説明

シート状化粧料

【課題】 肌にさらさら感を確保したまま、かさつきがなくなめらかな感触を付与することができ、更に肌のさらさら感やなめらかさの持続性に優れたシート状化粧料の提供。
【解決手段】 (a)圧縮強度が0.7〜10kgf/mm2である架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粉体及び(b)油剤を含有する水性分散液を、シート状基材に含浸させてなるシート状化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌に効率的に粉体を付着せしめ、快適な肌感触を付与するシート状化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、顔、首、手足等の身体の清拭やシェービングに用いるウェットシートタイプの製品が種々実用化されている。これらは一枚づつ個装された製品や10数枚単位にしたポケットテッシュタイプの製品、数十枚〜数百枚単位のボックスタイプの製品等がある。これらの製品は、化粧成分や、洗浄剤、清涼剤、殺菌剤、香料等の成分をシートに含浸してなり、使用後の肌を清潔にしたり、清涼感を与えたり、シェービングのための水分を補給する目的で使用されている。
【0003】
特許文献1及び2には、シリカやタルク等の無機粉体や有機シリコーン等の球状粉体を含浸させたシート状化粧料が開示されている。しかしこれらのシート状化粧料を用いて、肌を清拭した場合、粉体による肌の滑りは発現するものの、粉体のかさついた感触が残り、自然な肌感ではない。また、それらの粉体を塗布することで汗のべたつきはある程度解決できるが、肌状態が悪い場合や冬季などの乾燥した時期は感触が十分満足できるものではない。
【特許文献1】特開2000−1424号公報
【特許文献2】特開2001−278736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、肌にさらさら感を確保したまま、かさつきがなくなめらかな感触を付与することができ、更に肌のさらさら感やなめらかさの持続性に優れたシート状化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下記(a)成分及び(b)成分を含有する水性分散液を、シート状基材に含浸させてなるシート状化粧料を提供する。
(a)圧縮強度が0.7〜10kgf/mm2である架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粉体
(b)油剤
本発明はまた、更に必要により、水性分散液が、(c)成分として高分子分散剤、(d)成分としてポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性シリコーンを含有するシート状化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明のシート状化粧料は、肌にさらさら感を確保したまま、かさつかずなめらかな感触を付与することができ、更に肌のさらさら感やなめらかさの持続性にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
[(a)成分]
本発明の(a)成分の樹脂粉体は、十分なさらさら感及びなめらかさを得る観点から、圧縮強度が0.7〜10kgf/mm2であり、特に2〜8kgf/mm2が好ましい。
【0008】
ここで、圧縮強度とは、樹脂粒子を(株)島津製作所製微小圧縮試験機MCT-M200にて圧縮試験を行った場合に、粒子径の10%変形時の荷重と粒子径とから下記式によって算出される値である。なお、圧縮強度は25℃で測定する。
【0009】
圧縮強度(kgf/mm2)=2.8×荷重(kgf)/{π×粒子径(mm)×粒子径(mm)}
樹脂粒子の圧縮強度は、樹脂粒子を構成する単量体と架橋剤の種類と配合量を制御することにより、適宜調節することができる。
【0010】
本発明で用いられる架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粉体としては、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルから選ばれる少なくとも1種の単量体(以下(メタ)アクリル酸エステル単量体という)とカルボキシル基を有する単量体とを含む単量体成分を共重合してなる架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粉体が好ましい。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルの両方を含む概念である。
【0011】
本発明に用いられる(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、アルキル基の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等のアルキル基の炭素数が4〜18の(メタ)アクリル酸アルキルが特に好ましい。これらは複数種組み合わせて用いてもよい。全単量体成分(後述の架橋性単量体も含む。以下同様)中の(メタ)アクリル酸エステル単量体の割合は、30〜98質量%が好ましく、50〜85質量%がより好ましい。
