説明

シート状物の表面欠陥検査装置

【課題】透明体シート状物表面に発生した曲率変化の小さな凹凸状欠陥でも漏れなく検出し、低コスト、かつ、省スペースで構成できる信頼性の高い欠陥検査装置を提供する。
【解決手段】走行する透明体のシート状物の幅方向から平行光を斜めに透過させて広範囲を照射する照明手段と、透過した光を光学的に圧縮させる配置で結像させるスクリーンと、該スクリーンに結像した画像を明暗信号として検出する撮像手段と、明暗信号のレベルをしきい値によって凹凸状欠陥として検知し、凹凸状欠陥の寸法及び形状を判定する信号処理手段とを具備することを特徴とするシート状物の表面欠陥検査装置により、上記課題を解決しえる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明体のシート状物表面の凹凸状欠陥をインラインで検出および判定する低コストの検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶等に用いる光学フィルムや電子機器部品等に用いる高機能性フィルムは、近年ますます異物や欠陥に対する要求規格が厳しくなりつつあり、これらのシート状物はクリーンルームで製造され、製造ライン中にある欠陥検査機によってシート状物の欠陥に関する品質の管理が行われている。しかし、ロール等に付着した異物が原因となってシート状物表面に凹み欠陥や凸状欠陥等(以下、凹凸状欠陥と称す)が発生することがある。そのため、工程内には光の透過濃度変化によって検知する欠陥検査機が設置されているが、この検出方法は光を遮る付着異物等には有効であるが、凹凸状欠陥を見逃すことがある。出荷前の目視検査で品質規格外の凹凸状欠陥が発見されることもあり、その場合、膨大な廃棄損出や機会損出につながるといった問題があった。また、目視検査でも凹凸状欠陥を見逃すリスクがあり、多大な損出をもたらす恐れがある。
【0003】
この問題を解決するため、シート状物のライン中で、走行方向から蛍光灯の直線状の光を傾けて投射し、透過光をCCDカメラで明暗信号として取り込み、光量ムラを補正しながら打痕等の凹凸状欠陥を検査する方法(例えば、特許文献1参照)が提案されている。しかしながら、曲率変化が小さな凹凸状欠陥は、蛍光灯等で構成した直線状の光では平行性に劣るため、欠陥がないシート状物の透過光との差異が小さく、欠陥を見逃す場合があるといった問題があった。
【0004】
また、シート状物のライン中で、走行方向からキセノンランプ等の点光源から平行化した均一な平行光を照射し、反射光をスクリーンに投影させ、CCDカメラで撮像した画像を演算処理して、シート状物のスジ等の表面欠陥を検査する方法(例えば、特許文献2参照)が提案されている。しかしながら、この方法は、照明装置の構成にコストがかかり、さらに、広幅のシート状物を検査する際には、複数台の照明装置と撮像手段が必要であるため、非常に高価な検査装置となって採算が合わないといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−236493
【特許文献2】特開2006−189000
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来の技術の上記問題点を解決し、透明体シート状物表面に発生した曲率変化の小さな凹凸状欠陥でも漏れなく検出し、しかも、比較的低コストで構成できる信頼性の高い欠陥検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、走行する透明体のシート状物表面に発生した凹凸状の欠陥の検査において、
該シート状物の幅方向から平行光を斜めに透過させて広範囲を照射する照明手段と、
透過した光を光学的に圧縮させる配置で結像させるスクリーンと、
該スクリーンに結像した画像を明暗信号として検出する撮像手段と、
明暗信号のレベルをしきい値によって凹凸状欠陥として検知し、凹凸状欠陥の寸法及び形状を判定する信号処理手段と、
を具備することを特徴とするシート状物の表面欠陥検査装置に関する。
【0009】
