説明

シート

【課題】着座によるストレスを軽減するシートを提供する。
【解決手段】シートクッションS1とシートバックS2を備えた車両用シートSは、クッションパッド10の車体フロア側に配設された複数のエアセル22と、エアセル22と管体を介して連結されたポンプと、ポンプの駆動を制御する制御装置と、各々のエアセル22の着座面側の面に配設された静電容量センサーと、を備えており、エアセル22の各々に設けられた静電容量センサーからの出力信号に基づいて着座状態の乗員の体格を判断し、ポンプを駆動制御して、エアセル22の空気を出し入れすることにより、体格に応じたシート形状,シート硬さを調節する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシートに係り、特にエアクッションを備えた車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特に乗用車においてはシートにエアクッションを埋設することによって乗り心地を向上させることが試みられている。例えば、シートの内部にエアバッグを埋設設定し、エアバッグ内の空気圧を制御装置により制御することが考えられている。すなわち、このシートに座る者のフィーリングあるいは体圧分布を調節するようにしている。
【0003】
ここで、体圧分布とは、シートに腰掛けた際における身体−シート間の接触圧力の分布をいう。体圧分布はシートの快,不快に重要な影響を及ぼす要素であることが知られている。多くのシートについて体圧分布が測定され、シートの快,不快と体圧分布の間には明瞭な相関が見られることが確認されている。
【0004】
快適なシートでは、クッションは座骨結節を中心として圧力がかかるのに対し、不快なシートでは、大腿部、尻の両端などの圧力が高くなっている。また、快適なシートは、不快なシートに比較し圧力の中心点と周辺部分間との体圧の圧力勾配が小さく、低い山の等高線のような緩やかなカーブを描いている。
しかし、これらのシートにおいても、長時間のドライブにおける乗員のフィーリングは充分改善されず、長時間座っていることによる疲労感の蓄積を充分に防止できない。
【0005】
このような問題を解消するために、クッション材中に配設された複数のエア袋に空気を出し入れすることにより、着座時の体圧分布の各部位を変化可能とすることにより長時間生理的な姿勢変化をさせずに運転をした場合であっても疲労感の蓄積、特に尻しびれを生じない着座姿勢保持可能な車両用シートが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平11−342776号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特開平11−342776号公報に開示された技術は、主に着座部領域に配置したエア袋によって乗員の尻しびれを解消することを目的としたものであり、乗員が感じる尻部以外の疲労については考慮されていない。そのため、背部などの尻部以外の部位に蓄積した疲労感を軽減することができないという不都合があった。
また、長時間の着座によって身体的な疲労のみならず心理的な疲労(ストレス)も蓄積することが知られているが、ストレスの軽減についてまでは考慮されていないという不都合があった。
【0008】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、長時間に渡り快適な着座感を実現することによって着座による身体的及び心理的な疲労を軽減する効果が得られるシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、請求項1に係るシートによれば、クッション体に表皮を被覆してなるシートにおいて、前記クッション体の前記表皮と逆側に配設された複数の流体保持袋と、前記複数の流体保持袋と管体を介して連結されたポンプと、前記ポンプの駆動を制御する制御部と、前記制御部に接続された複数の検出部と、を備え、前記検出部のうち少なくとも一種類は前記複数の流体保持袋の各々に設けられ、前記複数の流体保持袋の各々に設けられた前記検出部からの出力信号に基づいて着座状態の乗員の体格を判断し、前記ポンプを駆動制御して、前記複数の流体保持袋の流体を出し入れすることにより、体格に応じたシート形状とすることにより解決される。
このように、複数の流体保持袋の各々に設けられた検出部からの出力信号に基づいて着座状態の乗員の体格を判断して、複数の流体保持袋の流体を出し入れし、体格に応じたシート形状,シート硬さに調節することで好適な体圧の圧力勾配を有するシートを提供することができる。
【0010】
具体的には、前記複数の流体保持袋の各々に設けられた前記検出部をフィルム状に形成された静電容量センサーとすると、測定精度が向上してさらに好適な圧力勾配を有するシートを提供することができる。
【0011】
より具体的には、前記シートは、温度と湿度のうち少なくともいずれか一方を調節する空気調節部を備え、前記空気調節部によって調節された空気は前記シートの内部、且つ前記複数の流体保持袋の前記表皮とは反対側から流体保持袋側へ向けて送出され、前記複数の流体保持袋は所定の間隔を有して配設されると好適である。
このように、空気調節部によって調節された空気は複数の流体保持袋よりもシートの内部側に導出され、所定の間隔を有して配設された流体保持袋側へ向かって送出されることで、温度,湿度が調節された空気を流体保持袋の間から着座面側へ導出させることができるシートを提供することができる。
【0012】
また、前記シートは、温度を調節する流体調節部を備え、前記流体調節部によって調節された流体を前記流体保持袋内に循環させてもよい。
このように、流体調節部によって温度調節された流体を流体保持袋内に循環させて流体保持袋の温度を調節することで、着座面の温度を制御できるシートを提供することができる。
【0013】
さらに具体的には、前記シートはシートクッションと、シートバックと、ヘッドレストと、リクライニング装置と、シートスライド装置と、シート高さ調節装置と、ヘッドレスト高さ調節装置と、シート駆動制御機構と、を備え、前記シート駆動制御機構は、前記リクライニング装置を駆動制御するリクライニング駆動装置と、前記シートスライド装置を駆動制御するシートスライド駆動装置と、前記シート高さ調節装置を駆動制御するシート高さ駆動装置と、前記ヘッドレスト高さ調節装置を駆動制御するヘッドレスト高さ駆動装置と、からなり、前記制御部は前記シート駆動制御機構に接続され、前記リクライニング駆動装置と、前記シートスライド駆動装置と、前記シート高さ駆動装置と、前記ヘッドレスト高さ駆動装置と、を駆動制御して、体格に応じたシート形状とすると好適である。
このように、リクライニング,シートスライド,シート高さ,ヘッドレスト高さを駆動制御して、体格に応じたシート形状とすることでより好適な体圧の圧力勾配を有するシートを提供することができる。
【0014】
また、前記シート形状は、路面状況、走行状況、着座状況の少なくとも1つの状況に応じて、前記シート駆動制御機構を制御させて行うとより好適である。
このように、シート形状を路面状況、走行状況、着座状況と連動して駆動制御することにより、状況に応じて適切な体圧の圧力勾配を有するシートを提供することができる。
【0015】
