説明

シールリング、及びシールリングを備えた液面検出装置

【課題】シール性を確保しつつ、回転軸をスムーズに回転させるシールリングを提供する。
【解決手段】上面31、下面32、外周面33、及び内周面34に溝が形成された、断面が略X字状のシールリング30であり、更にシール性を高めるため、上面31及び下面32の少なくとも1つの面に形成された溝35の深さは、外周面33、及び内周面34に形成された溝の深さよりも深く形成されている。この溝35の最深位置35aは、外周面33よりも内周面34に近くに位置するか、あるいは、内周面34よりも外周面33に近くに位置するか、あるいは内周面34と外周面33との中間に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、回動軸部に装着されるシールリング、及び回転軸部にシールリングが装着された液面検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転軸部に装着され、流体や異物の侵入を防止するための種々のシールリングが実用化されている。代表的なものとしては、断面が円形状のOリングや、断面が略四角形状からなるシールリング等である。これらのシールリングは、車両や船舶等の燃料タンクに設置される液面検出装置の回転軸部にも用いられている。液面検出装置の一つであるフロート式液面検出装置の従来例として、特許文献1に開示されたものがある。
【0003】
特許文献1に開示されたフロート式液面検出装置は、フロートが端部に取り付けられたフロートアームと、フロートアームを保持するアームホルダとを備えている。アームホルダに形成された回転軸が、本体に形成された軸受部に支持されることで、フロートは液位の変動に追随して回転軸を中心に回転する。なお、回転軸と軸受部との間に3点が当接する断面がV字状のVリングが介在することにより、フロート式液面検出装置の液密性が確保されている。その他、回転軸と軸受部との間に介在させるシールリングとしては、Oリングや細かい凹凸からなる環状リングや断面が略四角形状からなるシールリング等も一般に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−243990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述したOリング、細かい凹凸からなる環状リング等のシールリングは、回転軸や軸受部に密着する密着面(外周面及び内周面)の柔軟性が低いため、回転軸や軸受部に強固に密着し易い。そのため、回転軸が回転しにくくなり、大きな浮力を得るためにフロートの体積が大きなものとなっていた。またVリングにあっては、V字状の凹んだ両側の気密片箇所による密着で液密性が保たれるが、リング自体が柔らかくなりすぎる嫌いがあり、経年変化により先端部分が傷みやすいという問題を抱えている。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、シール性を確保しつつ、回転軸をスムーズに回転させることができるシールリング、及びこのシールリングを備えた液面検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係るシールリングは、上面、下面、外周面、及び内周面に溝が形成され、四隅にシール部が設けられた断面が略X字状であることを特徴とする。
【0008】
また、上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係るシールリングは、上面、下面、外周面、及び内周面に溝が形成された、断面が略X字状のシールリングであり、前記上面及び前記下面の少なくとも1つの面に形成された溝の深さは、前記外周面、及び前記内周面に形成された溝の深さよりも深いことを特徴とする。
【0009】
また、上記目的を達成するため、本発明の第3の観点に係るシールリングは、上面、下面、外周面、及び内周面に溝が形成された、断面が略X字状のシールリングであり、前記外周面及び前記内周面の少なくとも1つの面に形成された溝の深さは、前記上面、及び前記下面に形成された溝の深さよりも深いことを特徴とする。
【0010】
また、上記目的を達成するため、本発明の第4の観点に係るシールリングは、断面が略四角形状のシールリングに、上面、下面、外周面、及び内周面の少なくとも一部の複数の面に溝が形成されたシールリングであり、前記複数の面のうちの一部の面に形成された溝の深さは、他の面に形成された溝の深さよりも深いことを特徴とする。
