説明

シート

【課題】ロック機構のロック力が低下せず、アンロックを行う操作力が小さくなるシートを提供することを課題とする。
【解決手段】ロック機構100は、シートクッションフレーム側に設けられたロックピン(突部)101と、リアリンク側に設けられ、ロックピン101が嵌合する長穴107と、リアリンクの面上に回転可能に設けられ、回転端部側には、長穴107の一方の端部に位置しているロックピン101に、長穴107の他方の端部側から当接可能な当接部112が形成されたフック113と、リアリンク側の面上に回転可能に設けられ、フック113の当接部112がロックピン101に当接する方向にフックを押すカム121とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下部がフロア側に回転可能に取り付けられ、上部がシートクッションの前部に回転可能に取り付けられたフロントリンクと、下部がフロア側に回転可能に取り付けられ、上部が前記シートクッションの後部に回転可能に取り付けられたリアリンクと、前記フロントリンク、前記リアリンクのうちの少なくとも一方のリンクの回転を禁止するロック機構とを有するシートに関する。
【背景技術】
【0002】
下部がフロア側に回転可能に取り付けられ、上部がシートクッションの前部に回転可能に取り付けられたフロントリンクと、下部がフロア側に回転可能に取り付けられ、上部が前記シートクッションの後部に回転可能に取り付けられたリアリンクと、前記フロントリンク、前記リアリンクのうちの少なくとも一方のリンクの回転を禁止するロック機構とを有するシートの ロック機構の一例として、図7に示すような構成のロック機構がある。図7(a)は平面図、図7(b)は図7(a)の切断線A−Aでの断面図である。これらの図において、シートクッション、リンクのうちのどちらか一方の部材を第1部材、他方を第2部材とした場合、第1部材1には突部としてのピン5が設けられ、このピン5は第2部材3に形成された長穴7に移動可能に係合している。
【0003】
ピン5の突出方向と交差する平面と平行な第2部材3の面上には、フック9がピン11を用いて回転可能に設けられている。このフック9の回転端部側は、略J字形に湾曲し、ピン5に当接可能な当接部13となっている。
【0004】
そして、図7に示すように、長穴7の一方の端部に位置するピン5に、長穴7の他方の端部側からフック9の当接部13が当接することで、第1部材1と第2部材3との相対的な移動が禁止されている。
【0005】
また、図7(a)において、フック9の他方の回転端部側に設けられた点9aに矢印C方向の力を作用させることで、フック9が反時計方向(矢印B方向)に回転して当接部13がピン5より離反し、第1部材1と第2部材3との相対的な移動が可能となる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−122570号公報(段落番号0024−0027、図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図7に示す構成のシートのロック機構において、シートに乗員が着座した状態で、ロック機構を操作する場合には、第1部材1のピン5からフック9に大きな荷重(W)が作用し、ピン5とフック9の当接部13との当接部(T)の摩擦抵抗が大きくなる。従って、アンロックを行うためにフック9を反時計方向(矢印B方向)に回転させようとするアンロック操作力が大きくなる問題点がある。
【0007】
アンロック操作力を小さくする方法として、図8(a)、図8(b)に示すように、フック9の移動方向(フック9の回転中心Oと当接部Tとを結んだ線と直交する線(L))と、フック9のピン11との当接面(T)とのなす角(以下、本明細書では、フック9の当接部13のピン5に対する傾き角(θ)という)を大きくする方法がある。図8において、(a)図に比べて(b)図の方が、フック9の当接部13がピン5に対して寝ており、(a)図の傾き角(θ1)より、(b)図の傾き角(θ2)の方が大きくなっている。
【0008】
