説明

ジアリールカーボネートを精製する方法

【課題】ジアリールカーボネートを精製する方法の提供。
【解決手段】ジアルキルカーボネートおよび芳香族ヒドロキシル化合物をトランスエステル化触媒の存在下でトランスエステル化して、トランスエステル化触媒を不純物として含むジアリールカーボネート生成物を与えること、ジアリールカーボネート生成物を上側部分および下側部分を有し、上側部分が精製部を含み、下側部分が回収部を含む、第一蒸留塔において、蒸留に付すこと、および精製されたジアリールカーボネートを含む第一側流を第一蒸留塔から抜き出すことを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ジアリールカーボネートの精製は、品質的に高い価値を有するポリカーボネートを溶融トランスエステル化により製造するために、その精製に対する要求が高いことに起因して、非常に重要である。アルキルカーボネートを用いた芳香族ヒドロキシル化合物のトランスエステル化により調製されたジアリールカーボネートは、高沸点二次成分および中沸点二次成分の両方、ならびに不純物としての触媒残渣を含み得る。高沸点成分は、しばしば、高沸点物(High boiler)とも呼ばれるが、これは、そのような調製のプロセスの状況において、その沸点がジアリールカーボネートの沸点よりも高いものである。中程度沸点成分、これはしばしば中間沸点物(intermediate boilers)と呼ばれるが、これは、そのような調整のプロセスの状況において、その沸点が、ジアリールカーボネートの沸点と、ジアリールカーボネートの調製の間の副生成物として形成され得るアルキルアリールカーボネートの沸点との間にあるものである。これらの不純物はすべて、ポリカーボネートの品質が相当低下することをもたらし、ジアリールカーボネートをさらに使用する前に、適当な精製により、取り除く必要がある。
【0002】
国際公開パンフレットWO2004/113264(この全体の内容は、ここで引用することにより明細書に組み込まれる)は、ジアリールカーボネートの調製において、廃ストリームから、製品流を回収する方法を説明している。また、ジアリールカーボネートの精製も説明されている。ここで、ジアリールカーボネートは、3つの反応塔を用いる反応で生成され、精製は、触媒の除去、低沸点物の除去および高沸点物の除去を含む、3つの段階において行われる。第一およびより後の工程の両方において、ジアリールカーボネートは、塔頂製品(またはプロダクト)として取り除かれる。この文献で説明された方法は、装置の面において例外的に複雑であるだけでなく、第一の段階および第三の段階において、ジアリールカーボネートを塔頂製品として除去することに起因して、エネルギ的に望ましくない。加えて、このようにして調製されるジアリールカーボネートの品質は非常に悪く、99.5重量%であり、高品質なポリカーボネートの調製には適していない。
【0003】
欧州特許公開EP 1 760 069 A(この全体はここで引用することにより、明細書に組み込まれる)は、ジアリールカーボネートを製造する方法を説明する。この方法において、芳香族ヒドロキシル化合物とアルキルカーボネートとのトランスエステル化の後で、混合物が得られ、混合物は、ジアリールカーボネートに加えて、不純物の中でもとりわけ不純物として、芳香族カーボネートエーテルを含む。後者は、高純度のジアリールカーボネートを得るために、後の工程で取り除かれる。しかしながら、高沸点の二次成分(これは、目的とする製品(ポリカーボネート)の質を損なうものとなる)のより相当に複雑な除去については、説明されていない。
【0004】
欧州特許公開第1 783 112 A1号、第1 787 977 A1号、第 1 801 095 A1 号および1 787 976 A1号(これらの内容の全体は引用により明細書に組み込まれる)は、少なくとも2つのジアリールカーボネートの精製段階からなるプロセスを説明している。このプロセスにおいて、高沸点成分および触媒は、反応後、まず、取り除かれる。この高沸点成分の除去において得られる留出物は、第二蒸留塔において、3つのフラクションに分けられ、ジアリールカーボネートは側流(またはサイドストリーム)において取り出される。しかしながら、このプロセスの欠点は、高沸点成分が最初の工程で取り除かれるので、エネルギ的に好ましくないことである。
【0005】
欧州特許公開第784 048 A号(この内容の全体は引用により本明細書に組み込まれる)は、ジアリールカーボネートの精製方法を説明している。この精製方法において、蒸留は150℃よりも高い塔底温度にて行われ、精製したジアリールカーボネートの製品の抜き出しは、塔の側流において行われる。精製されるジアリールカーボネートは、カルボニルハライドを芳香族ヒドロキシル化合物と反応させるか、あるいは芳香族ヒドロキシル化合物をジメチルカーボネートによってトランスエステル化させるか、いずれかによって調製され得る。説明されているプロセスは、ジアリールカーボネートが、実質的に高沸点物(例えば、サリチル酸フェニル)を含まないようにすることを可能にするものの、この文献は、問題となる触媒残渣または中間沸点物の存在、またはそれらを除去する手段について、まったく説明していない。しかしながら、有意な量の触媒残渣は、蒸留による精製に影響を特に与え得る。なぜならば、これは、ジアリールカーボネートの副反応を促進して、サリチル酸フェニルを与え、したがって、塔の底においてそれらの濃度を高くすることを促進するからである。
したがって、欧州特許公開第784 048 A号で説明される方法は、触媒残渣および/または中間沸点物が存在する場合の精製に、ただちに適しているものではない。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、概して、ジアリールカーボネートを精製する方法に関する。より特には、本発明は、装置が非常にシンプルであって、エネルギ的に好ましい設計(または構造)を用いて、触媒残渣および高沸点二次成分、および適当な場合には中間沸点二次成分が、不純物として取り除かれる、ジアリールカーボネートの精製方法に関する。
【0007】
驚くべきことに、ジアリールカーボネートの蒸留による精製はまた、精製すべきジアリールカーボネートが、不純物として、触媒残渣、高沸点二次成分および場合により中間沸点二次成分を含む場合に、装置の複雑さ及びエネルギの要求についてのレベルを低くして、実施することができることがわかった。同時に、蒸留において得られる廃物を、エネルギ的に活用することさえ、好ましくは可能である。
【0008】
本発明は、少なくとも一つの精留部を塔の上側部分に含み、少なくとも一つの回収部(又はストリッピングセクション)を塔の下側部分に含む、少なくとも一つの蒸留塔において、ジアリールカーボネートを精製する方法であって、
精製するジアリールカーボネートが、少なくとも一つのジアルキルカーボネートおよび少なくとも一つの芳香族ヒドロキシル化合物から、少なくとも一つのトランスエステル化触媒の存在下で、トランスエステル化により生成されたものであり、ジアリールカーボネートの生成に由来する触媒を不純物として含み、
精製されたジアリールカーボネートを、第一蒸留塔から、側流において抜き出すこと
を特徴とする。
【0009】
本発明の一つの形態として、
ジアルキルカーボネートおよび芳香族ヒドロキシ化合物を、トランスエステル化触媒の存在下で、トランスエステル化して、トランスエステル化触媒を不純物として含むジアリールカーボネート生成物を得ること;
ジアリールカーボネート生成物を、上側部分および下側部分を有し、上側部分が精留部を含み、下側部分が回収部を含む第一蒸留塔において蒸留に付すこと;および
精製されたジアリールカーボネートを含む第一の側流を、第一蒸留塔から抜き出すこと
を含む方法が挙げられる。
【0010】
本発明の別の形態として、
ジアルキルカーボネートおよび芳香族ヒドロキシル化合物を、トランスエステル化触媒の存在下で、トランスエステル化し、トランスエステル化触媒を不純物として含むジアリールカーボネートを生成すること;
ジアリールカーボネート生成物を、上側部分、下側部分および分割部を有し、上側部分が精留部を含み、下側部分が回収部を含む第一垂直分割型蒸留塔において蒸留に付すこと;および
精製されたジアリールカーボネートを含む第一の側流を、第一蒸留塔から取り出すこと
を含み、
分割部が、分割壁、供給サイドおよび抜き出しサイドを含み、供給サイドは上側供給サイドセクションおよび下側供給サイドセクションを含み、抜き出しサイドは上側抜き出しサイドセクションおよび下側抜き出しサイドセクションを含み、
ジアリールカーボネート生成物は、第一蒸留塔に、上側供給サイドセクションと下側供給サイドセクションとの間に供給され、第一の側流は、上側抜き出しセクションおよび下側抜き出しセクションとの間にて、第一蒸留塔から、抜き出される
方法が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1.1】図1.1は、本発明の一形態の、蒸留塔における、ジアリールカーボネートの精製の工程図である。
【図1.2】図1.2は、本発明の一形態の、追加の残渣濃縮器を有する、蒸留塔における、ジアリールカーボネートの精製の工程図である。
【図1.3】図1.3は、エバポレータの形態の、追加の残渣濃縮器を有する、蒸留塔における、ジアリールカーボネートの精製の工程図である。
【図2.1】図2.1は、本発明の一形態の、追加の外側側流塔であって、精留部として設計された塔を有する、蒸留塔における、ジアリールカーボネートの精製の工程図である。
【図2.2】図2.2は、本発明の一形態の、追加の一体化された側流塔であって、精留部として設計された塔を有する、蒸留塔における、ジアリールカーボネートの精製の工程図である。
【図2.3】図2.3は、本発明の一形態の、追加の外側側流塔であって、精留部および回収部を有する塔を備えた、蒸留塔における、ジアリールカーボネートの精製の工程図である。
【図3.1】図3.1は、本発明の一形態の、精製したジアリールカーボネートの液体側流抜き出しを有する分割型蒸留塔における、ジアリールカーボネートの精製の工程図である。
【図3.2】図3.2は、本発明の一形態の、精製したジアリールカーボネートの蒸気側流抜き出しを有する分割型蒸留塔における、ジアリールカーボネートの精製の工程図である。
【図4】図4は、本発明の一形態の、凝縮液が外側回路において冷却される1または複数の追加のカラムセクションにおける蒸留塔または分割型蒸留塔の頂部にある、凝縮部の工程図である。
【図5a】図5aは、本発明の一形態の、カラム径が凝縮領域にて変化しない、蒸留または分割型蒸留塔の頂部にある凝縮部の工程図である。
【図5b】図5bは、本発明の一形態の、カラム径がカラム径の頂部に向かう方向で減少している、蒸留または分割型蒸留塔の頂部にある、凝縮部の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上述の概要および下記の発明の詳細な説明は、添付の図面とともに読むことによって、より良く理解されるであろう。本発明の説明を補助する目的で、例示的であると考えられる、代表的な形態を、図面において示す。しかしながら、発明は、図示した、まさにその配列および部材に、いかなるようにも限定されないことが理解されるべきである。
