説明

シールド配線回路基板

【課題】回路とシールド材とが十分に高い接続信頼性で導通したシールド配線回路基板を提供すること。
【解決手段】ベース絶縁層3上に回路4と該回路を覆うカバー絶縁層5が形成され、カバー絶縁層5に開口6が形成され、カバー絶縁層5上に異方導電性フィルム7とシールド材8がこの順に積層され、回路4のカバー絶縁層5の開口6の底部に露出する部分に端子部9が形成され、該端子部9とシールド材8が異方導電性フィルム7を介して電気的に接続されてなるシールド配線回路基板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシールド配線回路基板に関し、詳しくは、シールド材と配線回路基板との接続信頼性が向上したシールド配線回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
配線回路基板の回路から発生する電磁波は、隣接した回路をアンテナ化する作用があるため、ノイズの発生源となり、機器内部での回路間の誤動作やクロストーク現象を生じさせるばかりでなく、外部機器に対しても影響を及ぼす。また、他の外部機器からの電磁波によって影響を受ける場合もある。このため、例えば、フレキシブル配線回路基板等において、回路から発生する電磁波を遮蔽する対策(シールド対策)が行われており、例えば、シールド材としての金属薄膜を導電性接着剤を用いて基体である配線回路基板に貼り合わせ、同時に、回路のグランド線とシールド材(金属薄膜)とを導通させたものがある(特許文献1〜3)。
【0003】
このような回路のグランド線とシールド材(金属薄膜)とを導通させたタイプのシールド配線回路基板は、通常、配線回路基板の回路を覆うカバー絶縁層に回路のグランド線に達する開口(貫孔)を設けておき、カバー絶縁層上に導電性接着剤の層を介してシールド材を重ねて加熱、加圧を施すことで作製される。すなわち、加熱、加圧によって、シールド材(金属薄膜)が導電性接着剤を介してカバー絶縁層に接着されると同時に、導電性接着剤がカバー絶縁層に設けられた開口に流れ込んで回路のグランド線まで達し、シールド材(金属薄膜)と回路のグランド線が導通する。
【特許文献1】特開平7−122882号公報
【特許文献2】特開2003−298285号公報
【特許文献3】特開2006−319216号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近時の電気機器または電子機器の小型化および高集積化に伴って、配線回路基板においても、回路(導体パターン)の微細化や構成材料の厚み精度など、要求品質が次第に厳しくなってきており、そのために、上記のような回路のグランド線にシールド材(金属薄膜)を導通させたタイプのシールド配線回路基板では、カバー絶縁層に設ける開口の径を小さくする必要が生じ、回路とシールド材の間に十分に高い接続信頼性が得られにくくなってきている。具体的には、回路とシールド材(金属薄膜)間の導通状態が得られない(導通不良)、或いは、導通状態が得られても、環境変化によって、回路とシールド材(金属薄膜)間の抵抗上昇が顕著になり、かかる抵抗上昇により、シールド材(金属薄膜)が新たなノイズ源になるといった問題が生じている。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みなされたもので、その解決しようとする課題は、回路とシールド材とが十分に高い接続信頼性で導通したシールド配線回路基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために、従来のシールド配線回路基板における回路とシールド材間の接続信頼性が低下する原因を調べたところ、カバー絶縁層の開口径が小さくなると、十分な加熱と加圧処理を行っても、カバー絶縁層の開口内に導電性接着剤中のフィラーによる安定な導通路が形成され難いことが分かった。このため、カバー絶縁層の開口内に安定な導通路を確実に形成するという観点から研究を進めた結果、カバー絶縁層の開口内に端子部を設け、該端子部とシールド材(金属薄膜)間に、絶縁性材料からなるフィルム基材中に該基材の厚み方向に貫通する複数の導通路を設けた構造の異方導電性フィルムを介在させ、接着剤層を用いる等の工夫を凝らすことによって、カバー絶縁層の開口内の回路とシールド材(金属薄膜)とが機械的にも電気的にも安定に接続し得ることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)ベース絶縁層上に回路と該回路を覆うカバー絶縁層が形成され、
前記カバー絶縁層に開口が形成され、
前記開口の底部に露出する前記回路の上に端子部が形成され、
前記カバー絶縁層上に、片面にシールド材が一体的に設けられた異方導電性フィルムが、前記片面とは反対側の片面をカバー絶縁層に直面させて積層され、
前記異方導電性フィルムは、絶縁性材料からなるフィルム基材中に該基材の厚み方向に貫通する複数の導通路が設けられた構造物であり、
前記異方導電性フィルムが前記カバー絶縁層と端子部に接着し、
前記端子部と前記シールド材が前記異方導電性フィルム中の導通路を介して導通していることを特徴とする、シールド配線回路基板、
(2)カバー絶縁層と異方導電性フィルムが接着剤層を介して接着されており、異方導電性フィルム中の導通路が該接着剤層を貫通して端子部に接触している、上記(1)記載のシールド配線回路基板、
(3)シールド材が接着剤層を介して異方導電性フィルムの片面に接着されており、異方導電性フィルム中の導通路が該接着剤層を貫通してシールド材に接触している、上記(1)又は(2)記載のシールド配線回路基板、