【0011】
また、上記目的を達成するため、本発明の第5の観点に係る液面検出装置は、液位の計測対象である液体から浮力を受け、液体中に浮くフロートと、前記フロートが一端に取り付けられたフロートアームと、回転軸が形成され、前記フロートアームの他端を保持するアームホルダと、軸受部が形成され、前記アームホルダの前記回転軸が前記軸受部に挿通されることで前記アームホルダを回転可能に支持する装置本体と、前記回転軸と前記軸受部との間に介在し、軸方向の前記液体の侵入を防止するシールリングとを備え、前記シールリングは、断面が略四角形状で、上面、下面、外周面、及び内周面の少なくとも一部の複数の面に溝が形成されており、前記複数の面のうちの一部の面に形成された溝の深さは、他の面に形成された溝の深さよりも深いことを特徴とする。
【0012】
また、上記目的を達成するため、本発明の第6の観点に係る液面検出装置は、液位の計測対象である液体から浮力を受け、液体中に浮くフロートと、前記フロートが一端に取り付けられたフロートアームと、回転軸が形成され、フロートアームの他端を保持するアームホルダと、軸受部が形成され、前記アームホルダの前記回転軸が前記軸受部に挿通されることで前記アームホルダを回動可能に支持する装置本体と、前記アームホルダに取り付けられてアームホルダと一体で回転する摺動端子ホルダと、前記摺動端子ホルダに設けられ、フロートアームの変位に伴って抵抗体が設けられた回路基板上を摺動する摺動端子と、前記回転軸と前記軸受部との間に設けられた収納部内に介在し、軸方向の前記液体の侵入を防止するシールリングとを備え、前記シールリングは、上面、下面、外周面、及び内周面に溝が形成され、四隅にシール部を設けた断面が略X字状からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、シール性を確保しつつ、回転軸をスムーズに回転させることができるシールリング、及びこのシールリングを備えた液面検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る液面検出装置の分解斜視図。
【図2】本発明の実施形態に係る液面検出装置を示した斜視図。
【図3】図2中の矢視III−IIIで示した液面検出装置の下面図。
【図4】図3中の矢視IV−IVで示した液面検出装置の断面図。
【図5】本発明の実施形態に係るシールリングを示した図であり、(a)はシールリングの断面図、(b)は液面検出装置に装着されたシールリングに着目した断面図。
【図6】本発明の実施形態に係る液面検出装置に用いられるシールリングを示した断面図((a)〜(c))。
【図7】本発明の実施形態に係る液面検出装置に用いられるシールリングを示した断面図((a)〜(b))。
【図8】本発明の実施形態に係る液面検出装置に用いられるシールリングを示した断面図((a)〜(c))。
【図9】図6(a)に示したシールリングを液面検出装置に装着した状態を表わした断面図((a)、(b))。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係るシールリング、及びシールリングを備えた液面検出装置を図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る液面検出装置1の分解斜視図、図2は、本発明の実施形態に係る液面検出装置1を示した斜視図、図3は図2中の矢視III−IIIで示した液面検出装置1の下面図である。
【0017】
図1、図2に示すように、本発明の実施形態に係る液面検出装置1は、フロート10と、一端にフロート10が取り付けられたフロートアーム11と、フロートアーム11の他端を保持するアームホルダ12と、アームホルダ12を回動可能に支持する装置本体13と、アームホルダ12に取り付けられてアームホルダ12と一体で回転する摺動端子ホルダ14とを有している。
【0018】
フロート10は、例えば合成樹脂から形成され、液位の計測対象である液体から浮力を受け、液体中に浮く。フロート10は略俵型に形成されることで、液体中に安定した状態で浮かぶことができる。
【0019】
フロートアーム11は、例えば金属製のワイヤからなり、フロート10とアームホルダ12との間に介在し両者を接続する。アームホルダ12を金属製のワイヤから形成されることで、フロート10の変動を確実にフロートアーム11に伝達することができる。