【0013】
本明細書にて用いられる、単数の用語「1つの(a)」および「当該(もしくは前記)(the)」は、言葉および/または文中の流れが明らかにそうでないものを示していない限り、「1または複数の」および「少なくとも1つの」と同義語であり、それらと交換可能に使用される。したがって、例えば、本明細書または添付の請求の範囲における、「ジアルキルカーボネート」は、単一のジアルキルカーボネートに言及し得、あるいは1よりも多いジアルキルカーボネートに言及し得る。加えて、全ての数値は、特に他のように注記しない限りにおいて、「約」という言葉によって修飾されるものと理解される。
【0014】
本発明のコンテクストにおいて、精製され得るジアリールカーボネートは、一般式(I)のものを含む。
式(I)


式中、R、R’およびR”はそれぞれ独立して、H、直鎖の又は分岐を有する、場合により置換されている、C1-C34-アルキル、好ましくは C1-C6-アルキル、より好ましくは C1-C4-アルキル、 C1-C34-アルコキシ、好ましくは C1-C6-アルコキシ、より好ましくは C1-C4-アルコキシ、C5-C34-シクロアルキル、C7-C34-アルキルアリール、 C6-C34-アリール、またはハロゲンラジカル、好ましくは塩素ラジカルであり、また、式(I)の2つの側部におけるR、R’およびR”は、同じであっても又は異なっていてもよい。Rはまた、-COO-R'''であってよく、ここでR'''は水素、分岐を有する又は分岐を有しないC1-C34 アルキル、好ましくはC1-C6-アルキル、より好ましくはC1-C4-アルキル、C1-C34-アルコキシ、好ましくはC1-C6-アルコキシ、より好ましくはC1-C4-アルコキシ、 C5-C34-シクロアルキル、C7-C34-アルキルアリール、またはC6-C34-アリールである。好ましくは、式(I)の2つの側部におけるR、R’およびR”は同じである。最も好ましくは、R、R’およびR”はそれぞれ水素(H)である。
【0015】
一般式(I)のジアリールカーボネートには、例えば、次のものが含まれる:ジフェニルカーボネート、メチルフェニルフェニルカーボネートおよびジ(メチルフェニル)カーボネート(混合物であってよく、また、ここでフェニル環上のメチル基の位置が所望のようになっていてよい(または所望のようになっていてもなっていなくてもよい))、ならびにまた、ジメチルフェニルフェニルカーボネートおよびジ(ジメチルフェニル)カーボネート(混合物であってよく、また、ここでフェニル環上のメチル基の位置が所望のようになっていてよい(または所望のようになっていてもなっていなくてもよい))、クロロフェニルフェニルカーボネートおよびジ(クロロフェニル)カーボネート(混合物であってよく、また、ここでフェニル環上のメチル基の位置が所望のようになっていてよい(または所望のようになっていてもなっていなくてもよい))、4-エチルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4-エチルフェニル)カーボネート、4-n-プロピルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4-n-プロピルフェニル)カーボネート、4-イソプロピルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4-イソプロピルフェニル)カーボネート、4-n-ブチルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4-n-ブチルフェニル)カーボネート、4-イソブチルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4-イソブチルフェニル)カーボネート、4-tert-ブチルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4-tert-ブチルフェニル)カーボネート、4-n-ペンチルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4-n-ペンチルフェニル)カーボネート、4-n-ヘキシルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4-n-ヘキシルフェニル)カーボネート、 4-イソオクチルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4-イソオクチルフェニル)カーボネート、4-n-ノニルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4-n-ノニルフェニル)カーボネート、4-シクロヘキシルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4-シクロヘキシルフェニル)カーボネート、 4-(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニルフェニルカーボネート、ジ[4-(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニル]カーボネート、ビフェニル-4-イルフェニルカーボネート、 ジ(ビフェニル-4-イル)カーボネート、1-ナフチルフェニルカーボネート、 2-ナフチルフェニルカーボネート、ジ(1-ナフチル)カーボネート、 ジ(2-ナフチル)カーボネート、4-(1-ナフチル)フェニルフェニルカーボネート、4-(2-ナフチル)フェニルフェニルカーボネート、ジ[4-(1-ナフチル)フェニル]カーボネート、ジ [4-(2-ナフチル)フェニル] カーボネート、4-フェノキシフェニルフェニルカーボネート、 ジ (4-フェノキシフェニル) カーボネート、3-ペンタデシルフェニルフェニルカーボネート、ジ(3-ペンタデシルフェニル)カーボネート、4-トリチルフェニルフェニルカーボネート、ジ (4-トリチルフェニル) カーボネート、 (サリチル酸メチル)フェニルカーボネート、ジ (サリチル酸メチル)カーボネート、(サリチル酸エチル)フェニルカーボネート、ジ(サリチル酸エチル)カーボネート、(サリチル酸−n-プロピル)フェニルカーボネート、ジ (サリチル酸−n-プロピル)カーボネート、(サリチル酸イソプロピル)フェニルカーボネート、ジ (サリチル酸イソプロピル)カーボネート、(サリチル酸−n-ブチル) フェニルカーボネート、ジ(サリチル酸−n-ブチル)カーボネート、(サリチル酸イソブチル)フェニルカーボネート、ジ(サリチル酸イソブチル)カーボネート、(サリチル酸−tert-ブチル)フェニルカーボネート、 ジ(サリチル酸−tert-ブチル)カーボネート、ジ(サリチル酸フェニル)カーボネート、およびジ(サリチル酸ベンジル)カーボネート。
【0016】
好ましいジアリールカーボネートには次のものが含まれる:ジフェニルカーボネート、4-tert-ブチルフェニルフェニルカーボネート、ジ (4-tert-ブチルフェニル)カーボネート、ビフェニル-4-イルフェニルカーボネート、ジ(ビフェニル-4-イル)カーボネート、4-(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニルフェニルカーボネートおよびジ[4-(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニル]カーボネート。特に好ましいジアリールカーボネートは、ジフェニルカーボネートである。
【0017】
本発明の範囲において、ジアルキルカーボネートには、式(II)のものが含まれる。
式(II)


式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、直鎖の又は分岐を有する、場合により置換された、C1-C34-アルキル、好ましくはC1-C6-アルキル、より好ましくは、C1-C4-アルキルである。 R1およびR2 は同じであってよく、あるいは異なっていてよい。R1およびR2は好ましくは同じである。
【0018】
好ましいジアルキルカーボネートとして、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ(n-プロピル)カーボネート、ジ(イソプロピル)カーボネート、ジ(n-ブチル)カーボネート、ジ (sec-ブチル)カーボネート、ジ (tert-ブチル)カーボネート、またはジヘキシルカーボネートが挙げられる。特に好ましいものは、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートである。非常に特に好ましいものは、ジメチルカーボネートである。
【0019】
本発明の範囲において、芳香族ヒドロキシル化合物には、一般式(III)のものが含まれる。式中、R、R’およびR”はそれぞれ独立して、一般式(I)について定義されたものであり得る。
式(III)

【0020】
そのような芳香族ヒドロキシル化合物として、例えば、フェノール、o-、 m-もしくはp-クレゾール, クレゾールの混合物、ジメチルフェノール(混合物であってよく、また、ここでフェノール環上のメチル基の位置が所望のようになっていてよい。例えば、2,4-、2,6-、もしくは3,4-ジメチルフェノール)、o-、m-もしくはp-クロロフェノール、o-、m-もしくはp-エチルフェノール、o-、m-もしくはp-n-プロピルフェノール、4-イソプロピルフェノール、 4-n-ブチルフェノール、4-イソブチルフェノール、4-tert-ブチルフェノール、4-n-ペンチルフェノール、4-n-へキシルフェノール、4-イソオクチルフェノール、4-n-ノニルフェノール、o-、m-もしくはp-メトキシフェノール、4-シクロへキシルフェノール、4-(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、ビフェニル-4-オール、1-ナフトール、2-1-ナフトール、4-(1-ナフチル)フェノール、4-(2-ナフチル)フェノール4-フェノキシフェノール、3-ペンタデシルフェノール、4-トリチルフェノール、メチルサリチル酸、エチルサリチル酸、n-プロピルサリチル酸、イソプロピルサリチル酸、n-ブチルサリチル酸、イソブチルサリチル酸、tert-ブチルサリチル酸、フェニルサリチル酸およびベンジルサリチル酸が例示される。
【0021】
好ましい芳香族ヒドロキシル化合物として、フェノール、4-tert-ブチルフェノール、ビフェニル-4-オール、および4-(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノールが挙げられる。特に好ましいものは、フェノールである。
【0022】
上述のジアルキルカーボネートおよび芳香族ヒドロキシル化合物は、当業者に公知であり、商業的に入手することができ、あるいは当業者に同様に公知の方法で調製され得る。
