説明

ジアシルグリセロールの製造法

【課題】短時間に高収率で高純度のジアシルグリセロールを製造する方法の提供。
【解決手段】トリアシルグリセロールを水および酵素と反応させて、ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロールおよび遊離脂肪酸を含む混合物を得、脱水により混合物中の水分を除去し、モノアシルグリセロール、遊離脂肪酸および残存するトリアシルグリセロールを少なくとも1つの分離法により分離して、高純度のジアシルグリセロールを得る。前記方法から得られるジアシルグリセロールに、フィトステリルエステルおよび/またはフェルラ酸エステルをジアシルグリセロールに対して0.5重量%〜25重量%の割合で含む油脂組成物も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はジアシルグリセロールの製造に関する。さらに詳細には、本発明は高純度のジアシルグリセロールを短期間において高収率で製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジアシルグリセロールは、例えば油脂、および食品産業における食用油の可塑性を向上させるための添加剤、ならびに化粧品および医薬品の製造用原料物質などとして、様々な用途に広く用いられている。一般に、このようなジアシルグリセロールの調製法には、アルカリ触媒あるいはリパーゼなどの酵素その他を使用したグリセロールとその対応する脂肪酸とのエステル化反応、グリセロールと油脂とのアルコール交換反応などが含まれるが、合成されるジアシルグリセロールの収量・純度および省エネルギーの観点から、酵素触媒の使用が好ましい。
【0003】
特許文献1には、リパーゼにより触媒される反応プロセスであって、1,3−位選択的リパーゼの存在下、反応により生成された水を系外に除去しながら脂肪酸などをグリセロールと反応させて、高収率および高純度でジアシルグリセロールを得るプロセスが記載されている。このプロセスの欠点は、工業レベルでの製造条件を吟味できないことである。
【0004】
特許文献2には、脂肪酸に対して等モル量以上のグリセロールを添加して反応させる方法であって、ジアシルグリセロールの濃度が上昇したら反応を停止させ、不溶性グリセロールを分離し、脱水しながらさらに反応させることにより、脱水効率を向上させて高いエステル化反応速度でジアシルグリセロールを合成する方法が記載されている。この方法は、ジグリセリドの濃度がピークに達した時に反応を停止する必要があるなどの技術的困難を有する。
【0005】
特許文献3には、脂肪酸などとグリセロールなどの混合物を、リパーゼで満たされたフローチューブ型リアクター中で、リアクター中の混合物のみかけの速度を少なくとも0.05cm/秒に制御しつつ反応させる方法が記載されている。この手法は操作が容易であり、反応速度をある程度向上させることができるが、結果として得られるジグリセリドの純度および工業的スケールアップ技術に関しては不十分である。
【0006】
特許文献4には、固定化リパーゼ調製物を充填した酵素充填塔を用いたジアシルグリセロールの調製方法であって、(1)脂肪酸、その低級アルコールエステル、およびそれらの混合物からなる群から選択されるアシル基ドナーと、(2)グリセロール、モノアシルグリセロール、およびそれらの混合物からなる群から選択されるアシル基アクセプターと、の間のエステル化反応を行って酵素充填塔から反応液を得、反応液中の水分含量または低級アルコール含量を低下させ、その後に反応液を酵素充填塔に再循環させる(ここで、酵素充填塔における反応流体の滞留時間は120秒以下である)方法が記載されている。この方法における反応液の減量工程は、スプレーノズルを通して反応液を供給することにより反応液を脱水または脱アルコールすることを含む。しかしながら、この方法は高価な精製脂肪酸を原料として使用することを必要とするので、コスト上の問題を有する。
【特許文献1】日本国特許出願番号71495/1989明細書
【特許文献2】日本国特許出願番号330289/1992明細書
【特許文献3】日本国特許出願番号234391/1998明細書
【特許文献4】米国特許第6,361,980号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記事項を考慮すると、高純度のジアシルグリセロールを工業的レベルで短時間に高収率で製造する方法を提供することは有利であると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、短時間で高純度のジアシルグリセロールを高収率で製造するが提供され、この方法は、
トリアシルグリセロールを水および酵素と反応させて、ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロールおよび遊離脂肪酸の混合物を得ること、
脱水により混合物中の水分を除去すること、
前記モノアシルグリセロール、遊離脂肪酸および残存するトリアシルグリセロールを1つ以上の分離法により分離して、高純度のジアシルグリセロールを得ること、を含む。
【0009】
