説明

ジアミン、液晶配向剤および液晶表示素子

【課題】イオン密度が低く、かつ、その長期信頼性に優れた液晶表示素子を提供することであり、その特性をもたらす液晶配向膜、その液晶配向膜を形成するための液晶配向剤、その液晶配向剤に用いるポリマー、そして、そのポリマーの原料となるジアミンを提供する。
【解決手段】分子内にトリアジンの構造を有する特定のジアミンをテトラカルボン酸二無水物と反応させて得たポリマーを含有する液晶配向剤を用いることによって、その液晶配向剤から形成された液晶配向膜を含む液晶表示素子は、イオン密度が低く、その長期信頼性に優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリアジン環と側鎖構造を有する新規ジアミン、該ジアミンとテトラカルボン酸二無水物を反応させて得られるポリマー、該ポリマーを含有する液晶配向剤、該液晶配向剤から形成される液晶配向膜、および該液晶配向膜を具備した液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、ノートパソコンやデスクトップパソコンのモニターをはじめ、ビデオカメラのビューファインダー、投写型のディスプレイなどの様々な液晶表示装置に使われており、最近ではテレビとしても用いられるようになってきた。さらに、光プリンターヘッド、光フーリエ変換素子、ライトバルブなどのオプトエレクトロニクス関連素子としても利用されている。従来の液晶表示素子としては、ネマチック液晶を用いた表示素子が主流であり、1)90度ツイストしたTN(Twisted Nematic)型液晶表示素子、2)通常180度以上ツイストしたSTN(Super Twisted Nematic)型液晶表示素子、3)液晶層に印加する電圧のスイッチング素子に薄膜トランジスタを使用したいわゆるTFT(Thin Film Transistor)型液晶表示素子等が実用化されている。
【0003】
これらの液晶表示素子は画像が適正に視認できる視野角が狭く、斜め方向から見たときに輝度やコントラストの低下および中間調での輝度反転を生じるという欠点を有している。近年、この視野角の問題については、1)光学補償フィルムを用いたTN-TFT型液晶表示素子、2)垂直配向と光学補償フィルムを用いたVA(Vertical Alignment)型液晶表示素子、3)垂直配向と突起構造物の技術を併用したMVA(Multi Domain Vertical Alignment)型液晶表示素子、または4)横電界方式のIPS(In−Plane Switching)型液晶表示素子、5)ECB(Electrically Controlled Birefringence)型液晶表示素子、6)光学補償ベンド(Optically Compensated BendまたはOptically self−Compensated Birefringence:OCB)型液晶表示素子等の技術により改良され、その一部は実用化されている。
【0004】
液晶表示素子の技術の発展は単にこれらの駆動方式や素子構造の改良のみならず、表示素子に使用される構成部材の改良によっても達成されている。表示素子に使用される構成部材のなかでも特に液晶配向膜は、液晶表示素子の表示品位に係わる重要な要素の1つであり、表示素子の高品質化に伴って液晶配向膜の役割が年々重要になってきている。
【0005】
液晶配向膜は液晶配向剤によって形成される。現在主として用いられている液晶配向剤とは、ポリアミック酸または可溶性のポリイミドを有機溶剤に溶解させた溶液である。このような溶液を基板に塗布した後、加熱などの手段により成膜してポリイミド系配向膜を形成する。ポリアミック酸または可溶性ポリイミド以外の種々の液晶配向剤も検討されているが、耐熱性、耐薬品性(耐液晶性)、塗布性、液晶配向性、電気特性、光学特性、表示特性等の点から、ほとんど実用化されていない。
【0006】
液晶表示素子の表示品位を向上させるために液晶配向膜に要求される重要な特性として、イオン密度が挙げられる。イオン密度が高いとフレーム期間中に液晶にかかる電圧が低下し、結果として輝度が低下して正常な階調表示に支障をきたすことがある。また、例え初期のイオン密度が低くても、高温加速試験後のイオン密度(長期信頼性)が増加してしまう場合は好ましくない。
【0007】
前記した問題を解決する試みとして、例えば液晶配向膜を形成させるための、物性の異なる2つ以上のポリアミック酸を組み合わせて含むポリアミック酸組成物が知られている(例えば特許文献1および2参照)。
【0008】
一方で、低温焼成でもイミド化率の高い膜を形成するための液晶配向剤として、ピペラジンのような塩基性窒素原子を有する二価の有機基を有するジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られるポリアミック酸を含有する液晶配向剤が知られている(例えば特許文献3参照)。
【0009】
さらに、窒素原子を有する芳香族ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られるポリアミック酸とその熱特性とが知られている(例えば非特許文献1参照)。
【0010】
しかしながら、これらの先行技術によって得られる液晶配向剤にはイオン密度の低減という課題についてさらなる検討の余地が残されている。
【0011】
一方、分子内にトリアジン環を有する側鎖型ジアミンを用いて合成したポリイミドを液晶配向膜に用いた例が報告されているが、イオン密度に関しては言及されていない(非特許文献2および3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平11−193345号公報
【特許文献2】特開平11−193347号公報
【特許文献3】特開平9−194725号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry, vol. 30, p1099-1102 (1992)
【非特許文献2】第17回日本ポリイミド・芳香族系高分子会議講演予稿集,P−34
【非特許文献3】2009高分子学会東北支部研究発表会講演要旨集,A−15
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、イオン密度が低く、かつ、その長期信頼性に優れた液晶表示素子を提供することであり、その特性をもたらす液晶配向膜、その液晶配向膜を形成するための液晶配向剤、その液晶配向剤に用いるポリマー、そして、そのポリマーの原料となるジアミンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、分子内にトリアジン環と側鎖構造を有する新規のジアミンを見出した。このジアミンをテトラカルボン酸二無水物と反応させて得られるポリマーを含有する組成物を液晶配向剤に用いた結果、この液晶配向剤によって形成された液晶配向膜を有する液晶表示素子が低いイオン密度を示し、その長期信頼性にも優れていることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0016】
本発明は以下の構成からなる。
〔1〕式(1)で表される側鎖構造を有するジアミン。
【化1】

式(I)において、
1は−H、−F、−CN、炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のフッ素置換アルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、または炭素数1〜30のフッ素置換アルコキシであり;
Aは1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり;
Zは単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CO−、−CONH−、−NHCO−または−(CH2m−であり、mは1〜6の整数であり;
nは0または1であり;そして、
2は−Hまたは炭素数1〜5のアルキルである。
〔2〕R1が炭素数4〜20のアルキル、炭素数4〜20のフッ素置換アルキル、炭素数4〜20のアルコキシ、または炭素数4〜20のフッ素置換アルコキシであり;
nが0であり;そして、
2が−Hまたは−CH3である、上記〔1〕に記載のジアミン。
〔3〕R1が炭素数4〜20のアルキル、炭素数4〜20のフッ素置換アルキル、炭素数4〜20のアルコキシ、または炭素数4〜20のフッ素置換アルコキシであり;
nが1であり;
Aが1,4−フェニレンであり;
Zが単結合、−O−、−COO−、−OCO−、または−(CH22−であり;そして、
2が−Hまたは−CH3である、上記〔1〕に記載のジアミン。
〔4〕酸成分としてテトラカルボン酸二無水物を、ジアミン成分として上記〔1〕記載の側鎖構造を有するジアミンの少なくとも1つを用い、これらを反応させて得られるポリマー。
〔5〕ジアミン成分として、下記式(III)〜(IX)および(XV)で表されるジアミンの群から選択される少なくとも1つをさらに用いる、上記〔4〕に記載のポリマー。
【化2】

式(III)において、A1は−(CH2m−であり、mは1〜6の整数であり;
式(V)、(VII)および(IX)において、Xは単結合、−O−、−S−、−S−S−、−SO2−、−CO−、−NH−、−N(CH3)−、−CONH−、−NHCO−、−C(CH32−、−C(CF32−、−(CH2m−、−O−(CH2m−O−、−N(CH3)−(CH2m−N(CH3)−、または−S−(CH2m−S−であり、mは1〜6の整数であり;
式(VII)において、L1およびL2は−Hであるが、Xが−NH−、−N(CH3)−、−CH2−、−C(CH32−、または−C(CF32−であるときには互いに結合して単結合を形成してもよく;
式(VIII)および(IX)において、Yは単結合、−O−、−S−、−CO−、−C(CH32−、−C(CF32−、または炭素数1〜3のアルキレンであり;
式(VIII)において、環Dはフェニレンまたはピラジン−1,4−ジイルであり;
式(VI)において、ベンゼン環の−Hはベンジルで置き換えられていてもよく;
式(XV)において、R33およびR34は独立して炭素数1〜3のアルキルまたはフェニルであり;Gは独立して炭素数1〜6のアルキレン、フェニレンまたはアルキル置換されたフェニレンであり;mは1〜10の整数であり;そして、
上記の各式において、シクロヘキサン環またはベンゼン環の−Hは、−F、−CH3、−OH、−COOH、−SO3H、−PO32、ベンジル、またはヒドロキシベンジルで置き換えられていてもよい。
〔6〕ジアミン成分として、式(I)で表されるジアミン以外の側鎖構造を有するジアミンをさらに用いる、上記〔5〕に記載のポリマー。
〔7〕ジアミン成分として、下記式(X)〜(XIV)で表されるジアミンの群から選択される少なくとも1つをさらに用いる、上記〔4〕に記載のポリマー。
【化3】

式(X)において、
1は、単結合、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、または−(CH2m−であり、mは1〜6の整数であり、このアルキレンにおける任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられていてもよく;
3は、ステロイド骨格を有する基、炭素数3〜30のアルキル、炭素数1〜30のアルキルもしくは炭素数1〜30のアルコキシを置換基として有するフェニル、または下記式(X−a)で表される基であり、この炭素数1〜30のアルキルにおける任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられていてもよく;

【化4】

式(X−a)において、
2およびA3は独立して、単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−CH=CH−、または炭素数1〜12のアルキレンであり、aおよびbは独立して0〜4の整数であり;
環Bおよび環Cは独立して1,4−フェニレン、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、ナフタレン−2,7−ジイル、またはアントラセン−9,10−ジイルであり;
4およびR5は独立して、−FまたはCH3であり、fおよびgは独立して0〜2の整数であり;
6は−F、−OH、−CN、炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、または炭素数2〜30のアルコキシアルキルであり、これらのアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキルにおいて、任意の−Hは−Fで置き換えられていてもよく、任意の−CH2−は−CF2−または下記式(s)で表される2価の基で置き換えられていてもよく;
【化5】

式(s)において、R33およびR34は独立して炭素数1〜3のアルキルであり、mは1〜6の整数であり;
c、dおよびeは独立して0〜3の整数であり、そして、c+d+e≧1である。
【化6】

式(XI)および(XII)において、
7は独立して−Hまたは−CH3であり;
8は−H、炭素数1〜20のアルキルまたは炭素数2〜20のアルケニルであり;
4は独立して単結合、−CO−または−CH2−であり;
式(XII)において、
9およびR10は独立して炭素数1〜20のアルキルまたはフェニルである。
【化7】

式(XIII)および(XIV)において、A5は独立して−O−または炭素数1〜6のアルキレンであり;
式(XIII)において、R11は−Hまたは炭素数1〜30のアルキルであり、このアルキルの任意の−CH2−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;
6は単結合または炭素数1〜3のアルキレンであり;
環Tは1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり;
hは0または1であり;
式(XIV)において、R12は炭素数6〜22のアルキルであり;そして、
13は炭素数1〜22のアルキルである。
〔8〕式(I)で表されるジアミン以外の側鎖構造を有するジアミンが、上記〔7〕に記載の式(X)〜(XIV)で表されるジアミンの群から選択される少なくとも1つである、上記〔6〕に記載のポリマー。
〔9〕ジアミンと反応させるテトラカルボン酸二無水物が、下記式(An−1)〜(An−6)で表される化合物から選択される少なくとも1つである、上記〔4〕〜〔8〕のいずれか1項に記載のポリマー。
【化8】

式(An−1)、(An−4)および(An−5)において、X1は独立して単結合または−CH2−であり;
式(An−2)において、G1は単結合、炭素数1〜20のアルキレン、−CO−、−O−、−S−、−SO2−、−C(CH32−、または−C(CF32−であり;
式(An−2)〜(An−4)において、Y1は独立して下記の3価の基の群から選ばれる1つであり;
【化9】

