説明

シールド導電体

【課題】配索作業性に優れ、シールド性能を向上させることが可能なシールド導電体を提供する。
【解決手段】電線11を筒状のシールド部材20で包囲してなるシールド導電体10であって、シールド部材20が、金属製のパイプ21と金属製の筒状蛇腹部材30の端部同士を嵌合させて外周から締付リング40にて締め付けた形態とされており、筒状蛇腹部材30のうち、パイプ21の外周に締め付けられる部分には、筒状蛇腹部材30の開口端31から切り込み形成されたスリット35が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド導電体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリット自動車や電気自動車等の車両では、インバータ装置やモータ等の機器間を接続する場合、シールド機能を備えたシールド導電体が用いられており、その一例として特許文献1に記載のものが知られている。このものは、複数の電線と、その複数の電線を一括して包囲する筒状のシールド手段とを備え、シールド手段はその大部分を構成する金属製のパイプの両端に、接続用パイプ、筒状編組部材、シールドシェルを順に接続した態様をなしている。このシールド手段の両端部に位置するシールドシェルが、インバータ装置等の機器が収容されたシールドケースに固定されることで、機器間を接続する電線を全周にわたって包囲することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3909763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような構成によると、筒状編組部材は金属細線をメッシュ状に編み込んだものであるから、取付作業時等に周辺部材に引っ掛かりやすく、作業効率が悪くなり、更に筒状編組部材が破れた場合には、シールド性能が低下する虞があった。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、配索作業性に優れ、シールド性能を向上させることが可能なシールド導電体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、電線を筒状のシールド部材で包囲してなるシールド導電体であって、前記シールド部材が、金属製のパイプと金属製の筒状蛇腹部材の端部同士を嵌合させて外周から締付リングにて締め付けた形態とされており、前記筒状蛇腹部材のうち、前記パイプの外周に締め付けられる部分には、前記筒状蛇腹部材の開口端から切り込み形成されたスリットが設けられていることに特徴を有する。
【0007】
このような構成によれば、従来の例えば金属製のパイプの端部に金属細線をメッシュ状に編み込んでなる筒状編組部材等の編組線を組み付けていた場合と比較して、編組線の代わりに筒状蛇腹部材を用いることで、配索作業性に優れ、シールド性能を向上させることができる。詳しく説明すると、シールド部材のうち、パイプと機器等との接続部分には、従来から可撓性に優れる編組線が用いられる場合が多いが、編組線の特に端部において金属細線がほつれやすく、取付作業時等に周辺部材に引っ掛かり易いために、作業性が低下する虞があった。また、編組線は金属細線からなるため破れ易く、破れた場合には、シールド性能が低下する虞があった。これに対して、本発明は、編組線の代わりに筒状蛇腹部材がパイプに接続されているから、例えば筒状蛇腹部材を金属箔等、金属を薄く延ばして蛇腹状に加工することで、その端部にほつれが生じることがなく、取付作業時等に周辺部材に引っ掛かることもないから、配索作業性に優れたものとすることができる。加えて、編組線に比べて金属箔等からなる筒状蛇腹部材は耐久性に優れるから、挿通した電線を異物の干渉や、その他周辺部材からより確実に保護することができる。加えて、耐久性に優れる筒状蛇腹部材を用いることで、金属製のパイプに準じたシールド性能を発揮することができ、シールド導電体としてのシールド性能を向上させることができる。
【0008】
また、筒状蛇腹部材のうち、パイプの外周に締め付けられる部分にその開口端から切り込み形成されたスリットを設けることで、スリットを設けない場合と比較して、筒状蛇腹部材をパイプの外周面に合わせて縮径させることが可能となり、接触面積をより多く確保できるから、接触抵抗を低く抑えることができ、接続信頼性を確保することができる。
【0009】
また、パイプと筒状蛇腹部材とを締付リングで締め付ける作業を行う際、スリットを設けることにより筒状蛇腹部材がパイプの外周面に合わせて変形しやすくなるために、作業効率を向上させることも可能となる。
【0010】