本発明によれば、高純度のジアシルグリセロールを短時間に高収率で製造することができる。
【0010】
本発明のもう一つの態様によれば、本発明において製造されるジアシルグリセロールと、フィトステリルエステルおよび/またはフェルラ酸エステルとを含む油脂組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下の本発明の好ましい具体例の詳細な説明により、本発明の他の様々な目的、特徴および付随する利点への理解が深まるにつれて、十分に理解されるであろう。
【0012】
本発明は、高純度ジアシルグリセロールを高収率で短時間に製造する方法を提供する。本発明の特徴および詳細について、本発明の工程として、または本発明の一部を組み合わせたもののいずれかとして、さらに詳細に記載する。当業者には、本発明の特定の具体例は例示のために示されたものであって、本発明を限定するためのものではないことは理解されるであろう。これらの例は、当業者に本発明の範囲内での実施方法を示すためのものであって、請求の範囲においてのみ規定される本発明の範囲を制限するものではない。
【0013】
本発明に従ったジアシルグリセロールの製造法は、次の工程を含む:
(i)トリアシルグリセロールを水および酵素と反応させて、ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロールおよび遊離脂肪酸を含む混合物を得る工程;
(ii)脱水法により混合物中の水分を除去する工程;および
(iii)前記モノアシルグリセロール、遊離脂肪酸および残留するトリアシルグリセロールを1以上の分離法により分離して、高純度のジアシルグリセロールを得る工程。
【0014】
本発明によると、工程(i)は制御された加水分解反応を含み、これは水の存在下で行われる。ジアシルグリセロールの純度および生産速度を向上させる観点からすれば、反応流体中の水の量はトリアシルグリセロール100重量部あたり20〜180重量部であることが好ましい。
【0015】
本発明における加水分解反応は、制御された加水分解から得られる遊離脂肪酸の量が5重量%〜50重量%、好ましくは25重量%〜35重量%の範囲になるように制御されるのが好ましい。
【0016】
本発明で用いられる酵素は、リパーゼのような加水分解活性を有する酵素であり、好適な酵素担体、例えばイオン交換樹脂上に固定されていることが好ましい。このリパーゼは、非位置特異性または1,3−位特異性を有し得る。本発明において用いることができるリパーゼの例は、リゾープス(Rhizopus)、アスペルギルス(Aspergillus)、ムコール(Mucor)、カンジダ(Candida)、シュードモナス(Pseudomonas)属などの微生物から誘導することができる。例えば、リゾープス・デレマー(Rhizopus delemar)、リゾープス・ジャポニカス(Rhizopus japonicus)、リゾープス・ニベウス(Rhizopus niveus)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、ムコール・ジャバニカス(Mucor javanicus)、ムコール・ミエヘイ(Mucor miehei)、カンジダ・ルゴーサ(Candida rugosa)、カンジダ・アンタルクチカ(Candida antarctica)、シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)などを挙げることができる。固定化されたリパーゼ調製物は、酵素の固定化についての公知方法に従ってリパーゼを固定化することにより得られる。
【0017】
本発明の酵素法で用いられる制御加水分解反応に好適な装置の例は、撹拌槽、固定床、流動化槽、およびそれらの組み合わせを含む。制御加水分解反応は、バッチ方式、連続方式、または半連続方式で行うことができる。
【0018】
本発明の制御加水分解は、酵素加水分解により行われるため、この制御加水分解はリパーゼの活動温度範囲内、好ましくは20℃〜90℃の温度で行われる。
【0019】
反応流体の脱水は、例えば遠心分離、凝縮、蒸留、蒸発または吸収などの通常の水除去法を用いて行われることが好ましい。
【0020】
本発明で用いられるトリアシルグリセロールは、通常の植物性および動物性油脂、あるいは酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ズーマリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、ペトロセリン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、ステアリドン酸、アラキジン酸、アラキドン酸、ガドレイン酸、アラキン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ベヘン酸、エルカ酸、アドレン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ネルボン酸、またはその異性体などのC2−C24の飽和もしくは不飽和脂肪酸あるいはそれらの混合物を含む加工油脂を含む。