説明

シームレス缶体

【課題】色彩が鮮やかで、モアレ、ロゼッタパターンが無く、連続的階調表現を行うことができる美粧性に優れた印刷インキ層を缶胴部外面に備え、安価なシームレス缶体を提供する。
【解決手段】缶胴部2外面に印刷インキ層4と、印刷インキ層4を被覆する仕上げニス層5とを備える。印刷インキ層4は、35〜70Pa・秒、好ましくは38〜65Pa・秒、さらに好ましくは40〜60Pa・秒の範囲の塑性粘度と、9〜24、好ましくは10〜22、さらに好ましくは10〜20の範囲のタック値とを備える印刷インキを用いると共に、水無し平版と樹脂凸版とを用いるオフセット印刷により形成される。印刷インキ層4は、前記水無し平版による網点が、20〜60μmの範囲の直径を備え、27万個/cm以下の範囲で不均一に配置され、前記樹脂凸版による網点が、30〜70μmの範囲の直径を備え、12万個/cm以下の範囲で不均一に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料等の容器に用いられるシームレス缶体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
飲料等の容器として用いられる金属缶体には、アルミニウム系金属、鋼等の金属板を円筒状に丸めて端縁部同士を重ねて溶接または接着した缶胴部の両端に缶底、缶蓋を巻締めた3ピース缶と、アルミニウム系金属、鋼等の金属板を絞り加工、絞りしごき加工して製造された有底筒状の缶体の開口端部に缶蓋を巻締めた2ピース缶等のシームレス缶体とがある。前記金属缶体では、前記缶胴部外面に、内容物やそのイメージの表示、あるいは品名、原材料名、製造者名等の所要の表示のために、各種印刷が施された印刷インキ層を備えており、該印刷インキ層は仕上げニス層により被覆されて保護されている。
【0003】
前記3ピース缶の場合、平面状の金属板(ブランク)に前記印刷を行うことができるが、前記シームレス缶体の場合には、前記絞り加工、絞りしごき加工の際に前記金属板に塑性流動による変形が生じるため、前記有底筒状体に成形された後、該有底筒状体の缶胴部に前記印刷が行われている。
【0004】
従来、前記シームレス缶体では、前記印刷は樹脂凸版を用いるオフセット印刷により行われていたが、近年、より美粧性に優れた印刷を行うことができる水無し平版を用いるオフセット印刷により行われるようになっている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
前記水無し平版は、アルミニウム基板上にインキ受容層を設けると共に、該インキ受容層上に接着剤層を介してシリコン層を設けたもので、該シリコン層と該接着剤層とを剥離して該インキ受容層を露出させた部分を画線部とし、該シリコン層を非画線部とするものである。このような水無し平版によれば、前記画線部となるインキ受容層には印刷インキが塗着され、前記比画線部となるシリコン層上では印刷インキが撥かれるので、網点のような微細な印刷が可能になる。
【0006】
前記水無し平版を用いる前記シームレス缶体の印刷は、網点の面積を変えることにより濃淡を表現するAMスクリーン法により行われている。前記AMスクリーン法は、縦横のスクリーン線により形成される方眼の1つ1つを網点とし、網点自体の大きさを変えるものであり、スクリーン線を150〜300線(59〜118線/cm)とすることにより、階調(グラデーション)表現が可能になる。
【0007】
ところが、前記AMスクリーン法により形成された印刷インキ層では、前記網点の位置が前記方眼のいずれかに限定されるため、多色刷りを行うと各色の網点の重なりが起き、色の混濁や、モアレと呼ばれる干渉縞模様、ロゼッタパターンと呼ばれる亀甲模様の発生が避けられないという問題がある。
【0008】
前記問題を解決するために、前記AMスクリーン法に代えて、網点の濃度を変えることにより濃淡を表現するFMスクリーン法を用いることが考えられる。前記FMスクリーン法は、前記網点自体の大きさは一定にしておき、該網点をランダム(不均一)に配置して所定面積当たりの網点濃度を変えるものである。
【0009】
