説明

シール

【課題】前述の低温用途のためのラジアル軸シールリングを、費用対効果をより高めて製造することができるように開発する。
【解決手段】環状のシールエレメント(3)が固定された支持体(2)を備え、シールエレメント(3)が、静的シールを形成しており且つ自由端(4)を有するように支持体(2)に固定されているシール(1)において、シール体(5)が自由端(4)に配置されており、前記シール体から動的シールエッジ(6)が形成されており、シール体(5)が、シールエレメント(3)とは異なる材料から形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状のシールエレメントが固定された支持体を含み、シールエレメントが、静的シールを形成し且つ自由端を有するように支持体に固定されているシールに関する。
【背景技術】
【0002】
このようなシールは、国際公開第2008/009317号パンフレットより公知である。従来公知のシールは、L字形の支持リングを有しており、この支持リングにPTFEの環状のシールエレメントが固定されており、シールエレメントは、端面において支持リングを包囲し、外側において静的シールを形成し、内側において、動的シールを形成する突出した自由端を有するように、支持リングに固定されている。このシールエレメントの自由端は、PTFE材料の復元力により半径方向に予張力を生じながら、シールされる材料に隣接している。
【0003】
低温において、すなわち氷点よりも遙かに低い温度における利用分野のための機械要素のために使用されるラジアル軸シールリングには、低温用途に適したエラストマから形成されたシールリップが装備されている。使用されるエラストマのガラス転位温度よりも低い使用温度は、材料の脆化、ひいては、シールリップの不十分な封止効果を生じる。例えば、特殊フッ化ゴムは、低い使用温度のために知られているエラストマ材料グループである。これらの特殊フッ化ゴムは、一般に認められるところでは、通常のフッ化ゴムよりも低いガラス転位温度を有するが、極めて高価である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008/009317号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の基礎となる課題は、前述の低温用途のためのラジアル軸シールリングを、費用対効果をより高めて製造することができるように開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は請求項1の特徴により解決される。従属請求項は有利な実施形態に関する。
【0007】
この課題を解決するために、動的シールエッジが形成されたシール体は自由端に配置されており、シール体は、シールエレメントとは異なる材料から形成されている。シールエレメントは、内側において支持体から突出し且つ自由端を形成するように、支持体に固定されている。この自由端は可動であり、これにより、シール体は、ばね取り付けされた形式でシールエレメントに固定されている。シール体が比較的小さな体積を有することは特に有利であり、これにより、シール体に対する材料要求は小さい。したがって、仕様が、特に封止される機械要素に隣接する動的シール体が、調達コストの高いエラストマから形成されることを要求するとしても、材料コストを低減することができる。
【0008】
シールエレメントはPTFEから形成されてもよい。PTFEは広い温度範囲において使用されることができる。PTFEは約70℃のガラス転移温度を有する。これは、材料がこの温度よりも低い場合にのみ脆くなることを意味する。しかしながら、概して、PTFEはフッ化ゴム(FKM,FPM,FFKM)等のエラストマシール材料と比較してより劣った弾性特性を有する。したがって、PTFEは、全ての場合に動的シールとして機能することができない。シールリップの弾性特性がより要求されるような場合には、本発明によれば、PTFEから形成されたシールエレメントの自由端に、エラストマ材料から形成されたシール体を設けることが提供される。PTFEの別の利点は高い耐薬品性である。
【0009】
シール体は、フッ化ゴムから形成されてもよい。フッ化ゴムは、高い耐薬品性と、広い温度適用範囲とを有するエラストマである。さらに、フッ化ゴムは、有利な劣化特性を有する。特殊フッ化ゴム化合物は、特に有利な耐寒性を示す。このような化合物から形成されたシールは−40℃まで使用されることができる。しかしながら、このような化合物は極めて高価であり、本発明の効果は、これらの化合物を用いることにより特に有利に現れる。
【0010】
外周において、シール体は、ばね体が配置される凹部を有していてもよい。PTFEのシールエレメント、管状の半完成品から製造されたワッシャは、既にそれ自体によって復元力を生じ、これは、封止される機械要素に対して半径方向にシール体の押圧を生じる。低温では、シャフトの案内精度に応じて、この復元力が十分ではない虞があり、これにより、シール体の所要の接触圧をシールエレメントのみによって保証することはできない。ばね体、例えば環状のコイルばねは、シール体の接触圧を増大し、低温における接触圧を維持する。
【0011】
シールエレメントには、少なくとも片側において塗膜が設けられてもよい。シールエレメントはこれにより、片側又は両側における塗膜の提供により、攻撃性の媒体による攻撃から保護される。
【0012】
シール体及び塗膜は、同じ材料から、一体に形成されるように設計されてもよい。これによりシールエレメントと塗膜との間の結合領域は増大され、したがって、シールエレメントとシール体との間の結合が、材料の要求の増大を最小限にしながら改良される。
【0013】
シールエレメントは、支持体の端面を被覆してもよい。その結果、支持体は、攻撃性の媒体による攻撃から保護される。支持体の別個の処理、例えば塗膜は、省略されることができる。しかしながら、シールエレメントと支持体との間の結合を改良するために、例えばプラズマ処理によって支持体を予め処理してもよい。
【0014】
シール体にはダストリップが設けられてもよい。ダストリップは、より粗い汚染から実際の動的シールリップを保護する。
【0015】
支持体はL字形に設計されてもよい。このような支持体は、スタンピングによって特に容易に製造されてもよく、シート状金属ストリップからの切り取りがなくてもよい。
【0016】