前記シートは発光手段を備え、前記クッション体と前記表皮と前記流体保持袋は透光性を有し、前記発光手段は前記シートクッションの尻部領域と前記シートバックの背部領域に配設され、前記流体保持袋の前記表皮とは逆側に配設されると好適である。
【0016】
このように、シートクッションとシートバックの着座領域において、発光手段が透光性を有した流体保持袋の車体フロア側に配設されることで、シートクッションとシートバックの受圧面の広い面積を面状に発光させることができるため、発光機能と良好な着座フィーリングを両立させた車両用シートを提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のシートは、シートバック及びシートクッションの着座面に、各々に検出部が取り付けられた複数の流体保持袋を設けてなるものであり、検出部などからの出力信号に基づいてシート形状,シート硬さを調節することで身体的及び心理的な疲労を軽減する効果が得られるシートを提供することができる。
また、温度や湿度を調節された空気を流体保持袋の間から着座面側に導出し、もしくは温度を調節された流体を複数の流体保持袋内に循環することにより長時間に渡り湿気を抑え且つ快適な温度に保つことにより、身体的及び心理的な疲労を軽減する効果を有するシートを提供することができる。
さらに、着座面及び背面の広い面積に発光手段を設け、発光の色調やタイミングを調節することによって心理的な疲労を軽減する効果を有するシートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明について、図を参照して説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることはもちろんである。
【0019】
(第1実施形態)
図1乃至図6は本発明の第1実施形態係る実施の形態を示し、図1は車両用シートの概略斜視図、図2は車両用シートのI−I概略断面説明図、図3は発光領域の断面説明図、図4は発光領域Lの色調が時間T1毎に変化する制御フロー図、図5は発光領域Lの光が移動する制御フロー図、図6は発光領域Lの色調が車体情報によって変化する制御フロー図である。
【0020】
本実施形態に係る車両用シートSは、図1で示すように、シートクッションS1、シートバックS2、ヘッドレストS3より構成されており、シートクッションS1とシートバックS2の着座領域の一部に発光により色調を変化させることが可能な発光領域Lが形成されている。
発光領域Lについて、本実施形態においてはシートクッションS1とシートバックS2のそれぞれに形成されるが互いに同様の機構を有しているため、以下の説明では便宜上シートクッションS1を例にして説明する。
【0021】
図2はシートクッションS1のI−I断面の概略を示したものである。
車両用シートSを構成するシートクッションS1においては、座面中央部の発光領域Lと、土手面や座面前側などの発光しない領域とはその構造が異なる。
まず、発光しない領域では、クッション体としてのクッションパッド10と、クッションパッド10を載置するフレームとしてのシートクッションフレーム13と、着座面側(着座領域)を被覆して好適な外観を得るための表皮16を備えており、また、シートクッションS1の側面には側面部分を被覆する側面カバー15を有している。
【0022】
また、発光領域Lにおいては、透光性クッション体としての透光性クッションパッド11と、着座面側(着座領域)を被覆して好適な外観を得ると共に発光手段からの光を透過する透光性表皮16aを備えており、発光手段として面状のLED(発光ダイオード)ユニットUを有している。また、LEDユニットUはシートクッションフレーム13に載置されている。
【0023】
ここで、着座領域とはシートクッションS1、シートバックS2の乗員が着座する面全体を意味するものとする。同様に、受圧領域とはシートクッションS1、シートバックS2、ヘッドレストS3において乗員の着座により押圧される領域、受圧面とは着座面を含む乗員の着座によって押圧される面、尻部領域とは乗員の尻部によって押圧されるシートクッションS1の領域、背部領域とは乗員の背部により押圧されるシートバックS2の領域を指すものとする。
【0024】
シートクッションフレーム13は剛性を有する金属もしくは硬質の樹脂によって形成されており、クッションパッド10又は透光性クッションパッド11を底部から支持する不図示のパンフレームと、支持台となる脚部とから構成されている。脚部には不図示のインナレールを取り付けることができる構成とし、車体フロア側に設置されるアウタレールとから前後に位置調節可能なスライド式に組み立てることができる。
【0025】
クッションパッド10は発泡ウレタン素材などの弾性を有する軟質発泡樹脂によって形成されたクッション体であり透光性を有しないことから、車両用シートSの発光しない領域に配設される。
透光性クッションパッド11は、発光領域Lに配設されるシート状繊維構造体から構成されたクッション体である。透光性と、発泡ウレタン製のクッションパッド10と同等程度のクッション性能を有している。また、このシート状繊維構造体から構成した透光性クッションパッド11は20乃至40mm程度の厚さを有して形成されている。透光性クッションパッド11が有するクッション性によってシートクッションS1内にLEDユニットUが配設された構造であるにも拘わらず良好な着座フィーリングを実現することができる。
シート状繊維構造体については後述する。
【0026】
表皮16は、複数枚の表皮材を縫製して形成されており、シートクッションフレーム13やクッションパッド10、透光性クッションパッド11を被覆して好適な外観とデザインを得るものであり、本実施形態においては表皮16として透光性表皮16aを用いている。
透光性表皮16aは発光領域Lに該当する部分に用いられる表皮であり、ポリエステルなどの可視光線を透光する素材から構成されている。
【0027】
本実施形態の発光手段としてのLEDユニットUは、制御手段としての制御装置(不図示)とともに発光機構を構成している。LEDユニットUは前記のように透光性クッションパッド11とシートクッションフレーム13の間に設けられており、制御装置はシートクッションS1の下面側に取り付けられている。
【0028】
LEDユニットUの配置と構成について説明する。
図3はシートクッションS1の発光領域Lの断面説明図を示しており、着座面側から、透光性表皮16a、透光性クッションパッド11、LEDユニットU、シートクッションフレーム13の順番に配設されるように構成されている。なお、本実施形態におけるシートクッションS1ではLEDユニットUは着座部中央部に位置する尻部に配置されているが、側面部分を含む着座部全体にLEDユニットUを配設してシート着座面全体に発光領域Lを形成してもよい。この場合、LEDユニットUの上面に配設されるクッション体や表皮は透光性を有するものとする必要がある。もちろん、シートバックS2においても任意に発光領域Lを形成することができる。
【0029】
なお、透光性クッションパッド11は、上記のシート状繊維構造体以外にもクッション性を有する他の透光性素材に置換して構成することもできる。他の透光性素材としては、例えばポリエステル、ポリアミド系合成繊維、アクリル、PET(ポリエチレンテレフタレート)などの透明もしくは半透明の樹脂(透光性を有する樹脂)から形成された中空エアクッションが考えられる。透明度の高い樹脂で中空エアクッションを作製した場合には、透光性クッションパッド11よりも明瞭な発光性能を得ることができる。