好ましい実施態様としては、前記照明手段の光源のシート状物に入射する入射角θが、10°〜25°であることを特徴とするシート状物の表面欠陥検査装置に関する。
【0010】
好ましい実施態様としては、前記撮像手段に一次元イメージセンサを用い、スキャン毎の明暗信号を前記信号処理手段によって一定ライン数を更新しながら蓄積し、しきい値を越えたライン数をシート状物の走行方向の欠陥の大きさとして検知し、欠陥の寸法を判定することを特徴とするシート状物の表面欠陥検査装置に関する。
【0011】
さらに本発明は、上記記載の表面欠陥判別装置を用いて、上記シート状物表面に発生した凹凸状の欠陥の寸法及び形状を判別することを特徴とする、欠陥判別方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、透明体シート状物表面の曲率変化の小さな凹凸状欠陥でも漏れなく検出し、比較的単純な信号処理によって欠陥形状をリアルタイムに判定することにより、欠陥の要因となる工程異常を早期に発見して損出拡大を防止し、信頼性の高い品質管理ができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る透明体シート状物表面の凹凸状の欠陥検査装置の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る撮像手段で検出した明暗信号で結像位置によるTD寸法歪みのイメージを示す模式図である。
【図3】本発明の実施形態に係る平行光の中央部で結像した欠陥画像の二値化のイメージを示す模式図である。
【図4】本発明の実施形態に係る平行光の端部で結像した欠陥画像の二値化のイメージを示す模式図である。
【図5】本発明の実施形態に係る透明体シート状物の照明位置とスクリーン上での結像位置との関係の一例を示した図である。
【図6】従来の走行方向から照明する形態の透明体シート状物表面の凹凸状の欠陥検査方法の一例を示す模式図である。
【図7】従来の走行方向から照明する形態の透明体シート状物表面の凹凸状の欠陥検査方法において、複数の光学系で幅方向全体を検査する一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係わる透明体シート状物の欠陥検査装置は、走行する透明体のシート状物表面に発生した凹凸状の欠陥の検査において、該シート状物の幅方向から平行光を斜めに透過させて広範囲を照射する照明手段と、透過した光を光学的に圧縮させる配置で結像させるスクリーンと、該スクリーンに結像した画像を明暗信号として検出する撮像手段と、明暗信号のレベルをしきい値によって凹凸状欠陥として検知し、凹凸状欠陥の寸法及び形状を判定する信号処理手段とを具備することを特徴としている。凹凸状欠陥の寸法及び形状を判定する場合は、幅方向に系統的に歪んだ画像を補正することが好ましい。
【0015】
ここで、凹凸状欠陥とは、シート状物に異物などが押し当てられた面が、湾曲して凹み、その反対面が凸状に膨らんだ欠陥をいう。
【0016】
ここで、平行光とは、光束の各光線が重なることがなく、照明方向の光軸に対して平行に近い光線の成分で構成された光をいう。
【0017】
ここで、一定の拡がりがある平行光の光束をシート状物の幅方向から斜めに入射させることにより、シート状物では平行光の光束の直径よりも広い範囲を照射することができ、スクリーンに結像した画像は、照明手段に近いシート状物の手前側から奥側に向かって幅方向の画像が圧縮される。この画像の圧縮比率は、平行光の光束の拡がり角と入射角とシート状物の屈折率とスクリーンの角度によって決まり、数式演算によって補正が可能な系統誤差となる。
【0018】
ここで、スクリーンの角度は、平行光の光束の中心軸に対して垂直に配置することが画像の歪みが最も小さくなる点で好ましい。ここでの歪みは、平行光で照射したスクリーン面の中心軸から両外側に向かって像が拡大する現象であり、拡大比率は平行光の光束の拡がり角とスクリーン面上の結像範囲の直径に依存する。一般に平行光の光束の拡がり角は小さいため、これらの歪み量は無視できるレベルに小さいが、必要に応じて二次曲線での補正が可能である。また、二次曲線に合わせてスクリーンを凹面上に湾曲させることでも補正が可能である。