前記FMスクリーン法により形成された印刷インキ層では、前記網点がランダムに配置されているので、多色刷りを行っても各色の網点が重なりにくく、色彩が鮮やかであり、前記モアレ、ロゼッタパターンの発生を防止することができる。
【0010】
しかしながら、前記水無し平版は耐刷性が低く、高速で大量に行われる前記シームレス缶体に対する印刷の際には、シリコン層が傷付き易いために交換頻度が高くなるという不都合がある。前記水無し平版のシリコン層が傷付いた場合には、印刷装置から取り外して新たな版と交換されるが、このようにした後、印刷を再開するときにはヤレ缶を大量に流さなければならず、製造コストの増大が避けられないという不都合がある。
【特許文献1】特開2001−129966号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、かかる不都合を解消して、色彩が鮮やかで、モアレ、ロゼッタパターンが無く、連続的階調表現を行うことができる美粧性に優れた印刷インキ層を缶胴部外面に備える安価なシームレス缶体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記不都合を解消するために、前記印刷インキ層の一部を樹脂凸版を用いるオフセット印刷により構成することが考えられる。前記印刷インキ層により画像を形成する際に、連続的階調表現を必要とする部分で、特に高度の連続的階調表現を必要とする部分には水無し平版を用い、濃色の印刷インキによる階調表現を必要とする部分、比較的低い階調表現でもよい部分、ベタの部分等には前記水無し平版に比較して耐刷性に優れている前記樹脂凸版を用いるようにして、該水無し平版と該樹脂凸版とを併用すれば、該水無し平版の交換頻度を低減することが期待される。
【0013】
本発明者らは、樹脂凸版を用いるオフセット印刷でFMスクリーン法を用いるための条件について種々検討を行った結果、特定の物性を備える印刷インキを用いることにより、樹脂凸版を用いるオフセット印刷でもFMスクリーン法を採用してシームレス缶体の缶胴部外面に印刷インキ層を形成することが可能であること、またこのときには、使用する印刷インキの物性のうち、特に印刷面に対する該印刷インキの付着性が重要な要素となり、該付着性は該印刷インキの塑性粘度とタック性とにより決定されることを見出した。
【0014】
そこで、本発明は、前記目的を達成するために、缶胴部外面に印刷インキ層と、該印刷インキ層を被覆する仕上げニス層とを備えるシームレス缶体において、該印刷インキ層は、装置温度30℃における測定値として35〜70Pa・秒の範囲の塑性粘度と、装置温度32℃における測定値として9〜24の範囲のタック値とを備える印刷インキを用いると共に、水無し平版と樹脂凸版とを用いるオフセット印刷により形成され、該水無し平版により形成される20〜60μmの範囲の直径を備える網点が、27万個/cm以下の範囲で、不均一に配置されていると共に、該樹脂凸版により形成される30〜70μmの範囲の直径を備える網点が、12万個/cm以下の範囲で、不均一に配置されていることを特徴とする。尚、前記タック値は、JIS K 5701−1に規定されたインキのタック値である。
【0015】
本発明によれば、前記印刷インキを用いることにより、水無し平版を用いるオフセット印刷で、前記印刷層に、20〜60μmの範囲の直径を備え、27万個/cm以下の範囲で、不均一に配置されている網点を形成することができる。前記印刷インキ層は、前記網点を備えることにより、多色刷りを行っても各色の網点が重なりにくく、色彩が鮮やかであり、モアレ、ロゼッタパターンの発生が無い。また、前記印刷インキ層によれば、前記網点により高度の連続的階調表現ができ、美粧性に優れた写真調の画像を得ることができる。
【0016】
また、本発明によれば、前記印刷インキを用いることにより、樹脂凸版を用いるオフセット印刷で、前記印刷層に、30〜70μmの範囲の直径を備え、12万個/cm以下の範囲で、不均一に配置されている網点を形成することができる。前記印刷インキ層は、前記網点を備えることにより、多色刷りを行っても各色の網点が重なりにくく、色彩が鮮やかであり、モアレ、ロゼッタパターンの発生が無い。また、前記印刷インキ層によれば、前記網点によりある程度階調表現ができるので、高度の連続的階調表現を必要としない背景部分や、網点濃度が100%で全面に印刷インキが付いている文字等の部分を形成することができる。
