シールド導電体
【課題】スペースを有効に利用して配置することが可能なシールド導電体を提供する。
【解決手段】金属製のパイプ20と、パイプ20に挿通される電線11とを備えるシールド導電体10であって、パイプ20は、外径が一定の円形部24と、この円形部24とはパイプ20の軸線方向に異なる位置に形成され軸線周りに異なる外径の短径部22A及び長径部22Bを有する異形部21とを備え、円形部24の軸線は湾曲している。
【解決手段】金属製のパイプ20と、パイプ20に挿通される電線11とを備えるシールド導電体10であって、パイプ20は、外径が一定の円形部24と、この円形部24とはパイプ20の軸線方向に異なる位置に形成され軸線周りに異なる外径の短径部22A及び長径部22Bを有する異形部21とを備え、円形部24の軸線は湾曲している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド導電体に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリット自動車や電気自動車等の車両では、インバータ装置、モータ、バッテリなどの機器間を接続する場合、シールド機能を備えたシールド導電体が用いられている。
このシールド導電体には、例えば、特許文献1のように、配索経路に沿って屈曲され、外周が真円形をなす金属製パイプ内に複数本の電線を収容することにより構成されているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−171952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば車両にシールド導電体を取り付ける場合、スペースを有効に利用して配置したいという要請がある。しかし、外周が真円形をなす金属製パイプを、例えば車両の床下などに配置する場合には、高さ方向については少なくとも金属製パイプの外径分の寸法が必要になる一方、側方についてはスペースに余裕があるため、スペースを有効に利用してシールド導電体を配置することができないという問題があった。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、スペースを有効に利用して配置することが可能なシールド導電体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、金属製のパイプと、前記パイプに挿通される電線とを備えるシールド導電体であって、前記パイプは、外径が一定の円形部と、この円形部とは前記パイプの軸線方向に異なる位置に形成され軸線周りに異なる外径の短径部及び長径部を有する異形部と、を備え、前記円形部の軸線は曲がっているところに特徴を有する。
【0007】
本構成によれば、シールド導電体を配置する際に、小さくしたい側の径を、短径部の径方向(厚み方向)となるように配し、スペースに余裕のある側を長径部の径方向(厚み方向)となるように配すれば、短径部の径方向(厚み方向)を小さくし、長径部の径方向(厚み方向)のスペースを利用できる。したがって、スペースを有効に利用してシールド導電体を配置することができる。
ここで、異形部については、短径部の径方向については、比較的容易に曲げることができるが、長径部の径方向については、曲げることが容易ではないため、円形部と比較して配索の自由度が少ない。本構成によれば、円形部については異形部と比較して3次元方向に曲げることが容易であるため、異形部によりスペースを有効に利用しつつ、円形部により配索の自由度を大きくすることができる。
【0008】
上記構成に加えて以下の構成を有すればより好ましい。
(1)前記異形部は、扁平な形状である。
このようにすれば、複数本の電線を異形部内に容易に収容できるのに加えて、比較的コンパクトにシールド導電体を配置することができる。
【0009】
(2)前記異形部は、円筒形状のパイプを変形させて形成されている。
このようにすれば、異形部の形状に応じた金型等を用いて異形部を成形する場合等と比較して、異形部の成形を容易にすることができる。
【0010】
(3)前記パイプの外面には、熱収縮チューブが密着している。
このようにすれば、熱収縮チューブによりパイプの外面を保護することができる。
【0011】
(4)前記パイプの端部は、当該パイプに連なるシールド部材に接続されるものであって、前記パイプは、内面側の第1部材と外面側の第2部材とを重ね合わせたクラッド材からなり、前記第2部材は、前記シールド部材に対して前記第1部材よりも電食が生じにくい材質が用いられており、前記シールド部材は、前記パイプの端部にて前記第2部材の外周に被せられる。
異種金属を接続すると電食が生じることが知られているが、本構成によれば、パイプのうち、第1部材よりもシールド部材に対して電食が生じにくい材質からなる第2部材に対してシールド部材が接続されることになるため、シールド部材と第1部材とを接続する場合と比較すると、電食の発生を抑制することができる。
【0012】
(5)前記シールド部材は編組線であり、前記第1部材の材質は、アルミニウム又はアルミニウム合金であるとともに、前記第2部材の材質は、鉄又は鉄合金である。
一般に、編組線は、銅にスズめっきを施したものが用いられているため、アルミニウム又はアルミニウム合金製のパイプの端部を、編組線と接続した際には、電食を生じやすい。一方、本構成によれば、パイプのうち、外面側の鉄又は鉄合金に対して編組線が接続されることになるため、編組線とアルミニウム又はアルミニウム合金とを接続する場合と比較すると、電食の発生を抑制することができる。
【0013】
(6)前記電線は、扁平な形状のフラット導体を絶縁被覆により覆って構成されたフラット電線であり、前記フラット電線の短径側が前記異形部の短径部に配され、前記フラット電線の長径側が前記異形部の長径部に配される。
このようにすれば、表面積が大きく放熱性が良いため送電特性が良いというフラット電線の特徴をも備えつつ、スペースを有効に利用してシールド導電体を配索することができる。
(7)前記シールド導電体は、車両の床下に配されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、スペースを有効に利用してシールド導電体を配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態1のシールド導電体を示す平面図