しかし、傾き角(θ)を大きくすると、当接部Tでの垂直抗力が小さくなる。即ち、フック9とピン5との間の摩擦が小さくなり、フック9がピン5より抜けやすく、ロック機構のロック力が低下し、意図しないアンロックが発生しやすくなる問題点がある。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、その課題は、ロック機構のロック力が低下せず、アンロックを行う操作力が小さくなるシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、下部がフロア側に回転可能に取り付けられ、上部がシートクッションの前部に回転可能に取り付けられたフロントリンクと、下部がフロア側に回転可能に取り付けられ、上部が前記シートクッションの後部に回転可能に取り付けられたリアリンクと、前記フロントリンク、前記リアリンクのうちの少なくとも一方のリンクの回転を禁止するロック機構と、を有することを特徴とするシートにおいて、前記ロック機構は、前記シートクッション側、前記リンク側のうちのどちらか一方の部材を第1部材、他方を第2部材とした場合、該第1部材に設けられた突部と、前記第2部材に設けられ、前記突部が嵌合する長穴と、前記第2部材の面上に回転可能に設けられ、回転端部側には、前記長穴の一方の端部に位置している前記突部に、前記長穴の他方の端部側から当接可能な当接部が形成されたフックと、前記第2部材の面上に回転可能に設けられ、前記フックの当接部が前記突部に当接する方向に前記フックを押すカムと、を有からなることを特徴とするシートである。
【0011】
前記長穴の一方の端部に位置している前記突部に、前記長穴の他方の端部側から前記フックの当接部が当接することで、前記第1部材と第2部材との相対的な移動が禁止され、ロック機構のロック状態となっている。この時、カムは前記長穴の他方の端部側から前記フックの当接部が前記突部に当接する方向に前記フックを押している。ロック機構がロック状態であれば、フロントリンク、リアリンクの回転が禁止され、シートクッションは昇降できない。
【0012】
この状態から、カムが回転しフックより離れ、フックが回転し突部より離れることにより、前記第1部材と第2部材との相対的な移動が許可されるロック機構のアンロック状態となる。ロック機構がアンロック状態であれば、フロントリンク、リアリンクが回転し、シートクッションはフロア側に対して昇降することができる。
【0013】
請求項2に係る発明は、前記フックに、前記カムが前記フックより離れる方向に回転した際に、前記カムが押接し、前記フックが前記突部より離れる回転するアーム部を設けたことを特徴とする請求項1記載のシートである。
【0014】
ロック機構のロック状態で、カムが回転しフックより離れると、カムはフックの被押接部を押圧して、フックは突部より離れる。
請求項3に係る発明は、下部がフロア側に回転可能に取り付けられ、上部がシートクッションの前部に回転可能に取り付けられたフロントリンクと、下部がフロア側に回転可能に取り付けられ、上部が前記シートクッションの後部に回転可能に取り付けられたリアリンクと、前記フロントリンク、前記リアリンクのうちの少なくとも一方のリンクの回転を禁止するロック機構と、を有することを特徴とするシートにおいて、前記ロック機構は、前記シートクッション側、前記リンク側のうちのどちらか一方の部材を第1部材、他方を第2部材とした場合、該第1部材に設けられた突部と、前記第2部材に設けられ、前記突部が嵌合する長穴と、前記第2部材の面上に回転可能に設けられ、回転端部側には、前記長穴の一方の端部に位置している前記突部に、前記長穴の他方の端部側から当接可能な当接部が形成されたフックと、前記第2部材の面上に回転可能に設けられたレリーズ部材と、前記フック、前記レリーズ部材のうちの一方に設けられたスライダと、前記フック、前記レリーズ部材のうちの他方に設けられ、前記スライダが移動可能に係合するガイドと、からなり、前記ガイドは、前記レリーズ部材を回転させることにより、前記フックを前記突部に当接/離反させ、更に、前記レリーズ部材を一定速度で回転させた場合、前記突部に当接している前記フックを前記突部から離反させる時の前記フックの速度は、前記突部から離反した後の前記フックの速度より低くなるように設定されていることを特徴とするシートである。
【0015】
レリーズ部材が回転し、前記長穴の一方の端部に位置している前記突部に、前記長穴の他方の端部側から前記フックの当接部が当接することで、前記第1部材と第2部材との相対的な移動が禁止され、ロック機構のロック状態となっている。ロック機構がロック状態であれば、フロントリンク、リアリンクの回転が禁止され、シートクッションは昇降できない。
【0016】