【0012】
本発明で用いられるカルボキシル基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸等が挙げられる。これらは複数種組み合わせて用いてもよい。全単量体成分中のカルボキシル基を有する単量体の割合は、粉体の合着を抑制し、良好な粉体の感触(なめらかさ、さらさら感)を得る観点から、0.1〜30質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。
【0013】
架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粉体に含有されるカルボキシル基の一部は中和されていてもよい。中和のための塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩基が好ましいが、アミン類、アルカノールアミン類、塩基性アミノ酸等の有機塩基も用いることができる。粉体のなめらかさとさらさら感をより向上させる観点から、中和度は1〜30%が好ましく、1〜20%が特に好ましい。ここで中和度とはカルボキシル基を有する単量体のカルボキシル基のモル数に対する、添加された塩基のモル数の比を百分率で表したものである。
【0014】
単量体成分は架橋剤として、ビニル基を2個以上有する架橋性単量体を含むことが好ましい。このような架橋性単量体としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、デカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アリル、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、フタル酸ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系架橋性単量体、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン及びこれらの誘導体等の芳香族ジビニル系単量体が挙げられる。これらは1種あるいは2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの架橋性単量体の中でも、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートが、皮膚刺激が低いため、シート状化粧料として用いるのに特に適している。これらの架橋性単量体は、全単量体成分に対し、3〜50質量%となるように使用するのが好ましい。
【0015】
単量体成分として、上記(メタ)アクリル酸エステル単量体、カルボキシル基を有する単量体及び架橋性単量体以外に、これらと共重合可能な他の単量体を共重合させてもよい。他の単量体として、スチレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニル、ビニルピロリドン等が挙げられる。
【0016】
架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粉体は、例えば上記の(メタ)アクリル酸エステル単量体、カルボキシル基を有する単量体及び架橋性単量体を含む単量体成分を、分散剤、重合開始剤等を用いて水性懸濁重合、乳化重合、シード重合、分散重合等により重合することで得ることができる。この内、樹脂粉体が工業的に容易に得られる観点から、水性懸濁重合法が好ましい。
【0017】
水性懸濁重合は、単量体を含む油相と水相を混合した後、撹拌しながら昇温して行われる。この際、界面活性剤を分散剤として用いる。界面活性剤の使用量は、全単量体成分100質量部に対して、0.01〜50質量部が好ましく、0.01〜10質量部がより好ましく、0.1〜5質量部が特に好ましい。
【0018】
ここに、界面活性剤としては、スルホン酸(塩)基を有するものが好ましい。これにより、なめらかでさらさら感を持つ樹脂粉体を得ることができる。
【0019】
スルホン酸(塩)基を有する界面活性剤としては、特開2003−146826号公報段落番号0032〜0036に記載されているものなどが挙げられる。中でも、炭素数5〜30のアルキル基又はアルケニル基を有し、1分子内に平均0.5〜25モルのアルキレンオキサイドを付加していてもよいアルキル又はアルケニルエーテルスルホン酸又はその塩、及び炭素数5〜30のアルキル基又はアルケニル基を有するアシル化タウリン又はその塩が好ましく、下記一般式(I)で表されるアシル化タウリン(塩)が特に好ましい。
【0020】
1CONR2CH2CH2SO3M (I)
[式中、R1は置換基を有していてもよい炭素数5〜30のアルキル基又はアルケニル基、R2は水素原子又はメチル基、Mは水素原子又はカチオンを示す。]
