説明

シールドケーブル

【課題】シールドケーブルを機器側接続部に機械的に固定し、かつ、そのシールド部を機器側接続部に電気的に接続する作業を、簡易に行えるようにすること。
【解決手段】挿入孔部13を有する機器側接続部12に接続されるシールドケーブル20である。シールドケーブル20は、電線22と、電線22の外周囲を覆うシールド部24と、電線22の端部の外周側に装着される内側筒部材32と、挿入孔部13の内周面に係止固定可能な弾性係止部44を有し、内側筒部材32との間でシールド部24を挟込み固定する態様で、内側筒部材32の外周に装着される外側筒部材40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シールドケーブルの端部を機器に接続する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用の高圧配線として、電線の外周囲を編組等のシールド部で覆ったシールドケーブルが用いられている。かかるシールドケーブルの端部を機器に接続する技術が特許文献1及び2に開示されている。
【0003】
特許文献1には、シールド電線が挿通される略円筒状のハウジングと、このハウジングから突出したシールド電線の編組の端部をハウジングの外周面に折返した状態で、ハウジングに冠着される金属シェルとを備えたシールド電線の端末処理構造が開示されている。この端末処理構造では、前記金属シェルがモータケースの電線挿入口に挿入されることで、編組が金属シェル及びモータケースを介してアース接地される。また、この状態で、ハウジングに突設されたフランジ部がボルトでモータケースに取付けられることで、シールド電線の端部の機械的な固定が図られている。
【0004】
特許文献2には、シールド電線にストッパ部材と抜止部材とを取付けたシールド電線の取付装置が開示されている。シールド電線のシースの端末には支持筒が外嵌されており、この支持筒上にシールド層が折返され、このシールド層の折返し部分を覆うように抜止部材が嵌め込まれて加締め付けされている。このシールド電線の取付装置では、抜止部材をシールドケースの取付孔に挿入すると、ストッパ部材及び抜止部材の弾性抜止片が取付孔の孔縁に当接することで、シールド電線の軸方向の移動が規制される。また、この状態で、弾性抜止片の先端の弾性接触部が取付孔の内周面に当接することで、シールド電線のシールド層がシールドケースに導通可能に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−112924号公報
【特許文献2】特開2000−175341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、ハウジングに突設されたフランジ部がボルトでモータケースに取付けられる構成であるため、機器への組付工程においてボルトによる固定作業が必要となってしまう。しかも、ボルトの固定作業は、ボルトの確実な締付け作業を行うため、当該工程においてボルト締する際のトルク管理等が必要となり、煩雑な作業となってしまう。
【0007】
また、特許文献2に開示の技術では、抜止部材を加締め固定しているため、加締め金型等を用いた加締め作業が必要となってしまう。しかも、加締め作業においては、加締め量の管理を行う必要があるため、当該作業もまた煩雑となってしまう。
【0008】
そこで、本発明は、シールドケーブルを機器側接続部に機械的に固定し、かつ、そのシールド部を機器側接続部に電気的に接続する作業を、簡易に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、第1の態様は、挿入孔部を有する機器側接続部に接続されるシールドケーブルであって、電線と、前記電線の外周囲を覆うシールド部と、前記電線の端部の外周側に装着される内側筒部材と、前記挿入孔部の内周面に係止固定可能な弾性係止部を有し、前記内側筒部材との間で前記シールド部を挟込み固定する態様で、前記内側筒部材の外周に装着される外側筒部材とを備える。
【0010】
第2の態様は、第1の態様に係るシールドケーブルであって、前記内側筒部材は、前記電線の端部で前記シールド部の外周を覆うように装着されている。