前記筒状蛇腹部材のうち、前記パイプの外周に締め付けられる部分には前記パイプの外周面に沿った円筒状接続部が形成されていることが望ましい。このような構成によれば、筒状蛇腹部材のうち、パイプの外周に締め付けられる部分を予め円筒状とすることで、蛇腹状である場合と比較して、作業性に優れる。具体的には、パイプと筒状蛇腹部材とを締付リングにて締め付ける際に、締付リングに直接接触する筒状蛇腹部材の部位がパイプの外周面に沿った円筒状接続部であれば、締付前後でパイプ又は締付リングに対して筒状蛇腹部材が位置ずれすることがない。よって、確実に筒状蛇腹部材をパイプに締め付けることができ、作業性に優れたものとすることができる。また、その締め付け部分をパイプの外周面に沿った形状とすることで、接触面積をより多く確保し、接触抵抗を低く抑え、十分な電気的接続を図ることができる。
【0011】
前記筒状蛇腹部材のうち、前記円筒状接続部に連なる部分には前記円筒状接続部を段付き状に拡開して前記パイプとの間に環状のギャップを形成するシール筒部が設けられ、前記パイプと前記シール筒部との間にはシールリングが配されていてもよい。このような構成によれば、パイプと筒状蛇腹部材との締付部分を介して外部から水の浸入や異物の混入等を防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、配索作業性に優れ、シールド性能を向上させることが可能なシールド導電体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態1に係るシールド導電体のパイプと筒状蛇腹部材の接続部分を示した側面図
【図2】同側断面図
【図3】図1のA−A断面図
【図4】筒状蛇腹部材の側面図
【図5】実施形態1の変形例1に係るシールド導電体のパイプと筒状蛇腹部材の接続部分を示した側断面図
【図6】実施形態2に係る筒状蛇腹部材の側面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図4によって説明する。
本実施形態のシールド導電体10は、例えば電気自動車等の車両内における走行用の動力源を構成するバッテリ、インバータ、モータ等の機器(図示せず)間に配索されるものであり、バッテリとインバータ間では2本、インバータとモータ間では3本の電線11を備えて構成される。そのうち、本実施形態では、インバータとモータ間において車両の床下に配索される3本の電線11を備えたシールド導電体10について説明する。
【0015】
シールド導電体10は、図1に示すように、3本の電線11と、これら3本の電線11が挿通され、シールド機能を有するシールド部材20からなる。シールド部材20は、車両の床下に配索されるパイプ21と、このパイプ21の両端部に導電可能に接続され、パイプ20と機器とを接続する可撓性に優れた筒状蛇腹部材30とを備えて構成されている。
【0016】
各電線11は、共に丸形(断面円形状)の被覆電線であって、図3に示すように芯線12と芯線12の周囲を覆う絶縁被覆13(絶縁層)とから構成される。芯線12は、銅又は銅合金製であって、単芯線又は複数の金属素線を撚り合わせた撚り線が用いられている。この3本の電線11は、図示はしないがそれぞれ端末に端子金具が接続されて、パイプ21及びそれに連なる筒状蛇腹部材30から導出され、機器側の端子へと接続される。
【0017】
パイプ21は金属製(例えば、アルミニウム、アルミニウム合金)の円筒状をなし、その内径は3本の電線11を挿通可能な寸法とされている。詳細には、パイプ21の断面形状は、図3に示すように真円形をなし、外周面21Aと内周面21Bは同心円形をなしており、即ち、厚さは全周にわたって一定とされている。また、パイプ21の外周面21Aは、滑らかな円弧面とされている。そして、パイプ21の開口縁部には、図2に示すように、後方に向かって外周面21Aから縮径する方向に傾斜する誘導傾斜面21Cが形成されている。この誘導傾斜面21Cによりパイプ21の外周に嵌着されるOリング22(シールリングに相当する)、及びその外周を覆う筒状蛇腹部材30に挿入し易くすることが可能である。このような構成のパイプ21はシールド機能の他に、電線11の保護機能を兼ね備えるものであり、飛び石等が当たって、電線11を傷付ける虞のある車両の床下に配索されるのに適している。
【0018】
パイプ21の端部は、筒状蛇腹部材30の開口端31から挿入され、パイプ21と筒状蛇腹部材30とが嵌合したその外周からかしめリング40(締付リングに相当する)でかしめ付けることにより導電可能に接続されている。筒状蛇腹部材30は金属製(例えば、柔軟性に優れる銅、銅合金)であって、薄い箔状に蛇腹形状を施した態様をなしている。筒状蛇腹部材30は、図1ないし図4に示すように、全体として略円筒状をなしており、そのうち蛇腹形状が形成されている部分は本体部32とされる。本体部32と開口端31との間には、図2に示すように、本体部32側からシール筒部33、円筒状接続部34が設けられている。詳しくは後述するが、シール筒部33はパイプ21に嵌着したOリング22の外周を密着した状態で覆う部位であって、円筒状接続部34はその外周からかしめリング40でかしめ付けられる部位に相当する。