この状態から、レリーズ部材を回転させることにより、フックは突部から離れ、前記第1部材と第2部材との相対的な移動が許可されるロック機構のアンロック状態となる。ロック機構がアンロック状態であれば、フロントリンク、リアリンクが回転し、シートクッションはフロア側に対して昇降することができる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1、2に係る発明によれば、前記ロック機構は、前記第2部材の面上に回転可能に設けられ、前記フックの当接部が前記突部に当接する方向に前記フックを押すカムを有している。
【0018】
よって、フックの移動方向と、フックのピンとの当接面とのなす角度(傾き角)を大きくして、アンロック操作力を小さくしたとしても、第2部材の面上に回転可能に設けられ、前記長穴の他方の端部側から前記フックの当接部が前記突部に当接する方向に前記フックを押すカムを設けたことにより、ロック機構のロック力が低下しない。
【0019】
請求項2に係る発明によれば、前記フックに、前記カムが前記フックより離れる方向に回転した際に、前記カムが押接し、前記フックが前記突部より離れる回転するアーム部を設けたことにより、ロック機構のアンロック操作の場合、カムを前記フックより離れる方向に回転させるだけで、フックはカムに押されて突部より離れる。よって、フックを回転させる機構が不要となり、確実にフックは突部より離れる。
【0020】
請求項3に係る発明によれば、前記ガイドは、前記レリーズ部材を回転させることにより、前記フックを前記突部に当接/離反させ、更に、前記レリーズ部材を一定速度で回転させた場合、前記突部に当接している前記フックを前記突部から離反させる時の前記フックの速度は、前記突部から離反した後の前記フックの速度より低くなるように設定されているので、ロック機構のロック力が低下せず、アンロックを行う操作力が小さくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
[第1の形態例]
最初に、第1の形態例のシートの全体構成を図2、図3を用いて説明する。図2はシートが最高位置にある状態を示す構成図、図3はシートが最低位置にある状態を示す構成図である。これらの図において、シートトラック機構51は、フロア側にけられたロアレール53と、ロアレール53に移動可能に係合したアッパレール55とからなっている。
【0022】
シートクッションのフレーム61の前部には、フロントリンク71の上部がピン73を用いて回転可能に取り付けられ、フレーム61の後部には、リアリンク81の上部がピン83を用いて回転可能に取り付けられている。
【0023】
フロントリンク71の下部はピン75を用いてアッパレール55の前部に回転可能に取り付けられ、リアリンク81の下部はピン85を用いてアッパレール55の後部に回転可能に取り付けられている。
【0024】
従って、アッパレール55と、フロントリンク71と、フレーム61と、リアリンク81とで、アッパレール55が固定された4節回転連鎖が構成され、フロントリンク71、リアリンク81がアッパレール55に対して回転することにより、フレーム61(シート)はシートトラック機構51のアッパレール55(フロア)に対して昇降可能となっている。
【0025】
尚、本形態例では、ピン85の近傍には、リアリンク81の回転に抵抗力を付与するダンパ86が設けられ、更に、図示しない付勢手段により、リアリンクはフレーム61が上昇する方向に付勢されている。
【0026】
そして、フレーム61の後部には、リアリンク81の回転を禁止するロック機構100が設けられ、シートの前部には、アッパレール55がロアレール53に対して最後位置に移動させないとロック機構100が作動しないようにするキャンセル機構200が設けられている。
【0027】
ここで、図1−図3を用いてロック機構100の説明を行う。図1は図2のロック機構100の拡大図である。
フレーム(第1部材)61には、突部としてのロックピン101がフレーム61に対して略直交するように設けられている。
【0028】
リアリンク81のフレーム61側の回転中心であるピン83より更に上部分には、ピン103を用いて、フレーム61と略平行にロングリンク(第2部材)105が回転可能に取り付けられている。
【0029】
