説明

シールド掘進機

【課題】シンプルな構成でトンネル孔の断面変化の大きい部分を精度良く掘削する。
【解決手段】シールド本体2の前部に回転自在に設けられたカッタフレーム8と、カッタフレーム8にその半径方向に沿って且つカッタフレーム8の周方向に互いに所定角度となるように配置された二つのビームカッタ用油圧ジャッキ18、19と、ビーム状に形成され、その長手方向端部よりも長手方向内側の部分がビームカッタ用油圧ジャッキ18、19の伸縮端部に回動自在に支持されたビームカッタ4と、ビームカッタ用油圧ジャッキ18、19を伸縮させることにより、ビームカッタ4の長手方向端部をカッタフレーム8の半径方向外側に突出させる制御手段41とを備えたシールド掘進機において、ビームカッタ4の長手方向端部に、コピーカッタ43を出没自在に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、矩形断面、楕円形断面或いは馬蹄形断面等の異形断面のトンネル孔を掘削するためのシールド掘進機に係り、特に、二つの油圧ジャッキにより駆動されるビームカッタを備えたシールド掘進機に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド掘進機は、シールド本体の前部に設けられた回転カッタで地山を掘削して、その後方でセグメントを順次組立てることにより、トンネルを構築していくものである。回転カッタの前面には複数のビットが配置されており、回転カッタを回転させてビットにより地山を掘削するようになっている。
【0003】
矩形断面、楕円形断面或いは馬蹄形断面等の異形断面のトンネル孔を掘削するシールド掘進機としては、例えば、シールド本体の前部に設けられ、掘進方向と平行な軸廻りに回転駆動される回転カッタと、その回転カッタのカッタスポークに設けられ、回転カッタの外周縁よりも半径方向外側に出没自在なオーバカッタとを備えたものが知られている。このようなシールド掘進機では、オーバカッタを回転カッタの外周縁よりも半径方向外側に突出させ、そのオーバカッタにより回転カッタの外周縁よりも半径方向外側の領域を掘削するようになっている。
【0004】
なお、引用文献1には、円形のメインカッタの外周に開閉自在にスイングカッタを設けたシールド掘進機が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−303581号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、矩形断面、楕円形断面或いは馬蹄形断面等の異形断面のトンネル孔を掘削するシールド掘進機を新規開発中である。
【0007】
このシールド掘進機は、シールド本体の前部に回転自在に設けられたカッタフレームに、その半径方向に沿って且つカッタフレームの周方向に互いに所定角度となるように配置された二つの油圧ジャッキと、ビーム状に形成され、その長手方向端部よりも長手方向内側の部分が二つの油圧ジャッキの伸縮端部に回動自在に支持されたビームカッタとを備えている。
【0008】
このシールド掘進機においては、二つの油圧ジャッキを伸縮させることにより、二つの油圧ジャッキの内一方の伸縮端部をカッタフレームの半径方向外側に移動させ、他方の伸縮端部をカッタフレームの半径方向内側に移動させ、ビームカッタの長手方向端部をカッタフレームの半径方向外側に突出させるようになっている。このように二つの油圧ジャッキを適宜伸縮させることで、ビームカッタにより矩形断面、楕円形断面或いは馬蹄形断面等の異形断面のトンネル孔が形成される。
【0009】
このようなシールド掘進機にあっては、特に矩形断面のトンネル孔の角部分のように断面変化の大きい部分(図4中の符号d参照)を掘削する場合、油圧ジャッキを素速く伸縮させなければならず、そのように油圧ジャッキを素速く伸縮させるために油圧回路等の構成が複雑となりコストアップを招くという問題がある。例えば、油圧ジャッキを素速く伸縮させるために、油圧ジャッキに供給する油量を制御するための制御弁としてサーボ弁のような高速応答弁を用いることが考えられるが、高速応答弁は高価であり、このような高速応答弁の使用がコストアップを招く。
【0010】