一般式(I)において、R1としては、炭素数6〜24のアルキル基又はアルケニル基が好ましい。具体例としては、ヘキシル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、エイコシル、ドコシル、テトラコシル、デセニル、ドデセニル、テトラデセニル、ヘキサデセニル、オクタデセニル、エイコセニル等が挙げられる。また、アルキル基又はアルケニル基の置換基としては、水酸基、カルボキシル基、エステル基、エーテル基、アミド基等が挙げられる。
【0021】
Mで示されるカチオンとしては、アルカリ金属、アンモニウム、総炭素数1〜22のアルキル若しくはアルケニルアミン、総炭素数1〜22のアルカノールアミン、塩基性アミノ酸塩等のカチオンが挙げられ、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオンが好ましく、ナトリウムイオンが特に好ましい。
【0022】
重合に用いられる重合開始剤としては、例えば過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化オクタノイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の油溶性過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などの油溶性アゾ化合物が挙げられる。重合開始剤の添加量は、全単量体成分に対し0.1〜10質量%が好ましい。
重合温度や重合時間は特に限定されるものではないが、重合温度は40〜100℃、重合時間は1〜15時間が好ましい。
【0023】
本発明の樹脂粉体の形状は、皮膚上での感触が良好であることから、球状体が好ましい。また、平均粒径は、きしみ感を低減するという観点から、1μm以上が好ましく、1.5μm以上が更に好ましく、2μm以上が特に好ましい。一方、ざらつきを抑え、更に皮膚定着性を向上させる観点から、10μm以下が好ましく、8μm以下が更に好ましく、6μm以下が特に好ましい。
【0024】
尚、平均粒径は、レーザー回折型粒径分布測定装置(例えば、堀場製作所製 LA−920)を用い、粉体の水懸濁液を20℃において相対屈折率1.1にて重量平均粒径を測定することで求めることができる。
【0025】
[(b)成分]
本発明の(b)成分として用いられる油剤としては、シリコーン油、炭化水素類、エステル油、脂肪族アルコール類、エーテル油、分岐脂肪酸類等が挙げられる。
【0026】
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルステアロキシシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチルセチルオキシシロキサン共重合体、環状ポリジメチルシロキサン、環状ポリメチルフェニルシロキサン、環状ポリメチルハイドロジェンシロキサン、脂肪酸変性ポリシロキサン、高級アルコール変性ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン共重合体等のポリオキシアルキレン変性ポリシロキサン、アルコキシ変性ポリシロキサン、長鎖アルキル変性ポリシロキサン等が挙げられる。
【0027】
炭化水素類としては、スクワラン、ワセリン、流動パラフィン等が挙げられる。エステル油としては、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸2−オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸デシル、オレイン酸2−オクチルドデシル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、ラノリン、酢酸ラノリン、アボガド油、アーモンド油、オリーブ油、カカオ脂、ホホバ油、ゴマ油、サフラワー油、大豆油、ツバキ油、トウモロコシ油、小麦胚芽油、落花生油、タートル油、パーシック油、ヒマシ油、ミンク油、綿実油、ヤシ油、卵黄油、ポリプロピレングリコールモノオレート、ネオペンチルグリコール−2−エチルヘキサノエート、イソステアリン酸トリグリセライド、ミリスチン酸イソステアリン酸ジグリセライド等が挙げられる。
【0028】
脂肪族アルコール類としては、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール等が挙げられる。エーテル油としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシプロピレンセチルエーテル等が挙げられる。分岐脂肪酸類としては、イソステアリン酸等が挙げられる。
【0029】
[(c)成分]
