説明

シールド工法用添加剤

【課題】比較的大きな粒子を含む砂礫などであっても、効率よく流動性を付与することができ、排土を容易に行うことが可能なシールド工法用添加剤を提供する。
【解決手段】水溶性高分子(ノニオン性セルロースエーテルなど)と、界面活性剤(スルホン酸系界面活性剤など)と、無機塩基(アルカリ土類金属水酸化物など)とを組合せてシールド工法用添加剤を構成する。固形分換算で、水溶性高分子100重量部に対して、界面活性剤の割合は0.1〜1000重量部程度であり、無機塩基の割合は10〜300重量部程度であってもよい。このような添加剤は、通常、地盤に適用して、地盤の掘削性及び排土の流動性を改善するために使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的大きな粒子を含む砂礫などであっても、効率よく流動性を付与することができ、排土を容易に行うことが可能なシールド工法用添加剤(特に土圧式シールド工法用添加剤)、及びそれを用いたシールド工法に関する。
【背景技術】
【0002】
土圧式シールド工法では、シールド機前面に取り付けられたカッターにより掘削を行い、掘削土砂をシールド機内の土圧室に充満させ、この土圧によって切羽土圧及び地下水圧などに対抗させて切羽を安定化させている。そして、土圧室に充満された掘削土砂は、コンベアやポンプなどを用いて土圧室外に排土される。
【0003】
このような土圧式シールド工法において、粘土、シルトなどの微細粒子で構成された粘性地盤では、掘削、排土が容易である。一方、砂や砂礫などの粒子が互いに拘束し合っている砂礫地盤においては、その止水性が低いため、掘削の際にカッターチャンバー上部に空洞が生じ、この空洞部に湧水とともに土砂が崩落し、その結果切羽の安定が保てなくなる。また、砂礫地盤においては、掘削土砂の流動性が悪いため、ポンプ圧送ができず、容易に排土できない。そのため、砂礫地盤の掘削および排土においては、手掘りシールドや機械式シールドが用いられ、ベルトコンベアやトロッコにより排土運搬を行っている。しかし、経済的観点や作業効率の点からも好ましくない。
【0004】
そこで、流動性および止水性に乏しい砂礫地盤を掘削、排土する場合、掘削土砂に加泥剤(又は掘削用添加剤)を加えて、その粘性を増加させることにより、移送性又は搬送性を改善している。
【0005】
上記のような加泥剤又は添加剤としては、流動性を付与するために、水溶性樹脂(グアーガム、澱粉などの天然由来高分子;セルロースエーテルなどの半合成高分子;ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ソーダなどの合成高分子など)、吸水性樹脂(ポリアクリル酸ソーダの部分架橋品などの高吸水性樹脂など)などが利用されており、止水性を付与するためには、無機粉末(ベントナイト、粉末粘土など)、無機繊維などが使用されている。そして、流動性、止水性を改善することにより、土圧式シールド機の大型化、掘削土砂の長距離移送にある程度の効果を上げている。また、掘削土砂は、流動性を付与する加泥剤などの添加により流動性を改善すると、車輌などによる運送性が劣る。そのため、掘削土砂の流動性を低下させる方法も検討されている。
【0006】
例えば、特許2553610号公報(特許文献1)には、シールド推進工法において、シールド機の先頭部で掘削した土砂を取り出すために、スクリューコンベヤーを用いて掘削土砂を搬送する際に、土砂が軟弱で流動しやすい場合に、スクリューコンベヤー内に添加して、土砂と混合し、土砂の軟弱流動性を改良するための改良剤であって、水溶性の多糖類又は変性多糖類又はそれらの混合物を主成分とする改良剤が開示されている。また、特許文献1には、改良剤が無機物又は界面活性剤を含有してもよいことが記載されている。特開2000−220377号公報(特許文献2)には、切り羽面に掘削用添加剤の圧力を作用させつつ掘進する泥土圧式シールド工法において、吸水性樹脂及び水溶性樹脂からなる掘進用添加剤を水に溶解膨潤させてカッターチャンバー内に加圧注入して掘削する工程と、掘削工程で排出された排出土を他の薬剤を添加することなくポンプ圧送により坑外に搬出する工程と、前記排出土を、有機系固化剤および石膏系化合物からなる無機系固化剤で処理して、再利用可能な土に再生する工程からなる泥土圧式シールド工法排出土の再利用化方法が開示されている。
【0007】
しかし、条件的に厳しい砂礫地盤の掘削では、圧送を安定的に行うには圧送ポンプの大きなピストン圧に対抗する必要があるとともに、トラブルなどで圧送が停止された場合には、砂礫粒子が沈降して、粒子同士の噛み合いを防止する必要がある。そのため、添加剤には砂礫粒子同士を支える腰の強さ、例えば、指標としての添加剤の粘度やゲルストレングスの高さが要求されるものの、砂礫粒子が大径化するほど、添加剤の粘度やゲルストレングスを高める必要がある。しかし、取り扱い性などを考慮すると、従来の添加剤では、粘度やゲルストレングスの改善が不十分である。
【0008】
また、一般に、添加剤は、地上又はシールド機近くに設置した装置で、構成成分を溶媒(水など)などに分散又は溶解させることにより掘削地盤に適した粘度に調製され、カッターの注入口までポンプにより配管を使用して送液される。しかし、粒径の大きな礫の場合には、添加剤の粘度を高める必要があるものの、分散又は溶解装置の撹拌能力、ポンプ送液能力、及び配管径に起因する圧力損失などにより、添加剤の上限粘度が制限される。そのため、掘削された砂礫の状況によっては、ポンプ圧送に必要な粘度の添加剤をカッターまで供給できなかったり、排土に十分な流動性を付与できず、排土の運搬を、従来のベルトコンベア又はトロッコなどにより行わざるを得なくなり、極めて非効率的である。