式(An−3)〜(An−5)において、環Eは炭素数3〜10の単環式炭化水素の基または炭素数6〜20の縮合多環式炭化水素の基を表し、この基の任意の水素はメチル、エチルまたはフェニルで置き換えられていてもよく;
環に掛かっている結合手は環を構成する任意の炭素に連結しており、2本の結合手が同一の炭素に連結してもよく;
式(An−6)において、X11は炭素数2〜6のアルキレンであり;
Meはメチルを表し、そして、Phはフェニルを表す。
〔10〕ジアミンと反応させるテトラカルボン酸二無水物が、芳香族テトラカルボン酸二無水物の少なくとも1つと、脂環式テトラカルボン酸二無水物および脂肪族テトラカルボン酸二無水物の群から選択される少なくとも1つの混合物である、上記〔4〕〜〔8〕のいずれか1項に記載のポリマー。
〔11〕ジアミンと反応させるテトラカルボン酸二無水物が、脂環式テトラカルボン酸二無水物および脂肪族テトラカルボン酸二無水物の群から選択される少なくとも1つまたは2つ以上の混合物である、上記〔4〕〜〔8〕のいずれか1項に記載のポリマー。
〔12〕芳香族テトラカルボン酸二無水物が下記の式(1)、(2)、(5)〜(7)および(17)で表される化合物から選ばれる少なくとも1つである、上記〔10〕に記載のポリマー。
【化10】

〔13〕脂環式テトラカルボン酸二無水物および/または脂肪族テトラカルボン酸二無水物が下記の式(19)、(23)、(25)、(35)〜(39)、(44)、(49)および(68)で表される化合物から選ばれる少なくとも1つである、上記〔10〕または〔11〕に記載のポリマー。
【化11】

〔14〕上記〔4〕〜〔13〕に記載のポリマーを含有する液晶配向剤。
〔15〕上記〔4〕〜〔13〕に記載のポリマーの少なくとも1つと、
上記〔5〕に記載の式(III)〜(IX)および(XV)で表されるジアミンの群から選択される少なくとも1つおよび/または上記〔7〕に記載の式(X)〜(XIV)で表されるジアミンの群から選択される少なくとも1つをテトラカルボン酸二無水物と反応させて得られるポリマーの少なくとも1つを混合した液晶配向剤。
〔16〕上記〔14〕または〔15〕に記載の液晶配向剤を塗布し、加熱することによって形成される液晶配向膜。
〔17〕上記〔16〕に記載の液晶配向膜を有する液晶表示素子。
【発明の効果】
【0017】
本発明の好ましい態様に掛かるジアミンをテトラカルボン酸二無水物と反応させて得たポリマーを含有する組成物を液晶配向剤に用いることができる。その液晶配向剤によって形成された液晶配向膜を有する液晶表示素子は、低いイオン密度を示し、かつ、その長期信頼性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ジアミン(I−1)の1H−NMRのチャートである。
【図2】ジアミン(I−2)の1H−NMRのチャートである。
【図3】ジアミン(I−3)の1H−NMRのチャートである。
【図4】ジアミン(I−33)の1H−NMRのチャートである。
【図5】ジアミン(I−34)の1H−NMRのチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書で用いる用語について説明する。式(I−1)で表わされるジアミンのことをジアミン(I−1)と略称することがある。他の式で表されるジアミンも同様に略称することがある。式(1)で表わされるテトラカルボン酸二無水物を酸無水物(1)と略称することがある。他の式で表されるテトラカルボン酸二無水物についても同様に略称することがある。「(メタ)アクリロイルオキシ」は、アクリロイルオキシおよびメタクリロイルオキシの総称であり、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの総称であり、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸およびメタクリル酸の総称である。
【0020】
化学構造式を説明する際に用いる用語「任意の」は、位置だけでなく個数についても任意であることを意味する。そして、例えば、「任意のAはB、CまたはDで置き換えられていてもよい」という表現は、少なくとも1つのAがBで置き換えられていてもよく、少なくとも1つのAがCで置き換えられていてもよく、少なくとも1つのAがDで置き換えられていてもよく、そして更に複数のAがB〜Dの少なくとも2つで置き換えられていてもよいことを意味する。但し、連続する複数の−CH2−が同じ基で置き換えられることは含まれない。
【0021】
環を構成する炭素との結合位置が明確でない置換基は、その結合位置が化学的に問題のない範囲内で環のどの炭素と結合してもよいことを意味する。化学構造式において、文字(例えばBまたはC)を六角形で囲った基は環構造の基(環Bまたは環C)であることを意味する。複数の式において同じ記号が用いられている場合は、その基が同じ定義範囲を有することを意味するが、すべての式において同時に同じ基でなければならないことを意味しない。複数の式において同じ基であってもよいし、式ごとに異なる基であってもよい。
【0022】
<本発明の側鎖構造を有するジアミン>
本発明のジアミンは、下記式(I)で表されるトリアジン環と側鎖構造を有するジアミンである。本発明のジアミンをテトラカルボン酸二無水物と反応させて得たポリマーを含有する液晶配向剤によって形成された液晶配向膜を有する液晶表示素子は、低いイオン密度を示し、かつ、その長期信頼性にも優れている。さらに、ジアミン(I)の持つ側鎖の効果で、高いプレティルト角を有する液晶表示素子を得ることができる。
【0023】
【化12】

式(I)において、R1は−H、−F、−CN、炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のフッ素置換アルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、または炭素数1〜30のフッ素置換アルコキシである。ここで挙げるアルキル、フッ素置換アルキル、アルコキシ、およびフッ素置換アルコキシとしては、直鎖および分枝鎖のいずれでもよいが、分岐鎖の場合側鎖の直線性を保つために主鎖から分岐するアルキルはメチル、エチル、プロピル等の短鎖のアルキルが好ましい。
【0024】
炭素数1〜30のアルキルは炭素数1〜30の直鎖アルキルまたは炭素数3〜30の分枝鎖アルキルがあげられる。好ましいアルキルは、炭素数4〜20のアルキルである。
【0025】
具体的なアルキルとしては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、1−メチルペンチル、4−メチル−2−ペンチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、n−ヘプチル、1−メチルヘキシル、n−オクチル、t−オクチル、1−メチルヘプチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルペンチル、n−ノニル、2,2−ジメチルヘプチル、2,6−ジメチル−4−ヘプチル、3,5,5−トリメチルヘキシル、n−デシル、n−ウンデシル、1−メチルデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、1−ヘキシルヘプチル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル、n−エイコシルなどがあげられる。
【0026】
炭素数1〜30のアルコキシは炭素数1〜30の直鎖アルコキシまたは炭素数3〜30の分枝鎖アルコキシがあげられる。好ましいアルコキシは、炭素数4〜20のアルコキシである。
【0027】
具体的なアルコキシとしては、メトキシ、エトキシ、n−プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、n−ブチルオキシ、イソブチルオキシ、s−ブチルオキシ、t−ブチルオキシ、n−ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、t−ペンチルオキシ、n−ヘキシルオキシ、1−メチルペンチルオキシ、4−メチル−2−ペンチルオキシ、3,3−ジメチルブチルオキシ、2−エチルブチルオキシ、n−ヘプチルオキシ、1−メチルヘキシルオキシ、n−オクチルオキシ、t−オクチルオキシ、1−メチルヘプチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、2−プロピルペンチルオキシ、n−ノニルオキシ、2,2−ジメチルヘプチルオキシ、2,6−ジメチル−4−ヘプチルオキシ、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシ、n−デシルオキシ、n−ウンデシルオキシ、1−メチルデシルオキシ、n−ドデシルオキシ、n−トリデシルオキシ、1−ヘキシルヘプチルオキシ、n−テトラデシルオキシ、n−ペンタデシルオキシ、n−ヘキサデシルオキシ、n−ヘプタデシルオキシ、n−オクタデシルオキシ、n−エイコシルオキシなどがあげられる。
【0028】
炭素数1〜30のフッ素置換アルキルは炭素数1〜30の直鎖フッ素置換アルキルまたは炭素数3〜30の分枝鎖フッ素置換アルキルがあげられる。好ましいフッ素置換アルキルは、炭素数4〜20のフッ素置換アルキルである。フッ素置換アルキルは対応するアルキルのすべての水素がフッ素で置き換えられていても、末端の1〜3程度の炭素に結合する水素がフッ素で置き換えられていてもよい。
【0029】
具体的なフッ素置換アルキルとしては、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、モノフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル、n−ノナフルオロブチル、4,4,4−トリフルオロブチル、ウンデカフルオロペンチル、5,5,5−トリフルオロペンチル、ペルフルオロヘキシル、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル、6,6,6−トリフルオロヘキシル、ペルフルオロヘプチル、7,7,7−トリフルオロヘプチル、ペルフルオロオクチル、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル、8,8,8−トリフルオロオクチル、ペルフルオロノニル、9,9,9−トリフルオロノニル、ペルフルオロデシル、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル、10,10,10−トリフルオロデシル、ペルフルオロウンデシル、ペルフルオロドデシル、ペルフルオロトリデシル、ペルフルオロテトラデシル、ペルフルオロ−1H,1H,2H,2H−テトラデシル、ペルフルオロペンタデシル、ペルフルオロヘキサデシル、ペルフルオロヘプタデシル、ペルフルオロオクタデシル、ペルフルオロエイコシルなどがあげられる。
【0030】
炭素数1〜30のフッ素置換アルコキシは炭素数1〜30の直鎖フッ素置換アルコキシまたは炭素数3〜30の分枝鎖フッ素置換アルコキシがあげられる。好ましいアルコキシは、炭素数4〜20のフッ素置換アルコキシである。
【0031】
具体的なフッ素置換アルコキシとしては、トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、モノフルオロメトキシ、ペンタフルオロエトキシ、2,2,2−トリフルオロエトキシ、ヘプタフルオロプロピルオキシ、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルオキシ、3,3,3−トリフルオロプロピルオキシ、n−ノナフルオロブチルオキシ、4,4,4−トリフルオロブチルオキシ、ウンデカフルオロペンチルオキシ、5,5,5−トリフルオロペンチルオキシ、ペルフルオロヘキシルオキシ、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルオキシ、6,6,6−トリフルオロヘキシルオキシ、ペルフルオロヘプチルオキシ、7,7,7−トリフルオロヘプチルオキシ、ペルフルオロオクチルオキシ、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルオキシ、8,8,8−トリフルオロオクチルオキシ、ペルフルオロノニルオキシ、9,9,9−トリフルオロノニルオキシ、ペルフルオロデシルオキシ、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシルオキシ、10,10,10−トリフルオロデシルオキシ、ペルフルオロウンデシルオキシ、ペルフルオロドデシルオキシ、ペルフルオロトリデシルオキシ、ペルフルオロテトラデシルオキシ、ペルフルオロ−1H,1H,2H,2H−テトラデシルオキシ、ペルフルオロペンタデシルオキシ、ペルフルオロヘキサデシルオキシ、ペルフルオロヘプタデシルオキシ、ペルフルオロオクタデシルオキシ、ペルフルオロエイコシルオキシなどがあげられる。
【0032】
nは0または1であり、n=1のとき、Aは1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり、Aは1,4−フェニレンが好ましい。nは0であってもよいが、液晶表示素子のプレティルト角を高くしたい場合は、nは1である方が好ましい。
【0033】
Zは単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CO−、−CONH−、−NHCO−、または−(CH2m−で表されるアルキレンである。アルキレンにおけるmは1〜6の整数である。Zは2つの環を連結するための2価の基であればいかなる構造でも構わないが、本発明の効果であるイオン密度低下を考慮すると単結合、−O−、−COO−、−OCO−、または−(CH2m−が好ましい。アルキレンでは−CH2CH2−が好ましい。
【0034】
2は−Hまたは炭素数1〜5のアルキルである。炭素数1〜5のアルキルは具体的には前記のメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、およびt−ペンチルが挙げられる。R2は−H、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、およびn−ブチルが好ましく、−Hおよびメチルがより好ましい。
【0035】
ジアミン(I)の具体例を以下に列記する。
【化13】

