説明

シームレス通信方法及びこれを用いた通信システム

【課題】無線通信手段の切替えのための移動端末における同期確立処理の処理負荷を低減し、アプリケーションデータの通信への影響を抑制する。
【解決手段】携帯電話11でサーバと通信して配信データを携帯電話11で受信して携帯用バッファ111に記憶しているときに、無線LAN端末12で通信が可能となると、切替制御処理部106とサーバとの間で、無線LAN端末12を用いて、通信切替えのための通信切替え制御データのやり取りを行ない、サーバ2で通信切替え制御データを送ってから帰って来るまでの時間を計測する。また、携帯端末1の携帯用バッファ111の状態やアプリケーションデータのスループットを取得し、これらを基に携帯用バッファ111から無線LAN用バッファ112への配信データの読出切替位置を決定し、携帯端末1に、これを送るとともに、無線LAN端末12にも配信データを送信して、無線LAN用バッファ112にも記憶させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の無線通信網(無線ネットワーク)を用い、移動端末と情報提供サーバとの間で情報通信中に無線通信網を切り替えることができるようにしたシームレス通信方法及びこれを用いた通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の無線通信技術の進展により、携帯電話ネットワークや無線LAN(Local Area Network:ローカル・エリア・ネットワーク),WiMAXなど多様な無線通信網が利用できるようになってきている。利用できる無線通信網の多様化に伴い、利用者は無線通信網を選択する必要性が出てくるが、利用者にとっては、使用する無線通信網を意識せずとも、通信速度、場所、利用料金などに応じて、最適な無線通信網が自動的に選択されることが望まれる。
【0003】
また、特に、通信中に無線通信網の切り替えを可能とするシームレス通信において、動画や音声などのリアルタイム性が重視されるアプリケーションデータの通信中、無線通信網の切り替えによって映像や音声に乱れが生じると、実用上問題となるので、かかる無線通信網の切り替えがあっても、通信の中断が生じないにようにシームレスに通信を継続させることが重要である。
【0004】
シームレスに通信を切り替える従来技術としては、例えば、携帯端末に携帯電話ネットワークや無線LANを用いるための無線通信端末、即ち、携帯電話や無線LAN端末を設け、携帯端末から他の携帯端末への通信中、携帯電話から無線LAN端末へ無線通信手段を切り替えることにより、無線通信網を携帯電話ネットワークから無線LANへ切り替えて経由する無線通信網を切り替えるハンドオーバを行なう場合に、携帯端末とサーバとの間に設けられたエッジルータとこの携帯端末との間で、2つの無線通信網で同時に通信するバイキャスト通信を行ない、これら間のデータの同期を確立して(携帯電話ネットワークによる通信時間と無線LANによる通信時間との差をなくして)無線通信網を切り替える技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−311580公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の技術では、2つの無線通信網間で切り替えを行なう前に、これら2つの無線通信網で同一内容のデータを通信して同期をとり、しかる後、これら無線通信網を切り替えるので、アプリケーションデータが途切れてしまうことなく、シームレスに通信を継続させることが可能となる。
【0006】
しかし、上記特許文献1に記載のデータ同期の確立方法としては、同期を取るために、シーケンス番号や時間情報などを含めた専用の同期パケットを通信するアプリケーションデータに混在させてバイキャト通信を行なう構成としているため、移動端末で2つの無線通信手段から受信される同期用パケットのシーケンス番号や時間情報を常時監視して、同期を確立する処理を行なう必要があり、かかる処理負荷の増大が懸念される。また、通信中のデータに同期用パケットが混在することになるため、その分アプリケーションデータの通信期間が少なくなり、アプリケーションデータのスループットが低下するなどの問題がある。
【0007】
本発明の目的は、かかる課題を解消するものであって、無線通信手段の切替えのための移動端末における同期確立処理の処理負荷を低減し、アプリケーションデータの通信への影響を抑制することができるようにしたシームレス通信方法及びこれを用いた通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、第1,第2の無線通信手段を備えた移動端末が、所定の通信データを配信する情報提供サーバと第1の無線通信手段による通信中に、第2の無線通信手段へ切り替えて通信を途切れなく継続するシームレス通信方法であって、移動端末に、第1の無線通信手段からの受信データを一時記憶する第1記憶ステップと、第2の無線通信手段からの受信データを一時記憶する第2記憶ステップと、第1記憶ステップでの残データ量と第1の無線通信手段によるスループットを情報提供サーバに通知して通信切替えを制御する移動端末通信切替制御ステップを設け、情報提供サーバに、移動端末から通知される第1記憶ステップの該残データ量と該スループットをもとに第1記憶ステップで蓄積データが残る状態で第2記憶ステップで継続通信データが蓄積される第1の無線通信手段への継続送信データ量を決定し、第1の無線通信手段への通信データと第2の無線通信手段への通信データとの送出を制御する配信情報読出制御ステップと、第1の無線通信手段への継続送信データ量を移動端末へ通知して通信切替えを制御するサーバ通信切替制御ステップを設けるようにして、情報提供サーバは、少なくとも継続送信データ量分の通信データを第1の無線通信手段に送信継続すると同時に、第2の無線通信手段に継続送信データ量分以降の通信データを先に送信し、移動端末は、情報提供サーバより通知される継続送信データ量分までを第1記憶ステップで記憶された分から読出し、以降の通信データは第2記憶ステップで記憶された分から読出すようにすることにより、シームレスな通信データのつなぎ替えを可能とする。
【0009】
また、上記目的を達成するために、本発明は、第1,第2の無線通信手段を備えた移動端末が、所定の通信データを配信する情報提供サーバと第1の無線通信手段による通信中に、第2の無線通信手段へ切り替えて通信を継続するシームレス通信システムであって、移動端末に、第1の無線通信手段からの受信データを一時記憶する第1バッファと、第2の無線通信手段からの受信データを一時記憶する第2バッファと、第1バッファの残データ量と第1の無線通信手段によるスループットとを情報提供サーバに通知して通信切替えを制御する移動端末通信切替制御手段とを設け、情報提供サーバに、移動端末から通知される第1バッファの該残データ量と該スループットとをもとに、該第1バッファに蓄積データが残っている状態で第2バッファへ継続通信データが蓄積される第1の無線通信手段への継続送信データ量を決定し、第1の無線通信手段への通信データと第2の無線通信手段への通信データとの送出を制御する配信情報読出制御手段と、第1の無線通信手段への継続送信データ量を移動端末へ通知して通信切替えを制御するサーバ通信切替制御手段とを設け、情報提供サーバは、少なくとも継続送信データ量分の通信データを第1の無線通信手段に送信継続すると同時に、第2の無線通信手段へ継続送信データ量分以降の通信データを先に送信し、移動端末は、情報提供サーバより通知される継続送信データ量分までを第1バッファから読み出し、それ以降の通信データは第2バッファから読み出すことにより、通信データのつなぎ替えを可能とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、移動端末は、情報提供サーバから通知される第1の無線通信手段への継続送信データ量に従って、第1の無線通信手段からの受信データの第1のバッファからの読出しから第2の無線通信手段からの受信データの第2のバッファからの読出しに切り替えるだけでシームレス通信を実現できるので、従来移動端末側で必要とされていたデータ同期処理を不要化でき、かかる処理負荷を低減することが可能となる。
【0011】
また、通信切替えのための制御データの通信は、配信データ情報に使用していない無線通信手段を使用するので、通信切替え前の配信情報の通信に影響を与えることなく、シームレス通信を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は本発明によるシームレス通信方法及びこれを用いた通信システムの一実施形態を示すシステム構成図であって、1は移動端末、11は携帯電話、12は無線LAN端末、2は情報提供サーバ、20はインターネット、301は携帯電話基地局、302は携帯電話通信エリア、303は携帯電話通信網、304は携帯電話対応ISP(Internet Service Provider:インターネット接続サービスプロバイダ)、305は無線LAN基地局、306は無線LAN通信エリア、307は無線LAN通信網、308は無線LAN対応ISPである。
【0014】
同図において、移動端末1には、無線通信手段として、携帯電話11と無線LAN端末12とが設けられており、携帯電話11と携帯電話通信網303の携帯電話基地局301との間で無線回線が確立されることにより、携帯電話通信網303とインターネット20とを介して情報提供サーバ2との間でデータ通信が可能となり、また、無線LAN端末12と無線LAN通信網307の無線LAN基地局との間で無線回線が確立されることにより、無線LAN通信網307とインターネット20とを介して情報提供サーバ2との間でデータ通信が可能となる。