本発明の(c)成分として用いられる高分子分散剤は、水溶性であって、水性媒体中での成分(a)及び成分(b)の分散性向上に寄与する高分子化合物である。例えば、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、(メタ)アクリル酸又はその塩・(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、(メタ)アクリル酸又はその塩・(メタ)アクリル酸アルキル・(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンアルキルエーテル共重合体等が挙げられる。これらの高分子化合物は、カルボン酸基を適当な塩基で部分的に中和することにより、好適な増粘性や分散性を発揮する。用いられる塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア等の無機塩基、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、ジイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン類等である。
【0030】
[(d)成分]
本発明の(d)成分として用いられるポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性シリコーンとしては、オルガノポリシロキサンセグメントの末端又は鎖中のケイ素原子の少なくとも1個に、ヘテロ原子を含むアルキレン基を介して、下記一般式(II)
【0031】
【化1】

【0032】
〔式中、R3は水素原子、炭素数1〜22のアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基又はアリール基を示し、nは2又は3の数を示す。〕
で表される繰り返し単位からなるポリ(N−アシルアルキレンイミン)のセグメントが結合してなるものが挙げられる。
【0033】
一般式(II)中、R3で示されるシクロアルキル基としては炭素数3〜6のものが挙げられ、アラルキル基としてはフェニルアルキル、ナフチルアルキル等が挙げられ、アリール基としてはフェニル、ナフチル、アルキル置換フェニル等が挙げられる。また、ヘテロ原子を含むアルキレン基としては、窒素原子、酸素原子又はイオウ原子を1〜3個含む炭素数2〜20のアルキレン基が挙げられる。
【0034】
ポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性シリコーンは、該ポリ(N−アシルアルキレンイミン)セグメントとオルガノポリシロキサンセグメントとの質量比が1/50〜20/1、特に1/40〜2/1で、重量平均分子量が500〜500,000、特に1,000〜300,000であるものが、使用感が良好で、粉体の分散性に優れ、耐水・耐汗性、耐油・耐皮脂性、耐摩擦性等の化粧持続性に優れた化粧料を得る上で好ましい。
【0035】
(d)成分の好ましい具体例としては、特開平9−202714号公報段落番号0021に記載されているものが挙げられる。
【0036】
[シート状化粧料]
本発明のシート状化粧料は、上記(a)成分及び(b)成分、更に必要により(c)成分、(d)成分等を含有する水性分散液をシート状基材に含浸させることにより得ることができる。
【0037】
本発明の水性分散液中の(a)成分の含有量は、肌に良好なさらさら感を与えながら且つ肌を白くさせない観点から、0.5〜50質量%が好ましく、1〜30質量%が更に好ましく、1〜15質量%が特に好ましい。
【0038】
また、本発明の水性分散液中の(b)成分の含有量は、適度な油性感を与える観点から、0.01〜30質量%が好ましく、0.1〜20質量%が更に好ましく、0.1〜10質量%が特に好ましい。
【0039】
本発明の水性分散液が(c)成分や(d)成分を含有する場合には、水性分散液中の(c)成分の含有量は、良好な分散性及び感触を得る観点から、0.01〜2質量%が好ましく、0.01〜0.5質量%が更に好ましく、0.01〜0.3質量%が特に好ましい。また、水性分散液中の(d)成分の含有量は、さらさら感の持続性を向上させる観点から、0.05〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%が更に好ましい。
【0040】
本発明のシート状化粧料中の、本発明の水性分散液の含浸率は、使用感を高め、塗布時の感触を良好にする観点から、シート状基材質量に対し、20〜500質量%が好ましく、50〜400質量%が更に好ましい。また、水性分散液を構成する水性媒体としては、水又は含水エタノールが好ましい。
【0041】
本発明ではシート状基材として、天然繊維又は合成繊維の不織布又は織布の何れをも使用することができる。具体的には、例えばレーヨン、アセテート、アクリル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアミド、コットン及びこれらを混綿したものの不織布又は織布、更に湿式及び乾式パルプシート、熱可塑性樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等)で強化したパルプシート等が挙げられる。これらの基材は、繊維間隔がなるべく密なほどシート表面に粉体が集合するので好ましい。また、製造時の加工のしやすさ等から、パルプ、コットンが基材として特に好ましい。パルプについては、やわらかさと強度を両立するために薄いパルプを重ね合わせて用いることが好ましく、更に熱可塑性樹脂で強化したパルプは、エンボス処理により適度な厚み(嵩高さ)を付与でき、かつ肌を濡らしすぎないので好ましい。更にヒートシールにより複数枚のシートを部分的に貼り合わせることで、柔らかく、拭きごたえのある厚みのあるシートにより良好な使用感を提供できる。