【0030】
また、クッションパッド10を用いずにシートクッションS1とシートバックS2のクッション体を透光性クッションパッド11で一体として形成してもよく、逆にクッションパッドを一体に形成し、LEDユニットUの上部のみに透光性クッションパッドを配設する構成としてもよい。
【0031】
次いで、LEDユニットUの構成について説明する。
本実施形態においては、LEDユニットUは4つに分割されており、シートクッションフレーム13とシートバックフレーム(不図示)にそれぞれ2組ずつ固定されて配設されるが、クッションパッド10上に載置される構成とすることもできる。この場合、クッションパッド10の撓みに伴ってLEDユニットU自体がある程度移動する構造とすることができる。
【0032】
また、LEDユニットUをいくつかのブロックに分割して、これら複数のブロックを並べて1つのLEDユニットUを形成する構造として各ブロック間をケーブルなどの可撓性を有する材料で連結することにより、LEDユニットU自体にある程度の可撓性を持たせた構造とすることができる。LEDユニットUがクッション体上に載置される構成の場合はクッション性を高めることができる。また、平面状に形成したLEDユニットUの形状を車両用シートSの着座面側の形状に合わせた凹凸を有する形状として構成することによって、着座フィーリングをさらに向上させることができる。
【0033】
発光手段としてのLEDユニットUは、基板上に発光体としての発光素子(LED素子)を多数配設した光源としてのLEDモジュール3と、LEDモジュール3を載置する箱体である保持体としてのケース4と、LEDモジュール3を保護する保護体としての透明カバー5から構成されており、LED素子を多数配設したLEDモジュール3の発光面が着座面側に向けて配置されている。
【0034】
LEDモジュール3は、発光素子としてのLED素子を基板上に多数並べるように取り付けて構成されており、LED(発光ダイオード)素子を用いたことで従来の発光体を用いた光源と比べて長寿命、高輝度、軽量且つ小型(薄肉)な光源ユニット(LEDユニット)を形成することができる。また、発光色の異なる複数種類のLED素子を組み合わせて構成されているため様々なバリエーションの発光色を表現できる。本実施形態においては、光の三原色であるR(赤色),G(緑色),B(青色)の3種類の発光色を有するLED素子を基盤上に交互に順番に多数配設してLEDモジュール3を構成しており全ての色調が表現可能である。
本実施形態においては複数のLEDモジュール3がケース4に並べて配置されており、また、LED素子としてセグメントタイプのLEDや砲弾タイプのLEDを用いることができる。
【0035】
もちろん、単色もしくは3原色(R,G,B)以外の発光色を有するLED素子からLEDモジュール3を構成してもよく、車両用シートSの発光・発色のほかに文字や模様を表現することも可能である。
また、LEDモジュール3に取り付けられるLED素子の密度をさらに高く形成してLEDユニットUを構成すれば、より精密なイメージの表現が可能となり映像などを映し出すことができる。
【0036】
なお、本実施形態においては発光素子としてLED素子を用いているが、EL(エレクトロルミネッセンス)や電界発光ファイバーなどの他の発光素子からなる光源を用いて構成することもできる。さらに、光散乱ポリマー導光体を用いて白熱灯やLEDなどの点光源からの光を散乱させ均一化することで面光源を得る構成としてもよい。もちろん、光散乱ポリマー導光体をケース内に傾斜して配設し側面方向から電界発光ファイバー、光ファイバー、LED、EL、もしくは小型蛍光灯などからの光を照射することで薄型化、軽量化を図ったLEDユニットUに替わる発光ユニットを構成してもよい。
【0037】
透明カバー5は、LEDモジュール3の着座面側に取り付けられる部材であり、アクリル、ポリカーボネートなど透明な樹脂から形成されている。乗員の着座など通常の使用に耐えうる十分な強度を有して構成されている。
ケース4は、LEDモジュール3を載置する保持体であり軽量のためアルミニウム合金から形成されているが樹脂もしくは軟鉄などの形成品であってもよい。
【0038】
次に発光機構の制御装置について説明する。
LEDユニットUは制御装置に接続されている。制御装置には点灯や点滅、発色などを操作する操作スイッチや制御回路などが設けられてシートクッションS1の下面に配設され、シートクッションS1、シートバックS2もしくはヘッドレストS3に設けられた各LEDユニットUに接続する分岐コードが引き回されている。また、制御装置を介して車両側の電源に接続されている。
【0039】
制御装置により、車両のイグニッションキーのスイッチに接続してイグニッションのタイミングに合わせてLEDユニットUの点灯や、車両のワイヤレスキーやドア開閉の信号の検出により点灯を制御することができる。
具体的には、ワイヤレスキーを持った乗員が近づくと発光領域Lの色調が青、赤、黄色と徐々に変色する。また、乗員がイグニッションキーのスイッチを入れると車両用シートSの上部から下部へ光が移動するように点灯したり変色や点滅したりするように構成することができる。
【0040】
ワイヤレスキーを持った乗員が近づくと発光領域Lの色調が青、赤、黄色と徐々に変色する場合の制御フロー図を図4に示す。
まず、ステップS1でワイヤレスキーからの電波を検出するとドアのロックが開錠されるが、このとき同時にタイマーがONにされる(ステップS2:YES)、T1経過毎に徐々にR,G,Bの割合を変化させて青、赤、黄色、再び青へと色調を変化させる公知の制御方法により車両用シートSの発光色を変色させる(ステップS3)、終了条件であるドアOPENもしくは一定時間(30秒)が経過するまでステップS3を継続する(ステップS4)。なお、本実施形態においてT1は0.1秒と設定している。
【0041】
また、図5に乗員がイグニッションキーのスイッチを入れると車両用シートSの上部から下部へ光が移動するように点灯する場合の制御フロー図を示す。
ステップS1でイグニッションキーの操作を検知すると、タイマーがONにされる(ステップS2:YES)、T2経過毎に発光箇所を変化させる公知の制御方法により車両用シートSの発光部分を上方から下方へ徐々に変化させる(ステップS3)、終了条件である最下方まで点灯すると全てのLEDが消灯する(ステップS4:YES)。なお、本実施形態においてT2は0.1秒と設定している。
【0042】
さらに、着座領域に形成された発光領域Lの色調の変化として、シートの着座領域の荷重状況、シート周囲の温度と湿度の少なくとも一方の状況を検出して、発光手段を制御させて行なうことができる。
具体的には、乗員の着座により負荷されるその部分の圧力を、透光性クッションパッド11上に配設した複数の感圧センサーによって検知して、感圧センサーが配設された場所に対応する部分のLED素子の色調を検出された圧力値によって変化させる。
なお、この感圧センサーは後述するエアセル22上に配設されたフィルム状センサー28,29で代用することができる。
【0043】