【0009】
さらに、従来の添加剤又は方法では、添加剤の機能を、地盤変化に追随させて変化することが困難である。例えば、地盤が、粘土層から砂礫層、その逆に砂礫層から粘土層などへと大きく変化する場合、この変化に合わせて添加剤の機能指標である粘度やゲルストレングスを変化させる必要が生じるが、従来の方法では、タイムラグが発生し易い。例えば、長距離の掘削工事で分散又は溶解装置が地上に設置されていると、地盤の変化を察知してから直ちに添加剤の粘度などを調整しても、分散・溶解装置からカッターの添加剤注入ロまでの距離が長く、送液に相当な時間を要するため、トラブルが発生し易くなる。
【0010】
さらに、近年の環境への配慮の高まりから、添加剤についても環境への負荷が少ない天然由来又は半合成の化合物(天然由来高分子、半合成高分子など)が注目され始めているが、このような材料は、一般に地盤中のバクテリアによる生分解を受けやすく、合成化合物(合成高分子など)に比べ機能面(急激な粘度低下など)の安定性に問題が発生する確率が高くなる。
【特許文献1】特許2553610号公報(請求項5及び10)
【特許文献2】特開2000−220377号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、微生物などによる分解が抑制され、高い粘度を損なうことなく、土砂や砂礫と効率よく混合可能であり、比較的大きな粒子を含む砂礫などであっても、効率よく流動性を付与することができるとともに、排土を容易に行うことが可能なシールド工法用添加剤、及びそれを用いたシールド工法を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、生分解性が高く、環境負荷が低減されたシールド工法用添加剤、及びそれを用いたシールド工法を提供することにある。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、掘削に伴う地盤の粒子サイズの変化に合わせて、粘度を容易に調整可能なシールド工法用添加剤、及びそれを用いたシールド工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、水溶性高分子と界面活性剤と無機塩基とを組み合わせると、比較的大きな粒子を含む砂礫などに適用しても、効率よく流動性を付与することができ、排土を容易に行うことができることを見出し、本発明を完成した。
【0015】
すなわち、本発明のシールド工法用添加剤は、水溶性高分子と、界面活性剤と、無機塩基とを組み合わせた添加剤である。添加剤の形態は、粉粒状、水溶液状又は水分散液状であってもよい。前記添加剤は、(i)水溶性高分子と界面活性剤と無機塩基との混合物で構成され、粉粒状、水溶液状又は水分散液状の形態を有する添加剤、(ii) 水溶性高分子、界面活性剤及び無機塩基の各成分で構成され、粉粒状、水溶液状又は水分散液状の形態を有するそれぞれの単位を組み合わせた添加剤、もしくは(iii)水溶性高分子、界面活性剤及び無機塩基のうち、1つの成分で構成され、かつ粉粒状、水溶液状又は水分散液状の形態を有する単位と、他の2つの成分が混合され、かつ粉粒状、水溶液状又は水分散液状の形態を有する単位とを組合せた添加剤であってもよい。
【0016】
前記水溶性高分子は、少なくともノニオン性セルロースエーテルを含有していてもよい。前記界面活性剤は、脂肪族スルホン酸又はその塩、芳香族スルホン酸又はその塩、及びジアルキルスルホコハク酸又はその塩から選択された少なくとも一種のスルホン酸系界面活性剤を含有してもよい。無機塩基は、例えば、アルカリ土類金属水酸化物などで構成してもよいい。固形分換算で、水溶性高分子100重量部に対して、界面活性剤の割合は0.1〜1000重量部程度であり、無機塩基の割合は10〜300重量部程度であってもよい。このような添加剤は、通常、地盤に適用して、地盤の掘削性及び排土の流動性を改善するために使用される。
【0017】
本発明のシールド工法では、前記シールド工法用添加剤を用いて地盤を掘削する。シールド工法では、水溶性高分子、界面活性剤及び無機塩基を含む水溶液又は水分散液を調製し、地盤に供給(例えば、調製後、速やかに地盤に供給)してもよい。また、前記シールド工法では、水溶性高分子を含む水溶液又は水分散液と、無機塩基を含む水溶液と、界面活性剤を含む水溶液とを、それぞれ地盤に供給して混合してもよい。さらに、前記シールド工法では、水溶性高分子及び無機塩基を含む水溶液又は水分散液と、界面活性剤を含む水溶液とを、それぞれ地盤に供給して混合してもよい。前記シールド工法では、シールド工法用添加剤と掘削土砂とを含むスラリーをポンプで排出してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、水溶性高分子と界面活性剤と無機塩基とを組み合わせるので、比較的大きな粒子を含む砂礫などであっても、効率よく流動性を付与することができ、排土を容易に行うことができる。