【0023】
本発明の範囲において、C1-C4-アルキルは、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、 tert-ブチルを指す。加えて、C1-C6-alkylは、例えば、 n-ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、ネオペンチル、1-エチルプロピル、シクロヘキシル、シクロペンチル、n-ヘキシル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル、1-エチル-2-メチルプロピルまたは1-エチル-2-メチルプロピルを指す。加えて、C1-C34-アルキルは、例えば、n-ヘプチルおよびn-オクチル、ピナシル、アダマンチル、異性体のメンチル、n-ノニル、n-デシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ヘキサデシル、またはn-オクタデシルを指す。同様のことは、対応するアルキルラジカル、例えば、アルキルアリールまたはアルキルアリールラジカルにも当てはまる。対応するヒドロキシアルキルまたはアラールキルもしくはアルキルアリールラジカルは、例えば、上記のアルキルラジカルに対応するアルキレンラジカルである。
【0024】
アリールは、6〜34の骨格炭素原子を有する炭素環芳香族ラジカルを指す。同様のことは、アリールアルキルラジカルの芳香族部分(アラールキルラジカルとしても知られている)にもあてはまり、また、より複雑な基のアリール構成要素、例えばアリールカルボニルラジカルにもあてはまる。
【0025】
上記のリストは例示的なものであり、限定として理解されるべきではない。
【0026】
精製されるジアリールカーボネートを生成するための、そしてまた不純物としてそこから取り除かれるトランスエステル化触媒は、ジアルキルカーボネート−フェノールトランスエステル化についての文献で知られているトランスエステル化触媒であり得る。例えば、触媒は、水素化物、酸化物、水酸化物、アルコキシド、アミド、ならびにアルカリ金属およびアルカリ土類金属の他の塩、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、およびカルシウムの塩であり、好ましくは、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、およびカルシウムの塩であり、より好ましくは、リチウム、ナトリウム、およびカリウムの塩である(例えば、米国特許第3,642,858号、米国特許第3 803 201号および欧州特許公報EP-A 1082号を参照のこと。これらは引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)。アルカリ金属およびアルカリ土類金属の塩はまた、有機または無機酸の塩であってよく、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、安息香酸、ステアリン酸、炭酸(カーボネートまたは炭酸水素塩)、リン酸、シアン化水素酸、チオシアン酸、ホウ酸、スズ酸、C14-スズ(stannonic acid)酸、またはアンチモン酸の塩であってよい。アルカリ金属およびアルカリ土類金属の好ましい化合物は、酸化物、水酸化物、アルコキシド、酢酸塩、プロピオン酸塩、ベンゾエート、カーボネート、および炭酸水素塩であり、特に好ましくは、水酸化物、アルコキシド、酢酸塩、ベンゾエート、またはカーボネートが用いられる。ここで言及したアルカリ金属またはアルカリ土類金属化合物は、転化される反応混合物の重量を基準として、好ましくは0.001〜2重量%、好ましくは0.005〜0.9重量%、より好ましくは0.01〜0.5重量%の量で使用される。
【0027】
本発明で使用可能な別の触媒は、金属化合物であり、例えば、AlX3, TiX3, UX4, TiX4, VOX3, VX5, ZnX2, FeX3, PbX2およびSnX4(ここで、Xは、ハロゲン、アセトキシ、アルコキシまたはアリールオキシラジカル(ドイツ公開A 2 58 412)を表す)である。特に、本発明で使用可能な好ましい触媒は、AlX3, TiX4, PbX2 およびSnX4のような化合物であり、例えば、四塩化チタン、チタンテトラメトキシド、チタンテトラフェノキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラドデコキシド、錫テトライソオクトキシド、およびアルミニウムテトライソプロポキシドである。非常に特に好ましいものは、金属化合物であるTiX4である。ここで言及した金属化合物は、転化される反応混合物の重量を基準として、0.001〜5重量%、好ましくは0.005〜5重量%、より好ましくは0.01〜5重量%の量で用いられる。
【0028】
本発明の範囲内において、ハロゲンは、フッ素、塩素、または臭素であり、好ましくはフッ素または塩素であり、より好ましくは塩素である。
【0029】
本発明で使用可能な別の触媒は、一般式(R11)4-X-Sn(Y)Xで表される有機スズ化合物(式中、Yは、OCOR12、OH または OR ラジカルであり、ここで、R12は、C1-C12-アルキル、C6-C12-アリールまたはC7-C13-アルキルアリールであり、R11はR12とは独立して、R12について規定されたものである。xは1〜3の整数である)、アルキルラジカルにおいて1〜12の炭素原子を有するジアルキル錫化合物、またはビス(トリアルキル錫)化合物、例えば、酢酸トリメチル錫、安息香酸トリエチル錫、酢酸トリブチル錫、酢酸トリフェニル錫、二酢酸ジブチル錫、二ラウリン酸ジブチル錫、二ラウリン酸ジオクチル錫、アジピン酸ジブチル錫、ジブチルジメトキシ錫、グリコール酸ジメチル錫、ジブチルジエトキシ錫、水酸化トリエチル錫、ヘキサエチル錫オキサン(hexaethylstannoxane)、ヘキサブチル錫オキサン、ジブチル錫オキシド、ジオクチル錫オキシド、ブチル錫トリイソオクトキシド(butyltin triisooctoxide)、オクチル錫トリイソオクトキシド、ブチル錫酸およびオクチル錫酸である。これらの触媒は、0.001〜20重量%の量で使用される (EP 879, EP 880, EP 39 452, DE-A 34 45 555, 日本公開公報79/63023を参照のこと。これらの引例の全体は、引用により本明細書に組み込まれる)。別の触媒は、一般式-[-RR11Sn-O-]- で表される重合性の錫化合物(この一般式において、RおよびR11はそれぞれ独立して、上記R12に関して規定したとおりである)(例えば、 ポリ [オキシ(ジブチルスタニレン]、ポリ [オキシ(ジオクチルスタニレン)]、 および ポリ [オキシ (ジフェニルスタニレン)] (ドイツ公開公報 34 45 552。この文献の全体は引用により本明細書に含まれる))、一般式-[-RSn(OH)-O-]-の重合性ヒドロキシスタノキサン、例えば、ポリ(エチルヒドロキシスタノキサン)、 ポリ (ブチルヒドロキシスタノキサン)、ポリ (オクチルヒドロキシスタノキサン)、 ポリ (ウンデシルヒドロキシスタノキサン) およびポリ (ドデシルヒドロキシスタノキサン)である。これらの触媒は、ジアルキルカーボネートの重量を基準として、0.001〜 20重量%、好ましくは0.005〜5重量%の量で使用される(ドイツ公開公報 40 06 520。この文献の全体は引用により本明細書に組み込まれる)。さらに、本発明で使用可能な錫化合物は、一般式:
X−R2Sn−O−R2Sn−Y
で示される錫(II)酸化物である。この式において、XおよびYはそれぞれ独立してOH、SCN、OR13、OCOR13 またはハロゲンであり、Rはアルキル、アリールであり、R13は、上記R12に関して規定したとおりである(EP 0 338 760。この文献の全体は引用により本明細書に組み込まれる)。
【0030】
本発明で使用可能な別の触媒として、鉛化合物があり、これは場合により、トリオルガノホスフィン、キレート化合物またはアルカリ金属のハロゲン化物とともに使用してよく、鉛化合物は、例えば、Pb(OH)2-2PbCO3、 Pb(OCO-CH3)2、 Pb(OCO-CH3)2・2LiCl、Pb(OCO-CH3)2 ・ 2PPh3である。これらの触媒は、ジアルキルカーボネート1モルあたり0.001〜1モル、好ましくは0.005〜 0.25モルの量で使用される(日本公開公報特開昭57/176932、特開平01/093580。これらの文献はそれぞれその全体が引用により本明細書に組み込まれる)。他の鉛(II)および鉛(IV)化合物、例えば、PbO、PbO2、ミニウム、プランバイト(plumbites)(または亜鉛酸塩)およびプランベイト(plumbates)(または鉛酸塩)(日本公開公報特開平01/093560)、酢酸鉄 (III) (日本公開公報特開昭61/1 72 852、この文献の全体は引用により全体が本明細書に組み込まれる)、ならびに銅の塩および/または金属錯体、例えば、アルカリ金属、亜鉛、チタンおよび鉄の錯体もまた使用され得る(JP89/005588、引用によりこの文献はその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0031】
本発明の方法のための好ましい触媒は、上述の金属化合物である、AlX3、TiX3、UX4、TiX4、VOX3、VX5、ZnX2、FeX3、PbX2およびSnX4である。特に好ましいものは、AlX3, TiX4, PbX2およびSnX4であり、その中でも、例えば、四塩化チタン、チタンテトラメトキシド、チタンテトラフェノキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラドデコキシド、錫テトライソオクトキシドおよびアルミニウムトリイソプロポキシドである。非常に特に好ましいものは、金属化合物TiX4である。特に好ましいものは、チタンテトラメトキシド、チタンテトラフェノキシド、およびチタンテトラエトキシドである。
【0032】
種々の好ましい形態において、精製されるジアリールカーボネートは、ジアリールカーボネートの沸点と、ジアリールカーボネートの生成の間に中間物質として形成されるアルキルアリールカーボネートの沸点との間の沸点を有する化合物を含む。その化合物は、第一蒸留塔の別の側流において除去される。この別の側流の抜き出しは、第一蒸留塔において実施され、好ましくはジアリールカーボネートの側流の抜き出しの上方にて行われる。
【0033】
ジアリールカーボネートの調製の間の中間物質として形成される、アルキルアリールカーボネートは、本発明の範囲において、好ましくは、一般式(IV)のものである。
式(IV)

式中、R、R’およびR”はそれぞれ一般式(I)に関して規定したとおりであり得、Rは、一般式(II)に関して規定されたとおりであり得る。
【0034】