【0015】
なお、ここでは、移動端末1に設けられる無線通信手段としては、上記の携帯電話11と無線LAN端末12とに限定されるものではないが、以下では、一例として、携帯電話11と無線LAN端末12を用いるものとする。
【0016】
携帯電話基地局301は、規定周波数の電波を発信しており、この電波の到達範囲が携帯電話11との無線通信が可能なエリア、即ち、携帯電話通信エリア302である。この携帯電話通信エリア302内で、移動端末1は、携帯電話11と携帯電話基地局301との間で確立する無線回線により、携帯電話網303とインターネット20とを介して情報提供サーバ2との間のデータ通信が可能となる。
【0017】
なお、携帯電話通信網303は、図示していない交換局などを収容した携帯通信事業者が構築するネットワークであり、一般に、携帯電話対応ISP304を介してインターネット20と通信接続が行なわれる。携帯電話対応ISP304は、携帯電話をインターネット接続可能にするためのサービスを提供する事業者である。
【0018】
無線LAN基地局305も、規定周波数の電波を発信しており、この電波の到達範囲が無線LAN端末12との無線通信が可能なエリア、即ち、無線LAN通信エリア306となる。この無線LAN通信エリア306内で、移動端末1は、無線LAN端末12と携帯電話基地局301との間で確立する無線回線により、無線LAN通信網307とインターネット20とを介して情報提供サーバ2との間のデータ通信が可能となる。
【0019】
なお、無線LAN通信網307は、無線LAN基地局305を収容した通信事業者が構築するネットワークであり、無線LAN対応ISP308を介してインターネット20との通信接続が行なわれる。無線LAN対応ISP308は、携帯電話対応ISP304と同様、無線LAN端末12をインターネット接続可能にするためのサービスを提供する事業者である。
【0020】
移動体1が携帯電話通信エリア302内にあって、無線LAN通信エリア306外にあるときには、携帯電話11が携帯電話通信網303の携帯電話基地局301と無線通信を行なうだけであるが、移動端末1が移動して携帯電話通信エリア302内での無線LAN通信エリア306内に入ると、無線LAN端末12も無線LAN通信網307での無線LAN基地局305との無線通信が可能となり、これにより、携帯電話11から無線LAN端末12への切り替えのためのシームレス通信が行なわれて、無線LAN端末12から無線LAN通信網307及びインターネット20を介して情報提供サーバ2とのデータ通信に切り替わる。
【0021】
次に、かかる通信システムに用いるシームレス通信方法を実行する移動端末1,情報提供サーバ2の具体例について説明する。
【0022】
図2は図1における移動端末1の一具体例を示すブロック構成図であって、13は情報表示部、14はユーザ操作部、101は移動端末システム制御部、102は携帯電話通信制御処理部、103は無線LAN通信制御処理部、104は移動端末受信アプリケーション/通信切替制御データ転送処理部、105は移動端末送信アプリケーション/通信切替制御データ転送処理部、106は移動端末通信切替制御処理部、107は通信切替え判定処理部、108はスループット計測処理部、109はアプリデータシームレス切替え処理部、110はアプリケーションデータ処理部、111は携帯用バッファ、112は無線LAN用バッファであり、図1に対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。
【0023】
同図において、移動端末システム制御部101は、図示していないが、CPU,ROM,RAMなどで構成され、主として、ソフトウェア処理によって移動端末1全体の制御を行なうものであり、携帯電話11や無線LAN端末12,ユーザインタフェースとなる情報表示部13及びユーザ操作部14に接続されている。
【0024】
情報表示部13は、各無線通信手段、即ち、携帯電話11や無線LAN端末12で受信されるアプリケーションデータや移動端末1の操作用メニューの画面表示などを行なうディスプレイ装置であり、ユーザ操作部13は、移動端末1の動作設定や無線通信でのデータ送信要求などを行なうための操作手段である。
【0025】
なお、アプリケーションデータは、ここでは、情報提供サーバ2からの配信情報とする。
【0026】
移動端末システム制御部101は、携帯電話通信制御処理部102,無線LAN通信制御処理部103,移動端末受信アプリケーション/通信切替制御データ転送処理部104,移動端末送信アプリケーション/通信切替制御データ転送処理部105,移動端末通信切替制御処理部106,通信切替判定処理部107,スループット計測処理部108,アプリケーションデータシームレス切替処理部109,アプリケーションデータ処理部110,携帯用バッファ111及び無線LAN用バッファ112から構成されるものであり、次に、これらの構成要素について説明する。
【0027】
携帯電話通信制御処理部102は、ユーザ操作部14からの通信開始や通信終了の指示に応じた携帯電話11によるデータ送受信,携帯電話基地局301(図1)との間の回線切断や携帯端末1が携帯電話通信エリア302の圏内にあるときの携帯電話11と携帯電話基地局301との間のデータ送受信,無線LAN通信エリア306の圏内にあるときの携帯電話基地局301との間の無線回線の切断などを制御する携帯電話制御用コマンド処理や携帯電話通信エリア302の圏内にあるときの携帯電話基地局301(図1)との無線通信に必要な規定のプロトコル処理,携帯電話11の外部インタフェースに合わせた通信データの伝送処理を行なう。
【0028】
無線LAN通信制御処理部103は、携帯端末1が無線LAN通信エリア306の圏内に入ったときの無線LAN基地局305との間のデータ送受信,その圏内から出たときの無線LAN端末12と無線LAN基地局305との間の無線回線の切断などを制御する無線LAN制御用コマンド処理や携帯端末1が無線LAN通信エリア306の圏内に入ったときの無線LAN基地局305(図1)との無線通信に必要な規定のプロトコル処理,無線LAN端末12の外部インタフェースに合わせた通信データの伝送処理を行なう。
【0029】
携帯電話通信制御処理部102は、また、携帯電話11が情報提供サーバ2(図1)と通信可能な状態であるか否かを示す通信確立状態情報DTを移動端末通信切替制御処理部106へ通知する。即ち、携帯電話通信制御処理部102は、携帯電話通信エリア302の圏内にこの移動端末1が入っていることを携帯電話11から通知される所定の状態信号などから検出し、その圏内に入っていることを検出すると、携帯電話11を情報提供サーバ2と通信接続させて通信を確立し、移動端末通信切替制御処理部106に通信が確立した旨の通信確立状態情報DTを通知する。また、移動端末1が携帯電話通信エリア302の圏外となり、通信が切断したときには、移動端末通信切替制御処理部106にその旨を通知とともに、通信確立状態情報DTの通知を終了する。
【0030】
また、無線LAN通信制御処理部103についても同様であって、無線LAN通信制御処理部103は、無線LAN端末12が情報提供サーバ2(図1)と通信可能な状態であるか否かを示す通信確立状態DLを移動端末通信切替制御処理部106へ通知する。即ち、無線LAN通信制御処理部103は、無線LAN通信エリア306の圏内にこの移動端末1が入っていることを無線LAN端末12から通知される所定の状態信号などから検出し、その圏内に入っていることを検出すると、無線LAN端末12を情報提供サーバ2と通信接続させて通信を確立し、無線LAN端末12と情報提供サーバ2との通信が確立したときには、移動端末通信切替制御処理部106に、このことを示す通信確立状態情報DLを通知する。また、移動端末1が無線LAN通信エリア306の圏外となり、通信が切断したときには、移動端末通信切替制御処理部106にその旨を示す通信確立状態情報DLを通知する。
【0031】
携帯電話11からの受信データATは、携帯電話通信制御処理部102で処理された後、移動端末受信アプリケーション/通信切替制御データ転送処理部104に供給され、また、無線LAN端末12からの受信データALは、無線LAN通信制御処理部103で処理された後、移動端末受信アプリケーション/通信切替制御データ転送処理部104に供給される。
【0032】
移動端末受信アプリケーション/通信切替制御データ転送処理部104は、移動端末通信切替制御処理部106から通知される無線通信手段(携帯電話11及び無線LAN端末12)の通信状態を示す通信状態信号Eに応じて、携帯電話通信制御処理部102及び無線LAN通信制御処理部103から取得する受信データAT,ALがアプリケーションデータであるか、また、通信切替制御データCT,CLであるかを識別する処理を行ない、アプリケーションデータBT,BLであるときには、受信した無線通信手段に対応するバッファ(携帯用バッファ111または無線LAN用バッファ112)へ転送する処理を行ない、通信切替制御データCT,CLであるときには、移動端末通信切替制御処理部106へ転送する処理を行なう。
【0033】