(4)ベース絶縁層上に回路と該回路を覆うカバー絶縁層が形成され、
前記カバー絶縁層に開口が形成され、
前記開口の底部に露出する前記回路の上に端子部が形成され、
前記端子部上に前記開口と略同一面積の異方導電性フィルムが配置され、
前記異方導電性フィルム及びカバー絶縁層上にシールド材が配置され、
前記異方導電性フィルムは、絶縁性材料からなるフィルム基材中に該基材の厚み方向に貫通する複数の導通路が設けられた構造物であり、
前記シールド材が接着剤層を介して前記異方導電性フィルム及びカバー絶縁層上に接着し、
前記異方導電性フィルム中の導通路が前記接着剤層を貫通することで、前記端子部と前記シールド材が導通していることを特徴とする、シールド配線回路基板、
(5)カバー絶縁層の厚みが10〜50μmであり、開口の径(W)が100〜2000μmである、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のシールド配線回路基板、
(6)異方導電性フィルムの導通路が、金属細線により形成されたものである、上記(1)〜(5)のいずれかに記載のシールド配線回路基板、及び
(7)端子部の表面がAu膜またはSn膜である、上記(1)〜(6)のいずれかに記載のシールド配線回路基板、に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、カバー絶縁層の開口径が小さくても、回路とシールド材とが高い接続信頼性で導通し、しかも、高温高湿な環境下に晒されてもかかる高い接続信頼性の導通状態が維持され得る、高い接続信頼性と、優れた耐熱性及び耐湿性とを兼ね備えたシールド配線回路基板を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して説明する。
本発明のシールド配線回路基板は、シールド材が回路のグランド線に電気的に接続するシールド材を有する配線回路基板であり、基体である「配線回路基板」は、特に限定されず、例えば、(1)フレキシブル配線回路基板、(2)回路付サスペンション板等として用いられる金属基板付フレキシブル配線回路基板、或いは(3)リジッド基板を使用したリジッド配線回路基板等の種々の形態の配線回路基板が含まれる。
【0010】
図1は本発明の第1例のシールド配線回路基板の模式図(図(a):全体の断面図、図(b):要部拡大図)であり、金属基板付フレキシブル配線回路基板にシールド材を一体化したものである。
【0011】
かかるシールド配線回路基板10は、金属基板2と、金属基板2の上に形成されるベース絶縁層3と、ベース絶縁層3上に形成される導体パターンからなる回路4と、該回路4を被覆するカバー絶縁層5とを備える。また、回路4はグランド線4aと信号線4bを有し、カバー絶縁層5に形成された開口6の底部にグランド線4aが露出している。また、片面にシールド材(金属薄膜)8が一体的に設けられた異方導電性フィルム7がカバー絶縁層5に接着されている。
【0012】
一方、カバー絶縁層5の開口6の底部に露出する回路4のグランド線4aには端子部(パッド)9が形成されており、前記の片面にシールド材(金属薄膜)8が積層された異方導電性フィルム7の一部がカバー絶縁層5の開口6内に埋入して端子部(パッド)9に接着し、回路4のグランド線4aとシールド材(金属薄膜)8が端子部(パッド)9と異方導電性フィルム7の導通路7aを介して導通している。
【0013】
本例のシールド配線回路基板10では、カバー絶縁層5の開口6の底部に露出する回路4に端子部(パッド)9を設け、片面にシールド材(金属薄膜)8が積層された異方導電性フィルム7をカバー絶縁層5と開口6内の端子部(パッド)9に直接接着させている。ここで、異方導電性フィルム7は、絶縁性材料からなるフィルム基材20中に該基材の厚み方向に貫通する複数の導通路7aが設けられた構造物であることから、導通路7aの端部が開口6内の端子部(パッド)9まで確実に達し、グランド線4a上の端子部(パッド)9とシールド材8が異方導電性フィルム中の導通路7aを介して確実に導通する。従って、シールド材8と配線回路基板(基体)1の間に十分に高い接続信頼性が得られ、シールド材8と回路4間の導通不良によって、シールド材8がノイズ源になってしまうような不具合を解消することができる。
【0014】
本発明において、配線回路基板(基体)1におけるベース絶縁層3およびカバー絶縁層5は、例えば、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などの合成樹脂が用いられる。これらのうち、感光性樹脂が好ましく用いられ、特に好ましくは、感光性ポリイミド樹脂である。
【0015】
また、ベース絶縁層3およびカバー絶縁層5の厚さは、配線回路基板の具体的用途等に応じて適宜設定されるが、ベース絶縁層3の厚さは、一般的には1〜50μm、好ましくは5〜25μmである。また、カバー絶縁層5の厚さはフレキシブル性を確保しながら、回路基板を保護し、信頼性を確保する観点から、一般的には、10〜50μm程度である。
【0016】
また、回路(導体パターン)4には、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、金、はんだ、またはこれらの合金などの金属が用いられ、好ましくは、銅が用いられる。また、回路(導体パターン)4の厚みは、通常、2〜30μm、好ましくは5〜20μmである。また、回路(導体パターン)4の幅は、通常、信号線4bにおいては5〜500μm程度であり、グランド線4aにおいては50〜5000μm程度である。なお、グランド線4aは、シールド層と接続する部分(すなわち、カバー絶縁層の開口6の直下)においてのみパターン幅を広げ、その他の部分は、信号線4bのパターン幅と同じにしてもよい。
