説明

シールド掘進機のエレクタ装置

【課題】長円形や楕円形、メガネ形などの扁平率が高い断面のトンネルや、矩形や長方形断面などコーナー部を有するトンネルであっても、セグメントをスムーズに組立位置に搬送して精度良く位置決めし組み立てる。
【解決手段】シールド掘進機の後部に、シールド軸心Oと平行な旋回軸心O’周りに旋回自在に設けられた旋回リング11と、旋回リング11に基端部がシールド軸心と平行な支軸16を中心に揺動自在に支持されたスイングアーム21と、スイングアーム21が旋回リング11に沿う格納位置と外周側に展開される使用位置との間で開閉揺動されるスイング駆動装置27と、スイングアーム21の遊端部にシールド軸心Oと平行な遊端軸を中心に揺動自在なローリング揺動機構31を介して設けられてセグメントSを保持可能な把持装置41とを具備した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド掘進機により掘削されたトンネルの内面にセグメント(覆工体)を組み立てるエレクタ装置に関し、特に長円形や楕円形、メガネ形などの扁平率が高い断面のトンネルや矩形断面、長方形断面のトンネルに適したエレクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば特許文献1には、シールド掘進機の後部にシールド軸心周りに旋回自在な旋回リングを設け、この旋回リングの対称位置に設けたガイド装置により、半径方向に出退される出退フレームを設け、この出退フレームの先端部にセグメントの把持装置を設けたものが開示されている。
【特許文献1】特開平5−287994号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来構成では、把持装置により保持したセグメントを、旋回リングによる旋回移動と、出退フレームによる半径方向の出退移動とにより、外周部でトンネル内面の組立位置に搬送する。しかし、長円形や楕円形、メガネ形などの扁平率が高い断面や、矩形断面や長方形断面などのようにコーナー部を有する断面になると、組立位置までの搬送ストロークが長くなるとともに、シールド掘進機後部の他の機器設備への干渉を防止するために、セグメントの姿勢を複雑に制御する必要があり、従来の上記エレクタ装置では対応できないという問題があった。
【0004】
本発明は上記問題点を解決して、長円形や楕円形、メガネ形などの扁平率が高い断面のトンネルや、矩形や断面長方形断面のトンネルであっても、セグメントをスムーズに組立位置に搬送でき、安全かつ効率よくセグメントを組み立てることができるシールド掘進機のエレクタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載のシールド掘進機のエレクタ装置は、シールド掘進機の後部に、シールド軸心と平行な軸心周りに旋回自在に設けられた旋回リングと、当該旋回リングに基端部がシールド軸心と平行な支軸を中心に揺動自在に支持されたスイングアームと、当該スイングアームを旋回リングに沿う格納位置と外周側に展開される使用位置との間で開閉揺動するスイング駆動装置と、スイングアームの遊端部にシールド軸心と平行な軸心周りに揺動自在なローリング揺動機構を介して設けられてセグメントを保持可能な把持装置とを具備したものである。
【0006】
請求項2記載のシールド掘進機のエレクタ装置は、請求項1記載の構成において、ローリング揺動機構は、スイングアームの遊端部にシールド軸心と平行な遊端軸心周りに揺動自在に支持されて把持装置を有するローリングフレームと、当該ローリングフレームを遊端軸心周りに揺動させるローリング駆動装置とからなり、前記ローリング駆動装置を、ローリングフレームの外周部に遊端軸心を中心として取り付けられた円弧状ギヤと、スイングアームの遊端部に設けられて前記円弧状ギヤに噛み合うピニオンおよび当該ピニオンを回転駆動する回転駆動装置とで構成したものである。
【0007】
請求項3記載のシールド掘進機のエレクタ装置は、請求項1または2記載の構成において、スイング駆動装置を、格納位置のスイングアームの遊端部に対応する旋回リングの所定部位と、スイングアームの中間部位との間に連結された直線駆動装置により構成したものである。
【0008】
請求項4記載のシールド掘進機のエレクタ装置は、請求項1乃至3のいずれかに記載の構成において、スイングアームを、基端部の支軸と、中間部で当該支軸に平行なガイド軸とにわたって設けられた少なくとも一対のアーム本体と、当該アーム本体間で支軸および前記ガイド軸にそれぞれスライド自在に案内され遊端側に把持装置を有するシフトアームとで構成し、前記シフトアームと、スイングアームに設けられて当該シフトアームを支軸およびガイド軸に沿ってスライドさせるシフト駆動装置からなり、把持装置をシールド軸心方向に移動可能なシフト移動機構を設けたものである。