また、無機塩基を組み合わせることにより、水溶性高分子を地盤に適用しても微生物の繁殖又は増殖などを抑制して(すなわち、生分解の影響を抑制して)、水溶性高分子の分解を抑制することができ、高い粘度を損なうことなく、土砂や砂礫と効率よく混合することができる。さらに、ノニオン性セルロースエーテルを用いるため、土砂や砂礫などに適用しても、生分解性が高く、環境負荷を低減することができる。また、(i)水溶性高分子、界面活性剤及び無機塩基を含む水溶液又は水分散液を調製し、地盤に供給(特に、調製後、速やかに地盤に供給)したり、(ii)水溶性高分子を含む水溶液又は水分散液と、無機塩基を含む水溶液と、界面活性剤を含む水溶液とを、それぞれ地盤に供給して混合したり、もしくは(iii)水溶性高分子及び無機塩基を含む水溶液又は水分散液と、界面活性剤を含む水溶液とを、それぞれ地盤に供給して混合すると、掘削に伴う地盤の粒子サイズの変化に合わせて、添加剤の粘度を容易に調整することができ、排土性(掘削土のポンプの圧送性)を損なうことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明のシールド工法用添加剤(又は加泥剤)は、水溶性高分子と、界面活性剤と、無機塩基とを組み合わせた添加剤である。添加剤は、各成分を混合した混合物の形態であってもよい。また、水溶性高分子、界面活性剤及び無機塩基のうち、一部の成分で構成された単位(添加単位)と、残りの成分で構成された単位(添加単位)とを組み合わせた添加剤であってもよい。このような添加剤には、例えば、(i)水溶性高分子、界面活性剤及び無機塩基の各成分で構成されたそれぞれの単位を組合せた添加剤、(ii)水溶性高分子、界面活性剤及び無機塩基のうち、1つの成分で構成された単位(添加単位)と、他の2つの成分が混合された単位(添加単位)とを組み合わせた添加剤(例えば、水溶性高分子及び無機塩基を混合した単位と界面活性剤で構成された単位とを組合せた添加剤、水溶性高分子で構成された単位と、界面活性剤及び無機塩基を混合した単位とを組合せた添加剤など)などが含まれる。
【0020】
(水溶性高分子)
水溶性高分子としては、合成水溶性高分子[ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのビニルアルコール系樹脂;ポリビニルピロリドンなどのビニルピロリドン系樹脂;ポリビニルメチルエーテルなどのビニルエーテル系樹脂(ビニルアルキルエーテルの単独又は共重合体、ビニルアルキルエーテル−無水マレイン酸共重合体など);ポリ(メタ)アクリル酸又はその塩(ポリアクリル酸ナトリウムなどのアルカリ金属塩など)などの水溶性アクリル系樹脂;酢酸ビニル−マレイン酸共重合体などのビニルエステル(酢酸ビニルなど)と酸基含有ビニルモノマーとの共重合体;スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体などの芳香族ビニルモノマーと酸基含有ビニルモノマーとの共重合体;ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール;ポリアクリルアミドなどのアクリルアミド系樹脂;ポリオキシエチレンユニットなどのポリオキシC2−3アルキレンユニットを有するポリエーテル型ポリアミドなどの水溶性ポリアミドなど]、半合成水溶性高分子[例えば、可溶性セルロースアセテート、セルロースの無機酸エステル(硫酸セルロース、リン酸セルロースなど)、ノニオン性セルロースエーテル、アニオン性セルロースエーテル(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩などのカルボキシアルキルセルロースの塩(アルカリ又はアルカリ土類金属塩など)など)などのセルロース誘導体など]、天然由来水溶性高分子[水溶性多糖類、例えば、アルギン酸又はその塩(アルギン酸ナトリウムなど)、デンプン又は変性デンプン、マンナン、水溶性ガム類(キサンタンガム、グアーガムなど);コラーゲンなどの水溶性蛋白質など]などが挙げられる。これらの他の水溶性高分子は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。水溶性高分子のうち、生分解性の点からは、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、セルロース誘導体、天然由来水溶性高分子などが好ましく、特に、水溶性高分子を少なくともノニオン性セルロースエーテルで構成するのが好ましい。
【0021】
前記ノニオン性セルロースエーテルとしては、水溶性でノニオン性のセルロースエーテル類、例えば、メチルセルロースなどのアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース(ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシC2−4アルキルセルロースなど)、ヒドロキシアルキル−アルキルセルロース(ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロースなどのヒドロキシC2−4アルキル−C1−4アルキルセルロースなど)などが挙げられる。これらのノニオン性セルロースエーテルは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0022】