【0017】
カバー絶縁層5に形成される開口6の形状や大きさは回路(導体パターン)4のグランド線4aの幅に応じて決定される。通常、開口6の平面形状は正方形、矩形、円形等の一般的形状であり、また、開口6の径(図1中のW)は、一般的には、開口6の平面形状が正方形や矩形または円形である場合、通常、その一辺または直径が100〜2000μm程度であり、好ましくは100〜300μm程度である。
【0018】
端子部(パッド)9は、公知の導電性材料が用いられ、多くの場合、Au、Ni、Sn、半田等の導電性に優れる金属材料が用いられる。また、端子部(パッド)9の表面層は、極めて良好な導電性を示すAu膜またはSn膜で構成するのが好ましく、Au膜が特に好ましい。なお、回路(導体パターン)4が銅からなる場合、Au薄膜との相互反応による導電性の低下を防止するために、銅導体層とAu薄膜の間にニッケル薄膜等のバリア層を介在させるのが好ましい。端子部(パッド)の平面形状は、正方形、矩形、円形等の一般的形状であり、また、端子部(パッド)の大きさは、導体層の幅等に応じて適宜決定され、一般的には、端子部の平面形状が正方形や矩形または円形である場合、通常、その一辺または直径が100〜2000μm程度であり、好ましくは100〜300μm程度である。
【0019】
端子部(パッド)9の厚みは、通常、接続信頼性及びコストの点から0.01μm〜10μm程度である。なお、前記のとおり、カバー絶縁層5は回路基板のフレキシブル性、保護及び信頼性等の点から前述の厚み(10〜50μm程度)が必要であり、このことから、端子部(パッド)9とカバー絶縁層5の間には、通常、10〜50μm程度の段差が生じることとなる。
【0020】
配線回路基板(基体)1は公知の方法で製造される。なお、ベース絶縁層3やカバー絶縁層5に感光性樹脂を使用することにより、感光性ポリアミック酸樹脂溶液などの感光性樹脂溶液を塗布し、これを露光、現像、乾燥硬化することにより、容易に所望のパターンに形成することができ、有利である。また、ベース絶縁層3は、予め絶縁材料からなるフィルムをベース絶縁層3の形状に適合するように形成し、これを金属基板2の上に粘着する(必要により接着剤層を介して貼着する)方法も好適である。
【0021】
回路(導体パターン)4は、例えば、アディティブ法、セミアディティブ法、サブトラクティブ法などの公知のパターンニング法によって、所定パターンの導体パターンを形成する。なお、回路(導体パターン)4には、必要により、無電解メッキによって、ニッケルメッキ層で被覆してもよい。
【0022】
端子部(パッド)9の形成方法は特に限定はされないが、例えば、電解メッキ、無電解メッキなどの公知のメッキ法にて形成することができる。
【0023】
図2(a)、(b)は本発明で使用する異方導電性フィルム7の平面図(図(a))と断面図(図(b))である。前述のとおり、異方導電性フィルム7は、絶縁性材料からなるフィルム基材20中に該基材の厚み方向に貫通する複数の導通路7aが設けられた構造物であるが、導通路7aの断面形状は、図2(a)に示されるような円形の他、多角形等の他の形状であってもよい。導通路7aの太さ(断面径)、導通路の配列ピッチ(隣接する導通路の軸線間の距離)等は、配線回路基板のカバー絶縁層5に設ける開口6の大きさを考慮して、少なくとも一本の導通路7aが開口6内に入り込むように設定される。一般的には、導通路7aの太さ(断面径)は10〜100μm(好ましくは10〜50μm)の範囲内から選択され、配列ピッチは30〜200μm(好ましくは30〜100μm)の範囲内から選択される。また、導通路7aの配列パターンは、密に集合した状態であれば、特に限定はされないが、図2(a)に示されるような千鳥配列状の他、マトリクス状等の規則性の高い配列パターンがよい。
【0024】
図3(a)、(b)は本発明で使用する異方導電性フィルム7の別の態様を示しており、該異方導電性フィルムは第1の絶縁性材料からなるフィルム基材20中に、複数の導通路7aが、互いに絶縁された状態で、フィルム基材20を厚み方向に貫通した状態で配置され、各導通路7aの、フィルム基材20の両主面(表裏面)に露出する端面を除く表面が第2の絶縁性材料21で被覆されている。導通路7aの配列パターンはマトリクス状である。
【0025】
本発明において、異方導電性フィルム7は、通常、フィルム基材20が接着性を有する。従って、フィルム基材20を構成する絶縁性材料は、そのままの状態で接着性を示すか、あるいはそのままの状態では接着性を示さないが、加熱および/または加圧により接着可能となる絶縁性材料であり、例えば、加熱および/または加圧により融着および/または圧着する熱可塑性樹脂や、加熱により溶融、硬化して接着する熱硬化性樹脂が用いられる。具体的には、熱可塑性ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0026】
接着性を有する絶縁性材料が、熱可塑性樹脂からなる場合、端子部9との接合部を再加熱して樹脂を可塑化することにより、端子部9との接着を解くことができる。よって、端子部(パッド)9と異方導電性フィルムの接着状態が好ましくない場合(基材樹脂とパッドとの接着が不完全な場合や、導通路7aの端部とパッドとの接触が不完全な場合)、接合のやり直し(リワーク)を行うことができる。一方、熱硬化性樹脂からなる場合、高温になるほど硬化が進むので、高温での接着力が高くなり、接続信頼性が一層向上する。