【0020】
アームホルダ12は、例えば合成樹脂から形成され、フロートアーム11の一端を保持している。アームホルダ12には、図1中の下方に向けて突出した回転軸15が形成されている。この回転軸15は、装置本体13に形成された軸受部16に挿通されている。これにより、アームホルダ12は装置本体13に回転可能に支持され、アームホルダ12はフロート10の変動により回転軸15を中心に回転する。
【0021】
装置本体13は、例えば合成樹脂から形成され、その内部に摺動端子ホルダ14や回路基板23(図3)等を収容する。装置本体13は、アームホルダ12の回転軸15を回転可能に支持する円筒状の軸受部16を有している。アームホルダ12の回転軸15は、液密性を確保するためのシールリング30が取り付けられた状態で、軸受部16に挿通されている。すなわち、回転軸15は、シールリング30が装置本体13の軸受部16と回転軸15との間の収納部S(図4)に介在した状態で、軸受部16に回転可能に支持されている。このシールリング30は、例えばフッ素系ゴム材からなり、その外径は軸受部16の内径に比べやや小さい。そのため、シールリング30は、回転軸15及び軸受部16に圧縮された状態で回転軸15と軸受部16との間に設けられた収納部S内に介在する。
【0022】
また、図2に示すように、装置本体13の図中上面には円弧状の回転制限突起17が形成されている。回転制限突起17には、その延設(円周)方向に沿って回転制限孔17aが形成されている。フロートアーム11が、この回転制限孔17aに挿入された状態で回転軸15を中心に回転するため、フロートアーム11(あるいはフロート10)の回転は所定の範囲内に制限される。
【0023】
摺動端子ホルダ14は、取付孔14aが回転軸15の先端に形成された突起18に嵌合された状態で、装置本体13内部に収容されている。なお、摺動端子ホルダ14の取付孔14aの近傍は、アームホルダ12の突起18に別途溶着されている。そのため、摺動端子ホルダ14は、アームホルダ12の回転に伴い回転軸15を中心に回転する。摺動端子ホルダ14には、摺動子20が取り付けられ、この摺動子20は櫛歯状の第1の摺動端子21と第2の摺動端子22とを有している。これらの摺動端子21、22は、回路基板23(図3)に形成された電源供給側(+側)となる第1の電極24と、アース側となる第2の電極25上とにそれぞれ摺動するように配置されている。
【0024】
回路基板23は、図3に示すように、装置本体13の内部に収容されている。回路基板23上には、第1の電極24に接続された抵抗体26が形成されており、また、第1の電極24と第2の電極25とは分離して形成されている。抵抗体26は、例えば酸化ルテニウムから形成されている。また、第1及び第2の電極24、25は、例えば銀パラジウム合金から形成されている。第1及び第2の電極24、25には、摺動端子ホルダ14に取り付けられた摺動子20の第1及び第2の摺動端子21、22のうちの1つずつが摺動するように設けられている。すなわち、第1の電極24は、第1の摺動端子21が摺動する摺動路に沿って形成され、第2の電極25は、第2の摺動端子22が摺動する摺動路に沿って形成されている。
【0025】
摺動子20に二股状に設けられた摺動端子21、22のうち、第1の摺動端子21は第1の電極24上を摺動し、第2の摺動端子22は第2の電極25上を摺動する。そして、第1及び第2の電極24、25に電圧が印加された状態で、第1及び第2の摺動端子21、22が第1及び第2の電極24、25上を摺動すると、電流の経路(抵抗体26を通る経路)が第1及び第2の摺動端子21、22の位置によって変化する。このため、電流が流れる経路上にある抵抗体26の抵抗値に応じた電気信号が外部出力端子27に接続された配線コード19を介して外部回路(不図示)に出力される。これにより、第1及び第2の摺動端子21、22の位置、すなわち第1及び第2の摺動端子21、22が連動するフロート10の位置が検出され、液面位置が検出される。
【0026】
次に、アームホルダ12の回転軸15と装置本体13の軸受部16との間に介在するシールリング30について詳細に説明する。図4は、図3中の矢視IV−IVで示した液面検出装置1の断面図、図5乃至8は、本発明の実施形態に係る液面検出装置1に用いられるシールリング30を示した断面図である。また、図9は、図6(a)に示したシールリングを液面検出装置に装着した状態を表わした断面図である。
【0027】