この場合の制御フローを図6に示す。ステップS1で感圧センサー負荷圧力値を制御装置に読み込んで、ステップS2にて予め記憶させた感圧センサーの取り付け位置情報を参照する。次いで、圧力値が高い部分を赤色、低い部分を青色として色調を表現し、感圧センサーの取り付けられていない部分を周囲の感圧センサーからの検出値から推定する公知の算出方法を用いることでシートの色調を算出し(ステップS3)、シート色調としてLEDモジュールに出力する(ステップS4)ことで着座領域の荷重状況に応じて色調を徐々に変化させている。
【0044】
また、シート周囲の温度と湿度を検出して、それらの検出結果に基づいて車両用シートSの色調を変化させる場合は、車両用シートSの表皮の下側に取り付けた温度計と湿度計から温度と湿度を検出して、それらの値から体感温度を算出し、体感温度と車両用シートSの色調を連動させる。制御フローとしては図6と同様の処理の流れとなる。
【0045】
上記以外にも、車外の光量を測定する光センサーやカーオーディオ、カーナビゲーションシステム、ETC、着座センサー(感圧センサー)、携帯電話、車速計、タコメータ、ターボ圧力計、車間センサー、燃料計などと連結して点灯や発色を連動させてもよい。もちろん、制御装置に取り付けたスイッチにより乗員が点灯や発色を、気候や気分により直接選択することもできる。
【0046】
ここで、前記した透光性クッションパッド11に用いるシート状繊維構造体について以下に説明する。
シート状繊維構造体は、熱接着性複合短繊維同士が交差した状態で熱融着された固着点と、前記熱接着性複合短繊維よりも高い融点を有する非弾性捲縮短繊維と前記熱接着性複合短繊維とが交差した状態で熱融着された固着点と、が散在し分布してなると共に、単位体積当りにおいて厚さ方向に沿うように配列されている短繊維の本数をA、厚さ方向に対して垂直な方向に沿うように配列されている短繊維の本数をBとしたときに、A≧3B/2の関係を満足するものである。
【0047】
また、所定形状のキャビティを有すると共に型面に蒸気孔が形成された成形型内に、この複数のシート状繊維構造体を厚さ方向に積層して圧縮した状態で配置して成形型に対して大気圧よりも高い気圧下において蒸気を吹きつけることによってクッション体を形成できる。
【0048】
特に、厚さ方向に沿う繊維の数が、厚さ方向と垂直な方向に沿う繊維の数よりも3/2以上多く形成されたシート状繊維構造体を、厚さ方向に積層して、成形型内で高圧スチーム成形することによって、クッション体が形成されている。また、シート状繊維構造体としてポリエステル繊維を積層させることにより作製すると透光性を有するクッション体とすることができる。このクッション体にて透光性クッションパッド11が構成される。
【0049】
シート状繊維構造体は、密度分布が0.015〜0.20g/cmの範囲であると好適である。また、熱接着性複合短繊維は、少なくとも融点が120℃以上とするとよい。
さらに、シート状繊維構造体から構成したクッション体は3次元的な凹凸形状に形成することができる。また、繊維の長さ方向が主として荷重方向に向いているので、クッション体は、通気性はもちろんのこと、応力方向に対して適当な硬さを有し、応力を分散することが容易である。さらに耐久性に優れたものとなる。したがって、乗員が着座した場合に快適な着座感を長時間保持することができる。
【0050】
また、クッション体にへたりが生じた場合であっても、前記熱接着性複合短繊維及び前記非弾性捲縮短繊維のガラス転移点よりも高くかつ前記熱接着性複合短繊維の融点よりも低い温度の蒸気を吹き付けることによってへたりを回復させることができる。
【0051】
本実施形態においてはシートクッションS1とシートバックS2にLEDユニットUが配設された構成としたがヘッドレストS3にLEDユニットUを配設した構成としてもよい。また、スピーカ18から出力されたカーオーディオからの音とLEDユニットUの発光色、色調、模様とを連動させることにより音に連動した視覚からの刺激も乗員に与えることができる。このとき、スピーカ18はヘッドレストS3に取り付けるとより好適である。
また、表皮の縫い合わせ部分の玉縁部や着座領域に配設された電界発光ファイバーを用いた発光手段と組み合わせて用いてもよい。
【0052】
ここで、ヘッドレストS3に設けるスピーカ18と共に、ヘッドレストS3付近に設けられた騒音を検出するマイクと、騒音をキャンセルするキャンセル音を出力する制御部と、キャンセル音を出力するスピーカとからノイズキャンセル機能を有するノイズキャンセリング機構を設けるとより好適である。ヘッドレストS3にノイズキャンセリングスピーカを設けることにより乗員が感じる騒音を低減することができると共に、より良質な音質を提供することができる。
【0053】
本発明の車両用シートSはシートクッションS1及びシートバックS2、もしくはヘッドレストS3の受圧面にLEDユニットUを配設したものであり、着座面及び背面の広い面積を発光させることができるため従来にない装飾効果が得られる車両用シートを提供することができる。
【0054】
透光性表皮16aと透光性クッションパッド11の下にLEDユニットUを設けることで着座面及び背面(着座領域)の高輝度且つ均一な発光と、良好な着座フィーリングを両立させた車両用シートを提供することができる。
さらに、発光体としてLEDを使用することで長寿命、軽量であり、且つ省スペースでLEDユニットUを形成することができることから発光機能と着座フィーリングを高いレベルで両立させた車両用シートを構成することができる。
【0055】
また、シートクッションS1及びシートバックS2の着座領域に設けられたLEDユニットUを、光の3原色(R,G,B)の発光色を有する多数のLED素子から構成することで様々な色調や模様を表現することができ、従来にない装飾効果が得られる車両用シートを提供することができる。
【0056】
(第2実施形態)
図7乃至図14は本発明の第2実施形態係る実施の形態を示し、図7はエアセルの斜視説明図、図8は発光領域の断面説明図、図9は車両用シートでのエアセルの配置説明図、図10はシステム構成図の一例、図11はシート形状が乗員の体格によって変化する制御フロー図、図12はシート形状が時間によって変化する制御フロー図、図13はシート形状が道路情報によって変化する制御フロー図、図14は温湿調節機構を取り付けたシートクッションの断面概略説明図である。
【0057】
なお、第1の実施形態と同様の構成要素には同一符号を付すると共に、重複する説明は省略する。
本実施形態は、第1の実施形態における車両用シートSに姿勢制御手段としての姿勢制御機構が設けられた構成である。
【0058】
図7乃至図9に基づいて姿勢制御機構について説明する。姿勢制御機構は、シートクッションS1及びシートバックS2に設けられた15個のエアセル22(22a乃至22o)と、不図示の制御装置(制御部)とエアポンプ(ポンプ)とからなるが、空気調節部としての蓄熱器もしくはエアコンディショナー31又は送風機(ブロワ)と一体として構成してもよい。また、各エアセル22(22a乃至22o)と制御装置とポンプの間では検出部としてのセンサーの配線や流体を誘導する管体が取り回されている。
【0059】
図7に示したエアセル22は、透光性と可撓性(柔軟性)を有する素材から中空の略直方体形状に形成されており、内部に流体を出し入れ可能な流体保持袋としての機能を有している。着座面側に配置される面には検出部もしくは測定手段としてのフィルム状センサー28,29がエアセル22の上面に取り付けられている。フィルム状センサー28,29は、エアセル22に貼り付けるフィルム部分がリング状に構成されており良好な感度を有している。また、着座面以外の面にはエアセル22内に流体を流出入させる流体出入口27が取り付けられている。