【0009】
請求項5記載のシールド掘進機のエレクタ装置は、請求項1記載の構成において、ローリング揺動機構を、スイングアームの遊端部にシールド軸心に平行な遊端軸を中心として基端部が揺動自在に支持されたローリングアームと、前記遊端軸を中心としてローリングアームを揺動させるヨーイング駆動装置とで構成し、前記ローリングアームの遊端部に、シールド軸心に直交する面内でローリングアームの長さ方向に直交するヨーイング軸心周りに揺動可能なヨーイング回動機構を設けるとともに、当該ヨーイング回動機構を介して把持装置を設けたものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、旋回リングの旋回移動によるスイングアームの周方向の移動と、スイングアームの開閉揺動による把持装置の出退移動とにより、セグメントを十分に長いストロークで搬送が可能となるとともに、さらにローリング揺動機構によりセグメントの姿勢を広範囲に制御することができるので、長円形断面や楕円形断面、メガネ形などの変形断面のような扁平率が高い断面のトンネルや、矩形断面や長方形断面のようなコーナ部を有するトンネルであっても、エレクタ装置によりセグメントをトンネル内の全ての組立位置にスムーズに搬送して精度良く位置決めすることができ、またセグメントが他の機器設備に干渉することがなく、安全かつ効率よくセグメントを組み立てることができる。
【0011】
請求項2記載の構成によれば、スイングアームの遊端部に、ローリングフレームが遊端軸心周りに揺動自在に支持され、ローリング駆動装置によりピニオンを回転駆動して円弧状ギヤを介してローリングフレームを揺動させるので、把持装置に保持されたセグメントを広い角度範囲で、かつ高トルクで揺動させて姿勢変更することができ、セグメントを任意な姿勢に制御することができる。これにより、シールド掘進機後部の狭い空間内でセグメントを他の機器設備に干渉することなく搬送することができる。
【0012】
請求項3記載の構成によれば、格納位置と使用位置との間でスイングアームを開閉揺動させる時に、スイング駆動装置を構成する直線駆動装置の駆動力をスイングアームの中間部に作用させるので、セグメントの高荷重と、旋回リングの旋回角とスイングアームの傾きに対応して発生する負荷変動に容易に対応することができる。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、シフト移動機構をスイングアームと一体に設けたので、エレクタ装置の小型化、省スペース化を図ることができる。
請求項5記載の発明によれば、ローリングアームの遊端部にヨーイング機構を介して把持装置を設けたので、トンネル後方からセグメント台車に載せられて搬入されるセグメントが、その長い弧状端面がシールド軸心に沿う姿勢であっても、把持装置に保持してヨーイング回動機構により90°旋回させることにより、セグメントを弧状端面を周方向に沿う姿勢として、位置決め位置に搬送することができる。したがって、エレクタ装置の手前でセグメントを90°旋回させる補助装置が不要となって、セグメント供給設備の簡易化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[実施の形態1]
シールド掘進機のエレクタ装置の実施の形態1を図1〜図15を参照して説明する。
【0015】
このシールド掘進機は、図1,図2に示すように、上下左右の弧辺部と四隅の角アール部からなる扁平率が高い小判形断面のトンネルを掘削するもので、シールド本体1の前部でカッタヘッド(図示せず)によりトンネルを掘削しつつ切羽崩壊土圧を保持し、シールド本体1の後部に設けられたエレクタ装置3,3により、セグメントSをトンネル内面に沿って組み立て覆工するものである。そして、シールド本体1の後部に配置された複数の油圧式の推進ジャッキ(またはシリンダ)2により、組み立てられたセグメントSを反力受けとして掘進する。このシールド本体1の後部にエレクタ装置3,3が左右一対の設けられており、これら左右のエレクタ装置3,3は対称構造であるため、一方のみを説明して他方の説明は省略する。
【0016】
このエレクタ装置3は、シールド本体1の後部に、シールド本体1の軸心であるシールド軸心Oと平行な旋回軸心O’周りに旋回自在に配置された旋回リング11と、旋回リング11の所定位置から後方に張出されたアーム支持フレーム15に基端部がシールド軸心Oに平行な支軸16を中心に揺動自在に支持されたスイングアーム21と、このスイングアーム21に設けられてシールド軸心O方向に移動自在なシフト移動機構22と、スイングアーム21の遊端部にローリング揺動機構31を介して設けられてセグメントSを保持可能な把持装置41とを具備している。