【0036】
【化14】

【0037】
【化15】

【0038】
【化16】

【0039】
【化17】


【0040】
<ジアミン(I)の製造法>
ジアミン(I)は以下に例示する方法で製造することができる。ここではジアミン(I−1)の製造を例に説明する。
【化18】

上記反応の第1段では、ジアミン(I)の側鎖となるアミンと塩化シアヌルを等モル反応させて中間体を得る。続いて、この中間体に2倍モル以上のp−フェニレンジアミンを反応させて目的物を得ることができる。例示したジアミン(I−1)以外の化合物も、原料であるアミンを適宜代えることにより、上記に準じた方法で製造することができる。
【0041】
本発明の液晶配向剤に用いるポリマーを製造するときの原料であるジアミンは、ジアミン(I)の少なくとも1つだけであってもよいし、これら以外のその他のジアミンの少なくとも1つをさらに含んでいてもよい。ジアミン(I)の使用割合はポリマー製造に用いるジアミン原料に占める割合として1〜100モル%であり、10〜100モル%であることが好ましく、20〜100モル%であることがより好ましい。ジアミン(I)をこのような使用割合にすることによって、液晶表示素子のイオン密度を低減させ、かつ、低いイオン密度を長期間に渡り保持することが出来る。
【0042】
<その他のジアミン>
その他のジアミンはその構造の違いによって2種類に分けることができる。即ち、2つのアミノ基を結ぶ骨格を主鎖として見たときに、主鎖から分岐する基、即ち側鎖基を有するジアミンと側鎖基を持たないジアミンである。側鎖基を有するジアミンをテトラカルボン酸二無水物と反応させることによって、ポリマーの主鎖に対して多数の側鎖基を有するポリアミック酸が得られる。このようなポリマー主鎖に対して側鎖基を有するポリアミック酸を使用するとき、このポリマーを含有する液晶配向剤から形成される液晶配向膜は、液晶表示素子におけるプレティルト角を大きくすることができる。即ち、この側鎖基はプレティルト角を大きくする効果を有する基である。このような効果を有する側鎖基は炭素数3以上の基である必要があり、具体的な例として炭素数3以上のアルキル、炭素数3以上のアルコキシ、炭素数3以上のアルコキシアルキル、およびステロイド骨格を有する基を挙げることができる。1つ以上の環を有する基であって、その末端の環が置換基として炭素数1以上のアルキル、炭素数1以上のアルコキシおよび炭素数2以上のアルコキシアルキルのいずれか1つを有する基も側鎖基としての効果を有する。本発明における側鎖基はこれらの基から選ばれる。以下の説明では、このような側鎖基を有するジアミンを側鎖型ジアミンと称することがある。そして、このような側鎖基を持たないジアミンを非側鎖型ジアミンと称することがある。
【0043】
そして、側鎖型ジアミンと非側鎖型ジアミンを適切に使い分けることにより、上記の種々の表示素子のそれぞれに必要なプレティルト角に対応することができる。即ち、TN方式やVA方式に代表される縦電界方式では比較的大きなプレティルト角が必要となるため、側鎖型ジアミンが主に用いられる。このとき、さらにプレティルト角をコントロールするためには非側鎖型ジアミンを併用すればよい。非側鎖型ジアミンと側鎖型ジアミンの配合比率は、目的とするプレティルト角の大きさに応じて決めればよい。もちろん、側鎖基を適当に選ぶことにより、側鎖型ジアミンのみを用いて対応することも可能である。このように、本発明の液晶配向剤は、任意の種類の液晶表示素子に適用することができる。
【0044】
側鎖基の具体例は次の通りである。まず最初に、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アルケニル、アルケニルオキシ、アルケニルカルボニル、アルケニルカルボニルオキシ、アルケニルオキシカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキニル、アルキニルオキシ、アルキニルカルボニル、アルキニルカルボニルオキシ、アルキニルオキシカルボニル、アルキニルアミノカルボニル等を挙げることができる。そして、これらの基におけるアルキル、アルケニルおよびアルキニルは、いずれも炭素数3以上の基である。但し、アルコキシアルキルにおいては、全体として炭素数3以上であればよい。なお、これらの基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
【0045】
次に、末端の環が置換基として炭素数1以上のアルキル、炭素数1以上のアルコキシまたは炭素数2以上のアルコキシアルキルを有することを条件に、フェニル、フェニルアルキル、フェニルアルキルオキシ、フェニルオキシ、フェニルカルボニル、フェニルカルボニルオキシ、フェニルオキシカルボニル、フェニルアミノカルボニル、フェニルシクロヘキシルオキシ、炭素数3以上のシクロアルキル、シクロヘキシルアルキル、シクロヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシカルボニル、シクロヘキシルフェニル、シクロヘキシルフェニルアルキル、シクロヘキシルフェニルオキシ、ビス(シクロヘキシル)オキシ、ビス(シクロヘキシル)アルキル、ビス(シクロヘキシル)フェニル、ビス(シクロヘキシル)フェニルアルキル、ビス(シクロヘキシル)オキシカルボニル、ビス(シクロヘキシル)フェニルオキシカルボニル、およびシクロヘキシルビス(フェニル)オキシカルボニル等の環構造の基を挙げることができる。また、フェニルおよびシクロヘキシル以外に、1,3−ジオキサン、ピリミジン、ピリジン、ナフタレン、およびアントラセン等の環を適宜用いることができる。
【0046】
さらに、2個以上のベンゼン環を有する基、2個以上のシクロヘキサン環を有する基、またはベンゼン環およびシクロヘキサン環で構成される2環以上の基であって、結合基が独立して単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−CH=CH−、もしくは炭素数1〜12のアルキレンであり、末端の環が置換基として炭素数1以上のアルキル、炭素数1以上のフッ素置換アルキル、炭素数1以上のアルコキシ、炭素数1以上のフッ素置換アルコキシ、または炭素数2以上のアルコキシアルキルを有する環集合基を挙げることができる。ここでも、ベンゼンおよびシクロヘキサン以外に1,3−ジオキサン、ピリミジン、ピリジン、ナフタレン、およびアントラセン等の環を適宜用いることができる。ステロイド骨格を有する基も側鎖基として有効である。
【0047】
<非側鎖型ジアミン>
側鎖基を持たないジアミン、即ち非側鎖型ジアミンの例として、式(III)〜(IX)および(XV)で表される化合物が挙げられる。
【化19】

【0048】
式(III)において、A1は−(CH2m−であり、mは1〜6の整数であり;
式(V)、(VII)および(IX)において、Xは単結合、−O−、−S−、−S−S−、−SO2−、−CO−、−NH−、−N(CH3)−、−CONH−、−NHCO−、−C(CH32−、−C(CF32−、−(CH2m−、−O−(CH2m−O−、−N(CH3)−(CH2m−N(CH3)−、または−S−(CH2m−S−であり、mは1〜6の整数であり;
式(VII)において、L1およびL2は−Hであるが、Xが−NH−、−N(CH3)−、−CH2−、−C(CH32−、または−C(CF32−であるときには互いに結合して単結合を形成してもよく;
式(VIII)および(IX)において、Yは単結合、−O−、−S−、−CO−、−C(CH32−、−C(CF32−、または炭素数1〜3のアルキレンであり;
式(VIII)において、環Dはフェニレンまたはピラジン−1,4−ジイルであり;
式(VI)において、ベンゼン環の−Hはベンジルで置き換えられていてもよく;
式(XV)において、R33およびR34は独立して炭素数1〜3のアルキルまたはフェニルであり;Gは独立して炭素数1〜6のアルキレン、フェニレンまたはアルキル置換されたフェニレンであり;mは1〜10の整数であり;そして、
上記の各式において、シクロヘキサン環またはベンゼン環の−Hは、−F、−CH3、−OH、−COOH、−SO3H、−PO32、ベンジル、またはヒドロキシベンジルで置き換えられていてもよい。
【0049】
ジアミン(III)の具体例を以下に示す。
【化20】

【0050】
ジアミン(IV)の具体例を以下に示す。
【化21】

【0051】
ジアミン(V)の具体例を以下に示す。
【化22】

【0052】
ジアミン(VI)の具体例を以下に示す。
【化23】

【0053】
ジアミン(VII)の具体例を以下に示す。
【化24】

【0054】
【化25】

【0055】
【化26】

【0056】
ジアミン(VIII)の具体例を以下に示す。
【化27】

【0057】
ジアミン(IX)の具体例を以下に示す。
【化28】

【0058】
【化29】

【0059】
ジアミン(XV)の具体例を以下に示す。
【化30】

【0060】
上記の非側鎖型ジアミンのうち、ジアミン(VI−1)〜(VI−5)、ジアミン(VI−15)〜(VI−17)、ジアミン(VII−1)〜(VII−12)、ジアミン(VII−26)、ジアミン(VII−27)、ジアミン(VII−31)、ジアミン(VII−33)、ジアミン(VII−35)〜(VII−37)、ジアミン(VIII−1)、ジアミン(VIII−2)、ジアミン(VIII−6)、ジアミン(VIII−1)〜(IX−5)およびジアミン(XV−1)が好ましく、ジアミン(VI−1)、ジアミン(VI−2)、ジアミン(VI−15)〜(VI−17)、ジアミン(VII−1)〜(VII−12)、ジアミン(VII−33)、ジアミン(VII−35)〜(VII−37)、ジアミン(VIII−7)、ジアミン(IX−2)およびジアミン(XV−1)がより好ましい。
【0061】
このような非側鎖型ジアミンは、液晶表示素子において低いイオン密度をもたらすために、本発明の液晶配向剤におけるポリアミック酸の原料としてのジアミン総量においてモル比で1〜98%含まれることが好ましく、10〜95%含まれることがより好ましい。
【0062】
<側鎖型ジアミン>
側鎖構造を有するジアミン、即ち側鎖型ジアミンの例として、式(X)〜(XIV)で表される化合物が挙げられる。
【化31】

式(X)において、Z1は、単結合、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、または−(CH2m−であり、mは1〜6の整数である。このアルキレンにおける任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられていてもよい。R3は、ステロイド骨格を有する基、炭素数3〜30のアルキル、炭素数1〜30のアルキルもしくは炭素数1〜30のアルコキシを置換基として有するフェニル、または下記式(X−1)で表される基であり、この炭素数1〜30のアルキルにおける任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられていてもよい。R3の好ましい例は炭素数3〜30のアルキル、炭素数1〜30のアルキルもしくは炭素数1〜30のアルコキシを置換基として有するフェニル、および式(X−1)で表される基である。2つのアミノ基のベンゼン環との結合位置は、Z1の結合位置を1位とするとき、3位と5位または2位と5位であることが好ましい。
【0063】
【化32】

式(X−a)において、A2およびA3は独立して、単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−CH=CH−、または炭素数1〜12のアルキレンであり、aおよびbは独立して0〜4の整数である。環Bおよび環Cは独立して1,4−フェニレン、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、ナフタレン−2,7−ジイル、またはアントラセン−9,10−ジイルである。R4およびR5は独立して−FまたはCH3であり、fおよびgは独立して0〜2の整数である。R6は−F、−OH、−CN、炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、または炭素数2〜30のアルコキシアルキルであり、これらのアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキルにおいて、任意の−Hは−Fで置き換えられていてもよく、任意の−CH2−は−CF2−または下記式(s)で表される2価の基で置き換えられていてもよい。
【化33】

式(s)において、R33およびR34は独立して炭素数1〜3のアルキルであり、mは1〜6の整数であり、c、dおよびeは独立して0〜3の整数であり、そして、c+d+e≧1である。R6の好ましい例は炭素数1〜30のアルキルおよび炭素数1〜30のアルコキシである。
【0064】
【化34】

式(XI)および(XII)において、R7は独立して−Hまたは−CH3である。R8は−H、炭素数1〜20のアルキルまたは炭素数2〜20のアルケニルである。A4は独立して単結合、−CO−または−CH2−である。式(XII)において、R9およびR10は独立して炭素数1〜20のアルキルまたはフェニルである。式(XI)において、2つの「NH2−Ph−A4−O−」の一方はステロイド骨格の3位に結合し、もう一方は6位に結合していることが好ましい。また、2つのアミノ基のベンゼン環との結合位置は、いずれもA4の結合位置に対して、メタ位またはパラ位であることが好ましい。式(XII)において、2つの「NH2−(R10−)Ph−A4−O−」のベンゼン環との結合位置は、いずれもステロイド骨格が結合している炭素に対してメタ位またはパラ位であることが好ましい。また、2つのアミノ基のベンゼン環との結合位置は、いずれもA4の結合位置に対して、メタ位またはパラ位であることが好ましい。
【0065】
【化35】