【0019】
また、シート状物上の照射範囲がスクリーン面上の結像範囲で光学的に圧縮されることにより、画像の光学濃度が強調され、撮像手段で検出すべき視野が狭くなり、少ない台数の撮像手段で対応できる点で優れている。
【0020】
一方、スクリーンに結像した画像の走行方向の大きさは、シート状物の速度が一定である限り、TDの位置に依存した像の寸法の歪みは生じない。
【0021】
上記構成によれば、幅方向の斜め方向からシート状物の透過光をスクリーンに結像させた画像を一次元イメージセンサカメラ等で連続的に撮像して信号処理手段で検出することにより、光の照射エリア内で凹凸状の欠陥が通過した場合に、光の屈折方向の変化によって投影像の輝度に比例した明暗信号が変化することを利用して凹凸状欠陥の有無検知が可能となる。この明暗信号は、凹凸状欠陥の曲率変化が大きいほど変化が大きく、また、平行光の入射角度を浅くするほど大きくなる。
【0022】
また、撮像した一次元の明暗信号を時系列に合成することによって欠陥等の二次元画像が得られ、合成する際に、幅方向の系統的な寸法の歪み補正によって歪みがない欠陥の画像として形状の判定が可能となる。
【0023】
従って、シート状物の幅方向から斜めに平行光を入射させることにより、シート状物を照射するエリア、すなわち、検査エリアが拡がることにより、さらに、スクリーン上で光学的に圧縮して結像させた画像を撮像させる方法により、少ない照明装置と撮像装置で広幅のシート状物を検査でき、低コストや省スペースの面で優れている。
【0024】
本発明に係わる透明体シート状物の欠陥検査装置は、前記照明手段の光源のシート状物に入射する入射角θが、10°〜25°であることを特徴とするシート状物の表面欠陥検査装置に関する。入射角θとしては、15°がもっとも好ましい。入射角θが浅いほど検査エリアは広くなるが、入射角θが、10°より小さくなると、シート状物と空気層の境界面で反射する光が多くなってスクリーン上での明るさが減衰するため、明暗信号のレベルが全体的に低下する問題がある。また入射角θが25°を超えると、曲率変化の小さな凹凸状欠陥と欠陥のない部位とのコントラストが低下して欠陥の検出が困難になり、また、平行光で照射するシート状物の範囲が狭くなって照明手段の追加が必要になるといった問題がある。
【0025】
前記照明手段の光源とシート状物との距離および入射角は、前記スクリーンに結像した凹凸状欠陥の部位と凹凸状欠陥がない部位との明暗の差が明暗信号で区別可能で、かつ、シート状物の幅方向で照明光の当たる検査範囲Wが最大となるように設定することを特徴としている。
【0026】
ここで、スクリーンに結像した凹凸状欠陥の部位と凹凸状欠陥がない部位との明暗の差は、凹凸状欠陥の曲率変化および平行光照明の入射角度に依存しており、曲率変化が小さな軽微な凹凸状欠陥でも明暗の光学的濃度差を生じさせるためには、入射角度をシート状物に対して浅くする方が有利である。入射角度を浅くすることで、軽微な凹凸状欠陥でも明暗の光学的濃度差を生じせしめ、シート状物の検査エリアも広くできる一方で、全体的に暗い画像となって地合ノイズも強調されるため、検出が必要な凹凸状欠陥と地合との明暗の差が区別できる範囲で入射角度を調整し、シート状物の検査エリアを設定することが好ましい。
【0027】
また、照明手段とシート状物との距離を離すことにより、平行光の光束の拡がりに比例してシート状物の検査エリアが広くなり、照明輝度の減衰と設置スペースの制約範囲内で照明手段とシート状物との距離を離すことが好ましい。
【0028】
従って、照明手段とシート状物との距離および入射角を、スクリーンに結像した明暗信号とシート状物の幅方向の検査エリアの条件から決定することにより、広い検査エリアで軽微な凹凸状欠陥を検出できる点で優れている。
【0029】
本発明に係わる透明体シート状物の欠陥検査装置は、前記撮像手段に一次元イメージセンサを用い、スキャン毎の明暗信号を前記信号処理手段によって一定ライン数を更新しながら蓄積し、しきい値を越えたライン数をシート状物の走行方向の欠陥の大きさとして検知し、欠陥の寸法を判定することが好ましい。欠陥の寸法を判定する場合には、各ラインの明暗信号の立ち下がり幅は予め設定した補正曲線に応じて歪みを補正して幅方向の欠陥の大きさとして抽出し、走行方向との大きさのデータと合成して二次元化することが好ましい。