【図2】シールド導電体を示す側面図
【図3】図1のD−D断面及びF−F断面を示す図
【図4】図1のE−E断面を示す図
【図5】成形装置を示す平面図
【図6】成形装置を示す側断面図
【図7】成形装置を示す正面図
【図8】実施形態2のシールド導電体を示す平面図
【図9】シールド導電体を熱収縮チューブに通した状態を示す図
【図10】実施形態3のシールド導電体に編組線が接続された状態を示す図
【図11】実施形態4のシールド導電体に用いられるフラット電線を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図7を参照して説明する。
本実施形態のシールド導電体10は、例えば電気自動車等の車両内における走行用の動力源を構成するバッテリ、インバータ、モータなどの装置(図示せず)の間に配索されるものであり、バッテリとインバータ間では2本、インバータとモータ間では3本の電線11を備えて構成される。以下、本実施形態では、インバータとモータ間において車両Wの床下に配置(配索)される3本の電線11を備えたシールド導電体10について説明する。なお、上下方向については図2を基準とし、左右方向については、図1の上方を左方、下方を右方として説明する。
【0017】
シールド導電体10は、図1に示すように、3本の電線11と、これら3本の電線11が挿通されシールド機能を有するパイプ20とを備えて構成されている。
各電線11は、共に丸形(断面円形状)の被覆電線であって、芯線と芯線の周囲を覆う絶縁被覆(絶縁層)とからなり、シールド層は設けられていない。
芯線は、銅又は銅合金製であって、多数の金属素線を撚り合わせた撚り線が用いられている。
3本の電線11は、それぞれの端末に端子金具12が接続されてパイプ20の外部へ導出されている。
【0018】
端子金具12は、相手側の端子に接続される端子接続部と、この端子接続部に一体に連なり電線11に接続される電線接続部とを有する。
端子接続部は、貫通孔が形成されており、この貫通孔にボルトの軸部等を挿通できる。電線接続部は、電線11の端末にて絶縁被覆を剥ぎ取り露出させた芯線をかしめて圧着するワイヤバレルと絶縁被覆の上から保持するインシュレーションバレルとを有する。
【0019】
パイプ20は、金属製(例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金等)であって、直線状に延び外径寸法が一定でなない異形部21と、外形寸法が一定で軸線が湾曲している円形部24(図1のCの範囲)とを備えている。
【0020】
異形部21は、パイプ20の前端側と後端側(円形部24とはパイプ20の軸線方向に異なる位置)に形成されており、一様に扁平な断面形状の定形部22(図1のA1,A2の範囲)と、定形部22から円形部24に連なる位置に設けられ断面形状が徐々に変化する変形部23(図1のB1,B2の範囲)とからなる。
定形部22の形状は、図3に示すように、概ね扁平な形状(長円形状)であって、パイプ20の断面のうち外径寸法が最も短い部分が短径部22Aとされ、短径部22Aとは軸線周りに直交する位置に形成され最も外径寸法が長い部分(短径部22Aとは異なる外径の部分)が長径部22Bとされている。
【0021】
本実施形態では、短径部22Aの外径は、電線11の直径に短径部22Aの(上下2枚の)厚みを加えた寸法より大きい寸法であって、長径部22Bの外径は、横並びに3本の電線11を挿通可能な径(3本の電線11の直径を合わせた寸法に長径部22Bの(左右2枚の)厚みを加えた寸法よりわずかに大きい寸法)であって円弧状に湾曲した側面の端部(上下方向の中間部)とされている。
【0022】
変形部23は、図1に示すように、円筒形のパイプを定形部22の形状まで塑性変形させる際に形成される部分であり、定形部22から滑らかに円形部24に連なる。
円形部24は、外周が真円形状であって、円筒形状(断面円形)の金属パイプを変形させずに残した部分である。
【0023】
3本の電線11は、定形部22では、図3に示すように、3本横並びに配されるとともに、変形部23にて3本の電線11の配置が徐々に変わり、円形部24に至ると、図4に示すように、俵積み状(電線11の中心を結んだときにほぼ正三角形を描く配置)となる。
【0024】
パイプ20の端部は、編組線の端部が外嵌するように接続されている。パイプ20と編組線との接続は、溶接、半田付け、かしめリングによるかしめ付け等により接続することができる。
【0025】
パイプ20の成形は、成形装置30を用いて冷間圧延により行われる。
成形装置30は、図5に示すように、一対のローラ31,32と、ローラ31,32を軸支する支持部材33,34と、一方のローラ32を移動させて一対のローラ31,32間の間隔を調整する調整機構35と、支持部材33,34及び調整機構35を保持し肉厚の板材からなる基台部39と、各ローラ31,32を回転させる駆動部(図示しない)と、駆動部を駆動させる入力部(図示しない)とを備えている。
【0026】
各ローラ31,32は円柱形状であって、各ローラ31,32の円形の外周面における軸方向の中間部には、凹み形成された凹状面31A,32Aが全周に亘って溝状に形成されている。
凹状面31A,32Aは、一対のローラ31,32を近接させたときに、円筒形のパイプ20の外面を塑性変形させて異形部21(変形部23及び定形部22)を成形できる曲率で湾曲している。
【0027】
支持部材33,34は、各ローラ31,32にそれぞれ設けられており、ローラ31,32の両側から突出する軸を回動可能に支持している。一方の支持部材33の下端は、基台部39に固定されており、他方(調整機構35の側)の支持部材34は、調整機構35に固定されている。
【0028】
調整機構35は、図6に示すように、基台部39に固定される固定部36と、基台部39に対してローラ31,32の並び方向に可動する可動部37と、可動部37を可動させるための回動操作を行うローラ位置調整部38とを有する。
ローラ位置調整部38は、軸部と多角形の頭部とからなり、軸部には、基端側にネジ溝が形成されている一方、先端部には、ネジ溝が形成されていない。
【0029】
固定部36は、ネジ孔部が形成されており、ここにローラ位置調整部38の軸部のネジ溝が螺合する。可動部37には、内周にネジ溝のない円形の貫通孔が形成されており、この貫通孔に軸部の先端部が回転可能でローラ31,32の並び方向に相対移動不能に固定される。この可動部37は、近い側の支持部材34と一体になっている。