【0060】
フィルム状センサー28,29としては、静電容量センサーが用いられており、エアセル22の着座面側の面の広い範囲に渡って静電容量センサーのリング部分が取り付けられている。リング部分の面積が大きなことから、この静電容量センサーは良好な感度を有している。
ただし、フィルム状センサー28,29は、感圧センサー,温度センサー,変位センサーなどで構成することもできる。また、エアセル22には複数種類のセンサーを複合して取り付けてもよい。
【0061】
また、エアセル22は内部の空気圧を変化させることにより個々の厚さ(形状)と硬さを変化させることが可能に構成されており、複数のエアセル22を所定の間隔を有して着座面側に並べて配置した分割セル構造とすることでクッション体(エアクッション)としての機能も合わせ有している。エアセル22の形状は箱型以外にも2枚のシートの縁部を貼り合わせて形成した袋状であってもよい。この場合、エアセル22内の空気を抜いた状態では薄く平らな形状になるため着座面の形状を変更するためのエアセル22として好適である。エアセル22の形状を変化させることでシートの着座面側の形状を変化させている。
【0062】
エアセル22に流出入させる流体23として本実施形態においては空気を使用しているが、空気以外には、水、シリコンオイル、ゲル状物質、窒素ガス、ヘリウムガスなどを使用することができる。
また、透光性を有する素材としては、例えばポリエチレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、フッ素樹脂などの透明もしくは半透明の樹脂が考えられる。なお、本実施形態における土手部などの発光領域L以外の位置に配設されるエアセル22(22k,22l,22m、22n,22o:図9参照)については透光性を有する必要は無いため透光性を有さない素材から成形してもよい。いずれの素材から形成した場合であってもエアセル22は機械的性質として内部の圧力に応じて変形する柔軟性を有して構成されるものとする。
【0063】
図8は、シートクッションS1の発光領域Lに配設されるエアセル22(22g乃至22j)の横断面(図1のI−I断面)での配設位置を示しており、透光性クッションパッド11とLEDユニットUの間の位置にエアセル22が配設される。シートバックS2の発光領域Lに配設されるエアセル22(22a乃至22f)の配設位置も同様に透光性クッションパッド11とLEDユニットUの間の位置に配設される。
【0064】
また、土手面などの発光領域L以外の着座領域に配設されるエアセル22(22k乃至22o)もクッションパッド10の下側に配置される。
但し、エアセル22の配設場所は上記に限られず、例えば、クッションパッド10や透光性クッションパッド11の上側(着座面側)であってもよい。
【0065】
また、図9にはエアセル22の車両用シートSの着座領域での配設位置を示している。本実施形態では15個のエアセル22(22a乃至22o)が配置されている。
シートクッションS1においては、尻部領域にエアセル22g,22h,22i,22jの4つが配設されており、左右の土手面にはエアセル22m,22nが配設されている。
【0066】
このうち、尻部領域のエアセル22g,22h,22i,22jはシートクッションS1の厚さ方向に薄い直方体状もしくは略矩形の袋状に成形されており、土手面に配設されるエアセル22m,22nは土手面に沿って埋設されるように縦長の直方体状または棒状に成形されている。
【0067】
シートバックS2においては、計9個のエアセル(22a乃至22f、22k,22l,22o)が配設された構成となっている。すなわち、背部の受圧面に6つ(22a,22b,22c,22d,22e,22f)、土手面に2つ(22k,22l)、背部の上部に1つ(22o)、の計9個である。
【0068】
このうち、シートバックS2の受圧部に配設されるエアセル22a,22b,22c,22d,22e,22fは、尻部のエアセル22g,22h,22i,22jと同様にシートバックS2の厚さ方向に薄い略直方体状もしくは略矩形の袋状に成形されており、土手面に配設されるエアセル22k,22lもシートクッションS1の場合と同様に土手面に沿って埋設されるように縦長の直方体状または棒状に成形されている。また、背部上部に配設されるエアセル22oはシートバックS2の幅方向に長い形状に成形されている。
【0069】
もちろん、エアセル22の配置と数、形状は上記に限られるものではなく適宜変更できるものとする。特に発光領域Lはさらに多数のエアセルから構成される構造にしてもよい。また、着座領域の全体に渡って同一形状のエアセルを並べて配設する構成としてもよく、この場合、シートクッションS1、シートバックS2とも10乃至20個のエアセルが配設される構成となる。
【0070】
次に制御装置でのシート形状を変更する制御について説明する。制御装置はフィルム状センサー28,29や温湿度計などの測定手段によるセンサー情報や、カーナビゲーションやイグニッション装置,速度計などに接続した機器から検出した車体情報や、乗員の選択した設定値に基づいてシート形状を変更することができる。以下にシート形状を変更する制御についての具体例をいくつか説明する。
【0071】
制御によってシート形状を変更する具体例の1番目として、シート形状が乗員の体格によって変化する場合を説明する。制御手段としての制御装置はエアセル22(22a乃至22o)に取り付けられたフィルム状センサー28,29から検出された情報に基づいて着座している乗員の体格を算出することができる。フィルム状センサー28,29は全てのエアセル22に取り付けられている。また、15個のエアセル22はそれぞれの空気圧を独立して調節することができるように構成されている。
【0072】
図10に車両用シートSのシステム構成図の一例を示す。なお、図10中に示した発光機構やシート形状制御機構,リザーバータンク44などの部材を使用しない構成とする場合には適宜取り外すことができる。もちろん、エアコンディショナー31を蓄熱器と湿度調節装置に交換するなどの変更も随時行えるものとする。
【0073】
算出された体格情報に基づいて制御装置に連結された不図示のエアポンプを駆動制御することにより各エアセル22a乃至22oの空気圧を変更して車両用シートSの着座領域の形状やシートの硬さ(面圧)を調節することができる。
シート形状が乗員の体格によって変化する場合の具体的な処理の流れを図11に従って説明する。ステップS1でフィルム状センサー28,29からの情報を検出し、ステップS2で体格を判断する。ステップS2ではフィルム状センサー28,29の取り付け位置と測定値から乗員の体格を判断する。次に、判断された体格情報に基づいてその体格に好適なシート形状を算出し、その形状に適した各エアセル22の内圧値の算出することで体格に応じたシート形状を出力する(ステップS3)、出力された結果に基づいて各エアセル22の圧力を調節することで好適なシート形状に変更する(ステップS4)。
【0074】
ここで、各エアセル22の圧力調節は、制御回路としての圧力コントローラーにて個々のエアセル22の内圧を検知し、内部流体量を調節することにより個々のエアセルの圧力を独立してコントロールしている。内部流体量の調節は、ポンプ(エアポンプ)からの流体の流入量をバルブ(電磁バルブ)によって調節することで行う。また、流体として空気以外の物質を用いるときは流体を貯蔵するためのリザーバータンクが付属する。