ノニオン性セルロースエーテルの粘度は、種類に応じて適宜選択でき、例えば、1重量%水溶液の粘度(25℃、BL型粘度計、60rpm)が、50〜12000mPa・s、好ましくは100〜10000mPa・s、さらに好ましくは200〜5000mPa・s(例えば、300〜1000mPa・s)程度である。
【0023】
水溶性高分子中のノニオン性セルロースエーテルの割合は、固形分換算で、例えば、50〜100重量%、好ましくは60〜100重量%(例えば、65〜99重量%)、さらに好ましくは70〜100重量%(例えば、80〜95重量%)程度である。
【0024】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤(スルホン酸系界面活性剤;アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩などの硫酸エステル系界面活性剤;ドデシルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルリン酸カリウム、ポリオキシエチレンドデシルフェニルリン酸ナトリウム、レシチンなどのリン酸エステル系界面活性剤など)、カチオン性界面活性剤(アルキルアミン酢酸塩、イミダゾリン誘導体などのアミン系界面活性剤;ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウム塩などの第4級アンモニウム塩など)、ノニオン性界面活性剤[ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーなどのポリアルキレンオキシド型界面活性剤;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(ポリオキシエチレンドデシルエーテルなど)、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなど)、ポリオキシアルキレンアルキルアミン(ポリオキシエチレンステアリルアミンなど)、ポリオキシエチレン鎖を有する脂肪酸エステル(ポリオキシエチレングリセリンステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンステアリン酸エステルなど)などのポリアルキレンオキシド誘導体;多価アルコール脂肪酸エステル(グリセリンモノステアリン酸エステルなどのグリセリン脂肪酸エステル;ペンタエリスリトールモノステアリン酸エステルなどのペンタエリスリトール脂肪酸エステル;ショ糖モノステアリン酸エステルなどのショ糖脂肪酸エステル;ソルビタンモノステアリン酸エステルなどのソルビタン脂肪酸エステルなど)などの多価アルコール型界面活性剤;脂肪酸ジアルカノールアミド類(ステアリン酸ジエタノールアミドなどの脂肪酸ジアルカノールアミド又はそのアルキレンオキシド付加物など)などのアルカノールアミド類;ラウリルエタノールアミンなどのアルカノールアミン類など]、両性界面活性剤(アラニン系界面活性剤などのアミノ酸型両性界面活性剤;アルキルベタイン、スルホベタイン誘導体などのベタイン型両性界面活性剤;レシチンなど)などの低分子型界面活性剤や、高分子型界面活性剤(ポリエチレンオキシド−メタクリレート共重合体などのポリアルキレンオキシド−(メタ)アクリレート共重合体;ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド共重合体などのポリアルキレンオキシド共重合体;ポリエチレンオキシド−エピクロルヒドリン共重合体などのポリアルキレンオキシド−エピクロルヒドリン共重合体;ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルエステルなどのポリエーテル系樹脂など)などが含まれる。これらの界面活性剤は、単独で又は2種以上組みあわせてもよい。これらの界面活性剤のうち、水溶性高分子(特に、ノニオン性セルロースエーテルなど)の粘度調整の点から、アニオン性界面活性剤、特に、少なくともスルホン酸系界面活性剤を用いるのが好ましい。
【0025】
前記スルホン酸系界面活性剤としては、例えば、飽和又は不飽和脂肪族スルホン酸又はその塩[例えば、アルカンスルホン酸塩(例えば、ドデカンスルホン酸ナトリウムなどのC6−20アルカンスルホン酸アルカリ金属塩、ドデカンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩などのC4−20アルカンスルホン酸ホスホニウム塩など)、オレフィンスルホン酸塩など]、芳香族スルホン酸又はその塩[例えば、アレーンスルホン酸塩(ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウムなどのC6−20アレーンスルホン酸アルカリ金属塩、ベンゼンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物などのC6−20アレーンスルホン酸縮合物又はその金属塩など)、アルキルアレーンスルホン酸塩(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのC4−20アルキルC6−20アレーンスルホン酸アルカリ金属塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウムなどのC4−20アルキルC6−20アレーンスルホン酸ホスホニウム塩など)など]、ジアルキルスルホコハク酸又はその塩(ナトリウム塩など)などのスルホン酸又はその塩などが挙げられる。これらのスルホン酸系界面活性剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。スルホン酸系界面活性剤のうち、アレーンスルホン酸又はその塩、アレーンスルホン酸縮合物などが好ましく、特に、アレーンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物が好ましい。