【0019】
本体部32は、外周に向かって膨出し、周方向に延びる突条部32Aが軸方向に沿って所定の等ピッチで並列配置されている。突条部32A間は、内周に向かって凸となる凹条部32Bとされ、突条部32Aと凹条部32Bとが交互に配された蛇腹状をなし、電線11の配索経路に柔軟に追従できる可撓性を備えている。
【0020】
シール筒部33は、円筒状接続部34から段付き状に拡径してパイプ21の外周面21Aとの間にOリング22の肉厚分のギャップが環状に形成されている。このギャップには、図2に示すように、パイプ21の外周面21Aに嵌着したOリング22が収容可能とされている。Oリング22はゴム等の弾性体からなり、シール筒部33の内周面とパイプ21の外周面21Aとに密着することで両部材間が水密にシールされる。
【0021】
さて、円筒状接続部34は、開口端31からパイプ21の外径と略同じ寸法で外周面21Aに沿って形成されている。円筒状接続部34の外周面は滑らかな円弧面とされ、開口端31からは4本のスリット35が切り込み形成されている。このスリット35は円筒状接続部34において円弧上に等間隔に形成され、その切り込みの深さは、開口端31から円筒状接続部34を貫通して、シール筒部33に向けて拡径する手前まで達している。
【0022】
円筒状接続部34をパイプ21にかしめ付けるかしめリング40は、金属製(例えば、アルミニウム合金、ステンレス、銅、銅合金等)であって、リング状をなしている。かしめリング40は、その軸線方向に沿って延びる帯板状をなし、幅寸法は筒状蛇腹部材30の円筒状接続部34の幅寸法と略一致する。かしめリング40の内径は、かしめ付ける前において、パイプ21の外径よりも大きい寸法とされている。
【0023】
続いて、筒状蛇腹部材30をパイプ21の外周からかしめリング40により締め付ける工程について説明する。
まず、パイプ21にOリング22を嵌着し、筒状蛇腹部材30の開口端31からOリング22を嵌着した状態のパイプ21を、その誘導傾斜面21Cから挿入する。Oリング22が筒状蛇腹部材30のシール筒部33に収容される位置までパイプ21を押し進め、Oリング22がシール筒部33の内周面とパイプ21の外周面21Aとに密着してシールしたところで、かしめリング40を嵌め付ける。かしめリング40は、筒状蛇腹部材30の円筒状接続部34上に位置決めされ、このとき、軸中心側からパイプ21、筒状蛇腹部材30の円筒状接続部34、かしめリング40が略同心状に重なった状態となる。
【0024】
このような状態のパイプ21、筒状蛇腹部材30、かしめリング40を図示しないかしめ付け用の金型にセットする。金型を型締めすると、かしめリング40は筒状蛇腹部材30の円筒状接続部34側へと押圧され、円筒状接続部34は形成されたスリット35により、かしめリング40と共に、パイプ21の外周面21Aに沿うように縮径変形する。これと同時に、かしめリング40の余長部分が、外側へと突出することにより、図3に示すように、左右一対の耳部41が形成される。この耳部41は余長部分の内周面同士が密着した折り返し形状をなしており、耳部41以外の部分は、パイプ21の外周面21A、及びそれに密着する円筒状接続部34上に密着し、略円形をなす。このようにして、筒状蛇腹部材30は、パイプ21の外周面21Aとかしめリング40の内周面との間で、径方向に均一に締め付けられ、パイプ21に対して導通可能に接続される。
【0025】
以上説明したように、本実施形態によれば、電線11を包囲するシールド部材20は、金属製のパイプ21に金属製の筒状蛇腹部材30の端部同士を嵌合させて外部からかしめリング40でかしめ付けることにより接続してなる。よって、従来の例えば、筒状蛇腹部材30ではなく、筒状編組部材等の編組線を組み付けていた場合と比較して、配索作業性に優れ、シールド性能を向上させることができる。
【0026】
即ち、編組線は金属細線をメッシュ状に編み込んで形成されるため、編組線の特に端部において、金属細線がほつれやすく、取付作業時等に周辺部材に引っ掛かり易く、作業性が低下する虞があった。また、同様に金属細線からなる編組線は、破れ易く、破れた場合には、シールド性能が低下する虞があった。これに対して、本実施形態では、編組線の代わりに筒状蛇腹部材30がパイプ21に接続されており、薄い箔状に蛇腹形状を施した態様をなしているから、その端部にほつれが生じることもなく、取付作業時等に周辺部材に引っ掛かる虞もないから、配索作業性に優れたものとすることができる。
【0027】