好ましいアルキルアリールカーボネートは、メチルフェニルカーボネート、エチルフェニルカーボネート、プロピルフェニルカーボネート、ブチルフェニルカーボネートおよびヘキシルフェニルカーボネート、メチル−o-クレシルカーボネート、メチル-p-クレジルカーボネート、エチル−o−クレジルカーボネート、エチルp-クレジルカーボネート、メチルもしくはエチルp-クロロフェニルカーボネートである。特に好ましいアルキルアリールカーボネートは、メチルフェニルカーボネート、およびエチルフェニルカーボネートである。非常に特に好ましいものは、メチルフェニルカーボネートである。
【0035】
精製すべきジアリールカーボネート(これはまた、粗ジアリールカーボネートとも呼ばれる)は、好ましくは、10〜90重量%、より好ましくは20〜80重量%、最も好ましくは40〜80重量%のジアリールカーボネートを含み、5〜90重量%、より好ましくは5〜60重量%、最も好ましくは5〜40重量%のアルキルアリールカーボネートを含み、1〜90重量%、より好ましくは1〜50重量%、最も好ましくは1〜30重量%の芳香族ヒドロキシ化合物、0〜5重量%、より好ましくは0〜2重量%、最も好ましくは0〜0.5重量%の高沸点二次成分、0〜5重量%、より好ましくは0.0001〜2重量%、最も好ましくは0.0001〜1重量%の中沸点二次成分、ならびに0.01〜10重量%、より好ましくは0.1〜5重量%、および最も好ましくは1〜5重量%の触媒を含む。ここで、精製すべきジアリールカーボネート中の上記に挙げた全ての成分の合計は、100重量%になる。各々の場合において、重量パーセンテージは、精製すべき粗製のジアリールカーボネートの全体の重量を基準としている。
【0036】
本発明の範囲において、高沸点二次成分(これはしばしば高沸点物と呼ばれるが)は、ジアリールカーボネートの沸点よりも高い沸点を有するものである。本発明の範囲において、中間沸点成分(これはしばしば、中間沸点物と呼ばれるが)は、沸点がジアリールカーボネートの沸点と、ジアリールカーボネートの生成の間に中間体として形成された、アルキルアリールカーボネートの沸点との間にあるものである。
【0037】
本発明の方法は、好ましくは、精製されたジアリールカーボネートの全重量を基準として、純粋なジアリールカーボネートの含量が99〜100重量%であり、より好ましくは99.5〜100重量%、最も好ましくは99.9〜100重量%の純度を有するジアリールカーボネートを提供することができる。
【0038】
第一蒸留塔の側流(またはサイドストリーム)で抜き出されるジアリールカーボネートは、液体または蒸気の形態で、蒸留塔から抜き出すことができる。第一蒸留塔の側流で抜き出されるジアリールカーボネートは、好ましくは、蒸気の形態で第一蒸留塔から抜き出される。しかしながら、ある好ましい形態においては、側流で液体のジアリールカーボネートを抜き出すこともまた、好ましいことがあり、特に構造的な理由から好ましい。
【0039】
第一蒸留塔は、少なくとも2つの部分(またはセクション)、即ち、塔の上側部分の精留部(または濃縮部)、および塔の下側部分の回収部を有する。第一蒸留塔の精留部は、好ましくは、下側精留部と上側精留部に分割され得る。加えて、第一蒸留塔の回収部は、好ましくは、下側回収部と上側回収部に分割され得る。
【0040】
全体として、第一蒸留塔は、3ないし160の理論段数に相当する全体の分離性能を有することが好ましく、10ないし90の理論段数を有することがより好ましく、13ないし50の理論段数を有することが最も好ましい。上側精留部は、好ましくは、0ないし40の理論段数、より好ましくは1ないし20の理論段数、最も好ましくは1ないし10の理論段数に相当する分離性能を有し、下側精留部は、1ないし40の理論段数、より好ましくは5ないし20の理論段数、最も好ましくは5ないし15の理論段数を有し、上側回収部は、好ましくは1ないし40の理論段数、より好ましくは2ないし30の理論段数、最も好ましくは5ないし20の理論段数を有し、下側回収部は、好ましくは1ないし40の理論段数を有し、より好ましくは2ないし20の理論段数を有し、最も好ましくは2ないし15の理論段数を有する。
【0041】
蒸発は、蒸留塔の底部において、好ましくは100〜300℃、優先的には150〜240℃、最も好ましくは180〜230℃の温度範囲内にて行う。蒸気は、1または複数の段において、好ましくは1〜2の段において、40〜250℃、優先的には50〜200℃、より好ましくは60〜180℃の温度範囲内にて、蒸留塔の塔頂(または頂部)にて、凝縮され得る。
【0042】
第一蒸留塔の缶出液(または塔底製品)は、95重量%未満、好ましくは90重量%未満、より好ましくは75重量%未満のジアリールカーボネートの残留濃度を有する。触媒の損失を避けるために、第一蒸留塔の缶出液は、ジアルキルカーボネートと芳香族ヒドロキシル化合物とのトランスエステル化反応に、少なくとも50%までの限度にて、より好ましくは少なくとも80%までの限度にて、最も好ましくは少なくとも90%までの限度にて、戻して再利用され得る。第一蒸留塔の缶出液の残りの部分は、例えば、残留物を濃縮し、第一蒸留塔の缶出液になお存在するジアリールカーボネートを一部回収するために、以下において残留物濃縮と称される、さらなる精製工程に送ってよい。残留物濃縮において回収されたジアリールカーボネートは、特定のプロセスの実施形態においては、液体または蒸気の形態で、好ましくは蒸気の形態で、第一蒸留塔に戻すことができる。残留物濃縮により濃縮された残留物は、プロセスから排出させてよく、あるいは触媒を回収する目的で更なる精製工程に送ってよい。これは、高価な触媒の損失および所望のジアリールカーボネートの損失の両方が防止されることを可能にし、したがって、本発明の方法がより経済的に実施されることを可能にする。
【0043】
第一蒸留塔は、好ましくは1〜1000ミリバール(絶対圧)、より好ましくは1〜100ミリバール(絶対圧)、最も好ましくは5〜50ミリバール(絶対圧)の塔頂圧力にて、運転される。
【0044】
本発明の方法の好ましい形態において、30℃よりも高い、より好ましくは40℃よりも高い融点を有する混合物を運ぶラインおよびユニットは、この融点よりも高い温度に加熱され、好ましくはこの融点よりも1℃よりも高い温度、より好ましくはこの融点よりも5℃よりも高い温度に加熱される。これは、これらのラインおよびユニットにおいて、固体の析出物が生じるのを防止し、シャットダウンの後、対応する装置の再スタートを比較的容易にする。
【0045】
本発明のプロセスは、図1〜5bを参照して、例として、詳述される。図面は、本発明の例示の役割をし、限定するものとして解釈されるべきではない。
【0046】
本発明の種々の好ましい形態において、ジアリールカーボネートの精製は、少なくとも3つのセクションを有する蒸留塔において辞しされる。これらの少なくとも3つのセクションは、少なくとも1つの精製部、少なくとも1つの回収部であり、回収部は、下側回収部と上側回収部に分割される。さらに好ましくは、精留部および回収部を有し、回収部が上側回収部および下側回収部に分割されている、蒸留塔は、4つのセクションを有し、その場合、精留部もまた、下側精留部と上側精留部とに分割されている。
【0047】
本発明の方法のそのような特に好ましい変形例を、図1.1において例として示す。この好ましい形態の蒸留塔K3は、4つのセクション、即ち、下側回収部(K3AT2)、および上側回収部(K3AT1)、また、下側精留部(K3VT2)および上側精留部(K3VT1)を有している。粗ジアリールカーボネート(1)は下側精留部K3VT2と上側回収部K3AT1との間にて、塔へ供給される。
【0048】
上側精留部は、好ましくは0〜40の理論段数、より好ましくは1〜20の理論段数、最も好ましくは1〜10の理論段数の分離能力を有し、下側精留部は、好ましくは1〜40の理論段数、より好ましくは5〜20の理論段数、最も好ましくは5〜15の理論段数を有し、上側回収部は、好ましくは1〜40の理論段数、より好ましくは2〜30の理論段数、最も好ましくは5〜20の理論段数を有し、下側回収部は、好ましくは1〜40の理論段数、より好ましくは2〜20の理論段数、最も好ましくは2〜15の理論段数を有する。
【0049】
セクションのこの分離性能を達成するには、ランダム充填物または規則充填物を使用することができる。使用されるランダム充填物または規則充填物は、蒸留のために一般的に利用可能なものであり、Ullmann's Encyclopaedie der Technischen Chemie, 第4版、第2巻、p. 528 ff.にて説明されているとおりである。ランダム充填物の例として、ラシヒリング(Raschig rings)、ポールリング(Pall rings )およびノバロックスリング(Novalox rings)、バール・サドル(Berl saddles)、インタレックス・サドル(Intalex saddles)またはトーラス・サドル(Torus saddles)、およびインターパック・パッキン(Interpack packings)が挙げられる。規則充填物の例として、シートメタルおよび布製充填物(例えば、BXパッキン、モンツ(Montz)パッキン、メラパック(Mellapak)、メラデュア(Melladur)、ケラパック(Kerapak) およびCYパッキン)が挙げられ、種々の材料、例えばガラス、せっ器、陶器、ステンレス鋼、プラスチックからなるものが挙げられる。大きな表面積、良好な濡れ性、および液相の十分な時間の滞留時間を有する、ランダム充填物および規則充填物が好ましく用いられる。これらは例えば、ポール(Pall)およびノボラックス(Novolax)リング、バール(Berl)サドル、BXパッキン、モンツパック(Montz Pak)、メラパック(Mellapak)、メラデュア(Melladur)、ケラパック(Kerapak) および CYパッキンである。別法として、棚板(またはトレイ)もまた適当である。具体的には、シーブトレイ、バブルキャップトレイ、バルブトレイ、トンネルキャップトレイが適当である。好ましくは、ランダム充填物および規則充填物が使用され、特に好ましくは、規則充填物が使用される。
【0050】
本発明の範囲において、セクションは、このセクションの下方および/または上方の、供給ポイントおよび/または抜き出しポイントを特徴とする。ランダム充填物および/または規則充填物を使用する場合において、セクションが4よりも多い、好ましくは10よりも多い、より好ましくは15よりも多い理論段数を有するときには、セクションは、複数のパーツ(または部分)に分割してよい。
【0051】
蒸留塔は加えて、1段または複数段(N段)の塔頂凝縮器K3C1-Nおよび1段または複数段(N段)のエバポレータK3E1-Nを、缶出液のために有している。幾つかの装置(複数の凝縮器またはエバポレータ)において、凝縮または蒸発を行う場合、並列および/または直列接続であること、および並列および直列の組み合わせの両方が、可能である。
【0052】
蒸気は、蒸留塔の塔頂にて、1または複数段で、好ましくは1段または2段で、40〜250℃、好ましくは50〜200℃、より好ましくは60〜180℃の温度範囲内にて、凝縮される。
【0053】