【0026】
界面活性剤(スルホン酸系界面活性剤など)の割合は、土砂又は砂礫の流動性の点から、固形分換算で、水溶性高分子(ノニオン性セルロースエーテルなど)100重量部に対して、0.1〜1000(例えば、10〜900重量部)程度であり、好ましくは1〜800重量部(例えば、15〜700重量部)、さらに好ましくは5〜500重量部(例えば、20〜400重量部)程度である。なお、スルホン酸系界面活性剤と他の界面活性剤とを併用する場合、他の界面活性剤の割合は、スルホン酸系界面活性剤100重量部に対して、例えば、0.0〜100重量部、好ましくは1〜50重量部、さらに好ましくは5〜20重量部程度であってもよい。
【0027】
(無機塩基)
無機塩基は、水溶性高分子と共存させて、水溶性高分子の微生物(微生物の酵素など)などによる分解を防止して、水溶性高分子の粘度を保持するため、水溶性高分子の水溶液又は水分散液のpHをアルカリ性(例えば、pH8〜12程度)にすることができればよく、通常、水に対して易溶性又は水溶性である。
【0028】
前記無機塩基としては、アンモニアを使用してもよいが、通常、水酸化物[水酸化アンモニウム;金属水酸化物(水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物など)など]、炭酸塩(炭酸アンモニウム;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどの金属炭酸塩(アルカリ金属炭酸塩など)など)などが挙げられる。無機塩基は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの無機塩基のうち、金属水酸化物、特にアルカリ土類金属水酸化物が好ましい。なお、無機塩基は、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、無機塩基を含む鉱物として使用してもよく、無機塩基以外に他の不純物を含む混合物として用いてもよい。
【0029】
無機塩基の割合は、固形分換算で、水溶性高分子100重量部に対して、10〜300重量部、好ましくは30〜250重量部、さらに好ましくは50〜200重量部程度であってもよい。
【0030】
シールド工法用添加剤(又は少なくとも水溶性高分子及び無機塩基を含有する水溶液又は水分散液)のpHは、微生物の繁殖及び水溶性高分子の沈降を防止する観点から、好ましくは8〜11.5、さらに好ましくは8.5〜11程度の範囲から選択できる。
【0031】
シールド工法用添加剤を構成する各成分(及び各単位)は、粉粒体としても用いてもよく、溶液又は分散液(例えば、水溶液又は水分散液など)の形態で用いてもよい。また、シールド工法用添加剤の形態は、特に制限されず、例えば、粉粒状、水溶液状又は水分散液状であってもよい。好ましい添加剤には、例えば、下記の(i)〜(iv)などが含まれる。
(i)水溶性高分子と界面活性剤と無機塩基との混合物で構成され、粉粒状(粉粒体)、水溶液状又は水分散液状の形態を有する添加剤、
(ii) 水溶性高分子、界面活性剤及び無機塩基の各成分で構成され、粉粒状、水溶液状又は水分散液状の形態を有するそれぞれの単位を組合せた添加剤、もしくは
(iii) 水溶性高分子、界面活性剤及び無機塩基のうち、1つの成分で構成され、かつ粉粒状、水溶液状又は水分散液状の形態を有する単位と、他の2つの成分が混合され、かつ粉粒状、水溶液状又は水分散液状の形態を有する単位とを組合せた添加剤。
【0032】
本発明の添加剤は、必要により、溶媒、例えば、水、有機溶媒(エタノールなどのアルコール類;アセトンなどのケトン類;セロソルブなどのエーテル類;アセトニトリルなどのニトリル類;ヘキサン、トルエンなどの炭化水素類;酢酸エチルなどのエステル類など)、又はこれらの混合物などを含有してもよい。また、添加剤(粉粒状添加剤など)とこれらの溶媒とを混合して、地盤に供給してもよく、添加剤を地盤に供給した後、さらに上記の溶媒を地盤に供給してもよい。添加剤又はその構成成分と組み合わせる溶媒としては、通常、水を用いる場合が多い。また、必要により、水と共に、有機溶媒(エタノール、アセトン、アセトニトリルなどの水溶性有機溶媒;炭化水素類、エステル類などの疎水性有機溶媒など)を併用してもよい。すなわち、水溶液状又は水分散液の形態を有する添加剤は、必要により、上記有機溶媒を含有してもよい。また、添加剤を構成する各成分を含む水溶液又は水分散液も、必要により、上記有機溶媒を含有してもよい。例えば、水溶性高分子及び/又は無機塩基を含む水溶液又は水分散液は、必要により、前記例示の有機溶媒、例えば、水溶性有機溶媒などを含有していてもよく、界面活性剤を含む水溶液は、必要により、前記例示の有機溶媒、例えば、水溶性有機溶媒、疎水性有機溶媒などを含有していてもよい。
【0033】