【0027】
なお、図3の形態の異方導電性フィルムの場合、第1の絶縁性材料と第2の材料を適宜選択することにより、フィルム基材が単一の材料で構成されたものに比べて、異方導電性フィルムの強度、耐熱性、誘電特性、応力緩和特性の点で優れたものとなる。よって、図3の形態の異方導電性フィルムを用いることにより、結果的に、強度的にも導通性の点からもより信頼性の高い接続を得ることが可能である。具体的には、フィルム基材20と導通路7aとの接着性を良好とするためには、例えば、第1の絶縁性材料としてポリエーテルイミド樹脂を、第2の材料としてポリアミド樹脂を選択する。また、異方導電性フィルムの強度を良好とするためには、例えば、第1の絶縁性材料としてポリイミド樹脂を、第2の材料としてエポキシ樹脂を選択する。また、異方導電性フィルムの耐熱性を良好とするためには、例えば、第1の絶縁性材料としてポリイミド樹脂やポリカルボジイミド樹脂を、第2の材料としてポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂を選択する。
【0028】
異方導電性フィルム7のフィルム基材20には、各種の充填剤、可塑剤等あるいはゴム材料が添加されていてもよく、充填剤としては、例えば、SiO、Al、可塑剤としては、例えば、TCP(リン酸トリクレシル)、DOP(フタル酸ジオクチル)、ゴム材料としては、例えばNBS(アクリロニトリルブタジエンゴム)、SBS(スチレン−ブタジエン−スチレン−ブロック共重合体)等が挙げられる。
【0029】
異方導電性フィルム7の導通路7aの構成材料としては、公知の材料が挙げられ、例えば、銅、金、アルミニウム、ニッケル、ハンダ等の金属材料が挙げられる。また、これら金属材料とポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂等の有機材料との混合物を用いてもよい。電気特性の点で金属材料が好ましく、特に金、銅などの良導体を用いるのが好ましい。
【0030】
図4(a)、(b)は導通路7aの好適な態様を示している。図4(a)は、導通路7aの大部分を銅(Cu)で形成し、導通路7aの両端部をNi/Auメッキで形成したものである。また、図4(b)は、導通路7aの両端部を除く大部分を銅(Cu)で形成し、導通路の両端部をNi/ハンダメッキで形成したものである。図4(a)の形態とした場合、前記した表面をAu膜とする端子部(パッド)9の好ましい形態と組み合わせることで、導通路7aの端部とパッド9の接触がAu同士の接触となり、極めて良好な導通性が得られる。一方、図4(b)の形態とした場合、フィルムの主面をパッドに熱圧着または圧着して、フィルムの基材樹脂を端子部(パッド)9に接着した後、接合部を加熱するとハンダが速やかに溶融して端子部(パッド)9に融着する。よって、一旦、端子部(パッド)9に接着した基材樹脂が可塑化して接着が解かれてしまうような事態を生じることなく、導通路の端部がパッドに融着して、強固な接続を得ることができる。なお、Ni/ハンダメッキに代えて、Ni/Snメッキを形成してもよく、同様の効果を得ることができる。
【0031】
異方導電性フィルム7は、フィルム基材20に貫孔を開け、該貫孔内に金属材料をメッキで析出させる方法によって導通路7aを形成したものでもよいが、金属細線によって導通路7aを形成したものが好ましい。このような金属細線による導通路を形成した異方導電性フィルムは、金属細線に絶縁性材料からなる被覆層を形成して絶縁導線とし、該絶縁導線を芯材にロール状に巻いて、加熱および/または加圧を施すことで絶縁性材料からなる被覆層どうしが融着および/または圧着したロール状物を作成し、該ロール状物を絶縁導線の軸線と角度をなして交差する平面を断面として所定のフィルム厚さに切断する方法によって製造することができる。図3の態様の異方導電性フィルムの場合、絶縁導線として、金属細線に第2の絶縁性材料からなる被覆層と第1の絶縁性材料からなる被覆層を順次形成して絶縁導線を使用すればよい。なお、図4の態様の導通路を有する異方導電性フィルムは、メッキで導通路を形成する場合、銅、Ni、ハンダ(Au)の順に3段階のメッキを行えばよく、金属細線で導通路を形成する場合、銅細線による導通路の端部を、酸或いはアルカリによるケミカルエッチング等を用いて選択的にエッチングし、エッチングにより除去された凹部に、Ni、ハンダ(Au)の順にメッキを行う方法により得ることができる。
【0032】
異方導電性フィルム7の厚みは、厚みが小さすぎると、導通路と回路(導体パターン)間の導電性、導通路とシールド材間の導電性等が不十分となる恐れがあり、また、大きすぎると接続抵抗が高くなり、電気的信頼性が低下するおそれがある。したがって、一般的には10〜200μm程度、好ましくは10〜100μm程度であるが、特に、開口6内の端子部9の表面とカバー絶縁層5の表面間の段差を吸収しつつ、導通路7と端子部9間に高信頼性の導通状態を確保する観点から、より好ましくは15〜80μmであり、とりわけ好ましくは20〜70μmである。
【0033】
異方導電性フィルム7は、フィルム基材が圧着のみで接着するものであれば、異方導電性フィルム7の主面を被接続体に接触させて加圧するだけでよい。フィルム基材が加熱、加圧で接着するものであれば、加熱、加圧を行う。より高い接続信頼性を得るためには、加熱及び加圧を行うのが好ましい。
【0034】