【0017】
従って、本発明によれば、前記水無し平版と前記樹脂凸版とを併用して、オフセット印刷を行って前記印刷インキ層を形成することにより、該水無し平版の交換頻度を低減することができ、前記美粧性に優れた画像を備える安価なシームレス缶体を得ることができる。
【0018】
前記印刷インキは、前記水無し平版と前記樹脂凸版との併用により前記印刷インキ層を得るために、装置温度30℃における測定値として35〜70Pa・秒の範囲の塑性粘度と、装置温度32℃における測定値として9〜24の範囲のタック値とを備える備えている必要がある。前記印刷インキの前記塑性粘度と前記タック値とが前記範囲から外れるときには、前記印刷インキ層を得ることができない。前記印刷インキの前記塑性粘度は、装置温度30℃における測定値として、好ましくは38〜65Pa・秒の範囲、さらに好ましくは40〜60Pa・秒の範囲であり、前記タック値は、装置温度32℃における測定値として好ましくは10〜22、さらに好ましくは10〜20の範囲である。
【0019】
前記印刷インキ層は、さらに美粧性に優れた画像を得るために、前記水無し平版により形成される網点が、20〜50μmの範囲の直径を備え、27万個/cm以下の範囲で不均一に配置されていることが好ましく、前記樹脂凸版により形成される網点が、30〜60μmの範囲の直径を備え、12万個/cm以下の範囲で不均一に配置されていることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。図1は本実施形態のシームレス缶体を示す説明的断面図であり、図2は図1に示すシームレス缶体を製造する印刷装置の一例を示す構成図であり、図3は図1に示すシームレス缶体に形成された印刷インキ層における水無し平版により形成された網点の濃度と直径との関係を示すグラフである。
【0021】
図1に示すように、本実施形態のシームレス缶体1は、アルミニウム系金属板を絞り加工し、さらに絞りしごき加工して得られる有底筒状体であり、飲料容器として用いられる。シームレス缶体1は、筒状の缶胴部2と缶胴部2に連なるドーム状の缶底部3とを備え、缶胴部2の外面側には印刷インキ層4と、印刷インキ層4上に積層された仕上げニス層5とを備えている。
【0022】
前記缶胴部2は、内面側に図示しない内面被覆層を備えている。また、缶胴部2は、外面側には印刷インキ層4との間に図示しない下地層を備えていてもよく、前記下地層は、例えば、白色顔料等の顔料を含む塗料からなる塗膜層であり、あるいは白色顔料等の顔料を含むポリエチレンテレフタレートフィルム層である。
【0023】
印刷インキ層4は、装置温度30℃における測定値として35〜70Pa・秒の範囲の塑性粘度と、装置温度32℃における測定値として9〜24の範囲のタック値とを備える印刷インキを用いると共に、水無し平版と樹脂凸版とを併用するオフセット印刷により形成されている。印刷インキ層4では、高度の連続的階調表現を必要とする写真調の画像部分が前記水無し平版により形成された網点からなり、この部分には20〜60μmの範囲でほぼ同一の直径を備える網点が、27万個/cm以下の範囲で、不均一に配置されている。また、印刷インキ層4では、比較的低い階調表現でもよい背景部分や、網点濃度が100%で全面に印刷インキが付いている文字等の部分が前記樹脂凸版により形成された網点からなり、この部分には30〜70μmの範囲でほぼ同一の直径を備える網点が、12万個/cm以下の範囲で、不均一に配置されている。
【0024】
前記印刷インキの前記塑性粘度は、装置温度30℃における測定値として、好ましくは38〜65Pa・秒の範囲、さらに好ましくは40〜60Pa・秒の範囲であり、前記タック値は、装置温度32℃における測定値として、好ましくは10〜22の範囲、さらに好ましくは10〜20の範囲である。
【0025】