図4に示すように、シールリング30はアームホルダ12の回転軸15と装置本体13の軸受部16との間に設けられた収納部S内に収納されている。このシールリング30は、図5(a)に示すシールリング30と同一のものである。なお、図5(a)に示すシールリング30を説明するにあたり、シールリング30の外面は4つの面により構成されているものとする。すなわち、上面31、下面32、外周面33、及び内周面34によりシールリング30の外面が構成されている。なお、上面31及び下面32とは、図4に示したシールリング30の上側の面、及び下側の面に相当する。
【0028】
図5(a)(b)に示すシールリング30は、上面31、下面32、外周面33、及び内周面34に溝が形成された、断面が略X字状のシールリング30である。シールリング30の各面31,32,33,34に形成された溝35の深さはほぼ同じ深さである。シーリング30は、四隅にシール部30A(回転軸15及び軸受部16に密着する部分)が設けられ、断面が略X字状に形成されている。図5(b)は、シールリング30が回転軸15と軸受部16との間に介在している様子を示している。なお、2点鎖線は、無応力状態時(シールリング30に圧縮力等の力が作用していない時)におけるシールリング30の形状を表わしている。
【0029】
前述したように、回転軸15と軸受部16とにより形成される隙間からなる収納部Sは、無応力状態時におけるシールリング30の断面寸法に比べてやや小さい。そのため、図5(b)に示すように、シールリング30は、回転軸15と軸受部16との隙間からなる収納部S内に圧縮された状態で介在する。これにより、断面が略X字状からなるシールリング30と回転軸15、及びシールリング30と軸受部16が十分に密着し、液体や異物の侵入を防止することが可能となる。この場合、断面が略X字状からなる四隅のシール部30Aが収納部Sのコーナーに密に圧接されたとしても、溝部35によって作用する応力を吸収(変形代を設定)することができシール性を確保することができるものである。さらに、四隅のコーナー箇所のみが押圧されるようにシール部30Aが設けられるため、回転軸15との摩擦を軽減することができ、フロートアーム11をスムーズに回転させることができる。
【0030】
図6(a)は他の実施例を示したシールリング30であり、上面31、下面32、外周面33、及び内周面34に溝が形成された、断面が略X字状のシールリング30である。なお、以降に説明するシールリング30も上述のシールリングと共通する点が多いため、同様の部位には同一の符号を付している。シールリング30の上面31及び下面32に形成された溝35の深さは、外周面33及び内周面34に形成された溝の深さよりも深くなっている。なお、上面31及び下面32に形成された溝35の断面形状は、図に示すようにシールリング30の中心線CLに対して線対称であり、溝35の最深位置35aは外周面33よりも内周面34側に近い。図9(a)は、図6(a)に示すシールリング30が回転軸15と軸受部16との間に設けられた収納部Sに介在している様子を示している。なお、2点鎖線は、無応力状態時(シールリング30に圧縮力等の力が作用していない時)におけるシールリング30の形状を表わしている。
【0031】
前述したように、回転軸15と軸受部16とにより形成される隙間からなる収納部Sは、シールリング30の断面寸法に比べてやや小さい。そのため、図9(a)に示すように、シールリング30は、回転軸15と軸受部16との隙間に圧縮された状態で介在する。これにより、シールリング30と回転軸15、及びシールリング30と軸受部16が十分に密着し、液体や異物の侵入を防止することが可能となる。
【0032】
なお、シールリング30の上面31及び下面32には深さの深い溝35が形成されているため、この溝35による空洞部36が回転軸15と軸受部16との隙間からなる収納部S内に形成される。このように空洞部36が回転軸15と軸受部16との間からなる収納部S内に形成されることで、図9(b)に示すように、回転軸15との密着面であるシールリング30の内周面34側の部位(シール部30A)を回転軸15側から押圧すると、シール部30Aは空洞部36に向けて(図中矢印)比較的容易に変形する(図9(b)の2点鎖線で示した形状から実線で示した形状へ変形する。図では、内周面34側のシール部30Aの2箇所を変形させた状態を示している。)。このように、シールリング30の変形を可能とする空洞部36を形成することにより、次のような効果を奏する。
【0033】