式(XIII)および(XIV)において、A5は独立して−O−または炭素数1〜6のアルキレンである。式(XIII)において、R11は−Hまたは炭素数1〜30のアルキルであり、このアルキルの任意の−CH2−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよい。A6は単結合または炭素数1〜3のアルキレンであり、環Tは1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり、hは0または1である。式(XIV)において、R12は炭素数6〜22のアルキルであり、R13は炭素数1〜22のアルキルである。式(XIII)において、2つのアミノ基のベンゼン環との結合位置は、いずれもA5の結合位置に対してメタ位またはパラ位であることが好ましい。式(XIV)において、2つのアミノ基のベンゼン環との結合位置は、いずれもA5の結合位置に対してメタ位またはパラ位であることが好ましい。
【0066】
ジアミン(X)の具体例を以下に示す。
【化36】

【0067】
式(X−1)〜式(X−11)において、R23は炭素数1〜30のアルキルまたは炭素数1〜30のアルコキシであり、好ましくは炭素数5〜25のアルキルまたは炭素数5〜25のアルコキシである。R24は炭素数1〜30のアルキルまたは炭素数1〜30のアルコキシであり、好ましくは炭素数3〜25のアルキルまたは炭素数3〜25のアルコキシである。
【0068】
【化37】

【0069】
式(X−12)〜(X−17)において、R25は炭素数4〜30のアルキルであり、好ましくは炭素数6〜25のアルキルである。R26は炭素数6〜30のアルキルであり、好ましくは炭素数8〜25のアルキルである。
【0070】
【化38】

【0071】
【化39】

【0072】
式(X−18)〜(X−37)において、R27は炭素数1〜30のアルキルまたは炭素数1〜30のアルコキシであり、好ましくは炭素数3〜25のアルキルまたは炭素数3〜25のアルコキシである。R28は水素、フッ素、炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、−C≡N、−OCH2F、−OCHF2または−OCF3であり、好ましくは炭素数3〜25のアルキル、または炭素数3〜25のアルコキシである。
【0073】
【化40】

【0074】
上記のジアミン(X−1)〜(X−43)のうち、ジアミン(X−1)〜(X−11)が好ましく、ジアミン(X−2)およびジアミン(X−4)〜(X−6)がより好ましい。
【0075】
ジアミン(XI)の具体例を以下に示す。
【化41】

【0076】
ジアミン(XII)の具体例を次に示す。
【化42】

【0077】
【化43】

【0078】
ジアミン(XIII)の具体例を以下に示す。
【化44】

【0079】
【化45】

【0080】
式(XIII−1)〜(XIII−3)において、R29は炭素数1〜30のアルキルまたは炭素数1〜30のアルコキシであり、好ましくは炭素数3〜30のアルキルまたは炭素数3〜30のアルコキシである。式(XIII−4)〜(XIII−8)において、R30は炭素数1〜30のアルキルまたは炭素数1〜30のアルコキシであり、好ましくは炭素数3〜30のアルキルまたは炭素数3〜30のアルコキシである。
【0081】
ジアミン(XIV)の具体例を以下に示す。
【化46】

【0082】
式(XIV−1)〜(XIV−3)において、R31は炭素数6〜22のアルキルであり、好ましくは炭素数6〜20のアルキルである。R32は炭素数1〜22のアルキルであり、好ましくは炭素数1〜10のアルキルである。
【0083】
上記の側鎖型ジアミンの具体例のうち、ジアミン(X−2)、ジアミン(X−4)〜(X−6)、ジアミン(XII−2)、ジアミン(XIII−4)、および(XIII−6)が好ましい。
【0084】
ジアミン(I)を含めた上記の側鎖型ジアミンは、大きなプレティルト角を必要とする液晶表示素子に用いる場合、本発明の液晶配向剤に用いるポリマーを製造するに際して、ジアミン総量における割合を1〜90モル%とすることが好ましく、5〜70モル%とすることがより好ましい。
【0085】
本発明では、上記のジアミン(III)〜(VIII)、ジアミン(X)〜(XIV)およびジアミン(XV)以外のジアミンも用いることができる。このようなジアミンとしては、例えば、フルオレン環を有するフルオレン系ジアミンおよびジアミン(X)〜(XIV)以外の側鎖型ジアミンが挙げられる。そのような側鎖型ジアミンの具体例を以下に示す。
【0086】
【化47】

【0087】
これらの式において、R35およびR36はそれぞれ独立して炭素数3〜30のアルキルである。これらのジアミンは、本発明の液晶配向剤におけるポリマーを製造する際に、本発明の効果が損なわれない範囲で用いることができる。
【0088】
なお、本発明のポリマーの原料となるアミン成分に含まれるジアミンは、前記のジアミンに限定されることなく、本発明の目的が達成される範囲内で他にも種々の構造のジアミンを用いることができることは言うまでもない。また、その場合も該ジアミンは1つを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0089】
本発明のポリマーの原料となるアミン成分は、ジアミンの種類およびその組み合わせを適宜選択することにより、本発明の液晶配向剤を用いて形成される液晶配向膜に好適なプレティルト角を付与することができる。VA型液晶表示素子の場合には80〜90°程度の大きなプレティルト角が要求される場合が多い。高いプレティルト角を適宜調整することができる本発明の液晶配向剤は、このような液晶表示素子に好適に用いられる。
【0090】
<本発明のポリマー>
本発明の液晶配向剤は、ジアミン(I)の少なくとも1つまたはこの(これらの)ジアミンと式(I)では表されないその他のジアミンとの混合物を、テトラカルボン酸二無水物と反応させることによって得られるポリマーを含有する。このポリマーとはポリアミック酸またはポリアミック酸の誘導体であり、それぞれ単独に用いられてもよく、ポリアミック酸とその誘導体の混合物であってもよい。
【0091】
ポリアミック酸の誘導体とは、1)ポリアミック酸を完全に脱水閉環反応させて得られるポリイミド、2)ポリアミック酸を部分的に脱水閉環反応させて得られる部分イミド化ポリアミック酸、3)ポリアミック酸エステル、4)テトラカルボン酸二無水物の一部をジカルボン酸に置き換えることによって得られるポリアミック酸−ポリアミド共重合体、5)このポリアミック酸−ポリアミド共重合体の一部もしくは全部を脱水閉環反応させて得られるポリアミドイミドが挙げられる。これらのうちポリイミドおよび部分イミド化ポリアミック酸が好ましく、ポリイミドがより好ましい。本明細書では、実施例を除いて、ポリアミック酸およびその誘導体の総称として「ポリアミック酸」を用いる。
【0092】
ポリアミック酸を製造する際には、ジアミンにモノアミンを添加してもよい。モノアミンを添加することによって、ポリアミック酸を生成する際の重合反応のターミネーションを起こすことができ、それ以上の重合反応の進行を抑えることができる。即ち、得られる重合体(ポリアミック酸またはその誘導体)の分子量を容易に制御することができ、例えば本発明の効果が損なわれることなく液晶配向剤の塗布特性を改善することができる。モノアミンの添加割合は、目的とするポリアミック酸の分子量を考慮して適宜調整すればよいが、全アミン成分に対するモノアミンの比率は10モル%以下にすることが好ましい。
【0093】
本発明の効果が損なわれなければ、2種以上のモノアミンを添加してもよい。モノアミンの例はアニリン、4−ヒドロキシアニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−オクタデシルアミン、およびn−エイコシルアミンである。
【0094】
本発明では、ジアミンをテトラカルボン酸二無水物と反応させてポリアミック酸を得るに際して、ジアミン(I)の群から選択されるジアミンを単独でまたは複数のジアミン(I)の混合物を用いることができる。ジアミン(I)の群から選択されるジアミンとその他のジアミンとの混合物を用いることもできる。このとき、その他のジアミンの好ましい例の1つは、ジアミン(III)〜(IX)およびジアミン(XV)の群から選ばれる非側鎖型ジアミンの少なくとも1つである。特に高いプレティルト角を必要とする液晶表示素子に用いる場合には、その他のジアミンはジアミン(X)〜(XIV)の群から選ばれる側鎖型ジアミンの少なくとも1つを用いることが好ましい。その他のジアミンはジアミン(III)〜(IX)およびジアミン(XV)の群から選ばれる非側鎖型ジアミンの少なくとも1つと、側鎖型ジアミンの少なくとも1つの混合物でもよい。この側鎖型ジアミンとしては、ジアミン(X)〜(XIV)の群から選ばれる側鎖型ジアミンの少なくとも1つが好ましい。前記の[5]〜[8]項はジアミン(I)の群から選択されるジアミンと、非側鎖型ジアミンおよび/または側鎖型ジアミンの組み合わせの好ましい例である。
【0095】
本発明の液晶配向剤では、上記のようにジアミン(I)またはジアミン(I)とその他のジアミンの混合物をテトラカルボン酸二無水物と反応させて得られたポリアミック酸をポリマー成分として含有する。このポリアミック酸は1つを単独で用いてもよく、2つ以上を混合して用いてもよい。
【0096】
本発明の液晶配向剤では、ジアミン(I)由来のポリアミック酸と、ジアミン(I)を含まない原料由来のポリアミック酸の混合物をポリマー成分としてもよい。このようなポリアミック酸の混合物の好ましい例の1つは、ジアミン(I)の群から選択されるジアミンの少なくとも1つと、ジアミン(III)〜ジアミン(IX)およびジアミン(XV)の群から選ばれる非側鎖型ジアミンの少なくとも1つとの混合物をテトラカルボン酸二無水物と反応させて得られるポリアミック酸と、前記の非側鎖型ジアミンの少なくとも1つをテトラカルボン酸二無水物と反応させて得られるポリアミック酸を反応させて得られるポリアミック酸との混合物である。
【0097】
好ましい例のもう1つは、ジアミン(I)の群から選択されるジアミンの少なくとも1つ、ジアミン(III)〜(IX)ならびにジアミン(XV)の群から選ばれる非側鎖型ジアミンの少なくとも1つ、およびジアミン(X)〜(XIV)の群から選ばれる側鎖型ジアミンの少なくとも1つとの混合物をテトラカルボン酸二無水物と反応させて得られるポリアミック酸と、前記の非側鎖型ジアミンの少なくとも1つをテトラカルボン酸二無水物と反応させて得られるポリアミック酸を反応させて得られるポリアミック酸との混合物である。
【0098】
<テトラカルボン酸二無水物>
本発明の酸成分は1つまたは2つ以上のテトラカルボン酸二無水物からなる。テトラカルボン酸二無水物は芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族以外のテトラカルボン酸二無水物に大別される。芳香族以外のテトラカルボン酸二無水物の例は、脂環式テトラカルボン酸二無水物および脂肪族テトラカルボン酸二無水物である。本発明における芳香族テトラカルボン酸二無水物は、4つのカルボキシル基が1つまたは複数の芳香環に直接結合しているテトラカルボン酸二無水物を指す。
【0099】
芳香族テトラカルボン酸二無水物の例を以下に示す。
【化48】

【0100】
【化49】

【0101】
上記の芳香族テトラカルボン酸二無水物のうち、酸無水物(1)、酸無水物(2)、酸無水物(5)〜酸無水物(7)、酸無水物(11)および酸無水物(17)が好ましく、酸無水物(1)が特に好ましい。
【0102】
脂環式テトラカルボン酸二無水物の例を以下に示す。
【化50】

【0103】
【化51】

【0104】
【化52】

【0105】
上記の脂環式テトラカルボン酸二無水物のうち、酸無水物(19)、酸無水物(25)、酸無水物(35)〜酸無水物(37)、酸無水物(39)、酸無水物(44)および酸無水物(49)が好ましく、酸無水物(19)がより好ましい。
【0106】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物の例を以下に示す。下記の例のうち酸無水物(23)および酸無水物(68)が好ましい。
【化53】

【0107】
本発明では、上記の酸無水物(1)〜酸無水物(68)以外のテトラカルボン酸二無水物も用いることができる。その例として側鎖基を有するテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。側鎖基を有するテトラカルボン酸二無水物を用いることによって、液晶表示素子におけるプレティルト角を大きくすることができる。側鎖基を有するテトラカルボン酸二無水物としては、例えばステロイド骨格を有する酸無水物(69)および酸無水物(70)が挙げられる。
【0108】
【化54】