【0017】
シールド本体1の後部で周方向の所定位置に取り付けられた複数の支持部材12に、旋回ローラ13がシールド軸心Oと平行な軸心周りに回転自在にそれぞれ支持されており、前記旋回リング11の外周部に設けられたガイドレール11aが、これら旋回ローラ13に転動自在に案内されて旋回軸心O’周りに旋回自在に支持される。この旋回リング11を旋回させる旋回駆動装置14は、旋回リング11の前部外周に設けられた旋回リングギヤ14aと、旋回リングギヤ14aに噛み合う旋回ピニオン14bと、支持部材12に設けられて前記旋回ピニオン14bを回転駆動する油圧式または電動式の旋回モータ14cとで構成されている。また両旋回リング11内には、掘削土砂を搬出する排土コンベヤ4がそれぞれ設けられている。
【0018】
前記アーム支持フレーム15に、シールド軸心Oに平行な支軸16を介してスイングアーム21の基端部が揺動自在に支持され、このスイングアーム21は旋回リング11に沿う略円弧状に形成されている。そして、このスイングアーム21は、支軸16から中間部まで伸び所定間隔をあけて配置された前後一対のアーム本体23A,23Bと、アーム本体23A,23B間に配置され遊端側にローリング揺動機構31を介して把持装置41を有するシフトアーム24とを有し、このシフトアーム24を介して把持装置41をシールド軸心O方向に沿って移動可能なシフト移動機構22がスイングアーム21と一体に設けられている。
【0019】
前後一対のアーム本体23A,23Bは、基端部が支軸16を介して連結されるとともに、遊端部がシールド軸心Oと平行なガイド軸26を介して連結されている。そして前記シフトアーム24は、基端部のスライド穴24aが支軸16にスライド自在に嵌合されるとともに、中間部のスライド穴24bがガイド軸26にスライド自在に嵌合され、前後アーム本体23A,23B間でシールド軸心O方向に移動自在に支持されている。シフトアーム24を移動させるシフト駆動装置25は、図2,図3に示すように、複数本の油圧式または電動式のジャッキ(またはシリンダ)からなり、ジャッキ本体25aが後部のアーム本体23Bに支持され、出力ロッド25bがシフトアーム24に連結され、前記シフトアーム24と前記シフト駆動装置25とによりシフト移動機構22が構成されている。
【0020】
スイングアーム21を、旋回リング11の外周部に沿う格納位置と、展開されて遊端部が旋回リング11の外周側に突出した使用位置との間で開閉揺動させるスイング駆動装置27は、直線駆動装置である油圧式または電動式のジャッキ(またはシリンダ)により構成されており、そのジャッキ本体27aが、旋回フレーム11で格納位置のスイングアーム21の遊端部近傍に、取付部材27cを介して揺動自在に支持され、出力ロッド27bがスイングアーム21の中間位置で前アーム本体23Aに取り付けられた連結部材27dに連結ピン27eを介して連結されている。
【0021】
したがって、スイング駆動装置27の駆動力をスイングアーム21の中間部に作用させるので、たとえば歯車装置により支軸16を介してスイングアーム21を揺動させる他の構造や、直線駆動装置によりレバーおよび支軸16を介してスイングアーム21を揺動させる他の構造に比較して、セグメントSの高荷重に効果的に対応することができ、また旋回リング11の旋回角とスイングアーム21のスイング角度(傾き)に対応する負荷の変動に容易に対応することができる。
【0022】
図4,図5に示すように、シフトアーム24の遊端部には、シールド軸心Oと平行な遊端軸32が回転自在に支持され、この遊端軸32の後方突出部にローリングフレーム33が取り付けられている。このローリングフレーム33は、背面視が円弧辺部33rと中心角部とを有する扇形状に形成され、中心角部に遊端軸32が固定されている。そしてローリング揺動機構31は、前記ローリングフレーム33と、このローリングフレーム33を遊端軸32を中心に揺動させるローリング駆動装置34とから構成される。
【0023】
前記ローリング駆動装置34は、ローリングフレーム33の円弧辺部33rの内面に沿って取り付けられかつ遊端軸32を中心とする円弧凹状に形成された円弧状ギヤ35と、シフトアーム24の遊端側に設けられた油圧式または電動式のモータからなる回転駆動装置36と、この回転駆動装置36と遊端軸32との間に回転自在に支持されたシールド軸心Oと平行な中間軸37とを具備し、回転駆動装置36の出力軸に取り付けられた駆動ギヤ36aと、中間軸37の前部に取り付けられた中間ギヤ37aとが互いに噛み合い、また中間軸37の後部に取り付けられたピニオン37bと円弧状ギヤ35とが互いに噛み合うように構成されている。したがって、回転駆動装置36により駆動ギヤ36a、中間ギヤ37a、中間軸37、ピニオン37bおよび円弧状ギヤ35を介してローリングフレーム33が遊端軸32を中心に揺動することができる。