なお、通信状態信号Eは、移動端末通信切替制御処理部106において、通信確立状態情報DT,DLを基に作成されるものであり、携帯電話11,無線LAN端末12のいずれでアプリケーションデータの受信が行なわれているかを表わすものである。携帯端末1が携帯電話通信エリア302の圏内のみにあるときには、通信状態信号Eは携帯電話11がアプリケーションデータを受信する無線通信手段であることを、また、携帯端末1が携帯電話通信エリア302と無線LAN通信エリア306との圏内にあるときには、通信状態信号Eは携帯電話11無線LAN端末12とがアプリケーションデータを受信する無線通信手段であることを夫々示すものである。
【0034】
ここで、携帯用バッファ111は、携帯電話11で受信されたアプリケーションデータを一時記憶する記憶手段であり、無線LAN用バッファ112は、無線LAN端末12で受信されたアプリケーションデータを一時記憶する記憶手段であって、移動端末受信アプリケーション/通信切替制御データ転送処理部104から出力される携帯電話11で受信されたアプリケーションデータBTは携帯用バッファ111に記憶され、移動端末受信アプリケーション/通信切替制御データ転送処理部104から出力される無線LAN端末12で受信されたアプリケーションデータBLは無線LAN用バッファ112に記憶される。これらバッファ111,112に記憶されたアプリレーションデータについて、後述するアプリケーションデータのシームレス切り替えが行なわれる。
【0035】
なお、通信切替制御データCT,CLは、移動端末1と情報提供サーバ2との間で、アプリケーションデータのシームレス通信による切り替えに際してやりとりする情報であり、詳細は図4の通信切替えシーケンスで説明する。
【0036】
移動端末通信切替制御処理部106は、図4で詳細に説明するが、アプリケーションデータのシームレス通信による切り替えに際しては、無線LAN端末12から通知される通信確立状態情報DLから無線LAN端末12の通信確立の有無を判定し、無線LAN端末12と無線LAN通信網307の無線LAN基地局305との通信が確立したことを検出すると、通信切り替えを要求する通信切替要求データからなる通信切替制御データHを作成して、移動端末送信アプリケーション/通信切替制御データ転送処理部105,無線LAN通信制御処理部103を介して無線LAN端末12から情報提供サーバ2へ送信する。これに対する情報提供サーバ2からの通信切替応答データCLが無線LAN端末12で受信されて移動端末受信アプリケーション/通信切替制御データ転送処理部104から供給されると、移動端末通信切替制御処理部106は、これを解析し、通信切替判定処理部107からの通信切替え判定処理の結果Fとともに、アプリケーションデータシームレス切替処理部109で携帯用バッファ111から読み出されるアプリケーションデータのスループットをスループット計測処理部108から通信切替え判定処理部107を介して、また、携帯用バッファ111の書込位置(アドレス)と読出位置とをアプリケーションデータシームレス切替処理部109から夫々取り込む。移動端末通信切替制御処理部106は、携帯用バッファ111のこれら書込位置と読出位置とから、このときの携帯用バッファ111の残データ量とを求め、これらスループットと残データ量とを用いて通信切替制御データHを作成し、移動端末送信アプリケーション/通信切替制御データ転送処理部105,無線LAN通信制御処理部103を介して無線LAN端末12から情報提供サーバ2へ送信する。かかる通信切替制御データHを無線LAN端末12から送信させるのは、通信状態信号Eを移動端末送信アプリケーション/通信切替制御データ転送処理部105に供給することにより、その送信すべき無線通信手段を指示することによるものである。
【0037】
このようにして、移動端末1と情報提供サーバ2との間で通信切替制御データのやり取りをすることにより、通信切替シーケンスを実行させるようにするものである。
【0038】
移動端末通信切替制御処理部106は、携帯電話通信制御処理部102からの通信確立状態情報DTと無線LAN通信制御処理部103からの通信確立状態情報DLとを基に、無線通信手段102,103の現状の通信状態が、「アプリケーションデータ携帯通信中状態」,「無線LANへの切替え待ち状態」,「アプリケーションデータ無線LAN通信中状態」,「携帯電話への切替え待ち状態」のいずれかの状態にあるかを検出するものであって、通信切替制御データの通信切替えシーケンスの進捗に合わせてこれらの状態の遷移制御も行ない、また、これに応じて上記の通信状態信号Eを作成する。
【0039】
ここで、「アプリケーションデータ携帯通信中状態」は、移動端末1が図1での携帯電話通信エリア302の圏内のみにあって、携帯電話11での通信が可能な状態であり、「無線LANへの切替え待ち状態」は、携帯端末1が図1での無線LAN通信エリア306の圏内に入って携帯電話11から無線LAN端末12に切り替わるまでの状態であり、「アプリケーションデータ無線LAN通信中状態」は、携帯端末1が図1での無線LAN通信エリア306の圏内にあって、無線LAN端末12での通信が可能な状態であり(この場合には、図1から明らかなように、携帯電話11での通信も可能である)、「携帯電話への切替え待ち状態」は、携帯端末1が図1での無線LAN通信エリア306の圏内での周辺部にあって、無線LAN端末12から携帯電話11に切り替わるまでの状態である。
【0040】
移動端末送信アプリケーション/通信切替制御データ転送処理部105は、アプリケーションデータシームレス切替処理部109からの送信データGと移動端末通信切替制御処理部106から送信データHとを取り込み、アプリケーションデータシームレス切替処理部109からの送信データGを、アプリケーションデータとして、また、移動端末通信切替制御処理部106からの送信データHを、通信切替制御データとして、夫々処理する。この場合、移動端末通信切替制御処理部106から通知される通信状態信号Eと応じて、アプリケーションデータGと通信切替制御データHとを携帯電話通信制御処理部102と無線LAN通信制御処理部103とのいずれに転送するかの処理を行なう。即ち、アプリケーションデータGが無線通信手段11,12のいずれか一方で、通信切替制御データHが他方で送信されるように、携帯電話通信制御処理部102と無線LAN通信制御処理部103とのいずれに転送する。
【0041】
移動端末受信アプリケーション/通信切替制御処理部104及び移動端末送信アプリケーション/通信切替制御処理部105におけるアプリケーションデータと通信切替制御データの通信方法は、この実施形態の特徴となるものであり、この実施形態では、通信切替制御データCT,CL,Hの通信はアプリケーションデータの通信に影響を与えないようにするべく、アプリケーションデータの通信で使用していない方の無線通信手段を使用する。これにより、携帯電話11でアプリケーションデータが送受信される上記の「アプリケーションデータ携帯通信中状態」では、通信切替制御データが無線LAN端末12で送受信され、無線LAN端末12でアプリケーションデータが送受信される上記の「アプリケーションデータ無線LAN通信中状態」では、通信切替制御データが携帯電話11で送受信される。このため、通信状態信号Eのみを参照するだけで、アリケーションデータが携帯電話11,無線LAN12のいずれで送受信され、通信切替制御データが携帯電話11,無線LAN12のいずれで送受信されているのか識別することが可能となり、移動端末受信アプリケーション/通信切替制御処理部104において、携帯電話11,無線LAN端末12のいずれからの受信データをアプケーションデータBと判定し、携帯電話11,無線LAN端末12のいずれからの受信データを通信切替制御データCと判定することを自動的に行なうことができる。同様にして、移動端末送信アプリケーション/通信切替制御処理部105において、通信状態信号Eのみを参照して、アプケーションデータGを携帯電話11,無線LAN端末12のいずれかから送信させるか、通信切替制御データHを携帯電話11,無線LAN端末12のいずれかから送信させるかの決定が可能となる。
【0042】
一方、この実施形態では、無線通信手段の切替えの判断は、通信切替判定処理部107,スループット計測処理部108,アプリケーションデータシームレス切替処理部109及びアプリケーションデータ処理部110により、通信中のスループットや携帯用バッファ111での残データ量を基に行なう。以下、この点について説明する。
【0043】
通信切替判定処理部107は、切替え基準とするスループットを各無線通信手段毎に保持し、スループット計測処理部108で測定されたスループットと比較して、無線通信手段(携帯電話11と無線LAN端末12)を切り替えるか否か判定する。これにより、制御通信手段の切替えを決定すると、移動端末通信切替制御処理部106へこの旨を通知する。この通知を受けて、移動端末通信切替制御処理部106は、後述する通信切替えシーケンス処理のための通信切替制御データHを作成する。
【0044】
スループット計測処理部108では、アプリケーションデータシームレス切替処理部109で転送される単位時間当りの転送データ量(スループット)を計測する処理を行ない、通信中に逐次更新する処理を行なう。無線通信では、移動端末1の状態や周囲の環境の影響により、アプリケーションデータの通信速度が変化し、これに伴って、携帯用バッファ111でのアプリケーションデータの書き込み速度が変化してスループットは大きく変動する場合もあるため、より判断基準を正確にするために、例えば、30秒など、ある程度の時間間隔における平均をとり、その測定結果をスループットとして通知するようにしてもよい。