【0075】
また、フィルム状センサー28,29により判断された乗員の体格を考慮して各エアセル22とエアポンプを駆動制御することで最適なシートポジションへと変化させる制御を構成してもよい。
上記のステップS3(図11参照)において、体格情報と予め記憶させた体格情報を比較して着座した乗員を特定し、予め乗員が設定した任意のシート形状に変更するように構成してもよい。
さらに、シート形状として着座領域の形状だけではなく、シートスライド、リクライニング、ハイト(シート高さ)、ヘッドレスト高さも同時に変更する構成とすることもできる。この場合、リクライニング駆動装置,シートスライド駆動装置,シート高さ駆動装置,ヘッドレスト駆動装置と連結されたシート駆動制御機構を介してこれらのシート形状を制御することができる。
【0076】
シート形状を変更する具体例の2番目として乗降時のサポートについて説明する。乗降時に土手面の高さを低くすることで乗車と降車をサポートし、乗車や降車の完了に伴いシート形状を復帰するという一連の操作を予め設定したプログラムに従い自動で駆動制御させることができる。この場合、ドアロックの開錠から一定時間、乗車用のシート形状を維持し、また、イグニッションキーの操作(エンジン停止)から一定時間、降車用のシート形状に変更する制御としている。
【0077】
シート形状を変更する具体例の3番目として、着座領域に位置するエアセル22の一部の面圧と形状を調節することで、着座による乗員のしびれや疲労の軽減を図る制御について説明する。
処理の流れを図12に示す。ステップS1でエンジンの始動をすると、タイマーがONになる(ステップS2)。そして、ステップS3において定められた時間Tに応じてエアポンプを駆動制御してシート形状が変化する制御が行われる。
【0078】
本実施形態の場合は、以下のシート形状変更サイクルを行っている。まず、タイマーONから5分経過後に座骨結節部分に該当するエアセル22g,22hの空気を排出し、その1分後に再び空気を導入する。最もしびれやすい尻部のしびれを予防するためである。さらに1分後(タイマーONから7分後)に、大腿部に該当するエアセル22i,22jの空気を排出し、その1分後に再び空気を導入する。大腿部は尻部の次にしびれが生じやすいためである。さらに1分後(タイマーONから9分後)に土手面のエアセル22m,22nの空気の排気と1分後の導入を行い、さらに5分経過後(タイマーONから15分後)にタイマーをリセットする。
【0079】
このように、エアセル22の排気と導入の1サイクルが15分となりこれを繰り返すことによって、乗員が一定の姿勢を保っているために起こる尻しびれを、生理的な姿勢変化をさせることなく防止することができる。
さらに、エアポンプの駆動制御によって着座領域の振動や揺動を行うことができ、マッサージや眠気防止を図ることができる。
これらの疲労軽減機能により着座フィーリングの一層の向上を図ることができ、また、後述する温湿調節機構と組み合わせて駆動制御することでさらに疲労軽減効果を高めることができる。
【0080】
シート形状を変更する具体例の4番目として、カーナビゲーションシステムと連動させることによって道路状況に応じてシート面圧や着座領域の形状を変化させることができる。
図13にこのときの処理の流れを示す。図13に基づいて処理の流れを説明すると、まず、カーナビゲーションシステムから道路情報を検出し(ステップS1)、次に、道路状況に応じたシート形状を記憶手段としてのデータベースから選択(ステップS2)する。そして、シート形状を変更して(ステップS3)フローが終了する。
【0081】
データベースに設定値として入力されたシート形状の具体例として、山道では土手面に配置されたエアセル22k,22l,22m,22nと、シートバックS2上部のエアセル22oを膨張させて土手面とシートバック上部の高さを高くするシート形状としている。この形状によりホールド感を向上させて山道に適した運転姿勢とすることができる。
また、高速走行時にはシートクッションS1の尻部と大腿部、及びシートバックS2上部のエアクッション22(22g,22h,22i,22j,22o)の高さを低くしている。このシート形状にすることにより着座位置を下げて安定感を向上させると共に、高速走行に適した運転姿勢にすることができる。
【0082】
発光機構は姿勢制御機構の作動状況に合わせて色調を変化(発光と彩色)させることができる。例えば、駆動制御中のエアセル22の下方側に配置されたLEDユニットUを発光・変色させることでエアセル22の作動を目立たせる装飾を施し、その際、リズムに合わせて点滅や色調の変化を行うことによりエアセル22の作動にスピード感や安心感を与える心理的効果を高めることができる。
また、高さを高くした部分の彩色として原色系などの明度の高い色にする一方、高さを低くした部分の彩色に目立ちにくい淡色系や明度の低い色を選択することで実際の高さ変化よりも大きな変化があるように乗員に感じさせることができ、ホールド感や安心感を与える心理的効果を高めることができる。
特に、安心感や落ち着き感のある色調とすることで心理的な疲労を軽減する効果を期待することができる。
【0083】
また、発光領域L(図1参照)に配置された各エアセル22の形状に合わせてLEDユニットUを分割することでエアセル22(22a乃至22j)とLEDユニットUを一体として形成した10個の一体型ユニットとして構成してもよい。この場合、一体型ユニットをまず組み立てた後に車両用シートSの組み立てを行うことから、シート組み立て時の部材数を削減することができるため取り付けが容易となり、取り付け位置の精度も向上するという利点がある。
【0084】
本実施形態には、温湿調節機構をさらに取り付けることができる。
以下に温湿調節機構について説明する。図14に、温湿調節機構を取り付けたシートクッションS1の断面概略説明図を示す。
温湿調節機構は、温度及び湿度などの空気調節手段(空気調節部)としてのエアコンディショナー31と制御装置から構成されているが、姿勢制御機構と一体として構成してもよい。エアコンディショナー31は湿度調節機能を有しておりシートクッションS1の下部の車両側に取り付けられる。
【0085】
エアコンディショナー31で温度湿度を調節された空気は、ダクト34を介してLEDユニットUとエアセル22の間に誘導され、透光性クッションパッド11,透光性表皮16aを通過する空気通路35に従い流動し着座面側に放出される。なお、LEDユニットUを構成するケース4、LEDモジュール3,透明カバー5ともに通気性を確保するための穴部を形成し、調節された空気がLEDユニットUを通過してエアセル22の裏側に誘導されるように構成することもできる。
シートバックS2においても同様の構成となっており、ダクト34を介して調節された空気がシートバックS2内にも誘導される。もちろん、発光領域L以外の領域においても着座面側に調節された空気が放出される構成となっている。
【0086】
このとき、シートクッションS1とシートバックS2の受圧部分の透光性クッションパッド11内に測定手段(検出部)としての温度センサー32を取り付けると好適である。
