事前加熱工程での加熱温度が画像形成工程での加熱温度を下回らなければ問題はないが、熱ムラも考慮して5℃以内とすることが無駄がなく望ましい。
【0042】
平版熱プレス機で事前加熱を行う場合には、メッシュ部材5の収縮を2回のプレスに分けることでメッシュ部材5をより滑らかに収縮させることができる。例えば、A4サイズのメッシュ部材5の加熱プレス時間を15秒とし、これを2回(加圧はいずれも1t(トン)/cm)行うことで転写加工用に耐熱処理されていないメッシュ部材5に対して画像に歪がなく、染料を浸透させることができる。尚、A4サイズのメッシュ部材5は、所定の大きさに裁断されてから、前記シート状本体8を作製することになる。
【0043】
<第2実施形態>
図4(b)に、本発明に係る第2実施形態のシート状体1を携帯電話2(パソコンのモニタなどでもよい)の表示画面3に備えさせる直前の状態を示している。
【0044】
第1実施形態では、樹脂シート6,7をメッシュ部材5よりも大きな外形寸法に構成することによって、樹脂シート6,7間にメッシュ部材5を密封することができるようにしたが、図4(a),(b)では、樹脂シート6,7をメッシュ部材5と同一の大きさに設定した場合を示している。このように樹脂シート6,7をメッシュ部材5と同一の大きさにした場合には、樹脂シート6,7とメッシュ部材5とを単に貼り合わせるだけであるため、図2(a),(b)に示した樹脂シート6,7間にメッシュ部材5を密封する場合に比べて、シート状本体8の作製も簡単になる。また、樹脂シート6,7でメッシュ部材5を覆うことによって、シート状体1の耐久性も十分に確保できる。他の説明していない構成は、図2(a),(b)と同一であるため、説明を省略する。
【0045】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0046】
前記実施形態では、シート状本体8を表示画面3よりも大きな寸法に構成したが、表示画面3の一部のみを覆う大きさに設定してもよいし、表示画面3と略同一の大きさに設定してもよい。また、シート状体1を長方形に構成する他、正方形や多角形、あるいは円形や楕円形などであってもよい。
【0047】
また、前記実施形態では、メッシュ部材5に染料を浸透させて画像を形成した場合を示したが、メッシュ表面に、インクなどを塗布して画像を形成する場合であってもよい。
【0048】
また、前記実施形態では、メッシュ部材5が線材をメッシュ状に平織りした織布であったが、合成樹脂製の薄いシート状部材に多数の透孔が設けられたものから構成してもよい。このシート状部材の場合、透孔を打抜き又は一体成形により備えさせることになる。
【0049】
また、前記実施形態では、シート状体1を覗き見防止用として構成したが、装飾用としてシート状体1を構成することもできる。この場合、装飾用の画像が形成された生地の材料として、ウレタン樹脂(透明ウレタンゴム)の他、アクリル、ナイロン、トリアセテートなどを用いてカードのような板状体に形成してもよい。この板状体は、メッシュ部材5に比べて保形強度があるため、樹脂シート6,7で挟み込まなくてもよい。また、メッシュ部材5を、シートとメッシュとを重ね合わせた複合素材から構成してもよい。この場合、例えばポリエステル95%、ポリウレタン5%の混合率で混合した材料を用いることにより(混合率は自由に変更することができるが、ポリウレタンに対してポリエステルを高混合率とすることが好ましい)、熱に強く、昇華が起こり易く、透明性のあるメッシュ部材とすることができる。また、ポリエステル95%、透明性のない綿5%を混合した材料を用いて(混合率は自由に変更することができるが、綿に対してポリエステルを高混合率とすることになる)、複合素材からなるメッシュ部材であってもよい。
【0050】
また、前記実施形態では、メッシュ部材5を2枚の樹脂シート6,7で挟みこんだが、一枚の樹脂シートでメッシュ部材5を挟み込んでもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…シート状体、2…携帯電話(被貼着体)、3…表示画面、4…吸着部材、5…メッシュ部材(生地)、6,7…樹脂シート、6A,7A…シート基材、6B,7B…粘着層、8…シート状本体、9…透孔、10…線状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像が形成されたシート状本体と、このシート状本体を被貼着体に剥離可能で再貼着可能にすべく、該シート状本体又は被貼着体のいずれか一方に貼着可能な自己吸着性を有する透明な吸着部材とを備えることを特徴とする着脱自在なシート状体。
【請求項2】
前記シート状本体が、画像が形成された生地と、この生地の両面を挟み込む透明な樹脂シートとを備えていることを特徴とする請求項1に記載の着脱自在なシート状体。
【請求項3】
前記樹脂シートが、前記生地よりも大きな寸法に構成された2枚のシートからなり、前記2枚のシート間に前記生地を挟み込んだ状態において該シートの外周縁同士が貼り合わされる又は熱融着されることを特徴とする請求項1又は2に記載の着脱自在なシート状体。
【請求項4】
前記被貼着体に前記吸着部材が貼り付けられ、前記吸着部材に対して前記シート状本体を着脱自在に構成し、吸着部材の外形寸法を前記樹脂シートの外形寸法よりも大きく設定したことを特徴とする請求項2又は3に記載の着脱自在なシート状体。
【請求項5】
前記吸着部材と前記被貼着体との吸着力を該吸着部材と前記シート状本体との吸着力よりも大きく設定したことを特徴とする請求項4に記載の着脱自在なシート状体。
【請求項6】
前記生地が、多数の透孔を形成するように多数の線状部が交差してなる合成樹脂製のメッシュ部材からなり、前記多数の線状部に着色して画像が形成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の着脱自在なシート状体。
【請求項7】
前記線状部は線材であり、前記メッシュ部材は前記線材をメッシュ状に平織りした織布であり、開口率が34%から76%の範囲であることを特徴とする請求項6に記載の着脱自在なシート状体。
【請求項8】
前記メッシュ部材は透明あるいは半透明なポリエステル製であり、該メッシュ部材の線状部に染料が浸透して前記画像が形成されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の着脱自在なシート状体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−45732(P2012−45732A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187497(P2010−187497)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(501465126)
【Fターム(参考)】