説明

シート用ストライカブラケットの取付構造

【課題】重量の増加を伴うことなくストライカブラケットの取付強度を十分に確保できるストライカブラケットの取付構造の提供を図る。
【解決手段】シート1の後方脚部4を係脱自在に係合するストライカロッド21を設けたストライカブラケット20を、リアフロア12下面に接合されるハット形断面の縦メンバ16の内側に嵌合して、これらストライカブラケット20と縦メンバ16の縦壁20a,16a同士を接合することにより、その結合部分でストライカロッド21に上方に作用する荷重を剪断方向で受けることができ、これら両者の結合強度を高めてストライカブラケット20や縦メンバ16の薄肉化が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートの脚部を車体フロアに係脱自在に取付けるストライカブラケットの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
3列シートなどの車両前後方向に複数列のシートを設けた車両では、車室内空間を有効利用し、また、乗員の移動を容易にするため、中間列のシートを前倒し可能としたものがある。この場合、シートの後方の脚部は車体フロアに対して着脱可能に取り付けられることになるが、脚部を着脱自在とするシートロック用のストライカロッド(ストライカバー)が皿状のストライカブラケット(ベースプレート)を介して車体フロアに固定される。
【0003】
従来、前記ストライカブラケットは、ハット形断面に形成した車体骨格部材となるクロスメンバの内方に配置して、ストライカブラケットの上端フランジをクロスメンバの上端フランジとフロアパネルとの間に挟んで接合してある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−213359号公報(第3頁、第5図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる従来のストライカブラケットの取付構造では、ストライカブラケットはその上端フランジのみが車体フロア側に結合される構成となっていたため、ストライカブラケットの取付強度を増大するためには前記上端フランジの剛性を高める必要があり、そのためにストライカブラケットを全体的に増厚し、また、補強部材を追加することになり、車体重量の増加が余儀なくされてしまう。
【0005】
そこで、本発明はストライカブラケットの接合構造を工夫することにより、重量の増加を伴うことなくストライカブラケットの取付強度を十分に確保できるストライカブラケットの取付構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のシート用ストライカブラケットの取付構造は、上方が開放したハット形断面に形成されて車体フロアの下面に接合されるフロアメンバ部材と、シートの脚部を係脱自在に係合するストライカロッドを設けた断面略U字状のストライカブラケットとを備え、前記フロアメンバ部材の所定部位の内側にストライカブラケットを嵌合して、これらストライカブラケットとフロアメンバ部材の縦壁同士を接合するとともに、前記フロアメンバ部材を車体フロアの下面に接合して、該車体フロアの前記フロアメンバ部材に対応した部位に形成した開口部から前記ストライカロッドを車室内側に臨ませて配設したことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ストライカブラケットを取り付ける車体フロアはフロアメンバ部材によって補強されているため、シートに車両前後方向の大きな荷重が作用した場合にもシートの浮き上がりを防止できるとともに、断面略U字状のストライカブラケットとハット形断面のフロアメンバ部材とは、それらの縦壁同士が互いに接合されることにより前記荷重はこの接合部分に強度的に有利な剪断方向に作用することから、両者の結合強度を高めることができるため、ストライカブラケットやフロアメンバ部材の薄肉化が可能となり、または専用の補強部材を不要とすることができて車体の軽量化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0009】
図1〜図7は本発明にかかるシート用ストライカブラケットの取付構造の一実施形態を示し、図1はシート取付け部分の車体フロアを斜め上方から見た斜視図、図2はシート取付部分の車体フロアを斜め下方から見た斜視図であり、図3はシートの取り付け状態を車体フロアを断面として示す側面図、図4は図3中A部の拡大断面図である。
【0010】
また、図5はストライカブラケットとフロアメンバ部材との取付状態を示す斜視図、図6はストライカブラケットとフロアメンバ部材とを分解して示す拡大斜視図、図7は図5中B−B線に沿った拡大断面図である。
【0011】
本実施形態のシート用ストライカブラケットの取付構造は、例えば車両前後方向に3列以上の複数列のシートを備えた車両であって、前後方向中間列のシートに適用した場合を例にとって示すものとする。
【0012】
即ち、図3は本発明が適用される前後方向中間列のシート1を示し、このシート1はシートクッション2の前部下側に設けた前方脚部3と後部下側に設けた後方脚部4とよって支持され、図中2点鎖線に示すように前方脚部3を中心としてシート1全体が車両前方に回動可能となっている。
【0013】
前記シート1は、図1に示すように車体フロア10の前後方向略中央部から後方に向けて段差部11をもって一段と高く形成されたリアフロア12に設けられ、前記シート1の前方脚部3は、リアフロア12の前部から段差部11を経て一段低くなるフロントフロア13の後端部に亘って結合された左右一対の補強板14に、それぞれヒンジ部5を介して前後回動自在に取り付けられる。