【0030】
ここで、一次元イメージセンサは、スキャンレートに従って連続して一次元の明暗信号が出力され、エンコーダから換算したシート状物のライン速度に基づいて、一次元の明暗信号を信号処理装置で時系列に統合することによって二次元の画像情報が得られる。
【0031】
ここで、明暗信号の立ち下がり幅の補正曲線は、平行光の入射角度とシート状物の屈折率とスクリーンの角度に依存し、スクリーンの角度を平行光の光束の中心軸に対して垂直に配置すれば二次曲線で近似できる。
【0032】
上記構成によれば、シート状物の走行方向の欠陥の大きさを明暗信号のライン数で検知し、シート状物の幅方向の欠陥の大きさを明暗信号の立ち下がり幅の補正後のデータを用いて、走行方向と幅方向のデータを合成することにより、欠陥の寸法や面積や形状を判定することが可能となる。
【0033】
以下に、本発明に係わる透明体シート状物表面の凹凸状の欠陥検査装置に関して図1に基づいて説明する。尚、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0034】
図1は、本発明の実施形態に係る透明体シート状物表面の凹凸状の欠陥検査装置の一例を示す模式図である。
【0035】
図1において、透明体シート状物5の走行方向をMDとし、幅方向をTDとし、その走行する透明体シート状物5のTDから平行光を斜めに透過させて広範囲を照射する照明手段1と、透過した光を光学的に圧縮させる配置で結像させるスクリーン2と、スクリーン2に結像した画像を明暗信号として検出する撮像手段3と、透明体シート状物5に図示していない凹凸状欠陥がある場合に、明暗信号のレベルをしきい値によって凹凸状欠陥として検知し、TDに系統的に歪んだ画像を補正して凹凸状欠陥の形状を判定する信号処理手段4とを具備している。
【0036】
また、透明体シート状物5の走行速度は、図示していない近傍のロールに設置したエンコーダから換算することができる。
【0037】
ここで、凹凸状欠陥とは、ロール上やニップロールにおいて、シート状物に異物などが押し当てられた面が、湾曲して凹み、その反対面が凸状に膨らんだ欠陥をいう。当然ながら、凹凸の向きや大きさや高低差は、接触する異物の大きさや硬さなどによって変化する。
【0038】
ここで、平行光とは、光束の各光線が重なることがなく、照明方向の光軸に対して平行に近い光線の成分で構成された光をいう。図1において、照明手段1の光束の出射窓の直径がφsの場合、光束の中心が透明体シート状物5に交わる位置での直径は、光束の拡がり角と透明体シート状物5との距離に比例してφtとなり、さらに、スクリーン2の表面上ではφpに拡がる。照明手段1は、光束の各光線が重なり合わない平行光の照明とするために、キセノン光源のように点光源であることが好ましく、点光源の出射窓にコリメータレンズなどによって平行光とすることができる。
【0039】
また、一定の拡がりがある平行光の光束を透明体シート状物5のTDから斜めの角度θで入射させることにより、透明体シート状物5では平行光の光束の直径φtよりも広い範囲Wを照射することができ、スクリーン2に結像した画像は、照明手段1に近い透明体シート状物5の手前側から奥側に向かってTDの画像が圧縮される。この画像のTDの圧縮比率は、平行光の光束の拡がり角と入射角θと透明体シート状物5の屈折率とスクリーン2の角度によって決まり、数式演算によって補正が可能な系統誤差となる。平行光を斜めに入射させることによって、透明体シート状物5を通過、すなわち、照射範囲Wは、透明体シート状物5と光束の中心軸との交点cに対して、照明手段1の近い手前側が狭く、奥側が広くなり、そのときの平行光の入射角度は手前側がθ+αとなり、奥側がθ−αとなる。
【0040】