【0045】
そして、スループットの計測結果は通信切替判定処理部107へ通知され、さらに、通信切替判定処理部107から通信切替制御処理部106へ通知される。
【0046】
スループット計測処理部108のスループットの測定結果は、通信切替判定処理部107を介し、移動端末通信切替制御処理部106に取り込まれて保持され、図4に示す後述の通信切替えシーケンスの過程において、後述する通信切替制御データとしての通信切替え状態通知データが情報提供サーバ2へ通知されるときに、そのときの測定されたスループットが、通信切替え状態通知データとして、送信される。
【0047】
アプリケーションデータシームレス切替処理部109は、携帯用バッファ111及び無線LAN用バッファ112に蓄積される受信データ(アプリケーションデータ)を、後述するように、読み出す処理を行なうものであって、携帯電話11から受信されるアプリケーションデータと無線LAN端末12から受信されるアプリケーションデータとをシームレスに繋ぎ替える処理を行なう。
【0048】
移動体通信切替制御処理部106は、上記のように、通信切替制御データとしての通信切替え状態通知データが情報提供サーバ2へ通知されるとき、アプリケーションシームレス切替処理部109から携帯用バッファ111の書き込み位置と読み出し位置とを取り込み、これら書き込み位置と読み出し位置とからこのときの携帯用バッファ111での未読出しのアプリケーションデータのデータ量、即ち、残データ量を求め、スループットとともに、通信切替え状態通知データとして無線LAN端末12から情報提供サーバ2に送信される。
【0049】
また、移動体通信切替制御処理部106は、通信切替え状態通知データが情報提供サーバ2に送信されると、後述するように、情報提供サーバ2でこの通信切替え状態通知データなどを用いて携帯用バッファ111から無線LAN用バッファ112へアプリケーションデータの読み出しを切り替える位置を決定し、これを携帯端末1へ送信するが、これを無線LAN端末12で受信した携帯端末1では、通信切替え制御データCLとして移動端末通信切替制御処理部106が取得し、この切替え位置をアプリケーションデータシームレス切替処理部109に通知する。これにより、アプリケーションデータシームレス切替処理部109は、携帯用バッファ111での通知されてこの切替え位置で、携帯用バッファ111から無線LAN用バッファ112へとアプリケーションデータの読み出しが切替られる。
【0050】
アプリケーションデータ処理部110は、アプリケーションデータシームレス切替処理部109からのアプリケーションデータに固有の処理を施す処理部であり、例えば、ファイル転送であれば、所定のプロトコル処理を施した後、ユーザデータ部分を抽出する処理を行ない、映像伝送であれば、映像データを抽出してデコードする処理を行なう。
【0051】
また、アプリケーションデータ処理部110は、所定の受信処理を行なった後、情報表示部13へユーザデータを出力する処理を行ない、ユーザ操作部14からの指示によって送信データを受けた場合には、これに所定のパケット化などの処理を施し、アプリケーションデータシームレス切替処理部109へ送出する。この送信データが、アプリケーションデータGとして、アプリケーションデータシームレス切替処理部109から移動端末送信アプリケーション/通信切替制御データ転送処理部105に供給され、上記のように、携帯電話11もしくは無線LAN端末12から情報提供サーバ2に送信される。
【0052】
図3は図1における情報提供サーバ2の一具体例を示すブロック構成図であって、21はインターネット接続インタフェース部、22は配信情報蓄積部、201はサーバシステム全体制御部、202はインターネット通信制御処理部、203はサーバ受信アプリケーション/通信切替制御データ転送処理部、204はサーバ通信切替制御処理部、204aはタイマ、205はサーバ送信アプリケーション/通信切替制御データ転送処理部、206,207は送信バッファ、208は配信読出し制御処理部である。
【0053】
同図において、情報提供サーバ2は、情報提供サーバ2全体を制御するサーバシステム全体制御部201と配信情報蓄積部22とから構成されており、また、インターネット接続インタフェース部21を介してインターネット20(図1)に接続されている。サーバシステム全体制御部201は、図示していないが、CPU,ROM,RAMなどで構成されるものであり、主としてソフトウェア処理により、情報提供サーバ2全体の制御を行なう。また、配信情報蓄積部22は、移動端末1へ配信するアプリケーションデータを蓄積管理する。また、インターネット接続インタフェース部21は、インターネット20との通信接続のための、例えば、モデムやルータなどであり、これにより、情報提供サーバ2がインターネット20と接続して移動端末1と通信を行なう。
【0054】
サーバシステム全体制御部201は、インターネット通信制御処理部202,サーバ受信アプリケーション/通信切替制御データ転送処理部203,サーバ通信切替制御処理部204,サーバ送信アプリケーション/通信切替制御データ転送処理部205,送信バッファ206,207及び配信読出し制御理処部208から構成されており、以下、これら構成要素について説明する。
【0055】
インターネット通信制御処理部202は、インターネット接続インタフェース部21との通信に係わるイーサネット(登録商標)などによる通信及びインターネット通信に係わるTCP/IP通信などの所定の通信プロトコル処理を行なう。
【0056】
サーバ受信アプリケーション/通信切替制御データ転送処理部203は、インターネット通信制御処理部202からの受信データがアプリケーションデータであるか、通信切替制御データであるかを識別し、アプリケーションデータaを配信読出し制御処理部208へ転送し、通信切替制御データbをサーバ通信切替制御処理部204へ転送する処理を行なう。
【0057】
これらアプリケーションデータと通信切替制御データとの識別は、以下に示すサーバ通信切替制御部204で管理する通信状態を基に行なう。
【0058】
サーバ通信切替制御処理部204は、移動端末1での移動端末通信切替制御処理部106のような通信切替制御データの生成と通信を行ない、図4に示す通信切替えシーケンス処理を行なうものであり、また、移動端末1でのアプリケーションデータの通信状態と対応つけるように、情報提供サーバ2での通信状態を管理する処理を行ない、サーバ受信アプリケーション/通信切替制御データ転送処理部203へ通知する。また、サーバ通信切替制御処理部204には、タイマ204aが設けられており、後述するように、情報提供サーバ2と移動端末1との間の往復の通信時間を計測するのに用いられる。
【0059】
以下、サーバ通信切替制御処理部204での通信状態管理について説明する。
【0060】
情報提供サーバ2には、携帯電話通信網303を介して移動端末1に通信するためのIPアドレス(即ち、情報提供サーバ2に対し、移動端末1の携帯電話11に割り当てられた送信元IPアドレスA)と、無線LAN通信網307を介して移動端末1に通信するためのIPアドレス(即ち、情報提供サーバに対し、移動端末1の無線LAN端末12に割り当てられた送信元IPアドレスB)とが割り当てられている。情報提供サーバ2が携帯電話通信網303を介して携帯電話11にデータを送信する場合には、送信元IPアドレスAを使用して携帯電話11を送信先として指定し、これにより、このデータは、携帯電話通信網303を介して携帯電話11に送信される。同様にして、情報提供サーバ2が無線LAN通信網307を介して無線LAN端末12にデータを送信する場合には、送信元IPアドレスBを使用して無線LAN端末12を送信先として指定し、これにより、このデータは、無線LAN通信網307を介して無線LAN端末12に送信される。
【0061】
一方、移動端末1では、これら送信元IPアドレスA,Bが移動端末通信切替処理部106に保存されており、携帯電話11から情報提供サーバ2に通信切替え制御データをインターネット通信する場合には、この通信切替え制御データに送信元IPアドレスAを付加して携帯電話11から通信し、無線LAN端末12から情報提供サーバ2に通信切替え制御データをインターネット通信する場合には、この通信切替え制御データに送信元IPアドレスBを付加して無線LAN端末12から通信する、このように、移動端末1から情報提供サーバに通信切替え制御データを送信する場合には、使用する通信網に応じて、これに該当する送信元IPアドレスを送信する通信切替え制御データに付加する。
【0062】
そこで、情報提供サーバ2のサーバ通信切替制御処理部204では、移動端末1からの通信切替え制御データに付加されている送信元IPアドレスを基に、この通信切替え制御データが携帯電話11から送信されたものであるか、無線LAN端末12から送信されたものであるかを判定することができ、これにより、移動端末1の通信状態(携帯電話11を用いた通信状態と無線LAN端末12を用いた通信状態)を管理する処理を行なう。
【0063】