これにより、ローラ位置調整部38を回転させると、可動部37が移動するとともに、可動部37に連動してローラ32も、ローラ31,32の並び方向に移動する。
基台部39には、パイプ20の挿通孔39Aが形成されており、ローラ31,32の凹状面31A,32Aの間を通るパイプ20の通り路となっている。
【0030】
次に、パイプ20の異形部21の成形方法について説明する。
全長に亘って一直線で、かつ、外径が一定の円筒形状をなす金属パイプ(図示しない)を用意するとともに、成形装置30のローラ位置調整部38を操作してローラ31,32間(対向する凹状面31A,32A間)の距離を金属パイプを挿通できる長さに広げる。そして、円形部24としてそのまま残す部分と変形部23となる部分の境界部分まで金属パイプを凹状面31A,32A間に通した後、ローラ位置調整部38を操作して凹状面31A,32Aを金属パイプに当接させる。
【0031】
次に、成形装置30の入力部から指示し、駆動部を駆動させると、一対のローラ31,32が互いに金属パイプを巻き込む方向に回転する。このとき、ローラ31,32の回転に伴って、凹状面31A,32A間の寸法を徐々に狭めていくと、金属パイプが塑性変形して変形部23が形成される。定形部22に達する位置まで塑性変形させるとローラ位置調整部38の回転を停止し、そのままローラ31,32を金属パイプの端部まで回転させて定形部22を形成する。
【0032】
金属パイプの反対側についても同様の手順で、異形部21(変形部23及び定形部22)を形成することにより、パイプ20の異形部21が成形され、塑性変形されなかった部分が円形部24とされる。
なお、異形部21の成形にあたっては、他の成形機を下段に設けて段階的に塑性変形させていくようにしてもよい。
【0033】
次に、円形部24の曲げ加工について説明すると、金属パイプの一方の異形部21のうち、円形部24側の端部をアーム(図示しない)で掴んで固定し、他方の異形部21についても、円形部24側の端部をアーム(図示しない)で掴み、一方のアームを円形部24の曲率(又は傾斜角度)に応じた位置に移動させ、円形部24が湾曲するように塑性変形させるとパイプ20が成形される。なお、円形部24の(軸線方向)の曲げは、この方法に限らず、公知の他の方法により曲げ加工を行うことも可能である。
【0034】
このように成形されたパイプ20は、3本の電線11が挿通されてシールド導電体10となる。なお、電線11の挿通は、パイプ20の加工前でも加工後でも可能である。そして、シールド導電体10は、短径部22Aの径方向(短径部の厚み方向)が上下方向に、長径部22Bの径方向(厚み方向)及び円形部24の曲げ方向が左右方向(水平方向)に向けられて車両Wの床下(床下パネルの下面側で下方に露出(路面に対向)する位置)に配置(配索)される。各電線11の端末の端子金具12は、上方側の車両Wの内部に延出された他の電線等の端子等に接続される。
【0035】
(1)金属製のパイプ20と、パイプ20に挿通される電線11とを備えるシールド導電体10であって、パイプ20は、外径が一定の円形部24と、この円形部24とはパイプ20の軸線方向(パイプの延出方向)に異なる位置に形成され軸線周りに異なる外径の短径部22A及び長径部22Bを有する異形部21と、を備え、円形部24の(中心を通る)軸線は曲がっている。これにより、シールド導電体10を配置する際に、小さくしたい側の径を、短径部22Aの径方向(厚み方向)となるように配し、スペースに余裕のある側を長径部22Bの径方向(厚み方向)となるように配すれば、短径部22Aの径方向(厚み方向)を小さくし、長径部22Bの径方向(厚み方向)のスペースを利用できる。したがって、スペースを有効に利用してシールド導電体10を配置することができる。
【0036】
異形部21については、短径部22Aの径方向については、比較的容易に曲げることができるが、長径部22Bの径方向については、曲げることが容易ではないため、円形部24と比較して配索の自由度が少ない。本実施形態によれば、円形部24については異形部21と比較して3次元方向に曲げることが容易であるため、異形部21によりスペースを有効に利用しつつ、円形部24により配索の自由度を大きくすることができる。
【0037】
(2)異形部21は、扁平な形状であるため、複数本の電線を異形部内に容易に収容できるのに加えて、比較的コンパクトに配置することができる。
(3)異形部21は、円筒形状のパイプ20を変形させて形成されているため、異形部21の形状に応じた金型等を用いて異形部21を成形する場合等と比較して、異形部21の成形を容易にすることができる。
【0038】
<実施形態2>
本発明の実施形態2を図8及び図9を参照して説明する。
実施形態2は、図8に示すように、シールド導電体10の外面を熱収縮チューブ40で覆ったものである。上記実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
具体的には、図9に示すように、シールド導電体10を熱収縮チューブ40に通した後、加熱して熱収縮チューブ40を収縮させる。これにより、パイプ20の外周面に熱収縮チューブ40が密着する。
【0039】
このように、パイプ20の外面には、熱収縮チューブ40が密着するようにすれば熱収縮チューブ40によりパイプ20の外面を保護することができる。
【0040】
<実施形態3>
本発明の実施形態3を図10を参照して説明する。上記実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
上記実施形態では、パイプ20は、アルミニウム合金等の一つの材質からなるものであったが、実施形態3では、パイプ50は、図10に示すように、内面側の第1部材51と外面側の第2部材52とを重ね合わせたクラッド材からなることとしたものである。
第1部材51の材質は、アルミニウム又はアルミニウム合金であり、第2部材52の材質は、鉄又は鉄合金からなる。
【0041】
編組線53は、銅合金の素線に対してスズめっきを施したものが用いられており、パイプ50の端部にて第2部材52の外周に被せられる。そして、半田付け、溶接、かしめリングによるかしめ付け等の接続手段によりパイプ50(の第2部材52)の端部と編組線53とが接続される。