塔頂の凝縮器(またはコンデンサ)における凝縮に関して、種々の形態が考えられ得る。適当な塔頂凝縮器は、例えば、多管式または平板熱交換器である。第一蒸留塔のカラム径(または塔径)(D)に対する、蒸留塔から凝縮器までの蒸気ラインの直径(d)の比(d/D)は、好ましくは0.2〜1.0、より好ましくは0.5〜1の範囲内にある。特に好ましい形態においては、蒸気ラインが蒸留塔と塔頂凝縮器との間に必要とされないように、塔頂凝縮器は、蒸留塔に組み込まれ得る。この場合、d/Dは、1である。同時に、塔頂凝縮器の中に入った後の塔の断面はまた、幾つかの状況のもとで、凝縮の進行に合わせることもできる。そのような好ましい形態は、図5aおよび5bにおいて断面図にて、例として、示されている。
【0054】
図5aに示す形態において、カラム径は、凝縮の領域において、一定である。精留部から出て上昇する蒸気(10)は、好ましくは上側精留部K3VT1に存在する場合には、一体化された塔頂の1または複数の凝縮器K3C1-Nにて凝縮される。凝縮液の一部は、還流(11)として、上側蒸留塔セクションに戻される。凝縮液の残りは、留出液として、蒸留塔から出て行く。不活性物質および/または凝縮されなかった蒸気(18)は、塔頂にて、蒸留塔から抜き出される。
【0055】
幾つかのタイプの凝縮器において、塔の断面を可変にすることが有利な場合がある。凝縮される蒸気が、例えば、底部から上向きに導かれる場合、蒸気の量は上側に向かうにつれて減少する。蒸留塔の塔頂の方向において、蒸留塔の直径を減少させると、蒸気が利用可能な蒸留塔の断面が、上側に向かうにつれて減少する蒸気の量に合わせて調節される。そのような形態は、図5bにおいて、例として示されている。この場合、凝縮されていない蒸気は、塔頂にて必ずしも抜き出す必要はない。例えば、板の束または管束が塔頂から蒸留塔に挿入されている構成が選択される場合、凝縮されていない蒸気の抜き取りはまた、側部に配置してよい。
【0056】
別の好ましい形態の塔頂凝縮器を、図4に示す。この形態において、精留部から出て上昇する蒸気(10)は、好ましくは上側精留部K3VT1が存在する場合には、1または複数の追加カラムセクション(または塔部)(K3CS1-N)において、外部回路にて凝縮液を冷却させながら、凝縮される。このカラムセクションの下側端部にて出て行く液体は、一部抜き出されて(21)、得られる凝縮液の熱を取り除くために、1または複数の外部冷却器K3W1-Nに送られる。外部冷却器は、直列または並列のいずれで接続されてよい。残りの液体は、留出液(2)として排出されるか、あるいは還流(11)として精留部、存在する場合には好ましくは上側精留部K3VT1に送られる。冷却後、液体(22)は、追加のカラムセクションK3CS1-Nよりも上方にて、蒸留塔に戻される。カラムにおける凝縮は、上述した棚板、ランダム充填物、または規則充填物にて行われる。凝縮されていない蒸気または不活性物質(18)は、カラムセクションK3CS1-Nよりも上方にて抜き出される。
【0057】
図1.1における、説明的な図において、下側回収部K3AT2から流出する液体12は、一段または多段(N段)の蒸発において、蒸発により濃縮され、得られた液体/液体混合物の蒸気(13)は、下側回収部K3AT2に戻される。蒸発は、150〜300℃、好ましくは160〜240℃、より好ましくは180〜230℃の温度範囲内で、塔の塔底にて、実施される。蒸留塔の塔頂の温度は、好ましくは40〜250℃、好ましくは50〜200℃、より好ましくは60〜180℃である。缶出液(3)は、ジアリールカーボネートの残留濃度が、95重量%未満、好ましくは90重量%未満、より好ましくは75重量%未満のものとして得られる。
【0058】
精製されたジアリールカーボネートは、好ましくは、下側回収部K3AT2よりも上方にて、蒸気副流(6)として抜き出され、それから、一段または多段(N段)の凝縮器K3SC1-Nにて凝縮され、液体(5)として取り出される。
【0059】
凝縮器K3SC1-Nにおける凝縮の過程において得られる凝縮熱は、好ましくは、水蒸気発生または他のプロセス工程の加熱、例えば、ジアリールカーボネートの生成のためのそれらに用いる。
【0060】
蒸留塔Kは、好ましくは塔頂圧1〜1000ミリバール(絶対圧)、より好ましくは1〜100ミリバール(絶対圧)、最も好ましくは5〜50ミリバール(絶対圧)にて、運転される。還流比は、留出物におけるジアリールカーボネートの濃度が、留出物の全体の重量を基準として、好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満、最も好ましくは1重量%未満となるように、設定される。この目的のために、0.2〜5、より好ましくは0.2〜2、最も好ましくは0.3〜1.6の還流比が確立される。本発明の範囲において、還流比は、戻される凝縮液なしで、蒸留塔の塔頂にて抜き出される蒸気に対する、蒸留塔に戻される凝縮液の重量比に相当する。
【0061】
粗ジアリールカーボネートは、ジアリールカーボネートの沸点と、ジアリールカーボネートの生成の間に不純物として、副生成物として形成される、アルキルアリールカーボネートの沸点との間の沸点を有する化合物を含む場合、これらの化合物は、本発明によれば、別の側流4において、第一蒸留塔から、抜き出すことができる。
【0062】
図1.2に示すように、第一蒸留塔(3)の缶出液は、触媒の損失を避けるために、少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の程度までジアルキルカーボネートおよび芳香族ヒドロキシル化合物のトランスエステル化に戻すことができ(24)、ジアリールカーボネートを生成できる。缶出液の残りの部分(25)は、残留物を濃縮し、また、第一蒸留塔の缶出液になお存在するジアリールカーボネートを部分的に回収する目的で、残留物濃縮(K3RA)に送ることができる。残留物濃縮において回収されたジアリールカーボネート(20)は、第一蒸留塔に、液体または蒸気の形態で戻すことができ、好ましくは蒸気の形態で戻すことができる。濃縮された残留物(26)は、プロセスから排出させてよく、あるいは、触媒を回収する目的でさらなる精製工程に送ることができる。
【0063】
例として図1.3に示されている、極めて特に好ましい形態において、残留物(25)は、エバポレータ(K3EN+1)によって濃縮される。蒸発において得られる蒸気(20)は、第一蒸留塔(K3)の塔底に送られる。この場合においてもまた、濃縮された残留物(26)は、プロセスから排出させてよく、あるいは、触媒を回収する目的でさらなる精製工程に送ることができる。
【0064】
濃縮された残留物(26)を排出する場合には、ジアリールカーボネートの損失は、精製されたジアリールカーボネートの量を基準として、2%未満であり、好ましくは1%未満であり、より好ましくは0.5%未満である。
【0065】
第一蒸留塔の缶出液の上述の精製はまた、適宜、下記に示す全ての別の形態において実施してよい。
【0066】
本発明の特に好ましい形態において、第一蒸留塔の側流に抜き出されるジアリールカーボネートは、少なくとも一つの蒸留塔、好ましくは一つの別の蒸留塔にて、精製される。第一蒸留塔の側流にて抜き出されるジアリールカーボネートのための精製のためのそのような別の蒸留塔はまた、本明細書において、略して、側流塔とも呼ばれる。
【0067】
この好ましい形態の特に好ましい変形例において、この別の蒸留塔(側流塔)は、回収部が無いように設計される。この好ましい形態のそのような特に好ましい変形例は、例として、図2.1に示される。
【0068】
この特に好ましい変形例において、ジアリールカーボネートは、既に図1.1に関連して説明した蒸留塔K3、および追加の側流塔K4において、精製される。蒸気の側流6は、側流塔K4に供給され、好ましくはその下側部分に供給される。図1.1のものと比較して、蒸留塔K3は、追加のフィード9を、上側回収部K3AT2よりも上方に有し、これを経由して、液体の缶出液が側流塔KからKにリサイクルされる。
【0069】
側流塔K4は、好ましくは少なくとも一つのセクションを有する。より好ましくは、図2.1に示すように、それは全くの精留部K4VT1として運転され、好ましくは1〜50の理論段数の分離性能を有し、より好ましくは2〜30の理論段数を有し、最も好ましくは5〜20の理論段数を有する。
【0070】
側流塔K4は、塔頂圧1〜1000ミリバール(絶対圧)、より好ましくは1〜100ミリバール、最も好ましくは5〜50ミリバール(絶対圧)にて、運転される。側流塔において、好ましくは0.1〜10、より好ましくは0.2〜5、最も好ましくは0.2〜2の還流比が確立される。
【0071】
側流塔K4の塔頂における蒸気(7)の凝縮は、塔頂凝縮器K4C1-Nにおいて、1または複数段で実施され得る。それは好ましくは、70〜250℃、より好ましくは90〜230℃、最も好ましくは90〜210℃の温度範囲内で、1段または2段で実施される。凝縮で得られる廃熱は、好ましくは、水蒸気を生成するために、または他のプロセス部分(例えば、ジアリールカーボネートの生成におけるそれら)を加熱するために、用いることができる。凝縮において得られる凝縮液は一部、還流(8)として、側流塔に再導入される。凝縮液の残りの部分は、留出液(5)(精製されたジアリールカーボネート)として抜き出される。不活性物質および/または凝縮されていない蒸気(19)は、排出させられる。
【0072】
凝縮器K4C1-Nにおける凝縮に関して、蒸留塔K3(K3C1-N)の塔頂における凝縮のための形態として前述したものと、同じ形態が適当である。
【0073】
本発明の方法の、別の蒸留塔(側流塔)を使用する特に好ましい形態の別の特に好ましい変形例において、この別の蒸留塔(側流塔)は、少なくとも一つの精留部および少なくとも一つの回収部を有するように、構成される。この特に好ましい形態のそのような特に好ましい変形例は、図2.3において、例として示される。
【0074】
図2.3に示す側流塔K4は、回収部K4AT1および精留部K4AT2の両方を有する。第一蒸留塔K3の蒸気の側流6は、最初に、1段または多段の側流凝縮器K3SC1-Nにて凝縮することができ、それから、側流塔K4に送ることができる。側流塔K4は、1〜1000ミリバール(絶対圧)、好ましくは1〜100ミリバール(絶対圧)、より好ましくは5〜50ミリバール(絶対圧)の塔頂圧にて運転される。これは、150〜300℃、好ましくは160〜240℃、より好ましくは180〜230℃の温度を塔底にもたらす。
【0075】
図2.3の側流塔K4は、5〜100段、好ましくは10〜80段、より好ましくは30〜80段の全体の分離性能を有しており、その場合、その精留部は、1〜99段、好ましくは1〜79段、より好ましくは2〜79段の分離性能を有する。側流塔K4は、0.5〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5の還流比で、運転される。
【0076】