【0024】
また前記ローリング駆動装置34では、駆動ギヤ36a、中間ギヤ37a、ピニオン37bおよび円弧状ギヤ35のギヤ機構のギヤ比により、回転駆動装置37の回転速度を減速してローリングフレーム33の駆動トルクを増大させる減速機構が構成されており、この減速機構により回転駆動装置37の駆動力を大きいトルクでローリングフレーム33を揺動させることができ、かつ前記ギヤ機構によりローリングフレーム33を高精度で揺動させることができる。また図3に示すように、中間軸37を介してローリングフレーム33を遊端軸32を中心に、格納姿勢における旋回リング11の法線に対して±θ°の広い範囲でそれぞれ揺動させることができ、セグメントSの姿勢制御の範囲を広く確保している。
【0025】
トンネル弧辺部のセグメントS(後述するSk3,Sa4,Sa5,Sk8)では、内面で中心(重心)位置近傍に、またトンネル角アール部のセグメントS(後述するSb1,Sb2,Sb6,Sb7)では湾曲半径の大きい内面の重心側の位置に、それぞれブラケットSbが突設されている。前記ローリングフレーム33に設けられた把持装置41は、前記ブラケットSbにシールド軸心O方向の吊下ピン42を介してセグメントSを吊下支持するセグメント支持部43と、吊り下げられたセグメントSの姿勢を微調整および固定可能な姿勢調整装置44とで構成されている。
【0026】
セグメント支持部43は、図4,図6に示すように、遊端軸32の連結部の後方対応位置でローリングフレーム33の前後のフレーム板33aの間に、複数の補強板43aによって下面が開口された装着室43bが形成され、装着室43bの前後のフレーム板33aおよび補強部材に、吊下ピン42がシールド軸心O方向に挿脱自在なピン穴43c,43cがそれぞれ形成されている。したがって、ブラケットSbを装着室43bに挿入して、ピン穴43c,43cとブラケットSbのピン穴とを一致させ、吊下ピン42を嵌入することにより、セグメント支持部43にセグメントSを吊り下げて保持することができる。
【0027】
姿勢調整装置44は、ローリングフレーム33の前後のフレーム板33aの間でセグメント支持部43の左右両側に、シールド軸心Oと平行な揺動ピン45がそれぞれ設けられ、左右の加圧レバー46が揺動ピン45にそれぞれ揺動自在に支持されている。そして加圧レバー46の下側の作用部に、保持されたセグメントSの内面に略直角方向から当接される加圧部材46aが取り付けられている。またローリングフレーム33の前後のフレーム板33a間で揺動ピン46の上方には、油圧式または電動式のジャッキ(またはシリンダ)からなる調整駆動装置47がそれぞれ設けられており、調整駆動装置47のジャッキ本体がそれぞれ揺動自在に支持されるとともに、その出力ロッドが加圧レバー46の上部にピンを介して連結されている。
【0028】
したがって、左右の調整駆動装置47をそれぞれ進展して加圧レバー46を下方に揺動させ、加圧部材46aをそれぞれセグメントSの内面に当接させてセグメントSを固定することができる。また左右の調整駆動装置47の伸縮量を調整することにより、セグメントSをブラケットSbのピン穴を中心に揺動させてセグメントSの姿勢を微調整することができる。
【0029】
次にセグメントSの組立方法について図7〜図15を参照して説明する。
弧辺部と角アール部からなる略小判型断面のトンネルの内面を覆工するセグメントSは、図15に示すように、左右下角アール部のセグメントSb1,Sb2と、上下弧辺部のセグメントSk8,Sk3と、左右弧辺部のセグメントSa5,Sa4と、左右上角アール部のセグメントSb7,Sb6とにより構成される。
【0030】
1)図7(a)および図8に示すように、セグメント搬入装置51により、左下角アール部のセグメントSb1が、内面を上向き姿勢で、かつ弧状端面(後述するSs)が周方向に沿う姿勢(イ)で搬入される。そして掘進方向に向かって左側のエレクタ装置3にセグメントSb1を保持させる。この時のスイングアーム21の揺動角はγ1、ローリング揺動機構31の揺動角は+θ1である。そして旋回リング11の旋回移動と、スイングアーム21の開閉揺動と、ローリング揺動機構31の揺動とにより、セグメントSb1の姿勢を(ロ)〜(ホ)に示すように、順次変更して組立位置に搬送し、図7(b)に示すように、左下角アール部の組立位置(ヘ)に位置決めする。この時のスイングアーム21の揺動角は0°、ローリング揺動機構31の揺動角は−θ2である。そして、セグメントSb1を既設のセグメントSb1に組み付ける。