異種金属を接続すると電食が生じることが知られているが、編組線53は、銅にスズめっきを施したものが用いられているため、アルミニウム又はアルミニウム合金製のパイプ50の端部を、編組線53と接続した際には、比較的電食を生じやすい。一方、本実施形態によれば、パイプ50のうち、アルミニウム又はアルミニウム合金よりもスズめっきに対して電食を生じにくい鉄又は鉄合金からなる第2部材52に対して編組線53が接続されることになるため、編組線53と第1部材51(アルミニウム又はアルミニウム合金)とを接続する場合と比較すると、電食の発生を抑制することができる。
【0042】
<実施形態4>
本発明の実施形態を図11を参照して説明する。上記実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
上記実施形態では、パイプ20,50には、丸形の電線11が挿通されるものであったが、実施形態4では、パイプに挿通される電線を扁平なフラット電線60としたものである。
【0043】
フラット電線60は、図11に示すように、複数本の芯線61を互いに接触状態で並列配置させることで概ね扁平な形状をなすフラット導体と、その周囲を覆う合成樹脂製の絶縁被覆62と構成されており、シールド層は設けられていない。
芯線61は、多数の銅又は銅合金の金属素線を螺旋状に撚り合わせてなるものが用いられている。
【0044】
このような形状のフラット電線60は、断面形状が略矩形であるため、デッドスペースが少なく、また表面積が大きく放熱性が良いため、通電電流を大きく出来る。
【0045】
このフラット電線60は、図示しないパイプ内において、フラット電線60の短径側が異形部の短径部内に配され、フラット電線60の長径側が異形部の長径部内に配される。そのため、パイプ(図示しない)は、フラット電線60の断面形状及び本数に応じた径の長径部を有し、より扁平な形状となる。
【0046】
このようにすれば、表面積が大きく放熱性が良いため送電特性が良いというフラット電線60の特徴をも備えつつ、スペースを有効に利用してシールド導電体を配索することができる。
【0047】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、3本の電線11がパイプ20に挿通されることとしたが、これに限られず、2本又は4本以上であってもよい。
(2)シールド導電体10が配される場所は、車両Wの床下としたが、これに限られず、車両Wのうちの他の場所でもよい。また、車両Wに限らず、車両W以外にシールド導電体が配されるものに適用してもよい。
【0048】
(3)上記実施形態では、パイプ20,50における異形部21や円形部24の数、軸線方向(延出方向)の長さ、全長における位置等は、本実施形態においては車両W床下における電線11の配索経路に応じて設定されたものであり、シールド導電体10が異なる場所に配される場合には、その配索経路に応じた異形部21や円形部24の数、軸線方向(延出方向)の長さ、全長における位置等とすることができる。
(4)パイプ20の成形は、成形装置30により円筒形の金属パイプを変形させて行うこととしたが、これに限られない。例えば、金型により異形部を成形した板材を形成した後にこの板材を環状に湾曲させて端部同士を溶接等により接続するようにしてもよい。
【0049】
(5)上記実施形態では、異形部21は、扁平な形状としたが、扁平な形状に限られず、扁平でない程度の長円形状等や、部分的に凹部を有する形状等でもよく、少なくとも短径部と長径部を有する形状であればよい。
(6)上記実施形態では、円形部24の軸線が湾曲していたが、これに限られず、円形部24の軸線が屈曲しているものでもよい。
【符号の説明】
【0050】
10…シールド導電体
11…電線
20,50…パイプ
21…異形部
22…定形部
22A…短径部
22B…長径部
23…変形部
24…円形部
30…成形装置
31,32…ローラ
31A,32A…凹状面
33,34…支持部材
35…調整機構
36…固定部
37…可動部
38…ローラ位置調整部
39…基台部
40…熱収縮チューブ
51…第1部材
52…第2部材
53…編組線
60…フラット電線
W…車両
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド導電体に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリット自動車や電気自動車等の車両では、インバータ装置、モータ、バッテリなどの機器間を接続する場合、シールド機能を備えたシールド導電体が用いられている。
このシールド導電体には、例えば、特許文献1のように、配索経路に沿って屈曲され、外周が真円形をなす金属製パイプ内に複数本の電線を収容することにより構成されているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−171952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば車両にシールド導電体を取り付ける場合、スペースを有効に利用して配置したいという要請がある。しかし、外周が真円形をなす金属製パイプを、例えば車両の床下などに配置する場合には、高さ方向については少なくとも金属製パイプの外径分の寸法が必要になる一方、側方についてはスペースに余裕があるため、スペースを有効に利用してシールド導電体を配置することができないという問題があった。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、スペースを有効に利用して配置することが可能なシールド導電体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、金属製のパイプと、前記パイプに挿通される電線とを備えるシールド導電体であって、前記パイプは、外径が一定の円形部と、この円形部とは前記パイプの軸線方向に異なる位置に形成され軸線周りに異なる外径の短径部及び長径部を有する異形部と、を備え、前記円形部の軸線は曲がっているところに特徴を有する。
【0007】
本構成によれば、シールド導電体を配置する際に、小さくしたい側の径を、短径部の径方向(厚み方向)となるように配し、スペースに余裕のある側を長径部の径方向(厚み方向)となるように配すれば、短径部の径方向(厚み方向)を小さくし、長径部の径方向(厚み方向)のスペースを利用できる。したがって、スペースを有効に利用してシールド導電体を配置することができる。