【0042】
本発明のシート状化粧料には、更にエタノール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール等のアルコール類を配合することができる。
【0043】
本発明のシート状化粧料は、肌を拭くことにより、汗や皮脂汚れを取り除いて清潔にすると共に、粉体が効果的に肌に吸着して残留し、長時間にわたって肌にさらさらとした感触や、かさつきの少ないなめらかな感触を与えることができる。
【0044】
また、本発明のシート状化粧料には、保湿剤、抗炎症剤、美白剤、UVケア剤、殺菌剤、制汗剤、清涼剤、酸化防止剤、香料等を配合することにより、これらの成分を粉体と共に肌に残留させ、使用後の肌を機能的にコンディショニングすることができ、潤いや清涼感、香りを楽しむこともできる。
【0045】
本発明のシート状化粧料は、例えば、顔面に用いた場合、皮脂を効果的に除去すると共に粉体や保湿剤を残留させて肌を快適に保つだけでなく、化粧直しのしやすさが著しく向上する。また、制汗剤、殺菌剤を配合した場合、肌を清浄にした上でこれらの有効成分を肌に長時間残留させるため、持続的な制汗・デオドラント効果が期待できる。また、身体のむだ毛処理部位に使用し、剃毛後の肌を整える用法でも、本発明品の有用性は高い。つまり、カミソリ使用前の肌に塗布することにより、当該部位を湿潤させるとともに粉体を残留させることで、カミソリの滑りを良好にして肌を痛めず、快適な肌感触に仕上げることができる。
【0046】
本発明のシート状化粧料は、上記(a)成分を、好ましくはその大部分を、基材の表面近傍に偏在して担持することが好ましい。(a)成分を偏在させるためには、シート状基材の上から直接(a)成分及び(b)成分を含有する水性分散液を噴霧する方法、あるいは(a)成分及び(b)成分を含有する水性分散液をシート状基材に塗工する方法が挙げられる。また、本発明のシート状化粧料は、上記(a)成分を、摺動により肌に移行し得る状態で担持することが好ましい。
【0047】
本発明のシート状化粧料は、(a)成分、(b)成分及びその他の成分を含有する水性分散液を、スプレーやエアーガン等を用いた噴霧や、スリット型のノズルやバーコーターを用いた塗布等の方法により、シート状基材に含浸させることで調製できる。特に、積層されたシート状化粧料を得る方法としては、本発明に係わる水性分散液を、シート状基材に塗布し又は噴霧等により含浸させた後、裁断して積層する方法が好ましい。この方法によれば、粉体が均一に分布し、本発明の効果を十分に発揮する製品が得られる。
【実施例】
【0048】
例中の%は、特記しない限り質量%である。
【0049】
製造例1
ビーカーにラウリルメタクリレート82g、メタクリル酸3g、エチレングリコールジメタクリレート15g、ラウロイルパーオキサイド2gを仕込み混合攪拌して溶解させた。ここにN−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム(SMT)を0.75g溶解させたイオン交換水400gを加え、ホモミキサーで粒径が2.2μmになるまで分散させた。
【0050】
4つ口フラスコにこの分散液を注ぎ込み、攪拌しながら窒素置換を30分行った。オイルバスによりフラスコ内部の温度を80℃まで加温し、80℃に達してから5時間重合を行った後、室温まで冷却した。重合した粒子の分散液を凍結乾燥し、粒子を回収することにより樹脂粉体Aを得た。
【0051】
製造例2
製造例1において、重合した粒子の分散液に1N NaOH3.9gを滴下して中和を行った以外は、製造例1と同様にして樹脂粉体Aの中和品を得た。この樹脂粉体Aの中和品は、カルボキシル基の中和度が11.2%であった。
【0052】
製造例3
ビーカーにブチルアクリレート82g、メタクリル酸3g、エチレングリコールジメタクリレート15g、ラウロイルパーオキサイド2gを仕込み混合撹拌して溶解させた。ここにN−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム(SMT)を0.75g溶解させたイオン交換水400gを加え、ホモミキサーで粒径3.5μmになるまで分散させた。
【0053】
4つ口フラスコにこの分散液を注ぎ込み、攪拌しながら窒素置換を30分行った。オイルバスによりフラスコ内部の温度を80℃まで加温し、80℃に達してから5時間重合を行った後、室温まで冷却した。重合した粒子の分散液を凍結乾燥し、粒子を回収することにより樹脂粉体Bを得た。
【0054】
製造例4