そこで、本発明の目的は、シンプルな構成でトンネル孔の断面変化の大きい部分を精度良く掘削することができるシールド掘進機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明は、シールド本体の前部に回転自在に設けられたカッタフレームと、該カッタフレームにその半径方向に沿って且つ上記カッタフレームの周方向に互いに所定角度となるように配置された二つのビームカッタ用油圧ジャッキと、ビーム状に形成され、その長手方向端部よりも長手方向内側の部分が上記ビームカッタ用油圧ジャッキの伸縮端部に回動自在に支持されたビームカッタと、上記ビームカッタ用油圧ジャッキを伸縮させることにより、上記ビームカッタ用油圧ジャッキの一方の伸縮端部を上記カッタフレームの半径方向外側に移動させ、上記ビームカッタ用油圧ジャッキの他方の伸縮端部を上記カッタフレームの半径方向内側に移動させ、上記ビームカッタの長手方向端部を上記カッタフレームの半径方向外側に突出させる制御手段とを備えたシールド掘進機において、上記ビームカッタの長手方向端部に、コピーカッタを出没自在に設けたものである。
【0012】
ここで、上記コピーカッタを駆動するコピーカッタ用油圧ジャッキと、該コピーカッタ用油圧ジャッキを上記ビームカッタ用油圧ジャッキの一方に連動させる連動手段とを備えても良い。
【0013】
また、上記連動手段は、上記制御手段が上記ビームカッタの長手方向端部を上記カッタフレームの半径方向外側に移動させるべく上記ビームカッタ用油圧ジャッキを制御するときには、上記コピーカッタを上記ビームカッタの長手方向端部から突出させ、上記制御手段が上記ビームカッタの長手方向端部を上記カッタフレームの半径方向内側に移動させるべく上記ビームカッタ用油圧ジャッキを制御するときには、上記コピーカッタを上記ビームカッタの長手方向端部内に没入させるものであっても良い。
【0014】
また、上記連動手段は、上記コピーカッタ用油圧ジャッキを、上記二つのビームカッタ用油圧ジャッキの内上記カッタフレームが一回転するときに伸縮量の変化が大きい方に連動させるものであっても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、シンプルな構成でトンネル孔の断面変化の大きい部分を精度良く掘削することができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係るシールド掘進機の正面図である。図2は、図1のII−II線矢視図である。
【0018】
図1及び図2に示すように、シールド掘進機1は、筒状のシールド本体2と、シールド本体2の前部に回転自在に設けられ、円形断面のトンネル孔を掘削する回転カッタ3とを備えている。シールド本体2は、断面略矩形状であって、上下方向(図1中の上下方向)の高さに比べて横方向(図1中の左右方向)の幅が大きく(広く)なるように形成されている。回転カッタ3は、掘進方向と平行な軸廻りに回転駆動される。
【0019】
シールド本体2の後部には、回転カッタ3及び後述するビームカッタ4により掘削したトンネル孔内にセグメントを組み立ててトンネルを構築するためのエレクタ(図示せず)と、シールド本体2の内周に所定間隔を隔てて複数設けられ、セグメントに反力を取ってシールド本体2を推進させるためのシールドジャッキ(図示せず)とが設けられる。
【0020】
回転カッタ3と、シールド本体2の前端部近傍に設けられたバルクヘッド(隔壁)5との間には、回転カッタ3及びビームカッタ4により掘削した土砂(掘削土砂)を取り込むチャンバ6が形成される。バルクヘッド5の下部には、これを貫通してチャンバ6に開口するスクリュコンベア7が設けられる。
【0021】
回転カッタ3は、バルクヘッド5に回転自在に設けられている。回転カッタ3は、その回転中心から半径方向外側に延出し、掘進方向と平行な軸廻りに回転されるカッタフレーム8を有している。カッタフレーム8の前面には、その半径方向中央にセンタビット9が配置され、そのセンタビット9よりも外周側に複数のカッタビット10が配置されている。これらセンタビット9及びカッタビット10は、回転カッタ3の外周縁よりも半径方向内側の地山に当接される。カッタフレーム8の後面には、後方に延出してチャンバ6内の掘削土砂を撹拌するための撹拌翼11が設けられている。
【0022】