温度センサー32の取り付け位置は上記に限定されずシート内の任意の位置に取り付けることができる。また、エアコンディショナー31又は蓄熱器をシートクッションS1のシートクッションフレーム13上に取り付けてダクト34を介さずにシート内部に調節された空気を誘導する構成としてもよく、さらに、エアコンディショナー31の代わりに蓄熱器と湿度調節装置で構成することもできる。
【0087】
温湿調節機構の制御手段としての制御装置は、透光性クッションパッド11内に取り付けられた温度センサー32からのシート内の温度情報と、車内の温度,湿度や設定温度,湿度に基づいて車両用シートS内に供給する空気の適切な温度,湿度を決定する機構であり、エアコンディショナー31と接続されている。
【0088】
エアコンディショナー31をシートクッションS1の下方の車体側に取り付けられた場合でも、ダクト34を介してシートクッションS1及びシートバックS2内に温度と湿度が調節された空気を供給する構成としてもよい。この場合、ダクト34は可撓性を有する構成とされ、エアセル22の裏側(着座面と逆側)または、LEDユニットUの裏側に取り回される。ダクト34の任意の位置に形成された出口部から調節された空気がシート内に放出される。エアセル22の裏側に放出された空気はエアセル22の隙間と透光性クッションパッド11又はクッションパッド10と表皮16を通過して車両用シートSの着座面側へ至る。
【0089】
このように構成することで、シートクッションS1やシートバックS2内部のクッション体や表皮の温度調節を行いながら透過して車両用シートSの着座部分から温度調節された空気が着座状態の乗員の尻部と背部に直接放出されるため従来のエアコンディショナー31に比べて高効率且つ迅速に温度調節をすることができる。
【0090】
また、車両用シートSの内側から空気を供給する構成のため尻部や背部領域などの湿気が上がりやすい部位においても湿度を調節して一定に保つことができることから湿気対策としても効果的である。
さらに、エアコンディショナー31のエアポンプを吸気運転にしてダクト34内の圧力を負圧もしくは陰圧に調節することで、着座領域の空気を吸入することができ湿気を吸収することができる。シートクッションS1、シートバックS2の湿度調節や脱臭機能において大きな効果を有している。
【0091】
また、エアコンディショナー31の代わりに蓄熱器と湿度調節装置を使用した場合に、湿度調節装置として、ブロワ(送風機)を使用してもよい。ブロワから送られた空気をエアセル22の裏面から供給することにより、より簡便な方法で湿気を除去して快適な湿度に保つことができる。
【0092】
もちろん、温湿調節機構の作動状況に応じて発光機構の作動と連動させることができる。
具体的には、温湿調節機構のエアコンディショナー31の運転制御において設定温度が車内温度よりも高い場合(暖房時)には暖かさをイメージできるオレンジや赤などの暖色系の発光色として、一方、設定温度が車内温度よりも低い場合(冷房時)には冷たさをイメージできる水色や青色などの寒色系にシートの着座領域を発光させることで心理的な効果を期待することができる。
【0093】
(第3実施形態)
図15は、本発明の第3実施形態係るエアセル46内を流体が循環する構成とした調温モジュール40の一例を示す説明図である。
第2の実施形態においては、温湿調節機構で温度と湿度を調節した空気をシート内部に設けたダクト34から放出する構成としているが、本実施の形態においては、エアセル22内の流体温度を調節する構造としている。
なお、エアセル22に孔を設けて温度と湿度を調節した空気をエアセル22に設けた孔から放出する構成としてもよい。
【0094】
エアセル22内に導入する流体23として空気以外の物質を使用してもよい。この場合、熱容量の大きな液体やヘリウムガス、またはゲル状物質を使用すると好適である。特に、ゲル状物質を使用すると着座フィーリング(フィット感)の向上を図ることができる。
また、エアセル22内の流体出入口27を入口と出口とに分けて温度と圧力を調節した流体23を循環させる構成とすると流体の循環効率と熱伝達効率が良好な温度調節機構を構成することができる。
【0095】
図15にエアセル46内を流体23が循環する構成とした調温モジュールの一例を示す。図15で示した調温モジュール40はエアセル46を12個有して構成されている。また、流体23としてゲル状物質が用いられている。
この調温モジュール40は、車両用シートSのシートクッションS1又はシートバックS2に配設されるものであり、エアセル46と流体調節部としての調温機構42とリザーバータンク44と、調温機構42とエアセル46の間で流体23を輸送する管体とからなる。
【0096】
エアセル46は、エアセル22に形成された流体出入口27を入口側と出口側の2つとした構成であり、流体の循環効率を向上させている。流体23を循環しやすくすることにより流体23の温度調節を容易としている。各々のエアセル46の着座面側の面にはフィルム状センサー28が配設されている。
調温機構42は、エアセル46内の流体23の温度を調節する装置であるが、温調機能以外にも流体23の流量や圧力を調節するバルブと制御回路を備えている。この制御回路は車体側情報とリンクして、エアセル46の形状や硬さ(圧力)制御を個々のエアセル46毎に独立して行うことができる。
【0097】
上述した第1乃至第3の実施形態に係る車両用シートSには、さらに、プリクラッシュ作動機構、アクティブヘッドレスト機構を組み合わせることができる。
プリクラッシュ作動機構とは、前記姿勢制御機構の制御に車体側に取り付けた不図示の衝突センサーからの信号をフィードバック可能に構成した機構であり、衝突センサーから衝突の危険信号が発せられた際にシート座面が振動して乗員に危険を知らせると共に、衝撃を緩和するポジションへと自動的に変化させることができる。
【0098】
また、居眠りにより生じる、ふらつきなどの危険を察知すると座席内のセルが振動して警鐘を発するように構成してもよく、さらに、万が一の衝突を避けられない場合は瞬時にエアセル22が反応し障害を軽減させる着座姿勢へと変化させるように構成するとより好適である。
【0099】
第1実施形態においては発光機構とノイズキャンセル機構を備えた車両用シートSについて、また、第2実施形態,第3実施形態においては発光機構に加えて姿勢制御機構や温湿調節機構などを備えた車両用シートSについて説明したが、以上に述べた各機構は適宜組み合わせて使用することができるものとし、さらに公知のプリクラッシュ作動機構、アクティブヘッドレスト機構との組み合わせもできるものとする。もちろん、発光機構を備えずに、姿勢制御機構又は温湿調節機構のみを備える構成としてもよい。
【0100】
さらに、上述した各機構と既存の機構などを有機的に組み合わせて搭載することで複合的な効果を期待できる。例えば、発光機構と姿勢制御機構とノイズキャンセル機構とカーオーディシステムを組み合わせて用いることにより、高音質な音(聴覚)に合わせて発光(視覚)やシート形状変化(触覚)を行うことができ今までにない効果を期待できる。
【0101】
また、アクセル、ブレーキ、ハンドル、ギアなどの各操作、または、ヘッドライトの点灯や方向指示器、パーキングブレーキの操作、さらにETC、車間距離センサーなどと連動して発光(色調変化)やシート形状変化や振動を行うように構成することができる。乗員の各操作に対してシートが応答するために直感的な操作性を向上させることができ、疲労状態の乗員や高齢者などの一層の誤操作防止を図ることができる。また、操作毎にシートの応答パターンを設定することによりダッシュボード上の表示パネルなどの確認が不要となるため安全性を向上させる効果が期待できる。