蒸気(7)は、側流塔K4の塔頂にて、塔頂凝縮器K4C1-Nにおいて、1段または複数段で、凝縮され得る。それらは、好ましくは1段または2段で、70〜250℃、より好ましくは90〜230℃、最も好ましくは90〜210℃の温度範囲内で、凝縮される。凝縮で得られた廃熱は、好ましくは、水蒸気を発生させる、あるいは、他のプロセス部分(例えば、ジアリールカルボネートの生成におけるそれら)を加熱するために、用いることができる。凝縮で得られた凝縮液は、一部、側流塔に、還流(8)として再導入される。凝縮液の残りの部分は、留出液(5)(精製されたジアリールカーボネート)として、抜き出される。凝縮されていない蒸気(19)は排出される。
【0077】
側流塔の回収部K4AT1から流出する液体(23)は、同様に、エバポレータK4E1-Nにおいて、1または複数段で、蒸発させられる。
【0078】
側流塔Kの缶出液(9)は、続いて、プロセスから完全にもしくは部分的に排出してよく、および/または完全にもしくは部分的に蒸留塔K3に戻してよい。
【0079】
側流塔を使用する、本発明の方法の上述の特に好ましい形態は、品質に関して要求が増しつつあるジアリールカーボネートの精製のために特に適している。そのように増加した要求は、例えば、高沸点二次成分の割合を減少させることにあるかもしれず、その場合、ジアリールカルボネートにおけるそれらの割合は、一つだけの蒸留塔を用いるプロセスと比較して、10〜100重量%、好ましくは20〜90重量%、より好ましくは25〜80重量%減らすことができる。
【0080】
本発明のプロセスの特に好ましい形態において、当該別の蒸留塔が、第一蒸留塔に組み込まれる。当該別の蒸留塔が回収部を有しないように構成された、特に好ましい変形例の場合において、この別の塔の精製部が、第一蒸留塔(K3)に組み込まれる。この好ましい形態のそのような特に好ましい変形例は、図2.2に例示として示されている。この場合において、第一蒸留塔(K3AT2)の下側回収部から出てくる蒸気(6)のいくらかは、高沸点成分の含有量を減らすために、一体化された精留部(K4VT1)に送り込まれる。この一体化された側流塔の塔頂から出て行く蒸気(7)は、1または複数の外部凝縮器K4C1-Nにて凝縮され、また、一体化された側流塔に還流(8)として一部戻される。凝縮液の残りの部分は、留出液(5)(精製されたジアリールカーボネート)として抜き出される。凝縮されていない蒸気(19)は排出される。
【0081】
本発明の方法の別の特に好ましい形態において、第一蒸留塔は、分割型蒸留塔(または垂直分割型蒸留塔もしくは分割壁蒸留塔)として構成される。
【0082】
分割型蒸留塔は、同様に、混合物を、3つのフラクション、即ち、塔頂製品、缶出液および高純度の側流に分けるのに適している。分割型蒸留塔は、側流のための抜き出しサイドから、フィードサイドを互いに分割する、概して垂直の分割壁を有する。分割壁は、好ましくは、塔の全長にわたって連続していない。通常、分割壁の上に精製部、および分割壁の下に回収部がある。分割壁の領域において、供給サイドおよび側流の抜き出しサイドの両方に、少なくとも2つのセクションが存在する。供給サイドにおいて、上側セクションは、フィードに存在する高沸点物を減少させる作用をし、下側セクションは、フィードに存在する低沸点物を減少させる作用をする。側流の抜き出しサイドにおいて、抜き出しよりも上に、上側セクションが同様に存在し、上側セクションは、精製部からの低沸点物を減少させる作用をする。抜き出しよりも下に配置される下側セクションは、分割壁よりも下の回収部から来る高沸点物を減少させる作用をする。
【0083】
精製部から流出する液体の分割は、具体的な分離タスクに応じた要求により、ガイドされ、構成手法および制御技術手法により、影響され得る。同じことは、回収部から来る蒸気流にも当てはまる。
【0084】
分割型蒸留塔は、当業者には公知であり、例えば、独国特許公報DE-A 33 02 525およびDE-A 199 14 966に説明されており、これらの各公報の全体の内容は、引用により本明細書に組み込まれる。
【0085】
分割型蒸留塔は、好ましくは、塔の上側部分における少なくとも一つの精製部および塔の下側部分における少なくとも一つの回収部に加えて、各場合において、分割壁の供給サイドおよび分割壁の抜き出しサイドにおいて、上側セクションおよび下側セクションを有し、供給および抜き出しは、当該上側セクションと当該下側セクションとの間にて、実施される。
【0086】
本発明の方法の特に好ましい形態において、分割型蒸留塔の精製部は2つのセクション、即ち、下側精製部および上側精製部を有する。
【0087】
本発明の方法の特に非常に好ましい形態において、分割型蒸留塔は、塔の下側部分における少なくとも一つの回収部、各々の場合において、分割壁の供給サイドおよび分割壁の抜き出しサイドにおける上側セクションおよび下側セクション、ならびに塔の上側部分における上側および下側精製部を含む、少なくとも七つのセクションを有する。
【0088】
そのような分割型蒸留塔における分割壁は、好ましくは塔の長さ方向に配置される。それは、蒸気サイドおよび液体サイドの両方における供給サイドと抜き出しサイドとの間の物質移動を防止する。
【0089】
七つのセクションを有する分割型蒸留塔を用いる本発明の方法の例示的な形態を、例として、図3.1に示す。図3.1における分割型蒸留塔K3は、塔K3の下側部分に、回収部K3AT1、各々の場合において、分割壁Tの供給サイドにて、上側セクションK3TLOおよび下側セクションK3TLU、および分割壁Tの抜き出しサイドにて、上側セクションK3TROおよび下側セクションK3TRU、ならびに塔の上側部分にて、上側精製部K3VT1および下側精製部K3VT2を有する。粗ジアリールカーボネート(1)は、塔の分割壁Tのフィードサイド側にある、上側セクションK3TLOと下側セクションK3TLUとの間で、塔に供給される。精製されたジアリールカーボネート(5)は、分割壁の抜き出しサイドにある、上側セクションK3TROと下側セクションK3TRUとの間にて塔から抜き取られる。
【0090】
分割壁の供給サイドに配置された上側セクションK3TLOは、フィードに存在する高沸点物の除去のために作用する。分割壁の供給サイドの下側セクションK3TLUは、粗ジアリールカーボネート(1)に存在する低沸点物の除去のために作用する。分割壁の抜き出しサイドに配置された上側セクションK3TROは、塔の上側部分の精製セクションK3VT2から出て行く、液体流(15)に存在する低沸点物を除去する作用をする。抜き出しサイドの下側セクションK3TRUは、回収部K3AT1から出て行く蒸気流(17)に存在する高沸点物を除去するために作用する。
【0091】
精製されたジアリールカーボネートは、液体または蒸気の形態にて、分割壁の抜き出しサイドで、抜き出され得る。塔設計において、取り出しの種類は、塔内の分割壁の配置に、有意に影響を与えることがある。分割壁は、塔内で、各々の場合において、抜き出しサイドまたは供給サイドの方にずらして配置してよく、したがって、特定の側の断面を他方と比較して、減らす又は増やすことができる。精製されたジアリールカーボネートの蒸気を分割壁の抜き出し側で抜き出す場合、塔の抜き出し側の断面は、好ましくは、供給サイドの断面よりも大きい、即ち、より多くの蒸気が、回収部から抜き出し側に向かって進む。精製されたジアリールカーボネートの液体を分割壁の抜き出しサイドで抜き出す場合、塔の供給サイドの断面は、好ましくは抜き出しサイドの断面と同一である。
【0092】
図3.1に例として示されているように、精製されたジアリールカーボネートの液体が抜き出される場合、抜き出しサイドのセクションK3TROから流出する液体の、10〜90%、好ましくは20〜90%、より好ましくは50〜85%が、側流5として、抜き出される。残りの液体は、抜き出しサイドの下側セクションK3TRUに供給される。精製部K3VT2から流出する液体は、5〜50%の程度、好ましくは10〜50%の程度、より好ましくは10〜40%の程度で、分割壁の供給サイドに導入される(14)、即ち、K3TLOよりも上方に導入される。残りの液体は、分割壁の抜き出しサイドの上側端部、即ち、K3TROに導入される(15)。回収部K3AT1から出て上昇する蒸気は、5〜90%の程度、好ましくは10〜80%の程度、より好ましくは20〜75%の程度で、分割壁の供給サイドに供給される(16)。
【0093】
図3.2に例として示されるように、精製されたジアリールカーボネートの蒸気を抜き出す場合、抜き出しサイドの下側セクションK3TRUから出て行く蒸気の10〜90%、好ましくは20〜90%、より好ましくは50〜85%は、側流(6)として抜き出される。残りの蒸気は、抜き出しサイドの上側セクションK3TROに供給される。精製部K3VT2から流出する液体は、分割壁の供給サイドに、即ち、K3TLOよりも上方に、5〜90%、好ましくは10〜80%、より好ましくは20〜60%の程度で、導入される。残りの液体は、分割壁の抜き出しサイドの上側端部に、即ち、K3TROに導入される(15)。回収部K3AT1から出て上昇する蒸気は、分割壁の供給サイドに、5〜90%の程度、好ましくは10〜80%の程度、より好ましくは20〜60%の程度で、供給される(16)。蒸気を抜き出す場合、蒸気の形態で抜き出された側流(6)は、好ましくは1または複数の側流凝縮器K3SC1-Nで凝縮され、液体のジアリールカーボネートのストリーム(5)として取り出される。
【0094】
そのような分割型蒸留塔の上側精留部は、好ましくは0〜40の理論段数、より好ましくは1〜20の理論段数、最も好ましくは1〜10の理論段数の分離性能を有し、下側精留部は、好ましくは1〜40の理論段数、より好ましくは5〜20の理論段数、最も好ましくは5〜15の理論段数を有し、回収部は、好ましくは0〜40の理論段数、より好ましくは2〜20の理論段数、最も好ましくは2〜15の理論段数を有する。分割壁の抜き出しサイドの上側セクションK3TLOおよび下側セクションK3TLU、ならびに分割壁の抜き出しサイドの上側セクションK3TROおよび下側セクションK3TRUはそれぞれ、好ましくは1〜40の理論段数、より好ましくは2〜20の理論段数、最も好ましくは5〜20の理論段数の分離性能を有する。
【0095】
セクションのこの分離性能を達成するには、ランダム充填物または規則充填物を使用することができる。使用されるランダム充填物または規則充填物は、蒸留のために一般的に利用可能なものであり、Ullmann's Encyclopaedie der Technischen Chemie, 第4版、第2巻、p. 528 ff.にて説明されているとおりである。ランダム充填物の例として、ラシヒリング(Raschig rings)、ポールリング(Pall rings )およびノバロックスリング(Novalox rings)、バール・サドル(Berl saddles)、インタレックス・サドル(Intalex saddles)またはトーラス・サドル(Torus saddles)、およびインターパック・パッキン(Interpack packings)、が挙げられる。規則充填物の例として、シートメタルおよび布製充填物(例えば、BXパッキン、モンツ(Montz)パッキン、メラパック(Mellapak)、 メラデュア(Melladur)、ケラパック(Kerapak) およびCYパッキン)が挙げられ、種々の材料、例えばガラス、せっ器、陶器、ステンレス鋼、プラスチックからなるものが挙げられる。大きな表面積、良好な濡れ性、および液相の十分な時間の滞留時間を有する、ランダム充填物および規則充填物が好ましく用いられる。これらは例えば、ポール(Pall)およびノボラックス(Novolax)リング、バール(Berl)サドル、BXパッキン、モンツパック(Montz Pak)、メラパック(Mellapak)、メラデュア(Melladur)、ケラパック(Kerapak) および CYパッキンである。別方として、棚板もまた適当である。具体的には、シーブトレイ、バブルキャップトレイ、バルブトレイ、トンネルキャップトレイが適当である。好ましくは、ランダム充填物および規則充填物が使用され、特に好ましくは、規則充填物が使用される。