カッタフレーム8は、中心部材12と、中心部材12に放射状に取り付けられた複数のカッタスポーク13とを有している。つまり、各カッタスポーク13は、回転カッタ3の回転中心から半径方向外側に延出している。
【0023】
バルクヘッド5には、ギヤ14を有する回転軸15が回転自在に支持されている。回転軸15は、その前端部にてカッタフレーム8の中心部材12と連結されている。シールド本体2内には、回転軸15を回転させるための駆動モータ16(例えば、油圧モータ)が設けられている。駆動モータ16には、ピニオン17が取り付けられており、そのピニオン17が回転軸15に装着されたギヤ14と歯合するようになっている。
【0024】
回転カッタ3には、カッタフレーム8にその半径方向に沿って、且つ、カッタフレーム8の周方向に互いに所定角度となるように配置された二つのビームカッタ用油圧ジャッキ(第一油圧ジャッキ18及び第二油圧ジャッキ19)が設けられる。第一油圧ジャッキ18のシリンダ18aと第二油圧ジャッキ19のシリンダ19aとは、それらの長手方向中間部にて中間部材20により連結されている。
【0025】
ここで、本実施形態では、二つのビームカッタ用油圧ジャッキ18、19の内、カッタフレーム8が一回転するときに伸縮量(ストローク)の変化が大きいビームカッタ用油圧ジャッキ18を第一油圧ジャッキとし、カッタフレーム8が一回転するときに伸縮量の変化が小さいビームカッタ用油圧ジャッキ19を第二油圧ジャッキとしている。詳しくは、本実施形態では、二つのビームカッタ用油圧ジャッキ18、19の内、カッタフレーム8の回転方向前側に位置するビームカッタ用油圧ジャッキ18を第一油圧ジャッキとし、カッタフレーム8の回転方向後側に位置するビームカッタ用油圧ジャッキ19を第二油圧ジャッキとする。
【0026】
第一油圧ジャッキ18の伸縮端部(先端部)には、第一油圧ジャッキ18の長手方向、つまり回転カッタ3の半径方向に沿って移動自在な第一支持部21が設けられている。第一支持部21は、第一油圧ジャッキ18の伸縮端部(先端部)に装着され、後述するビームカッタ本体22に装着したピン23を支持するための軸受部24を有している。
【0027】
第二油圧ジャッキ19の伸縮端部(先端部)には、第二油圧ジャッキ19の長手方向、つまり回転カッタ3の半径方向に沿って移動自在な第二支持部25が設けられている。第二支持部25は、第二油圧ジャッキ19の伸縮端部(先端部)に装着され、後述するビームカッタ本体22に装着したピン26を支持するための軸受部27を有している。
【0028】
シールド掘進機1は、回転カッタ3の外周縁よりも半径方向外側の地山を掘削するためのビームカッタ4を備えている。ビームカッタ4は、ビーム状に形成されたビームカッタ本体22を有している。ビームカッタ本体22は、長手方向一端部よりも長手方向内側の部分及び長手方向他端部にてそれぞれ、第二支持部25、第一支持部21に回動自在に支持されており、長手方向一端部が第二支持部25よりも長手方向外側に延出している。
【0029】
なお、本実施形態には限定はされず、図3中に破線で示すように、ビームカッタ本体22が、長手方向両端部よりも長手方向内側の部分にてそれぞれ、各支持部(第一支持部21、第二支持部25)に回動自在に支持され、長手方向両端部が各支持部(第一支持部21、第二支持部25)よりも長手方向外側に延出するものであっても良い。
【0030】
本実施形態では、ビームカッタ本体22の長手方向一端部よりも長手方向内側の部分及び長手方向他端部にはそれぞれピン26、23が設けられており、このピン26、23にてビームカッタ本体22は第二支持部25、第一支持部21に回動自在に支持されている。
【0031】
図3に示すように、第一油圧ジャッキ18及び第二油圧ジャッキ19はそれぞれ、カッタフレーム8の中心部材12に取り付けられたシリンダチューブ18a、19aと、シリンダチューブ18a、19a内にその軸方向に摺動自在に設けられ、ヘッド側油圧室(伸長側油圧室)18b、19bとキャップ側油圧室(縮退側油圧室)18c、19cとを区画するピストン18d、19dと、一端がピストン18d、19dに連結され、他端が各支持部(第一支持部21、第二支持部25)に連結されたロッド18e、19eとを有している。
【0032】