本発明の添加剤(もしくは、添加剤を構成する各単位)は、必要により、慣用の添加剤、例えば、充填剤(ワラストナイトなどの繊維状無機充填剤;粉末粘土(クレー、タルクなど)、ベントナイトなどの粉粒状無機充填剤など)、pH調整剤、粘度調整剤、抗菌剤、着色剤、芳香剤などを含有してもよい。
【0034】
本発明のシールド工法用添加剤は、シールド工法(土圧式シールド工法など)において、掘削及び/又は排土に伴って、地盤若しくは土砂又は砂礫に添加できる。前記添加剤は、好ましくは、地盤の掘削に伴って、地盤に適用され、地盤の土砂又は砂礫と効率よく混合して、掘削性を改善することができ、シールド機の切羽の安定性を改善できるとともに、掘削した土砂又は砂礫に効果的に流動性を付与することができ、ポンプにより効率よく排土を輸送(圧送など)することができる。このように、本発明の添加剤は、通常、地盤に適用して、地盤の掘削性及び排土の流動性を改善するために使用される。添加剤の地盤への適用方法は、特に制限されず、構成成分の混合物で構成された添加剤を地盤に適用してもよく、構成成分(又は添加単位)をそれぞれ地盤に適用して、混合してもよい。なお、添加剤又は構成成分(又は添加単位)は、粉粒状の形態で、地盤に適用してもよいが、通常、溶液又は分散液の形態で適用する場合が多い。
【0035】
少なくとも水溶性高分子を含む(例えば、水溶性高分子及び無機塩基を含む)溶液又は分散液単位と、少なくとも界面活性剤を含む溶液(界面活性剤を含む溶液、界面活性剤及び無機塩基を含む溶液など)単位とを、(i)混合後速やかに地盤に適用したり、(ii)それぞれ地盤に適用して、土砂又は砂礫などと共に混合すると、簡便に粘度調整を行うことができる。そのため、サイズが小さい土砂や比較的大きなサイズの砂礫などが混在したり、掘削に伴って、サイズが不規則に変動するような地盤に適当する場合であっても、排土の流動性を効率よく調整することができる。
【0036】
(シールド工法)
本発明のシールド工法では、前記シールド工法用添加剤を用いて、地盤を掘削する。シールド工法用添加剤では、各構成成分を予め混合して、地盤に適用してもよく、各成分を個々に地盤に適用し、地盤の掘削に伴って、各成分を混合してもよい。
【0037】
添加剤の地盤への適用は、前記の方法により行うことができる。なお、予め構成成分(又は添加単位)を混合して水溶液又は水分散液の形態で地盤に供給する場合、水溶液又は水分散液の粘度が必要以上に高くなりすぎるのを防止するため、混合後速やかに地盤に適用するのが好ましい。また、予め各成分を混合して、地盤に適用する場合にも、塊状物(又は未溶解物)の生成を抑制できるため、チューブなどの送液ラインを通じて、切羽(シールド先端の土圧室)に供給する場合にも、目詰まりを防止することができる。
【0038】
地盤への添加剤の適用方法のうち、好ましい方法としては、(i)水溶性高分子、界面活性剤及び無機塩基を含む水溶液又は水分散液を調製し、地盤に供給する方法、(ii)水溶性高分子を含む水溶液又は水分散液と、無機塩基を含む水溶液と、界面活性剤を含む水溶液とを、それぞれ地盤に供給して混合する方法、(iii)水溶性高分子及び無機塩基を含む水溶液又は水分散液と、界面活性剤を含む水溶液とを、それぞれ地盤に供給して混合する方法などが挙げられる。
【0039】
水溶液又は水分散液を調製し、地盤に供給する方法(i)では、例えば、粉粒状添加剤に水を添加混合し、地盤に供給してもよく、構成成分(又は添加単位)の複数の水溶液又は水分散液(例えば、水溶性高分子及び無機塩基を含む水溶液又は水分散液と、界面活性剤を含む粉粒体又は水溶液と)を混合し、地盤に供給してもよい。
【0040】
各成分(又は添加単位)をそれぞれ地盤に供給して混合する方法(ii)及び(iii)では、各成分の地盤への適用順序は特に制限されないが、粘度を効率よくコントロールする点から、少なくとも水溶性高分子を含む水溶液又は水分散液を適用した後、界面活性剤を含む水溶液を適用するのが好ましい。また、方法(ii)では、無機塩基を含む水溶液は、水溶性高分子の土壌微生物による分解を防ぐため、水溶性高分子を含む水溶液又は水分散液と同時に地盤に適用するか、又は水溶性高分子の水溶液又は水分散液を適用した後、速やかに地盤に適用するのが好ましい。
【0041】
添加剤(もしくは、添加単位)は、連続的又は間欠的に地盤に適用してもよい。添加剤(通常、溶液又は分散液状添加剤、もしくは溶液又は分散液状の形態の添加単位)は、通常、送液ライン(チューブなど)を利用して、シールド機の切羽に供給し、さらに地盤に注入又は散布などにより適用することができる。添加単位をそれぞれ地盤に適用する場合、例えば、少なくとも水溶性高分子を含む(例えば、水溶性高分子及び無機塩基を含む)水溶液又は水分散液と、界面活性剤を含む水溶液と、必要により無機塩基を含む水溶液とを、別々の送液ラインを利用して、切羽に供給し、両者の混合とともに地盤に供給したり、切羽から、別々に地盤に供給し、地盤の掘削とともに両者を混合することができる。このように、水溶性高分子と、界面活性剤とを別々に切羽に供給して、地盤への適用に伴って両成分を混合すると、粘度が低い状態で送液することができ、送液ラインの目詰まりを有効に防止できるとともに、地盤への適用に伴って、両成分の混合により粘度を向上させ、土砂又は砂礫に適度な流動性を付与できる。また、このように、シールド工法用添加剤と掘削土砂とを含むスラリーは適度な流動性を有するため、ポンプにより排出することができ、効率よく掘削を行うことができる。
【0042】