アームホルダ12の回転軸15は、装置本体13の軸受部16に回転可能に支持されている。そして、フロート10の変動に伴うアームホルダ12の回転により、回転軸15には不可避的に回転軸15の軸方向に直交する力が作用する。このような力が回転軸15に作用すると、回転軸15はシールリング30(内周面34)を押圧することとなる。なお、回転軸15と軸受部16との間からなる収納部S内には、シールリング30の上面31、及び下面32に形成された溝35により空洞部36が形成されるため、回転軸15に押圧されたシールリング30の部位(シール部30A)は、空洞部36に向けて変形する。そのため、回転軸15が軸方向と直交する方向にシールリング30を押圧することとなっても、回転軸15とシールリング30との密着の程度(あるいは、軸受部16とシールリング30との密着の程度)は大きく変化することがなく、回転軸15が回転しづらくなるという不具合を抑制することができる。なお、本実施例に係るシールリング30は、溝35を形成することにより内周面34側の部位を変形しやすくしている。そのため、回転軸15の軸方向と直交する方向に力が作用していない場合においても四隅に設けたシール部30Aによって気密を充分に保つことができると同時に、シールリング30の当該部位(シール部30A)と回転軸15との密着力が低減されているため、回転軸15が回転しやすくなっている。
【0034】
また、シールリング30は、弾力性に富むフッ素系ゴム材等から形成されているため、シールリング30の一部(シール部30Aを含む)が空洞部36に向けて変形したとしても、シールリング30と回転軸15との密着、及びシールリング30と軸受部16との密着は保持されることとなる。これにより、シールリング30のシール機能を確実に確保することができる。
【0035】
また、本実施形態におけるシールリング30では、図6(a)に示すように、溝35の最深位置35aを内周面34側に設けている。これにより内周面34側の部位を変形しやすくすることができる。これにより、回転軸15がシールリング30を押圧する力はシールリング30の変形により吸収され、回転軸15とシールリング30とが強く密着することを抑制することができる。
【0036】
また、深い溝35を上面31及び下面32に形成したため、シールリングの製造時に金型の脱型が容易になる。これに対し、外周面33あるいは内周面34に深い溝を形成した場合、金型の脱型が困難であり、シールリングを傷つける恐れがある。
【0037】
このように、上述した実施形態に係るシールリング30は、上面31及び下面32に、外周面33及び内周面34よりも深い溝35を形成するとともに、溝35の最深位置35aを内周面34側に近い位置させた点に特徴がある。
【0038】
図6(b)に示すシールリング30は、図6(a)に示すシールリング30と同様、上面31及び下面32に、外周面33及び内周面34よりも深い溝35が形成されている。ただし、これらの溝35の最深位置35aが外周面33に近い位置にある点が図6(a)に示すシールリング30と異なっている。このように、上面31及び下面32に形成された溝35の最深位置35aが外周面33に近い位置にあることにより、外周面33の部位が押圧されると、押圧された部位(シール部30A)は溝35側(図中の矢印の方向)へ容易に変形する。当然ながら内周面34側の部位(シール部30A)が押圧されても、押圧された部位(シール部30A)は溝35側へ変形するが、外周面33側の部位(シール部30A)の方が変形しやすい。
【0039】
これにより、回転軸15に不可避的に回転軸15の軸方向に直交する力が作用し、回転軸15がシールリング30を押圧することとなっても、軸受部16への押圧によりシールリング30の外周面33側の部位(シール部30A)が空洞部36に向けて変形する。そのため、回転軸15とシールリング30との密着の程度は大きく変化することなく、回転軸15が回転に支障を生じさせることがない。
【0040】
図6(c)に示すシールリング30は、外周面33に溝35が形成されておらず、断面が略Kの字状である点が図6(a)に示すシールリング30と異なっている。このシールリング30では、外周面33側の部位(シール部30A)が押圧されても、押圧された部位(シール部30A)は溝35側に変形しにくい。しかしながら、内周面34側の部位(シール部30A)は溝35側に変形しやすいため、回転軸15の回転をスムーズにすることが可能となる。なお、本実施例のシールリング30は、外周面33を平坦にしているため、製造が容易であるため製造コストを抑制することが可能である。