【0014】
また、前記シート1の後方脚部4は、リアフロア12に取り付けられた左右一対のストライカブラケット20にそれぞれ設けたストライカロッド21に係脱自在に係合し、その係合状態で後方脚部4がストライカロッド21に固定されるようになっている。
【0015】
前記ストライカブラケット20は、図5,図6に示すように全体的に車両前後方向に長くなる舟型容器状に形成され、その周縁部が縦壁20aで巡らされて上端に外方に折曲したフランジ20bを形成してあるとともに、ストライカブラケット20の底面20cの車両前方寄りには、逆U字状に折曲した前記ストライカロッド21の両端部を車幅方向に配置して結合してある。
【0016】
そして、図1,図2に示すように前記ストライカロッド21を、リアフロア12の前記ストライカブラケット20の取付け部位に対応して形成した左右一対の開口部15から車室内側に臨ませて、ストライカブラケット20をリアフロア12の下面に接合配置したフロアメンバ部材としての縦メンバ16に取り付けるようにしている。
【0017】
即ち、リアフロア12の下面には、図2に示すようにそのリアフロア12の前部近傍および後端部に、それぞれ車幅方向に延在する前方クロスメンバ17と後方クロスメンバ18とが配設され、これら前方・後方クロスメンバ17,18間に亘って前記縦メンバ16が、前記開口部15の形成位置に対応して左右一対配設される。
【0018】
前方クロスメンバ17は、図3,図5に示すように上方が開放したハット形断面に形成され、その上端フランジ17aをリアフロア12の下面に接合して、リアフロア12との間に閉断面を形成している。
【0019】
また、後方クロスメンバ18にあっても、前方クロスメンバ17と同様にハット形断面に形成してリアフロア12の下面に接合することにより閉断面を形成している。
【0020】
一方、前記縦メンバ16は、図5,図6に示すように前記前方クロスメンバ17と同様に上方が開放したハット形断面に形成され、その両側の縦壁16aの上端に形成したフランジ16bをリアフロア12の下面に接合して、リアフロア12との間に閉断面を形成している。
【0021】
そして、前記ストライカブラケット20の取付け部分では、図7に示すようにストライカブラケット20の車幅方向に対向する縦壁20a間の外側幅と、縦メンバ16の対向する縦壁16aの内側幅とを略等しく形成して、ストライカブラケット20を縦メンバ16の内側に嵌合し、これら嵌合したストライカブラケット20の縦壁20aと縦メンバ16の16a同士を接合(スポット溶接P2)して組付けてある。
【0022】
また、ストライカブラケット20のフランジ20bは、縦メンバ16のフランジ16bの上側に重ね合わせて接合(スポット溶接P1)し、更に、これらフランジ20b,16bを開口部15の周縁部下面にスポット溶接により結合してある。
【0023】
更に、本実施形態では図6に示すように、前記フランジ20bは、その車幅方向外側部分(外周)22を、フランジ幅wが狭くなる凹部22aとフランジ幅wが広くなる凸部22bとからなる平面波形状に形成する一方、前記フランジ16bは、その上面に、前記フランジ20bの凸部22bが嵌合する低座部分23aと、フランジ20bの凹部22aに嵌合する高座部分23bとを形成してあり、これら低座部分23aと高座部分23bとの高低差をフランジ20bの厚さtに略等しく設定し、互いに嵌合した前記凸部22bと前記低座部分23aとを接合(スポット溶接P1)するとともに、前記高座部分23bとリアフロア12とを重合して接合(スポット溶接P3)してある。
【0024】
ところで、ストライカブラケット20を組付けた縦メンバ16は、図2に示すようにその前端部16cを前記ストライカブラケット20の前方近傍に配設した前記前方クロスメンバ17に結合してある。
【0025】
即ち、図4,図5に示すようにフランジ16bの前端部を前方クロスメンバ17の上端フランジ17aの下側に重ね合わせて、リアフロア12の下面に接合するとともに、縦メンバ16の底面16dの延長部16eを前方クロスメンバ17の底面17bの下側に重ねて接合(スポット溶接)される。このとき、縦メンバ16の前端部16cは前方クロスメンバ17の後方縦壁17cの傾斜に沿って形成して該後方縦壁17cに付き合わせてある。
【0026】
以上の構成により本実施形態によれば、シート1の通常使用状態では、図3中実線に示すように後方脚部4をストライカロッド21に係合して固定した状態となっており、この状態でシート1に作用する荷重は、前方脚部3および後方脚部4からリアフロア12に入力する。
【0027】
このとき、後方脚部4に入力された荷重は、ストライカロッド21およびストライカブラケット20を介して縦メンバ16そしてリアフロア12へと伝達されるが、縦メンバ16を設けたことによりリアフロア12を補強することができるため、急制動時や衝突時等にあってシートベルトを介してシート1に大きな荷重が作用した場合にも、リアフロア12が上方に変形するのを抑えることができ、結果的にシート1の浮き上がりを防止することができる。
【0028】
また、断面略U字状のストライカブラケット20とハット形断面の縦メンバ16とは、それらの縦壁20a,16a同士が互いに結合されているので、その結合部分では前記荷重を強度的に有利な剪断方向で受けることができ、これによって両者の結合強度を高めることができるため、ストライカブラケット20や縦メンバ16の薄肉化が可能となり、または専用の補強部材を不要として車体の軽量化を図ることができる。
【0029】