本発明において用いられる植物性および動物性油脂の例は、カノーラ油、ココナッツ油、トウモロコシ油、綿実油、ヤシ油、ヤシ核油、ピーナッツ油、菜種油、紅花油、大豆油、ヒマワリ油、オリーブ油、米ぬか油、コーンブラン油、ルリヂサ油、月見草油、アマニ油、ブドウ種子油、リンシード油、アルガン油、アルファルファ油、アーモンド種子油、杏仁油、アボカド油、ババス油、バオバブ油、ブラックカラント種子油、ブラジルナッツ油、ココア種子油、ツバキ油、ニンジン油、カシューナッツ油、ヘーゼルナッツ油、大麻種子油、キウィ種子油、マカダミアナッツ油、マンゴー種子油、メロン種子油、ニガー油、桃仁油、シソ油、ピスタチオ油、ケシ油、カボチャ種子油、ランブータン種子油、ローズヒップ油、ゴマ油、シア種子油、トール油、クルミ油および麦芽油、牛脂、ラード、魚油;硬化、水素添加、エステル交換反応、あるいは無作為化、分別、蒸留のプロセスから得られる油脂;およびその混合物を含む。
【0021】
モノアシルグリセロール、遊離脂肪酸および残存するトリアシルグリセロールをジアシルグリセロールから分離するのに用いられる分離法は、例えば、脱臭、水蒸気蒸留、分子蒸留、吸着クロマトグラフィー、およびそれらの任意の組み合わせなどでよい。分離法は、バッチ方式、連続方式、および半連続方式などで行うことができる。
【0022】
本発明の工程は、10%〜96%の範囲の純度のジアシルグリセロールを含有する最終生成物が得られるまで連続的に行うことが好ましい。ジアシルグリセロールの重量%の(ジアシルグリセロール重量%+トリアシルグリセロール重量%)に対する比率×100として本発明で定義されるジアシルグリセロール純度は、本発明で用いられる精製油脂組成物のジアシルグリセロール濃度を測定するのに用いられる。本発明によれば、10%〜96%のジアシルグリセロールを含む組成物を得ることができる。結果として得られる生成物には、加水分解されていないトリアシルグリセロールが少量含まれ得る。
【0023】
本発明によれば、本明細書に記載されている方法によって製造されるジアシルグリセロールと、脂肪酸のフィトステリルエステルおよび/またはフェルラ酸エステルとを含む油脂組成物を得ることができる。本発明から得られる油脂組成物は、心血管疾患およびその潜在的症状、例えば高コレステロール血症、高脂質血症、アテローム性動脈硬化症、高血圧、血栓症、ならびにII型糖尿病、認知症、癌、老化および酸化的損傷を病状の一部として含む疾患などその他の疾患の危険性の低減および予防の助けとなることができる。フィトステリルエステルおよび/またはフェルラ酸エステルは、120℃〜150℃の範囲で融解し、本発明で製造されるジアシルグリセロール油と混合される前に溶融状態になる。この混合物は均質化され、室温で冷却される。本発明で用いられるフィトステリルエステルおよび/またはフェルラ酸エステルの量は、ジアシルグリセロールの0.5重量%〜25重量%であることが好ましい。
【0024】
フィトステロール、すなわち植物ステロールは、人間の食物中の天然成分であり、通常、植物性油脂の微量成分として見いだされる。これらはコレステロールと構造的に関連するが、その側鎖構造が異なる。フィトステロールは一般に、パルプおよび製紙産業(木材由来;「トール油石けん」)または植物油産業(植物由来)の副生成物から、有機溶媒(ヘキサンおよびアセトン)を用いて抽出される。精製されたフィトステロール混合物は白色で(コレステロールに類似する)、溶解度がきわめて低い。その外観と同様に、コレステロールとフィトステロールとは類似した化学構造を有する。多種のフィトステロールが天然に存在するが、最も一般的なものはβ−シトステロール、カンペステロールおよびスティグマステロールである。フィトステロールは、含油種子、木の実および果実を含む、植物の様々な部位に天然に見いだされる。これらの部位由来の植物性油は、フィトステロールを油の約0.1〜1.0重量%含有する。日常的に消費されるのに加えて、フィトステロールのコレステロール低下剤としての使用が最近見直されている。この結果、北米およびヨーロッパではフィトステロール強化食品(機能的食品)が市販されている。これらの製品は、異常脂質血症を含む様々な病気の患者が使用することを意図したものである。その薬理学的性質は完全には調査されていないが、フィトステロールは重大な副作用を生ずることなく血漿コレステロールレベルを低下させるのに有効である。フィトステロールは、心血管疾患およびその潜在的症状、例えば高コレステロール血症、高脂質血症、アテローム性動脈硬化症、高血圧、血栓症、ならびにII型糖尿病、認知症、癌、老化および病状の一部に酸化的損傷を含む疾患などの他の疾患の治療においても用いられる。
【0025】
近年、脂肪酸のフィトステリルエステルが、遊離フィトステロールと比較してよりすぐれた効果を生じうることが、研究により示唆されている。溶解していないフィトステロールは、消化管のミセル相中における溶解度が低く、従ってコレステロールの吸収を有効に妨げることができない。フィトステロールまたはそのエステルの血中コレステロール低下効果を増大させるためには、これらを油脂、例えば食用油脂中に均質に溶解させなければならない。しかしながら、フィトステロールは、そのエステルよりも油脂中への溶解度が比較的低い。フィトステリルエステルはフィトステロールに較べて油脂中への溶解度が比較的高く、フィトステロールよりも高濃度で油脂中に溶解させることができる。従って、フィトステリルエステルの生理学的効果は、フィトステロールのそれよりも有効かつ効率的なものとすることができる。