サーバ通信切替制御処理部204では、最初に移動端末1と通信接続したときに、送信元IPアドレスA(即ち、移動端末1における携帯電話11用のIPアドレス)により、アプリケーションデータを携帯電話通信網303を介して携帯電話11に送信するが、また、この送信元IPアドレスAを保持しておき、「アプリケーションデータIPアドレスA通信中状態」として、その通信状態信号cをサーバ送信アプリケーション/通信切替制御データ転送処理部205とサーバ受信アプリケーション/通信切替制御データ転送処理部203とに供給する。そして、この状態で送信元IPアドレスBが付加された携帯端末1からのデータが受信されると、サーバ通信切替制御処理部204は、この受信データを無線LAN端末12から無線LAN通信網307を介して通信された通信切替制御データと認識し、これにより、図4で説明する通信切替えシーケンス処理中の状態を「アプリケーションデータIPアドレスBへの通信切替え待ち状態」とし、通信状態信号cを切り替える。このようにして、通信状態の切替えが完了すると、通信状態を「アプリケーションデータIPアドレスB通信中状態」に遷移させるように、状態遷移制御処理を行なう。
【0064】
また、サーバ通信切替制御処理部204では、タイマ204aにより、携帯端末1からの通信切替え要求の通信切替制御データに対して通信切替え応答の通信切替制御データを携帯端末1に送信するときの送信開始時刻t1を検出して記憶し、この通信切替え応答の通信切替制御データに対して携帯端末1から送信される通信切替え状態通知の通信切替制御データを受信したときの受信時刻t2を検出し、これら送信開始時刻t1と受信時刻t2との差(t2−t1)である応答送受信時間を求め、これと通信切替え状態通知の通信切替制御データに含まれる上記のスループットや残データ量とから、移動端末1での携帯用バッファ111から無線LAN用バッファ112への通信(読出し)切替えのタイミング(読み出し切替え位置)を求める。
【0065】
配信情報読出制御処理部208は、移動端末1からの要求に従って、配信情報蓄積部22から該当する配信データ(アプリケーションデータ)を読み出す処理を行ない、上記の通信状態に応じて、移動端末1が使用する無線通信手段としての送信バッファ206または送信バッファ207へ配信情報蓄積部22から配信データ(アプリケーションデータ)を転送する処理を行なう。ここで、送信バッファ206,207は配信情報蓄積部22から読み出されたこの配信データを記憶する記憶手段であるが、送信バッファ206は移動端末1の携帯電話11に送信するかかる配信データを記憶する記憶手段であり、送信バッファ207は、移動端末1の無線LAN端末12に送信するかかる配信データを記憶する記憶手段である。移動端末1で携帯用バッファ111から無線LAN用バッファ112にアプリケーションデータの読み出しを切り替える通信切替えのときには、詳細は後述する図5で説明するが、送信バッファ206と送信バッファ207に配信情報蓄積部22から読み出したアプリケーションデータを記憶し、これらを夫々携帯電話11と無線LAN端末12に通信する。
【0066】
図4は図1に示すシームレス通信システムでの図2に示す移動端末1でアプリケーションデータのシームレス通信切替え(携帯用バッファ111から無線LAN用バッファ112への中断のないアプリケーションデータの読み出しの切り替え)を行なう際のこの移動端末1と図3に示す情報提供サーバ2との間での通信切替えシーケンスの一具体例を示すフローチャートである。
【0067】
同図において、いま、移動端末1が、携帯電話11を用いて、情報提供サーバ2とアプリケーションデータの通信を行なっている状態にあるものとする(ステップS401)。このときには、移動端末1は、上記の「アプリケーションデータ携帯通信中状態」にあり、情報提供サーバ2では、上記の「アプリケーションデータIPアドレスA通信中状態」にある。
【0068】
移動端末1において、移動端末通信切替制御処理部106が、無線LAN通信制御処理部103取得する通信確立状態情報DLから、無線LAN通信網307を介した無線LAN通信が可能になったことを検出すると(ステップS402)、移動端末通信切替制御処理部106は、この通信確立状態情報DLに基づいて生成した通信状態信号Eを移動端末送信アプリケーション/通信切替制御データ転送処理部105に供給することにより、無線LAN端末12による無線LAN通信網307を用いて情報提供サーバ2との通信切替え制御データHの通信を開始させる(ステップS403)。
【0069】
通信切替え制御データとしては、移動端末1からの通信切替え要求データと、情報提供サーバ2からの通信切替え応答データと、移動端末1からの通信切替え状態通知データと、情報提供サーバ2からの通信切替え確認データと、移動端末1からの通信切替え完了データとからなっている。
【0070】
通信切替え制御データの通信は、移動端末1において、上記のように、無線LAN通信が可能であることを検出すると、開始されるのであるが、まず、最初に、移動端末通信切替制御処理部106(図1)が無線LAN端末12から送信元IPアドレスが付加された通信切替え制御データとしての通信切替え要求データを情報提供サーバ2へ送信し(ステップS4031)、移動端末1を「無線LANへの切替え待ち状態」に遷移する。これに対し、情報提供サーバ2のサーバ通信切替え制御部204は、この通信切替え要求データを受信すると、同様に情報提供サーバ2を「アプリケーションデータIPアドレスBへの切替え待ち状態」に遷移して、通信切替え制御データとしての通信切替え応答データを無線LAN通信網307を介して移動端末1に返信する(ステップS4032)。このとき、情報管理サーバ2のサーバ通信切替制御処理部204(図3)は、情報提供サーバ2と移動端末1との間の送信データの往復の通信時間を取得するために、タイマ204aにより、通信切替え応答データの送信開始時刻t1を記憶しておく(ステップS404)。
【0071】
移動端末1では、無線LAN端末12でこの通信切替え応答データを受信すると、移動端末通信切替制御処理部106により、上記と同様にして、通信切替え制御データとしての通信切替え状態通知データを情報管理サーバ2に送信する(ステップS4033)。ここで、この通信切替え状態通知データは、パラメータとして、スループット計測部108で測定したスループットS1とアプリケーションデータの書き込み,読み出し中の携帯用バッファ111でのこのときのアプリケーションデータの残データ量mとからなっている。
【0072】
情報提供サーバ2では、この通信切替え状態通知データが受信されると、サーバ通信切替制御処理部204でかかるパラメータが抽出され、配信情報読出制御処理部208(図3)にこれが通知される。そこで、この配信情報読出制御処理部208は、通知されたこれらパラメータを基に、アプリケーションデータ切替え位置の調整を行なう(ステップS405)。
【0073】
ここで、このアプリケーションデータ切替え位置について、図5を用いて説明する。
【0074】
図5は情報提供サーバ2における送信バッファ206,バッファ207の状態を示す図であって、アプリケーションデータ切替え位置決定後の移動端末1へ送信する配信情報データ(アプリケーションデータ)の格納状態を模式的に示すものである。
【0075】
同図において、送信バッファ206は携帯電話11への送信データ(アプリケーションデータ)を格納するバッファ、送信バッファ207は無線LAN端末12への送信データ(アプリケーションデータ)を格納するバッファであるが、アプリケーションデータ切替え位置が送信バッファ206側に矢印で示す切替え位置ポインタの位置として設定される。ここでは、このアプリケーションデータ切替え位置は、送信バッファ206の先頭位置(アドレス)から携帯電話11に継続して送信するデータ数(nバイト)分を示す位置としており、この位置を境に、携帯電話11に送信されて移動端末1の携帯用バッファ111で読み出しが行なわれる送信データ(アプリケーションデータ)、即ち、携帯電話通信時の携帯電話用の継続配信データ(以下、単に携帯電話用継続配信データ)と、通信切替えが行なわれて移動端末1の無線LAN用バッファ112で読み出しが行なわれるときに携帯電話11へ送信されるデータ(アプリケーションデータ)、即ち、無線LAN端末へのアプリケーションデータの通信時の携帯電話用の継続配信データ(以下、単に携帯電話11への無線LAN端末用継続配信データという)とに区別している。
【0076】
これに対し、送信バッファ207には、送信バッファ206での携帯電話11への無線LAN端末用継続配信データの書き込み開始とともに、この無線LAN端末用継続配信データと同じ送信データが、無線LAN端末12への無線LAN端末用継続配信データとして、その先頭位置から書き込み開始される。
【0077】
なお、アプリケーションデータ切替えにより、送信バッファ206における携帯電話11への無線LAN端末用継続配信データは、送信バッファ207の先頭位置から無線LAN端末12への無線LAN端末用継続配信データが読み出されて無線LAN端末12に送信され始めても、継続して読み出されて携帯電話11に送信されるものであるが、これは、送信バッファ207に格納した送信データと同一データを送信バッファ206から送信することにより、移動端末1でアプリケーションデータを受信する無線通信手段を携帯電話11から無線LAN端末12へ切り替えるときに、不意の通信失敗などにより、携帯端末1側で無線LAN用バッファ112に無線LAN端末12からのアプリケーションデータが記憶されず、このときに、携帯用バッファ111から全てのアプリケーションデータが読み出されていてしまっていて、アプリケーションデータが途切れてしまうことを防止できるようにするためである。
【0078】
次に、このアプリケーションデータ切替え位置調整(ステップS405)におけるアプリケーションデータ切替え位置nの求め方について説明する。
【0079】