なお、添加剤の使用量は、地盤の種類、性質に応じて広い範囲から選択でき、例えば、土砂1mに対して、注入率10〜60容量%、好ましくは15〜50容量%、さらに好ましくは20〜40容量%程度である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、種々の地盤、例えば、礫分、砂分、細砂、粘土、シルトなどを含む地盤に適用できる。特に砂礫地盤の掘削に有効である。
【実施例】
【0044】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0045】
実施例1
ヒドロキシエチルセルロース[ダイセル化学工業(株)製、HEC SP900、1重量%水溶液の粘度4240mPa・s(25℃)]50重量%、水酸化マグネシウム(ブルーサイト鉱石粉砕120メッシュパス品)50重量%をミキサーにて撹拌混合し、粉粒状混合物を調製した。
【0046】
撹拌羽根(70mmφカイ型十字2段;3cm間隔)を備えた撹拌容器(ポリエチレン容器、1L)に、水道水594.0gを入れ、1000rpmで撹絆しつつ、上記粉粒状混合物6.0gを徐々に添加し、20〜25分間撹拌させて溶解させ、1.0重量%濃度の水溶液を作製した。
【0047】
得られた水溶液600gに、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(マイティ150、(株)花王製)を1.0ml(0.17v/v%)添加して5分間撹拌し、得られた混合物の状態を観察し、不溶物(又は未溶解物)の有無を目視にて観察した。
【0048】
観察後、混合物を密封し、25℃の恒温槽内に1時間30分静置し、BL型粘度計(60rpm)を用いて粘度を測定した。すなわち、混合物を粘度測定容器(内径75mm×高さ125mm、円筒ガラス製)に移し替えてBL型粘度計にセットし、測定開始から60秒後の粘度を測定した。
【0049】
実施例2〜5
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の量を、3.0ml(0.50v/v%)、5.0ml(0.83v/v%)、7.0ml(1.17v/v%)、及び9.0ml(1.50v/v%)にそれぞれ変更する以外は、実施例1と同様に混合物の状態を観察し、粘度を測定した。
【0050】
参考例1
実施例1で得られた水溶液を、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物を添加することなく、密封し、25℃の恒温槽内に1時間30分静置し、実施例1と同様に粘度を測定した。
【0051】
比較例1〜4
実施例1の粉粒状混合物に代えて、従来の土圧式シールド工法用添加剤[ダイセル化学工業(株)製、S−200P(カルボキシメチルセルロースとアニオン性ポリアクリルアミドとの混合物)、0.7重量%水溶液の粘度1620mPa・s]を、S−200Pの濃度が0.3、0.7、1.0及び2.0重量%となるように用い、添加剤及び水道水の総量が600.0gとなるように水道水の量を調整する以外は、実施例1と同様の方法により水溶液(又は水分散液)を作製し、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物を添加することなく、未溶解物の有無を観察した。
【0052】
また、得られた水溶液(又は水分散液)を、密封し、25℃の恒温槽内に1時間30分静置し、実施例1と同様に粘度を測定した。
【0053】
結果を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
実施例6
撹拌時間を30分に変更する以外は、実施例1と同様に、水溶液を調製した。前記撹拌時間の経過後、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(マイティ150、(株)花王製)5mlを添加し、5分間撹拌を続けた。得られた水溶液の粘度は実施例1と同様に測定した。
【0056】
粘度測定後の溶液を反応容器に戻し、1000rpmで撹拌しつつ、0.01重量%濃度のセルラーゼ水溶液[セルラーゼA「アマノ」3、天野エンザイム(株)製)をイオン交換水に溶解させた水溶液]3mlを添加し、5分間撹拌した後、BL型粘度計(60rpm)を用いて5分経過ごとに粘度を測定した。すなわち、セルラーゼ水溶液の添加終了後から5分経過ごとに撹拌を停止し、混合物を粘度測定容器(内径75mm×高さ125mm、円筒ガラス製)に移し替えてBL型粘度計にセットし、測定開始から60秒後の粘度を測定した。なお、測定が終了した混合物は、撹拌容器に全て戻した。この時、溶液の状態を目視観察し、ママコ又は不溶物(粉粒状混合物の未溶解物)の有無を確認した。粘度の測定は、粘度変化が安定するまで行った。
【0057】
比較例5
水酸化マグネシウムに代えて、ベントナイト(豊洋ベントナイト#300、豊洋ベントナイト(株)製)を用いた以外は実施例6と同様にして水溶液(ヒドロキシエチルセルロースの濃度1.0重量%)を調製し、セルラーゼ水溶液の添加による粘度の経時変化を測定した。
【0058】
比較例6
ヒドロキシエチルセルロースに代えて、S−200Pを0.7重量%濃度となるように用い、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物を添加しない以外は、比較例5と同様に水溶液を調製した。この水溶液を用いて、セルラーゼ水溶液の添加による粘度の経時変化を実施例6と同様に測定した。