【0109】
ポリアミック酸を製造する際には、テトラカルボン酸二無水物にジカルボン酸無水物を添加して用いてもよい。そうすることによって、ポリアミック酸を生成する際の重合反応のターミネーションを起こすことができ、それ以上の重合反応の進行を抑えることができる。即ち、得られるポリマー(ポリアミック酸)の分子量を容易に制御することができ、例えば本発明の効果が損なわれることなく液晶配向剤の塗布特性を改善することができる。ジカルボン酸無水物の添加割合は、目的とするポリアミック酸の分子量を考慮して適宜調整すればよいが、全酸成分に対するジカルボン酸の比率は10モル%以下にすることが好ましい。添加するジカルボン酸無水物の種類は、本発明の効果が損なわれなければ2つ以上用いてもよい。ジカルボン酸無水物の例は、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、n−デシルサクシニック酸無水物、n−ドデシルサクシニック酸無水物、n−テトラデシルサクシニック酸無水物、n−ヘキサデシルサクシニック酸無水物およびシクロヘキサンジカルボン酸無水物である。
【0110】
本発明では、ポリアミック酸を製造する際に、モノイソシアネート化合物をさらに添加してもよい。モノイソシアネート化合物を添加することによって、得られるポリアミック酸の末端が修飾され、分子量が調節される。この末端修飾型のポリアミック酸を用いることにより、例えば本発明の効果が損なわれることなく液晶配向剤の塗布特性を改善することができる。モノイソシアネート化合物の添加量は、ジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物の総量に対して1〜10モル%であることが、前記の観点から好ましい。モノイソシアネート化合物としては、例えばフェニルイソシアネートおよびナフチルイソシアネートが挙げられる。
【0111】
<ポリアミック酸の合成>
本発明のポリアミック酸はポリイミド膜の形成に用いられる公知のポリアミック酸と同様に製造することができる。すなわち、窒素気流下、ジアミンを脱水したN−メチル−2−ピロリドン等の適当な溶媒に攪拌、溶解したところへ、同じ溶媒に溶解したテトラカルボン酸二無水物を加えて、温度0〜70℃で1〜48時間攪拌することにより、ポリアミック酸の溶液を得ることができる。ジアミンとテトラカルボン酸二無水物の仕込み量はほぼ等モルとすることが好ましい。
【0112】
ポリアミック酸の分子量は、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、10,000〜500,000であることが好ましく、20,000〜200,000であることがより好ましい。ポリアミック酸の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による測定値から求めることができる。
【0113】
ポリアミック酸は、多量の貧溶剤で沈殿させて得られる固形分をIR、NMRで分析することによりその存在を確認することができる。ポリアミック酸をKOHやNaOH等の強アルカリの水溶液によって分解し、その分解物の有機溶剤による抽出物をGC、HPLCもしくはGC−MSで分析することにより、使用されている原料を確認することができる。
【0114】
<添加剤>
本発明の液晶配向剤は、前記ポリアミック酸以外の他の成分をさらに含有してもよい。例えば、本発明の液晶配向剤は、液晶表示素子の電気特性を長期に安定させる観点から、アルケニル置換ナジイミド化合物をさらに含有していてもよい。このアルケニル置換ナジイミド化合物の好ましい例を次に示す。
【0115】
【化55】

【化56】

【化57】

【0116】
本発明の液晶配向剤は、例えば液晶表示素子の電気特性を長期に安定させる観点から、ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物をさらに含有していてもよい。ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物としては、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸アミド等の(メタ)アクリル酸誘導体、およびビスマレイミドが挙げられ、ラジカル重合性不飽和二重結合を2つ以上有する(メタ)アクリル酸誘導体がより好ましい。
【0117】
また例えば、本発明の液晶配向剤は、液晶表示素子における電気特性の長期安定性の観点から、オキサジン化合物をさらに含有していてもよい。オキサジン化合物としては、例えば式(a)〜式(f)に示す化合物が挙げられる。
【化58】