シールド材(金属薄膜)8としては、例えば、銅、クロム、ニッケル、金、銀、白金、パラジウム、チタン、タンタル、はんだ、またはこれらの合金などの薄膜を用いることができ、中でも、銅、銀が好ましい。また、シールド材(金属薄膜)8の厚みは1〜18μmが好ましく、2〜12μmがより好ましい。厚みが1μm未満では、電磁シールド効果が低下する傾向となり、厚みが18μmを超えると基板が厚くなり過ぎることから、可撓性が得られにくくなる傾向となるため、好ましくない。シールド材(金属薄膜)8は、電解メッキ、無電解メッキなどのメッキ法や、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法などの真空成膜法により形成することができる。なお、シールド材(金属薄膜)8は異方導電性フィルム7をカバー絶縁層5に接着する前に、異方導電性フィルム7の片面に形成(積層)しておいても、異方導電性フィルム7をカバー絶縁層5に接着した後に、異方導電性フィルム7の片面に形成(積層)してもよい。異方導電性フィルム7をカバー絶縁層5に接着する前に、シールド材(金属薄膜)8を異方導電性フィルム7の片面に形成(積層)する態様の場合、異方導電性フィルムとシールド材を一括して打ち抜き加工できる等の点で好ましい。
【0035】
前記図1の第1例のシールド配線回路基板10では、カバー絶縁層5上に、例えば、片面にシールド材(金属薄膜)8が積層された異方導電性フィルム7を載置した状態で、加圧するか、又は、加圧及び加熱をすることで、図1に示されるように、異方導電性フィルム7がカバー絶縁層5に接着し、異方導電性フィルム7の一部がカバー絶縁層5の開口6の内部で回路4の一部に形成した端子部(パッド)9に接着して、シールド材が回路と電気的に導通した状態で回路基板に強固に一体化したシールド配線回路基板が得られる。
【0036】
ここで、接着に要する加圧力は、一般的には、0.1〜1kgf/mm程度であり、好ましくは0.1〜0.8kgf/mm程度である。また、加圧及び加熱を行う場合の加熱温度は、一般的には200〜350℃程度であり、好ましくは200〜300℃程度である。
【0037】
なお、異方導電性フィルム7のカバー絶縁層5への接着作業は少なくとも異方導電性フィルム7の導通路7aの端部が端子部(パッド)9に接触する状態となるように行えばよいが、導通路7aの端部が端子部(パッド)9に融着するように加熱を行うのが、より高い接続信頼性を得る上で好ましい。
【0038】
図5は本発明の第2例のシールド配線回路基板の模式断面図であり、図において、図1(b)と同一符号は同一または相当する部分を示す。
【0039】
本第2例のシールド配線回路基板30では、カバー絶縁層5上に予め接着剤層12Aを設け、異方導電性フィルム7のカバー絶縁層5への圧着(接着)を接着剤層12Aを介して行っている。すなわち、カバー絶縁層5/接着剤層12A/異方導電性フィルム7の積層構造を形成後、加圧、或いは、加圧及び加熱を行うことにより、異方導電性フィルム7とカバー絶縁層5が接着剤層12Aを介して接着し、異方導電性フィルム7中のフィルム基材20よりも剛性の高い導通路7aが接着剤層12Aを突き破って端子部(パッド)9に接触している。よって、カバー絶縁層5と異方導電性フィルム7とが接着剤層12Aによって強固に接着した状態で、異方導電性フィルム7の導通路7aが端子部(パッド)9に接触しており、異方導電性フィルム7と端子部(パッド)9間が電気的にも機械的にもより高い信頼性で接続した接続構造が得られる。
【0040】
接着剤層12Aは一般的な樹脂及び金属に対して接着性を有する、高耐熱性の接着剤であれば、制限なく使用することができる。具体的には、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、熱可塑性ポリイミド等が挙げられ、中でも、安価なエポキシ樹脂が好ましい。接着剤層12Aの厚みは、十分な接着力を得る観点から、一般的には5〜50μm程度であり、好ましくは10〜25μm程度である。なお、ここでの厚みは、カバー絶縁層5上への塗布厚み、すなわち、カバー絶縁層5に異方導電性フィルム7を該接着剤層を介して圧着する前の厚みである。
【0041】
圧着作業における加圧、或いは、加圧及び加熱の条件は、前述の第1例のシールド配線回路基板での条件と同等でよい。
【0042】
図6は本発明の第3例のシールド配線回路基板の模式断面図であり、図において、図1(b)と同一符号は同一または相当する部分を示す。
【0043】
本第3例のシールド配線回路基板40では、異方導電性フィルム7に接着剤層12Bを介してシールド材(金属薄膜)8を接着しておき、かかる異方導電性フィルム7/接着剤層12B/シールド材(金属薄膜)8の積層構造を形成後、加圧、或いは、加圧及び加熱を行うことで、異方導電性フィルム7とシールド材(金属薄膜)8間の接着(一体化)と導通を行ったものである。すなわち、加圧、或いは、加圧及び加熱を行うことで、異方導電性フィルム7とシールド材(金属薄膜)8とが接着剤層12Bを介して接着するとともに、異方導電性フィルム7中のフィルム基材20よりも剛性の高い導通路7aは接着剤層12Bを突き破ってシールド材(金属薄膜)8に接触するため、異方導電性フィルム7とシールド材(金属薄膜)8間が電気的にも機械的にもより高い信頼性で接続した接続構造が得られる。
【0044】
接着剤層12Bには、一般的な樹脂及び金属に対して接着性を有する、高耐熱性の接着剤であれば制限なく使用することができ、具体的には、前記接着剤層12Aの具体例として挙げた接着剤と同様のものが挙げられ、また、接着剤層12Bの厚みも、前記接着剤層12Aのそれと同等でよい。また、接着剤層12Bはシールド材8の片面に予め形成しておくことができる。なお、圧着作業における加圧、或いは、加圧及び加熱の条件は、前述の第1例のシールド配線回路基板での条件と同等でよい。