【0031】
2)図9に示すように、セグメント搬入装置51により搬入された右下角アール部のセグメントSb2を、掘進方向に向かって右側のエレクタ装置3に姿勢(イ)で保持させ、旋回リング11の旋回移動と、スイングアーム21の開閉揺動と、ローリング揺動機構31の揺動とにより、セグメントSb2の姿勢を(ロ)〜(ハ)に示すように順次姿勢制御して搬送し、姿勢(ニ)に示すように右下角アール部の組立位置に位置決めして既設のセグメントSb2に組み付ける。
【0032】
3)図10に示すように、セグメント搬入装置51により搬入された下弧辺部のセグメントSk3を、左のエレクタ装置3に姿勢(イ)で受け取り、旋回リング11の旋回移動と、スイングアーム21の開閉揺動と、ローリング揺動機構31の揺動とにより(ロ)に示すように姿勢制御して搬送し、姿勢(ハ)に示すように下弧辺部の組立位置に位置決めし組み立てる。
【0033】
4)図11に示すように、セグメント搬入装置51により搬入された右弧辺部のセグメントSa4を、右のエレクタ装置3に姿勢(イ)で受け取り、旋回リング11の旋回移動と、スイングアーム21の開閉揺動と、ローリング揺動機構31の揺動とにより(ロ)〜(ト)に示すように姿勢制御して搬送し、姿勢(チ)に示すように右弧辺部の組立位置に位置決めし組み立てる。
【0034】
5)図12に示すように、セグメント搬入装置51により搬入された左弧辺部のセグメントSa5を、左のエレクタ装置3に姿勢(イ)で受け取り、旋回リング11の旋回移動と、スイングアーム21の開閉揺動と、ローリング揺動機構31の揺動とにより(ロ)〜(ヘ)に示すように姿勢制御して搬送し、姿勢(ト)に示すように左弧辺部の組立位置に位置決めし組み立てる。
【0035】
6)図13に示すように、セグメント搬入装置51により搬入された右上角アール部のセグメントSb6を、右のエレクタ装置3に姿勢(イ)で受け取り、旋回リング11の旋回移動と、スイングアーム21の開閉揺動と、ローリング揺動機構31の揺動とにより(ロ)〜(ヘ)に示すように姿勢制御して搬送し、姿勢(ト)に示すように右上角アール部の組立位置に位置決めし組み立てる。
【0036】
7)図14に示すように、セグメント搬入装置51により搬入された左上角アール部のセグメトSb7を、左のエレクタ装置3に姿勢(イ)で受け取り、旋回リング11の旋回移動と、スイングアーム21の開閉揺動と、ローリング揺動機構31の揺動とにより(ロ)〜(ヘ)に示すように姿勢制御して搬送し、姿勢(ト)に示すように左上角アール部の組立位置に位置決めし組み立てる。
【0037】
8)図15に示すように、セグメント搬入装置51により搬入された上弧辺部のセグメントSk8を、右のエレクタ装置3に姿勢(イ)で受け取り、旋回リング11の旋回移動と、スイングアーム21の開閉揺動と、ローリング揺動機構31の揺動とにより(ロ)〜(ト)に姿勢制御して搬送し、姿勢(チ)に示すように上弧辺部の組立位置に位置決めし組み立てる。
【0038】
このように、旋回リング11の旋回移動と、スイングアーム21の開閉揺動と、ローリング揺動機構31の揺動とにより、シールド本体1の後部内でスキンプレート1aや排土コンベヤ4、隣接のエレクタ装置3に干渉することなく、セグメントSをスムーズに搬送し位置決めして組み立てることができる。
【0039】
上記実施の形態1によれば、長円形や楕円形、小判形、メガネ形などの扁平率が高い断面のトンネルや、矩形や長方形断面などのようにコーナー部の組立位置までの搬送距離が長いトンネルであっても、旋回リング11の旋回移動とスイングアーム21の開閉揺動とにより、把持装置41に保持されたセグメントSの搬送ストロークを十分に確保することができて、トンネル内面の組立位置に精度良く位置決めすることができる。またスイングアーム21の遊端部にローリング揺動機構31を介して把持装置41を設けたので、把持装置41に保持されたセグメントSを広い角度範囲で任意に姿勢制御することができ、シールド掘進機の後部の狭い空間で他の機器設備に干渉することなく、セグメントSをトンネル内面の全ての組立位置にスムーズに搬送することができ、安全かつ効率よくセグメントSを組み立てることができる。
【0040】
また、スイングアーム21の遊端部に設けられたローリングフレーム33を、駆動ギヤ36a、中間ギヤ37a、ピニオン37bおよび円弧状ギヤ35からなる減速機構を有するローリング揺動機構31により揺動するように構成したので、把持装置41に保持されたセグメントSを、広い角度範囲で、かつ高トルクで揺動させてセグメントSを高精度で姿勢制御することができる。