製造例3において、重合した粒子の分散液に1N NaOH3.9gを滴下して中和を行った以外は、製造例3と同様にして樹脂粉体Bの中和品を得た。この樹脂粉体Bの中和品は、カルボキシル基の中和度が11.2%であった。
【0055】
製造例5
ビーカーにラウリルメタクリレート85g、エチレングリコールジメタクリレート15g、ラウロイルパーオキサイド2gを仕込み混合攪拌して溶解させた。ここにN−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム(SMT)を0.75g溶解させた。イオン交換水400gを加え、ホモミキサーで粒径が2.4μmになるまで分散させた。
【0056】
4つ口フラスコにこの分散液を注ぎ込み、攪拌しながら窒素置換を30分行った。オイルバスによりフラスコ内部の温度を80℃まで加温し、80℃に達してから5時間重合を行った後、室温まで冷却した。重合した粒子の分散液を凍結乾燥し、粒子を回収することにより樹脂粉体Cを得た。
【0057】
製造例6
ビーカーにラウリルメタクリレート82g、メタクリル酸3g、エチレングリコールジメタクリレート15g、ラウロイルパーオキサイド2gを仕込み混合攪拌して溶解させた。ここにドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を0.75g溶解させたイオン交換水400gを加え、ホモミキサーで粒径が2.5μmになるまで分散させた。
【0058】
4つ口フラスコにこの分散液を注ぎ込み、攪拌しながら窒素置換を30分行った。オイルバスによりフラスコ内部の温度を80℃まで加温し、80℃に達してから5時間重合を行った後、室温まで冷却した。重合した粒子の分散液を凍結乾燥し、粒子を回収することにより樹脂粉体Dを得た。
【0059】
製造例1〜5で得られた樹脂粉体A、B、それらの中和品及び樹脂粉体Cの表面をX線光電子分析装置(ESCA)で分析したところ、N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウムのみが有する窒素原子が粒子表面に存在することを確認できた。
【0060】
また、製造例1〜6で得られた樹脂粉体A、B、それらの中和品、樹脂粉体C及びDについて、下記方法で平均粒径及び圧縮強度を測定したところ、表1に示す結果が得られた。
【0061】
<平均粒径測定法>
樹脂粉体を(株)堀場製作所レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(型番:LA920)にて、相対屈折率が1.10(樹脂粉体の屈折率を1.46、水の屈折率を1.33とする)の条件にて、粒径を測定した際のメジアン径を平均粒径とした。
【0062】
<圧縮強度測定法>
樹脂粒子を、(株)島津製作所製微小圧縮試験機MCT-M200にて、29mgf/sの一定負荷速度で1gfの荷重まで圧縮試験を行い、粒子径の10%変形時の荷重と粒子径とから下記式によって算出した。10点の試料について測定を行い、その平均値をもって圧縮強度とした。
【0063】
圧縮強度(kgf/mm2)=2.8×荷重(kgf)/{π×粒子径(mm)×粒子径(mm)}
【0064】
【表1】

【0065】
製造例7:ポリ(N−プロピオニルエチレンイミン)変性シリコーン{(d)成分}の製造例
硫酸ジエチル3.77g(0.0244モル)と2−エチル−2−オキサゾリン48.4g(0.488モル)を脱水したクロロホルム107gに溶解し、窒素雰囲気下5時間加熱還流し、ポリ(N−プロピオニルエチレンイミン)の末端未反応ポリマー(分子量2000)を合成した。ここに、側鎖1級アミノプロピル変性ジメチルシロキサン(分子量110000,アミン当量9840)400g(アミノ基にして0.0407モル)の50%酢酸エチル溶液を一括して加え、13時間加熱還流した。反応混合物を減圧濃縮し、ポリジメチルシロキサンにN−プロピオニルエチレンイミン鎖の付いたグラフト共重合体(分子量137000)が得られた。得られた共重合体は淡黄色ゴム状固体(収量444g,収率98%)であった。
【0066】
実施例1〜6及び比較例1〜2
表2に示す組成の水性分散液5gを、2gのパルプシート(坪量60g/m2)上にスプレーで噴霧することにより含浸させてシート状化粧料を調製した。水性分散液の含浸率は250質量%である。
【0067】
得られたシート状化粧料を専門パネラー5名が前腕部に使用し、以下の使用感の評価項目について、下記の通り評点をつけた。5人の平均スコアを、下記基準でランクづけした。結果を表2に示す。
【0068】
<評価項目>
・さらさら感
スコア4…さらさらする
スコア3…ややさらさらする
スコア2…余りさらさらしない
スコア1…さらさらしない
・かさつきの少なさ
スコア4…かさつかない
スコア3…余りかさつかない
スコア2…ややかさつく
スコア1…かさつく
・さらさら感の持続性(塗布1時間後)
スコア4…さらさら感が持続する
スコア3…さらさら感がやや持続する
スコア2…さらさら感が余り持続しない
スコア1…さらさら感が持続しない
<判定基準>
平均スコア3.5〜4.0…◎