ここで、異形部については、短径部の径方向については、比較的容易に曲げることができるが、長径部の径方向については、曲げることが容易ではないため、円形部と比較して配索の自由度が少ない。本構成によれば、円形部については異形部と比較して3次元方向に曲げることが容易であるため、異形部によりスペースを有効に利用しつつ、円形部により配索の自由度を大きくすることができる。
【0008】
上記構成に加えて以下の構成を有すればより好ましい。
(1)前記異形部は、扁平な形状である。
このようにすれば、複数本の電線を異形部内に容易に収容できるのに加えて、比較的コンパクトにシールド導電体を配置することができる。
【0009】
(2)前記異形部は、円筒形状のパイプを変形させて形成されている。
このようにすれば、異形部の形状に応じた金型等を用いて異形部を成形する場合等と比較して、異形部の成形を容易にすることができる。
【0010】
(3)前記パイプの外面には、熱収縮チューブが密着している。
このようにすれば、熱収縮チューブによりパイプの外面を保護することができる。
【0011】
(4)前記パイプの端部は、当該パイプに連なるシールド部材に接続されるものであって、前記パイプは、内面側の第1部材と外面側の第2部材とを重ね合わせたクラッド材からなり、前記第2部材は、前記シールド部材に対して前記第1部材よりも電食が生じにくい材質が用いられており、前記シールド部材は、前記パイプの端部にて前記第2部材の外周に被せられる。
異種金属を接続すると電食が生じることが知られているが、本構成によれば、パイプのうち、第1部材よりもシールド部材に対して電食が生じにくい材質からなる第2部材に対してシールド部材が接続されることになるため、シールド部材と第1部材とを接続する場合と比較すると、電食の発生を抑制することができる。
【0012】
(5)前記シールド部材は編組線であり、前記第1部材の材質は、アルミニウム又はアルミニウム合金であるとともに、前記第2部材の材質は、鉄又は鉄合金である。
一般に、編組線は、銅にスズめっきを施したものが用いられているため、アルミニウム又はアルミニウム合金製のパイプの端部を、編組線と接続した際には、電食を生じやすい。一方、本構成によれば、パイプのうち、外面側の鉄又は鉄合金に対して編組線が接続されることになるため、編組線とアルミニウム又はアルミニウム合金とを接続する場合と比較すると、電食の発生を抑制することができる。
【0013】
(6)前記電線は、扁平な形状のフラット導体を絶縁被覆により覆って構成されたフラット電線であり、前記フラット電線の短径側が前記異形部の短径部に配され、前記フラット電線の長径側が前記異形部の長径部に配される。
このようにすれば、表面積が大きく放熱性が良いため送電特性が良いというフラット電線の特徴をも備えつつ、スペースを有効に利用してシールド導電体を配索することができる。
(7)前記シールド導電体は、車両の床下に配されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、スペースを有効に利用してシールド導電体を配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態1のシールド導電体を示す平面図
【図2】シールド導電体を示す側面図
【図3】図1のD−D断面及びF−F断面を示す図
【図4】図1のE−E断面を示す図
【図5】成形装置を示す平面図
【図6】成形装置を示す側断面図
【図7】成形装置を示す正面図
【図8】実施形態2のシールド導電体を示す平面図
【図9】シールド導電体を熱収縮チューブに通した状態を示す図
【図10】実施形態3のシールド導電体に編組線が接続された状態を示す図
【図11】実施形態4のシールド導電体に用いられるフラット電線を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図7を参照して説明する。
本実施形態のシールド導電体10は、例えば電気自動車等の車両内における走行用の動力源を構成するバッテリ、インバータ、モータなどの装置(図示せず)の間に配索されるものであり、バッテリとインバータ間では2本、インバータとモータ間では3本の電線11を備えて構成される。以下、本実施形態では、インバータとモータ間において車両Wの床下に配置(配索)される3本の電線11を備えたシールド導電体10について説明する。なお、上下方向については図2を基準とし、左右方向については、図1の上方を左方、下方を右方として説明する。
【0017】
シールド導電体10は、図1に示すように、3本の電線11と、これら3本の電線11が挿通されシールド機能を有するパイプ20とを備えて構成されている。
各電線11は、共に丸形(断面円形状)の被覆電線であって、芯線と芯線の周囲を覆う絶縁被覆(絶縁層)とからなり、シールド層は設けられていない。
芯線は、銅又は銅合金製であって、多数の金属素線を撚り合わせた撚り線が用いられている。
3本の電線11は、それぞれの端末に端子金具12が接続されてパイプ20の外部へ導出されている。
【0018】
端子金具12は、相手側の端子に接続される端子接続部と、この端子接続部に一体に連なり電線11に接続される電線接続部とを有する。
端子接続部は、貫通孔が形成されており、この貫通孔にボルトの軸部等を挿通できる。電線接続部は、電線11の端末にて絶縁被覆を剥ぎ取り露出させた芯線をかしめて圧着するワイヤバレルと絶縁被覆の上から保持するインシュレーションバレルとを有する。
【0019】
パイプ20は、金属製(例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金等)であって、直線状に延び外径寸法が一定でなない異形部21と、外形寸法が一定で軸線が湾曲している円形部24(図1のCの範囲)とを備えている。
【0020】
異形部21は、パイプ20の前端側と後端側(円形部24とはパイプ20の軸線方向に異なる位置)に形成されており、一様に扁平な断面形状の定形部22(図1のA1,A2の範囲)と、定形部22から円形部24に連なる位置に設けられ断面形状が徐々に変化する変形部23(図1のB1,B2の範囲)とからなる。