【0041】
図7(a)に示すシールリング30は、図6に示したシールリング30と同様、上面31及び下面32に、外周面33及び内周面34よりも深い溝35が形成されている。但し、これらの溝35の最深位置35aは外周面33と内周面34との中間に位置しており、この点が、図6に示したシールリング30の構成と異なっている。このように、上面31及び下面32に形成された最深位置35aを外周面33と内周面34との中間に位置させることにより、外周面33側の部位(シール部30A)及び内周面34側の部位(シール部30A)が外側から押圧されると、押圧された部位(シール部30A)は溝35側(図中の矢印の方向)へ変形する。なお、外周面33側の部位(シール部30A)及び内周面34側の部位(シール部30A)の溝35側への変形のしやすさは同程度である。
【0042】
シールリング30をこのような構成とすることにより奏する効果は上述したシールリング30と同様である。但し、図7(a)に示すシールリング30は、回転軸15及び軸受部16がシールリング30を押圧することとなっても、内周面34側の部位(シール部30A)及び外周面33側の部位(シール部30A)の双方が溝35側へ変形する。
【0043】
図7(b)に示すシールリング30は、図7(a)に示すシールリング30と同様、上面31に設けられた溝35の最深位置35aが、外周面33及び内周面34との中間に位置している。但し、深い溝35が設けられている面は、上面31のみであり下面32には設けられていない点が図7(a)に示すシールリング30と異なっている。このため、外周面33側の部位(シール部30A)及び内周面34側の部位(シール部30A)が押圧されると、それぞれが溝35側(図中の矢印の方向)へ変形するが、変形する部位(シール部30A)は溝35が形成された上面31近傍の部位に限定される。
【0044】
図8(a)に示すシールリング30は、外周面33及び内周面34に形成された溝35の深さが、上面31及び下面32に形成された溝の深さよりも深くなっている点が、図6、7等のシールリング30と異なっている。これにより、シールリング30は、図中の矢印で示すように、外周面33及び内周面34に形成された溝35が拡がる方向に変形しやすい。そのため、シールリング30の外周面33側の部位(シール部30A)、及び内周面34側の部位(シール部30A)が外側から押圧されても、シールリング30は溝35が拡がるように変形し、回転軸15(図4)とシールリング30との密着、及び軸受部16(図4)とシールリング30との密着の程度は大きく変化することはない。
【0045】
図8(b)に示すシールリング30は、深さの深い溝35が外周面33のみに形成されている点が、図8(a)に示すシールリング30と異なっている。一方、図8(c)に示すシールリング30は、深さの深い溝35が内周面34のみに形成されている。これらのシールリング30も、図8(a)に示したシールリング30と同様に、シールリング30は溝35を拡げるような変形を生じやすく、シールリング30の密着面における密着の程度を大きく変化させることがない。
【0046】
本発明は上述した実施形態に限られず、様々な応用、変形が可能である。例えば、図6(a)、(b)に示すシールリング30は、上面31及び下面32のそれぞれに深さの深い溝35を設けたが、上面31あるいは下面32の一方の面のみに深さの深い溝35を形成する構成としても良い。また、外周面33あるいは内周面34の一方の面を平坦にした構成としてもよい。上述した様々なシールリング30の一部の態様の組み合わせは複数考えられるが、シールリング30を用いる装置等の種々の条件を勘案して、最適のシールリング30の構成とすることができる。
【0047】
また、シールリング30を液面検出装置1に用いる場合を例に説明したが、液密性を確保すべき種々の装置の回転軸と軸受部との間に装着させることも可能である。
【0048】
また、上述のシールリング30は、小径の回転軸15と、大径の軸受部16との間からなる収納部Sに介在させた場合について説明した。しかしながら、これらの大小関係が逆である場合、例えば、回転する部材を大径とし、回転可能に支持する部材を小径とした装置等にも装着することが可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 液面検出装置
10 フロート