また、本実施形態では前記作用効果に加えて、ストライカブラケット20のフランジ20bを縦メンバ16のフランジ16b上に重合して接合してあるので、ストライカブラケット20と縦メンバ16との結合強度を更に高めることができ、シート1の後方脚部4からリアフロア12に伝達される荷重をより効率良く受けることができる。
【0030】
更に、フランジ20bの車幅方向外側部分22を、凹部22a,凸部22bからなる平面波形状に形成する一方、フランジ16bの上面に前記凸部22bが嵌合する低座部分23aと前記凹部22aに嵌合する高座部分23bとを、それらの高低差をフランジ20bの厚さtに略等しく設定し、互いに嵌合した前記凸部22と前記低座部分23aとを接合するとともに、前記高座部分23bと車体フロア12とを重合して接合したので、ストライカブラケット20を縦メンバ16とリアフロア12との両者に直接結合することができ、シート1の後方脚部4に伝達された荷重の分散効率を高めることができる。
【0031】
更にまた、前記縦メンバ16の前端部16cをストライカブラケット20近傍に設けた前方クロスメンバ17に結合したので、縦メンバ16およびストライカブラケット20近傍のリアフロア12の強度をそれぞれ更に高めることができ、ひいては、シート1の支持剛性をより高めることができる。
【0032】
ところで、本発明は前記実施形態に例をとって説明したが、この実施形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で他の実施形態を各種採用することができ、例えば、シートは3列以上の複数列の中間列に限ることなく、最前列や最後列のシートにあっても適用でき、また、シートは回動タイプに限ることなくシート全体を車体フロアから分離できるタイプであってもよい。
【0033】
また、ストライカブラケット20を取り付けるフロアメンバ部材は、車両前後方向に延在する縦メンバ16に限ることなく、車幅方向に延在するクロスメンバとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態におけるシート取付け部分の車体フロアを斜め上方から見た斜視図。
【図2】本発明の一実施形態におけるシート取付部分の車体フロアを斜め下方から見た斜視図。
【図3】本発明の一実施形態におけるシートの取り付け状態を車体フロアを断面として示す側面図。
【図4】図3中A部の拡大断面図。
【図5】本発明の一実施形態におけるストライカブラケットとフロアメンバ部材との取付状態を示す斜視図。
【図6】本発明の一実施形態におけるストライカブラケットとフロアメンバ部材とを分解して示す拡大斜視図。
【図7】図5中B−B線に沿った拡大断面図。
【符号の説明】
【0035】
1 シート
4 後方脚部
10 車体フロア
12 リアフロア
15 開口部
16 縦メンバ(フロアメンバ部材)
16a 縦メンバの縦壁
16b 縦メンバのフランジ
16d 縦メンバの前端部
17 前方クロスメンバ
20 ストライカブラケット
20a ストライカブラケットの縦壁
20b ストライカブラケットのフランジ
21 ストライカロッド
22a 凹部
22b 凸部
22 ストライカブラケットのフランジの外側部分
23a 低座部分
23b 高座部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方が開放したハット形断面に形成されて車体フロアの下面に接合されるフロアメンバ部材と、
シートの脚部を係脱自在に係合するストライカロッドを設けた断面略U字状のストライカブラケットとを備え、
前記フロアメンバ部材の所定部位の内側にストライカブラケットを嵌合して、これらストライカブラケットとフロアメンバ部材の縦壁同士を接合するとともに、
前記フロアメンバ部材を車体フロアの下面に接合して、該車体フロアの前記フロアメンバ部材に対応した部位に形成した開口部から前記ストライカロッドを車室内側に臨ませて配設したことを特徴とするシート用ストライカブラケットの取付構造。
【請求項2】
フロアメンバ部材およびストライカブラケットはそれぞれ縦壁の上端にフランジを有し、これらフランジを重合して接合したことを特徴とする請求項1に記載のシート用ストライカブラケットの取付構造。
【請求項3】
ストライカブラケットのフランジは、その外側部分を、フランジ幅が狭くなる凹部とフランジ幅が広くなる凸部とからなる平面波形状に形成する一方、フロアメンバ部材のフランジは、その上面に、ストライカブラケットのフランジの凸部が嵌合する低座部分と、ストライカブラケットのフランジの凹部に嵌合する高座部分とを形成し、これら低座部分と高座部分との高低差をストライカブラケットのフランジの厚さに略等しく設定し、互いに嵌合した前記凸部と前記低座部分とを接合するとともに、前記高座部分と車体フロアとを重合して接合したことを特徴とする請求項2に記載のシート用ストライカブラケットの取付構造。
【請求項4】
フロアメンバ部材は、車両前後方向に延在する縦メンバであり、該縦メンバの前端部をストライカブラケット近傍で車体フロアの下面に接合したクロスメンバに結合したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のシート用ストライカブラケットの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−125954(P2007−125954A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−319176(P2005−319176)
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】