ロングリンク105には、ロックピン101が嵌合する長穴107を有している。従って、ロングリンク105はロックピン101が長穴107の2つの端部に当接する範囲で移動し、ロックピン101が長穴107の一方の端部に当接する状態(図2に示す状態)にロングリンク105が移動すると、シートが最高位置にあり、ロックピン101が長穴107の他方の端部に当接する状態(図3に示す状態)にロングリンク105が移動すると、シートが最低位置にあるようになっている。
【0030】
ロングリンク105には、ピン111を用いてフック113が回転可能に取り付けられている。従って、フック113は、ロックピン101の突出方向と交差する平面と平行な面に回転可能に取り付けられていることとなる。このフック113の回転端部側は、略J字形に湾曲し、ロックピン101に当接可能な当接部112となっている。そして、ロックピン101が長穴107の一方の端部に位置する状態(図1、図2の状態:シートが最高位置にある場合)で、フック113の当接部112が長穴107の他方の端部側からロックピン101に当接することで、フレーム(第1部材)61とロングリンク105(第2部材)との相対的な移動が禁止されている。又、ロックピン101が長穴107の他方の端部に位置する状態(図3の状態:シートが最低位置にある場合)で、フック113の当接部112が長穴107の一方の端部側からロックピン101に当接することで、フレーム(第1部材)61とロングリンク105(第2部材)との相対的な移動が禁止されている。ロングリンク105の移動が禁止された状態は、リアリンク81の回転が禁止されたロック状態である。
【0031】
更に、ロングリンク105には、カム121がピン123を用いて回転可能に設けられている。カム121は、中間部がピン123に巻回され、一方の端部がロングリンク105に係止され、他方の端部がカム121に係止された図示しないスプリングにより、図1−図3において矢印G方向、即ち、カム121の一方の回転端部の押圧部121aがフック113を押圧する方向に付勢されている。このカム121の押圧部121aの押圧により、フック113の当接部112はロックピン101に当接する方向に付勢されている。カム121の他方の端部には、後述するワイヤ211のインナワイヤ209が接続されている。
【0032】
また、フック113には、中間部がピン111に巻回され、一方の端部がロングリンク105に係止され、他方の端部がフック113に係止された図示しないスプリングにより、図1−図3において矢印F方向、即ち、フック113の当接部112がロックピン101に当接する方向に回転する方向に付勢されている。
【0033】
更に本形態例のフック113には、カム121の一方の端部がフック113より離れる方向に回転した際に、カム121の押圧部121aが押接し、フック113がロックピン101より離れる方向に回転するアーム部114が形成されている。
【0034】
ここで、ロック機構100の作動を説明する。シートが最高位置にあり、ロック機構100がロック状態にある図2に示す状態で、カム121を反矢印G方向に回転させると、カム121の押圧部121aがフック113より離れ、カム121の押圧部121aがフック113のアーム部114を押す。フック113のアーム部114が押されると、フック113は反矢印F方向に回転し、フック113の当接部112のロックピン101への当接が解除され、リアリンク81の回転が可能となるアンロック状態となり、シートは最低位置へ移動可能となる。シートが最低位置まで降下し、ロックピン101が長穴107の他方の端部に当接する状態(図3に示す状態)にロングリンク105が移動する。カム121を回転させている力を解除すると、図3に示すように、カム121の押圧部121aがフック113を押圧し、フック113の当接部112が長穴107の一方の端部側からロックピン101に当接することで、フレーム(第1部材)61とロングリンク105(第2部材)との相対的な移動が禁止されたロック状態となる。
【0035】
また、シートが最低位置にあり、ロック機構100がロック状態にある図3に示す状態で、カム121を反矢印G方向に回転させると、カム121の押圧部121aがフック113より離れ、カム121の押圧部121aがフック113のアーム部114を押す。フック113のアーム部114が押されると、フック113は反矢印F方向に回転し、フック113の当接部112のロックピン101への当接が解除され、リアリンク81の回転が可能となるアンロック状態となり、シートは最高位置へ移動可能となる。シートが最高位置まで上昇し、ロックピン101が長穴107の一方の端部に当接する状態(図2に示す状態)にロングリンク105が移動する。カム121を回転させている力を解除すると、図2に示すように、カム121の押圧部121aがフック113を押圧し、フック113の当接部112が長穴107の他方の端部側からロックピン101に当接することで、フレーム(第1部材)61とロングリンク105(第2部材)との相対的な移動が禁止されたロック状態となる。