【0011】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係るシールドケーブルであって、前記シールド部が前記内側筒部材の先端部で折返され、その折返し部分の内周側部分及び外周側部分の少なくとも一方が、前記内側筒部材と前記外側筒部材との間で挟込み固定されている。
【0012】
第4の態様は、第3の態様に係るシールドケーブルであって、前記外側筒部材が、前記弾性係止部が形成され前記内側筒部材の外周側に配設される外側筒本体部と、前記内側筒部材の先端部の内周部に嵌め込まれる嵌め込み部を有し、前記シールド部が前記内側筒部材の先端部の内周部と前記嵌め込み部との間に挟込み固定される。
【0013】
第5の態様は、第1〜第4のいずれか1つの態様に係るシールドケーブルであって、前記外側筒部材の外周周りに前記弾性係止部が複数形成されている。
【0014】
第6の態様は、第1〜第5のいずれか1つの態様に係るシールドケーブルであって、前記電線の端部に、前記挿入孔部に圧入可能な防水栓が外嵌めされている。
【発明の効果】
【0015】
第1の態様によると、外側筒部材を機器側接続部の挿入孔部に挿入すると、弾性係止部が挿入孔部の内周面に係止固定される。このため、シールド部は、内側筒部材と外側筒部材との間に挟込み固定構造及び弾性係止部と挿入孔部の内周面との係止固定構造を介して、機器側接続部に機械的に固定されると共に電気的にも接続される。このため、シールドケーブルを機器側接続部に機械的に固定し、かつ、そのシールド部を機器側接続部に電気的に接続する作業を、簡易に行える。
【0016】
第2の態様によると、内側筒部材によってシールド部を覆うことで、シールド部を保護することができる。
【0017】
第3の態様によると、前記シールド部の折返し部分の内周側部分及び外周側部分の少なくとも一方が内側筒部材と外側筒部材との間で挟込み固定されているため、当該挟込み固定を容易に行うことができる。
【0018】
第4の態様によると、弾性係止部の弾性変形の影響を抑制して、前記シールド部を前記内側筒部材の先端部の内周部と前記嵌め込み部との間に安定して挟込み固定することができる。
【0019】
第5の態様によると、複数の弾性係止部それぞれを変形させることによって、挿入作業を容易に行えると共に外側筒部材と機器側接続部とのより確実な接触を図ることができる。
【0020】
第6の態様によると、防水栓を挿入孔部に挿入することで、電線がより確実に位置決めされる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態に係るシールドケーブルが機器側接続部に接続された状態を示す一部断面側面図である。
【図2】シールドケーブルが機器側接続部に接続される前の状態を示す一部断面側面図である。
【図3】シールドケーブルの一部拡大断面図である。
【図4】筒部材を示す一部断面側面図である。
【図5】シールドケーブルの製造工程を示す説明図である。
【図6】シールドケーブルの製造工程を示す説明図である。
【図7】シールドケーブルの製造工程を示す説明図である。
【図8】変形例に係るシールドケーブルを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施形態に係るシールドケーブルについて説明する。図1はシールドケーブル20が機器側接続部12に接続された状態を示す一部断面側面図であり、図2はシールドケーブル20が機器側接続部12に接続される前の状態を示す一部断面側面図であり、図3は図2の一部拡大図であり、図4は筒部材30を示す一部断面側面図である。なお、図2において、シールドケーブル20の上半部では内側部材50及び防水栓54が省略されている。
【0023】
このシールドケーブル20は、例えば、車両における電気部品同士の接続配線、特に、高電圧印加用の配線、より具体的には、車両のモータジェネレータとインバータとを接続する配線に用いられる。このシールドケーブル20は、少なくとも1本の電線22と電線22の外周囲を覆うシールド部24と筒部材30とを備えている。筒部材30は、内側筒部材32と外側筒部材40とを有している。