ここで、スクリーン2の角度は、平行光の光束の中心軸に対して垂直に配置することが画像の歪みが最も小さくなる点で好ましい。ここでの歪みは、平行光で照射したスクリーン2上面の中心点c'から両外側に向かって像が拡大する現象であり、拡大比率は平行光の光束の拡がり角とスクリーン2面上の結像範囲の直径φpに依存する。一般に平行光の光束の拡がり角は小さいため、これらの歪み量は無視できるレベルに小さいが、必要に応じて二次曲線での補正が可能である。また、二次曲線に合わせてスクリーンを凹面上に湾曲させることでも補正が可能である。スクリーン2の面は、拡散反射する材質を選択し、白色系で色斑がないことが好ましい。
【0041】
また、透明体シート状物5上の照射範囲Wがスクリーン2面上の結像範囲の直径φpで光学的に圧縮されることにより、画像の光学濃度が強調され、一次元のイメージセンサカメラなどの撮像手段3で検出すべき視野が狭くなり、少ない台数のイメージセンサカメラで対応できる点で優れている。図1において、シート状物上の照射範囲Wがスクリーン2面上の結像範囲の直径φpに圧縮させることになる。
【0042】
一方、スクリーン2に結像した画像のMDの大きさは、透明体シート状物5の速度が一定である限り、撮像手段3である一次元のイメージセンサカメラの視野において、TDの位置に依存した像の寸法の歪みは生じない。
【0043】
上記構成によれば、TD斜め方向から透明体シート状物5の透過光をスクリーン2に結像させた画像を撮像手段3である一次元のイメージセンサカメラ等で連続的に撮像して信号処理手段4で検出ことにより、透明体シート状物5の光の照射範囲W内で凹凸状欠陥が通過した場合に、光の屈折方向の変化によって投影像の輝度に比例した明暗信号が変化することを利用して凹凸状欠陥の有無検知が可能となる。この明暗信号は、凹凸状欠陥の曲率変化が大きいほど光の屈折方向の影響が大きくなって明暗の差が大きくなり、また、平行光の入射角度θを浅くするほど明暗の差が大きくなる。
【0044】
また、撮像した一次元の明暗信号を信号処理手段4に蓄積して時系列に合成することによって欠陥等の二次元画像が得られ、合成する際に、TDの系統的な寸法の歪み補正によって歪みがない欠陥の画像として形状の判定が可能となる。
【0045】
従って、透明体シート状物5のTDから斜めに平行光を入射させることにより、透明体シート状物5の照射範囲W、すなわち、検査エリアが拡がることにより、さらに、スクリーン2上で光学的に圧縮して結像させた画像を撮像させる方法により、少ない照明手段1と撮像手段3で広幅の透明体シート状物5を検査でき、低コストや省スペースの面で優れている。
【0046】
図1において、照明手段1の光源と透明体シート状物5との距離および入射角θは、スクリーン2に結像した凹凸状欠陥の部位と凹凸状欠陥がない部位との明暗の差が明暗信号で区別可能で、かつ、透明体シート状物5のTDで照明光の当たる検査範囲Wが最大となるように設定する。ここで、スクリーン2に結像した凹凸状欠陥の部位と凹凸状欠陥がない部位との明暗の差は、凹凸状欠陥の曲率変化および平行光照明の入射角度θに依存しており、曲率変化が小さな軽微な凹凸状欠陥でも明暗の光学的濃度差を生じさせるためには、入射角度θを透明体シート状物5に対して浅くする方が有利である。入射角度θを浅くすることで、軽微な凹凸状欠陥でも明暗の光学的濃度差を生じせしめ、透明体シート状物5の検査範囲Wも広くできる一方で、全体的に暗い画像となって地合ノイズも強調されるため、検出が必要な凹凸状欠陥と地合との明暗の差が区別できる範囲で入射角度θを調整し、透明体シート状物5の検査範囲Wを設定することが好ましい。
【0047】
凹凸状欠陥の厚みの最大の高低差が1〜3μmで、直径が0.5mm〜3mmの軽微な凹凸状欠陥を検出する場合、平行光の入射角度θは10°〜25°とし、平行光の光束の拡がり角が5°〜10°とすることが好ましい。
【0048】
また、照明手段1と透明体シート状物5との距離を離すことにより、平行光の光束の拡がりに比例して透明体シート状物5の検査範囲Wが広くなり、照明輝度の減衰と設置スペースの制約範囲内で照明手段1と透明体シート状物5との距離を離すことが好ましく、照明手段1と透明体シート状物5との距離を500mm〜1500mmとし、透明体シート状物5とスクリーン2との距離を200mm〜600mmとすることが好ましい。また、透明体シート状物5と照明手段との距離Lは、200mm以上離すことが好ましい。