第一油圧ジャッキ18のヘッド側油圧室18bに作動油を供給する油圧供給ライン28、及び、第一油圧ジャッキ18のキャップ側油圧室18cに作動油を供給する油圧供給ライン29は、第一切換弁30を介して、油圧ポンプ31及びオイルタンク32に接続されている。ヘッド側油圧室18bに作動油を供給する油圧供給ライン28における第一切換弁30とヘッド側油圧室18bとの間の箇所には、ヘッド側油圧室18bに供給する油量を制御するための流量制御弁(例えば、比例弁及びサーボ弁等)(図示せず)、チェック弁33、リリーフ弁(図示せず)が介設されている。また、キャップ側油圧室18cに作動油を供給する油圧供給ライン29における第一切換弁30とキャップ側油圧室18cとの間の箇所には、キャップ側油圧室18cに供給する油量を制御するための流量制御弁(例えば、比例弁及びサーボ弁等)(図示せず)、チェック弁34、リリーフ弁(図示せず)が介設されている。
【0033】
第二油圧ジャッキ19のヘッド側油圧室19bに作動油を供給する油圧供給ライン35、及び、第二油圧ジャッキ19のキャップ側油圧室19cに作動油を供給する油圧供給ライン36は、第二切換弁37を介して、油圧ポンプ31及びオイルタンク32に接続されている。ヘッド側油圧室19bに作動油を供給する油圧供給ライン35における第二切換弁37とヘッド側油圧室19bとの間の箇所には、ヘッド側油圧室19bに供給する油量を制御するための流量制御弁(例えば、比例弁及びサーボ弁等)(図示せず)、チェック弁38、リリーフ弁(図示せず)が介設されている。また、キャップ側油圧室19cに作動油を供給する油圧供給ライン36における第二切換弁37とキャップ側油圧室19cとの間の箇所には、キャップ側油圧室19cに供給する油量を制御するための流量制御弁(例えば、比例弁及びサーボ弁等)(図示せず)、チェック弁39、リリーフ弁(図示せず)が介設されている。
【0034】
第一油圧ジャッキ18に設けた第一支持部21を回転カッタ3の半径方向外側に移動させる際には、第一切換弁30を伸長側に切り換えて、第一油圧ジャッキ18を伸長させると共に、第二切換弁37を縮退側に切り換えて、第二油圧ジャッキ19を縮退させる。このとき、第二油圧ジャッキ19に設けた第二支持部25は、回転カッタ3の半径方向内側に移動される。
【0035】
一方、第二油圧ジャッキ19に設けた第二支持部25を回転カッタ3の半径方向外側に移動させる際には、第一切換弁30を縮退側に切り換えて、第一油圧ジャッキ18を縮退させると共に、第二切換弁37を伸長側に切り換えて、第二油圧ジャッキ19を伸長させる。このとき、第一油圧ジャッキ18に設けた第一支持部21は、回転カッタ3の半径方向内側に移動される。
【0036】
図1に示すように、ビームカッタ4のビームカッタ本体22の長手方向一端部の前面には、ビームカッタ本体22の長手方向に所定間隔を隔てて複数のカッタビット40が配置されている。また、これらカッタビット40は、カッタフレーム8に設けたカッタビット10よりもわずかに掘進方向後方に配置される。つまり、ビームカッタ本体8の長手方向一端部が回転カッタ3の外周縁よりも半径方向内側に位置した状態では、ビームカッタ本体22の長手方向一端部(カッタビット40)は地山には当接されず掘削土砂を撹拌するのみである。また、ビームカッタ本体22の長手方向一端部(カッタビット40)が回転カッタ3の外周縁よりも半径方向外側に突出した状態では、ビームカッタ本体22の長手方向一端部(カッタビット40)が回転カッタ3の外周縁よりも半径方向外側の地山に当接されて地山を掘削する。
【0037】
本実施形態では、ビームカッタ本体22に設けた各カッタビット40の幅方向中心線Lcが回転カッタ3の外周縁の接線Lnに対してなす角度を、それよりも内周側に配設したカッタビット40の幅方向中心線Lcが回転カッタ3の外周縁の接線Lnに対してなす角度よりも大きくしている(図4参照)。また、ビームカッタ本体22に設けた複数のカッタビット40の内長手方向の最も内側に配設したカッタビット40を、その幅方向中心線Lcが回転カッタ3の外周縁の接線Lnに対して略平行となるようにしている(図4参照)。
【0038】