【0096】
分割型蒸留塔は、加えて、缶出液のために、一段または多段(N段)の塔頂凝縮器K3C1-Nおよび一段または多段(N段)のエバポレータK3E1-Nを有する。
【0097】
蒸気は、分割型蒸留塔の塔頂にて、40〜250℃の温度内にて、好ましくは50〜200℃の温度内にて、より好ましくは60〜180℃の温度内にて、一段または多段で凝縮され得、好ましくは一段または二段で凝縮され得る。塔頂凝縮器における凝縮に関して、蒸留塔に関して既に上で説明した、種々の形態の凝縮器が使用可能である。
【0098】
回収部K3AT1から流出する液体(12)は、一段または多段(N段)の蒸発により蒸発させられて濃縮され、得られる液体の蒸気/液体混合物(13)は、下側回収部K3AT1に戻される。蒸発は、100〜250℃、好ましくは150〜240℃、より好ましくは180〜220℃の温度範囲内にて、実施されることが好ましい。
【0099】
分割型蒸留塔は、1〜1000ミリバール(絶対圧)、より好ましくは1〜100ミリバール(絶対圧)、最も好ましくは5〜50ミリバール(絶対圧)の塔頂圧にて、運転される。還流比は、留出物10におけるジアリールカーボネートの濃度が、留出物の全重量をベースとして、好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満、最も好ましくは1重量%未満となるように調節される。この目的のために、好ましくは0.2〜5の還流比、より好ましくは0.2〜2の還流比、最も好ましくは0.3〜1.6の還流比が確立される。本発明の範囲において、還流比は、リサイクルされる凝縮液無しで、塔の塔頂にて抜き出される蒸気に対する、塔にリサイクルされる凝縮液の重量比に相当する。
【0100】
精製されるジアリールカーボネートが、ジアリールカーボネートの沸点と、ジアリールカーボネートの調製の間に中間物として形成されるアルキルアリールカーボネートの沸点との間の沸点を有する化合物を不純物として含む場合、この不純物は、本発明によれば、分割型蒸留塔の別の側流4中に移動する。
【0101】
本発明は、下記の非限定的な実施例を参照して、より詳細に説明される。
【実施例】
【0102】
以下において、対応する定義を有する、下記の略号が使用される。
DMC: ジメチルカーボネート
MPC: メチルフェニルカーボネート
DPC: ジフェニルカーボネート
Ti(PhO)4: チタンテトラフェノキシド
Salol: サリチル酸フェニル
DPE: ジフェニルエーテル
【0103】
実施例1
図2.1の側流塔を備えた第一蒸留塔(精留塔)におけるDPC精製
二段のトランスエステル化は、63.8/22.7/10.3/0.4/2.7/0.08重量%のDPC/MPC/フェノール/DMC/Ti(PhO)4/salolを含むDPC含有ストリームを、224.4kg/時間の量で処理する能力を有する。このストリームは、図2.1に従って、蒸気側流が抜き出される第一蒸留塔(精留)(K3)および側流塔(K4)から成る、蒸留による精製装置内を進む。加えて、99.6重量%のDPCを含む残留濃縮物から、1.3kg/時間の蒸気混合物が、塔K3の塔底にて供給される。
【0104】
精留(K3)は、4つのセクション、即ち、2の理論段数を有する上側精留部、12の理論段数を有する下側精留部、10の理論段数を有する上側回収部、および9の理論段数を有する下側回収部から成る。塔頂凝縮器(K3C1)における、塔頂から出て行く蒸気の凝縮、および塔底生成物のためのエバポレータK3E1における、下側回収部(K3AT2)から流出する液体の部分的な蒸発はいずれも、一段で、行われる。
【0105】
塔は、還流比0.7および塔頂圧15ミリバールにて、運転される。
【0106】
これは、留出液(2)として、69.9/28.3/1.2/0.5重量%のMPC/フェノール/DMC/DPEを与える。精製部K3VT1より下方にて、0.02kg/時間の液体が、側流(4)に高沸点成分を排出させる目的で、抜き出される。加えて、上側精製部K3VT1より下方で、192.8kg/時間の蒸気の側流(6)であって、99.9重量%のDPCを含む側流が抜き出される。得られる缶出液(3)は、DPC/Ti(PhO)4/salolを69.8/29.6/0.5重量%で含む、20.8kg/時間の混合物である。缶出液の副流は、缶出液(3)の全体の量を基準として10%に相当する量であり、これは、薄膜エバポレータ(K3E2)から成る残留物濃縮(K3RA)に送られる。残りの缶出液(24)は、DPC含有ストリーム(1)を調製するために、2段のトランスエステル化に戻される。これは、触媒の損失を90%減少させる。
【0107】
蒸気側流(6)は、側流塔K4に送られる。これは、9の理論段数を有する精留部K4VT1のみを有する。
【0108】
側流塔K4は、第一蒸留塔Kにおける精留と同じ条件の下で、還流比0.5にて、運転される。
【0109】
側流塔K4の塔頂から出て行く蒸気(7)は、凝縮器K4C1-Nにおいて、二段の凝縮で凝縮され、凝縮熱は、水蒸気を発生させるか、あるいはDPC生成における他のプロセス部分を加熱するために用いられる。
【0110】
これは、99.9重量%のDPCおよび僅か600ppmのsalolを含む留出液をもたらす。側流塔の塔頂にて流出する液体9は、第一蒸留塔K3の下側回収部K3AT2よりも上方で、精留に送られる。
【0111】
実施例2:液体側流が抜き出される分割型蒸留塔におけるDPCの精製
この実施例のために、図3.1の分割型蒸留塔を使用する。分割型蒸留塔K3は、2つのセクションを有する精留部から成る。上側セクションK3VT1は、2の理論段数の分離性能を有し、その下のセクションK3VT2は、12の理論段数の分離性能を有する。上側精留部K3VT1よりも下方にて、液体流(4)を抜き出して、ジフェニルエーテルを排出させる可能性がある。
【0112】
精製部より下方では、塔が、垂直方向の分割壁Tによって、区分けされている。この分割壁の抜き出しサイドおよび供給サイドには、各々の場合において、少なくとも2つのセクションが配置される。フィード(1)は、分割壁の供給サイドに導入される。精製されたジフェニルカーボネート(5)の液体の抜き出しは、抜き出しサイドにて実施される。
【0113】
分割壁の供給サイドに配置された上側セクションK3TLOは、フィード(1)に存在する高沸点物の除去のために作用する。供給サイドの下側セクションK3TLUは、フィード(1)に存在する低沸点物の除去のために作用する。分割壁の抜き出しサイドに配置される上側セクションK3TROは、精留部から流出する液体流(15)に存在する低沸点物の除去のために作用する。抜き出しサイドの下側セクションK3TRUは、回収部から出て行く蒸気流(17)に存在する高沸点物の除去のために作用する。
【0114】
回収部K3AT1は、14の理論段数の分離性能を有し、高沸点物の濃縮のために作用する。
【0115】
精留部から出る、蒸気(10)は、凝縮器K3C1-Nにて凝縮され、一部は還流(11)として、塔に戻される。回収部から流出する液体(12)は一部、エバポレータK3E1-Nにおいて蒸発させられる。
【0116】
塔は、塔頂圧15ミリバールにて、運転される。
【0117】
塔K3への供給速度(1)は、236.6kg/時間である。その中には、62.8/24.2/9.8/0.4/0.1/0.03/2.6重量%のDPC/MPC/フェノール/DMC/DPE/salol/Ti(PhO)4が存在する。得られる留出液(2)は、81.8kg/時間の69.9/28.4/1.15/0.05/0.5重量%のMPC/フェノール/DMC/DPC/DPEを含む混合物である。DPEを排出させるために、61.3/33.5/0.9重量%のDPC/MPC/DPEを含む側流(4)が、0.2kg/時間で精留部から抜き出される。得られる缶出液(3)は、DPC/Ti(PhO)4/salolの69.7/29.8/0.41重量%の20.6kg/時間の混合物である。
【0118】
側流(5)中に抜き出されるジフェニルカーボネート(134kg/時間)は、99.97重量%の純度を有し、僅か280ppmのsalolを含む。
【0119】
精留部から流出する液体は、分割壁の供給サイド、即ち、K3TLOの上方に、25%の程度で導入され、分割壁の抜き出しサイド、即ち、K3TROに、75%の程度で導入される。回収部K3AT1から出て上昇する蒸気は、分割壁の供給サイドおよび抜き出しサイドとの間で、等分に分割される。
【0120】
実施例3:蒸気側流を抜き出す分割型蒸留塔におけるDPCの精製
この実施例のために、図3.2の分割型蒸留塔を使用する。分割型蒸留塔K3は、2つのセクションを有する精製セクションから成る。上側セクションK3VT1は、2の理論段数の分離性能を有し、その下のセクションK3VT2は、13の理論段数の分離性能を有する。上側精製セクションK3VT1よりも下方にて、ジフェニルエーテルを排出させるために、液体流(4)を抜き出す可能性がある。
【0121】
精製セクションよりも下では、塔は、垂直な分割壁Tにより区分けされている。この分割壁の供給サイドおよび抜き出しサイドには、各々の場合において、少なくとも2つのセクションが存在する。分割壁の供給サイドでは、フィード(1)が導入される。分割壁の抜き出しサイドでは、精製されたジフェニルカーボネート(6)の蒸気が抜き出される。
【0122】
分割壁の供給サイドに配置される上側セクションK3TLOは、フィード1に存在する高沸点物を除去するために作用する。供給サイドの下側セクションK3TLUは、フィード1に存在する低沸点物を除去するために作用する。分割壁の抜き出しサイドに配置される上側セクションK3TROは、精製セクションから出て行く液体流15に存在する低沸点物を除去するために作用する。抜き出しサイドの下側セクションK3TRUは、回収部から出て行く蒸気流(17)に存在する高沸点物を除去するために作用する。
【0123】
回収部K3AT1は、14の理論段数の分離性能を有し、高沸点物の濃縮のために作用する。
【0124】
精製部から出て行く蒸気(10)は、凝縮器K3C1-Nにおいて凝縮され、一部は還流(11)として塔に戻される。回収部から流出する液体(12)は、エバポレータK3E1-Nにおいて一部蒸発させられる。