【0036】
次に、図4、図5を用いてキャンセル機構200の説明を行う。図4はキャンセル機構の拡大図で、(a)図は図2の状態の拡大図、(b)図は図3の状態の拡大図、図5は図4のキャンセル機構の各部品を示す平面図で、(a)図は第1キャンセルレバー、(b)図は操作レバー、(c)図はフック駆動レバー、(d)図はベースをそれぞれ示している。
【0037】
キャンセル200機構は、フレーム61と、シートトラック機構51とに設けられる。フレーム61に設けられる機構は、ベース201上に設けられる。ベース201上には、ピン203を用いて、フック駆動レバー205が回転可能に設けられている。図2、図3に示すように、フック駆動レバー205とロック機構100のフック113との間には、筒状で、端部がキャンセル機構200のベース201とロック機構100のロングリンク105とに係止されたアウターケーシング207、アウターケーシング207内を移動可能に挿通し、端部がフック駆動レバー205とカム121とに係止されたインナワイヤ209からなるワイヤ211が設けられ、フック駆動レバー205がインナワイヤ209を引く方向(一方の方向)に回転すると、カム121が回転し、フック113も回転するようになっている。また、フック駆動レバー205には、半径方向に延びるアーム部213が形成されている。
【0038】
更に、図示しないフック駆動レバー付勢手段により、フック駆動レバー205はインナワイヤ209を引く方向と反対方向(他方の方向:図4の矢印H方向)に回転する方向に付勢されている。ベース201には、フック駆動レバー付勢手段で付勢されたフック駆動レバー205の折曲部205aが当接し、フック駆動レバー205の移動を禁止するフック駆動レバーストッパとしてのストッパ215が形成されている。
【0039】
次に、フック駆動レバー205の回転中心軸であるピン203には、操作レバー217が回転可能に設けられている。操作レバー217には、半径方向にフック駆動レバー205のアーム部213の先端より更に延びた長穴219が形成されている。この長穴219には、フック駆動レバー205のアーム部213の側面に当接可能なキャンセルピン221が移動可能に係合している。そして、図示しない操作レバー付勢手段により、操作レバー217は、キャンセルピン221がフック駆動レバー205のアーム部213から離れる方向(図4において矢印I方向)に付勢されている。フック駆動レバー205には、操作レバー付勢手段で付勢された操作レバー217の側面が当接し、操作レバー217の移動を禁止する操作レバーストッパとしてのストッパ205bが形成されている。
【0040】
フック駆動レバー205の近傍には、ピン231を用いて第1キャンセルレバー233が回転可能に設けられている。第1キャンセルレバー233には、キャンセルピン221に係合し、回転することにより、キャンセルピン221をフック駆動レバー205のアーム部213の側面に当接可能な位置と、フック駆動レバー205のアーム部213の側面に当接しない位置との間で操作レバー217の長穴219に沿って移動させるガイド穴235が形成されている。また、図示しない第1キャンセルレバー付勢手段により、第1キャンセルレバー233は、キャンセルピン221がフック駆動レバー205のアーム部213の側面に当接しない位置となるように、図4の矢印D方向に付勢されている。
【0041】
次に、シートトラック機構51に設けられる機構を説明する。図2、図3に示すように、アッパレール55の側面には、ブラケット240が設けられ、このブラケット240上には、ピン241を用いて第2キャンセルレバー243が回転可能に設けられている。また、ロアレール53の側面には、アッパレール55が最後位置近傍まで後退すると、第2キャンセルレバー243が当接するキャンセル部材245が設けられている。更に、ブラケット240には、第2キャンセルレバー243がキャンセル部材245に当接可能な位置以上に回転するのを禁止する第2キャンセルレバーストッパ247が形成されている。そして、図示しない第2キャンセルレバー付勢手段により、第2キャンセルレバー243が第2キャンセルストッパ247に当接する方向(図2、図3の矢印G方向)に付勢されている。