ここで、情報提供サーバ2から移動端末1の無線LAN端末12への通信切替え応答データの送信開始時刻(図4のステップS404で記憶した時刻)をt1、図4のステップS4033で情報提供サーバ2が移動端末1から通知される通信切替え状態通知データを受信する応答受信時刻をt2とすると、情報提供サーバ2がこの通信切替え応答データを送信してから移動端末1からこの通信切替え状態通知データを受信するまでの通信時間は(t2−t1)である。この通信時間(t2−t1)は、移動端末1と情報提供サーバ2との間の往復の通信時間でもある。また、通信切替え状態通知データにより通知されるパラメータでのスループット(単位時間当りのデータ転送量。即ち、携帯用バッファ111,無線LAN用バッファ112でのアプリケーションデータを読み出してアプリケーションデータ処理部110で処理する単位時間当りのデータ量)をS1、同じく未処理アプリケーションデータのデータ量(即ち、携帯端末1で通信切替状態通知データを情報提供サーバ2に送信するときの携帯用バッファ111での残データ量)をmとする。従って、携帯用バッファ111でのこの残データ量mのアプリケーションデータを残らず処理するに要する時間は、m/S1となる。以下、これを残データ処理時間という。
【0080】
ここで、移動端末1で携帯電話11から無線LAN端末12へ無線通信手段を切り替える場合、携帯電話11で、通信中の受信データが携帯用バッファ111に一時蓄積された後、アプリケーションデータ処理部110へ転送されるように通信処理している状況において、携帯電話11で受信されたアプリケーションデータに無線LAN端末12で受信されるアプリケーションデータが、途切れることなく、繋ぎ合わせられるようにするために、携帯用バッファ111が空になる前に無線LAN用バッファ112にアプリケーションデータが、継続配信用データとして、格納されるように調整される。
【0081】
このために、情報提供サーバ2の送信バッファ206に設定されるアプリケーションデータ切替え位置nは、情報提供サーバ2と無線LAN端末12との間の往復の通信時間(t2−t1)と移動端末1の携帯用バッファ111での残データ量mのアプリケーションデータを読み出し処理するのに要する残データ処理時間m/S1との関係に応じて設定される。
【0082】
ここで、携帯用バッファ111の残データ量mは、移動端末1が、情報提供サーバ2からの通信切替え応答データの受信(ステップS4032)に伴って、情報提供サーバ2に通信切替え状態通知データを送信する(ステップS4033)ときのデータ量であり、携帯端末1がこの通信切替情報通報データを送信してから情報提供サーバ2からのアプリケーションデータを無線LAN端末12で受信するまでの時間(即ち、往復通信時間(t2−t1))でも、携帯用バッファ111のアプリケーションデータは読み出し処理されており(即ち、移動端末1で通信切替え状態通知データを送信するときから、携帯用バッファ111で残データ量mのアプリケーションデータの読出し処理が開始される)、情報提供サーバ2からのアプリケーションデータが無線LAN端末12で受信開始するときに携帯用バッファ111にアプリケーションデータが残留していれば、この残データ量mのアプリケーションデータの読み出し処理中に、途切れることなく、アプリケーションデータのつなぎ替えを行なうことができるものである。
【0083】
そこで、情報提供サーバ2が移動端末1に通信切替え応答データを送信して(ステップS4032)から移動端末1から通信切替え状態通知データを受信する(ステップS4033)までの計測された通信時間、即ち、移動端末1,情報提供サーバ2間の往復通信時間(t2−t1)が、携帯端末1で通信切替え状態通知データを送信するときに携帯用バッファ111に残留している未処理アプリケーションデータがアプリケーションデータ処理部110へ転送完了するまでの残データ処理時間(m/S1)より小さい
(t2−t1)≦m/S1
のとき、n=0する。これは、送信バッファ206でのアプリケーションデータ切替え位置nを、通信切替え状態通知データを受信した(ステップS4033)タイミングでの送信バッファ206のアプリケーションデータの書き込み位置とするものである。また、このタイミングから、送信用バッファ207でその先頭位置から同じアプリケーションデータを、無線LAN端末12への無線LAN端末用継続配信データとして、書き込み開始する。そして、送信バッファ206でその読み出し位置がアプリケーションデータ切替え位置nに達すると、このタイミングから、送信用バッファ207でその先頭位置から無線LAN端末12への無線LAN端末用継続配信データとしてのアプリケーションデータの読み出しを開始し、無線LAN端末12に送信する。
【0084】
この場合には、無線LAN端末12に送信されるアプリケーションデータは、携帯電話用バッファ111に蓄積されている未処理アプリケーションデータの処理が終わる前にこの無線LAN端末12で受信開始され、無線LANバッファ112に格納されるので、移動端末1では、携帯用バッファ111の上記残データ量mの未処理アプリケーションデータの処理が終わり次第、無線LAN用バッファ112のアプリケーションデータの読出し処理が可能となり、途切れることなく携帯用バッファ111のアプリケーションデータから無線LAN用バッファ112のアプリケーションデータのつなぎ替えが可能となる。
【0085】
一方、上記のように、移動端末1の移動状態や周囲環境に応じて、データの電送速度が変化し、これにより、携帯用バッファ111でのデータ残量mが変化する。このため、
(t2−t1)>m/S1
となる場合もある。このようなときには、上記のように、送信バッファ206でアプリケーションデータ切替え位置nの設定を行なうと、移動端末1において、無線LAN端末12でアプリケーションデータが受信開始されないうちに、携帯用バッファ111での上記残データ量mの未処理アプリケーションデータの処理が終わってしまい、このときの携帯用バッファ111のアプリケーションデータから無線LAN用バッファ112のアプリケーションデータへのつなぎ替えが行われると、まだ無線LAN用バッファ112にアプリケーションデータが格納されていないので、途切れが生ずることになる。
【0086】
そこで、これを防ぐために、この実施形態では、
(t2−t1)≦(m+n)/S1
となるように、nを設定する。即ち、n≧{(t2−t1)×S1−m}となるようにして、この値nをアプリケーションデータ切替え位置とするものである。ここで、このアプリケーションデータ切替え位置nは、携帯用バッファ111で残データ量mに続いて格納されるデータ量nの位置に相当する位置である。
【0087】
換言すると、移動端末1では、携帯用バッファ111で残データ量mに続いてアプリケーションデータの書き込みを継続し、残データ量mのアプリケーションデータの読み出しが終わってからも、携帯用バッファ111からのアプリケーションデータの読み取りを継続し、残データ量mのアプリケーションデータの読み出しが終わってからデータ量nのアプリケーションデータの読み出し位置となるときまで、携帯用バッファ111のアプリケーションデータから無線LAN用バッファ112のアプリケーションデータへのつなぎ切り替えを遅らせるものであり、これにより、無線LAN端末12からアプリケーションデータが受信されて無線LAN用バッファ112に書き込まれたアプリケーションデータの書き込み開始位置(先頭位置)からこのアプリケーションデータの読み出しが開始されるので、かかるアプリケーションデータのつなぎ切り替えが確実に行なわれることになる。
【0088】
そこで、このため、情報提供サーバ2では、送信バッファ206でのアプリケーションデータ切替え位置nを、通信切替状態通知データを受信した(ステップS4033)タイミングでの送信バッファ206のアプリケーションデータの書き込み位置(図5に示す送信バッファ206での「アプリケーションデータ切替え位置(n)」として示す携帯電話用継続配信データの最後の位置)よりも、データ量nだけアプリケーションデータが、無線LAN端末用継続配信データとして、追加して書き込まれる位置まで遅らせるものである。そして、このタイミングから、送信用バッファ207でその先頭位置から同じアプリケーションデータを、無線LAN端末用継続配信データとして、書き込み開始する。送信バッファ206でその読み出し位置がアプリケーションデータ切替え位置nに達すると、このタイミングから、送信用バッファ207でその先頭位置から無線LAN端末用継続配信データとしてのアプリケーションデータの読み出しを開始する。
【0089】
この場合には、無線LAN端末12に送信されるアプリケーションデータは、携帯電話用バッファ111に蓄積されている未処理アプリケーションデータの処理が終わる前にこの無線LAN端末12で受信開始され、無線LANバッファ112に格納されるので、移動端末1では、携帯用バッファ111の未処理アプリケーションデータの処理が終わり次第、無線LAN用バッファ112のアプリケーションデータの読出し処理が可能となり、途切れることなく携帯用バッファ111のアプリケーションデータから無線LAN用バッファ112のアプリケーションデータのつなぎ替えが可能となる。
【0090】
このように、配信情報読出制御処理部208でアプリケーションデータ切替え位置調整(図4のステップS405)を行ない、アプリケーションデータ切替え位置nを決定すると、これをサーバ通信切替制御処理部204へ通知する。そして、サーバ通信切替制御処理部204は、このアプリケーションデータ切替え位置nをパラメータとして含めた通信切替え確認データを移動端末1へ送信する(図4のステップS4034)。