【0118】
式(a)〜式(f)において、R41およびR42は炭素数1〜30の有機基であり;R43〜R46は水素または炭素数1〜6の炭化水素基であり;X20は単結合、−O−、−S−、−S−S−、−SO2−、−CO−、−CONH−、−NHCO−、−C(CH32−、−C(CF32−、−(CH2m−、−O−(CH2m−O−、−S−(CH2m−S−であって、mは1〜6の整数であり;Y20は独立して単結合、−O−、−S−、−CO−、−C(CH32−、−C(CF32−または炭素数1〜3のアルキレンである。
【0119】
本発明の液晶配向剤は、例えば液晶表示素子における電気特性の長期安定性の観点から、分子内にエポキシ環を1つまたは2つ以上有するエポキシ化合物をさらに含有してもよい。このエポキシ化合物はエポキシ環を有するモノマー、オリゴマーまたは重合体であってもよい。
【0120】
本発明の液晶配向剤は各種添加剤をさらに含有していてもよい。各種添加剤としては、例えばポリアミック酸およびその誘導体以外のポリマー、および低分子化合物が挙げられ、それぞれの目的に応じて選択して使用することができる。このポリマーとしては、有機溶剤に可溶性のポリマーが挙げられる。このようなポリマーを本発明の液晶配向剤に添加することは、形成される液晶配向膜の電気特性や配向性を制御する観点から好ましい。該ポリマーとしては、例えばポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル、ポリエポキサイド、ポリエステルポリオール、シリコーン変性ポリウレタン、およびシリコーン変性ポリエステルが挙げられる。
【0121】
前記低分子化合物としては、例えば1)塗布性の向上を望むときにはこの目的に沿った界面活性剤、2)帯電防止の向上を必要とするときは帯電防止剤、3)基板との密着性や耐ラビング性の向上を望むときにはシランカップリング剤やチタン系のカップリング剤、また、4)低温でイミド化を進行させる場合はイミド化触媒が挙げられる。
【0122】
シランカップリング剤としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、パラアミノフェニルトリメトキシシラン、パラアミノフェニルトリエトキシシラン、メタアミノフェニルトリメトキシシラン、メタアミノフェニルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロピルアミン、およびN,N’−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミンが挙げられる。
【0123】
イミド化触媒としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等の脂肪族アミン類;N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、メチル置換アニリン、ヒドロキシ置換アニリン等の芳香族アミン類;ピリジン、メチル置換ピリジン、ヒドロキシ置換ピリジン、キノリン、メチル置換キノリン、ヒドロキシ置換キノリン、イソキノリン、メチル置換イソキノリン、ヒドロキシ置換イソキノリン、イミダゾール、メチル置換イミダゾール、ヒドロキシ置換イミダゾール等の環式アミン類が挙げられる。前記イミド化触媒は、N,N−ジメチルアニリン、o−ヒドロキシアニリン、m−ヒドロキシアニリン、p−ヒドロキシアニリン、o−ヒドロキシピリジン,m−ヒドロキシピリジン,p−ヒドロキシピリジン、およびイソキノリンから選ばれる一種または二種以上であることが好ましい。
【0124】
<溶剤>
本発明の液晶配向剤は、液晶配向剤の塗布性や前記ポリアミック酸の濃度の調整の観点から、溶剤をさらに含有していてもよい。この溶剤は、ポリマー成分を溶解する能力を持った溶剤であれば格別制限なく適用可能である。前記溶剤は、ポリアミック酸、可溶性ポリイミド等のポリマー成分の製造工程や用途面で通常使用されている溶剤を広く含み、使用目的に応じて、適宜選択できる。前記溶剤は一種でも二種以上の混合溶剤であってもよい。このような溶剤としては、前記ポリアミック酸の親溶剤や、塗布性改善を目的とした他の溶剤が挙げられる。
【0125】
ポリアミック酸に対し親溶剤である非プロトン性極性有機溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタム、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、ジエチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン等のラクトンが挙げられる。
【0126】
塗布性改善等を目的とした他の溶剤の例としては、乳酸アルキル、3−メチル−3−メトキシブタノール、テトラリン、イソホロン、エチレングリコールモノアルキルエーテル(例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル)、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル(例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル)、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル(例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル)、マロン酸ジアルキル(例えば、マロン酸ジエチル)、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル(例えば、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル)、およびこれらの化合物の末端OH基をエステル化したアセテート類が挙げられる。
【0127】
これらのうち特に好ましい溶剤は、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルイミダゾリジノン、γ−ブチロラクトン、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、およびジプロピレングリコールモノメチルエーテルである。
【0128】
本発明において液晶配向剤中の前記ポリアミック酸を含むポリマー成分の濃度は、特に限定されないが、0.1〜40重量%が好ましい。該液晶配向剤を基板に塗布するときには、膜厚調整のため含有されているポリマー成分を予め溶剤により希釈する操作が必要とされることがある。このとき液晶配向剤に対して溶剤を容易に混合するのに適した粘度に液晶配向剤の粘度を調整する観点から、前記ポリマー成分の濃度は40重量%以下であることが好ましい。
【0129】
また液晶配向剤中における前記ポリマー成分の濃度は、液晶配向剤の塗布方法に応じて調整される場合もある。液晶配向剤の塗布方法がスピンナー法や印刷法のときには、膜厚を良好に保つために、前記ポリマー成分の濃度を通常10重量%以下とすることが多い。その他の塗布方法、例えばディッピング法やインクジェット法では更に濃度を低くすることもあり得る。一方、前記ポリマー成分の濃度が0.1重量%以上であると、得られる液晶配向膜の膜厚が最適となり易い。従って、前記ポリマー成分の濃度は、通常のスピンナー法や印刷法等では0.1重量%以上、好ましくは0.5〜10重量%である。しかしながら、液晶配向剤の塗布方法によっては、更に低い濃度で使用してもよい。
【0130】
なお、液晶配向膜の作製に用いる場合において、本発明の液晶配向剤の粘度は、この液晶配向剤の膜を形成する手段や方法に応じて決めることができる。例えば、印刷機を用いて液晶配向剤の膜を形成する場合は、十分な膜厚を得る観点から5mPa・s以上であることが好ましく、また印刷ムラを抑制する観点から100mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは10〜80mPa・sである。スピンコートによって液晶配向剤を塗布して液晶配向剤の膜を形成する場合は、同様の観点から、5〜200mPa・sであることが好ましく、より好ましくは10〜100mPa・sである。液晶配向剤の粘度は、溶剤による希釈や攪拌を伴う養生によって小さくすることができる。
【0131】
<液晶配向膜>
本発明の液晶配向膜は、前述した本発明の液晶配向剤の塗膜が加熱されて形成される膜である。本発明の液晶配向膜は、液晶配向剤から液晶配向膜を作製する通常の方法によって得ることができ、例えば本発明の液晶配向膜は、本発明の液晶配向剤の塗膜を形成する工程と、これを加熱して焼成する工程とによって得ることができる。本発明の液晶配向膜は高いプレティルト角を必要とする液晶表示素子に用いられるため、通常はラビング処理を必要としないが、適用する液晶表示素子の製造工程で必要が生じれば、前記焼成工程で得られる膜をラビング処理してもよい。
【0132】
前記塗膜は、通常の液晶配向膜の作製と同様に、液晶表示素子における基板に本発明の液晶配向剤を塗布することによって形成することができる。前記基板には、ITO(Indium TinOxide)電極等の電極やカラーフィルタ等が設けられていてもよいガラス製の基板が挙げられる。
【0133】
液晶配向剤を基板に塗布する方法としてはスピンナー法、印刷法、ディッピング法、滴下法、インクジェット法等が一般に知られている。これらの方法は本発明においても同様に適用可能である。
【0134】
前記塗膜の焼成は、前記ポリアミック酸が脱水・閉環反応を呈するのに必要な条件で行うことができる。前記塗膜の焼成は、オーブンまたは赤外炉の中で加熱処理する方法、ホットプレート上で加熱処理する方法等が一般に知られている。これらの方法も本発明において同様に適用可能である。一般に150〜300℃程度の温度で1分間〜3時間行うことが好ましい。
【0135】
前記ラビング処理は、通常の液晶配向膜の配向処理のためのラビング処理と同様に行うことができ、本発明の液晶配向膜において十分なリタデーションが得られる条件であればよい。特に好ましい条件は、毛足押し込み量0.2〜0.8mm、ステージ移動速度5〜250mm/sec、ローラー回転速度500〜2,000rpmである。液晶配向膜の配向処理方法としては、ラビング法の他に、光配向法や転写法等が一般に知られている。本発明の効果が得られる範囲において、これらの他の配向処理方法を前記ラビング処理において併用してもよい。
【0136】
本発明の液晶配向膜は、前述した工程以外の他の工程をさらに含む方法によって好適に得られる。このような他の工程としては、前記塗膜を乾燥させる工程や、ラビング処理前後の膜を洗浄液で洗浄する工程等が挙げられる。
【0137】
乾燥工程は、前記焼成工程と同様に、オーブンまたは赤外炉の中で加熱処理する方法、ホットプレート上で加熱処理する方法等が一般に知られている。これらの方法も前記乾燥工程に同様に適用可能である。乾燥工程は溶剤の蒸発が可能な範囲内の温度で実施することが好ましく、前記焼成工程における温度に対して比較的低い温度で実施することがより好ましい。
【0138】
配向処理の前後における液晶配向膜の洗浄液による洗浄方法としては、ブラッシング、ジェットスプレー、蒸気洗浄または超音波洗浄等が挙げられる。これらの方法は単独で行ってもよいし、併用してもよい。洗浄液としては純水または、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の各種アルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、塩化メチレン等のハロゲン系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類を用いることができるが、これらに限定されるものではない。もちろん、これらの洗浄液は十分に精製された不純物の少ないものが用いられる。このような洗浄方法は、本発明の液晶配向膜の形成における前記洗浄工程にも適用することができる。
【0139】
本発明の液晶配向膜の膜厚は、特に限定されないが、10〜300nmであることが好ましく、30〜200nmであることがより好ましい。本発明の液晶配向膜の膜厚は、段差計やエリプソメータ等の公知の膜厚測定装置によって測定することができる。
【0140】
本発明の液晶表示素子は、一対の基板と液晶分子を含有し、この一対の基板の間に形成される液晶層と、液晶層に電圧を印加する電極と、液晶分子を所定の方向に配向させる本発明の液晶配向膜とを有する。
【0141】
基板には本発明の液晶配向膜で前述したガラス製の基板を用いることができ、電極には本発明の液晶配向膜で前述したようにガラス製の基板に形成されるITO電極を用いることができる。液晶層は液晶配向膜面を内側にした基板間に密封される液晶組成物によって形成される。
【0142】
使用する液晶組成物には、特に制限はなく、誘電率異方性が正または負の各種の液晶組成物を用いることができる。誘電率異方性が正の好ましい液晶組成物には、特許第3086228号公報、特許第2635435号公報、特表平5−501735号公報、特開平8−157826号公報、特開平8−231960号公報、特開平9−241644号公報(EP885272A1明細書)、特開平9−302346号公報(EP806466A1明細書)、特開平8−199168号公報(EP722998A1明細書)、特開平9−235552号公報、特開平9−255956号公報、特開平9−241643号公報(EP885271A1明細書)、特開平10−204016号公報(EP844229A1明細書)、特開平10−204436号公報、特開平10−231482号公報、特開2000−087040公報、特開2001−48822公報等に開示されている液晶組成物が挙げられる。
【0143】
誘電率異方性が負の好ましい液晶組成物には、特開昭57−114532号公報、特開平2−4725号公報、特開平4−224885号公報、特開平8−40953号公報、特開平8−104869号公報、特開平10−168076号公報、特開平10−168453号公報、特開平10−236989号公報、特開平10−236990号公報、特開平10−236992号公報、特開平10−236993号公報、特開平10−236994号公報、特開平10−237000号公報、特開平10−237004号公報、特開平10−237024号公報、特開平10−237035号公報、特開平10−237075号公報、特開平10−237076号公報、特開平10−237448号公報(EP967261A1明細書)、特開平10−287874号公報、特開平10−287875号公報、特開平10−291945号公報、特開平11−029581号公報、特開平11−080049号公報、特開2000−256307公報、特開2001−019965公報、特開2001−072626公報、特開2001−192657公報等に開示されている液晶組成物が挙げられる。
【0144】
前記誘電率異方性が正または負の液晶組成物に少なくとも1つの光学活性化合物を添加して使用することも何ら差し支えない。
【0145】
本発明の液晶配向膜を用いれば、種々の電界方式用の液晶表示素子を形成することができる。縦電界方式用の液晶表示素子は、比較的大きなプレティルト角を要する。従って、縦電界方式用の液晶表示素子には、側鎖型ジアミンまたはこれを含むジアミン混合物を用いて得られる側鎖型ポリアミック酸を含有する液晶配向剤から形成される液晶配向膜が好適に用いられる。本発明の液晶配向膜は、縦電界方式用の液晶表示素子に好適に用いられる。本発明の液晶配向剤を原料として作製される液晶配向膜は、その原料であるポリマーを適宜選択することにより、種々の表示駆動方式の液晶表示素子に適用させることができる。
【0146】
本発明の液晶表示素子は、前述した構成要素以外の要素をさらに有していてもよい。このような他の構成要素として、本発明の液晶表示素子には、偏光板(偏光フィルム)、波長板、光散乱フィルム、駆動回路等の、液晶表示素子に通常使用される構成要素が実装されてもよい。
【実施例】
【0147】
以下、本発明を実施例により説明する。なお、実施例において用いる化合物は次の通りである。
<テトラカルボン酸二無水物>
酸無水物(1):ピロメリット酸二無水物
酸無水物(19):1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
酸無水物(23):1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物
酸無水物(25):1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物
酸無水物(37):3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物
酸無水物(39):3,5,6―トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン 2:3,5:6−酸二無水物
酸無水物(49):2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物
酸無水物(68):エチレンジアミン四酢酸二無水物
【0148】
<ジアミン>
ジアミン(I−1):4−(4,6−ビス(4−アミノフェニルアミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェニル 4−ドデシルオキシベンゾアート
ジアミン(I−2):N2,N4−ビス(4−アミノフェニル)−N6−(4−ドデシルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン
ジアミン(I−3):4−((4,6―ビス(4−アミノフェニルアミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イル)(メチル)アミノ)フェニル 4−ドデシルオキシベンゾアート
ジアミン(I−33):4−(4,6−ビス(4−アミノフェニルアミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェニル 4−オクチルオキシベンゾアート
ジアミン(I−34):4−(4,6−ビス(4−アミノフェニルアミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェニル 4−ヘキサデシルオキシベンゾアート
ジアミン(BATT):非特許文献2および3に記載のX=n−ドデシルオキシである化合物:4−(4,6−ビス(4−アミノフェニルアミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェニル 3,4,5−トリ(ドデシルオキシ)ベンゾアート
ジアミン(VII−1):4,4’−ジアミノジフェニルメタン
ジアミン(VII−5):4,4’−メチレンビス(3−メチルアニリン)
ジアミン(VII−7):4,4’−ジアミノ−1,2−ジフェニルエタン
ジアミン(IX−2):1,3−ビス(4−(4−アミノフェニルメチル)フェニル)プロパン
ジアミン(XIII−4−1):(XIII−4)のR30がn−ペンチルである化合物:1,1−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)−4−(トランス−4−n−ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキサン
【0149】
<溶剤>
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
BC :ブチルセロソルブ(エチレングリコールモノブチルエーテル)
<添加剤>
化合物:3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(製品名:セロキサイド2021P):EHE
化合物:2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン:EHS
化合物:4,4’−メチレンビス(N,N−ジグリシジルアニリン):MGA
化合物:N,N’−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド:HBA
【0150】
<ジアミンの合成>
[合成例1] ジアミン(I−1)の合成
[1−1] 4−(4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェニル 4−ドデシルオキシベンゾアートの合成
フラスコに塩化シアヌル8.82gとTHF200mlを入れ、氷浴で0〜5℃に冷却しながら攪拌して完全に溶解した。ここに4−アミノフェニル 4−ドデシルオキシベンゾアート17.28gをTHF150mlに溶解した溶液を攪拌しながら滴下した。滴下終了後、温度を0〜5℃に保ちながら2時間攪拌を続けた。ここに固体の炭酸ナトリウム2.53gを、溶液の温度が5℃を超えないように少量ずつ投入した。滴下終了後、温度を0〜5℃に保ちながらさらに4時間攪拌した。攪拌終了後反応混合物を分液ロートに移して飽和食塩水で三回洗浄し、採取した有機層を硫酸マグネシウムで一晩脱水した。硫酸マグネシウムを濾過して除去した後溶媒を減圧留去し、残留物を60℃で6時間減圧乾燥した。これをトルエンから再結晶して、4−(4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェニル 4−ドデシルオキシベンゾアート19.02g(無色針状晶、収率81.1%)を得た。
【0151】
[1−2] 4−(4,6−ビス(4−アミノフェニルアミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェニル 4−ドデシルオキシベンゾアート:(I−1)の合成
三口フラスコにp−フェニレンジアミン60.33g、1,4−ジオキサン100ml、炭酸ナトリウム3.70gを加え、還流温度で攪拌した。そこに、[1−1]で合成した4−(4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェニル 4−(ドデシルオキシ)ベンゾアート19.02gを1,4−ジオキサン100mlに溶解した溶液を5時間かけて滴下した。還流温度で24時間攪拌した後、反応混合物を多量の熱水に投入し、析出した固体を吸引濾過によって分離した。得られた固体をナスフラスコに移してアセトン1000mlに溶解し、還流温度で1時間攪拌した。溶液を室温まで冷却してから吸引濾過して不溶物を除いた。溶媒を減圧留去し、残留物を60℃で6時間減圧乾燥させた。これをトルエンから再結晶して、4−(4,6−ビス(4−アミノフェニルアミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェニル 4−ドデシルオキシベンゾアート17.53g(乳白色針状晶、収率72.9%)を得た。図1に本化合物の1H−NMRのチャートを示した。
【0152】
[合成例2] ジアミン(I−2)の合成
4−アミノフェニル 4−ドデシルオキシベンゾアートに換えて4−ドデシルアニリンを用いた以外は合成例1に記載の方法に準じて、N2,N4−ビス(4−アミノフェニル)−N6−(4−ドデシルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン:(I−2)を合成した。図2に本化合物の1H−NMRのチャートを示した。
【0153】
[合成例3] ジアミン(I−3)の合成
4−アミノフェニル 4−ドデシルオキシベンゾアートに換えて4−(N−メチルアミノ)フェニル 4−ドデシルオキシベンゾアートを用いた以外は合成例1に記載の方法に準じて、4−((4,6―ビス(4−アミノフェニルアミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イル)(メチル)アミノ)フェニル 4−ドデシルオキシベンゾアート:(I−3)を合成した。図3に本化合物の1H−NMRのチャートを示した。
【0154】
[合成例4] ジアミン(I−33)の合成
4−アミノフェニル 4−ドデシルオキシベンゾアートに換えて4−アミノフェニル 4−オクチルオキシベンゾアートを用いた以外は合成例1に記載の方法に準じて、4−(4,6―ビス(4−アミノフェニルアミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェニル 4−オクチルオキシベンゾアート:(I−33)を合成した。図4に本化合物の1H−NMRのチャートを示した。
【0155】
[合成例5] ジアミン(I−34)の合成
4−アミノフェニル 4−ドデシルオキシベンゾアートに換えて4−アミノフェニル 4−ヘキサドデシルオキシベンゾアートを用いた以外は合成例1に記載の方法に準じて、4−(4,6―ビス(4−アミノフェニルアミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェニル 4−ヘキサドデシルオキシベンゾアート:(I−34)を合成した。図5に本化合物の1H−NMRのチャートを示した。
【0156】
<ポリアミック酸の合成>
[ポリアミック酸合成例1]
温度計、攪拌機、原料投入口および窒素ガス導入口を備えた100ml四つ口フラスコにジアミン(I−1)4.613gおよび脱水NMP27.0gを入れ、乾燥窒素気流下攪拌溶解した。次いで酸無水物(1)0.730g、酸無水物(19)0.657gおよび脱水NMP27.0gを入れ、室温で30時間攪拌した。攪拌中に温度が上昇する場合は、水浴を用いて温度を約70℃以下に抑えて反応させた。得られた反応液にBC40.0gを加えて、未反応のモノマー、副生成物を含むポリマー固形分(以降、ポリマー固形分と略記する。)の濃度が6重量%のポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸をPA1とする。PA1の重量平均分子量は75,400であった。
【0157】
ポリアミック酸の重量平均分子量は、得られたポリアミック酸をリン酸−DMF混合溶液(リン酸/DMF=0.6/100:重量比)でポリアミック酸濃度が約2重量%になるように希釈し、2695セパレーションモジュール・2414示差屈折計(Waters製)を用いて、上記混合溶液を展開剤としてGPC法により測定し、ポリスチレン換算することにより求めた。なお、カラムはHSPgel RT MB−M(Waters製)を使用し、カラム温度50℃、流速0.40ml/minの条件で測定した。
【0158】
[ポリアミック酸合成例2〜17および19〜28]
表1に示したようにテトラカルボン酸二無水物およびジアミンを変更した以外は、合成例1に準拠してポリアミック酸溶液PA2〜17およびPA19〜PA28を製造した。合成例1を含めて、結果を表1にまとめた。
【0159】
[可溶性ポリイミド合成例18]
温度計、攪拌機、原料投入口および窒素ガス導入口を備えた100ml四つ口フラスコにジアミン(I−1)4.5269gおよび脱水NMP24.0gを入れ、乾燥窒素気流下攪拌溶解した。次いで酸無水物(49)1.4731gおよび脱水NMP20.0gを入れ、室温で30時間攪拌した。攪拌中に温度が上昇する場合は、水浴を用いて温度を約70℃以下に抑えて反応させた。得られたポリアミック酸中間体溶液50gにイミド化触媒として無水酢酸 2g、ピリジン0.5gを加え、50℃で3時間反応させ、ポリイミド溶液を得た。この溶液を200mlメタノール中に投入し、得られた白色沈殿をろ別し、ポリイミド粉末を得た。得られたポリイミドのイミド化率を1H−NMRより求めると、53%であった。ここでイミド化率は、次のようにして求めた。
<イミド化率>
ポリイミド重合体を室温で減圧乾燥した後、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解させ、テトラメチルシランを基準物質として室温で 1H−NMRを測定し、下記式(i)に示される式により求めた。
式(i)イミド化率(%)=(1−A1/A2×B)×100
A1:NH基のプロトン由来のピーク面積(10ppm)
A2:芳香族基のプロトン由来のピーク面積(7〜8ppm)
B:重合体の前駆体(ポリアミック酸)における、NH基のプロトン1個に対する芳香族由来のプロトンの個数割合
得られたポリイミド3gを脱水NMP37.0g、BC10.0gに溶かし、6重量%のポリイミド溶液を調製した。このポリイミドをPI18とする。結果を表1に記載する。
【0160】
【表1】