【0024】
電線22は、線状導体の外周囲を、樹脂の押出被覆等によって形成された被覆部で覆った部材である。ここでは、電線22が3本である例で説明するが、電線22は少なくとも1本含まれていればよい。また、ここでは、電線22が断面円形状である例で説明するが、扁平な形状であってもよい。また、ここでは、電線22の端部に端子23が圧着されており、本端子23がハウジング11内の端子に電気的機械的に接続されるようになっている。もっとも、電線22と機器との電気的機械的な接続構成は、当該構成に限られず、オス端子とメス端子との挿入接続による場合等であってもよい。
【0025】
また、ここでは、電線22の端部に内側部材50が取付けられている(図2の下半部参照)。内側部材50は、樹脂等で形成された部材であり、内部に電線22を挿通可能な挿通孔50hを有する円柱状部材である。電線22の端部が前記挿通孔50h内に挿通されることで、電線22の端部よりも中間よりの位置に本内側部材50が取付固定されている。内側部材50は、その他熱収縮チューブ、光硬化樹脂、熱硬化樹脂等による簡易金型で形成されたものであってもよい。もっとも、この内側部材50は、基本的には省略されてもよい部品である。
【0026】
シールド部24は、柔軟な導電性の管状部材によって形成されている。ここでは、シールド部24は、銅、ステンレス、アルミニウム等で形成された細金属線を、管状に編むことにより形成された部材であり、いわゆる編組と呼ばれる部材である。このシールド部24は、電線22の外周囲を覆っており、筒部材30を介してアース接続されることで、電線22と外部との間を電磁的に遮蔽できるようになっている。なお、電線22の端部では、シールド部24は、内側部材50の外周囲を覆っている。
【0027】
また、このシールド部24の端部は筒部材30に対して機械的に固定されると共に、電気的に接続されている。この構成については後に詳述する。
【0028】
なお、電線22の長手方向中間部において、シールド部24の外周囲には、必要に応じてコルゲートチューブ等の保護部材が被せられる。この保護部材によって、本シールドケーブルの保護、防水等が図られる。
【0029】
ここで、本シールドケーブル20の接続対象機器は、モータジェネレータ等の電気機器であり、その電気機器のハウジング11に、機器側接続部12が設けられている。機器側接続部12は、ハウジング11に一体形成された部分であってもよいし、当該ハウジング11にねじ止等で取付固定された部材であってもよい。本機器側接続部12は、導電性部材で形成されたハウジング11或は別のアース用導電路を介して、車体等にアース接続されている。また、機器側接続部12は、銅、ステンレス、アルミニウム等の導電性部材によって形成されており、挿入孔部13を有している。挿入孔部13は、機器側接続部12の内外を貫通しており、ここでは、外側の大径孔部14と内側の小径孔部16とを有している。大径孔部14は、筒部材30が挿入される部分であり、当該筒部材30の外径に応じた孔形状に形成されている。ここでは、大径孔部14は、円孔状に形成され、その内周面に、その奥側から外側に向けて順次拡径すると共に、その最も径が広がった部分で急激に縮径する係止凹部15が形成されている。係止凹部15のうち急激に縮径する環状周面は、後述する弾性係止部44の係止片44bが引っかかるように係止可能な係止環状面15aとしての役割を有している。小径孔部16は、大径孔部14よりも小径で、かつ、上記電線22(ここでは、その端部に圧着された端子23)を挿通可能な程度の円孔状に形成されている。そして、筒部材30から延出する電線22の端部が、小径孔部16を通って機器内に導かれ、当該機器内で図示省略の端子等に電気的機械的に接続される。
【0030】
上記したように筒部材30は、内側筒部材32と外側筒部材40との組合わせによって構成されている。
【0031】