【0102】
さらに、乗員の操作と連動したシートの発光(色調変化),形状変化,振動は、今までにない操作感を乗員に与えることができる。特に、シート形状を変化させることで、走行中は2次元的な動きしかできなかった従来のシートに、高さ方向の動きを加えた3次元的な動きとすることができる。
【0103】
なお、本実施形態では、具体例として、自動車のフロントシートのシートクッションS1について説明したが、これに限らず、後部座席のシートクッション及びシートバックについても同様の構成を適用可能であることは勿論である。また、車両用シートに限らずソファーや椅子にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両用シートの概略斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る車両用シートのI−I概略断面説明図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る発光領域の断面説明図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る発光領域の色調が時間T1毎に変化する制御フロー図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る発光領域の光が移動する制御フロー図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る発光領域の色調が車体情報によって変化する制御フロー図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るエアセルの斜視説明図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る発光領域の断面説明図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る車両用シートでのエアセルの配置例を示す説明図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る車両用シートのシステム構成図の一例である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る車両用シートのシート形状が乗員の体格によって変化する制御フロー図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係る車両用シートのシート形状が時間によって変化する制御フロー図である。
【図13】本発明の第2実施形態に係る車両用シートのシート形状が道路情報によって変化する制御フロー図である。
【図14】本発明の第2実施形態に係る温湿調節機構を取り付けたシートクッションの断面概略説明図である。
【図15】本発明の第3実施形態に係るエアセル内を流体が循環する構成とした調温モジュールの一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0105】
S 車両用シート
S1 シートクッション
S2 シートバック
S3 ヘッドレスト
L 発光領域
U LEDユニット
3 LEDモジュール
4 ケース
5 透明カバー
10 クッションパッド
11 透光性クッションパッド
13 シートクッションフレーム
15 側面カバー
16 表皮
16a 透光性表皮
18 スピーカ
22,46 エアセル
23 流体
27 流体出入口
28,29 フィルム状センサー
31 エアコンディショナー
32 温度センサー
34 ダクト
35 空気通路
40 調温モジュール
42 調温機構
44 リザーバータンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クッション体に表皮を被覆してなるシートにおいて、
前記クッション体の前記表皮と逆側に配設された複数の流体保持袋と、
前記複数の流体保持袋と管体を介して連結されたポンプと、
前記ポンプの駆動を制御する制御部と、
前記制御部に接続された複数の検出部と、を備え、
前記検出部のうち少なくとも一種類は前記複数の流体保持袋の各々に設けられ、
前記複数の流体保持袋の各々に設けられた前記検出部からの出力信号に基づいて着座状態の乗員の体格を判断し、
前記ポンプを駆動制御して、前記複数の流体保持袋の空気を出し入れすることにより、体格に応じたシート形状とすることを特徴とするシート。
【請求項2】
前記複数の流体保持袋の各々に設けられた前記検出部は、
フィルム状に形成された静電容量センサーであることを特徴とする請求項1記載のシート。
【請求項3】
前記シートは、温度と湿度のうち少なくともいずれか一方を調節する空気調節部を備え、
前記空気調節部によって調節された空気は前記シートの内部、且つ前記複数の流体保持袋の前記表皮とは反対側から流体保持袋側へ向けて送出され、
前記複数の流体保持袋は所定の間隔を有して配設されることを特徴とするシート請求項1又は2に記載のシート。
【請求項4】
前記シートは、温度を調節する流体調節部を備え、
前記流体調節部によって調節された流体を前記流体保持袋内に循環させることを特徴とする請求項1又は2に記載のシート。
【請求項5】
前記シートはシートクッションと、シートバックと、ヘッドレストと、リクライニング装置と、シートスライド装置と、シート高さ調節装置と、ヘッドレスト高さ調節装置と、シート駆動制御機構と、を備え、
前記シート駆動制御機構は、前記リクライニング装置を駆動制御するリクライニング駆動装置と、前記シートスライド装置を駆動制御するシートスライド駆動装置と、前記シート高さ調節装置を駆動制御するシート高さ駆動装置と、前記ヘッドレスト高さ調節装置を駆動制御するヘッドレスト高さ駆動装置と、からなり、
前記制御部は前記シート駆動制御機構に接続され、
前記リクライニング駆動装置と、前記シートスライド駆動装置と、前記シート高さ駆動装置と、前記ヘッドレスト高さ駆動装置と、を駆動制御して、体格に応じたシート形状とすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシート。
【請求項6】
前記シート形状は、路面状況、走行状況、着座状況の少なくとも1つの状況に応じて、
前記シート駆動制御機構を制御させて行うことを特徴とする請求項5に記載のシート。
【請求項7】
前記シートはシートクッションとシートバックと発光手段を備え、
前記クッション体と前記表皮と前記流体保持袋は透光性を有し、
前記発光手段は前記シートクッションの尻部領域と前記シートバックの背部領域に配設され、前記流体保持袋の前記表皮とは逆側に配設されてなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−119230(P2009−119230A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−337173(P2007−337173)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000220066)テイ・エス テック株式会社 (625)
【Fターム(参考)】