【0049】
従って、照明手段1と透明体シート状物5との距離および入射角を、スクリーンに結像した明暗信号と透明体シート状物5のTDの検査範囲Wの条件から決定することにより、広い検査範囲Wで軽微な凹凸状欠陥を検出できる点で優れている。
【0050】
図1において、撮像手段3には一次元イメージセンサを用い、スキャン毎の明暗信号を信号処理手段4によって一定ライン数を更新しながら蓄積し、しきい値を越えたライン数を透明体シート状物5のMDの欠陥の大きさとして検知し、各ラインの明暗信号の立ち下がり幅は予め設定した補正曲線に応じて歪みを補正してTDの欠陥の大きさとして抽出し、MDの大きさのデータと合成して二次元化し、欠陥の寸法や面積や形状を判定することが好ましい。
【0051】
ここで、撮像手段3の一次元イメージセンサは、スキャンレートに従って連続して一次元の明暗信号が出力され、図示していないエンコーダから換算した透明体シート状物5のライン速度に基づいて、一次元の明暗信号を信号処理装置4で時系列に統合することによって二次元の画像情報が得られる。信号処理装置4ではエンコーダから換算したライン速度とスキャンレートから、1スキャン当たりの距離をMD最小単位とし、検知したライン数とかけ合わせて凹凸状欠陥のMD長さとして換算できる。
【0052】
ここで、明暗信号の立ち下がり幅の補正曲線は、平行光の入射角度θと透明体シート状物5の屈折率とスクリーン2の角度に依存し、スクリーン2の角度を平行光の光束の中心軸に対して垂直に配置すれば二次曲線で近似できる。
【0053】
上記構成によれば、透明体シート状物5のMDの欠陥の大きさを明暗信号のライン数で検知し、透明体シート状物5のTDの欠陥の大きさを明暗信号の立ち下がり幅の補正後のデータを用いて、MDとTDのデータを合成することにより、欠陥の寸法や面積や形状を判定することが可能となる。
【0054】
図2は、スクリーン2の面を一次元イメージセンサカメラで検出した1スキャン分の明暗信号において、同寸法の円状の欠陥が結像位置によるTDの寸法歪みのイメージを示した図である。平行光の光束の中心軸で透明体シート状物5のc点を通過して結像したスクリーン上の点c'で円状となる場合、照明手段1に近い手前側の点nの結像点n'はTDに拡大し、奥側の点fの結像点f'はTDに圧縮した画像となる。
【0055】
図3、図4は、図2における点c'と点n'の位置にある画像を信号処理装置4で二値化した場合のイメージを示した一例である。図のマス目は、MDおよびTDの最小単位を示しており、前者はライン速度とスキャンレートと決定し、後者はイメージセンサカメラの素子数と素子ピッチとカメラの結像倍率で決定され、欠陥で遮られないマス目を明部とし、欠陥で遮られたマス目を暗部Bとして示した。点c'と点n'の二値化画像から欠陥のMDおよびTDの最大寸法が検出でき、両者のMD最大寸法はYc=Ynとなって同じ値となり、両者のTD最大寸法はXc<Xnの関係となる。
【実施例】
【0056】
(実施例1)
平均厚みが約50μm、屈折率が1.58のPC系透明フィルムについて、最大高低差約1.5μm〜2.0μm,最大直径約0.5〜2.0mmの楕円凹凸状欠陥サンプルを100mm/秒で移動させ、500Wのキセノン光源にコリメータで平行化した照明を用い、白色系スクリーンに結像した画像を4000ビットの一次元CCDカメラで撮像する図1に示す構成とした。
【0057】
平行光の入射角度を15°とし、拡がり角約9°の照明光において、対象フィルムとの距離を1mとしたとき、対象フィルム上のTD照明範囲を約850mmとすることができ、対象フィルムから800mm位置に平行光と垂直に配置したスクリーンでのTD結像範囲は約330mmとなった。
【0058】
上述の条件で評価した結果、対象フィルム上のTD照明範囲を欠陥が通過した際に、明暗信号が立ち下がりを生じ、二値化処理後に欠陥の寸法判定が可能であることを確認した。
【0059】
図5は、対象フィルム上のTD位置の各点とスクリーンと結像位置を示した図であり、二次式の曲線でフィッティングでき、この曲線を基に補正できることを確認した。
【0060】
(比較例1)