シールド掘進機1は、第一油圧ジャッキ18及び第二油圧ジャッキ19を伸縮させることによりビームカッタ本体22の長手方向一端部を回転カッタ3の外周縁よりも半径方向外側に突出させるための制御手段としてのコントローラ41(図3参照)を備えている。コントローラ41には、第一切換弁30、第二切換弁37、第一油圧ジャッキ18及び第二油圧ジャッキ19の流量制御弁等が接続されており、コントローラ41は、第一切換弁30、第二切換弁37をそれぞれ切換制御すると共に、第一油圧ジャッキ18及び第二油圧ジャッキ19の流量制御弁の開度をそれぞれ制御するようになっている。
【0039】
ビームカッタ4のビームカッタ本体22の長手方向一端部を回転カッタ3の外周縁よりも半径方向外側に突出させる際には、第二油圧ジャッキ19に設けた第二支持部25を回転カッタ3の半径方向外側に移動させると共に、第一油圧ジャッキ18に設けた第一支持部21を回転カッタ3の半径方向内側に移動させる。一方、ビームカッタ本体22の長手方向一端部を回転カッタ3の外周縁よりも半径方向内側に没入させる際には、第一油圧ジャッキ18に設けた第一支持部21を回転カッタ3の半径方向外側に移動させると共に、第二油圧ジャッキ19に設けた第二支持部25を回転カッタ3の半径方向内側に移動させる。
【0040】
コントローラ41には、回転カッタ3(カッタフレーム8)の回転角度を検出するための回転角度検出手段としての回転角度センサ42が接続されている。コントローラ41は、回転角度センサ42によって検出した回転カッタ3の回転角度をルックアップテーブル(図示せず)に入力して第一油圧ジャッキ18及び第二油圧ジャッキ19の伸縮量(ストローク)の目標値を求める。ルックアップテーブルには、回転カッタ3の回転角度に応じた第一油圧ジャッキ18及び第二油圧ジャッキ19の伸縮量の目標値がそれぞれ予め求められて入力されており、ルックアップテーブルに回転カッタ3の回転角度を入力することによって、第一油圧ジャッキ18及び第二油圧ジャッキ19の伸縮量の目標値が求められる。
【0041】
ここで、本実施形態では、ビームカッタ4のビームカッタ本体22の長手方向一端部に、コピーカッタ43をビームカッタ本体22に対して出没自在に設けている。
【0042】
本実施形態に係るシールド掘進機1は、コピーカッタ43を駆動するコピーカッタ用油圧ジャッキ(第三油圧ジャッキ44)(図3参照)と、第三油圧ジャッキ44をビームカッタ4を駆動する第一油圧ジャッキ18及び第二油圧ジャッキ19の内一方(本実施形態では、第一油圧ジャッキ18)に連動させる連動手段とを備えている。
【0043】
ビームカッタ本体22の長手方向中間部には、第三油圧ジャッキ44を駆動するための作動油を回転カッタ3側からビームカッタ4側へと中継して供給するための可撓性ホース45を有する中継部が設けられる。ビームカッタ本体22の長手方向中間部では、ビームカッタ4(ビームカッタ本体22)と回転カッタ3(カッタフレーム8)との相対位置が比較的変わり難いためである。
【0044】
図3に示すように、第三油圧ジャッキ44は、ビームカッタ本体22に取り付けられたシリンダチューブ44aと、シリンダチューブ44a内にその軸方向に摺動自在に設けられ、ヘッド側油圧室(伸長側油圧室)44bとキャップ側油圧室(縮退側油圧室)44cとを区画するピストン44dと、一端がピストン44dに連結され、他端がコピーカッタ43のカッタ部分をなすビットが装着されるロッド44eとを有している。
【0045】
本実施形態では、第三油圧ジャッキ44のヘッド側油圧室44bに作動油を供給する油圧供給ライン46を、第一油圧ジャッキ18のキャップ側油圧室18cに作動油を供給する油圧供給ライン29の途中に接続すると共に、第三油圧ジャッキ44のキャップ側油圧室44cに作動油を供給する油圧供給ライン47を、第一油圧ジャッキ18のヘッド側油圧室18bに作動油を供給する油圧供給ライン28の途中に接続している。本実施形態では、ヘッド側油圧室44bに作動油を供給する油圧供給ライン46は、油圧供給ライン29における第一油圧ジャッキ18の流量制御弁とキャップ側油圧室18cとの間の箇所に接続され、キャップ側油圧室44cに作動油を供給する油圧供給ライン47は、油圧供給ライン28における第一油圧ジャッキ18の流量制御弁とヘッド側油圧室18bとの間の箇所に接続される。
【0046】