内側筒部材32は、導電性部材によって、電線22の端部の外周側に装着可能に構成されている。より具体的には、内側筒部材32は、例えば、銅、ステンレス、アルミニウム等の金属板材をプレス加工等することによって形成された部材である。内側筒部材32は、円筒状、より具体的には、電線22にシールド部24を被せた外径よりも大きな内径、ここでは、束ねられた電線22の端部に取付けられた内側部材50にシールド部24を被せた径よりも僅かに大きな内径を有する筒形状に形成されている。そして、本内側筒部材32が電線22の端部でシールド部24の外周囲を覆うように装着されるようになっている。ここでは、内側筒部材32は、その軸方向における内径が同じである筒形状であるが、必ずしもその必要はない。また、ここでは、内側筒部材32は、略円形状であるが、電線22、内側部材50の形状、複数の電線22を束ねる形状等に応じて、楕円筒状、角筒状等であってもよい。この内側筒部材32は、電線22及び内側部材50に被せられるだけで十分であり、それらに加締め固定する必要はない。
【0032】
また、内側筒部材32の一端側開口縁部の内周部に、環状突出部34が形成されている。ここでは、内側筒部材32の一端側開口部の周縁部をその内周側に折返すことで、環状突出部34が形成されている。そして、外側筒部材40の嵌め込み部46(後述する)が本環状突出部34に抜止め状に係止するようになっている。もっとも、折返しによって環状突出部34を形成することは必須ではない。環状突出部34は省略されてもよいし、或は、環状突出部34に代えて、プレス加工等によって内側筒部材に外側筒部材を位置決め可能な部分的な凹凸部分を形成してもよい。
【0033】
ここで、上記シールド部24は、内側筒部材32内を通ってその内側筒部材32の一端側に延出している。そして、上記シールド部24のうち内側筒部材32の一端側に延出している部分が、内側筒部材32の一端部で折返され、当該内側筒部材32の外周を覆っている。内側筒部材32の一端部からのシールド部24の延出長は、外側筒部材40の軸方向長さよりも短いことが好ましい。これにより、シールド部24の端部が外側筒部材40より外方にはみ出ないようにすることができ、シールド部24の端部のほつれ抑制による品質安定化、シールド部24の端部による外傷抑制等を図ることができる。もっとも、シールド部24の端部が外側筒部材40より外方にはみ出ていても構わない。また、シールド部24の延出長は、後述する外側筒本体部42の他端部(挿入方向の手前側)と内側筒部材32との間で挟込まれる程度の長さ寸法であることが好ましい。
【0034】
外側筒部材40は、挿入孔部13の内周面の係止凹部15に係止固定可能な弾性係止部44を有し、上記内側筒部材32との間でシールド部24を挟込み固定する態様で、当該内側筒部材32の外周に装着可能に構成されている。
【0035】
より具体的には、外側筒部材40は、例えば、銅、ステンレス、アルミニウム等の金属板材をプレス加工等することによって形成された筒状部材であり、外側筒本体部42と、嵌め込み部46とを有している。
【0036】
外側筒本体部42は、内側筒部材32の一端部(挿入孔部13に対する接続方向先端部)から内側筒部材32の軸方向中間部に至る部分を覆う筒状に形成され、当該内側筒部材32の外周側に配設されるようになっている。また、ここでは、外側筒本体部42の一端部(挿入孔部13に対する接続方向先端部)は、内側筒部材32の外径と略同じ内径を有し、外側筒本体部42の他端部(挿入孔部13に対する接続方向後端部)も内側筒部材32の外径と略同じ内径を有している。このため、外側筒本体部42の一端部及び他端部は、内側筒部材32に密着状態で外嵌めされるようになっている。
【0037】
この外側筒本体部42に、弾性係止部44が形成されている。より具体的には、外側筒本体部42の軸方向中間部には、その軸方向に沿ったスリット42Sがその外周周りに間隔をあけて複数形成され、各スリット42S間の細帯状片が弾性係止部44に形成されている。弾性係止部44は、上記大径孔部14の内周形状に応じて、外側筒本体部42の一端部から他端部に向けて順次突出するように延びる傾斜片44aと、その傾斜片44aの最も突出した部分から外側筒本体部42の他端部の外周面側に向けて延びる係止片44bとを有している。なお、外側筒本体部42の外周面に対する傾斜角度は、傾斜片44aよりも係止片44bの方が大きい。これにより、弾性係止部44が大径孔部14の内周面に形成された係止凹部15内に配設されると共に、当該配設状態で係止片44bが係止環状面15aに対向配置されることにより、挿入孔部13からの筒部材30の抜止めが図られるようになっている。また、係止片44bの先端部は外側筒本体部42の他端側周縁部に連なっているため、内側筒部材32の外周面に対して面接触している。このため、係止片44bの先端部は、内側筒部材32の外周面に対して円滑に移動することができる。