【0041】
さらに、スイング駆動装置27の駆動力をスイングアーム21の中間部に作用させるように構成したので、セグメントSの高荷重を効果的に支持することができ、また旋回リング11の旋回角とスイングアーム21の傾きに対応して発生する負荷変動に容易に対応することができ、把持装置41に保持されたセグメントSを高精度で位置決めすることができる。
【0042】
さらにまた、スイングアーム21を、前後一対のアーム本体23A,23Bと、これらアーム本体23A,23B間で支軸16とガイド軸26を介してスライド自在に案内されるシフトアーム24とで構成し、このシフトアーム24と、このシフトアーム24をスライドさせるシフト駆動装置25からなるシフト移動機構22を、スイングアーム21と一体に設けたので、エレクタ装置3の小型化、省スペース化を図ることができる。
【0043】
なお、図16に示すように、上記構成のエレクタ装置3を使用して、矩形断面のトンネルのセグメントのうち、コーナー部セグメントSCを組み立てる場合にも、同様にセグメントSCの姿勢を変更しつつ組立位置にスムーズに搬送して位置決めし、容易に組み立てることができる。
[実施の形態2]
次に、本発明に係るシールド掘進機のエレクタ装置の実施の形態2を図17および図18を参照して説明する。なお、実施の形態1と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0044】
シールド本体1の後部に、対称構造の左右一対のエレクタ装置61がそれぞれ設けられており、一方のみを図示して説明する。
このエレクタ装置61は、シールド本体1の後部に、シールド軸心Oと平行な旋回軸心O’周りに旋回自在に設けられた旋回リング11と、この旋回リング11から後方に突出するアーム支持筒67と、このアーム支持筒67にシールド軸心O方向にスライド自在に外嵌されたスライド筒62と、基端部がスライド筒62にシールド軸心Oに平行な支軸72を中心に揺動自在に支持されたスイングアーム63と、スイングアーム63の遊端部にローリング揺動機構64を介して設けられたローリングアーム65と、このローリングアーム65の遊端部にヨーイング回動機構66を介して設けられ把持装置41とを具備している。
【0045】
前記旋回リング11には、把持装置41をシールド軸心O方向にスライドさせるシフト移動機構71が設けられており、このシフト移動機構71は、スライド筒62と、このスライド筒62をスライドさせる油圧式または電動式のジャッキ(またはシリンダ)からなり、そのジャッキ本体71aがスライド筒62の外周部所定位置に取り付けられ、出力ロッド71bが旋回リング11に連結されている。
【0046】
前記スイングアーム63は、スライド筒62の外周部に沿う略1/4円弧形に形成され、スライド筒62に取り付けられたブラケット73に基端部がシールド軸心Oと平行な支軸72を介して揺動自在に支持されている。このスイングアーム63を開閉揺動させるスイング駆動装置74は、直線駆動装置である油圧式または電動式のジャッキ(またはシリンダ)と、スイングアーム63の基端側に突設されたスイングレバー63aとからなり、ジャッキ本体74aがスライド筒62のブラケット73から反スイングアーム63側に取付部材74cを介して支持され、その出力ロッド74bがスイングレバー63aの先端部にピンを介して連結されている。
【0047】
スイングアーム63の遊端部には、短尺のローリングアーム65がシールド軸心Oと平行な遊端支軸75を介して揺動自在に支持され、ローリング駆動装置76によりローリングアーム65が揺動される。このローリング駆動装置76は、遊端支軸75に取り付けられた受動ギヤ76aと、スイングアーム63の遊端部に設けられた油圧式または電動式のローリングモータ76cと、ローリングモータ76cにより回転駆動されて受動ギヤ76aに噛み合う駆動ピニオン76bにより構成されている。
【0048】
ヨーイング回動機構66は、ローリングアーム63の遊端側にヨーイングフレーム77が軸受を介してシールド軸心Oに直交する平面内でローリングアーム63に直交するヨーイング軸心Oy周りに旋回自在に支持され、ヨーイングフレーム77を旋回駆動するヨーイング駆動装置78が設けられている。このヨーイング駆動装置78は、ヨーイングフレーム77の外周部に設けられた受動ギヤ78aと、ローリングアーム63に設けられた油圧式または電動式のヨーイングモータ78cと、このヨーイングモータ78cに回転駆動されて受動ギヤ78aに噛み合う駆動ピニオン78bとで構成されている。