【0059】
結果を表2に示す。
【0060】
【表2】

【0061】
表2から明らかなように、比較例では、添加直後から粘度の低下が著しいのに対し、実施例では、高い粘度が得られている。特に、水酸化マグネシウムを含有する実施例6では、セルラーゼ添加後4〜5日経過しても、非常に高い粘度が得られた。
【0062】
参考例2
ヒドロキシエチルセルロース[ダイセル化学工業(株)製、HEC SP900、1重量%水溶液の粘度4240mPa・s]50重量%、水酸化マグネシウム(ブルーサイト鉱石粉砕120メッシュパス品)50重量%をミキサーにて撹拌混合し、粉粒状混合物を得た。
【0063】
撹拌羽根(70mmφカイ型十字2段;3cm間隔)を備えた撹拌容器(ポリエチレン容器、1L)に、水道水594.0gを入れ、1000rpmで撹絆しつつ、上記粉粒状混合物6.0gを徐々に添加し、20〜25分間撹拌させて粉粒状混合物を溶解させ、1.0重量%濃度の水溶液を作製した。
【0064】
水溶液の作製過程において、粉粒状混合物の添加終了後、5分経過ごとに、BL型粘度計(60rpm)を用いて粘度を測定した。すなわち、粉粒状混合物の添加終了後から5分経過ごとに撹拌を停止し、水溶液を粘度測定容器(内径75mm×高さ125mm、円筒ガラス製)に移し替えてBL型粘度計にセットし、測定開始から60秒後の粘度を算出した。なお、測定が終了した混合物は、撹拌容器に全て戻した。この時、溶液の状態を目視観察し、ママコ又は不溶物(粉粒状混合物の未溶解物)の有無を確認した。粘度の測定は、粘度変化が安定するまで行った。
【0065】
参考例3
粉粒状混合物12.0gを水道水588.0gに添加する以外は、参考例2と同様に操作を行い、2.0重量%濃度の場合についても、同様に粘度を測定した。
【0066】
比較例7
参考例2の粉粒状混合物6.0gに代えて、従来の土圧式シールド工法用添加剤[ダイセル化学工業(株)製、S−200P(カルボキシメチルセルロースとアニオン性ポリアクリルアミドとの混合物)、0.7重量%水溶液の粘度1620mPa・s]4.2gを用い、水道水の量を595.8gとする以外は、参考例2と同様の方法により、0.7重量%濃度の水溶液を作製し、粘度の測定を行った。
【0067】
比較例8
従来の土圧式シールド工法用添加剤の量を9.0g及び水道水の量を591.0gに変更する以外は、比較例7と同様にして、1.5重量%濃度の水溶液を作製し、粘度の測定を行った。
【0068】
粘度測定及びママコの有無について、結果を表3に示す。
【0069】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性高分子と、界面活性剤と、無機塩基とを組合せたシールド工法用添加剤。
【請求項2】
粉粒状、水溶液状又は水分散液状の形態を有する請求項1記載の添加剤。
【請求項3】
(i)水溶性高分子と界面活性剤と無機塩基との混合物で構成され、粉粒状、水溶液状又は水分散液状の形態を有する添加剤、
(ii)水溶性高分子、界面活性剤及び無機塩基の各成分で構成され、粉粒状、水溶液状又は水分散液状の形態を有するそれぞれの単位を組合せた添加剤、もしくは
(iii)水溶性高分子、界面活性剤及び無機塩基のうち、1つの成分で構成され、かつ粉粒状、水溶液状又は水分散液状の形態を有する単位と、他の2つの成分が混合され、かつ粉粒状、水溶液状又は水分散液状の形態を有する単位とを組合せた添加剤である請求項1記載の添加剤。
【請求項4】
水溶性高分子が、少なくともノニオン性セルロースエーテルを含有する請求項1記載の添加剤。
【請求項5】
界面活性剤が、脂肪族スルホン酸又はその塩、芳香族スルホン酸又はその塩、及びジアルキルスルホコハク酸又はその塩から選択された少なくとも一種のスルホン酸系界面活性剤を含有する請求項1記載の添加剤。
【請求項6】
無機塩基が、アルカリ土類金属水酸化物で構成されている請求項1記載の添加剤。
【請求項7】
固形分換算で、水溶性高分子100重量部に対して、界面活性剤の割合が0.1〜1000重量部であり、無機塩基の割合が10〜300重量部である請求項1記載の添加剤。
【請求項8】
地盤に適用して、地盤の掘削性及び排土の流動性を改善するための請求項1記載の添加剤。
【請求項9】
請求項1記載の添加剤を用いて地盤を掘削するシールド工法。
【請求項10】
水溶性高分子、界面活性剤及び無機塩基を含む水溶液又は水分散液を調製し、地盤に供給する請求項9記載のシールド工法。
【請求項11】
水溶性高分子を含む水溶液又は水分散液と、無機塩基を含む水溶液と、界面活性剤を含む水溶液とを、それぞれ地盤に供給して混合する請求項9記載のシールド工法。
【請求項12】
水溶性高分子及び無機塩基を含む水溶液又は水分散液と、界面活性剤を含む水溶液とを、それぞれ地盤に供給して混合する請求項9記載のシールド工法。
【請求項13】
添加剤と掘削土砂とを含むスラリーをポンプで排出する請求項9記載のシールド工法。

【公開番号】特開2008−144026(P2008−144026A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−332234(P2006−332234)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】