【0045】
なお、本第3例では、シールド材(金属薄膜)8を接着剤層を介して異方導電性フィルム7に一体化するので、シールド材(金属薄膜)8としては、通常、金属箔が使用される。金属箔の構成金属は、前記で説明した、銅、クロム、ニッケル、金、銀、白金、パラジウム、チタン、タンタル、はんだ、またはこれらの合金等が好適である。
【0046】
図7、8は本発明の第4例のシールド配線回路基板の要部断面の模式図であり、図7はシールド材の圧着作業前の状態図、図8はシールド材の圧着作業後の状態図である。これらの図において、図1と同一符号は同一又は相当する部分を示す。
【0047】
かかる第4例のシールド配線回路基板50は、カバー絶縁層5に設けた開口6と略同一面積の異方導電性フィルム7Aを使用し、該異方導電性フィルム7Aで開口6を塞いだ状態で、該異方導電性フィルム7A及びカバー絶縁層5の上に接着剤層12Cを設けて、シールド材(金属薄膜)8を該接着剤層12Cを介して異方導電性フィルム7及びカバー絶縁層5に圧着したものである。
【0048】
すなわち、シールド材(金属薄膜)8の圧着作業前の異方導電性フィルム7A(図7)は、シールド材8の圧着作業によって圧縮して、図8に示されるように、フィルム基材20よりも剛性の高い導通路7aが接着剤層12Cを突き破って貫通して、シールド材(金属薄膜)8に接触することとなり、端子部(パッド)9とシールド材(金属薄膜)8を異方導電性フィルム7A中の導通路7aを介して確実に導通させることができる。なお、シールド材8の圧着作業における加圧、或いは、加圧及び加熱の条件は、前述の第1例のシールド配線回路基板の条件と同等でよい。
【0049】
接着剤層12Cには、一般的な樹脂及び金属に対して接着性を有する、高耐熱性の接着剤であれば制限なく使用することができ、具体的には、前記接着剤層12の具体例として挙げた接着剤と同様のものが挙げられる。
【0050】
接着剤層12Cの厚みは、十分な接着力を得る観点から、一般的には5〜50μm程度であり、好ましくは10〜25μm程度である。なお、接着剤層12Cはシールド材(金属薄膜)8の片面に予め形成しておくことができる。
【0051】
カバー絶縁層5に設けた開口6と略同一面積の異方導電性フィルム7Aを使用する本第4例のシールド配線回路基板50においても、異方導電性フィルム7Aは金属細線にて導通路7aを形成したものが好ましい。
【0052】
本態様では特に異方導電性フィルム7Aの厚み(=導通路7aの長さ)及び大きさが重要であり、異方導電性フィルム7Aの厚み(=導通路7aの長さ)は、好ましくは15〜100μmであり、より好ましくは20〜70μmである。異方導電性フィルム7Aの厚み(=導通路7aの長さ)が15μm未満の場合、導通路と回路間の導通性及び導通路とシールド材間の導通性が不十分となる恐れがあり、また、異方導電性フィルム7Aの厚み(=導通路7aの長さ)が100μmを超えると、接着剤層12Cとカバー絶縁層5との接着を阻害する恐れがあり、好ましくない。
【0053】
異方導電性フィルム7Aの大きさは、カバー絶縁層5に設ける開口6と略同一面積に設定する。ここで「開口6と略同一面積」とは、異方導電性フィルム7Aの平面形状が開口6の形状に対して略相似形の関係にあり、同心に重ねて配置したときに、開口6の輪郭に対して異方導電性フィルム7Aの外周(周縁)が開口6の輪郭より5000μmを超えない範囲で大きい関係である。「開口6の輪郭に対して異方導電性フィルム7Aの外周(周縁)が大きい」とは、同心(中心点)から開口6の輪郭及び異方導電性フィルム7Aの外周(周縁)に交わる直線を引いたときに、該直線上の開口6の輪郭との交点から中心点までの距離(X1)よりも異方導電性フィルム7Aの外周(周縁)との交点から中心点までの距離(X2)が大きいことであり、「5000μmを超えない範囲で大きい」とは、異方導電性フィルム7Aの外周(周縁)との交点から中心点までの距離(X2)と輪郭との交点から中心点までの距離(X1)との差(X2−X1)が5000μm以下であることを意味する。異方導電性フィルムの厚みによっても異なるが、当該寸法差(X2−X1)が5000μmを超えて大きい場合は、接着層とカバー絶縁層との接着を阻害する傾向となり、かかる寸法差(X2−X1)が小さすぎると、開口6上に異方導電性フィルムを配置するのが困難となり、位置合せが困難になる。
【0054】
また、本第4例のシールド配線回路基板50においては、シールド材(金属薄膜)8の圧着作業時に異方導電性フィルム7Aが良好な変形性を示すように、異方導電性フィルム7Aは−30〜300℃での構造物全体としての弾性率が1〜20000MPaの範囲にあるものが好ましく、10〜2000MPaの範囲にあるのものがより好ましい。
【0055】
本第4例のシールド配線回路基板50では、カバー絶縁層5の開口6と略同一面積にした異方導電性フィルム7Aを設けた部分を除いてシールド材8/接着剤層12C/カバー絶縁層5の積層構造となるので、シールド材が回路基板に対してより安定的に接着して、回路とシールド材とがより一層高い接続信頼性で導通し、また、高温高湿な環境下にさらされても、かかる良好な導通状態が維持される。
【0056】
なお、シールド材(金属薄膜)8を接着剤層12Cを用いて回路基板と一体化するので、シールド材(金属薄膜)8には、前記第3例と同様に、金属箔が使用される。金属箔の構成金属は、前記で説明した、銅、クロム、ニッケル、金、銀、白金、パラジウム、チタン、タンタル、はんだ、またはこれらの合金等が好適である。