つまり、第三油圧ジャッキ44のヘッド側油圧室44bに作動油を供給する油圧供給ライン46、及び、第三油圧ジャッキ44のキャップ側油圧室44cに作動油を供給する油圧供給ライン47は、第一油圧ジャッキ18の流量制御弁及び第一切換弁30を介して、油圧ポンプ31及びオイルタンク32に接続されている。ヘッド側油圧室44bに作動油を供給する油圧供給ライン46には、チェック弁48、リリーフ弁(図示せず)が介設されている。また、キャップ側油圧室44cに作動油を供給する油圧供給ライン47には、チェック弁49、リリーフ弁(図示せず)が介設されている。
【0047】
本実施形態では、第三油圧ジャッキ44への油圧供給ライン46、47に流量制御弁を介設していないので、第三油圧ジャッキ44のヘッド側油圧室44b、キャップ側油圧室44cに供給される油量は、第一油圧ジャッキ18の流量制御弁の開度に応じて決まる。
【0048】
第一油圧ジャッキ18のヘッド側油圧室18bに油圧ポンプ31から作動油が油圧供給ライン28を通して供給されると、この作動油により第一油圧ジャッキ18のピストン18dが伸長側(すなわち回転カッタ3の半径方向外側)に押される。すると、第一油圧ジャッキ18のキャップ側油圧室18cから作動油が油圧供給ライン29を通して適宜排出されて、第一油圧ジャッキ18が伸長される。これにより、第一支持部21が回転カッタ3の半径方向外側に移動される。第一油圧ジャッキ18のヘッド側油圧室18bに油圧ポンプ31から作動油が油圧供給ライン28を通して供給されると、同時に、第三油圧ジャッキ44のキャップ側油圧室44cに油圧ポンプ31から作動油が油圧供給ライン47を通して供給され、この作動油によりピストン44dが縮退側(すなわちビームカッタ本体22の長手方向内側)に押される。すると、第三油圧ジャッキ44のヘッド側油圧室44bから作動油が油圧供給ライン46を通して適宜排出されて、第三油圧ジャッキ44が縮退される。これにより、コピーカッタ43がビームカッタ本体22の長手方向一端部内に没入される。
【0049】
一方、第一油圧ジャッキ18のキャップ側油圧室18cに油圧ポンプ31から作動油が油圧供給ライン29を通して供給されると、この作動油により第一油圧ジャッキ18のピストン18dが縮退側(すなわち回転カッタ3の半径方向内側)に押される。すると、第一油圧ジャッキ18のヘッド側油圧室18bから作動油が油圧供給ライン28を通して適宜排出されて、第一油圧ジャッキ18が縮退される。これにより、第一支持部21が回転カッタ3の半径方向内側に移動される。第一油圧ジャッキ18のキャップ側油圧室18cに油圧ポンプ31から作動油が油圧供給ライン29を通して供給されると、同時に、第三油圧ジャッキ44のヘッド側油圧室44bに油圧ポンプ31から作動油が油圧供給ライン46を通して供給され、この作動油によりピストン44dが伸長側(すなわちビームカッタ本体22の長手方向内側)に押される。すると、第三油圧ジャッキ44のキャップ側油圧室44cから作動油が油圧供給ライン47を通して適宜排出されて、第三油圧ジャッキ44が伸長される。これにより、コピーカッタ43がビームカッタ本体22の長手方向一端部から突出される。
【0050】
このように、本実施形態に係る連動手段は、コントローラ41がビームカッタ本体22の長手方向一端部をカッタフレーム8の半径方向外側に移動させるべく第一油圧ジャッキ18及び第二油圧ジャッキ19を制御するときには、コピーカッタ43をビームカッタ本体22の長手方向一端部から突出させ、コントローラ41がビームカッタ本体22の長手方向一端部をカッタフレーム8の半径方向内側に移動させるべく第一油圧ジャッキ18及び第二油圧ジャッキ19を制御するときには、コピーカッタ43をビームカッタ本体22の長手方向一端部内に没入させるものである。
【0051】
本実施形態の油圧供給ライン28、29、46、47、第一切換弁30、第一油圧ジャッキ18の流量制御弁等が、上述の連動手段をなす。
【0052】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0053】
地山を掘削する際には、図4に示すように、駆動モータ16により回転カッタ3を回転駆動させると、その回転カッタ3によって地山が円形断面に掘削されて、円形断面のトンネル孔aが形成される。
【0054】