【0042】
第1キャンセルレバー233と第2キャンセルレバー243との間には、筒状で、端部がベース201とアッパレール55に設けられたブラケット240とに係止されたアウターケーシング287と、アウターケーシング287内を移動可能に挿通し、端部が第1キャンセルレバー233と第2キャンセルレバー243とに係止されたインナワイヤ289とからなるワイヤ291が設けられ、第2キャンセルレバー243がインナワイヤ289を引く方向に回転すると、第1キャンセルレバー233も回転するようになっている。
【0043】
アッパレール55がロアレール53に対して最後位置以外の位置にあるときには、図2に示すようにアッパレール55の第2キャンセルレバー243は、ロアレール53側のキャンセル部材245に当接していないので、第2キャンセルレバー付勢手段の付勢力により第2キャンセルレバーストッパ247に当接している。一方、第1キャンセルレバー233は第1キャンセルレバー付勢手段の付勢力により、キャンセルピン221がフック駆動レバー205のアーム部213の側面に当接しない位置となるようにキャンセルピン221を移動させている。よって、この状態で操作レバー217を操作レバー付勢手段の付勢力に抗して回転させても、キャンセルピン221はフック駆動レバー205に当接しない位置にあるので、ロック機構100のロック解除プレート301を駆動するフック駆動レバー205は回転せず、ロック機構は駆動されない。
【0044】
アッパレール55がロアレール53に対して最後位置まで移動すると、アッパレール55の第2キャンセルレバー243が、ロアレール側のキャンセル部材245に当接して押され、第2キャンセルレバー付勢手段の付勢力に抗して回転する。この第2キャンセルレバー243の回転により、第1キャンセルレバー233は第1キャンセルレバー付勢手段の付勢力に抗して回転し、キャンセルピン221がフック駆動レバー205のアーム部213の側面に当接する位置となるようにキャンセルピン221を移動させる。
【0045】
この状態で操作レバー217を操作レバー付勢手段の付勢力に抗して回転させると、キャンセルピン221はフック駆動レバー205に当接する位置にあるので、ロック機構100のカム121を駆動するフック駆動レバー205が回転し、ロック機構100はロック解除される。
【0046】
このような構成のロック機構100によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)ロック機構100は、ロングリンク(第2部材)105の面上に回転可能に設けられ、フック113の当接部112がロックピン(突部)101に当接する方向にフック113を押すカム121を有している。
【0047】
よって、図1に示すように、フック113の移動方向と、フック113のロックピン101との当接面とのなす角度(θ3:傾き角)を大きくして、アンロック操作力を小さくしたとしても、カム121を設けたことにより、ロック機構100のロック力が低下しない。
(2)フック113には、カム121の一方の端部がフック113より離れる方向に回転した際に、カム121の押圧部121aが押接し、フック113がロックピン101より離れる方向に回転するアーム部114が形成されている。ロック機構100のアンロック操作の場合、カム121をフック113より離れる方向に回転させるだけで、フック113のアーム部114はカム121の押圧部121aに押されてロックピン101より離れる。よって、フック113を回転させる機構が不要となり、確実にフック113はロックピン101より離れる。
【0048】
尚、本発明は上記形態例に限定されるものではない。上記形態例のロック機構100はリアリンク81の回転を禁止するものであったが、フロントリンク71の回転を禁止するように構成してもよいし、リアリンク81、フロントリンク71の両方のロック機構を設けてもよい。
【0049】
また、本発明のロック機構は、上記形態例の昇降するシート以外に、一部または全部がフロアから離脱するシートに設けられ、フロアとシートとの固定を行うロック機構にも適用可能である。
【0050】
更に、ロックピン101を矢印F方向に付勢するスプリングはなくても良い。
[第2の形態例]