平均スコア2.5〜3.4…○
平均スコア1.5〜2.4…△
平均スコア1.0〜1.4…×
【0069】
【表2】

【0070】
実施例7
下記組成の水性分散液2gを、2gの80%レーヨン/20%ポリエチレン不織布(坪量50g/m2)上にスプレーで噴霧することにより含浸させてシート状化粧料を調製した。水性分散液の含浸率は100質量%である。得られたシート状化粧料は、さらさらし、かさつかず、また塗布1時間後もさらさら感が持続していた。
【0071】
<水性分散液組成>
樹脂粉体B 5.00%
ミリスチン酸イソプロピル 2.00
ジメチルシリコーン(10cs) 0.50
KF−6015*1 0.05
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油*2 0.15
PEMULEN TR-1*3 0.10
トリエタノールアミン 0.10
香料 0.10
エタノール 15.00
精製水 77.00
合計 100.00
*1:ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 信越化学社製
*2:エマノーンCH−40 花王社製
*3:アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 Noveon INC.製。
【0072】
実施例8
下記組成の水性分散液4gを、1.5gの90%パルプ/10%ポリエチレン不織布(坪量50g/m2)上にスプレーで噴霧することにより含浸させてシート状化粧料を調製した。水性分散液の含浸率は267質量%である。得られたシート状化粧料は、さらさらし、かさつかず、また塗布1時間後もさらさら感が持続していた。
【0073】
<水性分散液組成>
樹脂粉体Bの中和品 6.00%
パルミチン酸イソプロピル 2.00
オレイン酸 0.10
キハダエキス 0.50
カーボポールETD2020*1 0.15
トリエタノールアミン 0.15
ジブチルヒドロキシトルエン 0.02
香料 0.08
エタノール 50.00
精製水 41.00
合計 100.00
*1:アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 Noveon INC.製。
【0074】
実施例9
下記組成の水性分散液5gを、2gの85%パルプ/15%ポリエチレン不織布(坪量50g/m2)上にスプレーで噴霧することにより含浸させてシート状化粧料を調製した。水性分散液の含浸率は250質量%である。得られたシート状化粧料は、さらさらし、かさつかず、また塗布1時間後もさらさら感が持続していた。
【0075】
<水性分散液組成>
樹脂粉体Bの中和品 5.00%
ジカプリン酸ネオペンチルグリコール 0.50
モノステアリン酸ポリオキシエチレン(EO=20)ソルビタン 0.15
PEG400 0.50
PEMULEN TR-1*1 0.15
炭酸ナトリウム 0.02
香料 0.06
ジブチルヒドロキシトルエン 0.02
エタノール 25.00
精製水 68.60
合計 100.00
*1:アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 Noveon INC.製

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分及び(b)成分を含有する水性分散液を、シート状基材に含浸させてなるシート状化粧料。
(a)圧縮強度が0.7〜10kgf/mm2である架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粉体
(b)油剤
【請求項2】
架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粉体が、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルから選ばれる少なくとも1種の単量体とカルボキシル基を有する単量体とを含む単量体成分を共重合してなる請求項1記載のシート状化粧料。
【請求項3】
樹脂粉体中のカルボキシル基の中和度が1〜30%である請求項2記載のシート状化粧料。
【請求項4】
(a)成分の樹脂粉体の平均粒径が1〜10μmである、請求項1〜3いずれかに記載のシート状化粧料。
【請求項5】
水性分散液が、更に(c)成分として、高分子分散剤を含有する請求項1〜4いずれかに記載のシート状化粧料。
【請求項6】
水性分散液が、更に(d)成分として、ポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性シリコーンを含有する請求項1〜5いずれかに記載のシート状化粧料。

【公開番号】特開2006−8659(P2006−8659A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−52431(P2005−52431)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】