【0161】
[ポリアミック酸合成例29〜31]
非特許文献2および3に記載されたジアミン(BATT)を用いた他は合成例1に準拠してポリアミック酸溶液PAX〜PAZを製造した。結果を表2にまとめた。
【化59】

【0162】
【表2】

【0163】
<塗布性の評価>
前記のポリアミック酸溶液PA1、PA2、PA16、PAX、PAY、およびPAZをITO付きガラス基板にスピンナーにて塗布し、ハジキやムラ等の有無を目視にて観察した。結果を表3にまとめた。表中、ハジキやムラがないものを塗布性○とし、あるものを塗布性×とした。
【0164】
【表3】

【0165】
[実施例1]
ポリアミック酸合成例1で製造した濃度6重量%のポリアミック酸溶液PA1に、NMP/BC=1/1(重量比)の混合溶媒を加えてポリマー固形分濃度が4重量%になるように希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、下記の通り液晶表示素子を作製した。
【0166】
<液晶表示素子の作製>
液晶配向剤を2枚のITO電極付きガラス基板にスピンナーにて塗布し、膜厚80nmの膜を形成した。塗膜後80℃にて約1分間加熱乾燥した後、210℃にて15分間加熱処理を行い、液晶配向膜を形成した。次いで、液晶配向膜が形成されたガラス基板を超純水中で5分間超音波洗浄してから、120℃のオーブンで30分間乾燥した。
【0167】
一方のガラス基板に4μmのギャップ材を散布し、液晶配向膜を形成した面を内側にして2枚のガラス基板を配置させた後、エポキシ硬化剤でシールし、ギャップ4μmのセルを作製した。このセルに下記の液晶組成物を注入し、注入口を光硬化性封止剤で封止した。次いで、110℃で30分間加熱処理を行い、液晶表示素子を作製した。
【0168】
【化60】

【0169】
[実施例2]
ポリアミック酸合成例2で製造した濃度6重量%のポリアミック酸溶液PA2に、NMP/BC=1/1(重量比)の混合溶媒を加えてポリマー固形分濃度が4重量%になるように希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、実施例1と同様に液晶表示素子を作製した。
【0170】
[実施例3]
ポリアミック酸合成例3で製造した濃度6重量%のポリアミック酸溶液PA3に、NMP/BC=1/1(重量比)の混合溶媒を加えてポリマー固形分濃度が4重量%になるように希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、実施例1と同様に液晶表示素子を作製した。
【0171】
[実施例4]
ポリアミック酸合成例4で製造した濃度6重量%のポリアミック酸溶液PA4に、NMP/BC=1/1(重量比)の混合溶媒を加えてポリマー固形分濃度が4重量%になるように希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、実施例1と同様に液晶表示素子を作製した。
【0172】
[実施例5]
ポリアミック酸合成例5で製造した濃度6重量%のポリアミック酸溶液PA5に、NMP/BC=1/1(重量比)の混合溶剤を加えてポリマー固形分濃度が4重量%になるように希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、実施例1と同様に液晶表示素子を作製した。
【0173】
[実施例6]
ポリアミック酸合成例6で製造した濃度6重量%のポリアミック酸溶液PA6に、NMP/BC=1/1(重量比)の混合溶剤を加えてポリマー固形分濃度が4重量%になるように希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、実施例1と同様に液晶表示素子を作製した。
【0174】
[実施例7]
ポリアミック酸合成例7で製造した濃度6重量%のポリアミック酸溶液PA7に、NMP/BC=1/1(重量比)の混合溶剤を加えてポリマー固形分濃度が4重量%になるように希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、実施例1と同様に液晶表示素子を作製した
【0175】
[実施例8]
ポリアミック酸合成例8で製造した濃度6重量%のポリアミック酸溶液PA8に、NMP/BC=1/1(重量比)の混合溶剤を加えてポリマー固形分濃度が4重量%になるように希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、実施例1と同様に液晶表示素子を作製した。
【0176】
[実施例9]
ポリアミック酸合成例9で製造した濃度6重量%のポリアミック酸溶液PA9に、NMP/BC=1/1(重量比)の混合溶剤を加えてポリマー固形分濃度が4重量%になるように希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、実施例1と同様に液晶表示素子を作製した。
【0177】
[実施例10]
ポリアミック酸合成例10で製造した濃度6重量%のポリアミック酸溶液PA10に、NMP/BC=1/1(重量比)の混合溶剤を加えてポリマー固形分濃度が4重量%になるように希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、実施例1と同様に液晶表示素子を作製した。
【0178】
[実施例11]
ポリアミック酸合成例11で製造した濃度6重量%のポリアミック酸溶液PA11に、NMP/BC=1/1(重量比)の混合溶剤を加えてポリマー固形分濃度が4重量%になるように希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、実施例1と同様に液晶表示素子を作製した。
【0179】
[実施例12]
ポリアミック酸合成例12で製造した濃度6重量%のポリアミック酸溶液PA12に、NMP/BC=1/1(重量比)の混合溶剤を加えてポリマー固形分濃度が4重量%になるように希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、実施例1と同様に液晶表示素子を作製した。
【0180】
[実施例13]
ポリアミック酸合成例13で製造した濃度6重量%のポリアミック酸溶液PA13に、NMP/BC=1/1(重量比)の混合溶剤を加えてポリマー固形分濃度が4重量%になるように希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、実施例1と同様に液晶表示素子を作製した。
【0181】
[実施例14]
ポリアミック酸合成例3で製造した濃度6重量%のポリアミック酸溶液PA3と、ポリアミック酸合成例15で製造した濃度6重量%のポリアミック酸溶液PA15とを重量比2/8で混合した。次いで、NMP/BC=1/1(重量比)の混合溶剤を加えてポリマー固形分濃度が4重量%になるように希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、実施例1と同様に液晶表示素子を作製した。
【0182】
[実施例15]
ポリアミック酸合成例6で製造した濃度6重量%のポリアミック酸溶液PA6と、ポリアミック酸合成例15で製造した濃度6重量%のポリアミック酸溶液PA15とを重量比2/8で混合した。次いで、NMP/BC=1/1(重量比)の混合溶剤を加えてポリマー固形分濃度が4重量%になるように希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、実施例1と同様に液晶表示素子を作製した。
【0183】
[実施例16]
ポリアミック酸合成例16で調製した濃度6重量%のポリアミック酸溶液PA16に、NMP/BC=1/1(重量比)の混合溶剤を加えてポリマー固形分濃度が4重量%になるように希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、実施例1と同様に液晶表示素子を作製した。
【0184】
[実施例17]
ポリアミック酸合成例17で調製した濃度6重量%のポリアミック酸溶液PA17に、NMP/BC=1/1(重量比)の混合溶剤を加えてポリマー固形分濃度が4重量%になるように希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、実施例1と同様に液晶表示素子を作製した。
【0185】
[実施例18]
合成例18で調製した濃度6重量%のポリイミド溶液PI18に、NMP/BC=1/1(重量比)の混合溶剤を加えてポリマー固形分濃度が4重量%になるように希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、実施例1と同様に液晶表示素子を作製した。
【0186】
[実施例19]
ポリアミック酸合成例19で調製した濃度6重量%のポリアミック酸溶液PA19に、NMP/BC=1/1(重量比)の混合溶剤を加えてポリマー固形分濃度が4重量%になるように希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、実施例1と同様に液晶表示素子を作製した。
【0187】
[実施例20]
ポリアミック酸合成例20で調製した濃度6重量%のポリアミック酸溶液PA20に、NMP/BC=1/1(重量比)の混合溶剤を加えてポリマー固形分濃度が4重量%になるように希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、実施例1と同様に液晶表示素子を作製した。
【0188】
[実施例21]
ポリアミック酸合成例13で調製した濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA13)にMGAをポリマー重量当たり20重量%添加した。得られた混合物を、NMP/BC=1/1(重量比)の混合溶剤で4重量%に希釈して液晶配向剤とした。液晶配向剤を用いて、実施例1と同様に液晶表示素子を作製した。
【0189】
[実施例22]
ポリアミック酸合成例17で調製した濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA17)にEHSをポリマー重量当たり20重量%添加した。得られた混合物を、NMP/BC=1/1(重量比)の混合溶剤で4重量%に希釈して液晶配向剤とした。液晶配向剤を用いて、実施例1と同様に液晶表示素子を作製した。
【0190】
[実施例23]
ポリアミック酸合成例6で製造した濃度6重量%のポリアミック酸溶液PA6と、ポリアミック酸合成例15で製造した濃度6重量%のポリアミック酸溶液PA15とを重量比2/8で混合し、EHEをポリマー重量当たり20重量%添加した。次いで、NMP/BC=1/1(重量比)の混合溶剤を加えてポリマー固形分濃度が4重量%になるように希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、実施例1と同様に液晶表示素子を作製した。
【0191】
[比較例1]
ポリアミック酸合成例14で製造した濃度6重量%のポリアミック酸溶液PA14に、NMP/BC=1/1(重量比)の混合溶媒を加えてポリマー固形分濃度が4重量%になるように希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、実施例1と同様に液晶表示素子を作製した。
【0192】
<電気特性の評価>
実施例1〜23、比較例1で作製した液晶表示素子について、イオン密度の測定と長期信頼性の測定を以下のようにして行った。
【0193】
1)イオン密度の測定
東陽テクニカ製液晶物性評価装置6254型を用いてイオン密度の測定を行った。測定条件は、波形:三角波、周波数:0.01Hz、電圧:±10Vであり、測定温度は60℃とした。この値が小さいほど電気特性は良好であると言える。結果を表2に示す。
【0194】
2)イオン密度の保持特性の測定
作製した液晶表示素子について、経時的にイオン密度[pC]を求め、その保持特性を評価した。保持特性の試験方法には、温度100℃の雰囲気中に液晶表示素子を放置し、途中経時的に取り出しイオン密度[pC]を測定する方法を採用した。300時間後および500時間後のイオン密度のデータを表4に示す。表4における増加量は、500時間後のイオン密度から初期(0時間)のイオン密度を減じた値である。イオン密度の増加が小さいほど(例えば、増加量が200未満である場合)イオン密度の保持特性が良好であると言え、また電気特性の長期信頼性が良好であると言える。
【0195】
【表4】