【0038】
嵌め込み部46は、外側筒本体部42の一端部に形成され、内側筒部材32の一端部(先端部)の内周部に嵌め込み可能に形成されている。より具体的には、嵌め込み部46は、外側筒本体部42の一端部より内側に折返された部分であり、外側筒本体部42の一端部内周側に設けられた環状部分47と、環状部分の先端側に設けられた抜止め縁部48を有している。
【0039】
環状部分47は、内側筒部材32の一端側開口の環状突出部34の内側に配設可能な環状形状に形成されている。この環状部分47の外周面と外側筒本体部42の内周面との間には、内側筒部材32の一端部及び環状突出部34を挿入可能な環状の隙間が形成されている。
【0040】
抜止め縁部48は、嵌め込み部46の先端周縁部をその周方向に沿って複数に分割した分割片48aを有している。各分割片48aは、内側筒部材32の内周面に向けて突出する形状を有している。分割片48aは、好ましくは、内側筒部材32の内周面に向けて凸となる略U字状形状、より具体的には、その基端側から先端側に向けて、内側筒部材32の内周面に近づく方向に曲げられた後、内側筒部材32の内周面から離れる方向に向うように曲げられた形状に形成されている(図3参照)。
【0041】
そして、外側筒本体部42の一端側開口部と嵌め込み部46の環状部分47との間に、内側筒部材32の一端側開口部及び環状突出部34を配設した状態で、各分割片48aが環状突出部34の先端周縁部に抜止め状に係止して、外側筒部材40が内側筒部材32に装着されるようになっている。また、この際、内側筒部材32の一端部にシールド部24を折返して配設することで、シールド部24が内側筒部材32の先端部の内周部と嵌め込み部46との間に挟込み固定されるようになっている。
【0042】
また、ここでは、電線22の端部に、防水栓54が外嵌めされている。防水栓54は、ゴム等のエラストマーによって形成された部材であり、内部に電線22を挿入可能な挿入孔54hが形成された柱状部材に形成されている。挿入孔54hは、電線22の外径よりも僅かに小さい。従って、電線22を挿入孔54h内に挿入する際には、挿入孔54hを弾性的に広げつつその挿入作業を行う。これにより、電線22が挿入孔54h内に挿入された状態では、挿入孔54hの内周面が電線22に密着され、電線22が防水栓54に対して位置決め固定されるようになっている。また、防水栓54の外周部には、筒挿入部56とシール部55とを有している。筒挿入部56は、上記筒部材30内にその一端側より挿入可能な円柱状に形成されている。シール部55の外周面には、1つ又は複数の環状突起部55aがその軸方向に沿って設けられている。環状突起部55aの外径は、上記挿入孔部13の小径孔部16の内径よりも大きく(僅かに大きく)設定されており、本シール部55を小径孔部16内に圧入すると、各環状突起部55aが小径孔部16の内周面に圧接される。これにより、挿入孔部13に対して本防水栓54が位置決め固定されると共に、防水栓54と小径孔部16との間を通った水の侵入が抑制されるようになっている。
【0043】
このように構成されたシールドケーブル20の製造方法について説明する。
【0044】
まず、図5に示すように、電線22の端部に内側部材50を取付けると共に、電線22にシールド部24が被せられたものを準備する。シールド部24は、内側部材50に対してある程度延出している。内側部材50を省略する場合には、電線22にシールド部24を被せるだけでよい。ここでは、電線22の端部に端子23が圧着されているが、端子23は後の工程で圧着されてもよい。
【0045】
そして、電線22の端部を、シールド部24の端部と共に、内側筒部材32内に挿入する。これにより、図6に示すように、内側筒部材32の一端部から電線22の端部が延出する共に、シールド部24が内側筒部材32の一端部から延出した状態とする。