11 フロートアーム
12 アームホルダ
13 装置本体
14 摺動端子ホルダ
14a 取付孔
15 回転軸
16 軸受部
23 回路基板
30 シールリング
30A シール部
31 上面
32 下面
33 外周面
34 内周面
35 溝
35a 最深位置
36 空洞部
S 収納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面、下面、外周面、及び内周面に溝が形成され、四隅にシール部が設けられた断面が略X字状であることを特徴とするシールリング。
【請求項2】
上面、下面、外周面、及び内周面に溝が形成された、断面が略X字状のシールリングであり、
前記上面及び前記下面の少なくとも1つの面に形成された溝の深さは、前記外周面、及び前記内周面に形成された溝の深さよりも深いことを特徴とするシールリング。
【請求項3】
前記上面及び前記下面の少なくとも1つの面に形成された前記溝の断面において、該溝の最深位置が、前記外周面よりも前記内周面に近いことを特徴とする請求項2に記載のシールリング。
【請求項4】
前記上面及び前記下面の少なくとも1つの面に形成された前記溝の断面において、該溝の最深位置が、前記内周面よりも前記外周面に近いことを特徴とする請求項2に記載のシールリング。
【請求項5】
前記上面及び前記下面の少なくとも1つの面に形成された前記溝の断面において、該溝の最深位置が、前記内周面と前記外周面との中間にあることを特徴とする請求項2に記載のシールリング。
【請求項6】
前記上面及び前記下面に形成された溝の断面形状は、前記上面と前記下面との間に設定した前記シールリングの中心線に対して線対称であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシールリング。
【請求項7】
上面、下面、外周面、及び内周面に溝が形成された、断面が略X字状のシールリングであり、
前記外周面及び前記内周面の少なくとも1つの面に形成された溝の深さは、前記上面、及び前記下面に形成された溝の深さよりも深いことを特徴とするシールリング。
【請求項8】
断面が略四角形状のシールリングに、上面、下面、外周面、及び内周面の少なくとも一部の複数の面に溝が形成されたシールリングであり、
前記複数の面のうちの一部の面に形成された溝の深さは、他の面に形成された溝の深さよりも深いことを特徴とするシールリング。
【請求項9】
液位の計測対象である液体から浮力を受け、液体中に浮くフロートと、
前記フロートが一端に取り付けられたフロートアームと、
回転軸が形成され、前記フロートアームの他端を保持するアームホルダと、
軸受部が形成され、前記アームホルダの前記回転軸が前記軸受部に挿通されることで前記アームホルダを回転可能に支持する装置本体と、
前記回転軸と前記軸受部との間に介在し、軸方向の前記液体の侵入を防止するシールリングとを備え、
前記シールリングは、断面が略四角形状で、上面、下面、外周面、及び内周面の少なくとも一部の複数の面に溝が形成されており、前記複数の面のうちの一部の面に形成された溝の深さは、他の面に形成された溝の深さよりも深いことを特徴とする液面検出装置。
【請求項10】
液位の計測対象である液体から浮力を受け、液体中に浮くフロートと、
前記フロートが一端に取り付けられたフロートアームと、
回転軸が形成され、フロートアームの他端を保持するアームホルダと、
軸受部が形成され、前記アームホルダの前記回転軸が前記軸受部に挿通されることで前記アームホルダを回動可能に支持する装置本体と、
前記アームホルダに取り付けられてアームホルダと一体で回転する摺動端子ホルダと、
前記摺動端子ホルダに設けられ、フロートアームの変位に伴って抵抗体が設けられた回路基板上を摺動する摺動端子と、
前記回転軸と前記軸受部との間に設けられた収納部内に介在し、軸方向の前記液体の侵入を防止するシールリングとを備え、
前記シールリングは、上面、下面、外周面、及び内周面に溝が形成され、四隅にシール部を設けた断面が略X字状からなることを特徴とする液面検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−159138(P2012−159138A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19285(P2011−19285)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】