また、筒状蛇腹部材30全体を箔状とすることで、金属細線を編み込んだ編組線よりも破れにくく、丈夫である。つまり、筒状蛇腹部材30は耐久性に優れるから、挿通した電線11を異物の干渉や、その他周辺部材からより確実に保護することができる。加えて、破れにくく、丈夫な筒状蛇腹部材30を用いることで、金属製のパイプ21に準じたシールド性能を発揮することができるから、シールド部材20全体のシールド性能を向上させることができる。また、筒状蛇腹部材30の本体部32を突条部32Aと凹条部32Bとが交互に配された蛇腹状とすることで、電線11の配索経路に柔軟に追従することが可能である。
【0028】
また、筒状蛇腹部材30のうち、パイプ21にかしめ付けられる円筒状接続部34をパイプ21の外周面21Aに沿った円筒状とすることで、作業性を向上させることが可能である。即ち、円筒状接続部34が、本体部32のように蛇腹状ではなく、パイプ21の外周面21Aに沿った円筒状であれば、かしめ付け前後でパイプ21又は、同じく円形のリング状をなしたかしめリング40に対する筒状蛇腹部材30の位置ずれを最小限に抑えることができる。よって、確実に筒状蛇腹部材30をパイプ21にかしめ付けることができるから、作業性に優れたものとすることができる。また、かしめ付け部分である円筒状接続部34をパイプ21の外周面21Aに沿った形状とすることで、接触面積をより多く確保し、接触抵抗を低く抑えることができるから、十分な電気的接続を図ることができる。
【0029】
また、円筒状接続部34に開口端31から切り込み形成されたスリット35を設けることで、スリット35を設けない場合と比較して、筒状蛇腹部材30をパイプ21の外周面21Aに合わせて縮径させることが可能となるから、円筒状という形状に加えてスリット35を形成することによっても、接触面積をより多く確保することができる。同様に、接触抵抗を低く抑えることや、十分な接続信頼性を確保することが可能となるから、本実施形態のシールド導電体10においてより優れたシールド性能を発揮させることができる。
【0030】
また、パイプ21と筒状蛇腹部材30とが重なり合う部分のうち、かしめ付け部分である円筒状接続部34よりも、筒状蛇腹部材30の本体部32側に配されたパイプ21の端部にはOリング22が嵌着されている。このOリング22に密着するように、筒状蛇腹部材30には、円筒状接続部34から段付き状に拡径したシール筒部33が設けられている。これにより、パイプ21の外周面21Aとシール筒部33との間はOリング22により水密にシールされているから、かしめリング40でかしめ付けられた円筒状接続部34とパイプ21の外周面21Aとの間等を介して外部からの水の浸入や異物の混入等を防止することができる。
【0031】
以上本発明の実施形態1を示したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば以下のような変形例を含むこともできる。なお、以下の変形例において、上記実施形態と同様の部材には、上記実施形態と同符号を付して説明を省略するものもある。
【0032】
[実施形態1の変形例1]
実施形態1の変形例1について図5を用いて説明する。本変形例は、実施形態1とは、Oリング22がパイプ21に嵌着されておらず、筒状蛇腹部材40にシール筒部33が設けられていないところが相違する。
【0033】
筒状蛇腹部材50は、実施形態1と同様に蛇腹状をなした本体部51と、本体部51から開口端52にかけてパイプ21の外周面21Aに沿った円筒状接続部53とから構成されている。筒状蛇腹部材50のうち、パイプ21の外周面21Aに被さる部分は、すべてパイプ21の外周面21Aに沿った形状をなす円筒状接続部53とされている。この円筒状接続部53には図示はしないが、開口端52から切り込み形成された複数のスリットが等間隔に設けられている。
【0034】
このような構成によれば、実施形態1と比較して、シール筒部33が設けられていない分、筒状蛇腹部材50の成形を容易なものとすることができる。また、パイプ21と筒状蛇腹部材50との接触面積を広く確保することができるから、かしめリング40によりかしめ付けることにより、パイプ21と筒状蛇腹部材50との間の接続信頼性をより十分に確保することができる。これにより、パイプ21と筒状蛇腹部材50からなるシールド部材55の電線11に対するシールド性能の向上が見込める。
【0035】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図6によって説明する。
本実施形態は、実施形態1とは、筒状蛇腹部材30の、特にかしめリング40でかしめ付けられる部分の形状が相違する。他の構成については実施形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0036】
筒状蛇腹部材60は、その全長に亘って、突条部61と凹条部62とが交互に配された蛇腹状をなしている。図示しないパイプの端部が挿入される筒状蛇腹部材60の開口端63からは、複数のスリット64が切り込み形成されている。スリット64は、筒状蛇腹部材60のうち、パイプにかしめ付けられる部位に跨るように形成されている。言い換えると、スリット64の切り込みの深さは、筒状蛇腹部材60をパイプにかしめ付ける際に、当該筒状蛇腹部材60がパイプの外周面に沿って縮径可能となる深さに設定されている。