次に、第2の形態例を説明する。本形態例と第1の形態例との相違点は、ロック機構であるので、図6を用いて本形態例のロック機構300を説明する。
【0051】
フレーム(第1部材)には、突部としてのロックピン301がフレームに対して略直交するように設けられている。
リアリンクのフレーム側の回転中心であるピンより更に上部分には、ピン303を用いて、フレームと略平行にロングリンク(第2部材)305が回転可能に取り付けられている。
【0052】
ロングリンク305には、ロックピン301が嵌合する長穴307を有している。従って、ロングリンク305はロックピン301が長穴307の2つの端部に当接する範囲で移動し、ロックピン301が長穴307の一方の端部に当接する状態にロングリンク305が移動すると、シートが最高位置にあり、ロックピン301が長穴307の他方の端部に当接する状態にロングリンク305が移動すると、シートが最低位置にあるようになっている。
【0053】
ロングリンク305には、ピン311を用いてフック313が回転可能に取り付けられている。従って、フック313は、ロックピン301の突出方向と交差する平面と平行な面に回転可能に取り付けられていることとなる。このフック313の回転端部側は、略J字形に湾曲し、ロックピン301に当接可能な当接部312となっている。そして、ロックピン301が長穴307の一方の端部に位置する状態(図6の状態:シートが最高位置にある場合)で、フック313の当接部312が長穴307の他方の端部側からロックピン301に当接することで、フレーム(第1部材)とロングリンク305(第2部材)との相対的な移動が禁止されている。又、ロックピン301が長穴307の他方の端部に位置する状態(シートが最低位置にある場合)で、フック313の当接部312が長穴307の一方の端部側からロックピン301に当接することで、フレーム(第1部材)とロングリンク305(第2部材)との相対的な移動が禁止されている。ロングリンク305の移動が禁止された状態は、リアリンクの回転が禁止されたロック状態である。
【0054】
更に、ロングリンク305には、レリーズ部材321がピン323を用いて回転可能に設けられている。フック313には、スライダとしてピン351が設けられている。一方、レリーズ部材321の一方の回転端部には、ピン351が移動可能に係合するガイド穴353が形成されている。又、レリーズ部材321の他方の回転端部には、第1の形態例と同様に、キャンセル機構の操作レバーによって駆動されるワイヤ310のインナワイヤ309が接続されている。
【0055】
ガイド穴353の形状は、レリーズ部材321を回転させることにより、フック313の当接部312をロックピン301に当接/離反させる形状に設定されている。更に、ガイド穴353の形状は、レリーズ部材321を一定速度で回転させた場合、ロックピン301に当接しているフック313をロックピン301から離反させる時のフック313の速度は、ロックピン301から離反した後のフック313の速度より低くなるように設定されている。
【0056】
具体的には、ロックピン301に当接しているフック313がロックピン301から離反していく場合、ピン323とピン351との距離(R)が短くなっていくが、フック313がロックピン301に当接している間は、ピン323とピン351との距離(R)が短くなっていく変化量を小さくなるように設定し、フック313がロックピン301から離反した後は、ピン323とピン351との距離(R)が短くなる変化量を大きくなるように設定した。
【0057】
このような構成のロック機構300によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)ガイド穴353の形状は、レリーズ部材321を回転させることにより、フック313の当接部312をロックピン301に当接/離反させ、更に、レリーズ部材321を一定速度で回転させた場合、ロックピン301に当接しているフック313をロックピン301から離反させる時のフック313の速度は、ロックピン301から離反した後のフック313の速度より低くなるように設定されている。よって、ロック機構300のロック力が低下せず、アンロックを行う操作力が小さくなる。
【0058】
尚、本発明は、上記形態例に限定するものではない。上記形態例では、フック313にピン351を設け、レリーズ部材321にガイド穴351を設けたが、逆に、フック313にガイド穴を設け、レリーズ部材321にガイド穴に移動可能に係合するピンを設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】第1の形態例のシートが最高位置にある状態の構成図である図2のロック機構の拡大図である。