【0125】
塔は、塔頂圧15ミリバールにて、運転される。
【0126】
塔K3には、62.8/24.2/9.8/0.4/0.1/0.03/2.6重量%のDPC/MPC/フェノール/DMC/DPE/salol/Ti(PhO)4を含むフィード(1)が、236.6kg/時間で供給される。得られる留出液(2)は、69.8/28.4/1.16/0.1/0.5重量%のMPC/フェノール/DMC/DPC/DPEを含み、81.8kg/時間の量である。DPEを排出させるために、精留部から、68.3/27.1/0.7重量%のDPC/MPC/DPEを含む側流(4)が、0.2kg/時間で抜き出される。得られる缶出液(3)は、20.6kg/時間の、69.7/29.8/0.41重量%のDPC/Ti(PhO)4/salolの混合物である。
【0127】
側流に抜き出され、続いて凝縮されるジフェニルカーボネート(5)は、99.7重量%の純度を有し、僅か290ppmのsalolを含む。
【0128】
精製部から流出する液体は、25%の程度で、分割壁の供給サイド、即ち、K3TLOよりも上方に導入され、75%の程度で、分割壁の抜き出しサイド、即ち、K3TROに導入される。回収部K3AT1から出て行く蒸気は、25%の程度で分割壁の供給サイドと、75%の程度で分割壁の抜き出しサイドとに分割される。
【0129】
当業者は、上述の実施形態に広い発明概念から逸脱することなく変更を加えうることが理解されよう。従って、本発明は、開示された特定の形態に限定されず、添付の請求の範囲によって規定される本発明の精神および範囲内の変形例をカバーすることを意図していることが理解される。
【符号の説明】
【0130】
K3 側流を抜き出させるようにした、ジアリールカーボネートの第一蒸留塔
K3C1-N 1または複数段の塔頂凝縮器(直列および/または並列接続)
K3E1-N 1または複数段の、缶出液のためのエバポレータ(直列および/または並列接続)
K3VT1 上側精留部
K3VT2 下側精留部
K3AT1 上側回収部
K3AT2 (下側)回収部
K3SC1-N 1段または複数段の側流凝縮器(直列および/または並列接続)
K4 側流塔
K4C1-N 1段または複数段の側流塔の塔頂凝縮器(直列および/または並列接続)
K4VT1 側流塔の精留部
K4AT1 側流塔の回収部
K4E1-N 1段または複数段の、側流塔の缶出液のためのエバポレータ(直列および/または並列接続)
T 分割壁
K3TLO 分割壁の供給サイドの精留部
K3TLU 分割壁の供給サイドの回収部
K3TRO 分割壁の抜き出しサイドの精留部
K3TRU 分割壁の抜き出しサイドの回収部
K3CS1-N 蒸留塔または分割型蒸留塔における凝縮のための1または複数のカラムセクション(直列および/または並列接続)
K3W 1-N 1または複数の液体冷却器(直列および/または並列接続)
K3RA 残留物濃縮
K3EN+1 エバポレータの形態の残留物濃縮
【0131】
1 粗ジアリールカーボネート
2 塔K3の留出物
3 塔K3の缶出液
4 中間沸点物を有する、K3の追加の側流
5 精製された液体ジアリールカーボネート
6 K3の蒸気側流
7 側流塔K4の塔頂における蒸気
8 側流塔K4の還流
9 塔K4の缶出液
10 K3C1-Nにおける凝縮のためのKからの蒸気
11 塔K3の還流
12 K3の下側回収部からの液体
13 K3E1-Nからの蒸気/液体混合物
14 精留部からK3TLOへの液体(分割型蒸留塔としてのK3の特別バージョン)
15 精留部からK3TROへの液体(分割型蒸留塔としてのK3の特別バージョン)
16 回収部からK3TLUへの蒸気(分割型蒸留塔としてのK3の特別バージョン)
17 回収部からK3TRUへの蒸気(分割型蒸留塔としてのK3の特別バージョン)
18 凝縮K3C1-Nに対する不活性物質および/または凝縮されていない蒸気
19 凝縮K4C1-Nに対する不活性物質および/または凝縮されていない蒸気
20 K3RAからのジアリールカーボネートを含む流れ
21 凝縮部K3CS1-Nから冷却器K3W1-Nへの副流
22 K3W1-Nからの、凝縮セクションK3CS1-Nへの冷却された凝縮液
23 側流塔K4の回収部からの液体
24 トランスエステル化への触媒含有ストリーム(塔底K3からの副流)
25 缶出液K3からK3RAまたはK3EN+1への副流
26 K3RAからの排出または触媒回収への副流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアルキルカーボネートおよび芳香族ヒドロキシル化合物をトランスエステル化触媒の存在下でトランスエステル化して、不純物としてのトランスエステル化触媒を含むジアリールカーボネート生成物を与えること
ジアリールカーボネート生成物を、上側部分および下側部分を有し、上側部分が精留部を含み、下側部分が回収部を含む第一蒸留塔において、蒸留に付すこと、および
精製されたジアリールカーボネートを含む第一側流を第一蒸留塔から抜き出すこと
を含む、方法
【請求項2】
蒸留塔が分割型蒸留塔を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
精製されたジアリールカーボネートを、第二蒸留塔において追加の蒸留に付すことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第二蒸留塔が回収部を有しない、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
第二蒸留塔が第一蒸留塔に組み込まれている、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
第一側流を第一蒸留塔から蒸気として抜き出す、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ジアリールカーボネート生成物が、アルキルアリールカーボネートであるトランスエステル化の副生物、およびジアリールカーボネートとアルキルアリールカーボネートとの間の沸点を有する化合物を含み、
第一蒸留塔からの当該化合物を含む第二側流を抜き出すことをさらに含む、請求項1に記載の方法
【請求項8】
第二側流を、第一蒸留塔から第一側流よりも上方から抜き出す、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
回収部が上側回収部および下側回収部を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
精留部が上側精留部および下側精留部を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
分割型蒸留塔が、分割壁、供給サイドおよび抜き出しサイドを有する分割部を含み、供給サイドが上側供給サイドセクションおよび下側供給サイドセクションを含み、抜き出しサイドが上側抜き出しサイドセクションおよび下側抜き出しサイドセクションを含み、
ジアリールカーボネート生成物を、上側供給サイドセクションと下側供給サイドセクションとの間で、第一蒸留塔に供給し、
第一側流を、上側抜き出しセクションと下側抜き出しセクションとの間で、第一蒸留塔から抜き出す、
請求項2に記載の方法。
【請求項12】
精製されたジアリールカーボネートを、第二蒸留塔において、追加の蒸留に付すことをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
第一蒸留塔が直径Dを有し、第一蒸留塔に組み込まれた塔頂凝縮器および第一蒸留塔から塔頂凝縮器に至る蒸気ラインをさらに有し、蒸気ラインが直径dを有し、比d/Dが0.2〜1である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
第二蒸留塔が直径Dを有し、第二蒸留塔に組み込まれた塔頂凝縮器および第二蒸留塔から塔頂凝縮器に至る蒸気ラインをさらに有し、蒸気ラインが直径dを有し、比d/Dが0.2〜1である、請求項3に記載の方法。
【請求項15】
缶出液を第一蒸留塔の塔底から抜き出し、
缶出液の少なくとも50%を、ジアルキルカーボネートと芳香族ヒドロキシル化合物のトランスエステル化に戻して再利用することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項16】
缶出液の再利用されない部分を濃縮して、触媒回収に付する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
蒸留塔が分割型蒸留塔を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
分割型蒸留塔が、分割壁、供給サイドおよび抜き出しサイドを有する分割部を含み、供給サイドが上側供給サイドセクションおよび下側供給サイドセクションを含み、抜き出しサイドが上側抜き出しサイドセクションおよび下側抜き出しサイドセクションを含み、
ジアリールカーボネート生成物を、上側供給サイドセクションと下側供給サイドセクションとの間で、第一蒸留塔に供給し、
第一側流を、上側抜き出しセクションと下側抜き出しセクションとの間で、第一蒸留塔から抜き出す
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
精製されたジアリールカーボネートを、第二蒸留塔において、追加の蒸留に付すことをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
缶出液の再利用されない部分を濃縮して、触媒回収に付する、請求項17に記載の方法。

【図1.1】
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【図1.2】
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【図1.3】
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【図2.1】
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【図2.2】
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【図2.3】
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【図3.1】
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【図3.2】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【公開番号】特開2009−137952(P2009−137952A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−295625(P2008−295625)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】