定形部22の形状は、図3に示すように、概ね扁平な形状(長円形状)であって、パイプ20の断面のうち外径寸法が最も短い部分が短径部22Aとされ、短径部22Aとは軸線周りに直交する位置に形成され最も外径寸法が長い部分(短径部22Aとは異なる外径の部分)が長径部22Bとされている。
【0021】
本実施形態では、短径部22Aの外径は、電線11の直径に短径部22Aの(上下2枚の)厚みを加えた寸法より大きい寸法であって、長径部22Bの外径は、横並びに3本の電線11を挿通可能な径(3本の電線11の直径を合わせた寸法に長径部22Bの(左右2枚の)厚みを加えた寸法よりわずかに大きい寸法)であって円弧状に湾曲した側面の端部(上下方向の中間部)とされている。
【0022】
変形部23は、図1に示すように、円筒形のパイプを定形部22の形状まで塑性変形させる際に形成される部分であり、定形部22から滑らかに円形部24に連なる。
円形部24は、外周が真円形状であって、円筒形状(断面円形)の金属パイプを変形させずに残した部分である。
【0023】
3本の電線11は、定形部22では、図3に示すように、3本横並びに配されるとともに、変形部23にて3本の電線11の配置が徐々に変わり、円形部24に至ると、図4に示すように、俵積み状(電線11の中心を結んだときにほぼ正三角形を描く配置)となる。
【0024】
パイプ20の端部は、編組線の端部が外嵌するように接続されている。パイプ20と編組線との接続は、溶接、半田付け、かしめリングによるかしめ付け等により接続することができる。
【0025】
パイプ20の成形は、成形装置30を用いて冷間圧延により行われる。
成形装置30は、図5に示すように、一対のローラ31,32と、ローラ31,32を軸支する支持部材33,34と、一方のローラ32を移動させて一対のローラ31,32間の間隔を調整する調整機構35と、支持部材33,34及び調整機構35を保持し肉厚の板材からなる基台部39と、各ローラ31,32を回転させる駆動部(図示しない)と、駆動部を駆動させる入力部(図示しない)とを備えている。
【0026】
各ローラ31,32は円柱形状であって、各ローラ31,32の円形の外周面における軸方向の中間部には、凹み形成された凹状面31A,32Aが全周に亘って溝状に形成されている。
凹状面31A,32Aは、一対のローラ31,32を近接させたときに、円筒形のパイプ20の外面を塑性変形させて異形部21(変形部23及び定形部22)を成形できる曲率で湾曲している。
【0027】
支持部材33,34は、各ローラ31,32にそれぞれ設けられており、ローラ31,32の両側から突出する軸を回動可能に支持している。一方の支持部材33の下端は、基台部39に固定されており、他方(調整機構35の側)の支持部材34は、調整機構35に固定されている。
【0028】
調整機構35は、図6に示すように、基台部39に固定される固定部36と、基台部39に対してローラ31,32の並び方向に可動する可動部37と、可動部37を可動させるための回動操作を行うローラ位置調整部38とを有する。
ローラ位置調整部38は、軸部と多角形の頭部とからなり、軸部には、基端側にネジ溝が形成されている一方、先端部には、ネジ溝が形成されていない。
【0029】
固定部36は、ネジ孔部が形成されており、ここにローラ位置調整部38の軸部のネジ溝が螺合する。可動部37には、内周にネジ溝のない円形の貫通孔が形成されており、この貫通孔に軸部の先端部が回転可能でローラ31,32の並び方向に相対移動不能に固定される。この可動部37は、近い側の支持部材34と一体になっている。
これにより、ローラ位置調整部38を回転させると、可動部37が移動するとともに、可動部37に連動してローラ32も、ローラ31,32の並び方向に移動する。
基台部39には、パイプ20の挿通孔39Aが形成されており、ローラ31,32の凹状面31A,32Aの間を通るパイプ20の通り路となっている。
【0030】
次に、パイプ20の異形部21の成形方法について説明する。
全長に亘って一直線で、かつ、外径が一定の円筒形状をなす金属パイプ(図示しない)を用意するとともに、成形装置30のローラ位置調整部38を操作してローラ31,32間(対向する凹状面31A,32A間)の距離を金属パイプを挿通できる長さに広げる。そして、円形部24としてそのまま残す部分と変形部23となる部分の境界部分まで金属パイプを凹状面31A,32A間に通した後、ローラ位置調整部38を操作して凹状面31A,32Aを金属パイプに当接させる。
【0031】
次に、成形装置30の入力部から指示し、駆動部を駆動させると、一対のローラ31,32が互いに金属パイプを巻き込む方向に回転する。このとき、ローラ31,32の回転に伴って、凹状面31A,32A間の寸法を徐々に狭めていくと、金属パイプが塑性変形して変形部23が形成される。定形部22に達する位置まで塑性変形させるとローラ位置調整部38の回転を停止し、そのままローラ31,32を金属パイプの端部まで回転させて定形部22を形成する。
【0032】
金属パイプの反対側についても同様の手順で、異形部21(変形部23及び定形部22)を形成することにより、パイプ20の異形部21が成形され、塑性変形されなかった部分が円形部24とされる。
なお、異形部21の成形にあたっては、他の成形機を下段に設けて段階的に塑性変形させていくようにしてもよい。
【0033】
次に、円形部24の曲げ加工について説明すると、金属パイプの一方の異形部21のうち、円形部24側の端部をアーム(図示しない)で掴んで固定し、他方の異形部21についても、円形部24側の端部をアーム(図示しない)で掴み、一方のアームを円形部24の曲率(又は傾斜角度)に応じた位置に移動させ、円形部24が湾曲するように塑性変形させるとパイプ20が成形される。なお、円形部24の(軸線方向)の曲げは、この方法に限らず、公知の他の方法により曲げ加工を行うことも可能である。
【0034】
このように成形されたパイプ20は、3本の電線11が挿通されてシールド導電体10となる。なお、電線11の挿通は、パイプ20の加工前でも加工後でも可能である。そして、シールド導電体10は、短径部22Aの径方向(短径部の厚み方向)が上下方向に、長径部22Bの径方向(厚み方向)及び円形部24の曲げ方向が左右方向(水平方向)に向けられて車両Wの床下(床下パネルの下面側で下方に露出(路面に対向)する位置)に配置(配索)される。各電線11の端末の端子金具12は、上方側の車両Wの内部に延出された他の電線等の端子等に接続される。