【図2】第1の形態例のシートが最高位置にある状態の構成図である。
【図3】第1の形態例のシートが最低位置にある状態の構成図である。
【図4】キャンセル機構の拡大図で、(a)図は図2の状態の拡大図、(b)図は図3の状態の拡大図である。
【図5】図4のキャンセル機構の各部品を示す平面図で、(a)図は第1キャンセルレバー、(b)図は操作レバー、(c)図はフック駆動レバー、(d)図はベースをそれぞれ示している。
【図6】第2の形態例のシートのロック機構を説明する図である。
【図7】従来のシートのロック機構を説明する図で、(a)図は平面図、(b)図は(a)図の切断線A−Aでの断面図である。
【図8】図7のロック機構の問題点を説明する図である。
【符号の説明】
【0060】
100 ロック機構
101 ロックピン(突部)
107 長穴
113 フック
121 カム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部がフロア側に回転可能に取り付けられ、上部がシートクッションの前部に回転可能に取り付けられたフロントリンクと、
下部がフロア側に回転可能に取り付けられ、上部が前記シートクッションの後部に回転可能に取り付けられたリアリンクと、
前記フロントリンク、前記リアリンクのうちの少なくとも一方のリンクの回転を禁止するロック機構と、
を有することを特徴とするシートにおいて、
前記ロック機構は、
前記シートクッション側、前記リンク側のうちのどちらか一方の部材を第1部材、他方を第2部材とした場合、
該第1部材に設けられた突部と、
前記第2部材に設けられ、前記突部が嵌合する長穴と、
前記第2部材の面上に回転可能に設けられ、回転端部側には、前記長穴の一方の端部に位置している前記突部に、前記長穴の他方の端部側から当接可能な当接部が形成されたフックと、
前記第2部材の面上に回転可能に設けられ、前記フックの当接部が前記突部に当接する方向に前記フックを押すカムと、
を有からなることを特徴とするシート。
【請求項2】
前記フックに、前記カムが前記フックより離れる方向に回転した際に、前記カムが押接し、前記フックが前記突部より離れる方向に回転するアーム部を設けたことを特徴とする請求項1記載のシート。
【請求項3】
下部がフロア側に回転可能に取り付けられ、上部がシートクッションの前部に回転可能に取り付けられたフロントリンクと、
下部がフロア側に回転可能に取り付けられ、上部が前記シートクッションの後部に回転可能に取り付けられたリアリンクと、
前記フロントリンク、前記リアリンクのうちの少なくとも一方のリンクの回転を禁止するロック機構と、
を有することを特徴とするシートにおいて、
前記ロック機構は、
前記シートクッション側、前記リンク側のうちのどちらか一方の部材を第1部材、他方を第2部材とした場合、
該第1部材に設けられた突部と、
前記第2部材に設けられ、前記突部が嵌合する長穴と、
前記第2部材の面上に回転可能に設けられ、回転端部側には、前記長穴の一方の端部に位置している前記突部に、前記長穴の他方の端部側から当接可能な当接部が形成されたフックと、
前記第2部材の面上に回転可能に設けられたレリーズ部材と、
前記フック、前記レリーズ部材のうちの一方に設けられたスライダと、
前記フック、前記レリーズ部材のうちの他方に設けられ、前記スライダが移動可能に係合するガイドと、
からなり、
前記ガイドは、前記レリーズ部材を回転させることにより、前記フックを前記突部に当接/離反させ、
更に、前記レリーズ部材を一定速度で回転させた場合、前記突部に当接している前記フックを前記突部から離反させる時の前記フックの速度は、前記突部から離反した後の前記フックの速度より低くなるように設定されていることを特徴とするシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−43485(P2008−43485A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−220924(P2006−220924)
【出願日】平成18年8月14日(2006.8.14)
【出願人】(590001164)シロキ工業株式会社 (610)
【Fターム(参考)】