【0026】
フェルラ酸エステルは、一般に脂質中への溶解性によりすぐれる公知の酸化防止剤である。フェルラ酸エステルは、オリザノール、より好ましくはγ−オリザノールを含む、米ぬか油およびコーンブラン油中に見いだされる。フェルラ酸エステルは、癌の危険性を低減し、コレステロールレベルを低下させ、筋肉増強性を有することが知られている。
【0027】
本発明の油脂組成物は通常の食用油脂と同様に用いることができ、脂肪加工食品、例えば、飲料、デザート、アイスクリーム、ドレッシング、トッピング、マヨネーズおよびソースなどの水中油型脂肪加工食品、マーガリンおよびスプレッドなどの油中水型脂肪加工食品、ピーナッツバター、フライ用およびベーキング用ショートニングなどの加工脂肪食品、ポテトチップス、スナックケーキ、ケーキ、クッキー、パイ、ペストリー、パン、およびチョコレートなどの加工食品、および製パン用ミックス、加工肉製品、冷凍アントレ、および冷凍食品などその他の食品に利用することができる。
【0028】
本発明の油脂組成物をカプセル、糖衣錠、成形顆粒、キャンディー、またはドロップの形態の血中コレステロール低下薬として利用することも好ましい。
【0029】
以下、実施例によって本発明を説明する。
【実施例1】
【0030】
5Lフラスコ中で、1000gの精製パームオレインを1000gの蒸留水、100gの「Lipozyme RM 1M」、およびRhizomucor mieheiリパーゼより得られた固定化1,3−位選択的リパーゼと混合した。この混合物を60℃で10時間攪拌しながら反応させた。その後、リパーゼ調製物を反応生成物から除去した。生成物のサンプルを取り出し、遊離脂肪酸および部分アシルグリセロールの量をガスクロマトグラフィーにより測定した。結果を表1に示す。
【実施例2】
【0031】
5Lフラスコ中で、1000gの精製大豆油を1000gの蒸留水、100gの「Lipozyme RM 1M」、およびRhizomucor mieheiリパーゼより得られた固定化1,3−位選択的リパーゼと混合した。この混合物を60℃で10時間攪拌しながら反応させた。その後、リパーゼ調製物を反応生成物から除去した。生成物のサンプルを取り出し、遊離脂肪酸および部分アシルグリセロールの量をガスクロマトグラフィーにより測定した。結果を表1に示す。
【0032】
【表1】

【実施例3】
【0033】
実施例1および2から得られる加水分解生成物を5000rpmで10分間遠心分離して、水相から油相を分離した。温度160℃、圧力0.001ミリバールで油相を分子蒸留し、蒸留物1として遊離脂肪酸およびモノアシルグリセロール、残留物1としてジアシルグリセロールおよびトリアシルグリセロールを得た。さらに温度210℃、圧力0.001ミリバールで分子蒸留を行い、蒸留物2としてジアシルグリセロール、残留物2としてトリアシルグリセロールを得た。結果を表2に示す。
【0034】
【表2】

【実施例4】
【0035】
β−シトステリルエステルの添加前に、実施例1で得られた精製ジアシルグリセロール油約200gを約150℃に保った。16gの結晶化β―シトステリルエステルを加熱したジアシルグリセロール油中に添加し、油の温度をゆっくりと室温まで冷却しながら数分間混合した。
【実施例5】
【0036】
γ−オリザノールの添加前に、実施例2で得られた約200gの精製ジアシルグリセロール油を約150℃に保った。10gの結晶化γ−オリザノールを加熱したジアシルグリセロール油中に添加し、油の温度をゆっくりと室温まで冷却しながら数分間混合した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアシルグリセロールの製造法であって:
(i)トリアシルグリセロールを水および酵素と20℃〜90℃の範囲の温度で反応させて、ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロールおよび遊離脂肪酸の混合物を得る工程;
(ii)工程(i)の混合物中の水分を脱水により除去する工程;および
(iii)前記モノアシルグリセロール、遊離脂肪酸および残存するトリアシルグリセロールを少なくとも1つの分離法により分離して、高純度のジアシルグリセロールを得る工程を含み;
工程(i)の反応混合物中の水の量がトリアシルグリセロール100重量部あたり20〜180重量部であり、工程(i)が、5%から50%の間の遊離脂肪酸が得られるまで行われ、短時間に高収率で最高96%までの純度のジアシルグリセロールを製造する方法。
【請求項2】