【0091】
移動端末1では、通信切替え状態通知データを送信した(図4のステップS4033)後、情報提供サーバ2からの通信切替え確認データを受信すると、移動端末通信切替制御処理部106でこのアプリケーションデータ切替え位置nを抽出し、アプリケーションデータシームレス切替処理部109へ通知する。そこで、このアプリケーションデータシームレス切替処理部109は、通知されたアプリケーションデータ切替え位置nにより、携帯用バッファ111から無線LAN用バッファ112へのアプリケーションデータのつなぎ替えを行なう(ステップS405)。
【0092】
図6はかかるアプリケーションデータのつなぎ替え処理の一具体例を示す図である。ここで、図6(a)は通信切替え要求データの送信(ステッフS4031)時の、同図(b)は通信切替え確認データの受信(ステップS4034)時の夫々移動端末1における携帯用バッファ111と無線LAN用バッファ112の受信アプリケーションデータの格納状態を示すものである。
【0093】
通信切替え要求時は、携帯電話11で通信している状態であり、図示のように携帯用バッファ111にはアプリケーションデータ処理が未処理の未処理アプリケーションデータが蓄積されている状態を示している。
【0094】
図6において、バッファ111,112からのデータ読出し及び書込みはそのバッファの先頭位置から行ない、データ読出しは読出しポインタをインクリメントし、データ書込みは書込みポインタをインクリメントする。そして、読出しポインタが書込みポインタと等しくなると、そのバッファの全てのデータが読み出されたことを示すものである。
【0095】
図6(a)は、携帯用バッファ111において、その先頭位置からアプリケーションデータが書き込まれ、ktai_wpt1で示す書込みポインタ位置まで携帯電話11から受信されたアプリケーションデータが格納されていることを示すものである。
【0096】
同図において、データの読出しは、この携帯用バッファ111の先頭位置から行なわれ、ktai_rpt1で示す読出しポインタ位置まで読み出されているものとする。従って、未処理アプリケーションデータの残データ量mは(ktai_wpt1−ktai_rpt1)となる。
【0097】
一方、無線LAN用バッファ112には、アプリケーションデータは格納されておらず、読出しポインタ(lan_rpt1)と書込みポインタ(lan_wpt1)とは、ともにこの無線LAN用バッファ112の先頭位置にある。
【0098】
ここで、情報提供サーバ2は、通信切替え確認データの送信(図4のステップS4034)後、携帯電話11に図5に示した送信バッファ206に格納したアプリケーションデータを送信する(図4のステップS407)のと同時に、無線LAN端末12にも、送信バッファ207に格納したアプリケーションデータを送信する(図4のステップS408)。
【0099】
図6(b)は、移動端末1において、携帯電話11で受信されたこの情報提供サーバ2からのアプリケーションデータの携帯用バッファ111での格納状態と、無線LAN端末12で受信されたこの情報提供サーバ2からのアプリケーションデータの無線LAN用バッファ112での格納状態とを示すものである。
【0100】
同図において、携帯用バッファ111では、未処理のアプリケーションデータがシーケンス処理(この場合には、携帯電話11のみで通信中の処理)の間に位置ktai_rpt2まで読み出され、このときの書き込み位置はktai_wpt1であって、未処理のアプリケーションデータの残データ量mは(ktai_wpt1-ktai_rpt2)になる。そして、未処理のアプリケーションデータの書込みポインタ位置ktai_wpt1からは、携帯電話11で受信された情報提供サーバ2の送信バッファ206からの新たなアプリケーションデータの切替え位置以降の継続配信データとしてのアプリケーションデータ(図5)が格納されている。また、この切替え位置からは、無線LAN用バッファ112でも、無線LAN端末12で受信される送信バッファ207からの継続配信データとしてのアプリケーションデータ(図5)が格納される。
【0101】
通信切替え確認データで通知(図4のステップS4034)されるアプリケーションデータ切替え位置nは、図6(b)に示す切替え位置ポインタ(ktai_wpt1+n)となり、移動端末1のアプリケーションデータつなぎ替え処理(図4のステップS406)としては、まず、携帯用バッファ111で未処理のアプリケーションデータを処理した後、アプリケーションデータ切り替え位置nまで携帯用バッファ111からアプリケーションデータを読み出し、アプリケーションデータ処理部110へ読み出したデータを転送する処理を行なう(図4のステップS407)。一方、携帯用バッファ111で未処理のアプリケーションデータの読み出し処理が終了すると、処理無線LAN端末12から情報提供サーバ2の送信バッファ207からの継続配信データとしてのアプリケーションデータが受信され(図4のステップS408)、無線LAN用バッファ112の先頭位置から蓄積されていくが、無線LAN用バッファ112からアプリケーションデータ処理部110へのアプリケーションデータの読み出しは行なわれない。
【0102】
次に、携帯用バッファ111でアプリケーションデータ切替え位置nまでのアプリケーションデータの読み出し終わると、無線LAN用バッファ112の先頭位置から既に格納される継続配信データとしてのアプリケーションデータの読み出し開始され、読出しバッファが携帯用バッファ111から無線LAN用バッファ112に切り替えられる。無線LAN用バッファ112から読み出されたアプリケーションデータは、アプリケーションデータ処理部110へ転送される(図4のステップS410)。そして、引き続き、携帯電話11から受信されるアプリケーションデータは携帯用バッファ111に蓄積され(図4のステップS411)、無線LAN端末12から受信されるアプリケーションデータは無線LAN用バッファ112に蓄積される(図4のステップS412)が、携帯用バッファ111からアプリケーションデータ処理部110へのアプリケーションデータの読み出しは停止されている。
【0103】
以上のように、移動端末1では、情報提供サーバ2から通知されるアプリケーションデータ切替え位置nに基づいて、携帯用バッファ111と無線LAN用バッファ112とのアプリケーションデータの読出し切替え制御が行なわれることにより、携帯電話11を使って受信されたアプリケーションデータと無線LAN端末12を使って受信されたアプリケーションデータのつなぎ替えを、中断させることなく、シームレスに行なうことが可能となる。
【0104】
また、携帯電話11でも、無線LAN端末12と同じアプリケーションデータの受信を継続させているので、無線LAN端末12の無線回線の不意の切断などにより、無線LAN用バッファ112にアプリケーションデータが格納されなかった場合には、携帯用バッファ111からアプリケーションデータ切替え位置nまで読み出した後、無線LAN用バッファ112からアプリケーションデータ読み出そうとしたときに、そこでの書込みポインタが読出しポインタと同じとなり、アプリケーションデータが格納されていないことを検出することにより、無線LAN端末12からアプリケーションデータが受信がなされず、無線LAN用バッファ112にアプリケーションデータが蓄積されていないと判定し、引き続き携帯用バッファ111に格納されたアプリケーションデータを処理することにより、アプリケーションデータが中断してしまうことを防ぐことが可能となる。
【0105】
そして、移動端末1において、無線LAN用バッファ112からアプリケーションデータを読み出してアプリケーションデータ処理部110で処理を開始すると、移動端末通信切替制御処理部106は通信状態を「アプリケーションデータ無線LAN端末通信中状態」に遷移させ、携帯電話11からパラメータとして通信切替えの正常終了を示すデータを含む通信切替え完了確認データを、通信切替え制御データとして、情報提供サーバ2へ通知する(図4のステップS413のステップS4131)。
【0106】
情報提供サーバ2では、この通信切替え制御データによる通知を受けると、この通信切替え制御データをサーバ通信切替制御処理部204を介して配信情報読出制御処理部208へ通知し、携帯電話11へのアプリケーションデータの配信を停止させる処理を行ない(図4のステップS414)、アプリケーションデータの通信切替えを完了する。
【0107】
一方、上記のアプリケーションデータ切替えが失敗した場合には、移動端末1は、パラメータとして、通信切替えの異常終了を示すデータを含めた通信切替え完了確認データを、通信切替えデータとして、情報提供サーバ2へ通知する。これにより、情報提供サーバ2では、無線LAN端末12へのアプリケーションデータの送信を停止し(図4のステップS414)、携帯電話11へのアプリケーションデータの送信(図4のステップS415)、携帯用バッファ111への書き込み(図4のステップS416)を継続させることも可能である。
【0108】
以上説明したように、この実施形態では、情報提供サーバ2において、無線通信手段の切替えに伴ってアプリケーションデータの切り替えを行なう場合、その切替え前の無線通信手段へ送信したアプリケーションデータをバッファに蓄積させた状態で、切り替える無線通信手段へアプリケーションデータを送信して、アプリケーションデータ切替え位置を通知するので、移動端末1では、情報提供サーバ2から通信されるアプリケーションデータ切替え位置を基準に、処理するアプリケーションデータを読み出すバッファを切り替えるだけで切り替えるアプリケーションデータの連続性が確保され、良好なシームレス通信を実現することが可能となる。