【0046】
そして、内側筒部材32の一端部から延出するシールド部24の端部を折返す。これにより、図7に示すように、シールド部24の折返された端部が、内側筒部材32の一端部の外周側に被せられた状態とする。
【0047】
この後、内側筒部材32の一端側より外側筒部材40を外嵌め挿入する。この際、嵌め込み部46の分割片48aの先端側傾斜面を、シールド部24の折返し部分を介して外側筒本体部42の一端側開口部に押し当てることで、嵌め込み部46が外側筒本体部42の内周面から離れる方向に広げられる。これにより、嵌め込み部46と外側筒本体部42との間に、内側筒部材32の一端側開口部及び環状突出部34が配設される。そして、嵌め込み部46の分割片48aが環状突出部34を乗越えると、嵌め込み部46が外側筒本体部42の内周面に近づく方向に弾性復帰する。これにより、外側筒部材40の嵌め込み部46がシールド部24を介して環状突出部34の先端部に抜止め状に係止する。これにより、内側筒部材32と外側筒部材40との間にシールド部24を挟込んだ状態で、外側筒部材40が内側筒部材32に装着される。同時に、内側筒部材32と外側筒部材40との間にシールド部24が挟込み固定される。特に、本実施形態では、シールド部24は、環状突出部34と嵌め込み部46との間に挟込み固定される。また、シールド部24は、内側筒部材32の外周面と、外側筒本体部42の一端部及び他端部との間でも挟込み固定されている。
【0048】
最後に、防水栓54の挿入孔54hに電線22を挿入して、防水栓54を電線22の端部に取付けると、シールドケーブル20が製造される。
【0049】
このシールドケーブル20は、次のようにして機器側接続部12に接続される。まず、筒部材30の一端部に延出する電線22の端部を挿入孔部13に挿入する。そして、防水栓54を小径孔部16内に押込むと共に、筒部材30を大径孔部14内に押込む。すると、防水栓54が小径孔部16内に圧入される。これにより、防水栓54と小径孔部16との間が封止され、当該間を通った水の侵入が抑制される。また、防水栓54が挿入孔部13の軸方向に沿って一定位置で固定されると共に、防水栓54に保持されている電線22も挿入孔部13の軸方向に沿って位置決め保持される。
【0050】
また、筒部材30については、まず、筒部材30の外周囲に設けられた複数の弾性係止部44の傾斜片44aが大径孔部14の外周面に接触する。そして、筒部材30を押込むのに伴って、筒部材30の外周囲の複数の弾性係止部44が筒部材30の内側に向けて押込まれる。これにより、傾斜片44aの基端部、傾斜片44aと係止片44bとの境界部分、係止片44bの先端部を主として弾性変形させつつ、弾性係止部44がその突出寸法を小さくするように弾性変形する。さらに、筒部材30を押込み、傾斜片44aの最も突出する部分(傾斜片44aと係止片44bとの境界部分)が、大径孔部14の開口縁部と係止環状面15aとの間の部分を乗越えると、弾性係止部44が原形状に向けて弾性復帰する。これにより、弾性係止部44が係止凹部15内に配設され、係止片44bがシールド部24を介して係止環状面15aに係止する。これにより、筒部材30が機器側接続部12に抜止め状に固定される。
【0051】
また、内側筒部材32と外側筒部材40との間に挟込み固定されたシールド部24は、筒部材30、特に、機器側接続部12の挿入孔部13の内周面に接触する外側筒部材40を介して機器側接続部12に電気的に接触した状態に維持され、当該機器側接続部12を介してアース接続される。この際、弾性係止部44は、傾斜片44a側の弾性復元力及び係止片44b側の弾性復元力の双方の力によって原形復帰しようとするため、シールド部24はより大きい力で大径孔部14の内周面に向けて押されている。このため、シールド部24は、より確実に大径孔部14の内周面に向けて押付けられ、両者の電気的接触がより確実に得られる。
【0052】