【0057】
本発明において、上記の第1〜第4例のシールド配線回路基板のように、配線回路基板(基体)1が金属基板付フレキシブル配線回路基板である場合、金属基板2としては、導電性の金属からなる金属箔または金属薄板であって、例えば、ステンレス、銅、アルミニウム、銅−ベリリウム、りん青銅、42アロイなどが用いられ、ばね性および耐食性を考慮すると、ステンレスが好適である。また、金属基板2の厚さは一般に10〜60μm、好ましくは15〜30μm程度である。
【0058】
なお、配線回路基板(基体)が、フレキシブル配線回路基板やリジッド配線回路基板である場合、それらの基材として使用されている通常のフレキシブルフィルム(基板)やリジッド基板上に、上述のベース絶縁層3、回路4、カバー絶縁層5、開口6及び端子部9を設ければよい。
【実施例】
【0059】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明する。本発明は以下に記載の実施例に限定されるものではない。
実施例1
(配線回路基板(基体))
下記の材料及び寸法構成の金属基板付フレキシブル配線回路基板を用意した。
金属基板:ステンレス板(厚み:20μm)
ベース絶縁層:ポリイミド(厚み:15μm)
カバー絶縁層:25μm厚のポリイミドフィルムに25μm厚のエポキシ系接着剤層を積層した積層フィルム
開口:平面形状=正方形、開口径(W)=100μm
回路:銅パターン(厚み=15μm、幅=3000μm)
端子部:銅導体層上にNiバリア層を介してAu表面層を形成した積層構造(厚み=Ni層(3μm)、Au層(0.6μm))とし、縦100μm×横100μmの矩形形状とした。
端子部表面とカバー絶縁層表面の段差(T):50μm(端子部の断面観察を行い、測長顕微鏡で測定。)
【0060】
(異方導電性フィルム)
先ず、外径φ30μmの銅線の表面にポリエーテルイミド樹脂によって厚さ約10μmの被覆層を形成して外径φ約50μmの絶縁導線を形成した。次に、巻線装置を用いて、全長(巻き幅)300mm、断面形状30mm×30mmの正方形の角柱状プラスチック芯材に整列巻きを行い線材を最密充填して、1層当たりの平均巻き数6000ターン、巻き層数250層(=層の厚さ約12mm)の巻線コイルを形成した。
【0061】
得られたロール状の巻線コイルを、約300℃に加熱しながら、0.6kgf/mmで加圧し、線材が互いに一体化した巻線コイルブロックを得た。この巻線コイルブロックを、巻き付けられた線材と垂直に交わる面(プラスチック芯材の中心軸を含む平面に平行な面)を断面としてシート状にスライスし、縦:約300mm×横12mm、厚さ10mmの異方導電性フィルムの前段階のシートを得た。
【0062】
次に、得られたシートをさらに薄くスライスし、外径寸法を仕上げて、縦:約4mm×横約4mm、厚さ0.05mmの異方導電性フィルムを得た。導通路(銅線)の配列ピッチは50μmであった。次に、導通路の両端部に、酸によるケミカルエッチングを施し、導通路のエッチングにより除去された一方の端部の凹部に、Ni、Auの順にメッキを行って、2μmのNi層と、0.1μmのAu層を順次形成し、凹部を埋め込んだ。
【0063】
(シールド配線回路基板)
異方導電性フィルムの導通路のエッチングにより除去された他方の凹部を起点にして、無電解メッキを行って、銅からなる、厚み3μmの薄膜(シールド材)を異方導電性フィルムの片面に形成した。前述の配線回路基板のカバー絶縁層上に、かかるシールド材が積層された異方導電性フィルムをシールド材とは反対側の面を向けて載置し、この状態で、温度250℃、圧力約0.3kgf/mmで、約30秒熱圧着することにより、シールド材が異方導電性フィルムを介して配線回路基板に接着・一体化したシールド配線回路基板を作製した。
【0064】
実施例2
配線回路基板(基体)におけるカバー絶縁層を12.5μm厚のポリイミドフィルムに15μm厚のエポキシ系接着剤層を積層したものに変更し、開口径(W)を500μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、シールド配線回路基板を作製した。
【0065】
実施例3
配線回路基板(基体)におけるカバー絶縁層を10μm厚の感光性ポリイミドフィルムに変更し、開口径(W)を2000μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、シールド配線回路基板を作製した。
【0066】
実施例4
配線回路基板(基体)として、実施例2で使用した配線回路基板(基体)と同じものを用意した。
シールド材として、12.5μm厚のポリイミドフィルムに無電解メッキでCu層(厚み:3μm)を形成し、その上にエポキシ系接着剤層(厚み:15μm)を形成したものを用意した。
異方導電性フィルムとして、最終のメッキ工程で、導通路の両端部(凹部)にNi/Au層を形成し、それ以外は実施例1で用いた異方導電性フィルムと同様にして作製した異方導電性フィルムを用意した。
配線回路基板(基体)の開口部の上に異方導電性フィルムを配置し、その上にシールド材をエポキシ系接着剤層側を配線回路基板側に向けて積層し、温度150℃、圧力約0.3kgf/mmで約30秒熱圧着(第1作業)後、さらに温度250℃、圧力約0.3kgf/mmで約30秒熱圧着(第2作業)を行った。すなわち、第1作業によりシールド材を配線回路基板に接着させ(このとき異方導電性フィルムの導通路が接着剤層を貫通してCu層に接触が同時になされる。)、第2作業で異方導電性フィルムを端子部に接着させた。