【0109】
移動端末1では、情報提供サーバ2から通知されるデータ数分を、通常通り、読み出し、読み出すバッファを切り替えるだけで、アプリケーションデータが、途切れることなく、シームレスにつなぎ替えることができるため、双方の無線通信手段から受信されるアプリケーションデータをチェックして同期をとるための処理が不要となり、かかる処理負荷の低減を図ることが可能となる。
【0110】
また、切替え先のバッファに受信されるアプリケーションデータが格納されていないときには、引き続き切り替え前バッファからアプリケーションデータを取得し続けることができ、これにより、バッファの切替え時でのアプリケーションデータの連続性を確保することができるので、不意に無線回線の切断が生じたような場合でも、シームレスに通信を継続させることが可能となる。
【0111】
また、アプリケーションデータの切り替えのための通信切替え制御データは、アプリケーションデータの通信をしていない無線通信手段を用いて通信するものであるから、通信中のアプリケーションデータのスループットを低下させてしまうような事態を防止することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明は、複数の無線通信手段を搭載した通信モデムなどの通信端末で利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明によるシームレス通信方法及びこれを用いた通信システムの一実施形態を示すシステム構成図である。
【図2】図1における移動端末の一具体例を示すブロック構成図である。
【図3】図1における情報提供サーバの一具体例を示すブロック構成図である。
【図4】図1に示すシームレス通信システムでの図2に示す移動端末でアプリケーションデータのシームレス通信切替えを行なう際の移動端末と図3に示す情報提供サーバとの間での通信切替えシーケンスの一具体例を示すフローチャートである。
【図5】図3に示す情報提供サーバにおける送信バッファの状態を示す図である。
【図6】図2に示す携帯端末と図3に示す情報提供サーバとでのアプリケーションデータのつなぎ替え処理の一具体例を示す図である。
【符号の説明】
【0114】
1 移動端末
2 情報提供サーバ
11 携帯電話
12 無線LAN端末
13 情報表示部
14 ユーザ操作部
20 インターネット
21 インターネット接続インタフェース部
22 配信情報蓄積部
101 移動端末システム制御部
102 携帯電話通信制御処理部
103 無線LAN通信制御処理部
104 移動端末受信アプリケーション/通信切替制御データ転送処理部
105 移動端末送信アプリケーション/通信切替制御データ転送処理部
106 移動端末通信切替制御処理部
107 通信切替判定処理部
108 スループット計測部
109 アプリケーションデータシームレス切替処理部
110 アプリケーションデータ処理部
111 携帯用バッファ
112 無線LAN用バッファ
201 サーバシステム制御部
202 インターネット通信制御処理部
203 サーバ受信アプリケーション/通信切替制御データ転送処理部
204 サーバ通信切替制御処理部
204a タイマ
205 サーバ送信アプリケーション/通信切替制御データ転送処理部
206,207 送信バッファ
208 配信情報読出制御処理部
301 携帯電話基地局
302 携帯電話通信エリア
303 携帯電話通信網
304 携帯電話対応ISP
305 無線LAN基地局
306 無線LAN通信エリア
307 無線LAN通信網
308 無線LAN対応ISP

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1,第2の無線通信手段を備えた移動端末が、所定の通信データを配信する情報提供サーバと該第1の無線通信手段による通信中に、該第2の無線通信手段へ切り替えて通信を継続するシームレス通信方法において、
該移動端末に、
第1の無線通信手段からの受信データを一時記憶する第1記憶ステップと、
第2の無線通信手段からの受信データを一時記憶する第2記憶ステップと、
該第1記憶ステップでの残データ量と該第1の無線通信手段によるスループットを該情報提供サーバに通知して通信切替えを制御する移動端末通信切替制御ステップと
を設け、
該情報提供サーバに、
該移動端末から通知される該第1記憶ステップの該残データ量と該スループットをもとに、該第1記憶ステップに蓄積データが残っている状態で該第2記憶ステップへ継続配信データが蓄積される該第1の無線通信手段への継続送信データ量を決定し、該第1の無線通信手段への通信データと該第2の無線通信手段への通信データとの送出を制御する配信情報読出制御ステップと、
該第1の無線通信手段への該継続送信データ量を該移動端末へ通知して通信切替えを制御するサーバ通信切替制御ステップと
を設け、
該情報提供サーバは、少なくとも該継続送信データ量分の通信データを該第1の無線通信手段へ送信継続すると同時に、該第2の無線通信手段へ該継続送信データ量分以降の通信データを先に送信し、
該移動端末は、該情報提供サーバから通知される該継続送信データ量分までを該第1記憶ステップで記憶された分から読み出し、それ以降の通信データを該第2記憶ステップで記憶された分から読み出すことにより、通信データのつなぎ替えを行なう
ことを特徴とするシームレス通信方法。
【請求項2】
請求項1記載のシームレス通信方法において、
前記移動端末通信切替制御ステップによる前記情報提供サーバへの通知と、前記サーバ通信切替制御ステップによる前記移動端末への通知とは、前記移動端末での前記第2の無線通信手段によって行なうことを特徴とするシームレス通信方法。
【請求項3】
請求項1または2記載のシームレス通信方法において、
前記情報提供サーバは、前記移動端末での前記第1の無線通信手段への前記継続送信データ量分以降のデータも、前記第1の無線通信手段へ送信継続し、
前記移動端末は、前記継続送信データ量分までを前記第1記憶ステップで記憶された分から読み出した後の前記第2記憶ステップで記憶された分からの通信データ読み出しに際し、前記第2のバッファで記憶されるべき通信データがない場合には、前記第1記憶ステップに蓄積される前記継続送信データ量分以降のデータを読み出して通信を継続する
ことを特徴とする請求項1または2記載のシームレス通信方法。
【請求項4】
第1,第2の無線通信手段を備えた移動端末が、所定の通信データを配信する情報提供サーバと該第1の無線通信手段による通信中に、該第2の無線通信手段へ切り替えて通信を継続するシームレス通信システムにおいて、
該移動端末に、
該第1の無線通信手段からの受信データを一時記憶する第1バッファと、
該第2の無線通信手段からの受信データを一時記憶する第2バッファと、
該第1バッファの残データ量と該第1の無線通信手段によるスループットとを該情報提供サーバに通知して通信切替えを制御する移動端末通信切替制御手段と
を設け、
該情報提供サーバに、
該移動端末から通知される該第1バッファの該残データ量と該スループットとをもとに、該第1バッファに蓄積データが残っている状態で該第2バッファへ継続通信データが蓄積される第1の無線通信手段への継続送信データ量を決定し、該第1の無線通信手段への通信データと該第2の無線通信手段への通信データとの送出を制御する配信情報読出制御手段と、
該第1の無線通信手段への該継続送信データ量を該移動端末へ通知して通信切替えを制御するサーバ通信切替制御手段と
を設け、
該情報提供サーバは、少なくとも該継続送信データ量分の通信データを該第1の無線通信手段に送信継続すると同時に、該第2の無線通信手段へ該継続送信データ量分以降の通信データを先に送信し、
該移動端末は、該情報提供サーバから通知される該継続送信データ量分までを該第1バッファから読み出し、それ以降の通信データは該第2バッファから読み出すことにより、通信データのつなぎ替えを行なう
ことを特徴とする通信システム。
【請求項5】
請求項4記載の通信システムにおいて、
前記移動端末通信切替制御手段による前記情報提供サーバへの通知と、前記サーバ通信切替制御手段による前記移動端末への通知とは、前記移動端末での第2の無線通信手段によって行なうことを特徴とする通信システム。
【請求項6】
請求項4または5記載の通信システムにおいて、
前記情報提供サーバは、前記移動端末での前記第1の無線通信手段への前記継続送信データ量分以降のデータも、前記第1の無線通信手段へ送信継続し、
前記移動端末は、前記継続送信データ量分までを前記第1バッファから読み出した後の前記第2バッファからの通信データの読み出しに際し、前記第2バッファに通信データがない場合には、前記第1バッファに蓄積される前記継続送信データ量分以降のデータを読み出して通信を継続する
ことを特徴とする通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−124202(P2010−124202A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−295599(P2008−295599)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】