工程(i)における前記酵素がリパーゼである請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記リパーゼが固定化リパーゼである請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記固定化リパーゼ酵素の調製物が、固定化された非位置および/または1,3−位選択的リパーゼであって、リゾープス(Rhizopus)、アスペルギルス(Aspergillus)、ムコール(Mucor)、カンジダ(Candida)およびシュードモナス(Pseudomonas)属の微生物由来のリパーゼ、リゾープス・デレマー(Rhizopus delemar)、リゾープス・ジャポニカス(Rhizopus japonicus)、リゾープス・ニベウス(Rhizopus niveus)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、ムコール・ジャバニカス(Mucor javanicus)、ムコール・ミエヘイ(Mucor miehei)、カンジダ・ルゴーサ(Candida rugosa)、カンジダ・アンタルクチカ(Candida antarctica)、シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)由来のリパーゼからなる群から選択されるものを含む請求項3記載の方法。
【請求項5】
工程(i)において用いられる前記トリアシルグリセロールが、植物および動物性油脂、およびその混合物からなる群から選択される請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記油脂が、カノーラ油、ココナッツ油、トウモロコシ油、綿実油、ヤシ油、ヤシ核油、ピーナッツ油、菜種油、紅花油、大豆油、ヒマワリ油、オリーブ油、米ぬか油、コーンブラン油、ルリヂサ油、月見草油、アマニ油、ブドウ種子油、リンシード油、アルガン油、アルファルファ油、アーモンド種子油、杏仁油、アボカド油、ババス油、バオバブ油、ブラックカラント種子油、ブラジルナッツ油、ココア種子油、ツバキ油、ニンジン油、カシューナッツ油、ヘーゼルナッツ油、大麻種子油、キウィ種子油、マカダミアナッツ油、マンゴー種子油、メロン種子油、ニガー油、桃仁油、シソ油、ピスタチオ油、ケシ油、カボチャ種子油、ランブータン種子油、ローズヒップ油、ゴマ油、シア種子油、トール油、クルミ油および麦芽油、牛脂、ラード、魚油;硬化、水素添加、エステル交換反応、あるいは無作為化、分別、蒸留のプロセスから得られる油脂;およびその混合物からなる群から選択される請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記トリアシルグリセロールが、2〜24個の炭素原子を有する飽和または不飽和脂肪酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ズーマリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、ペトロセリン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、ステアリドン酸、アラキジン酸、アラキドン酸、ガドレイン酸、アラキン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ベヘン酸、エルカ酸、アドレン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ネルボン酸、またはそれらの異性体、あるいは油脂の硬化、水素添加、エステル交換反応、またはランダム化、分別、蒸留処理により得られる脂肪酸;およびその混合物からなる請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記脱水法が、遠心分離、凝縮、蒸留、蒸発または吸収である請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記分離法が、水蒸気蒸留、分子蒸留または吸着クロマトグラフィーである請求項1記載の方法。
【請求項10】
請求項1記載の方法において定義されるような最高で96重量%までの量のジアシルグリセロールを含む油脂組成物。
【請求項11】
前記組成物がさらに、ジアシルグリセロールの0.5重量%〜25重量%の範囲にある量の少なくとも1種のフィトステリルエステルを含む請求項10記載の油脂組成物。
【請求項12】
前記組成物がさらに、ジアシルグリセロールの0.5重量%〜25重量%の範囲にある量の少なくとも1種のフェルラ酸エステルを含む請求項10記載の油脂組成物。
【請求項13】
請求項10、11および12のいずれか1つにおいて定義される油脂組成物、および/またはその組み合わせを含む油脂加工食品、飲料製品および料理用油製品。

【公開番号】特開2007−175049(P2007−175049A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−170926(P2006−170926)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(505291413)ユニバーシティー プトラ マレーシア (11)
【出願人】(506213865)ゴールデン ホープ リサーチ センディリアン ベラード (3)
【Fターム(参考)】