また、回転カッタ3の回転角度に応じて、ビームカッタ本体22の長手方向一端部を回転カッタ3の外周縁よりも半径方向外側に突出させる共に、ビームカッタ本体22の長手方向一端部に設けられたコピーカッタ43をビームカッタ本体22に対して突出させると、回転カッタ3により形成された円形断面のトンネル孔aの外周縁よりも半径方向外側の未掘削領域bの地山が、ビームカッタ4及びコピーカッタ43により掘削されて、円形断面のトンネル孔aに連続された略矩形断面のトンネル孔cが形成される。
【0055】
ここで、本実施形態では、ビームカッタ4のビームカッタ本体22の長手方向一端部に、コピーカッタ43をビームカッタ本体22に対して出没自在に設けたため、ビームカッタ4とコピーカッタ43とを同時に作動させ、コピーカッタ43をビームカッタ本体22の長手方向一端部に対して出没させることで、ビームカッタ4の回転中心からビームカッタ本体22(コピーカッタ43)の先端までの距離を変化させることができるので、コピーカッタ43がない場合に比べてビームカッタ4を駆動するビームカッタ用油圧ジャッキ(第一油圧ジャッキ18及び第二油圧ジャッキ19)を素速く伸長させなくとも、略矩形断面のトンネル孔cの角部分のように断面変化の大きい部分d(図4参照)を精度良く掘削することが可能となる。そのため、ビームカッタ用油圧ジャッキ(第一油圧ジャッキ18及び第二油圧ジャッキ19)の流量制御弁として、高価なサーボ弁を必ずしも使用する必要がなく、サーボ弁に比べて安価な比例弁を使用しても良いこととなる。
【0056】
また、本実施形態では、コントローラ41がビームカッタ本体22の長手方向一端部をカッタフレーム8の半径方向外側に移動させるべく第一油圧ジャッキ18及び第二油圧ジャッキ19を制御するときには、コピーカッタ43をビームカッタ本体22の長手方向一端部から突出させ、コントローラ41がビームカッタ本体22の長手方向一端部をカッタフレーム8の半径方向内側に移動させるべく第一油圧ジャッキ18及び第二油圧ジャッキ19を制御するときには、コピーカッタ43をビームカッタ本体22の長手方向一端部内に没入させるようにしている。
【0057】
つまり、本実施形態では、ビームカッタ4がカッタフレーム8の半径方向外側に移動して大きく掘削する必要があるときには、コピーカッタ43がビームカッタ本体22の長手方向一端部の長手方向外側に突出して大きく掘削し、ビームカッタ4がカッタフレーム8の半径方向内側に移動して小さく掘削する必要があるときには、コピーカッタ43がビームカッタ本体22の長手方向一端部の長手方向内側に没入して小さく掘削するため、コピーカッタ43がない場合に比べてビームカッタ4を駆動するビームカッタ用油圧ジャッキ(第一油圧ジャッキ18及び第二油圧ジャッキ19)を素速く伸長させなくとも、略矩形断面のトンネル孔cの角部分のように断面変化の大きい部分dを精度良く掘削することが可能となる。
【0058】
また、本実施形態では、コピーカッタ43を駆動するコピーカッタ用油圧ジャッキ(第三油圧ジャッキ44)を、ビームカッタ4を駆動するビームカッタ用油圧ジャッキ18、19の一方(第一油圧ジャッキ18)に連動させたため、コントローラ41によって第三油圧ジャッキ44の伸長量を別途制御する必要がなく、油圧ジャッキ(第一油圧ジャッキ18、第二油圧ジャッキ19及び第三油圧ジャッキ44)の制御方法がシンプルとなる。
【0059】
また、本実施形態では、ビームカッタ4を駆動するビームカッタ用油圧ジャッキ(第一油圧ジャッキ18及び第二油圧ジャッキ19)に連動されるコピーカッタ用油圧ジャッキ(第三油圧ジャッキ44)を、二つのビームカッタ用油圧ジャッキ18、19の内、カッタフレーム8が一回転するときに伸縮量の変化が大きい第一油圧ジャッキ18に連動させることとしたため、第三油圧ジャッキ44をカッタフレーム8が一回転するときに伸縮量の変化が小さい第二油圧ジャッキ19に連動させた場合に比べて、第三油圧ジャッキ44における作動油の供給・排出量が多くなるため、コピーカッタ43の伸縮量の変化を大きくでき、ビームカッタ4を駆動するビームカッタ用油圧ジャッキ(第一油圧ジャッキ18及び第二油圧ジャッキ19)を素速く伸長させなくとも、略矩形断面のトンネル孔cの角部分のように断面変化の大きい部分dを精度良く掘削することが可能となる。
【0060】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず他の様々な実施形態を採ることが可能である。