その後、150℃で熱処理(アフターキュア)を行い、シールド配線回路基板を完成させた。
【0067】
比較例1〜3
実施例1〜3のそれぞれにおいて、シールド材を積層した異方導電性フィルムの代わりに、予め片面に導電性接着剤層が形成されている市販のシールド材(タツタ システム エレクトロニクス社製、SF−PC5000)を使用し、圧着条件を、温度160℃、圧力約0.3kgf/mmとし、その他は同様にして、シールド配線回路基板を作製した。こうして作製された実施例1に対応するものを比較例1、実施例2に対応するものを比較例2、実施例3に対応するものを比較例3とした。
【0068】
[評価]
貼り合せ(初期)に、配線回路基板のグランドとシールド間の導通が得られたものは、実施例1〜4と比較例2、3で、比較例1は導通しなかった。
【0069】
[環境試験]
配線回路基板にシールド材を貼り合せたサンプル(比較例1を除く)を、85℃、85%RHに放置した。1000時間後、抵抗変化率が10%以下であったのは実施例1〜4で、比較例2、3は全て断線した。なお、実施例4の抵抗変化率は0.5%以下で極めて小さく、実施例1〜3の抵抗変化率(1〜2%以下)に比べてより小さかった。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1例のシールド配線回路基板の模式断面図(図(A))と要部拡大図(図(B))である。
【図2】本発明で使用する異方導電性フィルムの一例の平面図(図(A))と断面図(図(B))である。
【図3】本発明で使用する異方導電性フィルムの他の例の平面図(図(A))と断面図(図(B))である。
【図4】本発明で使用する異方導電性フィルムにおける導通路の好適態様を示す図である。
【図5】本発明の第2例のシールド配線回路基板の要部の模式断面図である。
【図6】本発明の第3例のシールド配線回路基板の要部の模式断面図である。
【図7】本発明の第4例のシールド配線回路基板の要部の模式断面図(シールド材の圧着前)である。
【図8】本発明の第4例のシールド配線回路基板の要部の模式断面図(シールド材の圧着後)である。
【符号の説明】
【0071】
1 配線回路基板(基体)
2 金属基板
3 ベース絶縁層
4 回路
5 カバー絶縁層
6 開口
7 異方導電性フィルム
7a 導通路
8 シールド材(金属薄膜)
9 端子部
10、30、40、50 シールド配線回路基板
12、12A、12B、12C 接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース絶縁層上に回路と該回路を覆うカバー絶縁層が形成され、
前記カバー絶縁層に開口が形成され、
前記開口の底部に露出する前記回路の上に端子部が形成され、
前記カバー絶縁層上に、片面にシールド材が一体的に設けられた異方導電性フィルムが、前記片面とは反対側の片面をカバー絶縁層に直面させて積層され、
前記異方導電性フィルムは、絶縁性材料からなるフィルム基材中に該基材の厚み方向に貫通する複数の導通路が設けられた構造物であり、
前記異方導電性フィルムが前記カバー絶縁層と端子部に接着し、
前記端子部と前記シールド材が前記異方導電性フィルム中の導通路を介して導通していることを特徴とする、シールド配線回路基板。
【請求項2】
カバー絶縁層と異方導電性フィルムが接着剤層を介して接着されており、異方導電性フィルム中の導通路が該接着剤層を貫通して端子部に接触している、請求項1記載のシールド配線回路基板。
【請求項3】
シールド材が接着剤層を介して異方導電性フィルムの片面に接着されており、異方導電性フィルム中の導通路が該接着剤層を貫通してシールド材に接触している、請求項1又は2記載のシールド配線回路基板。
【請求項4】
ベース絶縁層上に回路と該回路を覆うカバー絶縁層が形成され、
前記カバー絶縁層に開口が形成され、
前記開口の底部に露出する前記回路の上に端子部が形成され、
前記端子部上に前記開口と略同一面積の異方導電性フィルムが配置され、
前記異方導電性フィルム及びカバー絶縁層上にシールド材が配置され、
前記異方導電性フィルムは、絶縁性材料からなるフィルム基材中に該基材の厚み方向に貫通する複数の導通路が設けられた構造物であり、
前記シールド材が接着剤層を介して前記異方導電性フィルム及びカバー絶縁層上に接着し、
前記異方導電性フィルム中の導通路が前記接着剤層を貫通することで、前記端子部と前記シールド材が導通していることを特徴とする、シールド配線回路基板。
【請求項5】
カバー絶縁層の厚みが10〜50μmであり、開口の径(W)が100〜2000μmである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシールド配線回路基板。
【請求項6】
異方導電性フィルムの導通路が、金属細線により形成されたものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載のシールド配線回路基板。
【請求項7】
端子部の表面がAu膜またはSn膜である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のシールド配線回路基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−200113(P2009−200113A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−37734(P2008−37734)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】