【0035】
(1)金属製のパイプ20と、パイプ20に挿通される電線11とを備えるシールド導電体10であって、パイプ20は、外径が一定の円形部24と、この円形部24とはパイプ20の軸線方向(パイプの延出方向)に異なる位置に形成され軸線周りに異なる外径の短径部22A及び長径部22Bを有する異形部21と、を備え、円形部24の(中心を通る)軸線は曲がっている。これにより、シールド導電体10を配置する際に、小さくしたい側の径を、短径部22Aの径方向(厚み方向)となるように配し、スペースに余裕のある側を長径部22Bの径方向(厚み方向)となるように配すれば、短径部22Aの径方向(厚み方向)を小さくし、長径部22Bの径方向(厚み方向)のスペースを利用できる。したがって、スペースを有効に利用してシールド導電体10を配置することができる。
【0036】
異形部21については、短径部22Aの径方向については、比較的容易に曲げることができるが、長径部22Bの径方向については、曲げることが容易ではないため、円形部24と比較して配索の自由度が少ない。本実施形態によれば、円形部24については異形部21と比較して3次元方向に曲げることが容易であるため、異形部21によりスペースを有効に利用しつつ、円形部24により配索の自由度を大きくすることができる。
【0037】
(2)異形部21は、扁平な形状であるため、複数本の電線を異形部内に容易に収容できるのに加えて、比較的コンパクトに配置することができる。
(3)異形部21は、円筒形状のパイプ20を変形させて形成されているため、異形部21の形状に応じた金型等を用いて異形部21を成形する場合等と比較して、異形部21の成形を容易にすることができる。
【0038】
<実施形態2>
本発明の実施形態2を図8及び図9を参照して説明する。
実施形態2は、図8に示すように、シールド導電体10の外面を熱収縮チューブ40で覆ったものである。上記実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
具体的には、図9に示すように、シールド導電体10を熱収縮チューブ40に通した後、加熱して熱収縮チューブ40を収縮させる。これにより、パイプ20の外周面に熱収縮チューブ40が密着する。
【0039】
このように、パイプ20の外面には、熱収縮チューブ40が密着するようにすれば熱収縮チューブ40によりパイプ20の外面を保護することができる。
【0040】
<実施形態3>
本発明の実施形態3を図10を参照して説明する。上記実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
上記実施形態では、パイプ20は、アルミニウム合金等の一つの材質からなるものであったが、実施形態3では、パイプ50は、図10に示すように、内面側の第1部材51と外面側の第2部材52とを重ね合わせたクラッド材からなることとしたものである。
第1部材51の材質は、アルミニウム又はアルミニウム合金であり、第2部材52の材質は、鉄又は鉄合金からなる。
【0041】
編組線53は、銅合金の素線に対してスズめっきを施したものが用いられており、パイプ50の端部にて第2部材52の外周に被せられる。そして、半田付け、溶接、かしめリングによるかしめ付け等の接続手段によりパイプ50(の第2部材52)の端部と編組線53とが接続される。
異種金属を接続すると電食が生じることが知られているが、編組線53は、銅にスズめっきを施したものが用いられているため、アルミニウム又はアルミニウム合金製のパイプ50の端部を、編組線53と接続した際には、比較的電食を生じやすい。一方、本実施形態によれば、パイプ50のうち、アルミニウム又はアルミニウム合金よりもスズめっきに対して電食を生じにくい鉄又は鉄合金からなる第2部材52に対して編組線53が接続されることになるため、編組線53と第1部材51(アルミニウム又はアルミニウム合金)とを接続する場合と比較すると、電食の発生を抑制することができる。
【0042】
<実施形態4>
本発明の実施形態を図11を参照して説明する。上記実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
上記実施形態では、パイプ20,50には、丸形の電線11が挿通されるものであったが、実施形態4では、パイプに挿通される電線を扁平なフラット電線60としたものである。
【0043】
フラット電線60は、図11に示すように、複数本の芯線61を互いに接触状態で並列配置させることで概ね扁平な形状をなすフラット導体と、その周囲を覆う合成樹脂製の絶縁被覆62と構成されており、シールド層は設けられていない。
芯線61は、多数の銅又は銅合金の金属素線を螺旋状に撚り合わせてなるものが用いられている。
【0044】
このような形状のフラット電線60は、断面形状が略矩形であるため、デッドスペースが少なく、また表面積が大きく放熱性が良いため、通電電流を大きく出来る。
【0045】
このフラット電線60は、図示しないパイプ内において、フラット電線60の短径側が異形部の短径部内に配され、フラット電線60の長径側が異形部の長径部内に配される。そのため、パイプ(図示しない)は、フラット電線60の断面形状及び本数に応じた径の長径部を有し、より扁平な形状となる。
【0046】
このようにすれば、表面積が大きく放熱性が良いため送電特性が良いというフラット電線60の特徴をも備えつつ、スペースを有効に利用してシールド導電体を配索することができる。
【0047】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、3本の電線11がパイプ20に挿通されることとしたが、これに限られず、2本又は4本以上であってもよい。
(2)シールド導電体10が配される場所は、車両Wの床下としたが、これに限られず、車両Wのうちの他の場所でもよい。また、車両Wに限らず、車両W以外にシールド導電体が配されるものに適用してもよい。
【0048】
(3)上記実施形態では、パイプ20,50における異形部21や円形部24の数、軸線方向(延出方向)の長さ、全長における位置等は、本実施形態においては車両W床下における電線11の配索経路に応じて設定されたものであり、シールド導電体10が異なる場所に配される場合には、その配索経路に応じた異形部21や円形部24の数、軸線方向(延出方向)の長さ、全長における位置等とすることができる。