【0061】
例えば、上記実施形態には限定はされず、図3中に破線で示すように、第三油圧ジャッキ44のヘッド側油圧室44bに作動油を供給する油圧供給ライン46を、第二油圧ジャッキ19のヘッド側油圧室19bに作動油を供給する油圧供給ライン35の途中に接続すると共に、第三油圧ジャッキ44のキャップ側油圧室44cに作動油を供給する油圧供給ライン47を、第二油圧ジャッキ19のキャップ側油圧室19cに作動油を供給する油圧供給ライン36の途中に接続してもよい。その場合、第三油圧ジャッキ44が第二油圧ジャッキ19に連動されることとなり、油圧供給ライン35、36、46、47、第二切換弁37、第二油圧ジャッキ19の流量制御弁等が、上述の連動手段をなすこととなる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施形態に係るシールド掘進機の正面図である。
【図2】図1のII−II線矢視図である。
【図3】ビームカッタ及びコピーカッタの概略図である。
【図4】略矩形断面のトンネル孔を掘削するシールド掘進機の正面概略図である。
【符号の説明】
【0063】
1 シールド掘進機
2 シールド本体
3 回転カッタ
4 ビームカッタ
8 カッタフレーム
18 第一油圧ジャッキ(ビームカッタ用油圧ジャッキ)
19 第二油圧ジャッキ(ビームカッタ用油圧ジャッキ)
22 ビームカッタ本体
41 コントローラ(制御手段)
43 コピーカッタ
44 第三油圧ジャッキ(コピーカッタ用油圧ジャッキ)
28 油圧供給ライン(連動手段)
29 油圧供給ライン(連動手段)
30 第一切換弁(連動手段)
46 油圧供給ライン(連動手段)
47 油圧供給ライン(連動手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド本体の前部に回転自在に設けられたカッタフレームと、該カッタフレームにその半径方向に沿って且つ上記カッタフレームの周方向に互いに所定角度となるように配置された二つのビームカッタ用油圧ジャッキと、ビーム状に形成され、その長手方向端部よりも長手方向内側の部分が上記ビームカッタ用油圧ジャッキの伸縮端部に回動自在に支持されたビームカッタと、上記ビームカッタ用油圧ジャッキを伸縮させることにより、上記ビームカッタ用油圧ジャッキの一方の伸縮端部を上記カッタフレームの半径方向外側に移動させ、上記ビームカッタ用油圧ジャッキの他方の伸縮端部を上記カッタフレームの半径方向内側に移動させ、上記ビームカッタの長手方向端部を上記カッタフレームの半径方向外側に突出させる制御手段とを備えたシールド掘進機において、
上記ビームカッタの長手方向端部に、コピーカッタを出没自在に設けたことを特徴とするシールド掘進機。
【請求項2】
上記コピーカッタを駆動するコピーカッタ用油圧ジャッキと、該コピーカッタ用油圧ジャッキを上記ビームカッタ用油圧ジャッキの一方に連動させる連動手段とを備えた請求項1に記載のシールド掘進機。
【請求項3】
上記連動手段は、
上記制御手段が上記ビームカッタの長手方向端部を上記カッタフレームの半径方向外側に移動させるべく上記ビームカッタ用油圧ジャッキを制御するときには、上記コピーカッタを上記ビームカッタの長手方向端部から突出させ、
上記制御手段が上記ビームカッタの長手方向端部を上記カッタフレームの半径方向内側に移動させるべく上記ビームカッタ用油圧ジャッキを制御するときには、上記コピーカッタを上記ビームカッタの長手方向端部内に没入させるものである
請求項2に記載のシールド掘進機。
【請求項4】
上記連動手段は、上記コピーカッタ用油圧ジャッキを、上記二つのビームカッタ用油圧ジャッキの内上記カッタフレームが一回転するときに伸縮量の変化が大きい方に連動させるものである請求項2又は3に記載のシールド掘進機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−240460(P2008−240460A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−85416(P2007−85416)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【Fターム(参考)】