【0196】
[実施例24]
<液晶表示素子の作製>
合成例21で合成した濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA21)を、NMP/BC=1/1(重量比)の混合溶媒を加えて全体を4重量%に希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、下記の通り液晶表示素子を作製した。
【0197】
<液晶表示素子の作製方法>
液晶配向剤を、二枚のITO電極付きガラス基板にスピンナーにて塗布し、膜厚100nmの膜を形成した。塗膜後80℃にて約1分間加熱乾燥した後、210℃にて15分間加熱処理を行い、液晶配向膜を形成した。株式会社飯沼ゲージ製作所製のラビング処理装置を用い、ラビング布(毛足長1.8mm:レーヨン)の毛足押し込み量0.40mm、ステージ移動速度60mm/sec、ローラー回転速度1,000rpmの条件で、得られた液晶配向膜をラビング処理した。その後、液晶配向膜を超純水中で5分間超音波洗浄してからオーブン中120℃で30分間乾燥した。
【0198】
一方のガラス基板に4μmのギャップ材を散布し、液晶配向膜を形成した面を内側にしてラビング方向が逆平行になるように対向配置させた後、エポキシ硬化剤でシールし、ギャップ4μmのアンチパラレルセルを作製した。該セルに、下記に示す液晶組成物を注入し、注入口を光硬化剤で封止した。次いで、110℃で30分間加熱処理を行い、液晶表示素子を作製した。
【0199】
【化61】

【0200】
[実施例25〜31]
表1に記載の濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA22〜PA28)を、NMP/BC=1/1(重量比)の混合溶媒を加えて全体を4重量%に希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、実施例24と同様に液晶表示素子を作製した。
【0201】
[実施例32]
合成例15で合成した濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA15)と合成例24で合成した濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA24)とを重量比8/2で混合し、HBAをポリマー重量当たり20重量%添加した。次いで得られた混合物にNMP/BC=1/1(重量比)の混合溶媒を加えて全体を4重量%に希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、実施例24と同様に液晶表示素子を作製した。
【0202】
[実施例33]
合成例15で合成した濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA15)と合成例27で合成した濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA27)とを重量比8/2で混合した。得られた混合物にNMP/BC=1/1(重量比)の混合溶媒を加えて全体を4重量%に希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、実施例24と同様に液晶表示素子を作製した。
【0203】
[比較例2]
表1に記載の濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA15)を、NMP/BC=1/1(重量比)の混合溶媒を加えて全体を4重量%に希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、実施例24と同様に液晶表示素子を作製した。
【0204】
<電気特性の評価>
実施例24〜33、比較例2で作製した液晶表示素子について、イオン密度と長期信頼性の結果を表5に示した。
【0205】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される側鎖構造を有するジアミン。
【化1】

式(I)において、
1は−H、−F、−CN、炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のフッ素置換アルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、または炭素数1〜30のフッ素置換アルコキシであり;
Aは1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり;
Zは単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CO−、−CONH−、−NHCO−または−(CH2m−であり、mは1〜6の整数であり;
nは0または1であり;そして、
2は−Hまたは炭素数1〜5のアルキルである。
【請求項2】
1が炭素数4〜20のアルキル、炭素数4〜20のフッ素置換アルキル、炭素数4〜20のアルコキシ、または炭素数4〜20のフッ素置換アルコキシであり;
nが0であり;そして、
2が−Hまたは−CH3である、請求項1に記載のジアミン。
【請求項3】
1が炭素数4〜20のアルキル、炭素数4〜20のフッ素置換アルキル、炭素数4〜20のアルコキシ、または炭素数4〜20のフッ素置換アルコキシであり;
nが1であり;
Aが1,4−フェニレンであり;
Zが単結合、−O−、−COO−、−OCO−、または−(CH22−であり;そして、
2が−Hまたは−CH3である、請求項1に記載のジアミン。
【請求項4】
酸成分としてテトラカルボン酸二無水物を、ジアミン成分として請求項1記載の側鎖構造を有するジアミンの少なくとも1つを用い、これらを反応させて得られるポリマー。
【請求項5】
ジアミン成分として、下記式(III)〜(IX)および(XV)で表されるジアミンの群から選択される少なくとも1つをさらに用いる、請求項4に記載のポリマー。
【化2】

式(III)において、A1は−(CH2m−であり、mは1〜6の整数であり;
式(V)、(VII)および(IX)において、Xは単結合、−O−、−S−、−S−S−、−SO2−、−CO−、−NH−、−N(CH3)−、−CONH−、−NHCO−、−C(CH32−、−C(CF32−、−(CH2m−、−O−(CH2m−O−、−N(CH3)−(CH2m−N(CH3)−、または−S−(CH2m−S−であり、mは1〜6の整数であり;
式(VII)において、L1およびL2は−Hであるが、Xが−NH−、−N(CH3)−、−CH2−、−C(CH32−、または−C(CF32−であるときには互いに結合して単結合を形成してもよく;
式(VIII)および(IX)において、Yは単結合、−O−、−S−、−CO−、−C(CH32−、−C(CF32−、または炭素数1〜3のアルキレンであり;
式(VIII)において、環Dはフェニレンまたはピラジン−1,4−ジイルであり;
式(VI)において、ベンゼン環の−Hはベンジルで置き換えられていてもよく;
式(XV)において、R33およびR34は独立して炭素数1〜3のアルキルまたはフェニルであり;Gは独立して炭素数1〜6のアルキレン、フェニレンまたはアルキル置換されたフェニレンであり;mは1〜10の整数であり;そして、
上記の各式において、シクロヘキサン環またはベンゼン環の−Hは、−F、−CH3、−OH、−COOH、−SO3H、−PO32、ベンジル、またはヒドロキシベンジルで置き換えられていてもよい。
【請求項6】
ジアミン成分として、式(I)で表されるジアミン以外の側鎖構造を有するジアミンをさらに用いる、請求項5に記載のポリマー。
【請求項7】
ジアミン成分として、下記式(X)〜(XIV)で表されるジアミンの群から選択される少なくとも1つをさらに用いる、請求項4に記載のポリマー。
【化3】

式(X)において、
1は、単結合、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、または−(CH2m−であり、mは1〜6の整数であり、このアルキレンにおける任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられていてもよく;
3は、ステロイド骨格を有する基、炭素数3〜30のアルキル、炭素数1〜30のアルキルもしくは炭素数1〜30のアルコキシを置換基として有するフェニル、または下記式(X−a)で表される基であり、この炭素数1〜30のアルキルにおける任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられていてもよく;

【化4】

式(X−a)において、
2およびA3は独立して、単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−CH=CH−、または炭素数1〜12のアルキレンであり、aおよびbは独立して0〜4の整数であり;
環Bおよび環Cは独立して1,4−フェニレン、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、ナフタレン−2,7−ジイル、またはアントラセン−9,10−ジイルであり;
4およびR5は独立して、−FまたはCH3であり、fおよびgは独立して0〜2の整数であり;
6は−F、−OH、−CN、炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、または炭素数2〜30のアルコキシアルキルであり、これらのアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキルにおいて、任意の−Hは−Fで置き換えられていてもよく、任意の−CH2−は−CF2−または下記式(s)で表される2価の基で置き換えられていてもよく;
【化5】

式(s)において、R33およびR34は独立して炭素数1〜3のアルキルであり、mは1〜6の整数であり;
c、dおよびeは独立して0〜3の整数であり、そして、c+d+e≧1である。
【化6】

式(XI)および(XII)において、
7は独立して−Hまたは−CH3であり;
8は−H、炭素数1〜20のアルキルまたは炭素数2〜20のアルケニルであり;
4は独立して単結合、−CO−または−CH2−であり;
式(XII)において、
9およびR10は独立して炭素数1〜20のアルキルまたはフェニルである。
【化7】

式(XIII)および(XIV)において、A5は独立して−O−または炭素数1〜6のアルキレンであり;
式(XIII)において、R11は−Hまたは炭素数1〜30のアルキルであり、このアルキルの任意の−CH2−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;
6は単結合または炭素数1〜3のアルキレンであり;
環Tは1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり;
hは0または1であり;
式(XIV)において、R12は炭素数6〜22のアルキルであり;そして、
13は炭素数1〜22のアルキルである。
【請求項8】
式(I)で表されるジアミン以外の側鎖構造を有するジアミンが、請求項7に記載の式(X)〜(XIV)で表されるジアミンの群から選択される少なくとも1つである、請求項6に記載のポリマー。
【請求項9】
ジアミンと反応させるテトラカルボン酸二無水物が、下記式(An−1)〜(An−6)で表される化合物から選択される少なくとも1つである、請求項4〜8のいずれか1項に記載のポリマー。
【化8】

式(An−1)、(An−4)および(An−5)において、X1は独立して単結合または−CH2−であり;
式(An−2)において、G1は単結合、炭素数1〜20のアルキレン、−CO−、−O−、−S−、−SO2−、−C(CH32−、または−C(CF32−であり;
式(An−2)〜(An−4)において、Y1は独立して下記の3価の基の群から選ばれる1つであり;
【化9】

式(An−3)〜(An−5)において、環Eは炭素数3〜10の単環式炭化水素の基または炭素数6〜20の縮合多環式炭化水素の基を表し、この基の任意の水素はメチル、エチルまたはフェニルで置き換えられていてもよく;
環に掛かっている結合手は環を構成する任意の炭素に連結しており、2本の結合手が同一の炭素に連結してもよく;
式(An−6)において、X11は炭素数2〜6のアルキレンであり;
Meはメチルを表し、そして、Phはフェニルを表す。
【請求項10】
ジアミンと反応させるテトラカルボン酸二無水物が、芳香族テトラカルボン酸二無水物の少なくとも1つと、脂環式テトラカルボン酸二無水物および脂肪族テトラカルボン酸二無水物の群から選択される少なくとも1つの混合物である、請求項4〜8のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項11】
ジアミンと反応させるテトラカルボン酸二無水物が、脂環式テトラカルボン酸二無水物および脂肪族テトラカルボン酸二無水物の群から選択される少なくとも1つまたは2つ以上の混合物である、請求項4〜8のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項12】
芳香族テトラカルボン酸二無水物が下記の式(1)、(2)、(5)〜(7)および(17)で表される化合物から選ばれる少なくとも1つである、請求項10に記載のポリマー。
【化10】

【請求項13】
脂環式テトラカルボン酸二無水物および/または脂肪族テトラカルボン酸二無水物が下記の式(19)、(23)、(25)、(35)〜(39)、(44)、(49)および(68)で表される化合物から選ばれる少なくとも1つである、請求項10または11に記載のポリマー。
【化11】

【請求項14】
請求項4〜13のいずれか1項に記載のポリマーを含有する液晶配向剤。
【請求項15】
請求項4〜13に記載のポリマーの少なくとも1つと、
請求項5に記載の式(III)〜(IX)および(XV)で表されるジアミンの群から選択される少なくとも1つおよび/または請求項7に記載の式(X)〜(XIV)で表されるジアミンの群から選択される少なくとも1つをテトラカルボン酸二無水物と反応させて得られるポリマーの少なくとも1つを混合した液晶配向剤。
【請求項16】
請求項14または15に記載の液晶配向剤を塗布し、加熱することによって形成される液晶配向膜。
【請求項17】
請求項16に記載の液晶配向膜を有する液晶表示素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−257731(P2011−257731A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17411(P2011−17411)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(311002067)JNC株式会社 (208)
【出願人】(596032100)JNC石油化学株式会社 (309)
【出願人】(504165591)国立大学法人岩手大学 (222)
【上記2名の代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
【Fターム(参考)】