前記印刷インキは、前記範囲の塑性粘度とタック値とを備えることにより、前記アルミニウム系金属の地金または前記下地層からなる印刷面に良好に付着して、前記印刷インキ層4を形成することができる。
【0026】
また、さらに美粧性に優れた画像を得るために、前記水無し平版により形成された網点は、20〜50μmの範囲でほぼ同一の直径を備え、27万個/cm以下の範囲で、不均一に配置されていることが好ましく、25〜50μmの範囲でほぼ同一の直径を備え、17万個/cm以下の範囲で、不均一に配置されていることがさらに好ましい。一方、前記樹脂凸版により形成された網点は、30〜60μmの範囲でほぼ同一の直径を備え、12万個/cm以下の範囲で、不均一に配置されていることが好ましく、40〜60μmの範囲でほぼ同一の直径を備え、7万個/cm以下の範囲で、不均一に配置されていることがさらに好ましい。
【0027】
次に、本実施形態のシームレス缶体1の製造方法について説明する。本実施形態のシームレス缶体1は、水無し平版と樹脂凸版とを用いてオフセット印刷を行う印刷装置により製造することができる。前記印刷装置は、図2に示すように、シームレス缶体1を供給する缶体供給ユニット11と、シームレス缶体1の缶胴部2に印刷を施す印刷ユニット12と、印刷が施されたシームレス缶体1の缶胴部2に仕上げニスを塗布する仕上げニス塗布ユニット13と、仕上げニスが塗布されたシームレス缶体1を乾燥手段である図示しないピンオーブンに移送する移送ユニット14とからなる。
【0028】
まず、缶体供給ユニット11は、シームレス缶体1が投入されるシュート15と、シュート15の下端部でシームレス缶体1を装置に供給する1対のインフィードターレット16,17と、インフィードターレット16,17により供給されるシームレス缶体1を吸着保持して搬送するマンドレル(図示せず)と、該マンドレルに保持されたシームレス缶体1を要所毎に支持する缶サポート18とを備える。前記マンドレルは回転自在に備えられ、シームレス缶体1の開口部から缶胴部2内部に挿入されて、缶胴部2の内壁をバキュームにて吸着することによりシームレス缶体1を保持する。
【0029】
次に、印刷ユニット12は、ブランケットシリンダ19の周上に備えられた8個のブランケット20と、ブランケットシリンダ19の外周に沿って配置された6個のインカーユニット21と、インカーユニット21に対応して設けられた版胴22とを備える。版胴22には、前記水無し平版または前記樹脂凸版のいずれかの刷版23が装着されている。
【0030】
インカーユニット21は、内部に図示しないインキ容器と該インキ容器から供給されるインキを練りならしてそれぞれ刷版23に塗着する複数のロールとを備えている。また、インカーユニット21は、ブランケットシリンダ19の回転方向に沿って上流側から順に、例えば、黄、オレンジ、マゼンタ、緑、シアン、ブラックの各色のインキを供給するように構成されている。前記各色のインキは、いずれも、装置温度30℃で測定した塑性粘度が40〜60Pa・秒の範囲にあり、装置温度32℃で測定したタック値が10〜20の範囲にある。
【0031】
ブランケット20は、ブランケットシリンダ19の回転に従って移動することにより、各刷版23が圧着されて各刷版23からインキが転写される位置と、マンドレルに保持されて缶サポート18に支持されたシームレス缶体1の缶胴部2に圧着されて該シームレス缶体1の缶胴部2に前記インキを転写する位置Pとを循環移動自在に備えられている。また、印刷ユニット12において、版胴22は、それぞれ矢示方向に移動自在に備えられ、トラブル等による装置停止時には、ブランケット20から分離自在となっている。
【0032】
次に、仕上げニス塗布ユニット13は、図示しないニス容器からニスを供給するアニロクスロール24と、アニロクスロール24により供給されたニスをマンドレルに保持され缶サポート18に支持されたシームレス缶体1の缶胴部2に塗布するアプリケーターロール25とからなる。
【0033】
そして、移送ユニット14は、図示しない支持杆を所定間隔で備え、無端状に回動するピンチェーンコンベア26と、シームレス缶体1をマンドレルから支持杆に移載するトランスファーユニット27とからなる。