(4)パイプ20の成形は、成形装置30により円筒形の金属パイプを変形させて行うこととしたが、これに限られない。例えば、金型により異形部を成形した板材を形成した後にこの板材を環状に湾曲させて端部同士を溶接等により接続するようにしてもよい。
【0049】
(5)上記実施形態では、異形部21は、扁平な形状としたが、扁平な形状に限られず、扁平でない程度の長円形状等や、部分的に凹部を有する形状等でもよく、少なくとも短径部と長径部を有する形状であればよい。
(6)上記実施形態では、円形部24の軸線が湾曲していたが、これに限られず、円形部24の軸線が屈曲しているものでもよい。
【符号の説明】
【0050】
10…シールド導電体
11…電線
20,50…パイプ
21…異形部
22…定形部
22A…短径部
22B…長径部
23…変形部
24…円形部
30…成形装置
31,32…ローラ
31A,32A…凹状面
33,34…支持部材
35…調整機構
36…固定部
37…可動部
38…ローラ位置調整部
39…基台部
40…熱収縮チューブ
51…第1部材
52…第2部材
53…編組線
60…フラット電線
W…車両
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のパイプと、前記パイプに挿通される電線とを備えるシールド導電体であって、
前記パイプは、外径が一定の円形部と、この円形部とは前記パイプの軸線方向に異なる位置に形成され軸線周りに異なる外径の短径部及び長径部を有する異形部と、を備え、
前記円形部の軸線は曲がっているシールド導電体。
【請求項2】
前記異形部は、扁平な形状であることを特徴とする請求項1記載のシールド導電体。
【請求項3】
前記異形部は、円筒形状のパイプを変形させて形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のシールド導電体。
【請求項4】
前記パイプの外面には、熱収縮チューブが密着していることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のシールド導電体。
【請求項5】
前記パイプの端部は、当該パイプに連なるシールド部材に接続されるものであって、
前記パイプは、内面側の第1部材と外面側の第2部材とを重ね合わせたクラッド材からなり、前記第2部材は、前記シールド部材に対して前記第1部材よりも電食が生じにくい材質が用いられており、前記シールド部材は、前記パイプの端部にて前記第2部材の外周に被せられることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のシールド導電体。
【請求項6】
前記シールド部材は編組線であり、前記第1部材の材質は、アルミニウム又はアルミニウム合金であるとともに、前記第2部材の材質は、鉄又は鉄合金であることを特徴とする請求項5に記載のシールド導電体。
【請求項7】
前記電線は、扁平な形状のフラット導体を絶縁被覆により覆って構成されたフラット電線であり、前記フラット電線の短径側が前記異形部の短径部に配され、前記フラット電線の長径側が前記異形部の長径部に配されることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のシールド導電体。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載のシールド導電体は、車両の床下に配されていることを特徴とするシールド導電体。
【請求項1】
金属製のパイプと、前記パイプに挿通される電線とを備えるシールド導電体であって、
前記パイプは、外径が一定の円形部と、この円形部とは前記パイプの軸線方向に異なる位置に形成され軸線周りに異なる外径の短径部及び長径部を有する異形部と、を備え、
前記円形部の軸線は曲がっているシールド導電体。
【請求項2】
前記異形部は、扁平な形状であることを特徴とする請求項1記載のシールド導電体。
【請求項3】
前記異形部は、円筒形状のパイプを変形させて形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のシールド導電体。
【請求項4】
前記パイプの外面には、熱収縮チューブが密着していることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のシールド導電体。
【請求項5】
前記パイプの端部は、当該パイプに連なるシールド部材に接続されるものであって、
前記パイプは、内面側の第1部材と外面側の第2部材とを重ね合わせたクラッド材からなり、前記第2部材は、前記シールド部材に対して前記第1部材よりも電食が生じにくい材質が用いられており、前記シールド部材は、前記パイプの端部にて前記第2部材の外周に被せられることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のシールド導電体。
【請求項6】
前記シールド部材は編組線であり、前記第1部材の材質は、アルミニウム又はアルミニウム合金であるとともに、前記第2部材の材質は、鉄又は鉄合金であることを特徴とする請求項5に記載のシールド導電体。
【請求項7】
前記電線は、扁平な形状のフラット導体を絶縁被覆により覆って構成されたフラット電線であり、前記フラット電線の短径側が前記異形部の短径部に配され、前記フラット電線の長径側が前記異形部の長径部に配されることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のシールド導電体。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載のシールド導電体は、車両の床下に配されていることを特徴とするシールド導電体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−138179(P2012−138179A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288003(P2010−288003)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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