以上のように構成されたシールドケーブル20によると、シールド部24は、内側筒部材32と外側筒部材40との間に挟込み固定されている。また、外側筒部材40を挿入孔部13に挿入すると、弾性係止部44が挿入孔部13の内周面に係止固定される。このため、シールド部24は、内側筒部材32と外側筒部材40との挟込み固定構造及び弾性係止部44と挿入孔部13の内周面との係止固定構造を介して、機器側接続部12に機械的に固定されると共に電気的にも接続される。これにより、シールドケーブル20を機器側接続部12に機械的に固定し、かつ、そのシールド部24を機器側接続部12に電気的に接続する作業を、簡易に行える。
【0053】
また、筒部材30の弾性係止部44を挿入孔部13の内周面に係止させる構成であるため、挿入孔部の両側開口縁部から部品を係止させる構成に比べて、部品点数を少なくすることができる。また、ボルト締のトルク管理、加締め固定の加締め量管理等が不要となり、品質の安定化も可能となる。
【0054】
また、内側筒部材32によってシールド部24が覆われているため、シールド部24を当該内側筒部材32によって保護することができる。
【0055】
また、シールド部24が内側筒部材32の先端部で折返され、その折返し部分の内周側部分及び外周側部分が、内側筒部材32の一端側開口部と外側筒部材40との間で挟込み固定されている。このため、内側筒部材32の一端側から外側筒部材40を外嵌めすることで、シールド部24の挟込み固定を容易に行うことができる。
【0056】
特に、外側筒部材40が、外側筒本体部42と嵌め込み部46とを有し、シールド部24が内側筒部材32の先端部の内周部と嵌め込み部46との間に挟込み固定されているため、弾性係止部44の弾性変形の影響を抑制して、シールド部24を内側筒部材32と外側筒部材40との間で安定して挟込み固定することができる。すなわち、外側筒部材40を挿入孔部13に挿入する際には、弾性係止部44が挿入孔部13の内周面に当接して弾性変形するため、内側筒部材32の外周面と外側筒本体部42との接触状態が変動する。このため、内側筒部材32の外周面と外側筒本体部42との間では、シールド部24の挟込み状態が不安定となる恐れがある。これに対して、内側筒部材32の先端部の内周部と嵌め込み部46との接触状態は、上記弾性係止部44の弾性変形の影響を受け難い。従って、シールド部24を内側筒部材32と外側筒部材40との間で安定して挟込み固定することができることとなる。
【0057】
もっとも、嵌め込み部46が省略等され、シールド部の折返し部分の外周側部分のみを、内側筒部材と外側筒部材との間で挟込む構成であってもよい。また、シールド部24の折返し部分の外周側部分で、内側筒部材が外側筒部材から離れており、内側筒部材と外側筒部材の嵌め込み部との間で、シールド部の折返し部分の内周側部分のみを挟込む構成であってもよい。
【0058】
また、筒部材30を挿入孔部13内に挿入する際には、筒部材30の外周囲に形成された複数の弾性係止部44それぞれの突出寸法を小さくするように弾性変形させることができる。このため、筒部材30の挿入力をなるべく小さくして、その挿入作業を容易に行えるようにすることができる。また、複数の弾性係止部44それぞれがシールド部24を挿入孔部13の内周面に押付けることによって、シールド部24と挿入孔部13の内周面とのより確実な接触を図ることができる。
【0059】
もっとも、弾性係止部44が複数あることは必須ではなく、弾性係止部は1つであってもよい。
【0060】
また、防水栓54を挿入孔部13の小径孔部16に挿入することによって、挿入孔部13を通った水の侵入が抑制されると共に、防水栓54によって電線22がより確実に一定位置に位置決めされる。
【0061】
しかも、防水栓54は、筒部材30内にも嵌め込まれているため、ある程度電線22と筒部材30との位置決め行う役割もある。
【0062】
{変形例}
なお、上記実施形態では、外側筒部材40の外側筒本体部42の一端側開口部の内周面と嵌め込み部46の外周面との間で内側筒部材32の一端側開口部を挟んで、内側筒部材32と外側筒部材40とを合体固定する構成としているが、必ずしもその必要はない。単に内側筒部材の外周側に外側筒部材が密着状に外嵌めされる構成であってもよい。
【0063】