【0034】
次に、前記印刷装置の作動について説明する。本実施形態の印刷装置によれば、まず、前工程の製缶工程で形成されたシームレス缶体1がシュート15に投入される。シームレス缶体1は、シュート15の下端部でインフィードターレット16,17により装置に供給されると、回転自在に備えられたマンドレルが開口部から内部に挿入され、該マンドレルが有するバキュームにより缶胴部2の内壁が該マンドレルに吸着される。この結果、シームレス缶体1は前記マンドレルに保持され、ブランケット20からインキが転写される位置Pまで搬送される。
【0035】
一方、ブランケット20はブランケットシリンダ19の回転に従って移動し、上流側に配置された版胴22から順に、前記黄、オレンジ、マゼンタ、緑、シアン、ブラックの各色のインキが転写される。ここで、各刷版23には、シームレス缶体1の缶胴部2に印刷される絵柄(イメージや所要の表示を含む)の元となるカラー写真等(原画)を前記各インキの色毎に色分解し、各色毎に網取りすることにより得られた画線部が前記網点を形成するために設けられている。
【0036】
刷版23が前記水無し平版である場合、前記画線部は、25〜50μmの範囲でほぼ同一の直径を備え、17万個/cm以下の範囲で不均一に配置されており、非画線部にはシリコン層が形成されている。一方、刷版23が前記樹脂凸版である場合には、前記画線部は凸部からなり、40〜60μmの範囲でほぼ同一の直径を備え、7万個/cm以下の範囲で不均一に配置されている。
【0037】
本実施形態の印刷装置では、各刷版23のうち、上流から順に1番目、3番目、5番目、6番目の刷版23には前記水無し平版が装着され、それ以外の刷版23には前記樹脂凸版が装着されている。
【0038】
そして、各刷版23には、ブランケットシリンダ19の回転方向に沿って上流から順に、前記黄、オレンジ、マゼンタ、緑、シアン、ブラックの各色のインキがインカーユニット21からそれぞれ供給されて前記画線部に塗着される。この結果、ブランケット20上には、ブランケットシリンダ19の回転方向に沿って、前記黄、オレンジ、マゼンタ、緑、シアン、ブラックの順に各色のインキが転写される。
【0039】
次に、ブランケット20は、ブランケットシリンダ19の回転に従って移動して、シームレス缶体1の缶胴部2にインキを転写する位置Pに至り、前記マンドレルにより搬送されてくるシームレス缶体1の缶胴部2に圧着される。このとき、前記マンドレルの搬送速度はブランケットシリンダ19の回転速度に一致するように設定されており、前記マンドレルは回転自在とされている。そのため、シームレス缶体1は、前記マンドレルに保持され且つ缶サポート18に支持された状態で、ブランケット20が缶胴に圧着されると、ブランケット20の表面に沿って回転し、これによりブランケット10上のインキがシームレス缶体1の缶胴部2に転写される。
【0040】
このとき、前記各色のインキは、いずれも装置温度30℃で測定した塑性粘度が40〜60Pa・秒の範囲にあり、装置温度32℃で測定したタック値が10〜20の範囲にあるので、各刷版23の前記画線部に塗着されたインキが全て缶胴部2に転写される。この結果、缶胴部2上に、前記水無し平版により形成された25〜50μmの範囲でほぼ同一の直径を備え、17万個/cm以下の範囲で不均一に配置された網点と、前記樹脂凸版により形成された40〜60μmの範囲でほぼ同一の直径を備え、7万個/cm以下の範囲で不均一に配置された網点とからなる印刷インキ層4が形成される。
【0041】
図3に、印刷インキ層4における前記水無し平版により形成された網点の濃度と直径との関係を示す。図3から、本実施形態のシームレス缶体1では、印刷インキ層4における前記水無し平版により形成された網点の直径が、網点の濃度によらず、ほぼ一定で25〜50μmの範囲にあり、ほとんどドットゲイン(網点の太り)が無いことが明らかである。
【0042】
次に、ブランケット20のインキが転写されたシームレス缶体1は、前記マンドレルに保持されて、仕上げニス塗布ユニット13に搬送される。そして、シームレス缶体1は、前記マンドレルに保持され且つ缶サポート18に支持された状態で、その缶胴部2に圧着されたアプリケーターロール25と共に回転し、これにより、シームレス缶体1の缶胴部2に仕上げニスが塗布され、印刷インキ層4上に積層された仕上げニス層5が形成される。