【0049】
ヨーイングフレーム77には、詳細に図示しないが、実施の形態1と同様に、吊下ピン42を介してセグメントSを吊下支持するセグメント支持部43と、姿勢調整装置44とを有する把持装置41が設けられている。
【0050】
ここで、実施の形態1および2におけるセグメントSのトンネル内の搬入姿勢を説明する。
これらセグメントSは、図18に仮想線で示すように、セグメント台車SC上に載置されてトンネル後方から搬入され、セグメント搬入装置51を介してエレクタ装置3に受け渡される。セグメントSはそれぞれ組立姿勢で周方向に長く、シールド軸心O方向に短い矩形状のため、これらセグメントSは、内面が上向きで、かつ周方向に長い辺の弧状端面Ssがシールド軸心Oに沿う姿勢でセグメント台車SC上に載置され搬入される。先の実施の形態1では、セグメント搬入装置51に設けられた旋回機構(図示せず)により、セグメントSを垂直軸心周りに90°旋回して弧状端面Ssが周方向に沿う姿勢とし、エレクタ装置3の把持装置41に受け渡している。
【0051】
しかし、実施の形態2では、セグメント台車SC上のセグメントSを、弧状端面Ssがシールド軸心Oに沿う姿勢のままでエレクタ装置61の把持装置41に受け渡し、把持装置41に保持されたセグメントSをヨーイング回動機構66により90°旋回させて、セグメントSが弧状端面Ssを周方向に沿う組立姿勢として組立位置に搬送することができる。
【0052】
上記構成において、セグメント台車SC上にセグメントSが、内面が上向きで、かつ円弧状端面Ssがシールド軸心Oに沿う姿勢でトンネルの後方から搬入され、そのままの姿勢でセグメント搬入装置51を介してエレクタ装置61に受け渡される。エレクタ装置61では、把持装置41によりセグメントSを保持し、さらにヨーイング回動機構66によりセグメントSをヨーイング軸心Oy周りに90°旋回させて組立姿勢とした後、旋回駆動装置14により旋回リング11を旋回駆動するとともに、スイング駆動装置74によりスイングアーム63を開閉揺動して、セグメントSを組立位置に搬送する。そしてローリング駆動装置76によりセグメントの姿勢を調整するとともに、シフト移動機構71によりスライド筒62を移動させ、さらに姿勢調整装置44によりセグメントSの傾斜角を微調整して組立位置に位置決めする。
【0053】
上記構成によれば、扁平率が高い小判形などの断面のトンネルであっても、旋回リング11の旋回とスイングアーム63の開閉揺動とにより、把持装置41に保持したセグメントSを、トンネル内面の組立位置に精度良く位置決めすることができる。また、ローリングアーム65の遊端部にヨーイング回動機構66を介して把持装置41を設けたので、セグメント台車とSCにより搬入したセグメントSをそのままの姿勢でセグメント搬入装置51からエレクタ装置61の把持装置41に供給して、組立姿勢に90°旋回することができ、セグメント搬入装置51にセグメントSを90°旋回させる旋回機構が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係るシールド掘進機のエレクタ装置の実施の形態1を示す背面図で、(a)は全体を示し、(b)は左側半分を示す。
【図2】エレクタ装置の縦断面図である。
【図3】エレクタ装置の拡大背面図である。
【図4】エレクタ装置のローリング揺動機構およびセグメント把持装置を示す縦断面図である。
【図5】図4に示すI−I断面図である。
【図6】図4に示すII−II断面図である。
【図7】左下角アール部のセグメントの組立動作を示すエレクタ装置の背面図で、(a)はセグメント搬入装置からの受渡し位置の姿勢、(b)は組立位置の姿勢を示す。
【図8】エレクタ装置による左下角アール部のセグメントの受渡し位置から組立位置までの搬送姿勢を示す概略背面図である。
【図9】エレクタ装置による右下角アール部のセグメントの受渡し位置から組立位置までの搬送姿勢を示す概略背面図である。
【図10】エレクタ装置による下弧辺部のセグメントの受渡し位置から組立位置までの搬送姿勢を示す背面図である。
【図11】エレクタ装置による右弧辺部のセグメントの受渡し位置から組立位置までの搬送姿勢を示す概略背面図である。
【図12】エレクタ装置による左弧辺部のセグメントの受渡し位置から組立位置までの搬送姿勢を示す概略背面図である。
【図13】エレクタ装置による右上角アール部のセグメントの受渡し位置から組立位置までの搬送姿勢を示す背面図である。
【図14】エレクタ装置による左上角アール部のセグメントの受渡し位置から組立位置までの搬送姿勢を示す概略背面図である。