【0037】
このような構成によれば、筒状蛇腹部材60を全長にわたって蛇腹状とすることで、実施形態1のように円筒状接続部34を形成する必要がなく、成形性に優れる。また、筒状蛇腹部材60をホース状に連続して成形すれば、適宜筒状蛇腹部材60の長さを変更することが可能となり、汎用性に優れたものとなる。また、実施形態1のようにパイプとの接続部分として、筒状蛇腹部材60にパイプの外周面に沿った円筒状接続部をあえて設けずとも、複数のスリット64を形成することで、そのスリット64が形成された部分をパイプの外径にあわせて縮径することが可能となる。これにより、かしめリング等でかしめ付ける際に、筒状蛇腹部材60が縮径せずに、十分な電気的接続が図れない等の不具合を防止することができる。言い換えれば、スリット64を形成することで、かしめ付け部分に蛇腹形状が施されていたとしても、パイプの外径にあわせて縮径させることが可能となるから、パイプに対する筒状蛇腹部材60の接触面積を確保し、接触抵抗を抑え、十分な接続信頼性を確保することが可能となる。
【0038】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0039】
(1)上記した各実施形態では、電線11は2本ないし3本とされていたが、これに限られず、例えば1本や4本以上であってもよい。
【0040】
(2)上記した各実施形態では、パイプ21の断面形状は真円形としたが、これに限られず配索状況に応じて、楕円形状等扁平な形状に変形させたものであってもよい。
【0041】
(3)上記した各実施形態では、かしめ付け部分である例えばパイプ21の外周面21Aと筒状蛇腹部材30の円筒状接続部34には、防錆や電食の防止を目的としためっき処理等を施していないが、これに限られず、例えばパイプ21の端部に亜鉛めっきを施し、防錆を図ってもよい。また、筒状蛇腹部材30のうち、パイプ21との接触面にスズめっきを施すことで、異種金属の接触により発生する電食を抑えるものであってもよい。
【0042】
(4)上記した各実施形態では、パイプ21をアルミニウム、アルミニウム合金等の金属製とし、筒状蛇腹部材30を柔軟性に優れる銅、銅合金等の金属製としたが、これに限られず、その他の金属材料や金属以外の導電材料により構成されていてもよい。
【0043】
(5)上記した各実施形態では、リング状のかしめリング40によりかしめ付けることにより、パイプ21と筒状蛇腹部材30とを導電可能に接続していたが、これに限られず、例えばC状のかしめリングによりかしめ付けてもよい。また、結束バンド様の締付部材により、パイプと筒状蛇腹部材とをその外周から締め付ける形態であってもよい。
【符号の説明】
【0044】
10…シールド導電体
11…電線
20…シールド部材
21…パイプ
21A…外周面
22…Oリング(シールリング)
30…筒状蛇腹部材
31…開口端
32…本体部
33…シール筒部
34…円筒状接続部
35…スリット
40…かしめリング(締付リング)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線を筒状のシールド部材で包囲してなるシールド導電体であって、
前記シールド部材が、金属製のパイプと金属製の筒状蛇腹部材の端部同士を嵌合させて外周から締付リングにて締め付けた形態とされており、
前記筒状蛇腹部材のうち、前記パイプの外周に締め付けられる部分には、前記筒状蛇腹部材の開口端から切り込み形成されたスリットが設けられていることを特徴とするシールド導電体。
【請求項2】
前記筒状蛇腹部材のうち、前記パイプの外周に締め付けられる部分には前記パイプの外周面に沿った円筒状接続部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のシールド導電体。
【請求項3】
前記筒状蛇腹部材のうち、前記円筒状接続部に連なる部分には前記円筒状接続部を段付き状に拡開して前記パイプとの間に環状のギャップを形成するシール筒部が設けられ、前記パイプと前記シール筒部との間にはシールリングが配されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシールド導電体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−178314(P2012−178314A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41708(P2011−41708)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】