図6は、従来の凹凸状表面欠陥の検出方法に基づいて、平均厚みが約50μm、屈折率が1.58のPC系透明フィルムについて、最大高低差約1.5μm〜2.0μm,最大直径約0.5〜2.0mmの楕円凹凸状欠陥サンプルを100mm/秒で移動させ、500Wのキセノン光源にコリメータで平行化した照明を用い、白色系スクリーンに結像した画像を4000ビットの一次元CCDカメラで撮像する構成とした。
【0061】
平行光はMDと垂直とし、入射角度を15°とし、拡がり角約9°の照明光において、対象フィルムとの距離を1mとしたとき、対象フィルム上のTD照明範囲を約200mmとなり、対象フィルムから800mm位置に平行光と垂直に配置したスクリーンでのTD結像範囲は約310mmとなった。
【0062】
対象フィルムからスクリーンに拡大して結像するため、凹凸状表面欠陥の画像は上記実施例1よりもボヤけた画像となった。
【0063】
図7は、対象フィルム上のTD照明範囲を約200mmの場合、1100mm幅のフィルム全域を検査するために、照明手段とスクリーンと撮像手段を含む6式の光学系が必要となる一例を示した。上記実施例1の方法では、2式の光学系でフィルム全域の検査が可能となることを確認した。
【符号の説明】
【0064】
1 照明手段
2 スクリーン
3 撮像手段
4 信号処理手段
5 透明体シート状物
MD 透明体シート状物の走行方向
TD 透明体シート状物の幅方向
θ 照明手段の平行光の中心の入射角
α 照明手段の平行光の拡がりに伴う入射角のズレ
φs 照明手段の光束の出射窓での直径
φt 照明手段の光束の中心と透明体シート状物が交わる位置での直径
φp 照明手段の光束がスクリーン上で結像した直径
W 透明体シート状物の平行光の照射範囲
c 透明体シート状物と照明手段の光束の中心軸との交点
n 透明体シート状物と照明手段の光束の中心軸との交点
f 透明体シート状物と照明手段の光束の中心軸との交点
c' スクリーン面での中心の結像点
n' 照明手段の光束の手前端のスクリーン面での結像点
f' 照明手段の光束の奥端のスクリーン面での結像点
B 二値化した画像で暗部のマス目
Yc 点c上の欠陥の二値化画像のMD最大寸法
Yn 点n上の欠陥の二値化画像のMD最大寸法
Xc 点c上の欠陥の二値化画像のTD最大寸法
Xn 点n上の欠陥の二値化画像のTD最大寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行する透明体のシート状物表面に発生した凹凸状の欠陥の検査において、
該シート状物の幅方向から平行光を斜めに透過させて広範囲を照射する照明手段と、
透過した光を光学的に圧縮させる配置で結像させるスクリーンと、
該スクリーンに結像した画像を明暗信号として検出する撮像手段と、
明暗信号のレベルをしきい値によって凹凸状欠陥として検知し、凹凸状欠陥の寸法及び形状を判定する信号処理手段と、
を具備することを特徴とするシート状物の表面欠陥検査装置。
【請求項2】
前記照明手段の光源のシート状物に入射する入射角θが、10°〜25°であることを特徴とする請求項1に記載のシート状物の表面欠陥検査装置。
【請求項3】
前記撮像手段に一次元イメージセンサを用い、スキャン毎の明暗信号を前記信号処理手段によって一定ライン数を更新しながら蓄積し、しきい値を越えたライン数をシート状物の走行方向の欠陥の大きさとして検知し、欠陥の寸法を判定することを特徴とする請求項1または2に記載のシート状物の表面欠陥検査装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の表面欠陥判別装置を用いて、上記シート状物表面に発生した凹凸状の欠陥の寸法及び形状を判別することを特徴とする、欠陥判別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−145082(P2011−145082A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3823(P2010−3823)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】