また、内側筒部材32と外側筒部材40との間でシールド部24を挟込む構成も上記例に限られない。例えば、内側筒部材の外周面と外側筒部材の内周面との間でシールド部を挟込む構成であってもよい。
【0064】
また、シールド部24は、内側筒部材32の外周側を通ってその先端側に引出され、内側筒部材32の先端部で当該内側筒部材32の内周側に折返されていてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、弾性係止部44が外側筒本体部42から部分的に切り起された片であったが必ずしもその必要はない。外側筒部材40の一部を外周側に突出させた部分を、弾性係止部として用いてもよい。
【0066】
また、弾性係止部が複数あることは必須ではなく、1つであってもよい。
【0067】
また、図8に示すように、上記内側筒部材32に対応する内側筒部材132及び外側筒部材40に対応する外側筒部材140が楕円筒状に形成されていてもよい。なお、図8では電線22等は省略されている。この場合、楕円の長軸方向に沿って延びる外周部に、上記弾性係止部44に対応する弾性係止部144を1つ又は複数形成するとよい。本変形例は、例えば、接続先機器のレイアウト状の都合等に合わせて採用することができる。
【0068】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【0069】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0070】
12 機器側接続部
13 挿入孔部
14 大径孔部
15 係止凹部
15a 係止環状面
20 シールドケーブル
22 電線
24 シールド部
32、132 内側筒部材
34 環状突出部
40、140 外側筒部材
44、144 弾性係止部
46 嵌め込み部
54 防水栓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入孔部を有する機器側接続部に接続されるシールドケーブルであって、
電線と、
前記電線の外周囲を覆うシールド部と、
前記電線の端部の外周側に装着される内側筒部材と、
前記挿入孔部の内周面に係止固定可能な弾性係止部を有し、前記内側筒部材との間で前記シールド部を挟込み固定する態様で、前記内側筒部材の外周に装着される外側筒部材と、
を備えるシールドケーブル。
【請求項2】
請求項1記載のシールドケーブルであって、
前記内側筒部材は、前記電線の端部で前記シールド部の外周を覆うように装着されている、シールドケーブル。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のシールドケーブルであって、
前記シールド部が前記内側筒部材の先端部で折返され、その折返し部分の内周側部分及び外周側部分の少なくとも一方が、前記内側筒部材と前記外側筒部材との間で挟込み固定されている、シールドケーブル。
【請求項4】
請求項3記載のシールドケーブルであって、
前記外側筒部材が、前記弾性係止部が形成され前記内側筒部材の外周側に配設される外側筒本体部と、前記内側筒部材の先端部の内周部に嵌め込まれる嵌め込み部を有し、
前記シールド部が前記内側筒部材の先端部の内周部と前記嵌め込み部との間に挟込み固定される、シールドケーブル。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載のシールドケーブルであって、
前記外側筒部材の外周周りに前記弾性係止部が複数形成されている、シールドケーブル。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載のシールドケーブルであって、
前記電線の端部に、前記挿入孔部に圧入可能な防水栓が外嵌めされている、シールドケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−135167(P2012−135167A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287250(P2010−287250)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】