【0043】
そして、仕上げニスが塗布されたシームレス缶体1は、トランファーユニット27で前記マンドレルからピンチェーンコンベア26の支持杆に移載され、次工程の乾燥手段であるピンオーブンに搬送される。
【0044】
尚、本実施形態では、上流から順に1番目、3番目、5番目、6番目の刷版23に前記水無し平版を装着し、それ以外の刷版23に前記樹脂凸版を装着するようにしているが、該水無し平版と該樹脂凸版とは、印刷インキ層4により形成される画像に対応して配列されるものであり、前記配列に限定されるものではない。また、本実施形態では、各刷版23のうち、4枚を水無し平版、2枚を樹脂凸版としているが、前記水無し平版と前記樹脂凸版とはそれぞれ少なくとも1枚が含まれていればよく、それぞれの枚数に限定はない。
【0045】
また、本実施形態では、印刷インキ層4の印刷に用いられる印刷インキの色を、黄、オレンジ、マゼンタ、緑、シアン、ブラックの6色としているが、所望により他の色のインキを用いてもよいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係るシームレス缶体の構成を示す説明的断面図。
【図2】図1に示すシームレス缶体を製造する印刷装置の一例を示す構成図。
【図3】図1に示すシームレス缶体に形成された印刷インキ層における水無し平版により形成された網点の濃度と直径との関係を示すグラフ。
【符号の説明】
【0047】
1…シームレス缶体、 2…缶胴部、 4…印刷インキ層、 5…仕上げニス層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶胴部外面に印刷インキ層と、該印刷インキ層を被覆する仕上げニス層とを備えるシームレス缶体において、
該印刷インキ層は、装置温度30℃における測定値として35〜70Pa・秒の範囲の塑性粘度と、装置温度32℃における測定値として9〜24の範囲のタック値とを備える印刷インキを用いると共に、水無し平版と樹脂凸版とを用いるオフセット印刷により形成され、
該水無し平版により形成される20〜60μmの範囲の直径を備える網点が、27万個/cm以下の範囲で、不均一に配置されていると共に、該樹脂凸版により形成される30〜70μmの範囲の直径を備える網点が、12万個/cm以下の範囲で、不均一に配置されていることを特徴とするシームレス缶体。
【請求項2】
前記印刷インキは、装置温度30℃における測定値として38〜65Pa・秒の範囲の塑性粘度と、装置温度32℃における測定値として10〜22の範囲のタック値とを備えることを特徴とする請求項1記載のシームレス缶体。
【請求項3】
前記印刷インキは、装置温度30℃における測定値として40〜60Pa・秒の範囲の塑性粘度と、装置温度30℃における測定値として10〜20の範囲のタック値とを備えることを特徴とする請求項2記載のシームレス缶体。
【請求項4】
前記水無し平版により形成される網点は、20〜50μmの範囲の直径を備え、27万個/cm以下の範囲で不均一に配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のシームレス缶体。
【請求項5】
前記樹脂凸版により形成される網点は、30〜60μmの範囲の直径を備え、12万個/cm以下の範囲で不均一に配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のシームレス缶体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−224585(P2006−224585A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−43840(P2005−43840)
【出願日】平成17年2月21日(2005.2.21)
【出願人】(505440295)北海製罐株式会社 (58)
【Fターム(参考)】