本発明に係るシールの実施形態の複数の例を、図面を参照しながら以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】シール体にばね体が設けられたシールを示す。
【図2】シールエレメントの片側に塗膜が設けられたシールを示す。
【図3】ばね体が設けられていないシールを示す。
【図4】シール体がダストリップを有するシールを示す。
【図5】PTFEに薄い弾性塗膜を備えたシールを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面は、−40℃までの低温用途のための有利な低温作動特性を備えたシール1を示している。シール1は、金属スタンピングとして形成されたL字形の支持体2を備えており、この支持体にはPTFEの環状のシールエレメント3が固定されている。シールエレメント3は、支持体2の端面10を包囲しており、外側において静的シールを形成し、内側において支持体から突出した自由端4を有するように、端面10を包囲している。環状のシール体5は、しっかりとした接合で自由端4に配置されており、半径方向に可動であり、動的シールエッジ6が上記シール体から形成されている。シール体5は、フッ化ゴム化合物(FKM,FPM,FFKM)から形成されており、ひいてはシールエレメント3とは異なる材料から形成されている。シール体5は、PTFEから形成されたシールエレメント3の復元力により弾性予張力を生じながら封止形式で、封止される機械要素12に隣接している。
【0019】
図1はシール1を示しており、シール1のシール体5は、外周部において凹部7を有しており、この凹部7にはばね体8、すなわち金属材料から形成された環状のコイルばねが配置されており、このばね体8は、封止される機械要素12に対するシール体5の接触圧を増大し、低温においても接触圧を維持する。
【0020】
図2はシール1を示しており、シール1のシール体5は、外周部において凹部7を有しており、この凹部7にはばね体8、すなわち金属材料から形成された環状のコイルばねが配置されており、このばね体8は、封止される機械要素12に対するシール体5の接触圧を増大し、低温においても接触圧を維持する。さらに、シールエレメント3には、一方の側、すなわちシールされる媒体に面した側において、塗膜9が設けられている。塗膜9は、シール体5と同じ材料から形成され、且つ一体に形成されている。
【0021】
図3はシール1を示しており、シールエレメント3と、シールエレメント3に属する自由端4とは、封止される機械要素に対するシール体5の半径方向押圧が十分であり、付加的なばね体が必要とされないように、設計されている。
【0022】
図4は、図1によるシールを示しており、この実施形態におけるシール体5には付加的にダストリップ11が設けられている。
【0023】
図5はシール1を示しており、シールエレメント3には、自由端において、エラストマ材料から形成された、特にフッ化ゴム化合物から形成された塗膜9が設けられている。塗膜9はシール体5を形成している。この実施形態の利点は、エラストマ材料の材料要求が最小限であるということである。
【符号の説明】
【0024】
1 シール、 2 支持体、 3 シールエレメント、 4 自由端、 5 シール体、 6 シールエッジ、 7 凹部、 8 ばね体、 9 塗膜、 10 端面、 11 ダストリップ、 12 機械要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のシールエレメント(3)が固定された支持体(2)を備え、シールエレメント(3)が、静的シールを形成しており且つ自由端(4)を有するように支持体(2)に固定されているシール(1)において、シール体(5)が自由端(4)に配置されており、前記シール体から動的シールエッジ(6)が形成されており、シール体(5)が、シールエレメント(3)とは異なる材料から形成されていることを特徴とするシール。
【請求項2】
シールエレメント(3)がPTFEから形成されていることを特徴とする請求項1記載のシール。
【請求項3】
シール体(5)がフッ化ゴムから形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のシール。
【請求項4】
シール体(5)が、外周において凹部(7)を有しており、該凹部にばね体(8)が配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシール。
【請求項5】
シールエレメント(3)の少なくとも片側に塗膜(9)が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシール。
【請求項6】
シール体(5)及び塗膜(9)が、同じ材料から形成され、且つ一体に形成されていることを特徴とする請求項5記載のシール。
【請求項7】
シールエレメント(3)が、支持体(2)の端面(10)を被覆していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシール。
【請求項8】
シール体(5)にダストリップ(11)が設けられていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のシール。
【請求項9】
支持体(2)がL字形に設計されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のシール。
【請求項10】
シール体(5)が塗膜(9)から形成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のシール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−169264(P2010−169264A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10016(P2010−10016)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(501479868)カール・フロイデンベルク・カーゲー (73)
【氏名又は名称原語表記】Carl Freudenberg KG
【住所又は居所原語表記】Hoehnerweg 2−4, D−69469 Weinheim, Germany
【Fターム(参考)】