【図15】エレクタ装置による上弧辺部のセグメントの受渡し位置から組立位置までの搬送姿勢を示す背面図である。
【図16】エレクタ装置の矩形断面トンネルのセグメントの組立動作を示す背面図で、(a)はセグメント搬入装置による受渡し位置の姿勢、(b)は組立位置の姿勢を示す。
【図17】本発明に係るシールド掘進機のエレクタ装置の実施の形態2を示し、(a)はシールド本体の拡大半背面図、(b)は(a)に示すIII部拡大図である。
【図18】エレクタ装置の背面図である。
【符号の説明】
【0055】
O シールド軸心
O’ 旋回軸心
Oy ヨーイング軸心
S セグメント
Sb ブラケット
1 シールド本体
3 エレクタ装置
11 旋回リング
13 旋回ローラ
14 旋回駆動装置
15 アーム支持フレーム
16 支軸
21 スイングアーム
22 シフト移動機構
23A,23B アーム本体
24 シフトアーム
24a,24b スライド穴
25 シフト駆動装置
26 ガイド軸
27 スイング駆動装置(直線駆動装置)
31 ローリング揺動機構
32 遊端軸
33 ローリングフレーム
33r 弧辺部
34 ローリング駆動装置
35 円弧状ギヤ
36 回転駆動装置
36a 駆動ギヤ
37 中間軸
37a 中間ギヤ
37b ピニオン
38 減速機
41 把持装置
42 吊下ピン
43 セグメント支持部
44 姿勢調整装置
45 揺動ピン
46 加圧レバー
46a 加圧部材
47 調整駆動装置
61 エレクタ装置
62 スライド筒
63 スイングアーム
63a スイングレバー
64 ローリング揺動機構
65 ローリングアーム
66 ヨーイング回動機構
67 アーム支持筒
71 シフト移動機構
72 支軸
74 スイング駆動装置(直線駆動装置)
75 遊端支軸
76 ローリング駆動装置
78 ヨーイング駆動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド掘進機の後部に、シールド軸心と平行な軸心周りに旋回自在に設けられた旋回リングと、当該旋回リングに基端部がシールド軸心と平行な支軸を中心に揺動自在に支持されたスイングアームと、当該スイングアームを旋回リングに沿う格納位置と外周側に展開される使用位置との間で開閉揺動するスイング駆動装置と、スイングアームの遊端部にシールド軸心と平行な軸心周りに揺動自在なローリング揺動機構を介して設けられてセグメントを保持可能な把持装置とを具備した
ことを特徴とするシールド掘進機のエレクタ装置。
【請求項2】
ローリング揺動機構は、スイングアームの遊端部にシールド軸心と平行な遊端軸心周りに揺動自在に支持されて把持装置を有するローリングフレームと、当該ローリングフレームを遊端軸心周りに揺動させるローリング駆動装置とからなり、
前記ローリング駆動装置を、ローリングフレームの外周部に遊端軸心を中心として取り付けられた円弧状ギヤと、スイングアームの遊端部に設けられて前記円弧状ギヤに噛み合うピニオンおよび当該ピニオンを回転駆動する回転駆動装置とで構成した
ことを特徴とする請求項1のシールド掘進機のエレクタ装置。
【請求項3】
スイング駆動装置を、格納位置のスイングアームの遊端部に対応する旋回リングの所定部位と、スイングアームの中間部位との間に連結された直線駆動装置により構成した
ことを特徴とする請求項1または2記載のシールド掘進機のエレクタ装置。
【請求項4】
スイングアームを、基端部の支軸と、中間部で当該支軸に平行なガイド軸とにわたって設けられた少なくとも一対のアーム本体と、当該アーム本体間で支軸および前記ガイド軸にそれぞれスライド自在に案内され遊端側に把持装置を有するシフトアームとで構成し、
前記シフトアームと、スイングアームに設けられて当該シフトアームを支軸およびガイド軸に沿ってスライドさせるシフト駆動装置からなり、把持装置をシールド軸心方向に移動可能なシフト移動機構を設けた
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のシールド掘進機のエレクタ装置。
【請求項5】
ローリング揺動機構を、スイングアームの遊端部にシールド軸心に平行な遊端軸を中心として基端部が揺動自在に支持されたローリングアームと、前記遊端軸を中心としてローリングアームを揺動させるローリング駆動装置とで構成し、
前記ローリングアームの遊端部に、シールド軸心に直交する面内でローリングアームの長さ方向に直交するヨーイング軸心周りに揺動可能なヨーイング回動機構を設けるとともに、当該ヨーイング回動機構を介して把持装置を設けた
ことを特徴とする請求項1記載のシールド掘進機のエレクタ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate